JP2004018321A - 無鉛圧電磁器組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】キュリー温度が高く、圧電セラミック製素子材料としての実用が可能な鉛化合物を含まない圧電磁器組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】組成式をx(Bi1/2 Na1/2 TiO3 )+y(BaTiO3 )+z(CaTiO3 )(x+y+z=1)とした時、これらの成分を頂点とする三角座標中、前記x、y、zで表される点が、下記点A、B、C、ここでA点は(x=0.500,y=0.000,z=0.500)、B点は(x=0.999、y=0.000、z=0.001)、C点は(x=0.500、y=0.499、z=0.001)である、で囲まれる範囲内に存在することを特徴とする圧電磁器組成物。
【効果】自然環境に対して負荷の小さい無鉛圧電セラミック製素子を作製し、提供することが可能となる。
【選択図】 なし
【解決手段】組成式をx(Bi1/2 Na1/2 TiO3 )+y(BaTiO3 )+z(CaTiO3 )(x+y+z=1)とした時、これらの成分を頂点とする三角座標中、前記x、y、zで表される点が、下記点A、B、C、ここでA点は(x=0.500,y=0.000,z=0.500)、B点は(x=0.999、y=0.000、z=0.001)、C点は(x=0.500、y=0.499、z=0.001)である、で囲まれる範囲内に存在することを特徴とする圧電磁器組成物。
【効果】自然環境に対して負荷の小さい無鉛圧電セラミック製素子を作製し、提供することが可能となる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた圧電特性を有する新規圧電磁器組成物に関するものであり、更に詳しくは、キュリー温度が高く、圧電セラミック素子材料としての実用化を可能とする鉛化合物を含まない無鉛圧電磁器組成物であって、例えば、セラミック製センサ、アクチュエータ、弾性波素子、トランス等に好適に使用することが可能な圧電磁器組成物及びその製造方法に関するものである。
本発明の組成物は、自然環境に対して負荷の小さい無鉛圧電セラミック素子材料として有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来、セラミック製圧電体材料としては、PbZrO3 −PbTiO3 固溶体に各種のドーパントを添加した、いわゆるPZT系固溶体や、Pb(Mg1/3 Nb2/3 )O3 に代表される鉛系複合ペロブスカイト化合物とPZTの固溶体の、いわゆる3成分系固溶体が主に用いられている。これらは、使用される電子部品の用途と目的に応じて、これらの圧電磁器組成物から適切な組成を選択し、微量な添加物とともに焼結することによって、優れた圧電特性が得られるようにしたものである。
【0003】
近年、様々な産業分野において、製品の付加価値の向上を図る手段の一つとして、大量に圧電セラミック製品が使用されるようになっている。しかしながら、従来の鉛系圧電磁器組成物については、大量の鉛系化合物が含まれており、これらの圧電素子を使用した製品が廃棄された場合、鉛化合物が自然界に放置され、酸性雨などの影響により、環境中に有毒な鉛化合物が溶出する事態が予想されている。このため、鉛を含まない圧電セラミック材料の開発が望まれている。
【0004】
現在、鉛を含まない圧電セラミック材料としては、(Bi1/2 Na1/2 )TiO3 やビスマス層状化合物が注目されており、特に(Bi1/2 Na1/2 )TiO3 については、圧電異方性が少なく、キュリー温度が高いことから、有力な無鉛圧電セラミック材料候補と考えられている。
【0005】
上記(Bi1/2 Na1/2 )TiO3 を端成分とする圧電セラミック材料としては、例えば、2成分系組成の無鉛圧電セラミックス材料を挙げることができる。例えば、先行技術文献においては、無鉛圧電セラミック材料として、(Bi1/2Na1/2 )TiO3 −BaTiO3 系の2成分系組成が提案されている(特開平11−180769号)。しかしながら、実用的な圧電セラミック材料としては、2成分系組成よりも3成分系組成の方が組成選択の自由度が大きいことは明らかである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者らは、上記の従来技術に鑑みて、有毒な鉛を含有せずに圧電セラミック素子として有用な新しい圧電磁器組成物を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、3成分系組成を有する有力な特定の無鉛圧電磁器組成物を開発することに成功し、本発明を完成するに至った。
本発明は、圧電セラミック素子材料として実用可能な圧電特性を有する、鉛化合物を含まない新規圧電磁器組成物及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、3成分系組成を有する新しい無鉛圧電セラミック材料を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)鉛化合物を含まない無鉛圧電磁器組成物であって、以下の組成式;
x(Bi1/2 Na1/2 TiO3 )+y(BaTiO3 )+z(CaTiO3 )(x+y+z=1)を有し、これらの成分を頂点とする三角座標中、前記x、y、zで表される点が、下記点A、B、C、
ここでA点は(x=0.500,y=0.000,z=0.500)、B点は(x=0.999、y=0.000、z=0.001)、C点は(x=0.500、y=0.499、z=0.001)である、
で囲まれる範囲内に存在することを特徴とする圧電磁器組成物。
(2)前記(1)に記載の組成式を有する圧電磁器組成物を製造する方法であって、出発原料として、酸化ビスマス、炭酸ナトリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、及び酸化チタニウムを使用し、これらを、上記組成式になるように化学量論的に配合し、その混合物を成形し、仮焼した後、焼成して緻密な焼結体とすることを特徴とする当該焼結体からなる圧電磁器組成物の製造方法。
(3)上記出発原料を配合し、混合、乾燥後、適宜の形態に成形し、800〜900℃で仮焼した後、仮焼した混合物を粉砕し、これを適宜の形態に成形し、1100〜1300℃で焼成して緻密な焼結体とする、前記(2)に記載の圧電磁器組成物の製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、実用可能な圧電特性を有する、自然環境に対して負荷の小さい新規無鉛圧電磁器組成物を製造し、提供するものである。即ち、本発明は、組成物をx(Bi1/2 Na1/2 TiO3 )+y(BaTiO3 )+z(CaTiO3 )(x+y+z=1)とした時、これらの成分を頂点とする三角座標中、前記x、y、zで表される点が、下記点A、B、Cで囲まれる範囲内に存在することを特徴とする圧電磁器組成物であり、A点は(x=0.500、y=0.000、z=0.500)、B点は(x=0.999、y=0.000、z=0.001)、C点は(x=0.500、y=0.499、z=0.001)である。図1に、上記成分を頂点とする三角座標における上記組成物の組成範囲を示す。
【0009】
上記組成範囲については、キュリー温度、圧電特性、組成の選択性等の点で、上記A,B,C点で囲まれる範囲内に存在する磁器組成物が実用に好適であり、A点以上にCaTiO3 を含む固溶体では、得られる磁器組成物のキュリー温度が低くなることから、工業的な観点から好ましくなく、B点以下のCaTiO3を含む組成では、圧電特性が不充分であり、C点以上のBaTiO3 を含む組成では、BaTiO3 のキュリー温度は約120℃と低いことから、キュリー温度の面から工業的に好ましくない。
【0010】
次に、本発明の圧電磁器組成物の製造方法について説明する。
本発明では、出発原料として、酸化ビスマス、炭酸ナトリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、及び酸化チタニウムを使用し、これらを上記組成式になるように化学量論的に配合し、これらの材料を混合し、乾燥後、例えば、錠剤、角柱、顆粒、円柱等の適宜の形態に成型する。次に、これを好適には800〜900℃で仮焼し、次いで、仮焼した混合物を細かく粉砕した後、適宜の形態に成型し、これを好適には1100〜1300℃で焼成して緻密な焼結体を作製する。
【0011】
本発明において、ビスマス系酸化物を含む固溶体については、800〜900℃程度での熱処理が、それらが十分に反応するとともに、焼結が進行しないので好ましく、また、ビスマス系磁器組成物については、1100〜1300℃程度での焼結が、それらが十分に燒結し、良好な焼結体が得られるので好ましい。
上記出発材料は、上記材料と実質的に同効のものであれば同様に使用することが可能であり、本発明では、それらは、本発明における均等の範囲に属するものである。
【0012】
本発明の方法において、材料の混合方法としては、例えば、乾式混合、湿式混合が例示され、粉砕方法としては、例えば、乾式粉砕法、湿式粉砕法が例示され、成型方法としては、例えば、乾式プレス法、冷間等方プレス法(CIP)が例示される。また、加熱処理時の状態としては、大気中や、窒素、アルゴン、酸素フロー中などの雰囲気中での熱処理が例示される。しかし、上記各手段については、これらに限らず、これらと同効のものであれば同様に使用することが可能である。
【0013】
本発明において、上記焼結方法としては、常圧焼結、加圧焼結のどちらでもよく、また、加熱方法についても、電気炉加熱、マイクロ波加熱等が例示されるが、これらに限定されるものではなく、これらと同効のものであれば同様に使用することができる。更に、焼結時の状態についても、窒素、アルゴン、酸素フロー中、空気中のどちらで行ってもよい。
【0014】
本発明の方法で作製される上記特定の組成を有する焼結体は、キュリー温度が200〜300℃程度と比較的高く、鉛化合物を含まず、また、後記する実施例に示したように、電気機械結合係数Kpが約12〜24%という無鉛圧電磁器組成物としては、比較的良好な圧電特性を有し、誘電率が500〜1600程度と低く、実用的な圧電セラミックスとして使用しやすいという、良好な誘電特性を有しており、しかも、自然環境に対して負荷の小さい圧電セラミック製素子として有用であるという特徴を有する。本発明の圧電磁器組成物は、圧電セラミック素子材料として有用であり、例えば、セラミック製センサ、アクチュエータ、弾性波素子、トランス等に好適に使用することが可能である。
【0015】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
(1)焼結体の作製
本実施例では、出発原料として、高純度の酸化ビスマス(Bi2 O3 )、炭酸ナトリウム(Na2 CO3 ) 、炭酸バリウム(BaCO3 )、炭酸カルシウム(CaCO3 )、及び酸化チタニウム(TiO2 )を使用した。これらを、一般式のx(Bi1/2 Na1/2 TiO3 )+y(BaTiO3 )+z(CaTiO3 )(ただし、x+y+z=1)になるように化学量論的に配合し、少量のエタノールを加えてボールミルを用いて湿式混合を行った。
【0016】
これらの混合物については、乾燥後、錠剤、角柱等の適宜の形態に成形して、大気中、800〜900℃で3時間仮焼を行った。仮焼した混合物について、細かく粉砕した後、粉末X線回折装置(XRD)を用いて結晶相の同定を行った。次いで、一軸プレス機によって直径17mmの円板に成型した後、マグネシアのさやに入れ、大気中、1100〜1300℃で3時間焼成して焼結体を作製した。その結果、緻密な焼結体が得られた。
【0017】
(2)焼結体の特性
上記燒結体について、厚さ1mmに平行研磨した後、燒結体の両面に銀ペーストを焼きつけて電極を作製した。その後、インピーダンスアナライザーを用いて試料の誘電特性を測定した。試料の圧電特性については、60℃のシリコン油中で、4kV/mmの電界を30分間印加して分極処理を行った後、インピーダンスアナライザーを用いて、共振−反共振法によって試料の径方向の電気機械結合係数(Kp)を測定するとともに、d33メーターを用いて圧電d33定数を測定することによって評価した。表1に、作製した焼結体の圧電特性及び誘電特性を示す。
【0018】
【表1】
【0019】
表1に示されるように、作製した焼結体については、電気機械結合係数Kpが約12〜24%と、無鉛圧電磁器組成物としては良好な圧電特性を示すとともに、誘電率が500〜1600程度と低いことから、実用的な圧電セラミック製素子材料として十分に使用しやすいものであることが分かった。
【0020】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、3成分系組成を有する新規無鉛圧電セラミックス材料及びその製造方法に係るものであり、本発明によれば、1)キュリー温度が高く、圧電セラミック素子材料として実用化が可能な無鉛圧電磁器組成物を製造し、提供することができる、2)優れた圧電特性及び誘電特性を有する無鉛圧電磁器組成物を提供することができる、3)本発明の圧電磁器組成物を用いることによって、自然環境に対して負荷の小さい無鉛圧電セラミック製素子を作製することが可能となることから、その工業的価値は極めて大きい、という格別の効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無鉛圧電磁器組成物の組成範囲を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた圧電特性を有する新規圧電磁器組成物に関するものであり、更に詳しくは、キュリー温度が高く、圧電セラミック素子材料としての実用化を可能とする鉛化合物を含まない無鉛圧電磁器組成物であって、例えば、セラミック製センサ、アクチュエータ、弾性波素子、トランス等に好適に使用することが可能な圧電磁器組成物及びその製造方法に関するものである。
本発明の組成物は、自然環境に対して負荷の小さい無鉛圧電セラミック素子材料として有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来、セラミック製圧電体材料としては、PbZrO3 −PbTiO3 固溶体に各種のドーパントを添加した、いわゆるPZT系固溶体や、Pb(Mg1/3 Nb2/3 )O3 に代表される鉛系複合ペロブスカイト化合物とPZTの固溶体の、いわゆる3成分系固溶体が主に用いられている。これらは、使用される電子部品の用途と目的に応じて、これらの圧電磁器組成物から適切な組成を選択し、微量な添加物とともに焼結することによって、優れた圧電特性が得られるようにしたものである。
【0003】
近年、様々な産業分野において、製品の付加価値の向上を図る手段の一つとして、大量に圧電セラミック製品が使用されるようになっている。しかしながら、従来の鉛系圧電磁器組成物については、大量の鉛系化合物が含まれており、これらの圧電素子を使用した製品が廃棄された場合、鉛化合物が自然界に放置され、酸性雨などの影響により、環境中に有毒な鉛化合物が溶出する事態が予想されている。このため、鉛を含まない圧電セラミック材料の開発が望まれている。
【0004】
現在、鉛を含まない圧電セラミック材料としては、(Bi1/2 Na1/2 )TiO3 やビスマス層状化合物が注目されており、特に(Bi1/2 Na1/2 )TiO3 については、圧電異方性が少なく、キュリー温度が高いことから、有力な無鉛圧電セラミック材料候補と考えられている。
【0005】
上記(Bi1/2 Na1/2 )TiO3 を端成分とする圧電セラミック材料としては、例えば、2成分系組成の無鉛圧電セラミックス材料を挙げることができる。例えば、先行技術文献においては、無鉛圧電セラミック材料として、(Bi1/2Na1/2 )TiO3 −BaTiO3 系の2成分系組成が提案されている(特開平11−180769号)。しかしながら、実用的な圧電セラミック材料としては、2成分系組成よりも3成分系組成の方が組成選択の自由度が大きいことは明らかである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者らは、上記の従来技術に鑑みて、有毒な鉛を含有せずに圧電セラミック素子として有用な新しい圧電磁器組成物を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、3成分系組成を有する有力な特定の無鉛圧電磁器組成物を開発することに成功し、本発明を完成するに至った。
本発明は、圧電セラミック素子材料として実用可能な圧電特性を有する、鉛化合物を含まない新規圧電磁器組成物及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、3成分系組成を有する新しい無鉛圧電セラミック材料を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)鉛化合物を含まない無鉛圧電磁器組成物であって、以下の組成式;
x(Bi1/2 Na1/2 TiO3 )+y(BaTiO3 )+z(CaTiO3 )(x+y+z=1)を有し、これらの成分を頂点とする三角座標中、前記x、y、zで表される点が、下記点A、B、C、
ここでA点は(x=0.500,y=0.000,z=0.500)、B点は(x=0.999、y=0.000、z=0.001)、C点は(x=0.500、y=0.499、z=0.001)である、
で囲まれる範囲内に存在することを特徴とする圧電磁器組成物。
(2)前記(1)に記載の組成式を有する圧電磁器組成物を製造する方法であって、出発原料として、酸化ビスマス、炭酸ナトリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、及び酸化チタニウムを使用し、これらを、上記組成式になるように化学量論的に配合し、その混合物を成形し、仮焼した後、焼成して緻密な焼結体とすることを特徴とする当該焼結体からなる圧電磁器組成物の製造方法。
(3)上記出発原料を配合し、混合、乾燥後、適宜の形態に成形し、800〜900℃で仮焼した後、仮焼した混合物を粉砕し、これを適宜の形態に成形し、1100〜1300℃で焼成して緻密な焼結体とする、前記(2)に記載の圧電磁器組成物の製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、実用可能な圧電特性を有する、自然環境に対して負荷の小さい新規無鉛圧電磁器組成物を製造し、提供するものである。即ち、本発明は、組成物をx(Bi1/2 Na1/2 TiO3 )+y(BaTiO3 )+z(CaTiO3 )(x+y+z=1)とした時、これらの成分を頂点とする三角座標中、前記x、y、zで表される点が、下記点A、B、Cで囲まれる範囲内に存在することを特徴とする圧電磁器組成物であり、A点は(x=0.500、y=0.000、z=0.500)、B点は(x=0.999、y=0.000、z=0.001)、C点は(x=0.500、y=0.499、z=0.001)である。図1に、上記成分を頂点とする三角座標における上記組成物の組成範囲を示す。
【0009】
上記組成範囲については、キュリー温度、圧電特性、組成の選択性等の点で、上記A,B,C点で囲まれる範囲内に存在する磁器組成物が実用に好適であり、A点以上にCaTiO3 を含む固溶体では、得られる磁器組成物のキュリー温度が低くなることから、工業的な観点から好ましくなく、B点以下のCaTiO3を含む組成では、圧電特性が不充分であり、C点以上のBaTiO3 を含む組成では、BaTiO3 のキュリー温度は約120℃と低いことから、キュリー温度の面から工業的に好ましくない。
【0010】
次に、本発明の圧電磁器組成物の製造方法について説明する。
本発明では、出発原料として、酸化ビスマス、炭酸ナトリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、及び酸化チタニウムを使用し、これらを上記組成式になるように化学量論的に配合し、これらの材料を混合し、乾燥後、例えば、錠剤、角柱、顆粒、円柱等の適宜の形態に成型する。次に、これを好適には800〜900℃で仮焼し、次いで、仮焼した混合物を細かく粉砕した後、適宜の形態に成型し、これを好適には1100〜1300℃で焼成して緻密な焼結体を作製する。
【0011】
本発明において、ビスマス系酸化物を含む固溶体については、800〜900℃程度での熱処理が、それらが十分に反応するとともに、焼結が進行しないので好ましく、また、ビスマス系磁器組成物については、1100〜1300℃程度での焼結が、それらが十分に燒結し、良好な焼結体が得られるので好ましい。
上記出発材料は、上記材料と実質的に同効のものであれば同様に使用することが可能であり、本発明では、それらは、本発明における均等の範囲に属するものである。
【0012】
本発明の方法において、材料の混合方法としては、例えば、乾式混合、湿式混合が例示され、粉砕方法としては、例えば、乾式粉砕法、湿式粉砕法が例示され、成型方法としては、例えば、乾式プレス法、冷間等方プレス法(CIP)が例示される。また、加熱処理時の状態としては、大気中や、窒素、アルゴン、酸素フロー中などの雰囲気中での熱処理が例示される。しかし、上記各手段については、これらに限らず、これらと同効のものであれば同様に使用することが可能である。
【0013】
本発明において、上記焼結方法としては、常圧焼結、加圧焼結のどちらでもよく、また、加熱方法についても、電気炉加熱、マイクロ波加熱等が例示されるが、これらに限定されるものではなく、これらと同効のものであれば同様に使用することができる。更に、焼結時の状態についても、窒素、アルゴン、酸素フロー中、空気中のどちらで行ってもよい。
【0014】
本発明の方法で作製される上記特定の組成を有する焼結体は、キュリー温度が200〜300℃程度と比較的高く、鉛化合物を含まず、また、後記する実施例に示したように、電気機械結合係数Kpが約12〜24%という無鉛圧電磁器組成物としては、比較的良好な圧電特性を有し、誘電率が500〜1600程度と低く、実用的な圧電セラミックスとして使用しやすいという、良好な誘電特性を有しており、しかも、自然環境に対して負荷の小さい圧電セラミック製素子として有用であるという特徴を有する。本発明の圧電磁器組成物は、圧電セラミック素子材料として有用であり、例えば、セラミック製センサ、アクチュエータ、弾性波素子、トランス等に好適に使用することが可能である。
【0015】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
(1)焼結体の作製
本実施例では、出発原料として、高純度の酸化ビスマス(Bi2 O3 )、炭酸ナトリウム(Na2 CO3 ) 、炭酸バリウム(BaCO3 )、炭酸カルシウム(CaCO3 )、及び酸化チタニウム(TiO2 )を使用した。これらを、一般式のx(Bi1/2 Na1/2 TiO3 )+y(BaTiO3 )+z(CaTiO3 )(ただし、x+y+z=1)になるように化学量論的に配合し、少量のエタノールを加えてボールミルを用いて湿式混合を行った。
【0016】
これらの混合物については、乾燥後、錠剤、角柱等の適宜の形態に成形して、大気中、800〜900℃で3時間仮焼を行った。仮焼した混合物について、細かく粉砕した後、粉末X線回折装置(XRD)を用いて結晶相の同定を行った。次いで、一軸プレス機によって直径17mmの円板に成型した後、マグネシアのさやに入れ、大気中、1100〜1300℃で3時間焼成して焼結体を作製した。その結果、緻密な焼結体が得られた。
【0017】
(2)焼結体の特性
上記燒結体について、厚さ1mmに平行研磨した後、燒結体の両面に銀ペーストを焼きつけて電極を作製した。その後、インピーダンスアナライザーを用いて試料の誘電特性を測定した。試料の圧電特性については、60℃のシリコン油中で、4kV/mmの電界を30分間印加して分極処理を行った後、インピーダンスアナライザーを用いて、共振−反共振法によって試料の径方向の電気機械結合係数(Kp)を測定するとともに、d33メーターを用いて圧電d33定数を測定することによって評価した。表1に、作製した焼結体の圧電特性及び誘電特性を示す。
【0018】
【表1】
【0019】
表1に示されるように、作製した焼結体については、電気機械結合係数Kpが約12〜24%と、無鉛圧電磁器組成物としては良好な圧電特性を示すとともに、誘電率が500〜1600程度と低いことから、実用的な圧電セラミック製素子材料として十分に使用しやすいものであることが分かった。
【0020】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、3成分系組成を有する新規無鉛圧電セラミックス材料及びその製造方法に係るものであり、本発明によれば、1)キュリー温度が高く、圧電セラミック素子材料として実用化が可能な無鉛圧電磁器組成物を製造し、提供することができる、2)優れた圧電特性及び誘電特性を有する無鉛圧電磁器組成物を提供することができる、3)本発明の圧電磁器組成物を用いることによって、自然環境に対して負荷の小さい無鉛圧電セラミック製素子を作製することが可能となることから、その工業的価値は極めて大きい、という格別の効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無鉛圧電磁器組成物の組成範囲を示す。
Claims (3)
- 鉛化合物を含まない無鉛圧電磁器組成物であって、以下の組成式;
x(Bi1/2 Na1/2 TiO3 )+y(BaTiO3 )+z(CaTiO3 )(x+y+z=1)を有し、これらの成分を頂点とする三角座標中、前記x、y、zで表される点が、下記点A、B、C、
ここでA点は(x=0.500,y=0.000,z=0.500)、B点は(x=0.999、y=0.000、z=0.001)、C点は(x=0.500、y=0.499、z=0.001)である、
で囲まれる範囲内に存在することを特徴とする圧電磁器組成物。 - 請求項1に記載の組成式を有する圧電磁器組成物を製造する方法であって、出発原料として、酸化ビスマス、炭酸ナトリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、及び酸化チタニウムを使用し、これらを、上記組成式になるように化学量論的に配合し、その混合物を成形し、仮焼した後、焼成して緻密な焼結体とすることを特徴とする当該焼結体からなる圧電磁器組成物の製造方法。
- 上記出発原料を配合し、混合、乾燥後、適宜の形態に成形し、800〜900℃で仮焼した後、仮焼した混合物を粉砕し、これを適宜の形態に成形し、1100〜1300℃で焼成して緻密な焼結体とする、請求項2に記載の圧電磁器組成物の製造方法。
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