JP2004020875A - 光制御素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来、極端に薄い膜状の張り合わせや多数のものを積層することなどは困難であったり、また、三角形にプリズム材料を切り出し、研磨するには専用の冶具が必要であったとする問題点を解決する。
【解決手段】単結晶からなり、分極方向が異なることにより屈折率が互いに異なる少なくとも2つの領域が形成されており、2つの領域の界面を光路が貫通することにより光の出力方向を波長により分離することを特徴とする光制御素子である。
【選択図】 図6
【解決手段】単結晶からなり、分極方向が異なることにより屈折率が互いに異なる少なくとも2つの領域が形成されており、2つの領域の界面を光路が貫通することにより光の出力方向を波長により分離することを特徴とする光制御素子である。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属するの技術分野】
本発明は、レーザの部品光学部品などに用いられるプリズムおよび偏光ビームスプリッタなどの光制御素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ビームを制御する光学素子として、偏光素子、反射素子等の光学部品が使用されている。これらの素子は光学部品の張り合わせもしくは光学多層膜のコーテイング等で構成されている。
【0003】
従来の偏光ビームスプリッタの構成を図2に示す。偏光ビームスプリッタは三角状のプリズム片側に光学多層膜65を蒸着し、2つのプリズム61、62をUV接着剤66等で張り合わせることにより構成されている。
【0004】
光学多層膜65の蒸着物質としては一般にTiO2/SiO2の組み合わせが多く利用されているが、これらはUV照射により接着剤66を硬化させる際に接着剤66がUVを吸収し、吸収した点を熱源となりプリズムの吸収点を発生しやすいことが知られている。(「光学設計とシュミレーションソフトの上手な使い方」オプトロニクス社編:1999年:オプトロニクス社)また接着層が存在するため、強い光を入射した場合には蒸着物質が急激な劣化を示し、また長期の安定性に欠けるといった問題がある。
【0005】
また、グラントムソンプリズム、グランテーラプリズム等の偏光素子は、結晶の複屈折率を利用した偏光素子として知られているが、2つの結晶素子を張り合わせ、貼り付け界面の前後で、屈折率に変化がでるように結晶方位を選んでいる。
これらのプリズムの材料は高価であるとともに精密な研磨接着が必用でコストが高く、その使用は理化学用途にかぎられていた。
【0006】
また、波長分離素子としては、波長により複屈折の大きさが異なる水晶などを用いた三角プリズムが使用されている。
【0007】
従来の三角プリズムの場合においても、プリズム材料が高価であり、かつ切り出し面が平行でないため研磨が難しく専用の冶具を必要とする
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
2つの結晶素子を張り合わせることは、張り合わせる面の平坦度、清浄度が高度に要求され、また、張り合わせの方法が接着剤や拡散接合、光学コンタクトなどの手段に限られ、極端に薄い膜状の張り合わせや多数のものを積層することなどは困難であった。また、三角形にプリズム材料を切り出し、研磨するには専用の冶具を必要としていた。
本発明は、これらの問題を解決する光学素子を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、単結晶からなり、分極方向が異なることにより屈折率が互いに異なる少なくとも2つの領域が形成されており、2つの領域の界面を光路が貫通することにより光の出力方向を波長により分離することを特徴とする光制御素子である。
【0010】
また本発明は、単結晶からなり、分極方向が異なることにより屈折率が互いに異なる少なくとも2つの領域が形成されており、2つの領域の界面を光路が貫通することにより光の出力方向を偏光により分離することを特徴とする光制御素子である。
【0011】
また本発明は、前記2つの分極領域の分極方向のなす角が60°、90°、または120°であることを特徴とする光制御素子である。
また本発明は、前記単結晶の対称性が斜方晶であることを特徴とする光制御素子である。
また本発明は、前記単結晶として、KNbO3またはKTiOPO4を使用したことを特徴とする光学制御素子である。
【0012】
本発明による光制御素子は、基本的には強誘電体基板とその基板の中に作製された180°以外の分極ドメイン壁(90°分極壁、60°分極壁、または120°ドメイン壁)のみで構成される非常にシンプルなものである。
【0013】
本発明によれば結晶方位そのものを分極方位の部分的制御により実現し、例えば、光の伝播にともなって、屈折率が位置により変化するような結晶材料や素子または全体もしくは部分的な積層体を提供できる。
【0014】
強誘電体基板中に90°分極領域などを形成することにより、境界部に非常にシャープな分極壁が形成され、前記分極壁を光が通過する際に、偏光方向により透過特性が異なり、さらに、波長により透過角度が異なることがわかった。
【0015】
この性質を利用することにより、偏光分離素子、および波長分波器として機能することができるようになった。
【0016】
光学材料に電界を加えて分極反転操作を行い分極反転させることが出来ることは報告されている。例えば、三方晶系の強誘電体であるLiNbO3を用い、自発分極の方向を180度反転させ、SHG素子として利用する例が(J.E,Myers etal., J.Opt.Soc.Am.B; vol.12, No.11, 2102, 1995)に記載されている図2に従来の分極反転方法を示す。
【0017】
LiNbO3結晶のzカットウエハーの+z側に周期的電極52を作製し、フォトレジスト53による絶縁層をその上に形成する。
【0018】
Oリング51内に液体電極54を満たし電界を−z方向に印加することにより電極部のみ周期的に180°分極反転を形成することが出来る。
【0019】
LiNbO3にMgOをドープした試料(M.Nakamura etal.; Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.38,L−1234,1999)やKNbO3結晶についても同様な方法で180°分極反転構造が形成できることが報告されている。(J.P.Meyn etal.;Optics Lett.,Vol24,No.16,1154,1999)
このような先行技術は主に、自発分極を180度反転させることにより、非線形常数dの符号が反転することを利用して、高調波を発生させるもととなる分極波の符号を周期的に反転するものである。基本波と高調波の相対的位相差を補正し、高調波が打ち消すことなく、加算されるように、自発分極の180度反転した領域を配置して擬似位相整合を達成することを目的にしている。
【0020】
しかしながらこの場合には、屈折率楕円体は分極軸方向対して対称であるため、180度分極反転層の界面に光が入射した場合、入射角度によらず各分域の屈折率は同じであるため、反射屈折等の光の制御を行うことは出来ない。
【0021】
本発明は結晶方位そのものを180°以外の分極反転操作を行うことにより実現、結晶材料の自身の中に屈折率の異なる状態を実現し、光の屈折、反射等を制御する素子を実現する物である。
【0022】
【発明の実施形態】
(実施例1)
偏光分離素子としての機能について、斜方晶系に属するKNbO3を例にとり説明する。KNbO3の室温における点群はmm2で、格子定数はa=5.688、b=3.971、c=5.714、波長633nmでの主屈折率na=2.2801、nb=2.3296、nc=2.1687である。
【0023】
自発分極軸はc軸である。図3に示すようにa軸に垂直に基板3を切り出し、a面の両面にb軸と平行に電極1,2を作製する。両電極間に直流電界を印加することにより、図4に示すように90°分極領域20を作製することができた。
【0024】
前記電界の印加方法は、電極1、2のいずれにプラス電界を印加してもよい。具体的には、電極1にプラスを印加した場合に形成される90°分極領域20は図4(a)のように、電極2にプラスを印加した場合に形成される90°分極領域20は図4(b)のようになった。印加する電界の強度は約250V/mmであった。
【0025】
また、ここではa軸に垂直な基板3を取り上げたが、図5に示すように、a軸からc軸方向への回転角度をαとすると、0°≦α≦45°の範囲で傾けた面で切り出し試料に対しても、切り出し面に設けた電極1、2に電界印加することにより、図4と同様な90°分極領域20を作製することができる。
【0026】
このようにして作製した素子に対して、図6に示すように、b軸に垂直な面内において、無偏光の光を切り出し面から入射する場合を考える。このとき、光の入射方向と切り出し面の垂線とのなす角をθinとする。また、光の出射方向と切り出し面の垂線とのなす角をθoutとする。図6(a)に示すb軸と平行な偏光を持つ光の入射を考える。b軸と平行な方向に偏光した光は領域10を通り、領域20を通過する。その際、領域10と領域20で、感じる屈折率の大きさはどちらもnbであるため、領域10と領域20での波面法線ベクトル11,21の方向は変わらない。そのため光は領域10と領域20との境界部を直進する。その結果、光は領域20から出射する際、入射時の屈折条件と等価なためθout−θin=0となる。
【0027】
次に図6(b)に示すb軸と垂直な偏光を持つ光の入射を考える。b軸と垂直な偏光を持つb軸と平行な方向に偏光した光は領域10を通り、領域20を通過する。その際、領域10と領域20で、感じる屈折率の大きさが異なる。そのため、領域10と領域20との界面で大きな屈折が生じ、領域10と領域20での波面法線ベクトル21が大きく変わる。その結果、光は領域20から出射する際、入射時の屈折条件と異なるため、θout−θin≠0となる。実際に、波長533nmの光に対して算出したθout−θinのθin依存性を図7に示す。
【0028】
波長532nmの緑色光に対して、実際に光を入射した。その結果、θin=0°の時、b軸と平行な偏光を持つ光はθout−θin=0であったのに対し、b軸と垂直な偏光を持つ光はθout−θin=7°であり、計算通り偏光分離が可能であることを確認できた。
【0029】
(実施例2)
波長分波器としての機能について、斜方晶系に属するKNbO3を例にとり説明する。KNbO3の室温における点群はmm2で、格子定数はa=5.688、b=3.971、c=5.714、波長633nmでの主屈折率na=2.2801、nb=2.3296、nc=2.1687である。
【0030】
自発分極軸はc軸である。実施例1と同様に、図3に示すようにa軸に垂直に基板3を切り出し、a面の両面にb軸と平行に電極1,2を作製する。両電極間に直流電界を印加することにより、図4に示すように90°分極構造を作製することができた。
【0031】
次に図6(b)に示すb軸と垂直な偏光を持つ光の入射を考える。b軸と垂直な偏光を持つb軸と平行な方向に偏光した光は領域10を通り、領域20を通過する。その際、領域10と領域20で、感じる屈折率の大きさが異なる。そのため、領域10と領域20との分極壁15で大きな屈折が生じ、領域10と領域20での波面法線ベクトル11、21が大きく異なる。ただし、実際に観測される光はビームウォークオフの影響により、直進して観測される。波面法線ベクトル21が領域10と領域20で異なる結果、光は領域20から出射する際、入射時の屈折条件と異なるため、θout−θin≠0となる。θout−θinの大きさは屈折率に依存し、また波長により材料の屈折率が異なることから、波長分波器として機能することが予測される。ここで、波長433nm、533nm、633nmの光に対して算出したθout−θinのθin依存性を図8に示す。
【0032】
いずれの波長に対してもθout−θin≠0であり、約6〜8°である。さらに、波長433nmと波長633nmに対するθout−θinの大きさは、図9に示すように約1.3°異なり、0°≦θin≦30°でほぼ一定あることがわかる。
【0033】
実際に波長433nm、533nm、633nmの光を入射した。その結果、θin=0の時、ほぼ計算通り、θout−θinは約6〜8°であり、433nmと633nmの光に対してはθout−θinが約1.3°異なり、波長分波器として機能していることが確認できた。さらに、433nmと633nmの光に対するθout−θinは、θinによらずほぼ一定であることが確認できた。このことから、本発明による波長分波器はアライメントが非常に用意であることが推察できる。
【0034】
以上の説明は90°分極構造を取り上げて説明したが、60°分極構造120°分極構造についても同様に偏光分離素子、波長分波器として機能することは言うまでもない。
【0035】
以上の説明は主にKNbO3結晶を例に説明したが、2軸性結晶で斜方晶結晶であるKTiOPO4、RbTiOPO4、二軸性結晶で正方晶であるBaTiO3などにも適用できることは言うまでもない。
【0036】
【発明の効果】
本発明により、従来は張り合わせでしか実現できなかった性質を持つ素子や、三角形など特殊な形状に切り出さなければ実現できなかった素子を、容易に製造でき、実用上かつ産業上効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の偏光ビームスプリッタの図である。
【図2】従来の分極反転構造の図である。
【図3】本発明の90°分極構造を作製する基板構造と電極構造の一例を模式的に示した図である。
【図4】本発明の90°分極構造の一例を模式的に示した図である。(a)は電極1に正電界を印加した場合に得られる構造の一例、(b)は電極2に正電界を印加した場合に得られる構造の一例を示した図である。
【図5】90°分極構造を作製する基板構造と電極構造の一例を模式的に示した図である。
【図6】本発明の光制御素子に入射した光の波面方線ベクトルを模式的に示した図である。(a)はb軸と平行な偏光成分を持つ光を考えた場合、(b)はb軸と垂直方向の偏光成分を持つ光を考えた場合について示した図である。
【図7】波長533nmの光のθinとθout−θinとの関係を示した図である。
【図8】波長433nm、533nm、633nmの光のθinとθout−θinとの関係を示した図である。
【図9】θout−θinの大きさの波長633nmと433nmとの差と、θinとの関係を示した図である。
【符号の説明】
1、2電極
3 基板
10領域10
11領域10における波面法線ベクトルの方向
15 分極壁
20領域20
21領域20における波面法線ベクトルの方向
51 Oリング
52電極
53絶縁層
54液体電極
61,62 プリズム
65光学多層膜
66UV接着剤
図1.
図3
図6
【発明の属するの技術分野】
本発明は、レーザの部品光学部品などに用いられるプリズムおよび偏光ビームスプリッタなどの光制御素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ビームを制御する光学素子として、偏光素子、反射素子等の光学部品が使用されている。これらの素子は光学部品の張り合わせもしくは光学多層膜のコーテイング等で構成されている。
【0003】
従来の偏光ビームスプリッタの構成を図2に示す。偏光ビームスプリッタは三角状のプリズム片側に光学多層膜65を蒸着し、2つのプリズム61、62をUV接着剤66等で張り合わせることにより構成されている。
【0004】
光学多層膜65の蒸着物質としては一般にTiO2/SiO2の組み合わせが多く利用されているが、これらはUV照射により接着剤66を硬化させる際に接着剤66がUVを吸収し、吸収した点を熱源となりプリズムの吸収点を発生しやすいことが知られている。(「光学設計とシュミレーションソフトの上手な使い方」オプトロニクス社編:1999年:オプトロニクス社)また接着層が存在するため、強い光を入射した場合には蒸着物質が急激な劣化を示し、また長期の安定性に欠けるといった問題がある。
【0005】
また、グラントムソンプリズム、グランテーラプリズム等の偏光素子は、結晶の複屈折率を利用した偏光素子として知られているが、2つの結晶素子を張り合わせ、貼り付け界面の前後で、屈折率に変化がでるように結晶方位を選んでいる。
これらのプリズムの材料は高価であるとともに精密な研磨接着が必用でコストが高く、その使用は理化学用途にかぎられていた。
【0006】
また、波長分離素子としては、波長により複屈折の大きさが異なる水晶などを用いた三角プリズムが使用されている。
【0007】
従来の三角プリズムの場合においても、プリズム材料が高価であり、かつ切り出し面が平行でないため研磨が難しく専用の冶具を必要とする
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
2つの結晶素子を張り合わせることは、張り合わせる面の平坦度、清浄度が高度に要求され、また、張り合わせの方法が接着剤や拡散接合、光学コンタクトなどの手段に限られ、極端に薄い膜状の張り合わせや多数のものを積層することなどは困難であった。また、三角形にプリズム材料を切り出し、研磨するには専用の冶具を必要としていた。
本発明は、これらの問題を解決する光学素子を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、単結晶からなり、分極方向が異なることにより屈折率が互いに異なる少なくとも2つの領域が形成されており、2つの領域の界面を光路が貫通することにより光の出力方向を波長により分離することを特徴とする光制御素子である。
【0010】
また本発明は、単結晶からなり、分極方向が異なることにより屈折率が互いに異なる少なくとも2つの領域が形成されており、2つの領域の界面を光路が貫通することにより光の出力方向を偏光により分離することを特徴とする光制御素子である。
【0011】
また本発明は、前記2つの分極領域の分極方向のなす角が60°、90°、または120°であることを特徴とする光制御素子である。
また本発明は、前記単結晶の対称性が斜方晶であることを特徴とする光制御素子である。
また本発明は、前記単結晶として、KNbO3またはKTiOPO4を使用したことを特徴とする光学制御素子である。
【0012】
本発明による光制御素子は、基本的には強誘電体基板とその基板の中に作製された180°以外の分極ドメイン壁(90°分極壁、60°分極壁、または120°ドメイン壁)のみで構成される非常にシンプルなものである。
【0013】
本発明によれば結晶方位そのものを分極方位の部分的制御により実現し、例えば、光の伝播にともなって、屈折率が位置により変化するような結晶材料や素子または全体もしくは部分的な積層体を提供できる。
【0014】
強誘電体基板中に90°分極領域などを形成することにより、境界部に非常にシャープな分極壁が形成され、前記分極壁を光が通過する際に、偏光方向により透過特性が異なり、さらに、波長により透過角度が異なることがわかった。
【0015】
この性質を利用することにより、偏光分離素子、および波長分波器として機能することができるようになった。
【0016】
光学材料に電界を加えて分極反転操作を行い分極反転させることが出来ることは報告されている。例えば、三方晶系の強誘電体であるLiNbO3を用い、自発分極の方向を180度反転させ、SHG素子として利用する例が(J.E,Myers etal., J.Opt.Soc.Am.B; vol.12, No.11, 2102, 1995)に記載されている図2に従来の分極反転方法を示す。
【0017】
LiNbO3結晶のzカットウエハーの+z側に周期的電極52を作製し、フォトレジスト53による絶縁層をその上に形成する。
【0018】
Oリング51内に液体電極54を満たし電界を−z方向に印加することにより電極部のみ周期的に180°分極反転を形成することが出来る。
【0019】
LiNbO3にMgOをドープした試料(M.Nakamura etal.; Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.38,L−1234,1999)やKNbO3結晶についても同様な方法で180°分極反転構造が形成できることが報告されている。(J.P.Meyn etal.;Optics Lett.,Vol24,No.16,1154,1999)
このような先行技術は主に、自発分極を180度反転させることにより、非線形常数dの符号が反転することを利用して、高調波を発生させるもととなる分極波の符号を周期的に反転するものである。基本波と高調波の相対的位相差を補正し、高調波が打ち消すことなく、加算されるように、自発分極の180度反転した領域を配置して擬似位相整合を達成することを目的にしている。
【0020】
しかしながらこの場合には、屈折率楕円体は分極軸方向対して対称であるため、180度分極反転層の界面に光が入射した場合、入射角度によらず各分域の屈折率は同じであるため、反射屈折等の光の制御を行うことは出来ない。
【0021】
本発明は結晶方位そのものを180°以外の分極反転操作を行うことにより実現、結晶材料の自身の中に屈折率の異なる状態を実現し、光の屈折、反射等を制御する素子を実現する物である。
【0022】
【発明の実施形態】
(実施例1)
偏光分離素子としての機能について、斜方晶系に属するKNbO3を例にとり説明する。KNbO3の室温における点群はmm2で、格子定数はa=5.688、b=3.971、c=5.714、波長633nmでの主屈折率na=2.2801、nb=2.3296、nc=2.1687である。
【0023】
自発分極軸はc軸である。図3に示すようにa軸に垂直に基板3を切り出し、a面の両面にb軸と平行に電極1,2を作製する。両電極間に直流電界を印加することにより、図4に示すように90°分極領域20を作製することができた。
【0024】
前記電界の印加方法は、電極1、2のいずれにプラス電界を印加してもよい。具体的には、電極1にプラスを印加した場合に形成される90°分極領域20は図4(a)のように、電極2にプラスを印加した場合に形成される90°分極領域20は図4(b)のようになった。印加する電界の強度は約250V/mmであった。
【0025】
また、ここではa軸に垂直な基板3を取り上げたが、図5に示すように、a軸からc軸方向への回転角度をαとすると、0°≦α≦45°の範囲で傾けた面で切り出し試料に対しても、切り出し面に設けた電極1、2に電界印加することにより、図4と同様な90°分極領域20を作製することができる。
【0026】
このようにして作製した素子に対して、図6に示すように、b軸に垂直な面内において、無偏光の光を切り出し面から入射する場合を考える。このとき、光の入射方向と切り出し面の垂線とのなす角をθinとする。また、光の出射方向と切り出し面の垂線とのなす角をθoutとする。図6(a)に示すb軸と平行な偏光を持つ光の入射を考える。b軸と平行な方向に偏光した光は領域10を通り、領域20を通過する。その際、領域10と領域20で、感じる屈折率の大きさはどちらもnbであるため、領域10と領域20での波面法線ベクトル11,21の方向は変わらない。そのため光は領域10と領域20との境界部を直進する。その結果、光は領域20から出射する際、入射時の屈折条件と等価なためθout−θin=0となる。
【0027】
次に図6(b)に示すb軸と垂直な偏光を持つ光の入射を考える。b軸と垂直な偏光を持つb軸と平行な方向に偏光した光は領域10を通り、領域20を通過する。その際、領域10と領域20で、感じる屈折率の大きさが異なる。そのため、領域10と領域20との界面で大きな屈折が生じ、領域10と領域20での波面法線ベクトル21が大きく変わる。その結果、光は領域20から出射する際、入射時の屈折条件と異なるため、θout−θin≠0となる。実際に、波長533nmの光に対して算出したθout−θinのθin依存性を図7に示す。
【0028】
波長532nmの緑色光に対して、実際に光を入射した。その結果、θin=0°の時、b軸と平行な偏光を持つ光はθout−θin=0であったのに対し、b軸と垂直な偏光を持つ光はθout−θin=7°であり、計算通り偏光分離が可能であることを確認できた。
【0029】
(実施例2)
波長分波器としての機能について、斜方晶系に属するKNbO3を例にとり説明する。KNbO3の室温における点群はmm2で、格子定数はa=5.688、b=3.971、c=5.714、波長633nmでの主屈折率na=2.2801、nb=2.3296、nc=2.1687である。
【0030】
自発分極軸はc軸である。実施例1と同様に、図3に示すようにa軸に垂直に基板3を切り出し、a面の両面にb軸と平行に電極1,2を作製する。両電極間に直流電界を印加することにより、図4に示すように90°分極構造を作製することができた。
【0031】
次に図6(b)に示すb軸と垂直な偏光を持つ光の入射を考える。b軸と垂直な偏光を持つb軸と平行な方向に偏光した光は領域10を通り、領域20を通過する。その際、領域10と領域20で、感じる屈折率の大きさが異なる。そのため、領域10と領域20との分極壁15で大きな屈折が生じ、領域10と領域20での波面法線ベクトル11、21が大きく異なる。ただし、実際に観測される光はビームウォークオフの影響により、直進して観測される。波面法線ベクトル21が領域10と領域20で異なる結果、光は領域20から出射する際、入射時の屈折条件と異なるため、θout−θin≠0となる。θout−θinの大きさは屈折率に依存し、また波長により材料の屈折率が異なることから、波長分波器として機能することが予測される。ここで、波長433nm、533nm、633nmの光に対して算出したθout−θinのθin依存性を図8に示す。
【0032】
いずれの波長に対してもθout−θin≠0であり、約6〜8°である。さらに、波長433nmと波長633nmに対するθout−θinの大きさは、図9に示すように約1.3°異なり、0°≦θin≦30°でほぼ一定あることがわかる。
【0033】
実際に波長433nm、533nm、633nmの光を入射した。その結果、θin=0の時、ほぼ計算通り、θout−θinは約6〜8°であり、433nmと633nmの光に対してはθout−θinが約1.3°異なり、波長分波器として機能していることが確認できた。さらに、433nmと633nmの光に対するθout−θinは、θinによらずほぼ一定であることが確認できた。このことから、本発明による波長分波器はアライメントが非常に用意であることが推察できる。
【0034】
以上の説明は90°分極構造を取り上げて説明したが、60°分極構造120°分極構造についても同様に偏光分離素子、波長分波器として機能することは言うまでもない。
【0035】
以上の説明は主にKNbO3結晶を例に説明したが、2軸性結晶で斜方晶結晶であるKTiOPO4、RbTiOPO4、二軸性結晶で正方晶であるBaTiO3などにも適用できることは言うまでもない。
【0036】
【発明の効果】
本発明により、従来は張り合わせでしか実現できなかった性質を持つ素子や、三角形など特殊な形状に切り出さなければ実現できなかった素子を、容易に製造でき、実用上かつ産業上効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の偏光ビームスプリッタの図である。
【図2】従来の分極反転構造の図である。
【図3】本発明の90°分極構造を作製する基板構造と電極構造の一例を模式的に示した図である。
【図4】本発明の90°分極構造の一例を模式的に示した図である。(a)は電極1に正電界を印加した場合に得られる構造の一例、(b)は電極2に正電界を印加した場合に得られる構造の一例を示した図である。
【図5】90°分極構造を作製する基板構造と電極構造の一例を模式的に示した図である。
【図6】本発明の光制御素子に入射した光の波面方線ベクトルを模式的に示した図である。(a)はb軸と平行な偏光成分を持つ光を考えた場合、(b)はb軸と垂直方向の偏光成分を持つ光を考えた場合について示した図である。
【図7】波長533nmの光のθinとθout−θinとの関係を示した図である。
【図8】波長433nm、533nm、633nmの光のθinとθout−θinとの関係を示した図である。
【図9】θout−θinの大きさの波長633nmと433nmとの差と、θinとの関係を示した図である。
【符号の説明】
1、2電極
3 基板
10領域10
11領域10における波面法線ベクトルの方向
15 分極壁
20領域20
21領域20における波面法線ベクトルの方向
51 Oリング
52電極
53絶縁層
54液体電極
61,62 プリズム
65光学多層膜
66UV接着剤
図1.
図3
図6
Claims (5)
- 単結晶からなり、分極方向が異なることにより屈折率が互いに異なる少なくとも2つの領域が形成されており、2つの領域の界面を光路が貫通することにより光の出力方向を波長により分離することを特徴とする光制御素子。
- 単結晶からなり、分極方向が異なることにより屈折率が互いに異なる少なくとも2つの領域が形成されており、2つの領域の界面を光路が貫通することにより光の出力方向を偏光により分離することを特徴とする光制御素子。
- 前記2つの分極領域の分極方向のなす角が60°、90°、または120°であることを特徴とする請求項1または2に記載の光制御素子。
- 前記単結晶の対称性が斜方晶であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光制御素子。
- 前記単結晶として、KNbO3またはKTiOPO4を使用したことを特徴とする請求項4に記載の光学制御素子。
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JP2002175087A JP2004020875A (ja) | 2002-06-14 | 2002-06-14 | 光制御素子 |
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JP2010250003A (ja) * | 2009-04-14 | 2010-11-04 | Seiko Epson Corp | 画像表示装置および画像表示方法 |
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2002
- 2002-06-14 JP JP2002175087A patent/JP2004020875A/ja active Pending
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