JP2004018592A - 異形押出成形建材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】再生ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)20〜98重量部、ポリプロピレン系樹脂(B)1〜50重量部、及び変性エチレン・α−オレフィン共重合体(C)1〜30重量部(但し、前記3成分の合計量を100重量部とする)で構成されていることを特徴とする異形押出成形建材。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、異形押出成形建材に関するもので、より詳細には再生ポリエチレンテレフタレート樹脂から形成され、諸物性、異形押出成形性及び経済性に優れ、環境にも優しい異形押出成形建材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート樹脂は、延伸成形性に優れていると共に、その延伸成形体は、機械的強度、耐衝撃性等の機械的特性や、ガスバリヤー性にも優れているため、延伸ブロー成形プラスチックボトルとして広く使用され、その優れた透明性と適度なガスバリヤー性とにより、液体洗剤、シャンプー、化粧品、醤油、ソース等の液体商品の外に、ビール、コーラ、サイダー等の炭酸飲料や、果汁、ミネラルウオータ等の他の飲料容器に広く使用されている。
【0003】
ポリエステル製容器の使用量が増大するにつれて、廃棄処理の困難なことや、資源の有効利用の見地から、樹脂の再生利用が検討されてきている。この点に関して、比較的リサイクル成形・加工が容易であると言われている繊維やシートへの再成形、再利用が進んでいるが、ポリエチレンテレフタレートボトルの回収率が近年大きく増加するにつれて、繊維以外の成形加工品の分野に適用しようとする動きが活発化しつつある。
【0004】
ポリエステルを他のポリマーとアロイ化することにより、成形加工品の用途に適用させようとすることは、既に多くの提案がなされており、例えば特開2001−106886号公報には、ポリエステル系樹脂(A)30〜90重量%、カルボン酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体(B)5〜20重量%、及びプロピレン系重合体(C)または密度0.920未満のエチレン系重合体(D)50〜80重量%からなる樹脂組成物で形成されていることを特徴とするポリエステル系ポリマーアロイが記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ポリエチレンテレフタレート樹脂は、弾性、引っ張り強さ、耐衝撃性、低い熱膨張性等の基本的物性においては、他の樹脂に匹敵する能力を有するものの、樹脂を溶融したときの粘度が極端に低く、樹脂の一般的な押出成形の用途、例えば、一般成形品や異形押出成形品の用途には未だ適用できるに至っていない。
また、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、ガラス転移点(Tg)が約81℃とかなり高いものの、成形時のメルトテンションが低く、異形押出成形品への加工を難しいものとしている。
更に、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、熱や水分の影響下に加水分解を受けやすく、この加水分解により固有粘度(IV)が低下して物性低下が顕著となるという問題も有している。
更にまた、ポリエチレンテレフタレートに他の改質用樹脂を配合した場合には、他の樹脂の配合により、樹脂組成物全体としての物性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、ポリエチレンテレフタレート樹脂リサイクル品から形成された異形押出成形建材を提供するにある。
本発明の他の目的は、ポリエチレンテレフタレート樹脂が本来有する優れた物性が保持され、これに組み合わせる樹脂成分の相溶化により、最終樹脂組成物の溶融粘度が顕著に向上され、その結果として異形押出成形性が顕著に向上すると共に、成形時のメルトテンションが高く維持され、更に加水分解に伴う物性低下や樹脂の複合化に伴う物性低下が防止された異形押出成形建材を提供するにある。本発明の更に他の目的は、ボトルとして用いたポリエステル及びキャップとして用いたポリプロピレンが有効にリサイクル使用された異形押出成形建材を提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)20〜98重量部、ポリプロピレン系樹脂(B)1〜50重量部、及び変性エチレン・α−オレフィン共重合体(C)1〜30重量部(但し、前記3成分の合計量を100重量部とする)で構成されていることを特徴とする異形押出成形建材が提供される。
本発明の異形押出成形建材においては、
1.再生ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)がペットボトル再生品であり、ポリプロピレン系樹脂(B)がボトルキャップを主成分とした再生品であること、
2.メルトインデックス(190℃、2.16kg)が0.5〜30g/10minの線状低密度ポリエチレン(D)を1〜30重量部含有していること、
3.再生ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)のマトリックス中にポリプロピレン系樹脂(B)が海島状に存在していること、
4.再生ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)末端並びに変性エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の極性基に対して反応性を有する鎖延長剤(E)を更に含有すること、
5.肉厚が3mm以下であること、
が好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
[作用]
本発明は、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)、ポリプロピレン系樹脂(B)、及び変性エチレン・α−オレフィン共重合体(C)を上記組成比で組み合わせると、異形押出成形建材の成形が可能となるという知見に基づくものである。これら3成分の樹脂の組み合わせでは、ポリエチレンテレフタレート樹脂の欠点であるドローダウン性が改善され、異形押出成形建材への成形性を向上させることができる。特に、本発明で用いる再生PET樹脂では、バージンのPET樹脂に比してドローダウン傾向が大きいが、本発明では、再生PET樹脂を用いた場合にも、ドローダウン傾向の改善が顕著であるという事実は注目に値する。
【0009】
ポリエチレンテレフタレート樹脂が樹脂成形性に劣っているのは、極端に低い溶融粘度によるものであるが、これを改善するため他の樹脂成分と複合化した場合には、この複合化により導入される不均一構造が成形性低下及び物性低下の大きな原因となっていると考えられる。
本発明の異形押出成形建材では、成形性が顕著に向上し、物性低下もある程度抑えられているが、これは樹脂組成物における相溶性の向上に伴って、樹脂組成物の溶融粘度が増加している構成としているため、複合化による物性低下が各成分の相溶化によって防止され、熱的、機械的に見た内部組織も一様となっていることに関連するものと認められる。
【0010】
本発明の異形押出成形建材では、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)20〜98重量部、ポリプロピレン系樹脂(B)1〜50重量部、及び変性エチレン・α−オレフィン共重合体(C)1〜30重量部が組み合わされる(但し、これら3成分の合計量を100重量部とする)。
再生ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)は、本発明の中心となる樹脂であり、本発明では、容器用に用いられたポリエチレンテレフタレートを、異形押出可能な形で上記の用途にリサイクルすることを可能ならしめるものである。
一方、ポリプロピレン系樹脂(B)は、ポリエチレンテレフタレートのマトリックス中に海島状に存在していることにより、樹脂組成物の溶融粘度の向上に寄与する成分であり、成形物のマクロ的な諸物性の向上にも寄与するものである。変性エチレン・α−オレフィン共重合体は、それ自体ポリエチレンテレフタレートとの相溶性に優れており、しかも配合される他の樹脂成分、即ち、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂との相溶性を向上させるようにも作用するものであり、これにより、ポリプロピレン系樹脂(B)がポリエチレンテレフタレートのマトリックス中に海島状に存在し、上記で述べたポリプロピレン系樹脂の作用が有効に発現する。
【0011】
一般に、ポリエチレンテレフタレート樹脂製の容器においては、容器に組み合わせるキャップとして、ポリプロピレン系樹脂製のキャップが使用されているが、本発明において、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂をペットボトル再生品とし、ポリプロピレン系樹脂をボトルキャップを主成分とした樹脂組成物とすることにより、容器及びキャップの同時且つ同梱的なリサイクル処理が可能となる。
【0012】
本発明では、メルトインデックス(190℃、2.16kg)が0.5〜30g/10minの線状低密度ポリエチレン(D)を1〜30重量部添加して、成形加工時の溶融張力を高めることが特に好ましい。
上記の融解特性を有する線状低密度ポリエチレンを、補足配合することにより、異形押出成形時の加工性を顕著に向上させ、成形品の機械的特性や熱的特性を顕著に向上させることができる。
【0013】
本発明においては、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)のマトリックス中にポリプロピレン系樹脂(B)が海島状に存在していることが望ましい。この構造では、ポリエチレンテレフタレート樹脂の結晶化を促進する核剤としてのポリプロピレン系樹脂の機能が有効に発現され、樹脂組成物の結晶化速度が著しく向上するという利点がもたらされる。
これにより、成形品の冷却速度ムラによる結晶化度の違い(バラツキ)が緩和され、物性のバラツキの少ない成形品が得られる。
本発明によればかくして、従来のポリエチレンテレフタレート樹脂の異形押出成形では、工業的に得ることが難しかった厚肉品、偏肉品、中空品等の成形が可能となるものである。
【0014】
本発明においては、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)末端並びにエチレン系・変性α−オレフィン共重合体(C)の極性基に対して反応性を有する鎖延長剤(E)、特にカルボジイミド基を含有するカルボジイミド化合物を更に含有することが好ましい。
ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)は、加工時の環境により加水分解を受け、それによる粘度低下が、加工品の品質低下の原因となるが、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)末端並びに変性エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の極性基に対して反応性を有する鎖延長剤(E)、特にカルボジイミド基を含有するカルボジイミド化合物を共存させることにより、加水分解による品質劣化を防止することができる。
このようなカルボジイミド化合物としては、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド等を挙げることができる。
【0015】
再生ポリエチレンテレフタレート樹脂(A):
本発明において、エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルは、延伸ブロー成形による容器の製造に利用されたものである。この樹脂はエステル反復単位の大部分、一般に70モル%以上、特に80モル%以上をエチレンテレフタレート単位を占めるものであり、ガラス転移点(Tg)が50乃至90℃、特に55乃至80℃で、融点(Tm)が200乃至275℃、特に220乃至270℃にある熱可塑性ポリエステルが好適である。
【0016】
ホモポリエチレンテレフタレートが耐熱圧性の点で好適であるが、エチレンテレフタレート単位以外のエステル単位の少量を含む共重合ポリエステルも使用し得る。
テレフタル酸以外の二塩基酸としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;の1種又は2種以上の組合せが挙げられ、エチレングリコール以外のジオール成分としては、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0017】
また、エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルにガラス転移点の比較的高い例えばポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート或いはポリアリレート等を5%〜25%程度をブレンドした複合材を用い、それにより比較的高温時の材料強度を高めることも行われており、このような複合材のリサイクル品も勿論使用できる。
さらに、ポリエチレンテレフタレートと上記のガラス転移点の比較的高い材料とを積層化したもののリサイクル品を用いることもできる。
【0018】
本発明に用いるエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルは、少なくともフィルムを形成するに足る分子量を有するべきであり、用途に応じて、射出グレード或いは押出グレードのものが使用される。その固有粘度(I.V.)は一般的に0.6乃至1.4dL/g、特に0.63乃至1.3dL/gの範囲にあるものが望ましい。
【0019】
再生ポリエチレンテレフタレート樹脂としては、使用済みポリエステル容器を回収し、異物を除去し、洗浄し、乾燥して得られる粒状乃至粉末状のポリエステルが使用される。
リサイクルポリエステルは、単独で使用することもできるし、バージンのポリエステルとのブレンド物として用いることもできる。リサイクルポリエステルが低下した固有粘度を有する場合には、バージンのポリエステルとブレンドして用いることが好ましく、この場合、リサイクルポリエステル:バージンのポリエステルの配合比は、50:50乃至80:20の重量比にあることが好ましい。また、この場合には、リサイクルポリエステルとバージンのポリエステルとの合計量が、前述した20〜98重量部の範囲となるようにする。
【0020】
ポリプロピレン系樹脂(B):
組み合わせで用いるポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、或いはプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体とが挙げられ、ここで上記共重合体はランダム共重合体或いはブロック共重合体であることができる。
上記α−オレフィンとしては、炭素数2乃至20のオレフィン、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンなどが挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂における他のα−オレフィン類の含有量は5モル%以下であることが好ましい。
【0021】
ポリプロピレン系樹脂としては、メルトインデックス(230℃、2.16kg)が0.5乃至20g/10minの範囲にあるものを用いることが、ポリエチレンテレフタレートとの相溶性向上と、この相溶性向上による溶融粘度向上の作用効果の点で望ましい。
【0022】
変性エチレン・α−オレフィン共重合体(C):
本発明に用いる変性エチレン・α−オレフィン共重合体(C)は、それ自体公知の樹脂であり、エチレン・α−オレフィン共重合体がグラフト変性等により変性されたものである。
共重合体(C)におけるα−オレフィンとしては、特に炭素原子数3〜20のα−オレフィンが用いられているのが一般的であり、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンなどである。
【0023】
共重合体(C)の変性には、一般に不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフトする手段が採用されており、グラフトされる不飽和カルボン酸としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられ、また不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩等が挙げられる。本発明に用いる共重合体も、公知の変性エチレン・α−オレフィン共重合体と同様に、これらのモノマーで変性されたものであってよい。
【0024】
共重合体(C)におけるエチレン含有量は、一般に60乃至90重量%、特に70乃至90重量%の範囲にあるが、本発明においても、エチレン含有量が上記範囲にあるものから、要求される相溶性に応じて適当なエチレン含有量のものが使用される。
また、不飽和カルボン酸またはその誘導体等のグラフト変性量は、もとの樹脂100重量部当たり0.01乃至5重量部の量であることが好ましい。
【0025】
本発明に用いる変性エチレン・α−オレフィン共重合体は、メルトインデックス(230℃、2.16kg)が0.2乃至20g/10minの範囲にあるものを用いることが、ポリエチレンテレフタレートやプロピレン系重合体との相溶性向上と、この相溶性向上による溶融粘度向上の作用効果の点で望ましい。
【0026】
本発明の異形押出成形建材には、本発明の目的から逸脱しない範囲内で、それ自体公知の各種の添加剤が配合されていてよい。このような添加剤の例として、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、顔料、充填剤、核剤、難燃剤等を挙げることができるが、勿論この例に限定されない。
【0027】
[異形押出成形]
本発明では、前述した各成分を含有する樹脂組成物を異形押出断面を有する建材に異形押出成形する。
樹脂組成物の押出成形に際して、各樹脂成分をドライブレンド或いはメルトブレンドにより混合することができる。ドライブレンドには、ヘンシェルミキサー、ホモミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等の乾式混合機を用いることができ、前述した各樹脂成分を所定の割合でブレンドする。
【0028】
一般に必要ないが、所望によっては各樹脂成分をメルトブレンドすることもでき、このメルトブレンドには、バンバリーミキサー、ニーダー、一軸或いは多軸の押出機を用いることができる。
【0029】
本発明では、樹脂組成物の異形押出成形にベント付き多軸押出機を用いることが好ましい。即ち、前述した各成分を含有する樹脂組成物をベント付多軸押出機中で水分を強制排気しながら可塑化し、得られた可塑化樹脂を異形押出成形物に押出成形する。
【0030】
樹脂組成物の混練に多軸押出機を用いることにより、一軸押出機を用いる場合に比して、より低温、低圧、低速下での樹脂の可塑化が可能となり、このため、可塑化時の樹脂の熱減成による固有粘度(IV)の低下を抑制して、押出成形が可能となる。
ポリエステルの可塑化の際水分が存在すると、ポリエステルの加水分解が進行し、この加水分解によっても固有粘度(IV)の低下が発生する。本発明においては、多軸押出機により比較的低温、低圧、低速での樹脂の可塑化を行うと共に、可塑化中に発生する水分をも押出機サイドのベント孔から強制的に排気することにより、水分によるポリエステルの加水分解を抑制することができる。
【0031】
本発明は、リサイクル樹脂(PCR)を異形押出成形品への成形に利用するものであるが、リサイクル樹脂は、バージンの樹脂に比べて既に固有粘度(IV)の低下が生じており、また水分の吸着及び吸収も行われているため、成形品の製造に利用する際には固有粘度(IV)の低下が生じやすい状態となっているものである。
本発明では、このようなリサイクル樹脂であっても、ベント付多軸押出機で可塑化を行うことにより、固有粘度(IV)の実質上の低下を抑制しつつ、ボトルに用いたPET樹脂を再度異形押出成形建材の製造という用途に再利用するというマテリアルリサイクルが可能となるのであって、これは本発明の顕著な利点の一つである。
【0032】
本発明に用いるベント付多軸押出機は、バレルとバレル内に回転可能に支持される複数本のスクリューとからなっている。バレルの一方の端部には樹脂の供給口が形成されており、バレルの他方の端部には可塑化された樹脂の排出口(ダイヘッド)が形成されており、バレルの供給口と排出口との中間には、ベント孔が設けられている。このベント孔は、単独のものであってもよいし、間隔をおいて配置された複数個のものでもよい。
ベント孔は、真空ポンプに接続し、押出機内の水分を強制的に排気するようにする。ポリエステル樹脂の加水分解による固有粘度(IV)の低下を抑制するためには、ベント孔における真空圧力を−0.06MPa以下、特に−0.08MPa以下に維持することが望ましい。
【0033】
二軸押出機は、スクリューの噛み合い形式により、噛み合い型、非噛み合い型、それらの中間の部分噛み合い型に分類され、更にスクリューの回転方向により同方向回転型と異方向回転型とに分類される。また、スクリュー軸の配置に関しても、スクリュー軸が互いに平行のものと、斜交のものとがある。本発明においては、樹脂の種類や要求される混練の程度に応じて、上述した任意のスクリュー形式の押出機を用いて、樹脂の可塑化を行うことができる。
本発明では、上に例示した二軸押出機のうち、構成の最も簡単な非噛み合い型二軸押出機を用いた場合にも、熱減成や加水分解による固有粘度低下を抑制しながら、効率よく異形押出成形体の製造を行うことができる。
【0034】
なお、二軸押出機におけるスクリューのL/D(スクリュー長さと直径の比)は、広範囲に変化させることができ、一般に20乃至40の範囲にあるのが好ましい。
また、二軸押出機における樹脂溶融部の温度は、ポリエチレンテレフタレート樹脂の融点(Tm)を基準にして、Tm+5℃乃至Tm+50℃の範囲、特にTm+5℃乃至Tm+20℃の範囲にあるのが好適である。
【0035】
本発明によればかくして、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂含有組成物が異形押出成形された建材を提供することができる。ここで、異形とは、容器プリフォームのように対称系のものを除く意味であり、その形態は、一般に扁平構造のもの、特に肉厚が3mm以下のものが適している。
異形押出成形建材としては、具体的には、壁紙(クロス)のコーナー下地材、左官用の埋め込み定規材等が挙げられるが、勿論、これらの例に限定されない。
【0036】
この異形押出成形建材では、ポリエチレンテレフタレート樹脂が本来有する弾性、引っ張り強さ、耐衝撃性、低い熱膨張性等の基本的物性が保持されていると共に、その欠点である異形押出成形性も顕著に改善されているので、容器として用いたポリエステルが建材として有効にリサイクル使用できるという利点が得られるものである。
【0037】
【実施例】
本発明を次の例により説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
【0038】
実施例中における測定及び評価は以下の通り行った。
(1)破断点伸度:JIS K7113に準拠して測定を行った。
(2)床下到達時間:ダイから押出物が床下(高さ1.2m)にまで垂下する時間を測定し、ドローダウン性の評価とした。数値が大きいほど耐ドローダウン性に優れていることを示す。
(3)成形性:クロスのコーナー下地材を成形し、成形物の観察から成形性を次の基準で評価した。
◎:成形体に偏肉や表面のざらつきが全くなく、成形体の形状及び寸法の精度が高く、成形性に顕著に優れている。
○:成形体に偏肉や表面のざらつきが少なく、成形体の形状及び寸法の精度が良好であり、成形性に優れている。
△:成形体に偏肉や表面のざらつきがあり、成形体の形状及び寸法の精度が低く、成形性にやや劣っている。
×:成形体に偏肉や表面のざらつきが多く、成形体の形状及び寸法の精度が不良であり、成形性に劣っている。
【0039】
以下の例で用いた樹脂は、次の通りである。
(1)ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)
PETボトル粉砕品
(2)ポリプロピレン樹脂(PP)
PP製キャップ粉砕品
(3)変性エチレン・α−オレフィン共重合体
エチレン含量80モル%、α−オレフィン20モル%からなる変性エチレン・α−オレフィン共重合体に無水マレイン酸をグラフト共重合した変性体。
(4)鎖延長剤
カルボジイミド化合物
(5)線状低密度ポリエチレン(LLDPE)
エチレン含量94モル%のエチレン・1−ヘキセン共重合体
【0040】
[実施例1]
PET80重量部、PP12重量部及び変性エチレン・α−オレフィン共重合体8重量部を、常温にてドライブレンドし(10分)、ベント付2軸押出機の乾燥機付ホッパーに供給して、脱気条件下に溶融混練し、異形断面ダイを通して空気中に押出し、更にサイジングダイを通した後冷却して、クロスのコーナー下地材に成形した。
得られた結果を表1に示す。
【0041】
[実施例2]
鎖延長剤0.5重量部を配合する以外は、実施例1と同様にして下地材を成形した。
得られた結果を表1に示す。
【0042】
[実施例3]
更に線状低密度ポリエチレン10重量部を配合する以外は、実施例1と同様にして下地材を成形した。
得られた結果を表1に示す。
【0043】
[比較例1]
PET100重量部を単独で用いる以外は、実施例1と同様にして下地材を成形した。
得られた結果を表1に示す。
【0044】
[比較例2]
鎖延長剤0.5重量部を追加配合する以外は、比較例1と同様にして下地材を成形した。
得られた結果を表1に示す。
【0045】
[比較例3]
線状低密度ポリエチレン10重量部を追加配合する以外は、比較例1と同様にして下地材を成形した。
得られた結果を表1に示す。
【0046】
[比較例4]
PP10重量部を追加配合する以外は、比較例1と同様にして下地材を成形した。
得られた結果を表1に示す。
【0047】
[比較例5]
鎖延長剤0.5重量部及び線状低密度ポリエチレン10重量部を追加配合する以外は、比較例1と同様にして下地材を成形した。
得られた結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリエチレンテレフタレート樹脂リサイクル品から形成された異形押出成形建材が提供される。
この異形押出成形建材は、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)20〜98重量部、ポリプロピレン系樹脂(B)1〜50重量部、及び変性エチレン・α−オレフィン共重合体(C)1〜30重量部(但し、前記3成分の合計量を100重量部とする)で構成されているが、ポリエチレンテレフタレート樹脂が本来有する優れた物性が保持され、これに組み合わせる樹脂成分の相溶化により、異形押出成形に用いる樹脂組成物の溶融粘度が顕著に向上し、成形時のドローダウン性が抑制され、その結果として、異形押出成形性が顕著に向上すると共に、更に加水分解に伴う物性低下や樹脂の複合下に伴う物性低下が有効に防止されている。
本発明では、ボトルとして用いたポリエステル及びキャップとして用いたポリプロピレンが有効に異形押出成形建材としてリサイクルできるという利点がある。
Claims (6)
- 再生ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)20〜98重量部、ポリプロピレン系樹脂(B)1〜50重量部、及び変性エチレン・α−オレフィン共重合体(C)1〜30重量部(但し、前記3成分の合計量を100重量部とする)で構成されていることを特徴とする異形押出成形建材。
- 再生ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)がペットボトル再生品であり、ポリプロピレン系樹脂(B)がボトルキャップを主成分とした再生品であることを特徴とする請求項1に記載の異形押出成形建材。
- メルトインデックス(190℃、2.16kg)が0.5〜30g/10minの線状低密度ポリエチレン(D)を1〜30重量部含有していることを特徴とする請求項1または2に記載の異形押出成形建材。
- ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)のマトリックス中にポリプロピレン系樹脂(B)が海島状に存在していることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の異形押出成形建材。
- 再生ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)末端並びに変性エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の極性基に対して反応性を有する鎖延長剤(E)を更に含有することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の異形押出成形建材。
- 肉厚が3mm以下であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の異形押出成形建材。
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