JP2004019356A - 免震システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基礎部1に立設される支柱14の上端にすべり材16を配設し、基礎部1の上方に設置される軽量構造物2の最下層にすべり板11を配設した免震システムである。
かかる免震システムにおいて、すべり板11の上面に、リブを立設した補強体25を固設すると共に、補強体に、軽量構造物2の最下層の横架材28を直接取付けるようにしたものである。
補強体は、すべり板11の外縁内に設けられた枠体と、前記枠体の内側に交差して設けられたリブとを備えている。
支柱14の上部とすべり材16との間に、中心部にボールベアリングを配設している。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、戸建て住宅等の軽量構造物に使用される免震システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
軽量構造物用免震システムには、地盤、床面等の基礎部と戸建て住宅等の軽量構造物との間に、同軽量構造物の剛性に比べて遙かに低い水平剛性を有する免震部材が使用されている。この種の免震部材としては、すべり始めてからの剛性がほぼゼロのすべり支承と、積層ゴム又は防振ゴムからなり、すべり支承を原点復元させる機能を有する復元ゴムとを組み合わせて設置した免震システムがある。当該免震システムには、戸建て住宅等の軽量構造物のほぼ全荷重をすべり支承で支承するようにして復元ゴムには殆ど荷重をかけないようにするものと、すべり支承と復元ゴムの両方に荷重支承機能を持たせるようにするものがある。
【0003】
すべり支承には、すべり材の一面に、ゴム状弾性体と金属板を交互に積層した積層ゴムを直列に配してなる弾性すべり支承と、すべり材のみ又は薄いゴム状弾性体を直列に配してなる剛すべり支承がある。いずれのすべり支承も、地盤等の基礎部と戸建て住宅等の軽量構造物とに、互いに摺動可能に設けられたすべり板及びすべり材を備えている。特殊な用途でない戸建て住宅等の軽量構造物には、積層ゴム部のない剛すべり支承の方が経済的にも適している。
【0004】
なお、すべり材としては古くから四フッ化エチレン樹脂(PTFE)が用いられているが、近年、PTFEよりも高強度で摩耗性に優れ、経済的なナイロン等のポリアミド系樹脂が用いられるようになった。すべり板はステンレス鋼板やフッ素樹脂等がコーティングされたステンレス鋼板が用いられている。
【0005】
免震システムは、通常時にはすべり材が戸建て住宅等の軽量構造物の荷重を支え、地震時にはすべり材がすべり板上を摺動し、動摩擦係数により発生した水平力(鉛直荷重×動摩擦係数)により地震エネルギーを熱エネルギーとして吸収する。地震時に水平移動した同軽量構造物は復元ゴムによってほぼ原点(通常時の構造物位置)に復帰される。
【0006】
すべり材は静止摩擦係数を超えた水平力が加わるとすべり板上を摺動する。すべり始めてからのすべり支承の剛性は、ほぼゼロになるため、復元ゴムの剛性を任意に設定することで免震層の長周期化が可能となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
規模の小さい軽量構造物では、敷地も狭く免震構造物の地震動に対する応答変位及び余裕空間を確保するのが難しい。
【0008】
例えば、すべり板が基礎部に設置され、すべり材が支柱(束材)を介して軽量構造物の最下層に固設された通常タイプのすべり支承の場合は、余裕空間が確保できずに同すべり支承の近傍に不作為に、基礎立上り部分のような突出物体が配置されていると、軽量構造物が地震動に対する応答変位をしたときにすべり支承が当該突出物体に衝突するおそれがあり、軽量構造物の水平移動の妨げになることがある。
【0009】
上記通常タイプのすべり支承は、すべり板の滑り面が常時上向きで、しかもすべり板が基礎面と殆ど同じレベルに設置されていることから、すべり板のメンテナンスとして、日射等による損傷劣化と、暴風雨、漏水等の浸水及び動物の巣、糞尿、塵埃等による性能低下とを防止する措置を講ずる必要があった。
【0010】
また、すべり支承を用いた免震構造は、従来、すべり板とすべり材とをそれぞれ基礎部及び構造物の最下層に別々に取り付けるようにしているが、この取り付けには、高度の精度が要求され、作業が困難である。
【0011】
免震構造を用いた木造戸建て住宅等は、最下層の横架材(土台)と免震部材の間に、鉄筋コンクリート造等の床板を用いて、その床板及び基礎部間にそれぞれ免震部材が取り付けられていたが、木造在来工法による戸建住宅と比較して、鉄筋コンクリート造り等の床板工事が加わり工事期間が長くなり、工事コストも増加する。
一方、免震構造を用いた木造戸建て住宅であって、鉄筋コンクリート造等の床板を用いない場合は、横架材のたわみが、1/250程度発生するが、このたわみに、従来のすべり支承では対応できないという課題があった。
【0012】
本発明は、かかる点に着目してなされたもので、設置スペースを縮小化することができ、施工精度の向上、工事費の低減を行い得、しかも長期間安定した免震性能を維持し得る免震システムを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は以上の目的を達成するため、次の構成を採用する。
〈構成1〉
基礎部に立設される支柱の上端にすべり材を配設してなるすべり支承本体と、上記基礎部の上方に設置される軽量構造物の最下層に固設され、上記すべり材に摺動自在に当接されるすべり板とを備えた免震システムにおいて、上記すべり板の上面に、リブを立設した補強体を固設し、上記補強体に、上記軽量構造物の最下層の横架材を直接取付けられるようにしたことを特徴とする免震システム。
【0014】
〈構成2〉
構成1記載の免震システムにおいて、上記補強体は、複数枚の板部材が多角形に組立てられて上記すべり板の上面に固着された枠体と、上記枠体の内側に交差して設けられたリブとを備えたことを特徴とする免震システム。
【0015】
〈構成3〉
構成1又は2に記載の免震システムにおいて、上記支柱の上部と上記すべり材との間に、中心部にボールベアリングを介して重ねられた少なくとも2枚の板部材を配設したことを特徴とする免震システム。
【0016】
〈構成4〉
構成1〜3のいずれか1項記載の免震システムにおいて、前記すべり支承本体と、前記補強体を固設したすべり板とを、所定の組立て状態で仮止め材により仮結束したことを特徴とする免震システム。
【0017】
以下、本発明の免震システムにおける実施の形態例について図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施例の概要を示す図であり、図2は同実施例で使用する剛すべり支承を示し、図3は図1に示した構成部品の一部を分解して示す斜視図である。
【0018】
これらの図において、符号1は地盤上に鉄筋コンクリートにより構成された基礎部、2は基礎部1の上方に建設される木造戸建て住宅等の軽量構造物をそれぞれ示している。基礎部1の外縁部に、上方に突出する基礎立上り部分3が設けられている。
本発明の免震システムは、基礎部1に設置されるすべり支承本体10と、軽量構造物2の最下層に固設されるすべり板11とを備えている。
【0019】
図2にすべり支承本体10の要部を示している。すべり支承本体10は、上、下端にフランジ12、13を有する支柱(束材)14と、板状のホルダ15に固設されたすべり材16と、支柱14の上フランジ12の上に配置された中間板部材18と、上フランジ12と中間板部材18との各対向面の中心部にそれぞれ設けられた半球状の凹部間に配設されたボールベアリング(鋼球)19と、中間板部材18及びホルダ15との間に配設された傾き吸収材、緩衝材としてのゴム弾性シート20とから構成されている。
【0020】
支柱14は、すべり材16の取付位置(高さ)を基礎立上り部分3より高くなるように調整するもので、2枚の板部材を横断面十字形に交差させてなるものである。
支柱14の上フランジ12とホルダ15とは中間板部材18を介装した状態で4本のボルト21によりスプリングワッシャ17を介して連結されている。この連結状態を維持できる範囲内で、中間板部材18は上フランジに対してボールベアリング19を介して傾動可能であり、またホルダ15は中間板部材18に対してゴム弾性シート20を介して上下動可能であるようにされている。
【0021】
すべり材16は四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、ナイロン等のポリアミド系樹脂等を主剤として円柱形に成型されている。すべり板11はステンレス鋼板やフッ素樹脂等がコーティングされたステンレス鋼板が用いられている。
ホルダ15及び支柱14の上フランジ12等は、すべり支承の性能を変えない適度な機械的強度を有する寸法とされる。
【0022】
なお、支柱14の上フランジ12と中間板部材18との間には、ボールベアリング19に代えて、図4に示すように、適宜厚さのゴム弾性シート22を介在させるようにしてもよい。なお、図4に示したものは、図2に示した構成とボールベアリング19を設けた箇所を除けば同じであるので、図2と同一符号を付して他の構成の説明を省略する。
【0023】
図3に軽量構造物2の最下層に固設されるすべり板11を示している。すべり板11の上面には、複数のリブ24を立設した補強体25が固設されている。補強体25は、4枚の板部材を、すべり板11の外縁の内側に収まる大きさの四辺形に組立てた枠体と、この枠体の内側に、複数の板部材を放射状に交差して設けたリブ24とから構成され、すべり板11の上面に、溶接等により一体に固着されている。
【0024】
基礎部1と戸建て住宅等の軽量構造物2との間に、すべり支承本体10とすべり板11を設置する際、すべり支承本体10と補強体25付きすべり板11とは、所定の組立て状態でロープ等の仮止め材27により仮止めされて工場から現場まで運搬され、そのまま基礎部1の所定位置に配置され、その後、仮止め材27が除去される。次に、補強体25の枠体に、軽量構造物2の最下層の横架材28を直接、取付ボルト29により取付けるようにする。横架材28は木製の集積材で構成されてもよい。
【0025】
こうして固定された横架材28の上に、軽量構造物2の構造用合板及び仕上げ材等30等が設けられる。構造用合板及び仕上げ材等30の下部には必要に応じて既存の断熱材31が配設される。
上記実施例は上述したように構成され、通常時は軽量構造物2の荷重を支承し、地震時にはすべり材16がすべり板11の滑り面を摺動する。
【0026】
本発明は、戸建て木造住宅だけでなく同様の軽量構造物に適用することができ、以下の効果をもたらす。
本発明は、すべり支承のすべり板11を軽量構造物2の最下層に取り付けることにより、すべり板11の滑り面が常時下向きとなることから、すべり支承の日射等による損傷劣化、暴風雨、漏水等の浸水及び動物の巣、糞尿、塵等による性能低下等が解消され、すべり板11のメンテナンスの措置を講ずる必要がなく、耐久性が向上する。
【0027】
すべり材16とすべり板11との滑り面を、軽量構造物2の基礎に用いられている基礎立上り部分3より上位に位置させたことにより、図1に示すように、基礎立上り部分3とすべり板11をラップさせることができ、少なくともこのラップ部分だけ、上記した従来の免震構造に比べて免震システムの設置スペースを小さくすることが可能である。しかも地震時にすべり支承と基礎立上り部分3との衝突を回避することができる。
【0028】
すべり板11は、補強体25によりリブ補強された構造としたことにより、上部荷重を受けるのに十分な剛性を有しており、軽量構造物2の最下層との間に鉄筋コンクリート製の床板を設けずに、木製の横架材28を直接ボルト29等で取り付けることが可能である。
【0029】
また、軽量構造物2の最下層にコンクリート製の床板を用いないことから、上部構造の撤去、取付が容易であり、軸力の変動に対しても余裕がある。よって、将来、建替え等の改造工事が発生した場合でも再利用が可能である。
【0030】
すべり支承本体10とすべり板11とが工場にて仮止め材27により一体として組立て製作されて運搬され、工事現場で基礎部1分に取り付けられることにより、作業者の質にかかわず施工精度が著しく向上し、また、その後、構造物の建設時に仮止め材27を取り外すことにより、工事中、構造物が安定し、工事中の安全性が向上する。
【0031】
すべり支承本体10は、図2に示すように2枚の板部材(支柱14の上フランジ12と中間板部材18)間にボールベアリング19を挿置したことで、軽量構造物2の最下層の木材の種類、乾燥状態、使用される箇所等により、ねじれ、亀裂等の変形、あるいは長期間におけるクリープ、たわみ等の変形が発生しても、このような変形等に対して追従することができる。また傾き吸収用のゴム弾性シート20が配されているため、地震時のすべり板11に発生する不規則な回転に対しても追従することができる。
【0032】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、すべり支承が横架材のたわみに追従可能であり、すべり板上面にリブ補強を設けたことにより、直接、すべり板に横架材を取り付けことができる。また、工場においてすべり板とすべり支承本体とを仮止め材を用いて一時的に一体化し、この一体化の状態で運搬及び現場での据付を行うことにより、施工の合理化、施工精度の向上、工事コストの低減をもたらし、しかも長期間にわたって安定した免震性能を発揮するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる免震システムの一実施例を示す概略図である。
【図2】同実施例において使用するすべり支承本体の主要部を示す図で、(a)は一部縦断正面図、(b)は底面図である。
【図3】図1に示した構成部品の一部を展開して示す斜視図である。
【図4】本発明の他の実施例を示す一部縦断正面図である。
【符号の説明】
1 基礎部
2 軽量構造物
3 基礎立上り部分
10 すべり支承本体
11 すべり板
12、13 フランジ
14 支柱(束材)
15 ホルダ 16 すべり材
18 中間板部材
19 ボールベアリング
20、22 ゴム弾性シート
24 リブ
25 補強体
27 仮止め材
28 横架材
Claims (4)
- 基礎部に立設される支柱の上端にすべり材を配設してなるすべり支承本体と、前記基礎部の上方に設置される軽量構造物の最下層に固設され、前記すべり材に摺動自在に当接されるすべり板とを備えた免震システムにおいて、
前記すべり板の上面に、リブを立設した補強体を固設し、前記補強体に、前記軽量構造物の最下層の横架材を直接取付けられるようにしたことを特徴とする免震システム。 - 請求項1記載の免震システムにおいて、
前記補強体は、複数枚の板部材が多角形に組立てられて前記すべり板の上面に固着された枠体と、前記枠体の内側に交差して設けられたリブとを備えたことを特徴とする免震システム。 - 請求項1又は2に記載の免震システムにおいて、
前記支柱の上部と前記すべり材との間に、中心部にボールベアリングを介して重ねられた少なくとも2枚の板部材を配設したことを特徴とする免震システム。 - 請求項1〜3のいずれか1項記載の免震システムにおいて、
前記すべり支承本体と、前記補強体を固設したすべり板とを、所定の組立て状態で仮止め材により仮結束したことを特徴とする免震システム。
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