JP2004020381A - 近接場光発生装置および発生方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】近接場光を効率よく発生させる近接場光発生装置および発生方法を提供する。
【解決手段】近接場光発生装置は、薄膜または細線形状の金属21と、金属21の両側に配設された透明誘電体22と、レーザ光20を放射する半導体レーザ等のレーザ装置23と、レーザ光20を透明誘電体22の両側から照射するためのビームスプリタおよび反射鏡を有する光学系24とを備える。レーザ光20が両側から透明誘電体22に照射されることにより、金属21の両側に表面プラズモンが生成される。金属21が十分に薄いまたは細いとき、双方の表面に存在する表面プラズモン25が互いに電場を通じて相互作用を行い、プラズモンまたはFanoモード26の伝播が生じ近接場光27が発生する。
【選択図】 図2
【解決手段】近接場光発生装置は、薄膜または細線形状の金属21と、金属21の両側に配設された透明誘電体22と、レーザ光20を放射する半導体レーザ等のレーザ装置23と、レーザ光20を透明誘電体22の両側から照射するためのビームスプリタおよび反射鏡を有する光学系24とを備える。レーザ光20が両側から透明誘電体22に照射されることにより、金属21の両側に表面プラズモンが生成される。金属21が十分に薄いまたは細いとき、双方の表面に存在する表面プラズモン25が互いに電場を通じて相互作用を行い、プラズモンまたはFanoモード26の伝播が生じ近接場光27が発生する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、近接場光を発生する近接場光発生装置および発生方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光ディスクやハードディスクの記録容量は年々増大している。光ディスク分野では、青色レーザを用いる光記録方式で記録密度として30Gbpsi(bpsi:dit per square inch)ほどの値が実現されると予想されている。一方、ハードディスク分野では、GMRヘッドの採用で高密度化が大幅に進展し、さらに垂直記録方式や磁化安定化層の採用で100Gbpsiから300Gbpsi超が実現されると予想されている(日経エレクトロニクス、No.779、2000年9−25、p189)。
【0003】
しかし、その先の1Tbpsiを達成する技術はまだ存在しない。1Tbpsiを達成できる技術として研究されているもののひとつに近接場光を用いた記録方式がある。近接場光は通常の空間を伝播する光とは異なり、物質のごく近傍に拘束されて存在する電界である。この電界は光の周波数で振動しており、外部には伝播しないので光の波長というような大きさを持たない。この近接場光を用いることにより、光の周波数で振動する電界を波長以下の領域に局在させ、そのエネルギーを用いて記録することが出来る。したがって光の波長に依存しない微小領域においても記録が可能になる。そのため1Tbpsiも達成可能として近接場光記録が研究されている(OプラスE,Vol21,No3p279,1999)。
【0004】
近接場光ヘッドとしてはSIL(Solid Immersion Lens)を使ったものが知られている(特開2000−195074公報)。一般にレーザビームのスポットサイズは、d=1.22λ/NAで表される。λは光の波長、NAは開口数である。SILは高屈折率のレンズ内では光の波長が媒質の屈折率に反比例して短くなることを利用している。SILではNAが1.5ほどに達し、その場合波長以下の記録が実現する。
【0005】
さらに、このように集光されたビームを、ピンホールを開けた金属膜に照射し、波長以下のピンホールから染み出してくる近接場光を利用する方式も提案されている。しかしこの方法では利用できる近接場光の強度が小さくなりすぎるという問題があった。そこで開口の中に微小散乱体を設ける方法(第62回応用物理学会予稿集13a−ZQ−10)やピラミッド型ヘッドに金属をコートして表面プラズモンを励起し電界の高密度化をはかる方式が検討されている(第62回応用物理学会予稿集13a−ZQ−11)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のような方法においても電界強度が十分でないという問題があった。また微小領域に近接場光を効率よく閉じ込めるには限界があった。
従って本発明の目的は、近接場光を効率よく発生させる近接場光発生装置および発生方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、薄膜または細線形状の金属と、前記金属の両側に配置された誘電体と、誘電体を介して前記金属の両側に照射されるレーザ光により金属と誘電体の界面に表面プラズモンを生成する表面プラズモン生成部と、表面プラズモンを前記金属に沿って伝播することにより近接場光を発生する伝播部とを備えた近接場光発生装置により達成される。ここで前記金属は薄膜または細線形状の誘電体を挟んでまたは埋め込んで構成することができる。
【0008】
また、本発明に係る近接場光発生装置は、薄膜または細線形状の誘電体と、前記誘電体を挟みまたは埋め込んだ薄膜または細線形状の金属と、前記金属の両側に配置された誘電体と、誘電体を介して前記金属の両側に照射されるレーザ光により金属と誘電体の界面に表面プラズモンを生成する表面プラズモン生成部と、表面プラズモンを前記金属に挟まれまたは埋め込まれた誘電体に沿って伝播することにより近接場光を発生する伝播部とを備えて構成される。
【0009】
また、本発明に係る近接場光発生装置は、微小開口を有する誘電体と、少なくとも微小開口の側壁に形成された金属薄膜と、微小開口近傍に照射されるレーザ光により金属薄膜と誘電体の界面に表面プラズモンを生成する表面プラズモン生成部と、表面プラズモンを金属薄膜に沿って伝播させることにより近接場光を発生する伝播部とを備えて構成される。
【0010】
また、本発明に係る近接場光発生装置は、微小開口を有する誘電体と、少なくとも微小開口の側壁に形成された金属薄膜と、微小開口の上部に配置された金属を着膜した半導体とを備え、半導体に照射されるレーザ光により半導体に着膜された金属部分に表面プラズモンを生成する表面プラズモン生成部と、表面プラズモンを微小開口の側壁に形成された金属薄膜に沿って伝播することにより近接場光を発生する伝播部とを備えて構成される。ここで前記半導体はピラミッド形状を有し、ピラミッド形状の頂点側が微小開口側に配置することができる。
【0011】
さらに、本発明に係る近接場光発生方法は、薄膜または細線形状の金属の両側に配置された誘電体を介して前記金属の両側にレーザ光を照射することにより、金属と誘電体の界面に表面プラズモンを生成し、生成した表面プラズモンを前記金属に沿って伝播することにより近接場光を発生するものである。
【0012】
また、本発明に係る近接場光発生方法は、薄膜または細線形状の誘電体を挟みまたは埋め込んだ薄膜または細線形状の金属の両側に配置された誘電体を介して前記金属の両側にレーザ光を照射することにより、金属と誘電体の界面に表面プラズモンを生成し、生成した表面プラズモンを前記金属に挟まれまたは埋め込まれた誘電体に沿って伝播することにより近接場光を発生するものである。
【0013】
また、本発明に係る近接場光発生方法は、微小開口の少なくとも側壁に金属薄膜を形成した誘電体の微小開口近傍にレーザ光を照射することにより、金属薄膜と誘電体の界面に表面プラズモンを生成し、生成した表面プラズモンを金属薄膜に沿って伝播することにより近接場光を発生するものである。
【0014】
また、本発明に係る近接場光発生方法は、微小開口の少なくとも側壁に金属薄膜を形成した誘電体の微小開口上部に金属を着膜した半導体を配置し、半導体にレーザ光を照射することにより、半導体に着膜された金属部分に表面プラズモンを生成し、生成した表面プラズモンを微小開口の側壁に形成された金属薄膜に沿って伝播することにより近接場光を発生するものである。
さらに、前記表面プラズモンはFanoモードで伝播することができる。
本発明は、このように構成することにより近接場光を効率よく発生させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る近接場光発生装置の実施例について述べるが、その前に本発明の原理について説明する。
本発明では、光の微小開口を通過する効率を向上させるため、まず開口の近傍に表面プラズモンを発生させ、そのプラズモンを使って開口内を伝播させることで微小開口から光を取り出すことを考える。
レーザ光を誘電体を介して金属表面に照射すると、表面プラズモンが生成されることが知られている。表面プラズモンは誘電体と金属の界面を伝播するTM波であり、表面プラズモンの分散関係は、次式で与えられる。
【0016】
【数1】
【0017】
ここで、ωは光の角周波数、cは光速、εdは誘電体の誘電率、εmは金属の誘電率である。金属の場合、通常誘電率εmは負であり、負誘電体と呼ばれることもある。
この式より表面プラズモンが存在できる条件(kが虚数にならない条件)は
εm+εd<0
である。
この条件を満足するとき、表面プラズモンが存在できる。
【0018】
真空中に置かれた金属は光によって表面プラズモンを励起できない。励起のためには媒質中の光の波数と表面プラズモンの波数が一致しなければならないが、真空中の光では波数が一致しないからである。しかし誘電体と金属の界面では波数が一致する領域が存在し、プラズモンが励起できる。表面プラズモンはプリズムのある面に金属をコートし、全反射領域のある特定の角度においてレーザ光を照射すると励起できる。これはATR法として知られている。
【0019】
つぎに表面プラズモン同志の相互作用について述べる。いま金属薄膜を考える。金属薄膜の表裏2つの界面に表面プラズモンが生成されると、金属薄膜が十分に薄いとき、双方の表面に存在する表面プラズモンが互いに電場を通じて相互作用を行い、新たな伝播モードが存在することが知られている(J.J.BurkeandG.I.StegemanPhy.Rev.B33,p5186,1986)。
【0020】
このモードはFanoモードと呼ばれることもある。このモードはkベクトル(伝播ベクトル)が合理的に定義できるので金属界面に沿って伝播する新たなモードであることが知られている。金属膜厚が厚いときは、プラズモン間の相互作用が小さいため、新たなモードは起こらず、通常の表面プラズモンが独立に存在するだけであると考えられる。
この新たなモードは結合の種類に2種類有り、合成されたモードの電場分布は対称か、反対称性をもつ(偶奇性)。
【0021】
また金属薄膜の場合はいくらでも薄い膜厚に対して常に伝播する対称モードおよび反対称モードが存在する。したがってATR法等により別途発生させた表面プラズモンを非常に薄いナノメートル厚の金属薄膜に導いて、相互作用させ、伝播させればこれまで以上に微細な領域に近接場光を閉じ込めることが出来るので、その近接場光を用いて、例えば光記録が可能になる。
このモードに関してさらに別の例を説明する。2つの金属膜の間に非常に薄い誘電体を挟み、2つの金属膜界面にプラズモンを生成する場合を考える。表面プラズモンが誘電体と2つの金属界面に生成されると、誘電体を介して電磁相互作用が起こり、二つのプラズモンがカップルして、上記と同様な伝播モードがおこる。誘電体が厚い場合はプラズモンの相互作用は起こらず新たなモードは生成されない。
【0022】
この新たなモードにも電場の対称モードと反対称モードが存在するが、反対称モードは誘電体膜厚が薄くなると、カットオフが存在する。しかし、対称モードはカットオフが存在しないため、いくら薄い誘電体をもちいても伝播するモードが存在する。このため、非常に微小な領域にも近接場光を閉じ込めることが出来る(応用物理,第68巻,第6号,p673,1999年)。
一般には金属薄膜だけでなく、金属の針のような形状であってもFanoモードは存在し、いくらでも細い金属針の表面を伝播するプラズモンのモードが存在する。また、金属の微小細管の中に誘電体を埋め込んだ構造体であっても同様な伝播モードが存在し、近接場光を閉じ込めることができる。
【0023】
図1は、本発明の基本概念を示す図である。本発明では、表面プラズモン生成部1においてレーザ光を用いて表面プラズモンを効率よく生成し、この表面プラズモン生成部1よりも小さい微小導波部である伝播部2において表面プラズモンを伝播させ、これにより近接場光を発生させる。伝播部2は金属薄膜や金属細線でもよいし、また誘電体を金属薄膜で挟持したものでもよい。
Fanoモードを用いなくとも、生成された表面プラズモンを小さな領域に導波することで本発明は達成されるが、プラズモンの伝播損失がおこり、損失が大きい。これに対してFanoモードを用いると、表面プラズモンの場合より伝播距離が延びる可能性があり、それに伴って同一距離であれば低損失となる。したがって、これまでの表面プラズモンのみの励起よりもさらに小さな領域へ表面の伝播モードを閉じ込めることができる。これにより、例えばさらに小さな領域で光書き込みヘッドを構成することが出来る。
【0024】
図2は、本発明に係る近接場光発生装置の実施形態の一例を示す図である。図示のように、本例では、薄膜または細線形状の金属21と、金属21の両側に配設された透明誘電体22と、レーザ光20を放射する半導体レーザ等のレーザ装置23と、レーザ光20を透明誘電体22の両側から照射するための例えばプリズムやミラーを有する光学系24とを備える。図において、レーザ装置23から放射されたレーザ光20は、光学系24を介して、両側から透明誘電体22に照射される。これにより、金属21の両側に表面プラズモンが生成される。金属21の表裏2つの界面に表面プラズモン25が生成されると、金属21が十分に薄いまたは細いとき、双方の表面に存在する表面プラズモンが互いに電場を通じて相互作用を行い、プラズモンまたはFanoモード26の伝播が生じ、金属21および透明誘電体22の端面から近接場光27が発生する。
次に、本発明に係る近接場光発生装置の実施例について詳述する。
【0025】
(実施例1)
図3は本発明に係る近接場光発生装置の一実施例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。本実施例では、図示のように、半径10μmのポリマーレンズ30(またはガラスマイクロレンズやボールレンズでもよい)を2分割し、半球31、32を作製し、分割面にアルミニウム33をスパッター法で20nm着膜する。この分割した球のアルミニウム33上にアルゴンイオンを真空中にて照射し、表面を清浄にするとともに、凹凸を形成する。凹凸を形成するのはプラズモンの励起効率を上げるのに役立つ。同様にして作製したアルミニウム付きポリマー半球レンズを重ね合わせて真空中で常温接合を行うとアルミニウム同士が接合する。金属薄膜は表面を清浄にして、一定圧力をかけると常温においても接合が起こることが知られている(特開平10−305488号公報)。
ポリマーレンズ30の両側からレーザ光34を照射すると、プラズモン35が生成され、この場合ほぼ40nm厚のアルミニウム33表面をプラズモンが走行する。プラズモンの走行方向はレーザビームのアルミニウム33(金属薄膜)への射影方向である。これにより、図のようにアルミニウム33の端面に近接場光36が発生する。
【0026】
(実施例2)
図4は本発明に係る近接場光発生装置の他の実施例を示す図である。本実施例では、図示のように、半径10μmのポリマーレンズ40を2分割し、半球41、42を作製し、分割面にアルミニウム43をスパッター法で30nm着膜する。この分割した2つの半球41、42のアルミニウム43上にアルゴンイオンを真空中にて照射し、表面を清浄にするとともに、凹凸を形成する。つぎにこの面にインクジェットプリンターヘッドを用いて1ピコリットルほどのポリイミド44を1滴塗布する。これと先に作っておいたアルミニウム付き半球41、42を重ね合わせ、120℃で低温加熱して、2種のヘッドを合わせ形成する。この場合は金属薄膜間、すなわちアルミニウム43間に薄いポリイミド膜44が挟まれる。ポリイミド44の厚さは10nmほどになる。
ポリマーレンズ40の左右両側からレーザ光45を照射すると、プラズモン46がレンズと金属の界面にはじめ生成され、このモードがポリイミド金属界面に伝播する。両側からやってきたプラズモンは互いにポリイミド膜を介して相互作用し、導波路外へ伝播する。これにより、図のようにポリイミド44の端面に近接場光47が発生する。
【0027】
(実施例3)
図5は本発明に係る近接場光発生装置の作製方法の一例を示す図である。本例では、図示のように、ガラス基板51上にクロム52を30nm蒸着し、その上に窒化シリコン(SiNx)膜53を50nm着膜する。つぎにドライエッチングにより窒化シリコン53に60nmの微小円形開口54を設ける。開口54の形成方法にはいくつかある。たとえばFIB(Focused Ion Beam)を用いて形成することが可能である。また近接場光を用いた近接場リソグラフィー(OSJNFO研究会資料p59、近接場光学研究グループ、第10回研究討論会、予稿集、2001年6月)の手法により形成が可能である。
開口54を形成したあとアルミニウム膜55を80nm堆積する。スパッタを用いて着膜するとアルミニウム55は微小円形開口にもかかわらず、幾分回り込み、20nmほどの厚さで開口54をカバーする。
【0028】
つぎに別のガラス基板56を用意し、その基板にアルミニウム57を200nm着膜し、パターンを形成したのち、前記常温接合技術をもちいて、真空中にてはじめの基板51上に圧力を印加して接合させる。
最後にクロム52の電極に高温高湿度環境で通電するとクロムが溶出する。その時、圧接したガラス基板51を引き剥がすことが出来、これにより40μmの開口が形成される。クロム層52は犠牲層と同様のはたらきをする。
開口部54に堆積されたアルミニウム55の表面には酸化アルミニウム(Al2O3)を形成しておく。この厚さは10nmほどである。したがって微小開口54におけるアルミ層は酸化アルミニウムと金属アルミニウムの2層構造である。これにより、プラズモンの励起効率が向上する。
開口部54のアルミニウム(Al)は完全には貫通せず、Alが連結し、残る場合があるが、その場合はプラズモンは局在表面プラズモンとなり、そこでの電界がさらに増強されることがある。
【0029】
図6は本発明に係る近接場光発生装置の他の実施例を示す図である。本装置は、図5の方法で作製されたものであり、窒化シリコン(SiNx)61の開口62に金属アルミニウムと酸化アルミニウム(Al+Al2O3)の膜63が形成されており、その上に別のアルミニウム64およびガラス基板65が配置される。本装置の開口62にガラス上部よりフォーカスしたレーザビーム66をレーザ装置67より照射すると、開口部62にプラズモン68が発生する。プラズモン68が開口を通過する時、プラズモン68同士のカップリングが起こり、この微小開口を光がプラズモン68の形態をとって、通過し、開口の外部で電界が増強される。これにより、図のように開口62の下面に近接場光69が発生する。
【0030】
(実施例4)
図7は本発明に係る近接場光発生装置の作製に用いる構造体の一例を示す図である。本例では、(111)面が露出したGaP基板71を異方性エッチしてピラミッド状に形成する。そしてピラミッド表面に50nmのアルミニウム72をコートし、その上に酸化アルミニウム(Al2O3)73を形成しておく。ピラミッドの頂点付近は平らにしておいてもよい。
【0031】
図8は、本発明に係る近接場光発生装置の作製方法の他の例を示す図である。
本作製方法では、窒化シリコン81に図5に示した開口形成方法により40nmの開口82を形成し、アルミニウム83を50nm堆積する。このとき開口部分にもアルミニウムが回り込み20nmほど開口を被覆する。つぎに図7に示したGaP基板と開口を形成した基板(図示せず)を接合する。さらに、アルミニウムを20nm酸化を行い、アルミナ誘電体(Al2O3)84が全体を被覆して完成する。本作製方法のその他の点については図5に示した方法と同様である。
【0032】
図9は、本発明に係る近接場光発生装置の他の実施例を示す図である。本実施例は図8の方法で作製されたものである。本装置にGaP71の内側から半導体レーザ92からレーザビーム93を照射すると、GaP71とアルミニウム72の界面にプラズモン94が生成される。このプラズモン94がアルミニウム72と酸化アルミニウム73の界面を伝播して、窒化シリコンの開口部82のアルミニウム83まで進行し、開口82の外部へと電磁界が伝播する。これにより、図のように開口82の下面に近接場光95が発生する。
【0033】
本発明に係る近接場光発生装置は、効率よく生成された表面プラズモンを用いて非常に微小な領域に近接場光を閉じ込めることができるので、例えば近接場光記録ヘッドや微小パターンの加工装置等に利用することができる。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば表面プラズモンを有効に生成し伝播できるので、近接場記録光の発生効率を向上させることが出来るとともに、より微小な領域に光を閉じ込めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本概念を示す図である。
【図2】本発明に係る近接場光発生装置の実施形態の一例を示す図である。
【図3】本発明に係る近接場光発生装置の一実施例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図4】本発明に係る近接場光発生装置の他の実施例を示す図である。
【図5】本発明に係る近接場光発生装置の作製方法の一例を示す図である。
【図6】本発明に係る近接場光発生装置の他の実施例を示す図である。
【図7】本発明に係る近接場光発生装置の作製に用いる構造体の一例を示す図である。
【図8】本発明に係る近接場光発生装置の作製方法の他の例を示す図である。
【図9】本発明に係る近接場光発生装置の他の実施例を示す図である。
【符号の説明】
20 レーザ光
21 金属
22 透明誘電体
23 レーザ装置
24 光学系
25 表面プラズモン
26 プラズモンまたはFanoモード
27 近接場光
【発明の属する技術分野】
本発明は、近接場光を発生する近接場光発生装置および発生方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光ディスクやハードディスクの記録容量は年々増大している。光ディスク分野では、青色レーザを用いる光記録方式で記録密度として30Gbpsi(bpsi:dit per square inch)ほどの値が実現されると予想されている。一方、ハードディスク分野では、GMRヘッドの採用で高密度化が大幅に進展し、さらに垂直記録方式や磁化安定化層の採用で100Gbpsiから300Gbpsi超が実現されると予想されている(日経エレクトロニクス、No.779、2000年9−25、p189)。
【0003】
しかし、その先の1Tbpsiを達成する技術はまだ存在しない。1Tbpsiを達成できる技術として研究されているもののひとつに近接場光を用いた記録方式がある。近接場光は通常の空間を伝播する光とは異なり、物質のごく近傍に拘束されて存在する電界である。この電界は光の周波数で振動しており、外部には伝播しないので光の波長というような大きさを持たない。この近接場光を用いることにより、光の周波数で振動する電界を波長以下の領域に局在させ、そのエネルギーを用いて記録することが出来る。したがって光の波長に依存しない微小領域においても記録が可能になる。そのため1Tbpsiも達成可能として近接場光記録が研究されている(OプラスE,Vol21,No3p279,1999)。
【0004】
近接場光ヘッドとしてはSIL(Solid Immersion Lens)を使ったものが知られている(特開2000−195074公報)。一般にレーザビームのスポットサイズは、d=1.22λ/NAで表される。λは光の波長、NAは開口数である。SILは高屈折率のレンズ内では光の波長が媒質の屈折率に反比例して短くなることを利用している。SILではNAが1.5ほどに達し、その場合波長以下の記録が実現する。
【0005】
さらに、このように集光されたビームを、ピンホールを開けた金属膜に照射し、波長以下のピンホールから染み出してくる近接場光を利用する方式も提案されている。しかしこの方法では利用できる近接場光の強度が小さくなりすぎるという問題があった。そこで開口の中に微小散乱体を設ける方法(第62回応用物理学会予稿集13a−ZQ−10)やピラミッド型ヘッドに金属をコートして表面プラズモンを励起し電界の高密度化をはかる方式が検討されている(第62回応用物理学会予稿集13a−ZQ−11)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のような方法においても電界強度が十分でないという問題があった。また微小領域に近接場光を効率よく閉じ込めるには限界があった。
従って本発明の目的は、近接場光を効率よく発生させる近接場光発生装置および発生方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、薄膜または細線形状の金属と、前記金属の両側に配置された誘電体と、誘電体を介して前記金属の両側に照射されるレーザ光により金属と誘電体の界面に表面プラズモンを生成する表面プラズモン生成部と、表面プラズモンを前記金属に沿って伝播することにより近接場光を発生する伝播部とを備えた近接場光発生装置により達成される。ここで前記金属は薄膜または細線形状の誘電体を挟んでまたは埋め込んで構成することができる。
【0008】
また、本発明に係る近接場光発生装置は、薄膜または細線形状の誘電体と、前記誘電体を挟みまたは埋め込んだ薄膜または細線形状の金属と、前記金属の両側に配置された誘電体と、誘電体を介して前記金属の両側に照射されるレーザ光により金属と誘電体の界面に表面プラズモンを生成する表面プラズモン生成部と、表面プラズモンを前記金属に挟まれまたは埋め込まれた誘電体に沿って伝播することにより近接場光を発生する伝播部とを備えて構成される。
【0009】
また、本発明に係る近接場光発生装置は、微小開口を有する誘電体と、少なくとも微小開口の側壁に形成された金属薄膜と、微小開口近傍に照射されるレーザ光により金属薄膜と誘電体の界面に表面プラズモンを生成する表面プラズモン生成部と、表面プラズモンを金属薄膜に沿って伝播させることにより近接場光を発生する伝播部とを備えて構成される。
【0010】
また、本発明に係る近接場光発生装置は、微小開口を有する誘電体と、少なくとも微小開口の側壁に形成された金属薄膜と、微小開口の上部に配置された金属を着膜した半導体とを備え、半導体に照射されるレーザ光により半導体に着膜された金属部分に表面プラズモンを生成する表面プラズモン生成部と、表面プラズモンを微小開口の側壁に形成された金属薄膜に沿って伝播することにより近接場光を発生する伝播部とを備えて構成される。ここで前記半導体はピラミッド形状を有し、ピラミッド形状の頂点側が微小開口側に配置することができる。
【0011】
さらに、本発明に係る近接場光発生方法は、薄膜または細線形状の金属の両側に配置された誘電体を介して前記金属の両側にレーザ光を照射することにより、金属と誘電体の界面に表面プラズモンを生成し、生成した表面プラズモンを前記金属に沿って伝播することにより近接場光を発生するものである。
【0012】
また、本発明に係る近接場光発生方法は、薄膜または細線形状の誘電体を挟みまたは埋め込んだ薄膜または細線形状の金属の両側に配置された誘電体を介して前記金属の両側にレーザ光を照射することにより、金属と誘電体の界面に表面プラズモンを生成し、生成した表面プラズモンを前記金属に挟まれまたは埋め込まれた誘電体に沿って伝播することにより近接場光を発生するものである。
【0013】
また、本発明に係る近接場光発生方法は、微小開口の少なくとも側壁に金属薄膜を形成した誘電体の微小開口近傍にレーザ光を照射することにより、金属薄膜と誘電体の界面に表面プラズモンを生成し、生成した表面プラズモンを金属薄膜に沿って伝播することにより近接場光を発生するものである。
【0014】
また、本発明に係る近接場光発生方法は、微小開口の少なくとも側壁に金属薄膜を形成した誘電体の微小開口上部に金属を着膜した半導体を配置し、半導体にレーザ光を照射することにより、半導体に着膜された金属部分に表面プラズモンを生成し、生成した表面プラズモンを微小開口の側壁に形成された金属薄膜に沿って伝播することにより近接場光を発生するものである。
さらに、前記表面プラズモンはFanoモードで伝播することができる。
本発明は、このように構成することにより近接場光を効率よく発生させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る近接場光発生装置の実施例について述べるが、その前に本発明の原理について説明する。
本発明では、光の微小開口を通過する効率を向上させるため、まず開口の近傍に表面プラズモンを発生させ、そのプラズモンを使って開口内を伝播させることで微小開口から光を取り出すことを考える。
レーザ光を誘電体を介して金属表面に照射すると、表面プラズモンが生成されることが知られている。表面プラズモンは誘電体と金属の界面を伝播するTM波であり、表面プラズモンの分散関係は、次式で与えられる。
【0016】
【数1】
【0017】
ここで、ωは光の角周波数、cは光速、εdは誘電体の誘電率、εmは金属の誘電率である。金属の場合、通常誘電率εmは負であり、負誘電体と呼ばれることもある。
この式より表面プラズモンが存在できる条件(kが虚数にならない条件)は
εm+εd<0
である。
この条件を満足するとき、表面プラズモンが存在できる。
【0018】
真空中に置かれた金属は光によって表面プラズモンを励起できない。励起のためには媒質中の光の波数と表面プラズモンの波数が一致しなければならないが、真空中の光では波数が一致しないからである。しかし誘電体と金属の界面では波数が一致する領域が存在し、プラズモンが励起できる。表面プラズモンはプリズムのある面に金属をコートし、全反射領域のある特定の角度においてレーザ光を照射すると励起できる。これはATR法として知られている。
【0019】
つぎに表面プラズモン同志の相互作用について述べる。いま金属薄膜を考える。金属薄膜の表裏2つの界面に表面プラズモンが生成されると、金属薄膜が十分に薄いとき、双方の表面に存在する表面プラズモンが互いに電場を通じて相互作用を行い、新たな伝播モードが存在することが知られている(J.J.BurkeandG.I.StegemanPhy.Rev.B33,p5186,1986)。
【0020】
このモードはFanoモードと呼ばれることもある。このモードはkベクトル(伝播ベクトル)が合理的に定義できるので金属界面に沿って伝播する新たなモードであることが知られている。金属膜厚が厚いときは、プラズモン間の相互作用が小さいため、新たなモードは起こらず、通常の表面プラズモンが独立に存在するだけであると考えられる。
この新たなモードは結合の種類に2種類有り、合成されたモードの電場分布は対称か、反対称性をもつ(偶奇性)。
【0021】
また金属薄膜の場合はいくらでも薄い膜厚に対して常に伝播する対称モードおよび反対称モードが存在する。したがってATR法等により別途発生させた表面プラズモンを非常に薄いナノメートル厚の金属薄膜に導いて、相互作用させ、伝播させればこれまで以上に微細な領域に近接場光を閉じ込めることが出来るので、その近接場光を用いて、例えば光記録が可能になる。
このモードに関してさらに別の例を説明する。2つの金属膜の間に非常に薄い誘電体を挟み、2つの金属膜界面にプラズモンを生成する場合を考える。表面プラズモンが誘電体と2つの金属界面に生成されると、誘電体を介して電磁相互作用が起こり、二つのプラズモンがカップルして、上記と同様な伝播モードがおこる。誘電体が厚い場合はプラズモンの相互作用は起こらず新たなモードは生成されない。
【0022】
この新たなモードにも電場の対称モードと反対称モードが存在するが、反対称モードは誘電体膜厚が薄くなると、カットオフが存在する。しかし、対称モードはカットオフが存在しないため、いくら薄い誘電体をもちいても伝播するモードが存在する。このため、非常に微小な領域にも近接場光を閉じ込めることが出来る(応用物理,第68巻,第6号,p673,1999年)。
一般には金属薄膜だけでなく、金属の針のような形状であってもFanoモードは存在し、いくらでも細い金属針の表面を伝播するプラズモンのモードが存在する。また、金属の微小細管の中に誘電体を埋め込んだ構造体であっても同様な伝播モードが存在し、近接場光を閉じ込めることができる。
【0023】
図1は、本発明の基本概念を示す図である。本発明では、表面プラズモン生成部1においてレーザ光を用いて表面プラズモンを効率よく生成し、この表面プラズモン生成部1よりも小さい微小導波部である伝播部2において表面プラズモンを伝播させ、これにより近接場光を発生させる。伝播部2は金属薄膜や金属細線でもよいし、また誘電体を金属薄膜で挟持したものでもよい。
Fanoモードを用いなくとも、生成された表面プラズモンを小さな領域に導波することで本発明は達成されるが、プラズモンの伝播損失がおこり、損失が大きい。これに対してFanoモードを用いると、表面プラズモンの場合より伝播距離が延びる可能性があり、それに伴って同一距離であれば低損失となる。したがって、これまでの表面プラズモンのみの励起よりもさらに小さな領域へ表面の伝播モードを閉じ込めることができる。これにより、例えばさらに小さな領域で光書き込みヘッドを構成することが出来る。
【0024】
図2は、本発明に係る近接場光発生装置の実施形態の一例を示す図である。図示のように、本例では、薄膜または細線形状の金属21と、金属21の両側に配設された透明誘電体22と、レーザ光20を放射する半導体レーザ等のレーザ装置23と、レーザ光20を透明誘電体22の両側から照射するための例えばプリズムやミラーを有する光学系24とを備える。図において、レーザ装置23から放射されたレーザ光20は、光学系24を介して、両側から透明誘電体22に照射される。これにより、金属21の両側に表面プラズモンが生成される。金属21の表裏2つの界面に表面プラズモン25が生成されると、金属21が十分に薄いまたは細いとき、双方の表面に存在する表面プラズモンが互いに電場を通じて相互作用を行い、プラズモンまたはFanoモード26の伝播が生じ、金属21および透明誘電体22の端面から近接場光27が発生する。
次に、本発明に係る近接場光発生装置の実施例について詳述する。
【0025】
(実施例1)
図3は本発明に係る近接場光発生装置の一実施例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。本実施例では、図示のように、半径10μmのポリマーレンズ30(またはガラスマイクロレンズやボールレンズでもよい)を2分割し、半球31、32を作製し、分割面にアルミニウム33をスパッター法で20nm着膜する。この分割した球のアルミニウム33上にアルゴンイオンを真空中にて照射し、表面を清浄にするとともに、凹凸を形成する。凹凸を形成するのはプラズモンの励起効率を上げるのに役立つ。同様にして作製したアルミニウム付きポリマー半球レンズを重ね合わせて真空中で常温接合を行うとアルミニウム同士が接合する。金属薄膜は表面を清浄にして、一定圧力をかけると常温においても接合が起こることが知られている(特開平10−305488号公報)。
ポリマーレンズ30の両側からレーザ光34を照射すると、プラズモン35が生成され、この場合ほぼ40nm厚のアルミニウム33表面をプラズモンが走行する。プラズモンの走行方向はレーザビームのアルミニウム33(金属薄膜)への射影方向である。これにより、図のようにアルミニウム33の端面に近接場光36が発生する。
【0026】
(実施例2)
図4は本発明に係る近接場光発生装置の他の実施例を示す図である。本実施例では、図示のように、半径10μmのポリマーレンズ40を2分割し、半球41、42を作製し、分割面にアルミニウム43をスパッター法で30nm着膜する。この分割した2つの半球41、42のアルミニウム43上にアルゴンイオンを真空中にて照射し、表面を清浄にするとともに、凹凸を形成する。つぎにこの面にインクジェットプリンターヘッドを用いて1ピコリットルほどのポリイミド44を1滴塗布する。これと先に作っておいたアルミニウム付き半球41、42を重ね合わせ、120℃で低温加熱して、2種のヘッドを合わせ形成する。この場合は金属薄膜間、すなわちアルミニウム43間に薄いポリイミド膜44が挟まれる。ポリイミド44の厚さは10nmほどになる。
ポリマーレンズ40の左右両側からレーザ光45を照射すると、プラズモン46がレンズと金属の界面にはじめ生成され、このモードがポリイミド金属界面に伝播する。両側からやってきたプラズモンは互いにポリイミド膜を介して相互作用し、導波路外へ伝播する。これにより、図のようにポリイミド44の端面に近接場光47が発生する。
【0027】
(実施例3)
図5は本発明に係る近接場光発生装置の作製方法の一例を示す図である。本例では、図示のように、ガラス基板51上にクロム52を30nm蒸着し、その上に窒化シリコン(SiNx)膜53を50nm着膜する。つぎにドライエッチングにより窒化シリコン53に60nmの微小円形開口54を設ける。開口54の形成方法にはいくつかある。たとえばFIB(Focused Ion Beam)を用いて形成することが可能である。また近接場光を用いた近接場リソグラフィー(OSJNFO研究会資料p59、近接場光学研究グループ、第10回研究討論会、予稿集、2001年6月)の手法により形成が可能である。
開口54を形成したあとアルミニウム膜55を80nm堆積する。スパッタを用いて着膜するとアルミニウム55は微小円形開口にもかかわらず、幾分回り込み、20nmほどの厚さで開口54をカバーする。
【0028】
つぎに別のガラス基板56を用意し、その基板にアルミニウム57を200nm着膜し、パターンを形成したのち、前記常温接合技術をもちいて、真空中にてはじめの基板51上に圧力を印加して接合させる。
最後にクロム52の電極に高温高湿度環境で通電するとクロムが溶出する。その時、圧接したガラス基板51を引き剥がすことが出来、これにより40μmの開口が形成される。クロム層52は犠牲層と同様のはたらきをする。
開口部54に堆積されたアルミニウム55の表面には酸化アルミニウム(Al2O3)を形成しておく。この厚さは10nmほどである。したがって微小開口54におけるアルミ層は酸化アルミニウムと金属アルミニウムの2層構造である。これにより、プラズモンの励起効率が向上する。
開口部54のアルミニウム(Al)は完全には貫通せず、Alが連結し、残る場合があるが、その場合はプラズモンは局在表面プラズモンとなり、そこでの電界がさらに増強されることがある。
【0029】
図6は本発明に係る近接場光発生装置の他の実施例を示す図である。本装置は、図5の方法で作製されたものであり、窒化シリコン(SiNx)61の開口62に金属アルミニウムと酸化アルミニウム(Al+Al2O3)の膜63が形成されており、その上に別のアルミニウム64およびガラス基板65が配置される。本装置の開口62にガラス上部よりフォーカスしたレーザビーム66をレーザ装置67より照射すると、開口部62にプラズモン68が発生する。プラズモン68が開口を通過する時、プラズモン68同士のカップリングが起こり、この微小開口を光がプラズモン68の形態をとって、通過し、開口の外部で電界が増強される。これにより、図のように開口62の下面に近接場光69が発生する。
【0030】
(実施例4)
図7は本発明に係る近接場光発生装置の作製に用いる構造体の一例を示す図である。本例では、(111)面が露出したGaP基板71を異方性エッチしてピラミッド状に形成する。そしてピラミッド表面に50nmのアルミニウム72をコートし、その上に酸化アルミニウム(Al2O3)73を形成しておく。ピラミッドの頂点付近は平らにしておいてもよい。
【0031】
図8は、本発明に係る近接場光発生装置の作製方法の他の例を示す図である。
本作製方法では、窒化シリコン81に図5に示した開口形成方法により40nmの開口82を形成し、アルミニウム83を50nm堆積する。このとき開口部分にもアルミニウムが回り込み20nmほど開口を被覆する。つぎに図7に示したGaP基板と開口を形成した基板(図示せず)を接合する。さらに、アルミニウムを20nm酸化を行い、アルミナ誘電体(Al2O3)84が全体を被覆して完成する。本作製方法のその他の点については図5に示した方法と同様である。
【0032】
図9は、本発明に係る近接場光発生装置の他の実施例を示す図である。本実施例は図8の方法で作製されたものである。本装置にGaP71の内側から半導体レーザ92からレーザビーム93を照射すると、GaP71とアルミニウム72の界面にプラズモン94が生成される。このプラズモン94がアルミニウム72と酸化アルミニウム73の界面を伝播して、窒化シリコンの開口部82のアルミニウム83まで進行し、開口82の外部へと電磁界が伝播する。これにより、図のように開口82の下面に近接場光95が発生する。
【0033】
本発明に係る近接場光発生装置は、効率よく生成された表面プラズモンを用いて非常に微小な領域に近接場光を閉じ込めることができるので、例えば近接場光記録ヘッドや微小パターンの加工装置等に利用することができる。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば表面プラズモンを有効に生成し伝播できるので、近接場記録光の発生効率を向上させることが出来るとともに、より微小な領域に光を閉じ込めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本概念を示す図である。
【図2】本発明に係る近接場光発生装置の実施形態の一例を示す図である。
【図3】本発明に係る近接場光発生装置の一実施例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図4】本発明に係る近接場光発生装置の他の実施例を示す図である。
【図5】本発明に係る近接場光発生装置の作製方法の一例を示す図である。
【図6】本発明に係る近接場光発生装置の他の実施例を示す図である。
【図7】本発明に係る近接場光発生装置の作製に用いる構造体の一例を示す図である。
【図8】本発明に係る近接場光発生装置の作製方法の他の例を示す図である。
【図9】本発明に係る近接場光発生装置の他の実施例を示す図である。
【符号の説明】
20 レーザ光
21 金属
22 透明誘電体
23 レーザ装置
24 光学系
25 表面プラズモン
26 プラズモンまたはFanoモード
27 近接場光
Claims (11)
- 薄膜または細線形状の金属と、前記金属の両側に配置された誘電体と、誘電体を介して前記金属の両側に照射されるレーザ光により金属と誘電体の界面に表面プラズモンを生成する表面プラズモン生成部と、表面プラズモンを前記金属に沿って伝播することにより近接場光を発生する伝播部とを備えたことを特徴とする近接場光発生装置。
- 前記金属が薄膜または細線形状の誘電体を挟んでまたは埋め込んで構成されていることを特徴とする請求項1記載の近接場光発生装置。
- 薄膜または細線形状の誘電体と、前記誘電体を挟みまたは埋め込んだ薄膜または細線形状の金属と、前記金属の両側に配置された誘電体と、誘電体を介して前記金属の両側に照射されるレーザ光により金属と誘電体の界面に表面プラズモンを生成する表面プラズモン生成部と、表面プラズモンを前記金属に挟まれまたは埋め込まれた誘電体に沿って伝播することにより近接場光を発生する伝播部とを備えたことを特徴とする近接場光発生装置。
- 微小開口を有する誘電体と、少なくとも微小開口の側壁に形成された金属薄膜と、微小開口近傍に照射されるレーザ光により金属薄膜と誘電体の界面に表面プラズモンを生成する表面プラズモン生成部と、表面プラズモンを金属薄膜に沿って伝播することにより近接場光を発生する伝播部とを備えたことを特徴とする近接場光発生装置。
- 微小開口を有する誘電体と、少なくとも微小開口の側壁に形成された金属薄膜と、微小開口の上部に配置された金属を着膜した半導体とを備え、半導体に照射されるレーザ光により半導体に着膜された金属部分に表面プラズモンを生成する表面プラズモン生成部と、表面プラズモンを微小開口の側壁に形成された金属薄膜に沿って伝播することにより近接場光を発生する伝播部とを備えたことを特徴とする近接場光発生装置。
- 半導体がピラミッド形状を有し、ピラミッド形状の頂点側が微小開口側に配置されることを特徴とする請求項5記載の近接場光発生装置。
- 薄膜または細線形状の金属の両側に配置された誘電体を介して前記金属の両側にレーザ光を照射することにより、金属と誘電体の界面に表面プラズモンを生成し、生成した表面プラズモンを前記金属に沿って伝播することにより近接場光を発生することを特徴とする近接場光発生方法。
- 薄膜または細線形状の誘電体を挟みまたは埋め込んだ薄膜または細線形状の金属の両側に配置された誘電体を介して前記金属の両側にレーザ光を照射することにより、金属と誘電体の界面に表面プラズモンを生成し、生成した表面プラズモンを前記金属に挟まれまたは埋め込まれた誘電体に沿って伝播することにより近接場光を発生することを特徴とする近接場光発生方法。
- 微小開口の少なくとも側壁に金属薄膜を形成した誘電体の微小開口近傍にレーザ光を照射することにより、金属薄膜と誘電体の界面に表面プラズモンを生成し、生成した表面プラズモンを金属薄膜に沿って伝播することにより近接場光を発生することを特徴とする近接場光発生方法。
- 微小開口の少なくとも側壁に金属薄膜を形成した誘電体の微小開口上部に金属を着膜した半導体を配置し、半導体にレーザ光を照射することにより、半導体に着膜された金属部分に表面プラズモンを生成し、生成した表面プラズモンを微小開口の側壁に形成された金属薄膜に沿って伝播することにより近接場光を発生することを特徴とする近接場光発生方法。
- 表面プラズモンがFanoモードで伝播することを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の近接場光発生方法。
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