JP2004018539A - 高熱伝導性粉末およびそれを用いた樹脂組成物および成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】電動機や半導体等のモールド樹脂の充填材として好適な高熱放散性と低比重性を兼ね備えた粉末と、これを用いた樹脂組成物およびその成形体を得る。
【解決手段】本発明の複合粉末は、樹脂粒子2の表面にセラミックス3の皮膜が形成されたもので、セラミックスの熱伝導率が5.0W/mK以上であり、且つ複合粉末の平均粒径が10〜500μmである。
また、複合粉末の平均半径に対する前記セラミックスの厚さの比率(皮膜率)を0.05〜0.5としてもよい。また、セラミックスをSiO2、Al2O3、TiO2、MgO、SiC、AlNおよびSi3N4から成る群より選択された1種類以上としてもよい。
また、この高熱伝導性粉末を配合して樹脂組成物および樹脂成形体としてもよい。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の複合粉末は、樹脂粒子2の表面にセラミックス3の皮膜が形成されたもので、セラミックスの熱伝導率が5.0W/mK以上であり、且つ複合粉末の平均粒径が10〜500μmである。
また、複合粉末の平均半径に対する前記セラミックスの厚さの比率(皮膜率)を0.05〜0.5としてもよい。また、セラミックスをSiO2、Al2O3、TiO2、MgO、SiC、AlNおよびSi3N4から成る群より選択された1種類以上としてもよい。
また、この高熱伝導性粉末を配合して樹脂組成物および樹脂成形体としてもよい。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電動機や半導体等のモールド樹脂の充填材として好適である高熱伝導で且つ低比重である絶縁性の粉末と、これを用いた樹脂組成物およびその成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動機、トランスなどのコイル装置やパワーモジュール、LSIなどの半導体デバイスは、近年、その小型化や高密度化、および高出力化等に伴い、作動時の発熱が大きな問題となっている。これは、発熱に起因する装置やデバイスの特性の不安定化や寿命の劣化という問題があるためであり、限界温度を超える温度に昇温するのを防止するため、コイルや半導体を封止するモールド樹脂の熱伝導率を大きくし、効率良く熱を放散することが重要となっている。
これに対応するため、これまでは主として絶縁材料であり熱伝導性の良いアルミナ(Al2O3)やシリカ(SiO2)などを充填したモールド樹脂でコイル装置や半導体デバイスを封止することで、熱放散性を改善する方法がすでに一般化している。この際、より高い熱放散性を得るためにAl2O3やSiO2などは、可能な限り高濃度に樹脂中へ充填される場合が多い。
また、Al2O3やSiO2より熱伝導率が高いシリコンカーバイト(SiC)や窒化アルミニウム(AlN)などを樹脂に充填することによって、さらなる熱放散特性をモールド樹脂に付与することも検討され始めている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらのセラミックス材料は樹脂と比較して比重が大きいため、樹脂との組成物を作り、これを保存したりまたは加熱して注形したりする際に、セラミックス材料が樹脂組成物中で沈降してしまい、成形体の中でセラミックスが密な部分と疎な部分が生じ、その結果、疎な部分においては熱放散性が極めて悪くなりばかりか、さらには密な部分との熱放散性の差により成形体に割れや歪が発生してしまう問題点があった。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、電動機や半導体等のモールド樹脂の充填材として好適な高熱放散性と低比重性を兼ね備えた粉末と、これを用いた樹脂組成物およびその成形体を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため請求項1に記載の発明は、樹脂粒子の表面にセラミックスの皮膜が形成された複合粉末であって、前記セラミックスの熱伝導率が5.0W/mK以上であり、且つ前記複合粉末の平均粒径が10〜500μmであることを特徴とする高熱伝導性粉末である。
また、請求項2に記載の発明は、前記複合粉末の平均半径に対する前記セラミックスの厚さの比率(皮膜率)が0.05〜0.5であることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性粉末である。
また、請求項3に記載の発明は、前記のセラミックスが、SiO2、Al2O3、TiO2、MgO、SiC、AlNおよびSi3N4から成る群より選択された少なくとも1種類から成ることを特徴とする請求項1または2に記載の高熱伝導性粉末である。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3に記載の高熱伝導性粉末を配合した樹脂組成物および樹脂成形体である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を図に基づいて詳述する。
(第1実施例)
本発明の第1実施例を図1に示す。図1は、高熱伝導性粉末の断面構造を示す模式図である。図において、1は高熱伝導性粉末、2は中心層となる樹脂粒子、3は皮膜層のセラミックスである。
樹脂粒子2はエポキシ樹脂を用いた。すなわち、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂に対して、硬化剤として無水ピロメリット酸を55部加え150℃で24時間加熱し硬化させ、このエポキシ樹脂硬化物を粉砕装置により粉砕した後、このエポキシ樹脂硬化物を分級装置にて分級し、平均粒径の異なる数種類の樹脂粒子を作製した。樹脂粒子2の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布分析装置(株式会社島津製作所製SALD−2100)により測定して確認を行った。
また、セラミックス3としてAl2O3を用いた。セラミックス3の樹脂粒子2への被覆は、スパッタリングにより行った。被覆に用いたスパッタリング装置を図2の模式図に示す。回転バレル5の中に、先に粉砕、分級したエポキシ樹脂よりなる樹脂粒子をそれぞれ導入し、油拡散ポンプ6および油回転ポンプ7により回転バレル5内を真空にし、その後、回転バレル5を回転させながらAl2O3のターゲット8にDC電源9によりDC電源を印加してスパッタリングコーティングを行った。
被覆するAl2O3の膜厚はスパッタリングを行う時間によって変化させ、表1に示す平均粒子径100μmで皮膜率(セラミックス皮膜の厚さ/複合粉末サンプルの平均半径)が0.02〜0.6の複合粉末サンプルを作製した。
【0006】
【表1】
【0007】
作製した粉末サンプルは、レーザー回折式粒度分布分析装置(株式会社島津製作所製SALD−2100)により測定することで平均粒径を確認した。
以上の各工程を経て得られた数種類の複合粉末サンプル(50体積%)をビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシとメタフェニレンジアミンからなるエポキシ樹脂(50体積%)に加え混練して、それぞれ樹脂組成物を得た。
また、比較のために平均粒子径100μmのAl2O3粉末、または先に作製した樹脂粒子(50体積%)をビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシとメタフェニレンジアミンからなるエポキシ樹脂(50体積%)に加えて混練して、樹脂組成物をそれぞれ作製した。表2に用いたAl2O3粉末または樹脂粒子の平均粒径と比重を示す。
【0008】
【表2】
【0009】
次に、これらを脱泡処理し、金型内に流し込んで、100℃にて24時間、加熱硬化させた。そして、得られた成形体より直径10mmφ×厚さ1mmのディスクを切り出した。
以上の操作により、種々の複合粉末サンプルをエポキシ樹脂に対して50体積%含有する直径10mmφ×厚さ1mmのディスク状のエポキシ樹脂成形体と、平均粒子径100μmのAl2O3粉末または樹脂粒子を含む同様の成形体を得た。
次に、これらのエポキシ樹脂成形体について、レーザーフラッシュ法により熱伝導率をそれぞれ測定した。
図3に、Al2O3を皮膜した複合粉末サンプルの皮膜率に対する比重の関係と複合粉末サンプルを用いたエポキシ樹脂成形体の熱伝導率の関係を示す。
これから分かるように、エポキシ樹脂成形体の熱伝導率は複合粉末サンプルの皮膜率が0.05から大幅に向上し、皮膜率の上昇とともにさらに向上している。しかし、皮膜率が0.4からはほぼ一定の値となり、比較試料であるAl2O3粉末を含むエポキシ樹脂成形体とほぼ同じ熱伝導率となっている。これは、樹脂粒子2に皮膜したAl2O3量の増加とともに複合粉末サンプルの熱伝導率が向上し、これとあわせて成形体自体の熱伝導率も向上してゆくが、エポキシ樹脂成形体内部において、熱伝導の経路は主に高密度に充填され、互いに接触した複合粉末サンプルやAl2O3粉末の表層間であるため、皮膜率が0.5以上となると、成形体の熱伝導率はほぼ一定となり、それ以上皮膜率を上げても熱伝導率の向上が殆ど無くなり、またその値もAl2O3粉末を用いたものと同じになる。
この様に、複合粉末サンプルの皮膜率が0.5以上になると、成形体の熱伝導率をそれ以上、顕著に向上させることが望めなくなるとともに、特に0.6以上では複合粉末の比重がAl2O3の比重に近くなるために、低比重化の効果も僅かとなる。したがって、皮膜率は0.05〜0.5の範囲とすることが適当である。
また、本実施例において、複合粉末の平均粒径を100μmとしたが、これより微小なもの、またはこれより大きな平均粒子径をもつものであっても同様の効果を得ることが出来る。しかしながら、平均粒径が10μm以下になると、樹脂と混練する際に、複合粉末が凝集を起こし、均一な樹脂組成物を得る事ができない。また、500μm以上となると電動機の微細なコイル線間や半導体の微細部品間などに複合粉末を含む樹脂組成物を導入してゆくことが出来なくなる。したがって、複合粉末の平均粒径は、10〜500μmの範囲内とすることが適当である。
なお、本実施例では樹脂粒子としてエポキシ樹脂を用いたが、これに限らずアクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂や不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂など、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂を用いることが出来る。また、複合粉末を用いた樹脂組成物についても同様に、使用樹脂としてアクリル樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂や不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることができ、中でもエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が、その絶縁性や強度の面から電動機のコイルや半導体のモールドに使用する樹脂として好ましい。また、樹脂組成物においては、複合粉末と樹脂との密着力を向上させるためのカップリング剤や可撓性を付与させるためのエラストマーなど、種々の添加剤を併用することができる。
【0010】
(第2実施例)
本実施例は、樹脂粒子2に被覆するセラミックスの種類を種々変えて行ったものである。
樹脂粒子2は、第1実施例と同様にエポキシ樹脂を用いて、平均粒径50μmのものを作製した。
樹脂粒子2にセラミックス3を被覆する方法についても第1実施例と同様に、スパッタリングコーティングにより被覆を行った。
皮膜するセラミックス3は、酸化ケイ素(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、炭化ケイ素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)および比較として酸化ジルコニウム(ZrO2)をそれぞれ用い、スパッタリングを行う時間により皮膜率を制御し、平均粒径100μmで、SiO2、TiO2、MgO、SiC、AlN、Si3N4およびZrO2皮膜を有する7種類の複合粉末サンプルを作製した。樹脂粒子2および複合粉末の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布分析装置により、それぞれ測定して確認した。
次に、各複合粉末を用いて、第1実施例と同様な手法でエポキシ樹脂成形体を作製し、これから直径10mmφ×厚さ1mmのディスクを切り出し、これらのエポキシ樹脂成形体について、レーザーフラッシュ法により熱伝導率をそれぞれ測定した。表3に各エポキシ樹脂成形体の熱伝導率の測定結果と用いた複合粉末の比重、皮膜率および皮膜セラミックスの比重などをそれぞれ示す。
【0011】
【表3】
【0012】
表3に示すように、SiO2、TiO2、MgO、SiC、AlN、Si3N4およびZrO2のいずれを皮膜セラミックスとして用いた場合においても、皮膜率を0.5として作製した複合粉末サンプルは元のセラミックスの比重と比較して7〜10%程度低比重化されて効果のあることがわかる。
また、熱伝導率が大きな(5.0W/m・K以上)SiO2、TiO2、MgO、SiC、AlN、Si3N4などのセラミックスを皮膜した複合粉末を用いて作製したエポキシ樹脂成形体は、電動機のコイルや半導体のモールド樹脂として十分な熱伝導率を有している。
一方、ZrO2を皮膜セラミックスとして用いた場合は、他のセラミックスと同様に樹脂粒子にZrO2を皮膜して複合粉末や複合粉末を含む樹脂組成物を作製することが可能であるが、これより得られるエポキシ樹脂成形体の熱伝導率は、ZrO2自身の熱伝導率が低いため、電動機のコイルや半導体のモールド樹脂として十分ではない。
したがって、皮膜セラミックスの熱伝導率は5.0W/m・K以上のSiO2、Al2O3、TiO2、MgO、SiC、AlN、Si3N4などが最適である。
【0013】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の高熱伝導性粉末は、樹脂粒子にセラミックスを皮膜した構造であるから、セラミックス単独の粉末と比較して比重が軽く、樹脂組成物中での沈降よる不具合を低減化することが出来る。また、熱伝導率が高いため、これを用いた樹脂成形体は良好な熱放散性を有する。また、その粒径は電動機の微細なコイル線間や半導体等の微小な部品間にも導入可能なサイズであるため放熱性を効果的に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高熱伝導性粉末の断面構造を示す模式図である。
【図2】セラミックスの被覆に用いたスパッタリング装置の模式図である。
【図3】Al2O3被覆の複合粉末を用いたエポキシ樹脂成形体の皮膜率に対する比重および熱伝導率の関係を示す特性図である。
【符号の説明】
1 高熱伝導性粉末
2 樹脂粒子
3 セラミックス
4 スパッタリング装置
5 回転バレル
6 油拡散ポンプ
7 油回転ポンプ
8 ターゲット
9 DC電源
10 モータ
【発明の属する技術分野】
この発明は、電動機や半導体等のモールド樹脂の充填材として好適である高熱伝導で且つ低比重である絶縁性の粉末と、これを用いた樹脂組成物およびその成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動機、トランスなどのコイル装置やパワーモジュール、LSIなどの半導体デバイスは、近年、その小型化や高密度化、および高出力化等に伴い、作動時の発熱が大きな問題となっている。これは、発熱に起因する装置やデバイスの特性の不安定化や寿命の劣化という問題があるためであり、限界温度を超える温度に昇温するのを防止するため、コイルや半導体を封止するモールド樹脂の熱伝導率を大きくし、効率良く熱を放散することが重要となっている。
これに対応するため、これまでは主として絶縁材料であり熱伝導性の良いアルミナ(Al2O3)やシリカ(SiO2)などを充填したモールド樹脂でコイル装置や半導体デバイスを封止することで、熱放散性を改善する方法がすでに一般化している。この際、より高い熱放散性を得るためにAl2O3やSiO2などは、可能な限り高濃度に樹脂中へ充填される場合が多い。
また、Al2O3やSiO2より熱伝導率が高いシリコンカーバイト(SiC)や窒化アルミニウム(AlN)などを樹脂に充填することによって、さらなる熱放散特性をモールド樹脂に付与することも検討され始めている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらのセラミックス材料は樹脂と比較して比重が大きいため、樹脂との組成物を作り、これを保存したりまたは加熱して注形したりする際に、セラミックス材料が樹脂組成物中で沈降してしまい、成形体の中でセラミックスが密な部分と疎な部分が生じ、その結果、疎な部分においては熱放散性が極めて悪くなりばかりか、さらには密な部分との熱放散性の差により成形体に割れや歪が発生してしまう問題点があった。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、電動機や半導体等のモールド樹脂の充填材として好適な高熱放散性と低比重性を兼ね備えた粉末と、これを用いた樹脂組成物およびその成形体を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため請求項1に記載の発明は、樹脂粒子の表面にセラミックスの皮膜が形成された複合粉末であって、前記セラミックスの熱伝導率が5.0W/mK以上であり、且つ前記複合粉末の平均粒径が10〜500μmであることを特徴とする高熱伝導性粉末である。
また、請求項2に記載の発明は、前記複合粉末の平均半径に対する前記セラミックスの厚さの比率(皮膜率)が0.05〜0.5であることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性粉末である。
また、請求項3に記載の発明は、前記のセラミックスが、SiO2、Al2O3、TiO2、MgO、SiC、AlNおよびSi3N4から成る群より選択された少なくとも1種類から成ることを特徴とする請求項1または2に記載の高熱伝導性粉末である。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3に記載の高熱伝導性粉末を配合した樹脂組成物および樹脂成形体である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を図に基づいて詳述する。
(第1実施例)
本発明の第1実施例を図1に示す。図1は、高熱伝導性粉末の断面構造を示す模式図である。図において、1は高熱伝導性粉末、2は中心層となる樹脂粒子、3は皮膜層のセラミックスである。
樹脂粒子2はエポキシ樹脂を用いた。すなわち、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂に対して、硬化剤として無水ピロメリット酸を55部加え150℃で24時間加熱し硬化させ、このエポキシ樹脂硬化物を粉砕装置により粉砕した後、このエポキシ樹脂硬化物を分級装置にて分級し、平均粒径の異なる数種類の樹脂粒子を作製した。樹脂粒子2の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布分析装置(株式会社島津製作所製SALD−2100)により測定して確認を行った。
また、セラミックス3としてAl2O3を用いた。セラミックス3の樹脂粒子2への被覆は、スパッタリングにより行った。被覆に用いたスパッタリング装置を図2の模式図に示す。回転バレル5の中に、先に粉砕、分級したエポキシ樹脂よりなる樹脂粒子をそれぞれ導入し、油拡散ポンプ6および油回転ポンプ7により回転バレル5内を真空にし、その後、回転バレル5を回転させながらAl2O3のターゲット8にDC電源9によりDC電源を印加してスパッタリングコーティングを行った。
被覆するAl2O3の膜厚はスパッタリングを行う時間によって変化させ、表1に示す平均粒子径100μmで皮膜率(セラミックス皮膜の厚さ/複合粉末サンプルの平均半径)が0.02〜0.6の複合粉末サンプルを作製した。
【0006】
【表1】
【0007】
作製した粉末サンプルは、レーザー回折式粒度分布分析装置(株式会社島津製作所製SALD−2100)により測定することで平均粒径を確認した。
以上の各工程を経て得られた数種類の複合粉末サンプル(50体積%)をビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシとメタフェニレンジアミンからなるエポキシ樹脂(50体積%)に加え混練して、それぞれ樹脂組成物を得た。
また、比較のために平均粒子径100μmのAl2O3粉末、または先に作製した樹脂粒子(50体積%)をビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシとメタフェニレンジアミンからなるエポキシ樹脂(50体積%)に加えて混練して、樹脂組成物をそれぞれ作製した。表2に用いたAl2O3粉末または樹脂粒子の平均粒径と比重を示す。
【0008】
【表2】
【0009】
次に、これらを脱泡処理し、金型内に流し込んで、100℃にて24時間、加熱硬化させた。そして、得られた成形体より直径10mmφ×厚さ1mmのディスクを切り出した。
以上の操作により、種々の複合粉末サンプルをエポキシ樹脂に対して50体積%含有する直径10mmφ×厚さ1mmのディスク状のエポキシ樹脂成形体と、平均粒子径100μmのAl2O3粉末または樹脂粒子を含む同様の成形体を得た。
次に、これらのエポキシ樹脂成形体について、レーザーフラッシュ法により熱伝導率をそれぞれ測定した。
図3に、Al2O3を皮膜した複合粉末サンプルの皮膜率に対する比重の関係と複合粉末サンプルを用いたエポキシ樹脂成形体の熱伝導率の関係を示す。
これから分かるように、エポキシ樹脂成形体の熱伝導率は複合粉末サンプルの皮膜率が0.05から大幅に向上し、皮膜率の上昇とともにさらに向上している。しかし、皮膜率が0.4からはほぼ一定の値となり、比較試料であるAl2O3粉末を含むエポキシ樹脂成形体とほぼ同じ熱伝導率となっている。これは、樹脂粒子2に皮膜したAl2O3量の増加とともに複合粉末サンプルの熱伝導率が向上し、これとあわせて成形体自体の熱伝導率も向上してゆくが、エポキシ樹脂成形体内部において、熱伝導の経路は主に高密度に充填され、互いに接触した複合粉末サンプルやAl2O3粉末の表層間であるため、皮膜率が0.5以上となると、成形体の熱伝導率はほぼ一定となり、それ以上皮膜率を上げても熱伝導率の向上が殆ど無くなり、またその値もAl2O3粉末を用いたものと同じになる。
この様に、複合粉末サンプルの皮膜率が0.5以上になると、成形体の熱伝導率をそれ以上、顕著に向上させることが望めなくなるとともに、特に0.6以上では複合粉末の比重がAl2O3の比重に近くなるために、低比重化の効果も僅かとなる。したがって、皮膜率は0.05〜0.5の範囲とすることが適当である。
また、本実施例において、複合粉末の平均粒径を100μmとしたが、これより微小なもの、またはこれより大きな平均粒子径をもつものであっても同様の効果を得ることが出来る。しかしながら、平均粒径が10μm以下になると、樹脂と混練する際に、複合粉末が凝集を起こし、均一な樹脂組成物を得る事ができない。また、500μm以上となると電動機の微細なコイル線間や半導体の微細部品間などに複合粉末を含む樹脂組成物を導入してゆくことが出来なくなる。したがって、複合粉末の平均粒径は、10〜500μmの範囲内とすることが適当である。
なお、本実施例では樹脂粒子としてエポキシ樹脂を用いたが、これに限らずアクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂や不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂など、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂を用いることが出来る。また、複合粉末を用いた樹脂組成物についても同様に、使用樹脂としてアクリル樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂や不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることができ、中でもエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が、その絶縁性や強度の面から電動機のコイルや半導体のモールドに使用する樹脂として好ましい。また、樹脂組成物においては、複合粉末と樹脂との密着力を向上させるためのカップリング剤や可撓性を付与させるためのエラストマーなど、種々の添加剤を併用することができる。
【0010】
(第2実施例)
本実施例は、樹脂粒子2に被覆するセラミックスの種類を種々変えて行ったものである。
樹脂粒子2は、第1実施例と同様にエポキシ樹脂を用いて、平均粒径50μmのものを作製した。
樹脂粒子2にセラミックス3を被覆する方法についても第1実施例と同様に、スパッタリングコーティングにより被覆を行った。
皮膜するセラミックス3は、酸化ケイ素(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、炭化ケイ素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)および比較として酸化ジルコニウム(ZrO2)をそれぞれ用い、スパッタリングを行う時間により皮膜率を制御し、平均粒径100μmで、SiO2、TiO2、MgO、SiC、AlN、Si3N4およびZrO2皮膜を有する7種類の複合粉末サンプルを作製した。樹脂粒子2および複合粉末の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布分析装置により、それぞれ測定して確認した。
次に、各複合粉末を用いて、第1実施例と同様な手法でエポキシ樹脂成形体を作製し、これから直径10mmφ×厚さ1mmのディスクを切り出し、これらのエポキシ樹脂成形体について、レーザーフラッシュ法により熱伝導率をそれぞれ測定した。表3に各エポキシ樹脂成形体の熱伝導率の測定結果と用いた複合粉末の比重、皮膜率および皮膜セラミックスの比重などをそれぞれ示す。
【0011】
【表3】
【0012】
表3に示すように、SiO2、TiO2、MgO、SiC、AlN、Si3N4およびZrO2のいずれを皮膜セラミックスとして用いた場合においても、皮膜率を0.5として作製した複合粉末サンプルは元のセラミックスの比重と比較して7〜10%程度低比重化されて効果のあることがわかる。
また、熱伝導率が大きな(5.0W/m・K以上)SiO2、TiO2、MgO、SiC、AlN、Si3N4などのセラミックスを皮膜した複合粉末を用いて作製したエポキシ樹脂成形体は、電動機のコイルや半導体のモールド樹脂として十分な熱伝導率を有している。
一方、ZrO2を皮膜セラミックスとして用いた場合は、他のセラミックスと同様に樹脂粒子にZrO2を皮膜して複合粉末や複合粉末を含む樹脂組成物を作製することが可能であるが、これより得られるエポキシ樹脂成形体の熱伝導率は、ZrO2自身の熱伝導率が低いため、電動機のコイルや半導体のモールド樹脂として十分ではない。
したがって、皮膜セラミックスの熱伝導率は5.0W/m・K以上のSiO2、Al2O3、TiO2、MgO、SiC、AlN、Si3N4などが最適である。
【0013】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の高熱伝導性粉末は、樹脂粒子にセラミックスを皮膜した構造であるから、セラミックス単独の粉末と比較して比重が軽く、樹脂組成物中での沈降よる不具合を低減化することが出来る。また、熱伝導率が高いため、これを用いた樹脂成形体は良好な熱放散性を有する。また、その粒径は電動機の微細なコイル線間や半導体等の微小な部品間にも導入可能なサイズであるため放熱性を効果的に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高熱伝導性粉末の断面構造を示す模式図である。
【図2】セラミックスの被覆に用いたスパッタリング装置の模式図である。
【図3】Al2O3被覆の複合粉末を用いたエポキシ樹脂成形体の皮膜率に対する比重および熱伝導率の関係を示す特性図である。
【符号の説明】
1 高熱伝導性粉末
2 樹脂粒子
3 セラミックス
4 スパッタリング装置
5 回転バレル
6 油拡散ポンプ
7 油回転ポンプ
8 ターゲット
9 DC電源
10 モータ
Claims (4)
- 樹脂粒子の表面にセラミックスの皮膜が形成された複合粉末であって、
前記セラミックスの熱伝導率が5.0W/mK以上であり、且つ前記複合粉末の平均粒径が10〜500μmであることを特徴とする高熱伝導性粉末。 - 前記複合粉末の平均半径に対する前記セラミックスの厚さの比率(皮膜率)が0.05〜0.5であることを特徴とする請求項1記載の高熱伝導性粉末。
- 前記セラミックスが、SiO2、Al2O3、TiO2、MgO、SiC、AlNおよびSi3N4から成る群より選択された少なくとも1種類から成ることを特徴とする請求項1または2記載の高熱伝導性粉末。
- 請求項1〜3に記載の高熱伝導性粉末を配合した樹脂組成物および樹脂成形体。
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JP2002171216A JP2004018539A (ja) | 2002-06-12 | 2002-06-12 | 高熱伝導性粉末およびそれを用いた樹脂組成物および成形体 |
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JP2002171216A JP2004018539A (ja) | 2002-06-12 | 2002-06-12 | 高熱伝導性粉末およびそれを用いた樹脂組成物および成形体 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2012028600A (ja) * | 2010-07-26 | 2012-02-09 | Panasonic Corp | 電子部品接着用の接着剤および電子部品接着方法。 |
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2002
- 2002-06-12 JP JP2002171216A patent/JP2004018539A/ja active Pending
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