JP2004023884A - 直流電流継電装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】事故による電流増加を高速に判定でき、また回生失効等を誤って事故と判定するのを防止でき、信頼性の高い直流電流保護継電装置を得る。
【解決手段】電流変化率が所定値を超えると電流急変判定手段7が電流急変信号を発し、ベース電流記憶手段8はこのときの電流値をベース電流として記憶する。加算器9が算出した現在の電流とベース電流値との差が所定の値を超えたとき故障電流判定手段10は故障電流信号を発する。極性判定手段11は、電流急変信号が発されたときの電流が正方向のとき正方向極性信号を発し、回生中電流急変判定手段12は、電流急変信号が発信されたときに正方向極性信号が発信されていなかった場合に回生中の電流急変であると判定し回生中電流急変信号の発信を続ける。事故判定手段13は、電流急変信号及び故障電流信号が発信されていて回生中電流急変信号が発信されていないとき事故と判定する。
【選択図】 図2
【解決手段】電流変化率が所定値を超えると電流急変判定手段7が電流急変信号を発し、ベース電流記憶手段8はこのときの電流値をベース電流として記憶する。加算器9が算出した現在の電流とベース電流値との差が所定の値を超えたとき故障電流判定手段10は故障電流信号を発する。極性判定手段11は、電流急変信号が発されたときの電流が正方向のとき正方向極性信号を発し、回生中電流急変判定手段12は、電流急変信号が発信されたときに正方向極性信号が発信されていなかった場合に回生中の電流急変であると判定し回生中電流急変信号の発信を続ける。事故判定手段13は、電流急変信号及び故障電流信号が発信されていて回生中電流急変信号が発信されていないとき事故と判定する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電鉄用変電所等の直流き電回路保護のために用いられる直流電流継電装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、直流き電回路の短絡保護のための直流電流保護継電装置、例えば特開昭63−90450号公報に示されるような直流電流継電装置は、故障電流発生時の電流増加分を検出し、一定値以上の電流増加変化が一定時間継続した場合に遮断器を動作させる。このようにすることにより、故障電流発生時の電流増加変化と電車ノッチアップ時(加速時)の電流増加変化が接近している場合でも、故障電流と比べて継続時間が短いノッチアップによる電流変化を分離することができ、小さな故障電流に対しても直流き電回路を保護することが可能となる。
【0003】
以下、このような従来の直流電流保護継電装置を、図9〜図14によりさらに詳細に説明する。図9は、従来の直流電流保護継電装置の構成を示す構成図、図10は直流電流保護継電装置のCPU部の動作を説明するための説明図である。図11は、電車の起動時のノッチ切換による直流き電線の負荷電流を示す波形図である。図12は、直流き電線を流れる故障電流の波形を示す波形図、図13は回生失効を説明するための説明図である。図14は、回生失効時に直流き電線回路に発生する現象を説明するための説明図である。
【0004】
図9において、1は直流母線、2は遮断器、3は直流き電線である。4はCT(直流変流器)であり、直流き電線3を流れる電流を計測する。51はA/D変換部であり、CT4からのアナログ入力をデジタル値に変換する。52はCPU部(中央演算部)であり、A/D変換部51から信号線W1を介して出力されたデジタル値に基づき所定の演算を行い、事故の判定を行う。53は出力部であり、信号線W2を介して入力されたCPU部52の判定結果に基づき遮断器2にトリップ指令を出力する。
【0005】
直流き電線3の負荷電流は、電車の起動時においてノッチ切換等により図11に示す波形の通り、ノッチ切換に応じて階段状に変化する。一方、故障電流は図12に示す波形の通り単調に増加する。電車負荷の増大に伴い負荷電流も増大し、故障電流と負荷電流の大きさに差が無くなり、また、逆に負荷電流の方が故障電流より増大するケースがある。
【0006】
そこで、図9に示す従来の直流電流継電装置におけるCPU52は、負荷電流が電車のノッチアップ等により急峻に立上り、一定値となる階段波形の特性を考慮して、図10に示すようなAND条件の判定を行う。すなわち、CT4にて検出された直流電流のレベル、つまりA/D変換部51から入力される電流値がある値Kより大きいという第1の条件と、一定値以上の電流増加変化が一定時間継続するという第2の条件とのAND条件により、事故判別を実施し、事故と判別した場合に出力部3が遮断器2にトリップ指令を出力するものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の直流電流継電装置は以上のように構成されており、一定値以上の電流増加変化が一定時間継続することを条件にして事故判別を行っているため、必ず上記一定時間分だけ事故判別が遅れるという欠点があった。直流き電線の重短絡事故の場合は、直流き電線に大電流が流れ、より高速に遮断しなければ、遮断器の遮断限界を超え事故除去が難しくなるばかりでなく、変電所機器の破壊に至るおそれがある。
【0008】
また、近年、電力回生車両が増え、一つの電車区間を走行している回生車が回生制動中に他の電車である負荷車がノッチオフしたときに生じる回生失効現象によって、従来の直流電流保護継電装置では不要動作する欠点があった。ここで、回生失効現象について簡単に説明する。図14は、回生失効時に直流き電回路で発生する現象を説明するための説明図である。
【0009】
図14における直流き電線回路では、図示しない整流器により全波整流された電力が、母線Mに供給され、さらに遮断器CBlを設けた直流き電線61から電車線71と、遮断器CB2を設けた直流き電線62から電車線72と、遮断器CB3を設けた直流き電線63から電車線73と、遮断器CB4を設けた直流き電線64から電車線74とに、それぞれ電力供給が行われている。そして、電車Aは電車線73より電力供給を受けて力行し、電車Bは電車線72より電力供給を受けて力行している。
【0010】
いま、電車Aが回生車になったときは、電車Aから矢印aの方向に、電車線73→直流き電線63→母線M→直流き電線62→電車線72を経て、力行中の電車Bに対して回生電力の供給が行われる。この結果、電車Bは、回生電力を消費する負荷車となる。次に、この状態において、電車Bがノッチオフすると、回生電力を消費する負荷が急になくなってしまい、電車Aから送出されていた回生電流は零となる。これを回生失効という。
【0011】
このように、回生電流が零になると、回生車であった電車Aの回生電圧は急上昇し、車内に設けた図示しない過電圧継電器が動作して、これも図示しない過電圧抑制抵抗を通し主回路を短絡させる。この結果、図13の曲線Rのように、直流き電線63における直流電流は、電車Aが回生車の状態では負方向の回生電流−J0が流れているが、回生失効状態になると回生電流が遮断されて+△J1の電流増加が発生する。
【0012】
さらに、車内に設けた過電圧抑制抵抗が主回路に挿入されることにより短絡電流が発生し、+△J2の電流増加が発生する。このために、回生失効による電流増加と故障電流による電流増加が区別できないので、故障と判定し、不要に動作するという問題点があった。なお、回生車が存在する直流き電線での軽短絡故障の場合は、電流は図13の一点鎖線で示す曲線Sのように変化する。
【0013】
この発明は、上記のような問題点を解決して、回生失効による電流増加と故障電流による電流増加とを区別して高速に事故を判定でき、また回生失効のときや、電気車がセクションを通過するときに誤って事故と判定するのを防止でき、信頼性の高い直流電流保護継電装置を得ることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の直流電流継電装置においては、電気車に電力を供給する直流き電線の電流を検出する電流検出手段と、検出された電流を微分して電流変化率を求める微分演算手段と、電流変化率が所定値を超えたときに電流急変信号を発する電流急変判定手段と、電流急変信号が発信されたときの電流をベース電流値として記憶するべース電流記憶手段と、べース電流値と電流の現在値との差を演算する加算手段と、加算手段の出力が所定の値を超えたときに故障電流信号を発する故障電流判定手段と、電流急変信号が発信されたときの電流が零以上のときに正方向極性信号を発する極性判定手段と、電流急変信号が発信されたときに正方向極性信号が発信されていなかった場合に回生中の電流急変であると判定し回生中電流急変信号の発信を継続する回生中電流急変判定手段と、電流急変信号及び故障電流信号が発信されていてかつ回生中電流急変信号が発信されていないとき事故と判定する事故判定手段とを備えたものである。
短絡事故が発生すると、電流が急激に増加するので電流急変信号が発信され、電流急変信号が発信されたときの電流すなわちべース電流値からの電流の増加幅が所定の値を超えるので故障電流信号が発信される。電流急変信号が発信されたときに極性判定手段から信号が発信されていないときは、直流き電線に流れる電流がマイナス方向であり、当該電流の急増急変は回生失効によるものとして回生中電流急変信号が発信されるので、回生中電流急変信号が発信されている場合は、事故と判定しないようにして、回生失効による電流変化で誤動作をしないようにしている。これにより、事故を迅速かつ確実に判定できる。
【0015】
そして、回生中電流急変判定手段が回生中電流急変信号を発してから所定の時間後に故障電流信号及び正方向極性信号がともに発信されているとき事故と判定する回生線路側事故判定手段を設けたものであることを特徴とする。
所定の時間後には回生失効現象が収まっているように所定の時間の長さを選べば、回生失効現象が収まっているのに故障電流信号及び正方向極性信号がともに発信されているときには事故と判定でき、回生失効による電流増加と事故による電流増加を確実に区別でき、回生失効による誤動作を防止できる。
【0016】
さらに、電流が予め定められた値を超えたとき回生線路側故障電流信号を発する回生線路側故障電流判定手段と、回生線路側故障電流信号と正方向極性信号と回生中電流急変信号とが発信されているとき重短絡故障と判定する重短絡故障判定手段とを設けたものであることを特徴とする。
回生中の重短絡故障の場合は、電流急変判定手段がまずこれを検出し、回生中電流急変判定手段が動作する。少し遅れて、短絡電流のために電流の方向が逆転し正方向の電流が流れ極性判定手段が動作し、電流の増大して予め定められた値を超えると回生線路側故障電流判定手段が動作して、これらの条件が全て揃うと、重短絡故障判定手段が重短絡故障と判定することにより、迅速に事故を判定できる。
【0017】
また、回生中電流急変判定手段が回生中電流急変信号を発してから所定の時間後に故障電流信号及び正方向極性信号がともに発信されているとき事故と判定する回生線路側事故判定手段と、電流が予め定められた値を超えたとき回生線路側故障電流信号を発する回生線路側故障電流判定手段と、回生線路側故障電流信号と正方向極性信号と回生中電流急変信号とが発信されているとき重短絡故障と判定する重短絡故障判定手段とを設けたものであって、事故判定手段回生線路側が事故と判定したとき、回生線路側事故判定手段が事故と判定したとき、又は重短絡故障判定手段が重短絡故障と判定したとき、直流き電線に供給する電力を遮断するように指令を発する遮断指令発信手段を設けたものであることを特徴とする。
事故を迅速かつ精度良く判定して電力を遮断するように指令を発することにより、時間の経過とともに事故電流が増加して遮断器が遮断不能に陥る前に遮断できるとともに事故の拡大を防止できる。
【0018】
そして、電流検出手段は検出する電流中の高調波を除去する高調波フィルタを有するものであることを特徴とする。
高調波の影響を受けて誤動作するのを防止できる。
【0019】
さらに、直流き電線は複数あっておのおの電気的に区分された電気車線路のセクションに給電するものであり、直流電流継電装置は複数の直流き電線ごとに設けられ、セクション通過補償値出力手段とセクション通過補償手段とを設けたものであって、セクション通過補償値出力手段は微分演算手段が求めた電流変化率が所定の電流急減判定値を超える電流減少であるときに電流変化率に予め決められた補償率を乗じた補償値を出力し、セクション通過補償手段は微分演算手段が求めた電流変化率を複数の直流き電線のうちの事前に設定した対象となる直流き電線に設けられる直流電流継電装置のセクション通過補償値が出力する補償値により補償するものであることを特徴とする。
セクション通過補償手段により電気車のセクション通過時の誤動作を防止できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1〜図3は、この発明の実施の一形態である直流電流保護継電装置を示すものであり、図1は全体構成を示す全体構成図、図2は処理判定部の構成図、図3は動作を要約して示すフローチャートである。図1において、1は直流母線、2は遮断器、3は直流き電線である。4はCT(直流変流器)であり、直流き電線3を流れる電流を計測する。5はA/D変換部であり、CT4からのアナログ入力をデジタル値に変換する。17は処理判定部(詳細後述)であり、信号線W1を介してA/D変換部からデジタル信号が入力される。
【0021】
18はトリップ指令出力部であり、処理判定部17から信号線W2を介して信号を受けて遮断器2にトリップ指令を出力する。次に、処理判定部17の詳細構成を説明する。処理判定部17は、図2に示すように構成されている。6は微分演算手段であり、A/D変換部5から出力された電流Jを微分して電流変化率を求める。7は電流急変判定手段、8はベース電流記憶手段、9は加算器である。10は故障電流判定手段、11は極性判定手段、12は回生中電流急変判定手段である。
【0022】
13は事故判定手段であり、電流急変判定手段7と、故障電流判定手段10と、回生中電流急変判定手段12とから発信されるオン信号に基づき直流き電回路の事故を判定する。14は回生失効分別手段、15は回生線路側事故判定手段、16はOR回路である。処理判定部17は、以上のように構成されている。この処理判定部17は、マイクロコンピュータにて、実現することもできる。
なお、CT4とA/D変換部5とが、この発明における電流検出手段である。また、OR回路16とトリップ指令出力部18とがこの発明における遮断指令発信手段である。
【0023】
次に、動作について説明する。
直流き電線3の負荷電流は、電車の起動時においてノッチ切換等により図11に示すように階段状に増加する。一方、故障電流は図12に示す波形の通り、単純に増加する。電車負荷の増大に伴い負荷電流も増大し、故障電流と負荷電流の大きさに差が無くなり、また、逆に負荷電流の方が故障電流より増大するケースがある。
【0024】
そこで、処理判定部17は、負荷電流が電車のノッチアップ等により急峻に立上り、一定値となる階段状となる波形の特性を考慮し、CT4よりA/D変換部5、信号線W1を経て入力された電流値を微分演算手段6により微分演算を実施する。すなわち、CT4で計測された直流き電線3を流れる電流Jは、A/D変換部5にてデジタル値に変換され、微分演算手段6に入力されて微分されて電流Jの微分値D(=dJ/dt)、すなわち電流変化率Dが算出される。電流急変判定手段7は、微分演算手段6から出力された微分値Dの値が、予め設定された所定値である電流急変判定値Klを超えた場合に電流急変信号としてのオン信号を出力する。
【0025】
ベース電流記憶手段8は、電流急変判定手段7がオン信号を出力したときの電流値をベース電流値Jbとして記憶する。加算器9は、CT4により検出されるそのときどきの電流Jからべース電流記憶手段8に記憶されたベース電流値Jbを減じた値を算出して電流変化量△J(=J−Jb)として出力する。故障電流判定手段10は、上記電流変化量△Jが事前に設定された故障判定値K2を超えた場合に故障電流信号としてのオン信号を出力する。
【0026】
極性判定手段11は、電流急変判定手段7がオン信号を出力したときに、すなわち電流が急増し始めたときにCT4により検出される電流Jが零あるいは正方向で零よりも大きい場合に、電車は力行中であると判定して正方向極性信号としてのオン信号を出力する。回生中電流急変判定手段12は、電流急変判定手段7からオン信号が出されており、かつ上記極性判定手段11からはオン信号が発信されていないときに、回生中の電流の急変であると判定して回生中電流急変信号としてのオン信号を発する。この回生中電流急変判定手段12からのオン信号は、リセットされるまで保持される。
【0027】
事故判定手段13は、電流急変判定手段7からのオン信号と故障電流判定手段10のオン信号とが発信されており、かつ回生中電流急変判定手段12からオン信号が発信されていないときに、事故と判定する。回生中電流急変判定手段12からオン信号が発信されている場合は、回生失効による電流急増であるので、これを事故と誤判定しないようにするためである。
すなわち、事故判定手段13は、次の三つの条件がともに成立するときに、事故と判定する。
D(=dJ/dt)>K1(電流急変判定値K1を超える) (1)
△J(=J−Jb)>K2(故障判定値K2を超える) (2)
J>=0(回生失効現象によるものではない) (3)
【0028】
回生失効分別手段14は、電流急変判定手段7からオン信号が発信された後、回生失効現象が継続している期間である所定の時間(例えば、300ms)を経過した後に上記回生中電流急変判定手段12のオン信号をリセットし、かつ、直流き電線3の短絡故障を判定するために一定期間だけオン信号を出力する。
【0029】
回生線路側事故判定手段15は、故障電流判定手段10と極性判定手段11の両方がオン信号を発信しており、かつ回生失効分別手段14からオン信号が出されている場合に事故と判定する。このように、電流急変開始時の電流値が負の場合は、回生失効現象による電流急変に基づく誤動作を防止するため、回生失効現象が継続している期間は故障判定をせず、回生失効現象と短絡現象との分別が可能な時間である所定の時間が経過してから回生失効分別手段14からオン信号を発して回生線路側事故判定手段15により故障を判定するようにしている。
【0030】
OR回路16は、事故判定手段13または回生線路側事故判定手段15の何れかがオン信号を出力した場合にオン信号を出力する。トリップ指令出力部18は、OR回路16から信号線W2を介してオン信号を受けて、短絡事故が発生した直流き電線に設けられた遮断器2(図1)にトリップ指令を出力する。
【0031】
以上の動作を要約してフローチャートにまとめると、図3に示すようになり、回生中でないことを条件に事故を判定するステップS1〜S17と、回生中である場合は所定の時間が経過してから再び事故かどうかを判定するステップS18〜S22とになる。なお、フローチャートでは、処理が直列に行われるように表しているが、上述のように多くの部分で並列処理が行われる。
【0032】
以上のように、この実施の形態によれば、ノッチ切換による電流増加と故障電流による電流増加を区別して高速に事故を判定して、遮断器を動作させることができる。これにより、時間の経過とともに増大する故障電流を遮断不能になる前に遮断することができ、変電所機器の損傷など二次被害の拡大を防止できる。また、回生失効現象による誤動作も防止でき、信頼性の高い直流電流継電装置を得ることができる。
【0033】
実施の形態2.
図4、図5は、この発明の他の実施の形態である直流電流保護継電装置を示すものであり、図4は全体構成を示す全体構成図、図5は処理判定部の構成図である。図4において、27は処理判定部であり、その詳細構成を図5に示す。図5において、20は回生線路側故障電流判定手段であり、CT4で検出され、A/D変換手段5にてA/D変換された電流Jが、予め定められた値K3を超えた場合に回生線路側故障電流信号としてのオン信号を出力する。
【0034】
21は重短絡故障判定手段であり、回生線路側故障電流判定手段20のオン信号と、回生中電流急変判定手段12のオン信号と、極性判定手段11のオン信号が全て出されている場合に、事故と判定してオン信号を発信する。すなわち、回生中に回生き電線(線路)側で重短絡事故が発生すると、電流急変判定手段7がまずこれを検出し、回生中電流急変判定手段12が動作する。少し遅れて、短絡電流のために電流の方向が逆転し正方向の電流が流れ極性判定手段11が動作し、電流の増大とともに回生線路側故障電流判定手段20が動作して、これらの条件が全て揃うと、重短絡故障判定手段21が回生中の事故と判定する。
【0035】
そして、OR回路16は、事故判定手段13、回生線路側事故判定手段15及び重短絡故障判定手段21のいずれか一つがオン信号を出力した場合にオン信号を出力する。その他の構成については、図1に示した実施の形態1と同様のものであるので、相当するものに同じ符号を付して説明を省略する。
【0036】
この実施の形態によれば、回生線路側故障電流判定手段20及び重短絡故障判定手段21を設け、回生線路側で電流急変が発生した場合に検出電流値が事前の設定値である所定値K3を超えたとき回生線路側の事故であると判定するようにしたので、回生失効現象か事故かを分別するために設けている所定の時間中に発生した回生線路側の重短絡故障を検出して、保護が可能となる。
【0037】
実施の形態3.
図6は、さらにこの発明の他の実施の形態である直流電流保護継電装置の全体構成を示す全体構成図である。図6において、31は高調波フィルタである。高調波フィルタ31は、直流き電線3に発生する6次の整数倍の高調波を低減するものである。A/D変換手段5の出力は、高調波フィルタ31を介して処理変換部27に入力される。なお、CT4とA/D変換部5と高調波フィルタ31とにより、この発明における電流検出手段を構成している。その他の構成については、図1に示した実施の形態1と同様のものであるので、相当するものに同じ符号を付して説明を省略する。
【0038】
この実施の形態によれば、直流き電回線3に発生する6次の整数倍の高調波を低減することにより、事故であると誤って検出することを防止することができ、信頼性を向上させることができる。なお、高調波フィルタはA/D変換手段5の入力側に設けることもできる。
【0039】
実施の形態4.
図7、図8は、さらにこの発明の他の実施の形態である直流電流保護継電装置を示すものであり、図7は全体構成を示す全体構成図、図8は処理判定部の構成図である。図7において、47は処理判定部であり、その詳細構成を図8に示す。そして、この実施の形態においては、A/D変換部5、高調波フィルタ31、処理判定部47及びトリップ指令出力部18にて、直流電流保護継電装置51が構成されている。直流母線1から回線F1〜F4を介して、電車線の互いに電気的に分離されたセクションに電力が供給される。直流電流保護継電装置51は、各回線F1〜F4にそれぞれ設けられ、互いに信号線W11〜W14にて接続されている。
【0040】
図8において、40はセクション通過判定手段であり、微分演算手段6の出力値Dが電流急減判定値(−M)よりさらにマイナスになった場合に、電車がセクションを通過したと判定し、微分演算手段6の出力値Dに事前に設定したセクション補償率Sを乗じたセクション補償値Z(=D×S)を、例えば対象回線F1に設けられた直流電流保護継電装置51の場合Z1を、信号線W11を介して出力する。
【0041】
他の回線F2〜F4に設けられた直流電流保護継電装置51も同様に、セクション通過判定手段40は、微分演算手段6の出力値Dが電流急減判定値(−M)よりさらにマイナスになった場合に、電車がセクションを通過したと判定し、微分演算手段6の出力値Dに事前に設定したセクション補償率Sを乗じたセクション補償値Z(=D×S)を、それぞれZ2〜Z4として、信号線W12〜W14を介して出力する。
【0042】
41はセクション補償切換手段である。例えば、電車が回線F2を介して給電を受けているセクションから回線F1を介して給電を受けているセクションへ進入してきた場合、回線F1に設けられた直流電流保護継電装置51は、自己の微分演算手段6の出力値D(dJ/dt)に、回線F2に設けられた直流電流保護継電装置51のセクション通過判定手段40の出力Z2を加算するように切換えておく。対象回線は、セクション補償切換手段41にて、任意に選択できる。そして、加算された電流の変化率を電流急変判定手段7にて判定する。以降の動作については、図5に示した処理判定部27と同様である。
【0043】
大電流を消費しながら移動する電車が、セクションを通過する場合、各回線毎の電流変化量により事故判定を行う直流電流継電装置は、自回線に電車が進入した場合、事故と判定し不要動作を行う可能性がある。この実施の形態によれば、自回線に設けられた直流電流保護継電装置の微分演算手段6の出力値Dが電流急減判定値(−M)よりさらにマイナスになった場合、セクション通過判定手段40が自回線のセクションの電車負荷が他回線のセクションへ移動したセクション通過現象であると判定し、セクション補償値Z(Z1〜Z4)を出力する。
【0044】
セクション補償切換手段41は、事前に設定した対象回線の組合せによりセクション判定通過手段40から出力されるセクション補償値Zを自回線に設けられた直流電流保護継電装置の微分演算手段6の出力値D(dJ/dt)に加算する。本セクション補償切換手段41により、隣接回線から進入してきた電車の負荷による電流増加量を隣接回線に設けられた直流電流保護継電装置のセクション判定通過手段40が出力するセクション補償値Zにより相殺することが可能となり、セクション通過現象による誤動作を防止でき、信頼性を向上させることができる。
【0045】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0046】
この発明に係る直流電流継電装置は、電気車に電力を供給する直流き電線の電流を検出する電流検出手段と、検出された電流を微分して電流変化率を求める微分演算手段と、電流変化率が所定値を超えたときに電流急変信号を発する電流急変判定手段と、電流急変信号が発信されたときの電流をベース電流値として記憶するべース電流記憶手段と、べース電流値と電流の現在値との差を演算する加算手段と、加算手段の出力が所定の値を超えたときに故障電流信号を発する故障電流判定手段と、電流急変信号が発信されたときの電流が零以上のときに正方向極性信号を発する極性判定手段と、電流急変信号が発信されたときに正方向極性信号が発信されていなかった場合に回生中の電流急変であると判定し回生中電流急変信号の発信を継続する回生中電流急変判定手段と、電流急変信号及び故障電流信号が発信されていてかつ回生中電流急変信号が発信されていないとき事故と判定する事故判定手段とを備えたので、
短絡事故が発生すると、電流が急激に増加するので電流急変信号が発信され、電流急変信号が発信されたときの電流すなわちべース電流値からの電流の増加幅が所定の値を超えるので故障電流信号が発信される。電流急変信号が発信されたときに極性判定手段から信号が発信されていないときは、直流き電線に流れる電流がマイナス方向であり、当該電流の急増急変は回生失効によるものとして回生中電流急変信号が発信されるので、回生中電流急変信号が発信されている場合は、事故と判定しないようにして、回生失効による電流変化で誤動作をしないようにしている。これにより、事故を迅速かつ確実に判定でき、信頼性を向上させることができる。
【0047】
そして、回生中電流急変判定手段が回生中電流急変信号を発してから所定の時間後に故障電流信号及び正方向極性信号がともに発信されているとき事故と判定する回生線路側事故判定手段を設けたものであることを特徴とするので、
所定の時間後には回生失効現象が収まっているように所定の時間の長さを選べば、回生失効現象が収まっているのに故障電流信号及び正方向極性信号がともに発信されているときには事故と判定でき、回生失効による電流増加と事故による電流増加を区別でき、回生失効による誤動作を防止し、信頼性を向上させることができる。
【0048】
さらに、電流が予め定められた値を超えたとき回生線路側故障電流信号を発する回生線路側故障電流判定手段と、回生線路側故障電流信号と正方向極性信号と回生中電流急変信号とが発信されているとき重短絡故障と判定する重短絡故障判定手段とを設けたものであることを特徴とするので、
回生中の重短絡故障の場合は、電流急変判定手段がまずこれを検出し、回生中電流急変判定手段が動作する。少し遅れて、短絡電流のために電流の方向が逆転し正方向の電流が流れ極性判定手段が動作し、電流の増大して予め定められた値を超えると回生線路側故障電流判定手段が動作して、これらの条件が全て揃うと、重短絡故障判定手段が重短絡故障と判定することにより、迅速に事故を判定できる。
【0049】
また、回生中電流急変判定手段が回生中電流急変信号を発してから所定の時間後に故障電流信号及び正方向極性信号がともに発信されているとき事故と判定する回生線路側事故判定手段と、電流が予め定められた値を超えたとき回生線路側故障電流信号を発する回生線路側故障電流判定手段と、回生線路側故障電流信号と正方向極性信号と回生中電流急変信号とが発信されているとき重短絡故障と判定する重短絡故障判定手段とを設けたものであって、事故判定手段回生線路側が事故と判定したとき、回生線路側事故判定手段が事故と判定したとき、又は重短絡故障判定手段が重短絡故障と判定したとき、直流き電線に供給する電力を遮断するように指令を発する遮断指令発信手段を設けたものであることを特徴とするので、
事故を迅速かつ精度良く判定して電力を遮断するように指令を発することにより、時間の経過とともに事故電流が増加して遮断器が遮断不能に陥る前に遮断できるとともに事故の拡大を防止できる。
【0050】
そして、電流検出手段は、検出する電流中の高調波を除去する高調波フィルタを有するものであることを特徴とするので、
高調波の影響を受けて誤動作するのを防止して、信頼性を向上させることができる。
【0051】
さらに、直流き電線は複数あっておのおの電気的に区分された電気車線路のセクションに給電するものであり、直流電流継電装置は複数の直流き電線ごとに設けられ、セクション通過補償値出力手段とセクション通過補償手段とを設けたものであって、セクション通過補償値出力手段は微分演算手段が求めた電流変化率が所定の電流急減判定値を超える電流減少であるときに電流変化率に予め決められた補償率を乗じた補償値を出力し、セクション通過補償手段は微分演算手段が求めた電流変化率を複数の直流き電線のうちの事前に設定した対象となる直流き電線に設けられる直流電流継電装置のセクション通過補償値が出力する補償値により補償するものであることを特徴とするので、
セクション通過補償手段により電気車のセクション通過時の誤動作を防止して、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の一形態である直流電流保護継電装置の全体構成を示す全体構成図である。
【図2】図1の処理判定部の構成図である。
【図3】動作を要約して示すフローチャートである。
【図4】さらに、この発明の他の実施の形態である直流電流保護継電装置の全体構成を示す全体構成図である。
【図5】図4の処理判定部の構成図である。
【図6】さらに、この発明の他の実施の形態である直流電流保護継電装置の全体構成を示す全体構成図である。
【図7】さらに、この発明の他の実施の形態である直流電流保護継電装置の全体構成を示す全体構成図である。
【図8】図7の処理判定部の構成図である。
【図9】従来の直流電流保護継電装置の構成を示す構成図である。
【図10】従来の直流電流保護継電装置のCPU部の動作を説明するための説明図である。
【図11】電車の起動時のノッチ切換による直流き電線の負荷電流を示す波形図である。
【図12】直流き電線を流れる故障電流の波形を示す波形図である。
【図13】回生失効を説明するための説明図である。
【図14】回生失効時に直流き電線回路に発生する現象を説明するための説明図である。
【符号の説明】
1 直流母線、2 遮断器、3 直流き電線、4 CT、5 A/D変換部、
6 微分演算手段、7 電流急変判定手段、8 ベース電流記憶手段、
9 加算器、10 故障電流判定手段、11 極性判定手段、
12 回生中電流急変判定手段、13 事故判定手段、
14 回生失効分別手段、15 回生線路側事故判定手段、16 OR回路、
17 処理判定部、18 トリップ指令出力部、
20 回生線路側故障電流判定手段、21 重短絡故障判定手段、
27 処理判定部、31 高調波フィルタ、40 セクション通過判定手段、
41 セクション補償切換手段、47 処理判定部、
51 直流電流保護継電装置。
【発明の属する技術分野】
この発明は、電鉄用変電所等の直流き電回路保護のために用いられる直流電流継電装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、直流き電回路の短絡保護のための直流電流保護継電装置、例えば特開昭63−90450号公報に示されるような直流電流継電装置は、故障電流発生時の電流増加分を検出し、一定値以上の電流増加変化が一定時間継続した場合に遮断器を動作させる。このようにすることにより、故障電流発生時の電流増加変化と電車ノッチアップ時(加速時)の電流増加変化が接近している場合でも、故障電流と比べて継続時間が短いノッチアップによる電流変化を分離することができ、小さな故障電流に対しても直流き電回路を保護することが可能となる。
【0003】
以下、このような従来の直流電流保護継電装置を、図9〜図14によりさらに詳細に説明する。図9は、従来の直流電流保護継電装置の構成を示す構成図、図10は直流電流保護継電装置のCPU部の動作を説明するための説明図である。図11は、電車の起動時のノッチ切換による直流き電線の負荷電流を示す波形図である。図12は、直流き電線を流れる故障電流の波形を示す波形図、図13は回生失効を説明するための説明図である。図14は、回生失効時に直流き電線回路に発生する現象を説明するための説明図である。
【0004】
図9において、1は直流母線、2は遮断器、3は直流き電線である。4はCT(直流変流器)であり、直流き電線3を流れる電流を計測する。51はA/D変換部であり、CT4からのアナログ入力をデジタル値に変換する。52はCPU部(中央演算部)であり、A/D変換部51から信号線W1を介して出力されたデジタル値に基づき所定の演算を行い、事故の判定を行う。53は出力部であり、信号線W2を介して入力されたCPU部52の判定結果に基づき遮断器2にトリップ指令を出力する。
【0005】
直流き電線3の負荷電流は、電車の起動時においてノッチ切換等により図11に示す波形の通り、ノッチ切換に応じて階段状に変化する。一方、故障電流は図12に示す波形の通り単調に増加する。電車負荷の増大に伴い負荷電流も増大し、故障電流と負荷電流の大きさに差が無くなり、また、逆に負荷電流の方が故障電流より増大するケースがある。
【0006】
そこで、図9に示す従来の直流電流継電装置におけるCPU52は、負荷電流が電車のノッチアップ等により急峻に立上り、一定値となる階段波形の特性を考慮して、図10に示すようなAND条件の判定を行う。すなわち、CT4にて検出された直流電流のレベル、つまりA/D変換部51から入力される電流値がある値Kより大きいという第1の条件と、一定値以上の電流増加変化が一定時間継続するという第2の条件とのAND条件により、事故判別を実施し、事故と判別した場合に出力部3が遮断器2にトリップ指令を出力するものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の直流電流継電装置は以上のように構成されており、一定値以上の電流増加変化が一定時間継続することを条件にして事故判別を行っているため、必ず上記一定時間分だけ事故判別が遅れるという欠点があった。直流き電線の重短絡事故の場合は、直流き電線に大電流が流れ、より高速に遮断しなければ、遮断器の遮断限界を超え事故除去が難しくなるばかりでなく、変電所機器の破壊に至るおそれがある。
【0008】
また、近年、電力回生車両が増え、一つの電車区間を走行している回生車が回生制動中に他の電車である負荷車がノッチオフしたときに生じる回生失効現象によって、従来の直流電流保護継電装置では不要動作する欠点があった。ここで、回生失効現象について簡単に説明する。図14は、回生失効時に直流き電回路で発生する現象を説明するための説明図である。
【0009】
図14における直流き電線回路では、図示しない整流器により全波整流された電力が、母線Mに供給され、さらに遮断器CBlを設けた直流き電線61から電車線71と、遮断器CB2を設けた直流き電線62から電車線72と、遮断器CB3を設けた直流き電線63から電車線73と、遮断器CB4を設けた直流き電線64から電車線74とに、それぞれ電力供給が行われている。そして、電車Aは電車線73より電力供給を受けて力行し、電車Bは電車線72より電力供給を受けて力行している。
【0010】
いま、電車Aが回生車になったときは、電車Aから矢印aの方向に、電車線73→直流き電線63→母線M→直流き電線62→電車線72を経て、力行中の電車Bに対して回生電力の供給が行われる。この結果、電車Bは、回生電力を消費する負荷車となる。次に、この状態において、電車Bがノッチオフすると、回生電力を消費する負荷が急になくなってしまい、電車Aから送出されていた回生電流は零となる。これを回生失効という。
【0011】
このように、回生電流が零になると、回生車であった電車Aの回生電圧は急上昇し、車内に設けた図示しない過電圧継電器が動作して、これも図示しない過電圧抑制抵抗を通し主回路を短絡させる。この結果、図13の曲線Rのように、直流き電線63における直流電流は、電車Aが回生車の状態では負方向の回生電流−J0が流れているが、回生失効状態になると回生電流が遮断されて+△J1の電流増加が発生する。
【0012】
さらに、車内に設けた過電圧抑制抵抗が主回路に挿入されることにより短絡電流が発生し、+△J2の電流増加が発生する。このために、回生失効による電流増加と故障電流による電流増加が区別できないので、故障と判定し、不要に動作するという問題点があった。なお、回生車が存在する直流き電線での軽短絡故障の場合は、電流は図13の一点鎖線で示す曲線Sのように変化する。
【0013】
この発明は、上記のような問題点を解決して、回生失効による電流増加と故障電流による電流増加とを区別して高速に事故を判定でき、また回生失効のときや、電気車がセクションを通過するときに誤って事故と判定するのを防止でき、信頼性の高い直流電流保護継電装置を得ることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の直流電流継電装置においては、電気車に電力を供給する直流き電線の電流を検出する電流検出手段と、検出された電流を微分して電流変化率を求める微分演算手段と、電流変化率が所定値を超えたときに電流急変信号を発する電流急変判定手段と、電流急変信号が発信されたときの電流をベース電流値として記憶するべース電流記憶手段と、べース電流値と電流の現在値との差を演算する加算手段と、加算手段の出力が所定の値を超えたときに故障電流信号を発する故障電流判定手段と、電流急変信号が発信されたときの電流が零以上のときに正方向極性信号を発する極性判定手段と、電流急変信号が発信されたときに正方向極性信号が発信されていなかった場合に回生中の電流急変であると判定し回生中電流急変信号の発信を継続する回生中電流急変判定手段と、電流急変信号及び故障電流信号が発信されていてかつ回生中電流急変信号が発信されていないとき事故と判定する事故判定手段とを備えたものである。
短絡事故が発生すると、電流が急激に増加するので電流急変信号が発信され、電流急変信号が発信されたときの電流すなわちべース電流値からの電流の増加幅が所定の値を超えるので故障電流信号が発信される。電流急変信号が発信されたときに極性判定手段から信号が発信されていないときは、直流き電線に流れる電流がマイナス方向であり、当該電流の急増急変は回生失効によるものとして回生中電流急変信号が発信されるので、回生中電流急変信号が発信されている場合は、事故と判定しないようにして、回生失効による電流変化で誤動作をしないようにしている。これにより、事故を迅速かつ確実に判定できる。
【0015】
そして、回生中電流急変判定手段が回生中電流急変信号を発してから所定の時間後に故障電流信号及び正方向極性信号がともに発信されているとき事故と判定する回生線路側事故判定手段を設けたものであることを特徴とする。
所定の時間後には回生失効現象が収まっているように所定の時間の長さを選べば、回生失効現象が収まっているのに故障電流信号及び正方向極性信号がともに発信されているときには事故と判定でき、回生失効による電流増加と事故による電流増加を確実に区別でき、回生失効による誤動作を防止できる。
【0016】
さらに、電流が予め定められた値を超えたとき回生線路側故障電流信号を発する回生線路側故障電流判定手段と、回生線路側故障電流信号と正方向極性信号と回生中電流急変信号とが発信されているとき重短絡故障と判定する重短絡故障判定手段とを設けたものであることを特徴とする。
回生中の重短絡故障の場合は、電流急変判定手段がまずこれを検出し、回生中電流急変判定手段が動作する。少し遅れて、短絡電流のために電流の方向が逆転し正方向の電流が流れ極性判定手段が動作し、電流の増大して予め定められた値を超えると回生線路側故障電流判定手段が動作して、これらの条件が全て揃うと、重短絡故障判定手段が重短絡故障と判定することにより、迅速に事故を判定できる。
【0017】
また、回生中電流急変判定手段が回生中電流急変信号を発してから所定の時間後に故障電流信号及び正方向極性信号がともに発信されているとき事故と判定する回生線路側事故判定手段と、電流が予め定められた値を超えたとき回生線路側故障電流信号を発する回生線路側故障電流判定手段と、回生線路側故障電流信号と正方向極性信号と回生中電流急変信号とが発信されているとき重短絡故障と判定する重短絡故障判定手段とを設けたものであって、事故判定手段回生線路側が事故と判定したとき、回生線路側事故判定手段が事故と判定したとき、又は重短絡故障判定手段が重短絡故障と判定したとき、直流き電線に供給する電力を遮断するように指令を発する遮断指令発信手段を設けたものであることを特徴とする。
事故を迅速かつ精度良く判定して電力を遮断するように指令を発することにより、時間の経過とともに事故電流が増加して遮断器が遮断不能に陥る前に遮断できるとともに事故の拡大を防止できる。
【0018】
そして、電流検出手段は検出する電流中の高調波を除去する高調波フィルタを有するものであることを特徴とする。
高調波の影響を受けて誤動作するのを防止できる。
【0019】
さらに、直流き電線は複数あっておのおの電気的に区分された電気車線路のセクションに給電するものであり、直流電流継電装置は複数の直流き電線ごとに設けられ、セクション通過補償値出力手段とセクション通過補償手段とを設けたものであって、セクション通過補償値出力手段は微分演算手段が求めた電流変化率が所定の電流急減判定値を超える電流減少であるときに電流変化率に予め決められた補償率を乗じた補償値を出力し、セクション通過補償手段は微分演算手段が求めた電流変化率を複数の直流き電線のうちの事前に設定した対象となる直流き電線に設けられる直流電流継電装置のセクション通過補償値が出力する補償値により補償するものであることを特徴とする。
セクション通過補償手段により電気車のセクション通過時の誤動作を防止できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1〜図3は、この発明の実施の一形態である直流電流保護継電装置を示すものであり、図1は全体構成を示す全体構成図、図2は処理判定部の構成図、図3は動作を要約して示すフローチャートである。図1において、1は直流母線、2は遮断器、3は直流き電線である。4はCT(直流変流器)であり、直流き電線3を流れる電流を計測する。5はA/D変換部であり、CT4からのアナログ入力をデジタル値に変換する。17は処理判定部(詳細後述)であり、信号線W1を介してA/D変換部からデジタル信号が入力される。
【0021】
18はトリップ指令出力部であり、処理判定部17から信号線W2を介して信号を受けて遮断器2にトリップ指令を出力する。次に、処理判定部17の詳細構成を説明する。処理判定部17は、図2に示すように構成されている。6は微分演算手段であり、A/D変換部5から出力された電流Jを微分して電流変化率を求める。7は電流急変判定手段、8はベース電流記憶手段、9は加算器である。10は故障電流判定手段、11は極性判定手段、12は回生中電流急変判定手段である。
【0022】
13は事故判定手段であり、電流急変判定手段7と、故障電流判定手段10と、回生中電流急変判定手段12とから発信されるオン信号に基づき直流き電回路の事故を判定する。14は回生失効分別手段、15は回生線路側事故判定手段、16はOR回路である。処理判定部17は、以上のように構成されている。この処理判定部17は、マイクロコンピュータにて、実現することもできる。
なお、CT4とA/D変換部5とが、この発明における電流検出手段である。また、OR回路16とトリップ指令出力部18とがこの発明における遮断指令発信手段である。
【0023】
次に、動作について説明する。
直流き電線3の負荷電流は、電車の起動時においてノッチ切換等により図11に示すように階段状に増加する。一方、故障電流は図12に示す波形の通り、単純に増加する。電車負荷の増大に伴い負荷電流も増大し、故障電流と負荷電流の大きさに差が無くなり、また、逆に負荷電流の方が故障電流より増大するケースがある。
【0024】
そこで、処理判定部17は、負荷電流が電車のノッチアップ等により急峻に立上り、一定値となる階段状となる波形の特性を考慮し、CT4よりA/D変換部5、信号線W1を経て入力された電流値を微分演算手段6により微分演算を実施する。すなわち、CT4で計測された直流き電線3を流れる電流Jは、A/D変換部5にてデジタル値に変換され、微分演算手段6に入力されて微分されて電流Jの微分値D(=dJ/dt)、すなわち電流変化率Dが算出される。電流急変判定手段7は、微分演算手段6から出力された微分値Dの値が、予め設定された所定値である電流急変判定値Klを超えた場合に電流急変信号としてのオン信号を出力する。
【0025】
ベース電流記憶手段8は、電流急変判定手段7がオン信号を出力したときの電流値をベース電流値Jbとして記憶する。加算器9は、CT4により検出されるそのときどきの電流Jからべース電流記憶手段8に記憶されたベース電流値Jbを減じた値を算出して電流変化量△J(=J−Jb)として出力する。故障電流判定手段10は、上記電流変化量△Jが事前に設定された故障判定値K2を超えた場合に故障電流信号としてのオン信号を出力する。
【0026】
極性判定手段11は、電流急変判定手段7がオン信号を出力したときに、すなわち電流が急増し始めたときにCT4により検出される電流Jが零あるいは正方向で零よりも大きい場合に、電車は力行中であると判定して正方向極性信号としてのオン信号を出力する。回生中電流急変判定手段12は、電流急変判定手段7からオン信号が出されており、かつ上記極性判定手段11からはオン信号が発信されていないときに、回生中の電流の急変であると判定して回生中電流急変信号としてのオン信号を発する。この回生中電流急変判定手段12からのオン信号は、リセットされるまで保持される。
【0027】
事故判定手段13は、電流急変判定手段7からのオン信号と故障電流判定手段10のオン信号とが発信されており、かつ回生中電流急変判定手段12からオン信号が発信されていないときに、事故と判定する。回生中電流急変判定手段12からオン信号が発信されている場合は、回生失効による電流急増であるので、これを事故と誤判定しないようにするためである。
すなわち、事故判定手段13は、次の三つの条件がともに成立するときに、事故と判定する。
D(=dJ/dt)>K1(電流急変判定値K1を超える) (1)
△J(=J−Jb)>K2(故障判定値K2を超える) (2)
J>=0(回生失効現象によるものではない) (3)
【0028】
回生失効分別手段14は、電流急変判定手段7からオン信号が発信された後、回生失効現象が継続している期間である所定の時間(例えば、300ms)を経過した後に上記回生中電流急変判定手段12のオン信号をリセットし、かつ、直流き電線3の短絡故障を判定するために一定期間だけオン信号を出力する。
【0029】
回生線路側事故判定手段15は、故障電流判定手段10と極性判定手段11の両方がオン信号を発信しており、かつ回生失効分別手段14からオン信号が出されている場合に事故と判定する。このように、電流急変開始時の電流値が負の場合は、回生失効現象による電流急変に基づく誤動作を防止するため、回生失効現象が継続している期間は故障判定をせず、回生失効現象と短絡現象との分別が可能な時間である所定の時間が経過してから回生失効分別手段14からオン信号を発して回生線路側事故判定手段15により故障を判定するようにしている。
【0030】
OR回路16は、事故判定手段13または回生線路側事故判定手段15の何れかがオン信号を出力した場合にオン信号を出力する。トリップ指令出力部18は、OR回路16から信号線W2を介してオン信号を受けて、短絡事故が発生した直流き電線に設けられた遮断器2(図1)にトリップ指令を出力する。
【0031】
以上の動作を要約してフローチャートにまとめると、図3に示すようになり、回生中でないことを条件に事故を判定するステップS1〜S17と、回生中である場合は所定の時間が経過してから再び事故かどうかを判定するステップS18〜S22とになる。なお、フローチャートでは、処理が直列に行われるように表しているが、上述のように多くの部分で並列処理が行われる。
【0032】
以上のように、この実施の形態によれば、ノッチ切換による電流増加と故障電流による電流増加を区別して高速に事故を判定して、遮断器を動作させることができる。これにより、時間の経過とともに増大する故障電流を遮断不能になる前に遮断することができ、変電所機器の損傷など二次被害の拡大を防止できる。また、回生失効現象による誤動作も防止でき、信頼性の高い直流電流継電装置を得ることができる。
【0033】
実施の形態2.
図4、図5は、この発明の他の実施の形態である直流電流保護継電装置を示すものであり、図4は全体構成を示す全体構成図、図5は処理判定部の構成図である。図4において、27は処理判定部であり、その詳細構成を図5に示す。図5において、20は回生線路側故障電流判定手段であり、CT4で検出され、A/D変換手段5にてA/D変換された電流Jが、予め定められた値K3を超えた場合に回生線路側故障電流信号としてのオン信号を出力する。
【0034】
21は重短絡故障判定手段であり、回生線路側故障電流判定手段20のオン信号と、回生中電流急変判定手段12のオン信号と、極性判定手段11のオン信号が全て出されている場合に、事故と判定してオン信号を発信する。すなわち、回生中に回生き電線(線路)側で重短絡事故が発生すると、電流急変判定手段7がまずこれを検出し、回生中電流急変判定手段12が動作する。少し遅れて、短絡電流のために電流の方向が逆転し正方向の電流が流れ極性判定手段11が動作し、電流の増大とともに回生線路側故障電流判定手段20が動作して、これらの条件が全て揃うと、重短絡故障判定手段21が回生中の事故と判定する。
【0035】
そして、OR回路16は、事故判定手段13、回生線路側事故判定手段15及び重短絡故障判定手段21のいずれか一つがオン信号を出力した場合にオン信号を出力する。その他の構成については、図1に示した実施の形態1と同様のものであるので、相当するものに同じ符号を付して説明を省略する。
【0036】
この実施の形態によれば、回生線路側故障電流判定手段20及び重短絡故障判定手段21を設け、回生線路側で電流急変が発生した場合に検出電流値が事前の設定値である所定値K3を超えたとき回生線路側の事故であると判定するようにしたので、回生失効現象か事故かを分別するために設けている所定の時間中に発生した回生線路側の重短絡故障を検出して、保護が可能となる。
【0037】
実施の形態3.
図6は、さらにこの発明の他の実施の形態である直流電流保護継電装置の全体構成を示す全体構成図である。図6において、31は高調波フィルタである。高調波フィルタ31は、直流き電線3に発生する6次の整数倍の高調波を低減するものである。A/D変換手段5の出力は、高調波フィルタ31を介して処理変換部27に入力される。なお、CT4とA/D変換部5と高調波フィルタ31とにより、この発明における電流検出手段を構成している。その他の構成については、図1に示した実施の形態1と同様のものであるので、相当するものに同じ符号を付して説明を省略する。
【0038】
この実施の形態によれば、直流き電回線3に発生する6次の整数倍の高調波を低減することにより、事故であると誤って検出することを防止することができ、信頼性を向上させることができる。なお、高調波フィルタはA/D変換手段5の入力側に設けることもできる。
【0039】
実施の形態4.
図7、図8は、さらにこの発明の他の実施の形態である直流電流保護継電装置を示すものであり、図7は全体構成を示す全体構成図、図8は処理判定部の構成図である。図7において、47は処理判定部であり、その詳細構成を図8に示す。そして、この実施の形態においては、A/D変換部5、高調波フィルタ31、処理判定部47及びトリップ指令出力部18にて、直流電流保護継電装置51が構成されている。直流母線1から回線F1〜F4を介して、電車線の互いに電気的に分離されたセクションに電力が供給される。直流電流保護継電装置51は、各回線F1〜F4にそれぞれ設けられ、互いに信号線W11〜W14にて接続されている。
【0040】
図8において、40はセクション通過判定手段であり、微分演算手段6の出力値Dが電流急減判定値(−M)よりさらにマイナスになった場合に、電車がセクションを通過したと判定し、微分演算手段6の出力値Dに事前に設定したセクション補償率Sを乗じたセクション補償値Z(=D×S)を、例えば対象回線F1に設けられた直流電流保護継電装置51の場合Z1を、信号線W11を介して出力する。
【0041】
他の回線F2〜F4に設けられた直流電流保護継電装置51も同様に、セクション通過判定手段40は、微分演算手段6の出力値Dが電流急減判定値(−M)よりさらにマイナスになった場合に、電車がセクションを通過したと判定し、微分演算手段6の出力値Dに事前に設定したセクション補償率Sを乗じたセクション補償値Z(=D×S)を、それぞれZ2〜Z4として、信号線W12〜W14を介して出力する。
【0042】
41はセクション補償切換手段である。例えば、電車が回線F2を介して給電を受けているセクションから回線F1を介して給電を受けているセクションへ進入してきた場合、回線F1に設けられた直流電流保護継電装置51は、自己の微分演算手段6の出力値D(dJ/dt)に、回線F2に設けられた直流電流保護継電装置51のセクション通過判定手段40の出力Z2を加算するように切換えておく。対象回線は、セクション補償切換手段41にて、任意に選択できる。そして、加算された電流の変化率を電流急変判定手段7にて判定する。以降の動作については、図5に示した処理判定部27と同様である。
【0043】
大電流を消費しながら移動する電車が、セクションを通過する場合、各回線毎の電流変化量により事故判定を行う直流電流継電装置は、自回線に電車が進入した場合、事故と判定し不要動作を行う可能性がある。この実施の形態によれば、自回線に設けられた直流電流保護継電装置の微分演算手段6の出力値Dが電流急減判定値(−M)よりさらにマイナスになった場合、セクション通過判定手段40が自回線のセクションの電車負荷が他回線のセクションへ移動したセクション通過現象であると判定し、セクション補償値Z(Z1〜Z4)を出力する。
【0044】
セクション補償切換手段41は、事前に設定した対象回線の組合せによりセクション判定通過手段40から出力されるセクション補償値Zを自回線に設けられた直流電流保護継電装置の微分演算手段6の出力値D(dJ/dt)に加算する。本セクション補償切換手段41により、隣接回線から進入してきた電車の負荷による電流増加量を隣接回線に設けられた直流電流保護継電装置のセクション判定通過手段40が出力するセクション補償値Zにより相殺することが可能となり、セクション通過現象による誤動作を防止でき、信頼性を向上させることができる。
【0045】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0046】
この発明に係る直流電流継電装置は、電気車に電力を供給する直流き電線の電流を検出する電流検出手段と、検出された電流を微分して電流変化率を求める微分演算手段と、電流変化率が所定値を超えたときに電流急変信号を発する電流急変判定手段と、電流急変信号が発信されたときの電流をベース電流値として記憶するべース電流記憶手段と、べース電流値と電流の現在値との差を演算する加算手段と、加算手段の出力が所定の値を超えたときに故障電流信号を発する故障電流判定手段と、電流急変信号が発信されたときの電流が零以上のときに正方向極性信号を発する極性判定手段と、電流急変信号が発信されたときに正方向極性信号が発信されていなかった場合に回生中の電流急変であると判定し回生中電流急変信号の発信を継続する回生中電流急変判定手段と、電流急変信号及び故障電流信号が発信されていてかつ回生中電流急変信号が発信されていないとき事故と判定する事故判定手段とを備えたので、
短絡事故が発生すると、電流が急激に増加するので電流急変信号が発信され、電流急変信号が発信されたときの電流すなわちべース電流値からの電流の増加幅が所定の値を超えるので故障電流信号が発信される。電流急変信号が発信されたときに極性判定手段から信号が発信されていないときは、直流き電線に流れる電流がマイナス方向であり、当該電流の急増急変は回生失効によるものとして回生中電流急変信号が発信されるので、回生中電流急変信号が発信されている場合は、事故と判定しないようにして、回生失効による電流変化で誤動作をしないようにしている。これにより、事故を迅速かつ確実に判定でき、信頼性を向上させることができる。
【0047】
そして、回生中電流急変判定手段が回生中電流急変信号を発してから所定の時間後に故障電流信号及び正方向極性信号がともに発信されているとき事故と判定する回生線路側事故判定手段を設けたものであることを特徴とするので、
所定の時間後には回生失効現象が収まっているように所定の時間の長さを選べば、回生失効現象が収まっているのに故障電流信号及び正方向極性信号がともに発信されているときには事故と判定でき、回生失効による電流増加と事故による電流増加を区別でき、回生失効による誤動作を防止し、信頼性を向上させることができる。
【0048】
さらに、電流が予め定められた値を超えたとき回生線路側故障電流信号を発する回生線路側故障電流判定手段と、回生線路側故障電流信号と正方向極性信号と回生中電流急変信号とが発信されているとき重短絡故障と判定する重短絡故障判定手段とを設けたものであることを特徴とするので、
回生中の重短絡故障の場合は、電流急変判定手段がまずこれを検出し、回生中電流急変判定手段が動作する。少し遅れて、短絡電流のために電流の方向が逆転し正方向の電流が流れ極性判定手段が動作し、電流の増大して予め定められた値を超えると回生線路側故障電流判定手段が動作して、これらの条件が全て揃うと、重短絡故障判定手段が重短絡故障と判定することにより、迅速に事故を判定できる。
【0049】
また、回生中電流急変判定手段が回生中電流急変信号を発してから所定の時間後に故障電流信号及び正方向極性信号がともに発信されているとき事故と判定する回生線路側事故判定手段と、電流が予め定められた値を超えたとき回生線路側故障電流信号を発する回生線路側故障電流判定手段と、回生線路側故障電流信号と正方向極性信号と回生中電流急変信号とが発信されているとき重短絡故障と判定する重短絡故障判定手段とを設けたものであって、事故判定手段回生線路側が事故と判定したとき、回生線路側事故判定手段が事故と判定したとき、又は重短絡故障判定手段が重短絡故障と判定したとき、直流き電線に供給する電力を遮断するように指令を発する遮断指令発信手段を設けたものであることを特徴とするので、
事故を迅速かつ精度良く判定して電力を遮断するように指令を発することにより、時間の経過とともに事故電流が増加して遮断器が遮断不能に陥る前に遮断できるとともに事故の拡大を防止できる。
【0050】
そして、電流検出手段は、検出する電流中の高調波を除去する高調波フィルタを有するものであることを特徴とするので、
高調波の影響を受けて誤動作するのを防止して、信頼性を向上させることができる。
【0051】
さらに、直流き電線は複数あっておのおの電気的に区分された電気車線路のセクションに給電するものであり、直流電流継電装置は複数の直流き電線ごとに設けられ、セクション通過補償値出力手段とセクション通過補償手段とを設けたものであって、セクション通過補償値出力手段は微分演算手段が求めた電流変化率が所定の電流急減判定値を超える電流減少であるときに電流変化率に予め決められた補償率を乗じた補償値を出力し、セクション通過補償手段は微分演算手段が求めた電流変化率を複数の直流き電線のうちの事前に設定した対象となる直流き電線に設けられる直流電流継電装置のセクション通過補償値が出力する補償値により補償するものであることを特徴とするので、
セクション通過補償手段により電気車のセクション通過時の誤動作を防止して、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の一形態である直流電流保護継電装置の全体構成を示す全体構成図である。
【図2】図1の処理判定部の構成図である。
【図3】動作を要約して示すフローチャートである。
【図4】さらに、この発明の他の実施の形態である直流電流保護継電装置の全体構成を示す全体構成図である。
【図5】図4の処理判定部の構成図である。
【図6】さらに、この発明の他の実施の形態である直流電流保護継電装置の全体構成を示す全体構成図である。
【図7】さらに、この発明の他の実施の形態である直流電流保護継電装置の全体構成を示す全体構成図である。
【図8】図7の処理判定部の構成図である。
【図9】従来の直流電流保護継電装置の構成を示す構成図である。
【図10】従来の直流電流保護継電装置のCPU部の動作を説明するための説明図である。
【図11】電車の起動時のノッチ切換による直流き電線の負荷電流を示す波形図である。
【図12】直流き電線を流れる故障電流の波形を示す波形図である。
【図13】回生失効を説明するための説明図である。
【図14】回生失効時に直流き電線回路に発生する現象を説明するための説明図である。
【符号の説明】
1 直流母線、2 遮断器、3 直流き電線、4 CT、5 A/D変換部、
6 微分演算手段、7 電流急変判定手段、8 ベース電流記憶手段、
9 加算器、10 故障電流判定手段、11 極性判定手段、
12 回生中電流急変判定手段、13 事故判定手段、
14 回生失効分別手段、15 回生線路側事故判定手段、16 OR回路、
17 処理判定部、18 トリップ指令出力部、
20 回生線路側故障電流判定手段、21 重短絡故障判定手段、
27 処理判定部、31 高調波フィルタ、40 セクション通過判定手段、
41 セクション補償切換手段、47 処理判定部、
51 直流電流保護継電装置。
Claims (6)
- 電気車に電力を供給する直流き電線の電流を検出する電流検出手段と、上記検出された電流を微分して電流変化率を求める微分演算手段と、上記電流変化率が所定値を超えたときに電流急変信号を発する電流急変判定手段と、上記電流急変信号が発信されたときの上記電流をベース電流値として記憶するべース電流記憶手段と、上記べース電流値と上記電流の現在値との差を演算する加算手段と、上記加算手段の出力が所定の値を超えたときに故障電流信号を発する故障電流判定手段と、上記電流急変信号が発信されたときの上記電流が零以上のときに正方向極性信号を発する極性判定手段と、上記電流急変信号が発信されたときに上記正方向極性信号が発信されていなかった場合に回生中の電流急変であると判定し回生中電流急変信号の発信を継続する回生中電流急変判定手段と、上記電流急変信号及び上記故障電流信号が発信されていてかつ上記回生中電流急変信号が発信されていないとき事故と判定する事故判定手段とを備えた直流電流継電装置。
- 上記回生中電流急変判定手段が回生中電流急変信号を発してから所定の時間後に上記故障電流信号及び上記正方向極性信号がともに発信されているとき事故と判定する回生線路側事故判定手段を設けたものであることを特徴とする請求項1に記載の直流電流継電装置。
- 上記電流が予め定められた値を超えたとき回生線路側故障電流信号を発する回生線路側故障電流判定手段と、上記回生線路側故障電流信号と上記正方向極性信号と回生中電流急変信号とが発信されているとき重短絡故障と判定する重短絡故障判定手段とを設けたものであることを特徴とする請求項1に記載の直流電流継電装置。
- 上記回生中電流急変判定手段が回生中電流急変信号を発してから所定の時間後に上記故障電流信号及び上記正方向極性信号がともに発信されているとき事故と判定する回生線路側事故判定手段と、上記電流が予め定められた値を超えたとき回生線路側故障電流信号を発する回生線路側故障電流判定手段と、上記回生線路側故障電流信号と上記正方向極性信号と回生中電流急変信号とが発信されているとき重短絡故障と判定する重短絡故障判定手段とを設けたものであって、上記事故判定手段回生線路側が事故と判定したとき、上記回生線路側事故判定手段が事故と判定したとき、又は上記重短絡故障判定手段が重短絡故障と判定したとき、上記直流き電線に供給する電力を遮断するように指令を発する遮断指令発信手段を設けたものであることを特徴とする請求項1に記載の直流電流継電装置。
- 上記電流検出手段は、検出する電流中の高調波を除去する高調波フィルタを有するものであることを特徴とする請求項1に記載の直流電流継電装置。
- 上記直流き電線は複数あっておのおの電気的に区分された電気車線路のセクションに給電するものであり、上記直流電流継電装置は上記複数の直流き電線ごとに設けられ、セクション通過補償値出力手段とセクション通過補償手段とを設けたものであって、上記セクション通過補償値出力手段は上記微分演算手段が求めた電流変化率が所定の電流急減判定値を超える電流減少であるときに上記電流変化率に予め決められた補償率を乗じた補償値を出力し、上記セクション通過補償手段は上記微分演算手段が求めた電流変化率を上記複数の直流き電線のうちの事前に設定した対象となる直流き電線に設けられる上記直流電流継電装置の上記セクション通過補償値が出力する上記補償値により補償するものであることを特徴とする請求項1に記載の直流電流継電装置。
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JP2011055685A (ja) * | 2009-09-04 | 2011-03-17 | Railway Technical Res Inst | 超電導直流き電システム、および故障検出方法 |
JP2015100219A (ja) * | 2013-11-19 | 2015-05-28 | 株式会社東芝 | 直流き電保護継電装置 |
CN113451998A (zh) * | 2021-06-25 | 2021-09-28 | 许继集团有限公司 | 一种柔性直流电压突变量保护方法及装置 |
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2002
- 2002-06-17 JP JP2002175223A patent/JP2004023884A/ja active Pending
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