JP2004011806A - 水素吸蔵材への水素吸蔵方法および水素貯蔵タンク - Google Patents
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Abstract
【課題】水素吸蔵に伴い発生した熱エネルギを,利用価値の高いエネルギ形態として回収し得る,水素吸蔵材への水素吸蔵方法を提供する。
【解決手段】水素吸蔵材HSMを冷却しつつ,その水素吸蔵材HSMに水素を吸蔵させるに当り,冷却剤として,水素吸蔵材HSMの水素吸蔵に伴い発生した熱を吸収して化学反応を起す物質,例えば,吸熱反応によって水素を生成するような物質を用いる。
【選択図】 図1
【解決手段】水素吸蔵材HSMを冷却しつつ,その水素吸蔵材HSMに水素を吸蔵させるに当り,冷却剤として,水素吸蔵材HSMの水素吸蔵に伴い発生した熱を吸収して化学反応を起す物質,例えば,吸熱反応によって水素を生成するような物質を用いる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水素吸蔵材への水素吸蔵方法および水素貯蔵タンクに関する。
【0002】
【従来の技術】
水素吸蔵材による水素の吸蔵は熱の発生を伴うものであり,この発生熱を奪取しないと水素の吸蔵が円滑に進行しない。そこで,従来は,低温型水素貯蔵タンクでは水を,また高温型水素貯蔵タンクでは空気をそれぞれ冷却剤として使用している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら冷却剤として水や空気を使用した場合には,水素吸蔵に伴い発生した熱エネルギを,温水や温風といった,利用価値の低いエネルギ形態でしか回収し得ない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は,水素吸蔵に伴い発生した熱エネルギを,利用価値の高いエネルギ形態として回収し得る,前記水素吸蔵材への水素吸蔵方法を提供することを目的とする。
【0005】
前記目的を達成するため本発明によれば,水素吸蔵材を冷却しつつ,その水素吸蔵材に水素を吸蔵させるに当り,冷却剤として,前記水素吸蔵材の水素吸蔵に伴い発生した熱を吸収して化学反応を起す物質を用いる,水素吸蔵材への水素吸蔵方法が提供される。
【0006】
例えば,冷却剤としてメタノールと水との混合液を用い,水素吸蔵に伴い水素吸蔵材が発生する熱エネルギを前記混合液に吸収させて水蒸気改質反応を起こさせ,これにより,前記熱エネルギを利用価値の高いエネルギ形態である水素として回収する,といったことが可能である。
【0007】
また本発明によれば,水素吸蔵材を収容した水素貯蔵器と,その水素貯蔵器に隣接した触媒式加熱−冷却器と,前記水素貯蔵器に吸蔵される水素およびその水素貯蔵器から放出された水素をそれぞれ流通させる第1通路と,前記触媒式加熱−冷却器に,水素吸蔵時には冷却剤を,また水素放出時には可燃ガスをそれぞれ供給する第2通路とを備え,前記冷却剤は,前記水素吸蔵材の水素吸蔵に伴い発生した熱を吸収して,触媒存在下で化学反応を起す物質であり,また前記可燃ガスは,前記触媒存在下で燃焼するガスである水素貯蔵タンクが提供される。
【0008】
このように構成すると,前記方法を容易に実施し得る水素貯蔵タンクを提供することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は水素貯蔵タンク1を示し,その水素貯蔵タンク1は,ステンレス鋼より構成された横断面円形の耐圧性外筒体2と,その外筒体2の内面との間に,吸蔵用水素および放出された水素を流通させる第1通路3となる間隔を存してその外筒体2内に収容された円筒状水素貯蔵モジュール4と,外筒体2を囲む断熱性筒状カバー5とを備えている。図2にも示すように,円筒状水素貯蔵モジュール4は,粉末状水素吸蔵材HSMを収容して外周面の少なくとも一部,実施例では外周面全体を水素吸蔵放出面sとした第1,第2水素貯蔵器7,8を,それらの間に触媒式加熱−冷却器9を介在させて重ね合せたものである。外筒体2内底面およびそれと対向する水素貯蔵モジュール2端面間には複数の断熱材製ブロック6が設けられている。
【0010】
各水素貯蔵器7,8は,軸線回りに大径貫通孔10を有するステンレス鋼製円筒体11を備え,その円筒体11内に粉末状水素吸蔵材HSMが充填されている。円筒体11は,大径貫通孔10を有する中空軸12と,その中空軸12の両端にそれぞれ一体に形成された第1,第2端壁13,14と,それら両端壁13,14の対向外周部間に溶接等により接合されて外周壁を構成する通気性フィルタ15とを有する。フィルタ15は,その外周面全体を水素吸蔵放出面sとすべく,水素が出入りし得る多数の微細孔,例えば,直径が0.1〜10μmの孔を有する。
【0011】
図3にも示すように,第1水素貯蔵器7と対向する第2水素貯蔵器8の第1端壁13は,その外周縁に在って第1水素貯蔵器7に向って延びる環状突出部16と,その突出部16の近傍に在って大径貫通孔10と一直線状に並ぶ一対の小径貫通孔17,18を有する。その第1端壁13と対向する第1水素貯蔵器7の第2端壁14はその外周縁に在って第2水素貯蔵器8に向って延びる環状突出部19と,その突出部19の近傍に在って第1端壁13の両小径貫通孔17,18とそれぞれ同軸上に位置する一対の小径貫通孔20,21とを有する。両環状突出部16,19は相互に突き合せられて溶接等により接合される。第2水素貯蔵器8の第2端壁14は平板状をなす。一方,第1水素貯蔵器7の第1端壁13は平板状をなすと共に第2端壁14の両小径貫通孔20,21とそれぞれ同軸上に位置する一対の小径貫通孔22,23を有する。外筒体2の第1水素貯蔵器7側の端壁24は,前記大径貫通孔10と同軸上に位置する大径貫通孔25と,第1端壁13の両小径貫通孔22,23とそれぞれ同軸上に位置する一対の小径貫通孔26,27とを有する。
【0012】
外筒体2の端壁24,第1水素貯蔵器7の第1,第2端壁13,14および第2水素貯蔵器8の第1端壁13に在って,同軸上に位置する一組の小径貫通孔26,22,20,17にステンレス鋼よりなる第1管体28が,またもう一組の小径貫通孔27,23,21,18にステンレス鋼製第2管体29がそれぞれ挿通されてそれら孔回りに溶接等によって接合される。第1,第2管体28,29の一端は筒状カバー5外においてそれぞれ開口し,それらの他端は閉鎖されていて,第2水素貯蔵器8の第1端壁13内面に合致している。第1,第2管体28,29内は冷却剤および可燃ガスを流通させる第2通路30として機能し,それらの他端部には4つの流入孔31が2つ宛2段に形成されている。
【0013】
外筒体2および両水素貯蔵器7,8の一連の大径貫通孔25,10に大径のステンレス鋼製第3管体33が嵌着される。第3管体33の一端は筒状カバー5外において開口し,その他端は閉鎖されていて,第2水素貯蔵器8の第2端壁14外面に合致している。
【0014】
第1,第2水素貯蔵器7,8間には,それらの第1,第2端壁13,14を両端壁として共用し,また突き合せられた両環状突出部16,19を外周壁34とし,さらに第3管体33の一部を内周壁35とする,加熱−冷却器9のハウジング36が形成される。そのハウジング36内の環状空間において,その軸方向中間部に,円板形をなし,且つ触媒を保持する通気性担体37が配置される。図4にも示すように,通気性担体37は,連続気孔を有する金属多孔質体(例えば,Ni多孔質体),セラミック多孔質体等よりなり,また第1,第2管体28,29および第3管体33と嵌合する2つの小径貫通孔38,39および1つの大径貫通孔40を有し,さらに外周面は外周壁34内周面に密着するもので,この通気性担体37によってハウジング36内には2つの通路32が形成される。第1端壁13側の通路32には第1,第2管体28,29の第1端壁32側の各流入孔31が連通し,また第2端壁14側の通路32には第1,第2管体28,29の第2端壁14側の各流入孔31が連通している。両通路32はそれぞれ第3管体33の一部である内周壁35に2つ宛2段に形成された流出孔41を介して第3管体33内の流出路42に連通する。
【0015】
図2,3において,第1端壁13側の通路32を維持すべく,通気性担体37および第1端壁13間には,ステンレス鋼,Ni等の金属,セラミックス等からなる複数のスペーサが配設される。即ち,第1端壁13の外周部には環状スペーサ43が,また第1管体28回りには両流入孔31の開口を閉じないように一対の円弧状スペーサ44が,さらに第2管体29回りには両流入孔31の開口を閉じないように一対の円弧状スペーサ45が,さらにまた第3管体33回りには両流出孔41の開口を閉じないように一対の円弧状スペーサ46が,また第3管体33および第1,第2管体28,29間には第3管体33を挟むように,凹弧面を第3管体33に向けると共に凸弧面の周方向中央部を第1,第2管体28,29近傍にそれぞれ位置させた一対の円弧状スペーサ47がそれぞれ配設されている。
【0016】
これらスペーサ43〜47は,各流入孔31から第1端壁13側の通路32に流入した冷却剤および可燃ガスをその通路32全体に行き渡らせるガイド部材としての機能も有する。即ち,図3に矢印で示すように,各流入孔31からの冷却剤等は,環状スペーサ43および円弧状スペーサ47間に導かれ,次いで,一方の流入孔31からの冷却剤等と他方の流入孔31からの冷却剤等とが衝突し,その後,衝突した冷却剤等は両円弧状スペーサ47の対向端部間より両円弧状スペーサ46,47間に導かれる,といったようにガイドされる。
【0017】
図2,5において,第2端壁14側の通路32を維持すべく,通気性担体37および第2端壁14間には,前記と同材種の複数のスペーサが配設される。即ち,通気性担体37の外周部には環状スペーサ48が,また第1管体28回りには両流入孔31の開口を閉じないように一対の円弧状スペーサ49が,さらに第2管体29回りには両流入孔31の開口を閉じないように一対の円弧状スペーサ50が,さらにまた第3管体33回りには両流出孔41の開口を閉じないように一対の円弧状スペーサ51が,また第3管体33および第1,第2管体28,29間には第3管体33を挟むように,凹弧面を第3管体33に向けると共に凸弧面の周方向中央部を第1,第2管体28,29近傍にそれぞれ位置させた一対の円弧状スペーサ52がそれぞれ配設されている。
【0018】
これらスペーサ48〜52は,各流入孔31から第2端壁14側の通路32に流入した冷却剤および可燃ガスをその通路32全体に行き渡らせるガイド部材としての機能も有する。即ち,図5に矢印で示すように,各流入孔31からの冷却剤等は,環状スペーサ48および円弧状スペーサ52間に導かれ,次いで,一方の流入孔31からの冷却剤等と他方の流入孔31からの冷却剤等とが衝突し,その後,衝突した冷却剤等は両円弧状スペーサ52の対向端部間より両円弧状スペーサ51,52間に導かれる,といったようにガイドされる。
【0019】
外筒体2の端壁24は,一方の小径貫通孔27に近接する小径貫通孔53を有し,その小径貫通孔53にステンレス鋼製第4管体54が嵌合されてその孔回りに溶接等によって接合される。この第4管体54内は第1通路3に連通して水素の入,出口として機能する。
【0020】
水素貯蔵材HSMとしては,水素吸蔵・放出温度の高いMg系合金,純Ti,Ti系合金,純Zr,Zr系合金や,水素吸蔵・放出温度の低いAB5系合金[例えば,LaNi5合金,MmNi5合金(Mm:ミッシュメタル)],ラーベス相(例えば,TiCr1.8合金,TiCrMn合金),bcc系合金(例えば,TiCrV合金)等が用いられる。
【0021】
冷却剤としては,メタノールと水との混合液が用いられる。この混合液は,水素吸蔵に伴い水素吸蔵材HSMが発生する熱エネルギを吸収して水蒸気改質反応を起こし,水素を生成する。また冷却剤としては,デカリン,シクロヘキサンおよびイソプロピルアルコールから選択される少なくとも一種の液体がそのままの状態で,または水との混合液として用いられる。これらは,前記同様に,水素吸蔵に伴い水素吸蔵材HSMが発生する熱エネルギを吸収して改質反応を起こし,水素を生成する。可燃ガスとしては,水素と空気(酸素)との混合ガスが用いられる。加熱−冷却器9の通気性担体37は,その表面および内部に,水蒸気改質反応を促進すると共に水素と酸素との燃焼反応を促進する触媒として白金,パラジウム等を担持する。この場合の改質温度は触媒活性を考慮すると,250℃以上,400℃以下が適当である。
【0022】
さらに,メタンガス(天然ガスを含む,以下同じ)と水蒸気との混合ガスを用いて,前記同様に水蒸気改質反応を起こさせて水素を得ることが可能である。可燃ガスとしては,メタンガスと空気との混合ガス,液化石油ガスと空気との混合ガス等が使用される。この場合,前記触媒としては,Ni系の複合酸化物触媒,例えば,Ni−Al2O3,Rh修飾Ni−Ce2O3−Pt等が用いられ,また改質温度は触媒活性を考慮すると,600℃以上,800℃以下が適当である。
【0023】
次に,水素貯蔵タンク1における水素の吸蔵および水素の放出について説明する。
【0024】
水素吸蔵時には,図2に示すように水素を第4管体54から第1通路3に導入する。水素は,各水素貯蔵器7,8のフィルタ15全周においてそのフィルタ15を通過して粉末状水素吸蔵材HSMに吸蔵される。この水素吸蔵に伴い水素吸蔵材HSMは発熱する。一方,冷却剤は第1,第2管体28,29の第2通路30を流通し,次いで各流入孔31から加熱−冷却器9内に入って両通路32および通気性担体37内を流通する。
【0025】
これにより冷却剤は水素吸蔵材HSMの発生熱量を吸収して化学反応を起こし,反応生成物,例えばガスは各流出孔41から流出路42に流れ込んでそこを流通する。一方,各水素貯蔵器7,8の粉末状水素吸蔵材HSMは,冷却剤が流通する両第2通路30および広い伝熱面積を備えた加熱−冷却器9によって効率良く冷却され,これにより粉末状水素吸蔵材HSMにおける蓄熱が回避される。
【0026】
水素放出時には,図6に示すように可燃ガスが第1,第2管体28,29の第2通路30を流通し,次いで各流入孔31から加熱−冷却器9内に入って両通路32および通気性担体37内を流通する。これにより,両通路32内および通気性担体37内において白金触媒等の存在下,可燃ガスが燃焼し,その排ガスはハウジング36内から各流出孔41を経て流出路42を流通する。
【0027】
燃焼熱は広い伝熱面積を備えた加熱−冷却器9を介し粉末状水素吸蔵材HSMに,また排ガスの熱は第3管体33を介し粉末状水素吸蔵材HSMにそれぞれ伝達されて,その水素吸蔵材HSMが効率良く加熱され,これにより水素の放出が広い水素吸蔵放出面sより迅速に行われる。水素は第1通路3および第4管体54を経て外部に導出される。
【0028】
〔例−I〕
水素吸蔵材HSMとして,Mg99.5Fe0.5合金(数値の単位は原子%)を用意し,これを第1,第2水素貯蔵器7,8に360g宛充填した。また冷却剤として,水とメタノールを,モル比にて,H2O:CH3OH=2:1の割合で混合して混合液を調製した。
【0029】
水素吸蔵材HSMに0.8MPaにて水素を吸蔵させ,水素吸蔵材HSMの温度が330℃にそれぞれ達したとき,ガス化させた冷却剤を両第2通路30から加熱−冷却器9内に流入させ,その加熱−冷却器9内にて水蒸気改質反応(改質温度330℃)を起こさせた。
【0030】
この場合,水素吸蔵材HSMの水素吸蔵により下記の発熱反応が起り,
Mg+H2→MgH2−75kJ/molH2
また冷却剤の水蒸気改質により下記の吸熱反応が起った。
【0031】
CH3OH+2H2O→3H2+CO2+H2O+50.1kJ
改質ガスを分析して水素生成量を求めたところ,それは63.8gであった。水蒸気改質反応開始時の,水素吸蔵材HSMによる水素吸蔵量は56.7gであるから,熱エネルギ収支からすれば,理論上の水素生成量は水素吸蔵量の約4.5倍,つまり,約255.2gとなるが,実際の水素生成量は水素吸蔵量の約1.1倍であった。
【0032】
〔例−II〕
水素吸蔵材HSMとして純Tiを用意し,これを第1,第2水素貯蔵器7,8に950g宛充填した。また冷却剤として,水蒸気とメタンガスを,モル比にて,H2O:CH4=2:1の割合で混合して混合ガスを調製した。
【0033】
水素吸蔵材HSMに1MPaにて水素を吸蔵させ,水素吸蔵材HSMの温度が650℃に達したとき,冷却剤としての混合ガスを両第2通路30から加熱−冷却器9内に流入させ,その加熱−冷却器9内にて水蒸気改質反応(改質温度650℃)を起こさせた。
【0034】
この場合,水素吸蔵材HSMの水素吸蔵により下記の発熱反応が起り,
Ti+H2→TiH2−123.8kJ/molH2
また冷却剤の水蒸気改質により下記の吸熱反応が起った。
【0035】
CH4+2H2O→4H2+CO2+164.5kJ
改質ガスを分析して水素生成量を求めたところ,それは97gであった。水蒸気改質反応開始時の,水素吸蔵材HSMによる水素吸蔵量は80gであるから,熱エネルギ収支からすれば,理論上の水素生成量は水素吸蔵量の約3倍,つまり,約240gとなるが,実際の水素生成量は水素吸蔵量の約1.2倍であった。なお,純Tiを純Zrに代えたところ,ほぼ同様の結果を得た。
【0036】
本発明に係る水素吸蔵材への水素吸蔵方法には,水素吸蔵材HSMを冷却しつつ,その水素吸蔵材HSMに水素を吸蔵させるに当り,冷却剤として,水素吸蔵材HSMの水素吸蔵に伴い発生した熱を吸収して相変化を起す物質を用いる,といった方法も含まれる。この相変化には,前記水とメチルアルコールの混合液,つまり液相が水素と炭酸ガス,つまり気相に変化する,といった場合だけでなく,結晶構造が他の結晶構造に変化する,といった変態,金属や合金の相が変わること等が含まれる。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば,前記のような手段を採用することによって,水素吸蔵に伴い発生した熱エネルギを,利用価値の高いエネルギ形態として回収し得る,水素吸蔵材への水素吸蔵方法を提供することができる。
【0038】
また本発明によれば,前記のように構成することによって前記方法を容易に実施し得る水素貯蔵タンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】要部を破断した水素貯蔵タンクの斜視図である。
【図2】水素貯蔵タンクの縦断面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】図2の5−5線断面図である。
【図6】可燃ガスおよび放出水素の流れを示す,図2と同様の要部縦断面図である。
【符号の説明】
1………………水素貯蔵タンク
3………………第1通路
7………………第1水素貯蔵器
8………………第2水素貯蔵器
9………………触媒式加熱−冷却器
30……………第2通路
HSM…………水素貯蔵材
【発明の属する技術分野】
本発明は水素吸蔵材への水素吸蔵方法および水素貯蔵タンクに関する。
【0002】
【従来の技術】
水素吸蔵材による水素の吸蔵は熱の発生を伴うものであり,この発生熱を奪取しないと水素の吸蔵が円滑に進行しない。そこで,従来は,低温型水素貯蔵タンクでは水を,また高温型水素貯蔵タンクでは空気をそれぞれ冷却剤として使用している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら冷却剤として水や空気を使用した場合には,水素吸蔵に伴い発生した熱エネルギを,温水や温風といった,利用価値の低いエネルギ形態でしか回収し得ない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は,水素吸蔵に伴い発生した熱エネルギを,利用価値の高いエネルギ形態として回収し得る,前記水素吸蔵材への水素吸蔵方法を提供することを目的とする。
【0005】
前記目的を達成するため本発明によれば,水素吸蔵材を冷却しつつ,その水素吸蔵材に水素を吸蔵させるに当り,冷却剤として,前記水素吸蔵材の水素吸蔵に伴い発生した熱を吸収して化学反応を起す物質を用いる,水素吸蔵材への水素吸蔵方法が提供される。
【0006】
例えば,冷却剤としてメタノールと水との混合液を用い,水素吸蔵に伴い水素吸蔵材が発生する熱エネルギを前記混合液に吸収させて水蒸気改質反応を起こさせ,これにより,前記熱エネルギを利用価値の高いエネルギ形態である水素として回収する,といったことが可能である。
【0007】
また本発明によれば,水素吸蔵材を収容した水素貯蔵器と,その水素貯蔵器に隣接した触媒式加熱−冷却器と,前記水素貯蔵器に吸蔵される水素およびその水素貯蔵器から放出された水素をそれぞれ流通させる第1通路と,前記触媒式加熱−冷却器に,水素吸蔵時には冷却剤を,また水素放出時には可燃ガスをそれぞれ供給する第2通路とを備え,前記冷却剤は,前記水素吸蔵材の水素吸蔵に伴い発生した熱を吸収して,触媒存在下で化学反応を起す物質であり,また前記可燃ガスは,前記触媒存在下で燃焼するガスである水素貯蔵タンクが提供される。
【0008】
このように構成すると,前記方法を容易に実施し得る水素貯蔵タンクを提供することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は水素貯蔵タンク1を示し,その水素貯蔵タンク1は,ステンレス鋼より構成された横断面円形の耐圧性外筒体2と,その外筒体2の内面との間に,吸蔵用水素および放出された水素を流通させる第1通路3となる間隔を存してその外筒体2内に収容された円筒状水素貯蔵モジュール4と,外筒体2を囲む断熱性筒状カバー5とを備えている。図2にも示すように,円筒状水素貯蔵モジュール4は,粉末状水素吸蔵材HSMを収容して外周面の少なくとも一部,実施例では外周面全体を水素吸蔵放出面sとした第1,第2水素貯蔵器7,8を,それらの間に触媒式加熱−冷却器9を介在させて重ね合せたものである。外筒体2内底面およびそれと対向する水素貯蔵モジュール2端面間には複数の断熱材製ブロック6が設けられている。
【0010】
各水素貯蔵器7,8は,軸線回りに大径貫通孔10を有するステンレス鋼製円筒体11を備え,その円筒体11内に粉末状水素吸蔵材HSMが充填されている。円筒体11は,大径貫通孔10を有する中空軸12と,その中空軸12の両端にそれぞれ一体に形成された第1,第2端壁13,14と,それら両端壁13,14の対向外周部間に溶接等により接合されて外周壁を構成する通気性フィルタ15とを有する。フィルタ15は,その外周面全体を水素吸蔵放出面sとすべく,水素が出入りし得る多数の微細孔,例えば,直径が0.1〜10μmの孔を有する。
【0011】
図3にも示すように,第1水素貯蔵器7と対向する第2水素貯蔵器8の第1端壁13は,その外周縁に在って第1水素貯蔵器7に向って延びる環状突出部16と,その突出部16の近傍に在って大径貫通孔10と一直線状に並ぶ一対の小径貫通孔17,18を有する。その第1端壁13と対向する第1水素貯蔵器7の第2端壁14はその外周縁に在って第2水素貯蔵器8に向って延びる環状突出部19と,その突出部19の近傍に在って第1端壁13の両小径貫通孔17,18とそれぞれ同軸上に位置する一対の小径貫通孔20,21とを有する。両環状突出部16,19は相互に突き合せられて溶接等により接合される。第2水素貯蔵器8の第2端壁14は平板状をなす。一方,第1水素貯蔵器7の第1端壁13は平板状をなすと共に第2端壁14の両小径貫通孔20,21とそれぞれ同軸上に位置する一対の小径貫通孔22,23を有する。外筒体2の第1水素貯蔵器7側の端壁24は,前記大径貫通孔10と同軸上に位置する大径貫通孔25と,第1端壁13の両小径貫通孔22,23とそれぞれ同軸上に位置する一対の小径貫通孔26,27とを有する。
【0012】
外筒体2の端壁24,第1水素貯蔵器7の第1,第2端壁13,14および第2水素貯蔵器8の第1端壁13に在って,同軸上に位置する一組の小径貫通孔26,22,20,17にステンレス鋼よりなる第1管体28が,またもう一組の小径貫通孔27,23,21,18にステンレス鋼製第2管体29がそれぞれ挿通されてそれら孔回りに溶接等によって接合される。第1,第2管体28,29の一端は筒状カバー5外においてそれぞれ開口し,それらの他端は閉鎖されていて,第2水素貯蔵器8の第1端壁13内面に合致している。第1,第2管体28,29内は冷却剤および可燃ガスを流通させる第2通路30として機能し,それらの他端部には4つの流入孔31が2つ宛2段に形成されている。
【0013】
外筒体2および両水素貯蔵器7,8の一連の大径貫通孔25,10に大径のステンレス鋼製第3管体33が嵌着される。第3管体33の一端は筒状カバー5外において開口し,その他端は閉鎖されていて,第2水素貯蔵器8の第2端壁14外面に合致している。
【0014】
第1,第2水素貯蔵器7,8間には,それらの第1,第2端壁13,14を両端壁として共用し,また突き合せられた両環状突出部16,19を外周壁34とし,さらに第3管体33の一部を内周壁35とする,加熱−冷却器9のハウジング36が形成される。そのハウジング36内の環状空間において,その軸方向中間部に,円板形をなし,且つ触媒を保持する通気性担体37が配置される。図4にも示すように,通気性担体37は,連続気孔を有する金属多孔質体(例えば,Ni多孔質体),セラミック多孔質体等よりなり,また第1,第2管体28,29および第3管体33と嵌合する2つの小径貫通孔38,39および1つの大径貫通孔40を有し,さらに外周面は外周壁34内周面に密着するもので,この通気性担体37によってハウジング36内には2つの通路32が形成される。第1端壁13側の通路32には第1,第2管体28,29の第1端壁32側の各流入孔31が連通し,また第2端壁14側の通路32には第1,第2管体28,29の第2端壁14側の各流入孔31が連通している。両通路32はそれぞれ第3管体33の一部である内周壁35に2つ宛2段に形成された流出孔41を介して第3管体33内の流出路42に連通する。
【0015】
図2,3において,第1端壁13側の通路32を維持すべく,通気性担体37および第1端壁13間には,ステンレス鋼,Ni等の金属,セラミックス等からなる複数のスペーサが配設される。即ち,第1端壁13の外周部には環状スペーサ43が,また第1管体28回りには両流入孔31の開口を閉じないように一対の円弧状スペーサ44が,さらに第2管体29回りには両流入孔31の開口を閉じないように一対の円弧状スペーサ45が,さらにまた第3管体33回りには両流出孔41の開口を閉じないように一対の円弧状スペーサ46が,また第3管体33および第1,第2管体28,29間には第3管体33を挟むように,凹弧面を第3管体33に向けると共に凸弧面の周方向中央部を第1,第2管体28,29近傍にそれぞれ位置させた一対の円弧状スペーサ47がそれぞれ配設されている。
【0016】
これらスペーサ43〜47は,各流入孔31から第1端壁13側の通路32に流入した冷却剤および可燃ガスをその通路32全体に行き渡らせるガイド部材としての機能も有する。即ち,図3に矢印で示すように,各流入孔31からの冷却剤等は,環状スペーサ43および円弧状スペーサ47間に導かれ,次いで,一方の流入孔31からの冷却剤等と他方の流入孔31からの冷却剤等とが衝突し,その後,衝突した冷却剤等は両円弧状スペーサ47の対向端部間より両円弧状スペーサ46,47間に導かれる,といったようにガイドされる。
【0017】
図2,5において,第2端壁14側の通路32を維持すべく,通気性担体37および第2端壁14間には,前記と同材種の複数のスペーサが配設される。即ち,通気性担体37の外周部には環状スペーサ48が,また第1管体28回りには両流入孔31の開口を閉じないように一対の円弧状スペーサ49が,さらに第2管体29回りには両流入孔31の開口を閉じないように一対の円弧状スペーサ50が,さらにまた第3管体33回りには両流出孔41の開口を閉じないように一対の円弧状スペーサ51が,また第3管体33および第1,第2管体28,29間には第3管体33を挟むように,凹弧面を第3管体33に向けると共に凸弧面の周方向中央部を第1,第2管体28,29近傍にそれぞれ位置させた一対の円弧状スペーサ52がそれぞれ配設されている。
【0018】
これらスペーサ48〜52は,各流入孔31から第2端壁14側の通路32に流入した冷却剤および可燃ガスをその通路32全体に行き渡らせるガイド部材としての機能も有する。即ち,図5に矢印で示すように,各流入孔31からの冷却剤等は,環状スペーサ48および円弧状スペーサ52間に導かれ,次いで,一方の流入孔31からの冷却剤等と他方の流入孔31からの冷却剤等とが衝突し,その後,衝突した冷却剤等は両円弧状スペーサ52の対向端部間より両円弧状スペーサ51,52間に導かれる,といったようにガイドされる。
【0019】
外筒体2の端壁24は,一方の小径貫通孔27に近接する小径貫通孔53を有し,その小径貫通孔53にステンレス鋼製第4管体54が嵌合されてその孔回りに溶接等によって接合される。この第4管体54内は第1通路3に連通して水素の入,出口として機能する。
【0020】
水素貯蔵材HSMとしては,水素吸蔵・放出温度の高いMg系合金,純Ti,Ti系合金,純Zr,Zr系合金や,水素吸蔵・放出温度の低いAB5系合金[例えば,LaNi5合金,MmNi5合金(Mm:ミッシュメタル)],ラーベス相(例えば,TiCr1.8合金,TiCrMn合金),bcc系合金(例えば,TiCrV合金)等が用いられる。
【0021】
冷却剤としては,メタノールと水との混合液が用いられる。この混合液は,水素吸蔵に伴い水素吸蔵材HSMが発生する熱エネルギを吸収して水蒸気改質反応を起こし,水素を生成する。また冷却剤としては,デカリン,シクロヘキサンおよびイソプロピルアルコールから選択される少なくとも一種の液体がそのままの状態で,または水との混合液として用いられる。これらは,前記同様に,水素吸蔵に伴い水素吸蔵材HSMが発生する熱エネルギを吸収して改質反応を起こし,水素を生成する。可燃ガスとしては,水素と空気(酸素)との混合ガスが用いられる。加熱−冷却器9の通気性担体37は,その表面および内部に,水蒸気改質反応を促進すると共に水素と酸素との燃焼反応を促進する触媒として白金,パラジウム等を担持する。この場合の改質温度は触媒活性を考慮すると,250℃以上,400℃以下が適当である。
【0022】
さらに,メタンガス(天然ガスを含む,以下同じ)と水蒸気との混合ガスを用いて,前記同様に水蒸気改質反応を起こさせて水素を得ることが可能である。可燃ガスとしては,メタンガスと空気との混合ガス,液化石油ガスと空気との混合ガス等が使用される。この場合,前記触媒としては,Ni系の複合酸化物触媒,例えば,Ni−Al2O3,Rh修飾Ni−Ce2O3−Pt等が用いられ,また改質温度は触媒活性を考慮すると,600℃以上,800℃以下が適当である。
【0023】
次に,水素貯蔵タンク1における水素の吸蔵および水素の放出について説明する。
【0024】
水素吸蔵時には,図2に示すように水素を第4管体54から第1通路3に導入する。水素は,各水素貯蔵器7,8のフィルタ15全周においてそのフィルタ15を通過して粉末状水素吸蔵材HSMに吸蔵される。この水素吸蔵に伴い水素吸蔵材HSMは発熱する。一方,冷却剤は第1,第2管体28,29の第2通路30を流通し,次いで各流入孔31から加熱−冷却器9内に入って両通路32および通気性担体37内を流通する。
【0025】
これにより冷却剤は水素吸蔵材HSMの発生熱量を吸収して化学反応を起こし,反応生成物,例えばガスは各流出孔41から流出路42に流れ込んでそこを流通する。一方,各水素貯蔵器7,8の粉末状水素吸蔵材HSMは,冷却剤が流通する両第2通路30および広い伝熱面積を備えた加熱−冷却器9によって効率良く冷却され,これにより粉末状水素吸蔵材HSMにおける蓄熱が回避される。
【0026】
水素放出時には,図6に示すように可燃ガスが第1,第2管体28,29の第2通路30を流通し,次いで各流入孔31から加熱−冷却器9内に入って両通路32および通気性担体37内を流通する。これにより,両通路32内および通気性担体37内において白金触媒等の存在下,可燃ガスが燃焼し,その排ガスはハウジング36内から各流出孔41を経て流出路42を流通する。
【0027】
燃焼熱は広い伝熱面積を備えた加熱−冷却器9を介し粉末状水素吸蔵材HSMに,また排ガスの熱は第3管体33を介し粉末状水素吸蔵材HSMにそれぞれ伝達されて,その水素吸蔵材HSMが効率良く加熱され,これにより水素の放出が広い水素吸蔵放出面sより迅速に行われる。水素は第1通路3および第4管体54を経て外部に導出される。
【0028】
〔例−I〕
水素吸蔵材HSMとして,Mg99.5Fe0.5合金(数値の単位は原子%)を用意し,これを第1,第2水素貯蔵器7,8に360g宛充填した。また冷却剤として,水とメタノールを,モル比にて,H2O:CH3OH=2:1の割合で混合して混合液を調製した。
【0029】
水素吸蔵材HSMに0.8MPaにて水素を吸蔵させ,水素吸蔵材HSMの温度が330℃にそれぞれ達したとき,ガス化させた冷却剤を両第2通路30から加熱−冷却器9内に流入させ,その加熱−冷却器9内にて水蒸気改質反応(改質温度330℃)を起こさせた。
【0030】
この場合,水素吸蔵材HSMの水素吸蔵により下記の発熱反応が起り,
Mg+H2→MgH2−75kJ/molH2
また冷却剤の水蒸気改質により下記の吸熱反応が起った。
【0031】
CH3OH+2H2O→3H2+CO2+H2O+50.1kJ
改質ガスを分析して水素生成量を求めたところ,それは63.8gであった。水蒸気改質反応開始時の,水素吸蔵材HSMによる水素吸蔵量は56.7gであるから,熱エネルギ収支からすれば,理論上の水素生成量は水素吸蔵量の約4.5倍,つまり,約255.2gとなるが,実際の水素生成量は水素吸蔵量の約1.1倍であった。
【0032】
〔例−II〕
水素吸蔵材HSMとして純Tiを用意し,これを第1,第2水素貯蔵器7,8に950g宛充填した。また冷却剤として,水蒸気とメタンガスを,モル比にて,H2O:CH4=2:1の割合で混合して混合ガスを調製した。
【0033】
水素吸蔵材HSMに1MPaにて水素を吸蔵させ,水素吸蔵材HSMの温度が650℃に達したとき,冷却剤としての混合ガスを両第2通路30から加熱−冷却器9内に流入させ,その加熱−冷却器9内にて水蒸気改質反応(改質温度650℃)を起こさせた。
【0034】
この場合,水素吸蔵材HSMの水素吸蔵により下記の発熱反応が起り,
Ti+H2→TiH2−123.8kJ/molH2
また冷却剤の水蒸気改質により下記の吸熱反応が起った。
【0035】
CH4+2H2O→4H2+CO2+164.5kJ
改質ガスを分析して水素生成量を求めたところ,それは97gであった。水蒸気改質反応開始時の,水素吸蔵材HSMによる水素吸蔵量は80gであるから,熱エネルギ収支からすれば,理論上の水素生成量は水素吸蔵量の約3倍,つまり,約240gとなるが,実際の水素生成量は水素吸蔵量の約1.2倍であった。なお,純Tiを純Zrに代えたところ,ほぼ同様の結果を得た。
【0036】
本発明に係る水素吸蔵材への水素吸蔵方法には,水素吸蔵材HSMを冷却しつつ,その水素吸蔵材HSMに水素を吸蔵させるに当り,冷却剤として,水素吸蔵材HSMの水素吸蔵に伴い発生した熱を吸収して相変化を起す物質を用いる,といった方法も含まれる。この相変化には,前記水とメチルアルコールの混合液,つまり液相が水素と炭酸ガス,つまり気相に変化する,といった場合だけでなく,結晶構造が他の結晶構造に変化する,といった変態,金属や合金の相が変わること等が含まれる。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば,前記のような手段を採用することによって,水素吸蔵に伴い発生した熱エネルギを,利用価値の高いエネルギ形態として回収し得る,水素吸蔵材への水素吸蔵方法を提供することができる。
【0038】
また本発明によれば,前記のように構成することによって前記方法を容易に実施し得る水素貯蔵タンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】要部を破断した水素貯蔵タンクの斜視図である。
【図2】水素貯蔵タンクの縦断面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】図2の5−5線断面図である。
【図6】可燃ガスおよび放出水素の流れを示す,図2と同様の要部縦断面図である。
【符号の説明】
1………………水素貯蔵タンク
3………………第1通路
7………………第1水素貯蔵器
8………………第2水素貯蔵器
9………………触媒式加熱−冷却器
30……………第2通路
HSM…………水素貯蔵材
Claims (7)
- 水素吸蔵材(HSM)を冷却しつつ,その水素吸蔵材(HSM)に水素を吸蔵させるに当り,冷却剤として,前記水素吸蔵材(HSM)の水素吸蔵に伴い発生した熱を吸収して化学反応を起す物質を用いることを特徴とする水素吸蔵材への水素吸蔵方法。
- 前記水素吸蔵材(HSM)はMg系合金であり,前記冷却剤はメタノールと水との混合液であって,前記化学反応により水素を発生する,請求項1記載の水素吸蔵材への水素吸蔵方法。
- 前記水素吸蔵材(HSM)は純Ti,Ti系合金,純ZrおよびZr系合金から選択される少なくとも一種であり,前記冷却剤はメタンガスと水蒸気との混合ガスであって,前記化学反応により水素を発生する,請求項1記載の水素吸蔵材への水素吸蔵方法。
- 水素吸蔵材(HSM)を収容した水素貯蔵器(7,8)と,その水素貯蔵器(7,8)に隣接した触媒式加熱−冷却器(9)と,前記水素貯蔵器(7,8)に吸蔵される水素およびその水素貯蔵器(7,8)から放出された水素をそれぞれ流通させる第1通路(3)と,前記触媒式加熱−冷却器(9)に,水素吸蔵時には冷却剤を,また水素放出時には可燃ガスをそれぞれ供給する第2通路(30)とを備え,前記冷却剤は,前記水素吸蔵材(HSM)の水素吸蔵に伴い発生した熱を吸収して,触媒存在下で化学反応を起す物質であり,また前記可燃ガスは,前記触媒存在下で燃焼するガスであることを特徴とする水素貯蔵タンク。
- 前記水素吸蔵材(HSM)はMg系合金であり,前記冷却剤はメタノールと水との混合液であって,前記化学反応により水素を発生する,請求項3記載の水素貯蔵タンク。
- 前記水素吸蔵材(HSM)は純Ti,Ti系合金,純ZrおよびZr系合金から選択される少なくとも一種であり,前記冷却剤はメタンガスと水蒸気との混合ガスであって,前記化学反応により水素を発生する,請求項4記載の水素貯蔵タンク。
- 水素吸蔵材(HSM)を冷却しつつ,その水素吸蔵材(HSM)に水素を吸蔵させるに当り,冷却剤として,前記水素吸蔵材(HSM)の水素吸蔵に伴い発生した熱を吸収して相変化を起す物質を用いることを特徴とする,水素吸蔵材への水素吸蔵方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2012512125A (ja) * | 2008-12-16 | 2012-05-31 | サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク | 金属水素化物のための断熱タンク |
JP2013505405A (ja) * | 2009-09-17 | 2013-02-14 | マクフィー エナジー | 水素および/または熱を貯蔵し取り出すためのタンク |
-
2002
- 2002-06-07 JP JP2002167553A patent/JP2004011806A/ja not_active Withdrawn
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