JP2004006483A - 半導体の製造方法及びそれを用いて形成した半導体素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】発光波長が1.3μm帯で、かつ、従来と比較してN組成が大きいGaInNAs系混晶半導体層を有する半導体の製造方法及びそれを用いて形成した半導体素子を提供するものである。
【解決手段】本発明に係る半導体の製造方法は、III−V族半導体基板21上に、Ga、In、N、及びAsの元素を主成分とする混晶半導体からなるGaInNAs系混晶半導体層24を少なくとも1層有する半導体を製造する方法であって、有機金属気相成長法により上記GaInNAs系混晶半導体層24を結晶成長させる際、Ga原料11、In原料12、N原料13、及びAs原料14を供給する第1供給工程、及びGa原料11、In原料12、及びN原料13を供給する第2供給工程を併用するものである。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明に係る半導体の製造方法は、III−V族半導体基板21上に、Ga、In、N、及びAsの元素を主成分とする混晶半導体からなるGaInNAs系混晶半導体層24を少なくとも1層有する半導体を製造する方法であって、有機金属気相成長法により上記GaInNAs系混晶半導体層24を結晶成長させる際、Ga原料11、In原料12、N原料13、及びAs原料14を供給する第1供給工程、及びGa原料11、In原料12、及びN原料13を供給する第2供給工程を併用するものである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体の製造方法及びそれを用いて形成した半導体素子に係り、特に、Ga、In、N、及びAsの元素を主成分とする混晶半導体からなるGaInNAs系混晶半導体層を少なくとも1層有する半導体の製造方法及びそれを用いて形成した半導体素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、GaInNAsと呼ばれる、Ga、In、N、及びAsの4つの元素を主成分とする4元混晶半導体が注目を集めている。GaInNAs系混晶半導体は、In組成及びN組成を適切な値に調整することで、石英系のシングルモード光ファイバにおいて波長分散値が最小となる波長1.3μm帯の発光素子へと応用することができ、大容量で、高速な光通信を実現するための次世代のデバイスとして期待されている。
【0003】
発光波長1.3μmを実現できる半導体として、他にInP(インジウム燐)系混晶半導体が挙げられる。このInPについても研究が行われているが、InP系混晶半導体と一般的によく用いられているGaAs基板とでは、格子定数が大きく異なるため、InP系混晶半導体をGaAs基板上に形成すると、格子歪みが大きくなってしまう。このため、InP系混晶半導体は、格子整合性を考慮して、高コストなInP基板上に形成しなければならない。
【0004】
これに対して、GaInNAs系混晶半導体は、20〜30%(mol%)程度のIn組成で、GaAs基板に対する格子歪みが比較的小さくなり、発光波長1.3μmを得ることができるため、InP基板に比べ低コストなGaAs基板を用いることができ、InP系混晶半導体に比べて安価にデバイスを供給することが可能である。
【0005】
また、GaInNAs系混晶半導体は、面発光レーザへの応用も期待されている。GaInNAs系混晶半導体を用いた面発光レーザは、GaInNAs系混晶半導体で構成される活性層の上下面にGaAs及びAlAsで構成される多層反射膜を形成・配置し、垂直共振器を構成することで、実現される。しかしながら、InP系混晶半導体においては、InP系混晶半導体で構成される活性層の上下面に形成・配置される多層反射膜を形成する適当な材料がないことから、面発光レーザの実現はほぼ不可能といってよい。
【0006】
また、近藤らのバンドラインナップの計算(Jpn.J.Appl.Phys.35(1996) p1273−1275参照)では、GaAs基板上にGaAsよりバンドギャップの大きいクラッド層を形成することで、伝導帯のバンド不連続が大きくなることから、GaInNAs系混晶半導体を用いた発光素子は、温度変化に対する特性の揺らぎが小さく、通常の使用においてはベルチェ素子等の冷却器を必要としなくなる。このため、デバイス全体としての低コスト化が可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように、GaInNAs系混晶半導体は、InP系混晶半導体と比較して様々な特長を有しているものの、現状では以下に述べるような問題点を有している。
【0008】
GaInNAs系混晶半導体は、In組成が20〜40%(mol%)、N組成が1〜2%(mol%)程度で波長1.3μmの発光が得られる。ここで、波長1.3μm帯で波長分散値は最小となるものの、損失が最小となるのは波長1.55μmであるため、1.3μm帯の内、損失がより少ない長波長のものが好ましい。長波長化を達成するには、In組成及びN組成を大きくすればよいことが明らかになっている。しかし、GaInNAs系混晶半導体においてIn組成が大きすぎると、格子歪みが増大し、GaAs基板上への成長が困難となる。そのため、わずかな量で長波長化が可能なNの組成を大きくすることが試みられているが、GaInNAs系混晶半導体は非平衡系で成長するためNの取込効率が低く、また、N組成を大きくすることが困難であるという問題を有していた。
【0009】
この間題を解決する方法として、As原料の供給量に対してN原料の供給量を著しく増加させて、Nの低い取込効率を補う方法が一般的である。しかし、As原料の供給量を保ったままN原料の供給量を増やす方法は、N原料の供給量が多すぎて非現実的である。逆に、N原料の供給量を保ったままAs原料の供給量を減らすと、III−V族混晶半導体のV族組成の内、0.9以上の割合を占めるAs元素の原料供給量が著しく少なくなり、GaInNAs系混晶半導体の結晶品質が低下してしまう。この方法では、As原料の供給量がN原料の供給量の1/100以下となってしまうことから、ごくわずかな原料供給量の変化によって、成長雰囲気での原料比率が著しく変化してしまい、組成の正確な制御ができなくなる上に、スループットの低下も引き起こすという問題を有していた。
【0010】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、発光波長が1.3μm帯で、かつ、従来と比較してN組成が大きいGaInNAs系混晶半導体層を有する半導体の製造方法及びそれを用いて形成した半導体素子を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく本発明に係る半導体の製造方法は、III−V族半導体基板上に、Ga、In、N、及びAsの元素を主成分とする混晶半導体からなるGaInNAs系混晶半導体層を少なくとも1層有する半導体の製造方法において、有機金属気相成長法により上記GaInNAs系混晶半導体層を結晶成長させる際、Ga原料、In原料、N原料、及びAs原料を供給する第1供給工程、及びGa原料、In原料、及びN原料を供給する第2供給工程を併用するものである。
【0012】
具体的には、請求項2に示すように、上記GaInNAs系混晶半導体層の結晶成長プロセスが、第1供給工程の後に第2供給工程を行うというステップを含むものである。また、請求項3に示すように、上記結晶成長プロセスが、上記ステップを2回以上繰り返してなるものである。
【0013】
このように、第1供給工程と第2供給工程とを交互に繰り返すことにより、GaInNAs系混晶半導体層が、時間平均として低As原料比で形成した層となり、発光波長は1.3μm帯であり、かつ、従来と比較してN組成が大きなGaInNAs系混晶半導体層を形成することができる。
【0014】
また、請求項4に示すように、N原料として、モノメチルヒドラジン、1,1−ジメチルヒドラジン、1,2−ジメチルヒドラジン、ターシャリブチルアミン、ターシャリブチルヒドラジン、又はアンモニアの内の少なくとも一種を含んだガスを供給するものである。請求項5に示すように、As原料として、アルシン、ターシャリブチルアルシン、又はトリメチル砒素の内の少なくとも一種を含んだガスを供給するものである。
【0015】
一方、本発明に係る半導体素子は、発光層を有する半導体素子であり、少なくとも発光層を、前述した半導体の製造方法を用いたGaInNAs系混晶半導体層で形成したものである。
【0016】
これによって、III−V族半導体基板上に、発光波長は1.3μm帯であり、かつ、従来と比較してN組成が大きなGaInNAs系混晶半導体層を有する半導体素子を得ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適一実施の形態を添付図面に基いて説明する。
【0018】
第1の実施の形態に係る半導体の製造方法の、原料供給シーケンスを図1に示す。
【0019】
本実施の形態に係る半導体の製造方法は、GaAs基板(III−V族半導体基板)上に、Ga、In、N、及びAsの元素を主成分とする混晶半導体からなるGaInNAs系混晶半導体層を、少なくとも1層、有機金属気相成長法により結晶成長させる際、図1に示すように、Ga原料11、In原料12、N原料13、及びAs原料14を供給する第1供給工程と、Ga原料11、In原料12、及びN原料13を供給する第2供給工程とを併用して行うものである。結晶成長のプロセスは、第1供給工程終了後に第2供給工程を行うという供給ステップ(ステップ)を含んでおり、好ましくは、この供給ステップを2回以上繰り返すものである。
【0020】
具体的には、先ず、GaAs基板上に所望のエピタキシャル層を形成した後、GaInNAs系混晶半導体層の形成を行う。ここで、最初に、Ga原料(例えば、TEGa、TMGa)11、In原料(例えば、TMIn)12、N原料(例えば、DMHy)13、及びAs原料(例えば、TBAs)14を同時に供給し、GaInNAs系混晶半導体からなる層の形成を開始する(第1供給工程)。
【0021】
次に、As原料14の供給だけを停止し、Ga原料11、In原料12、及びN原料13は継続して供給し、GaInNAs系混晶半導体からなる層の形成を継続する(第2供給工程)。ここで、第2供給工程、及び第2供給工程後の第1供給工程においては、成長雰囲気中の、N原料13に対するAs原料14の存在割合が、一時的に低くなる。その結果、Nの取込効率が向上し、N組成が大きな層が形成される。
【0022】
この第2供給工程の後に第1供給工程を再び繰り返すことで、第2供給工程における成長雰囲気中のAs原料14の存在割合の低下によるGaInNAs系混晶半導体の結晶品質の低下を抑制することができる。このように、第1供給工程と第2供給工程とを、交互に繰り返すという形成手法によって、GaInNAs系混晶半導体層が形成される。
【0023】
その後、GaInNAs系混晶半導体層上に所望のエピタキシャル層を形成すると共に、電極部の形成及びワイヤボンディングを行うことで半導体素子、例えば発光素子が得られる。
【0024】
ここで、As原料14の供給時間t1と停止時間t2との比及び時間t1,t2の長短を調整することで、GaInNAs系混晶半導体層におけるV族元素の組成制御を行うことができる。より具体的には、As原料14の供給時間t1と停止時間t2との比(t1/t2)は、1以上、好ましくは1〜10、特に好ましくは4前後である。供給時間t1は、例えば、1〜10(sec)、好ましくは2〜4(sec)であり、停止時間t2は、例えば、0.1〜2(sec)、好ましくは0.5〜1(sec)である。
【0025】
また、供給ステップの繰り返し回数とAs原料14の停止時間t2との関係については、特に限定するものではないが、表面からの原料脱離を考慮すると、停止時間t2を短くし、繰り返し回数を多くするという製造プロセスが好ましい。
【0026】
また、GaInNAs系混晶半導体層は、必ずしもGa、In、N、及びAsの4つの元素のみで構成する必要はなく、Mg(マグネシウム)、Zn(亜鉛)等のp型ドーパント、又はC(炭素)、Si(シリコン)等のn型ドーパントを含んでいてもよい。また、必要に応じて、Sb(アンチモン)やP(燐)等の元素を加え、GaInNAsSbやGaInNAsP等の5元混晶半導体、又は6元以上の多元混晶半導体としてもよい。
【0027】
また、N原料としては、モノメチルヒドラジン(分子式CH3NHNH2)、1,1−ジメチルヒドラジン(分子式(CH3)2NNH2)、1,2−ジメチルヒドラジン(分子式(CH3)NHNH(CH3))、ターシャリブチルアミン(分子式(CH3)3CNH2)、ターシャリブチルヒドラジン(分子式(CH3)3CNHNH2)、又はアンモニア(分子式NH3)の内の少なくとも一種を含んだガスが挙げられる。
【0028】
また、As原料としては、アルシン(分子式AsH3)、ターシャリブチルアルシン(分子式C4H11As)、又はトリメチル砒素(分子式(CH3)3As)の内の少なくとも一種を含んだガスが挙げられる。
【0029】
また、III−V族半導体基板としては、GaAs基板のみに限定するものではなく、GaInNAs系混晶半導体層を形成する際に慣用的に用いられている基板であれば全て適用可能である。更に、III−V族半導体基板は、Si(シリコン)等のn型ドーパントを含んでいてもよい。
【0030】
本実施の形態に係る半導体の製造方法によれば、III−V族半導体基板上に、GaInNAs系混晶半導体層を結晶成長させる際、第1供給工程及び第2供給工程を併用して成長・形成しており、このように、第1供給工程と第2供給工程とを交互に繰り返すことにより、GaInNAs系混晶半導体層が、時間平均として低As原料比で形成した層となる。この時、As原料14の供給時間t1と停止時間t2との比及び時間t1,t2の長短を調整することで、GaInNAs系混晶半導体層におけるV族元素の組成制御を可能としている。
【0031】
また、本実施の形態に係る半導体の製造方法は、従来の製造方法(As原料の供給量に対してN原料の供給量を著しく増加させる方法、N原料の供給量を保ったままAs原料の供給量を減らす方法)と異なり、As原料14の供給時間t1と停止時間t2との比及び時間t1,t2の長短を調整することで、GaInNAs系混晶半導体層におけるV族元素の組成制御を行っている。このため、原料供給量の変化の影響を受けることなく、GaInNAs系混晶半導体層の組成を正確に制御することができ、その結果、非平衡系で成長するGaInNAs系混晶半導体層のNの取込効率を高めることができる。また、スループットの低下を引き起こすこともない。
【0032】
また、本実施の形態の製造方法においては、GaInNAs系混晶半導体層の成長プロセス全般に亘って、第1供給工程及び第2供給工程を併用する場合について説明を行ったが、これに限定するものではなく、成長プロセスの一部の過程においてだけ第1供給工程及び第2供給工程を併用し、それ以外は第1供給工程のみを用いてGaInNAs系混晶半導体層を形成するようにしてもよい。このような成長プロセスとすることで、発光素子に必要となる光閉込層や多層反射膜を、従来のGaAs系化合物半導体の成長技術を用いて容易に形成することができる。
【0033】
本実施の形態の製造方法を用いて形成した発光素子は、必ずしもレーザである必要はなく、その他にも、例えば、発光ダイオード(LED)等へも適用可能である。また、レーザは必ずしも単独のチップで用いる必要はなく、必要に応じてレーザダイオードアレイとしてもよい。さらに、レーザ共振器の構造は、必ずしも多層膜反射鏡による垂直共振器やへき壊面を反射鏡とする共振器でなくてもよく、例えば、素子内に設けた周期構造(グレーティング)を共振器としたり、フォトニック結晶を共振器として用いてもよい。
【0034】
また、本実施の形態の製造方法を用いて形成した発光素子は、例えば、石英系のシングルモード光ファイバを用いた光通信用のレーザダイオードに応用することも可能である。
【0035】
以上、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、他にも種々のものが想定されることは言うまでもない。
【0036】
【実施例】
次に、本発明について、実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
(第1実施例)
第1実施例における発光素子(半導体素子)の横断面模式図を図2に、図2の発光素子の発光スペクトルを図3に示す。
【0038】
有機金属気相成長法により、Siをドープしたn型GaAs基板21上に、厚さ95nmのSiドープn型GaAs層22aと厚さ108nmのSiドープn型AlAs層22bとを交互に30周期積層した下部多層反射膜22、厚さ190nmのSiドープn型GaAsキャビティ層23、厚さ10nmのGaInNAs活性層24、厚さ190nmのMgドープp型GaAsキャビティ層25、厚さ95nmのMgドープp型GaAs層26aと厚さ108nmのMgドープp型AlAs層26bとを交互に25周期積層した上部多層反射膜26、及び厚さ20nmのMgドープp型GaAsコンタクト層27を、順に形成した。
【0039】
ここで、GaInNAs活性層24を除く下部多層反射膜22、キャビティ層23,25、上部多層反射膜26、及びコンタクト層27を形成する際は、Ga原料にトリメチルガリウム(TMGa)、Al原料にトリメチルアルミニウム(TMAl)を用い、As原料にアルシン(AsH3)を用いた。これらの原料ガスを、キャリアガスである水素ガスと共に成長炉内に供給し、水素雰囲気中で気相成長した。成長炉内の圧力は6.67×103Pa(50Torr)、成長温度は650℃とした。
【0040】
また、GaInNAs活性層24を形成する際は、Ga原料としてトリエチルガリウム(TEGa)、In原料としてトリメチルインジウム(TMIn)を用い、As原料としてターシャリブチルアルシン(TBAs)、N原料としてジメチルヒドラジン(DMHy)を用いた。TEGa、TMIn、TBAs、及びDMHyの流量は、それぞれ2.3×10−3mol/分、3.0×10−4mol/分、3.4×10−3mol/分、5.0×10−3mol/分とした。これらの原料ガスを、キャリアガスである水素ガス(流量:1.5リットル/分)と共に成長炉内に供給した。また、TEGa、TMIn、DMHy、及びTBAsを同時供給する第1供給工程の時間とTEGa、TMIn、及びDMHyを供給する第2供給工程の時間との比率は4:1、成長炉内の圧力は6.67×103Pa(50Torr)、成長温度は515℃とした。
【0041】
次に、GaAs基板21上に各エピタキシャル層を成長・形成させてなるエピタキシャルウェハを300μm角のチップに加工し、そのチップの上下面に、それぞれAu−Zn合金からなる上部電極28、Au−Ge−Ni合金からなる下部電極29を形成した。上部電極28は、直径10μmの円孔28aを有するリング状電極である。また、上部電極28が形成された部分の直下に位置する上部多層反射膜26の一部は予め選択酸化させておき、電流狭窄が生じるように形成した。さらに、上部電極28にはAuワイヤ30をボンディングし、垂直共振器を有する面発光レーザを作製した。
【0042】
この面発光レーザに直流電流を通電し、発光出力5mW時の発光スペクトルを光スペクトルアナライザで測定したところ、図3に示すような発光スペクトルが得られた。図3から、第1実施例の面発光レーザは波長1.307μmで発振していることがわかる。
【0043】
次に、前述のGaInNAs活性層24と全く同様の条件で、Siドープn型GaAs基板21上に、100nmのGaInNAs層を成長・形成し、SIMS分析を行った。その結果、N濃度は約3.1×1020atoms/cm3であった。このN濃度は、N組成が約1.5%(mol%)のGaInNAsに相当する。このN濃度とX線回折法で求めたGaInNAs層の格子定数から、In組成は約25%(mol%)と求められた。つまり、本実施例で得た面発光レーザのGaInNAs活性層24は、Ga0.75In0.25N0.02As0.98の組成を有していることが判明した。すなわち、本実施例によって、Ga0.75In0.25N0.02As0.98活性層を有する波長1.3μm帯の面発光レーザを得ることができた。
【0044】
(第2実施例)
第2実施例における発光素子(半導体素子)の横断面模式図を図4に、図4の発光素子の発光スペクトルを図5に示す。
【0045】
有機金属気相成長法により、Siをドープしたn型GaAs基板41上に、厚さ500nmのSiドープn型GaAsバッファ層42、厚さ1500nmのSiドープn型Al0.75Ga0.25Asクラッド層43、厚さ50nmのSiドープn型GaAs光ガイド層44、厚さ6nmのアンドープGaInNAs量子井戸層45aと厚さ6nmのアンドープGaAsバリア層45bとを3周期積層したGaInNAs/GaAs 3−MQW層45、厚さ60nmのMgドープp型GaAs光ガイド層46、厚さ1500nmのMgドープp型Al0.75Ga0.25Asクラッド層47、及び厚さ20nmのMgドープp型GaAsコンタクト層48を、順に形成した。
【0046】
ここで、GaInNAs/GaAs 3−MQW層45を除くGaAsバッファ層42、Al0.75Ga0.25Asクラッド層43,47、GaAs光ガイド層44,46、GaAsコンタクト層48を形成する際は、Ga原料にTMGa、Al原料にTMAlを用い、As原料にAsH3を用いた。これらの原料ガスを、キャリアガスである水素ガスと共に成長炉内に供給し、水素雰囲気中で気相成長した。成長炉内の圧力は6.67×103Pa(50Torr)、成長温度は650℃とした。
【0047】
また、GaInNAs/GaAs 3−MQW層45におけるGaInNAs量子井戸層45aは、第1実施例におけるGaInNAs活性層24と全く同じ成長条件で成長・形成した。一方、GaAsバリア層45bを形成する際は、Ga原料にTEGa、As原料にAsH3を用いる以外は、GaInNAs/GaAs 3−MQW層45と全く同じ成長条件で成長・形成した。
【0048】
次に、GaAs基板41上に各エピタキシャル層を成長・形成させてなるエピタキシャルウェハを500μm角のチップにへき開加工した後、反応性イオンエッチング(RIE)により、Mgドープp型Al0.75Ga0.25Asクラッド層47の表層部及びMgドープp型GaAsコンタクト層48を幅5μmのストライプ部55に加工した。その後、ストライプ部55の上面にAu−Zn合金からなる上部電極49を、チップの下面にAu−Ge−Ni合金からなる下部電極50を形成した。その後、上部電極49にAuワイヤ51をボンディングし、チップにおけるへき開面(図4中における図面と平行な面)を反射面とする共振器を持つファブリーペロー型レーザを作製した。
【0049】
このレーザに直流電流を通電し、発光出力5mW時の発光スペクトルを光スペクトルアナライザで測定したところ、図5に示すような発光スペクトルが得られた。図5から、第2実施例のファブリーペロー型レーザは波長1.35μmで発振していることがわかる。
【0050】
本実施例で得たファブリーペロー型レーザのGaInNAs量子井戸層45aの成長条件は、第1実施例におけるGaInNAs活性層24の成長条件と全く同じであるから、本実施例におけるGaInNAs/GaAs 3−MQW層45は、Ga0.75In0.25N0.02As0.98/GaAs MQWであるといえる。すなわち、本実施例によって、Ga0.75In0.25N0.02As0.98/GaAs 3−MQW活性層を有する波長1.3μm帯の端面発光型レーザを得ることができた。
【0051】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、GaInNAs系混晶半導体層を結晶成長させる際、Ga原料、In原料、N原料、及びAs原料を供給する第1供給工程、及びGa原料、In原料、及びN原料を供給する第2供給工程を併用し、第1供給工程と第2供給工程とを交互に繰り返すことにより、GaInNAs系混晶半導体層が、時間平均として低As原料比で形成した層となり、原料供給量の変化の影響を受けることなく、GaInNAs系混晶半導体層の組成を正確に制御することができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係る半導体の製造方法の、原料供給シーケンスを示す図である。
【図2】実施例における第1実施例の半導体素子の横断面模式図である。
【図3】図2の半導体素子の発光スペクトルを示す図である。
【図4】実施例における第2実施例の半導体素子の横断面模式図である。
【図5】図4の半導体素子の発光スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
11 Ga原料
12 In原料
13 N原料
14 As原料
21,41 Siドープn型GaAs基板(III−V族半導体基板)
24 アンドープGaInNAs活性層(GaInNAs系混晶半導体層)
45 アンドープGaInNAs/GaAs 3−MQW層(GaInNAs系混晶半導体層)
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体の製造方法及びそれを用いて形成した半導体素子に係り、特に、Ga、In、N、及びAsの元素を主成分とする混晶半導体からなるGaInNAs系混晶半導体層を少なくとも1層有する半導体の製造方法及びそれを用いて形成した半導体素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、GaInNAsと呼ばれる、Ga、In、N、及びAsの4つの元素を主成分とする4元混晶半導体が注目を集めている。GaInNAs系混晶半導体は、In組成及びN組成を適切な値に調整することで、石英系のシングルモード光ファイバにおいて波長分散値が最小となる波長1.3μm帯の発光素子へと応用することができ、大容量で、高速な光通信を実現するための次世代のデバイスとして期待されている。
【0003】
発光波長1.3μmを実現できる半導体として、他にInP(インジウム燐)系混晶半導体が挙げられる。このInPについても研究が行われているが、InP系混晶半導体と一般的によく用いられているGaAs基板とでは、格子定数が大きく異なるため、InP系混晶半導体をGaAs基板上に形成すると、格子歪みが大きくなってしまう。このため、InP系混晶半導体は、格子整合性を考慮して、高コストなInP基板上に形成しなければならない。
【0004】
これに対して、GaInNAs系混晶半導体は、20〜30%(mol%)程度のIn組成で、GaAs基板に対する格子歪みが比較的小さくなり、発光波長1.3μmを得ることができるため、InP基板に比べ低コストなGaAs基板を用いることができ、InP系混晶半導体に比べて安価にデバイスを供給することが可能である。
【0005】
また、GaInNAs系混晶半導体は、面発光レーザへの応用も期待されている。GaInNAs系混晶半導体を用いた面発光レーザは、GaInNAs系混晶半導体で構成される活性層の上下面にGaAs及びAlAsで構成される多層反射膜を形成・配置し、垂直共振器を構成することで、実現される。しかしながら、InP系混晶半導体においては、InP系混晶半導体で構成される活性層の上下面に形成・配置される多層反射膜を形成する適当な材料がないことから、面発光レーザの実現はほぼ不可能といってよい。
【0006】
また、近藤らのバンドラインナップの計算(Jpn.J.Appl.Phys.35(1996) p1273−1275参照)では、GaAs基板上にGaAsよりバンドギャップの大きいクラッド層を形成することで、伝導帯のバンド不連続が大きくなることから、GaInNAs系混晶半導体を用いた発光素子は、温度変化に対する特性の揺らぎが小さく、通常の使用においてはベルチェ素子等の冷却器を必要としなくなる。このため、デバイス全体としての低コスト化が可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように、GaInNAs系混晶半導体は、InP系混晶半導体と比較して様々な特長を有しているものの、現状では以下に述べるような問題点を有している。
【0008】
GaInNAs系混晶半導体は、In組成が20〜40%(mol%)、N組成が1〜2%(mol%)程度で波長1.3μmの発光が得られる。ここで、波長1.3μm帯で波長分散値は最小となるものの、損失が最小となるのは波長1.55μmであるため、1.3μm帯の内、損失がより少ない長波長のものが好ましい。長波長化を達成するには、In組成及びN組成を大きくすればよいことが明らかになっている。しかし、GaInNAs系混晶半導体においてIn組成が大きすぎると、格子歪みが増大し、GaAs基板上への成長が困難となる。そのため、わずかな量で長波長化が可能なNの組成を大きくすることが試みられているが、GaInNAs系混晶半導体は非平衡系で成長するためNの取込効率が低く、また、N組成を大きくすることが困難であるという問題を有していた。
【0009】
この間題を解決する方法として、As原料の供給量に対してN原料の供給量を著しく増加させて、Nの低い取込効率を補う方法が一般的である。しかし、As原料の供給量を保ったままN原料の供給量を増やす方法は、N原料の供給量が多すぎて非現実的である。逆に、N原料の供給量を保ったままAs原料の供給量を減らすと、III−V族混晶半導体のV族組成の内、0.9以上の割合を占めるAs元素の原料供給量が著しく少なくなり、GaInNAs系混晶半導体の結晶品質が低下してしまう。この方法では、As原料の供給量がN原料の供給量の1/100以下となってしまうことから、ごくわずかな原料供給量の変化によって、成長雰囲気での原料比率が著しく変化してしまい、組成の正確な制御ができなくなる上に、スループットの低下も引き起こすという問題を有していた。
【0010】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、発光波長が1.3μm帯で、かつ、従来と比較してN組成が大きいGaInNAs系混晶半導体層を有する半導体の製造方法及びそれを用いて形成した半導体素子を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく本発明に係る半導体の製造方法は、III−V族半導体基板上に、Ga、In、N、及びAsの元素を主成分とする混晶半導体からなるGaInNAs系混晶半導体層を少なくとも1層有する半導体の製造方法において、有機金属気相成長法により上記GaInNAs系混晶半導体層を結晶成長させる際、Ga原料、In原料、N原料、及びAs原料を供給する第1供給工程、及びGa原料、In原料、及びN原料を供給する第2供給工程を併用するものである。
【0012】
具体的には、請求項2に示すように、上記GaInNAs系混晶半導体層の結晶成長プロセスが、第1供給工程の後に第2供給工程を行うというステップを含むものである。また、請求項3に示すように、上記結晶成長プロセスが、上記ステップを2回以上繰り返してなるものである。
【0013】
このように、第1供給工程と第2供給工程とを交互に繰り返すことにより、GaInNAs系混晶半導体層が、時間平均として低As原料比で形成した層となり、発光波長は1.3μm帯であり、かつ、従来と比較してN組成が大きなGaInNAs系混晶半導体層を形成することができる。
【0014】
また、請求項4に示すように、N原料として、モノメチルヒドラジン、1,1−ジメチルヒドラジン、1,2−ジメチルヒドラジン、ターシャリブチルアミン、ターシャリブチルヒドラジン、又はアンモニアの内の少なくとも一種を含んだガスを供給するものである。請求項5に示すように、As原料として、アルシン、ターシャリブチルアルシン、又はトリメチル砒素の内の少なくとも一種を含んだガスを供給するものである。
【0015】
一方、本発明に係る半導体素子は、発光層を有する半導体素子であり、少なくとも発光層を、前述した半導体の製造方法を用いたGaInNAs系混晶半導体層で形成したものである。
【0016】
これによって、III−V族半導体基板上に、発光波長は1.3μm帯であり、かつ、従来と比較してN組成が大きなGaInNAs系混晶半導体層を有する半導体素子を得ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適一実施の形態を添付図面に基いて説明する。
【0018】
第1の実施の形態に係る半導体の製造方法の、原料供給シーケンスを図1に示す。
【0019】
本実施の形態に係る半導体の製造方法は、GaAs基板(III−V族半導体基板)上に、Ga、In、N、及びAsの元素を主成分とする混晶半導体からなるGaInNAs系混晶半導体層を、少なくとも1層、有機金属気相成長法により結晶成長させる際、図1に示すように、Ga原料11、In原料12、N原料13、及びAs原料14を供給する第1供給工程と、Ga原料11、In原料12、及びN原料13を供給する第2供給工程とを併用して行うものである。結晶成長のプロセスは、第1供給工程終了後に第2供給工程を行うという供給ステップ(ステップ)を含んでおり、好ましくは、この供給ステップを2回以上繰り返すものである。
【0020】
具体的には、先ず、GaAs基板上に所望のエピタキシャル層を形成した後、GaInNAs系混晶半導体層の形成を行う。ここで、最初に、Ga原料(例えば、TEGa、TMGa)11、In原料(例えば、TMIn)12、N原料(例えば、DMHy)13、及びAs原料(例えば、TBAs)14を同時に供給し、GaInNAs系混晶半導体からなる層の形成を開始する(第1供給工程)。
【0021】
次に、As原料14の供給だけを停止し、Ga原料11、In原料12、及びN原料13は継続して供給し、GaInNAs系混晶半導体からなる層の形成を継続する(第2供給工程)。ここで、第2供給工程、及び第2供給工程後の第1供給工程においては、成長雰囲気中の、N原料13に対するAs原料14の存在割合が、一時的に低くなる。その結果、Nの取込効率が向上し、N組成が大きな層が形成される。
【0022】
この第2供給工程の後に第1供給工程を再び繰り返すことで、第2供給工程における成長雰囲気中のAs原料14の存在割合の低下によるGaInNAs系混晶半導体の結晶品質の低下を抑制することができる。このように、第1供給工程と第2供給工程とを、交互に繰り返すという形成手法によって、GaInNAs系混晶半導体層が形成される。
【0023】
その後、GaInNAs系混晶半導体層上に所望のエピタキシャル層を形成すると共に、電極部の形成及びワイヤボンディングを行うことで半導体素子、例えば発光素子が得られる。
【0024】
ここで、As原料14の供給時間t1と停止時間t2との比及び時間t1,t2の長短を調整することで、GaInNAs系混晶半導体層におけるV族元素の組成制御を行うことができる。より具体的には、As原料14の供給時間t1と停止時間t2との比(t1/t2)は、1以上、好ましくは1〜10、特に好ましくは4前後である。供給時間t1は、例えば、1〜10(sec)、好ましくは2〜4(sec)であり、停止時間t2は、例えば、0.1〜2(sec)、好ましくは0.5〜1(sec)である。
【0025】
また、供給ステップの繰り返し回数とAs原料14の停止時間t2との関係については、特に限定するものではないが、表面からの原料脱離を考慮すると、停止時間t2を短くし、繰り返し回数を多くするという製造プロセスが好ましい。
【0026】
また、GaInNAs系混晶半導体層は、必ずしもGa、In、N、及びAsの4つの元素のみで構成する必要はなく、Mg(マグネシウム)、Zn(亜鉛)等のp型ドーパント、又はC(炭素)、Si(シリコン)等のn型ドーパントを含んでいてもよい。また、必要に応じて、Sb(アンチモン)やP(燐)等の元素を加え、GaInNAsSbやGaInNAsP等の5元混晶半導体、又は6元以上の多元混晶半導体としてもよい。
【0027】
また、N原料としては、モノメチルヒドラジン(分子式CH3NHNH2)、1,1−ジメチルヒドラジン(分子式(CH3)2NNH2)、1,2−ジメチルヒドラジン(分子式(CH3)NHNH(CH3))、ターシャリブチルアミン(分子式(CH3)3CNH2)、ターシャリブチルヒドラジン(分子式(CH3)3CNHNH2)、又はアンモニア(分子式NH3)の内の少なくとも一種を含んだガスが挙げられる。
【0028】
また、As原料としては、アルシン(分子式AsH3)、ターシャリブチルアルシン(分子式C4H11As)、又はトリメチル砒素(分子式(CH3)3As)の内の少なくとも一種を含んだガスが挙げられる。
【0029】
また、III−V族半導体基板としては、GaAs基板のみに限定するものではなく、GaInNAs系混晶半導体層を形成する際に慣用的に用いられている基板であれば全て適用可能である。更に、III−V族半導体基板は、Si(シリコン)等のn型ドーパントを含んでいてもよい。
【0030】
本実施の形態に係る半導体の製造方法によれば、III−V族半導体基板上に、GaInNAs系混晶半導体層を結晶成長させる際、第1供給工程及び第2供給工程を併用して成長・形成しており、このように、第1供給工程と第2供給工程とを交互に繰り返すことにより、GaInNAs系混晶半導体層が、時間平均として低As原料比で形成した層となる。この時、As原料14の供給時間t1と停止時間t2との比及び時間t1,t2の長短を調整することで、GaInNAs系混晶半導体層におけるV族元素の組成制御を可能としている。
【0031】
また、本実施の形態に係る半導体の製造方法は、従来の製造方法(As原料の供給量に対してN原料の供給量を著しく増加させる方法、N原料の供給量を保ったままAs原料の供給量を減らす方法)と異なり、As原料14の供給時間t1と停止時間t2との比及び時間t1,t2の長短を調整することで、GaInNAs系混晶半導体層におけるV族元素の組成制御を行っている。このため、原料供給量の変化の影響を受けることなく、GaInNAs系混晶半導体層の組成を正確に制御することができ、その結果、非平衡系で成長するGaInNAs系混晶半導体層のNの取込効率を高めることができる。また、スループットの低下を引き起こすこともない。
【0032】
また、本実施の形態の製造方法においては、GaInNAs系混晶半導体層の成長プロセス全般に亘って、第1供給工程及び第2供給工程を併用する場合について説明を行ったが、これに限定するものではなく、成長プロセスの一部の過程においてだけ第1供給工程及び第2供給工程を併用し、それ以外は第1供給工程のみを用いてGaInNAs系混晶半導体層を形成するようにしてもよい。このような成長プロセスとすることで、発光素子に必要となる光閉込層や多層反射膜を、従来のGaAs系化合物半導体の成長技術を用いて容易に形成することができる。
【0033】
本実施の形態の製造方法を用いて形成した発光素子は、必ずしもレーザである必要はなく、その他にも、例えば、発光ダイオード(LED)等へも適用可能である。また、レーザは必ずしも単独のチップで用いる必要はなく、必要に応じてレーザダイオードアレイとしてもよい。さらに、レーザ共振器の構造は、必ずしも多層膜反射鏡による垂直共振器やへき壊面を反射鏡とする共振器でなくてもよく、例えば、素子内に設けた周期構造(グレーティング)を共振器としたり、フォトニック結晶を共振器として用いてもよい。
【0034】
また、本実施の形態の製造方法を用いて形成した発光素子は、例えば、石英系のシングルモード光ファイバを用いた光通信用のレーザダイオードに応用することも可能である。
【0035】
以上、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、他にも種々のものが想定されることは言うまでもない。
【0036】
【実施例】
次に、本発明について、実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
(第1実施例)
第1実施例における発光素子(半導体素子)の横断面模式図を図2に、図2の発光素子の発光スペクトルを図3に示す。
【0038】
有機金属気相成長法により、Siをドープしたn型GaAs基板21上に、厚さ95nmのSiドープn型GaAs層22aと厚さ108nmのSiドープn型AlAs層22bとを交互に30周期積層した下部多層反射膜22、厚さ190nmのSiドープn型GaAsキャビティ層23、厚さ10nmのGaInNAs活性層24、厚さ190nmのMgドープp型GaAsキャビティ層25、厚さ95nmのMgドープp型GaAs層26aと厚さ108nmのMgドープp型AlAs層26bとを交互に25周期積層した上部多層反射膜26、及び厚さ20nmのMgドープp型GaAsコンタクト層27を、順に形成した。
【0039】
ここで、GaInNAs活性層24を除く下部多層反射膜22、キャビティ層23,25、上部多層反射膜26、及びコンタクト層27を形成する際は、Ga原料にトリメチルガリウム(TMGa)、Al原料にトリメチルアルミニウム(TMAl)を用い、As原料にアルシン(AsH3)を用いた。これらの原料ガスを、キャリアガスである水素ガスと共に成長炉内に供給し、水素雰囲気中で気相成長した。成長炉内の圧力は6.67×103Pa(50Torr)、成長温度は650℃とした。
【0040】
また、GaInNAs活性層24を形成する際は、Ga原料としてトリエチルガリウム(TEGa)、In原料としてトリメチルインジウム(TMIn)を用い、As原料としてターシャリブチルアルシン(TBAs)、N原料としてジメチルヒドラジン(DMHy)を用いた。TEGa、TMIn、TBAs、及びDMHyの流量は、それぞれ2.3×10−3mol/分、3.0×10−4mol/分、3.4×10−3mol/分、5.0×10−3mol/分とした。これらの原料ガスを、キャリアガスである水素ガス(流量:1.5リットル/分)と共に成長炉内に供給した。また、TEGa、TMIn、DMHy、及びTBAsを同時供給する第1供給工程の時間とTEGa、TMIn、及びDMHyを供給する第2供給工程の時間との比率は4:1、成長炉内の圧力は6.67×103Pa(50Torr)、成長温度は515℃とした。
【0041】
次に、GaAs基板21上に各エピタキシャル層を成長・形成させてなるエピタキシャルウェハを300μm角のチップに加工し、そのチップの上下面に、それぞれAu−Zn合金からなる上部電極28、Au−Ge−Ni合金からなる下部電極29を形成した。上部電極28は、直径10μmの円孔28aを有するリング状電極である。また、上部電極28が形成された部分の直下に位置する上部多層反射膜26の一部は予め選択酸化させておき、電流狭窄が生じるように形成した。さらに、上部電極28にはAuワイヤ30をボンディングし、垂直共振器を有する面発光レーザを作製した。
【0042】
この面発光レーザに直流電流を通電し、発光出力5mW時の発光スペクトルを光スペクトルアナライザで測定したところ、図3に示すような発光スペクトルが得られた。図3から、第1実施例の面発光レーザは波長1.307μmで発振していることがわかる。
【0043】
次に、前述のGaInNAs活性層24と全く同様の条件で、Siドープn型GaAs基板21上に、100nmのGaInNAs層を成長・形成し、SIMS分析を行った。その結果、N濃度は約3.1×1020atoms/cm3であった。このN濃度は、N組成が約1.5%(mol%)のGaInNAsに相当する。このN濃度とX線回折法で求めたGaInNAs層の格子定数から、In組成は約25%(mol%)と求められた。つまり、本実施例で得た面発光レーザのGaInNAs活性層24は、Ga0.75In0.25N0.02As0.98の組成を有していることが判明した。すなわち、本実施例によって、Ga0.75In0.25N0.02As0.98活性層を有する波長1.3μm帯の面発光レーザを得ることができた。
【0044】
(第2実施例)
第2実施例における発光素子(半導体素子)の横断面模式図を図4に、図4の発光素子の発光スペクトルを図5に示す。
【0045】
有機金属気相成長法により、Siをドープしたn型GaAs基板41上に、厚さ500nmのSiドープn型GaAsバッファ層42、厚さ1500nmのSiドープn型Al0.75Ga0.25Asクラッド層43、厚さ50nmのSiドープn型GaAs光ガイド層44、厚さ6nmのアンドープGaInNAs量子井戸層45aと厚さ6nmのアンドープGaAsバリア層45bとを3周期積層したGaInNAs/GaAs 3−MQW層45、厚さ60nmのMgドープp型GaAs光ガイド層46、厚さ1500nmのMgドープp型Al0.75Ga0.25Asクラッド層47、及び厚さ20nmのMgドープp型GaAsコンタクト層48を、順に形成した。
【0046】
ここで、GaInNAs/GaAs 3−MQW層45を除くGaAsバッファ層42、Al0.75Ga0.25Asクラッド層43,47、GaAs光ガイド層44,46、GaAsコンタクト層48を形成する際は、Ga原料にTMGa、Al原料にTMAlを用い、As原料にAsH3を用いた。これらの原料ガスを、キャリアガスである水素ガスと共に成長炉内に供給し、水素雰囲気中で気相成長した。成長炉内の圧力は6.67×103Pa(50Torr)、成長温度は650℃とした。
【0047】
また、GaInNAs/GaAs 3−MQW層45におけるGaInNAs量子井戸層45aは、第1実施例におけるGaInNAs活性層24と全く同じ成長条件で成長・形成した。一方、GaAsバリア層45bを形成する際は、Ga原料にTEGa、As原料にAsH3を用いる以外は、GaInNAs/GaAs 3−MQW層45と全く同じ成長条件で成長・形成した。
【0048】
次に、GaAs基板41上に各エピタキシャル層を成長・形成させてなるエピタキシャルウェハを500μm角のチップにへき開加工した後、反応性イオンエッチング(RIE)により、Mgドープp型Al0.75Ga0.25Asクラッド層47の表層部及びMgドープp型GaAsコンタクト層48を幅5μmのストライプ部55に加工した。その後、ストライプ部55の上面にAu−Zn合金からなる上部電極49を、チップの下面にAu−Ge−Ni合金からなる下部電極50を形成した。その後、上部電極49にAuワイヤ51をボンディングし、チップにおけるへき開面(図4中における図面と平行な面)を反射面とする共振器を持つファブリーペロー型レーザを作製した。
【0049】
このレーザに直流電流を通電し、発光出力5mW時の発光スペクトルを光スペクトルアナライザで測定したところ、図5に示すような発光スペクトルが得られた。図5から、第2実施例のファブリーペロー型レーザは波長1.35μmで発振していることがわかる。
【0050】
本実施例で得たファブリーペロー型レーザのGaInNAs量子井戸層45aの成長条件は、第1実施例におけるGaInNAs活性層24の成長条件と全く同じであるから、本実施例におけるGaInNAs/GaAs 3−MQW層45は、Ga0.75In0.25N0.02As0.98/GaAs MQWであるといえる。すなわち、本実施例によって、Ga0.75In0.25N0.02As0.98/GaAs 3−MQW活性層を有する波長1.3μm帯の端面発光型レーザを得ることができた。
【0051】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、GaInNAs系混晶半導体層を結晶成長させる際、Ga原料、In原料、N原料、及びAs原料を供給する第1供給工程、及びGa原料、In原料、及びN原料を供給する第2供給工程を併用し、第1供給工程と第2供給工程とを交互に繰り返すことにより、GaInNAs系混晶半導体層が、時間平均として低As原料比で形成した層となり、原料供給量の変化の影響を受けることなく、GaInNAs系混晶半導体層の組成を正確に制御することができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係る半導体の製造方法の、原料供給シーケンスを示す図である。
【図2】実施例における第1実施例の半導体素子の横断面模式図である。
【図3】図2の半導体素子の発光スペクトルを示す図である。
【図4】実施例における第2実施例の半導体素子の横断面模式図である。
【図5】図4の半導体素子の発光スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
11 Ga原料
12 In原料
13 N原料
14 As原料
21,41 Siドープn型GaAs基板(III−V族半導体基板)
24 アンドープGaInNAs活性層(GaInNAs系混晶半導体層)
45 アンドープGaInNAs/GaAs 3−MQW層(GaInNAs系混晶半導体層)
Claims (6)
- III−V族半導体基板上に、Ga、In、N、及びAsの元素を主成分とする混晶半導体からなるGaInNAs系混晶半導体層を少なくとも1層有する半導体の製造方法において、有機金属気相成長法により上記GaInNAs系混晶半導体層を結晶成長させる際、Ga原料、In原料、N原料、及びAs原料を供給する第1供給工程、及びGa原料、In原料、及びN原料を供給する第2供給工程を併用することを特徴とする半導体の製造方法。
- 上記GaInNAs系混晶半導体層の結晶成長プロセスが、第1供給工程の後に第2供給工程を行うというステップを含む請求項1記載の半導体の製造方法。
- 上記結晶成長プロセスが、上記ステップを2回以上繰り返してなる請求項1又は2記載の半導体の製造方法。
- N原料として、モノメチルヒドラジン、1,1−ジメチルヒドラジン、1,2−ジメチルヒドラジン、ターシャリブチルアミン、ターシャリブチルヒドラジン、又はアンモニアの内の少なくとも一種を含んだガスを供給する請求項1から3いずれかに記載の半導体の製造方法。
- As原料として、アルシン、ターシャリブチルアルシン、又はトリメチル砒素の内の少なくとも一種を含んだガスを供給する請求項1から4いずれかに記載の半導体の製造方法。
- 発光層を有する半導体素子において、少なくとも発光層を、請求項1から5いずれかに記載の半導体の製造方法を用いたGaInNAs系混晶半導体層で形成したことを特徴とする半導体素子。
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