JP2004015161A - 高周波スイッチ回路およびマルチバンド用高周波スイッチモジュール - Google Patents

高周波スイッチ回路およびマルチバンド用高周波スイッチモジュール Download PDF

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Abstract

【課題】5.4mm×4.0mm以下の小型基板であっても特性インピーダンスを50Ωに整合させることが容易に出来ること。
【解決手段】アンテナ端子、送信端子、受信端子を備え、前記アンテナ端子と送信端子との間に一端をグランドに接続した第一の伝送線路と、該第一の伝送線路と前記アンテナ端子との間に接続した第一のダイオードを有し、前記アンテナ端子と受信端子との間に接続した第二の伝送線路と、該第二の伝送線路と前記受信端子との間に一端をグランドに接続した第一のコンデンサと第二のダイオードを直列に接続し、該第二のダイオードと第一のコンデンサの間に前記ダイオードを制御する電圧制御端子を接続し、送信回路と受信回路とを切り換えるスイッチ回路において、前記第二の伝送線路と受信端子との間に一端をグランドに接続した第二のコンデンサを接続したことを特徴とする高周波スイッチ回路およびこれらを積層体基板に構成したマルチバンド用高周波スイッチモジュール。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は準マイクロ波帯などの高周波帯域で用いられる高周波複合部品のスイッチ回路に関し、また少なくとも1つのアンテナで送受信系を取り扱うマルチバンド用高周波スイッチモジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の携帯電話の普及には、目を見張るものがあり、携帯電話の機能、サービス向上が図られている。当初、1つのアンテナを1つの送受信系で共用するシングルバンド携帯電話から始まった。そのための積層体を用いた高周波スイッチも開発された。(例えば特開平6−197040、特開平9−36603号公報参照)。
【0003】
その後、加入者数の急増に伴い、デュアルバンド携帯電話などが市場に出てきた。このデュアルバンド携帯電話は、通常の携帯電話が一つの送受信系のみを取り扱うのに対し、2つの送受信系を取り扱うものである。これにより、利用者は都合の良い送受信系を選択して利用することができるのである。例えば、デュアルバンド携帯電話では、GSM1800システム(送信Tx:1710〜1785MHz、受信Rx:1805〜1880MHz)、第2の送受信系としてEGSM900システム(送信Tx:880〜915MHz、受信Rx:925〜960MHz)の2つのシステムに対応する。このような携帯電話では、それぞれの周波数に応じた信号経路、および複数の周波数を切り換えるためのスイッチとして分波回路とスイッチ回路を用いて構成される高周波スイッチモジュールが用いられる。(例えば特開平9−36604号、特開平11−55002号公報参照)。
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】
高周波スイッチは一般的にデジタル携帯電話などにおいて、送信回路と受信回路を切り換えるスイッチ回路として用いられる。図14は一般的な高周波スイッチ回路の等価回路図である。受信端子RxにはダイオードDP2のカソードと伝送線路LP2が接続されている。ダイオードDP2のアノード側には一端がグランドに接続されたコンデンサCP1が直列回路で接続されており、コンデンサCP1とダイオードDP2の中間接続点には、抵抗端子RP1を介して電源端子VC1が接続されている。アンテナ端子ANTはダイオードDP1を介して送信端子Txと接続しており、ダイオードDP1のカソード側と送信端子Txの中間接続点から伝送線路LP1を介してグランドと接続している。
【0005】
次に、この高周波スイッチを用いた場合の送受信系の動作について説明する。VC1に正電圧を印加した場合は、ダイオードDP1、DP2に対して順方向の正電圧バイアスとして働く。そのためダイオードDP1、DP2はON状態になる。このときTx端子からの送信信号はアンテナ端子に伝送され、Rx端子にはほとんど伝送されない。なぜならば送信時にはLP2とCP1が送信周波数で共振周波数を持つ直列共振回路であり、送信周波数ではLP2のRx側から、DP2への回路はグランドに接地された状態になり、またLP2の線路長はλ/4線路長になるように設計されているから、アンテナ側からRx端子へは理論上インピーダンスが無限大になっているためである。
【0006】
次に、VC1に電圧を印加しない場合には、ダイオードDP1、DP2はOFF状態となる。このとき、アンテナ端子から入った受信信号はダイオードDP1がOFFのため、Txポート側へは伝送されない。またダイオードDP2もOFFのため、CP1やRP1側へは伝送されず、Rx端子へ伝送される。
【0007】
ここで、伝送線路の特性インピーダンスと線路幅、伝送線路の巻数の一般的な関係を図12、13に示す。伝送線路の線路幅が細くなることにより、グランドとの寄生容量が減少するため伝送線路の特性インピーダンスは増大する。また、伝送線路の巻数が増えるとともに、伝送線路のインダクタンス成分の増大に伴い特性インピーダンスが増大することが一般的に知られている。高周波スイッチモジュールにおいて、伝送線路LP2の特性インピーダンスは50Ωで設計するのが一般的である。また回路的に伝送線路LP2の長さは、通過帯域における信号のλ/4線路長に相当する長さが必要であり、その長さ分を積層体中の電極パターンで形成するためには伝送線路のインピーダンスが50Ωとなるように、伝送線路の幅や伝送線路の配線方法を調整する必要がある。
【0008】
従来の積層体基板の縦横の大きさが6.7mm×5.0mm程度の比較的大型のモジュール部品では、まだ誘電体シート上で余地があったから積層体中における伝送線路の上下の重なりを避けて、伝送線路の位置を移動させることや伝送線路幅を太くすることが比較的容易にできた。つまり重なりを生じないように伝送線路のみで特性インピーダンスを50Ωに整合させることが可能であった。しかしながら、小型化、低背化が進む中で、より小型の基板では伝送線路の位置を変更することができる余地はなく、また伝送線路の幅を太くすることは困難である。必要な伝送線路長を得るためには伝送線路をコイルのように重ね合わせて多層で巻くことがやむを得なくなり、その結果、伝送線路の重ねあわせに起因するインダクタンス成分の増加により、λ/4線路の特性インピーダンスが50Ωよりも大きくなることが問題となってきた。
【0009】
本発明は以上の問題点に鑑み、小型の基板であっても特性インピーダンスを50Ωに容易に整合させることが出来る高周波スイッチ回路、およびマルチバンド用高周波スイッチモジュールを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明では、受信端子とグランドとの間に別途グランドに接続した第二のコンデンサを接続し、このコンデンサの容量を調整することにより、容易に前記第二の伝送線路の特性インピーダンスを減少させ整合させ得ることを知見した。
即ち、本発明の高周波スイッチ回路は、アンテナ端子、送信端子、受信端子を備え、前記アンテナ端子と送信端子との間に一端をグランドに接続した第一の伝送線路と、該第一の伝送線路と前記アンテナ端子との間に接続した第一のダイオードを有し、前記アンテナ端子と受信端子との間に接続した第二の伝送線路と、該第二の伝送線路と前記受信端子との間に一端をグランドに接続した第一のコンデンサと第二のダイオードを直列に接続し、該第二のダイオードと第一のコンデンサの間に前記ダイオードを制御する電圧制御端子を接続し、送信回路と受信回路とを切り換えるスイッチ回路において、前記第二の伝送線路と受信端子との間に一端をグランドに接続した第二のコンデンサを接続したものである。
【0011】
また、本発明のマルチバンド用の高周波スイッチ回路は、アンテナを共用し、通過帯域の異なる複数の送受信系に信号を分波するLC回路で構成した分波回路と、各送受信系のそれぞれに送信系と受信系を切り換えるダイオードと伝送線路を主構成としたスイッチ回路と、伝送線路とコンデンサで構成され前記スイッチ回路の各送信系に挿入されるローパスフィルタ回路とを有し、前記それぞれのスイッチ回路の送信系には、一端をグランドに接続した第一の伝送線路と、第一の伝送線路側にカソードを接続した第一のダイオードとを有し、受信系には、第二の伝送線路と、該第二の伝送線路側にカソードを接続した第二のダイオードと一端をグランドに接続した第一のコンデンサとを直列に接続し、該第二のダイオードと第一のコンデンサとの間に抵抗を介して電圧制御端子を接続してなり、前記第二のダイオードに対向して一端をグランドに接続した第二のコンデンサを接続したものである。
【0012】
本発明のマルチバンド用高周波スイッチモジュールは、アンテナを共用し、通過帯域の異なる複数の送受信系に信号を分波するLC回路で構成した分波回路と、各送受信系のそれぞれに送信系と受信系を切り換えるダイオードと伝送線路を主構成とした請求項1又は2に記載したスイッチ回路と、伝送線路とコンデンサで構成され前記スイッチ回路の各送信系に挿入されるローパスフィルタ回路とを有するマルチバンド用高周波スイッチモジュールにおいて、前記分波回路および前記スイッチ回路を構成する伝送線路およびコンデンサのうち少なくとも一つ以上は、積層体基板を構成する誘電体シート内に電極パターンとして形成し、前記分波回路および前記スイッチ回路を構成するコンデンサ、抵抗、インダクタ、ダイオードなどのチップ部品は前記積層体基板上に配置したものである。
前記第二のコンデンサは、積層体基板の最下部の誘電体シート層に形成したグランド電極との間で容量を形成し、前記第二の伝送線路はその上に形成する第二のグランド電極と第三のグランド電極に挟まれた複数枚の誘電体シート層に形成することが好ましい。また、前記積層体基板の縦横の大きさは5.4mm×4.0mm以下が可能である。
【0013】
以上により小型化に伴って、伝送線路の線幅が細くなることやコイル状に巻くことにより生じる特性インピーダンスの不整合を回避し、受信回路の伝送線路の線幅や巻き方などを大きく変更させることなく、特性インピーダンスを整合させることを可能にした。
【0014】
【発明の実施の形態】
まず、本発明に係わる高周波スイッチモジュールについて、図を用いて説明する。図1はシングルバンド、図2はデュアルバンドに適用した場合の等価回路図を示す。なお、本発明はデュアルバンド以上のマルチバンドにも適用可能である。デュアルバンドでの具体例は後述の実施例で具体的に示したので、先に実施例を参照すると、本発明が理解しやすい。
【0015】
図1は本発明の一実施例で、シングルバンド携帯電話に用いる高周波スイッチの回路を示す。スイッチ回路の機能は、送信回路と受信回路を電気的に高速に切り換えることである。このスイッチ回路は、2つのダイオードDP1、DP2と、2つの伝送線路LP1、LP2からなり、ダイオードDP1はアンテナ端子ANT側にアノードが接続され、送信端子Tx側にカソードが接続され、送信端子とダイオードDP1との中間接続点から伝送線路LP1がグランドに接続されている。通常アンテナは、高周波スイッチモジュールの場合、その外にロット状、ワイヤ状のものが取り付けられ、高周波スイッチモジュールのアンテナ端子ANTに接続されるが、今後モジュール化の要請がさらに強まると、平面アンテナをさらに複合化して取り込んだ高周波スイッチモジュールも考えられる。本発明は、実施例としてはアンテナを外部取り付けしたものを例示するが、アンテナを含んだ複合モジュールにも適用できる。
【0016】
さらに、アンテナ側と受信端子Rx間に伝送線路LP2が接続され、その受信端子Rxと伝送線路LP2の中間接続点からダイオードDP2のカソードが接続され、そのダイオードDP2のアノードには、グランドに接続されたコンデンサCP1が直列接続され、ダイオードDP2のアノードとコンデンサCP1の中間接続点から抵抗RP1が接続され、電圧制御端子VC1に接続される。上述のように電圧制御端子VC1に電圧を印加した場合には、ダイオードDP1、DP2がONして送信回路Txとアンテナ端子ANTが接続される。コントロール回路に電圧を印加しない場合には、アンテナ端子ANTと受信回路Rxが接続される。そして本実施例では、受信端子Rxとグランドとの間でダイオードDP2の接続点に対向してコンデンサCQ1を接続している。これは伝送線路LP2の特性インピーダンスを整合させるのに有効であり、従来の方法では伝送線路LP2の線幅や巻き方などを変更させる設計手法に頼っており小型化に限界があった。ここでは新たにCQ1の接地容量を接続することにより、CQ1の容量を調整することによって、伝送線路LP2の特性インピーダンスを容易に整合させることができ、送信系と受信系の両方でインヒ゜ータ゛ンス整合が得られ高周波スイッチ回路として有用である。
【0017】
次に、図2にデュアルバンドの場合の一実施例を示す。この実施例は、通過帯域の異なる第1の送受信系(EGSM900)と第2の送受信系(GSM1800)を扱う高周波スイッチモジュールであり、第1の送受信系(EGSM900)の送信信号と受信信号を切り換える第1のスイッチ回路16と、第1のスイッチ回路の送信ラインに接続される第1のローパスフィルタ回路18と、第2の送受信系(GSM1800)の送信信号と受信信号を切り換える第2のスイッチ回路17と、第2のスイッチ回路の送信ラインに接続される第2のローパスフィルタ回路19と、第1の送受信系と第2の送受信系を分波する分波回路13とから構成されている。アンテナ端子ANTに接続される分波回路13は、1つのハイパスフィルタ回路15と1つのローパスフィルタ回路14が主回路となっている。つまり、伝送線路LF1とコンデンサCF1で一つのローパスフィルタ回路を構成し、コンデンサCF2とコンデンサCF3でもう一つのハイパスフィルタ回路を構成している。そして、ローパスフィルタ回路の伝送線路LF1とCF1の間には、伝送線路LF2が直列に接続され、この伝送線路LF2はコンデンサCF1と直列共振することによって、分波特性のローパスフィルタ特性を向上させる目的で接続されている。またハイパスフィルタ回路のコンデンサCF2とコンデンサCF3の間には伝送線路LF3が直列に接続され、この伝送線路LF3はコンデンサCF3と直列共振することによって、分波特性のハイパスフィルタ特性を向上させる目的で接続されている。尚、この分波回路は、ローパスフィルタ回路とハイパスフィルタ回路以外でも、例えばバンドパスフィルタ回路などを用いてもよく、これらを適宜組み合わせて構成することもできる。
【0018】
次に、第1のスイッチ回路16について説明する。第1のスイッチ回路は、図2上側のスイッチ回路であり、EGSM900系の送信回路Txと受信回路Rxを切り換えるものである。ダイオードDG1はアンテナ端子ANT側にアノードが接続され、送信Tx側にカソードが接続され、そのカソード側に、伝送線路LG1とコンデンサCG1の並列共振回路及びCG2、CG3から構成されるローパスフィルタを挿入し、一端がグランドに接続された伝送線路LG2を介して送信端子Txに接続される。そして、アンテナ端子ANT側と受信端子Rx間に伝送線路LG3が接続され、その受信端子Rx側の中間接続点にカソードが接続されたダイオードDG2が接続され、そのダイオードDG2のアノードには、グランドとの間にコンデンサCG4が直列接続され、その中間接続点に抵抗RG1が接続され、電圧制御端子VC1に接続されている。さらに、ここで受信端子Rxとグランドの間に、コンデンサCG5を接続している。伝送線路LG3の特性インピーダンスを整合させるには、従来の方法では伝送線路LG3の線幅や巻き方を変更させる方法が主であったが、本発明では接地容量CG5を接続し、その容量を調整することによって、伝送線路LG3の特性インピーダンスの整合をより簡単に行うことができる。
【0019】
次に第2のスイッチ回路19について説明する。第2のスイッチ回路は、図2下側のスイッチ回路であり、GSM1800系の送信端子Txと受信端子Rxを切り換えるものである。ダイオードDD1はアンテナ端子ANT側にアノードが接続され、送信端子Tx側にカソードが接続され、そのカソード側に、伝送線路LD1とコンデンサCD1の並列共振回路及びCD2、CD3から構成されるローパスフィルタを挿入し、一端がグランドに接続された伝送線路LD2を介して送信端子Txに接続される。そして、アンテナ端子ANT側と受信端子Rx間に伝送線路LD3が接続され、その受信端子Rx側の中間接続点にカソードが接続されたダイオードDD2が接続され、そのダイオードDD2のアノードには、グランドとの間にコンデンサCD4が直列接続され、その中間接続点に抵抗RD1が接続され、電圧制御端子VC2に接続されている。さらに受信端子と伝送線路LD3の間には、接地容量CD5を接続する。伝送線路LD3の特性インピーダンスを整合させるには、従来の方法では伝送線路LD3の線幅や巻き方などを変更させる方法が主であったが、本発明では接地容量CD5を接続し、その容量と調整することによって、伝送線路LD3の特性インピーダンスの整合をより簡単に行うことができる。
【0020】
ここでの電圧制御端子による回路の動作はシングルバンドと同様であり、EGSM900系の送信を有効とする場合には、電圧端子VC1に所定の電圧を印加する。同様に、電圧端子VC2に所定の電圧を印加するとGSM1800系の送信が有効となる。受信時には、どちらの電圧端子VC1、VC2にも電圧を印加しない。
【0021】
本発明による高周波スイッチモジュールは、図3に示すように誘電体シートを複数積層した積層構造およびその積層体上にチップ部品を搭載することにより軽量小型に構成できる。複数の送受信系の共通端子であるアンテナ端子ANTと、各送受信系のそれぞれの送信系端子Txと受信系端子Rxは高周波信号用の端子であり、これを高周波端子と呼ぶ。各高周波端子の記号は図2の等価回路と対応している。この高周波端子は、図4に例示するように積層体の裏面に形成され、しかもこの高周波端子同士が隣り合わないように高周波端子間には、グランド端子GNDまたはスイッチ回路制御端子(VC1、VC2)が配置されている。また、この積層体の各辺には少なくとも1つのグランド端子GNDが配置されることが望ましい。このように、高周波端子間を隣り合わないようにすること、また高周波端子間にグランド端子をサンドイッチして配置することにより、高周波端子間の干渉を抑え、また低損失化を図ることができる。
【0022】
本発明では、積層体上に配置されたチップ部品を囲むように金属ケース(図示せず)を配置することが望ましい。磁気シールド効果だけでなく、高周波スイッチモジュールのユーザがチップマウンタではんだ付けする際に、金属ケースだと真空吸引しやすいからである。シールド効果が要求されず、単にチップマウンタの供給用としての平面形成のためだけなら、高周波スイッチモジュールをリフローハンダ時の熱に絶えられる耐熱性の樹脂でモールドしたり、その上を金属コーティングしても良い。
【0023】
次に、この積層体モジュールの内部構造について誘電体シートに沿って説明する。図5と図6に各層の印刷電極パターン図を示す。この実施例は、1層の厚みが25〜190μm(一体焼成後の寸法)の誘電体シートに各層の電極を印刷してスルーホールで接続した例である。図5、図6でスルーホールは、太線で囲った四角である。この四角部に孔が開いてスルーホールを形成している。誘電体としては、例えばアルミナ系ガラスセラミック等の低温同時焼結セラミックス(LTCC)材料が挙げられる。この積層体は、低温焼成が可能なセラミック誘電体材料からなるグリーンシートを用意し、そのグリーンシート上にAg、Pd、Cuなどの導電ペーストを印刷して、所望の電極パターンを形成し、それを適宜積層し、900℃程度で一体焼成して構成される。なお、シートの厚さは大体40〜250μmの範囲で、使用用途のよりドクターブレード法などで制御される。所定の内部電極パターンを多数形成した大きなシートを積層し、一つ一つのチップサイズに切断した後、焼成、端子電極を形成し、誘電体積層素体を作成する。端子電極は、通常、Ag−Ni−半田の三層構造をしており、Ni層により半田耐熱性、半田層により半田濡れ性を十分得られるようにしている。この誘電体積層素体上にメタルマスクを使用した半田印刷を行い、その後PINダイオードや、容量値が大きく積層素体内に形成できなかったチップコンデンサ、場合によっては弾性表面波フィルタなどを搭載し、リフロー半田する。
【0024】
以下、焼成後の各層の構成を最下層から順に説明する。尚、各層の横に付した番号が層番号である。まず最下層の第16層上には、グランド電極GND1がほぼ全面に形成されている。いわゆるベタアースである。これにより安定したアースが確保できる。特に、この実施例では複数のスルーホール(左右各々3個のスルーホール)が形成され裏面に連通し、図4に示した、積層体底部のグランド電極GNDに電気的に接続される。このように幅広で細長いGNDとして外部回路との接続に使え、安定したアース効果が得られる。次の第15層には第二のコンデンサCG5、CD5を含むコンデンサ用電極(CF3、CG5、CD5、CG3、CD3)が形成され、16層のグランド電極との間で安定的にCG5とCD5の容量は形成されている。第二のコンデンサCG5、CD5の容量は比較的小さなもので良い。他のコンデンサCG3、CD3はそれぞれEGSM900とGSM1800の送信回路のローパスフィルタ回路をより安定させるために用いられている。またCF3はGSM1800の分波回路部分において、ハイパスフィルタ回路の特性をよりよくするために接続されている。CG5とCD5は、上述したようにEGSM900、GSM1800それぞれの伝送線路LG3とLD3のインピーダンスの整合をより簡単にするために用いられている。第14層には、層の左部分にGND2電極が形成されてCG3、CD3の容量を形成している。
【0025】
第13層には、ハイパスフィルタ用伝送線路LF3と、受信端子に接続される伝送線路LG3とLD3、送信回路のローパスフィルタを形成するLG2とLD2が形成されている。
第12層には、前述のインダクタンスを構成する伝送線路LF3、LG3、LD3、LG2、LD2のパターンの一部が形成される。
第11層には、さらに上記伝送線路LF3、LG3、LD3、LG2、LD2のパターンの残りの一部が形成されている。
第10層には、中央上部を除いてGND3電極を形成し、上記第13、12、11層の各伝送線路はグランド電極層14のGND2とグランド電極層10のGND3の間に挟むことにより、他の回路との干渉を極力抑えることを図っている。
【0026】
第9層には、EGSM900の受信部のスイッチ回路の一部であるCG4を形成し、また分波器のローパスフィルタの一部となるCF1とDCカットコンデンサとなるCF4を形成した。
第8層には、中央上部を除いてGND4電極を形成し、中央上部には、前述したハイパスフィルタの一部となるCF2を形成した。
第7層には、GSM1800の送信部のスイッチ回路の一部であるCD4とEGSM900、GSM1800それぞれの送信回路部分に接続されるローパスフィルタを形成するCG2とCD2を形成した。またハイパスフィルタのCF2を形成した。
第6層には右半分の一部にGND5電極を形成し、中央上部には前述したハイパスフィルタの一部となるCF2を形成した。またEGSM900、GSM1800それぞれの送信回路のローパスフィルタの一部であるCD1、CG1を形成した。
【0027】
第5層には前述したGSM1800の受信回路の伝送線路LD3の一部と、分波器のEGSM900側のローパスフィルタの一部をなすLF1、LF2を形成し、またEGSM900のスイッチ回路の送信部のローパスフィルタの一部であるLG1を形成している。
第4層には前述した分波器のインダクタLF1、LF2の一部分とEGSM900のスイッチ回路の送信部のローパスフィルタのインダクタLG1を形成し、またGSM1800側のスイッチ回路の送信部の一部であるローパスフィルタLD1を形成している。
第3層には前述した分波器のインダクタLF1、LF2の一部分と、EGSM900回路のインダクタLG1、GSM1800回路のインダクタLD1が形成されている。
第2層は下記する搭載部品を積層体内の他のパターンと接続するためのパターンを示す。
第1層には積層体の上に取り付けられる部品ダイオードDG1、DG2、DD1、DD2、コンデンサCF5、抵抗RG1、RG2のランドパターンを設けている。
【0028】
以下、本発明の効果を示す実施例について説明する。
受信端子から分波器までの伝送線路のインピーダンス整合を得るために、EGSM900受信端子Rxと伝送線路LG3の間に接地容量CG5を接続した回路と(実施例1)、この接地容量CG5が無いもの(比較例1)、さらに接地容量CG5を接続せずに、伝送線路幅を0.12mmから0.14mmに太くしたもの(比較例2)についてインピーダンスの整合性を比較した。尚、伝送線路幅を太くした実験を行った理由は、伝送線路とGND間との寄生容量が増大し、特性インピーダンスを減少させることができるためである。しかしこれ以上太くすることは小型低背化の観点から好ましくない。
図7に接地容量CG5を接続した実施例1を、図8に接地容量CG5が無い比較例1を、図9に接地容量が無く、かつ線路幅を太くした比較例2のそれぞれのEGSM900受信端子のスミスチャートを示す。EGSM900の受信帯域である925MHzから960MHzの帯域で図7の特性インピーダンスは(m7、m8)ほぼ50Ωに整合していることが分かる。一方、図8、9のそれは伝送線路の特性インピーダンスが50Ωからずれる結果となった。伝送線路の幅をこれ以上太くすることにより、インピーダンスの整合を得ることもできるが、これ以上伝送線路を太くした場合には小型化の観点から不向きである。これらのことより接地容量を接続することにより、伝送線路幅を調整した回路よりもインピーダンスの整合を得られることが確認できた。
【0029】
次に、上記と同様に受信端子から伝送線路までのインピーダンス整合を得るために、GSM1800受信ポートRxと伝送線路LD3の間に接地容量CD5を接続した回路と(実施例2)、この接地容量CD5が無いもの(比較例3)とを比較した。図10に接地容量を接続したもの、図11に接地容量が無いもののGSM1800受信端子のスミスチャートを示す。接地容量を接続することにより、GSM1800の受信帯域である1805MHzから1880MHzにおいて、受信ポートの反射損失は10dBから28dBまで改善し、結果的にANTから受信ポートまでの挿入損失を約0.4dBも改善することができた。これらより接地容量を接続した回路のほうが、よりインピーダンスの整合を得ることができ、ANTポートから受信ポートへの挿入損失を改善することができた。
【0030】
現在、携帯無線システムには、主に欧州で盛んなEGSM(Extended Global System for Mobile
Communications)方式およびDCS(Digital Cellular System)方式、米国で盛んなPCS(Personal Communication Service)方式、日本で採用されているPDC(PersonalDigital Cellular )方式、W−CDMA帯域(1920MHz〜2170MHz)、PDC800帯域(810〜960MHz)、GPS帯域(1575.42MHz)、PHS帯域(1895〜1920MHz)、Bluetooth帯域(2400〜2484)や、米国で普及が見込まれるCDMA2000、中国で普及が見込まれるTD−SCDMAなどの様々なシステムがあるが、したがって例えば、EGSM、DCS、PCS対応のトリプルバンドアンテナスイッチモジュール、EGSM、DAMPS、DCS、PCS対応のクワッドバンドアンテナスイッチモジュール等のマルチモードマルチバンドのアンテナスイッチ回路を持った携帯電話が得られ、これらについても各スイッチ回路の受信端子に接続している伝送線路の特性インピーダンスを、受信端子とグランド間に第二のコンデンサを接続すると言う構成を採用することによって、各信号を分離・合成する分波器1個、送信信号と受信信号を切り換えるアンテナスイッチと、高周波除去用のローパスフィルタを各1個ずつ、最小限の素子を誘電体の積層体に内蔵し、その素体上にPINダイオードを搭載した超小型のマルチバンド用高周波スイッチモジュールを実現できる。
【0031】
【発明の効果】
本発明によると、スイッチ回路の受信端子に接続している伝送線路の特性インピーダンスを、受信端子とグランド間に第二のコンデンサを接続することによって、線幅や巻き方などの変更を行うことなく、容易に特性インピーダンスを50Ωに近づけることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる一実施例を示すシングルバンドの高周波スイッチ回路の等価回路図である。
【図2】本発明に係わる他の実施例で、EGSM900とGSM1800対応のデュアルバンドのアンテナスイッチ回路の等価回路図である。
【図3】本発明のアンテナスイッチ積層モジュールの一例を示す斜視図である。
【図4】本発明に係わるアンテナスイッチ積層モジュールの底部の電極配置図である。
【図5】図3に示す等価回路での積層体の各層のパターンを示す図である。
【図6】図3に示す等価回路での積層体の各層のパターンを示す図である。
【図7】本発明の実施例1におけるEGSM900Rxポートの反射のスミスチャート図である。
【図8】比較例1におけるEGSM900Rxポートの反射のスミスチャート図である。
【図9】比較例2におけるEGSM900Rxポートの反射のスミスチャート図である。
【図10】本発明の実施例2におけるGSM1800Rxポートの反射のスミスチャート図である。
【図11】比較例3におけるGSM1800Rxポートの反射のスミスチャート図である。
【図12】伝送線路の線路幅と特性インピーダンスの関係を示した図である。
【図13】伝送線路の巻数と特性インピーダンスの関係を示した図である。
【図14】従来技術によるPINダイオードスイッチを利用したスイッチ回路の等価回路図である。
【符号の説明】
Tx:送信端子
Rx:受信端子
LG1〜3、LD1〜3、LF1〜3、LP1〜2:伝送線路、インダクタまたはチョークコイル
CG1〜5,CD1〜5、CF1〜5、CP1、CQ1:容量
DD1〜2,DG1〜2、DP1〜2:PINダイオード
RG1、RD1、RP1:抵抗
VC1、VC2:コントロール電源
10、11、16、17:スイッチ回路
12:デュアルバンドアンテナスイッチモジュール
13:ダイプレクサ
14、18、19:ローパスフィルタ
15:ハイパスフィルタ

Claims (5)

  1. アンテナ端子、送信端子、受信端子を備え、前記アンテナ端子と送信端子との間に一端をグランドに接続した第一の伝送線路と、該第一の伝送線路と前記アンテナ端子との間に接続した第一のダイオードを有し、前記アンテナ端子と受信端子との間に接続した第二の伝送線路と、該第二の伝送線路と前記受信端子との間に一端をグランドに接続した第一のコンデンサと第二のダイオードを直列に接続し、該第二のダイオードと第一のコンデンサの間に前記ダイオードを制御する電圧制御端子を接続し、送信回路と受信回路とを切り換えるスイッチ回路において、前記第二の伝送線路と受信端子との間に一端をグランドに接続した第二のコンデンサを接続したことを特徴とする高周波スイッチ回路。
  2. アンテナを共用し、通過帯域の異なる複数の送受信系に信号を分波するLC回路で構成した分波回路と、各送受信系のそれぞれに送信系と受信系を切り換えるダイオードと伝送線路を主構成としたスイッチ回路と、伝送線路とコンデンサで構成され前記スイッチ回路の各送信系に挿入されるローパスフィルタ回路とを有し、前記それぞれのスイッチ回路の送信系には、一端をグランドに接続した第一の伝送線路と、第一の伝送線路側にカソードを接続した第一のダイオードとを有し、受信系には、第二の伝送線路と、該第二の伝送線路側にカソードを接続した第二のダイオードと一端をグランドに接続した第一のコンデンサとを直列に接続し、該第二のダイオードと第一のコンデンサとの間に抵抗を介して電圧制御端子を接続してなり、前記第二のダイオードに対向して一端をグランドに接続した第二のコンデンサを接続したことを特徴とするマルチバンド用の高周波スイッチ回路。
  3. アンテナを共用し、通過帯域の異なる複数の送受信系に信号を分波するLC回路で構成した分波回路と、各送受信系のそれぞれに送信系と受信系を切り換えるダイオードと伝送線路を主構成とした請求項1又は2に記載したスイッチ回路と、伝送線路とコンデンサで構成され前記スイッチ回路の各送信系に挿入されるローパスフィルタ回路とを有するマルチバンド用高周波スイッチモジュールにおいて、前記分波回路および前記スイッチ回路を構成する伝送線路およびコンデンサのうち少なくとも一つ以上は、積層体基板を構成する誘電体シート内に電極パターンとして形成し、前記分波回路および前記スイッチ回路を構成するコンデンサ、抵抗、インダクタ、ダイオードなどのチップ部品は前記積層体基板上に配置したことを特徴とするマルチバンド用高周波スイッチモジュール。
  4. 前記第二のコンデンサは、積層体基板の最下部の誘電体シート層に形成したグランド電極との間で容量を形成し、前記第二の伝送線路はその上に形成する第二のグランド電極と第三のグランド電極に挟まれた複数枚の誘電体シート層に形成されたことを特徴とする請求項3記載のマルチバンド用高周波スイッチモジュール。
  5. 前記積層体基板の縦横の大きさが5.4mm×4.0mm以下であることを特徴とする請求項3又は4記載のマルチバンド用高周波スイッチモジュール。
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