JP2004016899A - 発酵処理装置 - Google Patents

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古田 正俊
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Abstract

【課題】発酵容器に投入された廃棄物を、全体に亘って確実に攪拌するとともに、効率的に短時間で発酵させることが可能な発酵処理装置を提供する。
【解決手段】発酵処理装置2は、横方向に設置される略円筒形状の胴部20、及び左右側面を閉塞する側壁21を有し、投入された廃棄物を閉空間内で発酵させる発酵容器11と、発酵容器11の中心を通り回動自在に取付けられ回転軸35、スクリュー羽根36、及びそれらを回転させる第一駆動部を有し、スクリュー羽根36の回転により廃棄物を攪拌及び搬送する攪拌搬送手段12と、架台に対して発酵容器11を回動自在に支持する支持部14と、発酵容器11を回転させる第二駆動部と、発酵容器11の内周面から突設され、発酵容器11の回転に伴い廃棄物を内周面に沿って持ち上げる持上片30とを具備する。
【選択図】    図5

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発酵処理装置に関し、特に、生ゴミ等の廃棄物を、微生物によって発酵させる発酵処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
経済発展や生活の高度化とともに、生ゴミ、有機汚泥、おから、及び魚骨等の有機廃棄物(以下、単に「廃棄物」という)が増え続けており、特に、デパート、スーパー、青果市場、または鮮魚市場等においては、日量1t〜10tの廃棄物が発生するところもある。一方、これらの敷地内で発生した廃棄物を減量化するため、以前は小型のバッチ炉で焼却する場合が多かったが、最近ではダイオキシン問題で焼却は困難となっている。このような実状の中、微生物を活用して廃棄物を分解させる方法が注目されている。これによれば、廃棄物を減量化することができるとともに、廃棄物の一部を堆肥として有効利用することも可能になる。
【0003】
なお、具体的な装置としては、廃棄物が微生物(発酵菌)とともに収容される発酵容器と、これらの廃棄物を攪拌する攪拌手段とを備えたものが一般的である。ここで、発酵容器としては、横方向に設置される略円筒状のものや上面が開放された樋状のものがあり、一方、攪拌手段としては、容器の中心を通って回動可能に支持された回転軸と、その周面に形成されたスクリュー羽根と、回転軸及びスクリュー羽根を回転させるモータ等の駆動部とから構成されたものが知られている。これによれば、発酵容器内でスクリュー羽根を正転及び逆転させることにより、発酵容器内の廃棄物を攪拌することができる。
【0004】
一方、廃棄物を容易に発酵させる微生物として、好気性の高温菌が知られている。そして、この菌を用いる場合には、発酵容器内を高温度(例えば80℃)に維持するために、加熱ヒータや送風機を備えた温風供給手段が設置される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の発酵処理装置は、スクリュー羽根によって廃棄物を左右方向に搬送させながら攪拌する構成であるため、発酵容器の内周面付近の廃棄物と中央付近の廃棄物とが混合され難くなっていた。特に、発酵容器内に投入された廃棄物が比較的少量の場合、または発酵により減量化され少なくなった場合には、発酵容器の底部付近に貯溜する廃棄物を上方に掻き出すことが困難となっていた。このため、発酵状態が不均一になり、発酵処理が完了するまでに長い時間を要していた。
【0006】
また、従来の発酵容器には、廃棄物を投入するための投入口が上面に設けられているため、温風供給手段によって発酵容器内に温風が供給されても、投入口等の開口部分から熱気が漏れる可能性が高かった。このため、熱効率が悪くなるばかりでなく、発酵容器内を所定の高温状態に維持することが困難となり、高温菌の繁殖に支障となる恐れがあった。したがって、高温菌を用いた場合でも、発酵処理が完了するまでに比較的長い時間を要していた。
【0007】
なお、発酵容器から排出された空気を、温風供給手段に戻すようにすれば熱効率を上げることができるが、発酵容器内の空気には、廃棄物から放出された水分が多く含まれているため、その空気をそのまま発酵容器に戻すと、水蒸気を循環させることになり廃棄物を乾燥させることが困難となる。
【0008】
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、発酵容器に投入された廃棄物を、全体に亘って確実に攪拌するとともに、短時間で発酵させることができる発酵処理装置の提供を課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明にかかる発酵処理装置は、横方向に設置される略円筒形状の胴部、及び該胴部の左右側面を閉塞する側壁を有し、投入された廃棄物を閉空間内で発酵させる発酵容器と、該発酵容器の中心を通り該発酵容器に対して回動自在に取付けられ回転軸、該回転軸の周面に形成されたスクリュー羽根、及び前記回転軸及び前記スクリュー羽根を回転させる第一駆動部を有し、前記スクリュー羽根の回転により前記発酵容器内の前記廃棄物を攪拌及び搬送する攪拌搬送手段と、架台に対して前記発酵容器を回動自在に支持する支持部と、前記発酵容器を回転させる第二駆動部と、前記発酵容器の内周面から前記回転軸側に突設され、前記発酵容器の回転に伴い、前記発酵容器の下部付近の前記廃棄物を前記内周面に沿って持ち上げる持上部とを具備するものである。
【0010】
ここで、「支持部」としては、例えば発酵容器の外周に当接する複数のローラ部材から構成することができる。これによれば、攪拌搬送手段の作動状態と関連することなく、発酵容器を回動自在に支持することができる。なお、発酵容器を回転させるには、例えば発酵容器の外部から発酵容器の外周面に回転力を付与するようにすればよい。また、「持上部」の数は特に限定されるものではないが、放射状に複数の持上部を形成することにより、攪拌効率を一層高めることができるとともに、円筒状の発酵容器を安定して回転させることが可能になる。また、対象可能な「廃棄物」としては、鶏糞、木屑、おから、紙、灰、生ゴミ、有機汚泥、魚骨等を例示することができる。
【0011】
したがって、請求項1の発明の発酵処理装置によれば、発酵容器内に投入された廃棄物は、攪拌搬送手段のスクリュー羽根によって横方向に搬送されながら攪拌される。なお、この際、廃棄物が発酵容器の端部に偏らないように、スクリュー羽根の回転方向を制御し、搬送方向を交互に切替えることが望ましい。また、この搬送攪拌動作とともに、第二駆動部により、発酵容器自体が回転する。発酵容器の内周面には、回転軸に向って突設する持上部が形成されているため、発酵容器の底部付近の廃棄物は持上部によって持上げられ、その後、その持上部の上昇に伴って持上部の先端が下方を向くと、持上げられた廃棄物は重力によって自然落下する。すなわち、発酵容器の底部付近の廃棄物が上方に掻き出されることになる。
【0012】
請求項2の発明にかかる発酵処理装置は、請求項1に記載の発酵処理装置において、前記側壁には前記閉空間を開放可能とする開口部が形成され、前記発酵容器に前記廃棄物を投入する際、前記開口部を前記回転軸よりも上方に位置させ、前記発酵容器内の前記廃棄物を排出する際、前記開口部を前記回転軸よりも下方に位置させる開口位置変位手段と、前記発酵容器内の前記廃棄物を排出する際、前記スクリュー羽根を回転させることにより前記発酵容器内の前記廃棄物を前記開口部に向って搬送させる排出制御手段とをさらに備えるものである。
【0013】
したがって、請求項2の発明の発酵処理装置によれば、請求項1の発明の作用に加え、発酵容器の側壁に形成された一つの開口部が、廃棄物を投入するための投入口、及び発酵後の廃棄物(処理物)を排出するための排出口として兼用される。詳しく説明すると、廃棄物を投入する際には、第二駆動部によって発酵容器を回転させ、開口部が回転軸よりも上方(特に上端)となる位置で停止させる。これにより、開口部よりも下方の空間、すなわち廃棄物を収容できる領域が広くなる。一方、廃棄物を排出する際には、第二駆動部によって発酵容器を回転させ、開口部が回転軸よりも下方(特に下端)となる位置で停止させる。これにより、開口部よりも上方の空間、すなわち開口部を通して廃棄物を排出できる領域が広くなる。つまり、スクリュー羽根の回転により発酵容器内の廃棄物を開口部に向って搬送すると、大部分の廃棄物が開口部を通して外部に排出される。
【0014】
請求項3の発明にかかる発酵処理装置は、請求項1または請求項2に記載の発酵処理装置において、前記回転軸の内部には、該回転軸の端部と前記発酵容器内の前記閉空間とを連通する空気通路が形成され、前記回転軸の前記端部に、温風供給手段の接続部が挿入されているものである。
【0015】
ここで、「空気通路」は、回転軸全体に亘って形成してもよいが、端部を含む所定の範囲のみに形成してもよい。また「温風供給手段」としては、例えば、空気を供給する送風機、供給する空気を加熱するヒータ、及び送風機と回転軸の端部とを繋ぐ接続管等から構成したものを例示できる。
【0016】
したがって、請求項3の発明の発酵処理装置によれば、請求項1または請求項2の発明の作用に加え、温風を供給することにより、発酵容器内を高温度に維持することが可能になる。特に、温風供給手段の接続部が回転軸の端部に挿入され、回転軸の内部に形成された空気通路を通して発酵容器内に温風を供給することから、発酵容器が回転するにも拘わらず、発酵容器の閉空間を維持したまま温風を供給することが可能となる。
【0017】
請求項4の発明にかかる発酵処理装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の発酵処理装置において、前記発酵容器の前記側壁には、前記閉空間内の空気を排出する排気口が、前記回転軸を中心とした円周上に複数形成され、夫々の前記排気口を閉鎖する弁部材、及び前記回転軸よりも上方の所定位置に合致する前記排気口のみを開放させるように前記弁部材の開閉状態を切り替える開閉機構をさらに備えるものである。
【0018】
ここで、「弁部材」としては、例えばポペット弁を挙げることができる。また、「開閉機構」は、例えば各弁部材に対して連結され押圧操作により弁部材を開成する操作杆と、操作杆の位置を切り替えるカムとから構成することができる。
【0019】
したがって、請求項4の発明の発酵処理装置によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか一つの発明の作用に加え、円周上に形成された複数の排気口の中で、回転軸よりも上方の所定位置にある排気口のみが開放する。つまり、発酵容器内の空気は、所定位置にある排気口のみから排出される。換言すれば、発酵容器の回転中及び停止中において、所定位置よりも下方にある排気口は弁部材によって閉鎖されているため、発酵容器内に空気が供給され発酵容器内が加圧状態となっても、これらの排気口から廃棄物が排出されることはない。
【0020】
請求項5の発明にかかる発酵処理装置は、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の発酵処理装置において、前記発酵容器内に温風を供給する温風供給手段と、前記発酵容器から排出された空気を通過させ、該空気に含まれる水分を除去する電気集塵機と、該電気集塵機を通過した空気を前記温風供給手段に戻す戻配管とをさらに備えるものである。
【0021】
ここで、「電気集塵機」としては、例えばコロナ放電を生じさせ空気中の水分を帯電させる放電電極、及び帯電した水分を電気的に捕集する捕集手段等を備えたものを例示することができる。
【0022】
したがって、請求項5の発明の発酵処理装置によれば、請求項1乃至請求項4のいずれか一つの発明の作用に加え、発酵容器から排出された空気は、電気集塵機に送られるため、その空気中に、廃棄物から排出された水分が多く含まれていても、電気集塵機によって除湿され乾燥された空気となる。そして、この乾燥された空気は戻配管を通って温風供給手段に戻される。このため、温風供給手段には比較的高温の空気が送られることになる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第一実施形態である発酵処理システム1について、図1乃至図10に基づき説明する。図1及び図2は発酵処理システム1の全体構成を示す正面図及び平面図であり、図3は発酵処理システム1における発酵処理装置2の構成を示す正面図であり、図4乃至図6は発酵処理装置2の構成を示す断面図であり、図7及び図8は排気口付近の構成を示す説明図であり、図9は発酵処理の流れを示す説明図であり、図10は発酵処理システム1の機能的構成を示すブロック図である。
【0024】
本実施形態の発酵処理システム1は、図1及び図2に示すように、おから等の廃棄物を微生物によって発酵させる発酵処理装置2と、ダンプ(図示しない)等の輸送車両によって輸送された廃棄物を貯える搬入ホッパー3と、搬入ホッパー3に収容されている廃棄物(即ち搬入ホッパー3の底部開口から排出された廃棄物)を発酵処理装置2の上方まで搬送する投入コンベア4と、発酵処理された廃棄物(処理物)を袋体7に投入させる排出ホッパー5と、発酵処理装置2によって発酵処理された廃棄物を排出ホッパー5の上方まで搬送する排出コンベア6とを具備している。また、発酵処理装置2の近傍には、発酵処理システム1全体を制御するための制御盤8が配設されている。ここで、投入コンベア4及び排出ホッパー5としては、スクリューコンベアやベルトコンベア等、周知のコンベアが使用されている。
【0025】
発酵処理装置2は、図3乃至図5に示すように、廃棄物及びそれを発酵させる微生物を収容することが可能な発酵容器11と、発酵容器11内に収容された廃棄物(微生物を含む)を攪拌及び搬送する攪拌搬送手段12と、発酵容器11を取付けるための架台13と、架台13に対して発酵容器11を回動自在に支持する支持部14と、発酵容器11を回転させる第二駆動部15とを具備している。なお、架台13の上部には、投入コンベア4によって搬送された廃棄物を発酵容器11内に投入するための投入ホッパー16が設けられている。また、図2に示すように、発酵処理装置2は電気集塵機17及び温風供給手段18を備えており、発酵容器11内に温風を供給するとともに、発酵容器11から排出された空気から水分を除去することを可能にしている。以下、発酵処理装置2の具体的な構成について詳細に説明する。
【0026】
図4に示すように、発酵容器11は、横方向(紙面左右方向)に設置される略円筒状の胴部20と、胴部20の左右側面を閉塞する側壁21とから構成され、胴部20及び側壁21により内部に閉空間を形成している。胴部20における外周面の左右端部付近には、夫々遠心方向に突出した環状突部22が形成され、また、環状突部22よりも中央寄りには、胴部20の外周面に沿ってチェーン23が張設されている。発酵容器11における一方の側壁21(紙面右側の側壁21)には、発酵容器11内の状況を確認するための点検口24が設けられ、点検口24と対向する他方の側壁21(紙面左側の側壁21)には、投入口及び排出口として機能する開口部25が設けられている。これらの点検口24及び開口部25は、図3に示すように、側壁21の中心から外れた所定の位置から周縁近傍に亘って形成されており、手動操作によって開閉される扉26,27により気密状態に閉鎖されている。なお、扉26,27は、解除レバー31を操作することにより開成可能となり、側壁21の中心側に設けられたヒンジ28を回動軸として手前側に開くことにより開成される。また、側壁21には、発酵容器11内の空気を排出するための排気口(詳細は後述する)が設けられている。なお、図3では、便宜上、排気口及び排気に関連する部品を省略した図面を示している。
【0027】
図6に示すように、発酵容器11における胴部20の内周面には、中心方向に向って突出する板状の持上片30が形成されている。これは、発酵容器11の回転に伴い、発酵容器11の下部付近の廃棄物を内周面に沿って持ち上げるものであり、本実施形態では12枚の持上片30が30°間隔で放射状に配設されている。ここで、持上片30が本発明の持上部に相当する。
【0028】
図5に示すように、攪拌搬送手段12は、発酵容器11の中心を通るとともに発酵容器11の側壁21にベアリング38を介して取付けられた回転軸35と、回転軸35の周面に形成されたスクリュー羽根36と、回転軸35に回転力を付与する第一駆動部37(図2参照)とを具備している。なお、第一駆動部37は、動力源となる第一モータ43、回転軸35の端部に設けられたプーリー44、及び第一モータ43の回転軸とプーリー44とを連結するベルト(図示しない)等から構成されている。また、スクリュー羽根36の表面には、回転軸35から遠心方向に延出された掻混部36aが90°間隔で形成されており、攪拌能力を高めている。
【0029】
回転軸35の内部には、発酵容器11の外部に対して開口された端部開口39と、発酵容器11の内部空間に対して開口された吹出口40とを連通する空気通路41が形成されている。この端部開口39には温風供給手段18の接続部57が挿入されており、温風供給手段18から供給される温風が空気通路41を通って発酵容器11の内部に送られるようになっている。また、吹出口40の周囲には、吹出口40から鉛直方向に吹出される温風を矢印Fのように発酵容器11の中央側に向けて誘導する箱型の誘導部材42が設けられている。
【0030】
図3に示すように、架台13は、角パイプから構築されており、発酵容器11を囲むように格子状に組み付けられている。なお、図示していないが、架台13にカバーを取付けるようにすれば、内部の構造が露出されなくなり、見栄えを向上できると共に安全性を高めることができる。
【0031】
支持部14は、発酵容器11の外周に対して60°間隔で配設されており、図5に示すように、発酵容器11の外周に形成された環状突部22に当接するローラ48と、架台13に対してローラ48を回動自在に支持する一対の取付部47とから構成されている。また、ローラ48の両端には、ローラ48よりも大径の円形フランジ49が形成されており、一対の円形フランジ49を環状突部22に外嵌させることにより環状突部22とローラ48との係合状態を保持している。
【0032】
図4に示すように、第二駆動部15は、動力源となる第二モータ51、発酵容器11に沿って配設され第二モータ51によって回転する棒状の回転体52、及び回転体52に取付けられ発酵容器11の外周に張着されたチェーン23と噛合する歯車53を有している。つまり、第二モータ51の動力を、歯車53を介してチェーン23に伝達することにより、発酵容器11を回転させている。
【0033】
内部構造については図示しないが、電気集塵機17は、ハウジング内に形成された空気通路にコロナ放電を生じさせ空気中の水分を帯電させる放電電極、放電電極に所定の電圧を印加する電源、空気通路に設けられ帯電した水分を電気的に捕集する捕集手段、空気通路に空気流を生じさせるファン等を有している。特に本実施形態では、捕集手段として回転可能に支持された円板状の部材が用いられており、これを回転させながら水分を除去することにより、捕集した水分を遠心力で飛散させることを可能にしている。
【0034】
温風供給手段18は、電気集塵機17を通って送られてきた空気を加熱する発熱ヒータ55(図10参照)、及び加熱された空気を発酵容器11の内部に供給する送風機56を有している。なお、電気集塵機17にファンを備えていることから、温風供給手段18の送風機56は省略することも可能である。本実施形態では微生物として高温菌を使用しているため、発酵容器11内の温度がその微生物に好適な温度である略80℃になるように発熱ヒータ55の加熱量が制御される。
【0035】
図5に示すように、発酵容器11の側壁21には、閉空間内の空気を排出する排気口29が、回転軸35を中心とした円周上に複数(例えば4箇所)形成されており、各排気口29には電気集塵機17に連通する排気管63が接続されている(図7参照)。また、夫々の排気口29には、閉鎖可能な弁部材60が設けられている。この弁部材60は、図8に示すように、かさ形シート弁(ポペット弁)からなり、押圧杆61の押圧操作に応じて開成する。なお、押圧杆61は、排気管63に支持部材59を介して摺動可能に取付けられており、先端には回動可能なローラ部61aが設けられている。また、押圧杆61には、排気口29を閉鎖するように、弁部材60を紙面右方向に付勢するバネ等の弾性部材61bが取付けられている。一方、発酵容器11の側壁21と対向するように架台13に組付けられた環状の固定部材14には、押圧杆61を押圧するためのカム62が取付けられている。このカム62は、全体的に平板状であるが、上端近傍には発酵容器11側に突出した突出部62aが形成されている。つまり、突出部62aに当接した押圧杆61のみが発酵容器11側に押圧され、排気口29が開放される。即ち、ローラ部61aが突出部62aに当接すると、弁部材60は二点鎖線で示した状態から実線で示した状態に変位し、空気が排出される状態になる。なお、排気口29は円周上に所定の間隔で配設されているため、発酵容器11の回転に伴い、複数の排気口29が順次開放され、いずれか一つの排気口29を通って空気が排出される。ここで、ローラ部61aを有する押圧杆61、及び突出部62aを有するカム62を組合わせたものが本発明の開閉機構に相当する。
【0036】
ところで、発酵処理システム1には、発酵処理を実行するための制御装置を備えている。具体的には、図10に示すように、入力手段として、運転スイッチ等の操作手段65、発酵容器11内の温度を検出する温度センサ66、発酵時間や攪拌搬送手段12における作動時間を計時するためのタイマ67、及びその他発酵処理に必要となる各種検出手段68を有している。また、これらの入力手段からの信号に基づき指令信号を出力する運転制御手段69を有している。この運転制御手段69は、機能的構成として、発酵処理制御部70、開口位置変位部71、排出制御部72、及び搬送制御部73等を備えている。発酵処理制御部70は、発酵容器11内の温度管理や廃棄物の攪拌及び搬送処理等、発酵処理全般を制御する。開口位置変位部71は、発酵容器11に廃棄物を投入させる際に、開口部25を回転軸35よりも上方に位置させた状態で停止させ、一方、発酵容器11内の廃棄物を排出させる際に、開口部25を回転軸35よりも下方に位置させた状態で停止させるように第二駆動部15を制御する。排出制御部72は、発酵容器11内の廃棄物を排出させる際に、スクリュー羽根36によって発酵容器11内の廃棄物を開口部25に向って搬送するように制御する。搬送制御部73は、発酵容器11に廃棄物を投入させる際に投入コンベア4を動作させ、廃棄物を排出する際に排出コンベア6を動作させるように制御する。ここで、開口位置変位部71が本発明の開口位置変位手段に相当し、排出制御部72が本発明の搬送制御手段に相当する。
【0037】
なお、運転制御手段69には、第一モータ43及び第二モータ51を駆動するモータ駆動手段74,75と、温風供給手段18における発熱ヒータ55及び送風機56を制御する加熱制御手段76と、電気集塵機17を駆動する除湿制御手段77と、投入コンベア4及び排出コンベア6を駆動するコンベア駆動手段78とが接続されている。
【0038】
次に、発酵処理装置2の作用を、図9等に基づき説明する。まず、(a)に示すように、開口部25が上側に位置した状態で発酵容器11の回転が停止される。そこで、扉27を開くと、開口部25が開放され、発酵容器11内に廃棄物Hを投入することが可能になる。なお、扉27は側壁21の中心側が軸支されるとともに、その両端には奥側に延出されたガイド板27aが形成されているため、扉27を開いた状態では、開口部25に投入される廃棄物Hを扉27に沿って円滑に投入することができる。また、投入する際には、発酵容器11内に収容された廃棄物Hが開口部25の反対側(即ち奥側)に搬送されるように、スクリュー羽根36を所定方向に回転させる。これにより、廃棄物Hを一層円滑に投入できるとともに、廃棄物Hを発酵容器11全体に亘って均等に収容することできる。
【0039】
また、発酵容器11内には、廃棄物Hを発酵させるための微生物(図示しない)が投入され、廃棄物Hと混合される。なお、微生物は廃棄物Hを投入する前に投入してもよく、廃棄物Hを投入してから加えるようにしてもよい。あるいは、廃棄物Hと微生物とを予め混合させ、その混合物を発酵容器11内に投入させるようにしてもよい。
【0040】
廃棄物H及び微生物の投入後、操作手段65によって運転の開始が指示されると、(b)に示すように、スクリュー羽根36が回転し、廃棄物H(微生物を含む)を紙面左右方向に搬送しながら攪拌する。また、これと共に、発酵容器11を回転させる。なお、発酵容器11の回転数としては、毎分5〜6回程度が好ましい。発酵容器11の内周面には、複数の持上片30が形成されているため、発酵容器11の底部付近の廃棄物Hが持上片30によって持上げられ、その後、その持上片30が上部側まで移動すると、持上げられた廃棄物Hは重力によって自然落下する。すなわち、発酵容器11の底部付近の廃棄物Hが上方に掻き出された状態となる。
【0041】
また、温風供給手段18(図2参照)の作動により、発酵容器11に温風が供給され、発酵容器11内の温度が高温菌の繁殖に適した温度(例えば80℃)になるように制御される。なお、発酵容器11内の空気は側壁21に設けられた排気口29、特に押圧杆61によって開放された排気口29を通って排出される。また、この空気中に水分が多く含まれていても、排気管63を通って電気集塵機17に送られることにより、電気集塵機17の放電電極及び捕集手段によって除湿される。乾燥した空気は戻配管32を通って温風供給手段18に戻され発熱ヒータ55によって再び加熱される。このように、発酵容器11内が高温度に維持され、しかも発酵容器11の廃棄物Hが確実に攪拌されることから、高温菌の繁殖率が高くなり、発酵処理が促進される。
【0042】
発酵処理が終了すると、(c)に示すように、開口部25が下側に位置した状態で発酵容器11の回転が停止される。そこで、扉27を開くと、開口部25が開放され、発酵容器11内から廃棄物Hを排出することが可能になる。そして、スクリュー羽根36の回転により発酵容器11内の廃棄物Hを開口部25に向って搬送すると、その廃棄物Hは、開口部25を通して外部に排出される。
【0043】
このように、上記の発酵処理装置2によれば、スクリュー羽根36及び持上片30の協働により、発酵容器11の底部付近の廃棄物Hを掻き出しながら搬送及び攪拌することができる。このため、全ての廃棄物Hを確実に攪拌することが可能になり、発酵処理が完了するまでの時間を短縮できる。特に、微生物として好気性の高温菌を用いるとともに、発酵容器11内の温度が高温菌の繁殖に好適な高温度に維持されるため、発酵が促進され発酵処理が完了するまでの時間を大幅に短縮することができる。また、高温菌以外の細菌は高温の空気によって死滅するため、例えば廃棄物Hとして、おからを発酵処理した場合には、その処理によって生成された粉末物品を食することも可能である。
【0044】
また、上記の発酵処理装置2によれば、投入口及び排出口を兼用することから、発酵容器11の構成を簡略化することができる。しかも開口部25は一つでよいため、発酵容器11の側壁21において開口部25を比較的大きく形成することができるとともに、排気口29を形成するスペースを確保することができる。また、開口部25を開閉する扉27には、ガイド板27aが形成されているため、扉27を利用して廃棄物Hを円滑に投入することができる。さらに、開口部25は円筒状の胴部20に形成されるのではなく、平面状の側壁21に形成されていることから、閉鎖状態における気密性を容易に確保することができ、例えばおから等含水率の高い廃棄物Hであっても、発酵処理中に水が発酵容器11から漏れたりする恐れがない。また、攪拌用のスクリュー羽根36を利用して廃棄物Hを排出することから、全体の構成が簡略化され装置全体を小型化することができる。
【0045】
また、上記の発酵処理装置2によれば、発酵容器11が回転しているにも拘わらず、上側に位置する排気口29のみから空気を排出させることができる。このため、発酵処理中の廃棄物H等が排気口29を通って排出されること防止できる。また、温風は回転軸35に形成された空気通路41を通して発酵容器11内に供給されるため、発酵容器11または回転軸35の回転中であっても、気密状態を維持したまま温風を供給することができる。したがって、発酵容器11内の熱効率を高め、発酵容器11内における温度分布のバラツキを抑えることができる。しかも電気集塵機17によって空気から水分を除去するため、加熱された空気を循環させることが可能になり、温風供給手段18におけるエネルギーの消費量を低減できる。特に、電気集塵機17では、捕集した水分を遠心力で飛散させながら水分を除去するため、水分の付着による捕集能力の低下を抑制することができる。
【0046】
さらに、上記の発酵処理システム1によれば、発酵容器11に廃棄物Hを投入させる手段として、搬入ホッパー3及び投入コンベア4を用いているため、ダンプ等によって輸送された廃棄物Hを、作業者を介することなく発酵容器11に投入させることができる。また、排出コンベア6及び排出ホッパー5を用いることにより、発酵処理された廃棄物Hを搬送し自動的に袋体7に収容することができる。したがって、作業者の手を煩わすことなく、一連の作業を行うことが可能になる。
【0047】
以上、本発明について好適な複数の実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0048】
すなわち、上記実施形態では、回転軸35の一端側に空気通路41を形成し、この空気通路41を介して発酵容器11の内部に空気(温風)を供給するものを示したが、空気通路41を回転軸35の両端付近に設け、両側から温風を供給するようにしてもよい。これによれば、発酵容器11内の温度分布がさらに均一となり、微生物の繁殖を安定化させることが可能になる。特に、発酵容器11の容積が大きい場合には、全体に温風が行き渡るまでに時間がかかることから、上記のように両側から温風を供給することにより大きな効果を期待できる。また、上記実施形態では、空気通路41を、回転軸35の端部付近にのみ形成するものを示したが、さらに中央付近まで、あるいは回転軸35の略全域に亘って空気通路を形成してもよい。これによれば、広い範囲に亘って高温の空気を吹出すことが可能になり、全体の温度分布をさらに均一化することが可能になる。
【0049】
また、上記実施形態では、一つの開口部25によって投入口と排出口とを兼用するものを示したが、これに限られるものではなく、例えば開口部25と対向する位置に形成された点検口24を排出口として用いるようにしてもよい。
【0050】
上記実施形態では、スクリュー羽根36の回転と、発酵容器11の回転とを、二つのモータ(第一モータ43,第二モータ51)を用いて個々に駆動するものを示したが、一つのモータを兼用し、スクリュー羽根36及び発酵容器11の回転を連動させるようにしてもよい。これによれば、電力の消費が抑制されるとともに、全体の構成がさらに簡略化される。
【0051】
さらに、上記実施形態では、弁部材60に押圧杆61を接続し、押圧することにより弁部材60を開成させるものを示したが、弁部材60を排気口29の外側に設け、弁部材60の引き操作により開成させるようにしてもよい。
【0052】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明の発酵処理装置は、スクリュー羽根及び持上部の協働により、発酵容器の底部付近の廃棄物を掻き出しながら搬送及び攪拌することができる。このため、全ての廃棄物を確実に攪拌することが可能になり、発酵処理が完了するまでの時間を短縮できる。
【0053】
請求項2の発明の発酵処理装置は、請求項1の発明の効果に加え、一つの開口部を、投入口及び排出口として兼用することから、発酵容器全体の構成を簡略化することができる。しかも開口部は一つでよいため、発酵容器の側壁において開口部以外のスペースが増え、排気口等、その他の構成要素の配置スペースを確保することができる。
【0054】
請求項3の発明の発酵処理装置は、請求項1または請求項2の発明の効果に加え、発酵容器が回転するにも拘わらず、発酵容器の気密状態を保持したまま温風を供給することができる。つまり、発酵容器内を高温状態に維持することができるため、発酵させるための微生物として、好気性の高温菌を用いることが可能となり、廃棄物を高速で発酵させることが可能になる。
【0055】
請求項4の発明の発酵処理装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか一つの発明の効果に加え、発酵容器が回転しているにも拘わらず、上側に位置する排気口のみから空気を排出することができる。このため、発酵処理中に廃棄物等が排気口を通って排出されることを抑制できる。
【0056】
請求項5の発明の発酵処理装置は、請求項1乃至請求項4のいずれか一つの発明の効果に加え、排出された空気を温風供給手段に戻すことが可能になり、温風供給手段において必要となる加熱量を低減することができる。つまり、エネルギーの消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である発酵処理システム全体の構成を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施形態である発酵処理システム全体の構成を示す平面図である。
【図3】発酵処理システムにおける発酵処理装置の構成を示す正面図である。
【図4】発酵処理装置の構成を示すA−A断面図である。
【図5】発酵処理装置の内部構成を示す説明図(一部断面)である。
【図6】発酵処理装置における発酵容器11の内部構成を示すB−B間のC−C断面図である。
【図7】発酵処理装置における排気口付近の構成を示す説明図である。
【図8】発酵処理装置における弁部材の構成を示す説明図である。
【図9】発酵処理装置における処理の流れを示す説明図である。
【図10】発酵処理システムにおける機能的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
2 発酵処理装置
11 発酵容器
12 攪拌搬送手段
13 架台
14 支持部
15 第二駆動部
17 電気集塵機
18 温風供給手段
20 胴部
21 側壁
25 開口部
29 排気口
30 持上片(持上部)
32 戻配管
35 回転軸
36 スクリュー羽根
37 第一駆動部
41 空気通路
57 接続部
60 弁部材
61 押圧杆(開閉機構)
62 カム(開閉機構)
71 開口位置変位部(開口位置変位手段)
72 排出制御部(排出制御手段)
H 廃棄物

Claims (5)

  1. 横方向に設置される略円筒形状の胴部、及び該胴部の左右側面を閉塞する側壁を有し、投入された廃棄物を閉空間内で発酵させる発酵容器と、
    該発酵容器の中心を通り該発酵容器に対して回動自在に取付けられた回転軸、該回転軸の周面に形成されたスクリュー羽根、及び前記回転軸及び前記スクリュー羽根を回転させる第一駆動部を有し、前記スクリュー羽根の回転により前記発酵容器内の前記廃棄物を攪拌及び搬送する攪拌搬送手段と、
    架台に対して前記発酵容器を回動自在に支持する支持部と、
    前記発酵容器を回転させる第二駆動部と、
    前記発酵容器の内周面から前記回転軸側に突設され、前記発酵容器の回転に伴い、前記発酵容器の下部付近の前記廃棄物を前記内周面に沿って持ち上げる持上部と
    を具備することを特徴とする発酵処理装置。
  2. 前記側壁には、前記閉空間を開放可能とする開口部が形成され、
    前記発酵容器に前記廃棄物を投入する際、前記開口部を前記回転軸よりも上方に位置させ、前記発酵容器内の前記廃棄物を排出する際、前記開口部を前記回転軸よりも下方に位置させる開口位置変位手段と、
    前記発酵容器内の前記廃棄物を排出する際、前記スクリュー羽根を回転させることにより前記発酵容器内の前記廃棄物を前記開口部に向って搬送させる排出制御手段と
    をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の発酵処理装置。
  3. 前記回転軸の内部には、該回転軸の端部と前記発酵容器内の前記閉空間とを連通する空気通路が形成され、
    前記回転軸の前記端部に、温風供給手段の接続部が挿入されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発酵処理装置。
  4. 前記発酵容器の前記側壁には、前記閉空間内の空気を排出する排気口が、前記回転軸を中心とした円周上に複数形成され、
    夫々の前記排気口を閉鎖する弁部材、及び前記回転軸よりも上方の所定位置に合致する前記排気口のみを開放させるように前記弁部材の開閉状態を切り替える開閉機構をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の発酵処理装置。
  5. 前記発酵容器内に温風を供給する温風供給手段と、
    前記発酵容器から排出された空気を通過させ、該空気に含まれる水分を除去する電気集塵機と、
    該電気集塵機を通過した空気を前記温風供給手段に戻す戻配管と
    をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の発酵処理装置。
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