JP2004017385A - インクジェットヘッドおよびインクジェット記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な構造によってインク吐出部から飛翔するインク滴が放射状に広がるのを抑制し、高精彩な記録を可能とすること。
【解決手段】表面弾性波のエネルギーをインクに与えることでインクを飛翔させることで被記録媒体に記録を行う。使用するインクジェットヘッドは、表面弾性波が伝搬する表面弾性波伝搬体と、前記表面弾性波伝搬体上に位置する表面弾性波発生手段と、前記表面弾性波伝搬体上に位置するンク吐出部と、前記インク吐出部にインクを供給するためのインク供給手段と、前記表面弾性波発生手段と前記インク吐出部との間に位置し、所定の周波数の表面弾性波のみを通過させるフィルタとを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】表面弾性波のエネルギーをインクに与えることでインクを飛翔させることで被記録媒体に記録を行う。使用するインクジェットヘッドは、表面弾性波が伝搬する表面弾性波伝搬体と、前記表面弾性波伝搬体上に位置する表面弾性波発生手段と、前記表面弾性波伝搬体上に位置するンク吐出部と、前記インク吐出部にインクを供給するためのインク供給手段と、前記表面弾性波発生手段と前記インク吐出部との間に位置し、所定の周波数の表面弾性波のみを通過させるフィルタとを備える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面弾性波のエネルギーをインクに与えることでインクを飛翔させるインクジェットヘッドおよび該インクジェットヘッドを用いたインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【背景技術】
近年、ノズルレスのインクジェット記録方式の一つとして、SAWストリーミング現象を応用したノズルレスインクジェットヘッドの研究が行われている。SAWストリーミングと現象とは、固体表面に局在して伝搬する表面弾性波(Surface Acoustic Wave)を固体表面に接触している液体中に放射させることにより表面弾性波の振動エネルギーを液体へ伝搬させ、このエネルギーによって液体が微小な液滴となって飛翔するという現象である。このSAWストリーミング現象を応用したノズルレスインクジェットヘッドについては種々の検討がなされており、特開平2−269058号公報に開示されている。このようなSAWストリーミング現象を応用したインクジェットヘッドは、固体表面に局在している表面弾性波のエネルギーを効率よく液体に伝達することができ、特開平2−103152号公報に開示されているようなピエゾ素子のバルク振動を利用するものと比べてエネルギー効率の点で大きな利点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平2−269058号公報に示したような従来例においては、インクの飛翔に際して飛び出した多数のインク滴が放射状に広がってしまい、高精細な記録を行うには更なる改良が望まれる。これは前記特開平2−103152号公報に示したようなピエゾ素子のバルク振動を用いたノズルレスインクジェットヘッドにおいても同様であって、こちらの従来例においては、インク滴を吐出させた後、インク吐出部の上部に設けたスリット等を用いて強制的にインク滴の放射状広がりを抑制しているが、反面、インクジェットヘッドとしての構造が複雑になり、ヘッドの小型化を図り難い。
【0004】
本発明は、表面弾性波を用いるノズルレスインクジェットヘッドにおいて、簡素な構造で飛翔するインク滴の放射状広がりを抑制し、高精細記録および小型化が可能なノズルレスインクジェットヘッドおよびこれを用いた記録装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、表面弾性波のエネルギーをインクに与えることでインクを飛翔させるインクジェットヘッドであって、表面弾性波が伝搬する表面弾性波伝搬体と、前記表面弾性波伝搬体上に位置する表面弾性波発生手段と、前記表面弾性波伝搬体上に位置するンク吐出部と、前記インク吐出部にインクを供給するためのインク供給手段と、前記表面弾性波発生手段と前記インク吐出部との間に位置し、所定の周波数の表面弾性波のみを通過させるフィルタとを備えることを特徴とするインクジェットヘッドである。
【0006】
また、本発明により、上記インクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの表面弾性波発生手段へ電圧を印加するための電圧印加手段とを有することを特徴とするインクジェット記録装置が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
(第lの実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する.図1は、本発明の第一の実施形態におけるインクジェットヘッドの斜視図である。1はインクジェットヘッド、2は櫛形電極に印加する電圧を制御する駆動装置(以下駆動装置)、10は基板、11は圧電薄膜、12は櫛型電極、13a、13bはグレーティング(格子状部)、14はインク吐出部、15はインク溜めである。ここで基板10としてはAl2O3やSiなどが用いられ、この上に圧電薄膜としてZnOなどが蒸着される。櫛型電極は一般的なフォトリソグラフィプロセスにより基板上に塗布したレジストへ電極パターンを転写した後、蒸着やめっき等のプロセスを経て形成される。グレーティングについても櫛型電極と同様のプロセスによって形成されるが、最終的にエッチングによって溝を形成する、逆に金属や絶縁体等の薄膜を形成する、あるいはイオン注入を行うなど、様々な手法を用いることが可能である。本実施形態ではエッチングを行って溝を形成している。このようにして形成された、櫛型電極12を挟む形で配置されたグレーティング13a、13bは共振器として働き、2つのグレーティングに挟まれた部分にはグレーティングの間隔(共振器長に相当する)から定まる共振周波数をもつ等しい定在波が生じる。ここでそれぞれのグレーティングのピッチは、櫛型電極12から発生する表面弾性波の周波数に対して最も反射率が高くなるように設定される。またそれぞれのグレーティングの対数は同一でもよいが、インク吐出部14へと向かう表面弾性波を取り出しやすくするため、櫛型電極12とインク吐出部14とに挟まれたほうのグレーティング13bの対数をやや少なくするとよい。
【0008】
一方、反対側のグレーティング13aの対数を十分多く取ることで、通常基板の端部に設けられる不要な表面弾性波を吸収するためのダンパーが不要となる。また、インク吐出部14は対応したインク溜め15と連通しており、インク溜めに収容されたインクは毛管現象によりインク吐出部に進入してインク吐出部内を満たした状態を保つ。
【0009】
次に、図1に示したようなインクジェットヘッドにおけるインク飛翔のメカニズムについて、図1の断面図であるところの図2を用いて説明する。なお、図1と同一の部材には同一の部番を付して説明を省略する。駆動回路2(非図示)から櫛型電極12に適当な周波数の電気信号を印加すると、表面弾性波101が励振される。こうして励振された表面弾性波は、グレーティング13a、13bにより構成される共振器内で多重反射を繰り返し、グレーティング13a、13bの間隔から一意的に定まる共振周波数を中心とするシャープな周波数スペクトルを持つ定在波となる。このシャープな周波数スペクトルを持つ定在波の一部を取り出したものが表面弾性波102であって、この表面弾性波102がインク吐出部14に達する。
【0010】
さて、表面弾性波102は吐出部14に達すると、その振動のエネルギーをインクへ放出して急激に減衰する。逆にエネルギーを得たインクは図中のベクトルAの方向へ飛び出そうとする。このとき、表面弾性波102の振幅が充分に大きければ、インクは微小な液滴となって空中へ飛翔する。このときのベクトルAと圧電薄膜11の垂線とのなす角をθAとし、圧電薄膜11中の表面弾性波の速度をvsol、インク中の音速をvliqとすると、θAは次式によって一意的に定まる。
【0011】
【外1】
【0012】
一般にθAのことをストリーミング角と呼ぶ.ここで問題となるのは、本実施例のように基板上に圧電薄膜を積層した構造においては、薄膜中を進行する表面弾性波が速度分散性を持つ点である。すなわち、インク吐出部14に到達する表面弾性波の周波数スペクトルがブロードであればあるほど、vsolの広がり(速度分布の広がり)も大きくなる。ゆえに、上述の関係式にしたがってストリーミング角の広がりも大きくなり、結果として飛翔するインク滴が放射状に広がってしまうことになる。そこで、ストリーミング角の広がりを抑制するには、インク吐出部14に到達する表面弾性波の周波数スペクトルをできるだけシャープにする必要がある。
【0013】
以上に示した考察により、本実施例のように表面弾性波発生手段とインク吐出部の間に所望の周波数のみを通過させるような帯域通過フィルタを設けることで、フィルタを通り抜けてインク吐出部に到達する表面弾性波102の周波数スペクトルをシャープにすることができ、速度分散に起因するストリーミング角の広がりを抑制して飛翔するインク滴が放射状に広がってしまうのを抑制することができる。
【0014】
なお、本実施形態のように基板上に圧電薄膜を積層した構造ではなく、LiNbO3などバルクの圧電基板を用いる場合には事情が異なる。バルクの圧電基板表面を走る基本モードの表面弾性波は非速度分散性であるため、表面弾性波の周波数スペクトルがブロードであろうとシャープであろうと、表面弾性波の速度vsolには影響を及ぼさない。しかしながら、バルクの圧電基板を用いる場合には、通常の表面弾性波の他に、漏れ表面弾性波(Leaky Surface Acoustic Wave)と呼ばれる基本モードの表面弾性波の速度よりもやや遅い速度で進行する波が存在する。この漏れ表面弾性波は速度分散性を持つため、この部分が励振された表面弾性波の周波数スペクトルの広がり具合に応じてvsolを広げるように働く。したがって、バルクの圧電基板を用いる場合においても、その詳細な機構は圧電薄膜を用いる場合と若干異なるものの、帯域通過フィルタを用いることでストリーミング角の広がりを抑制することができ、飛翔するインク滴の広がりを低減することができる。
【0015】
続いて上述したようなインクジェットヘッドを用いたインクジェット記録装置の基本構成を図3に示す。なお、図1および図2と同一の部分には同一の部番を付して説明を省略する。3は図中の矢印Dの方向に走査される印字ヘッド、4は印字ヘッドの位置を制御する制御装置、5はローラー、6は記録紙である。印字ヘッドを図中の矢印Bの方向に走査させながらインクジェットヘッド1からインクを飛翔させ、これをローラー5によって紙送りされる記録紙6に定着させることにより、記録紙上に画像や文字を記録することができる。
【0016】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施例におけるインクジェットヘッド7の斜視図である.なお、前述の部材と同一のものには同一の部番を付し、説明を省略する。本実施例においては、基板10および圧電薄膜11にインク供給手段である溝部16が形成されており、インクはこの溝を伝って吐出部14に達する.なお、インク溜めは非図示としている。その他の構成、ならびに駆動方法等は第一の実施例と同様である。
【0017】
また、図3で示した第一の実施例におけるインクジェット記録装置のインクジェットヘッド1の代わりに、本実施例におけるインクジェットヘッド7を用いても、第一の実施例と全く同様にして記録紙上に画像や文字を記録することができる。
【0018】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態におけるインクジェットヘッド8の斜視図である。なお、前述の部材と同一のものには同一の部番を付し、説明を省略する。本実施例においては、圧電薄膜11の表面上にインク供給手段である2本のガイド部材17が形成されており、インクはこのガイド部材の間を通って吐出部14に達する。なお、インク溜めは非図示としている。その他の構成、ならびに駆動方法等は第一の実施例と同様である。
【0019】
また、図3で示した第一の実施例におけるインクジェット記録装置のインクジェットヘッド1の代わりに、本実施例におけるインクジェットヘッド8を用いても、第一の実施例と全く同様にして記録紙上に画像や文字を記録することができる。
【0020】
(第4の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態におけるインクジェットヘッド9の斜視図である。なお、前述の部材と同一のものには同一の部番を付し、説明を省略する。本実施例においては、圧電薄膜11の表面上にインク供給手段である管18が設けられており、インクはこの管を通って吐出部14に達する。なお、インク溜めは非図示としている.その他の構成、ならびに駆動方法等は第一の実施例と同様である。
【0021】
また、図6で示した第1の実施形態におけるインクジェット記録装置のインクジェットヘッド1の代わりに、本実施例におけるインクジェットヘッド9を用いても、第一の実施例と全く同様にして記録紙上に画像や文字を記録することができる。
【0022】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、簡易な構造によってインク吐出部から飛翔するインク滴が放射状に広がってしまうのを抑制することができ、従来の表面弾性波を用いたインクジェット記録に比べて高精彩な記録が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるインクジェットヘッドの斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態におけるインクジェットヘッドの断面図である。
【図3】図1に示した本発明の第1の実施形態におけるインクジェットヘッドを用いたインクジェット記録装置の模式図である。
【図4】本発明の第2の実施形態におけるインクジェットヘッドの斜視図である。
【図5】本発明の第3の実施形態におけるインクジェットヘッドの斜視図である。
【図6】本発明の第4の実施形態におけるインクジェットヘッドの斜視図である。
【符号の説明】
1 インクジェットヘッド
2 櫛形電極を制御する駆動装置
3 印字ヘッド
4 印字ヘッドの位置を制御する装置
5 ローラー
6 記録紙
7 インクジェットヘッド
8 インクジェットヘッド
9 インクジェットヘッド
10 基板
11 圧電薄膜
12 櫛形電極
13a〜13b グレーティング
14 インク吐出部
15 インク溜め
16 溝部
17 ガイド部材
18 管
101 櫛形電極12より生じた表面弾性波
102 吐出部へ到達する表面弾性波
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面弾性波のエネルギーをインクに与えることでインクを飛翔させるインクジェットヘッドおよび該インクジェットヘッドを用いたインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【背景技術】
近年、ノズルレスのインクジェット記録方式の一つとして、SAWストリーミング現象を応用したノズルレスインクジェットヘッドの研究が行われている。SAWストリーミングと現象とは、固体表面に局在して伝搬する表面弾性波(Surface Acoustic Wave)を固体表面に接触している液体中に放射させることにより表面弾性波の振動エネルギーを液体へ伝搬させ、このエネルギーによって液体が微小な液滴となって飛翔するという現象である。このSAWストリーミング現象を応用したノズルレスインクジェットヘッドについては種々の検討がなされており、特開平2−269058号公報に開示されている。このようなSAWストリーミング現象を応用したインクジェットヘッドは、固体表面に局在している表面弾性波のエネルギーを効率よく液体に伝達することができ、特開平2−103152号公報に開示されているようなピエゾ素子のバルク振動を利用するものと比べてエネルギー効率の点で大きな利点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平2−269058号公報に示したような従来例においては、インクの飛翔に際して飛び出した多数のインク滴が放射状に広がってしまい、高精細な記録を行うには更なる改良が望まれる。これは前記特開平2−103152号公報に示したようなピエゾ素子のバルク振動を用いたノズルレスインクジェットヘッドにおいても同様であって、こちらの従来例においては、インク滴を吐出させた後、インク吐出部の上部に設けたスリット等を用いて強制的にインク滴の放射状広がりを抑制しているが、反面、インクジェットヘッドとしての構造が複雑になり、ヘッドの小型化を図り難い。
【0004】
本発明は、表面弾性波を用いるノズルレスインクジェットヘッドにおいて、簡素な構造で飛翔するインク滴の放射状広がりを抑制し、高精細記録および小型化が可能なノズルレスインクジェットヘッドおよびこれを用いた記録装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、表面弾性波のエネルギーをインクに与えることでインクを飛翔させるインクジェットヘッドであって、表面弾性波が伝搬する表面弾性波伝搬体と、前記表面弾性波伝搬体上に位置する表面弾性波発生手段と、前記表面弾性波伝搬体上に位置するンク吐出部と、前記インク吐出部にインクを供給するためのインク供給手段と、前記表面弾性波発生手段と前記インク吐出部との間に位置し、所定の周波数の表面弾性波のみを通過させるフィルタとを備えることを特徴とするインクジェットヘッドである。
【0006】
また、本発明により、上記インクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの表面弾性波発生手段へ電圧を印加するための電圧印加手段とを有することを特徴とするインクジェット記録装置が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
(第lの実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する.図1は、本発明の第一の実施形態におけるインクジェットヘッドの斜視図である。1はインクジェットヘッド、2は櫛形電極に印加する電圧を制御する駆動装置(以下駆動装置)、10は基板、11は圧電薄膜、12は櫛型電極、13a、13bはグレーティング(格子状部)、14はインク吐出部、15はインク溜めである。ここで基板10としてはAl2O3やSiなどが用いられ、この上に圧電薄膜としてZnOなどが蒸着される。櫛型電極は一般的なフォトリソグラフィプロセスにより基板上に塗布したレジストへ電極パターンを転写した後、蒸着やめっき等のプロセスを経て形成される。グレーティングについても櫛型電極と同様のプロセスによって形成されるが、最終的にエッチングによって溝を形成する、逆に金属や絶縁体等の薄膜を形成する、あるいはイオン注入を行うなど、様々な手法を用いることが可能である。本実施形態ではエッチングを行って溝を形成している。このようにして形成された、櫛型電極12を挟む形で配置されたグレーティング13a、13bは共振器として働き、2つのグレーティングに挟まれた部分にはグレーティングの間隔(共振器長に相当する)から定まる共振周波数をもつ等しい定在波が生じる。ここでそれぞれのグレーティングのピッチは、櫛型電極12から発生する表面弾性波の周波数に対して最も反射率が高くなるように設定される。またそれぞれのグレーティングの対数は同一でもよいが、インク吐出部14へと向かう表面弾性波を取り出しやすくするため、櫛型電極12とインク吐出部14とに挟まれたほうのグレーティング13bの対数をやや少なくするとよい。
【0008】
一方、反対側のグレーティング13aの対数を十分多く取ることで、通常基板の端部に設けられる不要な表面弾性波を吸収するためのダンパーが不要となる。また、インク吐出部14は対応したインク溜め15と連通しており、インク溜めに収容されたインクは毛管現象によりインク吐出部に進入してインク吐出部内を満たした状態を保つ。
【0009】
次に、図1に示したようなインクジェットヘッドにおけるインク飛翔のメカニズムについて、図1の断面図であるところの図2を用いて説明する。なお、図1と同一の部材には同一の部番を付して説明を省略する。駆動回路2(非図示)から櫛型電極12に適当な周波数の電気信号を印加すると、表面弾性波101が励振される。こうして励振された表面弾性波は、グレーティング13a、13bにより構成される共振器内で多重反射を繰り返し、グレーティング13a、13bの間隔から一意的に定まる共振周波数を中心とするシャープな周波数スペクトルを持つ定在波となる。このシャープな周波数スペクトルを持つ定在波の一部を取り出したものが表面弾性波102であって、この表面弾性波102がインク吐出部14に達する。
【0010】
さて、表面弾性波102は吐出部14に達すると、その振動のエネルギーをインクへ放出して急激に減衰する。逆にエネルギーを得たインクは図中のベクトルAの方向へ飛び出そうとする。このとき、表面弾性波102の振幅が充分に大きければ、インクは微小な液滴となって空中へ飛翔する。このときのベクトルAと圧電薄膜11の垂線とのなす角をθAとし、圧電薄膜11中の表面弾性波の速度をvsol、インク中の音速をvliqとすると、θAは次式によって一意的に定まる。
【0011】
【外1】
【0012】
一般にθAのことをストリーミング角と呼ぶ.ここで問題となるのは、本実施例のように基板上に圧電薄膜を積層した構造においては、薄膜中を進行する表面弾性波が速度分散性を持つ点である。すなわち、インク吐出部14に到達する表面弾性波の周波数スペクトルがブロードであればあるほど、vsolの広がり(速度分布の広がり)も大きくなる。ゆえに、上述の関係式にしたがってストリーミング角の広がりも大きくなり、結果として飛翔するインク滴が放射状に広がってしまうことになる。そこで、ストリーミング角の広がりを抑制するには、インク吐出部14に到達する表面弾性波の周波数スペクトルをできるだけシャープにする必要がある。
【0013】
以上に示した考察により、本実施例のように表面弾性波発生手段とインク吐出部の間に所望の周波数のみを通過させるような帯域通過フィルタを設けることで、フィルタを通り抜けてインク吐出部に到達する表面弾性波102の周波数スペクトルをシャープにすることができ、速度分散に起因するストリーミング角の広がりを抑制して飛翔するインク滴が放射状に広がってしまうのを抑制することができる。
【0014】
なお、本実施形態のように基板上に圧電薄膜を積層した構造ではなく、LiNbO3などバルクの圧電基板を用いる場合には事情が異なる。バルクの圧電基板表面を走る基本モードの表面弾性波は非速度分散性であるため、表面弾性波の周波数スペクトルがブロードであろうとシャープであろうと、表面弾性波の速度vsolには影響を及ぼさない。しかしながら、バルクの圧電基板を用いる場合には、通常の表面弾性波の他に、漏れ表面弾性波(Leaky Surface Acoustic Wave)と呼ばれる基本モードの表面弾性波の速度よりもやや遅い速度で進行する波が存在する。この漏れ表面弾性波は速度分散性を持つため、この部分が励振された表面弾性波の周波数スペクトルの広がり具合に応じてvsolを広げるように働く。したがって、バルクの圧電基板を用いる場合においても、その詳細な機構は圧電薄膜を用いる場合と若干異なるものの、帯域通過フィルタを用いることでストリーミング角の広がりを抑制することができ、飛翔するインク滴の広がりを低減することができる。
【0015】
続いて上述したようなインクジェットヘッドを用いたインクジェット記録装置の基本構成を図3に示す。なお、図1および図2と同一の部分には同一の部番を付して説明を省略する。3は図中の矢印Dの方向に走査される印字ヘッド、4は印字ヘッドの位置を制御する制御装置、5はローラー、6は記録紙である。印字ヘッドを図中の矢印Bの方向に走査させながらインクジェットヘッド1からインクを飛翔させ、これをローラー5によって紙送りされる記録紙6に定着させることにより、記録紙上に画像や文字を記録することができる。
【0016】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施例におけるインクジェットヘッド7の斜視図である.なお、前述の部材と同一のものには同一の部番を付し、説明を省略する。本実施例においては、基板10および圧電薄膜11にインク供給手段である溝部16が形成されており、インクはこの溝を伝って吐出部14に達する.なお、インク溜めは非図示としている。その他の構成、ならびに駆動方法等は第一の実施例と同様である。
【0017】
また、図3で示した第一の実施例におけるインクジェット記録装置のインクジェットヘッド1の代わりに、本実施例におけるインクジェットヘッド7を用いても、第一の実施例と全く同様にして記録紙上に画像や文字を記録することができる。
【0018】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態におけるインクジェットヘッド8の斜視図である。なお、前述の部材と同一のものには同一の部番を付し、説明を省略する。本実施例においては、圧電薄膜11の表面上にインク供給手段である2本のガイド部材17が形成されており、インクはこのガイド部材の間を通って吐出部14に達する。なお、インク溜めは非図示としている。その他の構成、ならびに駆動方法等は第一の実施例と同様である。
【0019】
また、図3で示した第一の実施例におけるインクジェット記録装置のインクジェットヘッド1の代わりに、本実施例におけるインクジェットヘッド8を用いても、第一の実施例と全く同様にして記録紙上に画像や文字を記録することができる。
【0020】
(第4の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態におけるインクジェットヘッド9の斜視図である。なお、前述の部材と同一のものには同一の部番を付し、説明を省略する。本実施例においては、圧電薄膜11の表面上にインク供給手段である管18が設けられており、インクはこの管を通って吐出部14に達する。なお、インク溜めは非図示としている.その他の構成、ならびに駆動方法等は第一の実施例と同様である。
【0021】
また、図6で示した第1の実施形態におけるインクジェット記録装置のインクジェットヘッド1の代わりに、本実施例におけるインクジェットヘッド9を用いても、第一の実施例と全く同様にして記録紙上に画像や文字を記録することができる。
【0022】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、簡易な構造によってインク吐出部から飛翔するインク滴が放射状に広がってしまうのを抑制することができ、従来の表面弾性波を用いたインクジェット記録に比べて高精彩な記録が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるインクジェットヘッドの斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態におけるインクジェットヘッドの断面図である。
【図3】図1に示した本発明の第1の実施形態におけるインクジェットヘッドを用いたインクジェット記録装置の模式図である。
【図4】本発明の第2の実施形態におけるインクジェットヘッドの斜視図である。
【図5】本発明の第3の実施形態におけるインクジェットヘッドの斜視図である。
【図6】本発明の第4の実施形態におけるインクジェットヘッドの斜視図である。
【符号の説明】
1 インクジェットヘッド
2 櫛形電極を制御する駆動装置
3 印字ヘッド
4 印字ヘッドの位置を制御する装置
5 ローラー
6 記録紙
7 インクジェットヘッド
8 インクジェットヘッド
9 インクジェットヘッド
10 基板
11 圧電薄膜
12 櫛形電極
13a〜13b グレーティング
14 インク吐出部
15 インク溜め
16 溝部
17 ガイド部材
18 管
101 櫛形電極12より生じた表面弾性波
102 吐出部へ到達する表面弾性波
Claims (11)
- 表面弾性波のエネルギーをインクに与えることでインクを飛翔させるインクジェットヘッドであって、
表面弾性波が伝搬する表面弾性波伝搬体と、
前記表面弾性波伝搬体上に位置する表面弾性波発生手段と、
前記表面弾性波伝搬体上に位置するンク吐出部と、
前記インク吐出部にインクを供給するためのインク供給手段と、
前記表面弾性波発生手段と前記インク吐出部との間に位置し、所定の周波数の表面弾性波のみを通過させるフィルタと
を備えることを特徴とするインクジェットヘッド。 - 前記表面弾性波発生手段が櫛形電極であることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
- 前記表面弾性波発生手段が一方向性櫛形電極であることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
- 前記表面弾性波伝搬体の表面に、前記インクの飛翔に不要な表面弾性波を吸収するための吸音材が配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
- 前記複数のインク供給手段が、前記インク吐出部にインクを供給するための供給路であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
- 前記供給路が、前記表面弾性波伝搬体に位置する溝であることを特徴とする請求項5記載のインクジェットヘッド。
- 前記供給路が、前記表面弾性波伝搬体上に配置されたガイド部材であることを特徴とする請求項5記載のインクジェットヘッド。
- 前記供給路が、前記表面弾性波伝搬体上に配置された管状体であることを特徴とする請求項5に記載のインクジェットヘッド。
- 前記インク供給手段が、前記表面弾性波伝搬体の片面に設けられたインクを貯留するためのインク溜めと、前記表面弾性波伝搬体を貫通して前記インク吐出部とインク溜めとを連通する貫通穴とを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載のインクジェットヘッド。
- 前記フィルタが、前記表面弾性波発生手段を挟むように位置するグレーティングであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
- 請求項1乃至10のいずれかに記載のインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの表面弾性波発生手段へ電圧を印加するための電圧印加手段とを有することを特徴とするインクジェット記録装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002173660A JP2004017385A (ja) | 2002-06-14 | 2002-06-14 | インクジェットヘッドおよびインクジェット記録装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2002173660A JP2004017385A (ja) | 2002-06-14 | 2002-06-14 | インクジェットヘッドおよびインクジェット記録装置 |
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JP2004017385A true JP2004017385A (ja) | 2004-01-22 |
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ID=31172826
Family Applications (1)
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JP2002173660A Withdrawn JP2004017385A (ja) | 2002-06-14 | 2002-06-14 | インクジェットヘッドおよびインクジェット記録装置 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2007066777A1 (ja) * | 2005-12-09 | 2007-06-14 | Kyocera Corporation | 流体アクチュエータ並びにこれを用いた発熱装置及び分析装置 |
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2002
- 2002-06-14 JP JP2002173660A patent/JP2004017385A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2007066777A1 (ja) * | 2005-12-09 | 2007-06-14 | Kyocera Corporation | 流体アクチュエータ並びにこれを用いた発熱装置及び分析装置 |
US8159110B2 (en) | 2005-12-09 | 2012-04-17 | Kyocera Corporation | Fluid actuator, and heat generating device and analysis device using the same |
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