JP2004017596A - 発泡成形体の製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】自動車のシート用パッド等の発泡体の真空発泡成形において、製品形状が大きい場合にも成形性を確保しながら低密度化、軽量化を図る。
【解決手段】水平姿勢と所定角度θ傾斜した傾斜姿勢との間で作動可能とされた金型14と、金型キャビティ12内の気体を吸引して真空にする真空化装置16と、キャビティ12内に発泡原料Uを注入する注入装置18とを備える発泡成形体の製造装置10において、真空化装置10として複数のエジェクタポンプ46A〜Cを用いる。金型14の型割り面24の外周には密閉されたチャンバー部42が形成され、型割り面24には金型14の傾斜姿勢での上側の部位にキャビティ12とチャンバー部42を連通する排気溝44が形成され、複数のエジェクタポンプ46A〜Cは、金型14の傾斜姿勢における上側の部位に設けられた排気口52A〜Cに接続されている。
【選択図】 図1
【解決手段】水平姿勢と所定角度θ傾斜した傾斜姿勢との間で作動可能とされた金型14と、金型キャビティ12内の気体を吸引して真空にする真空化装置16と、キャビティ12内に発泡原料Uを注入する注入装置18とを備える発泡成形体の製造装置10において、真空化装置10として複数のエジェクタポンプ46A〜Cを用いる。金型14の型割り面24の外周には密閉されたチャンバー部42が形成され、型割り面24には金型14の傾斜姿勢での上側の部位にキャビティ12とチャンバー部42を連通する排気溝44が形成され、複数のエジェクタポンプ46A〜Cは、金型14の傾斜姿勢における上側の部位に設けられた排気口52A〜Cに接続されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発泡原料を真空で発泡成形する発泡成形体の製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車などの車両のシート用パッドや家具用クッションには、弾力性に富む軟質ポリウレタンフォームなどの合成樹脂発泡成形体が用いられている。かかるシート用パッドにおいては、近年の自動車の軽量化・低コスト化の要請に伴い、低密度で軽量なものが求められている。そこで、発泡成形体の低密度化・軽量化を図るため、また複雑な形状品について成形性を確保するために、発泡原料を大気圧によりも低い気圧下で発泡硬化させる真空発泡成形方法が種々提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような真空発泡成形において、成形性を満足させながら低密度化を図ることは容易ではない。すなわち、一般には金型キャビティ内の真空度を高く(内圧を低く)すればそれだけ低密度にすることができるが、真空度を高くするためにキャビティ内圧を急激に低下、即ち真空化速度があまりに速いと、フォームがセル割れを起こすなど成形性を損なう場合がある。逆に、真空化速度が遅いと、十分な真空度まで到達せずに発泡原料が硬化してしまい、そのため発泡体がキャビティ内に完全に充填されない場合がある。このように真空発泡成形では真空化速度を最適なレベルに調整することが求められる。
【0004】
ところで、かかる真空発泡成形装置において、真空ポンプとしてエジェクタポンプを用いる場合、従来は、1個のエジェクタポンプにより金型キャビティ内の気体を吸引して該キャビティ内を真空にしている。しかし、エジェクタポンプが1個では、特に製品形状が大きい場合に、真空化速度を上記のような最適なレベルに設定することができない場合があり、成形性を確保することが難しい。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑みなされたものであり、製品形状が大きい場合にも成形性を確保しながら低密度化、軽量化を図ることができる発泡成形体の製造装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の発泡成形体の製造装置は、内側に密閉されたキャビティを形成する成形型と、前記キャビティ内の気体を吸引して真空にする真空化手段と、前記キャビティ内に発泡原料を注入する注入手段とを備え、前記真空化手段として複数のエジェクタポンプを備えるものである。
【0007】
本発明の製造装置では、注入手段によりキャビティ内に発泡原料が注入され、真空化手段によりキャビティ内の気体が吸引されて真空となり、この真空のキャビティ内で発泡原料が発泡成形される。その際、真空化手段として複数のエジェクタポンプを用いることにより、キャビティ内の容積が大きいものについても真空化速度を最適なレベルに設定することができ、成形性を満足しながら低密度化、軽量化した発泡成形体を製造することができる。
【0008】
本発明の発泡成形体の製造装置においては、前記成形型が、上型と下型とを備え、両者を型閉めすることで型割り面の内側に前記キャビティを形成する成形型であって、水平姿勢と該水平姿勢に対して所定角度傾斜した傾斜姿勢との間で作動可能とされ、前記型割り面の外周に密閉されたチャンバー部を備え、前記型割り面には前記傾斜姿勢での上側の部位に前記キャビティと前記チャンバー部とを連通する排気溝が形成され、前記チャンバー部には前記傾斜姿勢での上側の部位に排気口が設けられた成形型であり、前記複数のエジェクタポンプがそれぞれ前記排気口に接続され、前記チャンバー部内の気体を吸引することで前記排気溝を介して前記キャビティ内の気体を吸引して真空にするものであることが好ましい。この場合、成形型を傾斜姿勢に傾けた状態で発泡成形することにより、発泡原料をキャビティ内に均一かつスムーズに発泡充填させることができる。また、キャビティとチャンバー部を連通する排気溝が傾斜姿勢での上側の部位に設けられ、かつ、この上側の部位にチャンバー部とエジェクタポンプとの接続部である排気口が設けられているため、エジェクタポンプによるキャビティからのスムーズな排気が可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態は、軟質ポリウレタンフォームよりなる自動車用シートパッドの製造装置に関する。
【0010】
図1,2に示すように、本実施形態の製造装置10は、内側に密閉されたキャビティ12を形成する金型14と、キャビティ12内の気体を吸引することによりキャビティ12内を大気圧よりも気圧の低い真空状態にする真空化装置16と、キャビティ12内にポリウレタンフォーム原料Uを注入する注入装置18とを備えてなる。
【0011】
金型14は、上方に開口する下型20と、下型20の上面開口を開閉する上型22とからなり、両者20,22を型閉めすることにより、型割り面(PL部)24の内側に密閉されたキャビティ12を形成する。下型20は、シートパッドの表面側を成形する型であり、それに対応した凹部を有する。上型22は、シートパッドの裏面側を成形する型であり、上記凹部を閉じることにより下型20との間にシートパッド形状に対応する発泡空間であるキャビティ12を形成する。
【0012】
上型22は、下型20と上型22とを閉めた状態でキャビティ12内にフォーム原料Uを注入できるように注入口26を備え、この注入口26は駆動装置28を備える蓋30で開閉されるようになっている。そして、蓋30を開けた状態で、注入口26に注入装置18のノズル部32が差し込まれて、該ノズル部32からキャビティ12内にフォーム原料Uが注入されるようになっている。
【0013】
金型14は、不図示の回動機構によって、水平姿勢(下型20の上面(外周フランジ36)が水平となる姿勢)と、水平姿勢に対して所定角度θ傾斜した傾斜姿勢との間で作動可能に構成されている。水平姿勢に対する傾斜姿勢での角度(傾斜角度)θは15°〜30°程度であることが好ましい。傾斜角度θが大きすぎると、金型縦方向(排気溝44へ向かう方向)への発泡体の伸びが抑制される分、末端の成形性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0014】
図4に示すように、型割り面24の外周は全周にわたってシリコンゴム等のシール材34で取り囲まれている。シール材34は、下型20の外周フランジ36に設けられた凹溝38内に嵌め付けられ、上型22の外周フランジ40との間をシールして型割り面24の外周に密閉された環状のチャンバー部42を形成する。
【0015】
型割り面24には、キャビティ12とチャンバー部42とを連通する排気溝44が設けられている。型割り面24は、この排気溝44の部位を除いてゼロ当たり、即ち排気のための微小隙間がなく下型20と上型22とがぴったりと当接するように構成されている。
【0016】
排気溝44は、図4に示すように、ループ状の型割り面24の周方向における2箇所に設けられている。詳細には、略矩形状をなすキャビティ12の一辺においてその両端の角部にそれぞれ設けられている。このキャビティ12の一辺側は、金型14が傾斜姿勢となったときに、対向する辺に対して上側、即ち高い位置となる側である。そのため、排気溝44は型割り面24において傾斜姿勢で上側となる部位に設けられている。
【0017】
真空化装置16は、この実施形態では3個のエジェクタポンプ46A,46B,46Cと、各エジェクタポンプに圧縮空気を供給する3個のコンプレッサ48A,48B,48Cとで構成されている。図3に示すように、各エジェクタポンプ46A,46B,46Cは、それぞれその吸引側が配管50A,50B,50Cを介して金型14のチャンバー部42に接続されており、対応するコンプレッサ48A,48B,48Cを動作させることで配管50A〜Cを介してチャンバー部42内の気体を吸引する。上型22の外周フランジ40にはチャンバー部42に対して開口する3個の排気口52A,52B,52Cが設けられており、それぞれに対応するエジェクタポンプ46A,46B,46Cが接続されている。
【0018】
排気口52A,52B,52Cは、図4に示すように、上記2本の排気溝44,44の近傍に各1個ずつと、両排気溝44,44の中間位置に1個設けられており、従って、チャンバー部42において傾斜姿勢で上側、即ち高い位置となる側の部位に3個並んで設けられている。
【0019】
以上の製造装置10を用いてシートパッドを成型する際には、まず、図1に示すように、金型14の下型20と上型22を閉じて傾斜姿勢にするとともに、上型22の注入口26の蓋材30を開ける。次いで、3個のコンプレッサ48A〜Cを作動させて3個のエジェクタポンプ46A〜Cによりチャンバー部42からの排気を開始する。そして、注入口26に注入装置18のノズル部32を差し込んでポリウレタンフォーム原料Uをキャビティ12内に注入する。すると、注入されたフォーム原料Uは下型20の適度な傾斜により下方に流れながら広範囲に広がる。なお、本実施形態では傾斜姿勢でフォーム原料Uを注入したが、これに代えて、水平姿勢で注入して注入後に傾斜姿勢とすることもできる。
【0020】
フォーム原料Uの注入後、注入口26を蓋30で閉じると、それによりキャビティ12内が密閉されるため、エジェクタ46A〜Cの作用により排気溝44を介してキャビティ12内の気体が吸引されて気圧の低下が始まる。フォーム原料Uは、上記のように金型14が傾斜しているため、図2に示すように、キャビティ12内における排気溝44とは反対側の端部から順次に充填されていき、排気溝44の近傍は最後に充填される。そのため、キャビティ12内に充填が完了するまで排気溝44を介して排気しながらウレタンを発泡させることができる。
【0021】
ここで、本実施形態では、発泡成形時におけるキャビティ12内の最低内圧が75〜90kPa(大気圧を基準として約−11〜−26kPa)の範囲内となるように真空化するに際し、キャビティ12を密閉してからの真空化速度が−1.4〜−3.5kPa/秒となるように真空化装置16によりキャビティ12内の気体を吸引し、かつ、キャビティ内圧を75〜90kPaの範囲内に20〜30秒間保持することが好ましい。このように設定することにより、良好な成形性を確保しながら低密度化、軽量化を図ることができる。
【0022】
キャビティ12内にウレタンフォームが充填された後、コンプレッサ48A〜Cからエジェクタポンプ46A〜Cへの圧縮空気の供給を停止して排気を終了する。その後、金型14を開いて成形されたシートパッドを脱型する。
【0023】
一例として公知のHRフォーム処方のポリウレタンフォーム原料を用いて、上記製造装置10により自動車用シートパッドを作製した。使用した金型14はキャビティ12内の容積が31Lであり、傾斜角度θは15°とした。またエジェクタポンプ46A〜Cとして株式会社日本ピスコ製PISCOVSL15−1202J(商品名)を3個用い、コンプレッサ48A〜Cによる圧縮空気の供給圧はそれぞれ500kPaとした。各エジェクタポンプ46A〜Cは、未注入時での最低到達圧を−40kPaに設定した。その結果、欠肉やボイドのない、通常よりも10〜30%程度軽量化されたシートパッドが得られた。これに対し、上記エジェクタポンプを1個のみ使用した場合、真空状態が不均一となって欠肉のあるシートパッドとなった。
【0024】
以上のように、本実施形態の製造装置10であると、真空化装置16として複数のエジェクタポンプ46A〜Cを用いたことにより、キャビティ12内の容積が大きいものについても真空化速度を最適なレベルとして、成形性を満足しながら低密度化、軽量化した発泡成形体を製造することができる。
【0025】
また、金型14を緩やかな角度に傾斜させて上側の部位にある排気溝44からキャビティ12内を排気しながら発泡成形するため、下型20底部に広がったウレタン原液Uをキャビティ12内に均一かつスムーズに充填させることができる。しかも、チャンバー部42とエジェクタポンプ46A〜Cとの接続部である排気口52A〜Cが排気溝44と同様に傾斜姿勢での上側の部位に設けられているため、キャビティ12からのスムーズな排気を達成することができる。
【0026】
更に、本実施形態によれば、金型14の型割り面24が排気溝44を除いてゼロ当たりであるため、バリの除去作業などの後工程の工数が低減され、また金型14のメンテナンス性に優れる。
【0027】
【発明の効果】
本発明の発泡成形体の製造装置であると、製品形状が大きい場合にも成形性を確保しながら低密度化、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態における発泡成形装置のフォーム原料注入時での断面図である。
【図2】同装置の発泡成形時における断面図である。
【図3】同装置の側面図である。
【図4】同装置における下型の平面図である。
【符号の説明】
10……発泡成形装置
12……キャビティ
14……金型
16……真空化装置
18……注入装置
20……下型
22……上型
42……チャンバー部
44……排気溝
46A,46B,46C……エジェクタポンプ
48A,48B,48C……コンプレッサ
52A,52B,52C……排気口
【発明の属する技術分野】
本発明は、発泡原料を真空で発泡成形する発泡成形体の製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車などの車両のシート用パッドや家具用クッションには、弾力性に富む軟質ポリウレタンフォームなどの合成樹脂発泡成形体が用いられている。かかるシート用パッドにおいては、近年の自動車の軽量化・低コスト化の要請に伴い、低密度で軽量なものが求められている。そこで、発泡成形体の低密度化・軽量化を図るため、また複雑な形状品について成形性を確保するために、発泡原料を大気圧によりも低い気圧下で発泡硬化させる真空発泡成形方法が種々提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような真空発泡成形において、成形性を満足させながら低密度化を図ることは容易ではない。すなわち、一般には金型キャビティ内の真空度を高く(内圧を低く)すればそれだけ低密度にすることができるが、真空度を高くするためにキャビティ内圧を急激に低下、即ち真空化速度があまりに速いと、フォームがセル割れを起こすなど成形性を損なう場合がある。逆に、真空化速度が遅いと、十分な真空度まで到達せずに発泡原料が硬化してしまい、そのため発泡体がキャビティ内に完全に充填されない場合がある。このように真空発泡成形では真空化速度を最適なレベルに調整することが求められる。
【0004】
ところで、かかる真空発泡成形装置において、真空ポンプとしてエジェクタポンプを用いる場合、従来は、1個のエジェクタポンプにより金型キャビティ内の気体を吸引して該キャビティ内を真空にしている。しかし、エジェクタポンプが1個では、特に製品形状が大きい場合に、真空化速度を上記のような最適なレベルに設定することができない場合があり、成形性を確保することが難しい。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑みなされたものであり、製品形状が大きい場合にも成形性を確保しながら低密度化、軽量化を図ることができる発泡成形体の製造装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の発泡成形体の製造装置は、内側に密閉されたキャビティを形成する成形型と、前記キャビティ内の気体を吸引して真空にする真空化手段と、前記キャビティ内に発泡原料を注入する注入手段とを備え、前記真空化手段として複数のエジェクタポンプを備えるものである。
【0007】
本発明の製造装置では、注入手段によりキャビティ内に発泡原料が注入され、真空化手段によりキャビティ内の気体が吸引されて真空となり、この真空のキャビティ内で発泡原料が発泡成形される。その際、真空化手段として複数のエジェクタポンプを用いることにより、キャビティ内の容積が大きいものについても真空化速度を最適なレベルに設定することができ、成形性を満足しながら低密度化、軽量化した発泡成形体を製造することができる。
【0008】
本発明の発泡成形体の製造装置においては、前記成形型が、上型と下型とを備え、両者を型閉めすることで型割り面の内側に前記キャビティを形成する成形型であって、水平姿勢と該水平姿勢に対して所定角度傾斜した傾斜姿勢との間で作動可能とされ、前記型割り面の外周に密閉されたチャンバー部を備え、前記型割り面には前記傾斜姿勢での上側の部位に前記キャビティと前記チャンバー部とを連通する排気溝が形成され、前記チャンバー部には前記傾斜姿勢での上側の部位に排気口が設けられた成形型であり、前記複数のエジェクタポンプがそれぞれ前記排気口に接続され、前記チャンバー部内の気体を吸引することで前記排気溝を介して前記キャビティ内の気体を吸引して真空にするものであることが好ましい。この場合、成形型を傾斜姿勢に傾けた状態で発泡成形することにより、発泡原料をキャビティ内に均一かつスムーズに発泡充填させることができる。また、キャビティとチャンバー部を連通する排気溝が傾斜姿勢での上側の部位に設けられ、かつ、この上側の部位にチャンバー部とエジェクタポンプとの接続部である排気口が設けられているため、エジェクタポンプによるキャビティからのスムーズな排気が可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態は、軟質ポリウレタンフォームよりなる自動車用シートパッドの製造装置に関する。
【0010】
図1,2に示すように、本実施形態の製造装置10は、内側に密閉されたキャビティ12を形成する金型14と、キャビティ12内の気体を吸引することによりキャビティ12内を大気圧よりも気圧の低い真空状態にする真空化装置16と、キャビティ12内にポリウレタンフォーム原料Uを注入する注入装置18とを備えてなる。
【0011】
金型14は、上方に開口する下型20と、下型20の上面開口を開閉する上型22とからなり、両者20,22を型閉めすることにより、型割り面(PL部)24の内側に密閉されたキャビティ12を形成する。下型20は、シートパッドの表面側を成形する型であり、それに対応した凹部を有する。上型22は、シートパッドの裏面側を成形する型であり、上記凹部を閉じることにより下型20との間にシートパッド形状に対応する発泡空間であるキャビティ12を形成する。
【0012】
上型22は、下型20と上型22とを閉めた状態でキャビティ12内にフォーム原料Uを注入できるように注入口26を備え、この注入口26は駆動装置28を備える蓋30で開閉されるようになっている。そして、蓋30を開けた状態で、注入口26に注入装置18のノズル部32が差し込まれて、該ノズル部32からキャビティ12内にフォーム原料Uが注入されるようになっている。
【0013】
金型14は、不図示の回動機構によって、水平姿勢(下型20の上面(外周フランジ36)が水平となる姿勢)と、水平姿勢に対して所定角度θ傾斜した傾斜姿勢との間で作動可能に構成されている。水平姿勢に対する傾斜姿勢での角度(傾斜角度)θは15°〜30°程度であることが好ましい。傾斜角度θが大きすぎると、金型縦方向(排気溝44へ向かう方向)への発泡体の伸びが抑制される分、末端の成形性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0014】
図4に示すように、型割り面24の外周は全周にわたってシリコンゴム等のシール材34で取り囲まれている。シール材34は、下型20の外周フランジ36に設けられた凹溝38内に嵌め付けられ、上型22の外周フランジ40との間をシールして型割り面24の外周に密閉された環状のチャンバー部42を形成する。
【0015】
型割り面24には、キャビティ12とチャンバー部42とを連通する排気溝44が設けられている。型割り面24は、この排気溝44の部位を除いてゼロ当たり、即ち排気のための微小隙間がなく下型20と上型22とがぴったりと当接するように構成されている。
【0016】
排気溝44は、図4に示すように、ループ状の型割り面24の周方向における2箇所に設けられている。詳細には、略矩形状をなすキャビティ12の一辺においてその両端の角部にそれぞれ設けられている。このキャビティ12の一辺側は、金型14が傾斜姿勢となったときに、対向する辺に対して上側、即ち高い位置となる側である。そのため、排気溝44は型割り面24において傾斜姿勢で上側となる部位に設けられている。
【0017】
真空化装置16は、この実施形態では3個のエジェクタポンプ46A,46B,46Cと、各エジェクタポンプに圧縮空気を供給する3個のコンプレッサ48A,48B,48Cとで構成されている。図3に示すように、各エジェクタポンプ46A,46B,46Cは、それぞれその吸引側が配管50A,50B,50Cを介して金型14のチャンバー部42に接続されており、対応するコンプレッサ48A,48B,48Cを動作させることで配管50A〜Cを介してチャンバー部42内の気体を吸引する。上型22の外周フランジ40にはチャンバー部42に対して開口する3個の排気口52A,52B,52Cが設けられており、それぞれに対応するエジェクタポンプ46A,46B,46Cが接続されている。
【0018】
排気口52A,52B,52Cは、図4に示すように、上記2本の排気溝44,44の近傍に各1個ずつと、両排気溝44,44の中間位置に1個設けられており、従って、チャンバー部42において傾斜姿勢で上側、即ち高い位置となる側の部位に3個並んで設けられている。
【0019】
以上の製造装置10を用いてシートパッドを成型する際には、まず、図1に示すように、金型14の下型20と上型22を閉じて傾斜姿勢にするとともに、上型22の注入口26の蓋材30を開ける。次いで、3個のコンプレッサ48A〜Cを作動させて3個のエジェクタポンプ46A〜Cによりチャンバー部42からの排気を開始する。そして、注入口26に注入装置18のノズル部32を差し込んでポリウレタンフォーム原料Uをキャビティ12内に注入する。すると、注入されたフォーム原料Uは下型20の適度な傾斜により下方に流れながら広範囲に広がる。なお、本実施形態では傾斜姿勢でフォーム原料Uを注入したが、これに代えて、水平姿勢で注入して注入後に傾斜姿勢とすることもできる。
【0020】
フォーム原料Uの注入後、注入口26を蓋30で閉じると、それによりキャビティ12内が密閉されるため、エジェクタ46A〜Cの作用により排気溝44を介してキャビティ12内の気体が吸引されて気圧の低下が始まる。フォーム原料Uは、上記のように金型14が傾斜しているため、図2に示すように、キャビティ12内における排気溝44とは反対側の端部から順次に充填されていき、排気溝44の近傍は最後に充填される。そのため、キャビティ12内に充填が完了するまで排気溝44を介して排気しながらウレタンを発泡させることができる。
【0021】
ここで、本実施形態では、発泡成形時におけるキャビティ12内の最低内圧が75〜90kPa(大気圧を基準として約−11〜−26kPa)の範囲内となるように真空化するに際し、キャビティ12を密閉してからの真空化速度が−1.4〜−3.5kPa/秒となるように真空化装置16によりキャビティ12内の気体を吸引し、かつ、キャビティ内圧を75〜90kPaの範囲内に20〜30秒間保持することが好ましい。このように設定することにより、良好な成形性を確保しながら低密度化、軽量化を図ることができる。
【0022】
キャビティ12内にウレタンフォームが充填された後、コンプレッサ48A〜Cからエジェクタポンプ46A〜Cへの圧縮空気の供給を停止して排気を終了する。その後、金型14を開いて成形されたシートパッドを脱型する。
【0023】
一例として公知のHRフォーム処方のポリウレタンフォーム原料を用いて、上記製造装置10により自動車用シートパッドを作製した。使用した金型14はキャビティ12内の容積が31Lであり、傾斜角度θは15°とした。またエジェクタポンプ46A〜Cとして株式会社日本ピスコ製PISCOVSL15−1202J(商品名)を3個用い、コンプレッサ48A〜Cによる圧縮空気の供給圧はそれぞれ500kPaとした。各エジェクタポンプ46A〜Cは、未注入時での最低到達圧を−40kPaに設定した。その結果、欠肉やボイドのない、通常よりも10〜30%程度軽量化されたシートパッドが得られた。これに対し、上記エジェクタポンプを1個のみ使用した場合、真空状態が不均一となって欠肉のあるシートパッドとなった。
【0024】
以上のように、本実施形態の製造装置10であると、真空化装置16として複数のエジェクタポンプ46A〜Cを用いたことにより、キャビティ12内の容積が大きいものについても真空化速度を最適なレベルとして、成形性を満足しながら低密度化、軽量化した発泡成形体を製造することができる。
【0025】
また、金型14を緩やかな角度に傾斜させて上側の部位にある排気溝44からキャビティ12内を排気しながら発泡成形するため、下型20底部に広がったウレタン原液Uをキャビティ12内に均一かつスムーズに充填させることができる。しかも、チャンバー部42とエジェクタポンプ46A〜Cとの接続部である排気口52A〜Cが排気溝44と同様に傾斜姿勢での上側の部位に設けられているため、キャビティ12からのスムーズな排気を達成することができる。
【0026】
更に、本実施形態によれば、金型14の型割り面24が排気溝44を除いてゼロ当たりであるため、バリの除去作業などの後工程の工数が低減され、また金型14のメンテナンス性に優れる。
【0027】
【発明の効果】
本発明の発泡成形体の製造装置であると、製品形状が大きい場合にも成形性を確保しながら低密度化、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態における発泡成形装置のフォーム原料注入時での断面図である。
【図2】同装置の発泡成形時における断面図である。
【図3】同装置の側面図である。
【図4】同装置における下型の平面図である。
【符号の説明】
10……発泡成形装置
12……キャビティ
14……金型
16……真空化装置
18……注入装置
20……下型
22……上型
42……チャンバー部
44……排気溝
46A,46B,46C……エジェクタポンプ
48A,48B,48C……コンプレッサ
52A,52B,52C……排気口
Claims (2)
- 内側に密閉されたキャビティを形成する成形型と、前記キャビティ内の気体を吸引して真空にする真空化手段と、前記キャビティ内に発泡原料を注入する注入手段とを備え、前記真空化手段として複数のエジェクタポンプを備えることを特徴とする発泡成形体の製造装置。
- 前記成形型が、上型と下型とを備え、両者を型閉めすることで型割り面の内側に前記キャビティを形成する成形型であって、水平姿勢と該水平姿勢に対して所定角度傾斜した傾斜姿勢との間で作動可能とされ、前記型割り面の外周に密閉されたチャンバー部を備え、前記型割り面には前記傾斜姿勢での上側の部位に前記キャビティと前記チャンバー部とを連通する排気溝が形成され、前記チャンバー部には前記傾斜姿勢での上側の部位に排気口が設けられた成形型であり、
前記複数のエジェクタポンプがそれぞれ前記排気口に接続され、前記チャンバー部内の気体を吸引することで前記排気溝を介して前記キャビティ内の気体を吸引して真空にすることを特徴とする請求項1記載の発泡成形体の製造装置。
Priority Applications (1)
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JP2002179127A JP2004017596A (ja) | 2002-06-19 | 2002-06-19 | 発泡成形体の製造装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2002179127A JP2004017596A (ja) | 2002-06-19 | 2002-06-19 | 発泡成形体の製造装置 |
Publications (1)
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Family Applications (1)
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JP2002179127A Withdrawn JP2004017596A (ja) | 2002-06-19 | 2002-06-19 | 発泡成形体の製造装置 |
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-
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- 2002-06-19 JP JP2002179127A patent/JP2004017596A/ja not_active Withdrawn
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