JP2004009251A - 極薄超砥粒メタルボンド砥石およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【目的】比較的容易に、しかも、精度良く製造できる極薄超砥粒メタルボンド砥石およびその製造方法を提供する。
【構成】ポリ−(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルからなるバインダ−を固形分換算で3〜16重量部と、残部が超砥粒とフィラーからなる原材料を混合し、この混合後の原材料を加圧成形して得られた成形体をシート状に圧延し、このシート状成形体を金型で打ち抜いて砥石原形を成形し、この砥石原形を脱脂および焼成する。
【選択図】 図1
【構成】ポリ−(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルからなるバインダ−を固形分換算で3〜16重量部と、残部が超砥粒とフィラーからなる原材料を混合し、この混合後の原材料を加圧成形して得られた成形体をシート状に圧延し、このシート状成形体を金型で打ち抜いて砥石原形を成形し、この砥石原形を脱脂および焼成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばガラス、水晶、半導体、セラミック等の精密切断や溝入れするために使用されるダイヤモンドまたはcBN等の超砥粒を用いた極薄の超砥粒メタルボンド砥石およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばガラス、水晶、半導体、セラミック等の精密切断や溝入れには、厚さが0.5mm以下の極めて薄い超砥粒メタルボンド砥石が使用されている。厚さが0.5mm以下の極薄超砥粒メタルボンド砥石は、粉末法、スラリー法、圧延法等により製造することができる。次に、それぞれの製造方法について説明するが、砥石の原材料はそれぞれ超砥粒、金属粉、フィラー、バインダーを混合したものを用いる。超砥粒とは、ダイヤモンドやcBN(立方晶窒化ホウ素)のことである。金属粉とは、一般にメタルボンド砥石に用いられる金属粉を指し、例えばAg、Co、Cu、Fe、Ni、Sn、W等のことである。フィラーとは、上記以外に混入するバインダー以外のものを総称して指し、例えばセラミック粉、グラファイト粉、超硬合金粉、ガラス粉、無機繊維等のことである。バインダーとは、焼成前の期間、仮に形状を保持するために用いられる物質で、通常樹脂が使用される。
【0003】
粉末法は、原材料をバインダー無しで、またはバインダーとともに湿化または造粒し、これをコールドプレス用金型または焼成型に充填して加圧成形する方法である。この粉末法は、量産化、自動化するには適しているが、砥石の厚さが薄くなるにつれて原材料を均一に充填するのが難しく、厚さや組織が不均一になりやすい欠点がある。従って、極薄物や厚さ精度が高い要求には対応できず、成形できる厚さは0.3mm程度が限界とされている。厚さが0.3mm以下の砥石や精度の高い厚さ要求に対しては、厚さが0.3mm以上で焼成した砥石の平面(側面)をラッピングして厚さ調整することにより製作する。この場合、厚さ調整のためのラッピングにコストがかかり、それだけ製造コストが相対的に高くなる。
【0004】
スラリー法は、原材料をスラリー状に混合してブレードと呼ばれる刃で隙間を加減しながらキャリアテープに塗布し、乾燥後金型で打ち抜いて成形する方法である。また、近年はスピンナー等を利用して遠心力でスラリーをテープに均一に塗布する方法も用いられている。このスラリー法では、厚さが0.05mm程度の非常に薄い砥石まで製作可能であるが、スラリーの調製が難しく、また、原材料の粒径や比重の違いで偏析が生じやすい欠点がある。更に、キャリアテープの種類やスラリー粘度のバラツキ等の影響を受けるので、精度の高い厚さ要求に対しては、通常は厚めに焼成した砥石の平面(側面)をラッピングして厚さ調整する必要がある。従って、厚さ調整のためのラッピングにコストがかかり、それだけ製造コストが相対的に高くなっている。
【0005】
圧延法は、原材料を圧延ロールでシート状にした後、金型で打ち抜いて成形する方法である。この圧延法では、原材料の粒径の違いや比重の違いが有ってもほぼ均一に混合できるので偏析も生じ難い。従って、原材料の組み合わせの制限が少なく、砥石の硬度や物性を自由に設計し易い。また、厚さ精度が非常に良いことが最大の特長である。反面、厚さが薄くなると、圧延性が悪くなり生産性が低下する。また、厚さが薄くなるに従って、ロールに附着し易くなり、更にシートの強度が弱くなり亀裂を生じやすくなる欠点がある。従って、0.1mm程度と成形できる厚さに限界がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、いずれの方法も極薄超砥粒メタルボンド砥石の製造に適用するにはそれぞれ問題があった。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、比較的容易に、しかも、精度良く製造できる極薄超砥粒メタルボンド砥石およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る極薄超砥粒メタルボンド砥石は、ポリ−(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルからなるバインダ−を固形分換算で3〜16重量部と、残部が超砥粒とフィラーからなることを特徴としている。尚、(メタ)アクリル酸アルキルエステルという称し方は、メタアクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルの両方を略して称している。また、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルという称し方は、メタアクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとアクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの両方を略して称している。
【0009】
また、本発明に係る極薄超砥粒メタルボンド砥石の製造方法は、ポリ−(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルからなるバインダ−を固形分換算で3〜16重量部と、残部が超砥粒とフィラーからなる原材料を混合し、この混合後の原材料を加圧成形して得られた成形体をシート状に圧延し、このシート状成形体を金型で打ち抜いて砥石原形を成形し、この砥石原形を脱脂および焼成して製造することを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る極薄超砥粒メタルボンド砥石の製造工程を示すフローシートである。
【0011】
本発明における原材料の超砥粒、金属粉、フィラーは、一般に超砥粒メタルボンド砥石に使用されるものであればどの様なものでも可能であり、特に制限はされない。一般に超砥粒メタルボンド砥石の原材料として使用される超砥粒、金属紛、フィラーは次の通りである。超砥粒はダイヤモンドやcBNであり、金属粉は例えばAg、Co、Cu、Fe、Ni、Sn、W等であり、フィラーは例えばセラミック粉、グラファイト粉、超硬合金粉、ガラス粉、無機繊維等である。
【0012】
本発明で使用するバインダ−は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びアルキル基に水酸基を含有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルからなる共重合体である。
【0013】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜8であるメチル(メタ)アクリレ−ト、エチル(メタ)アクリレ−ト、イソプロピル(メタ)アクリレ−ト、n−ブチル(メタ)アクリレ−ト、イソブチル(メタ)アクリレ−ト、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレ−ト等が挙げられ、これらは単独で用いても良いし、2種類以上混合して用いても良い。
【0014】
前記アルキル基に水酸基を含有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−ト等が挙げられ、これらは単独で用いても良いし、2種類以上混合して用いても良い。
【0015】
また、本発明で使用するバインダ−には、圧延性の向上のため可塑剤を添加しても良い。ここで、可塑剤としては、ポリエチレングリコ−ル、アジピン酸エステル、フタル酸エステル等が挙げられる。添加量は目的とするシ−ト厚さや金属粉の組成・粒度によって決められるが5〜50重量%程度が好ましい。
【0016】
バインダー量はその成分や砥石の厚さや金属粉の組成・粒度により変化するが、その割合は3重量%未満ではバインダー量が少な過ぎてシート状にならず圧延できない。一方、割合が16重量%を超えるとバインダー量が多過ぎてシートが圧延ロールに附着して作業性が悪いので、3〜16重量%、更に好ましくは5〜12重量%程度が適量である。
【0017】
まず、超砥粒、金属粉、フィラー、バインダー等の原材料をそれぞれ計り取り、これらを混合機で均一に混合する。その時、混合時間を早めるために原材料を混合する容器を加熱しても良い。
【0018】
次に、混合後の原材料を金型に充填し、適当な大きさに金型で押し固めて厚さ10mm程度の圧延しやすい大きさの成形体を製作する。次に、この成形体を焼成後の厚さの収縮や製品の精度を考慮して所望の砥石の厚さより10〜35%厚くなるように圧延する。このシート状成形体の圧延は、図2に示すように、互いに逆方向に回転する一対の圧延ロール1,1間にシート状成形体2を通過させることにより行われるが、圧延ロール1,1で一度に目的とする厚さまで圧延するのではなく、目的とする厚さになるまで段階的に圧延を繰り返す。次に、圧延後のシート状成形体を金型で焼成時の半径方向の収縮と研削仕上げ代を考慮して打ち抜いて砥石原形を成形する。
【0019】
次に、砥石原形を脱脂炉に入れて、所定温度(350〜450℃)で所定時間(3〜5時間程度)保持することにより、バインダーを分解除去する。その時、脱脂炉内はN2、Ar等の不活性雰囲気あるいは真空雰囲気とする。このようにバインダーを分解除去することを一般に脱脂と呼ぶ。次に、脱脂後の砥石原形をカーボン型又はステンレス(金)型に詰め、それを焼成炉に入れて焼成する。焼成温度は、金属紛の組成により決定する。焼成炉内はN2、Ar等の不活性雰囲気、N2+H2、Ar+H2等の還元雰囲気あるいは真空雰囲気とする。尚、脱脂と焼成は同じ炉で同時に行っても良い。冷却後、型から焼成後の砥石原形を取り出し、研削盤で内径と外径を所望の寸法に仕上げる。更に、必要に応じて平面(側面)を研削、ラッピングやサンドブラスト、エッチング等の表面処理を施して製品とする。このように製造された本発明の極薄超砥粒メタルボンド砥石は、厚さの精度が良いので、通常は厚さ調整の目的で側面加工を必要としない。
【0020】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。尚、本発明は以下の実施例によりなんら限定されるものではない。
【0021】
メタルボンド砥石の原材料として、ブロンズ粉(Cu80%、Sn20%)、#400ダイヤモンドパウダー、バインダー(組成 イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートの共重合体 80重量%、フタル酸ジブチル 20重量%)を乳鉢に計り取り混合する。混合の割合は、ダイヤモンドパウダーは焼成後の集中度が75になるように、バインダーは全重量の5〜12%になるように計量する。その時、バインダーの割合は製造する砥石の厚さにあわせて、厚い時は多めに、薄い時は少なめに調整する。更に、圧延ロールの材質にも大きく影響されるので、附着し易い材質の場合は少なめに、附着し難い材質の場合は多めに調整する。今回は厚さ0.08mmの砥石を製作するので、全重量500gの8%、40gで行った。
【0022】
次に、混合後の原材料を金型に入れ、油圧プレスで加圧成形して厚さ約10mmの成形体を作製する。それをロール圧延機で圧延し、厚さを除々に薄くして、焼成後厚さ0.08mmになるようにシート状成形体を調整する。今回は0.097±0.003mmに圧延した。圧延後のシート状成形体をハンドプレスで外径56×内径39に打ち抜き砥石原形を成形する。次に、窒素雰囲気炉に入れて450℃で3時間保持して脱脂を行う。その後、カーボン型に詰めて窒素雰囲気730℃、1.2×107Pa(120kgf/cm2)で加圧焼成する。冷却後、型から取り出し、内径と外径を研削加工して54(外径)×0.08(厚さ)×40(内径)の寸法の砥石を作製した。尚、厚さ調整のため砥石の平面(側面)加工は行わなかったが、厚さ精度は0.08±0.005mm以内であった。
【0023】
図3は、上記実施例で製造した超砥粒メタルボンド砥石と従来の圧延法で製造した超砥粒メタルボンド砥石の破断面を400倍に拡大した電子顕微鏡写真であり、(a)は上記実施例で製造した本発明に係る超砥粒メタルボンド砥石、(b)は従来の圧延法で製造した従来例の超砥粒メタルボンド砥石を示し、それぞれ厚さ0.1mmに製造されている。この電子顕微鏡写真で明らかなように、本発明に係る超砥粒メタルボンド砥石は厚さ調整のための平面(側面)加工が行われておらず、従来例の超砥粒メタルボンド砥石は厚さ調整のための平面(側面)加工が行われていることがわかる。即ち、本発明に係る超砥粒メタルボンド砥石は厚さ調整のための平面(側面)加工を行わずとも厚さ0.1mmに製造することができ、従来例の超砥粒メタルボンド砥石は厚さ調整のための平面(側面)加工を行わなければ厚さ0.1mmに製造することができない。
【0024】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明は、ポリ−(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルからなるバインダ−を用いて圧延法で製造するため、圧延の際の圧延性が優れ、圧延中にロール附着が少なく、しかも、シート状成形体に適度な強度と柔軟性を有して亀裂が生じ難いとともに、脱脂工程においてもバインダーの分解除去が容易である。これにより、極薄超砥粒メタルボンド砥石を比較的容易に、しかも、厚さ調整のための側面加工を必要とせずに精度良く製造することができる。特に、#800(12−25μm)程度の細かい超砥粒を使用すれば、厚さが0.06mm位までの砥石を製作することが可能である。
【0025】
また、本発明は、原材料の組み合わせ制限が少ない圧延法で製造するため、材料の選定の自由度が大きくて様々な特性の砥石を製作することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る極薄超砥粒メタルボンド砥石の製造工程を示すフローシート。
【図2】ロール圧延工程を示す説明図。
【図3】(a)は本発明に係る超砥粒メタルボンド砥石を示す電子顕微鏡写真、(b)は従来の圧延法で製造した超砥粒メタルボンド砥石を示す電子顕微鏡写真。
【符号の説明】
1 圧延ロール
2 シート状成形体
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばガラス、水晶、半導体、セラミック等の精密切断や溝入れするために使用されるダイヤモンドまたはcBN等の超砥粒を用いた極薄の超砥粒メタルボンド砥石およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばガラス、水晶、半導体、セラミック等の精密切断や溝入れには、厚さが0.5mm以下の極めて薄い超砥粒メタルボンド砥石が使用されている。厚さが0.5mm以下の極薄超砥粒メタルボンド砥石は、粉末法、スラリー法、圧延法等により製造することができる。次に、それぞれの製造方法について説明するが、砥石の原材料はそれぞれ超砥粒、金属粉、フィラー、バインダーを混合したものを用いる。超砥粒とは、ダイヤモンドやcBN(立方晶窒化ホウ素)のことである。金属粉とは、一般にメタルボンド砥石に用いられる金属粉を指し、例えばAg、Co、Cu、Fe、Ni、Sn、W等のことである。フィラーとは、上記以外に混入するバインダー以外のものを総称して指し、例えばセラミック粉、グラファイト粉、超硬合金粉、ガラス粉、無機繊維等のことである。バインダーとは、焼成前の期間、仮に形状を保持するために用いられる物質で、通常樹脂が使用される。
【0003】
粉末法は、原材料をバインダー無しで、またはバインダーとともに湿化または造粒し、これをコールドプレス用金型または焼成型に充填して加圧成形する方法である。この粉末法は、量産化、自動化するには適しているが、砥石の厚さが薄くなるにつれて原材料を均一に充填するのが難しく、厚さや組織が不均一になりやすい欠点がある。従って、極薄物や厚さ精度が高い要求には対応できず、成形できる厚さは0.3mm程度が限界とされている。厚さが0.3mm以下の砥石や精度の高い厚さ要求に対しては、厚さが0.3mm以上で焼成した砥石の平面(側面)をラッピングして厚さ調整することにより製作する。この場合、厚さ調整のためのラッピングにコストがかかり、それだけ製造コストが相対的に高くなる。
【0004】
スラリー法は、原材料をスラリー状に混合してブレードと呼ばれる刃で隙間を加減しながらキャリアテープに塗布し、乾燥後金型で打ち抜いて成形する方法である。また、近年はスピンナー等を利用して遠心力でスラリーをテープに均一に塗布する方法も用いられている。このスラリー法では、厚さが0.05mm程度の非常に薄い砥石まで製作可能であるが、スラリーの調製が難しく、また、原材料の粒径や比重の違いで偏析が生じやすい欠点がある。更に、キャリアテープの種類やスラリー粘度のバラツキ等の影響を受けるので、精度の高い厚さ要求に対しては、通常は厚めに焼成した砥石の平面(側面)をラッピングして厚さ調整する必要がある。従って、厚さ調整のためのラッピングにコストがかかり、それだけ製造コストが相対的に高くなっている。
【0005】
圧延法は、原材料を圧延ロールでシート状にした後、金型で打ち抜いて成形する方法である。この圧延法では、原材料の粒径の違いや比重の違いが有ってもほぼ均一に混合できるので偏析も生じ難い。従って、原材料の組み合わせの制限が少なく、砥石の硬度や物性を自由に設計し易い。また、厚さ精度が非常に良いことが最大の特長である。反面、厚さが薄くなると、圧延性が悪くなり生産性が低下する。また、厚さが薄くなるに従って、ロールに附着し易くなり、更にシートの強度が弱くなり亀裂を生じやすくなる欠点がある。従って、0.1mm程度と成形できる厚さに限界がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、いずれの方法も極薄超砥粒メタルボンド砥石の製造に適用するにはそれぞれ問題があった。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、比較的容易に、しかも、精度良く製造できる極薄超砥粒メタルボンド砥石およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る極薄超砥粒メタルボンド砥石は、ポリ−(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルからなるバインダ−を固形分換算で3〜16重量部と、残部が超砥粒とフィラーからなることを特徴としている。尚、(メタ)アクリル酸アルキルエステルという称し方は、メタアクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルの両方を略して称している。また、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルという称し方は、メタアクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとアクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの両方を略して称している。
【0009】
また、本発明に係る極薄超砥粒メタルボンド砥石の製造方法は、ポリ−(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルからなるバインダ−を固形分換算で3〜16重量部と、残部が超砥粒とフィラーからなる原材料を混合し、この混合後の原材料を加圧成形して得られた成形体をシート状に圧延し、このシート状成形体を金型で打ち抜いて砥石原形を成形し、この砥石原形を脱脂および焼成して製造することを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る極薄超砥粒メタルボンド砥石の製造工程を示すフローシートである。
【0011】
本発明における原材料の超砥粒、金属粉、フィラーは、一般に超砥粒メタルボンド砥石に使用されるものであればどの様なものでも可能であり、特に制限はされない。一般に超砥粒メタルボンド砥石の原材料として使用される超砥粒、金属紛、フィラーは次の通りである。超砥粒はダイヤモンドやcBNであり、金属粉は例えばAg、Co、Cu、Fe、Ni、Sn、W等であり、フィラーは例えばセラミック粉、グラファイト粉、超硬合金粉、ガラス粉、無機繊維等である。
【0012】
本発明で使用するバインダ−は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びアルキル基に水酸基を含有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルからなる共重合体である。
【0013】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜8であるメチル(メタ)アクリレ−ト、エチル(メタ)アクリレ−ト、イソプロピル(メタ)アクリレ−ト、n−ブチル(メタ)アクリレ−ト、イソブチル(メタ)アクリレ−ト、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレ−ト等が挙げられ、これらは単独で用いても良いし、2種類以上混合して用いても良い。
【0014】
前記アルキル基に水酸基を含有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−ト等が挙げられ、これらは単独で用いても良いし、2種類以上混合して用いても良い。
【0015】
また、本発明で使用するバインダ−には、圧延性の向上のため可塑剤を添加しても良い。ここで、可塑剤としては、ポリエチレングリコ−ル、アジピン酸エステル、フタル酸エステル等が挙げられる。添加量は目的とするシ−ト厚さや金属粉の組成・粒度によって決められるが5〜50重量%程度が好ましい。
【0016】
バインダー量はその成分や砥石の厚さや金属粉の組成・粒度により変化するが、その割合は3重量%未満ではバインダー量が少な過ぎてシート状にならず圧延できない。一方、割合が16重量%を超えるとバインダー量が多過ぎてシートが圧延ロールに附着して作業性が悪いので、3〜16重量%、更に好ましくは5〜12重量%程度が適量である。
【0017】
まず、超砥粒、金属粉、フィラー、バインダー等の原材料をそれぞれ計り取り、これらを混合機で均一に混合する。その時、混合時間を早めるために原材料を混合する容器を加熱しても良い。
【0018】
次に、混合後の原材料を金型に充填し、適当な大きさに金型で押し固めて厚さ10mm程度の圧延しやすい大きさの成形体を製作する。次に、この成形体を焼成後の厚さの収縮や製品の精度を考慮して所望の砥石の厚さより10〜35%厚くなるように圧延する。このシート状成形体の圧延は、図2に示すように、互いに逆方向に回転する一対の圧延ロール1,1間にシート状成形体2を通過させることにより行われるが、圧延ロール1,1で一度に目的とする厚さまで圧延するのではなく、目的とする厚さになるまで段階的に圧延を繰り返す。次に、圧延後のシート状成形体を金型で焼成時の半径方向の収縮と研削仕上げ代を考慮して打ち抜いて砥石原形を成形する。
【0019】
次に、砥石原形を脱脂炉に入れて、所定温度(350〜450℃)で所定時間(3〜5時間程度)保持することにより、バインダーを分解除去する。その時、脱脂炉内はN2、Ar等の不活性雰囲気あるいは真空雰囲気とする。このようにバインダーを分解除去することを一般に脱脂と呼ぶ。次に、脱脂後の砥石原形をカーボン型又はステンレス(金)型に詰め、それを焼成炉に入れて焼成する。焼成温度は、金属紛の組成により決定する。焼成炉内はN2、Ar等の不活性雰囲気、N2+H2、Ar+H2等の還元雰囲気あるいは真空雰囲気とする。尚、脱脂と焼成は同じ炉で同時に行っても良い。冷却後、型から焼成後の砥石原形を取り出し、研削盤で内径と外径を所望の寸法に仕上げる。更に、必要に応じて平面(側面)を研削、ラッピングやサンドブラスト、エッチング等の表面処理を施して製品とする。このように製造された本発明の極薄超砥粒メタルボンド砥石は、厚さの精度が良いので、通常は厚さ調整の目的で側面加工を必要としない。
【0020】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。尚、本発明は以下の実施例によりなんら限定されるものではない。
【0021】
メタルボンド砥石の原材料として、ブロンズ粉(Cu80%、Sn20%)、#400ダイヤモンドパウダー、バインダー(組成 イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートの共重合体 80重量%、フタル酸ジブチル 20重量%)を乳鉢に計り取り混合する。混合の割合は、ダイヤモンドパウダーは焼成後の集中度が75になるように、バインダーは全重量の5〜12%になるように計量する。その時、バインダーの割合は製造する砥石の厚さにあわせて、厚い時は多めに、薄い時は少なめに調整する。更に、圧延ロールの材質にも大きく影響されるので、附着し易い材質の場合は少なめに、附着し難い材質の場合は多めに調整する。今回は厚さ0.08mmの砥石を製作するので、全重量500gの8%、40gで行った。
【0022】
次に、混合後の原材料を金型に入れ、油圧プレスで加圧成形して厚さ約10mmの成形体を作製する。それをロール圧延機で圧延し、厚さを除々に薄くして、焼成後厚さ0.08mmになるようにシート状成形体を調整する。今回は0.097±0.003mmに圧延した。圧延後のシート状成形体をハンドプレスで外径56×内径39に打ち抜き砥石原形を成形する。次に、窒素雰囲気炉に入れて450℃で3時間保持して脱脂を行う。その後、カーボン型に詰めて窒素雰囲気730℃、1.2×107Pa(120kgf/cm2)で加圧焼成する。冷却後、型から取り出し、内径と外径を研削加工して54(外径)×0.08(厚さ)×40(内径)の寸法の砥石を作製した。尚、厚さ調整のため砥石の平面(側面)加工は行わなかったが、厚さ精度は0.08±0.005mm以内であった。
【0023】
図3は、上記実施例で製造した超砥粒メタルボンド砥石と従来の圧延法で製造した超砥粒メタルボンド砥石の破断面を400倍に拡大した電子顕微鏡写真であり、(a)は上記実施例で製造した本発明に係る超砥粒メタルボンド砥石、(b)は従来の圧延法で製造した従来例の超砥粒メタルボンド砥石を示し、それぞれ厚さ0.1mmに製造されている。この電子顕微鏡写真で明らかなように、本発明に係る超砥粒メタルボンド砥石は厚さ調整のための平面(側面)加工が行われておらず、従来例の超砥粒メタルボンド砥石は厚さ調整のための平面(側面)加工が行われていることがわかる。即ち、本発明に係る超砥粒メタルボンド砥石は厚さ調整のための平面(側面)加工を行わずとも厚さ0.1mmに製造することができ、従来例の超砥粒メタルボンド砥石は厚さ調整のための平面(側面)加工を行わなければ厚さ0.1mmに製造することができない。
【0024】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明は、ポリ−(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルからなるバインダ−を用いて圧延法で製造するため、圧延の際の圧延性が優れ、圧延中にロール附着が少なく、しかも、シート状成形体に適度な強度と柔軟性を有して亀裂が生じ難いとともに、脱脂工程においてもバインダーの分解除去が容易である。これにより、極薄超砥粒メタルボンド砥石を比較的容易に、しかも、厚さ調整のための側面加工を必要とせずに精度良く製造することができる。特に、#800(12−25μm)程度の細かい超砥粒を使用すれば、厚さが0.06mm位までの砥石を製作することが可能である。
【0025】
また、本発明は、原材料の組み合わせ制限が少ない圧延法で製造するため、材料の選定の自由度が大きくて様々な特性の砥石を製作することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る極薄超砥粒メタルボンド砥石の製造工程を示すフローシート。
【図2】ロール圧延工程を示す説明図。
【図3】(a)は本発明に係る超砥粒メタルボンド砥石を示す電子顕微鏡写真、(b)は従来の圧延法で製造した超砥粒メタルボンド砥石を示す電子顕微鏡写真。
【符号の説明】
1 圧延ロール
2 シート状成形体
Claims (3)
- ポリ−(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルからなるバインダ−を固形分換算で3〜16重量部と、残部が超砥粒とフィラーからなることを特徴とする極薄超砥粒メタルボンド砥石。
- 砥石外径がφ50〜205、厚さが0.05〜0.5mmである請求項1記載の極薄超砥粒メタルボンド砥石。
- ポリ−(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルからなるバインダ−を固形分換算で3〜16重量部と、残部が超砥粒とフィラーからなる原材料を混合し、この混合後の原材料を加圧成形して得られた成形体をシート状に圧延し、このシート状成形体を金型で打ち抜いて砥石原形を成形し、この砥石原形を脱脂および焼成して製造することを特徴とする極薄超砥粒メタルボンド砥石の製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002168811A JP2004009251A (ja) | 2002-06-10 | 2002-06-10 | 極薄超砥粒メタルボンド砥石およびその製造方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014128878A (ja) * | 2014-03-04 | 2014-07-10 | Tokyo Seimitsu Co Ltd | 薄刃ブレード |
US11383350B2 (en) | 2017-02-28 | 2022-07-12 | 3M Innovative Properties Company | Metal bond abrasive articles and methods of making metal bond abrasive articles |
-
2002
- 2002-06-10 JP JP2002168811A patent/JP2004009251A/ja not_active Withdrawn
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