JP2004021768A - 位置決め制御方法とその装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】磁気ヘッドの移動時間を制約条件として特定周波数の加振成分を最小化するとともに、目標軌道の算出を簡単な漸化式で行うようにして高速な制御を実現する。
【解決手段】少なくとも3回、その値が変化するステップ状信号α(t)をローパスフィルタへ入力したときの応答を漸化式で算出し、その応答出力を加速度目標軌道101、速度目標軌道102及び位置目標軌道103とする。また、信号α(t)の切り換え時刻T1、T2とローパスフィルタの定数とを、加速度目標軌道のスペクトルが制御対象のもつ固有の共振周波数において局部的に小さい振巾をもつように定める。これにより、機構系の共振で乱されるのを防止しながら、任意の距離のシーク時間を短縮できる。
【選択図】 図3
【解決手段】少なくとも3回、その値が変化するステップ状信号α(t)をローパスフィルタへ入力したときの応答を漸化式で算出し、その応答出力を加速度目標軌道101、速度目標軌道102及び位置目標軌道103とする。また、信号α(t)の切り換え時刻T1、T2とローパスフィルタの定数とを、加速度目標軌道のスペクトルが制御対象のもつ固有の共振周波数において局部的に小さい振巾をもつように定める。これにより、機構系の共振で乱されるのを防止しながら、任意の距離のシーク時間を短縮できる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、位置決め制御方法及びその装置に関し、特に磁気ヘッドを目標トラックへ高速かつ正確に移動させるのに適した位置決め制御方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータの外部記憶装置である磁気ディスク装置は、磁気ヘッドが回転している磁気ディスク面上の目的とするトラックへ移動してデータの記録再生を行っている。このような磁気ディスク装置では、データアクセスの処理速度を向上するため、磁気ヘッドを高速かつ高精度に目標トラック位置へ移動することが必要である。ヘッドの移動方法としては、ヘッドを搭載した機構部を低衝撃で加減速するような移動軌道をディジタル演算により求めて、その移動軌道に追従するように、フィードバックおよびフィードフォワード制御を行う制御方式が、例えば特開平5−143165号で提案されている。
【0003】
この従来方式をより詳しく説明する。移動目標軌道は、ヘッドの移動が完了する指令位置における目標加速度の微分値が零となる加速、減速パターンを示す代数多項式で、移動目標時間をT、初期値を0、移動中の時刻をtとしたとき、移動速度目標軌道v(t)を
【数1】
で与える。但し、v0は定数である。ここでべき乗数jを3以上とし、べき乗数kを2以上に設定するものである。jを3以上と設定することにより、指令位置にヘッドを移動させたときの目標加速度の微分値が0となる。またk=jとすると、目標加速度の加速期間と減速期間とのパターンが相似系となる。とくにk=2、j=3とし、移動距離をLとしたとき、
【数2】
とおくと、加速度a、速度v、変位xの目標軌道は
【数3】
【数4】
【数5】
となる。ヘッドを駆動するアクチュエータはこれらの軌道を目標として制御される。
【0004】
また、本件同一発明者による特開2001−249702号には、磁気ヘッドを含む機構系の共振モード周波数相当の移動時間で位置決めさせる必要がある1トラックシークから16トラックシーク程度の移動距離について、高速かつ目標位置にオーバーシュートやアンダーシュートなく安定なセトリングを可能にする磁気ディスク装置の位置決め制御方法が開示されている。この従来技術は、(イ)高次振動モード周波数のパワーを低下させるような位置・速度軌道生成法、(ロ)外部から外乱が作用しない条件下ではフィードバック系が機能しない場合でもヘッドを目標位置に正確に到達可能にする加速度フィードフォワード補償の生成法、(ハ)移動周波数帯域まで高次の振動モードを正確に同定した制御対象モデルにより補正した位置軌道の生成法からなり、これら3つを組み合わせて1〜16トラックシーク程度の移動距離について高速なシークを行う。このうち特に(イ)に関しては、ステップ目標値を
【数6】
で与えられる伝達関数Gmへ入力したときの応答を目標位置軌道として用いている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特開平5−143165号に開示された技術によれば、簡単な式で目標軌道を生成できる利点がある反面、加速度パターンが1つに決まってしまう。このため、特定の周波数領域に機構系の共振振動がある場合、ヘッド移動により加振される振動が目標位置において許容できる振幅値以下となるようにするには、移動時間を遅くせざるを得ない。即ち短時間での安定な移動制御ができないことになる。
【0006】
一方、特開2001−249702号の技術によれば、機構系共振モード周波数相当の移動時間で位置決め制御を行っても十分な精度を安定に実現できる。しかしこの従来技術では、(数6)に見られるように、固有振動数ωr、減衰定数ζrで表される共振特性の逆モデルを分子多項式に持たせることにより、生成される応答が所望の周波数ωrにおいて加振力を低減するものとなるようにしている。従って、加振力を低減したい固有振動数が複数個ある時には、その個数だけ(数6)の分子の2次式を増やす必要があり、それだけ目標軌道算出のための演算量が増大し、何らかの改善策が求められていた。
【0007】
本発明の目的は、ヘッドの移動距離の大小に関係なく、つねに少ない演算処理によって安定かつ高速に位置決めを行えるようにした位置決め制御方法とその装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、
制御対象の初期位置と到達目標位置との間の距離及び制御対象を初期位置から到達目標位置へ移動させるための移動時間が与えられたときに制御対象を初期位置から到達目標位置へ移動させるための加速度、速度、及び位置の目標軌道を生成するための目標軌道生成部と、この目標軌道生成部により生成された目標軌道から制御対象を駆動するためのフィードフォワード制御信号を生成するフィードフォワード制御信号生成部と、前記フィードフォワード制御信号を入力として制御対象の数式モデルにより算出したその時点での目標位置と位置検出手段により検出された検出位置の差である位置誤差を算出する位置誤差検出部と、前記位置誤差を入力として位相補償処理を行いその出力を前記フィードフォワード制御信号に加算する位相補償部とを備えた位置決め制御装置において、
前記目標軌道生成部は、その最後の切り換え時刻が前記移動時間の終了時刻と一致するような少なくとも3回の切り換え時刻を有し、かつ移動開始時刻と前記切り換え時刻以外に於いてはその時間微分が0となるステップ状信号を生成する第1生成部と、与えられたローパスフィルタの数式モデルへ前記ステップ状信号を入力したときの応答を加速度目標軌道として、またこの加速度目標軌道の時間積分結果を速度目標軌道として、さらにこの速度目標軌道の時間積分結果を位置目標軌道として漸化式を用いて生成する第2生成部とから構成したことを特徴とする位置決め制御装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記の位置決め制御装置において、前記第2生成部により生成された加速度目標軌道の周波数スペクトルが、制御対象のもつ共振周波数において局部的に小さい振巾を有するように前記切り換え時刻及び前記ローパスフィルタ数式モデルのパラメータを設定したことを特徴とする位置決め制御装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、上記の位置決め制御装置において、前記ローパスフィルタは1次または3次のローパスフィルタであることを特徴とする位置決め制御装置を提供する。
【0011】
また、本発明は、制御対象の初期位置と到達目標位置との間の距離及び制御対象を初期位置から到達目標位置へ移動させるための移動時間が与えられたときに制御対象を初期位置から到達目標位置へ移動させるための加速度、速度、及び位置の目標軌道を生成するための目標軌道生成部と、この目標軌道生成部により生成された目標軌道から制御対象を駆動するためのフィードフォワード制御信号を生成するフィードフォワード制御信号生成部と、前記フィードフォワード制御信号を入力として制御対象の数式モデルにより算出したその時点での目標位置と位置検出手段により検出された検出位置の差である位置誤差を算出する位置誤差検出部と、前記位置誤差を入力として位相補償処理を行いその出力を前記フィードフォワード制御信号に加算する位相補償部とを備えた位置決め制御装置において、
前記目標軌道生成部は、その最後の切り換え時刻が前記移動時間の終了時刻より前に定めた切り換え時刻と一致するような少なくとも3回の切り換え時刻を有し、かつ移動開始時刻と前記切り換え時刻以外に於いてはその時間微分が0となるステップ状信号を生成する第1生成部と、与えられた1次の第1ローパスフィルタの数式モデルへ前記ステップ状信号を入力したときの応答とその応答の前記最後の切り換え時刻に於ける値を初期値として少なくとも3次以上の第2ローパスフィルタの自由応答とを加速度目標軌道として、またこの加速度目標軌道の時間積分結果を速度目標軌道として、さらにこの速度目標軌道の時間積分結果を位置目標軌道として、漸化式を用いて生成する第2生成部とから構成したことを特徴とする位置決め制御装置を提供する。
【0012】
また、本発明は、制御対象の初期位置と到達目標位置との間の距離及び制御対象を初期位置から到達目標位置へ移動させるための移動時間が与えられたときに制御対象を初期位置から到達目標位置へ移動させるための位置決め制御方法であって、
その最後の切り換え時刻が前記移動時間の終了時刻と一致するような少なくとも3回の切り換え時刻を有し、かつ移動開始時刻と前記切り換え時刻以外に於いてはその時間微分が0となるステップ状信号を生成し、このステップ状信号を与えられたローパスフィルタの数式モデルへ入力したときの応答を加速度目標軌道として、またこの加速度目標軌道の時間積分結果を速度目標軌道として、さらにこの速度目標軌道の時間積分結果を位置目標軌道として漸化式を用いて生成し、かくして生成した加速度目標軌道、速度目標軌道及び位置目標軌道に沿って制御対象が移動するように制御することを特徴とする位置決め制御方法を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、上記の位置決め制御方法において、前記生成した加速度目標軌道周波数スペクトルが、制御対象のもつ共振周波数において局部的に小さい振巾を有するように前記切り換え時刻及び前記ローパスフィルタ数式モデルのパラメータを設定したことを特徴とする位置決め制御方法を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図2は、磁気ディスク装置のヘッド位置決め制御系の構成図を示しており、所定の速度で回転するスピンドルモータ8が図示しないベースに固定されて、このスピンドルモータ8には、記録媒体である磁気ディスク4が固定されている。磁気ディスク4の側方向には、ピボット軸受3が、スピンドルモータ軸に平行になるように設けられている。磁気ヘッド1の保持部材であるヘッド支持ばね5とキャリッジ7はピボット軸受3に揺動可能に固定されている。磁気ヘッド1を移動させるための動力はボイスコイルモータ(VCM)2により発生する。ボイスコイルモータ2の構成部品である駆動コイルは前記キャリッジ7に固定されている。磁気ヘッド1を位置決めする機構としての磁気ヘッド1、ヘッド支持ばね5、キャリッジ7、ピボット軸受3、VCM2はまとめてヘッドアクチュエータもしくは単位アクチュエータと呼ぶ。
【0015】
MPU19に対してはバス15を介してROM18、RAM17が設けられる。ROM18にはMPU19で実行する本発明のシーク制御を含む各種の制御プログラムが格納され、また各種の制御に必要なパラメータも格納されている。MPU19に対してはバス15を介してインターフェースコントローラ20が接続され、ホスト側コントローラ21のコマンドを受けて、MPU19に対してリード、ライトのアクセス要求を出す。
【0016】
MPU19に対してはバス15を介して、アクチュエータを駆動する電流を制御するパワーアンプ16、サーボ信号復調器14が、それぞれDA変換器27、AD変換器26を介して接続されている。サーボ情報はディスク媒体上に放射状に記録されたサーボセクター12とよぶ領域に書き込まれており、ヘッド1で読み取ったサーボ情報22は、増幅器13を介してサーボ信号復調器14に取り込まれ、ここでトラック番号およびヘッド位置信号24が復調され、AD変換器26でサンプリングされ、ディジタル化された位置信号71としてMPU19へ入力される。それに基づいてMPU19はパワーアンプ16に出力する操作信号68を計算する。この操作信号68は、DAコンバータ27によりアナログ電圧に変換され、パワーアンプ16への電流指令値25として出力される。
【0017】
図3は、本発明の位置決め制御装置の構成例を示すブロック線図で、点線枠の部分は図2のMPU19の処理により実現される。同図において、制御対象の数式モデル38は伝達関数Gp(s)をもつとする。これは図2の電圧指令値25からヘッド位置24までの周波数特性を表す伝達関数である。特にVCM電流6から実際のヘッドの位置(磁気ディスク4の中心からヘッド1までの半径方向の距離)までの伝達特性を機構系モデルとすると、その伝達関数P(s)は一般に(数7)のように複数の振動モードの和で表される。
【数7】
ここで、Kは推力定数、慣性モーメント等から求められる機構系モデルの前向きゲインを表す。制御対象38の出力であるヘッド位置24はAD変換器26で一定サンプリング周期Tsでサンプリングされ、ディジタル化された位置信号71となる。
【0018】
位相補償器36は、制御系の安定性を確保するための微分器と定常特性を改善するための積分器からなり、その伝達特性Gc(z)の前向きゲインを調整することで信号39から信号71の一巡伝達特性を調整し、サーボ帯域が定められる。位相補償器36の出力はTs/N周期毎に計算され、DA変換器27でTs/N期間一定値に保持される。このようなDAコンバータの動作モデルをZOH(零次ホールダ)で表している。
【0019】
伝達関数GFF(z)をもつ数式モデル33は、後述する目標軌道32から制御対象を駆動する加速度フィードフォワード電流指令34を計算する為の数式モデルである。この伝達関数GFF(z)は制御対象の逆モデルで与えられる。逆モデルを得る際の制御対象モデルは、例えば2重積分器で表す。
【0020】
伝達関数GPO(z)をもつ数式モデル35は、加速度フィードフォワード電流指令34から目標位置軌道40を計算するための数式モデルで、図2の操作信号68からディジタル位置信号71までの伝達特性をモデル化したものである。具体的には、制御対象の数式モデル38の伝達関数Gp(s)として、ヘッド移動速度に対応した周波数帯域を含む高次の振動モードを正確に同定したものを用い、これに位置検出から制御入力信号68出力までの時間遅れと、VCMアンプ等の位相遅れの特性を時間遅れに換算して求めた等価時間遅れを付加したモデルで表す。
【0021】
以上に説明した図1のブロック31を除いた部分の構成は、前述した特開2001−249702号と同様である。一方、目標軌道を生成するブロック31の演算は、上記公知技術では(数6)もしくはその分子を抑制対象周波数の数に応じて次数を増やした式のステップ応答を算出するもので、ここに演算量の軽減が求められていた。本発明の第1の実施の形態としては、ブロック31による目標軌道の計算を、複数回のステップ状変化を呈する加速度目標値を一次のローパスフィルタに入力したときの応答を算出することにより行うもので、以下その詳細を説明する。
【0022】
まず用いるローパスフィルタを
【数8】
で表す。ここでa<0はパラメータである。次にこのローパスフィルタへ入力する加速度目標値30を3回のステップ状変化を呈する図1(a)の信号α(t)とする。これは6個のパラメータA1、A2、A3、T1、T2、T3で表され、t=0〜T1で振巾A1(<0)、t=T1〜T2で振巾A2(>0)、t=T2〜T3で振巾A3(<0)となるステップ状の関数である。t=0は制御開始時刻、t=T3は目標位置へ到達して制御が終了する時刻で、ここで制止するように加速度目標値も0とする。
このような信号α(t)はs関数でStpfft(s)と書くと
【数9】
で表される。従って、この信号をローパスフィルタへ入力したときの応答出力をAccfft(s)と書くと、(数8)、(数9)から
【数10】
となる。
【0023】
ここで(数9)の入力は、規格化距離1(位置−1から0へ)を規格化時間1でヘッド移動を行うための入力とする。(数10)を時間領域へ変換すれば加速度目標軌道Acc(t)が得られ、速度目標軌道Vel(t)は加速度目標軌道Acc(t)を時間について積分して得られ、さらに位置目標軌道Pos(t)は速度目標軌道Vel(t)を時間について積分することにより得られる。これら積分を行った時の積分定数を初期条件
【数11】
により定めれば、得られた各目標軌道Acc(t)、Vel(t)、Pos(t)は、上記の規格化時間1でヘッドを位置−1から0へ移動するための目標軌道を与える。また、位置0へ到達した時刻t=1の終端条件として、ヘッドが滑らかに目標位置0へ到達して制止する条件
【数12】
を与えると、目標軌道に含まれるパラメータA1〜A3、T1、T2、aのうちA1〜A3の3個を他のパラメータで表すことができる。従って残ったパラメータa、T1、T2は任意に選べる。なお、(数11)(数12)では、静止状態から出発して目標位置0へヘッドが滑らかに到達して静止するという条件を与えたが、複数の軌道を切り換えながら順次移動していく場合には、1つの軌道の終端条件と次の軌道の初期条件が一致するようにしておけば、軌道切り換え時に必ずしも静止させる必要はない。
【0024】
さて、従来技術で述べたように、一般に機構系は共振特性を持つことがあり、これらの共振点では加速度目標軌道のスペクトルに於ける共振周波数成分の振巾をできるだけ小さくして不要な振動を抑制したい。加速度目標軌道のスペクトル振巾は(数10)のAccfft(s)でs=jwとおいたときの振巾|Accfft(jw)|であり、これには前述のように自由に選べる3つのパラメータa、T1、T2が含まれている。従って、このパラメータa、T1、T2に種々の値を与えて抑制したい周波数に於いて|Accfft(jw)|が極小値をもつようにパラメータa、T1、T2を定めれば、機構系共振点での振動励起を抑制することのできる目標軌道を生成することができる。そして|Accfft(jw)|の極小値を求める処理は、例えば Matlab の “Optimization Toolbox” を用いればよい。この計算は従来より公知のものであるので、その詳細は省略する。
【0025】
以上のようにして規格化した目標軌道に含まれる全てのパラメータが決まるが、図3のブロック31は決定した目標軌道を時間関数として実際に算出し、刻々とその値を出力する必要がある。このためにまず以上に説明した目標軌道生成法を連続時間状態方程式として表す。
【数13】
但し行列Aa、Bbは
【数14】
である。(数13)の右辺第3行、第4行は、(数8)のローパスフィルタ及び図1(a)の入力関数α(t)から求められる。
【0026】
(数13)から、行列s・I−Aa(I:単位行列)の逆ラプラス変換を行い
【数15】
を求めておくと、(数13)はこの行列Aadを用いて離散化され、各サンプル時刻における目標軌道が逐次演算可能となる。即ち、サンプリング周期をTsで表し、加速度目標軌道α(t)が切り換えられる時刻0、T1、T2を離散化した時刻k0=0/Ts、k1=T1/Ts、k2=T2/Tsとすると、Arefは
【数16】
で与えられ、(数13)は(数17)の漸化式となる。
【数17】
但しk=t/Tsであり、また右辺のCa13〜Ca34は以下の(数18)〜(数23)で与えられる。
【数18】
【数19】
【数20】
【数21】
【数22】
【数23】
【0027】
図1(a)〜図1(c)には、図1(a)の入力α(t)に対する規格化した目標軌道の計算例が示されている。即ち図1(a)には加速度目標軌道101、図1(b)には速度目標軌道102、図1(c)には位置目標軌道103が示されている。また図4には、図1(a)の加速度目標軌道101のスペクトル104が示されている。これらの例は、機構系の共振周波数が2200Hzと4200Hzにあり、これらの周波数成分を抑圧するように各パラメータを求めたもので、図4にみられるように2つの共振周波数で加速度目標軌道の振巾が局部的に小さくなっているのがわかる。
【0028】
(数17)をみると、サンプリング周期TsやCa13〜Ca34はすべて定数であるから、この式によると目標軌道の時間関数を簡単な計算で逐次算出でき、従来の(数3)〜(数5)や(数6)に基づく演算に比べてはるかに短い時間での計算が可能である。また、抑制対象周波数が複数個あっても、(数17)は同じ形であって演算が複雑化することもない。
【0029】
なお、ヘッド位置決め制御の実行時には、図示を省略した上位系により、ヘッドの移動時間Tと移動距離Lが図3の信号30として与えられるので、規格化された値として(数17)の漸化式で算出された加速度、速度及び位置の目標軌道は、それぞれL倍、L/T倍、及びL/T2倍してブロック31から出力する。この出力32を用いてブロック33では加速度フィードフォワード電流指令34を計算し、ブロック35ではこの電流指令から位置の目標軌道40を計算する。以下、前述した特開2001−249702号と同時にしてヘッドの位置決め制御が実行される。
【0030】
また、抑制したい周波数を図1、図4では2つの場合を示したが、この周波数が増えると、(数10)で自由に選定できるパラメータa、T1、T2の3個では十分な抑制特性が得られないケースも生じる。このときはローパスフィルタへの入力α(t)として4回あるいはそれ以上値の変わるステップ状関数を、用いればよい。
【0031】
次に本発明の第2の実施の形態を説明する。この実施の形態では目標位置へ到達時の加速度の微分値が零となるような軌道を追加して目標到達を滑らかに行うようにするために、目標位置へ近づいたときにその位置(これを以下近接位置と呼ぶ)、速度、加速度の状態量を初期値として自由応答により零に収束する軌道を新に生成するものである。上記近接位置へ到達するまでの軌道は前記した図1(a)の入力α(t)を(数8)のローパスフィルタへ入力したときの応答を、そのパラメータを抑制対象周波数で加速度目標軌道のスペクトルが小さくなるようにした条件で求め、(数17)の漸化式で計算した軌道とする。近接位置以降の目標軌道生成モデルGm1(s)としては
【数24】
を用い、その近接位置に於ける初期値を(数17)で求めた軌道の値として以降は自由応答(外力なし)とする。近接位置以降の加速度目標軌道はこの自由応答出力、速度目標軌道は加速度目標軌道の時間積分、位置目標軌道は速度目標軌道の時間積分として与える。これらの目標軌道は自由応答でいずれも0に収束する。
【0032】
以下では特にm=3、ak=b(k=1〜3)として近接位置以降の目標軌道生成モデルを
【数25】
とする。(数17)を求めた時と同様に(数25)の応答の連続時間状態方程式は
【数26】
で与えられる。但し行列Aa、Bbは
【数27】
である。(数26)は逆ラプラス変換
【数28】
で求められる行列Abdを用いて離散化することができ、
【数29】
となる。但しk=t/Tsは離散化した時刻、Cb11〜Cb33は(数30)〜(数38)である。
【数30】
【数31】
【数32】
【数33】
【数34】
【数35】
【数36】
【数37】
【数38】
【0033】
従って、近接位に於ける位置、速度、加速度を初期値として与えれば次のサンプルにおける軌道が(数29)により逐次演算可能である。図5(a)には、この漸化式により計算された加速度の軌道111が示されている。同図の時刻T4が近接位置に達したときの時刻で、それ以前の軌道は図1(a)と同じである。但し時間軸、加速度ともに規格化したものではなく、実際の値の例で示している。図5(b)はこの時の位置目標軌道112を示している。これらの図から、加速度及び位置の終端における整定が滑らかになっていることがわかる。なお、近接位置の時刻T4が目標時刻Tに十分近ければ、近接位置以降の目標軌道の波形を変えても加速度目標軌道のスペクトルが受ける変化は微小で、抑制対象の周波数が大きくずれることはない。
【0034】
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。図1に示した第1の実施の形態では、一次のローパスフィルタを用いて、小さい演算量で抑制対象周波数での加速度目標軌道を小さくするものであり、図5で示した第2の実施の形態では目標位置到達近辺の加速度目標軌道を滑らかな形にしてヘッドに無駄な力が加わらないようにする制御を行った。ここでは、加速度目標軌道の切り換え直後の時間変化率を0とするようにして、やはりヘッドを滑らかに動かせるようにする制御法を用いる。このために、三次以上のローパスフィルタ
【数39】
を用いる。このGlpfn(s)の逆ラプラス変換は、t=0における微分値が零となることから
【数40】
であり、このtに関する微分は
【数41】
となるから、n≧3であるとt=0においてこの微分値は0になる。これは(数39)のフィルタへの入力がステップ状に変化した直後には、必ずフィルタ出力、即ち加速度目標軌道の時間微分が0になることを保証する。
【0035】
以下では簡単のためローパスフィルタの次数を3次とし、このときの加速度目標軌道の算出法及び制御対象周波数でのスペクトルを小さくする方法を説明する。
【数42】
このローパスフィルタへの入力β(t)は図6に示されており、これは図1の場合と同様に3回の切り換え点をもつステップ状の信号であるが、図1の場合とはA1〜A3の極性が逆の例である。各切り換え時刻はT1、T2、T3である。この入力信号β(t)はs関数で表すと、図1の関数α(t)の場合と同じ(数9)で与えられる。従ってβ(t)を入力したときの3次ローパスフィルタ出力は
【数43】
となる。
【0036】
ここで図1の場合と同様に、フィルタ入力β(t)を規格化距離1を規格化時間1でヘッド移動を行うための信号とし、(数43)を時間領域へ変換して規格化した加速度目標軌道、その時間積分で速度目標軌道と位置目標軌道の各々の時間関数Acc(t)、Vel(t)、Pos(t)を図1の場合と同じ初期条件及び同じ終端条件を用いて求める。そうすると、これら目標軌道には3個のパラメータa、T1、T2が残るので、抑制対象周波数において加速度目標軌道の周波数スペクトル|Accfft(jω)|の振巾が極小値をとるように上記パラメータを定める。これも図1の場合と同様である。
【0037】
目標軌道に含まれるパラメータが決まると、次に実際に目標軌道を各時刻に算出するための漸化式を求める。まず、(数42)のローパスフィルタを用いたときの連続時間状態方程式は
【数44】
で与えられる。但し
【数45】
である。(数45)のAcを用いて行列s・I−Acの逆ラプラス変換を行い、
【数46】
により行列Acdを求めておくと、(数44)はこれを用いて離散化される。具体的には(数44)のArefを図1と同じ(数16)としたとき、
【数47】
となる。
【0038】
図6には、(数47)を用いて算出した加速度目標軌道121が示されている。また図7には、加速度目標軌道121のスペクトルが示されており、図中丸印の部分で振巾が極小値をもつようにパラメータT1、T2、aを設定している。図4と図6からわかるように、第1の実施の形態の図4では、加速度目標軌道の時間変化率が大きかった目標値の切り換え時刻T1、T2において、図6の場合には切り換え直後の加速度目標軌道の変化率が零となっており、加速度の整定も滑らかなことがわかる。
【0039】
なお、ヘッド位置決め制御の実行時には、上位系から与えられるヘッド移動時間T、移動距離Lに応じて各目標軌道を修正するのは第1の実施の形態の場合と同じである。また、抑制対象周波数が多くなったときは、(数39)の特性を持つローパスフィルタへの入力信号β(t)のステップ数を増やして対応するのも同様である。
【0040】
以上では、磁気ヘッドの位置決め制御として本発明を説明してきたが、制御対象は磁気ヘッドに限らず、駆動する加速度信号のスペクトル内に共振周波数を有するような機構系、たとえば半導体露光装置に用いられるXYステージの位置決め制御に用いても同様に効果があることは明らかである。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、ローパスフィルタを離散化して得られる簡単な漸化式を用いて少ない演算規模で目標軌道を生成し位置決め制御を行うことができ、かつローパスフィルタへの入力信号の切り換えタイミングを選ぶことにより抑制対象周波数に於ける加速度目標軌道のスペクトルを極小化して振動の少ない制御を実現できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に於ける加速度目標値と生成された目標軌道の時間波形例である。
【図2】磁気ディスク装置のヘッド位置決め制御系の構成図である。
【図3】本発明の位置決め制御系のブロック線図である。
【図4】図1の加速度目標軌道のスペクトル波形である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に於ける加速度目標軌道及び位置目標軌道の時間波形例である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に於ける加速度目標値と生成された加速度目標軌道の時間波形例である。
【図7】図6の加速度目標軌道のスペクトル波形である。
【符号の説明】
31 目標軌道生成ブロック
33 加速度フィードフォワード電流指令演算ブロック
35 目標位置軌道演算ブロック
36 位相補償ブロック
38 制御対象モデル
【発明の属する技術分野】
本発明は、位置決め制御方法及びその装置に関し、特に磁気ヘッドを目標トラックへ高速かつ正確に移動させるのに適した位置決め制御方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータの外部記憶装置である磁気ディスク装置は、磁気ヘッドが回転している磁気ディスク面上の目的とするトラックへ移動してデータの記録再生を行っている。このような磁気ディスク装置では、データアクセスの処理速度を向上するため、磁気ヘッドを高速かつ高精度に目標トラック位置へ移動することが必要である。ヘッドの移動方法としては、ヘッドを搭載した機構部を低衝撃で加減速するような移動軌道をディジタル演算により求めて、その移動軌道に追従するように、フィードバックおよびフィードフォワード制御を行う制御方式が、例えば特開平5−143165号で提案されている。
【0003】
この従来方式をより詳しく説明する。移動目標軌道は、ヘッドの移動が完了する指令位置における目標加速度の微分値が零となる加速、減速パターンを示す代数多項式で、移動目標時間をT、初期値を0、移動中の時刻をtとしたとき、移動速度目標軌道v(t)を
【数1】
で与える。但し、v0は定数である。ここでべき乗数jを3以上とし、べき乗数kを2以上に設定するものである。jを3以上と設定することにより、指令位置にヘッドを移動させたときの目標加速度の微分値が0となる。またk=jとすると、目標加速度の加速期間と減速期間とのパターンが相似系となる。とくにk=2、j=3とし、移動距離をLとしたとき、
【数2】
とおくと、加速度a、速度v、変位xの目標軌道は
【数3】
【数4】
【数5】
となる。ヘッドを駆動するアクチュエータはこれらの軌道を目標として制御される。
【0004】
また、本件同一発明者による特開2001−249702号には、磁気ヘッドを含む機構系の共振モード周波数相当の移動時間で位置決めさせる必要がある1トラックシークから16トラックシーク程度の移動距離について、高速かつ目標位置にオーバーシュートやアンダーシュートなく安定なセトリングを可能にする磁気ディスク装置の位置決め制御方法が開示されている。この従来技術は、(イ)高次振動モード周波数のパワーを低下させるような位置・速度軌道生成法、(ロ)外部から外乱が作用しない条件下ではフィードバック系が機能しない場合でもヘッドを目標位置に正確に到達可能にする加速度フィードフォワード補償の生成法、(ハ)移動周波数帯域まで高次の振動モードを正確に同定した制御対象モデルにより補正した位置軌道の生成法からなり、これら3つを組み合わせて1〜16トラックシーク程度の移動距離について高速なシークを行う。このうち特に(イ)に関しては、ステップ目標値を
【数6】
で与えられる伝達関数Gmへ入力したときの応答を目標位置軌道として用いている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特開平5−143165号に開示された技術によれば、簡単な式で目標軌道を生成できる利点がある反面、加速度パターンが1つに決まってしまう。このため、特定の周波数領域に機構系の共振振動がある場合、ヘッド移動により加振される振動が目標位置において許容できる振幅値以下となるようにするには、移動時間を遅くせざるを得ない。即ち短時間での安定な移動制御ができないことになる。
【0006】
一方、特開2001−249702号の技術によれば、機構系共振モード周波数相当の移動時間で位置決め制御を行っても十分な精度を安定に実現できる。しかしこの従来技術では、(数6)に見られるように、固有振動数ωr、減衰定数ζrで表される共振特性の逆モデルを分子多項式に持たせることにより、生成される応答が所望の周波数ωrにおいて加振力を低減するものとなるようにしている。従って、加振力を低減したい固有振動数が複数個ある時には、その個数だけ(数6)の分子の2次式を増やす必要があり、それだけ目標軌道算出のための演算量が増大し、何らかの改善策が求められていた。
【0007】
本発明の目的は、ヘッドの移動距離の大小に関係なく、つねに少ない演算処理によって安定かつ高速に位置決めを行えるようにした位置決め制御方法とその装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、
制御対象の初期位置と到達目標位置との間の距離及び制御対象を初期位置から到達目標位置へ移動させるための移動時間が与えられたときに制御対象を初期位置から到達目標位置へ移動させるための加速度、速度、及び位置の目標軌道を生成するための目標軌道生成部と、この目標軌道生成部により生成された目標軌道から制御対象を駆動するためのフィードフォワード制御信号を生成するフィードフォワード制御信号生成部と、前記フィードフォワード制御信号を入力として制御対象の数式モデルにより算出したその時点での目標位置と位置検出手段により検出された検出位置の差である位置誤差を算出する位置誤差検出部と、前記位置誤差を入力として位相補償処理を行いその出力を前記フィードフォワード制御信号に加算する位相補償部とを備えた位置決め制御装置において、
前記目標軌道生成部は、その最後の切り換え時刻が前記移動時間の終了時刻と一致するような少なくとも3回の切り換え時刻を有し、かつ移動開始時刻と前記切り換え時刻以外に於いてはその時間微分が0となるステップ状信号を生成する第1生成部と、与えられたローパスフィルタの数式モデルへ前記ステップ状信号を入力したときの応答を加速度目標軌道として、またこの加速度目標軌道の時間積分結果を速度目標軌道として、さらにこの速度目標軌道の時間積分結果を位置目標軌道として漸化式を用いて生成する第2生成部とから構成したことを特徴とする位置決め制御装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記の位置決め制御装置において、前記第2生成部により生成された加速度目標軌道の周波数スペクトルが、制御対象のもつ共振周波数において局部的に小さい振巾を有するように前記切り換え時刻及び前記ローパスフィルタ数式モデルのパラメータを設定したことを特徴とする位置決め制御装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、上記の位置決め制御装置において、前記ローパスフィルタは1次または3次のローパスフィルタであることを特徴とする位置決め制御装置を提供する。
【0011】
また、本発明は、制御対象の初期位置と到達目標位置との間の距離及び制御対象を初期位置から到達目標位置へ移動させるための移動時間が与えられたときに制御対象を初期位置から到達目標位置へ移動させるための加速度、速度、及び位置の目標軌道を生成するための目標軌道生成部と、この目標軌道生成部により生成された目標軌道から制御対象を駆動するためのフィードフォワード制御信号を生成するフィードフォワード制御信号生成部と、前記フィードフォワード制御信号を入力として制御対象の数式モデルにより算出したその時点での目標位置と位置検出手段により検出された検出位置の差である位置誤差を算出する位置誤差検出部と、前記位置誤差を入力として位相補償処理を行いその出力を前記フィードフォワード制御信号に加算する位相補償部とを備えた位置決め制御装置において、
前記目標軌道生成部は、その最後の切り換え時刻が前記移動時間の終了時刻より前に定めた切り換え時刻と一致するような少なくとも3回の切り換え時刻を有し、かつ移動開始時刻と前記切り換え時刻以外に於いてはその時間微分が0となるステップ状信号を生成する第1生成部と、与えられた1次の第1ローパスフィルタの数式モデルへ前記ステップ状信号を入力したときの応答とその応答の前記最後の切り換え時刻に於ける値を初期値として少なくとも3次以上の第2ローパスフィルタの自由応答とを加速度目標軌道として、またこの加速度目標軌道の時間積分結果を速度目標軌道として、さらにこの速度目標軌道の時間積分結果を位置目標軌道として、漸化式を用いて生成する第2生成部とから構成したことを特徴とする位置決め制御装置を提供する。
【0012】
また、本発明は、制御対象の初期位置と到達目標位置との間の距離及び制御対象を初期位置から到達目標位置へ移動させるための移動時間が与えられたときに制御対象を初期位置から到達目標位置へ移動させるための位置決め制御方法であって、
その最後の切り換え時刻が前記移動時間の終了時刻と一致するような少なくとも3回の切り換え時刻を有し、かつ移動開始時刻と前記切り換え時刻以外に於いてはその時間微分が0となるステップ状信号を生成し、このステップ状信号を与えられたローパスフィルタの数式モデルへ入力したときの応答を加速度目標軌道として、またこの加速度目標軌道の時間積分結果を速度目標軌道として、さらにこの速度目標軌道の時間積分結果を位置目標軌道として漸化式を用いて生成し、かくして生成した加速度目標軌道、速度目標軌道及び位置目標軌道に沿って制御対象が移動するように制御することを特徴とする位置決め制御方法を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、上記の位置決め制御方法において、前記生成した加速度目標軌道周波数スペクトルが、制御対象のもつ共振周波数において局部的に小さい振巾を有するように前記切り換え時刻及び前記ローパスフィルタ数式モデルのパラメータを設定したことを特徴とする位置決め制御方法を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図2は、磁気ディスク装置のヘッド位置決め制御系の構成図を示しており、所定の速度で回転するスピンドルモータ8が図示しないベースに固定されて、このスピンドルモータ8には、記録媒体である磁気ディスク4が固定されている。磁気ディスク4の側方向には、ピボット軸受3が、スピンドルモータ軸に平行になるように設けられている。磁気ヘッド1の保持部材であるヘッド支持ばね5とキャリッジ7はピボット軸受3に揺動可能に固定されている。磁気ヘッド1を移動させるための動力はボイスコイルモータ(VCM)2により発生する。ボイスコイルモータ2の構成部品である駆動コイルは前記キャリッジ7に固定されている。磁気ヘッド1を位置決めする機構としての磁気ヘッド1、ヘッド支持ばね5、キャリッジ7、ピボット軸受3、VCM2はまとめてヘッドアクチュエータもしくは単位アクチュエータと呼ぶ。
【0015】
MPU19に対してはバス15を介してROM18、RAM17が設けられる。ROM18にはMPU19で実行する本発明のシーク制御を含む各種の制御プログラムが格納され、また各種の制御に必要なパラメータも格納されている。MPU19に対してはバス15を介してインターフェースコントローラ20が接続され、ホスト側コントローラ21のコマンドを受けて、MPU19に対してリード、ライトのアクセス要求を出す。
【0016】
MPU19に対してはバス15を介して、アクチュエータを駆動する電流を制御するパワーアンプ16、サーボ信号復調器14が、それぞれDA変換器27、AD変換器26を介して接続されている。サーボ情報はディスク媒体上に放射状に記録されたサーボセクター12とよぶ領域に書き込まれており、ヘッド1で読み取ったサーボ情報22は、増幅器13を介してサーボ信号復調器14に取り込まれ、ここでトラック番号およびヘッド位置信号24が復調され、AD変換器26でサンプリングされ、ディジタル化された位置信号71としてMPU19へ入力される。それに基づいてMPU19はパワーアンプ16に出力する操作信号68を計算する。この操作信号68は、DAコンバータ27によりアナログ電圧に変換され、パワーアンプ16への電流指令値25として出力される。
【0017】
図3は、本発明の位置決め制御装置の構成例を示すブロック線図で、点線枠の部分は図2のMPU19の処理により実現される。同図において、制御対象の数式モデル38は伝達関数Gp(s)をもつとする。これは図2の電圧指令値25からヘッド位置24までの周波数特性を表す伝達関数である。特にVCM電流6から実際のヘッドの位置(磁気ディスク4の中心からヘッド1までの半径方向の距離)までの伝達特性を機構系モデルとすると、その伝達関数P(s)は一般に(数7)のように複数の振動モードの和で表される。
【数7】
ここで、Kは推力定数、慣性モーメント等から求められる機構系モデルの前向きゲインを表す。制御対象38の出力であるヘッド位置24はAD変換器26で一定サンプリング周期Tsでサンプリングされ、ディジタル化された位置信号71となる。
【0018】
位相補償器36は、制御系の安定性を確保するための微分器と定常特性を改善するための積分器からなり、その伝達特性Gc(z)の前向きゲインを調整することで信号39から信号71の一巡伝達特性を調整し、サーボ帯域が定められる。位相補償器36の出力はTs/N周期毎に計算され、DA変換器27でTs/N期間一定値に保持される。このようなDAコンバータの動作モデルをZOH(零次ホールダ)で表している。
【0019】
伝達関数GFF(z)をもつ数式モデル33は、後述する目標軌道32から制御対象を駆動する加速度フィードフォワード電流指令34を計算する為の数式モデルである。この伝達関数GFF(z)は制御対象の逆モデルで与えられる。逆モデルを得る際の制御対象モデルは、例えば2重積分器で表す。
【0020】
伝達関数GPO(z)をもつ数式モデル35は、加速度フィードフォワード電流指令34から目標位置軌道40を計算するための数式モデルで、図2の操作信号68からディジタル位置信号71までの伝達特性をモデル化したものである。具体的には、制御対象の数式モデル38の伝達関数Gp(s)として、ヘッド移動速度に対応した周波数帯域を含む高次の振動モードを正確に同定したものを用い、これに位置検出から制御入力信号68出力までの時間遅れと、VCMアンプ等の位相遅れの特性を時間遅れに換算して求めた等価時間遅れを付加したモデルで表す。
【0021】
以上に説明した図1のブロック31を除いた部分の構成は、前述した特開2001−249702号と同様である。一方、目標軌道を生成するブロック31の演算は、上記公知技術では(数6)もしくはその分子を抑制対象周波数の数に応じて次数を増やした式のステップ応答を算出するもので、ここに演算量の軽減が求められていた。本発明の第1の実施の形態としては、ブロック31による目標軌道の計算を、複数回のステップ状変化を呈する加速度目標値を一次のローパスフィルタに入力したときの応答を算出することにより行うもので、以下その詳細を説明する。
【0022】
まず用いるローパスフィルタを
【数8】
で表す。ここでa<0はパラメータである。次にこのローパスフィルタへ入力する加速度目標値30を3回のステップ状変化を呈する図1(a)の信号α(t)とする。これは6個のパラメータA1、A2、A3、T1、T2、T3で表され、t=0〜T1で振巾A1(<0)、t=T1〜T2で振巾A2(>0)、t=T2〜T3で振巾A3(<0)となるステップ状の関数である。t=0は制御開始時刻、t=T3は目標位置へ到達して制御が終了する時刻で、ここで制止するように加速度目標値も0とする。
このような信号α(t)はs関数でStpfft(s)と書くと
【数9】
で表される。従って、この信号をローパスフィルタへ入力したときの応答出力をAccfft(s)と書くと、(数8)、(数9)から
【数10】
となる。
【0023】
ここで(数9)の入力は、規格化距離1(位置−1から0へ)を規格化時間1でヘッド移動を行うための入力とする。(数10)を時間領域へ変換すれば加速度目標軌道Acc(t)が得られ、速度目標軌道Vel(t)は加速度目標軌道Acc(t)を時間について積分して得られ、さらに位置目標軌道Pos(t)は速度目標軌道Vel(t)を時間について積分することにより得られる。これら積分を行った時の積分定数を初期条件
【数11】
により定めれば、得られた各目標軌道Acc(t)、Vel(t)、Pos(t)は、上記の規格化時間1でヘッドを位置−1から0へ移動するための目標軌道を与える。また、位置0へ到達した時刻t=1の終端条件として、ヘッドが滑らかに目標位置0へ到達して制止する条件
【数12】
を与えると、目標軌道に含まれるパラメータA1〜A3、T1、T2、aのうちA1〜A3の3個を他のパラメータで表すことができる。従って残ったパラメータa、T1、T2は任意に選べる。なお、(数11)(数12)では、静止状態から出発して目標位置0へヘッドが滑らかに到達して静止するという条件を与えたが、複数の軌道を切り換えながら順次移動していく場合には、1つの軌道の終端条件と次の軌道の初期条件が一致するようにしておけば、軌道切り換え時に必ずしも静止させる必要はない。
【0024】
さて、従来技術で述べたように、一般に機構系は共振特性を持つことがあり、これらの共振点では加速度目標軌道のスペクトルに於ける共振周波数成分の振巾をできるだけ小さくして不要な振動を抑制したい。加速度目標軌道のスペクトル振巾は(数10)のAccfft(s)でs=jwとおいたときの振巾|Accfft(jw)|であり、これには前述のように自由に選べる3つのパラメータa、T1、T2が含まれている。従って、このパラメータa、T1、T2に種々の値を与えて抑制したい周波数に於いて|Accfft(jw)|が極小値をもつようにパラメータa、T1、T2を定めれば、機構系共振点での振動励起を抑制することのできる目標軌道を生成することができる。そして|Accfft(jw)|の極小値を求める処理は、例えば Matlab の “Optimization Toolbox” を用いればよい。この計算は従来より公知のものであるので、その詳細は省略する。
【0025】
以上のようにして規格化した目標軌道に含まれる全てのパラメータが決まるが、図3のブロック31は決定した目標軌道を時間関数として実際に算出し、刻々とその値を出力する必要がある。このためにまず以上に説明した目標軌道生成法を連続時間状態方程式として表す。
【数13】
但し行列Aa、Bbは
【数14】
である。(数13)の右辺第3行、第4行は、(数8)のローパスフィルタ及び図1(a)の入力関数α(t)から求められる。
【0026】
(数13)から、行列s・I−Aa(I:単位行列)の逆ラプラス変換を行い
【数15】
を求めておくと、(数13)はこの行列Aadを用いて離散化され、各サンプル時刻における目標軌道が逐次演算可能となる。即ち、サンプリング周期をTsで表し、加速度目標軌道α(t)が切り換えられる時刻0、T1、T2を離散化した時刻k0=0/Ts、k1=T1/Ts、k2=T2/Tsとすると、Arefは
【数16】
で与えられ、(数13)は(数17)の漸化式となる。
【数17】
但しk=t/Tsであり、また右辺のCa13〜Ca34は以下の(数18)〜(数23)で与えられる。
【数18】
【数19】
【数20】
【数21】
【数22】
【数23】
【0027】
図1(a)〜図1(c)には、図1(a)の入力α(t)に対する規格化した目標軌道の計算例が示されている。即ち図1(a)には加速度目標軌道101、図1(b)には速度目標軌道102、図1(c)には位置目標軌道103が示されている。また図4には、図1(a)の加速度目標軌道101のスペクトル104が示されている。これらの例は、機構系の共振周波数が2200Hzと4200Hzにあり、これらの周波数成分を抑圧するように各パラメータを求めたもので、図4にみられるように2つの共振周波数で加速度目標軌道の振巾が局部的に小さくなっているのがわかる。
【0028】
(数17)をみると、サンプリング周期TsやCa13〜Ca34はすべて定数であるから、この式によると目標軌道の時間関数を簡単な計算で逐次算出でき、従来の(数3)〜(数5)や(数6)に基づく演算に比べてはるかに短い時間での計算が可能である。また、抑制対象周波数が複数個あっても、(数17)は同じ形であって演算が複雑化することもない。
【0029】
なお、ヘッド位置決め制御の実行時には、図示を省略した上位系により、ヘッドの移動時間Tと移動距離Lが図3の信号30として与えられるので、規格化された値として(数17)の漸化式で算出された加速度、速度及び位置の目標軌道は、それぞれL倍、L/T倍、及びL/T2倍してブロック31から出力する。この出力32を用いてブロック33では加速度フィードフォワード電流指令34を計算し、ブロック35ではこの電流指令から位置の目標軌道40を計算する。以下、前述した特開2001−249702号と同時にしてヘッドの位置決め制御が実行される。
【0030】
また、抑制したい周波数を図1、図4では2つの場合を示したが、この周波数が増えると、(数10)で自由に選定できるパラメータa、T1、T2の3個では十分な抑制特性が得られないケースも生じる。このときはローパスフィルタへの入力α(t)として4回あるいはそれ以上値の変わるステップ状関数を、用いればよい。
【0031】
次に本発明の第2の実施の形態を説明する。この実施の形態では目標位置へ到達時の加速度の微分値が零となるような軌道を追加して目標到達を滑らかに行うようにするために、目標位置へ近づいたときにその位置(これを以下近接位置と呼ぶ)、速度、加速度の状態量を初期値として自由応答により零に収束する軌道を新に生成するものである。上記近接位置へ到達するまでの軌道は前記した図1(a)の入力α(t)を(数8)のローパスフィルタへ入力したときの応答を、そのパラメータを抑制対象周波数で加速度目標軌道のスペクトルが小さくなるようにした条件で求め、(数17)の漸化式で計算した軌道とする。近接位置以降の目標軌道生成モデルGm1(s)としては
【数24】
を用い、その近接位置に於ける初期値を(数17)で求めた軌道の値として以降は自由応答(外力なし)とする。近接位置以降の加速度目標軌道はこの自由応答出力、速度目標軌道は加速度目標軌道の時間積分、位置目標軌道は速度目標軌道の時間積分として与える。これらの目標軌道は自由応答でいずれも0に収束する。
【0032】
以下では特にm=3、ak=b(k=1〜3)として近接位置以降の目標軌道生成モデルを
【数25】
とする。(数17)を求めた時と同様に(数25)の応答の連続時間状態方程式は
【数26】
で与えられる。但し行列Aa、Bbは
【数27】
である。(数26)は逆ラプラス変換
【数28】
で求められる行列Abdを用いて離散化することができ、
【数29】
となる。但しk=t/Tsは離散化した時刻、Cb11〜Cb33は(数30)〜(数38)である。
【数30】
【数31】
【数32】
【数33】
【数34】
【数35】
【数36】
【数37】
【数38】
【0033】
従って、近接位に於ける位置、速度、加速度を初期値として与えれば次のサンプルにおける軌道が(数29)により逐次演算可能である。図5(a)には、この漸化式により計算された加速度の軌道111が示されている。同図の時刻T4が近接位置に達したときの時刻で、それ以前の軌道は図1(a)と同じである。但し時間軸、加速度ともに規格化したものではなく、実際の値の例で示している。図5(b)はこの時の位置目標軌道112を示している。これらの図から、加速度及び位置の終端における整定が滑らかになっていることがわかる。なお、近接位置の時刻T4が目標時刻Tに十分近ければ、近接位置以降の目標軌道の波形を変えても加速度目標軌道のスペクトルが受ける変化は微小で、抑制対象の周波数が大きくずれることはない。
【0034】
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。図1に示した第1の実施の形態では、一次のローパスフィルタを用いて、小さい演算量で抑制対象周波数での加速度目標軌道を小さくするものであり、図5で示した第2の実施の形態では目標位置到達近辺の加速度目標軌道を滑らかな形にしてヘッドに無駄な力が加わらないようにする制御を行った。ここでは、加速度目標軌道の切り換え直後の時間変化率を0とするようにして、やはりヘッドを滑らかに動かせるようにする制御法を用いる。このために、三次以上のローパスフィルタ
【数39】
を用いる。このGlpfn(s)の逆ラプラス変換は、t=0における微分値が零となることから
【数40】
であり、このtに関する微分は
【数41】
となるから、n≧3であるとt=0においてこの微分値は0になる。これは(数39)のフィルタへの入力がステップ状に変化した直後には、必ずフィルタ出力、即ち加速度目標軌道の時間微分が0になることを保証する。
【0035】
以下では簡単のためローパスフィルタの次数を3次とし、このときの加速度目標軌道の算出法及び制御対象周波数でのスペクトルを小さくする方法を説明する。
【数42】
このローパスフィルタへの入力β(t)は図6に示されており、これは図1の場合と同様に3回の切り換え点をもつステップ状の信号であるが、図1の場合とはA1〜A3の極性が逆の例である。各切り換え時刻はT1、T2、T3である。この入力信号β(t)はs関数で表すと、図1の関数α(t)の場合と同じ(数9)で与えられる。従ってβ(t)を入力したときの3次ローパスフィルタ出力は
【数43】
となる。
【0036】
ここで図1の場合と同様に、フィルタ入力β(t)を規格化距離1を規格化時間1でヘッド移動を行うための信号とし、(数43)を時間領域へ変換して規格化した加速度目標軌道、その時間積分で速度目標軌道と位置目標軌道の各々の時間関数Acc(t)、Vel(t)、Pos(t)を図1の場合と同じ初期条件及び同じ終端条件を用いて求める。そうすると、これら目標軌道には3個のパラメータa、T1、T2が残るので、抑制対象周波数において加速度目標軌道の周波数スペクトル|Accfft(jω)|の振巾が極小値をとるように上記パラメータを定める。これも図1の場合と同様である。
【0037】
目標軌道に含まれるパラメータが決まると、次に実際に目標軌道を各時刻に算出するための漸化式を求める。まず、(数42)のローパスフィルタを用いたときの連続時間状態方程式は
【数44】
で与えられる。但し
【数45】
である。(数45)のAcを用いて行列s・I−Acの逆ラプラス変換を行い、
【数46】
により行列Acdを求めておくと、(数44)はこれを用いて離散化される。具体的には(数44)のArefを図1と同じ(数16)としたとき、
【数47】
となる。
【0038】
図6には、(数47)を用いて算出した加速度目標軌道121が示されている。また図7には、加速度目標軌道121のスペクトルが示されており、図中丸印の部分で振巾が極小値をもつようにパラメータT1、T2、aを設定している。図4と図6からわかるように、第1の実施の形態の図4では、加速度目標軌道の時間変化率が大きかった目標値の切り換え時刻T1、T2において、図6の場合には切り換え直後の加速度目標軌道の変化率が零となっており、加速度の整定も滑らかなことがわかる。
【0039】
なお、ヘッド位置決め制御の実行時には、上位系から与えられるヘッド移動時間T、移動距離Lに応じて各目標軌道を修正するのは第1の実施の形態の場合と同じである。また、抑制対象周波数が多くなったときは、(数39)の特性を持つローパスフィルタへの入力信号β(t)のステップ数を増やして対応するのも同様である。
【0040】
以上では、磁気ヘッドの位置決め制御として本発明を説明してきたが、制御対象は磁気ヘッドに限らず、駆動する加速度信号のスペクトル内に共振周波数を有するような機構系、たとえば半導体露光装置に用いられるXYステージの位置決め制御に用いても同様に効果があることは明らかである。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、ローパスフィルタを離散化して得られる簡単な漸化式を用いて少ない演算規模で目標軌道を生成し位置決め制御を行うことができ、かつローパスフィルタへの入力信号の切り換えタイミングを選ぶことにより抑制対象周波数に於ける加速度目標軌道のスペクトルを極小化して振動の少ない制御を実現できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に於ける加速度目標値と生成された目標軌道の時間波形例である。
【図2】磁気ディスク装置のヘッド位置決め制御系の構成図である。
【図3】本発明の位置決め制御系のブロック線図である。
【図4】図1の加速度目標軌道のスペクトル波形である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に於ける加速度目標軌道及び位置目標軌道の時間波形例である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に於ける加速度目標値と生成された加速度目標軌道の時間波形例である。
【図7】図6の加速度目標軌道のスペクトル波形である。
【符号の説明】
31 目標軌道生成ブロック
33 加速度フィードフォワード電流指令演算ブロック
35 目標位置軌道演算ブロック
36 位相補償ブロック
38 制御対象モデル
Claims (8)
- 制御対象の初期位置と到達目標位置との間の距離及び制御対象を初期位置から到達目標位置へ移動させるための移動時間が与えられたときに制御対象を初期位置から到達目標位置へ移動させるための加速度、速度、及び位置の目標軌道を生成するための目標軌道生成部と、この目標軌道生成部により生成された目標軌道から制御対象を駆動するためのフィードフォワード制御信号を生成するフィードフォワード制御信号生成部と、前記フィードフォワード制御信号を入力として制御対象の数式モデルにより算出したその時点での目標位置と位置検出手段により検出された検出位置の差である位置誤差を算出する位置誤差検出部と、前記位置誤差を入力として位相補償処理を行いその出力を前記フィードフォワード制御信号に加算する位相補償部とを備えた位置決め制御装置において、
前記目標軌道生成部は、その最後の切り換え時刻が前記移動時間の終了時刻と一致するような少なくとも3回の切り換え時刻を有し、かつ移動開始時刻と前記切り換え時刻以外に於いてはその時間微分が0となるステップ状信号を生成する第1生成部と、与えられたローパスフィルタの数式モデルへ前記ステップ状信号を入力したときの応答を加速度目標軌道として、またこの加速度目標軌道の時間積分結果を速度目標軌道として、さらにこの速度目標軌道の時間積分結果を位置目標軌道として漸化式を用いて生成する第2生成部とから構成したことを特徴とする位置決め制御装置。 - 請求項1に記載の位置決め制御装置において、前記第2生成部により生成された加速度目標軌道の周波数スペクトルが、制御対象のもつ共振周波数において局部的に小さい振巾を有するように前記切り換え時刻及び前記ローパスフィルタ数式モデルのパラメータを設定したことを特徴とする位置決め制御装置。
- 請求項1又は2に記載の位置決め制御装置において、前記ローパスフィルタは1次ローパスフィルタであることを特徴とする位置決め制御装置。
- 請求項1又は2に記載の位置決め制御装置において、前記ローパスフィルタは3次ローパスフィルタであることを特徴とする位置決め制御装置。
- 制御対象の初期位置と到達目標位置との間の距離及び制御対象を初期位置から到達目標位置へ移動させるための移動時間が与えられたときに制御対象を初期位置から到達目標位置へ移動させるための加速度、速度、及び位置の目標軌道を生成するための目標軌道生成部と、この目標軌道生成部により生成された目標軌道から制御対象を駆動するためのフィードフォワード制御信号を生成するフィードフォワード制御信号生成部と、前記フィードフォワード制御信号を入力として制御対象の数式モデルにより算出したその時点での目標位置と位置検出手段により検出された検出位置の差である位置誤差を算出する位置誤差検出部と、前記位置誤差を入力として位相補償処理を行いその出力を前記フィードフォワード制御信号に加算する位相補償部とを備えた位置決め制御装置において、
前記目標軌道生成部は、その最後の切り換え時刻が前記移動時間の終了時刻より前に定めた切り換え時刻と一致するような少なくとも3回の切り換え時刻を有し、かつ移動開始時刻と前記切り換え時刻以外に於いてはその時間微分が0となるステップ状信号を生成する第1生成部と、与えられた1次の第1ローパスフィルタの数式モデルへ前記ステップ状信号を入力したときの応答とその応答の前記最後の切り換え時刻に於ける値を初期値として少なくとも3次以上の第2ローパスフィルタの自由応答とを加速度目標軌道として、またこの加速度目標軌道の時間積分結果を速度目標軌道として、さらにこの速度目標軌道の時間積分結果を位置目標軌道として、漸化式を用いて生成する第2生成部とから構成したことを特徴とする位置決め制御装置。 - 請求項5に記載の位置決め制御装置において、前記第2生成部により生成された加速度目標軌道の周波数スペクトルが、制御対象のもつ共振周波数において局部的に小さい振巾を有するように前記切り換え時刻及び前記第1ローパスフィルタ数式モデルのパラメータを設定したことを特徴とする位置決め制御装置。
- 制御対象の初期位置と到達目標位置との間の距離及び制御対象を初期位置から到達目標位置へ移動させるための移動時間が与えられたときに制御対象を初期位置から到達目標位置へ移動させるための位置決め制御方法であって、
その最後の切り換え時刻が前記移動時間の終了時刻と一致するような少なくとも3回の切り換え時刻を有し、かつ移動開始時刻と前記切り換え時刻以外に於いてはその時間微分が0となるステップ状信号を生成し、このステップ状信号を与えられたローパスフィルタの数式モデルへ入力したときの応答を加速度目標軌道として、またこの加速度目標軌道の時間積分結果を速度目標軌道として、さらにこの速度目標軌道の時間積分結果を位置目標軌道として漸化式を用いて生成し、かくして生成した加速度目標軌道、速度目標軌道及び位置目標軌道に沿って制御対象が移動するように制御することを特徴とする位置決め制御方法。 - 請求項7に記載の位置決め制御方法において、前記生成した加速度目標軌道周波数スペクトルが、制御対象のもつ共振周波数において局部的に小さい振巾を有するように前記切り換え時刻及び前記ローパスフィルタ数式モデルのパラメータを設定したことを特徴とする位置決め制御方法。
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CN110632855A (zh) * | 2019-10-23 | 2019-12-31 | 珠海格力智能装备有限公司 | 轨道调节方法及系统 |
CN110794371A (zh) * | 2019-10-30 | 2020-02-14 | 南京航空航天大学 | 基于改进递推法的雷达采样间隔控制方法 |
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2002
- 2002-06-19 JP JP2002178030A patent/JP2004021768A/ja active Pending
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