JP2004010874A - ポリカーボネートおよびその製法 - Google Patents
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Abstract
【課題】万一、ポリカーボネートが高温多湿や強アルカリ性物質との接触等の過酷な条件で使用されたり、リサイクル使用による厳しい熱履歴によって、ビスフェノール又は他の構成成分が遊離しても、環境ホルモン性を低く抑えることができるように、ビスフェノールAよりエストロゲン作用の小さいビスフェノールを原料として製造し、かつ熱的性質に優れたポリカーボネート及びその製法を提供すること。
【解決手段】絶対ハードネス(η)が4.10<η<4.80で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.10<χ<4.80の範囲にあるビスフェノール類のうち、絶対ハードネス(η)が4.53<η<4.68で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.19<χ<4.30であるものを除いたビスフェノール類と、炭酸エステル形成化合物とを反応させてなるポリカーボネート。
【選択図】 図1
【解決手段】絶対ハードネス(η)が4.10<η<4.80で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.10<χ<4.80の範囲にあるビスフェノール類のうち、絶対ハードネス(η)が4.53<η<4.68で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.19<χ<4.30であるものを除いたビスフェノール類と、炭酸エステル形成化合物とを反応させてなるポリカーボネート。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食器や玩具、医療用機器部品等人体又は体液と直接接触する用途、又は、身の回りで広く使用されている光デイスクや携帯電話をはじめとした通信・OA・電気・電子・機械部品等に好適に使用できるエストロゲン作用が小さく、環境問題に対応したビスフェノールを原料として製造され、熱的性質に優れたポリカーボネート及びその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、新聞、テレビ、雑誌等で報道されているように内分泌攪乱化学物質、いわゆる環境ホルモンが大きな社会問題となってきている。環境省では、環境ホルモン戦略計画SPEED’98に外因性内分泌攪乱化学物質として内分泌攪乱作用を有すると疑われている化学物質65種を記載し、対応をとりつつある。内分泌攪乱作用を有すると疑われている65種の化学物質の中には、難分解性でそれ自体毒性の強いPCBやダイオキシンのように製造禁止されているものも存在する。また、ポリカーボネートの原料である2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)も、内分泌攪乱作用を有すると疑われている化学物質65種中に含まれている。
【0003】
ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートは、食器や玩具、医療用機器部品等人体又は体液と直接接触する用途、又は、身の回りで広く使用されている光デイスクや携帯電話をはじめとした通信・OA・電気・電子・機械部品、建築、農業分野等に幅広く、大量に使用されている。このように幅広い分野で大量に使用されているポリカーボネートが、一部の消費者の誤使用や予想を超えた過酷な条件で使用された場合、例えば、長期間にわたり高温多湿下で使用されたり、強アルカリ性溶液に長期間接触させた場合、ポリカーボネートの分解が起こり、ビスフェノールAが遊離することがある。実際、湖沼や河川からごく微量のビスフェノールAが検出されたという報告も散見される。
【0004】
ビスフェノール類は、女性ホルモンであるエストロゲンの疑似ホルモンとしてエストロゲン受容体に結合し、遺伝子を発現させる等、弱いエストロゲン作用を示すことが知られている。エストロゲン類似作用機構はまだ完全に解明されていないが、エストロゲン活性の高い、すなわち環境ホルモン性が高いビスフェノール類が人体に取り込まれてしまう機会の多い製品に使用することは好ましくない場合がある。従って、現在大量に使用されているビスフェノールAからのポリカーボネートの基本特性をできるだけ保持し、かつビスフェノールAよりエストロゲン活性の小さいビスフェノールを原料とし、環境問題に対応したポリカーボネートの開発が求められている。
【0005】
また、一方では、エストロゲン作用を持つビスフェノール類の化学構造は多種多様であるため、化学構造からエストロゲン作用の大小を予測することは難しい。
そこで、迅速にエストロゲン活性を予測する方法として、計算化学の手法を応用して定量的構造活性相関(QSAR)を用いて、計算によって疎水性パラメータ(LogP)やエストロゲン受容体との結合自由エネルギーを求め、エストロゲン作用を予測する方法等が検討されている。しかしながら、エストロゲン作用の小さいビスフェノール類を見出すためには、QSARと実際のin vitroやin vivoでの試験結果との相関性が確認できるものを選定しなければならず、従来のQSARと実際の試験結果との相関性がかならずしも満足行くものではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、万一、ポリカーボネートが高温多湿や強アルカリ性物質との接触等の過酷な条件で使用されたり、リサイクル使用による厳しい熱履歴によって、ビスフェノール又は他の構成成分が遊離しても、環境ホルモン性を低く抑えることができるように、ビスフェノールAよりエストロゲン作用の小さいビスフェノールを原料として製造し、かつ熱的性質に優れたポリカーボネート及びその製法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題を解決すべく、エストロゲン作用の迅速かつ最適試験方法を選定した上で、多数のビスフェノールのエストロゲン作用について検討した結果、特定のビスフェノールはエストロゲン作用がビスフェノールAより小さく、得られたポリカーボネートは熱的性質に優れていることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、絶対ハードネス(η)が4.10<η<4.80で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.10<χ<4.80の範囲にあるビスフェノール類のうち、絶対ハードネス(η)が4.53<η<4.68で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.19<χ<4.30であるものを除いたビスフェノール類と、炭酸エステル形成化合物とを反応させてなるポリカーボネートおよびその製造法を提供するものである。
【0009】
【発明の実施形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に関わるポリカーボネートは、ビスフェノール類と炭酸エステル形成化合物を原料とし、公知の方法、例えばビスフェノール類とホスゲンとの直接反応(ホスゲン法)、又はビスフェノール類とビスアリールカーボネートとのエステル交換反応(エステル交換法)等の方法で製造されるが、ビスフェノール類の反応性を考慮した場合、ホスゲン法の方が好ましい。
【0010】
前者のホスゲン法においては、通常酸結合剤および溶媒の存在下において、本発明におけるビスフェノール類とホスゲンを反応させる。酸結合剤としては、例えばピリジンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物の水溶液等が用いられ、また溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、キシレン等が用いられる。さらに、縮重合反応を促進するために、トリエチルアミンのような第三級アミン触媒および第四級アンモニウム塩等反応促進剤を、また重合度調節には、フェノール、p−t−ブチルフェノール等一官能基化合物を分子量調節剤として加える。さらに、所望に応じ亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイト等の酸化防止剤や分岐化剤を少量添加してもよい。反応は通常0〜150℃、好ましくは5〜40℃の範囲とするのが適当である。反応時間は反応温度によって左右されるが、通常0.5分〜10時間、好ましくは1分〜2時間である。また、反応中は、反応系のpHを10以上に保持することが望ましい。
【0011】
一方、後者のエステル交換法においては、本発明における前記ビスフェノール類とビスアリールカーボネートとを混合し、減圧下で高温において反応させる。この時、p−t−ブチルフェノール等一官能基化合物を分子量調節剤として加えてもよい。反応は通常150〜350℃、好ましくは200〜300℃の範囲の温度において行われ、また減圧度は最終で好ましくは1mmHg以下にして、エステル交換反応により副生した該ビスアリールカーボネートから由来するフェノール類を系外へ留去させる。反応時間は反応温度や減圧度等によって左右されるが、通常1〜10時間程度である。反応は窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、また、所望に応じ、酸化防止剤や分岐化剤を添加して反応を行ってもよい。
【0012】
本発明における絶対ハードネス(η)と絶対電気陰性度(χ)は、下記に示される式(1)及び式(2)で表される。
絶対ハードネス η = (εLUMO − εHOMO )/2 (1)
絶対電気陰性度 χ =−(εLUMO + εHOMO )/2 (2)
εLUMO:LUMO(lowest unoccupied molecularorbital,最低空分子軌道)の電子エネルギー。
εHOMO:HOMO(highest occupied molecular orbital,最高被占分子軌道)の電子エネルギー。
実際の計算手法としては、ビスフェノール類の構造をモンテカルロ法によりコンホメーションを発生させ、いくつかの安定構造の中から最安定化構造を得た。その最安定化構造をAM1ハミルトニアンを用いた半経験的分子軌道法により計算し、εLUMO及びεHOMOを求め、式(1)及び式(2)にそれらの値を代入して様々なビスフェノール類の絶対ハードネス(η)と絶対電気陰性度(χ)を求めた。
【0013】
本発明において、計算で求めた絶対ハードネス(η)と絶対電気陰性度(χ)と実際のエストロゲン活性との相関性については、MCF−7ヒト乳ガン細胞増殖試験を用いた倍加時間を基準とするホルモン活性評価で、ビスフェノールAの倍加時間をエストロゲン活性指数100とした場合に、対象となるビスフェノールのエストロゲン活性指数の値で評価したものと比較して高い相関があるここを見出した。本発明では、エストロゲン活性指数が95以下のものが環境ホルモン性が低いビスフェノールとした。
【0014】
本発明において、エストロゲン活性指数95を越えて、エストロゲン活性がビスフェノールAと変わらないか、或いはそれ以上の活性を示すビスフェノール類が有する絶対ハードネス(η)と絶対電気陰性度(χ)は、絶対ハードネス(η)が4.53<η<4.68で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.19<χ<4.30の領域に集中することが判明した。すなわち、絶対ハードネス(η)が4.10<η<4.80で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.10<χ<4.80の範囲にあるビスフェノール類のうち、絶対ハードネス(η)が4.53<η<4.68で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.19<χ<4.30である領域を示すビスフェノール以外のビスフェノールを選択することにより、選択したビスフェノール類と炭酸エステル形成化合物と反応させて得られるポリカーボネートは、例え想定外の使用状態でポリカーボネートが分解し、ビスフェノール類が析出したとしても、エストロゲン活性が低いため人体や環境に与える影響が少ないことを示す。また、さらに上記で選択されたビスフェノール類の内、絶対ハードネス(χ)が4.80以下であるビスフェノール類であることが、エストロゲン活性以外の影響を考慮した場合、好ましい。
【0015】
本発明のポリカーボネート原料のビスフェノール類は、絶対ハードネス(η)が4.10<η<4.80で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.10<χ<4.80の範囲にあるビスフェノール類のうち、絶対ハードネス(η)が4.53<η<4.68で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.19<χ<4.30である領域以外のビスフェノールであり、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチル−6−メチルフェニル)−2−メチルプロパン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、α,ω−ビス[3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらのビスフェノールは、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0016】
本発明のポリカーボネートの原料の一つである炭酸エステル形成化合物としては、例えばホスゲンや、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等のビスアリルカーボネートが挙げられる。これらの化合物は2種類以上併用することも可能である。
【0017】
本発明中に使用してもよい分子量調節剤としては一価フェノールが好ましいが、少なくとも現時点で環境省の環境ホルモン戦略計画SPEED’98中に述べられている、外因性内分泌かく乱化学物質として内分泌かく乱作用を有すると疑われる化学物質に列記されている化合物を分子量調節剤として用いることは好ましくない。現時点ではアルキルフェノール(炭素数が5〜9のもの)、ノニルフェノール、4−オクチルフェノール、ペンタクロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール等が列記されている。そのため、現時点で環境ホルモンの疑いから除外されているフェノールや炭素数が1〜4のアルキルフェノール類;炭素数が1〜4のヒドロキシ安息香酸アルキルエステル;炭素数が1〜4のアルキルオキシフェノール類を分子量調節剤として使用することが好ましい。中でも、長年の使用実績からフェノールとp−t−ブチルフェノールが好ましい。
【0018】
本発明においてホスゲン法を採用する場合に、ホスゲン吹き込み終了後に使用される重合触媒としては、3級アミンが使用され、具体的には、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジエチルアミノピリジン等がある。これらの内トリエチルアミンが好ましい。この3級アミンは、使用される全ビスフェノール類に対して、一般に0.0005〜10mol%使用されることが好ましい。
【0019】
本発明におけるホスゲン法を採用する場合は、過剰のホスゲンと絶対ハードネス(η)が4.53<η<4.68で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.19<χ<4.30である領域以外のビスフェノールを反応させる方法により反応性をより向上させることができる。
【0020】
これらの反応で合成されたポリカーボネート重合体は、押出成形、射出成形、ブロ−成形、圧縮成形、湿式成形等公知の成形法で容易に成形できるとともに、必要な強度を保つには極限粘度が0.2〜2.0dl/gの範囲であることが好ましい。
【0021】
本発明のポリカーボネート用の原材料中には、製造工程で除去できないような絶対ハードネス(η)が4.53<η<4.68で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.19<χ<4.30である領域に含まれる物質が不純物として混入しているものは好ましくなく、事前に十分精製された原材料を使用することが好ましい。
【0022】
【実施例】
次に実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、ビスフェノール類のエストロゲン活性指数の評価と絶対ハードネス(η)、絶対電気陰性度(χ)の計算は次の通り行った。
【0023】
<絶対ハードネス(η)と絶対電気陰性度(χ)の計算>
絶対ハードネス(η)と絶対電気陰性度(χ)は密度汎関数理論から導かれ、下記式(3)と式(4)のようになることが解っている。
χ=−μ=(∂E/∂N)v(r)=(Ip+Ea)/2 (3)
η=1/2(∂μ/∂N)v(r)=1/2(∂2E/∂2N)=(Ip−Ea)/2 (4)
ここで、Eは全電子エネルギー、Nは系の電子数、μは系の化学ポテンシャルであり、イオン化ポテンシャル及び電子親和力をそれぞれIp及びEaとしたとき、式(3)及び式(4)で示したように近似される。従って、IpとEaは分子の最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)の電子軌道エネルギーεLUMO及びεHOMOで表されるので、式(3)と式(4)は、前述した式(1)及び式(2)で近似される。
絶対ハードネス η = (εLUMO − εHOMO )/2 (1)
絶対電気陰性度 χ =−(εLUMO + εHOMO )/2 (2)
実際の計算手法としては、ビスフェノール類の構造をモンテカルロ法によりコンホメーションを発生させ(配座発生conformer distributionというコマンドを使い、MM2(力場計算法)を使って計算した)、いくつかの安定構造の中から最安定化構造を得た。
その最安定化構造をAM1ハミルトニアンを用いた半経験的分子軌道法によりさらに最適化計算し、εLUMO及びεHOMOを求め、式(1)及び式(2)にそれらの値を代入して様々なビスフェノール類の絶対ハードネス(η)と絶対電気陰性度(χ)を求めた。ソフトウェアは、TITAN(Wavefunction社)を使用した。
代表的なビスフェノール類およびエストロゲン活性指標物質の絶対ハードネス(η)と絶対電気陰性度(χ)計算結果を表1に示す。また、表1の値を絶対ハードネス(η)をY軸に、絶対電気陰性度(χ)をX軸にした散布図上に表したものを図1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
<エストロゲン活性指数>
エストロゲン作用の大小を評価できる主な試験方法としては、次の五つの方法がある。
a)マウスやラットを用いたエストロゲン曝露後の子宮重量の測定
b)エストロゲン感受性ヒト乳ガン細胞を用いたエストロゲン増殖試験
c)エストロゲン受容体結合アッセイ
d)酵母tow−hybridアッセイ
e)ホタルルシフェラーゼアッセイ
前記五つの試験法には長所と短所を持っている。特に、b)以外の方法は、ホルモン類似作用と拮抗作用を区別できないという欠点を持っているので、本発明ではb)の方法で試験を行った。
【0026】
<エストロゲン感受性ヒト乳ガン細胞を用いたエストロゲン増殖試験>
フェノールレッド不含7.5%FCS/RPMI1640液体培地(重曹、ペニシリンと硫酸ストレプトマイシンを含む)中で培養して立ち上げたMCF−7細胞の一定量を24穴培養プレートに巻き込み、5%CO2気流下に37℃で培養を開始した。4日後、4穴中の細胞をEDTA−トリプシン処理して集め、遠心、洗浄処理、遠心により細胞ペレットを得る。次に、細胞ペレットを培地で全量500μlとして、トリパンブルー染色し、顕微鏡で100倍に拡大し、血球計算板を用いて細胞数をカウントした(常法に従う)。4〜6検体の測定値を平均し、これをコントロール値とした。その後、他の24穴培養プレートの培地を除き、除いた量と同量の新鮮なフェノールレッド不含ストリップド5%FCS/RPMI1640液体培地を加え、培地交換した。3日後に培地交換し、1×10− 7Mに調整した試験試薬の4μlを24穴培養プレートの各々の穴に加えた。さらに3日後、同様な方法により、コントロール、試験試薬を加えた穴の細胞数を先と同様な方法でカウントした。1日後、フェノールレッド不含ストリップド5%FCS/RPMI1640液体培地を交換した。さらに1日後、試験試薬4μlを添加した。以後、細胞数カウント→培地交換→試験試薬添加を繰り返し、試験をおこなった。
【0027】
前記、エストロゲン感受性ヒト乳ガン細胞を用いたエストロゲン増殖試験で得られた結果を次の通り整理した。すなわち、対数増殖期の細胞が2倍に増える時間を倍加時間D.T.(doubling time)と定義し、試験化学物質が、もしエストロゲン様作用を持てばその細胞の増殖速度に違いがでて、その差を比較することによりエストロゲン活性の大きさを判定することができるので、細胞の対数増殖期の時間t1 とt2 においてカウントした細胞数をそれぞれN1 とN2 とすると、倍加時間D.T.は式(A)で示される。
D.T.=(t2 −t1 )/3.32log(N2 /N1 ) (A)
ビスフェノールAの倍加時間xのエストロゲン活性指数を100とした場合、エストロゲン活性の異なるビスフェノールの倍加時間yのエストロゲン活性指数zは、式(B)で示される。
z=x/y×100 (B)
式(B)から、ビスフェノールAより倍加時間の長いビスフェノールのエストロゲン活性指数は、100より小さく、細胞増殖速度がビスフェノールAより遅く、エストロゲン作用が小さいことがわかる。
【0028】
【実施例1】
ガラス製2リットルセパラブルフラスコに、10%(w/v)の水酸化ナトリウム水溶液を500ml入れ、窒素ガスでフラスコ内を無酸素状態にした後、絶対ハードネス(η)が4.5014と絶対電気陰性度(χ)が4.2728であったビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン(本州化学工業(株)製BisP−DP:以下BPBP、0.4mol)141gを加え溶解した。これにメチレンクロライド500mlを加え、15℃に保ちながら撹拌しつつ、ホスゲン51gを50分かけて溶液内に添加した。
ホスゲン添加終了後、フェノールを1.3g加え、さらに10%(w/v)の水酸化ナトリウム水溶液50ml加え1分間激しく撹拌して、10分後、0.2mlのトリエチルアミン(TEA)を加え、約1時間撹拌し重合させた。
得られた重合液を水相と有機相に分離し、有機相を塩酸で中和し、洗液のpHが中性になるまで水洗を繰り返した。得られた重合樹脂液を、60℃に保った温水に滴下し、溶媒を蒸発除去しながら重合物を粒状化した。得られた白色粉末状重合物を濾過後、105℃、8時間乾燥して粉末状樹脂を得た
この重合体は、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の温度20℃におけるハギンズ定数0.45として得られた極限粘度[η]は0.43dl/gであった。
得られた上記重合体を赤外線吸収スペクトルより分析した結果、1770cm−1付近の位置にカルボニル基による吸収が認められ、カーボネート結合を有することが確認された。また、(株)島津製作所製熱分析装置(DSC−50)を使用し、窒素雰囲気下で測定されたガラス転移温度とMCF−7細胞増殖試験によるエストロゲン活性指数測定結果を表2に示した。
【0029】
【実施例2】
BPBPの代わりに、ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン(本州化学工業(株)製BisOTBP−A:以下BOTBA、0.4mol)136g用いた以外は、実施例1と同様に行った。
ビスフェノールの絶対ハードネス、絶対電気陰性度、エストロゲン活性指数及びポリカーボネートの極限粘度、ガラス転位温度の測定結果を表2に示した。
【0030】
【実施例3】
BPAPの代わりに、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製BCF:以下BCFL、0.2mol)75.6gと1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチル−6−メチルフェニル)−2−メチルプロパン(本州化学工業(株)製Bis3M6B−IBTD:以下MBIBTD、0.2mol)76.4gを用い、フェノールの代わりにp−t−ブチルフェノール(以下PTBP)0.4gを用いた以外は実施例1と同様に行った。
ビスフェノールの絶対ハードネス、絶対電気陰性度、エストロゲン活性指数及びポリカーボネートの極限粘度、ガラス転位温度の測定結果を表2に示した。
【0031】
【実施例4】
BPBP141gの代わりに、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(本州化学工業p,p’−BPF(株)製:以下BP−F、0.2mol)40gと9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製BPF:以下BPFL、0.2mol)70gとジメチルシロキサンの繰り返し単位が平均7のα,ω−ビス[3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン(信越化学工業(株)製X−22−1876:以下Si、0.01mol)8.5gを用い、フェノールの代わりにPTBPを2g用いた以外は実施例1と同様に行った。
ビスフェノールの絶対ハードネス、絶対電気陰性度、エストロゲン活性指数及びポリカーボネートの極限粘度、ガラス転位温度の測定結果を表2に示した。
【0032】
【表2】
【0033】
【比較例1】
BPBPの代わりに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(三菱化学(株)製:以下BPA、0.4mol)91.2g用いた以外は、実施例1と同様に行った。
ビスフェノールの絶対ハードネス、絶対電気陰性度、エストロゲン活性指数及びポリカーボネートの極限粘度、ガラス転位温度の測定結果を表3に示した。
【0034】
【比較例2】
BPBPの代わりに、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(田岡化学工業(株)製W−SP:以下BPCH、0.4mol)107.2g用いた以外は、実施例1と同様に行った。
ビスフェノールの絶対ハードネス、絶対電気陰性度、エストロゲン活性指数及びポリカーボネートの極限粘度、ガラス転位温度の測定結果を表3に示した。
【0035】
【比較例3】
BPBPの代わりに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン(本州化学工業(株)製MIBK−Bis:以下BPMIBK、0.4mol)108g用いた以外は、実施例1と同様に行った。
ビスフェノールの絶対ハードネス、絶対電気陰性度、エストロゲン活性指数及びポリカーボネートの極限粘度、ガラス転位温度の測定結果を表3に示した。
【0036】
【表3】
【0037】
表2および表3に示した、実施例1〜4および比較例1〜3の各測定結果より、実施例1〜4の本発明のポリカーボネートは、絶対ハードネス(η)が4.10<η<4.80で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.10<χ<4.80の範囲にあるビスフェノール類のうち、絶対ハードネス(η)が4.53<η<4.68の範囲になく、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.19<χ<4.30の範囲にも含まれていない、ビスフェノール類を使用するため、エストロゲン活性が低く、MCF−7細胞を用いたエストロゲン活性はいずれのビスフェノールも95以下であった。また、熱的性質においても比較例1〜3に比して遜色はなかった。逆に比較例1〜3は原料ビスフェノールの絶対ハードネス(η)が4.53<η<4.68の範囲で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.19<χ<4.30の範囲にあることから、エストロゲン活性は高く、MCF−7細胞を用いたエストロゲン活性はいずれのビスフェノールも100以上であった。
【0038】
【発明の効果】
本発明のポリカーボネートは、従来のポリカーボネートに比して、絶対ハードネスと絶対電気陰性度が特定の領域にある、ビスフェノールを原料とすることにより、ポリカーボネート構成成分が分解により遊離しても、環境ホルモンとして作用する可能性が低くいので、低環境ホルモン性であり、かつ優れた熱的性質を保持している。故に、食器や玩具、医療用機器部品等人体又は体液と直接接触する用途、又は、身の回りで広く使用されている光デイスクや携帯電話をはじめとした通信・OA・電気・電子・機械部品等の用途にも好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】絶対ハードネス(η)をY軸に、絶対電気陰性度(χ)をX軸にした散布図。
【発明の属する技術分野】
本発明は、食器や玩具、医療用機器部品等人体又は体液と直接接触する用途、又は、身の回りで広く使用されている光デイスクや携帯電話をはじめとした通信・OA・電気・電子・機械部品等に好適に使用できるエストロゲン作用が小さく、環境問題に対応したビスフェノールを原料として製造され、熱的性質に優れたポリカーボネート及びその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、新聞、テレビ、雑誌等で報道されているように内分泌攪乱化学物質、いわゆる環境ホルモンが大きな社会問題となってきている。環境省では、環境ホルモン戦略計画SPEED’98に外因性内分泌攪乱化学物質として内分泌攪乱作用を有すると疑われている化学物質65種を記載し、対応をとりつつある。内分泌攪乱作用を有すると疑われている65種の化学物質の中には、難分解性でそれ自体毒性の強いPCBやダイオキシンのように製造禁止されているものも存在する。また、ポリカーボネートの原料である2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)も、内分泌攪乱作用を有すると疑われている化学物質65種中に含まれている。
【0003】
ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートは、食器や玩具、医療用機器部品等人体又は体液と直接接触する用途、又は、身の回りで広く使用されている光デイスクや携帯電話をはじめとした通信・OA・電気・電子・機械部品、建築、農業分野等に幅広く、大量に使用されている。このように幅広い分野で大量に使用されているポリカーボネートが、一部の消費者の誤使用や予想を超えた過酷な条件で使用された場合、例えば、長期間にわたり高温多湿下で使用されたり、強アルカリ性溶液に長期間接触させた場合、ポリカーボネートの分解が起こり、ビスフェノールAが遊離することがある。実際、湖沼や河川からごく微量のビスフェノールAが検出されたという報告も散見される。
【0004】
ビスフェノール類は、女性ホルモンであるエストロゲンの疑似ホルモンとしてエストロゲン受容体に結合し、遺伝子を発現させる等、弱いエストロゲン作用を示すことが知られている。エストロゲン類似作用機構はまだ完全に解明されていないが、エストロゲン活性の高い、すなわち環境ホルモン性が高いビスフェノール類が人体に取り込まれてしまう機会の多い製品に使用することは好ましくない場合がある。従って、現在大量に使用されているビスフェノールAからのポリカーボネートの基本特性をできるだけ保持し、かつビスフェノールAよりエストロゲン活性の小さいビスフェノールを原料とし、環境問題に対応したポリカーボネートの開発が求められている。
【0005】
また、一方では、エストロゲン作用を持つビスフェノール類の化学構造は多種多様であるため、化学構造からエストロゲン作用の大小を予測することは難しい。
そこで、迅速にエストロゲン活性を予測する方法として、計算化学の手法を応用して定量的構造活性相関(QSAR)を用いて、計算によって疎水性パラメータ(LogP)やエストロゲン受容体との結合自由エネルギーを求め、エストロゲン作用を予測する方法等が検討されている。しかしながら、エストロゲン作用の小さいビスフェノール類を見出すためには、QSARと実際のin vitroやin vivoでの試験結果との相関性が確認できるものを選定しなければならず、従来のQSARと実際の試験結果との相関性がかならずしも満足行くものではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、万一、ポリカーボネートが高温多湿や強アルカリ性物質との接触等の過酷な条件で使用されたり、リサイクル使用による厳しい熱履歴によって、ビスフェノール又は他の構成成分が遊離しても、環境ホルモン性を低く抑えることができるように、ビスフェノールAよりエストロゲン作用の小さいビスフェノールを原料として製造し、かつ熱的性質に優れたポリカーボネート及びその製法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題を解決すべく、エストロゲン作用の迅速かつ最適試験方法を選定した上で、多数のビスフェノールのエストロゲン作用について検討した結果、特定のビスフェノールはエストロゲン作用がビスフェノールAより小さく、得られたポリカーボネートは熱的性質に優れていることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、絶対ハードネス(η)が4.10<η<4.80で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.10<χ<4.80の範囲にあるビスフェノール類のうち、絶対ハードネス(η)が4.53<η<4.68で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.19<χ<4.30であるものを除いたビスフェノール類と、炭酸エステル形成化合物とを反応させてなるポリカーボネートおよびその製造法を提供するものである。
【0009】
【発明の実施形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に関わるポリカーボネートは、ビスフェノール類と炭酸エステル形成化合物を原料とし、公知の方法、例えばビスフェノール類とホスゲンとの直接反応(ホスゲン法)、又はビスフェノール類とビスアリールカーボネートとのエステル交換反応(エステル交換法)等の方法で製造されるが、ビスフェノール類の反応性を考慮した場合、ホスゲン法の方が好ましい。
【0010】
前者のホスゲン法においては、通常酸結合剤および溶媒の存在下において、本発明におけるビスフェノール類とホスゲンを反応させる。酸結合剤としては、例えばピリジンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物の水溶液等が用いられ、また溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、キシレン等が用いられる。さらに、縮重合反応を促進するために、トリエチルアミンのような第三級アミン触媒および第四級アンモニウム塩等反応促進剤を、また重合度調節には、フェノール、p−t−ブチルフェノール等一官能基化合物を分子量調節剤として加える。さらに、所望に応じ亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイト等の酸化防止剤や分岐化剤を少量添加してもよい。反応は通常0〜150℃、好ましくは5〜40℃の範囲とするのが適当である。反応時間は反応温度によって左右されるが、通常0.5分〜10時間、好ましくは1分〜2時間である。また、反応中は、反応系のpHを10以上に保持することが望ましい。
【0011】
一方、後者のエステル交換法においては、本発明における前記ビスフェノール類とビスアリールカーボネートとを混合し、減圧下で高温において反応させる。この時、p−t−ブチルフェノール等一官能基化合物を分子量調節剤として加えてもよい。反応は通常150〜350℃、好ましくは200〜300℃の範囲の温度において行われ、また減圧度は最終で好ましくは1mmHg以下にして、エステル交換反応により副生した該ビスアリールカーボネートから由来するフェノール類を系外へ留去させる。反応時間は反応温度や減圧度等によって左右されるが、通常1〜10時間程度である。反応は窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、また、所望に応じ、酸化防止剤や分岐化剤を添加して反応を行ってもよい。
【0012】
本発明における絶対ハードネス(η)と絶対電気陰性度(χ)は、下記に示される式(1)及び式(2)で表される。
絶対ハードネス η = (εLUMO − εHOMO )/2 (1)
絶対電気陰性度 χ =−(εLUMO + εHOMO )/2 (2)
εLUMO:LUMO(lowest unoccupied molecularorbital,最低空分子軌道)の電子エネルギー。
εHOMO:HOMO(highest occupied molecular orbital,最高被占分子軌道)の電子エネルギー。
実際の計算手法としては、ビスフェノール類の構造をモンテカルロ法によりコンホメーションを発生させ、いくつかの安定構造の中から最安定化構造を得た。その最安定化構造をAM1ハミルトニアンを用いた半経験的分子軌道法により計算し、εLUMO及びεHOMOを求め、式(1)及び式(2)にそれらの値を代入して様々なビスフェノール類の絶対ハードネス(η)と絶対電気陰性度(χ)を求めた。
【0013】
本発明において、計算で求めた絶対ハードネス(η)と絶対電気陰性度(χ)と実際のエストロゲン活性との相関性については、MCF−7ヒト乳ガン細胞増殖試験を用いた倍加時間を基準とするホルモン活性評価で、ビスフェノールAの倍加時間をエストロゲン活性指数100とした場合に、対象となるビスフェノールのエストロゲン活性指数の値で評価したものと比較して高い相関があるここを見出した。本発明では、エストロゲン活性指数が95以下のものが環境ホルモン性が低いビスフェノールとした。
【0014】
本発明において、エストロゲン活性指数95を越えて、エストロゲン活性がビスフェノールAと変わらないか、或いはそれ以上の活性を示すビスフェノール類が有する絶対ハードネス(η)と絶対電気陰性度(χ)は、絶対ハードネス(η)が4.53<η<4.68で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.19<χ<4.30の領域に集中することが判明した。すなわち、絶対ハードネス(η)が4.10<η<4.80で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.10<χ<4.80の範囲にあるビスフェノール類のうち、絶対ハードネス(η)が4.53<η<4.68で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.19<χ<4.30である領域を示すビスフェノール以外のビスフェノールを選択することにより、選択したビスフェノール類と炭酸エステル形成化合物と反応させて得られるポリカーボネートは、例え想定外の使用状態でポリカーボネートが分解し、ビスフェノール類が析出したとしても、エストロゲン活性が低いため人体や環境に与える影響が少ないことを示す。また、さらに上記で選択されたビスフェノール類の内、絶対ハードネス(χ)が4.80以下であるビスフェノール類であることが、エストロゲン活性以外の影響を考慮した場合、好ましい。
【0015】
本発明のポリカーボネート原料のビスフェノール類は、絶対ハードネス(η)が4.10<η<4.80で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.10<χ<4.80の範囲にあるビスフェノール類のうち、絶対ハードネス(η)が4.53<η<4.68で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.19<χ<4.30である領域以外のビスフェノールであり、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチル−6−メチルフェニル)−2−メチルプロパン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、α,ω−ビス[3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらのビスフェノールは、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0016】
本発明のポリカーボネートの原料の一つである炭酸エステル形成化合物としては、例えばホスゲンや、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等のビスアリルカーボネートが挙げられる。これらの化合物は2種類以上併用することも可能である。
【0017】
本発明中に使用してもよい分子量調節剤としては一価フェノールが好ましいが、少なくとも現時点で環境省の環境ホルモン戦略計画SPEED’98中に述べられている、外因性内分泌かく乱化学物質として内分泌かく乱作用を有すると疑われる化学物質に列記されている化合物を分子量調節剤として用いることは好ましくない。現時点ではアルキルフェノール(炭素数が5〜9のもの)、ノニルフェノール、4−オクチルフェノール、ペンタクロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール等が列記されている。そのため、現時点で環境ホルモンの疑いから除外されているフェノールや炭素数が1〜4のアルキルフェノール類;炭素数が1〜4のヒドロキシ安息香酸アルキルエステル;炭素数が1〜4のアルキルオキシフェノール類を分子量調節剤として使用することが好ましい。中でも、長年の使用実績からフェノールとp−t−ブチルフェノールが好ましい。
【0018】
本発明においてホスゲン法を採用する場合に、ホスゲン吹き込み終了後に使用される重合触媒としては、3級アミンが使用され、具体的には、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジエチルアミノピリジン等がある。これらの内トリエチルアミンが好ましい。この3級アミンは、使用される全ビスフェノール類に対して、一般に0.0005〜10mol%使用されることが好ましい。
【0019】
本発明におけるホスゲン法を採用する場合は、過剰のホスゲンと絶対ハードネス(η)が4.53<η<4.68で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.19<χ<4.30である領域以外のビスフェノールを反応させる方法により反応性をより向上させることができる。
【0020】
これらの反応で合成されたポリカーボネート重合体は、押出成形、射出成形、ブロ−成形、圧縮成形、湿式成形等公知の成形法で容易に成形できるとともに、必要な強度を保つには極限粘度が0.2〜2.0dl/gの範囲であることが好ましい。
【0021】
本発明のポリカーボネート用の原材料中には、製造工程で除去できないような絶対ハードネス(η)が4.53<η<4.68で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.19<χ<4.30である領域に含まれる物質が不純物として混入しているものは好ましくなく、事前に十分精製された原材料を使用することが好ましい。
【0022】
【実施例】
次に実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、ビスフェノール類のエストロゲン活性指数の評価と絶対ハードネス(η)、絶対電気陰性度(χ)の計算は次の通り行った。
【0023】
<絶対ハードネス(η)と絶対電気陰性度(χ)の計算>
絶対ハードネス(η)と絶対電気陰性度(χ)は密度汎関数理論から導かれ、下記式(3)と式(4)のようになることが解っている。
χ=−μ=(∂E/∂N)v(r)=(Ip+Ea)/2 (3)
η=1/2(∂μ/∂N)v(r)=1/2(∂2E/∂2N)=(Ip−Ea)/2 (4)
ここで、Eは全電子エネルギー、Nは系の電子数、μは系の化学ポテンシャルであり、イオン化ポテンシャル及び電子親和力をそれぞれIp及びEaとしたとき、式(3)及び式(4)で示したように近似される。従って、IpとEaは分子の最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)の電子軌道エネルギーεLUMO及びεHOMOで表されるので、式(3)と式(4)は、前述した式(1)及び式(2)で近似される。
絶対ハードネス η = (εLUMO − εHOMO )/2 (1)
絶対電気陰性度 χ =−(εLUMO + εHOMO )/2 (2)
実際の計算手法としては、ビスフェノール類の構造をモンテカルロ法によりコンホメーションを発生させ(配座発生conformer distributionというコマンドを使い、MM2(力場計算法)を使って計算した)、いくつかの安定構造の中から最安定化構造を得た。
その最安定化構造をAM1ハミルトニアンを用いた半経験的分子軌道法によりさらに最適化計算し、εLUMO及びεHOMOを求め、式(1)及び式(2)にそれらの値を代入して様々なビスフェノール類の絶対ハードネス(η)と絶対電気陰性度(χ)を求めた。ソフトウェアは、TITAN(Wavefunction社)を使用した。
代表的なビスフェノール類およびエストロゲン活性指標物質の絶対ハードネス(η)と絶対電気陰性度(χ)計算結果を表1に示す。また、表1の値を絶対ハードネス(η)をY軸に、絶対電気陰性度(χ)をX軸にした散布図上に表したものを図1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
<エストロゲン活性指数>
エストロゲン作用の大小を評価できる主な試験方法としては、次の五つの方法がある。
a)マウスやラットを用いたエストロゲン曝露後の子宮重量の測定
b)エストロゲン感受性ヒト乳ガン細胞を用いたエストロゲン増殖試験
c)エストロゲン受容体結合アッセイ
d)酵母tow−hybridアッセイ
e)ホタルルシフェラーゼアッセイ
前記五つの試験法には長所と短所を持っている。特に、b)以外の方法は、ホルモン類似作用と拮抗作用を区別できないという欠点を持っているので、本発明ではb)の方法で試験を行った。
【0026】
<エストロゲン感受性ヒト乳ガン細胞を用いたエストロゲン増殖試験>
フェノールレッド不含7.5%FCS/RPMI1640液体培地(重曹、ペニシリンと硫酸ストレプトマイシンを含む)中で培養して立ち上げたMCF−7細胞の一定量を24穴培養プレートに巻き込み、5%CO2気流下に37℃で培養を開始した。4日後、4穴中の細胞をEDTA−トリプシン処理して集め、遠心、洗浄処理、遠心により細胞ペレットを得る。次に、細胞ペレットを培地で全量500μlとして、トリパンブルー染色し、顕微鏡で100倍に拡大し、血球計算板を用いて細胞数をカウントした(常法に従う)。4〜6検体の測定値を平均し、これをコントロール値とした。その後、他の24穴培養プレートの培地を除き、除いた量と同量の新鮮なフェノールレッド不含ストリップド5%FCS/RPMI1640液体培地を加え、培地交換した。3日後に培地交換し、1×10− 7Mに調整した試験試薬の4μlを24穴培養プレートの各々の穴に加えた。さらに3日後、同様な方法により、コントロール、試験試薬を加えた穴の細胞数を先と同様な方法でカウントした。1日後、フェノールレッド不含ストリップド5%FCS/RPMI1640液体培地を交換した。さらに1日後、試験試薬4μlを添加した。以後、細胞数カウント→培地交換→試験試薬添加を繰り返し、試験をおこなった。
【0027】
前記、エストロゲン感受性ヒト乳ガン細胞を用いたエストロゲン増殖試験で得られた結果を次の通り整理した。すなわち、対数増殖期の細胞が2倍に増える時間を倍加時間D.T.(doubling time)と定義し、試験化学物質が、もしエストロゲン様作用を持てばその細胞の増殖速度に違いがでて、その差を比較することによりエストロゲン活性の大きさを判定することができるので、細胞の対数増殖期の時間t1 とt2 においてカウントした細胞数をそれぞれN1 とN2 とすると、倍加時間D.T.は式(A)で示される。
D.T.=(t2 −t1 )/3.32log(N2 /N1 ) (A)
ビスフェノールAの倍加時間xのエストロゲン活性指数を100とした場合、エストロゲン活性の異なるビスフェノールの倍加時間yのエストロゲン活性指数zは、式(B)で示される。
z=x/y×100 (B)
式(B)から、ビスフェノールAより倍加時間の長いビスフェノールのエストロゲン活性指数は、100より小さく、細胞増殖速度がビスフェノールAより遅く、エストロゲン作用が小さいことがわかる。
【0028】
【実施例1】
ガラス製2リットルセパラブルフラスコに、10%(w/v)の水酸化ナトリウム水溶液を500ml入れ、窒素ガスでフラスコ内を無酸素状態にした後、絶対ハードネス(η)が4.5014と絶対電気陰性度(χ)が4.2728であったビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン(本州化学工業(株)製BisP−DP:以下BPBP、0.4mol)141gを加え溶解した。これにメチレンクロライド500mlを加え、15℃に保ちながら撹拌しつつ、ホスゲン51gを50分かけて溶液内に添加した。
ホスゲン添加終了後、フェノールを1.3g加え、さらに10%(w/v)の水酸化ナトリウム水溶液50ml加え1分間激しく撹拌して、10分後、0.2mlのトリエチルアミン(TEA)を加え、約1時間撹拌し重合させた。
得られた重合液を水相と有機相に分離し、有機相を塩酸で中和し、洗液のpHが中性になるまで水洗を繰り返した。得られた重合樹脂液を、60℃に保った温水に滴下し、溶媒を蒸発除去しながら重合物を粒状化した。得られた白色粉末状重合物を濾過後、105℃、8時間乾燥して粉末状樹脂を得た
この重合体は、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の温度20℃におけるハギンズ定数0.45として得られた極限粘度[η]は0.43dl/gであった。
得られた上記重合体を赤外線吸収スペクトルより分析した結果、1770cm−1付近の位置にカルボニル基による吸収が認められ、カーボネート結合を有することが確認された。また、(株)島津製作所製熱分析装置(DSC−50)を使用し、窒素雰囲気下で測定されたガラス転移温度とMCF−7細胞増殖試験によるエストロゲン活性指数測定結果を表2に示した。
【0029】
【実施例2】
BPBPの代わりに、ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン(本州化学工業(株)製BisOTBP−A:以下BOTBA、0.4mol)136g用いた以外は、実施例1と同様に行った。
ビスフェノールの絶対ハードネス、絶対電気陰性度、エストロゲン活性指数及びポリカーボネートの極限粘度、ガラス転位温度の測定結果を表2に示した。
【0030】
【実施例3】
BPAPの代わりに、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製BCF:以下BCFL、0.2mol)75.6gと1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチル−6−メチルフェニル)−2−メチルプロパン(本州化学工業(株)製Bis3M6B−IBTD:以下MBIBTD、0.2mol)76.4gを用い、フェノールの代わりにp−t−ブチルフェノール(以下PTBP)0.4gを用いた以外は実施例1と同様に行った。
ビスフェノールの絶対ハードネス、絶対電気陰性度、エストロゲン活性指数及びポリカーボネートの極限粘度、ガラス転位温度の測定結果を表2に示した。
【0031】
【実施例4】
BPBP141gの代わりに、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(本州化学工業p,p’−BPF(株)製:以下BP−F、0.2mol)40gと9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製BPF:以下BPFL、0.2mol)70gとジメチルシロキサンの繰り返し単位が平均7のα,ω−ビス[3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン(信越化学工業(株)製X−22−1876:以下Si、0.01mol)8.5gを用い、フェノールの代わりにPTBPを2g用いた以外は実施例1と同様に行った。
ビスフェノールの絶対ハードネス、絶対電気陰性度、エストロゲン活性指数及びポリカーボネートの極限粘度、ガラス転位温度の測定結果を表2に示した。
【0032】
【表2】
【0033】
【比較例1】
BPBPの代わりに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(三菱化学(株)製:以下BPA、0.4mol)91.2g用いた以外は、実施例1と同様に行った。
ビスフェノールの絶対ハードネス、絶対電気陰性度、エストロゲン活性指数及びポリカーボネートの極限粘度、ガラス転位温度の測定結果を表3に示した。
【0034】
【比較例2】
BPBPの代わりに、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(田岡化学工業(株)製W−SP:以下BPCH、0.4mol)107.2g用いた以外は、実施例1と同様に行った。
ビスフェノールの絶対ハードネス、絶対電気陰性度、エストロゲン活性指数及びポリカーボネートの極限粘度、ガラス転位温度の測定結果を表3に示した。
【0035】
【比較例3】
BPBPの代わりに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン(本州化学工業(株)製MIBK−Bis:以下BPMIBK、0.4mol)108g用いた以外は、実施例1と同様に行った。
ビスフェノールの絶対ハードネス、絶対電気陰性度、エストロゲン活性指数及びポリカーボネートの極限粘度、ガラス転位温度の測定結果を表3に示した。
【0036】
【表3】
【0037】
表2および表3に示した、実施例1〜4および比較例1〜3の各測定結果より、実施例1〜4の本発明のポリカーボネートは、絶対ハードネス(η)が4.10<η<4.80で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.10<χ<4.80の範囲にあるビスフェノール類のうち、絶対ハードネス(η)が4.53<η<4.68の範囲になく、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.19<χ<4.30の範囲にも含まれていない、ビスフェノール類を使用するため、エストロゲン活性が低く、MCF−7細胞を用いたエストロゲン活性はいずれのビスフェノールも95以下であった。また、熱的性質においても比較例1〜3に比して遜色はなかった。逆に比較例1〜3は原料ビスフェノールの絶対ハードネス(η)が4.53<η<4.68の範囲で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.19<χ<4.30の範囲にあることから、エストロゲン活性は高く、MCF−7細胞を用いたエストロゲン活性はいずれのビスフェノールも100以上であった。
【0038】
【発明の効果】
本発明のポリカーボネートは、従来のポリカーボネートに比して、絶対ハードネスと絶対電気陰性度が特定の領域にある、ビスフェノールを原料とすることにより、ポリカーボネート構成成分が分解により遊離しても、環境ホルモンとして作用する可能性が低くいので、低環境ホルモン性であり、かつ優れた熱的性質を保持している。故に、食器や玩具、医療用機器部品等人体又は体液と直接接触する用途、又は、身の回りで広く使用されている光デイスクや携帯電話をはじめとした通信・OA・電気・電子・機械部品等の用途にも好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】絶対ハードネス(η)をY軸に、絶対電気陰性度(χ)をX軸にした散布図。
Claims (5)
- 絶対ハードネス(η)が4.10<η<4.80で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.10<χ<4.80の範囲にあるビスフェノール類のうち、絶対ハードネス(η)が4.53<η<4.68で、かつ絶対電気陰性度(χ)が4.19<χ<4.30であるものを除いたビスフェノール類と、炭酸エステル形成化合物とを反応させてなるポリカーボネート。
- 極限粘度が0.2〜2.0dl/gである請求項1記載のポリカーボネート。
- ビスフェノール類が、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチル−6−メチルフェニル)−2−メチルプロパン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、α,ω−ビス[3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサンから選ばれた少なくとも1種のビスフェノールである請求項1記載のポリカーボネート。
- 炭酸エステル形成化合物がホスゲンまたはジフェニルカーボネートである請求項1記載のポリカーボネート。
- ホスゲンを炭酸エステル形成化合物として用いる溶液重合法による請求項1記載のポリカーボネートの製造方法。
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