JP2004011530A - ピストン型流体機械 - Google Patents

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【課題】ピストンとブッシュ内面との片当たり力による該ピストン及びブッシュの摩耗や焼き付きの発生を回避して、耐久性、信頼性の向上がなされたピストン型流体機械を提供する。
【解決手段】シリンダに固挿されたブッシュ内に往復動可能に嵌合され流体圧等による片当たり力が作用するピストンを備えた流体機械において、前記ブッシュは、前記シリンダの給排孔側である内側の少なくとも前記片当たり力が作用する側の内周面に、一端側が前記シリンダ内に開放されて前記内側の端面から軸方向に所定長さに亘り刻設された溝を備えてなることを特徴とする。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧あるいは水圧ポンプ、油圧あるいは水圧モータ等に適用され、シリンダ内もしくは該シリンダに固挿されたブッシュ内に往復動可能に嵌合され流体圧等による片当たり力が作用するピストン型流体機械に関する。
【0002】
【従来の技術】
建設機械の油圧駆動装置、船舶用舵取り機等の流体機械には、斜板式油圧ポンプが多く用いられている。かかる斜板式油圧ポンプにおいては、エンジン、電動モータ等の駆動源によるシリンダブロックの回転により、シリンダ内に往復動可能に嵌合されているピストンの頭部に連結されたスリッパが斜板の傾斜面を構成するスラストプレートの摺動面を摺動し、該ピストンがシリンダブロックとともに回転しながらシリンダ内面あるいはシリンダ内に固挿されたブッシュの内面を往復動するように構成されているため、該ピストンの外面とシリンダの内面あるいはブッシュの内面との間に斜板の傾斜面からの反力による片当たり力が発生する。
【0003】
かかる斜板式油圧ポンプにおいて、前記片当たり力の発生に伴うシリンダの内面あるいはブッシュ内面とピストンとの潤滑不足による焼き付きを回避する手段の1つとして、特開平9−209919号の発明が提案されている。
かかる発明においては、図6に示されるように、シリンダ03に固挿されたブッシュ02の、該シリンダ03の給排孔07とは反対側である外側端面02c近傍における内面02aの、斜板からの横力とピストン06に作用する遠心力の合力つまり片当たり力作用方向の一部に溝02bを刻設して該溝内02bに潤滑油を溜め、該片当たり力を受ける内面02aに十分な油膜を保持して、ブッシュ02内面とピストン06との焼き付きを防止している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ピストンの外面とシリンダの内面あるいはブッシュの内面との間に斜板の傾斜面からの反力による片当たり力の発生に伴うシリンダの内面あるいはブッシュ内面とピストンとの焼き付きを防止する手段として提案されている前記特開平9−209919号の発明にあっては、ブッシュの外側端面(シリンダの反給排孔側)の内面に溝を刻設しているため、次のような問題点を抱えている。
【0005】
即ち、かかる発明においては、片当たり力の発生に伴うシリンダ03の内面あるいはブッシュ02内面とピストン06との焼き付きを防止するため、シリンダ03の給排孔07とは反対側である外側端面02c近傍における内面02aに貯油用の溝02bを刻設している。
このためかかる従来技術にあっては、図6に示されるように、ピストン06の中心06cがブッシュ中心02dに対して外側が上方になるように傾斜した際には、該ピストン06の内側端面06aの前記溝02bとは反対側の下端縁Tとブッシュ内面02aとの間に強い局部接触がなされることとなり、該局部接触によりピストン06とブッシュ内面02aとの間に焼き付きが発生し易くなる。
【0006】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、ピストンとブッシュ内面との片当たり力による該ピストン及びブッシュの摩耗や焼き付きの発生を回避して、耐久性、信頼性の向上がなされたピストン型流体機械を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明はかかる課題を解決するため、請求項1記載の発明として、シリンダに固挿されたブッシュ内に往復動可能に嵌合され片当たり力が作用するピストンを備えた流体機械において、前記ブッシュは、少なくとも前記片当たり力が作用する側の内周面に、一端側が前記シリンダ流体室内に開口されて該流体室に臨む内側端面から軸方向に所定長さに亘り刻設された溝を備えてなることを特徴とするピストン型流体機械を提案する。
【0008】
請求項1において、好ましくは請求項2〜3にように構成するのがよい。
即ち、請求項2においては、前記ブッシュは、前記ピストンの内側端面が該ブッシュの内側端面よりも前記流体室内に常時突出するように設けられてなる。
請求項3においては、前記ブッシュは、前記シリンダの反流体室側である外側端部の内周に面取り部を形成してなる。
【0009】
かかる発明によれば、斜板の傾斜面からの反力等によってピストンの外面とブッシュの内面との間に片当たり力が発生した際においては、ブッシュの片当たり力が作用する側の内周面に該ブッシュの内側端面から軸方向に所定長さに亘って溝を刻設しているため、ピストンの内側端面が臨むシリンダ内の高圧流体が該溝内に押し込まれて、該溝内の高圧流体によりピストンの内側端面寄りの部位が前記片当たり力に抗して半径方向に押し上げられる作用をなす。
かかる高圧流体によるピストンの押し上げ作用により、前記片当たり力によるピストンの外面とブッシュの内面との間の接触面圧が低減されるとともに、該溝内に押し込まれた高圧流体によって前記片当たり力が作用する側のピストンとブッシュとの間の潤滑作用が十分になされる。
これにより、ピストンとブッシュ内面との片当たり力による該ピストン及びブッシュの摩耗や焼き付きの発生を防止でき、耐久性、信頼性の向上がなされたピストン型流体機械が得られる。
【0010】
また、請求項2のように、前記ブッシュの内側端面よりも前記ピストンの内側端面が常時内側に突出するように構成すれば、ピストンの内側端縁は常時ブッシュの内側端面よりも内側のシリンダ内に位置してブッシュの内面と接触することがないため、従来技術のようなピストンの内側端縁とブッシュ内面との局部接触が回避され、該局部接触による摩耗や焼き付きの発生を防止できる。
【0011】
さらに、請求項3のように、ブッシュの外側の内周面に面取り部を形成すれば、前記片当たり力によりピストン中心がブッシュ中心に対して傾斜した際においても、ピストン外周面に接触するブッシュの外側端部の内周面に面取り部が形成されているため、ピストン外周面とブッシュの外側内周面との間の局部接触が回避される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0013】
図1は本発明の実施例に係る斜板式油圧ポンプにおけるピストン摺動部近傍の軸心線に沿う断面図、図2は図1のA矢視図、図3は前記実施例の作用説明図である。図4は本発明が適用される斜板式油圧ポンプの構造を示すポンプ軸心線に沿う断面図、図5は図4のZ部詳細図である。
【0014】
本発明が適用される油圧ポンプの構造を示す図4〜5において、1はポンプ軸で、、エンジン、電動モータ等の駆動源(図示省略)に連結されて回転駆動される。11はケーシング、13及び12は前記ケーシング11の前後両端部に固着されたベースプレートおよびエンドプレートである。4は前記ポンプ軸1にスプライン17を介して嵌合され該ポンプ軸1と同期して回転駆動されるシリンダブロックである。
該シリンダブロック4には円周方向等間隔に複数のシリンダ3が穿孔されている。2は各シリンダ3に固挿されたブッシュ、6は該ブッシュ2往復摺動可能に嵌合されたピストンである。
14は前記ベースプレート13に取り付けられた斜板で、斜板角調整装置80(図5参照)によりその斜板角を、変化可能に構成されている。
即ち、該斜板各調整装置80は図5に示すように、シリンダ08b内を往復動するピストン08cによりレバー08aを回動させ、該レバー08aの端部に固定された斜板軸08を図のU矢のように回動させることにより斜坂角を変化させるようになっている。
【0015】
16は凹部を有するスリッパで、前記各ピストン6の球状部6bと前記凹部とが摺動可能に接合されており、前記斜板14とスリッパ16とで斜板部を形成している。15は前記斜板14のスリッパ16側表面にローラ軸受25を介して配設されたスラストプレートで、該スラストプレート15には前記スリッパ16が相対摺動可能に当接されている。
5は前記各シリンダ3の給排油孔7側に配置されて前記エンドプレート12に固着されたバルブプレートである。図示を省略するが、該バルブプレート5にはポンプの回転軸心の両側に対向して繭形の吸入孔及び吐出孔が穿設されている。また前記エンドプレート12には前記バルブプレート5の吸入孔に連通される吸入通路9及び前記バルブプレート5の吐出孔に連通される吐出通路10が形成されている。
18および19は前記ポンプ軸1を軸支するベースプレート側の軸受及びエンドプレート側の軸受である。
【0016】
本発明は前記のように構成された斜板式油圧ポンプ、斜板式水圧ポンプあるいは斜板式油圧モータ、斜板式水圧モータに適用されるピストン及びブッシュの構造に関するものである。
実施例を示す図1ないし3において、3は複数のシリンダ、2は各シリンダ3の内周に固挿されたブッシュ、6は該ブッシュ2の内周に往復動自在に嵌合されたピストンである。
21は前記ブッシュ2の内面に刻設された溝で、該ブッシュ2の給排油孔7側つまり内側の少なくとも前記ピストン6からの片当たり力が作用する側の内周面に形成されている。そして、該溝21は、入口端部がシリンダ3内の油室3aに開放された形態にて、前記ブッシュ2の給排油孔側端面22から軸方向に所定長さの有限深さにて刻設され、図2に示す幅B及び深さhは設計的に適宜設定される。
【0017】
また、前記ブッシュ2は、前記ピストン6の前記油室3aに臨む内側端面61が、該ピストン6の全ストロークにおいて該ブッシュ2の内側端面22よりも常時内側にSだけ突出するように設けられている。
23は前記ブッシュ2の端部内周面に形成された面取り部で、前記ブッシュ2の給排油孔7とは反対側である外側端部24の内周面に形成されている。
【0018】
かかる油圧ポンプの作動時において、エンジン、電動モータ等の駆動源により前記ポンプ軸1が回転駆動されると、シリンダブロック4が回転する。該シリンダブロック4の回転により、シリンダ3に往復動可能に嵌合されているピストン6の頭部に連結されたスリッパ16が斜板14の傾斜面を構成するスラストプレート15の摺動面を摺動し、これにより該ピストン6がシリンダブロック4とともに回転しながらシリンダ3内を往復動する。08は斜板軸である。
そして、前記ピストン6が吸入行程になるとき、図4に示した給排油孔7がバルブプレート5の吸入孔に連通されて吸入通路9からオイルが吸入される。一方、該ピストン6が吐出行程になるときには、前記給排油孔7がバルブプレート5の吐出孔に連通され、該ピストン6によりシリンダ3内のオイルが吐出通路10に送出される。
【0019】
かかる実施例において、図3に示されるように、前記斜板14の傾斜した当接面からの反力によって、ピストン6の外面とブッシュ2の内面との間に片当たり力が発生し、ピストン6の中心6cがブッシュ2の中心2cに対して上方に傾斜した際において、該ブッシュ2の片当たり力が作用する側の内周面26に該ブッシュ2の内側端面22から軸方向に所定長さに亘って溝21を刻設しているため、ピストン6の内側端面61が臨む油室3a内の高圧油が前記溝21の油室3aへの開口部から該溝21内に押し込まれる。
そして、該溝21内の高圧油は、前記片当たり力に抗して該溝21の内側に位置するピストン6の内側端面61寄りの部位を前記片当たり力に抗して半径方向に押し上げる作用をなす。
【0020】
かかる高圧油によるピストン6の押し上げ作用により、前記片当たり力によるピストン6の外面とブッシュ2の内面との間の接触面圧が低減される。
また、前記溝21内には記のようにして押し込まれた高圧油によって、前記片当たり力が作用する側のピストン6とブッシュ2との間の潤滑作用が十分になされる。
これにより、ピストン6とブッシュ2内面との片当たり力による該ピストン6及びブッシュ2の摩耗や焼き付きの発生を防止できる。
【0021】
また、前記ブッシュ2の内側端面22よりも前記ピストン6の内側端面61が常時油室3a側(内側)に突出するように構成しているので、該ピストン6の内側端縁は常時ブッシュ2の内側端面22よりも内側の油室3a内に位置してブッシュ2の内面と接触することがないため、従来技術のようなピストン6の内側端縁とブッシュ2内面との局部接触が回避され、該局部接触による摩耗や焼き付きの発生を防止できる。
【0022】
さらに、前記ブッシュ2の外側端部24の内周面に面取り部23を形成したので、前記片当たり力によりピストン中心6cがブッシュ中心2cに対して傾斜した際においても、ピストン6外周面に接触するブッシュ2の外側端部24の内周面に面取り部23が形成されているため、ピストン外周面65とブッシュ2の外側の内周面26との間の局部接触が回避される。
尚、前記油圧ポンプにおける作動流体としてのオイルに代えて水を作動流体としても、図1〜5と同一構造の水圧ポンプを構成することができる。
【0023】
【発明の効果】
以上記載の如く本発明によれば、ブッシュの片当たり力が作用する側の内周面に該ブッシュの内側端面から軸方向に所定長さに亘って溝を刻設しているため、シリンダ内の高圧流体が該溝内に押し込まれ、該溝内の高圧流体によるピストンの押し上げ作用によって、前記片当たり力によるピストンの外面とブッシュの内面との間の接触面圧が低減されるとともに、該溝内の高圧流体によって前記片当たり力が作用する側のピストンとブッシュとの間の潤滑作用が十分になされる。
これにより、ピストンとブッシュ内面との片当たり力による該ピストン及びブッシュの摩耗や焼き付きの発生を防止でき、耐久性、信頼性の向上がなされたピストン型流体機械が得られる。
【0024】
また請求項2のように構成すれば、前記ブッシュの内側端面よりも前記ピストンの内側端面が常時内側に突出さしめられ、ピストンの内側端縁が常時ブッシュの内側端面よりも内側のシリンダ内に位置してブッシュの内面と接触することがないため、従来技術のようなピストンの内側端縁とブッシュ内面との局部接触が回避され、該局部接触による摩耗や焼き付きの発生を防止できる。
【0025】
さらに請求項3のように構成すれば、ブッシュの外側の内周面に面取り部を形成することにより、前記片当たり力によってピストン中心がブッシュ中心に対して傾斜した際においても、ピストン外周面に接触するブッシュの外側端部の内周面に面取り部が形成されているため、ピストン外周面とブッシュの外側内周面との間の局部接触が回避される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る斜板式油圧ポンプにおけるピストン摺動部近傍の軸心線に沿う断面図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】前記実施例の作用説明図である。
【図4】本発明が適用される斜板式油圧ポンプの構造を示すポンプ軸心線に沿う断面図である。
【図5】図4のZ部詳細図である。
【図6】従来技術における作用説明図である。
【符号の説明】
1  ポンプ軸
2  ブッシュ
3  シリンダ
3a 油室
6  ピストン
7  給排油孔
21 溝
22 内側端面(ブッシュ)
23 面取り部
61 内側端面(ピストン)

Claims (3)

  1. シリンダに固挿されたブッシュ内に往復動可能に嵌合され片当たり力が作用するピストンを備えた流体機械において、前記ブッシュは、少なくとも前記片当たり力が作用する側の内周面に、一端側が前記シリンダ流体室内に開口されて該流体室に臨む内側端面から軸方向に所定長さに亘り刻設された溝を備えてなることを特徴とするピストン型流体機械。
  2. 前記ブッシュは、前記ピストンの内側端面が該ブッシュの内側端面よりも前記流体室内に常時突出するように設けられてなることを特徴とする請求項1記載のピストン型流体機械。
  3. 前記ブッシュは、前記シリンダの反流体室側である外側端部の内周に面取り部を形成してなることを特徴とする請求項1記載のピストン型流体機械。
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