JP2004022762A - 永久磁石の製造方法および永久磁石 - Google Patents

永久磁石の製造方法および永久磁石 Download PDF

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Itaru Okonogi
小此木 格
Isato Shirai
白井 勇人
Yoji Mitsui
三ツ井 洋二
Tadashi Kanbe
神戸 正
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Abstract

【課題】長期間にわたって安定した特性を発揮することができる永久磁石を提供すること、また、当該永久磁石を提供することが可能な永久磁石の製造方法を提供すること。
【解決手段】永久磁石1は、磁石本体11の表面に、乾式めっき法により、電気伝導度が2[m・Ω−1・mm−2]の導電性材料で構成された導電膜12を形成する工程と、導電膜12の表面に、湿式めっき法により、湿式めっき膜13を形成する工程とを有する方法により製造されるものである。導電膜12の平均厚さは、0.01〜2.0μmであるのが好ましい。湿式めっき膜13の平均厚さは、10.0〜40.0μmであるのが好ましい。導電膜12の平均厚さをD[μm]、湿式めっき膜13の平均厚さをD[μm]としたとき、0.00025<D/D<0.20の関係を満足するのが好ましい。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、永久磁石の製造方法および永久磁石に関する。
【0002】
【従来の技術】
希土類金属と遷移金属とを主成分とする希土類合金磁石は、フェライト系、アルニコ系磁石と比べて優れた磁気特性を有しており、幅広い用途に用いられている。
【0003】
しかしながら、希土類合金磁石は酸化されやすい欠点がある。特に、希土類合金磁石粉末を結合樹脂(バインダー)で結合させたボンド磁石は、高湿環境下で使用された場合には、酸化による磁気特性の劣化が問題となる。
そこで、耐酸化性の向上のため、ボンド磁石の表面に、電解めっき等により金属膜を形成することが行われている。
【0004】
しかしながら、ボンド磁石は磁石粉末と結合樹脂の混合物からなるため、微視的な不導体部分が存在し、ボンド磁石の表面における導電性が均一ではなく、また、ボンド磁石の表面において、十分な導電性を確保するのが困難である。このため、形成される金属膜にピンホールやめっきの欠けが発生しやすくなり、十分な耐酸化性を得ることができないという問題点を有していた。
【0005】
また、焼結磁石等のボンド磁石以外の磁石においても、耐食性の向上、機械的強度の向上等を目的として、磁石の表面に、上記のような金属膜を形成する試みがあるが、ピンホールやめっきの欠けの発生を十分に防止しつつ、金属膜を形成するのは困難であり、十分な効果が得られないでいた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、長期間にわたって安定した特性を発揮することができる永久磁石を提供すること、また、当該永久磁石を提供することが可能な永久磁石の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(35)の本発明により達成される。
【0008】
(1) 磁石本体の表面に、乾式めっき法により、主として導電物質で構成された導電膜を形成する工程と、
前記導電膜の表面に、湿式めっき法により、湿式めっき膜を形成する工程とを有することを特徴とする永久磁石の製造方法。
【0009】
(2) 前記導電膜をイオンプレーティング法により形成する上記(1)に記載の永久磁石の製造方法。
【0010】
(3) 前記導電膜は、電気伝導度が2[m・Ω−1・mm−2]以上の材料で構成されたものである上記(1)または(2)に記載の永久磁石の製造方法。
【0011】
(4) 前記導電膜は、Cu、Al、Pd、Au、Ag、Pb、Sn、Ni、Fe、Co、In、V、Cr、Be、Zn、Ti、Mnから選択される1種または2種以上を含むものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
【0012】
(5) 前記導電膜の平均厚さは、0.01〜2.0μmである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
【0013】
(6) 前記湿式めっき膜を電解めっきにより形成する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
【0014】
(7) 前記湿式めっき膜は、主として、Niで構成されたものである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
【0015】
(8) 前記湿式めっき膜は、複数の層の積層体である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
【0016】
(9) 前記湿式めっき膜の平均厚さは、10.0〜40.0μmである上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
【0017】
(10) 前記導電膜の平均厚さをD[μm]、前記湿式めっき膜の平均厚さをD[μm]としたとき、0.00025<D/D<0.20の関係を満足する上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
【0018】
(11) 前記磁石本体は、略円筒状をなすものである上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
【0019】
(12) 前記磁石本体の外周側に形成された前記湿式めっき膜の厚さをDBO[μm]、前記磁石本体の内周側に形成された前記湿式めっき膜の厚さをDBI[μm]としたとき、0.5<DBI/DBO<1.1の関係を満足する上記(11)に記載の永久磁石の製造方法。
【0020】
(13) 前記磁石本体の空孔率は、7.0vol%以下である上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
【0021】
(14) 前記磁石本体は、磁石粉末を結合樹脂で結合してなるボンド磁石である上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
【0022】
(15) 前記磁石粉末は、希土類元素と、遷移金属と、ボロンとを含む組成のものである上記(14)に記載の永久磁石の製造方法。
【0023】
(16) 前記ボンド磁石における前記磁石粉末の含有率は、91.0〜99.0wt%である上記(14)または(15)に記載の永久磁石の製造方法。
【0024】
(17) 前記磁石本体は、面取りされたものである上記(1)ないし(16)のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
【0025】
(18) 磁石本体と、
乾式めっき法により、前記磁石本体の表面に形成された、主として導電物質で構成された導電膜と、
湿式めっき法により、前記導電膜の表面に形成された湿式めっき膜とを有することを特徴とする永久磁石。
【0026】
(19) 前記導電膜は、電気伝導度が2[m・Ω−1・mm−2]以上の材料で構成されたものである上記(18)に記載の永久磁石。
【0027】
(20) 前記導電膜は、Cu、Al、Pd、Au、Ag、Pb、Sn、Ni、Fe、Co、In、V、Cr、Be、Zn、Ti、Mnから選択される1種または2種以上を含むものである上記(18)または(19)に記載の永久磁石。
【0028】
(21) 前記導電膜の平均厚さは、0.01〜2.0μmである上記(18)ないし(20)のいずれかに記載の永久磁石。
【0029】
(22) 前記湿式めっき膜は、主として、Niで構成されたものである上記(18)ないし(21)のいずれかに記載の永久磁石。
【0030】
(23) 前記湿式めっき膜は、複数の層の積層体である上記(18)ないし(22)のいずれかに記載の永久磁石。
【0031】
(24) 前記湿式めっき膜の平均厚さは、10.0〜40.0μmである上記(18)ないし(23)のいずれかに記載の永久磁石。
【0032】
(25) 前記導電膜の平均厚さをD[μm]、前記湿式めっき膜の平均厚さをD[μm]としたとき0.00025<D/D<0.20の関係を満足する上記(18)ないし(24)のいずれかに記載の永久磁石。
【0033】
(26) 前記磁石本体は、略円筒状をなすものである上記(18)ないし(25)のいずれかに記載の永久磁石。
【0034】
(27) 前記磁石本体の外周側に形成された前記湿式めっき膜の厚さをDBO[μm]、前記磁石本体の内周側に形成された前記湿式めっき膜の厚さをDBI[μm]としたとき、0.5<DBI/DBO<1.1の関係を満足する上記(26)に記載の永久磁石。
【0035】
(28) 前記磁石本体の空孔率は7.0vol%以下である上記(18)ないし(27)のいずれかに記載の永久磁石。
【0036】
(29) 前記磁石本体は、磁石粉末を結合樹脂で結合してなるボンド磁石である上記(18)ないし(28)のいずれかに記載の永久磁石。
【0037】
(30) 前記磁石粉末は、希土類元素と、遷移金属と、ボロンとを含む組成のものである上記(29)に記載の永久磁石。
【0038】
(31) 前記磁石本体における前記磁石粉末の含有率は91.0〜99.0wt%である上記(29)または(30)に記載の永久磁石。
【0039】
(32) 前記磁石本体は、面取りされたものである上記(18)ないし(31)のいずれかに記載の永久磁石。
【0040】
(33) 最大回転数が4000rpm以上のモータに用いられる上記(18)ないし(32)のいずれかに記載の永久磁石。
【0041】
(34) ハードディスクドライブ用のモータに用いられる上記(18)ないし(33)のいずれかに記載の永久磁石。
【0042】
(35) 上記(1)ないし(17)のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする永久磁石。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の永久磁石の製造方法および永久磁石の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0044】
図1は、本発明の永久磁石の好適な実施形態を示す断面斜視図である。
本発明の永久磁石1は、磁石本体11と、磁石本体11の表面に形成された導電膜12と、導電膜12の表面に形成された湿式めっき膜13とを有する。
【0045】
磁石本体11の形状は特に限定されるものではない。なお、図1では、例として、後に詳述するモータ用として用いる場合に好適な略円筒形状のものを挙げている。
【0046】
磁石本体11は、多極着磁されている。
磁石本体11としては、例えば、鋳造磁石、焼結磁石、ボンド磁石のほか、圧延、鍛造、熱間押出等の方法により得られる磁石等いかなるものを用いてもよい。
【0047】
この中でも、例えば、本発明の永久磁石1をモータ用として用いる場合には、その形状が安価に製造できるボンド磁石が好ましい。これにより、優れた磁気特性を安定して得ることができる。
【0048】
ボンド磁石は、主として、磁石粉末と、結合樹脂(バインダー)とで構成される。
【0049】
ボンド磁石を構成する磁石粉末としては、例えば、希土類元素と遷移金属とを基本成分とする希土類磁石粉末が好適に使用される。
【0050】
希土類磁石粉末(以下単に、「磁石粉末」とも言う)としては、希土類元素と遷移金属と、ボロンとを含む合金よりなるものが好ましい。
【0051】
特に、R(ただし、Rは、Yを含む希土類元素のうちの少なくとも1種)と、Feを主とする遷移金属(TM)と、Bとを基本成分とするもの(以下、R−TM−B系合金と言う)を用いるのが好ましい。
【0052】
R−TM−B系合金の代表的なものとしては、Nd−Fe−B系合金、Pr−Fe−B系合金、Nd−Pr−Fe−B系合金、Nd−Dy−Fe−B系合金、Ce−Nd−Fe−B系合金、Ce−Pr−Nd−Fe−B系合金、これらにおけるFeの一部をCo、Ni等の他の遷移金属で置換したもの等が挙げられる。
【0053】
前記希土類元素としては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、ミッシュメタルが挙げられ、これらを1種または2種以上含むことができる。また、前記遷移金属としては、Fe、Co、Ni等が挙げられ、これらを1種または2種以上含むことができる。
【0054】
このようなR−TM−B系合金のうち少なくとも2種を混合して用いてもよい。これにより、混合する各磁石粉末の利点を併有することができ、所望する磁気特性を容易に得ることができる。
【0055】
また、前記R−TM−B系合金のうち、少なくとも1種とフェライト粉末(例えば、BaO・6Fe等のBa−フェライト、SrO・6Fe等のSr−フェライトや、これらの一部を他の遷移金属、希土類元素で置換したもの等)を混合して用いてもよい。これにより、混合する各磁石粉末の利点を併有することができ、所望する磁気特性を容易に得ることができる。
【0056】
また、保磁力、最大磁気エネルギー積等の磁気特性を向上させるため、あるいは、耐熱性、耐食性を向上させるために、磁石材料中には、必要に応じ、Al、Cu、Ga、Si、Ti、V、Ta、Zr、Nb、Mo、Hf、Ag、Zn、P、Ge、Cr、W等を含有することもできる。
【0057】
また、磁石本体11における前記磁石粉末の含有率は、91.0〜99.0wt%であるのが好ましく91.0〜98.5wt%であるのがより好ましい。磁石粉末の含有率が前記下限値未満であると、永久磁石1の用途等によっては、十分な磁気特性が得られない可能性がある。一方、磁石粉末の含有率が前記上限値を超えると、磁石本体11の成形性が低下するとともに、磁石本体11中の空孔率が急激に高くなる傾向を示し、後述する導電膜12、湿式めっき膜13を形成しても、本発明の効果を十分に発揮するのが困難になる可能性がある。
【0058】
結合樹脂(バインダー)としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0059】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66、PA9Tナイロン)、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリアクリル等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0060】
このような熱可塑性樹脂は、その種類、共重合化等により、例えば成形性を重視したものや、耐熱性、機械的強度を重視したものというように、広範囲の選択が可能となるという利点がある。
【0061】
一方、熱硬化性樹脂としては、例えば、ビスフェノール型、ノボラック型、ナフタレン系等の各種エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル(不飽和ポリエステル)樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0062】
なお、使用される熱硬化性樹脂(未硬化)は、室温で液状のものでも、固形(粉末状)のものでもよい。
【0063】
さらに、磁石本体11の構成材料中に、滑材、酸化防止材等の添加材を微量添加してもよい。
【0064】
ボンド磁石の成形方法は、プレス成形、射出成形、押し出し成形等、特に限定されない。
【0065】
プレス成形の場合には、例えば、成形圧力:2〜16トン/cm、焼成温度:100〜200℃で加熱硬化するのが好ましい。
【0066】
射出成形の場合には、例えば、成形温度:200〜280℃、成形型閉め圧力:0.1〜3トン/cmで成形するのが好ましい。
【0067】
押し出し成形の場合には、例えば、成形温度:150〜250℃、成形速度:2〜10mm/secで成形するのが好ましい。
【0068】
このようにして各種成形法により成形された磁石本体11は、必要に応じて所望の寸法・形状に2次加工される。
【0069】
磁石本体11の磁気特性は、特に限定されないが、磁気エネルギー積(BH)maxが32kJ/m以上のものが好ましく、48kJ/m以上のものがより好ましく、64kJ/m以上のものがさらに好ましい。
【0070】
また、磁石本体11の空孔率は、7.0vol%以下であるのが好ましく、5.0vol%以下であるのがより好ましい。空孔率が前記上限値を超えると、後述する導電膜12、湿式めっき膜13を形成しても、本発明の効果が十分に発揮されない可能性がある。
【0071】
また、磁石本体11は、その端部の角(少なくとも先端部の外周側の角)に面取りを施したものであってもよい。これにより、永久磁石は、カケ等の欠陥を、さらに生じにくいものとなる。また、例えば、本発明の永久磁石1をモータに用いる場合、永久磁石1とヨーク(支持部材)との接合を圧入により行う際に、その操作を容易に行うことが可能になる。また、圧入の操作を行う際に、永久磁石1の表面に、傷が付くのをより効果的に防止することができる。その結果、永久磁石1の腐食、機械的強度の低下が防止され、結果として、モータの長期安定性が向上する。
【0072】
本発明の永久磁石1は、磁石本体11の表面に、乾式めっき法により形成された導電膜12を有している。
【0073】
磁石本体11の表面に導電膜12を形成することで、後述する湿式めっき膜13を湿式めっき法により形成する際に、磁石本体11の表面における導電性のばらつきを十分に小さくすることができる。これによりピンホール等の欠陥の発生を十分に防止しつつ、湿式めっき膜13を均一かつ緻密に形成することができる。その結果、永久磁石1は、湿式めっき膜13の剥離がきわめて生じにくいものとなり、十分な耐錆性を有し、機械的強度に優れたものとなる。
【0074】
また、導電膜12を形成することにより、以下のような効果が得られる。
すなわち、磁石本体の形状が略円筒形状のような複雑な形状を有するものである場合、磁石本体の表面に、直接、湿式めっき法によりめっき層を形成した場合、各部位でのめっき層の厚さのばらつきは、特に大きなものとなる。例えば、磁石本体11が略円筒形状を有する場合、磁石本体11の内周側は、陰影部となり、外周側に比べて電流密度が低くなってしまい、その結果、外周側のめっき層の厚さに比べて、内周側のめっき層の厚さが極端に小さくなるという問題があった。このようなめっき層の厚さのばらつきが大きくなると、めっき層が厚さが薄い箇所において、ピンホール等の欠陥が発生しやすくなり、また、このような部位から、腐食等が進行しやすくなる。これに対し、本発明では、湿式めっきを施すのに先立ち、磁石本体11の表面に導電膜12を形成することで、湿式めっきの際の外周側と内周側とで表面電流密度を均一にすることができる。これにより、均一な膜厚の(外周側と内周側とで厚みのばらつきが小さい)湿式めっき膜13を形成することができる。
【0075】
導電膜12は、電気伝導度が2[m・Ω−1・mm−2]以上の導電物質から構成されるのが好ましい。これにより、磁石本体11の表面に十分な導電性を付与することができる。
【0076】
上記のような電気伝導度を有する材料の中でも、導電膜12の構成材料としては、特に、Cu、Al、Pd、Au、Ag、Pb、Sn、Ni、Fe、Co、In、V、Cr、Be、Zn、Ti、Mnから選択される1種または2種以上を含むものが好ましい。
【0077】
電気伝導度が2[m・Ω−1・mm−2]以上の物質として具体的には、マグネシウム合金、アルミ合金、チタン合金、青銅、黄銅、モネル、洋白、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0078】
本発明は、導電膜12を乾式めっき法により形成する点に特徴を有する。乾式めっき法としては、例えば、真空蒸着、スパッタリング、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、イオンプレーティング等が挙げられるが、この中でも特に、イオンプレーティング法が好ましい。乾式めっき法として、イオンプレーティング法を用いることにより、より緻密で、磁石本体11との密着性が特に優れた導電膜12を、均一な膜厚で形成することができる。
【0079】
イオンプレーティング法により導電膜を形成する際に用いるイオンプレーティング装置の一例を図2に示す。図2に示すイオンプレーティング装置は、高周波励起方式によるものである。
【0080】
このイオンプレーティング装置2は、イオンプレーティング槽を構成する真空容器21と、真空ポンプ22と、ガス導入ニードル弁23と、抵抗加熱部24と、DCソース25と、高周波発生コイル26と、搭載基盤27とを有する。
真空ポンプ22は、真空容器21内を所定の真空度まで排気する。
【0081】
イオンプレーティングの際、真空容器21内部は、通常、真空度100〜1000Pa程度まで減圧される。
ガス導入ニードル弁23からは、イオン化導入ガスが導入される。
【0082】
イオン化導入ガスとしては、Ar、H、N、He、O、Ne等のガスが挙げられる。これらのガスは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0083】
抵抗加熱部24には蒸発源28であるイオンめっき物質が配置され、抵抗加熱により溶融される。加熱温度は蒸発源28の組成等に応じて設定される。蒸発源28の融点をTm[℃]としたとき、加熱温度は、通常、Tm〜(Tm+100)℃であるのが好ましい。
【0084】
搭載基盤27は、抵抗加熱部24と対向して配されており、この搭載基盤27上に、被めっき部材である磁石本体11が配置される。
【0085】
また、抵抗加熱部24と搭載基盤27との間には高周波発生コイル26が配されている。高周波励起には、通常、周波数10MHz以下の周波数帯が利用される。
【0086】
そして、DCソース25により、陰極部(搭載基盤27)および対極間にはDC0.1〜10kV直流電圧が印加される。蒸発源28から蒸発した材料は、高周波励起によってイオン化され、搭載基盤27上の被めっき部材である磁石本体11の表面に堆積する。
以上のようにして、磁石本体11の表面に導電膜12が形成される。
【0087】
なお、上記のような乾式めっきを行う際には、例えば、被めっき部材である磁石本体11を、回転させてもよい。これにより、形成される導電膜12の厚さのばらつきを、さらに小さくすることができる。
【0088】
導電膜12の平均厚さは、0.01〜2.0μmであるのが好ましく、0.1〜1.2μmであるのがより好ましい。導電膜12の平均厚さが前記下限値未満であると、磁石本体11の空孔率等によっては、本発明の効果が十分に得られない可能性がある。一方、導電膜12の平均厚さが前記上限値を超えると、磁石本体11との密着強度が低下し、圧環強度が低くなる傾向を示す。
【0089】
また、導電膜12の平均厚さをD[μm]とし、後述する湿式めっき膜13の平均厚さをD[μm]としたとき0.00025<D/D<0.20の関係を満足するのが好ましく、0.003<D/D<0.12の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、密着強度、耐錆性の改善、膨れ防止という効果がさらに顕著なものとなる。
【0090】
また、導電膜12の形成に先立ち、磁石本体11の表面に対して、前処理を施してもよい。前処理としては、例えば、ブラスト処理、アルカリ洗浄(アルカリ脱脂処理)、酸洗浄、水洗(純水洗浄を含む)、有機溶剤洗浄、超音波洗浄、ボンバード処理等の清浄化処理等が挙げられる。このような前処理を施すことにより、例えば、磁石本体11と導電膜12との密着性をさらに優れたものとすることができる。
【0091】
そして、本発明の永久磁石1では、導電膜12上に、湿式めっき膜13を有している。湿式めっき膜13は、湿式めっき法により形成されたものである。
【0092】
このような湿式めっき膜13が形成されることにより、磁石本体11は、外部環境から遮断されることになる。
【0093】
特に、本発明では、上述したように、湿式めっき膜13の形成に先立ち、磁石本体11の表面に導電膜12を形成する。これにより、湿式めっき膜13を形成する各部位での導電性のばらつきを十分に小さくすることができる。その結果、本工程で形成される湿式めっき膜13は、各部位での膜質(例えば、膜成分構成、膜厚、密度等)が十分に均一で、緻密なものとなる。したがって、得られる永久磁石1は、優れた耐食性を有し、かつ、機械的強度にも優れたものとなる。
【0094】
湿式めっき膜13は、主として金属材料で構成されたものである。このような湿式めっき膜13が設けられることにより、永久磁石1の機械的強度は、特に優れたものとなる。このため、永久磁石1には、比較的大きな外力が加わる用途にも好適に適用できる。例えば、本発明の永久磁石1を後述するようなモータに用いる場合に、熱カシメまたは圧入で、支持部材(ヨーク)に支持固定することが可能になる。これにより、永久磁石1を、ヨークに十分な密着性(接合強度)で支持固定することが可能となる。
【0095】
湿式めっき膜13を構成する金属材料としては、例えば、Ni、Cu、Cr、Fe、Zn、Cd、Sn、Pb、Al、Au、Ag、Pd、Pt、Rh等、またはこれらのうち少なくとも1種を含む合金等が挙げられる。この中でも、湿式めっき膜13を構成する金属材料としては、Niを主とするものであるのが好ましい。これにより、永久磁石1の耐食性、機械的強度は特に優れたものとなる。また、永久磁石1を後述するモータの製造に用いた場合には、永久磁石1と支持部材(ヨーク)との密着性(接合強度)が特に優れたものとなる。
【0096】
湿式めっき膜13の平均厚さは、特に限定されないが10.0〜40.0μmであるのが好ましく、10.0〜35.0μmであるのがより好ましく、16.0〜35.0μmであるのがさらに好ましい。湿式めっき膜13の平均厚さが前記範囲内の値であると、上記の効果(特に、機械的強度の向上)がより顕著なものとなる。
【0097】
また、永久磁石1を、後述するようなモータに用いる場合には、特に、以下のような条件を満足するのが好ましい。
【0098】
[1]湿式めっき膜13は、ビッカース硬度Hvが150以上であるのが好ましく、200以上であるのがより好ましい。湿式めっき膜13のビッカース硬度Hvが150以上であると、永久磁石1の機械的強度は、特に優れたものとなる。また、湿式めっき膜13のビッカース硬度Hvが150以上であると、例えば、本発明の永久磁石1をモータに用いる場合に、永久磁石1と支持部材(ヨーク)との接合を圧入により行う際、その工程において、永久磁石1の表面に、傷が付くのをより効果的に防止することができる。その結果、永久磁石1の腐食、機械的強度の低下がより効果的に防止され、結果として、本発明の永久磁石1を用いたモータの長期安定性が向上する。
【0099】
[2]湿式めっき膜13は、適度な潤滑性を有するものであるのが好ましい。これにより、例えば、本発明の永久磁石1をモータに用いる場合に、永久磁石1とヨークとの接合を圧入により行う際、その操作を容易に行うことができる。また、圧入時に、永久磁石1の表面に、傷が付くのをより効果的に防止することができる。また、磁石本体11とヨ−ク33との組み込み性が改善され、製品歩留まり、生産能力がさらに向上する。その結果、永久磁石1の腐食、機械的強度の低下が防止され、結果として、本発明の永久磁石1を用いたモータの長期安定性が向上する。潤滑性を示す指標としては、例えば、JIS R 1613に準じて測定されるボールオンディスク法での摩擦係数μ等が挙げられる。ボールオンディスク法により測定される湿式めっき膜13の摩擦係数μは、0.1〜0.7程度であるのが好ましく、0.2〜0.6程度であるのがより好ましい。湿式めっき膜13の摩擦係数μが前記下限値未満であると、例えば、本発明の永久磁石1をモータに用いる場合に、永久磁石1とヨーク33との密着性(接合強度)が低下する可能性がある。一方、湿式めっき膜13の摩擦係数μが前記上限値を超えると、例えば、本発明の永久磁石1をモータに用いる場合に、圧入により、永久磁石1を支持部材(ヨーク)に、支持固定させるのが困難となる。
【0100】
[3]本発明の永久磁石1において、磁石本体11の室温付近での熱膨張率(線膨張率)をα[×10−6−1]、湿式めっき膜13の構成材料の室温付近での熱膨張率(線膨張率)をα[×10−6−1]としたとき、|α−α|は、15[×10−6−1]以下であるのが好ましく、10[×10−6−1]以下であるのがより好ましい。|α−α|が15[×10−6−1]以下であると、例えば、本発明の永久磁石1をモータに用いる場合に、ロータ、モータの製造時や使用時等における、永久磁石1の温度の変化量が比較的大きい場合であっても、湿式めっき膜13が磁石本体11から剥離するのをより効果的に防止することができる。その結果、永久磁石1の腐食、機械的強度の低下や、ロータの重心のアンバランス量(回転アンバランス量)の増大が防止され、結果として、モータの長期安定性が向上する。
【0101】
このような湿式めっき膜13は、電解めっき、浸漬めっき、無電解めっき等の湿式めっき法によって形成される。この中でも、電解めっき、無電解めっきがより好ましい。
【0102】
湿式めっき膜13の形成方法として湿式めっきを用いることにより、比較的簡易な装置で、導電膜12との密着性(接合強度)に優れ、かつ、均質な湿式めっき膜13を容易に形成することができる。このような効果は、電解めっき、無電解めっきを用いた場合により顕著なものとなる。
【0103】
また、電解めっき、無電解めっきでは、めっき液の組成を調節することにより、形成される湿式めっき膜(金属めっき層)13の組成を容易に調節することができる。その結果、例えば、湿式めっき膜13の物性(例えば、機械的強度、硬度、摩擦係数、熱膨張率、耐食性等)や、湿式めっき膜13の、導電膜12に対する親和性等を容易に調節することができる。
【0104】
また、電解めっきでは、電流密度等のめっき条件を調節することにより、湿式めっき膜13の膜厚、密度等を容易に調節することができる。その結果、湿式めっき膜13の物性(例えば、機械的強度、硬度、摩擦係数、耐食性等)を容易に調整することができる。
【0105】
電解めっきは、例えば、以下のような条件で行うのが好ましい。
電解めっき時における浴温は、特に限定されないが、20〜70℃であるのが好ましく、40〜65℃であるのがより好ましい。浴温が、前記下限値未満であると、めっき速度の低下、光沢ムラ、異常析出が発生しやすい。一方、浴温が、前記上限値を超えると、異常析出、光沢剤の分解が発生しやすい。
【0106】
また、電解めっき時における電流密度は、特に限定されないが、0.1〜8.0A/dmであるのが好ましく、0.5〜6.0A/dmであるのがより好ましい。電流密度が前記範囲内の値であると、導電膜12との密着性に優れ、かつ、均質で緻密な湿式めっき膜13を、効率良く形成することができる。
【0107】
また、無電解めっきでは、液温度、めっき時間等を調節することにより、形成される湿式めっき膜(金属めっき層)13の膜厚、密度を容易に調節することができる。その結果、例えば、湿式めっき膜13の耐食性物性や、導電膜12に対する親和性等を容易に調節することができる。
【0108】
また、無電解めっきでは、磁石本体11のような円筒状の被めっき部材に対しても、特別な調整を施すことなく、膜厚のばらつきが特に小さい湿式めっき膜13を形成することができる。
【0109】
無電解めっきは、例えば、以下のような条件で行うのが好ましい。
無電解めっき時における浴温は、特に限定されないが、一例としてニッケルほう素系の無電解めっきの場合、50〜70℃であるのが好ましく、55〜65℃であるのがより好ましい。浴温が、前記下限値未満であると、めっき速度の低下、異常析出が発生しやすい。一方、浴温が、前記上限値を超えると、浴液の分解が生じやすい。
【0110】
また、湿式めっき膜13の形成に先立ち、導電膜12の表面に対して、前処理を施してもよい。前処理としては、例えば、ブラスト処理、アルカリ洗浄(アルカリ脱脂処理)、酸洗浄、水洗(純水洗浄を含む)、有機溶剤洗浄、超音波洗浄、ボンバード処理等の清浄化処理等が挙げられる。このような前処理を施すことにより、例えば、導電膜12と、湿式めっき膜13との密着性をさらに優れたものとすることができる。
【0111】
なお、湿式めっき膜13の各部位における組成は、一定であっても、一定でなくてもよい。例えば、湿式めっき膜13は、その厚さ方向に沿って、組成が順次変化するもの(傾斜材料)であってもよい。
【0112】
また、湿式めっき膜13は、例えば、形成方法、形成条件、組成の異なる複数の層の積層体であっても良い。湿式めっき膜13をこのような積層体として形成することにより、永久磁石1の耐食性、機械的強度をさらに優れたものにすることができる。
【0113】
湿式めっき膜13は、各部位での厚さのばらつきが小さいものであるのが好ましい。これにより、永久磁石1は、安定した耐食性、機械的強度を有するものとなる。また、永久磁石1を後述するようなモータに用いた場合、湿式めっき膜13の厚さのばらつきが小さいことにより、永久磁石1全体としての寸法精度が向上し、寸法公差を小さくすることができる。その結果、このような永久磁石1を備えたモータは、軸ぶれによる振動や、騒音(異音)を発生しにくいものとなる。例えば、略円筒形状を有する磁石本体11においては、外周側に形成された湿式めっき膜13の厚さをDBO[μm]、磁石本体11の内周側に形成された湿式めっき膜13の厚さをDBI[μm]としたとき、0.5<DBI/DBO<1.1の関係を満足するのが好ましく0.7<DBI/DBO<1.0の関係を満足するのがより好ましい。
【0114】
以上、説明したように、本発明では、磁石本体11の表面に導電膜12を有し、さらにその表面に湿式めっき膜13を有している。このため、ピンホール等の欠陥の発生を十分に防止しつつ、十分に均一かつ緻密な被膜(導電膜12および湿式めっき膜13)で、磁石本体11を被覆することができる。その結果、永久磁石1は、湿式めっき膜13の剥離がきわめて生じにくいものとなり、十分な耐錆性を有し、機械的強度に優れたものとなる。
【0115】
本発明の永久磁石1の用途は、特に限定されないが、例えば、モータに搭載されて用いられるものであるのが好ましい。これにより、本発明の効果をより顕著に発揮させることができる。
【0116】
また、本発明の永久磁石は、前述したように、優れた機械的強度を有している。このため、本発明の永久磁石は、比較的大きな外力が加わるものや、継続的に外力を加えた状態で用いるものに、特に好適に適用できる。したがって、本発明の永久磁石は、例えば、以下に説明するようなモータ、すなわち、永久磁石が、熱カシメまたは圧入により、支持部材(ヨーク)に固定されたモータに好適に適用することができる。
【0117】
次に、本発明の永久磁石1を用いたモータ用部品およびモータの好適な実施形態について説明する。
【0118】
図3は、本発明の永久磁石を適用したモータ用部品(ロータ)の好適な実施形態を示す断面側面図、図4は、図3に示すモータ用部品を有するモータの好適な実施形態を示す断面側面図である。以下、図3中、下側を「基端」、上側を「先端」として説明する。
【0119】
まず、本発明の永久磁石を有するモータ用部品(ロータ)について説明する。図3に示すように、ロータ(回転子)3は、ハブ31と、ハブ31の先端側の内表面に接合されたスリーブ32と、ハブ31の基端側の内表面に接合されたヨーク33と、ヨーク(支持部材)33の内表面側に接合、固定された永久磁石1とで構成されている。
【0120】
スリーブ32は、略円筒状をなし、その内表面側に溝(中逃げ部)323を有する。
【0121】
スリーブ32は、後述するようなモータ4の製造に用いた場合、軸受け(動圧流体軸受け)として機能する。すなわち、スリーブ32は、長手方向(図1中の上下方向)の異なる2箇所に、内側に突出する軸受け部321、322を有している。軸受けが、このような動圧流体軸受け(滑り軸受け)であると、後述するような高回転領域で用いられるモータに好適に適用することができる。
【0122】
スリーブ32の構成材料としては、例えば、銅もしくは真鍮などの銅合金、アルミニウム、鉄もしくはステンレスなどの鉄合金、またもしくはそれらを粉末原料とする金属焼結体、Al(アルミナ)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)等を主成分とするセラミックス、合成樹脂等が挙げられる。
【0123】
ヨーク33は、略円筒状をなし、ハブ31の基端側の内表面に接合、固定されている。
【0124】
ヨーク33の構成材料は、特に限定されないが、通常、金属または合金材料で構成される。ヨーク33を構成する材料としては、Fe、Al、快削鋼、ステンレス鋼、真鍮、焼結合金やこれらのうち少なくとも1種を含む合金等が挙げられるが、少なくとも永久磁石1と接触する部位がFeまたはAlを主とする材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、ヨーク33は、十分な機械的強度を有し、かつ、永久磁石1の湿式めっき膜13との接合強度(密着性)が、特に優れたものとなる。
【0125】
また、ヨーク33の構成材料は、室温付近での熱膨張率(線膨張率)が、4〜30[×10−6−1]であるのが好ましく、8〜25[×10−6−1]であるのがより好ましい。ヨーク33の構成材料の熱膨張率(線膨張率)が前記下限値未満であると、例えば、永久磁石1とヨーク33との接合を熱カシメにより行う場合、その製造工程において、ヨーク33を比較的高温にしなければ、ヨーク33の中空部に永久磁石1を挿通するのが困難となる場合がある。一方、ヨーク33の構成材料の熱膨張率(線膨張率)が前記上限値を超えると、ロータ3が高温環境下に曝されたときに、永久磁石1とヨーク33との密着性が低下する可能性がある。
【0126】
また、ヨーク33は、その表面粗さRaが0.5〜10.0μmであるのが好ましく、1.0〜5.0μmであるのがより好ましい。ヨーク33の表面粗さRaが前記範囲内の値であると、例えば、永久磁石1とヨーク33との接合を圧入により行う場合、その操作を容易に行うことができる。また、圧入時に、永久磁石1の表面に、傷が付くのをより効果的に防止することができる。その結果、永久磁石1の腐食、機械的強度の低下が防止され、結果として、モータの長期安定性が向上する。
【0127】
一方、ヨーク33の表面粗さRaが前記下限値未満であると、永久磁石1とヨーク33との密着性(接合強度)が低下する可能性がある。また、ヨーク33の表面粗さRaが前記上限値を超えると、上記の効果が十分得られない可能性がある。
【0128】
永久磁石1は、上述したように、円筒形状をなす磁石本体11と、磁石本体11の表面に形成された導電膜12と、導電膜12の表面に形成された湿式めっき膜13とを有する。
磁石本体11は、多極着磁されている。
【0129】
上述したように、永久磁石1は、磁石本体11の表面に、導電膜12と湿式めっき膜13とが積層された構成となっており、優れた機械的強度、耐食性を有している。このため、磁石本体11の特性を長期間にわたって安定的に発揮することができる。
【0130】
このような永久磁石1は、熱カシメまたは圧入により、ヨーク(支持部材)33に固定されている。これにより、永久磁石1は、十分な密着性(接合強度)でヨーク33に支持固定されたものとなる。このように、永久磁石1とヨーク33とが十分に高い強度で接合されたものであると、ロータ3を、モータ(特に、高回転領域で用いられるモータや、繰り返し使用されるモータ、長期間連続して使用されるモータ等)に適用した場合における、永久磁石1とヨーク33との接合不良の発生が、より効果的に防止される。その結果、モータの駆動時等における異音の発生、モータのトルク特性の低下等の問題の発生がより効果的に防止される。また、上記のような接合不良が効果的に防止されることにより、ヨーク33を有するモータ4は、故障、破損等を生じ難い、信頼性に優れたものとなる。
【0131】
また、永久磁石1とヨーク33とが、熱カシメまたは圧入で接合されることにより、永久磁石1とヨーク33との接合部に、従来用いられてきたような有機接着剤を用いなくても十分な接合強度が得られる。このように、有機接着剤を用いることなく、永久磁石1とヨーク33とを接合した場合、ロータ3の重心のアンバランス量(回転アンバランス量)を、小さいものとすることができる。特に、永久磁石1は、各部位における導電膜12、湿式めっき膜13の厚さのばらつきが小さいため、永久磁石1全体としての寸法公差を特に小さいものにすることができるため、ロータ3の重心のアンバランス量(回転アンバランス量)を、特に小さいものとすることができる。したがって、ロータ3を適用したモータ4は、例えば、高回転領域で用いた場合でも、軸ぶれによる振動や、騒音(異音)を発生し難いものとなる。
【0132】
以上説明したようなロータ3のアンバランス量の測定は、一般的にロータ3の回転に伴う径方向への周期的な応力発生として捉えることができる。この応力を電気的に変換することで、アンバランス量として測定することができる。この回転アンバランス量は、0.05g・cm以下であるのが好ましく、0.04g・cm以下であるのがより好ましい。
【0133】
ロータ3の回転アンバランス量が0.05g・cm以下であると、高回転領域で用いられるモータに適用した場合おいても、軸ぶれによる振動や、騒音(異音)を生じ難いものとなる。
【0134】
以上説明したようなロータ(モータ用部品)3は、熱カシメまたは圧入により、永久磁石1をヨーク(支持部材)33に支持固定させることにより得られる。
【0135】
熱カシメにより、永久磁石1をヨーク33に支持固定させるには、熱カシメは、永久磁石1より高温の状態のヨーク33の中空部に、永久磁石1を挿通し、その後、ヨーク33を冷却することにより行う。なお、熱カシメは、例えば、永久磁石1より高温の状態のヨーク33の中空部に、冷却状態の永久磁石1を挿通し、その後、永久磁石1の温度を上昇させることにより行ってもよい。
【0136】
また、圧入により、永久磁石1をヨーク33に支持固定させる場合、軸方向(図中の上下方向)への、永久磁石1とヨーク33との相対的な移動速度(接近速度)は、0.2〜20cm/秒であるのが好ましく、0.5〜10cm/秒であるのがより好ましい。
【0137】
永久磁石1とヨーク33との相対的な移動速度が前記範囲内の値であると、永久磁石1の表面に傷が付くのを効果的に防止しつつ、効率良く永久磁石1を圧入することができる。このように、永久磁石1の表面に傷が付くのが防止されることにより、永久磁石1の腐食、機械的強度の低下が防止され、結果として、モータの長期安定性が向上する。
【0138】
また、永久磁石1とヨーク33との接合を圧入により行う場合、永久磁石1(磁石本体11)は、その端部の角(少なくとも先端部の外周側の角)に面取りを施したものであるのが好ましい。これにより、圧入の操作をさらに容易に行うことが可能になる。また、圧入の操作を行う際に、永久磁石1の表面に、傷が付くのをより効果的に防止することができる。その結果、永久磁石1の腐食、機械的強度の低下が防止され、結果として、モータの長期安定性が向上する。
【0139】
上述したような熱カシメ、圧入により接合される永久磁石1は、自然状態(ヨーク33と接合する前の状態)での外径が、ヨーク33の対応する部位の自然状態(永久磁石1と接合する前の状態)での内径より大きい。これにより、得られるロータ3における永久磁石1とヨーク33との接合強度は十分に大きいものとなる。
【0140】
以上、永久磁石1とヨーク33との接合方法について説明したが、このような接合方法は、例えば、ヨーク33とハブ31との接合、ハブ31とスリーブ32との接合にも適用することができる。これにより、ロータ3は、高回転領域で用いられるモータに適用した場合おいても、軸ぶれによる振動や、騒音(異音)を生じ難い、特に安定した特性を有するものとなる。
【0141】
次に、上述したモータ用部品(ロータ)を備えたモータについて説明する。
図4に示すように、モータ(ハードディスクドライブ用モータ)4は、上述したロータ(回転子)3と、シャフト(軸)41と、ステータ(固定子)42と、基部(フレーム)43とを有している。
【0142】
シャフト41は、ロータ3を回転自在に支持している。
シャフト41は、通常、ステンレス鋼等の金属材料で構成される。ステンレス鋼としては、例えば、SUS304、SUS303、SUS316、SUS316L、SUS316J1、SUS316J1L等のFe−Cr−Ni系合金、SUS405、SUS420J2、SUS430、SUS434、SUS444、SUS429、SUS430F等のFe−Cr系合金等が挙げられる。
【0143】
ステータ42は、所定の間隔(ギャップ)を介して、永久磁石1の外周面に対面するように配置されている。
このステータ42は、所望の形状に打ち抜かれた珪素鋼板の積層体よりなるコア421と、該コア421に巻線を施してなるコイル(3相コイル)422とで構成されている。
【0144】
基部43は、中空部を有する形状を有しており、その内表面側にはシャフト41が、圧入等の方法により強固に固定されている。また、基部43の外表面側には、ステータ42が支持固定されている。
【0145】
また、スリーブ32の先端側には、スラスト受け板45がフランジ44とともに、固定されており、このスラスト受け板45は、シャフト41の先端部と接触している。
【0146】
このようなモータ4では、図示しない導線を介してステータ42のコイル422へ通電することにより、コア421が励磁され、ロータ3にトルクが発生する。この場合、コイル422への通電は、ロータ3の位置を検出するロータ位置センサによる検出信号に基づいて、好ましくは、インバータを備えたモータ駆動制御手段(いずれも図示せず)により制御される。
【0147】
上述したように、このモータ4では、熱カシメまたは圧入により、永久磁石1とヨーク(支持部材)33とが接合されているため、ロータ3にトルクが発生した場合においても、永久磁石1とヨーク33との接合不良が発生し難い。その結果、モータの駆動時等における異音の発生、モータのトルク特性の低下等の問題の発生がより効果的に防止される。また、上記のような接合不良が効果的に防止されることにより、ヨーク33を有するモータ4は、故障、破損等を生じ難い、信頼性に優れたものとなる。
【0148】
また、永久磁石1は、磁石本体11の表面に、導電膜12と湿式めっき膜13とが積層された構成となっているため、磁石本体11の腐食や、欠損、破壊等がより効果的に防止される。その結果、本発明の永久磁石1を用いたモータは、長期間にわたって安定した特性を有するものとなる。
【0149】
また、このモータ4では、永久磁石1とヨーク33とが、熱カシメまたは圧入で接合されることにより、永久磁石1とヨーク33との接合部に、従来用いられてきたような有機接着剤を用いなくても十分な接合強度が得られる。このように、有機接着剤を用いることなく、永久磁石1とヨーク33とを接合した場合、ロータ3の重心のアンバランス量(回転アンバランス量)を、特に小さいものとすることができる。その結果、ロータ3を適用したモータ4は、例えば、高回転領域で用いた場合でも、軸ぶれによる振動や、騒音(異音)を発生し難いものとなる。
【0150】
ところで、上記のような有機接着剤を用いる従来の製造方法では、永久磁石とヨークとの間から、余剰の有機接着剤がロータ端面にはみ出すことがあった。このような余剰の有機接着剤は、通常その余剰接着剤は寸法的に許容されるモータ構造で設計される場合が多いが、端面の余剰接着剤はロータの回転による遠心力や振動、トルク変動による周方向の加速度を直接受けるため剥離、破断、脱落が生じる。このような脱落した接着剤の一部が、モータ内に残存し、モータに悪影響を及ぼすことがあった。
【0151】
これに対し、永久磁石1とヨーク33とが、熱カシメまたは圧入で接合することで、有機接着剤を用いなくても十分な接合強度が得られるため、このような問題の発生を回避できる。したがって、本発明の永久磁石1は、例えば、ハードディスクドライブ用モータのように、非常に微細な異物の排除が求められるようなものにも、好適に適用することができる。
【0152】
モータ4は、最大回転数が4000rpm以上の領域で用いられるものであるのが好ましく、5000rpm以上の領域で用いられるものであるのがより好ましく、7000rpm以上の領域で用いられるものであるのがさらに好ましい。本発明の永久磁石1は、機械的強度に特に優れ、特に十分な耐錆性能を有しているので、モータ4が、このような最大回転数を有するモータであると、本発明の効果はより顕著なものとなる。
【0153】
従来のように、永久磁石と、その支持部材との接合強度が小さい場合には、信頼性等の問題から実現するのが困難であった高回転型のモータにも、本発明の永久磁石1を好適に用いることができる。
【0154】
また、高回転型のモータでは、軸ぶれによる振動や、騒音(異音)の発生を防止、抑制するために、ロータの重心のアンバランス量の低減が一層求められるが、永久磁石1とヨーク33とを熱カシメまたは圧入で接合することで、有機接着剤を用いる必要がないため、ロータの重心のアンバランス量の低減を容易に達成することができる。
【0155】
なお、図示の構成では、モータ4は、ハードディスクドライブに用いられるモータ(ハードディスクドライブ用モータ)である。ハードディスクドライブ用モータは、一般に、高回転領域で用いられるとともに、磁気記録密度が非常に高いため、振動の低減は最も重要な課題のひとつであるが、永久磁石1とヨーク33とを熱カシメまたは圧入で接合することで、このような問題の発生を容易に回避することができる。
【0156】
以上、本発明の永久磁石、当該永久磁石を適用したモータ用部品およびモータを、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0157】
例えば、前述した実施形態では、湿式めっき膜13は、磁石本体11の表面全体を覆うものであるが、磁石本体11の表面の少なくとも一部に形成されていればよい。
【0158】
また、導電膜は、上述したようなイオンプレーティングにより形成されたものに限定されず、乾式めっき法により形成されたものであればいかなるものであってもよい。また、導電膜を形成する際のイオンプレーティングは、高周波励起方式の装置を用いた方法に限定されず、いかなる方法で行うものであってもよい。
【0159】
また、磁石本体と導電膜との間には、密着性の向上等を目的とした下地層が形成されていてもよい。
【0160】
また、永久磁石は、例えば、湿式めっき膜の表面の少なくとも一部に、有機材料、無機材料等で構成された被覆層(保護膜)等が形成されたものであってもよい。
【0161】
また、本発明の永久磁石は、前述したようなモータ、モータ用部品に適用されるものに限定されない。
【0162】
また、本発明の永久磁石1が用いられるモータは、上述したようなアウターロータ型のものに限定されず、例えば、インナーロータ型、円盤型のもの等であってもよい。
【0163】
また、本発明の永久磁石1が用いられるモータは、ハードディスクドライブ用モータに限定されず、いかなるタイプのものであってもよい。
【0164】
また、前述した実施形態では、支持部材がヨークである構成について説明したが、支持部材はこれに限定されず、例えば、シャフト(軸)、ハブ、ケーシング等であってもよい。
【0165】
また、前述した実施形態では、動圧流体軸受け構造を有するものについて説明したが、軸受け構造は、いかなるものであってもよい。例えば、自己潤滑性軸受けや、オリフィス軸受け、ポケット軸受け等の静圧流体軸受けであってもよい。また、上記のような滑り軸受けのほか、例えば、ころがり軸受け(玉軸受)、磁気軸受け等であってもよい。
【0166】
【実施例】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0167】
なお、以下に示す例では、具体的な物質名、数値等を挙げて説明しているが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0168】
(実施例1)
[永久磁石の製造]
以下のようにして、図1に示すような形状、構成を有する18種の永久磁石(サンプルNo.1〜No.18)を製造した。
【0169】
<サンプルNo.1>
まず、Nd−Fe−Co−B系超急冷法磁石粉末(粒度が150#以下の原料粉を使用。)と、結合樹脂としてのビスA型エポキシ樹脂と、添加物としてのステアリン酸とを混合し、これらを常温で30分間混練して、ボンド磁石用組成物(コンパウンド)を作製した。磁石粉末、ビスA型エポキシ樹脂、ステアリン酸の配合比率(重量比率)は、それぞれ97.5wt%、2.3wt%、0.2wt%とした。
【0170】
次いで、このコンパウンドを秤量してプレス装置の金型内に充填し、無磁場中にて、常温にて、約12トン/cmの圧力で圧縮成形してから、200℃でエポキシ樹脂を加熱硬化させ、円筒状のボンド磁石を得た。このボンド磁石に対して、その高さ方向の研磨処理を施した。
【0171】
その後、ボンド磁石を、バレル研磨法により各稜がR0.15になるまで研磨(面取り)し、これを磁石本体とした。得られた磁石本体は、外径28.00mm×内径25.1mm×高さ4.1mmの円筒状(室温(20℃)、自然状態)をなすものであった。また、磁石本体の空孔率は、4.1vol%であった。
【0172】
次に、得られた磁石本体を洗浄した。磁石本体の洗浄としては、純水超音波洗浄を3分間行った。その後、85℃で20分間乾燥した。
【0173】
このようにして洗浄を行った磁石本体の表面に、イオンプレーティング法によりCuからなる導電膜を形成した。
【0174】
導電膜の形成には、図2に示したような高周波励起方式のイオンプレーティング装置を用いた。
【0175】
導電膜形成時における、イオンプレーティング槽内部の圧力は、100〜200Paとし、導入ガスはArガスを用いた。また、DC印加電圧は、3.0±0.2kVとし、処理時間は3〜10分とした。このようなイオンプレーティングは、被めっき部材である磁石本体を回転させながら行った。
【0176】
このようにして、磁石本体の表面に、Cuからなる導電膜を形成した。形成された導電膜の平均厚さは、0.1μmであった。
【0177】
次に、導電膜が形成された磁石本体(以下の説明において、便宜上、単に磁石本体と称する場合がある。)の導電膜の表面に、湿式めっき法により、主にNiから構成される湿式めっき膜を形成した。
【0178】
湿式めっき法による湿式めっき膜の形成は、以下の態様で行った。
まず、磁石本体表面を脱脂洗浄した。脱脂洗浄としては、エースクリーンA−220(奥野製薬市場品)を50g/Lの濃度で溶解させた洗浄液を用いて、50℃で10分間行った。この洗浄液のpHは11.4であった。
【0179】
次に、表面が脱脂された磁石本体を洗浄した。磁石本体の洗浄としては、常温での純水洗浄を1分間行った。
【0180】
上記のようにして洗浄を行った磁石本体に、湿式めっき膜(複数の層からなる積層体)を、以下のようにして形成した。
【0181】
まず、Ni−B無電解めっきを行い、導電膜の表面にNi−B膜を形成した。この無電解めっきにはトップケミアロイ66−Mを60ml/L、トップケミアロイ66−1を60ml/L、トップケミアロイ66−2を60ml/Lの濃度で含むものを用いた。このめっき液のpHは6.5であった。めっき液の浴温、めっき液への浸漬時間は、それぞれ、65℃、20分間とした。
【0182】
その後、Ni−B膜が形成された磁石本体を回収し、常温での純水洗浄を1分間行った。
【0183】
次に、Ni−B膜が形成された磁石本体を洗浄した。磁石本体の洗浄としては、常温での純水洗浄を2分間行った。
【0184】
次に、電解光沢Niめっきを行った。この電解光沢Niめっきには、めっき液として、硫酸Niを300g/L、塩化Niを50g/L、ホウ酸を45g/L、トップレオナBr−Mu(奥野製薬社製)を4ml/L、トップレオナBR(奥野製薬社製)を0.15ml/Lの濃度で含むものを用いた。このめっき液のpHは4.5であった。めっき液の浴温、めっき液への浸漬時間は、それぞれ、50℃、20分間とした。また、電流密度Dkは2A/dmとした。
【0185】
次に、電解光沢Niめっきが施された磁石本体を回収し、常温での純水洗浄を1分間行った。
【0186】
さらに、温水(80℃)による純水洗浄を1分間行った。
その後、導電膜、湿式めっき膜が形成された磁石本体を70℃で20分間乾燥した。
【0187】
このようにして、積層体として形成された湿式めっき膜は、外周側の平均厚さが20μm、内周側の平均厚さが18μmであった。
【0188】
以上のようにして、導電膜および湿式めっき膜が形成されたボンド磁石を、8極に多極着磁し、永久磁石(サンプルNo.1)とした。
【0189】
このようにして得られた永久磁石の最大磁気エネルギー積(BH)maxは、80kJ/mであった。
【0190】
<サンプルNo.2>
導電膜が形成された磁石本体表面に、以下の態様の湿式めっき法により、主にNiから構成される湿式めっき膜を形成したこと以外は、サンプルNo.1の永久磁石と同様にして永久磁石(サンプルNo.2)を作製した。
【0191】
湿式めっきによる湿式めっき膜の形成は、以下の態様で行った。
まず、磁石本体表面を脱脂洗浄した。脱脂洗浄としては、エースクリーンA−220(奥野製薬市場品)を50g/Lの濃度で溶解させた洗浄液を用いて50℃で10分間行った。この洗浄液のpHは11.4であった。
【0192】
次に、表面が脱脂された磁石本体を洗浄した。磁石本体の洗浄としては、常温での純水洗浄を1分間行った。
【0193】
上記のようにして洗浄を行った磁石本体に湿式めっき膜(複数の層からなる積層体)を、以下のようにして形成した。
【0194】
まず、St(ストライク)Ni電解めっきを行い、導電膜の表面にNi膜を形成した。この電解めっきには、めっき液としてアンモン浴組成で、硫酸Ni:150g/L、塩化Ni:15g/L、ホウ酸:15g/Lのものを使用した。このめっき液のpHは5.2、めっき時における電流密度Dkは1.5Admとした。また、浴温、めっき液への浸漬時間は、それぞれ、40℃、15分間とした。
【0195】
その後、Ni膜が形成された磁石本体を回収し、常温での純水洗浄を1分間行った。
【0196】
次に、Ni膜が形成された磁石本体を洗浄した。磁石本体の洗浄としては、常温での純水洗浄を2分間行った。
【0197】
次に、電解半光沢Niめっきを行った。この電解半光沢Niめっきには、めっき液として、硫酸Niを300g/L、塩化Niを50g/L、ホウ酸が45g/L、アクナHSB−MU(奥野製薬社製)を4ml/Lの濃度で含むものを用いた。このめっき液のpHは4.2であった。めっき液の浴温、めっき液への浸漬時間は、それぞれ、50℃、30分間とした。また、電流密度Dkは3.5A/dmとした。
【0198】
次に、Niめっきが施された磁石本体を回収し、常温での純水洗浄を1分間行った。
【0199】
次に、電解光沢Niめっきを行った。この電解光沢Niめっきには、めっき液として、硫酸Niを300g/L、塩化Niを50g/L、ホウ酸を45g/L、トップレオナBr−Mu(奥野製薬社製)を4ml/L、トップレオナBR(奥野製薬社製)を0.15ml/Lの濃度で含むものを用いた。このめっき液のpHは4.5であった。めっき液の浴温、めっき液への浸漬時間は、それぞれ、50℃、30分間とした。また、電流密度Dkは3.5A/dmとした。
【0200】
次に、電解光沢Niめっきが施された磁石本体を回収し、常温での純水洗浄を1分間行った。
【0201】
さらに、温水(80℃)による純水洗浄を1分間行った。
その後、導電膜、湿式めっき膜が形成された磁石本体を70℃で20分間乾燥した。
【0202】
このようにして、積層体として形成された湿式めっき膜は、外周側の平均厚さが25μm、内周側の平均厚さが22μmであった。
【0203】
以上のようにして、導電膜および湿式めっき膜が形成されたボンド磁石を、8極に多極着磁し、永久磁石(サンプルNo.2)とした。
【0204】
<サンプルNo.3〜No.16>
サンプルNo.1、サンプルNo.2の永久磁石の製造に用いた磁石本体と同様にして製造した磁石本体の表面に、表1に示すような導電膜、湿式めっき膜を形成することにより、14種の永久磁石(サンプルNo.3〜No.16)を作製した。
【0205】
<サンプルNo.17、No.18>
湿式めっき膜の形成に先立ち、導電膜を形成しなかった以外は前記と同様にして、2種の永久磁石(サンプルNo.17、No.18)を製造した。
【0206】
サンプルNo.1〜No.18の永久磁石について、導電膜および湿式めっき膜の構成を表1に示す。
【0207】
【表1】
Figure 2004022762
【0208】
[永久磁石の評価]
<湿式めっき膜厚の測定>
以上のようにして作製された各永久磁石について、内周側と外周側とにおける湿式めっき膜の平均厚さを測定した。膜厚の測定は、X線膜厚測定法で行った。
【0209】
<塩水噴霧試験>
また、サンプルNo.1〜No.18の各永久磁石について、JIS K 5401に記載の方法に準拠して、24時間暴露試験を実施した。
【0210】
その後、8倍顕微鏡下で、磁石表面の異なる10箇所を観察し、視野内に変色が見られなかった場合には◎として評価した。また、一部変色が1〜2点確認された場合には○として評価した。また、変色が3点以上確認された場合には△として評価した。また、赤錆が1点以上確認された場合には×として評価した。
【0211】
<圧環強度の測定>
また、サンプルNo.1〜No.18の各永久磁石について、圧環強度を測定した。圧環強度の測定は、JIS Z 2507に準じて行った。
【0212】
サンプルNo.1〜No.18の永久磁石について、内周側と外周側における湿式めっき膜の平均厚さ、塩水噴霧試験および圧環強度の測定の結果を表2に示す。
【0213】
【表2】
Figure 2004022762
【0214】
表2から明らかなように、導電膜を形成しなかったサンプルNo.17、No.18の永久磁石(いずれも比較例)では、内周/外周膜厚比が0.5台であったのに対し、導電膜を形成した実施例では、内周/外周膜厚比がいずれも0.8以上であり、外周側と内周側における湿式めっき膜の厚み較差は大幅に縮小されたことがわかる。これは、以下のような理由によるものであると考えられる。
【0215】
すなわち、磁石本体が円筒形状を有しているので、めっきの際に、内周側は陰影部となり電流密度が外周側よりも低くなりやすい。このため、導電膜を形成しなかったサンプルNo.17、No.18の製造においては、これらの影響が大きく、外周側と内周側での膜厚差が大きくなってしまった。これに対し、湿式めっき膜の形成に先立って、磁石本体表面を導電膜で被覆したサンプルNo.1〜No.16の永久磁石(いずれも本発明)では、導電膜の導電効果により、外周側と内周側における電流密度のばらつきを十分に小さくすることができ、その結果、前記のような悪影響を受けることがなく、湿式めっき膜の厚みのばらつきは大幅に縮小された。
【0216】
また、塩水噴霧試験においても、導電膜を形成しなかったサンプルNo.17、No.18の永久磁石(いずれも比較例)では、変色や錆びが見られたのに対して、導電膜を形成したサンプルNo.1〜No.16の永久磁石(いずれも本発明)では、変色がほとんど見られず、良好な耐錆性を有していることがわかった。
【0217】
また、圧環強度の測定においても、サンプルNo.17、No.18の永久磁石(いずれも比較例)では、比較的強度が低かったのに対し、サンプルNo.1〜No.16の永久磁石(いずれも本発明)は、きわめて高い強度を有していた。
【0218】
また、サンプルNo.1〜No.16の永久磁石(いずれも本発明)について、外周面の12箇所(永久磁石の外周面において、円筒の軸を中心に周方向に30°ずつ分割した箇所)について、湿式めっき膜の厚さを測定した。その結果、膜厚のばらつきは、きわめて小さく、いずれも、±0.7μm以下であった。
【0219】
以上の結果より、磁石本体の表面に導電膜を形成することで、湿式めっき膜を湿式めっきにより形成する際に、円筒形状のような複雑な形状を有する磁石においても、各部位での表面電流密度のばらつきを十分に小さくすることができ、これにより、厚みのばらつきの小さい湿式めっき膜を形成することができる。そして、これにより得られる永久磁石は、湿式めっき膜にピンホールの発生や剥離を生じ難く、十分な耐食性、機械的強度を有することがわかった。
【0220】
次に、永久磁石を備えたモータ用部品およびモータについての具体的な実施例について説明する。
【0221】
[ロータ(モータ用部品)の製造]
(実施例2)
以下のようにして、図3に示すようなロータ(モータ用部品)を製造した。
【0222】
まず、合金組成がR−TM−B系合金で構成される磁石粉末(MQI社製のMQP−B粉末)と、エポキシ樹脂と、少量のヒドラジン系酸化防止剤とを混合し、これらを常温で30分間混練して、ボンド磁石用組成物(コンパウンド)を作製した。
【0223】
このとき、磁石粉末、エポキシ樹脂、ヒドラジン系酸化防止剤の配合比率(重量比率)は、それぞれ、96.7wt%、2.8wt%、0.5wt%であった。
【0224】
次いで、このコンパウンドを秤量してプレス装置の金型内に充填し、無磁場中にて、常温にて、圧力1370MPaで圧縮成形してから、170℃でエポキシ樹脂を加熱硬化させ、円筒状のボンド磁石を得た。このボンド磁石に対して、その高さ方向の研磨処理を施した。その後、ボンド磁石を、バレル研磨法により各稜がR0.2になるまで研磨し、これを磁石本体とした。
【0225】
なお、得られた磁石本体の20℃における熱膨張率(線膨張率)αは、12.4[×10−6−1]であった。
【0226】
次に、得られた磁石本体を洗浄した。磁石本体の洗浄としては、まず、アルカリ洗浄(アルカリ脱脂処理)を50℃で2分間行い、引き続き、純水超音波洗浄を1分間、酸洗浄(5wt%塩酸)を1分間、純水超音波洗浄を2分間行った。
【0227】
このようにして洗浄を行った磁石本体の表面に、イオンプレーティング法によりCuからなる導電膜を形成した。
【0228】
導電膜の形成には、図2に示したような高周波励起方式のイオンプレーティング装置を用いた。
【0229】
導電膜形成時における、イオンプレーティング槽内部の圧力は、100〜200Paとし、導入ガスはArガスを用いた。また、DC印加電圧は、3.0±0.2kVとし、処理時間は3〜10分とした。このようなイオンプレーティングは、被めっき部材である磁石本体を回転させながら行った。
【0230】
このようにして、磁石本体の表面に、Cuからなる導電膜を形成した。形成された導電膜の平均厚さは、0.1μmであった。
【0231】
次に、導電膜が形成された磁石本体(以下の説明において、便宜上、単に磁石本体と称する場合がある。)の導電膜の表面に、湿式めっき法により、主にNiから構成される湿式めっき膜を形成した。
【0232】
湿式めっき法による湿式めっき膜の形成は、以下の態様で行った。
まず、磁石本体表面を脱脂洗浄した。脱脂洗浄としては、エースクリーンA−220(奥野製薬市場品)を50g/Lの濃度で溶解させた洗浄液を用いて、50℃で2分間行った。この洗浄液のpHは11.4であった。
【0233】
次に、表面が脱脂された磁石本体を洗浄した。磁石本体の洗浄としては、常温での純水洗浄を1分間行った。
【0234】
上記のようにして洗浄を行った磁石本体に、Niで構成される湿式めっき膜を形成した。
【0235】
湿式めっき膜の形成は、以下のようにして行った。
まず、St(ストライク)Ni電解めっきを行い、導電膜の表面にNi膜を形成した。この電解めっきには、めっき液としてアンモン浴組成で、硫酸Ni:150g/L、塩化Ni:15g/L、ホウ酸:15g/Lのものを使用した。このめっき液のpHは5.2、めっき時における電流密度Dkは1.5Admとした。この電解めっきは、回転バレル治具を用い、このバレルを回転させるとともに、バレル内に設置された電極に電流を流すバレル法により行った。また、浴温、めっき液への浸漬時間は、それぞれ、40℃、15分間とした。
【0236】
電解めっきを施した後、形成されためっき層の表面に、純水超音波洗浄を2分間施し、その後、さらに電解めっき処理を施した。この電解めっきは、回転バレル治具を用い、このバレルを回転させるとともに、バレル内に設置された電極に電流を流すバレル法により行った。電解めっき時におけるめっき液の浴温、浸漬時間、電流密度は、それぞれ、50℃、120分間、0.7A/dmであった。
【0237】
このようにして形成された湿式めっき膜は、外表面側の平均厚さが22.5μm、内表面側の平均厚さが21.3μmであった。
【0238】
また、形成された湿式めっき膜の20℃における熱膨張率(線膨張率)αは、13.3[×10−6−1]であった。
【0239】
また、形成された湿式めっき膜について、摩擦係数μ、ビッカース硬度Hvの測定を行った。
【0240】
摩擦係数μの測定は、JIS R 1613に準じて、ボールオンディスク法により測定を行った。ボールオンディスク型摩擦摩耗試験機としては、Centre Suisse D’Electronique et de Microtechnique SA社製「CSEM TRIBOMETER」を用いた。その結果、湿式めっき膜の摩擦係数μの測定値は、0.35であった。
【0241】
また、湿式めっき膜のビッカース硬度Hvは、測定荷重25gfにて測定した。その結果、湿式めっき膜のビッカース硬度Hvの測定値は、260であった。
【0242】
以上のようにして、導電膜および湿式めっき膜が形成されたボンド磁石を、8極に多極着磁し、永久磁石とした。
【0243】
このようにして得られた永久磁石は、外径19.001mm×内径17.024mm×高さ4.02mmの円筒状(室温(20℃)、自然状態)をなすものであった。また、得られた永久磁石の最大磁気エネルギー積(BH)maxは、75.3kJ/mであった。
【0244】
また、快削鋼材(SUM21)で構成された略円筒状部材を用意し、これに切削加工を施すことにより、ヨークを得た。
【0245】
このようにして得られたヨークは、外径20.503mm×内径18.990mm(先端部付近を除く)×高さ4.20mmの略円筒状(室温(20℃)、自然状態)をなすものであった。また、ヨークの表面粗さRa(内表面)は、1.9μmであった。また、ヨークの20℃における熱膨張率(線膨張率)は、11.7[×10−6−1]であった。
【0246】
以上のようにして得られたヨークと永久磁石とを熱カシメにより接合した。
熱カシメによる接合は、以下のようにして行った。
【0247】
まず、加熱台上で、ヨークの温度が200℃になるように加熱した。このときのヨークの内径は、19.03mmであった。
【0248】
このような状態で、高さ方向の位置が決まる治具を用いて、ヨークの基端側から、その中空部に永久磁石を挿通した。なお、このときの永久磁石の温度は20℃であった。
【0249】
その後、加熱台から冷却台に移動させ、永久磁石が挿通された状態のヨークを冷却し、その温度を20℃にした。
【0250】
以上のようにして得られた永久磁石とヨークとの接合体を用いて、図3に示すようなロータ(モータ用部品)を得た。
【0251】
なお、ヨーク、ハブ、スリーブの構成材料としては、それぞれ、快削鋼材(SUM21)、アルミニウム、真鍮を用い、ヨークとハブとの接合、ハブとスリーブとの接合は、いずれも、圧入により行った。
【0252】
(実施例3)
以下のようにして、図3に示すようなロータ(モータ用部品)を製造した。
【0253】
まず、前記実施例2と同様にして磁石本体(ボンド磁石)を製造し、得られた磁石本体を洗浄した。磁石本体の洗浄としては、まず、アルカリ洗浄(アルカリ脱脂処理)を50℃で10分間行い、引き続き、純水超音波洗浄を1分間、酸洗浄(5wt%塩酸)を1分間、純水超音波洗浄を2分間行った。
【0254】
このようにして洗浄を行った磁石本体の表面に、イオンプレーティング法によりCuからなる導電膜を形成した。
【0255】
導電膜の形成には、図2に示したような高周波励起方式のイオンプレーティング装置を用いた。
【0256】
導電膜形成時における、イオンプレーティング槽内部の圧力は、100〜200Paとし、導入ガスはArガスを用いた。また、DC印加電圧は、3.0±0.2kVとし、処理時間は3〜10分とした。このようなイオンプレーティングは、被めっき部材である磁石本体を回転させながら行った。
【0257】
このようにして、磁石本体の表面に、Cuからなる導電膜を形成した。形成された導電膜の平均厚さは、0.1μmであった。
【0258】
次に、導電膜が形成された磁石本体(以下の説明において、便宜上、単に磁石本体と称する場合がある。)の導電膜の表面に、湿式めっき法により、主にNiから構成される湿式めっき膜を形成した。
【0259】
湿式めっき法による湿式めっき膜の形成は、以下の態様で行った。
まず、磁石本体表面を脱脂洗浄した。脱脂洗浄としては、エースクリーンA−220(奥野製薬市場品)を50g/Lの濃度で溶解させた洗浄液を用いて、50℃で2分間行った。この洗浄液のpHは11.4であった。
【0260】
次に、表面が脱脂された磁石本体を洗浄した。磁石本体の洗浄としては、常温での純水洗浄を1分間行った。
【0261】
上記のようにして洗浄を行った磁石本体に、Niで構成される湿式めっき膜を形成した。
【0262】
湿式めっき膜の形成は、以下のようにして行った。
まず、上記のようにして洗浄を行った磁石本体にNi無電解めっきを施した。この無電解めっきには、めっき液としてトップケミアロイ(奥野製薬工業社製)を用い、めっき液の浴温、浸漬時間は、それぞれ、65℃、60分間とした。
【0263】
無電解めっきを施した後、形成されためっき層の表面に、純水超音波洗浄を2分間施し、その後、さらに電解めっき処理を施した。この電解めっきは、回転バレル治具を用い、このバレルを回転させるとともに、バレル内に設置された電極に電流を流すバレル法により行った。電解めっき時におけるめっき液の浴温、浸漬時間、電流密度は、それぞれ、50℃、120分間、0.7A/dmであった。
【0264】
このようにして形成された湿式めっき膜は、外表面側の平均厚さが22.5μm、内表面側の平均厚さが21.2μmであった。
【0265】
また、形成された湿式めっき膜の20℃における熱膨張率(線膨張率)αは、13.3[×10−6−1]であった。
【0266】
また、形成された湿式めっき膜について、前記実施例2と同様にして、摩擦係数μ、ビッカース硬度Hvの測定を行った。
【0267】
その結果、湿式めっき膜の摩擦係数μの測定値は、0.35、ビッカース硬度Hvの測定値は、270であった。
【0268】
以上のようにして湿式めっき膜が形成されたボンド磁石を、8極に多極着磁し、永久磁石とした。
【0269】
このようにして得られた永久磁石は、外径19.003mm×内径17.025mm×高さ4.01mmの円筒状(室温(20℃)、自然状態)をなすものであった。また、得られた永久磁石の最大磁気エネルギー積(BH)maxは、75.5kJ/mであった。
【0270】
また、快削鋼材(SUM21)で構成された略円筒状部材を用意し、これに切削加工を施すことにより、ヨークを得た。
【0271】
このようにして得られたヨークは、外径20.502mm×内径18.991mm(先端部付近を除く)×高さ4.20mmの略円筒状(室温(20℃)、自然状態)をなすものであった。また、ヨークの表面粗さRa(内表面)は、1.9μmであった。また、ヨークの20℃における熱膨張率(線膨張率)は、11.7[×10−6−1]であった。
以上のようにして得られたヨークの中空部に、前記永久磁石を圧入した。
【0272】
永久磁石の圧入は、永久磁石がヨークに対して傾かないような位置出し治具を用いて、油圧プレスにより行った。
【0273】
このときの永久磁石とヨークとの相対的な移動速度(接近速度)は、5cm/秒であった。
【0274】
以上のようにして得られた永久磁石とヨークとの接合体を用いて、図3に示すようなロータ(モータ用部品)を得た。
【0275】
なお、ヨーク、ハブ、スリーブの構成材料としては、それぞれ、快削鋼材(SUM21)、アルミニウム、真鍮を用い、ヨークとハブとの接合、ハブとスリーブとの接合は、いずれも、前記と同様の熱カシメにより行った。
【0276】
(比較例1)
前記実施例2と同様にして製造した磁石本体(ボンド磁石)の表面に、導電膜を形成することなく、直接、湿式めっき膜を形成した以外は、前記実施例2と同様にして永久磁石を製造した。
【0277】
このようにして得られた永久磁石は、外径19.002mm×内径17.025mm×高さ4.01mmの円筒状(室温(20℃)、自然状態)をなすものであった。
【0278】
また、快削鋼材(SUM21)で構成された略円筒状部材を用意し、これに切削加工を施すことにより、ヨークを得た。
【0279】
このようにして得られたヨークは、外径20.502mm×内径18.991mm(先端部付近を除く)×高さ4.20mmの円筒状(室温(20℃)、自然状態)をなすものであった。また、ヨークの表面粗さRa(内表面)は、1.9μmであった。
【0280】
以上のようにして得られたヨークと永久磁石とを、前記実施例2と同様にして、熱カシメにより接合しようと試みたところ、冷却時において、永久磁石に、微小なひび割れを生じた。
【0281】
以上のようにして得られた永久磁石とヨークとの接合体を用いて、前記実施例2と同様にしてロータ(モータ用部品)を製造した。
【0282】
(比較例2)
前記実施例3と同様にして製造した磁石本体(ボンド磁石)の表面に、導電膜を形成することなく、直接、湿式めっき膜を形成した以外は、前記実施例3と同様にして永久磁石を製造した。
【0283】
このようにして得られた永久磁石は、外径19.003mm×内径17.022mm×高さ4.01mmの円筒状(室温(20℃)、自然状態)をなすものであった。
【0284】
また、快削鋼材(SUM21)で構成された略円筒状部材を用意し、これに切削加工を施すことにより、ヨークを得た。
【0285】
このようにして得られたヨークは、外径20.509mm×内径19.025mm(先端部付近を除く)×高さ4.20mmの円筒状(室温(20℃)、自然状態)をなすものであった。また、ヨークの表面粗さRa(内表面)は、1.9μmであった。
【0286】
以上のようにして得られたヨークと永久磁石とを、前記実施例3と同様にして、圧入により接合しようと試みたところ、湿式めっき膜の一部が削り取られ、磁石本体の一部が露出した状態になった。
【0287】
以上のようにして得られた永久磁石とヨークとの接合体を用いて、前記実施例3と同様にしてロータ(モータ用部品)を製造した。
【0288】
[ロータの評価およびモータの製造]
上記実施例2、3および比較例1、2で製造した各ロータについて、島津製作所社製動釣合試験機(VC 003T形)を用いて回転アンバランス量の測定を実施した。そのときの回転数は3600rpmとした。
回転アンバランス量の測定結果を表3に示す。
【0289】
【表3】
Figure 2004022762
【0290】
表3から、本発明によるロータでは、回転アンバランス量が極めて小さいことがわかる。
【0291】
次に、前記各実施例および各比較例で製造したロータを用いて、図4に示すようなモータを製造した。
【0292】
このようにして得られた各モータについて、ステータのコイルへの通電操作(通電時間:30秒間、最大回転数:7200rpm)を繰り返し行った。
【0293】
本発明のモータでは、駆動時の振動、騒音が比較的小さいものであったのに対し、比較例のモータでは、駆動時の振動、騒音が大きかった。
【0294】
また、比較例のモータでは、上記の通電操作の回数が約30000回目に達する頃から振動、騒音(異音)がさらに激しいものとなった。
【0295】
上記の通電操作を50000回行った後、各モータを分解した。分解した各モータからロータを取り出し、これらの各ロータについて、JIS K 5401に記載の方法に準拠して、24時間暴露試験を実施した。
【0296】
その結果、比較例1、2のロータでは、永久磁石周辺に、赤錆等による変色がはっきりと認められた。これに対し、実施例2、3のロータでは、永久磁石の周辺には錆等による変色が認められなかった。
【0297】
【発明の効果】
本発明では、湿式めっき膜の形成に先立って、磁石本体の表面に、乾式めっき法により導電膜を形成しているので、湿式めっき膜の形成において磁石本体表面の導電性を均一にすることができる。
【0298】
これにより、本発明では、ピンホールの発生がなく、湿式めっき膜を均一かつ緻密に形成することができる。
【0299】
その結果、本発明では、湿式めっき膜の剥離が無く、機械的強度に優れ、十分な耐食性を有する永久磁石を実現することができる。
【0300】
このような効果は、上記永久磁石を、モータまたはモータ用部品に適用したときに特に顕著に表れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の永久磁石の好適な実施形態を示す断面斜視図である。
【図2】イオンプレーティング装置の構成を示す模式図である。
【図3】本発明の永久磁石を適用したモータ用部品(ロータ)の好適な実施形態を示す断面側面図である。
【図4】図3に示すモータ用部品を有するモータの好適な実施形態を示す断面側面図である。
【符号の説明】
1……永久磁石 11……磁石本体 12……導電膜 13……湿式めっき膜
2……イオンプレーティング装置 21……真空容器 22……真空ポンプ
23……ガス導入ニードル弁 24……抵抗加熱部 25……DCソース 26……高周波発生コイル 27……搭載基盤 28……蒸発源 3……ロータ 31……ハブ 32……スリーブ 321……軸受け部 322……軸受け部 323……溝 33……ヨーク 4……モータ 41……シャフト 42……ステータ 421……コア 422……コイル 43……基部 44……フランジ
45……スラスト受け板

Claims (35)

  1. 磁石本体の表面に、乾式めっき法により、主として導電物質で構成された導電膜を形成する工程と、
    前記導電膜の表面に、湿式めっき法により、湿式めっき膜を形成する工程とを有することを特徴とする永久磁石の製造方法。
  2. 前記導電膜をイオンプレーティング法により形成する請求項1に記載の永久磁石の製造方法。
  3. 前記導電膜は、電気伝導度が2[m・Ω−1・mm−2]以上の材料で構成されたものである請求項1または2に記載の永久磁石の製造方法。
  4. 前記導電膜は、Cu、Al、Pd、Au、Ag、Pb、Sn、Ni、Fe、Co、In、V、Cr、Be、Zn、Ti、Mnから選択される1種または2種以上を含むものである請求項1ないし3のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
  5. 前記導電膜の平均厚さは、0.01〜2.0μmである請求項1ないし4のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
  6. 前記湿式めっき膜を電解めっきにより形成する請求項1ないし5のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
  7. 前記湿式めっき膜は、主として、Niで構成されたものである請求項1ないし6のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
  8. 前記湿式めっき膜は、複数の層の積層体である請求項1ないし7のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
  9. 前記湿式めっき膜の平均厚さは、10.0〜40.0μmである請求項1ないし8のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
  10. 前記導電膜の平均厚さをD[μm]、前記湿式めっき膜の平均厚さをD[μm]としたとき、0.00025<D/D<0.20の関係を満足する請求項1ないし9のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
  11. 前記磁石本体は、略円筒状をなすものである請求項1ないし10のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
  12. 前記磁石本体の外周側に形成された前記湿式めっき膜の厚さをDBO[μm]、前記磁石本体の内周側に形成された前記湿式めっき膜の厚さをDBI[μm]としたとき、0.5<DBI/DBO<1.1の関係を満足する請求項11に記載の永久磁石の製造方法。
  13. 前記磁石本体の空孔率は、7.0vol%以下である請求項1ないし12のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
  14. 前記磁石本体は、磁石粉末を結合樹脂で結合してなるボンド磁石である請求項1ないし13のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
  15. 前記磁石粉末は、希土類元素と、遷移金属と、ボロンとを含む組成のものである請求項14に記載の永久磁石の製造方法。
  16. 前記ボンド磁石における前記磁石粉末の含有率は、91.0〜99.0wt%である請求項14または15に記載の永久磁石の製造方法。
  17. 前記磁石本体は、面取りされたものである請求項1ないし16のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
  18. 磁石本体と、
    乾式めっき法により、前記磁石本体の表面に形成された、主として導電物質で構成された導電膜と、
    湿式めっき法により、前記導電膜の表面に形成された湿式めっき膜とを有することを特徴とする永久磁石。
  19. 前記導電膜は、電気伝導度が2[m・Ω−1・mm−2]以上の材料で構成されたものである請求項18に記載の永久磁石。
  20. 前記導電膜は、Cu、Al、Pd、Au、Ag、Pb、Sn、Ni、Fe、Co、In、V、Cr、Be、Zn、Ti、Mnから選択される1種または2種以上を含むものである請求項18または19に記載の永久磁石。
  21. 前記導電膜の平均厚さは、0.01〜2.0μmである請求項18ないし20のいずれかに記載の永久磁石。
  22. 前記湿式めっき膜は、主として、Niで構成されたものである請求項18ないし21のいずれかに記載の永久磁石。
  23. 前記湿式めっき膜は、複数の層の積層体である請求項18ないし22のいずれかに記載の永久磁石。
  24. 前記湿式めっき膜の平均厚さは、10.0〜40.0μmである請求項18ないし23のいずれかに記載の永久磁石。
  25. 前記導電膜の平均厚さをD[μm]、前記湿式めっき膜の平均厚さをD[μm]としたとき0.00025<D/D<0.20の関係を満足する請求項18ないし24のいずれかに記載の永久磁石。
  26. 前記磁石本体は、略円筒状をなすものである請求項18ないし25のいずれかに記載の永久磁石。
  27. 前記磁石本体の外周側に形成された前記湿式めっき膜の厚さをDBO[μm]、前記磁石本体の内周側に形成された前記湿式めっき膜の厚さをDBI[μm]としたとき、0.5<DBI/DBO<1.1の関係を満足する請求項26に記載の永久磁石。
  28. 前記磁石本体の空孔率は7.0vol%以下である請求項18ないし27のいずれかに記載の永久磁石。
  29. 前記磁石本体は、磁石粉末を結合樹脂で結合してなるボンド磁石である請求項18ないし28のいずれかに記載の永久磁石。
  30. 前記磁石粉末は、希土類元素と、遷移金属と、ボロンとを含む組成のものである請求項29に記載の永久磁石。
  31. 前記磁石本体における前記磁石粉末の含有率は91.0〜99.0wt%である請求項29または30に記載の永久磁石。
  32. 前記磁石本体は、面取りされたものである請求項18ないし31のいずれかに記載の永久磁石。
  33. 最大回転数が4000rpm以上のモータに用いられる請求項18ないし32のいずれかに記載の永久磁石。
  34. ハードディスクドライブ用のモータに用いられる請求項18ないし33のいずれかに記載の永久磁石。
  35. 請求項1ないし17のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする永久磁石。
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