JP2004019834A - トルク変動吸収装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】トルクリミッタの薄型化に有利で、構成部品の設計の自由度を確保でき、必要な摩擦係数を確保するのに有利なトルク変動吸収装置を提供する。
【解決手段】トルク変動吸収装置1は、第1回転軸11に連結され半径方向外方に延設された第1部材2と、第2回転軸12に連結され半径方向外方に延設された第2部材3と、第1回転軸11のトルクを第2回転軸12へ伝達させるダンパ部4と、トルクリミッタ5とをもつ。トルクリミッタ5は、第1回転軸11との第2回転軸12との間のトルク変動が設定値以内のとき第1回転軸11のトルクを第2回転軸12に伝達させ、且つ、トルク変動が設定値を越えるとき摺動滑りを発生させて第1回転軸11との第2回転軸12との間のトルク伝達の遮断性を高める。トルクリミッタ5のリミッタ摩擦係合部51A,51Bは、硬質粒子と硬質粒子を結合するバインダとを主要成分とする膜状に成膜されている。
【選択図】図1
【解決手段】トルク変動吸収装置1は、第1回転軸11に連結され半径方向外方に延設された第1部材2と、第2回転軸12に連結され半径方向外方に延設された第2部材3と、第1回転軸11のトルクを第2回転軸12へ伝達させるダンパ部4と、トルクリミッタ5とをもつ。トルクリミッタ5は、第1回転軸11との第2回転軸12との間のトルク変動が設定値以内のとき第1回転軸11のトルクを第2回転軸12に伝達させ、且つ、トルク変動が設定値を越えるとき摺動滑りを発生させて第1回転軸11との第2回転軸12との間のトルク伝達の遮断性を高める。トルクリミッタ5のリミッタ摩擦係合部51A,51Bは、硬質粒子と硬質粒子を結合するバインダとを主要成分とする膜状に成膜されている。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、第1回転軸と第2回転軸との間に設けられ第1回転軸から第2回転軸へのトルクを伝達させると共にトルク変動が発生したときトルク変動を吸収するトルク変動吸収装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に装備されるハイブリッド駆動装置に使用されるトルク変動吸収装置を例にとって従来技術について説明する。ハイブリッド駆動装置は、エンジンと電動モータとをそれぞれ駆動源としている。複数の駆動源を有するハイブリッド駆動装置では、動力源が1個しかない駆動装置に比較して、トルク変動が発生し易く、このため複数の駆動源であるエンジンと電動モータとの間のトルク変動を抑えるダンパ機能を発揮するダンパ部をもつトルク変動吸収装置が用いられている。
【0003】
即ち、トルク変動吸収装置は、エンジン側の第1回転軸に連結され半径方向外方に延設された第1部材と、電動モータ側の第2回転軸に連結され半径方向外方に延設された第2部材と、第1部材と第2部材との間に介在すると共に第1回転軸のトルクをダンパ機能を介して第2回転軸へ伝達させるダンパ部とを備えている。ダンパ部のダンパ機能により、エンジンと電動モータとの間のトルク変動を抑制している。
【0004】
更に上記したハイブリッド駆動装置では、トルク変動が設定値を越えるとき第1回転軸及び第2回転軸間のトルク伝達を遮断するリミッタ機能を、ダンパ機能と共に併有するトルク変動吸収装置が開発されている(特開2002−13547)。このトルク変動吸収装置は、ダンパ部の他に、第1部材と第2部材との間に介在するトルクリミッタを備えている。第1回転軸及び第2回転軸間のトルク変動が設定値以内のとき、トルクリミッタは第1部材に摩擦係合しており、第1回転軸及び第2回転軸間のトルク伝達を良好に行う。
【0005】
またトルク変動が設定値を越えるときもある。この場合には、トルクリミッタは、第1部材に対して滑ることにより、第1回転軸及び第2回転軸間のトルク伝達を遮断し、トルク変動に起因する共振や破損等の発生を抑えている。
【0006】
上記したトルクリミッタは、第1部材に対向する金属製のリミッタプレートと、第1部材に摩擦接触するようにリミッタプレートの表出面に配設されたリミッタ摩擦係合部とを備えている。従来技術に係るリミッタ摩擦係合部は、ゴム、樹脂、摩擦調整剤を基材とすると共に成形型により型成形で形成された厚板状の摩擦材料とで構成されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記したトルクリミッタの主要素であるリミッタ摩擦係合部は、第1部材に摩擦接触するようにリミッタプレートの表出面に配設されたゴム、樹脂、摩擦調整剤を基材とすると共に、成形型により型成形された厚板状の摩擦材料で形成されている。このように成形型により型成形された厚板状の摩擦材料で形成されたリミッタ摩擦係合部を用いているため、軸長方向におけるトルクリミッタのサイズが大きくなりがちであった。
【0008】
このように軸長方向におけるトルクリミッタのサイズが大きくなると、トルク変動吸収装置の内部の搭載スペースが制約されるため、トルク変動吸収装置の構成部品の設計の自由度が制約される不具合があった。例えば、フライホィール機能を発揮する質量体であるマス部をトルク変動吸収装置に設ける場合には、マス部の形状や大きさを選択する自由度が制約される不具合があった。
【0009】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、軸長方向におけるトルクリミッタの薄型化に有利で、トルク変動吸収装置の構成部品の設計の自由度を確保することができ、しかも必要な摩擦係数を確保するのに有利なトルク変動吸収装置を提供することを課題とするにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者はトルクリミッタを有するトルク変動吸収装置について開発を進めている。そしてトルク変動吸収装置においては、通常使用状態ではトルク変動が設定値以内であり、相手材に摩擦係合するトルクリミッタのリミッタ摩擦係合部の摺動滑り現象は抑えられていること、相手材に摩擦係合しているトルクリミッタのリミッタ摩擦係合部の摺動滑り現象が発生するのは、トルク変動が設定値を越えたときであり、発生頻度は極めて少ないことに着目した。
【0011】
そして本発明者は、相手材に摩擦係合するトルクリミッタのリミッタ摩擦係合部を膜状に成膜すると共に、膜内に硬質粒子を配合すれば、軸長方向におけるトルクリミッタのサイズの薄型化に有利であり、しかもトルクリミッタとして必要な摩擦係数を確保するのに有利であることを知見し、試験で確認し、本発明に係るトルク変動吸収装置を完成した。
【0012】
即ち、本発明に係るトルク変動吸収装置は、第1回転軸と第2回転軸との間に設けられ第1回転軸から第2回転軸へのトルクを伝達させると共にトルク変動が発生したときトルク変動を吸収するものであり、
第1回転軸に連結され半径方向外方に延設された第1部材と、
第2回転軸に連結され半径方向外方に延設された第2部材と、
第1部材と第2部材との間に介在すると共に第1回転軸のトルクを第2回転軸へ伝達させるダンパ部と、
第1部材と第2部材との間に介在し、第1回転軸との第2回転軸との間のトルク変動が設定値以内のとき摩擦係合して第1回転軸のトルクを第2回転軸に伝達させ、且つ、トルク変動が設定値を越えるとき摺動滑りを発生させて第1回転軸との第2回転軸との間のトルク伝達の遮断性を高めるリミッタ摩擦係合部を有するトルクリミッタとを具備するトルク変動吸収装置において、トルクリミッタのリミッタ摩擦係合部は、硬質粒子と硬質粒子を結合するバインダとを主要成分とする膜状に成膜されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係るトルク変動吸収装置によれば、トルクリミッタのリミッタ摩擦係合部は、トルク変動が設定値以内のとき第1部材及び第2部材の相対回転変位を抑えるように摩擦係合し、第1回転軸と第2回転軸との間のトルク伝達を良好に行うことができる。第1回転軸と第2回転軸との間のトルク変動が設定値を越えるときには、トルクリミッタのリミッタ摩擦係合部は摺動滑りを発生させる。摺動滑りにより、第1回転軸と第2回転軸との間のトルク伝達の遮断性が高まる。
【0014】
上記したようにトルクリミッタのリミッタ摩擦係合部は膜状に成膜されているため、肉厚が薄い。従って、第1回転軸の軸長方向におけるトルクリミッタの薄型化に有利である。更に硬質粒子が主要成分として含まれているため、トルクリミッタとして必要な摩擦係数が確保される。
【0015】
【発明の実施形態】
本発明に係るトルク変動吸収装置によれば、好ましくは、トルクリミッタは、第1部材及び第2部材のうちの少なくとも一方と対向するリミッタプレートと、第1部材及び第2部材のうちの少なくとも一方と摩擦接触するようにリミッタプレートの表出面に配設され硬質粒子と硬質粒子を結合するバインダとを主要成分とする膜状に成膜されたリミッタ摩擦係合部とを備えている形態を採用することができる。この場合、一般的には、リミッタ摩擦係合部はドライ摩擦係合状態に維持され、潤滑油等に浸漬されているウェット摩擦係合状態ではない。
【0016】
リミッタ摩擦係合部の厚みが過剰に薄いと、硬質粒子を保持する保持力が低下する。リミッタ摩擦係合部の厚みが過剰に厚いと、密着性が低下し、剥離し易くなる。上記した事情を考慮し、リミッタ摩擦係合部の平均厚みは5〜1500μmに設定されている形態を採用することができる。この場合、リミッタ摩擦係合部の平均厚みとしては5〜1000μm、5〜800μm、10〜500μm、10〜300μm、あるいは10〜100μmに設定されている形態を採用することができる。リミッタ摩擦係合部の密着性、リミッタ摩擦係合部の摩擦係数の安定化を考慮すると、リミッタ摩擦係合部の平均厚みとしては5〜500μm、10〜200μm、10〜100μm、あるいは10〜50μmを採用することができる。
【0017】
本発明に係るトルク変動吸収装置によれば、リミッタ摩擦係合部に含まれている硬質粒子は非球形状である形態を採用することができる。硬質粒子が非球形状であれば、相手材に対する引っかかり係合性が向上し。リミッタ摩擦係合部の摩擦係数を確保するのに貢献できる。非球形状とは、硬質粒子の断面において硬質粒子の中心を通る仮想線に対して左右非対称形状であることを意味する。硬質粒子が非球形状であれば、リミッタ摩擦係合部の摩擦係数の確保に貢献できる。非球形状の硬質粒子としては、機械的に破砕した破砕形状、角片形状等の異形状とすることができる。硬質粒子は一般的には第1部材及び第2部材の平均硬度よりも高い平均硬度をもつ粒子である。
【0018】
硬質粒子の材質としてはセラミックスを採用することができる。セラミックスとして酸化物系、窒化物系、ホウ化物系等を採用することができる。具体的には、炭化珪素、アルミナ、シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素(立方晶窒化ホウ素)、ジルコニア、ムライト、ダイヤモンド等を例示できる。硬質粒子としては場合によっては金属間化合物、硬質金属でも良い。金属間化合物としてはフェロタングステン、フェロモリブデン、フェロバナジウム等の1種または2種以上を採用することができる。セラミックス、金属間化合物、硬質金属のうちの1種または2種以上を硬質粒子として採用することができる。
【0019】
硬質粒子の平均粒径は、リミッタ摩擦係合部の平均厚み、要請される摩擦特性等によって変更できる。このように硬質粒子の平均粒径はリミッタ摩擦係合部の厚みによっても相違するものの、一般的には1〜100μm、2〜50μm、2〜20μm、2〜10μmとすることができる。硬質粒子の平均粒径はリミッタ摩擦係合部の平均厚み以下とすることが好ましい。硬質粒子の平均粒径が過剰に大きいと、相手攻撃性の増加、硬質粒子の分散性の低下、硬質粒子の脱落を誘発し、更に摩擦係数の安定化に不利となり、リミッタ摩擦係合部の耐久性が低下する。硬質粒子の平均粒径が過剰に小さいと、硬質粒子の添加効果が低減し、良好なる摩擦係数が得られない。
【0020】
バインダとしては有機バインダが好ましく、熱硬化性樹脂を例示できる。具体的には、耐摩耗性に優れるポリアミドイミド、ポリイミド、エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、ウレタン、アミノ、アクリル、シリコーン、ポリエステル等を例示でき、これらの1種または2種以上を採用することができる。
【0021】
リミッタ摩擦係合部は、硬質粒子及びバインダの他に固体潤滑剤を主要成分とすることができる。固体潤滑剤としては、黒鉛、二硫化モリブデン、フッ素樹脂等のうちの1種または2種以上を採用することができる。フッ素樹脂としてはPTFE、PFA,FEP,ETFE等の1種または2種以上を採用することができる。
【0022】
配合割合としては、リミッタ摩擦係合部を構成する硬質粒子、バインダ及び固体潤滑剤の合計量を100%としたとき、例えば、重量比で、硬質粒子は9〜75%、殊に25〜50%にでき、バインダは14〜91%、殊に50〜70%にでき、固体潤滑剤は0〜75%、殊に0〜25%、また0.1〜75%、殊に0.1〜25%にできる。但し、配合割合はこれに限定されるものではない。
【0023】
トルク変動吸収装置の用途にもよるが、重量部基準としたとき、バインダ100重量部に対して、硬質粒子は例えば10〜300重量部配合することができ、固体潤滑剤は例えば0〜300重量部または1〜300重量部配合することができる。
【0024】
硬質粒子の割合が過剰に少ないと、摩擦係数が低くなり、良好な摩擦係数が得られない。硬質粒子の割合が過剰に多いと、摩擦係数が高くなりすぎ、硬質粒子の脱落も増加する。固体潤滑剤の割合が過剰に多いと、摩擦係数が低くなりすぎ、硬質粒子の割合が相対的に低下する。なお、固体潤滑剤は必要に応じて配合されるものであり、省くこともできる。
【0025】
本発明に係るリミッタ摩擦係合部の摩擦係数としては、初期なじみ運転の場合を除けば、0.3〜0.7の範囲、あるいは0.3〜0.6の範囲とすることができる。
【0026】
本発明に係るトルク変動吸収装置によれば、好ましくは、リミッタ摩擦係合部は、硬質粒子と固体潤滑剤とバインダと分散媒(溶媒も含む)とを主要成分とする液状物を用い、液状物をリミッタプレート等の対象物に塗布して塗布膜を形成し、塗布膜を固化させることにより成膜されている形態を採用することができる。塗布膜の固化に先立ち、乾燥処理を行うことが好ましい。上記した液状物を塗布固化してリミッタ摩擦係合部を成膜すれば、リミッタ摩擦係合部の薄肉化に有利であり、薄い膜状のリミッタ摩擦係合部を形成することができる。
【0027】
塗布としては、液状物をスプレーで塗布するスプレー塗布、液状物を刷毛で塗布する刷毛塗り塗布、液状物に浸漬した後に液状物から取り出す浸漬塗布等を採用することができる。塗布膜の肉厚の均一化等を考慮すると、スプレー塗布が好ましい。このようにリミッタ摩擦係合部を液状物の塗布で成膜すれば、リミッタ摩擦係合部となる摩擦材料を成形型で熱硬化させる必要がなくなり、高価な成形型を省略でき、工程の簡素化を図り得、従ってリミッタ摩擦係合部の製造コストの低廉化を図り得る。
【0028】
上記した液状物に係る分散媒としては、水、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、n−メチル−2−ピロリドン(NMP)、n−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)等の1種または2種以上を採用することができる。
【0029】
本発明に係るトルク変動吸収装置によれば、エンジン及び電動モータを搭載したハイブリッド駆動装置に用いられ、第1回転軸はエンジン及び電動モータのうちの一方につながると共に、第2回転軸はエンジン及び電動モータのうちの他方につながる形態を例示することができる。エンジン及び電動モータを搭載したハイブリッド駆動装置によれば、トルク変動が発生し易いため、本発明に係るトルク変動吸収装置は有効である。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を具体化した実施例について図1〜図4を参照して説明する。図1は断面図であり、図2のA−A線に沿った矢視図である。図2は側面図である。図2においてはフライホィール部材2のマス部22の外周部分は省略されている。図1に示すように、本実施例に係るトルク変動吸収装置1は、互いに対向するように同軸的に配置された第1回転軸11と第2回転軸12との間に設けられており、第1回転軸11から第2回転軸12へのトルクを伝達させると共にトルク変動が発生したときトルク変動を抑制するものである。トルク変動吸収装置1は、第1回転軸11に連結された第1部材としてのフライホィール部材2と、第2回転軸12に連結された第2部材としてのハブ部材3と、フライホィール部材2とバブ部材3との間に介在すると共に第1回転軸11のトルクを第2回転軸12へ伝達させるダンパ部4(4A,4B)と、過剰なトルク変動が発生したときに摺動滑りを発生させて第1回転軸11から第2回転軸12へのトルク伝達を遮断するトルクリミッタ5とを備えている。
【0031】
フライホィール部材2は円盤状をなしており、第1回転軸11のうち第2回転軸12と対向する軸端部11eに取付ボルト13により第1回転軸11に同軸的に連結されている。フライホィール部材2は金属製(一般的には鉄鋳物またはアルミニウム鋳物)であり、第1回転軸11の半径方向に伸びる延設部21と、延設部21の外端部に設けられ慣性を得るための質量体として機能するリング状のマス部22とをもつ。マス部22は、軸長方向における軸端面22fからの肉厚がL1に設定された摩擦面22aと、軸端面22fからの肉厚がL2(L2>L1)に設定された取付軸端面22cとをもつ。摩擦面22a及び取付軸端面22cはそれぞれ第1回転軸11の中心線P1の回りに延設されている。
【0032】
ハブ部材3の中央部の取付孔30にはスプライン31が形成されている。第2回転軸12のうち第1回転軸11と対向する軸端部12eにハブ部材3のスプライン31を嵌合した状態で、ハブ部材3は第2回転軸12の軸端部12eに一体回転可能に保持されている。ハブ部材3は金属製であり、スプライン31を有するボス部32と、ボス部32から半径方向外方に延設された延設部33とをもつ。ハブ部材3のボス部32の外周側には中間プレート6が同軸的に配置されている。
【0033】
中間プレート6は、リング状の第1中間プレート61と、第1中間プレート61に対面するリング状の第2中間プレート62とで形成されている。第1中間プレート61及び第2中間プレート62は連結具としてのリベット63により互いに連結されており、一体回転する。第1中間プレート61及び第2中間プレート62はハブ部材3の延設部33に対して、第1回転軸11の中心線P1の回りで周方向に相対回転変位可能とされている。なお中間プレート6の内周側には、ハブ部材3と中間プレート6との間のヒステリシス特性を得るためのヒステリシス機構65が設けられている。
【0034】
中間プレート6及びハブ部材3の延設部33には、周方向に間隔を隔てて複数の窓開口40が形成されている。各窓開口40には複数のダンパ部4A,4Bがそれぞれ配置されている。ダンパ部4A,4Bはフライホィール部材2とハブ部材3との間に介在している。中心線P1回りの周方向におけるダンパ部4A,4Bの一端部は、ハブ部材3の延設部33に対面して係合している。中心線P1回りの周方向におけるダンパ部4A,4Bの他端部は、第1中間プレート61及び第2中間プレート62に対面して係合している。ダンパ部4A,4Bは、第1回転軸11のトルクを第2回転軸12へ自身の弾発力を介して伝達させるものであり、コイル状のバネで形成されており、第1回転軸11の中心線P1の回りの周方向において弾性収縮できるようにされている。
【0035】
図1に示すように、フライホィール部材2の取付軸端面22cには、取付具としての取付ボルト70をマス部22の螺子孔22mに螺着することにより、リング状の金属製の第1プレート71が同軸的に固定されている。そして第1プレート71には取付具としてのリベット74によりリング形状の金属製(一般的には炭素鋼)の第2プレート72が同軸的に保持されている。従って第2プレート72は、リベット74及び第1プレート71を介してフライホィール部材2のマス部22に一体的に連結されている。なおリベット74の部分74xはマス部22に対面している。第1プレート71と第2プレート72との間には、付勢部材としての皿バネ75が介装されている。皿バネ75は金属製であり中心線P1回りでリング形状をなしており、第2プレート72をフライホィール部材2に近づける方向(矢印X1方向)に付勢する付勢力をもつ。
【0036】
図1に示すように、トルクリミッタ5は、ダンパ部4A,4Bの外周側に位置するようにフライホィール部材2とハブ部材3との間に介在している。トルクリミッタ5は、フライホィール部材2のマス部22の摩擦面22aと対向するように第1中間プレート61にリベット63で一体的に固定された金属製(一般的には鋼系)のリミッタプレート50と、リミッタプレート50の表面及び裏面にそれぞれ配設された膜状のリミッタ摩擦係合部51(51A,51B)とを備えている。リミッタプレート50の平均厚みは必要に応じて適宜選択されるものの、例えば0.5〜3.0mm、殊に1.0〜2.0mm程度である。
【0037】
リミッタプレート50は第1回転軸11の中心線P1の回りで1周するようにリング形状をなしている。リミッタ摩擦係合部51も第1回転軸11の中心線P1の回りで1周するようにリング形状をなしている。図3に示すように、リミッタ摩擦係合部51は、フライホィール部材2のマス部22の摩擦面22a(相手材)に摩擦接触するように、リミッタプレート50の表面に薄い膜状に成膜された第1リミッタ摩擦係合部51Aと、フライホィール部材2のマス部22側に連結されている第2プレート72の摩擦面72a(相手材)に摩擦接触するようにリミッタプレート50の裏面に薄い膜状に成膜された第2リミッタ摩擦係合部51Bとで形成されている。
【0038】
第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bは、リミッタプレート50の表裏で互いに背向するように固着されている。第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bは、ダンパ部4A,4Bの外周側に配置されている。皿バネ75の矢印X1方向へ向かう付勢力により、第2プレート72はフライホィール部材2のマス部22に向けて加圧されている。このため、トルクリミッタ5の薄い膜状の第1リミッタ摩擦係合部51Aは、フライホィール部材2のマス部22の摩擦面22a(相手材)に常時圧着されていると共に、薄い膜状の第2リミッタ摩擦係合部51Bは第2プレート72の摩擦面72a(相手材)に常時圧着されている。
【0039】
本実施例によれば、第1リミッタ摩擦係合部51Aは、硬質粒子と硬質粒子を結合するバインダと固定潤滑剤とを主要成分とする薄い膜状に成膜されている。その厚みt(図4参照)はそれぞれ30〜400μm、特に30〜300μmとされている。第2リミッタ摩擦係合部51Bも同様であり、硬質粒子と硬質粒子を結合するバインダと固定潤滑剤とを主要成分とする薄い膜状に成膜されており、その厚みt(図4参照)は30〜400μm、特に30〜300μmとされている。なお第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bの厚みは、図1においては誇張されて図示されている。
【0040】
硬質粒子は炭化珪素(SiC)の微細な粒子されており、硬質粒子の粒径分布は正規分布に近い分布を示し、最大頻度領域が5〜9μm(特に約7μm)とされている。この粒度分布において、3〜10μmの粒径をもつ硬質粒子が全粒子数の99.6%を占める。硬質粒子は非球形状であり、具体的には機械的に細かく破砕した異形状の破砕粉末粒子を用いており、相手材に対する引っかかり性が確保され、相手材との間の必要な摩擦係数が確保されている。
【0041】
本実施例によれば、薄い膜状の第1リミッタ摩擦係合部51A、薄い膜状の第2リミッタ摩擦係合部51Bを製造するには、硬質粒子(破砕粉末粒子、炭化珪素、粒径3〜10μm、最頻度径7μm)と固体潤滑剤(二硫化モリブデン)とバインダ(ポリアミドイミド)と分散媒(NMP,キシレン)とを主要成分とする液状物を用いる。硬質粒子と固体潤滑剤とバインダとの合計量を100%としたとき、重量比で、硬質粒子は約30〜40%、固体潤滑剤は約10〜20%、バインダは約50〜60%に設定する。分散媒は成膜後に蒸散するため、配合割合としては実質的に無視することができる。
【0042】
そして組み付け前のリミッタプレート50の表面及び裏面に液状物をスプレー治具でスプレー塗布して塗布膜を成膜する工程、塗布膜を乾燥させる工程、塗布膜を200〜230℃にオーブンにより30〜60分間加熱して固化させる工程とを順に実施することにより、薄い膜状に成膜されている。なお加熱温度、加熱時間はこれに限定されるものではない。
【0043】
本実施例によれば、薄い膜状の第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bは、トルクリミッタ5として必要な摩擦係数を発揮する。このため使用時に、エンジン等の第1駆動源が駆動すると、第1駆動源に連結された第1回転軸11がこれの中心線P1の回りで回転駆動し、フライホィール部材2が連動して同方向に回転する。通常使用状態では、第1回転軸11と第2回転軸12との間におけるトルク変動が設定値以内である。このように第1回転軸11と第2回転軸12との間におけるトルク変動が設定値以内のときには、トルクリミッタ5の第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bを介して中間プレート6にトルクが伝達され、ひいてはダンパ部4A,4Bを介してハブ部材3に伝達され、第2回転軸12がフライホィール部材2及びハブ部材3と共に一体回転する。即ち、第1回転軸11と第2回転軸12との間におけるトルク変動が設定値以内のときには、前述したようにトルクリミッタ5の薄い膜状の第1リミッタ摩擦係合部51Aは、フライホィール部材2のマス部22の摩擦面22a(相手材)に摩擦係合すると共に、薄い膜状の第2リミッタ摩擦係合部51Bは第2プレート72の摩擦面72a(相手材)に摩擦係合する。これによりトルクリミッタ5を構成する薄い膜状の第1リミッタ摩擦係合部51A、薄い膜状の第2リミッタ摩擦係合部51B、リミッタプレート50は、フライホィール部材2と共に一体回転する。
【0044】
これに対して第1回転軸11と第2回転軸12との間におけるトルク変動が設定値を越えるときが低頻度ながらも発生する。通常使用状態では発生しない程度の過大なトルクが第1回転軸11に入力されるときである。このとき第1リミッタ摩擦係合部51Aはフライホィール部材2のマス部22の摩擦面22aに対して第1回転軸11の中心線P1の回りの周方向に沿って摺動して滑る。同様に、第2リミッタ摩擦係合部51Bは第2プレート72の摩擦面72aに対して第1回転軸11の中心線P1の回りの周方向に沿って摺動して滑る。このような摺動滑り作用が生じるため、第1回転軸11から過大なトルクが第2回転軸12に伝達されることが遮断される。即ち、過大なトルク変動が第2回転軸12に伝達されることが抑えられ、トルク変動に起因する共振や破損等が抑えられる。
【0045】
以上説明したように本実施例によれば、トルクリミッタ5は、硬質粒子と硬質粒子を結合するバインダとを主要成分とする薄い膜状に成膜された第1リミッタ摩擦係合部51Aと、同じく薄い膜状に成膜された第2リミッタ摩擦係合部51Bとを備えている。このように第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bは薄い膜状に成膜されているため、肉厚がかなり薄い。従って軸長方向(X方向)におけるトルクリミッタ5の薄型化に有利である。このため本実施例によれば、トルク変動吸収装置1の内部の搭載スペースに余裕ができ、構成部品の設計の自由度を確保することができる。
【0046】
例えば、フライホィール部材2の質量を増加させて慣性効果を向上させたいときには、第1回転軸11の軸長方向(X方向)におけるマス部22の厚みL2を従来と同様な寸法に設定しつつも、搭載スペースに余裕ができたぶん、マス部22の厚みL1を大きくすることができ、マス部22の質量を増加させることができる。あるいは、上記したようにトルクリミッタ5を軸長方向(X方向)において薄型化できるため、フライホィール部材2を軽量化してフライホィール機能の応答性を向上させたいときには、第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bの薄膜化に伴い、第1回転軸11の軸長方向(X方向)におけるマス部22の厚みL1、L2を小さくすることもできる。換言すれば、本実施例によればフライホィール機能を発揮するマス部22の厚みを選択する自由度を、用途に応じて拡大することができる利点が得られる。
【0047】
また、上記したようにトルクリミッタ5の第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bは膜状に成膜されているため、期待する摩擦係数が得られないおそれがある。この点本実施例によれば、トルクリミッタ5の第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bは、相手材との引っかかり性を期待できる硬質粒子(炭化珪素)を主要成分として含むため、トルクリミッタ5として必要な摩擦係数が確保される。殊に硬質粒子は破砕粉末粒子であるため、トルクリミッタ5として必要な摩擦係数を確保するのに有利である。
【0048】
更に本実施例によれば、液状物をスプレー治具でスプレー塗布して塗布膜を形成し、塗布膜を乾燥し、固化させることにより、薄い膜状の第1リミッタ摩擦係合部51A及び薄い膜状の第2リミッタ摩擦係合部51Bを成膜している。このため、第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bを成形型で型成形する従来技術とは異なり、型成形せずとも良く、液状物の塗布で形成することができ、軸長方向(X方向)ばかりか、径方向(Y方向)におけるトルクリミッタ5のサイズの小型化にも貢献できる。更には前述したように成形型を用いた型成形をせずとも良いため、高価な成形型が不要となり、製造工程が簡素化され、従ってトルクリミッタ5を構成する第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bの製造コストの低廉化に貢献できる。
【0049】
なお通常のトルク伝達のときには、トルクリミッタ5の第1リミッタ摩擦係合部51Aはフライホィール部材2の摩擦面22aに摩擦係合すると共に、第2リミッタ摩擦係合部51Bは第2プレート72の摩擦面72aに摩擦係合しており、トルクリミッタ5を構成する第1リミッタ摩擦係合部51A、第2リミッタ摩擦係合部51B、リミッタプレート50は、第1回転軸11、フライホィール部材2、ハブ部材3、第2回転軸12と共に一体回転する。このように第1リミッタ摩擦係合部51Aがフライホィール部材2のマス部22の摩擦面22aに摩擦係合すると共に、第2リミッタ摩擦係合部51Bが第2プレート72の摩擦面72aに摩擦係合しているとき、トルク変動吸収装置1としての通常の使用形態である。
【0050】
これに対してトルクリミッタ5の第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bが上記した摺動滑り作用を発揮するときは、過大トルクが発生し、トルク変動が設定値を越えたときであり、発生頻度としては極めて少ないものである。このように発生頻度が極めて少なく、摺動滑り時間、摺動滑り距離も極めて少ない。このため第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bがかなり薄い膜状に成膜されていても実質的不具合はない。
【0051】
(第2実施例)
図5は第2実施例を示す。第2実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。同様の機能を奏する部位には同様の符号を付する。本実施例においても、第1リミッタ摩擦係合部51C及び第2リミッタ摩擦係合部51Dは、硬質粒子と硬質粒子を結合するバインダと固定潤滑剤(二硫化モリブデン)とを主要成分とする薄い膜状となるように、リミッタプレート50の表面及び裏面に成膜されてあり、その厚みはそれぞれ30〜400μm、特に30〜300μmとされている。硬質粒子はアルミナの微細な粒子されており、最大頻度領域が4〜10μm(特に約7μm)とされている。
【0052】
(試験例)
図6は試験結果を示す。この試験例では、硬質粒子(炭化珪素、粒径3〜10μm、最頻度径7μm)と固体潤滑剤(この試験例ではなし)とバインダ(ポリアミドイミド)と分散媒(NMP,キシレン)とを主要成分とする液状物を用いた。硬質粒子と固体潤滑剤とバインダとの合計を100%としたとき、重量比で、硬質粒子は約40%、固体潤滑剤は約0%、バインダは約60%に設定した。硬質粒子は粒径のばらつきが低減されているため、摩擦係数の安定化に有利である。そして、平板形状の金属製の試験片を洗浄した後、試験片の片面に液状物をスプレー治具でスプレー塗布して塗布膜を形成した。その後、塗布膜を乾燥し、230℃にオーブンにより加熱して固化させることにより、薄い膜状のリミッタ摩擦係合部(肉厚:50μm)を試験片の片面に成膜した。そしてスラスト摩擦摩耗試験機を用い、試験片に成膜されたリミッタ摩擦係合部に対してリング形状の相手材(材質:炭素鋼(JIS−S45C)、ロックウエル硬さ45(Cスケール),HRC45)をあてがいつつ摺動させて摩擦試験を行ない、試験片の摩擦係数を測定した。摩擦試験条件としては次のようである。
【0053】
試験片の材質:炭素鋼(S45C)
試験片の硬さ:ロックウエル硬さ45(Cスケール),HRC45)
成膜前の試験片の表面粗さ:Rz0.5μm
雰囲気:ドライ雰囲気(25℃)
試験荷重:10.2kgf(面圧0.5MPa)
試験速度:0.135m/sec(115rpm)
摺動距離:240m
図6は摩擦係数の試験結果を示す。図6の横軸は摩擦時間を示し、縦軸は摩擦係数を示す。試験結果A,Bは同一の試験片を用い、データの信頼性を確保するために試験を2回行ったものである。一方の試験結果Aを図6において*印で示し、他方の試験結果Bを図6において○印で示した。図6に示すように、初期なじみ運転を除いて摩擦係数は0.3〜0.5の範囲で安定していた。本試験片には固体潤滑剤が主要成分として用いられていないが、要求される摩擦特性に応じて適宜、固体潤滑剤を用いることができる。
【0054】
(適用例)
図7は適用例を示す。この場合には、自動車等の車両に搭載されるハイブリッド駆動装置に適用している。ハイブリッド駆動装置は、第1駆動源としてのエンジン100と、第2駆動源としての電動モータ110と、エンジン100と電動モータ110との間に設けられたトルク変動吸収装置1と、トルク変動吸収装置1と電動モータ110との間に設けられた変速機構として機能する遊星歯車機構200と、図略の駆動車輪にトルクを伝達する減速機構300と、遊星歯車機構200のリングギヤ201と減速機構300とを連結するベルト400と、遊星歯車機構200に連結された発電モータ500と、インバータ600を介して発電モータ500及び電動モータ110に電気的に接続されたバッテリー800とを有する。エンジン100の駆動によって発生した電気エネルギは、バッテリー800に充電される。遊星歯車機構200は、周知のように、中央域に配置されたサンギヤ203と,サンギヤ203の外周に配置されたリングギヤ201と,サンギヤ203及びリングギヤ201に噛合しつつ自転及び公転可能なピニオンギヤ202aを有するキャリア202とを有する。
【0055】
燃料駆動式のエンジン100が駆動すると、第1回転軸11は回転駆動する。第1回転軸11はトルク変動吸収装置1、第2回転軸12を介して遊星歯車機構200のキャリア202に連結されている。発電モータ500は遊星歯車機構200のサンギヤ203に連結されており、サンギヤ203により駆動される。電動モータ110の出力軸111は遊星歯車機構200のリングギヤ201に連結されている。
【0056】
エンジン100のみが駆動するとき、エンジン100のトルクは第1回転軸11,トルク変動吸収装置1を経て遊星歯車機構200のキャリア202に伝達され、キャリア202全体がエンジン100側の第1回転軸11を中心として回転する。これにより遊星歯車機構200のリングギヤ201が回転し、リングギヤ201に繋がるベルト400が作動し、これによりエンジン100のトルクはトルク変動吸収装置1及び遊星歯車機構200を経て減速機構300に伝達され、ひいては減速機構300に繋がる図略の駆動車輪が回転駆動し、車両が走行する。このとき遊星歯車機構200のサンギヤ203も回転し、サンギヤ203に繋がる発電モータ500が発電作用を行い、発電された電気エネルギはインバータ600を経てバッテリー800に充電される。
【0057】
エンジン100が停止して電動モータ110のみが駆動するとき、電動モータ110に繋がる遊星歯車機構200のリングギヤ201が回転し、リングギヤ201に繋がるベルト400を介して減速機構300に電動モータ110のトルクが伝達され、ひいては減速機構300に繋がる図略の駆動車輪が回転駆動する。このときエンジン100側には電動モータ110のトルクが伝達されない。
【0058】
更にエンジン100及び電動モータ110の双方を駆動させて減速機構300にトルクを伝達させ図略の駆動車輪を回転駆動させることも可能である。このような動力源の切替は車速、アクセル開度等の信号によって制御装置により行われる。
【0059】
上記したハイブリッド駆動装置は、エンジン100と電動モータ110とをそれぞれ駆動源としている。動力源が1個しかない駆動装置に比較して、複数の駆動源を有するハイブリッド駆動装置では、トルク変動が発生し易く、このため複数の駆動源であるエンジン100と電動モータ110との間のトルク変動に対処するダンパ機能及びトルクリミッタ機能をもつトルク変動吸収装置1が用いられている。
【0060】
(第3実施例)
図8は第3実施例を示す。第3実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。同様の機能を奏する部位には同様の符号を付する。本実施例においても、図8に示すように、上記したように第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bは厚みが30〜400μm以下の膜状に成膜されているため、軸長方向(X方向)におけるトルクリミッタ5の薄型化が図られている。このため取付具としてのリベット74のうちフライホィール部材2に対面する部分74xがフライホィール部材2に干渉するおそれがある。そこで本実施例によれば、図8に示すように、フライホィール部材2において干渉防止部としての退避凹部29を形成している。退避凹部29の端面29wは、フライホィール部材2のマス部22の摩擦面22aよりも第1回転軸11側つまり矢印X1方向に向けて退避されている。この結果、リベット74のうちフライホィール部材2に対面する部分74xがフライホィール部材2に干渉しないようにされている。
【0061】
(第4実施例)
図9は第4実施例を示す。第4実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。同様の機能を奏する部位には同様の符号を付する。本実施例においても、図9に示すように、上記したように第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bは膜状に成膜されているため、軸長方向(X方向)におけるトルクリミッタ5の薄型化が図られている。このため取付具としてのリベット74のうちフライホィール部材2に対面する部分74xがフライホィール部材2に干渉するおそれがある。そこで本実施例によれば、図8に示すように、第2プレート72の断面において、第2プレート72の外周部72pを、フライホィール部材2のマス部22の摩擦面22aから第2回転軸12側つまり矢印X2方向に向けて退避させている。この結果、リベット74のうちフライホィール部材2に対面する部分74xがフライホィール部材2に干渉しないようにされている。
【0062】
(その他)
第1実施例によれば、硬質粒子については最大頻度領域が5〜9μmとされているが、これに限られるものではなく、最大頻度領域はこれよりも大きくても良いし、小さくても良い。本発明はエンジンと電動モータとを駆動源とするハイブリッド駆動装置の適用に限定されるものではなく、トルク変動吸収装置一般に適用できるものである。その他、本発明方法及び本発明装置は上記した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。
【0063】
【発明の効果】
本発明に係るトルク変動吸収装置によれば、トルクリミッタのリミッタ摩擦係合部は膜状に成膜されているため、肉厚が薄い。従って、第1回転軸の軸長方向におけるトルクリミッタの薄型化に有利である。このためトルク変動吸収装置の内部の搭載スペースに余裕ができ、構成部品の設計の自由度を確保することができる。
【0064】
例えば、第1部材及び第2部材のうちの少なくとも一方がフライホィール機能を発揮するマス部を有する場合には、マス部を重量化させて慣性効果を向上させたいとき、余った搭載スペースを利用して、軸長方向におけるマス部の厚みを大きくすることができる。あるいは、マス部を軽量化させてフライホィール機能の応答性を向上させたいとき、トルクリミッタの薄型化に相応させて、軸長方向におけるマス部の厚みを小さくすることができる。換言すれば、マス部の厚みを選択する自由度を拡大することができる利点が得られる。
【0065】
上記したようにトルクリミッタのリミッタ摩擦係合部は膜状に成膜されているため、期待する摩擦係数が得られないおそれがあるが、この点本発明に係るトルク変動吸収装置によれば、トルクリミッタのリミッタ摩擦係合部は、引っかかり性を期待できる硬質粒子を主要成分として含むため、トルクリミッタとして必要な摩擦係数が確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】トルク変動吸収装置の断面図である。
【図2】一部破断して示すトルク変動吸収装置の側面図である。
【図3】トルク変動吸収装置を構成するトルクリミッタのリミッタ摩擦係合部付近の断面図である。
【図4】トルクリミッタのリミッタ摩擦係合部付近を拡大して示す断面図である。
【図5】第2実施例に係り、トルクリミッタのリミッタ摩擦係合部付近を拡大して示す断面図である。
【図6】摩擦係数を示す試験結果のグラフである。
【図7】ハイブリッド駆動装置を模式的に示す構成図である。
【図8】第3実施例に係り、トルクリミッタ付近を拡大して示す断面図である。
【図9】第4実施例に係り、トルクリミッタ付近を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
図中、1はトルク変動吸収装置、11は第1回転軸、12は第2回転軸、2はフライホィール部材(第1部材)、22はマス部、3はハブ部材(第2部材)、32はボス部、4A,4Bはダンパ部、5はトルクリミッタ、50はリミッタプレート、51はリミッタ摩擦係合部、51Aは第1リミッタ摩擦係合部、51Bは第2リミッタ摩擦係合部、74はリベット(取付具)を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、第1回転軸と第2回転軸との間に設けられ第1回転軸から第2回転軸へのトルクを伝達させると共にトルク変動が発生したときトルク変動を吸収するトルク変動吸収装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に装備されるハイブリッド駆動装置に使用されるトルク変動吸収装置を例にとって従来技術について説明する。ハイブリッド駆動装置は、エンジンと電動モータとをそれぞれ駆動源としている。複数の駆動源を有するハイブリッド駆動装置では、動力源が1個しかない駆動装置に比較して、トルク変動が発生し易く、このため複数の駆動源であるエンジンと電動モータとの間のトルク変動を抑えるダンパ機能を発揮するダンパ部をもつトルク変動吸収装置が用いられている。
【0003】
即ち、トルク変動吸収装置は、エンジン側の第1回転軸に連結され半径方向外方に延設された第1部材と、電動モータ側の第2回転軸に連結され半径方向外方に延設された第2部材と、第1部材と第2部材との間に介在すると共に第1回転軸のトルクをダンパ機能を介して第2回転軸へ伝達させるダンパ部とを備えている。ダンパ部のダンパ機能により、エンジンと電動モータとの間のトルク変動を抑制している。
【0004】
更に上記したハイブリッド駆動装置では、トルク変動が設定値を越えるとき第1回転軸及び第2回転軸間のトルク伝達を遮断するリミッタ機能を、ダンパ機能と共に併有するトルク変動吸収装置が開発されている(特開2002−13547)。このトルク変動吸収装置は、ダンパ部の他に、第1部材と第2部材との間に介在するトルクリミッタを備えている。第1回転軸及び第2回転軸間のトルク変動が設定値以内のとき、トルクリミッタは第1部材に摩擦係合しており、第1回転軸及び第2回転軸間のトルク伝達を良好に行う。
【0005】
またトルク変動が設定値を越えるときもある。この場合には、トルクリミッタは、第1部材に対して滑ることにより、第1回転軸及び第2回転軸間のトルク伝達を遮断し、トルク変動に起因する共振や破損等の発生を抑えている。
【0006】
上記したトルクリミッタは、第1部材に対向する金属製のリミッタプレートと、第1部材に摩擦接触するようにリミッタプレートの表出面に配設されたリミッタ摩擦係合部とを備えている。従来技術に係るリミッタ摩擦係合部は、ゴム、樹脂、摩擦調整剤を基材とすると共に成形型により型成形で形成された厚板状の摩擦材料とで構成されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記したトルクリミッタの主要素であるリミッタ摩擦係合部は、第1部材に摩擦接触するようにリミッタプレートの表出面に配設されたゴム、樹脂、摩擦調整剤を基材とすると共に、成形型により型成形された厚板状の摩擦材料で形成されている。このように成形型により型成形された厚板状の摩擦材料で形成されたリミッタ摩擦係合部を用いているため、軸長方向におけるトルクリミッタのサイズが大きくなりがちであった。
【0008】
このように軸長方向におけるトルクリミッタのサイズが大きくなると、トルク変動吸収装置の内部の搭載スペースが制約されるため、トルク変動吸収装置の構成部品の設計の自由度が制約される不具合があった。例えば、フライホィール機能を発揮する質量体であるマス部をトルク変動吸収装置に設ける場合には、マス部の形状や大きさを選択する自由度が制約される不具合があった。
【0009】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、軸長方向におけるトルクリミッタの薄型化に有利で、トルク変動吸収装置の構成部品の設計の自由度を確保することができ、しかも必要な摩擦係数を確保するのに有利なトルク変動吸収装置を提供することを課題とするにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者はトルクリミッタを有するトルク変動吸収装置について開発を進めている。そしてトルク変動吸収装置においては、通常使用状態ではトルク変動が設定値以内であり、相手材に摩擦係合するトルクリミッタのリミッタ摩擦係合部の摺動滑り現象は抑えられていること、相手材に摩擦係合しているトルクリミッタのリミッタ摩擦係合部の摺動滑り現象が発生するのは、トルク変動が設定値を越えたときであり、発生頻度は極めて少ないことに着目した。
【0011】
そして本発明者は、相手材に摩擦係合するトルクリミッタのリミッタ摩擦係合部を膜状に成膜すると共に、膜内に硬質粒子を配合すれば、軸長方向におけるトルクリミッタのサイズの薄型化に有利であり、しかもトルクリミッタとして必要な摩擦係数を確保するのに有利であることを知見し、試験で確認し、本発明に係るトルク変動吸収装置を完成した。
【0012】
即ち、本発明に係るトルク変動吸収装置は、第1回転軸と第2回転軸との間に設けられ第1回転軸から第2回転軸へのトルクを伝達させると共にトルク変動が発生したときトルク変動を吸収するものであり、
第1回転軸に連結され半径方向外方に延設された第1部材と、
第2回転軸に連結され半径方向外方に延設された第2部材と、
第1部材と第2部材との間に介在すると共に第1回転軸のトルクを第2回転軸へ伝達させるダンパ部と、
第1部材と第2部材との間に介在し、第1回転軸との第2回転軸との間のトルク変動が設定値以内のとき摩擦係合して第1回転軸のトルクを第2回転軸に伝達させ、且つ、トルク変動が設定値を越えるとき摺動滑りを発生させて第1回転軸との第2回転軸との間のトルク伝達の遮断性を高めるリミッタ摩擦係合部を有するトルクリミッタとを具備するトルク変動吸収装置において、トルクリミッタのリミッタ摩擦係合部は、硬質粒子と硬質粒子を結合するバインダとを主要成分とする膜状に成膜されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係るトルク変動吸収装置によれば、トルクリミッタのリミッタ摩擦係合部は、トルク変動が設定値以内のとき第1部材及び第2部材の相対回転変位を抑えるように摩擦係合し、第1回転軸と第2回転軸との間のトルク伝達を良好に行うことができる。第1回転軸と第2回転軸との間のトルク変動が設定値を越えるときには、トルクリミッタのリミッタ摩擦係合部は摺動滑りを発生させる。摺動滑りにより、第1回転軸と第2回転軸との間のトルク伝達の遮断性が高まる。
【0014】
上記したようにトルクリミッタのリミッタ摩擦係合部は膜状に成膜されているため、肉厚が薄い。従って、第1回転軸の軸長方向におけるトルクリミッタの薄型化に有利である。更に硬質粒子が主要成分として含まれているため、トルクリミッタとして必要な摩擦係数が確保される。
【0015】
【発明の実施形態】
本発明に係るトルク変動吸収装置によれば、好ましくは、トルクリミッタは、第1部材及び第2部材のうちの少なくとも一方と対向するリミッタプレートと、第1部材及び第2部材のうちの少なくとも一方と摩擦接触するようにリミッタプレートの表出面に配設され硬質粒子と硬質粒子を結合するバインダとを主要成分とする膜状に成膜されたリミッタ摩擦係合部とを備えている形態を採用することができる。この場合、一般的には、リミッタ摩擦係合部はドライ摩擦係合状態に維持され、潤滑油等に浸漬されているウェット摩擦係合状態ではない。
【0016】
リミッタ摩擦係合部の厚みが過剰に薄いと、硬質粒子を保持する保持力が低下する。リミッタ摩擦係合部の厚みが過剰に厚いと、密着性が低下し、剥離し易くなる。上記した事情を考慮し、リミッタ摩擦係合部の平均厚みは5〜1500μmに設定されている形態を採用することができる。この場合、リミッタ摩擦係合部の平均厚みとしては5〜1000μm、5〜800μm、10〜500μm、10〜300μm、あるいは10〜100μmに設定されている形態を採用することができる。リミッタ摩擦係合部の密着性、リミッタ摩擦係合部の摩擦係数の安定化を考慮すると、リミッタ摩擦係合部の平均厚みとしては5〜500μm、10〜200μm、10〜100μm、あるいは10〜50μmを採用することができる。
【0017】
本発明に係るトルク変動吸収装置によれば、リミッタ摩擦係合部に含まれている硬質粒子は非球形状である形態を採用することができる。硬質粒子が非球形状であれば、相手材に対する引っかかり係合性が向上し。リミッタ摩擦係合部の摩擦係数を確保するのに貢献できる。非球形状とは、硬質粒子の断面において硬質粒子の中心を通る仮想線に対して左右非対称形状であることを意味する。硬質粒子が非球形状であれば、リミッタ摩擦係合部の摩擦係数の確保に貢献できる。非球形状の硬質粒子としては、機械的に破砕した破砕形状、角片形状等の異形状とすることができる。硬質粒子は一般的には第1部材及び第2部材の平均硬度よりも高い平均硬度をもつ粒子である。
【0018】
硬質粒子の材質としてはセラミックスを採用することができる。セラミックスとして酸化物系、窒化物系、ホウ化物系等を採用することができる。具体的には、炭化珪素、アルミナ、シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素(立方晶窒化ホウ素)、ジルコニア、ムライト、ダイヤモンド等を例示できる。硬質粒子としては場合によっては金属間化合物、硬質金属でも良い。金属間化合物としてはフェロタングステン、フェロモリブデン、フェロバナジウム等の1種または2種以上を採用することができる。セラミックス、金属間化合物、硬質金属のうちの1種または2種以上を硬質粒子として採用することができる。
【0019】
硬質粒子の平均粒径は、リミッタ摩擦係合部の平均厚み、要請される摩擦特性等によって変更できる。このように硬質粒子の平均粒径はリミッタ摩擦係合部の厚みによっても相違するものの、一般的には1〜100μm、2〜50μm、2〜20μm、2〜10μmとすることができる。硬質粒子の平均粒径はリミッタ摩擦係合部の平均厚み以下とすることが好ましい。硬質粒子の平均粒径が過剰に大きいと、相手攻撃性の増加、硬質粒子の分散性の低下、硬質粒子の脱落を誘発し、更に摩擦係数の安定化に不利となり、リミッタ摩擦係合部の耐久性が低下する。硬質粒子の平均粒径が過剰に小さいと、硬質粒子の添加効果が低減し、良好なる摩擦係数が得られない。
【0020】
バインダとしては有機バインダが好ましく、熱硬化性樹脂を例示できる。具体的には、耐摩耗性に優れるポリアミドイミド、ポリイミド、エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、ウレタン、アミノ、アクリル、シリコーン、ポリエステル等を例示でき、これらの1種または2種以上を採用することができる。
【0021】
リミッタ摩擦係合部は、硬質粒子及びバインダの他に固体潤滑剤を主要成分とすることができる。固体潤滑剤としては、黒鉛、二硫化モリブデン、フッ素樹脂等のうちの1種または2種以上を採用することができる。フッ素樹脂としてはPTFE、PFA,FEP,ETFE等の1種または2種以上を採用することができる。
【0022】
配合割合としては、リミッタ摩擦係合部を構成する硬質粒子、バインダ及び固体潤滑剤の合計量を100%としたとき、例えば、重量比で、硬質粒子は9〜75%、殊に25〜50%にでき、バインダは14〜91%、殊に50〜70%にでき、固体潤滑剤は0〜75%、殊に0〜25%、また0.1〜75%、殊に0.1〜25%にできる。但し、配合割合はこれに限定されるものではない。
【0023】
トルク変動吸収装置の用途にもよるが、重量部基準としたとき、バインダ100重量部に対して、硬質粒子は例えば10〜300重量部配合することができ、固体潤滑剤は例えば0〜300重量部または1〜300重量部配合することができる。
【0024】
硬質粒子の割合が過剰に少ないと、摩擦係数が低くなり、良好な摩擦係数が得られない。硬質粒子の割合が過剰に多いと、摩擦係数が高くなりすぎ、硬質粒子の脱落も増加する。固体潤滑剤の割合が過剰に多いと、摩擦係数が低くなりすぎ、硬質粒子の割合が相対的に低下する。なお、固体潤滑剤は必要に応じて配合されるものであり、省くこともできる。
【0025】
本発明に係るリミッタ摩擦係合部の摩擦係数としては、初期なじみ運転の場合を除けば、0.3〜0.7の範囲、あるいは0.3〜0.6の範囲とすることができる。
【0026】
本発明に係るトルク変動吸収装置によれば、好ましくは、リミッタ摩擦係合部は、硬質粒子と固体潤滑剤とバインダと分散媒(溶媒も含む)とを主要成分とする液状物を用い、液状物をリミッタプレート等の対象物に塗布して塗布膜を形成し、塗布膜を固化させることにより成膜されている形態を採用することができる。塗布膜の固化に先立ち、乾燥処理を行うことが好ましい。上記した液状物を塗布固化してリミッタ摩擦係合部を成膜すれば、リミッタ摩擦係合部の薄肉化に有利であり、薄い膜状のリミッタ摩擦係合部を形成することができる。
【0027】
塗布としては、液状物をスプレーで塗布するスプレー塗布、液状物を刷毛で塗布する刷毛塗り塗布、液状物に浸漬した後に液状物から取り出す浸漬塗布等を採用することができる。塗布膜の肉厚の均一化等を考慮すると、スプレー塗布が好ましい。このようにリミッタ摩擦係合部を液状物の塗布で成膜すれば、リミッタ摩擦係合部となる摩擦材料を成形型で熱硬化させる必要がなくなり、高価な成形型を省略でき、工程の簡素化を図り得、従ってリミッタ摩擦係合部の製造コストの低廉化を図り得る。
【0028】
上記した液状物に係る分散媒としては、水、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、n−メチル−2−ピロリドン(NMP)、n−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)等の1種または2種以上を採用することができる。
【0029】
本発明に係るトルク変動吸収装置によれば、エンジン及び電動モータを搭載したハイブリッド駆動装置に用いられ、第1回転軸はエンジン及び電動モータのうちの一方につながると共に、第2回転軸はエンジン及び電動モータのうちの他方につながる形態を例示することができる。エンジン及び電動モータを搭載したハイブリッド駆動装置によれば、トルク変動が発生し易いため、本発明に係るトルク変動吸収装置は有効である。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を具体化した実施例について図1〜図4を参照して説明する。図1は断面図であり、図2のA−A線に沿った矢視図である。図2は側面図である。図2においてはフライホィール部材2のマス部22の外周部分は省略されている。図1に示すように、本実施例に係るトルク変動吸収装置1は、互いに対向するように同軸的に配置された第1回転軸11と第2回転軸12との間に設けられており、第1回転軸11から第2回転軸12へのトルクを伝達させると共にトルク変動が発生したときトルク変動を抑制するものである。トルク変動吸収装置1は、第1回転軸11に連結された第1部材としてのフライホィール部材2と、第2回転軸12に連結された第2部材としてのハブ部材3と、フライホィール部材2とバブ部材3との間に介在すると共に第1回転軸11のトルクを第2回転軸12へ伝達させるダンパ部4(4A,4B)と、過剰なトルク変動が発生したときに摺動滑りを発生させて第1回転軸11から第2回転軸12へのトルク伝達を遮断するトルクリミッタ5とを備えている。
【0031】
フライホィール部材2は円盤状をなしており、第1回転軸11のうち第2回転軸12と対向する軸端部11eに取付ボルト13により第1回転軸11に同軸的に連結されている。フライホィール部材2は金属製(一般的には鉄鋳物またはアルミニウム鋳物)であり、第1回転軸11の半径方向に伸びる延設部21と、延設部21の外端部に設けられ慣性を得るための質量体として機能するリング状のマス部22とをもつ。マス部22は、軸長方向における軸端面22fからの肉厚がL1に設定された摩擦面22aと、軸端面22fからの肉厚がL2(L2>L1)に設定された取付軸端面22cとをもつ。摩擦面22a及び取付軸端面22cはそれぞれ第1回転軸11の中心線P1の回りに延設されている。
【0032】
ハブ部材3の中央部の取付孔30にはスプライン31が形成されている。第2回転軸12のうち第1回転軸11と対向する軸端部12eにハブ部材3のスプライン31を嵌合した状態で、ハブ部材3は第2回転軸12の軸端部12eに一体回転可能に保持されている。ハブ部材3は金属製であり、スプライン31を有するボス部32と、ボス部32から半径方向外方に延設された延設部33とをもつ。ハブ部材3のボス部32の外周側には中間プレート6が同軸的に配置されている。
【0033】
中間プレート6は、リング状の第1中間プレート61と、第1中間プレート61に対面するリング状の第2中間プレート62とで形成されている。第1中間プレート61及び第2中間プレート62は連結具としてのリベット63により互いに連結されており、一体回転する。第1中間プレート61及び第2中間プレート62はハブ部材3の延設部33に対して、第1回転軸11の中心線P1の回りで周方向に相対回転変位可能とされている。なお中間プレート6の内周側には、ハブ部材3と中間プレート6との間のヒステリシス特性を得るためのヒステリシス機構65が設けられている。
【0034】
中間プレート6及びハブ部材3の延設部33には、周方向に間隔を隔てて複数の窓開口40が形成されている。各窓開口40には複数のダンパ部4A,4Bがそれぞれ配置されている。ダンパ部4A,4Bはフライホィール部材2とハブ部材3との間に介在している。中心線P1回りの周方向におけるダンパ部4A,4Bの一端部は、ハブ部材3の延設部33に対面して係合している。中心線P1回りの周方向におけるダンパ部4A,4Bの他端部は、第1中間プレート61及び第2中間プレート62に対面して係合している。ダンパ部4A,4Bは、第1回転軸11のトルクを第2回転軸12へ自身の弾発力を介して伝達させるものであり、コイル状のバネで形成されており、第1回転軸11の中心線P1の回りの周方向において弾性収縮できるようにされている。
【0035】
図1に示すように、フライホィール部材2の取付軸端面22cには、取付具としての取付ボルト70をマス部22の螺子孔22mに螺着することにより、リング状の金属製の第1プレート71が同軸的に固定されている。そして第1プレート71には取付具としてのリベット74によりリング形状の金属製(一般的には炭素鋼)の第2プレート72が同軸的に保持されている。従って第2プレート72は、リベット74及び第1プレート71を介してフライホィール部材2のマス部22に一体的に連結されている。なおリベット74の部分74xはマス部22に対面している。第1プレート71と第2プレート72との間には、付勢部材としての皿バネ75が介装されている。皿バネ75は金属製であり中心線P1回りでリング形状をなしており、第2プレート72をフライホィール部材2に近づける方向(矢印X1方向)に付勢する付勢力をもつ。
【0036】
図1に示すように、トルクリミッタ5は、ダンパ部4A,4Bの外周側に位置するようにフライホィール部材2とハブ部材3との間に介在している。トルクリミッタ5は、フライホィール部材2のマス部22の摩擦面22aと対向するように第1中間プレート61にリベット63で一体的に固定された金属製(一般的には鋼系)のリミッタプレート50と、リミッタプレート50の表面及び裏面にそれぞれ配設された膜状のリミッタ摩擦係合部51(51A,51B)とを備えている。リミッタプレート50の平均厚みは必要に応じて適宜選択されるものの、例えば0.5〜3.0mm、殊に1.0〜2.0mm程度である。
【0037】
リミッタプレート50は第1回転軸11の中心線P1の回りで1周するようにリング形状をなしている。リミッタ摩擦係合部51も第1回転軸11の中心線P1の回りで1周するようにリング形状をなしている。図3に示すように、リミッタ摩擦係合部51は、フライホィール部材2のマス部22の摩擦面22a(相手材)に摩擦接触するように、リミッタプレート50の表面に薄い膜状に成膜された第1リミッタ摩擦係合部51Aと、フライホィール部材2のマス部22側に連結されている第2プレート72の摩擦面72a(相手材)に摩擦接触するようにリミッタプレート50の裏面に薄い膜状に成膜された第2リミッタ摩擦係合部51Bとで形成されている。
【0038】
第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bは、リミッタプレート50の表裏で互いに背向するように固着されている。第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bは、ダンパ部4A,4Bの外周側に配置されている。皿バネ75の矢印X1方向へ向かう付勢力により、第2プレート72はフライホィール部材2のマス部22に向けて加圧されている。このため、トルクリミッタ5の薄い膜状の第1リミッタ摩擦係合部51Aは、フライホィール部材2のマス部22の摩擦面22a(相手材)に常時圧着されていると共に、薄い膜状の第2リミッタ摩擦係合部51Bは第2プレート72の摩擦面72a(相手材)に常時圧着されている。
【0039】
本実施例によれば、第1リミッタ摩擦係合部51Aは、硬質粒子と硬質粒子を結合するバインダと固定潤滑剤とを主要成分とする薄い膜状に成膜されている。その厚みt(図4参照)はそれぞれ30〜400μm、特に30〜300μmとされている。第2リミッタ摩擦係合部51Bも同様であり、硬質粒子と硬質粒子を結合するバインダと固定潤滑剤とを主要成分とする薄い膜状に成膜されており、その厚みt(図4参照)は30〜400μm、特に30〜300μmとされている。なお第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bの厚みは、図1においては誇張されて図示されている。
【0040】
硬質粒子は炭化珪素(SiC)の微細な粒子されており、硬質粒子の粒径分布は正規分布に近い分布を示し、最大頻度領域が5〜9μm(特に約7μm)とされている。この粒度分布において、3〜10μmの粒径をもつ硬質粒子が全粒子数の99.6%を占める。硬質粒子は非球形状であり、具体的には機械的に細かく破砕した異形状の破砕粉末粒子を用いており、相手材に対する引っかかり性が確保され、相手材との間の必要な摩擦係数が確保されている。
【0041】
本実施例によれば、薄い膜状の第1リミッタ摩擦係合部51A、薄い膜状の第2リミッタ摩擦係合部51Bを製造するには、硬質粒子(破砕粉末粒子、炭化珪素、粒径3〜10μm、最頻度径7μm)と固体潤滑剤(二硫化モリブデン)とバインダ(ポリアミドイミド)と分散媒(NMP,キシレン)とを主要成分とする液状物を用いる。硬質粒子と固体潤滑剤とバインダとの合計量を100%としたとき、重量比で、硬質粒子は約30〜40%、固体潤滑剤は約10〜20%、バインダは約50〜60%に設定する。分散媒は成膜後に蒸散するため、配合割合としては実質的に無視することができる。
【0042】
そして組み付け前のリミッタプレート50の表面及び裏面に液状物をスプレー治具でスプレー塗布して塗布膜を成膜する工程、塗布膜を乾燥させる工程、塗布膜を200〜230℃にオーブンにより30〜60分間加熱して固化させる工程とを順に実施することにより、薄い膜状に成膜されている。なお加熱温度、加熱時間はこれに限定されるものではない。
【0043】
本実施例によれば、薄い膜状の第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bは、トルクリミッタ5として必要な摩擦係数を発揮する。このため使用時に、エンジン等の第1駆動源が駆動すると、第1駆動源に連結された第1回転軸11がこれの中心線P1の回りで回転駆動し、フライホィール部材2が連動して同方向に回転する。通常使用状態では、第1回転軸11と第2回転軸12との間におけるトルク変動が設定値以内である。このように第1回転軸11と第2回転軸12との間におけるトルク変動が設定値以内のときには、トルクリミッタ5の第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bを介して中間プレート6にトルクが伝達され、ひいてはダンパ部4A,4Bを介してハブ部材3に伝達され、第2回転軸12がフライホィール部材2及びハブ部材3と共に一体回転する。即ち、第1回転軸11と第2回転軸12との間におけるトルク変動が設定値以内のときには、前述したようにトルクリミッタ5の薄い膜状の第1リミッタ摩擦係合部51Aは、フライホィール部材2のマス部22の摩擦面22a(相手材)に摩擦係合すると共に、薄い膜状の第2リミッタ摩擦係合部51Bは第2プレート72の摩擦面72a(相手材)に摩擦係合する。これによりトルクリミッタ5を構成する薄い膜状の第1リミッタ摩擦係合部51A、薄い膜状の第2リミッタ摩擦係合部51B、リミッタプレート50は、フライホィール部材2と共に一体回転する。
【0044】
これに対して第1回転軸11と第2回転軸12との間におけるトルク変動が設定値を越えるときが低頻度ながらも発生する。通常使用状態では発生しない程度の過大なトルクが第1回転軸11に入力されるときである。このとき第1リミッタ摩擦係合部51Aはフライホィール部材2のマス部22の摩擦面22aに対して第1回転軸11の中心線P1の回りの周方向に沿って摺動して滑る。同様に、第2リミッタ摩擦係合部51Bは第2プレート72の摩擦面72aに対して第1回転軸11の中心線P1の回りの周方向に沿って摺動して滑る。このような摺動滑り作用が生じるため、第1回転軸11から過大なトルクが第2回転軸12に伝達されることが遮断される。即ち、過大なトルク変動が第2回転軸12に伝達されることが抑えられ、トルク変動に起因する共振や破損等が抑えられる。
【0045】
以上説明したように本実施例によれば、トルクリミッタ5は、硬質粒子と硬質粒子を結合するバインダとを主要成分とする薄い膜状に成膜された第1リミッタ摩擦係合部51Aと、同じく薄い膜状に成膜された第2リミッタ摩擦係合部51Bとを備えている。このように第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bは薄い膜状に成膜されているため、肉厚がかなり薄い。従って軸長方向(X方向)におけるトルクリミッタ5の薄型化に有利である。このため本実施例によれば、トルク変動吸収装置1の内部の搭載スペースに余裕ができ、構成部品の設計の自由度を確保することができる。
【0046】
例えば、フライホィール部材2の質量を増加させて慣性効果を向上させたいときには、第1回転軸11の軸長方向(X方向)におけるマス部22の厚みL2を従来と同様な寸法に設定しつつも、搭載スペースに余裕ができたぶん、マス部22の厚みL1を大きくすることができ、マス部22の質量を増加させることができる。あるいは、上記したようにトルクリミッタ5を軸長方向(X方向)において薄型化できるため、フライホィール部材2を軽量化してフライホィール機能の応答性を向上させたいときには、第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bの薄膜化に伴い、第1回転軸11の軸長方向(X方向)におけるマス部22の厚みL1、L2を小さくすることもできる。換言すれば、本実施例によればフライホィール機能を発揮するマス部22の厚みを選択する自由度を、用途に応じて拡大することができる利点が得られる。
【0047】
また、上記したようにトルクリミッタ5の第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bは膜状に成膜されているため、期待する摩擦係数が得られないおそれがある。この点本実施例によれば、トルクリミッタ5の第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bは、相手材との引っかかり性を期待できる硬質粒子(炭化珪素)を主要成分として含むため、トルクリミッタ5として必要な摩擦係数が確保される。殊に硬質粒子は破砕粉末粒子であるため、トルクリミッタ5として必要な摩擦係数を確保するのに有利である。
【0048】
更に本実施例によれば、液状物をスプレー治具でスプレー塗布して塗布膜を形成し、塗布膜を乾燥し、固化させることにより、薄い膜状の第1リミッタ摩擦係合部51A及び薄い膜状の第2リミッタ摩擦係合部51Bを成膜している。このため、第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bを成形型で型成形する従来技術とは異なり、型成形せずとも良く、液状物の塗布で形成することができ、軸長方向(X方向)ばかりか、径方向(Y方向)におけるトルクリミッタ5のサイズの小型化にも貢献できる。更には前述したように成形型を用いた型成形をせずとも良いため、高価な成形型が不要となり、製造工程が簡素化され、従ってトルクリミッタ5を構成する第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bの製造コストの低廉化に貢献できる。
【0049】
なお通常のトルク伝達のときには、トルクリミッタ5の第1リミッタ摩擦係合部51Aはフライホィール部材2の摩擦面22aに摩擦係合すると共に、第2リミッタ摩擦係合部51Bは第2プレート72の摩擦面72aに摩擦係合しており、トルクリミッタ5を構成する第1リミッタ摩擦係合部51A、第2リミッタ摩擦係合部51B、リミッタプレート50は、第1回転軸11、フライホィール部材2、ハブ部材3、第2回転軸12と共に一体回転する。このように第1リミッタ摩擦係合部51Aがフライホィール部材2のマス部22の摩擦面22aに摩擦係合すると共に、第2リミッタ摩擦係合部51Bが第2プレート72の摩擦面72aに摩擦係合しているとき、トルク変動吸収装置1としての通常の使用形態である。
【0050】
これに対してトルクリミッタ5の第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bが上記した摺動滑り作用を発揮するときは、過大トルクが発生し、トルク変動が設定値を越えたときであり、発生頻度としては極めて少ないものである。このように発生頻度が極めて少なく、摺動滑り時間、摺動滑り距離も極めて少ない。このため第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bがかなり薄い膜状に成膜されていても実質的不具合はない。
【0051】
(第2実施例)
図5は第2実施例を示す。第2実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。同様の機能を奏する部位には同様の符号を付する。本実施例においても、第1リミッタ摩擦係合部51C及び第2リミッタ摩擦係合部51Dは、硬質粒子と硬質粒子を結合するバインダと固定潤滑剤(二硫化モリブデン)とを主要成分とする薄い膜状となるように、リミッタプレート50の表面及び裏面に成膜されてあり、その厚みはそれぞれ30〜400μm、特に30〜300μmとされている。硬質粒子はアルミナの微細な粒子されており、最大頻度領域が4〜10μm(特に約7μm)とされている。
【0052】
(試験例)
図6は試験結果を示す。この試験例では、硬質粒子(炭化珪素、粒径3〜10μm、最頻度径7μm)と固体潤滑剤(この試験例ではなし)とバインダ(ポリアミドイミド)と分散媒(NMP,キシレン)とを主要成分とする液状物を用いた。硬質粒子と固体潤滑剤とバインダとの合計を100%としたとき、重量比で、硬質粒子は約40%、固体潤滑剤は約0%、バインダは約60%に設定した。硬質粒子は粒径のばらつきが低減されているため、摩擦係数の安定化に有利である。そして、平板形状の金属製の試験片を洗浄した後、試験片の片面に液状物をスプレー治具でスプレー塗布して塗布膜を形成した。その後、塗布膜を乾燥し、230℃にオーブンにより加熱して固化させることにより、薄い膜状のリミッタ摩擦係合部(肉厚:50μm)を試験片の片面に成膜した。そしてスラスト摩擦摩耗試験機を用い、試験片に成膜されたリミッタ摩擦係合部に対してリング形状の相手材(材質:炭素鋼(JIS−S45C)、ロックウエル硬さ45(Cスケール),HRC45)をあてがいつつ摺動させて摩擦試験を行ない、試験片の摩擦係数を測定した。摩擦試験条件としては次のようである。
【0053】
試験片の材質:炭素鋼(S45C)
試験片の硬さ:ロックウエル硬さ45(Cスケール),HRC45)
成膜前の試験片の表面粗さ:Rz0.5μm
雰囲気:ドライ雰囲気(25℃)
試験荷重:10.2kgf(面圧0.5MPa)
試験速度:0.135m/sec(115rpm)
摺動距離:240m
図6は摩擦係数の試験結果を示す。図6の横軸は摩擦時間を示し、縦軸は摩擦係数を示す。試験結果A,Bは同一の試験片を用い、データの信頼性を確保するために試験を2回行ったものである。一方の試験結果Aを図6において*印で示し、他方の試験結果Bを図6において○印で示した。図6に示すように、初期なじみ運転を除いて摩擦係数は0.3〜0.5の範囲で安定していた。本試験片には固体潤滑剤が主要成分として用いられていないが、要求される摩擦特性に応じて適宜、固体潤滑剤を用いることができる。
【0054】
(適用例)
図7は適用例を示す。この場合には、自動車等の車両に搭載されるハイブリッド駆動装置に適用している。ハイブリッド駆動装置は、第1駆動源としてのエンジン100と、第2駆動源としての電動モータ110と、エンジン100と電動モータ110との間に設けられたトルク変動吸収装置1と、トルク変動吸収装置1と電動モータ110との間に設けられた変速機構として機能する遊星歯車機構200と、図略の駆動車輪にトルクを伝達する減速機構300と、遊星歯車機構200のリングギヤ201と減速機構300とを連結するベルト400と、遊星歯車機構200に連結された発電モータ500と、インバータ600を介して発電モータ500及び電動モータ110に電気的に接続されたバッテリー800とを有する。エンジン100の駆動によって発生した電気エネルギは、バッテリー800に充電される。遊星歯車機構200は、周知のように、中央域に配置されたサンギヤ203と,サンギヤ203の外周に配置されたリングギヤ201と,サンギヤ203及びリングギヤ201に噛合しつつ自転及び公転可能なピニオンギヤ202aを有するキャリア202とを有する。
【0055】
燃料駆動式のエンジン100が駆動すると、第1回転軸11は回転駆動する。第1回転軸11はトルク変動吸収装置1、第2回転軸12を介して遊星歯車機構200のキャリア202に連結されている。発電モータ500は遊星歯車機構200のサンギヤ203に連結されており、サンギヤ203により駆動される。電動モータ110の出力軸111は遊星歯車機構200のリングギヤ201に連結されている。
【0056】
エンジン100のみが駆動するとき、エンジン100のトルクは第1回転軸11,トルク変動吸収装置1を経て遊星歯車機構200のキャリア202に伝達され、キャリア202全体がエンジン100側の第1回転軸11を中心として回転する。これにより遊星歯車機構200のリングギヤ201が回転し、リングギヤ201に繋がるベルト400が作動し、これによりエンジン100のトルクはトルク変動吸収装置1及び遊星歯車機構200を経て減速機構300に伝達され、ひいては減速機構300に繋がる図略の駆動車輪が回転駆動し、車両が走行する。このとき遊星歯車機構200のサンギヤ203も回転し、サンギヤ203に繋がる発電モータ500が発電作用を行い、発電された電気エネルギはインバータ600を経てバッテリー800に充電される。
【0057】
エンジン100が停止して電動モータ110のみが駆動するとき、電動モータ110に繋がる遊星歯車機構200のリングギヤ201が回転し、リングギヤ201に繋がるベルト400を介して減速機構300に電動モータ110のトルクが伝達され、ひいては減速機構300に繋がる図略の駆動車輪が回転駆動する。このときエンジン100側には電動モータ110のトルクが伝達されない。
【0058】
更にエンジン100及び電動モータ110の双方を駆動させて減速機構300にトルクを伝達させ図略の駆動車輪を回転駆動させることも可能である。このような動力源の切替は車速、アクセル開度等の信号によって制御装置により行われる。
【0059】
上記したハイブリッド駆動装置は、エンジン100と電動モータ110とをそれぞれ駆動源としている。動力源が1個しかない駆動装置に比較して、複数の駆動源を有するハイブリッド駆動装置では、トルク変動が発生し易く、このため複数の駆動源であるエンジン100と電動モータ110との間のトルク変動に対処するダンパ機能及びトルクリミッタ機能をもつトルク変動吸収装置1が用いられている。
【0060】
(第3実施例)
図8は第3実施例を示す。第3実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。同様の機能を奏する部位には同様の符号を付する。本実施例においても、図8に示すように、上記したように第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bは厚みが30〜400μm以下の膜状に成膜されているため、軸長方向(X方向)におけるトルクリミッタ5の薄型化が図られている。このため取付具としてのリベット74のうちフライホィール部材2に対面する部分74xがフライホィール部材2に干渉するおそれがある。そこで本実施例によれば、図8に示すように、フライホィール部材2において干渉防止部としての退避凹部29を形成している。退避凹部29の端面29wは、フライホィール部材2のマス部22の摩擦面22aよりも第1回転軸11側つまり矢印X1方向に向けて退避されている。この結果、リベット74のうちフライホィール部材2に対面する部分74xがフライホィール部材2に干渉しないようにされている。
【0061】
(第4実施例)
図9は第4実施例を示す。第4実施例は第1実施例と基本的には同様の構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。同様の機能を奏する部位には同様の符号を付する。本実施例においても、図9に示すように、上記したように第1リミッタ摩擦係合部51A及び第2リミッタ摩擦係合部51Bは膜状に成膜されているため、軸長方向(X方向)におけるトルクリミッタ5の薄型化が図られている。このため取付具としてのリベット74のうちフライホィール部材2に対面する部分74xがフライホィール部材2に干渉するおそれがある。そこで本実施例によれば、図8に示すように、第2プレート72の断面において、第2プレート72の外周部72pを、フライホィール部材2のマス部22の摩擦面22aから第2回転軸12側つまり矢印X2方向に向けて退避させている。この結果、リベット74のうちフライホィール部材2に対面する部分74xがフライホィール部材2に干渉しないようにされている。
【0062】
(その他)
第1実施例によれば、硬質粒子については最大頻度領域が5〜9μmとされているが、これに限られるものではなく、最大頻度領域はこれよりも大きくても良いし、小さくても良い。本発明はエンジンと電動モータとを駆動源とするハイブリッド駆動装置の適用に限定されるものではなく、トルク変動吸収装置一般に適用できるものである。その他、本発明方法及び本発明装置は上記した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。
【0063】
【発明の効果】
本発明に係るトルク変動吸収装置によれば、トルクリミッタのリミッタ摩擦係合部は膜状に成膜されているため、肉厚が薄い。従って、第1回転軸の軸長方向におけるトルクリミッタの薄型化に有利である。このためトルク変動吸収装置の内部の搭載スペースに余裕ができ、構成部品の設計の自由度を確保することができる。
【0064】
例えば、第1部材及び第2部材のうちの少なくとも一方がフライホィール機能を発揮するマス部を有する場合には、マス部を重量化させて慣性効果を向上させたいとき、余った搭載スペースを利用して、軸長方向におけるマス部の厚みを大きくすることができる。あるいは、マス部を軽量化させてフライホィール機能の応答性を向上させたいとき、トルクリミッタの薄型化に相応させて、軸長方向におけるマス部の厚みを小さくすることができる。換言すれば、マス部の厚みを選択する自由度を拡大することができる利点が得られる。
【0065】
上記したようにトルクリミッタのリミッタ摩擦係合部は膜状に成膜されているため、期待する摩擦係数が得られないおそれがあるが、この点本発明に係るトルク変動吸収装置によれば、トルクリミッタのリミッタ摩擦係合部は、引っかかり性を期待できる硬質粒子を主要成分として含むため、トルクリミッタとして必要な摩擦係数が確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】トルク変動吸収装置の断面図である。
【図2】一部破断して示すトルク変動吸収装置の側面図である。
【図3】トルク変動吸収装置を構成するトルクリミッタのリミッタ摩擦係合部付近の断面図である。
【図4】トルクリミッタのリミッタ摩擦係合部付近を拡大して示す断面図である。
【図5】第2実施例に係り、トルクリミッタのリミッタ摩擦係合部付近を拡大して示す断面図である。
【図6】摩擦係数を示す試験結果のグラフである。
【図7】ハイブリッド駆動装置を模式的に示す構成図である。
【図8】第3実施例に係り、トルクリミッタ付近を拡大して示す断面図である。
【図9】第4実施例に係り、トルクリミッタ付近を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
図中、1はトルク変動吸収装置、11は第1回転軸、12は第2回転軸、2はフライホィール部材(第1部材)、22はマス部、3はハブ部材(第2部材)、32はボス部、4A,4Bはダンパ部、5はトルクリミッタ、50はリミッタプレート、51はリミッタ摩擦係合部、51Aは第1リミッタ摩擦係合部、51Bは第2リミッタ摩擦係合部、74はリベット(取付具)を示す。
Claims (6)
- 第1回転軸と第2回転軸との間に設けられ前記第1回転軸から前記第2回転軸へのトルクを伝達させると共にトルク変動が発生したときトルク変動を吸収するものであり、
前記第1回転軸に連結され半径方向外方に延設された第1部材と、
前記第2回転軸に連結され半径方向外方に延設された第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材との間に介在すると共に前記第1回転軸のトルクを前記第2回転軸へ伝達させるダンパ部と、
前記第1部材と前記第2部材との間に介在し、前記第1回転軸と前記第2回転軸との間のトルク変動が設定値以内のとき摩擦係合して前記第1回転軸のトルクを第2回転軸に伝達させ、且つ、トルク変動が設定値を越えるとき摺動滑りを発生させ、前記第1回転軸と前記第2回転軸との間のトルク伝達の遮断性を高めるリミッタ摩擦係合部を有するトルクリミッタとを具備するトルク変動吸収装置において、
前記トルクリミッタの前記リミッタ摩擦係合部は、硬質粒子と硬質粒子を結合するバインダとを主要成分とする膜状に成膜されていることを特徴とするトルク変動吸収装置。 - 請求項1において、前記トルクリミッタは、前記第1部材及び前記第2部材のうちの少なくとも一方と対向するリミッタプレートをもち、前記リミッタ摩擦係合部は、前記第1部材及び前記第2部材のうちの少なくとも一方と摩擦接触するように前記リミッタプレートに固着されていることを特徴とするトルク変動吸収装置。
- 請求項1または請求項2において、前記リミッタ摩擦係合部の平均厚みは5〜1500μmに設定されていることを特徴とするトルク変動吸収装置。
- 請求項1〜請求項3のいずれか一項において、前記リミッタ摩擦係合部は、硬質粒子と固体潤滑剤とバインダと分散媒とを主要成分とする液状物を塗布して塗布膜を形成し、前記塗布膜を固化させることにより成膜されていることを特徴とするトルク変動吸収装置。
- 請求項1〜請求項4のいずれか一項において、前記第1部材に固定された第1プレートと、前記第1回転軸の軸長方向において前記第1プレートと前記第1部材との間に位置するように前記第1プレートに取付具で固定された第2プレートとが設けられ、
前記第1部材及び前記第2プレートのうちの少なくとも一方は、
前記取付具のうち前記第1部材に対面する部分が前記第1部材に干渉することを防止する干渉防止部を有することを特徴とするトルク変動吸収装置。 - 請求項1〜請求項5のいずれか一項において、エンジン及び電動モータを搭載したハイブリッド駆動装置に用いられ、前記第1回転軸はエンジン及び電動モータのうちの一方につながると共に、前記第2回転軸はエンジン及び電動モータのうちの他方につながることを特徴とするトルク変動吸収装置。
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