JP2004020904A - レーザー製版方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】支持体上に塗布形成した感光性層をレーザー光線によって画像露光させることにより、画像形成済みの画像形成材料を作製するレーザー製版方法であって、支持体上の感光性層の加熱乾燥処理の際、全面に亘って均一に乾燥させることが出来、一層高品質な画像を形成できるレーザー製版方法を提供する。
【解決手段】レーザー製版方法は、画像形成材料固定用ドラム(21)に固定した支持体(3)上に感光性版材を塗布して感光性層を形成し、当該感光性層を加熱乾燥処理して画像形成材料を構成した後、レーザー光線により走査画像露光を行い、次いで、製版処理剤による処理を施して画像形成する製版方法であり、加熱乾燥処理するにあたり、ドラム軸線方向における支持体(3)の中央部に比べ、両端部に多くのエネルギーを加える。
【選択図】 図1
【解決手段】レーザー製版方法は、画像形成材料固定用ドラム(21)に固定した支持体(3)上に感光性版材を塗布して感光性層を形成し、当該感光性層を加熱乾燥処理して画像形成材料を構成した後、レーザー光線により走査画像露光を行い、次いで、製版処理剤による処理を施して画像形成する製版方法であり、加熱乾燥処理するにあたり、ドラム軸線方向における支持体(3)の中央部に比べ、両端部に多くのエネルギーを加える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特にレーザー製版装置において好適に実施し得るレーザー製版方法であって、支持体上に塗布形成した感光性層をレーザー光線によって画像露光させることにより、画像形成済みの画像形成材料を作製するレーザー製版方法に関する。斯かるレーザー製版方法は、平版印刷版などに使用される画像形成材料の作製に好適である。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピューター画像処理技術の進歩に伴い、デジタル画像情報から、銀塩マスクフィルムへの出力を行わずに、レーザー光により直接画像を形成するCTP(Computer to Plate)システムが注目されており、特に、高出力の半導体レーザーやYAGレーザー等を使用するCTPシステムは、製版工程の短縮化、作業時の環境光、製版コスト等の面から、その実用化が急速に進みつつある。
【0003】
これに伴い、CTPシステム用の平版印刷版としては、近年、赤外レーザー光を使用し、露光部の現像液に対する溶解性を変化させることによって画像形成可能な感光性組成物の層(感光性層)を支持体表面に有する感光性平版印刷版が提案されている(例えば、特開平9−43847号、特開平10−268512号、特開平11−84657号、特開平11−174681号、特開平11−194504号、特開平11−223936号の各公報、WО97/39894号、WО98/42507号の各明細書参照)。
【0004】
上記の感光性平版印刷版は、従来の感光性平版印刷版がo−キノンジアジド化合物などの光分解という化学的変化により現像液に対する露光部の溶解性を増大させることによって画像を形成していたのに対し、例えば赤外吸収色素などの赤外光を吸収して熱に変換する物質とノボラック樹脂などのアルカリ可溶性樹脂とを主な感光性成分とし、赤外レーザー光の露光で発生する熱による樹脂の構造転移などの物理的変化によって現像液に対する露光部の溶解性を増大させるものであり、斯かる感光性平版印刷版は、o−キノンジアジド化合物の様な白色光に感光する物質を含有させる必要がないことから、白色灯下でも取り扱えるという利点を有する。
【0005】
更に、CTPシステム用の平版印刷版を作製するレーザー製版装置としては、機上において印刷版支持体上に感光性版材を塗布して感光性層を形成し、当該感光性層に加熱乾燥処理を施した後、レーザー光線による画像露光を行い、次いで、アルカリ現像を施して画像形成するレーザー製版装置、更には、前記の機能に加え、印刷に使用済みの平版印刷版の感光性層を機上で除去した後、印刷版支持体を再生し、次いで、再生した支持体上に再び感光性層を塗布形成することにより、平版印刷版を再生するレーザー製版装置が注目されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の様なレーザー製版装置においては、支持体上に感光性層を形成した際、レーザー製版機の画像形成材料固定用ドラム(版胴)上にて加熱乾燥処理しなくてはならない。しかしながら、版胴上に支持体を固定して加熱乾燥処理した場合、ドラム軸線方向の支持体の端部は中央部よりも温まり難く、例えば5〜20cm程度の幅(軸線方向の長さ)に亘って乾燥ムラを生じる。斯かる乾燥ムラは、端部と中央部との現像時間ギャップを惹起し、全面で均質な画質を得ることが出来ないために問題となっている。従って、上記のレーザー製版装置においては、支持体上の感光性層の乾燥時に乾燥ムラを無くし、支持体全面(感光性層全面)に亘って均質に乾燥させることが出来、一様で一層高品質な画質が得られる改良された手段が強く望まれている。
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、支持体上に塗布形成した感光性層をレーザー光線によって画像露光させることにより、画像形成済みの画像形成材料を作製するレーザー製版方法であって、支持体上の感光性層の加熱乾燥処理の際、感光性層を全面に亘って均一に乾燥させることが出来、一層高品質な画像を形成できるレーザー製版方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、支持体上の感光性層の加熱乾燥処理の際に支持体の中央部よりも両端部により多くのエネルギーを加えて加熱処理するならば、結果的に感光性層全面をムラ無く乾燥させることが出来ることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、画像形成材料固定用ドラムに固定した支持体上に感光性版材を塗布して感光性層を形成し、当該感光性層を加熱乾燥処理することにより画像形成材料を構成した後、レーザー光線により走査画像露光を行い、次いで、製版処理剤による処理を施して感光性層により画像形成するレーザー製版方法において、感光性層を加熱乾燥処理するにあたり、ドラム軸線方向における支持体の中央部に比べ、両端部に多くのエネルギーを加えることを特徴とするレーザー製版方法に存する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明のレーザー製版方法の実施に好適な一例としてのレーザー製版装置の概念を示す縦断面図である。図2は、光加熱方式の加熱乾燥処理を行う乾燥機構におけるランプの配置例を示す平面図であり、図3〜図5は、加熱乾燥処理において支持体(感光性層)の端部と中央部に与えるエネルギーの分布を示すグラフである。
【0011】
本発明のレーザー製版方法は、概略、支持体上に感光性層を塗布形成し、感光性層を加熱乾燥処理することにより感光性画像形成材料を構成した後、レーザー光線により走査画像露光を行い、次いで、製版処理を施して感光性層により画像形成する製版方法である。そして、本発明のレーザー製版方法は、図1に示す様なレーザー製版装置、例えば、平版印刷版(画像形成材料)を機上製版して印刷する平版印刷機としてのレーザー製版装置であって、画像形成材料固定用ドラム、版材供給機構、乾燥機構、露光機構および製版処理剤供給機構を少なくとも有するレーザー製版装置において好適に実施される。
【0012】
図1に示す装置は、画像形成材料固定用ドラムとしての版胴(21)、ブランケット胴(22)及び圧胴(23)の各胴間を離間可能にすると共に圧胴(23)への紙の送給停止制御を可能とし、版胴(21)に対し、インク着肉装置(6)のインク付けローラー及び湿し装置(7)の水付けローラーを離間可能にし、そして、支持体固定手段(31)、版材供給機構(4)、乾燥機構(9)、露光機構(5)の他に、後述する版材除去機構などを配置し、更に、前面が開放されたスライド可能なケーシング(1)に全体を収容した点を除き、従来公知の平版印刷機と同じである。
【0013】
上記の各胴間の離間は、例えば、ブランケット胴(22)及び圧胴(23)に偏芯ブッシュを使用する等の適宜の機械的手段により、また、版胴(21)に対する着肉装置(6)のインク付けローラー及び湿し装置(7)の水付けローラーの離間は、版胴(21)に設けられたカムと各ローラーに設けられたリンク等の適宜の機械的手段により行うことが出来る。上記の支持体固定手段(31)は、例えば、版胴(21)上の溝内に支持体(3)の両端部を挿入してクサビ止めする構造の手段により行うことが出来る。
【0014】
上記の版材除去機構は、例えば、版材溶解液供給機構(81)、必要に応じて設けられる版材剥離ローラー(82)、洗浄水供給機構(83)、廃液回収機構(84)及びエアー式乾燥機構(85)から成る。そして、図1に例示する装置においては、版材供給機構(4)、版材溶解液供給機構(81)及び洗浄水供給機構(83)は、何れも、受液バケットと当該受液バケット内に部分的に挿入配置されたローラーにて構成され、廃液回収機構(84)は、受液バケットと当該受液バケット内に部分的に挿入配置され且つ必要に応じて吸引可能になされたローラー(支持体(3)と略同一長さのローラー)にて構成され、また、エアー式乾燥機構(85)はブロー用ファンにて構成される。
【0015】
版材供給機構(4)、版材溶解液供給機構(81)及び洗浄水供給機構(83)は、上記のローラー機構の他、スプレー装置によって構成することが出来る。また、版材剥離ローラー(82)は、例えば、ローラー表面に適当な摩擦抵抗性あるいは粘着性を付与して構成することも出来る。
【0016】
版材供給機構(4)、版材溶解液供給機構(81)、版材剥離ローラー(82)、洗浄水供給機構(83)、廃液回収機構(84)及びエアー式乾燥機構(85)は、例えば、版胴(21)に対向して配置されたラック状架台に搭載され且つラック・ピニオンの歯車機構により上昇下降可能に構成することが出来る。斯かる構成により、製版、印刷、再生の各工程に必要な要素がその都度に版胴(21)に近接配置される。
【0017】
露光機構(5)は、画像のデジタルデーターに基づき、感光性版材を構成するポジ感光性組成物の露光に適応した波長とエネルギーの光を照射する光学機器にて構成される。露光機構(5)の光源としては、好ましくは、アルゴンイオンレーザー、He−Neレーザー、He−Cdレーザー、ルビーレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー等の300〜1300nmに発光波長を有するレーザーを適宜使用することが出来る。特に、好ましいレーザーとしては青紫光源または近赤外光源のレーザーが挙げられるが、発光波長が400〜420nmの青紫光源としては、5〜100mWの半導体レーザーが挙げられ、発光波長が700〜1300nmの近赤外光源としては、30mW〜40Wの半導体レーザー、YAGレーザーが挙げられる。
【0018】
なお、必要に応じて版胴(21)とブランケット胴(22)との間に汚染防止トレー(86)をスライド可能に配置させることが出来る。また、斯かる汚染防止トレー(86)は、ブランケット胴(22)と圧胴(23)との間に配置させることも出来る。汚染防止トレー(86)のスライド機構は、例えば、ラック・ピニオンの歯車機構により構成することが出来る。
【0019】
また、前面が開放されたケーシング(1)のスライドは、例えば、床に設置された案内レール(図示せず)によって容易に行うことが出来る。また、ケーシング(1)の天井部に設置された除塵フイルター(11)としては、適宜の市販品を使用することが出来る。なお、図1中の符号(12)は、必要に応じてケーシング(1)の底部に設けられた排気ダクトである。上記の様な、平版印刷機を改良するための各手段および機構などは当業者にとっては、周知・慣用手段に基づいて容易に構築することが出来る。
【0020】
本発明のレーザー製版方法は、版胴(21)、ブランケット胴(22)及び圧胴(23)から成る印刷部を備え、製版、印刷、再生の各工程を繰り返し行うレーザー製版装置としての上記の様な平版印刷機上において好適に実施される。以下、上記の平版印刷機における画像形成材料の形成工程(A)、露光工程(B)及び現像工程(C)から成る製版工程の他、印刷工程(D)ならびに再生工程(E)と共に、本発明のレーザー製版方法を説明する。
【0021】
<製版工程(A)〜(C)>
画像形成材料の形成工程(A);
先ず、版胴(21)、ブランケット胴(22)及び圧胴(23)の各胴間を離間状態にし且つ圧胴(23)への紙の送給を停止した状態とした後、工程(A)として、画像形成材料固定用ドラムとしての版胴(21)の外周面上に固定した支持体(3)上に版材供給機構(4)から感光性組成物から成る感光性版材を供給塗布し、塗布した感光性版材に対して光加熱式乾燥機構(9)により上記の特定波長の近赤外光を上記の光強度密度で照射することにより熱乾燥させ、そして、感光性平版印刷版(画像形成材料)を構成する。
【0022】
支持体(3)としては、例えば、砂目処理されたアルミニウム板を使用することが出来る。感光性版材を構成する組成物としては、加熱乾燥処理用の光を吸収して熱に変換する光熱変換剤を含有するのが好ましい。中でも、ポジ型感光性組成物が好ましく、画像露光光源の光を吸収して熱に変換する光熱変換物質とアルカリ可溶性樹脂を含有するものであれば特に制限されず、従来公知のこの様なポジ感光性組成物を制限なく使用することが出来る。
【0023】
上記のポジ型感光性組成物は、後述する光熱変換物質が画像露光光源の光を吸収して発生する熱の作用により分解する熱分解性物質(以下、「熱分解性物質」と称することがある)を含有しないことが好ましい。上記の熱分解性物質は、特開平7−28527号公報に記載されている様なオニウム塩、ジアゾニウム塩およびキノンジアジド化合物である。斯かる熱分解性物質を含有しない感光性組成物は、紫外線領域の光に実質的に感受性を有さず、白色灯下で取り扱うことが可能となる。
【0024】
ここで、紫外線領域の光に対して実質的に感受性を有さないとは、360〜450nmの波長の光による照射の前後で、アルカリ現像液に対する溶解性に実質的有意差を生じず、実用的な意味での画像形成能を有さないことを意味する。例えば、白色蛍光灯(三菱電機社製36W白色蛍光灯「ネオルミスーパーFLR40S−W/M/36」)の400ルクスの光強度照射下に10時間放置した後の組成物のアルカリ現像液に対する溶解性が放置前に比して実質的変化を生じない結果を示すことを言う。
【0025】
上記のポジ型感光性組成物における、画像露光光源の光を吸収して熱に変換する光熱変換物質としては、例えば、波長域が通常650〜1300nm、好ましくは800〜1300nmの近赤外線領域の一部または全部に吸収帯を有する有機または無機の顔料、染料、有機色素、金属、金属酸化物、金属炭化物、金属硼化物などが挙げられる。これらの中では光吸収色素が特に有効である。斯かる光吸収色素は、前記波長域の光を効率よく吸収する一方、紫外線領域の光は殆ど吸収しないか、吸収しても実質的に感応せず、白色灯に含まれる様な弱い紫外線によっては感光性組成物を変成させる作用のない化合物である。なお、本発明では、後述する様に、感光性層を熱乾燥させるために近赤外吸収色素を使用する。そのため、光熱変換物質としても近赤外吸収色素を用いることが好ましい。
【0026】
上記の光吸収色素としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などを含む複素環などがポリメチン(−CH=)nで結合された、広義の所謂シアニン系色素が代表的なものとして挙げられる。具体的には、例えば、キノリン系(所謂、狭義のシアニン系)、インドール系(所謂、インドシアニン系)、ベンゾチアゾール系(所謂、チオシアニン系)、アミノベンゼン系(所謂、ポリメチン系)、ピリリウム系、チアピリリウム系、スクアリリウム系、クロコニウム系、アズレニウム系などが挙げられる。これらの中では、キノリン系、インドール系、ベンゾチアゾール系、アミノベンゼン系、ピリリウム系またはチアピリリウム系が好ましい。その他に、アミニウム系、イモニウム系、フタロシアニン系、アントラキノン系などの各色素も代表的なものとして挙げられる。これらの中では、アミニウム系またはイモニウム系色素が好ましい。
【0027】
本発明で使用するアルカリ可溶性樹脂は、基本的には、光熱変換物質との組合せにおいて、露光部と未露光部とが主として化学変化以外の変化によって、アルカリ現像液に対する溶解性に差を生じる高分子であり、当然ながら、高分子自体が、主として化学変化以外の変化によって、アルカリ現像液に対する溶解性が変化する高分子化合物である場合を含む。斯かる高分子としては、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アクリル酸誘導体の共重合体などのアルカリ可溶性樹脂などが挙げられる。これらの中では、フェノール性水酸基を有する樹脂、特に、ノポラック樹脂および/またはフェノール樹脂を含有する高分子が好ましい。特に、本出願人によって提案された次のポジ感光性組成物は好適な例である。
【0028】
(1)ノボラック樹脂(a)、ポリメチレン鎖を介して複素環が結合した構造のシアニン系、アミニウム系またはイモニウム系の光熱変換物質(b)に感光性層の表面硬度を高めるため、(c)成分としてビニルオキシ化合物(特開平11−231515号公報)又はアシルオキシアルコキシ化合物(特開平11−231513号公報)を含有させたポジ感光性組成物。
【0029】
(2)ノボラック樹脂(a)、ポリメチレン鎖を介して複素環が結合した構造のシアニン系、アミニウム系またはイモニウム系光熱変換物質(b)に画像再現性を高めるため、(c)成分として酸発色性色素(特開平11−190903号公報)又は塩基発色性色素(特開平11−143076号公報)を含有させたポジ感光性組成物。
【0030】
(3)ノボラック樹脂(a)、ポリメチレン鎖を介して複素環が結合した構造のシアニン系、アミニウム系またはイモニウム系光熱変換物質(b)に耐印刷性を向上させるため、(c)成分としてエステル化合物含有させたポジ感光性組成物(特開平11−288089号公報)。
【0031】
上記の中では、ポジ型感光性組成物(2)及び(3)が耐刷性および画像形成に優れて好ましい。更に、ポジ型感光性組成物は熱架橋性化合物を含有していてもよい。斯かる熱架橋性化合物としては、架橋性を有する窒素化合物が挙げられ、好ましくはアミノ基を有する化合物であり、より具体的には、例えば、官能基として、メチロール基、それのアルコール縮合変性したアルコキシメチル基、アセトキシメチル基などを2個以上有するアミノ化合物が挙げられる。アミノ基を有する化合物の中でも、複素環構造、特に含窒素複素環構造を有する化合物が好ましく、特にメラミン骨格を有する化合物が好ましい。斯かる熱架橋性化合物としては、特開平11−202481号公報に記載の熱架橋性化合物などが挙げられる。
【0032】
本発明においては、支持体(3)上に感光性層を設けて感光性画像形成材料を構成する際、乾燥ムラの無い感光性層を形成するため、ドラム軸線方向における支持体(3)の中央部に比べ、両端部に多くのエネルギーを加えて感光性層を加熱乾燥処理することが重要である。すなわち、加熱乾燥処理においては、図3〜図5に示す様に、供給する加熱エネルギーに幅方向(ドラム軸線方向)の分布を持たせ、ドラム軸線方向における支持体(3)(感光性層)の中央部よりも両端部により多くのエネルギーを加えて加熱処理する。
【0033】
上記の平版印刷機においては、上記の乾燥機構(9)によって感光性層の加熱乾燥を行う様になされているが、乾燥機構(9)としては、感光性層の素材に応じて光加熱式、熱風乾燥式の何れを採用してもよい。支持体(3)の両端部を多く加熱するには、例えば、熱風乾燥式の場合、両端部への熱風風量を増加する、熱風ノズルの幅を広げる、熱風温度を上げる等の手法が挙げられ、また、光加熱式の場合は、両端部へ照射する光強度を上げる、光照射幅を広げる等の手法が挙げられる。
【0034】
具体的には、乾燥機構(9)は、例えば光加熱式の場合、図2に示す様に、版胴(21)(画像形成材料固定用ドラム)の外周面側にドラム軸線に沿って配置された主加熱手段としての加熱ランプ(9a)と、ドラムの軸線方向の両端部側に加熱ランプ(9a)に平行に配置された補助加熱手段としての加熱ランプ(9b)とから構成される。一方、熱風乾燥式の場合、乾燥機構(9)は、上記の2つの加熱ランプの場合と同様に、例えば、加熱手段としての熱風ノズルと補助加熱手段としての熱風ノズルとから構成される。なお、図3〜図5において、「加熱エネルギー量」とは、光強度、照射光量、熱風温度、熱風風量または熱風風速などを表す。
【0035】
上記の様な光加熱式や熱風乾燥式の乾燥機構(9)によって加熱乾燥する場合、版胴(21)上の支持体(3)の端部に余分に供給するエネルギー量は、必要とされる加熱温度や支持体(3)からの熱放散速度に応じて調整すればよいが、支持体(3)中央部への供給エネルギー量に対して、103%以上、500%以下となる様に設定するのが好適である。また、余分にエネルギーを加える部分は、支持体(3)端部から20cm以内、好ましくは10cm以内の領域でよく、これにより十分な効果が得られる。
【0036】
乾燥機構(9)の好ましい加熱方式としては加熱効率の点から光加熱式がよい。光加熱式の場合には、少なくとも700〜1300nmの範囲に発光波長を有し、光強度密度が100Wcm−2以下、好ましくは50Wcm−2以下、更に好ましくは10Wcm−2以下である限り、各種の光源を使用することが出来る。好ましい光源としては、ハロゲンランプ、キセノンランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、タングステンランプ等のランプ光源、半導体レーザー、YАGレーザー等のレーザー光源を挙げることが出来る。上記の光源の中では、特に、近赤外光の発光効果に優れるハロゲンランプが好ましく、更には、1200nmに発光ピークを有するハロゲンランプが好ましい、また、これらの光源は必要に応じ、UV−可視光領域をフィルターにより遮光することが出来る。
【0037】
光加熱式の乾燥機構(9)の光源として上記の様な発光波長で且つ光強度密度の光源を使用するのが好ましい理由は次の通りである。すなわち、画像形成材料(例えば平版印刷版)の加熱乾燥処理において光強度密度が高すぎる場合は感光性層の変質を生じ易い。また、光照射時間が短すぎる場合は十分な加熱効果が得られない。更に、短時間の照射で高い光強度密度の光照射を行った場合には、感光性層の画像形成作用が発現するため、ポジ型感光性層であれば、感光性画像の膜べりを生じ易く、また、ネガ型感光性層であれば、非画像部の感光性層の残留を生じ、何れの方式の感光性層においても好ましくない。
【0038】
また、工程(A)においては、支持体(3)上に感光性版材を供給塗布して形成した感光性層を加熱乾燥処理するにあたり、版胴(21)(画像形成材料固定用ドラム)と支持体(3)との間に断熱層を設けてもよく、断熱層を設けることにより支持体(3)端部に余分に加えるべき必要エネルギー量が低減される効果がある。本発明において、断熱層とは、例えば空気などの気体で占められている層または気体を含有する空隙層であって、感光性層の少なくとも加熱される部位を加熱の際に画像形成材料固定用ドラムから一様な距離だけ離間させることの出来る層を言う。斯かる断熱層は、画像形成材料から版胴(21)(画像形成材料固定用ドラム)への熱の伝導を抑制する機能を有し、また、塗布形成した感光性層(塗膜)の乾燥効率を高め、エージング効率を向上させる。
【0039】
上記の断熱層の厚さは、通常は50μm以上、好ましくは100μm以上、より好ましくは1mm以上とされる。以下、空隙層を代表例として説明する。空隙層は、以下の様な方法によって形成できるが、空隙層の空隙率(体積率)の下限は、5%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは30%以上であり、上限は100%(気体層)である。
【0040】
上記の空隙層の形成方法としては次の様な方法が挙げられる。先ず、第一の方法としては、支持体(3)を版胴(21)から浮かせる方法が挙げられる。支持体(3)は、当該支持体の円周方向の両端部に張力をかけた状態で版胴(21)上に固定されるが、加熱時のみ版銜えの張力を弛める等の手法で版を版胴(21)から浮かせるか或いは浮き易くする。この状態で支持体(3)を加熱すると、支持体(3)が熱膨張するため、支持体(3)が版胴(21)より離間し、空隙層が形成される。支持体(3)の張力を弛めない場合でも、加熱により支持体(3)は僅かに浮き上がるが、一様には浮き上がらないため乾燥ムラが生じやすく、また、支持体(3)の座屈を惹起し易い。支持体(3)の張力は、使用する支持体(3)の材質や厚みによっても異なるが、印刷時の張力よりも弱い張力に設定することが必要である。
【0041】
次に、第二の方法としては、版胴(21)表面と支持体(3)との間に空隙形成部材を介装する方法が挙げられる。空隙形成部材としては、金網、スクリーン印刷や養殖用資材として利用されるメッシュ、多くの空気を含有する不織布、紙、木、ガラスウールシート等を使用することが出来る。空隙形成部材は、支持体(3)の機械的強度に応じて、印刷物品質に影響しないサイズのものを選択すればよく、空隙形成部材の厚さの下限は、通常0.01mm以上、好ましくは0.02mm以上、より好ましくは0.03mm以上であり、上限は、通常3mm以下、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下である。
【0042】
空隙層を形成するメッシュとしては、スクリーン印刷等で用いられる様なメッシュが好適に使用される。メッシュの材質としては、ステンレスなどの金属、絹、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素繊維などが挙げられるが、必要とされる耐熱性・寸法安定性・耐薬品性などを考慮して適宜選択することが出来る。メッシュの構成材料としては、ポリエステル、フッ素繊維が好ましく、ポリエステルが特に好ましい。メッシュの網目のオープニング(メッシュの隣接する糸と糸の間の距離)は、印刷機の印圧に応じて上記の空隙率の範囲内で適宜に設定できる。
【0043】
上記の金網、メッシュ等の空隙形成部材は、所望の厚さの空隙層を形成する様に、組み合わせて複数枚重ねて使用してもよい。更に、空隙形成部材は、版胴(21)と支持体(3)の間に挟むだけではなく、版胴(21)の表面または支持体(3)の裏面に貼り付けてもよい。また、空隙層は、支持体(3)の裏面に予め形成された多数の突起やリブにより、版胴(21)の外周面に支持体(3)を固定した際に形成される様にしてもよい。あるいは、版胴(21)の表面に予め突起やリブを設けることにより、版胴(21)に支持体(3)を固定した際に形成される様にしてもよい。更に、空隙層は、多数の突起、所定パターンのリブ等を含むスぺーサーが版胴(21)の表面から突出する構造によっても設けることが出来る。その場合、加熱する部位に対応してスぺーサーを漸次突出させる様にしてもよい。
【0044】
空隙層の形成方法としては、装置設計を容易にすると言う観点からは上記の第二の方法が好ましいが、空隙層を確実に形成し且つ一層高い断熱性を得るには、上記の第一及び第二の方法を組み合わせるのがより好ましい。
【0045】
露光工程(B)及び現像工程(C);
上記の工程(A)により感光性平版印刷版(画像形成材料)を形成した後は、工程(B)として、露光機構(5)により感光性平版印刷版を画像露光した後、工程(C)として、画像露光済み感光性平版印刷版上に製版処理剤供給機構から製版処理剤を供給し、更に、必要に応じて物理的刺激を与え、そして、画像を形成する。
【0046】
上記の露光工程(B)においては、上述の様なレーザー光源を有する露光機構(5)により露光操作を行う。露光操作においては、通常、5〜20μmのスポット径にレーザービームを集光し、0.1〜500m/秒のスポット速度で走査する。
【0047】
上記の現像工程(C)においては、感光性平版印刷版の感光性層の種類によっては、版胴(21)とブランケット胴(22)を接触回転させる様な物理的刺激を与える必要はなく、版胴(21)とブランケット胴(22)とを離間状態にしたまま版胴(21)を回転させるだけでもよい場合がある。また、製版処理剤としては、露光部に浸透して当該露光部おける支持体(3)と感光性層との接着強度を低下させる様な親水化剤(浸透剤)、例えば、水、湿し水、界面活性剤、有機溶剤、アルカリ剤などを使用することが出来るが(特開平11−10827号公報参照)、特にアルカリ剤が好ましい。通常、これら製版処理剤は、画像形成後、水洗処理または印刷により除去される。
【0048】
<印刷工程(D)>
製版工程終了後は、工程(D)として、上記の様に画像形成された感光性平版印刷版(画像形成材料)上の画像表面に製版処理剤供給機構のインク着肉装置(6)及び湿し装置(7)からそれぞれ印刷インキ及び湿し水を供給し、そして、画像形成材料固定用ドラムとしての版胴(21)、ブランケット胴(22)及び圧胴(23)を接触回転させると共にブランケット胴(22)と圧胴(23)との間に印刷紙を供給して印刷する。斯かる操作は、従来公知の方法に従って行うことが出来る。
【0049】
<再生工程(E)>
印刷工程終了後は、再度、各胴間を離間状態にし且つ圧胴(23)への紙の送給を停止した状態とした後、工程(E)として、版材除去機構により支持体(3)上の画像部分を除去して支持体(3)を再生する。
【0050】
工程(E)においては、先ず、ブランケット胴(22)と圧胴(23)との間に汚染防止トレー(86)配置をした後、版胴(21)を回転させながら、版胴(21)上の感光性平版印刷版上の画像表面(感光性層の表面)に版材溶解液供給機構(81)から版材溶解液(例えばアルカリ水溶液または有機溶剤)を供給する。この操作により、画像が溶解し、支持体(3)が再生する。画像が溶解せずに膨潤する様な場合は、版材剥離ローラー(82)によって膨潤した画像に物理刺激を与える、または、当該画像を付着させて除去する。
【0051】
次いで、再生された支持体(3)の表面に洗浄水供給機構(83)から洗浄水を供給する。この操作により、支持体(3)の表面の版材溶解液が除去される。そして、廃液回収機構(84)により支持体(3)の表面の残存する液体を拭き取るか又は吸引除去した後、風乾あるいはエアー式乾燥機構(85)により支持体(3)の表面を乾燥する。
【0052】
本発明においては、上記の再生工程の後、前記の製版工程、すなわち、工程(A)〜(C)に戻って同一の操作を繰り返し行なう。従って、本発明においては、印刷機上で、製版、印刷、再生の各工程が行われるため、印刷ロット毎に版を交換する必要がなく、作業が大幅に効率化される。しかも、本発明においては、支持体(3)は再生して複数回使用することが出来るため、本発明の方法は経済的にも有利である。
【0053】
更に、本発明の好ましい態様においては、前記の各工程は、ケーシング(1)をスライドさせ、製版装置の全体をケーシング(1)に収容して行われる。斯かる態様において、ケーシング(1)は次の様に作用する。すなわち、図1に示す装置(平版印刷機)は印刷室内に配置される。一方、本発明においては、感光性版材としては、前述の通り各種のネガ・ポジ感光性組成物を使用することが出来る。ケーシング(1)は、使用するネガ・ポジ感光性組成物に不適切な照明光を遮断する作用を奏する。
【0054】
また、ケーシング(1)の天井部に設置された除塵フイルター(11)は次の様に作用する。すなわち、上記の印刷室内は、通常、天井付近に給気口が配置され且つ床付近に排気口が設けられて換気可能になされている。この場合、除塵フイルター(11)を通過してケーシング(1)の開放された前面に向かう換気空気流が形成される。その結果、製版、印刷、再生の各工程で発生するミストが効率的に除去される。上記のミストは、上記の排気口に排気ダクト(12)を導通することにより一層効率的に除去され、製版不良率を下げる効果を奏する。
【0055】
上記の様に、本発明の製版方法は、画像形成材料の形成工程(A)において、支持体(3)上の感光性層(塗布した感光性層溶液)を加熱乾燥するにあたり、支持体(3)の中央部に比べて両端部に多くのエネルギーを加え、熱放散などによる支持体(3)の端部における温度低下を防止するため、支持体(3)全体を均一に加熱でき、支持体(3)全面(感光性層の全体)において乾燥ムラの無い均一な乾燥状態が得られる。その結果、一層高品質の画像形成材料を形成でき、印刷機上において高品質なレーザー製版と印刷が可能となる。
【0056】
しかも、画像形成材料固定用ドラム(版胴(21))と支持体(3)との間に空隙層を設けた状態で加熱乾燥処理した場合には、支持体(3)から画像形成材料固定ドラムへの放熱を効果的に抑制して加温効果を高めることが出来、かつ、支持体(3)全面を変形させることなく一層均一に乾燥させることが出来、より一層高品質な画像形成材料を効率的に作製できる。
【0057】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例については前述の図2〜図5を併用して説明し、また、比較例については図6及び図7を使用して説明する。図6は、比較例における乾燥機構のランプの配置例を示す平面図であり、図7は、比較例において支持体(感光性層)に与えたエネルギーの分布を示すグラフである。
【0058】
実施例1:
アルミニウム板(厚さ0.24mm)を5重量%の水酸化ナトリウム水溶液中で60℃で1分間脱脂処理した後、0.5モル/リットルの濃度の塩酸水溶液中において、温度25℃、電流密度60A/dm2、処理時間30秒の条件で電解エッチング処理を行った。次いで、5重量%水酸化ナトリウム水溶液中で60℃、10秒間のデスマット処理を施した後、20重量%硫酸溶液中において、温度20℃、電流密度3A/dm2、処理時間1分の条件で陽極酸化処理を行った。そして、80℃の熱水で20秒間熱水封孔処理を行い、平板印刷版の支持体(3)としてのアルミニウム板を作製した。表面粗度計(小坂研究所社製「SE−3DH」)により上記のアルミニウム板の表面粗さを測定したところ、平均粗さRaの値は0.60μmであった。
【0059】
次いで、三菱重工社製平板印刷機「ダイヤF−2」の版胴(21)上に、メッシュシート(NBC工業(株)製;TB30、ポリエステル100%、厚さ540μm)を2周貼り付けて厚さ1080μmの空隙層を形成し、その上に、表面処理を施した面が外側になる様にアルミニウム板の支持体(3)を固定した後、支持体(3)の表面にワイヤーバーを使用して感光性版剤としての塗布液を塗布した。塗布液は、光熱変換物質として、インドール系色素3重量部、アルカリ可溶性樹脂として、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で50:30:20の混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体から成るノボラック樹脂(Mw9400)100重量部、および、クリスタルバイオレットラクトン3重量部をメチルソルソルブ1000重量部に対して室温で攪拌することにより調液した。
【0060】
上記の様に支持体(3)の表面に感光性版剤を塗布して感光性層を形成した後、ハロゲン・ランプから成る乾燥機構(9)によって感光性層を加熱乾燥処理し、ポジ型感光性平板印刷版を作製した。加熱乾燥処理においては、支持体(3)に対する供給エネルギーが図5に示す様な分布(L=5cm)となる様に、乾燥機構(9)を図2に示す様に構成した。
【0061】
すなわち、主加熱手段(9a)として、ハロゲン・ランプ(ウシオ電機(株)製の面照射型ヒーターユニット、ランプ長100cm、規格値200V、3kW)を版胴(21)の軸線に沿って配置し、補助加熱手段(9b)として、ハロゲン・ランプ(ウシオ電機(株)製の面照射型ヒーターユニット、ランプ長30cm、規格値100V、1.05kW)を版胴(21)の軸線に沿って当該版胴の両端部に配置した。そして、版胴(21)を周速度2m/分で回転しながら、各ハロゲン・ランプ同時に3分間照射した。主加熱手段(9a)のハロゲン・ランプによる照射では、印加電圧を155Vとし、反射鏡幅が6cmのパラボラ型反射鏡を使用し、支持体(3)までの距離を3cmに設定した。また、補助加熱手段(9b)のハロゲン・ランプによる照射では、印加電圧を30Vとし、反射鏡幅が6cmのパラボラ型反射鏡を使用し、支持体(3)までの距離を3cmに設定した。
【0062】
続いて、得られたポジ型感光性平板印刷版に対し、版胴上に近接固定した露光装置(波長830nm、30mWのアプライドテクノ社製の半導体レーザーを光源とする露光装置)を使用し、各種の露光エネルギーで20μm幅の細線画像を走査露光した。次いで、湿し水供給機構の湿し水をアルカリ現像液に変更し、版胴を毎時13000回転で回転させた状態において、湿し水供給機構よりアルカリ現像液(富士写真フィルム社製「DP−4」の12倍希釈液)を28℃で5分間供給した。そして、湿し水供給機構中のアルカリ現像液を水に変更し、同様に版上に水を供給して水洗することにより、細線画像を再現させたポジ型平板印刷版を作製した。露光の際の感度は、20μm幅の細線が再現する最小露光エネルギーとして200mJ/cm2であった。
【0063】
次いで、上記の様に露光・現像処理して得られたポジ型平板印刷版に対し、湿し水供給機構より湿し水(日研化学社製「アストロNo.1 マークII」)を供給し、印刷インキ供給機構より印刷インキ(東洋インキ社製「ハイエコー・マゼンタ」)を供給することにより、1000枚の印刷を行ったところ、印刷版の全面において一様に印刷でき且つ良質な印刷物が得られた。
【0064】
印刷終了後、平板印刷版を版胴に固定した状態において、版面上の印刷インキを洗浄、除去した後、付設した画像除去機構のローラーにより画像除去剤としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルを版面上に塗布してポジ画像を溶解させ、ガーゼで拭き取って除去し、次いで、水洗することにより、アルミニウム板支持体を再生した。
【0065】
続いて、再生したアルミニウム板支持体表面に対し、版材供給機構のローラーにより上記と同様のポジ型感光性版材を再度塗布して感光性層を形成し、上記の操作と同様に加熱乾燥させることによりポジ型感光性平板印刷版を作製した後、引き続いて、露光機構のレーザー光源により感光性層を走査露光し、湿し水供給機構のローラーによって上記と同様の現像液を感光性層上に供給して現像処理することにより、ポジ画像を現出させて画像形成済みのポジ型平板印刷版を作製した。露光時の感度は、20μm幅の細線画像が再現する露光エネルギーとして求めたところ、再生前と同様に200mJ/cm2であった。そして、斯かる露光エネルギーで露光、現像処理したポジ型平板印刷版を使用し、2回目の印刷として上記と同様に10000枚の印刷を行ったところ、上記の場合と同様に、印刷版の全面において一様に印刷でき且つ良質な印刷物が得られた。
【0066】
比較例1:
実施例1において、加熱乾燥処理の際に乾燥機構(9)として主加熱手段(9a)のハロゲン・ランプのみを使用した点を除き、実施例1と同様の条件で製版した。乾燥機構(9)のランプ配置は図6に示す通りであり、また、支持体(3)に対して供給した加熱エネルギーは図7に示す様な分布であった。その結果、支持体(3)の両端側5cmの長さに亘る範囲を除く部分は高品質の画像が形成されたが、前記の5cmの長さに亘る範囲の部分では乾燥が不十分であったために画像が形成されなかった。
【0067】
比較例2:
比較例1において、主加熱手段(9a)のハロゲン・ランプによる照射時間を15分と長くしたこと以外は比較例1と同様の条件で製版を試みたところ、加熱乾燥処理直後の版胴(21)の温度が55℃まで上昇したため、直ちに露光、現像を始めることが出来なかった。そこで、版胴(21)の温度が25℃まで低下した後に露光、現像処理したところ、支持体(3)の両端側5cmの長さに亘る範囲では良好な画像が得られたが、支持体(3)の中央部では現像処理不足となり、支持体(3)の全面に一様に良質な画像を形成できなかった。更に、続いて、同様の現像処理を2分間行ったところ、支持体(3)の中央部では良質な画像が得られたが、支持体(3)の両端側5cmの長さに亘る範囲の部分では画像が消失してしまった。
【0068】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明のレーザー製版方法によれば、支持体上の感光性層を加熱乾燥処理するにあたり、支持体の中央部よりも両端部により多くのエネルギーを加え、熱放散などによる支持体端部における温度低下を防止するため、支持体全面、すなわち、感光性層の全体を均一に乾燥させることが出来、その結果、一層高品質の画像形成材料を作製できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のレーザー製版方法の実施に好適な一例としてのレーザー製版装置の概念を示す縦断面図である。
【図2】光加熱方式の加熱乾燥処理を行う乾燥機構におけるランプの配置例を示す平面図である。
【図3】加熱乾燥処理において支持体(感光性層)の端部と中央部に与えるエネルギーの分布を示すグラフである。
【図4】加熱乾燥処理において支持体(感光性層)の端部と中央部に与えるエネルギーの分布を示すグラフである。
【図5】加熱乾燥処理において支持体(感光性層)の端部と中央部に与えるエネルギーの分布を示すグラフである。
【図6】比較例における乾燥機構のランプの配置例を示す平面図である。
【図7】比較例において支持体(感光性層)に与えたエネルギーの分布を示すグラフである。
【符号の説明】
1 :ケーシング
11:除塵フイルター
12:排気ダクト
21:版胴(画像形成材料固定用ドラム)
22:ブランケット胴
23:圧胴
3 :支持体(画像形成材料)
31:支持体固定手段
4 :版材供給機構
5 :露光機構
6 :インク着肉装置
7 :湿し装置
9 :乾燥機構
81:版材溶解液供給機構(版材除去機構)
82:版材剥離ローラー(版材除去機構)
83:洗浄水供給機構(版材除去機構)
84:廃液回収機構(版材除去機構)
85:エアー式乾燥機構(版材除去機構)
86:汚染防止トレー
【発明の属する技術分野】
本発明は、特にレーザー製版装置において好適に実施し得るレーザー製版方法であって、支持体上に塗布形成した感光性層をレーザー光線によって画像露光させることにより、画像形成済みの画像形成材料を作製するレーザー製版方法に関する。斯かるレーザー製版方法は、平版印刷版などに使用される画像形成材料の作製に好適である。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピューター画像処理技術の進歩に伴い、デジタル画像情報から、銀塩マスクフィルムへの出力を行わずに、レーザー光により直接画像を形成するCTP(Computer to Plate)システムが注目されており、特に、高出力の半導体レーザーやYAGレーザー等を使用するCTPシステムは、製版工程の短縮化、作業時の環境光、製版コスト等の面から、その実用化が急速に進みつつある。
【0003】
これに伴い、CTPシステム用の平版印刷版としては、近年、赤外レーザー光を使用し、露光部の現像液に対する溶解性を変化させることによって画像形成可能な感光性組成物の層(感光性層)を支持体表面に有する感光性平版印刷版が提案されている(例えば、特開平9−43847号、特開平10−268512号、特開平11−84657号、特開平11−174681号、特開平11−194504号、特開平11−223936号の各公報、WО97/39894号、WО98/42507号の各明細書参照)。
【0004】
上記の感光性平版印刷版は、従来の感光性平版印刷版がo−キノンジアジド化合物などの光分解という化学的変化により現像液に対する露光部の溶解性を増大させることによって画像を形成していたのに対し、例えば赤外吸収色素などの赤外光を吸収して熱に変換する物質とノボラック樹脂などのアルカリ可溶性樹脂とを主な感光性成分とし、赤外レーザー光の露光で発生する熱による樹脂の構造転移などの物理的変化によって現像液に対する露光部の溶解性を増大させるものであり、斯かる感光性平版印刷版は、o−キノンジアジド化合物の様な白色光に感光する物質を含有させる必要がないことから、白色灯下でも取り扱えるという利点を有する。
【0005】
更に、CTPシステム用の平版印刷版を作製するレーザー製版装置としては、機上において印刷版支持体上に感光性版材を塗布して感光性層を形成し、当該感光性層に加熱乾燥処理を施した後、レーザー光線による画像露光を行い、次いで、アルカリ現像を施して画像形成するレーザー製版装置、更には、前記の機能に加え、印刷に使用済みの平版印刷版の感光性層を機上で除去した後、印刷版支持体を再生し、次いで、再生した支持体上に再び感光性層を塗布形成することにより、平版印刷版を再生するレーザー製版装置が注目されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の様なレーザー製版装置においては、支持体上に感光性層を形成した際、レーザー製版機の画像形成材料固定用ドラム(版胴)上にて加熱乾燥処理しなくてはならない。しかしながら、版胴上に支持体を固定して加熱乾燥処理した場合、ドラム軸線方向の支持体の端部は中央部よりも温まり難く、例えば5〜20cm程度の幅(軸線方向の長さ)に亘って乾燥ムラを生じる。斯かる乾燥ムラは、端部と中央部との現像時間ギャップを惹起し、全面で均質な画質を得ることが出来ないために問題となっている。従って、上記のレーザー製版装置においては、支持体上の感光性層の乾燥時に乾燥ムラを無くし、支持体全面(感光性層全面)に亘って均質に乾燥させることが出来、一様で一層高品質な画質が得られる改良された手段が強く望まれている。
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、支持体上に塗布形成した感光性層をレーザー光線によって画像露光させることにより、画像形成済みの画像形成材料を作製するレーザー製版方法であって、支持体上の感光性層の加熱乾燥処理の際、感光性層を全面に亘って均一に乾燥させることが出来、一層高品質な画像を形成できるレーザー製版方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、支持体上の感光性層の加熱乾燥処理の際に支持体の中央部よりも両端部により多くのエネルギーを加えて加熱処理するならば、結果的に感光性層全面をムラ無く乾燥させることが出来ることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、画像形成材料固定用ドラムに固定した支持体上に感光性版材を塗布して感光性層を形成し、当該感光性層を加熱乾燥処理することにより画像形成材料を構成した後、レーザー光線により走査画像露光を行い、次いで、製版処理剤による処理を施して感光性層により画像形成するレーザー製版方法において、感光性層を加熱乾燥処理するにあたり、ドラム軸線方向における支持体の中央部に比べ、両端部に多くのエネルギーを加えることを特徴とするレーザー製版方法に存する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明のレーザー製版方法の実施に好適な一例としてのレーザー製版装置の概念を示す縦断面図である。図2は、光加熱方式の加熱乾燥処理を行う乾燥機構におけるランプの配置例を示す平面図であり、図3〜図5は、加熱乾燥処理において支持体(感光性層)の端部と中央部に与えるエネルギーの分布を示すグラフである。
【0011】
本発明のレーザー製版方法は、概略、支持体上に感光性層を塗布形成し、感光性層を加熱乾燥処理することにより感光性画像形成材料を構成した後、レーザー光線により走査画像露光を行い、次いで、製版処理を施して感光性層により画像形成する製版方法である。そして、本発明のレーザー製版方法は、図1に示す様なレーザー製版装置、例えば、平版印刷版(画像形成材料)を機上製版して印刷する平版印刷機としてのレーザー製版装置であって、画像形成材料固定用ドラム、版材供給機構、乾燥機構、露光機構および製版処理剤供給機構を少なくとも有するレーザー製版装置において好適に実施される。
【0012】
図1に示す装置は、画像形成材料固定用ドラムとしての版胴(21)、ブランケット胴(22)及び圧胴(23)の各胴間を離間可能にすると共に圧胴(23)への紙の送給停止制御を可能とし、版胴(21)に対し、インク着肉装置(6)のインク付けローラー及び湿し装置(7)の水付けローラーを離間可能にし、そして、支持体固定手段(31)、版材供給機構(4)、乾燥機構(9)、露光機構(5)の他に、後述する版材除去機構などを配置し、更に、前面が開放されたスライド可能なケーシング(1)に全体を収容した点を除き、従来公知の平版印刷機と同じである。
【0013】
上記の各胴間の離間は、例えば、ブランケット胴(22)及び圧胴(23)に偏芯ブッシュを使用する等の適宜の機械的手段により、また、版胴(21)に対する着肉装置(6)のインク付けローラー及び湿し装置(7)の水付けローラーの離間は、版胴(21)に設けられたカムと各ローラーに設けられたリンク等の適宜の機械的手段により行うことが出来る。上記の支持体固定手段(31)は、例えば、版胴(21)上の溝内に支持体(3)の両端部を挿入してクサビ止めする構造の手段により行うことが出来る。
【0014】
上記の版材除去機構は、例えば、版材溶解液供給機構(81)、必要に応じて設けられる版材剥離ローラー(82)、洗浄水供給機構(83)、廃液回収機構(84)及びエアー式乾燥機構(85)から成る。そして、図1に例示する装置においては、版材供給機構(4)、版材溶解液供給機構(81)及び洗浄水供給機構(83)は、何れも、受液バケットと当該受液バケット内に部分的に挿入配置されたローラーにて構成され、廃液回収機構(84)は、受液バケットと当該受液バケット内に部分的に挿入配置され且つ必要に応じて吸引可能になされたローラー(支持体(3)と略同一長さのローラー)にて構成され、また、エアー式乾燥機構(85)はブロー用ファンにて構成される。
【0015】
版材供給機構(4)、版材溶解液供給機構(81)及び洗浄水供給機構(83)は、上記のローラー機構の他、スプレー装置によって構成することが出来る。また、版材剥離ローラー(82)は、例えば、ローラー表面に適当な摩擦抵抗性あるいは粘着性を付与して構成することも出来る。
【0016】
版材供給機構(4)、版材溶解液供給機構(81)、版材剥離ローラー(82)、洗浄水供給機構(83)、廃液回収機構(84)及びエアー式乾燥機構(85)は、例えば、版胴(21)に対向して配置されたラック状架台に搭載され且つラック・ピニオンの歯車機構により上昇下降可能に構成することが出来る。斯かる構成により、製版、印刷、再生の各工程に必要な要素がその都度に版胴(21)に近接配置される。
【0017】
露光機構(5)は、画像のデジタルデーターに基づき、感光性版材を構成するポジ感光性組成物の露光に適応した波長とエネルギーの光を照射する光学機器にて構成される。露光機構(5)の光源としては、好ましくは、アルゴンイオンレーザー、He−Neレーザー、He−Cdレーザー、ルビーレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー等の300〜1300nmに発光波長を有するレーザーを適宜使用することが出来る。特に、好ましいレーザーとしては青紫光源または近赤外光源のレーザーが挙げられるが、発光波長が400〜420nmの青紫光源としては、5〜100mWの半導体レーザーが挙げられ、発光波長が700〜1300nmの近赤外光源としては、30mW〜40Wの半導体レーザー、YAGレーザーが挙げられる。
【0018】
なお、必要に応じて版胴(21)とブランケット胴(22)との間に汚染防止トレー(86)をスライド可能に配置させることが出来る。また、斯かる汚染防止トレー(86)は、ブランケット胴(22)と圧胴(23)との間に配置させることも出来る。汚染防止トレー(86)のスライド機構は、例えば、ラック・ピニオンの歯車機構により構成することが出来る。
【0019】
また、前面が開放されたケーシング(1)のスライドは、例えば、床に設置された案内レール(図示せず)によって容易に行うことが出来る。また、ケーシング(1)の天井部に設置された除塵フイルター(11)としては、適宜の市販品を使用することが出来る。なお、図1中の符号(12)は、必要に応じてケーシング(1)の底部に設けられた排気ダクトである。上記の様な、平版印刷機を改良するための各手段および機構などは当業者にとっては、周知・慣用手段に基づいて容易に構築することが出来る。
【0020】
本発明のレーザー製版方法は、版胴(21)、ブランケット胴(22)及び圧胴(23)から成る印刷部を備え、製版、印刷、再生の各工程を繰り返し行うレーザー製版装置としての上記の様な平版印刷機上において好適に実施される。以下、上記の平版印刷機における画像形成材料の形成工程(A)、露光工程(B)及び現像工程(C)から成る製版工程の他、印刷工程(D)ならびに再生工程(E)と共に、本発明のレーザー製版方法を説明する。
【0021】
<製版工程(A)〜(C)>
画像形成材料の形成工程(A);
先ず、版胴(21)、ブランケット胴(22)及び圧胴(23)の各胴間を離間状態にし且つ圧胴(23)への紙の送給を停止した状態とした後、工程(A)として、画像形成材料固定用ドラムとしての版胴(21)の外周面上に固定した支持体(3)上に版材供給機構(4)から感光性組成物から成る感光性版材を供給塗布し、塗布した感光性版材に対して光加熱式乾燥機構(9)により上記の特定波長の近赤外光を上記の光強度密度で照射することにより熱乾燥させ、そして、感光性平版印刷版(画像形成材料)を構成する。
【0022】
支持体(3)としては、例えば、砂目処理されたアルミニウム板を使用することが出来る。感光性版材を構成する組成物としては、加熱乾燥処理用の光を吸収して熱に変換する光熱変換剤を含有するのが好ましい。中でも、ポジ型感光性組成物が好ましく、画像露光光源の光を吸収して熱に変換する光熱変換物質とアルカリ可溶性樹脂を含有するものであれば特に制限されず、従来公知のこの様なポジ感光性組成物を制限なく使用することが出来る。
【0023】
上記のポジ型感光性組成物は、後述する光熱変換物質が画像露光光源の光を吸収して発生する熱の作用により分解する熱分解性物質(以下、「熱分解性物質」と称することがある)を含有しないことが好ましい。上記の熱分解性物質は、特開平7−28527号公報に記載されている様なオニウム塩、ジアゾニウム塩およびキノンジアジド化合物である。斯かる熱分解性物質を含有しない感光性組成物は、紫外線領域の光に実質的に感受性を有さず、白色灯下で取り扱うことが可能となる。
【0024】
ここで、紫外線領域の光に対して実質的に感受性を有さないとは、360〜450nmの波長の光による照射の前後で、アルカリ現像液に対する溶解性に実質的有意差を生じず、実用的な意味での画像形成能を有さないことを意味する。例えば、白色蛍光灯(三菱電機社製36W白色蛍光灯「ネオルミスーパーFLR40S−W/M/36」)の400ルクスの光強度照射下に10時間放置した後の組成物のアルカリ現像液に対する溶解性が放置前に比して実質的変化を生じない結果を示すことを言う。
【0025】
上記のポジ型感光性組成物における、画像露光光源の光を吸収して熱に変換する光熱変換物質としては、例えば、波長域が通常650〜1300nm、好ましくは800〜1300nmの近赤外線領域の一部または全部に吸収帯を有する有機または無機の顔料、染料、有機色素、金属、金属酸化物、金属炭化物、金属硼化物などが挙げられる。これらの中では光吸収色素が特に有効である。斯かる光吸収色素は、前記波長域の光を効率よく吸収する一方、紫外線領域の光は殆ど吸収しないか、吸収しても実質的に感応せず、白色灯に含まれる様な弱い紫外線によっては感光性組成物を変成させる作用のない化合物である。なお、本発明では、後述する様に、感光性層を熱乾燥させるために近赤外吸収色素を使用する。そのため、光熱変換物質としても近赤外吸収色素を用いることが好ましい。
【0026】
上記の光吸収色素としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などを含む複素環などがポリメチン(−CH=)nで結合された、広義の所謂シアニン系色素が代表的なものとして挙げられる。具体的には、例えば、キノリン系(所謂、狭義のシアニン系)、インドール系(所謂、インドシアニン系)、ベンゾチアゾール系(所謂、チオシアニン系)、アミノベンゼン系(所謂、ポリメチン系)、ピリリウム系、チアピリリウム系、スクアリリウム系、クロコニウム系、アズレニウム系などが挙げられる。これらの中では、キノリン系、インドール系、ベンゾチアゾール系、アミノベンゼン系、ピリリウム系またはチアピリリウム系が好ましい。その他に、アミニウム系、イモニウム系、フタロシアニン系、アントラキノン系などの各色素も代表的なものとして挙げられる。これらの中では、アミニウム系またはイモニウム系色素が好ましい。
【0027】
本発明で使用するアルカリ可溶性樹脂は、基本的には、光熱変換物質との組合せにおいて、露光部と未露光部とが主として化学変化以外の変化によって、アルカリ現像液に対する溶解性に差を生じる高分子であり、当然ながら、高分子自体が、主として化学変化以外の変化によって、アルカリ現像液に対する溶解性が変化する高分子化合物である場合を含む。斯かる高分子としては、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アクリル酸誘導体の共重合体などのアルカリ可溶性樹脂などが挙げられる。これらの中では、フェノール性水酸基を有する樹脂、特に、ノポラック樹脂および/またはフェノール樹脂を含有する高分子が好ましい。特に、本出願人によって提案された次のポジ感光性組成物は好適な例である。
【0028】
(1)ノボラック樹脂(a)、ポリメチレン鎖を介して複素環が結合した構造のシアニン系、アミニウム系またはイモニウム系の光熱変換物質(b)に感光性層の表面硬度を高めるため、(c)成分としてビニルオキシ化合物(特開平11−231515号公報)又はアシルオキシアルコキシ化合物(特開平11−231513号公報)を含有させたポジ感光性組成物。
【0029】
(2)ノボラック樹脂(a)、ポリメチレン鎖を介して複素環が結合した構造のシアニン系、アミニウム系またはイモニウム系光熱変換物質(b)に画像再現性を高めるため、(c)成分として酸発色性色素(特開平11−190903号公報)又は塩基発色性色素(特開平11−143076号公報)を含有させたポジ感光性組成物。
【0030】
(3)ノボラック樹脂(a)、ポリメチレン鎖を介して複素環が結合した構造のシアニン系、アミニウム系またはイモニウム系光熱変換物質(b)に耐印刷性を向上させるため、(c)成分としてエステル化合物含有させたポジ感光性組成物(特開平11−288089号公報)。
【0031】
上記の中では、ポジ型感光性組成物(2)及び(3)が耐刷性および画像形成に優れて好ましい。更に、ポジ型感光性組成物は熱架橋性化合物を含有していてもよい。斯かる熱架橋性化合物としては、架橋性を有する窒素化合物が挙げられ、好ましくはアミノ基を有する化合物であり、より具体的には、例えば、官能基として、メチロール基、それのアルコール縮合変性したアルコキシメチル基、アセトキシメチル基などを2個以上有するアミノ化合物が挙げられる。アミノ基を有する化合物の中でも、複素環構造、特に含窒素複素環構造を有する化合物が好ましく、特にメラミン骨格を有する化合物が好ましい。斯かる熱架橋性化合物としては、特開平11−202481号公報に記載の熱架橋性化合物などが挙げられる。
【0032】
本発明においては、支持体(3)上に感光性層を設けて感光性画像形成材料を構成する際、乾燥ムラの無い感光性層を形成するため、ドラム軸線方向における支持体(3)の中央部に比べ、両端部に多くのエネルギーを加えて感光性層を加熱乾燥処理することが重要である。すなわち、加熱乾燥処理においては、図3〜図5に示す様に、供給する加熱エネルギーに幅方向(ドラム軸線方向)の分布を持たせ、ドラム軸線方向における支持体(3)(感光性層)の中央部よりも両端部により多くのエネルギーを加えて加熱処理する。
【0033】
上記の平版印刷機においては、上記の乾燥機構(9)によって感光性層の加熱乾燥を行う様になされているが、乾燥機構(9)としては、感光性層の素材に応じて光加熱式、熱風乾燥式の何れを採用してもよい。支持体(3)の両端部を多く加熱するには、例えば、熱風乾燥式の場合、両端部への熱風風量を増加する、熱風ノズルの幅を広げる、熱風温度を上げる等の手法が挙げられ、また、光加熱式の場合は、両端部へ照射する光強度を上げる、光照射幅を広げる等の手法が挙げられる。
【0034】
具体的には、乾燥機構(9)は、例えば光加熱式の場合、図2に示す様に、版胴(21)(画像形成材料固定用ドラム)の外周面側にドラム軸線に沿って配置された主加熱手段としての加熱ランプ(9a)と、ドラムの軸線方向の両端部側に加熱ランプ(9a)に平行に配置された補助加熱手段としての加熱ランプ(9b)とから構成される。一方、熱風乾燥式の場合、乾燥機構(9)は、上記の2つの加熱ランプの場合と同様に、例えば、加熱手段としての熱風ノズルと補助加熱手段としての熱風ノズルとから構成される。なお、図3〜図5において、「加熱エネルギー量」とは、光強度、照射光量、熱風温度、熱風風量または熱風風速などを表す。
【0035】
上記の様な光加熱式や熱風乾燥式の乾燥機構(9)によって加熱乾燥する場合、版胴(21)上の支持体(3)の端部に余分に供給するエネルギー量は、必要とされる加熱温度や支持体(3)からの熱放散速度に応じて調整すればよいが、支持体(3)中央部への供給エネルギー量に対して、103%以上、500%以下となる様に設定するのが好適である。また、余分にエネルギーを加える部分は、支持体(3)端部から20cm以内、好ましくは10cm以内の領域でよく、これにより十分な効果が得られる。
【0036】
乾燥機構(9)の好ましい加熱方式としては加熱効率の点から光加熱式がよい。光加熱式の場合には、少なくとも700〜1300nmの範囲に発光波長を有し、光強度密度が100Wcm−2以下、好ましくは50Wcm−2以下、更に好ましくは10Wcm−2以下である限り、各種の光源を使用することが出来る。好ましい光源としては、ハロゲンランプ、キセノンランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、タングステンランプ等のランプ光源、半導体レーザー、YАGレーザー等のレーザー光源を挙げることが出来る。上記の光源の中では、特に、近赤外光の発光効果に優れるハロゲンランプが好ましく、更には、1200nmに発光ピークを有するハロゲンランプが好ましい、また、これらの光源は必要に応じ、UV−可視光領域をフィルターにより遮光することが出来る。
【0037】
光加熱式の乾燥機構(9)の光源として上記の様な発光波長で且つ光強度密度の光源を使用するのが好ましい理由は次の通りである。すなわち、画像形成材料(例えば平版印刷版)の加熱乾燥処理において光強度密度が高すぎる場合は感光性層の変質を生じ易い。また、光照射時間が短すぎる場合は十分な加熱効果が得られない。更に、短時間の照射で高い光強度密度の光照射を行った場合には、感光性層の画像形成作用が発現するため、ポジ型感光性層であれば、感光性画像の膜べりを生じ易く、また、ネガ型感光性層であれば、非画像部の感光性層の残留を生じ、何れの方式の感光性層においても好ましくない。
【0038】
また、工程(A)においては、支持体(3)上に感光性版材を供給塗布して形成した感光性層を加熱乾燥処理するにあたり、版胴(21)(画像形成材料固定用ドラム)と支持体(3)との間に断熱層を設けてもよく、断熱層を設けることにより支持体(3)端部に余分に加えるべき必要エネルギー量が低減される効果がある。本発明において、断熱層とは、例えば空気などの気体で占められている層または気体を含有する空隙層であって、感光性層の少なくとも加熱される部位を加熱の際に画像形成材料固定用ドラムから一様な距離だけ離間させることの出来る層を言う。斯かる断熱層は、画像形成材料から版胴(21)(画像形成材料固定用ドラム)への熱の伝導を抑制する機能を有し、また、塗布形成した感光性層(塗膜)の乾燥効率を高め、エージング効率を向上させる。
【0039】
上記の断熱層の厚さは、通常は50μm以上、好ましくは100μm以上、より好ましくは1mm以上とされる。以下、空隙層を代表例として説明する。空隙層は、以下の様な方法によって形成できるが、空隙層の空隙率(体積率)の下限は、5%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは30%以上であり、上限は100%(気体層)である。
【0040】
上記の空隙層の形成方法としては次の様な方法が挙げられる。先ず、第一の方法としては、支持体(3)を版胴(21)から浮かせる方法が挙げられる。支持体(3)は、当該支持体の円周方向の両端部に張力をかけた状態で版胴(21)上に固定されるが、加熱時のみ版銜えの張力を弛める等の手法で版を版胴(21)から浮かせるか或いは浮き易くする。この状態で支持体(3)を加熱すると、支持体(3)が熱膨張するため、支持体(3)が版胴(21)より離間し、空隙層が形成される。支持体(3)の張力を弛めない場合でも、加熱により支持体(3)は僅かに浮き上がるが、一様には浮き上がらないため乾燥ムラが生じやすく、また、支持体(3)の座屈を惹起し易い。支持体(3)の張力は、使用する支持体(3)の材質や厚みによっても異なるが、印刷時の張力よりも弱い張力に設定することが必要である。
【0041】
次に、第二の方法としては、版胴(21)表面と支持体(3)との間に空隙形成部材を介装する方法が挙げられる。空隙形成部材としては、金網、スクリーン印刷や養殖用資材として利用されるメッシュ、多くの空気を含有する不織布、紙、木、ガラスウールシート等を使用することが出来る。空隙形成部材は、支持体(3)の機械的強度に応じて、印刷物品質に影響しないサイズのものを選択すればよく、空隙形成部材の厚さの下限は、通常0.01mm以上、好ましくは0.02mm以上、より好ましくは0.03mm以上であり、上限は、通常3mm以下、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下である。
【0042】
空隙層を形成するメッシュとしては、スクリーン印刷等で用いられる様なメッシュが好適に使用される。メッシュの材質としては、ステンレスなどの金属、絹、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素繊維などが挙げられるが、必要とされる耐熱性・寸法安定性・耐薬品性などを考慮して適宜選択することが出来る。メッシュの構成材料としては、ポリエステル、フッ素繊維が好ましく、ポリエステルが特に好ましい。メッシュの網目のオープニング(メッシュの隣接する糸と糸の間の距離)は、印刷機の印圧に応じて上記の空隙率の範囲内で適宜に設定できる。
【0043】
上記の金網、メッシュ等の空隙形成部材は、所望の厚さの空隙層を形成する様に、組み合わせて複数枚重ねて使用してもよい。更に、空隙形成部材は、版胴(21)と支持体(3)の間に挟むだけではなく、版胴(21)の表面または支持体(3)の裏面に貼り付けてもよい。また、空隙層は、支持体(3)の裏面に予め形成された多数の突起やリブにより、版胴(21)の外周面に支持体(3)を固定した際に形成される様にしてもよい。あるいは、版胴(21)の表面に予め突起やリブを設けることにより、版胴(21)に支持体(3)を固定した際に形成される様にしてもよい。更に、空隙層は、多数の突起、所定パターンのリブ等を含むスぺーサーが版胴(21)の表面から突出する構造によっても設けることが出来る。その場合、加熱する部位に対応してスぺーサーを漸次突出させる様にしてもよい。
【0044】
空隙層の形成方法としては、装置設計を容易にすると言う観点からは上記の第二の方法が好ましいが、空隙層を確実に形成し且つ一層高い断熱性を得るには、上記の第一及び第二の方法を組み合わせるのがより好ましい。
【0045】
露光工程(B)及び現像工程(C);
上記の工程(A)により感光性平版印刷版(画像形成材料)を形成した後は、工程(B)として、露光機構(5)により感光性平版印刷版を画像露光した後、工程(C)として、画像露光済み感光性平版印刷版上に製版処理剤供給機構から製版処理剤を供給し、更に、必要に応じて物理的刺激を与え、そして、画像を形成する。
【0046】
上記の露光工程(B)においては、上述の様なレーザー光源を有する露光機構(5)により露光操作を行う。露光操作においては、通常、5〜20μmのスポット径にレーザービームを集光し、0.1〜500m/秒のスポット速度で走査する。
【0047】
上記の現像工程(C)においては、感光性平版印刷版の感光性層の種類によっては、版胴(21)とブランケット胴(22)を接触回転させる様な物理的刺激を与える必要はなく、版胴(21)とブランケット胴(22)とを離間状態にしたまま版胴(21)を回転させるだけでもよい場合がある。また、製版処理剤としては、露光部に浸透して当該露光部おける支持体(3)と感光性層との接着強度を低下させる様な親水化剤(浸透剤)、例えば、水、湿し水、界面活性剤、有機溶剤、アルカリ剤などを使用することが出来るが(特開平11−10827号公報参照)、特にアルカリ剤が好ましい。通常、これら製版処理剤は、画像形成後、水洗処理または印刷により除去される。
【0048】
<印刷工程(D)>
製版工程終了後は、工程(D)として、上記の様に画像形成された感光性平版印刷版(画像形成材料)上の画像表面に製版処理剤供給機構のインク着肉装置(6)及び湿し装置(7)からそれぞれ印刷インキ及び湿し水を供給し、そして、画像形成材料固定用ドラムとしての版胴(21)、ブランケット胴(22)及び圧胴(23)を接触回転させると共にブランケット胴(22)と圧胴(23)との間に印刷紙を供給して印刷する。斯かる操作は、従来公知の方法に従って行うことが出来る。
【0049】
<再生工程(E)>
印刷工程終了後は、再度、各胴間を離間状態にし且つ圧胴(23)への紙の送給を停止した状態とした後、工程(E)として、版材除去機構により支持体(3)上の画像部分を除去して支持体(3)を再生する。
【0050】
工程(E)においては、先ず、ブランケット胴(22)と圧胴(23)との間に汚染防止トレー(86)配置をした後、版胴(21)を回転させながら、版胴(21)上の感光性平版印刷版上の画像表面(感光性層の表面)に版材溶解液供給機構(81)から版材溶解液(例えばアルカリ水溶液または有機溶剤)を供給する。この操作により、画像が溶解し、支持体(3)が再生する。画像が溶解せずに膨潤する様な場合は、版材剥離ローラー(82)によって膨潤した画像に物理刺激を与える、または、当該画像を付着させて除去する。
【0051】
次いで、再生された支持体(3)の表面に洗浄水供給機構(83)から洗浄水を供給する。この操作により、支持体(3)の表面の版材溶解液が除去される。そして、廃液回収機構(84)により支持体(3)の表面の残存する液体を拭き取るか又は吸引除去した後、風乾あるいはエアー式乾燥機構(85)により支持体(3)の表面を乾燥する。
【0052】
本発明においては、上記の再生工程の後、前記の製版工程、すなわち、工程(A)〜(C)に戻って同一の操作を繰り返し行なう。従って、本発明においては、印刷機上で、製版、印刷、再生の各工程が行われるため、印刷ロット毎に版を交換する必要がなく、作業が大幅に効率化される。しかも、本発明においては、支持体(3)は再生して複数回使用することが出来るため、本発明の方法は経済的にも有利である。
【0053】
更に、本発明の好ましい態様においては、前記の各工程は、ケーシング(1)をスライドさせ、製版装置の全体をケーシング(1)に収容して行われる。斯かる態様において、ケーシング(1)は次の様に作用する。すなわち、図1に示す装置(平版印刷機)は印刷室内に配置される。一方、本発明においては、感光性版材としては、前述の通り各種のネガ・ポジ感光性組成物を使用することが出来る。ケーシング(1)は、使用するネガ・ポジ感光性組成物に不適切な照明光を遮断する作用を奏する。
【0054】
また、ケーシング(1)の天井部に設置された除塵フイルター(11)は次の様に作用する。すなわち、上記の印刷室内は、通常、天井付近に給気口が配置され且つ床付近に排気口が設けられて換気可能になされている。この場合、除塵フイルター(11)を通過してケーシング(1)の開放された前面に向かう換気空気流が形成される。その結果、製版、印刷、再生の各工程で発生するミストが効率的に除去される。上記のミストは、上記の排気口に排気ダクト(12)を導通することにより一層効率的に除去され、製版不良率を下げる効果を奏する。
【0055】
上記の様に、本発明の製版方法は、画像形成材料の形成工程(A)において、支持体(3)上の感光性層(塗布した感光性層溶液)を加熱乾燥するにあたり、支持体(3)の中央部に比べて両端部に多くのエネルギーを加え、熱放散などによる支持体(3)の端部における温度低下を防止するため、支持体(3)全体を均一に加熱でき、支持体(3)全面(感光性層の全体)において乾燥ムラの無い均一な乾燥状態が得られる。その結果、一層高品質の画像形成材料を形成でき、印刷機上において高品質なレーザー製版と印刷が可能となる。
【0056】
しかも、画像形成材料固定用ドラム(版胴(21))と支持体(3)との間に空隙層を設けた状態で加熱乾燥処理した場合には、支持体(3)から画像形成材料固定ドラムへの放熱を効果的に抑制して加温効果を高めることが出来、かつ、支持体(3)全面を変形させることなく一層均一に乾燥させることが出来、より一層高品質な画像形成材料を効率的に作製できる。
【0057】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例については前述の図2〜図5を併用して説明し、また、比較例については図6及び図7を使用して説明する。図6は、比較例における乾燥機構のランプの配置例を示す平面図であり、図7は、比較例において支持体(感光性層)に与えたエネルギーの分布を示すグラフである。
【0058】
実施例1:
アルミニウム板(厚さ0.24mm)を5重量%の水酸化ナトリウム水溶液中で60℃で1分間脱脂処理した後、0.5モル/リットルの濃度の塩酸水溶液中において、温度25℃、電流密度60A/dm2、処理時間30秒の条件で電解エッチング処理を行った。次いで、5重量%水酸化ナトリウム水溶液中で60℃、10秒間のデスマット処理を施した後、20重量%硫酸溶液中において、温度20℃、電流密度3A/dm2、処理時間1分の条件で陽極酸化処理を行った。そして、80℃の熱水で20秒間熱水封孔処理を行い、平板印刷版の支持体(3)としてのアルミニウム板を作製した。表面粗度計(小坂研究所社製「SE−3DH」)により上記のアルミニウム板の表面粗さを測定したところ、平均粗さRaの値は0.60μmであった。
【0059】
次いで、三菱重工社製平板印刷機「ダイヤF−2」の版胴(21)上に、メッシュシート(NBC工業(株)製;TB30、ポリエステル100%、厚さ540μm)を2周貼り付けて厚さ1080μmの空隙層を形成し、その上に、表面処理を施した面が外側になる様にアルミニウム板の支持体(3)を固定した後、支持体(3)の表面にワイヤーバーを使用して感光性版剤としての塗布液を塗布した。塗布液は、光熱変換物質として、インドール系色素3重量部、アルカリ可溶性樹脂として、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で50:30:20の混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体から成るノボラック樹脂(Mw9400)100重量部、および、クリスタルバイオレットラクトン3重量部をメチルソルソルブ1000重量部に対して室温で攪拌することにより調液した。
【0060】
上記の様に支持体(3)の表面に感光性版剤を塗布して感光性層を形成した後、ハロゲン・ランプから成る乾燥機構(9)によって感光性層を加熱乾燥処理し、ポジ型感光性平板印刷版を作製した。加熱乾燥処理においては、支持体(3)に対する供給エネルギーが図5に示す様な分布(L=5cm)となる様に、乾燥機構(9)を図2に示す様に構成した。
【0061】
すなわち、主加熱手段(9a)として、ハロゲン・ランプ(ウシオ電機(株)製の面照射型ヒーターユニット、ランプ長100cm、規格値200V、3kW)を版胴(21)の軸線に沿って配置し、補助加熱手段(9b)として、ハロゲン・ランプ(ウシオ電機(株)製の面照射型ヒーターユニット、ランプ長30cm、規格値100V、1.05kW)を版胴(21)の軸線に沿って当該版胴の両端部に配置した。そして、版胴(21)を周速度2m/分で回転しながら、各ハロゲン・ランプ同時に3分間照射した。主加熱手段(9a)のハロゲン・ランプによる照射では、印加電圧を155Vとし、反射鏡幅が6cmのパラボラ型反射鏡を使用し、支持体(3)までの距離を3cmに設定した。また、補助加熱手段(9b)のハロゲン・ランプによる照射では、印加電圧を30Vとし、反射鏡幅が6cmのパラボラ型反射鏡を使用し、支持体(3)までの距離を3cmに設定した。
【0062】
続いて、得られたポジ型感光性平板印刷版に対し、版胴上に近接固定した露光装置(波長830nm、30mWのアプライドテクノ社製の半導体レーザーを光源とする露光装置)を使用し、各種の露光エネルギーで20μm幅の細線画像を走査露光した。次いで、湿し水供給機構の湿し水をアルカリ現像液に変更し、版胴を毎時13000回転で回転させた状態において、湿し水供給機構よりアルカリ現像液(富士写真フィルム社製「DP−4」の12倍希釈液)を28℃で5分間供給した。そして、湿し水供給機構中のアルカリ現像液を水に変更し、同様に版上に水を供給して水洗することにより、細線画像を再現させたポジ型平板印刷版を作製した。露光の際の感度は、20μm幅の細線が再現する最小露光エネルギーとして200mJ/cm2であった。
【0063】
次いで、上記の様に露光・現像処理して得られたポジ型平板印刷版に対し、湿し水供給機構より湿し水(日研化学社製「アストロNo.1 マークII」)を供給し、印刷インキ供給機構より印刷インキ(東洋インキ社製「ハイエコー・マゼンタ」)を供給することにより、1000枚の印刷を行ったところ、印刷版の全面において一様に印刷でき且つ良質な印刷物が得られた。
【0064】
印刷終了後、平板印刷版を版胴に固定した状態において、版面上の印刷インキを洗浄、除去した後、付設した画像除去機構のローラーにより画像除去剤としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルを版面上に塗布してポジ画像を溶解させ、ガーゼで拭き取って除去し、次いで、水洗することにより、アルミニウム板支持体を再生した。
【0065】
続いて、再生したアルミニウム板支持体表面に対し、版材供給機構のローラーにより上記と同様のポジ型感光性版材を再度塗布して感光性層を形成し、上記の操作と同様に加熱乾燥させることによりポジ型感光性平板印刷版を作製した後、引き続いて、露光機構のレーザー光源により感光性層を走査露光し、湿し水供給機構のローラーによって上記と同様の現像液を感光性層上に供給して現像処理することにより、ポジ画像を現出させて画像形成済みのポジ型平板印刷版を作製した。露光時の感度は、20μm幅の細線画像が再現する露光エネルギーとして求めたところ、再生前と同様に200mJ/cm2であった。そして、斯かる露光エネルギーで露光、現像処理したポジ型平板印刷版を使用し、2回目の印刷として上記と同様に10000枚の印刷を行ったところ、上記の場合と同様に、印刷版の全面において一様に印刷でき且つ良質な印刷物が得られた。
【0066】
比較例1:
実施例1において、加熱乾燥処理の際に乾燥機構(9)として主加熱手段(9a)のハロゲン・ランプのみを使用した点を除き、実施例1と同様の条件で製版した。乾燥機構(9)のランプ配置は図6に示す通りであり、また、支持体(3)に対して供給した加熱エネルギーは図7に示す様な分布であった。その結果、支持体(3)の両端側5cmの長さに亘る範囲を除く部分は高品質の画像が形成されたが、前記の5cmの長さに亘る範囲の部分では乾燥が不十分であったために画像が形成されなかった。
【0067】
比較例2:
比較例1において、主加熱手段(9a)のハロゲン・ランプによる照射時間を15分と長くしたこと以外は比較例1と同様の条件で製版を試みたところ、加熱乾燥処理直後の版胴(21)の温度が55℃まで上昇したため、直ちに露光、現像を始めることが出来なかった。そこで、版胴(21)の温度が25℃まで低下した後に露光、現像処理したところ、支持体(3)の両端側5cmの長さに亘る範囲では良好な画像が得られたが、支持体(3)の中央部では現像処理不足となり、支持体(3)の全面に一様に良質な画像を形成できなかった。更に、続いて、同様の現像処理を2分間行ったところ、支持体(3)の中央部では良質な画像が得られたが、支持体(3)の両端側5cmの長さに亘る範囲の部分では画像が消失してしまった。
【0068】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明のレーザー製版方法によれば、支持体上の感光性層を加熱乾燥処理するにあたり、支持体の中央部よりも両端部により多くのエネルギーを加え、熱放散などによる支持体端部における温度低下を防止するため、支持体全面、すなわち、感光性層の全体を均一に乾燥させることが出来、その結果、一層高品質の画像形成材料を作製できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のレーザー製版方法の実施に好適な一例としてのレーザー製版装置の概念を示す縦断面図である。
【図2】光加熱方式の加熱乾燥処理を行う乾燥機構におけるランプの配置例を示す平面図である。
【図3】加熱乾燥処理において支持体(感光性層)の端部と中央部に与えるエネルギーの分布を示すグラフである。
【図4】加熱乾燥処理において支持体(感光性層)の端部と中央部に与えるエネルギーの分布を示すグラフである。
【図5】加熱乾燥処理において支持体(感光性層)の端部と中央部に与えるエネルギーの分布を示すグラフである。
【図6】比較例における乾燥機構のランプの配置例を示す平面図である。
【図7】比較例において支持体(感光性層)に与えたエネルギーの分布を示すグラフである。
【符号の説明】
1 :ケーシング
11:除塵フイルター
12:排気ダクト
21:版胴(画像形成材料固定用ドラム)
22:ブランケット胴
23:圧胴
3 :支持体(画像形成材料)
31:支持体固定手段
4 :版材供給機構
5 :露光機構
6 :インク着肉装置
7 :湿し装置
9 :乾燥機構
81:版材溶解液供給機構(版材除去機構)
82:版材剥離ローラー(版材除去機構)
83:洗浄水供給機構(版材除去機構)
84:廃液回収機構(版材除去機構)
85:エアー式乾燥機構(版材除去機構)
86:汚染防止トレー
Claims (10)
- 画像形成材料固定用ドラムに固定した支持体上に感光性版材を塗布して感光性層を形成し、当該感光性層を加熱乾燥処理することにより画像形成材料を構成した後、レーザー光線により走査画像露光を行い、次いで、製版処理剤による処理を施して感光性層により画像形成するレーザー製版方法において、感光性層を加熱乾燥処理するにあたり、ドラム軸線方向における支持体の中央部に比べ、両端部に多くのエネルギーを加えることを特徴とするレーザー製版方法。
- 熱風を吹き付けて感光性層を加熱乾燥処理する請求項1に記載のレーザー製版方法。
- 光を照射して感光性層を加熱乾燥処理する請求項1に記載のレーザー製版方法。
- 感光性層を加熱乾燥処理するにあたり、画像形成材料固定用ドラムと支持体との間に断熱層を設ける請求項1〜3の何れかに記載のレーザー製版方法。
- 断熱層の厚さが50μm以上である請求項4に記載のレーザー製版方法。
- 画像形成材料固定用ドラム、版材供給機構、乾燥機構、露光機構および製版処理材供給機構を少なくとも有するレーザー製版装置を使用すると共に、(A):画像形成材料固定用ドラムに固定した支持体上に版材供給機構から感光性版材を供給塗布して感光性層を形成し、乾燥機構により感光性層を加熱乾燥処理して画像形成材料となし、次いで、(B):露光機構により画像形成材料を画像露光した後、(C):画像露光済み画像形成材料上に製版処理剤供給機構から製版処理剤を供給し、更に、必要に応じて物理的刺激を与えることにより画像形成する請求項1〜5に記載のレーザー製版方法。
- 画像形成材料固定用ドラム、版材供給機構、乾燥機構、露光機構、製版処理材供給機構および版材除去機構を少なくとも有するレーザー製版装置を用いると共に、(E):画像形成された画像形成材料に対し、版材除去機構により感光性層の表面に版材除去剤を供給し、更に、必要に応じて物理刺激を与えることにより、支持体上の感光性層を溶解、剥離除去して支持体を再生する請求項6に記載のレーザー製版方法。
- 画像形成材料固定用ドラムが印刷機の版胴である請求項6又は7に記載のレーザー製版方法。
- 画像形成材料が、700〜1300nmの近赤外レーザー露光用光重合性画像形成材料、または、400〜420nmの青紫レーザー露光用光重合性画像形成材料である請求項1〜8の何れかに記載のレーザー製版方法。
- 画像形成材料が、画像露光用光源の光を吸収して熱に変換する光熱変換物質とノボラック樹脂とを含有するポジ感光性組成物から成る700〜1300nmの近赤外レーザー露光用ポジ型感光性版材である請求項1〜8の何れかに記載のレーザー製版方法。
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---|---|---|---|
JP2002175424A JP2004020904A (ja) | 2002-06-17 | 2002-06-17 | レーザー製版方法 |
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JP2002175424A JP2004020904A (ja) | 2002-06-17 | 2002-06-17 | レーザー製版方法 |
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ID=31174073
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JP (1) | JP2004020904A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009508686A (ja) * | 2005-09-21 | 2009-03-05 | カーベーアー−ジオリ ソシエテ アノニム | シリンダ、特に凹版印刷機の拭き取りシリンダをコーティングするための装置 |
-
2002
- 2002-06-17 JP JP2002175424A patent/JP2004020904A/ja not_active Withdrawn
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