JP2004021199A - 液晶表示装置の製造方法、液晶表示装置用基板および液晶表示装置用基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】スペーサ粒子に起因する消偏現象や光抜けによるコントラストや色調の低下がなく優れた表示品質を発現する液晶表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】任意の位置にスペーサ粒子を配置した一方の基板とスペーサ粒子を配置していない他方の基板とをスペーサ粒子および液晶を介して対向させた液晶表示装置の製造方法であって、上記基板のいずれか一方には画素領域と該画素領域を画する遮光領域とからなるカラーフィルタが形成されており、スペーサ粒子を配置する方の基板として、その片面の少なくとも画素領域に相当する領域にはスペーサ粒子分散液に対する接触角がθbである配向膜が存在し、遮光領域に相当する領域の少なくとも一部にはスペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである部分が存在し、θbとθaとの関係がθa<θbを満たす基板を使用し、上記接触角がθaである部分にスペーサ粒子分散液を吐出し、遮光領域に選択的にスペーサ粒子を配置する液晶表示装置の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】任意の位置にスペーサ粒子を配置した一方の基板とスペーサ粒子を配置していない他方の基板とをスペーサ粒子および液晶を介して対向させた液晶表示装置の製造方法であって、上記基板のいずれか一方には画素領域と該画素領域を画する遮光領域とからなるカラーフィルタが形成されており、スペーサ粒子を配置する方の基板として、その片面の少なくとも画素領域に相当する領域にはスペーサ粒子分散液に対する接触角がθbである配向膜が存在し、遮光領域に相当する領域の少なくとも一部にはスペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである部分が存在し、θbとθaとの関係がθa<θbを満たす基板を使用し、上記接触角がθaである部分にスペーサ粒子分散液を吐出し、遮光領域に選択的にスペーサ粒子を配置する液晶表示装置の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置の製造方法、その製造方法に用いる液晶表示装置用基板およびその基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、現在、パソコン、携帯電子機器等に広く用いられている。図1は液晶表示装置の一例を示す断面図である。図1に示されるように、一般に液晶表示装置は、内側に透明電極3、配向膜8、カラーフィルタ4、ブラックマトリクス5等が配置され、外側に偏光板2が配置された2枚の透明基板1がこれらの周囲に配設されたシール材9を介して対向配置され、形成された空隙に液晶6が封入された構成となされている。この液晶表示装置において、2枚の透明基板1の間隔を規制し、適正な液晶層の厚み(セルギャップ)を維持する目的で使用されているのがスペーサ粒子7である。
【0003】
従来の液晶表示装置の製造方法においては、画素電極が形成された基板上にスペーサ粒子をランダムかつ均一に散布するため、画素電極上すなわち液晶表示装置の表示部にもスペーサ粒子が配置されてしまう。スペーサ粒子は一般的に合成樹脂やガラス等から形成されており、画素電極上にスペーサ粒子が配置されると、偏光が乱されて偏光性を失うという現象、いわゆる消偏現象が生じて、スペーサ粒子部分が光り漏れを起こすという問題点が発生する。また、スペーサ粒子表面において液晶の配向が乱れることにより、光抜けが起こり、コントラストや色調が低下して表示品質が悪化するという問題点が発生する。さらに、TFT型液晶表示装置においては、基板上にTFT素子が配置されているが、スペーサ粒子がこのTFT素子上に配置されると、基板に圧力がかかった時にTFT素子を破損させてしまうという重大な問題点が発生する。
【0004】
このようなスペーサ粒子のランダムかつ均一散布に伴う問題点の発生を抑制するために、スペーサ粒子を遮光層下にのみ配置することが検討されている。このようにスペーサ粒子を特定の位置にのみ配置する方法として、例えば、特開平4−198919号公報では、開口部を有するマスクの開口部と配置させたい位置とを合わせた後にスペーサ粒子を開口部に相当する位置にのみ配置するカラー液晶パネルが開示されており、また、特開平6−258647号公報では、感光体に静電的にスペーサ粒子を吸着させた後に透明基板に転写する液晶表示装置およびその製造方法が開示されている。
【0005】
しかし、上記両公報に開示されている方法は、基板上にマスクや感光体が直接接触するために、基板上の配向膜が損傷して表示品質の低下を来すという問題点がある。
【0006】
また、特開平10−339878号公報では、基板上の画素電極に電圧を印加して帯電させたスペーサ粒子を散布することにより、静電的斥力によって特定の位置にスペーサ粒子を配置させる液晶表示装置の製造方法が開示されている。
【0007】
しかし、上記公報に開示されている方法は、配置させるパターンに沿った電極を必要とするため、スペーサ粒子を完全に任意の位置に配置することは不可能であり、適用できる液晶表示装置の種類が制約されるという問題点がある。
【0008】
一方、特開昭57−58124号公報では、対向面に透明電極が被着形成された透光性電極基板間の間隙部にスペーサ粒子および液晶を介在させてなる液晶表示素子において、スペーサ粒子をインクジェット装置を用いて電極基板上に分散配置させる液晶表示素子の製造方法が開示されている。この方法は、前記方法のように基板そのものに直接接触することがなく、また、任意の位置に任意のパターンでスペーサ粒子を配置することができるので、有効な方法と言える。
【0009】
しかし、上記公報に開示されている方法は、インクジェット装置によって吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴の大きさをスペーサ粒子を配置したい領域の大きさ以下に制御することが困難であるという問題点がある。
【0010】
すなわち、基板上のスペーサ粒子を配置したい位置である遮光層(遮光膜)はブラックマトリクスと呼ばれ、その幅が一般に約10〜30μmであるのに対して、インクジェット装置によって吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴が基板上に着弾した際の着弾径は一般に約40〜200μmであり、上記遮光層の幅より大きい。
【0011】
インクジェット装置から吐出されるスペーサ粒子分散液の液滴を小さくするためには、インクジェット装置のノズルの口径を小さくしなければならないが、現状のインクジェット装置のノズル口径は最低でも20μm程度である。液晶表示装置に用いられるスペーサ粒子の粒子径は一般に2〜10μmであるため、上記ノズル口径を20μm程度より小さくすることは、ノズル閉塞や吐出の不安定化を招く原因となりやすく、現実的ではない。このため、インクジェット装置を用いて液晶表示装置の非表示部にスペーサ粒子を配置するのは、吐出された液滴の大きさの精度を考慮すると、極めて困難なことである。
【0012】
インクジェット装置によって吐出された液滴を所定の区画(位置)に正確に収めるための一つの方法として、被吐出面の所定の区画の吐出液(液滴)に対する濡れ性を制御する方法が挙げられる。例えば、インクジェット装置の吐出液としてはしばしば水性溶液が使用されるが、このような水性溶液は、金属表面のような高極性の被吐出面に対しては濡れ広がるが、樹脂表面のような低極性の被吐出面に対しては濡れ広がらない特性を有する。
【0013】
このような特性を利用した例として、例えば、特開平6−347637号公報では、液晶表示装置のカラーフィルタを製造するに当たり、画素領域と遮光領域とが形成された基板上の特定の画素領域にのみ対応する色のインクを用いる印刷方法が開示されている。この方法においては、基板上の遮光領域にフォトレジスト法によって撥水性の区画を形成しており、同様にしてスペーサ粒子をインクジェット装置を用いて配置する場合にも、この方法を適用することができるものと考えられる。
【0014】
上記方法を適用してスペーサ粒子を配置する場合、液晶表示装置の基板の場合には、通常液晶の配向状態を規制するために配向膜と呼ばれる例えばポリイミド樹脂膜が形成されていて、この配向膜上にスペーサ粒子を配置するが、スペーサ粒子を配置させようとする配向膜上の位置に例えばアクリル酸共重合体などの感光性アルカリ可溶性樹脂の塗膜を形成し、フォトリソグラフ処理を施して、スペーサ粒子を配置しようとする位置のみの配向膜表面を高極性化することができるものと考えられる。
【0015】
しかし実際には、配向膜の表面には液晶の配向方向を規制するために例えばナイロンやレーヨンなどの布で一定方向に擦って、例えばポリイミド樹脂の分子の配向方向を一定にするためのラビング加工が施されなければならないが、このように精密に加工された配向膜の表面にフォトリソグラフ処理を施すことは極めて困難である。
【0016】
また、高極性塗膜は配向膜上に凸状に存在するため、高極性塗膜を部分的に形成させた後にラビング処理を施そうとすれば、本質的に接着性の乏しい配向膜表面の高極性塗膜が剥離してしまい、スペーサ粒子を所定の区画に選択的に配置することができなくなる。このように現実的には、配向膜という特殊な表面状態を必要とする塗膜上に極性の異なる領域を形成させるのは技術的に極めて困難なことである。
【0017】
近年、液晶表示装置は、その表示品質向上の要求が高まるなかでより明るい画質にするために、画素領域を大きく、遮光領域を小さくする方向にある。これはスペーサ粒子を遮光領域に配置するに当たっては困難な方向であって、効率良く高い精度で遮光領域にスペーサ粒子を選択的に配置する方法の開発がより強く求められているのが現状である。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点および現状に鑑み、インクジェット装置を用いてスペーサ粒子を液晶表示装置用基板の非表示部分に効率的かつ高い精度で選択的に配置することが可能であって、スペーサ粒子に起因する消偏現象の発生や光抜けによるコントラストや色調の低下がなく、優れた表示品質を発現する液晶表示装置を得ることができる液晶表示装置の製造方法、および、上記液晶表示装置の製造方法に用いられる液晶表示装置用基板、ならびに、上記液晶表示装置用基板の製造方法を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明による液晶表示装置の製造方法は、インクジェット装置を用いてスペーサ粒子分散液を吐出し、任意の位置にスペーサ粒子を配置した一方の基板と、スペーサ粒子を配置していない他方の基板とをスペーサ粒子および液晶を介して対向させた液晶表示装置の製造方法であって、上記基板のいずれか一方には、一定のパターンに従って配列された画素領域と該画素領域を画する遮光領域とからなるカラーフィルタが形成されていて、上記スペーサ粒子を配置する方の基板として、その片面の少なくとも画素領域に相当する領域にはスペーサ粒子分散液に対する接触角がθbである配向膜が存在し、遮光領域に相当する領域の少なくとも一部にはスペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである部分が存在し、かつ、上記θbとθaとの関係がθa<θbを満たす基板を使用し、この基板のスペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである部分にスペーサ粒子分散液を吐出して、遮光領域に選択的にスペーサ粒子を配置することを特徴とする。なお、本発明で言う画素領域に相当する領域または遮光領域に相当する領域とは、液晶表示装置に組み立てた状態でカラーフィルタが形成された基板面を上面にして表示画面を水平に置いた場合に、カラーフィルタの画素領域の直下に位置する領域またはカラーフィルタの遮光領域の直下に位置する領域を意味する。
【0020】
請求項2に記載の発明による液晶表示装置用基板は、上記請求項1に記載の液晶表示装置の製造方法において使用されるスペーサ粒子を配置する方の基板であって、その片面の少なくとも画素領域に相当する領域にはスペーサ粒子分散液に対する接触角がθbである配向膜が存在し、遮光領域に相当する領域の少なくとも一部にはスペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである部分が存在し、かつ、上記θbとθaとの関係がθa<θbを満たすことを特徴とする。
【0021】
請求項3に記載の発明による液晶表示装置用基板の製造方法は、上記請求項2に記載の液晶表示装置用基板の製造方法であって、基板表面の全域にスペーサ粒子分散液に対する接触角がθbである配向膜を均一に形成した後に、スペーサ粒子を配置したい位置に局所的な非接触エネルギー照射を行い、非接触エネルギーが照射された位置の配向膜を除去または改質して、スペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである表面とすることを特徴とする。
【0022】
請求項4に記載の発明による液晶表示装置用基板の製造方法は、上記請求項2に記載の液晶表示装置用基板の製造方法であって、スペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである表面を有する基板に、感光性ポリイミド樹脂前駆体または感光性ポリイミド樹脂を均一に塗工し、マスクを介して露光および現像を行い、さらに必要に応じて加熱処理を施して、スペーサ粒子を配置したい位置以外の基板表面上にパターン状にポリイミド樹脂からなる配向膜を形成し、かつ、上記配向膜の表面のスペーサ粒子分散液に対する接触角をθbとすることを特徴とする。
【0023】
本発明の液晶表示装置の製造方法は、STN方式の液晶表示装置およびTFT方式の液晶表示装置のいずれにも適用することができる。また、上記いずれの方式の液晶表示装置であっても、基板としてはガラス板や樹脂板の表面に透明電極と配向膜とが形成された基板が用いられる。
【0024】
上記液晶表示装置のうち、STN方式の液晶表示装置は、カラーフィルタが形成されているカラーフィルタ基板とその対向に配置される対向基板とからなり、上記いずれの基板もストライプ状に形成された透明電極を有し、スペーサ粒子を配置する基板は上記いずれの基板であっても良い。
【0025】
また、上記液晶表示装置のうち、TFT方式の液晶表示装置は、カラーフィルタが形成されているカラーフィルタ基板とその対向に配置される対向基板とからなり、一般に対向基板はTFT素子などのアレイを有し、アレイ基板と呼ばれる。また、カラーフィルタ基板上には一般にベタ状の透明電極が形成され、アレイ基板上には素子と透明電極とが形成されており、スペーサ粒子を配置する基板は上記いずれの基板であっても良い。
【0026】
スペーサ粒子分散液を吐出する基板としては、ガラス板や樹脂板などの通常液晶表示装置のパネル基板として用いられるものが使用できる。また、スペーサ粒子分散液を吐出する基板の表面には、通常液晶の配向を規制するための配向膜と呼ばれる樹脂薄膜が形成されている。上記配向膜は、通常ポリイミド系樹脂から形成されており、その表面にラビング処理を施すことにより、液晶の配向を制御している。このため、スペーサ粒子分散液に用いられる媒体は、配向膜中に浸透したり、配向膜を溶解したりする配向膜汚染性を有していてはならない。
【0027】
基板上へのスペーサ粒子の配置は、ランダム配置であっても良いし、特定の位置にパターン化して配置するパターン配置であっても良いが、光抜けなどのスペーサ粒子に起因する表示品質の低下を抑制するためには、基板上の遮光領域(非表示部分)に配置することが好ましい。
【0028】
上記遮光領域としては、画素の周囲に形成されたブラックマトリクスと呼ばれる遮光層とTFT方式の液晶表示装置にあってはTFT素子が位置する部分とがあるが、スペーサ粒子は、TFT素子を破壊することがないように、ブラックマトリクス下に配置することが好ましい。上記ブラックマトリクスの幅は通常10〜30μmである。スペーサ粒子の配置個数(粒子密度)は通常1mm平方の領域に50〜300個であることが好ましい。この粒子密度を満たす範囲であれば、スペーサ粒子はブラックマトリクス下のどのような位置にどのようなパターンで配置しても良い。
【0029】
通常ポリイミド系樹脂からなる配向膜は、透明電極の形成されている基板表面および透明電極の形成されていない基板表面にポリイミド系樹脂前駆体やその溶液またはポリイミド系樹脂の溶液をスピンコート法などの塗工方法によって均一な厚みとなるように塗工し、加熱や乾燥などの方法によってポリイミド系樹脂膜に転化させた後、ラビング処理を施して液晶の配向性を付与することにより、形成される。
【0030】
上記配向膜は、液晶の配向性を制御するために、画素領域に相当する領域においては液晶に接触する基板表面に必ず形成されている必要がある。
【0031】
本発明の液晶表示装置の製造方法は、遮光領域(非表示部分)に相当する領域の少なくとも一部の表面状態を画素領域(表示部分)に相当する領域の表面状態とは異なる状態にすることにより、吐出されたスペーサ粒子分散液を遮光領域に選択的に濡れ広がらせ、その結果スペーサ粒子を遮光領域に選択的に配置させることを骨子とする。
【0032】
すなわち、本発明の液晶表示装置の製造方法においては、スペーサ粒子を配置する方の基板として、請求項2に記載の液晶表示装置用基板のような、その片側の少なくとも画素領域に相当する領域にはスペーサ粒子分散液に対する接触角がθbである配向膜を存在させ、遮光領域に相当する領域の少なくとも一部には、スペーサ粒子を配置したい位置として、スペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである部分を存在させ、かつ、上記θbとθaとの関係がθa<θbを満たすようになされている基板を使用する。なお、本発明で言う接触角とは、平面上に対象とする液体(スペーサ粒子分散液)の小滴を静置して、液滴の拡がりが静止した時点の静的接触角を意味する。
【0033】
上記基板において、接触角θbと接触角θaとの関係がθa<θbを満たしていないと、スペーサ粒子を遮光領域に選択的に配置させることができなくなる。
【0034】
上記接触角がθaである部分は、遮光領域に相当する領域中に線状に連続的に形成されていても良いし、任意の形状の非連続的な島状に形成されていても良い。また、上記接触角がθaである部分は、遮光領域に相当する領域よりも狭い範囲で遮光領域に相当する領域の周囲から間隔を設けて形成されることが好ましい。接触角がθaである部分が遮光領域に相当する領域の周囲に接して形成されていると、液晶が配向制御されていない部分が遮光領域に相当する領域からはみ出して、画素領域に相当する領域に液晶が配向制御されていない部分が生じるため、液晶表示装置の表示品質の不良化につながることがある。
【0035】
上記のように、遮光領域に相当する領域の少なくとも一部の表面状態(スペーサ粒子分散液に対する接触角がθa)を画素領域に相当する領域の表面状態(スペーサ粒子分散液に対する接触角がθb)とは異なる状態にして、所望の位置にスペーサ粒子を選択的に配置する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、(1)配向膜を一旦形成させた後に、スペーサ粒子を配置したい位置のみの配向膜を除去、改質、被覆などの方法により後加工する方法や(2)スペーサ粒子を配置したくない位置にのみ配向膜を形成する方法等が挙げられる。上記(1)法および(2)法は、それぞれ単独で用いられても良いし、両者が併用されても良い。
【0036】
上記(1)配向膜を一旦形成させた後に、スペーサ粒子を配置したい位置のみの配向膜を除去、改質、被覆などの方法により後加工する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、請求項3に記載の液晶表示装置用基板の製造方法のように、基板表面の全域にスペーサ粒子分散液に対する接触角がθbである配向膜を均一に形成した後に、スペーサ粒子を配置したい位置に局所的な非接触エネルギー照射を行い、非接触エネルギーが照射された位置の配向膜を除去または改質して、スペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである表面とする方法が挙げられる。この方法の場合、先ず配向膜を形成し、この配向膜の表面にラビング処理を施して液晶の配向制御を行った後に、スペーサ粒子を配置したい位置に局所的な非接触エネルギー照射を行うことが好ましい。
【0037】
上記非接触エネルギー照射の方法としては、20μm以下にエネルギー照射の焦点を絞ることが可能であって、例えばポリイミド系樹脂などの配向膜材料に分解、蒸散、燃焼、酸化等を施すことができるものであればどのような方法であっても良く、特に限定されるものではないが、例えば、レーザー照射、エキシマレーザー照射、コロナ放電処理、低温プラズマ処理等が挙げられる。これらの方法によれば、予め配向膜の表面にラビング処理を施して液晶の配向制御を行った後に、配向膜の表面に接触することなく、配向膜の除去または改質を行うことが可能であるので、液晶の配向制御がなされた配向膜を比較的容易に得ることができる。また、これらの方法は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0038】
また、スペーサ粒子を配置したい位置のみの配向膜を被覆する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、マスクを介しての蒸着、スパッタリング、CVD(Chemical Vapour Deposition)法、プラズマ重合法などの処理方法により、配向膜の表面に異質の膜を形成させる方法が挙げられる。これらの処理方法は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0039】
上記(2)スペーサ粒子を配置したくない位置にのみ配向膜を形成する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、請求項4に記載の液晶表示装置用基板の製造方法のように、スペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである表面を有する基板に、感光性ポリイミド系樹脂前駆体または感光性ポリイミド系樹脂を均一に塗工し、マスクを介して露光および現像を行い、さらに必要に応じて加熱処理を施して、スペーサ粒子を配置したい位置以外の基板表面上にパターン状にポリイミド系樹脂からなる配向膜を形成し、かつ、上記配向膜の表面のスペーサ粒子分散液に対する接触角をθbとする方法が挙げられる。この方法は、例えば、大成社発行の「ポリファイル」(1990年2月号、14〜29頁)に記載されているようにして実施することができる。
【0040】
この方法は、基板上に一旦パターン状の配向膜を形成した後に、基板上全面にラビング処理を施す必要があるが、ポリイミド系樹脂からなる配向膜上に別の高極性膜を被覆した後にラビング処理を施しても、高極性膜が剥離するような問題が起こらないという長所を有する。
【0041】
また、基板上の配向膜を形成させたい部分に対応する孔を有するパターンを形成したマスクを介して、基板上の配向膜の必要な部分にのみポリイミド系樹脂前駆体を蒸着、スパッタリング、CVD法、プラズマ重合法などの処理方法によって析出堆積させることにより、ポリイミド系樹脂からなる配向膜を形成しても良い。
【0042】
本発明の液晶表示装置の製造方法で用いられるスペーサ粒子分散液を構成するスペーサ粒子は、例えばシリカ系微粒子などの無機系微粒子であっても良いし、例えば有機高分子系微粒子などの有機系微粒子であっても良く、特に限定されるものではない。また、上記無機系微粒子および有機系微粒子は、それぞれ単独で用いられても良いし、両者が併用されても良い。
【0043】
本発明においては、上記無機系微粒子および有機系微粒子のなかでも、液晶表示装置の基板上に形成された配向膜を傷つけない程度の適度な硬度を有し、熱膨張や熱収縮による厚みの変化に追随しやすく、さらにセル内部でのスペーサ粒子の移動が比較的少ない等の長所を有していることから、有機高分子系微粒子が好適に用いられる。
【0044】
上記有機高分子系微粒子を得るための単量体の組成は、特に限定されるものではないが、適度な強度等を有する有機高分子系微粒子を得ることができることから、単官能単量体と多官能単量体とからなる混合単量体であることが好ましい。また、上記混合単量体中における多官能単量体の含有量は、特に限定されるものではないが、30重量%以下であることが好ましい。混合単量体中における多官能単量体の含有量が30重量%を超えると、得られる有機高分子系微粒子の強度や硬度が高くなりすぎることがある。
【0045】
上記単官能単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレンおよびその誘導体;塩化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、エチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。これらの単官能単量体は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。なお、本発明で言う例えば(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを意味する。
【0046】
また、上記多官能単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジビニルベンゼン;ジアリルフタレート;トリアリルイソシアヌレート;1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類;プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類;2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−水添ビス[4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシポリプロポキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレートなどの2,2−ビス[4−(アクリロキシポリアルコキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート類等や、これらの異性体や誘導体等が挙げられる。これらの多官能単量体は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0047】
上記単量体、好ましくは単官能単量体と多官能単量体とからなる混合単量体を重合して有機高分子系微粒子を製造する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、懸濁重合法、シード重合法、分散重合法等が挙げられ、いずれの製造方法が採られても良い。
【0048】
上記製造方法のなかでも、懸濁重合法は、粒子径分布が比較的広く、多分散の微粒子を得ることができるので、多品種の粒子径の微粒子を製造する目的に適する。ただし、懸濁重合法による微粒子をスペーサ粒子として用いる場合には、分級操作を行って、所望の粒子径や粒子径分布を有するものを選別して用いることが好ましい。また、シード重合法および分散重合法は、分級操作を必要とせず、単分散の微粒子を得ることができるので、特定の粒子径の微粒子を大量に製造する目的に適する。
【0049】
上記重合の際には、媒体および重合開始剤が用いられる。
【0050】
上記媒体としては、使用する単量体の種類や組成に応じて適宜選択されれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、2−ブタノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの炭化水素類等が挙げられる。これらの媒体は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0051】
また、上記重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0052】
上記重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、前記単量体100重量部に対して、重合開始剤0.1〜10重量部であることが好ましい。重合開始剤の使用量が単量体100重量部に対して0.1重量部未満であると、重合反応が十分に進行しないことがあり、逆に単量体100重量部に対して10重量部を超えると、得られる有機高分子系微粒子の分子量が低くなりすぎることがある。
【0053】
懸濁重合法とは、媒体として単量体の貧溶媒を用い、単量体および重合開始剤からなる単量体組成物を目的とする粒子径や粒子径分布となるように上記媒体中に分散して重合する方法である。懸濁重合法における媒体(貧溶媒)としては、通常、水に分散安定剤を添加したものが用いられる。上記分散安定剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシドなどの水溶性高分子や、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤等が挙げられる。これらの分散安定剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0054】
懸濁重合の条件は、使用する単量体の種類や組成に応じて適宜決定されれば良く、特に限定されるものではないが、通常、重合温度が50〜80℃であって、重合時間が3〜24時間であることが好ましい。
【0055】
シード重合法とは、ソープフリー重合法や乳化重合法で作製した単分散の種粒子を、さらに単量体を吸収させることにより、狙いの粒子径にまで膨らませる重合方法である。上記種粒子の作製に用いられる単量体としては、特に限定されるものではないが、シード重合時の相分離を抑制するために、シード重合時に用いられる単量体とできるだけ近似の単量体が好適に用いられるが、なかでも、粒子系分布の単分散性が良好であることから、スチレンおよびその誘導体等がより好適に用いられる。
【0056】
上記種粒子の粒子径分布は、シード重合後の粒子径分布にも反映されるので、できるだけ単分散であることが好ましく、CV値{(粒子径の標準偏差/平均粒子径)×100}として5%以下であることが好ましい。シード重合時には種粒子との相分離が起きやすいため、シード重合時に種粒子に吸収させる単量体は、種粒子の作製に用いられた単量体とできるだけ近似の単量体であることが好ましい。例えば、種粒子がスチレン系樹脂からなる場合、種粒子に吸収させる単量体は芳香族系ジビニル単量体であることが好ましく、種粒子がアクリル系樹脂からなる場合、種粒子に吸収させる単量体はアクリル系マルチビニル単量体であることが好ましい。
【0057】
シード重合法において、種粒子に対する上記単量体の添加量は、特に限定されるものではないが、種粒子1重量部に対して、単量体20〜100重量部であることが好ましい。種粒子1重量部に対する単量体の添加量が20重量部未満であると、得られる有機高分子系微粒子の強度が不十分となることがあり、逆に種粒子1重量部に対する単量体の添加量が100重量部を超えると、シード重合時に微粒子同士の合着が起こって、得られる有機高分子系微粒子の粒子系分布が好ましくない程度にまで広がることがある。
【0058】
また、上記シード重合法においては、必要に応じて、分散安定剤が用いられても良い。上記分散安定剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシドなどの水溶性高分子や、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤等が挙げられる。これらの分散安定剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0059】
分散重合法とは、単量体は溶解するが、生成した重合体は溶解しない貧溶媒を媒体として重合を行い、この重合系に高分子系分散安定剤を添加することにより、生成した重合体を微粒子形状で析出させる方法である。
【0060】
一般に架橋性単量体を含有する単量体を分散重合法により重合すると、微粒子の凝集が起きやすく、単分散の架橋微粒子を安定的に得ることは難しいが、重合条件を選定することにより、架橋性単量体を含有する単量体を安定的に重合することが可能となる。
【0061】
上記架橋性単量体を含有する単量体中における架橋性単量体の含有量は、特に限定されるものではないが、分散重合時の微粒子の凝集や得られる架橋微粒子の強度等を考慮すると、50重量%以上であることが好ましい。架橋性単量体を含有する単量体中における架橋性単量体の含有量が50重量%未満であると、重合時に生成した微粒子の表面が媒体中で柔らかくなるため、微粒子同士の衝突によって合着が起こり、得られる架橋微粒子の粒子系分布が好ましくない程度にまで広がったり、凝集体となってしまうことがある。また、たとえ単分散性を保っても、架橋密度が低くなって、スペーサ粒子として必要な強度を十分に得られなくなることがある。
【0062】
本発明で用いられるスペーサ粒子分散液を構成するスペーサ粒子は、液晶表示装置のスペーサ粒子(ギャップ材)として用いられるので、スペーサ粒子を構成する上述の無機系微粒子または有機系微粒子(以下、「無機系微粒子または有機系微粒子」を単に「微粒子」と略記する)や最終的に得られるスペーサ粒子は、一定の強度を有していることが好ましい。
【0063】
微粒子やスペーサ粒子の圧縮強度を示す指標として、微粒子やスペーサ粒子の直径が10%変位した時の圧縮弾性率(10%K値)を採ると、液晶表示装置のスペーサ粒子としては、特に限定されるものではないが、微粒子やスペーサ粒子の上記圧縮弾性率(10%K値)が2000〜15000MPaであることが好ましい。
【0064】
微粒子やスペーサ粒子の上記圧縮弾性率(10%K値)が2000MPa未満であると、液晶表示装置を組立てる際のプレス圧により、スペーサが変形して、適切なギャップが出にくくなることがあり、逆に微粒子やスペーサ粒子の上記圧縮弾性率(10%K値)が15000MPaを超えると、スペーサ粒子が液晶表示装置に組み込まれた際に、基板上の配向膜を傷つけて、表示異常が発生することがある。
【0065】
なお、上記圧縮弾性率(10%K値)とは、柔軟な微粒子やスペーサ粒子の硬さを正確に把握するために、以下の方法で測定した値を意味する。
〔圧縮弾性率(10%K値)の測定方法〕
例えば特表平6−503180号公報に記載されているように、測定装置として微小圧縮試験器(型式「PCT−200」、島津製作所社製)を用いて、ダイヤモンド製の直径50μmの円柱の平滑な端面で微粒子やスペーサ粒子を圧縮し、微粒子やスペーサ粒子の直径が10%変位した時の圧縮荷重を求める。
【0066】
また、上記微粒子やスペーサ粒子は、液晶表示装置の表示品質の一つであるコントラストを向上させるために、着色されていても良い。
【0067】
上記微粒子やスペーサ粒子の着色方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、カーボンブラック、分散染料、酸性染料、塩基性染料、金属酸化物等の着色剤による着色処理法や、微粒子やスペーサ粒子の表面に有機物の膜を形成し、この有機物の膜を高温で分解もしくは炭化させて着色する方法等が挙げられ、いずれの方法が採られても良い。なお、微粒子やスペーサ粒子を形成する材質自体が着色している場合には、着色処理を施すことなく、そのまま着色微粒子や着色スペーサ粒子として用いても良い。
【0068】
本発明で用いられるスペーサ粒子分散液を構成するスペーサ粒子は、特に限定されるものではないが、前記微粒子の表面にビニル系熱可塑性樹脂がグラフト重合により化学的に結合固定されてなる表面被覆層が形成されているものであることが好ましい。
【0069】
上記ビニル系熱可塑性樹脂を構成するビニル系単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(ポリ)カプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、グリセリンモノアリルエーテルなどの水酸基を有するビニル系単量体;(メタ)アクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸などのアクリル酸およびそれらのα−アルキル誘導体またはβ−アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類;上記不飽和ジカルボン酸類のモノ2−(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル誘導体などのカルボキシル基を有するビニル系単量体;t−ブチルアクリルアミドスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのスルホニル基を有するビニル系単量体;ビニルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェートなどのホスホニル基を有するビニル系単量体;ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアクリロイル基を有するアミン類などのアミノ基を有するビニル系単量体;(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートの末端アルキルエーテル、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレートの末端アルキルエーテル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどのエーテル基を有するビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドンなどのアミド基を有するビニル系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メチル−α−クロル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、ブタジエンなどのオレフィン類;;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレンおよびその誘導体等の1分子中に少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有するビニル系単量体が挙げられる。これらのビニル系単量体は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0070】
前記微粒子の表面に上記ビニル系単量体からなるビニル系熱可塑性樹脂をグラフト重合させて化学的に結合固定することにより、表面にビニル系熱可塑性樹脂からなる表面被覆層が形成されているスペーサ粒子を得ることができる。
【0071】
このような方法によって形成された表面被覆層は、インクジェットインクの液体中や液晶表示装置のセル中で、表面被覆層の剥離や溶出等の問題を生じることが少ないので好ましい。なかでも、例えば特開平11−223821号公報に記載されているような、表面に還元性基を有する微粒子に酸化剤を反応させて微粒子表面にラジカルを発生させ、このラジカルを起点とするグラフト重合により微粒子表面にビニル系熱可塑性樹脂からなる表面被覆層を形成する方法が、密度が高く、十分な厚みを有する表面被覆層を形成することができることから、好ましい。
【0072】
本発明で用いられるスペーサ粒子分散液は、上述したスペーサ粒子が媒体中に分散されてなる。
【0073】
上記媒体としては、常温で液体であって、スペーサ粒子を分散させることができるものであればどのような化合物であっても良く、特に限定されるものではないが、なかでも、水や親水性有機溶剤が好適に用いられる。
【0074】
一般にインクジェット装置は、媒体が水または親水性有機溶剤である場合に安定的に吐出できる傾向があり、媒体が疎水性の強い有機溶剤である場合には、ヘッドを構成する部材が媒体に侵されたり、部材を接着する接着剤の一部が媒体中に溶出する等の問題が生じる。従って、スペーサ粒子分散液の媒体は、水または親水性有機溶剤であることが好ましい。
【0075】
上記水としては、特に限定されるものではないが、例えば、イオン交換水、純水、地下水、水道水、工業用水等が挙げられる。これらの水は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0076】
また、上記親水性有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールなどのモノアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのエチレングリコールの多量体;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコールなどのプロピレングリコールの多量体;エチレングリコールの多量体やプロピレングリコールの多量体のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノイソプロピルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテルなどの低級モノアルキルエーテル類;エチレングリコールの多量体やプロピレングリコールの多量体のジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジプロピルエーテルなどの低級ジアルキルエーテル類;エチレングリコールの多量体やプロピレングリコールの多量体のモノアセテート、ジアセテートなどのアルキルエステル類;1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−ヘキセン−2,5−ジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのジオール類;ジオール類のエーテル誘導体;ジオール類のアセテート誘導体;グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール類;多価アルコール類のエーテル誘導体;多価アルコール類のアセテート誘導体等や、ジメチルスルホキシド、チオジグリコール、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン、スルホラン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、α−テルピネオール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビス−β−ヒドロキシエチルスルホン、ビス−β−ヒドロキシエチルウレア、N,N−ジエチルエタノールアミン、アビエチノール、ジアセトンアルコール、尿素等が挙げられる。これらの親水性有機溶剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。また、上記水および親水性有機溶剤は、それぞれ単独で用いられても良いし、両者が併用されても良い。
【0077】
上記媒体には、沸点が100℃未満の親水性有機溶剤が含有されていることが好ましく、より好ましくは沸点が70℃以上100℃未満の親水性有機溶剤が含有されていることである。なお、本発明で言う沸点とは、1気圧の条件下での沸点を意味する。
【0078】
上記沸点が100℃未満の親水性有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノールなどの低級モノアルコール類やアセトン等が挙げられる。これらの沸点が100℃未満の親水性有機溶剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0079】
上記沸点が100℃未満の親水性有機溶剤は、スペーサ粒子分散液を基板上に吐出した後、乾燥させる際に比較的低い温度で揮発する。媒体が高温で配向膜に接触すると配向膜を汚染して液晶表示装置の表示品質を損なうことがあるため、乾燥温度をあまり高くすることができない。従って、上記沸点が100℃未満の親水性有機溶剤を用いることが好ましい。ただし、上記沸点が100℃未満の親水性有機溶剤が室温で揮散しやすいと、スペーサ粒子分散液の製造時や貯蔵時に凝集粒子が発生しやすくなったり、インクジェット装置のノズル付近のスペーサ粒子分散液が乾燥しやすくなって、インクジェット装置による吐出性が損なわれたりするので、室温で揮散しやすい親水性有機溶剤は好ましくない。
【0080】
また、上記沸点が100℃未満の親水性有機溶剤は、特に限定されるものではないが、20℃における表面張力が25mN/m以下であることが好ましい。一般にインクジェット装置は、吐出するスペーサ粒子分散液の20℃における表面張力が30〜50mN/mである場合に良好な吐出精度を示す。一方、基板上に吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴の表面張力は高い方がスペーサ粒子を乾燥過程で移動させるのに適している。
【0081】
沸点が100℃未満の親水性有機溶剤の20℃における表面張力が25mN/m以下であると、吐出時においてはスペーサ粒子分散液の表面張力が比較的低い状態にあるので、良好な吐出精度を得ることが可能となり、基板上に着弾後はスペーサ粒子分散液中の他の媒体成分より先に揮散して、スペーサ粒子分散液の表面張力が高くなるので、乾燥過程におけるスペーサ粒子の移動が容易となる。
【0082】
媒体中における沸点が100℃未満の親水性有機溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、10〜80重量%であることが好ましい。
【0083】
媒体中における沸点が100℃未満の親水性有機溶剤の含有量が10重量%未満であると、沸点が100℃未満の親水性有機溶剤を含有させることによる上記効果を十分に得られないことがあり、逆に媒体中における沸点が100℃未満の親水性有機溶剤の含有量が80重量%を超えると、スペーサ粒子分散液の製造時や貯蔵時に乾燥しやすくなって、凝集粒子が発生したり、インクジェット装置のノズル近辺のスペーサ粒子分散液が過剰に乾燥して、吐出性や吐出精度が損なわれることがある。
【0084】
また、上記媒体には、沸点が150℃以上の親水性有機溶剤が含有されていることが好ましく、より好ましくは沸点が150〜200℃の親水性有機溶剤が含有されていることである。
【0085】
上記沸点が150℃以上の親水性有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどの低級アルコールエーテル類等が挙げられる。これらの沸点が150℃以上の親水性有機溶剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0086】
上記沸点が150℃以上の親水性有機溶剤は、スペーサ粒子分散液の製造時や貯蔵時に乾燥して凝集粒子が発生するのを抑制したり、インクジェット装置のノズル近辺でスペーサ粒子分散液が過剰に乾燥して吐出性や吐出精度が損なわれるのを抑制する。
【0087】
また、上記沸点が150℃以上の親水性有機溶剤は、特に限定されるものではないが、20℃における表面張力が30mN/m以上であることが好ましい。沸点が150℃以上の親水性有機溶剤の20℃における表面張力が30mN/m以上であると、スペーサ粒子分散液の液滴が基板上に着弾後、より低沸点の水や親水性有機溶剤が揮散した後に、スペーサ粒子分散液の表面張力が高く保たれるので、乾燥過程におけるスペーサ粒子の移動が容易となる。
【0088】
媒体中における沸点が150℃以上の親水性有機溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、10〜80重量%であることが好ましい。
【0089】
媒体中における沸点が150℃以上の親水性有機溶剤の含有量が10重量%未満であると、沸点が150℃以上の親水性有機溶剤を含有させることによる上記効果を十分に得られないことがあり、逆に媒体中における沸点が150℃以上の親水性有機溶剤の含有量が80重量%を超えると、スペーサ粒子分散液の乾燥時間が著しく長くなって生産性が低下したり、配向膜が汚染されて液晶表示装置の表示品質が損なわれることがある。
【0090】
本発明で用いられるスペーサ粒子分散液中における前記スペーサ粒子の固形分濃度は、特に限定されるものではないが、0. 05〜5重量%であることが好ましく、より好ましくは0. 1〜2重量%である。
【0091】
スペーサ粒子分散液中におけるスペーサ粒子の固形分濃度が0.05重量%未満であると、吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴中に有効量のスペーサ粒子が含まれなくなることがあり、逆にスペーサ粒子分散液中におけるスペーサ粒子の固形分濃度が5重量%を超えると、インクジェット装置のノズルが閉塞しやすくなったり、吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴中のスペーサ粒子の含有量が過剰となって、乾燥過程におけるスペーサ粒子の移動が困難となることがある。
【0092】
本発明で用いられるスペーサ粒子分散液においては、前記スペーサ粒子が前記媒体中に単粒子状に分散していることが好ましい。スペーサ粒子が媒体中に単粒子状に分散していなくて凝集物が存在すると、吐出性や吐出精度が低下したり、インクジェット装置のノズル閉塞を起こすことがある。
【0093】
本発明で用いられるスペーサ粒子分散液には、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、粘接着性付与剤、粘性調整剤、pH調整剤、界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上が添加されていても良い。
【0094】
上述したスペーサ粒子分散液を基板上に吐出する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、次のように行えば良い。
【0095】
吐出に用いるインクジェット装置としては、特に限定されるものではないが、例えば、ピエゾ素子の振動によって液体をノズルから吐出するピエゾ方式、急激な加熱による液体の膨張を利用して液体をノズルから吐出するサーマル方式、発熱素子の急激な加熱によって液体をノズルから吐出するバブルジェット(登録商標)方式等が挙げられ、いずれの方式のインクジェット装置を用いても良い。
【0096】上記インクジェット装置のノズル口径は、特に限定されるものではないが、20〜100μmであることが好ましい。インクジェット装置のノズル口径が20μm未満であると、粒子径が2〜10μmのスペーサ粒子を含有するスペーサ粒子分散液を吐出した場合にスペーサ粒子の粒子径との差が小さすぎて、吐出精度が低下したり、ノズル閉塞を起こして吐出不能となることがあり、逆にインクジェット装置のノズル口径が100μmを超えると、吐出されるスペーサ粒子分散液の液滴の径が大きくなって、基板上に着弾した液滴の径(着弾径)も大きくなるので、スペーサ粒子の配置精度が粗くなることがある。
【0097】
上記ノズルから吐出される液滴の径は、特に限定されるものではないが、10〜80μmであることが好ましい。ノズルから吐出される液滴の径を上記好ましい範囲に制御する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ノズルの口径を最適化する方法やインクジェット装置を制御する電気信号を最適化する方法等が挙げられ、いずれの方法を採っても良い。特にピエゾ方式のインクジェット装置を用いる場合には、後者の方法を採ることが好ましい。
【0098】
また、基板上に着弾した液滴の径(着弾径)は、特に限定されるものではないが、30〜150μmであることが好ましい。上記着弾径を30μm未満とするためには、ノズル口径を非常に小さくする必要が生じるため、スペーサ粒子によるノズル閉塞の可能性が大きくなったり、ノズル加工の精度を高めなければならなくなることがあり、逆に上記着弾径が150μmを超えると、スペーサ粒子の配置精度が粗くなることがある。
【0099】
基板上に着弾したスペーサ粒子分散液の液滴中の媒体を乾燥する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、次のように行えば良い。
【0100】
上記乾燥に当たっては、インクジェット装置のノズルから基板上に吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴を乾燥させた後に、スペーサ粒子が、基板上に吐出された直後のスペーサ粒子分散液の液滴の径より小さい径の円内に存在するように乾燥させることが好ましい。
【0101】
このように乾燥過程において、スペーサ粒子を吐出された直後のスペーサ粒子分散液の液滴の中央付近に寄せ集めるためには、媒体の沸点、乾燥温度、乾燥時間、媒体の表面張力、媒体の配向膜に対する接触角、スペーサ粒子の濃度等を適切な条件に設定することが重要であるが、特に乾燥条件が重要である。
【0102】
すなわち、スペーサ粒子が基板上を移動する間に媒体が無くなってしまわないようにある程度の時間幅をもって乾燥することが好ましい。このため媒体が急激に乾燥してしまうような乾燥条件は好ましくない。また、媒体は高温で長時間配向膜と接触すると、配向膜を汚染して液晶表示装置の表示品質を損なうことがあるので、高温長時間の乾燥条件は好ましくない。また、媒体が常温で揮散しやすいと、インクジェット装置のノズル近辺のスペーサ粒子分散液が乾燥しやすくなって吐出性が損なわれたり、スペーサ粒子分散液の製造時や貯蔵タンク内での貯蔵時に乾燥によるスペーサ粒子の凝集が起こることがあるので、常温で揮散しやすい媒体は好ましくない。さらに、基板表面温度が比較的低い条件であっても、乾燥時間が著しく長くなると液晶表示装置の生産性が低下するので、低温長時間の乾燥条件も好ましくない。
【0103】
このような制約条件を考慮すると、スペーサ粒子分散液の液滴が基板上に着弾した時点での基板表面温度は、特に限定されるものではないが、スペーサ粒子分散液の媒体中に含まれる最も低沸点の媒体成分の沸点より20℃以上低い温度であることが好ましい。
【0104】
上記基板表面温度がスペーサ粒子分散液の媒体中に含まれる最も低沸点の媒体成分の沸点より20℃未満しか低くないと、最も低沸点の媒体成分が急激に揮散して、乾燥過程においてスペーサ粒子が移動できなくなったり、甚だしい場合には最も低沸点の媒体成分の急激な沸騰によって、スペーサ粒子が液滴ごと基板上を動き回り、スペーサ粒子の配置精度が著しく低下することがある。
【0105】
また、スペーサ粒子分散液の液滴が基板上に着弾した後に基板表面温度を徐々に上昇させながら媒体を揮散させる乾燥方法においては、スペーサ粒子分散液の液滴が基板上に着弾した時点での基板表面温度は、特に限定されるものではないが、スペーサ粒子分散液の媒体中に含まれる最も低沸点の媒体成分の沸点より20℃以上低い温度であって、かつ、乾燥が完了するまでの間の基板表面温度が90℃以下であることが好ましく、より好ましくは70℃以下であることである。
【0106】
スペーサ粒子分散液の液滴が基板上に着弾した時点での基板表面温度が最も低沸点の媒体成分の沸点より20℃未満しか低くないと、最も低沸点の媒体成分が急激に揮散して、乾燥過程においてスペーサ粒子が移動できなくなったり、甚だしい場合には最も低沸点の媒体成分の急激な沸騰によって、スペーサ粒子が液滴ごと基板上を動き回り、スペーサ粒子の配置精度が著しく低下することがある。また、乾燥が完了するまでの間の基板表面温度が90℃を超えると、配向膜を汚染して、液晶表示装置の表示品質を損なうことがある。なお、ここで言う乾燥の完了とは、基板上に吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴が消失した時点を意味する。
【0107】
上述の方法でスペーサ粒子を選択的に配置した基板と対向する基板とを周辺シール材を介して加熱圧着し、基板間に形成された空隙に液晶を充填することにより、所望の液晶表示装置を得ることができる。
【0108】
【作用】
本発明の液晶表示装置の製造方法によれば、スペーサ粒子を配置する方の基板として、その片側の少なくとも画素領域に相当する領域にはスペーサ粒子分散液に対する接触角がθbである配向膜を存在させ、遮光領域に相当する領域の少なくとも一部にはスペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである部分を存在させ、かつ、上記θbとθaとの関係がθa<θbを満たすようになされている基板を使用し、この基板のスペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである部分にスペーサ粒子分散液をインクジェット装置を用いて吐出するので、スペーサ粒子を基板の非表示部分に効率的かつ高い精度で選択的に配置することが可能であって、スペーサ粒子に起因する消偏現象の発生や光抜けによるコントラストや色調の低下がなく、優れた表示品質を発現する液晶表示装置を得ることができる。
【0109】
【発明の実施の形態】
本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0110】
(1)スペーサ粒子の種粒子の作製
セパラブルフラスコ内に、ジビニルベンゼン15重量部、イソオクチルアクリレート5重量部および重合開始剤として過酸化ベンゾイル1. 3重量部を投入し、均一に攪拌混合した。次に、ポリビニルアルコール(商品名「クラレポバールGL−03」、クラレ社製)の3重量%水溶液20重量部およびドデシル硫酸ナトリウム0. 5重量部を投入し、均一に攪拌混合した後、イオン交換水140重量部を投入した。次いで、窒素ガス気流下、この混合水溶液を攪拌しながら80℃で15時間重合反応を行って微粒子を得た。得られた微粒子を熱水およびアセトンで十分に洗浄した後、分級操作を行い、アセトンを揮散させて、スペーサ粒子の種粒子を作製した。得られたスペーサ粒子の種粒子の平均粒子径は5μmであり、CV値は3.0%であった。
【0111】
(2)スペーサ粒子の作製
上記で得られたスペーサ粒子の種粒子5重量部をイオン交換水20重量部およびヒドロキシエチルメタクリレート10重量部からなる混合水溶液中に投入し、ソニケータによって分散させた後、均一に撹拌混合した。次に、反応系を窒素ガスで置換し、30℃で2時間撹拌を継続した。次いで、反応系に1Nの硝酸水溶液で調製した0.1mol/Lの硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液10重量部を添加し、5時間重合反応を行った後、反応液を取り出し、3μmのメンブランフィルターを用いて粒子と反応液とを濾別した。得られた粒子をエタノールおよびアセトンで十分に洗浄した後、真空乾燥機で減圧乾燥を行って、スペーサ粒子の種粒子の表面にビニル系熱可塑性樹脂がグラフト重合されたスペーサ粒子を作製した。
【0112】
(3)スペーサ粒子分散液の調製
上記で得られたスペーサ粒子を粒子濃度が0.3重量%となるように必要量を秤取し、イソプロピルアルコール20重量部、エチレングリコール60重量部およびイオン交換水20重量部の混合液からなる媒体中にゆっくり添加し、ソニケータによって十分に攪拌混合して均一に分散させた後、目開き10μmのステンレスメッシュで濾過し、凝集物を除去して、スペーサ粒子分散液を調製した。
【0113】
(4)基板の作製
カラーフィルタの画素間に幅15μmのブラックマトリクスが形成されており、着色層上にオーバーコートを施した上にITO透明ベタ電極が形成されているカラーフィルタ基板を用いて、下記3種類の基板を作製した。
▲1▼基板A:上記カラーフィルタ基板のITO透明ベタ電極上の全面にポリイミド系樹脂からなる配向膜を均一に形成した。この配向膜上でカラーフィルタのブラックマトリクス部分に、図2に示すように、ストライプ状に幅8μmのレーザー加工を施して、表面の配向膜(ポリイミド系樹脂)を除去し、下地のITOを露出させた基板Aを作製した。得られた基板Aの露出したITO面の(3)で得られたスペーサ粒子分散液に対する接触角θaは25°であり、表面の配向膜の(3)で得られたスペーサ粒子分散液に対する接触角θbは50°であった。
▲2▼基板B:上記カラーフィルタ基板のITO透明ベタ電極上の全面に感光性ポリイミド系樹脂前駆体を塗工し、マスクを介して露光し、現像することによって、カラーフィルタのブラックマトリクス部分に、図2に示すように、ポリイミド系樹脂からなる配向膜が形成されていず、ストライプ状に幅8μmに下地のITOが露出した基板Bを作製した。得られた基板Bの露出したITO面の(3)で得られたスペーサ粒子分散液に対する接触角θaは25°であり、表面の配向膜(ポリイミド系樹脂)の(3)で得られたスペーサ粒子分散液に対する接触角θbせ45°であった。
▲3▼基板C:レーザー加工を施さなかったこと以外は▲1▼の場合と同様にして、ITO透明ベタ電極上の全面にポリイミド系樹脂からなる配向膜が形成された基板Cを作製した。得られた基板Cの表面の配向膜(ポリイミド系樹脂)の(3)で得られたスペーサ粒子分散液に対する接触角θbは50°であった。
【0114】
(実施例1)
ピエゾ方式の口径30μmのヘッドを搭載したインクジェット装置を用いて、基板A(カラーフィルタ基板)上のレーザー加工を施して露出させたストライプ状のITO面(スペーサ粒子分散液に対する接触角θa:25°)に120μm間隔で各35ピコリットルのスペーサ粒子分散液を吐出した後、乾燥させて、スペーサ粒子を配置し、スペーサ粒子を配置した基板A(カラーフィルタ基板)を作製した。なお、スペーサ粒子の配置密度は150個/mm2 となるように調整して配置した。また、スペーサ粒子の配置の際には、常温の基板をステージ上に置いてスペーサ粒子分散液を吐出し、吐出の完了した基板を速やかに90℃に加熱したホットプレート上に移して乾燥させ、目視で媒体が乾燥したのを確認した後、さらに90℃の雰囲気下に30分間放置して完全に乾燥させた。
【0115】
次に、上記のようにしてスペーサ粒子を配置した基板A(カラーフィルタ基板)と対向アレイ基板とを貼り合わせるために、周辺シール材をスクリーン印刷法で印刷し、両者を貼り合わせた後、シール材を160℃で90分間加熱して硬化させ、セルギャップが5μmの空セルを作製した。次いで、この空セル中に真空法で所定量のTN型用液晶を充填し、封口剤で注入口を封止した後、120℃で30分間加熱処理して、TFT型液晶表示装置を作製した。
【0116】
上記で得られたTFT型液晶表示装置の表示品質の評価を行ったところ、画素部分に存在するスペーサ粒子は認められず、また、スペーサ粒子近辺の液晶の異常配向に起因する光抜けなどの表示不良は全く認められなかった。なお、上記評価は、4.2ボルトの電圧を印加して電子顕微鏡で拡大した映像を目視観察することにより行った。
【0117】
(実施例2)
スペーサ粒子を配置する基板として基板B(カラーフィルタ基板)を用い、この基板B(カラーフィルタ基板)上の露出したストライプ状のITO面(スペーサ粒子分散液に対する接触角θa:25°)にスペーサ粒子分散液を吐出したこと以外は実施例1の場合と同様にして、スペーサ粒子を配置した基板B(カラーフィルタ基板)およびTFT型液晶表示装置を作製した。
【0118】
上記で得られたTFT型液晶表示装置の表示品質の評価を実施例1の場合と同様にして行ったところ、画素部分に存在するスペーサ粒子は認められず、また、スペーサ粒子近辺の液晶の異常配向に起因する光抜けなどの表示不良は全く認められなかった。
【0119】
(比較例1)
スペーサ粒子を配置する基板として基板C(カラーフィルタ基板)を用い、この基板C(カラーフィルタ基板)上の配向膜(ポリイミド系樹脂)面(スペーサ粒子分散液に対する接触角θb:50°)にスペーサ粒子分散液を吐出したこと以外は実施例1の場合と同様にして、スペーサ粒子を配置した基板C(カラーフィルタ基板)およびTFT型液晶表示装置を作製した。
【0120】
上記で得られたTFT型液晶表示装置の表示品質の評価を実施例1の場合と同様にして行ったところ、画素部分の周囲に若干のスペーサ粒子の存在が認められ、また、スペーサ粒子近辺の液晶の異常配向に起因する光抜けが認められた。
【0121】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の液晶表示装置の製造方法によれば、インクジェット装置を用いてスペーサ粒子を液晶表示装置用基板の非表示部分に効率的かつ高い精度で選択的に配置することが可能であって、スペーサ粒子に起因する消偏現象の発生や光抜けによるコントラストや色調の低下がなく、優れた表示品質を発現する液晶表示装置を簡便に得ることができる。
【0122】
また、本発明の液晶表示装置用基板は、上記本発明の液晶表示装置の製造方法において好適に用いられる。さらに、本発明の液晶表示装置用基板の製造方法によれば、上記本発明の液晶表示装置用基板を効率的かつ簡便に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】液晶表示装置の一例を示す断面図である。
【図2】実施例1および実施例2で用いた基板上のスペーサ粒子を配置する位置を示す模式図である。
【符号の説明】
1 透明基板
2 偏光板
3 透明電極
4 カラーフィルタ
5 ブラックマトリクス
6 液晶
7 スペーサ粒子
8 配向膜
9 シール材
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置の製造方法、その製造方法に用いる液晶表示装置用基板およびその基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、現在、パソコン、携帯電子機器等に広く用いられている。図1は液晶表示装置の一例を示す断面図である。図1に示されるように、一般に液晶表示装置は、内側に透明電極3、配向膜8、カラーフィルタ4、ブラックマトリクス5等が配置され、外側に偏光板2が配置された2枚の透明基板1がこれらの周囲に配設されたシール材9を介して対向配置され、形成された空隙に液晶6が封入された構成となされている。この液晶表示装置において、2枚の透明基板1の間隔を規制し、適正な液晶層の厚み(セルギャップ)を維持する目的で使用されているのがスペーサ粒子7である。
【0003】
従来の液晶表示装置の製造方法においては、画素電極が形成された基板上にスペーサ粒子をランダムかつ均一に散布するため、画素電極上すなわち液晶表示装置の表示部にもスペーサ粒子が配置されてしまう。スペーサ粒子は一般的に合成樹脂やガラス等から形成されており、画素電極上にスペーサ粒子が配置されると、偏光が乱されて偏光性を失うという現象、いわゆる消偏現象が生じて、スペーサ粒子部分が光り漏れを起こすという問題点が発生する。また、スペーサ粒子表面において液晶の配向が乱れることにより、光抜けが起こり、コントラストや色調が低下して表示品質が悪化するという問題点が発生する。さらに、TFT型液晶表示装置においては、基板上にTFT素子が配置されているが、スペーサ粒子がこのTFT素子上に配置されると、基板に圧力がかかった時にTFT素子を破損させてしまうという重大な問題点が発生する。
【0004】
このようなスペーサ粒子のランダムかつ均一散布に伴う問題点の発生を抑制するために、スペーサ粒子を遮光層下にのみ配置することが検討されている。このようにスペーサ粒子を特定の位置にのみ配置する方法として、例えば、特開平4−198919号公報では、開口部を有するマスクの開口部と配置させたい位置とを合わせた後にスペーサ粒子を開口部に相当する位置にのみ配置するカラー液晶パネルが開示されており、また、特開平6−258647号公報では、感光体に静電的にスペーサ粒子を吸着させた後に透明基板に転写する液晶表示装置およびその製造方法が開示されている。
【0005】
しかし、上記両公報に開示されている方法は、基板上にマスクや感光体が直接接触するために、基板上の配向膜が損傷して表示品質の低下を来すという問題点がある。
【0006】
また、特開平10−339878号公報では、基板上の画素電極に電圧を印加して帯電させたスペーサ粒子を散布することにより、静電的斥力によって特定の位置にスペーサ粒子を配置させる液晶表示装置の製造方法が開示されている。
【0007】
しかし、上記公報に開示されている方法は、配置させるパターンに沿った電極を必要とするため、スペーサ粒子を完全に任意の位置に配置することは不可能であり、適用できる液晶表示装置の種類が制約されるという問題点がある。
【0008】
一方、特開昭57−58124号公報では、対向面に透明電極が被着形成された透光性電極基板間の間隙部にスペーサ粒子および液晶を介在させてなる液晶表示素子において、スペーサ粒子をインクジェット装置を用いて電極基板上に分散配置させる液晶表示素子の製造方法が開示されている。この方法は、前記方法のように基板そのものに直接接触することがなく、また、任意の位置に任意のパターンでスペーサ粒子を配置することができるので、有効な方法と言える。
【0009】
しかし、上記公報に開示されている方法は、インクジェット装置によって吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴の大きさをスペーサ粒子を配置したい領域の大きさ以下に制御することが困難であるという問題点がある。
【0010】
すなわち、基板上のスペーサ粒子を配置したい位置である遮光層(遮光膜)はブラックマトリクスと呼ばれ、その幅が一般に約10〜30μmであるのに対して、インクジェット装置によって吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴が基板上に着弾した際の着弾径は一般に約40〜200μmであり、上記遮光層の幅より大きい。
【0011】
インクジェット装置から吐出されるスペーサ粒子分散液の液滴を小さくするためには、インクジェット装置のノズルの口径を小さくしなければならないが、現状のインクジェット装置のノズル口径は最低でも20μm程度である。液晶表示装置に用いられるスペーサ粒子の粒子径は一般に2〜10μmであるため、上記ノズル口径を20μm程度より小さくすることは、ノズル閉塞や吐出の不安定化を招く原因となりやすく、現実的ではない。このため、インクジェット装置を用いて液晶表示装置の非表示部にスペーサ粒子を配置するのは、吐出された液滴の大きさの精度を考慮すると、極めて困難なことである。
【0012】
インクジェット装置によって吐出された液滴を所定の区画(位置)に正確に収めるための一つの方法として、被吐出面の所定の区画の吐出液(液滴)に対する濡れ性を制御する方法が挙げられる。例えば、インクジェット装置の吐出液としてはしばしば水性溶液が使用されるが、このような水性溶液は、金属表面のような高極性の被吐出面に対しては濡れ広がるが、樹脂表面のような低極性の被吐出面に対しては濡れ広がらない特性を有する。
【0013】
このような特性を利用した例として、例えば、特開平6−347637号公報では、液晶表示装置のカラーフィルタを製造するに当たり、画素領域と遮光領域とが形成された基板上の特定の画素領域にのみ対応する色のインクを用いる印刷方法が開示されている。この方法においては、基板上の遮光領域にフォトレジスト法によって撥水性の区画を形成しており、同様にしてスペーサ粒子をインクジェット装置を用いて配置する場合にも、この方法を適用することができるものと考えられる。
【0014】
上記方法を適用してスペーサ粒子を配置する場合、液晶表示装置の基板の場合には、通常液晶の配向状態を規制するために配向膜と呼ばれる例えばポリイミド樹脂膜が形成されていて、この配向膜上にスペーサ粒子を配置するが、スペーサ粒子を配置させようとする配向膜上の位置に例えばアクリル酸共重合体などの感光性アルカリ可溶性樹脂の塗膜を形成し、フォトリソグラフ処理を施して、スペーサ粒子を配置しようとする位置のみの配向膜表面を高極性化することができるものと考えられる。
【0015】
しかし実際には、配向膜の表面には液晶の配向方向を規制するために例えばナイロンやレーヨンなどの布で一定方向に擦って、例えばポリイミド樹脂の分子の配向方向を一定にするためのラビング加工が施されなければならないが、このように精密に加工された配向膜の表面にフォトリソグラフ処理を施すことは極めて困難である。
【0016】
また、高極性塗膜は配向膜上に凸状に存在するため、高極性塗膜を部分的に形成させた後にラビング処理を施そうとすれば、本質的に接着性の乏しい配向膜表面の高極性塗膜が剥離してしまい、スペーサ粒子を所定の区画に選択的に配置することができなくなる。このように現実的には、配向膜という特殊な表面状態を必要とする塗膜上に極性の異なる領域を形成させるのは技術的に極めて困難なことである。
【0017】
近年、液晶表示装置は、その表示品質向上の要求が高まるなかでより明るい画質にするために、画素領域を大きく、遮光領域を小さくする方向にある。これはスペーサ粒子を遮光領域に配置するに当たっては困難な方向であって、効率良く高い精度で遮光領域にスペーサ粒子を選択的に配置する方法の開発がより強く求められているのが現状である。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点および現状に鑑み、インクジェット装置を用いてスペーサ粒子を液晶表示装置用基板の非表示部分に効率的かつ高い精度で選択的に配置することが可能であって、スペーサ粒子に起因する消偏現象の発生や光抜けによるコントラストや色調の低下がなく、優れた表示品質を発現する液晶表示装置を得ることができる液晶表示装置の製造方法、および、上記液晶表示装置の製造方法に用いられる液晶表示装置用基板、ならびに、上記液晶表示装置用基板の製造方法を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明による液晶表示装置の製造方法は、インクジェット装置を用いてスペーサ粒子分散液を吐出し、任意の位置にスペーサ粒子を配置した一方の基板と、スペーサ粒子を配置していない他方の基板とをスペーサ粒子および液晶を介して対向させた液晶表示装置の製造方法であって、上記基板のいずれか一方には、一定のパターンに従って配列された画素領域と該画素領域を画する遮光領域とからなるカラーフィルタが形成されていて、上記スペーサ粒子を配置する方の基板として、その片面の少なくとも画素領域に相当する領域にはスペーサ粒子分散液に対する接触角がθbである配向膜が存在し、遮光領域に相当する領域の少なくとも一部にはスペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである部分が存在し、かつ、上記θbとθaとの関係がθa<θbを満たす基板を使用し、この基板のスペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである部分にスペーサ粒子分散液を吐出して、遮光領域に選択的にスペーサ粒子を配置することを特徴とする。なお、本発明で言う画素領域に相当する領域または遮光領域に相当する領域とは、液晶表示装置に組み立てた状態でカラーフィルタが形成された基板面を上面にして表示画面を水平に置いた場合に、カラーフィルタの画素領域の直下に位置する領域またはカラーフィルタの遮光領域の直下に位置する領域を意味する。
【0020】
請求項2に記載の発明による液晶表示装置用基板は、上記請求項1に記載の液晶表示装置の製造方法において使用されるスペーサ粒子を配置する方の基板であって、その片面の少なくとも画素領域に相当する領域にはスペーサ粒子分散液に対する接触角がθbである配向膜が存在し、遮光領域に相当する領域の少なくとも一部にはスペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである部分が存在し、かつ、上記θbとθaとの関係がθa<θbを満たすことを特徴とする。
【0021】
請求項3に記載の発明による液晶表示装置用基板の製造方法は、上記請求項2に記載の液晶表示装置用基板の製造方法であって、基板表面の全域にスペーサ粒子分散液に対する接触角がθbである配向膜を均一に形成した後に、スペーサ粒子を配置したい位置に局所的な非接触エネルギー照射を行い、非接触エネルギーが照射された位置の配向膜を除去または改質して、スペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである表面とすることを特徴とする。
【0022】
請求項4に記載の発明による液晶表示装置用基板の製造方法は、上記請求項2に記載の液晶表示装置用基板の製造方法であって、スペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである表面を有する基板に、感光性ポリイミド樹脂前駆体または感光性ポリイミド樹脂を均一に塗工し、マスクを介して露光および現像を行い、さらに必要に応じて加熱処理を施して、スペーサ粒子を配置したい位置以外の基板表面上にパターン状にポリイミド樹脂からなる配向膜を形成し、かつ、上記配向膜の表面のスペーサ粒子分散液に対する接触角をθbとすることを特徴とする。
【0023】
本発明の液晶表示装置の製造方法は、STN方式の液晶表示装置およびTFT方式の液晶表示装置のいずれにも適用することができる。また、上記いずれの方式の液晶表示装置であっても、基板としてはガラス板や樹脂板の表面に透明電極と配向膜とが形成された基板が用いられる。
【0024】
上記液晶表示装置のうち、STN方式の液晶表示装置は、カラーフィルタが形成されているカラーフィルタ基板とその対向に配置される対向基板とからなり、上記いずれの基板もストライプ状に形成された透明電極を有し、スペーサ粒子を配置する基板は上記いずれの基板であっても良い。
【0025】
また、上記液晶表示装置のうち、TFT方式の液晶表示装置は、カラーフィルタが形成されているカラーフィルタ基板とその対向に配置される対向基板とからなり、一般に対向基板はTFT素子などのアレイを有し、アレイ基板と呼ばれる。また、カラーフィルタ基板上には一般にベタ状の透明電極が形成され、アレイ基板上には素子と透明電極とが形成されており、スペーサ粒子を配置する基板は上記いずれの基板であっても良い。
【0026】
スペーサ粒子分散液を吐出する基板としては、ガラス板や樹脂板などの通常液晶表示装置のパネル基板として用いられるものが使用できる。また、スペーサ粒子分散液を吐出する基板の表面には、通常液晶の配向を規制するための配向膜と呼ばれる樹脂薄膜が形成されている。上記配向膜は、通常ポリイミド系樹脂から形成されており、その表面にラビング処理を施すことにより、液晶の配向を制御している。このため、スペーサ粒子分散液に用いられる媒体は、配向膜中に浸透したり、配向膜を溶解したりする配向膜汚染性を有していてはならない。
【0027】
基板上へのスペーサ粒子の配置は、ランダム配置であっても良いし、特定の位置にパターン化して配置するパターン配置であっても良いが、光抜けなどのスペーサ粒子に起因する表示品質の低下を抑制するためには、基板上の遮光領域(非表示部分)に配置することが好ましい。
【0028】
上記遮光領域としては、画素の周囲に形成されたブラックマトリクスと呼ばれる遮光層とTFT方式の液晶表示装置にあってはTFT素子が位置する部分とがあるが、スペーサ粒子は、TFT素子を破壊することがないように、ブラックマトリクス下に配置することが好ましい。上記ブラックマトリクスの幅は通常10〜30μmである。スペーサ粒子の配置個数(粒子密度)は通常1mm平方の領域に50〜300個であることが好ましい。この粒子密度を満たす範囲であれば、スペーサ粒子はブラックマトリクス下のどのような位置にどのようなパターンで配置しても良い。
【0029】
通常ポリイミド系樹脂からなる配向膜は、透明電極の形成されている基板表面および透明電極の形成されていない基板表面にポリイミド系樹脂前駆体やその溶液またはポリイミド系樹脂の溶液をスピンコート法などの塗工方法によって均一な厚みとなるように塗工し、加熱や乾燥などの方法によってポリイミド系樹脂膜に転化させた後、ラビング処理を施して液晶の配向性を付与することにより、形成される。
【0030】
上記配向膜は、液晶の配向性を制御するために、画素領域に相当する領域においては液晶に接触する基板表面に必ず形成されている必要がある。
【0031】
本発明の液晶表示装置の製造方法は、遮光領域(非表示部分)に相当する領域の少なくとも一部の表面状態を画素領域(表示部分)に相当する領域の表面状態とは異なる状態にすることにより、吐出されたスペーサ粒子分散液を遮光領域に選択的に濡れ広がらせ、その結果スペーサ粒子を遮光領域に選択的に配置させることを骨子とする。
【0032】
すなわち、本発明の液晶表示装置の製造方法においては、スペーサ粒子を配置する方の基板として、請求項2に記載の液晶表示装置用基板のような、その片側の少なくとも画素領域に相当する領域にはスペーサ粒子分散液に対する接触角がθbである配向膜を存在させ、遮光領域に相当する領域の少なくとも一部には、スペーサ粒子を配置したい位置として、スペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである部分を存在させ、かつ、上記θbとθaとの関係がθa<θbを満たすようになされている基板を使用する。なお、本発明で言う接触角とは、平面上に対象とする液体(スペーサ粒子分散液)の小滴を静置して、液滴の拡がりが静止した時点の静的接触角を意味する。
【0033】
上記基板において、接触角θbと接触角θaとの関係がθa<θbを満たしていないと、スペーサ粒子を遮光領域に選択的に配置させることができなくなる。
【0034】
上記接触角がθaである部分は、遮光領域に相当する領域中に線状に連続的に形成されていても良いし、任意の形状の非連続的な島状に形成されていても良い。また、上記接触角がθaである部分は、遮光領域に相当する領域よりも狭い範囲で遮光領域に相当する領域の周囲から間隔を設けて形成されることが好ましい。接触角がθaである部分が遮光領域に相当する領域の周囲に接して形成されていると、液晶が配向制御されていない部分が遮光領域に相当する領域からはみ出して、画素領域に相当する領域に液晶が配向制御されていない部分が生じるため、液晶表示装置の表示品質の不良化につながることがある。
【0035】
上記のように、遮光領域に相当する領域の少なくとも一部の表面状態(スペーサ粒子分散液に対する接触角がθa)を画素領域に相当する領域の表面状態(スペーサ粒子分散液に対する接触角がθb)とは異なる状態にして、所望の位置にスペーサ粒子を選択的に配置する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、(1)配向膜を一旦形成させた後に、スペーサ粒子を配置したい位置のみの配向膜を除去、改質、被覆などの方法により後加工する方法や(2)スペーサ粒子を配置したくない位置にのみ配向膜を形成する方法等が挙げられる。上記(1)法および(2)法は、それぞれ単独で用いられても良いし、両者が併用されても良い。
【0036】
上記(1)配向膜を一旦形成させた後に、スペーサ粒子を配置したい位置のみの配向膜を除去、改質、被覆などの方法により後加工する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、請求項3に記載の液晶表示装置用基板の製造方法のように、基板表面の全域にスペーサ粒子分散液に対する接触角がθbである配向膜を均一に形成した後に、スペーサ粒子を配置したい位置に局所的な非接触エネルギー照射を行い、非接触エネルギーが照射された位置の配向膜を除去または改質して、スペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである表面とする方法が挙げられる。この方法の場合、先ず配向膜を形成し、この配向膜の表面にラビング処理を施して液晶の配向制御を行った後に、スペーサ粒子を配置したい位置に局所的な非接触エネルギー照射を行うことが好ましい。
【0037】
上記非接触エネルギー照射の方法としては、20μm以下にエネルギー照射の焦点を絞ることが可能であって、例えばポリイミド系樹脂などの配向膜材料に分解、蒸散、燃焼、酸化等を施すことができるものであればどのような方法であっても良く、特に限定されるものではないが、例えば、レーザー照射、エキシマレーザー照射、コロナ放電処理、低温プラズマ処理等が挙げられる。これらの方法によれば、予め配向膜の表面にラビング処理を施して液晶の配向制御を行った後に、配向膜の表面に接触することなく、配向膜の除去または改質を行うことが可能であるので、液晶の配向制御がなされた配向膜を比較的容易に得ることができる。また、これらの方法は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0038】
また、スペーサ粒子を配置したい位置のみの配向膜を被覆する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、マスクを介しての蒸着、スパッタリング、CVD(Chemical Vapour Deposition)法、プラズマ重合法などの処理方法により、配向膜の表面に異質の膜を形成させる方法が挙げられる。これらの処理方法は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0039】
上記(2)スペーサ粒子を配置したくない位置にのみ配向膜を形成する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、請求項4に記載の液晶表示装置用基板の製造方法のように、スペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである表面を有する基板に、感光性ポリイミド系樹脂前駆体または感光性ポリイミド系樹脂を均一に塗工し、マスクを介して露光および現像を行い、さらに必要に応じて加熱処理を施して、スペーサ粒子を配置したい位置以外の基板表面上にパターン状にポリイミド系樹脂からなる配向膜を形成し、かつ、上記配向膜の表面のスペーサ粒子分散液に対する接触角をθbとする方法が挙げられる。この方法は、例えば、大成社発行の「ポリファイル」(1990年2月号、14〜29頁)に記載されているようにして実施することができる。
【0040】
この方法は、基板上に一旦パターン状の配向膜を形成した後に、基板上全面にラビング処理を施す必要があるが、ポリイミド系樹脂からなる配向膜上に別の高極性膜を被覆した後にラビング処理を施しても、高極性膜が剥離するような問題が起こらないという長所を有する。
【0041】
また、基板上の配向膜を形成させたい部分に対応する孔を有するパターンを形成したマスクを介して、基板上の配向膜の必要な部分にのみポリイミド系樹脂前駆体を蒸着、スパッタリング、CVD法、プラズマ重合法などの処理方法によって析出堆積させることにより、ポリイミド系樹脂からなる配向膜を形成しても良い。
【0042】
本発明の液晶表示装置の製造方法で用いられるスペーサ粒子分散液を構成するスペーサ粒子は、例えばシリカ系微粒子などの無機系微粒子であっても良いし、例えば有機高分子系微粒子などの有機系微粒子であっても良く、特に限定されるものではない。また、上記無機系微粒子および有機系微粒子は、それぞれ単独で用いられても良いし、両者が併用されても良い。
【0043】
本発明においては、上記無機系微粒子および有機系微粒子のなかでも、液晶表示装置の基板上に形成された配向膜を傷つけない程度の適度な硬度を有し、熱膨張や熱収縮による厚みの変化に追随しやすく、さらにセル内部でのスペーサ粒子の移動が比較的少ない等の長所を有していることから、有機高分子系微粒子が好適に用いられる。
【0044】
上記有機高分子系微粒子を得るための単量体の組成は、特に限定されるものではないが、適度な強度等を有する有機高分子系微粒子を得ることができることから、単官能単量体と多官能単量体とからなる混合単量体であることが好ましい。また、上記混合単量体中における多官能単量体の含有量は、特に限定されるものではないが、30重量%以下であることが好ましい。混合単量体中における多官能単量体の含有量が30重量%を超えると、得られる有機高分子系微粒子の強度や硬度が高くなりすぎることがある。
【0045】
上記単官能単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレンおよびその誘導体;塩化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、エチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。これらの単官能単量体は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。なお、本発明で言う例えば(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを意味する。
【0046】
また、上記多官能単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジビニルベンゼン;ジアリルフタレート;トリアリルイソシアヌレート;1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類;プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類;2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−水添ビス[4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシポリプロポキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレートなどの2,2−ビス[4−(アクリロキシポリアルコキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート類等や、これらの異性体や誘導体等が挙げられる。これらの多官能単量体は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0047】
上記単量体、好ましくは単官能単量体と多官能単量体とからなる混合単量体を重合して有機高分子系微粒子を製造する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、懸濁重合法、シード重合法、分散重合法等が挙げられ、いずれの製造方法が採られても良い。
【0048】
上記製造方法のなかでも、懸濁重合法は、粒子径分布が比較的広く、多分散の微粒子を得ることができるので、多品種の粒子径の微粒子を製造する目的に適する。ただし、懸濁重合法による微粒子をスペーサ粒子として用いる場合には、分級操作を行って、所望の粒子径や粒子径分布を有するものを選別して用いることが好ましい。また、シード重合法および分散重合法は、分級操作を必要とせず、単分散の微粒子を得ることができるので、特定の粒子径の微粒子を大量に製造する目的に適する。
【0049】
上記重合の際には、媒体および重合開始剤が用いられる。
【0050】
上記媒体としては、使用する単量体の種類や組成に応じて適宜選択されれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、2−ブタノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの炭化水素類等が挙げられる。これらの媒体は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0051】
また、上記重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0052】
上記重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、前記単量体100重量部に対して、重合開始剤0.1〜10重量部であることが好ましい。重合開始剤の使用量が単量体100重量部に対して0.1重量部未満であると、重合反応が十分に進行しないことがあり、逆に単量体100重量部に対して10重量部を超えると、得られる有機高分子系微粒子の分子量が低くなりすぎることがある。
【0053】
懸濁重合法とは、媒体として単量体の貧溶媒を用い、単量体および重合開始剤からなる単量体組成物を目的とする粒子径や粒子径分布となるように上記媒体中に分散して重合する方法である。懸濁重合法における媒体(貧溶媒)としては、通常、水に分散安定剤を添加したものが用いられる。上記分散安定剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシドなどの水溶性高分子や、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤等が挙げられる。これらの分散安定剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0054】
懸濁重合の条件は、使用する単量体の種類や組成に応じて適宜決定されれば良く、特に限定されるものではないが、通常、重合温度が50〜80℃であって、重合時間が3〜24時間であることが好ましい。
【0055】
シード重合法とは、ソープフリー重合法や乳化重合法で作製した単分散の種粒子を、さらに単量体を吸収させることにより、狙いの粒子径にまで膨らませる重合方法である。上記種粒子の作製に用いられる単量体としては、特に限定されるものではないが、シード重合時の相分離を抑制するために、シード重合時に用いられる単量体とできるだけ近似の単量体が好適に用いられるが、なかでも、粒子系分布の単分散性が良好であることから、スチレンおよびその誘導体等がより好適に用いられる。
【0056】
上記種粒子の粒子径分布は、シード重合後の粒子径分布にも反映されるので、できるだけ単分散であることが好ましく、CV値{(粒子径の標準偏差/平均粒子径)×100}として5%以下であることが好ましい。シード重合時には種粒子との相分離が起きやすいため、シード重合時に種粒子に吸収させる単量体は、種粒子の作製に用いられた単量体とできるだけ近似の単量体であることが好ましい。例えば、種粒子がスチレン系樹脂からなる場合、種粒子に吸収させる単量体は芳香族系ジビニル単量体であることが好ましく、種粒子がアクリル系樹脂からなる場合、種粒子に吸収させる単量体はアクリル系マルチビニル単量体であることが好ましい。
【0057】
シード重合法において、種粒子に対する上記単量体の添加量は、特に限定されるものではないが、種粒子1重量部に対して、単量体20〜100重量部であることが好ましい。種粒子1重量部に対する単量体の添加量が20重量部未満であると、得られる有機高分子系微粒子の強度が不十分となることがあり、逆に種粒子1重量部に対する単量体の添加量が100重量部を超えると、シード重合時に微粒子同士の合着が起こって、得られる有機高分子系微粒子の粒子系分布が好ましくない程度にまで広がることがある。
【0058】
また、上記シード重合法においては、必要に応じて、分散安定剤が用いられても良い。上記分散安定剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシドなどの水溶性高分子や、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤等が挙げられる。これらの分散安定剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0059】
分散重合法とは、単量体は溶解するが、生成した重合体は溶解しない貧溶媒を媒体として重合を行い、この重合系に高分子系分散安定剤を添加することにより、生成した重合体を微粒子形状で析出させる方法である。
【0060】
一般に架橋性単量体を含有する単量体を分散重合法により重合すると、微粒子の凝集が起きやすく、単分散の架橋微粒子を安定的に得ることは難しいが、重合条件を選定することにより、架橋性単量体を含有する単量体を安定的に重合することが可能となる。
【0061】
上記架橋性単量体を含有する単量体中における架橋性単量体の含有量は、特に限定されるものではないが、分散重合時の微粒子の凝集や得られる架橋微粒子の強度等を考慮すると、50重量%以上であることが好ましい。架橋性単量体を含有する単量体中における架橋性単量体の含有量が50重量%未満であると、重合時に生成した微粒子の表面が媒体中で柔らかくなるため、微粒子同士の衝突によって合着が起こり、得られる架橋微粒子の粒子系分布が好ましくない程度にまで広がったり、凝集体となってしまうことがある。また、たとえ単分散性を保っても、架橋密度が低くなって、スペーサ粒子として必要な強度を十分に得られなくなることがある。
【0062】
本発明で用いられるスペーサ粒子分散液を構成するスペーサ粒子は、液晶表示装置のスペーサ粒子(ギャップ材)として用いられるので、スペーサ粒子を構成する上述の無機系微粒子または有機系微粒子(以下、「無機系微粒子または有機系微粒子」を単に「微粒子」と略記する)や最終的に得られるスペーサ粒子は、一定の強度を有していることが好ましい。
【0063】
微粒子やスペーサ粒子の圧縮強度を示す指標として、微粒子やスペーサ粒子の直径が10%変位した時の圧縮弾性率(10%K値)を採ると、液晶表示装置のスペーサ粒子としては、特に限定されるものではないが、微粒子やスペーサ粒子の上記圧縮弾性率(10%K値)が2000〜15000MPaであることが好ましい。
【0064】
微粒子やスペーサ粒子の上記圧縮弾性率(10%K値)が2000MPa未満であると、液晶表示装置を組立てる際のプレス圧により、スペーサが変形して、適切なギャップが出にくくなることがあり、逆に微粒子やスペーサ粒子の上記圧縮弾性率(10%K値)が15000MPaを超えると、スペーサ粒子が液晶表示装置に組み込まれた際に、基板上の配向膜を傷つけて、表示異常が発生することがある。
【0065】
なお、上記圧縮弾性率(10%K値)とは、柔軟な微粒子やスペーサ粒子の硬さを正確に把握するために、以下の方法で測定した値を意味する。
〔圧縮弾性率(10%K値)の測定方法〕
例えば特表平6−503180号公報に記載されているように、測定装置として微小圧縮試験器(型式「PCT−200」、島津製作所社製)を用いて、ダイヤモンド製の直径50μmの円柱の平滑な端面で微粒子やスペーサ粒子を圧縮し、微粒子やスペーサ粒子の直径が10%変位した時の圧縮荷重を求める。
【0066】
また、上記微粒子やスペーサ粒子は、液晶表示装置の表示品質の一つであるコントラストを向上させるために、着色されていても良い。
【0067】
上記微粒子やスペーサ粒子の着色方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、カーボンブラック、分散染料、酸性染料、塩基性染料、金属酸化物等の着色剤による着色処理法や、微粒子やスペーサ粒子の表面に有機物の膜を形成し、この有機物の膜を高温で分解もしくは炭化させて着色する方法等が挙げられ、いずれの方法が採られても良い。なお、微粒子やスペーサ粒子を形成する材質自体が着色している場合には、着色処理を施すことなく、そのまま着色微粒子や着色スペーサ粒子として用いても良い。
【0068】
本発明で用いられるスペーサ粒子分散液を構成するスペーサ粒子は、特に限定されるものではないが、前記微粒子の表面にビニル系熱可塑性樹脂がグラフト重合により化学的に結合固定されてなる表面被覆層が形成されているものであることが好ましい。
【0069】
上記ビニル系熱可塑性樹脂を構成するビニル系単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(ポリ)カプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、グリセリンモノアリルエーテルなどの水酸基を有するビニル系単量体;(メタ)アクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸などのアクリル酸およびそれらのα−アルキル誘導体またはβ−アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類;上記不飽和ジカルボン酸類のモノ2−(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル誘導体などのカルボキシル基を有するビニル系単量体;t−ブチルアクリルアミドスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのスルホニル基を有するビニル系単量体;ビニルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェートなどのホスホニル基を有するビニル系単量体;ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアクリロイル基を有するアミン類などのアミノ基を有するビニル系単量体;(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートの末端アルキルエーテル、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレートの末端アルキルエーテル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどのエーテル基を有するビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドンなどのアミド基を有するビニル系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メチル−α−クロル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、ブタジエンなどのオレフィン類;;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレンおよびその誘導体等の1分子中に少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有するビニル系単量体が挙げられる。これらのビニル系単量体は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0070】
前記微粒子の表面に上記ビニル系単量体からなるビニル系熱可塑性樹脂をグラフト重合させて化学的に結合固定することにより、表面にビニル系熱可塑性樹脂からなる表面被覆層が形成されているスペーサ粒子を得ることができる。
【0071】
このような方法によって形成された表面被覆層は、インクジェットインクの液体中や液晶表示装置のセル中で、表面被覆層の剥離や溶出等の問題を生じることが少ないので好ましい。なかでも、例えば特開平11−223821号公報に記載されているような、表面に還元性基を有する微粒子に酸化剤を反応させて微粒子表面にラジカルを発生させ、このラジカルを起点とするグラフト重合により微粒子表面にビニル系熱可塑性樹脂からなる表面被覆層を形成する方法が、密度が高く、十分な厚みを有する表面被覆層を形成することができることから、好ましい。
【0072】
本発明で用いられるスペーサ粒子分散液は、上述したスペーサ粒子が媒体中に分散されてなる。
【0073】
上記媒体としては、常温で液体であって、スペーサ粒子を分散させることができるものであればどのような化合物であっても良く、特に限定されるものではないが、なかでも、水や親水性有機溶剤が好適に用いられる。
【0074】
一般にインクジェット装置は、媒体が水または親水性有機溶剤である場合に安定的に吐出できる傾向があり、媒体が疎水性の強い有機溶剤である場合には、ヘッドを構成する部材が媒体に侵されたり、部材を接着する接着剤の一部が媒体中に溶出する等の問題が生じる。従って、スペーサ粒子分散液の媒体は、水または親水性有機溶剤であることが好ましい。
【0075】
上記水としては、特に限定されるものではないが、例えば、イオン交換水、純水、地下水、水道水、工業用水等が挙げられる。これらの水は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0076】
また、上記親水性有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールなどのモノアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのエチレングリコールの多量体;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコールなどのプロピレングリコールの多量体;エチレングリコールの多量体やプロピレングリコールの多量体のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノイソプロピルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテルなどの低級モノアルキルエーテル類;エチレングリコールの多量体やプロピレングリコールの多量体のジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジプロピルエーテルなどの低級ジアルキルエーテル類;エチレングリコールの多量体やプロピレングリコールの多量体のモノアセテート、ジアセテートなどのアルキルエステル類;1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−ヘキセン−2,5−ジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのジオール類;ジオール類のエーテル誘導体;ジオール類のアセテート誘導体;グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール類;多価アルコール類のエーテル誘導体;多価アルコール類のアセテート誘導体等や、ジメチルスルホキシド、チオジグリコール、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン、スルホラン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、α−テルピネオール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビス−β−ヒドロキシエチルスルホン、ビス−β−ヒドロキシエチルウレア、N,N−ジエチルエタノールアミン、アビエチノール、ジアセトンアルコール、尿素等が挙げられる。これらの親水性有機溶剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。また、上記水および親水性有機溶剤は、それぞれ単独で用いられても良いし、両者が併用されても良い。
【0077】
上記媒体には、沸点が100℃未満の親水性有機溶剤が含有されていることが好ましく、より好ましくは沸点が70℃以上100℃未満の親水性有機溶剤が含有されていることである。なお、本発明で言う沸点とは、1気圧の条件下での沸点を意味する。
【0078】
上記沸点が100℃未満の親水性有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノールなどの低級モノアルコール類やアセトン等が挙げられる。これらの沸点が100℃未満の親水性有機溶剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0079】
上記沸点が100℃未満の親水性有機溶剤は、スペーサ粒子分散液を基板上に吐出した後、乾燥させる際に比較的低い温度で揮発する。媒体が高温で配向膜に接触すると配向膜を汚染して液晶表示装置の表示品質を損なうことがあるため、乾燥温度をあまり高くすることができない。従って、上記沸点が100℃未満の親水性有機溶剤を用いることが好ましい。ただし、上記沸点が100℃未満の親水性有機溶剤が室温で揮散しやすいと、スペーサ粒子分散液の製造時や貯蔵時に凝集粒子が発生しやすくなったり、インクジェット装置のノズル付近のスペーサ粒子分散液が乾燥しやすくなって、インクジェット装置による吐出性が損なわれたりするので、室温で揮散しやすい親水性有機溶剤は好ましくない。
【0080】
また、上記沸点が100℃未満の親水性有機溶剤は、特に限定されるものではないが、20℃における表面張力が25mN/m以下であることが好ましい。一般にインクジェット装置は、吐出するスペーサ粒子分散液の20℃における表面張力が30〜50mN/mである場合に良好な吐出精度を示す。一方、基板上に吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴の表面張力は高い方がスペーサ粒子を乾燥過程で移動させるのに適している。
【0081】
沸点が100℃未満の親水性有機溶剤の20℃における表面張力が25mN/m以下であると、吐出時においてはスペーサ粒子分散液の表面張力が比較的低い状態にあるので、良好な吐出精度を得ることが可能となり、基板上に着弾後はスペーサ粒子分散液中の他の媒体成分より先に揮散して、スペーサ粒子分散液の表面張力が高くなるので、乾燥過程におけるスペーサ粒子の移動が容易となる。
【0082】
媒体中における沸点が100℃未満の親水性有機溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、10〜80重量%であることが好ましい。
【0083】
媒体中における沸点が100℃未満の親水性有機溶剤の含有量が10重量%未満であると、沸点が100℃未満の親水性有機溶剤を含有させることによる上記効果を十分に得られないことがあり、逆に媒体中における沸点が100℃未満の親水性有機溶剤の含有量が80重量%を超えると、スペーサ粒子分散液の製造時や貯蔵時に乾燥しやすくなって、凝集粒子が発生したり、インクジェット装置のノズル近辺のスペーサ粒子分散液が過剰に乾燥して、吐出性や吐出精度が損なわれることがある。
【0084】
また、上記媒体には、沸点が150℃以上の親水性有機溶剤が含有されていることが好ましく、より好ましくは沸点が150〜200℃の親水性有機溶剤が含有されていることである。
【0085】
上記沸点が150℃以上の親水性有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどの低級アルコールエーテル類等が挙げられる。これらの沸点が150℃以上の親水性有機溶剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0086】
上記沸点が150℃以上の親水性有機溶剤は、スペーサ粒子分散液の製造時や貯蔵時に乾燥して凝集粒子が発生するのを抑制したり、インクジェット装置のノズル近辺でスペーサ粒子分散液が過剰に乾燥して吐出性や吐出精度が損なわれるのを抑制する。
【0087】
また、上記沸点が150℃以上の親水性有機溶剤は、特に限定されるものではないが、20℃における表面張力が30mN/m以上であることが好ましい。沸点が150℃以上の親水性有機溶剤の20℃における表面張力が30mN/m以上であると、スペーサ粒子分散液の液滴が基板上に着弾後、より低沸点の水や親水性有機溶剤が揮散した後に、スペーサ粒子分散液の表面張力が高く保たれるので、乾燥過程におけるスペーサ粒子の移動が容易となる。
【0088】
媒体中における沸点が150℃以上の親水性有機溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、10〜80重量%であることが好ましい。
【0089】
媒体中における沸点が150℃以上の親水性有機溶剤の含有量が10重量%未満であると、沸点が150℃以上の親水性有機溶剤を含有させることによる上記効果を十分に得られないことがあり、逆に媒体中における沸点が150℃以上の親水性有機溶剤の含有量が80重量%を超えると、スペーサ粒子分散液の乾燥時間が著しく長くなって生産性が低下したり、配向膜が汚染されて液晶表示装置の表示品質が損なわれることがある。
【0090】
本発明で用いられるスペーサ粒子分散液中における前記スペーサ粒子の固形分濃度は、特に限定されるものではないが、0. 05〜5重量%であることが好ましく、より好ましくは0. 1〜2重量%である。
【0091】
スペーサ粒子分散液中におけるスペーサ粒子の固形分濃度が0.05重量%未満であると、吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴中に有効量のスペーサ粒子が含まれなくなることがあり、逆にスペーサ粒子分散液中におけるスペーサ粒子の固形分濃度が5重量%を超えると、インクジェット装置のノズルが閉塞しやすくなったり、吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴中のスペーサ粒子の含有量が過剰となって、乾燥過程におけるスペーサ粒子の移動が困難となることがある。
【0092】
本発明で用いられるスペーサ粒子分散液においては、前記スペーサ粒子が前記媒体中に単粒子状に分散していることが好ましい。スペーサ粒子が媒体中に単粒子状に分散していなくて凝集物が存在すると、吐出性や吐出精度が低下したり、インクジェット装置のノズル閉塞を起こすことがある。
【0093】
本発明で用いられるスペーサ粒子分散液には、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、粘接着性付与剤、粘性調整剤、pH調整剤、界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上が添加されていても良い。
【0094】
上述したスペーサ粒子分散液を基板上に吐出する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、次のように行えば良い。
【0095】
吐出に用いるインクジェット装置としては、特に限定されるものではないが、例えば、ピエゾ素子の振動によって液体をノズルから吐出するピエゾ方式、急激な加熱による液体の膨張を利用して液体をノズルから吐出するサーマル方式、発熱素子の急激な加熱によって液体をノズルから吐出するバブルジェット(登録商標)方式等が挙げられ、いずれの方式のインクジェット装置を用いても良い。
【0096】上記インクジェット装置のノズル口径は、特に限定されるものではないが、20〜100μmであることが好ましい。インクジェット装置のノズル口径が20μm未満であると、粒子径が2〜10μmのスペーサ粒子を含有するスペーサ粒子分散液を吐出した場合にスペーサ粒子の粒子径との差が小さすぎて、吐出精度が低下したり、ノズル閉塞を起こして吐出不能となることがあり、逆にインクジェット装置のノズル口径が100μmを超えると、吐出されるスペーサ粒子分散液の液滴の径が大きくなって、基板上に着弾した液滴の径(着弾径)も大きくなるので、スペーサ粒子の配置精度が粗くなることがある。
【0097】
上記ノズルから吐出される液滴の径は、特に限定されるものではないが、10〜80μmであることが好ましい。ノズルから吐出される液滴の径を上記好ましい範囲に制御する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ノズルの口径を最適化する方法やインクジェット装置を制御する電気信号を最適化する方法等が挙げられ、いずれの方法を採っても良い。特にピエゾ方式のインクジェット装置を用いる場合には、後者の方法を採ることが好ましい。
【0098】
また、基板上に着弾した液滴の径(着弾径)は、特に限定されるものではないが、30〜150μmであることが好ましい。上記着弾径を30μm未満とするためには、ノズル口径を非常に小さくする必要が生じるため、スペーサ粒子によるノズル閉塞の可能性が大きくなったり、ノズル加工の精度を高めなければならなくなることがあり、逆に上記着弾径が150μmを超えると、スペーサ粒子の配置精度が粗くなることがある。
【0099】
基板上に着弾したスペーサ粒子分散液の液滴中の媒体を乾燥する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、次のように行えば良い。
【0100】
上記乾燥に当たっては、インクジェット装置のノズルから基板上に吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴を乾燥させた後に、スペーサ粒子が、基板上に吐出された直後のスペーサ粒子分散液の液滴の径より小さい径の円内に存在するように乾燥させることが好ましい。
【0101】
このように乾燥過程において、スペーサ粒子を吐出された直後のスペーサ粒子分散液の液滴の中央付近に寄せ集めるためには、媒体の沸点、乾燥温度、乾燥時間、媒体の表面張力、媒体の配向膜に対する接触角、スペーサ粒子の濃度等を適切な条件に設定することが重要であるが、特に乾燥条件が重要である。
【0102】
すなわち、スペーサ粒子が基板上を移動する間に媒体が無くなってしまわないようにある程度の時間幅をもって乾燥することが好ましい。このため媒体が急激に乾燥してしまうような乾燥条件は好ましくない。また、媒体は高温で長時間配向膜と接触すると、配向膜を汚染して液晶表示装置の表示品質を損なうことがあるので、高温長時間の乾燥条件は好ましくない。また、媒体が常温で揮散しやすいと、インクジェット装置のノズル近辺のスペーサ粒子分散液が乾燥しやすくなって吐出性が損なわれたり、スペーサ粒子分散液の製造時や貯蔵タンク内での貯蔵時に乾燥によるスペーサ粒子の凝集が起こることがあるので、常温で揮散しやすい媒体は好ましくない。さらに、基板表面温度が比較的低い条件であっても、乾燥時間が著しく長くなると液晶表示装置の生産性が低下するので、低温長時間の乾燥条件も好ましくない。
【0103】
このような制約条件を考慮すると、スペーサ粒子分散液の液滴が基板上に着弾した時点での基板表面温度は、特に限定されるものではないが、スペーサ粒子分散液の媒体中に含まれる最も低沸点の媒体成分の沸点より20℃以上低い温度であることが好ましい。
【0104】
上記基板表面温度がスペーサ粒子分散液の媒体中に含まれる最も低沸点の媒体成分の沸点より20℃未満しか低くないと、最も低沸点の媒体成分が急激に揮散して、乾燥過程においてスペーサ粒子が移動できなくなったり、甚だしい場合には最も低沸点の媒体成分の急激な沸騰によって、スペーサ粒子が液滴ごと基板上を動き回り、スペーサ粒子の配置精度が著しく低下することがある。
【0105】
また、スペーサ粒子分散液の液滴が基板上に着弾した後に基板表面温度を徐々に上昇させながら媒体を揮散させる乾燥方法においては、スペーサ粒子分散液の液滴が基板上に着弾した時点での基板表面温度は、特に限定されるものではないが、スペーサ粒子分散液の媒体中に含まれる最も低沸点の媒体成分の沸点より20℃以上低い温度であって、かつ、乾燥が完了するまでの間の基板表面温度が90℃以下であることが好ましく、より好ましくは70℃以下であることである。
【0106】
スペーサ粒子分散液の液滴が基板上に着弾した時点での基板表面温度が最も低沸点の媒体成分の沸点より20℃未満しか低くないと、最も低沸点の媒体成分が急激に揮散して、乾燥過程においてスペーサ粒子が移動できなくなったり、甚だしい場合には最も低沸点の媒体成分の急激な沸騰によって、スペーサ粒子が液滴ごと基板上を動き回り、スペーサ粒子の配置精度が著しく低下することがある。また、乾燥が完了するまでの間の基板表面温度が90℃を超えると、配向膜を汚染して、液晶表示装置の表示品質を損なうことがある。なお、ここで言う乾燥の完了とは、基板上に吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴が消失した時点を意味する。
【0107】
上述の方法でスペーサ粒子を選択的に配置した基板と対向する基板とを周辺シール材を介して加熱圧着し、基板間に形成された空隙に液晶を充填することにより、所望の液晶表示装置を得ることができる。
【0108】
【作用】
本発明の液晶表示装置の製造方法によれば、スペーサ粒子を配置する方の基板として、その片側の少なくとも画素領域に相当する領域にはスペーサ粒子分散液に対する接触角がθbである配向膜を存在させ、遮光領域に相当する領域の少なくとも一部にはスペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである部分を存在させ、かつ、上記θbとθaとの関係がθa<θbを満たすようになされている基板を使用し、この基板のスペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである部分にスペーサ粒子分散液をインクジェット装置を用いて吐出するので、スペーサ粒子を基板の非表示部分に効率的かつ高い精度で選択的に配置することが可能であって、スペーサ粒子に起因する消偏現象の発生や光抜けによるコントラストや色調の低下がなく、優れた表示品質を発現する液晶表示装置を得ることができる。
【0109】
【発明の実施の形態】
本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0110】
(1)スペーサ粒子の種粒子の作製
セパラブルフラスコ内に、ジビニルベンゼン15重量部、イソオクチルアクリレート5重量部および重合開始剤として過酸化ベンゾイル1. 3重量部を投入し、均一に攪拌混合した。次に、ポリビニルアルコール(商品名「クラレポバールGL−03」、クラレ社製)の3重量%水溶液20重量部およびドデシル硫酸ナトリウム0. 5重量部を投入し、均一に攪拌混合した後、イオン交換水140重量部を投入した。次いで、窒素ガス気流下、この混合水溶液を攪拌しながら80℃で15時間重合反応を行って微粒子を得た。得られた微粒子を熱水およびアセトンで十分に洗浄した後、分級操作を行い、アセトンを揮散させて、スペーサ粒子の種粒子を作製した。得られたスペーサ粒子の種粒子の平均粒子径は5μmであり、CV値は3.0%であった。
【0111】
(2)スペーサ粒子の作製
上記で得られたスペーサ粒子の種粒子5重量部をイオン交換水20重量部およびヒドロキシエチルメタクリレート10重量部からなる混合水溶液中に投入し、ソニケータによって分散させた後、均一に撹拌混合した。次に、反応系を窒素ガスで置換し、30℃で2時間撹拌を継続した。次いで、反応系に1Nの硝酸水溶液で調製した0.1mol/Lの硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液10重量部を添加し、5時間重合反応を行った後、反応液を取り出し、3μmのメンブランフィルターを用いて粒子と反応液とを濾別した。得られた粒子をエタノールおよびアセトンで十分に洗浄した後、真空乾燥機で減圧乾燥を行って、スペーサ粒子の種粒子の表面にビニル系熱可塑性樹脂がグラフト重合されたスペーサ粒子を作製した。
【0112】
(3)スペーサ粒子分散液の調製
上記で得られたスペーサ粒子を粒子濃度が0.3重量%となるように必要量を秤取し、イソプロピルアルコール20重量部、エチレングリコール60重量部およびイオン交換水20重量部の混合液からなる媒体中にゆっくり添加し、ソニケータによって十分に攪拌混合して均一に分散させた後、目開き10μmのステンレスメッシュで濾過し、凝集物を除去して、スペーサ粒子分散液を調製した。
【0113】
(4)基板の作製
カラーフィルタの画素間に幅15μmのブラックマトリクスが形成されており、着色層上にオーバーコートを施した上にITO透明ベタ電極が形成されているカラーフィルタ基板を用いて、下記3種類の基板を作製した。
▲1▼基板A:上記カラーフィルタ基板のITO透明ベタ電極上の全面にポリイミド系樹脂からなる配向膜を均一に形成した。この配向膜上でカラーフィルタのブラックマトリクス部分に、図2に示すように、ストライプ状に幅8μmのレーザー加工を施して、表面の配向膜(ポリイミド系樹脂)を除去し、下地のITOを露出させた基板Aを作製した。得られた基板Aの露出したITO面の(3)で得られたスペーサ粒子分散液に対する接触角θaは25°であり、表面の配向膜の(3)で得られたスペーサ粒子分散液に対する接触角θbは50°であった。
▲2▼基板B:上記カラーフィルタ基板のITO透明ベタ電極上の全面に感光性ポリイミド系樹脂前駆体を塗工し、マスクを介して露光し、現像することによって、カラーフィルタのブラックマトリクス部分に、図2に示すように、ポリイミド系樹脂からなる配向膜が形成されていず、ストライプ状に幅8μmに下地のITOが露出した基板Bを作製した。得られた基板Bの露出したITO面の(3)で得られたスペーサ粒子分散液に対する接触角θaは25°であり、表面の配向膜(ポリイミド系樹脂)の(3)で得られたスペーサ粒子分散液に対する接触角θbせ45°であった。
▲3▼基板C:レーザー加工を施さなかったこと以外は▲1▼の場合と同様にして、ITO透明ベタ電極上の全面にポリイミド系樹脂からなる配向膜が形成された基板Cを作製した。得られた基板Cの表面の配向膜(ポリイミド系樹脂)の(3)で得られたスペーサ粒子分散液に対する接触角θbは50°であった。
【0114】
(実施例1)
ピエゾ方式の口径30μmのヘッドを搭載したインクジェット装置を用いて、基板A(カラーフィルタ基板)上のレーザー加工を施して露出させたストライプ状のITO面(スペーサ粒子分散液に対する接触角θa:25°)に120μm間隔で各35ピコリットルのスペーサ粒子分散液を吐出した後、乾燥させて、スペーサ粒子を配置し、スペーサ粒子を配置した基板A(カラーフィルタ基板)を作製した。なお、スペーサ粒子の配置密度は150個/mm2 となるように調整して配置した。また、スペーサ粒子の配置の際には、常温の基板をステージ上に置いてスペーサ粒子分散液を吐出し、吐出の完了した基板を速やかに90℃に加熱したホットプレート上に移して乾燥させ、目視で媒体が乾燥したのを確認した後、さらに90℃の雰囲気下に30分間放置して完全に乾燥させた。
【0115】
次に、上記のようにしてスペーサ粒子を配置した基板A(カラーフィルタ基板)と対向アレイ基板とを貼り合わせるために、周辺シール材をスクリーン印刷法で印刷し、両者を貼り合わせた後、シール材を160℃で90分間加熱して硬化させ、セルギャップが5μmの空セルを作製した。次いで、この空セル中に真空法で所定量のTN型用液晶を充填し、封口剤で注入口を封止した後、120℃で30分間加熱処理して、TFT型液晶表示装置を作製した。
【0116】
上記で得られたTFT型液晶表示装置の表示品質の評価を行ったところ、画素部分に存在するスペーサ粒子は認められず、また、スペーサ粒子近辺の液晶の異常配向に起因する光抜けなどの表示不良は全く認められなかった。なお、上記評価は、4.2ボルトの電圧を印加して電子顕微鏡で拡大した映像を目視観察することにより行った。
【0117】
(実施例2)
スペーサ粒子を配置する基板として基板B(カラーフィルタ基板)を用い、この基板B(カラーフィルタ基板)上の露出したストライプ状のITO面(スペーサ粒子分散液に対する接触角θa:25°)にスペーサ粒子分散液を吐出したこと以外は実施例1の場合と同様にして、スペーサ粒子を配置した基板B(カラーフィルタ基板)およびTFT型液晶表示装置を作製した。
【0118】
上記で得られたTFT型液晶表示装置の表示品質の評価を実施例1の場合と同様にして行ったところ、画素部分に存在するスペーサ粒子は認められず、また、スペーサ粒子近辺の液晶の異常配向に起因する光抜けなどの表示不良は全く認められなかった。
【0119】
(比較例1)
スペーサ粒子を配置する基板として基板C(カラーフィルタ基板)を用い、この基板C(カラーフィルタ基板)上の配向膜(ポリイミド系樹脂)面(スペーサ粒子分散液に対する接触角θb:50°)にスペーサ粒子分散液を吐出したこと以外は実施例1の場合と同様にして、スペーサ粒子を配置した基板C(カラーフィルタ基板)およびTFT型液晶表示装置を作製した。
【0120】
上記で得られたTFT型液晶表示装置の表示品質の評価を実施例1の場合と同様にして行ったところ、画素部分の周囲に若干のスペーサ粒子の存在が認められ、また、スペーサ粒子近辺の液晶の異常配向に起因する光抜けが認められた。
【0121】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の液晶表示装置の製造方法によれば、インクジェット装置を用いてスペーサ粒子を液晶表示装置用基板の非表示部分に効率的かつ高い精度で選択的に配置することが可能であって、スペーサ粒子に起因する消偏現象の発生や光抜けによるコントラストや色調の低下がなく、優れた表示品質を発現する液晶表示装置を簡便に得ることができる。
【0122】
また、本発明の液晶表示装置用基板は、上記本発明の液晶表示装置の製造方法において好適に用いられる。さらに、本発明の液晶表示装置用基板の製造方法によれば、上記本発明の液晶表示装置用基板を効率的かつ簡便に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】液晶表示装置の一例を示す断面図である。
【図2】実施例1および実施例2で用いた基板上のスペーサ粒子を配置する位置を示す模式図である。
【符号の説明】
1 透明基板
2 偏光板
3 透明電極
4 カラーフィルタ
5 ブラックマトリクス
6 液晶
7 スペーサ粒子
8 配向膜
9 シール材
Claims (4)
- インクジェット装置を用いてスペーサ粒子分散液を吐出し、任意の位置にスペーサ粒子を配置した一方の基板と、スペーサ粒子を配置していない他方の基板とをスペーサ粒子および液晶を介して対向させた液晶表示装置の製造方法であって、上記基板のいずれか一方には、一定のパターンに従って配列された画素領域と該画素領域を画する遮光領域とからなるカラーフィルタが形成されていて、上記スペーサ粒子を配置する方の基板として、その片面の少なくとも画素領域に相当する領域にはスペーサ粒子分散液に対する接触角がθbである配向膜が存在し、遮光領域に相当する領域の少なくとも一部にはスペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである部分が存在し、かつ、上記θbとθaとの関係がθa<θbを満たす基板を使用し、この基板のスペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである部分にスペーサ粒子分散液を吐出して、遮光領域に選択的にスペーサ粒子を配置することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
- 請求項1に記載の液晶表示装置の製造方法において使用されるスペーサ粒子を配置する方の基板であって、その片面の少なくとも画素領域に相当する領域にはスペーサ粒子分散液に対する接触角がθbである配向膜が存在し、遮光領域に相当する領域の少なくとも一部にはスペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである部分が存在し、かつ、上記θbとθaとの関係がθa<θbを満たすことを特徴とする液晶表示装置用基板。
- 基板表面の全域にスペーサ粒子分散液に対する接触角がθbである配向膜を均一に形成した後に、スペーサ粒子を配置したい位置に局所的な非接触エネルギー照射を行い、非接触エネルギーが照射された位置の配向膜を除去または改質して、スペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである表面とすることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置用基板の製造方法。
- スペーサ粒子分散液に対する接触角がθaである表面を有する基板に、感光性ポリイミド系樹脂前駆体または感光性ポリイミド系樹脂を均一に塗工し、マスクを介して露光および現像を行い、さらに必要に応じて加熱処理を施して、スペーサ粒子を配置したい位置以外の基板表面上にパターン状にポリイミド系樹脂からなる配向膜を形成し、かつ、上記配向膜の表面のスペーサ粒子分散液に対する接触角をθbとすることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置用基板の製造方法。
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