JP2004004487A - 光伝送構造体、および、光導波路の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも光配線と光導波路とが結合してなり、上記光配線のコアと上記光導波路のコア層との間で光信号を伝送することができるように構成された光伝送構造体であって、上記光配線の上記光導波路のコア層と結合した部分は、特に平坦化処理が施されていないか、または、JIS B 0601に基づく面粗度Raが、0.1μm以上であることを特徴とする光伝送構造体。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバ等の光配線と光導波路とが結合してなる光伝送構造体、および、光導波路の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光技術を利用した光通信や光情報処理、あるいは電子機器、光学機器等の分野が急速に進展しつつあり、各種光デバイスを接続するための技術の開発が大きな課題となっている。従来各種光デバイス間は、例えば、光ファイバ等の光配線等を介して接続されているが、その接続には極めて高い位置精度が要求され、このような接続作業は手作業もしくは高精度な調芯設備により行われているため、接続コストが上昇する一因となるという問題があった。
【0003】
そこで、このような問題を解決するために、自己形成光導波路の技術が開発されている(例えば、特許文献1)。これは、光配線等の接続すべき端部を感光性樹脂に浸漬し、この光配線等を介して感光性材料に光を照射することにより当材料を徐々に感光させて、接続端部の先端に光導波路のコア層を形成するものである。これにより、特に高価な調芯設備等を用いなくても、光配線との間で光信号を伝送することができるように構成された光導波路を形成することができ、これにより接続コスト上昇の一因となる問題を解決することができる。
【0004】
また、光配線と光導波路との接続を達成する際には、もう一つ大きな問題が存在していた。すなわち、光配線と光導波路とを結合する際には、低接続損失を達成するためには、接続端部を平坦にする必要があり、そのため高精度な端面処理を施す必要があるとされていた。
例えば、一般的な光ファイバの接続を例に取ると、光配線等の接続端部の端面が平滑でない場合には、融着技術で接続する際に気泡、光ファイバコアの乱れなどが生じて接続損失等が発生したり、光ファイバ端面同士を単に付け合わせる物理的な接続(メカニカルスプライス)の場合には、光配線等との接続部分で、伝送光の乱反射等に起因した接続損失等が発生してしまうとされていた。上述の自己形成光導波路の技術を用いても、形成した光導波路と光配線等との接続部分で、伝送光の乱反射等に起因した接続損失等が発生するとされていたのである。
【0005】
このため、被覆部材等が除去された光ファイバ等を単純に接続する際等においては光ファイバカッタ等を用いて切断することにより比較的平滑な端面を形成することができるが、光ファイバ等が単数本または複数本組み込まれた光ファイバアレイやコネクタ等においては、接続端面を揃える必要がある等の理由から、切断の後、微細砥粒を用いて長時間研磨処理を行っており、また、研磨処理方法も平面研磨のみでなく、PC研磨等の球面研磨、斜め研磨等を行う必要がある場合もあり、工程が煩雑化する、コストが嵩むといった問題は避けることができないとされていた。具体的には、例えば、シリカを含む研磨剤を用いた光ファイバ端面の研磨方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−258095号公報
【特許文献2】
特開平7−70554号公報
【0007】
【課題を解決するための手段】
しかしながら、本発明者は、光配線と光導波路とが結合してなる光伝送構造体について詳細に検討した結果、光配線の上記コア層が結合した部分の形状がどのような形状であれ、光配線と光導波路との間で好適に光信号の伝送を行うことができることを見出し、本発明の光伝送構造体を完成させた。
また、自己形成光導波路の技術を用いた光導波路の形成方法について詳細に検討した結果、光導波路のコア層を形成する場合には、高精度な端面処理を施さなくても、光配線との結合性に優れたコア層を形成することができ、この場合には、上述した工程が煩雑化する等の問題を解消することができることを見出し、本発明の光導波路の形成方法を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明の光伝送構造体は、少なくとも光配線と光導波路とが結合してなり、上記光配線のコアと上記光導波路のコア層との間で光信号を伝送することができるように構成された光伝送構造体であって、
上記光配線の上記光導波路のコア層と結合した部分は、特に平坦化処理が施されていないか、または、JIS B 0601に基づく面粗度Raが、0.1μm以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明の光伝送構造体では、上記光配線のコアと上記光導波路のコア層とが結合しており、少なくとも、上記光配線の上記光導波路のコア層と結合した側の端部の外周に被覆層が形成されていてもよい。
【0010】
本発明の光伝送構造体において、上記光導波路のコア層の光屈折率は、上記光配線の上記光導波路のコア層と結合した部分の光屈折率の90〜110%であることが望ましく、95〜105%であることがより望ましい。
【0011】
また、本発明の光伝送構造体において、上記光導波路のコア層は、上記光配線に結合した側と反対側の端面に光路変換ミラーが形成されていてもよく、また、上記光導波路のコア層は、少なくとも一の屈曲部を有していてもよい。
また、本発明の光伝送構造体においては、上記光配線の表面であって、光導波路のコア層と結合した部分以外の部分の一部または全部に粗化面が形成されていることが望ましい。
【0012】
本発明の光導波路の形成方法は、感光性樹脂または感光性組成物中に光配線の一部を浸漬し、上記光配線を介して上記感光性樹脂または感光性組成物中に光を照射することにより、上記感光性樹脂または感光性組成物中の光の経路に応じたコア層を形成する光導波路の形成方法であって、
上記光配線の上記コア層と結合する部分は、特に平坦化処理が施されていないか、または、JIS B 0601に基づく面粗度Raが、0.1μm以上であることを特徴とする。
【0013】
本発明の光導波路の形成方法において、上記感光性樹脂または感光性組成物中に浸漬する光配線の一部は上記光配線の端部であり、この光配線の端部の外周には被覆層が形成されていることが望ましい。
【0014】
また、本発明の光導波路の形成方法において、上記コア層の光屈折率は、上記光配線の上記コア層と結合する部分の光屈折率の90〜110%であることが望ましく、95〜105%であることがより望ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の光伝送構造体は、少なくとも光配線と光導波路とが結合してなり、上記光配線のコアと上記光導波路のコア層との間で光信号を伝送することができるように構成された光伝送構造体であって、
上記光配線の上記光導波路のコア層と結合した部分は、特に平坦化処理が施されていないか、または、JIS B 0601に基づく面粗度Raが、0.1μm以上であることを特徴とする。
【0016】
本発明の光伝送構造体では、光配線の光導波路のコア層と結合した部分に、特に平坦化処理が施されていないか、または、JIS B 0601に基づく面粗度Raが、0.1μm以上であるにもかかわらず、光配線と光導波路との間での接続損失が充分に小さく、光信号の伝送性に優れている。
また、上記光伝送構造体を製造する際には、光配線の光導波路のコア層と結合する部分は、高精度な端面処理を施さなくても、例えば、通常、電気配線等の切断に用いられる切断用治具を用いて切断するのみで形成することができるため、光導波路の形成工程を簡略化することができる。また、製造工程を簡略化することができるため、経済的にも有利である。
【0017】
本発明の光伝送構造体は、少なくとも光配線と光導波路とが結合してなる。
上記光配線とは、紫外線、可視光、赤外線等の光を通し、それにより情報を伝達するためのものであればよく、その具体例としては、例えば、光ファイバ等が挙げられる。
【0018】
上記光配線の上記光導波路のコア層と結合した部分は、上述したように、特に平坦化処理が施されていないか、または、JIS B 0601に基づく面粗度Raが、0.1μm以上である。
【0019】
従来の技術の欄においても既に説明したように、光配線の端面について、その面粗度Raを0.1μm未満にする場合には、例えば、シリカ等の分散粒子を使用した研磨処理等の煩雑な処理が必要であった。
また、例えば、光ファイバを、光ファイバクリーバ(光ファイバカッタ)を用いて切断した場合には、その切断面は鏡面であるとされており、その面粗度Raは、実質的に0である。そのため、光ファイバクリーバを用いて光ファイバを切断することにより、煩雑な研磨処理なしに、その端面のJIS B 0601に基づく面粗度Raが、0.1μm未満の光配線を得ることができる。しかしながら、このような光配線を用いて本発明の光伝送構造体を製造する場合には、光ファイバを切断する工程で、歩留まりが低下することとなり、特に光ファイバが配列されたアレイ状の光伝送構造体を製造する場合には、歩留まりの低下が大きく、また、作業自体にある程度の熟練を要していた。
【0020】
これに対し、光配線として、その端面に平坦化処理が施されていないか、または、JIS B 0601に基づく面粗度Raが、0.1μm以上の光配線を用いれば、光伝送構造体を製造する際に生じる、上述したような不都合を回避することができる。
【0021】
上記光配線の材料としては、紫外線、可視光、赤外線等の光を通す材料であれば特に限定されず、無機材料であってもよいし、有機材料であってもよい。
無機材料としては、例えば、石英ガラスを主成分としているもの、ソーダ石灰ガラス、ホウ硅ガラス等を主成分とする多成分ガラス等が挙げられ、高分子材料(プラスチック)としては、例えば、シリコーン樹脂、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)等のアクリル樹脂等が挙げられる。さらに、高分子材料(プラスチック)として、場合により、例えば、下記する光導波路として用いられる材料も用いることができる。
【0022】
上記光導波路のコア層の材料としては有機材料が挙げられ、その具体例としては、例えば、後述する本発明の光導波路の形成方法で使用する感光性樹脂や感光性組成物等と同様のもの等が挙げられる。
また、上記コア層には、必要に応じて、樹脂粒子、無機粒子、金属粒子等の粒子が含まれていてもよい。上記光配線との間で熱膨張係数の整合を図ることができるからである。なお、上記粒子の具体例としては、例えば、後述する本発明の光導波路の形成方法で使用する感光性樹脂や感光性組成物等に含まれるものと同様のもの等が挙げられる。また、後述する光導波路のクラッド層もまた、必要に応じて、粒子が含まれていてもよい。
【0023】
また、上記光伝送構造体では、上記光導波路のコア層の光屈折率の値は、実用上使用することができる光屈折率の範囲を考慮した場合、通常、上記光導波路は、空気、真空の光屈折率よりも大きい必要があるため、光屈折率の下限の値は1.0より大きい値であり、一方、ダイヤモンド等の鉱物を除いて、光導波路のコア層となり得る殆どの物質の光導波路を考慮した場合、光屈折率の上限の値は2.0以下の値であることが望ましい。
【0024】
上記光導波路のコア層の光屈折率の下限は、上記光配線の上記光導波路のコア層と結合した部分の光屈折率の90%であることが望ましく、一方、上記光導波路のコア層の光屈折率の上限は110%であることが望ましい。
上記光導波路のコア層の光屈折率が上記範囲にある場合には、反射減衰量は25dB以上であり、光信号の伝送性により優れることとなる。
【0025】
具体的には、例えば、石英光ファイバ同士を付き合わせて接続する場合に、光ファイバ同士の間にわずかな間隙(例えば、空気層)が介在することとなり、この場合、光ファイバのコアの屈折率を1.46、間隙(空気層)の屈折率を1.00とすると反射減衰量は14.6dBとなるが、光配線と光導波路とが結合してなり、光導波路のコア層が上記範囲の光屈折率を有する光伝送構造体では、反射減衰量は、25dB以上であり、光ファイバ同士を付き合わせる場合に比べて、通信性に優れることとなる。
【0026】
なお,上記反射減衰量LR(dB)は、例えば、下記式(1)を用いて算出することができる。
【0027】
LR=−10logR・・・(1)
【0028】
ただし、R={(n1−n0)/(n1+n0)}2であり、n1は光ファイバのコアの屈折率、n0は間隙(空気層)の屈折率である。
また、直接は比較することができないが、反射減衰量が25dB以上であるとは、JIS C 5963(光ファイバコード付き光コネクタの通則)に従えば、その等級はCである。
【0029】
上記光導波路のコア層の光屈折率の下限は、上記光配線の上記光導波路のコア層と結合した部分の光屈折率の95%であることがより望ましく、一方、上記光導波路のコア層の光屈折率の上限は105%であることがより望ましい。
上記光導波路のコア層の光屈折率が上記範囲にある場合には、反射減衰量は30dB以上であり、光信号の伝送性にさらに優れることとなる。
なお、直接は比較することができないが、反射減衰量が30dB以上であるとは、JIS C 5963に従えば、その等級はDである。
【0030】
また、上記光導波路のコア層の光屈折率の下限は、上記光配線の上記光導波路のコア層と結合した部分の光屈折率の98%であることがさらに望ましく、一方、上記光導波路のコア層の光屈折率の上限は102%であることがさらに望ましい。
上記光導波路のコア層の光屈折率が上記範囲にある場合には、反射減衰量は40dB以上(正確には、39.9dB以上)であり、光信号の伝送性に特に優れることとなる。
なお、直接は比較することができないが、反射減衰量が40dB以上であるとは、JIS C 5963に従えば、その等級はFである。
【0031】
また、半導体レーザ等を用いて光伝送構造体に光信号を入射した際には、光配線と光導波路との界面での反射光の発生が雑音の発生原因となるが、反射減衰量が40dB以上であると、反射光に起因した雑音の発生を抑制することができる。また、反射光が半導体レーザに戻ると、レーザ光の発信が不安定になり、さらには、半導体レーザの故障の原因となる場合があるが、反射減衰量が40dB以上とすることにより、このような不都合も回避することができる。
【0032】
なお、例えば、石英光ファイバ同士を付き合わせて接続する場合に、光ファイバ同士の間の間隙に上記と同等の光屈折率範囲を有する物質(例えば、シリコンオイル等)を満たし、反射減衰量を低下せしめる方法も一般的に用いられているが、本発明のように、その端面が特に平坦化処理が施されていないか、または、JIS B 0601に基づく面粗度Raが、0.1μm以上であるような光配線を用いる場合には、光配線同士を付き合わせた際に、必然的に不要な間隙が形成されてしまい、光結合損失の低下を招いてしまうことは実用上避け得ない欠点であった。
【0033】
また、本発明の光伝送構造体において、光導波路のコア層が感光性組成物等を硬化させて形成されたものである場合、コア層が上記範囲の光屈折率を有するとともに、硬化前のコア層の光屈折率、すなわち、上記感光性組成物等自体の光屈折率は、その下限が、上記光配線のコアの光屈折率の90%であることが望ましく、95%であることがより望ましく、98%であることがさらに望ましい。一方、その上限は、上記光配線のコアの光屈折率の110%であることが望ましく、105%であることがより望ましく、102%であることがさらに望ましい。
上記感光性組成物等自体の光屈折率が上記範囲にある場合、光配線のコアと光導波路のコア層との間での光信号の伝送損失がより小さくなり、信頼性に優れることとなるからである。
【0034】
「光配線の光導波路のコア層と結合した部分の光屈折率」とは、上記結合した部分が、例えば、ステップインデックス光ファイバ(SI型光ファイバ)のコア等のように単一の光屈折率を有するものである場合にはその光屈折率をいい、上記結合した部分が、例えば、グレーデッドインデックス光ファイバ(GI型光ファイバ)のようなコアである場合には、該光配線のコアがある範囲の光屈折率を有するものであるため、そのピーク光屈折率をいう。
なお、本発明で形成する光導波路のコア層の光屈折率も同様に、該コア層がある範囲の光屈折率を有する場合には、そのピーク光屈折率をコア層の光屈折率という。
【0035】
以下、本発明の光伝送構造体の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の光伝送構造体の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。図1に示すように、光伝送構造体100は、コア103とクラッド105とからなる光配線102とコア層104からなる光導波路とが結合しており、光配線102の光導波路のコア層104と結合した部分103aは、特に平坦化処理が施されていないか、または、JIS B 0601に基づく面粗度Raが、0.1μm以上である。なお、光伝送構造体100においては、クラッド105の上記結合した部分103aと同一平面をなす部分105aもまた特に平坦化処理が施されていないか、または、JIS B 0601に基づく面粗度Raが、0.1μm以上である。
このような光伝送構造体100においては、光配線102と光導波路のコア層104との間で確実に光信号の伝送を行うことができる。
【0036】
また、図1に示した光伝送構造体では、光導波路のコア層の光配線と結合した側と反対側の端面104aは、上記コア層の長手方向に垂直で、かつ、平坦な形状を有しているが、本発明の光伝送構造体を構成する光導波路の端面の形状は、このような形状に限定されるわけではない。
具体的には、例えば、図2に示すように上記光導波路のコア層の光配線と結合した側と反対側の端面の形状は、傾斜面であってもよいし、球面であってもよい。
【0037】
図2(a)〜(c)は、それぞれ本発明の光伝送構造体の別の一実施形態を模式的に示す部分断面部である。
図2(a)に示すように、光伝送構造体110では、光導波路のコア層114の光配線112に結合した側と反対側の端面に光路変換ミラー(傾斜面)114aが形成されている。このように、光路変換ミラー114aが形成されている場合には、光配線112と光導波路のコア層114とを介して伝送されてきた光信号の光路を所望の方向に変換することができる。
なお、光伝送構造体110の構造は、光路変換ミラー114aが形成されている以外は、図1に示した光伝送構造体100と同一である。また、図中、113はコア、115はクラッドである。
【0038】
図2(b)に示すように、光伝送構造体120では、光導波路のコア層124の光配線122に結合した側と反対側の端面124aには、光反射防止処理が施されている。
すなわち、図1に示した光伝送構造体100では、光導波路の光配線と結合した側と反対側の端面104aは、光導波路のコア層の光軸に垂直に形成されているのに対し、図2(b)に示した光伝送構造体120の光導波路のコア層124の端面124aは、図1に示したコア層104の端面104aと比べて8°の傾斜を有する傾斜面となっている。
このように、光導波路の光配線と結合した側と反対側の端面が所定の角度の傾斜を有している場合には、光配線と光導波路とを介して光信号を伝送した際に、上記端面での光信号の反射を防止することができる。勿論、本発明の光伝送構造体において、上記傾斜面の傾斜の角度は特に限定されるものではない。
なお、光伝送構造体120の構造は、光路変換ミラー124aが形成されている以外は、図1に示した光伝送構造体100と同一である。また、図中、123はコア、125はクラッドである。また、(b)に示した断面図は、本発明の実施形態を模式的に示したものであり、実施形態を理解しやすいように、図中のコア層の端面の傾斜の角度は、8°よりも大きく記載している。
【0039】
また、図2(c)に示すように、光伝送構造体130では、光導波路のコア層134の光配線132に結合した側と反対側の端面にレンズ134aが形成されている。このように、レンズ134aが形成されている場合には、光配線132と光導波路のコア層134とを介して伝送されてきた光信号を出射する際に光が広がることがないため、レンズ134aが形成された端面に対向するように光部品を配置した場合には、該光学部品との間で好適に光信号を伝送することができる。
なお、光伝送構造体130の構造は、レンズ134aが形成されている以外は、図1に示した光伝送構造体100と同一である。また、図中、133はコア、135はクラッドである。
また、本発明の光伝送構造体において、コア層の端面にレンズが形成されている場合、該レンズの形状は特に限定されるものではない。
また、光伝送構造体において、光導波路のコア層の光配線に結合した側と反対側の端面の形状は、特にレンズとしての機能を持たず、わずかにカーブした曲面であってもよい。これは、後述するように、このような形状の端面を持つ光伝送構造体同士を物理的に接触させる際に利用することができる。
【0040】
さらに、本発明の光伝送構造体において、光導波路のコア層の形状は、例えば、光配線に結合した側の端部から、その反対側の端部に向かって除々に細くなるような形状であってもよいし、除々に太くなるような形状であってもよい。また、場合によっては、光配線に結合した側の端部からその反対側の端部に向かって除々に細くなった後、途中で一度太くなり、その後、再度細くなるような形状であってもよい。
すなわち、上記光導波路のコア層の形状は、その一端から他端に向かって、光軸に垂直な方向の断面の形状が同一である必要はない。
【0041】
また、本発明の光伝送構造体において、光導波路のコア層は、少なくとも一の屈曲部を有していてもよい。
図3は、本発明の光伝送構造体の別の一実施形態を模式的に示す部分断面部である。
図3に示すように、光伝送構造体140では、光導波路のコア層144に屈曲部144aが形成されている。このように、屈曲部144aが形成されている場合には、コア層144を介して光信号の伝送経路を所望の方向に変更することができる。なお、光伝送構造体140の構造は、屈曲部144aが形成されている以外は、図1に示した光伝送構造体100と同一である。なお、図中、143はコア、145はクラッドである。
上記コア層に形成される屈曲部の数は、図3に示すように、1つに限定されるわけではなく、2つ以上であってもよい。
また、上記屈曲部の角度は、図3に示すような90°に限定されるわけではなく、任意の角度であればよい。
【0042】
また、図1〜3に示した本発明の光伝送構造体においては、光導波路のコア層の光配線に結合した側と反対側の端面を介して出射、または、入射される光信号の方向は、一の方向であったが、本発明の光伝送構造体において、上記端面を介して、出射または入射される光信号の方向は、二以上の異なる方向であってもよい。上記端面の形状をこのような形状とした場合には、本発明の光伝送構造体は、例えば、光カップラ(光分岐結合器)として機能することができる。以下、その具体例について図面を参照しながら説明する。
【0043】
図4(a)および(b)は、それぞれ本発明の光伝送構造体の別の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。
図4(a)に示すように、光伝送構造体150においては、光導波路のコア層154の光配線152と結合した側と反対側の端面に光分岐結合用ミラー154aが形成されている。なお、光分岐結合用ミラー154aは、90°の角度をなす2つの反射面から構成されている。そのため、光分岐結合用ミラー154aを介して、光信号を出射する場合には、該光信号が2つの反射面のそれぞれを介して異なる方向に出射されることとなる。
なお、光伝送構造体150の構造は、光分岐結合用ミラー154aが形成されている以外は、図1に示した光伝送構造体100と同一である。また、図中、153はコア、155はクラッドである。
【0044】
また、図4(b)に示す光伝送構造体160においても、(a)に示した光伝送構造体150と同様、光導波路のコア層164の光配線162と結合した側と反対側の端面に光分岐結合用ミラー164aが形成されており、この光路変換ミラーにより、光導波路のコア層164の光配線162と結合した側と反対側の端面から出射する光信号を2つの光信号に分けることができる。
なお、(b)に示す光伝送構造体160は、(a)に示す光伝送構造体150と比べて、光分岐結合用ミラーにおける各反射面の向きのみが異なる。すなわち、光伝送構造体150では、光配線152側に凹むように光分岐結合用ミラー154aが形成されているのに対し、光伝送構造体160では、光配線162と反対側に突出するように光分岐結合用ミラー164aが形成されている。なお、図中、163はコア、165はクラッドである。
図4(a)および(b)に示したような光伝送構造体150、160は、例えば、光カップラとして機能することができる。
【0045】
図5(a)および(b)は、それぞれ本発明の光伝送構造体の別の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。
図5(a)に示すように、光伝送構造体170においては、この光伝送構造体170を構成する光導波路のコア層174が、異なる位置に形成された2つの端面174a、174bを有している。また、端面174aは光路変換ミラーとなっている。
このような構成の光伝送構造体170においては、光配線172から光導波路のコア層174に伝送されてきた光信号を、端面174aを介して伝送される光信号と、端面174bを介して伝送される光信号とに分けることができ、また、端面174aと端面174bとのそれぞれを介して別々に入射してきた光信号をともに光配線172を介して伝送することができる。
なお、光伝送構造体170の構成は、光導波路174の構造が異なる以外は、図1に示した光伝送構造体100の構成と略同一である。また、図中、173はコア、175はクラッドある。
【0046】
図5(b)に示すように、光伝送構造体180においては、この光伝送構造体180を構成する光導波路のコア層184が、その途中で分岐しており、異なる位置に形成された2つの端面184a、184bを有している。
このような構成の光伝送構造体180においてもまた、光配線182から光導波路のコア層184に伝送されてきた光信号を、端面184aを介して伝送される光信号と、端面184bを介して伝送される光信号とに分けることができ、また、端面184aと端面184bとのそれぞれを介して別々に入射してきた光信号をともに光配線182を介して伝送することができる。
なお、光伝送構造体180の構成は、光導波路184の構造が異なる以外は、図1に示した光伝送構造体100の構成と略同一である。また、図中、183はコア、185はクラッドである。
図5(a)および(b)に示したような光伝送構造体170、180もまた、例えば、光カップラとして機能することができる。
【0047】
また、本発明の光伝送構造体は、以下に図面を参照しながら説明するような実施形態であってもよい。
図6は、本発明の光伝送構造体の別の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。
図6に示すように、光伝送構造体190においては、光配線192を構成するクラッド195の表面に粗化面195aが形成されている。このように粗化面195aが形成されている場合には、本発明の光伝送構造体を接着剤等を介して他の光部品、例えば、フェルール等に取り付けた際に、密着性が向上することとなるからである。
なお、光伝送構造体190の構成は、粗化面195aが形成されている以外は、図1に示した光伝送構造体100の構成と同一である。また、図中、193はコアである。
また、本発明の光伝送構造体において、粗化面の形成される部分は、クラッドの表面に限定されるわけではなく、光配線の表面であって、光導波路のコア層と結合した部分以外の部分であればよい。
【0048】
上記光配線に粗化面を形成する方法としては特に限定されず、例えば、物理研磨や、化学研磨等を用いることができる。
上記物理研磨としては、例えば、紙やすりやラッピングペーパー等でこする方法等を用いることができる。
また、上記化学研磨としては、例えば、上記光配線を溶かすことができる溶液中に浸漬する方法等を用いることができる。具体的には、例えば、上記光配線が石英光ファイバである場合には、KOH等の強アルカリ溶液や、HF等の強酸溶液等の石英ガラスからなるクラッドを溶解することができる溶液中に浸漬する方法等を用いることができる。
【0049】
また、上記光伝送構造体においては、光配線の表面改質処理が施されていてもよい。表面改質処理が施されている場合もまた、粗化面が形成されている場合と同様、フェルール等の他の光部品との密着性が向上することとなる。
上記表面改質処理としては、例えば、プラズマ処理等が挙げられる。
【0050】
また、図6に示した光伝送構造体190における光導波路194の形状は、図1に示した光伝送構造体100の光導波路104の構造と同一であるが、上述したような、光配線の表面であって、光導波路のコア層と結合した部分以外の部分に粗化面が形成されている形態の光伝送構造体において、光導波路の形状は、図2〜5に示したような形状であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0051】
図1〜6に示した光伝送構造体は、光配線のコアと光導波路のコア層とが結合してなるものであったが、本発明の光伝送構造体において、光配線のコアと光導波路のコア層とは、両者の間で光信号を伝送することができるように構成されていれば必ずしも直接結合している必要はない。従って、本発明の光伝送構造体は、例えば、図7に示すような構造を有していてもよい。
【0052】
図7は、本発明の光伝送構造体の別の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。
図7に示す光伝送構造体200では、光配線202の一の端面202aがミラーとしての役割を果たすことができる形状を有しており、そのため、光配線202のコア203と光導波路のコア層204とは直接結合しておらず、クラッド205を介して光信号の伝送を行うことができる構成となっている。また、光配線202のクラッド205の光導波路のコア層204と結合した部分205aおよびその近傍は、特に平坦化処理が施されていないか、または、JIS B 0601に基づく面粗度Raが、0.1μm以上である。
このような構成の光伝送構造体においては、光配線のコアと光導波路のコア層との間で光配線のクラッドを介して光信号を好適に伝送することができる。なお、このような形態の光伝送構造体において、光配線のクラッドは、光信号の透過性に優れる材質からなるものである。
【0053】
また、本発明の光伝送構造体において、光配線と結合した光導波路の長さ特に限定されず、図1〜7に示した光導波路のように、必ずしもある程度の長さを必要とするものではない。
図26は、本発明の光伝送構造体の別の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。
図26に示す光伝送構造体400では、光配線402のコア403の端面403aに、レンズとして機能することができる半球状の光導波路404が結合している。このように、本発明の光伝送構造体では、光導波路として、レンズとして機能することができる光導波路が光配線に直接結合していてもよい。
なお、図26中、405はクラッドである。
【0054】
また、本発明の光伝送構造体では、光配線の光導波路のコア層と結合した部分は、特に平坦化処理が施されていないか、または、JIS B 0601に基づく面粗度Raが0.1μmであり、この部分には、通常、凹凸が存在している。ここで、このような光配線を含んで構成される本発明の光伝送構造体においては、光配線のコアの端面の凹んだ部分にのみ光導波路が形成されていてもよい。
【0055】
図1〜7、図26に示した光伝送構造体においては、該光伝送構造体を構成する光配線がコアとクラッドとからなるものであったが、本発明の光伝送構造体を構成する光配線は、光導波路のコア層と結合した側の端部の外周に被覆層が形成されているものであってもよい。
以下、光配線の外周に被覆層が形成された光伝送構造体について、図面を参照しながら説明する。図8(a)、(b)は、それぞれ本発明の光伝送構造体の別の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。
【0056】
図8(a)に示す光伝送構造体210では、光配線212のコア213と光導波路のコア層214とが直接結合しており、光配線212の光導波路のコア層214と結合した側の端部の外周には被覆層217が形成されている。なお、光伝送構造体210の構成は、被覆層217が形成されている以外は、図1に示した光伝送構造体100の構成と略同一である。なお、図中、215はクラッドである。
このような部分に被覆層が形成されているため、光伝送構造体210は、より機械的強度に優れることとなる。以下、この理由について、図面を参照しながら簡単に説明しておく。
【0057】
図13は、従来の光伝送構造体の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。図13に示す従来の光信号伝送用光路300においては、光配線の外周に被覆層が形成されている場合であっても、光配線302の光導波路のコア層304と結合した部分の外周305aには、被覆層が形成されていない。これは、従来、光配線のコアと光導波路のコア層とを結合する際には、上述したように光配線の端面には平坦化処理を施す必要があるとされており、例えば、研磨処理等の平坦化処理を行うには、予め、平坦化処理を施す光配線の端面の周囲の被覆層を剥離してコア303やクラッド305を露出させておく必要があったからである。
【0058】
このように、光配線302の光導波路のコア層304と結合した部分の外周の被覆層が剥離された光伝送構造体は、外部から力が加わった際に、この被覆層が剥離された部分305aで折れたりし易く、図8に示した、光配線212の光導波路のコア層214と結合した側の端部の外周には被覆層217が形成されている光伝送構造体210に比べると、その機械的強度に劣るものである。
【0059】
また、光配線の外周に被覆層が形成された光伝送構造体の実施形態は、図8(b)に示す光伝送構造体410のように、光配線412の光導波路のコア層414と結合する側の端面(コア413の端面413a、および、クラッド415の端面415a)が、被覆層417の端面417aよりも内側に存在しており、被覆層が形成された光配線の端面が凹形状になっていてもよい。
このような形状の光伝送構造体410では、コア層414の光配線と結合した部分の近傍(図中、Aと示す)もある程度保護することができるため、この場合も、機械的強度に優れることとなる。
図8(b)に示した光伝送構造体の実施形態は、光配線の光導波路のコア層と結合する側の端面が、被覆層の端面よりも内側に存在している以外は、図8(a)に示した光伝送構造体の実施形態と同様である。
【0060】
また,図8(a)および(b)に示したような、光配線の光導波路のコア層と結合した側の端部の外周に被覆層が形成されている光伝送構造体では、該被覆層の端面(図8(a)中217a、図8(b)中417aと示す)は、平坦化処理が施されていてもよいが、特に平坦化処理が施されていないか、または、JIS B 0601に基づく面粗度Raが0.1μm以上であることが望ましい。
【0061】
また、光配線の外周に被覆層が形成された光伝送構造体の実施形態は、図8(a)や、図8(b)に示した実施形態に限定されるわけではなく、例えば、上記被覆層が透明(通信波長光に対して透明)である場合には、光導波路のコア層が結合する位置は、上記被覆層の表面であってもよい。この場合には、例えば、光配線の端面に所望の角度でミラーを形成しておくことにより、被覆層を介して光信号を伝送することができ、光伝送構造体として機能することができる。
【0062】
図1〜8に示した光伝送構造体においては、光導波路のコア層の周囲の空気がクラッド層としての役割を果たすこととなっているが、本発明の光伝送構造体においては、光導波路のコア層の周囲に有機材料等からなるクラッド層が形成されていてもよい。上記光導波路がコア層と空気からなるクラッド層とで構成されている場合には、コア層自身は非常に不安定で、破損しやすく、取り扱いを極めて慎重に行わなければならないため、あまり実用的でない。
【0063】
また、上記コア層の周囲に有機材料等からなるクラッド層が形成されている場合、該有機材料は完全に硬化した状態であってもよいし、半硬化状態や未硬化状態であってもよいが、完全に硬化した状態であることが望ましい。半硬化状態や未硬化状態の場合には、クラッド層が空気の場合と同様、コア層が不安定で、取り扱いを慎重に行わなけばならないからである。
これに対し、クラッド層が完全に硬化した有機材料からなる場合には、光導波路の機械的強度が向上することとなる。
【0064】
また、本発明の光伝送構造体において、光導波路の光配線と結合した側と反対側の端面には、上述したような各種端面処理が施されていてもよいが、例えば、他の光部品が直接結合していてもよい。
以下、その具体例について、図面を参照しながら説明する。
図9(a)、(b)は、それぞれ本発明の光伝送構造体の別の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。
【0065】
図9(a)に示すように、光伝送構造体220においては、光導波路のコア層224の光配線222と結合した側と反対側の端部もまた、別の光配線232と結合している。また、コア層224の周囲には、固体化されたクラッド層228が形成されている。
このような構成の光伝送構造体220では、光配線222と光配線232との間で光導波路を介して好適に光信号の伝送を行うことができる。
この光伝送構造体220においても、光配線222、232の光導波路のコア層224と結合する部分の少なくとも一方は、特に平坦化処理は施されていないか、または、JIS B 0601に基づく面粗度Raが、0.1μm以上である。また、図中、223、233はコア、225、235はクラッドである。
【0066】
図9(b)に示すように、光伝送構造体240においては、光導波路のコア層244の光配線242と結合した側と反対側の端部が光素子249と結合している。また、コア層244の周囲には、固体化されたクラッド層248が形成されている。
このような構成の光伝送構造体240では、例えば、光素子が受光素子である場合には、光配線および光導波路を介して伝送されてきた光信号をこの受光素子で受信することができ、また、例えば、光素子が発光素子である場合には、この発光素子から発信した光信号を光導波路および光配線を介して伝送することができる。なお、図中、243はコア、245はクラッドである。
【0067】
また、光伝送構造体240において、光配線249の光導波路244と接続する側の表面には、樹脂からなる表面保護層249aが形成されており、この表面保護層249aの光導波路と結合する部分には、特に平坦化処理は施されていない。なお、上記光素子の表面には、上記表面被覆層が形成されていなくてもよい。また、上記表面被覆層の材質は、上記コア層またはクラッド層の材質と同一であってもよい。
【0068】
このように、本発明の光伝送構造体において、光導波路の光配線と結合した側と反対側の端面に他の光部品(光配線を含む)が結合している場合には、該光部品の光導波路のコア層と結合する部分は、特に平坦化処理が施されていないか、または、JIS B 0601に基づく面粗度Raが0.1μm以上であってもよく、この場合も、光素子と光導波路との間で好適に光信号を伝送することができる。
【0069】
また、図9(a)、(b)に示した光伝送構造体では、光導波路のコア層の光配線と結合した側と反対側の端部に光配線や光素子(受光素子や発光素子)が結合しているが、この部分に結合することができるものは、光配線や光素子に限定されるわけではなく、その他の具体例としては、例えば、レンズ、プリズム、フィルター、ミラー等の光部品等が挙げられる。
【0070】
また、例えば、光導波路の光配線と結合した側の端面に形成されている光部品が、レンズ、プリズム、フィルター、ミラー、光配線等である場合には、これらを介して上記光配線に結合した光導波路との間で光信号の伝送を行うことができるように、さらに別の光導波路が、光部品に結合していてもよい。
【0071】
また、このように、その光導波路のコア層の光配線と結合した側と反対側の端部に上記光部品(光配線や光素子を含む)が結合した光伝送構造体では、上記光部品の上記コア層と結合する部分以外の部分に、粗化面が形成されていてもよい。この光部品の部分を、接着剤等を介して他の光部品に取り付けた際等に密着性が向上することとなるからである。
【0072】
図10は、本発明の光伝送構造体の別の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。
図10に示すように、光伝送構造体250においては、コア層254からなる光導波路の両端に光配線252、262が結合しており、この光配線252、262の光導波路のコア層254と結合した側の端部のそれぞれの外周には被覆層257、267が形成されている。
このような構成の光伝送構造体250は、被覆層257、267が形成されているため、上述した理由で、より機械的強度に優れることとなる。なお、図中253、263はコア、255、265はクラッドである。
以上、本発明の光伝送構造体の種々の実施形態について、図面を参照しながら説明したが、本発明の光伝送構造体の実施形態は、これらに限定されるものではない。
なお、上記光伝送構造体を作製する方法については、後に詳述する。
【0073】
また、ここまで、個々の光伝送構造体の実施形態について説明したが、本発明の光伝送構造体は、複数組み合わせて用いることもできる。以下、その具体的な実施態様について図面を参照しながら説明する。
図11は、本発明の光伝送構造体同士の間で光信号を伝送する場合の実施態様を模式的に示す部分断面図である。
【0074】
図11に示す実施態様では、2つの光伝送構造体270、280が両者の間で光信号の伝送を行うことができるように、すなわち、それぞれの光伝送構造体の光導波路の光配線と結合した側と反対側の端部が対向するように配置されている。なお、光伝送構造体270、280の構造は、光導波路のコア層274、284の周囲に固体化されたクラッド層278、288が形成されており、さらに、光導波路のコア層274、284の光配線272、282に結合した側と反対側の端面にレンズ279、289が形成されている以外は、図2(c)に示した光伝送構造体と同様である。なお、図中、273、283はコア、275、285はクラッドである。
このような実施態様では、光伝送構造体同士の間で好適に光信号の伝送を行うことができる。
また、コア層の端面の形状が、レンズとしての機能を特に持たず、わずかにカーブした曲面であっても、図11に示した実施形態のように、光伝送構造体の光導波路の光配線と結合した側と反対側の端部が対向するように光伝送構造体同士を配置し、さらに、これらの光伝送構造体を互いに押し付ける事により、その隙間での屈折率の異なる空気の介在を最小にし、光伝送構造体の接触部分で効率よく接触することができ、光伝送構造体同士の間で好適に光信号の伝送を行うことができる。
【0075】
なお、2つの光伝送構造体の間で光信号の伝送を行うことができるように、両者を配置する場合、光伝送構造体の他方の光伝送構造体と対向する端面は、図11に示したようにレンズが形成されている必要があるわけではなく、任意の形状を有していればよい。
【0076】
図12は、本発明の光伝送構造体を配列させて使用する場合の実施態様を模式的に示す部分断面図である。
図12に示す実施態様では、4つの光伝送構造体290a〜290dが等間隔に配列されており、それぞれの光伝送構造体における光導波路の光配線と結合した側と反対側の端部には、レンズ299a〜299dが形成されている。
また、それぞれの光伝送構造体の隣合う光伝送構造体との間隙には、樹脂層296a〜296cが形成され、この樹脂層296a〜296cにより、隣合う光伝送構造体同士が固定されている。なお、樹脂層296a〜296cの材質は、例えば、コア層294、または、クラッド層298の材質と同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、層296a〜296cは特に樹脂にも限定されず、単に空気であっても良いし、ガラスのような無機物質であってもよい。
【0077】
このような実施態様で用いることにより、一度に多数の経路で光信号を伝送することが可能なアレイ状光伝送構造体として機能することできる。
なお、光伝送構造体290a〜290dのそれぞれの構造は、図11に示した光伝送構造体270と同一である。また、図中、293はコア、295はクラッドである。
【0078】
また、図12に示した実施形態では、光配線の光導波路と結合する部分は光伝送構造体290a〜290dのすべてで揃っているが、この部分は、光伝送構造体それぞれにおいて必ずしも揃っている必要はない。
図27は、本発明の光伝送構造体を配列させて使用する場合の別の実施形態を模式的に示す部分断面図である。
図27に示す実施形態では、図12に示す実施形態と同様、4つの光伝送構造体410a〜410dが等間隔に配列されており、それぞれの光伝送構造体における光導波路の光配線と結合した側と反対側の端部には、レンズ419a〜419dが形成されている。
【0079】
また、図27に示す実施形態においては、コア413およびクラッド415からなる光配線と、コア層414およびクラッド層418からなる光導波路の界面の位置は不揃いであり、また、光配線の光導波路と結合した側の端面の形状も、光伝送構造体410a〜410dのそれぞれにおいて、同一ではない。
また、図27に示す実施形態では、それぞれの光伝送構造体の隣合う光伝送構造体との間隙は、樹脂層416と空気層とから構成されている。具体的には、それぞれの光導波路の隣合う光導波路との間隙、および、それぞれの光配線における光導波路と結合した側の端部近傍付近の隣合う光配線との間隙とが空気層で構成され、一方、上記端部近傍付近以外の隣合う光配線同士の間隙が樹脂層で構成されている。なお、この樹脂層により、隣合う光配線同士が固定されている。
なお、図27に示した実施形態の具体例としては、例えば、ニッパやはさみ等で切断され、切断された端部近傍の被覆層が除去された光ファイバリボン(テープ光ファイバ)のそれぞれの光ファイバに、光導波路が結合したもの等が挙げられる。
【0080】
また、図12、27に示した実施形態では、光導波路の長さや、光導波路の端面の形状等はすべての光導波路で同一であったが、本発明の光伝送構造体を配列させて使用する実施形態では、それぞれの光導波路の長さや、光導波路の端面の形状等は、光導波路ごとに異なっていてもよい。
また、図12、27に示した実施形態では、それぞれの光配線が等間隔で配列されているが、光伝送構造体を配列させて使用する実施形態では、必ずしも光配線は、等間隔で配列されていなくてよい。
【0081】
また、本発明の光伝送構造体を複数用いたアレイ状光伝送構造体では、必ずしも、隣合う光伝送構造体同士が樹脂層で固定されている必要はなく、例えば、複数の光伝送構造体のそれぞれが、複数のV溝が形成された基板に固定され、この状態でアレイ状光伝送構造体として機能するものであってもよい。
【0082】
また、図12、27に示したアレイ状光伝送構造体において、光導波路の光配線と接合した側と反対側の端面にはレンズが形成されているが、アレイ状光伝送構造体において、上記端面はレンズ以外の形状に端面処理が施されていてもよく、また、該端面に光部品等が結合していてもよい。
【0083】
次に、本発明の光導波路の形成方法について説明する。
本発明の光導波路の形成方法は、感光性樹脂または感光性組成物(以下、両者を合わせて感光性組成物等ともいう)中に光配線の一部を浸漬し、上記光配線を介して上記感光性樹脂または感光性組成物中に光を照射することにより、上記感光性樹脂または感光性組成物中の光の経路に応じたコア層を形成する光導波路の形成方法であって、
上記光配線の上記コア層と結合する部分は、特に平坦化処理が施されていないか、または、JIS B 0601に基づく面粗度Raが、0.1μm以上であることを特徴とする。
【0084】
本発明の光導波路の形成方法では、感光性組成物等に光を照射する光配線の上記コア層と結合する部分が、特に平坦化処理が施されていないか、または、JISB 0601に基づく面粗度Raが、0.1μm以上であっても、光配線との接続性に優れるコア層を形成することができる。
従って、上記光配線の上記コア層と結合する部分は、高精度な端面処理を施さなくても、例えば、通常、電気配線等の切断に用いられる切断用冶具を用いて切断したり、特に切断用冶具を用いることなく、他の任意の切断方法(例えば、手で折る)を用いて切断したりするのみで形成することができ、本発明の形成方法では、光導波路の形成工程を簡略化することができる。また、形成工程を簡略化することができるため、経済的にも有利である。
【0085】
既に本発明の光伝送構造体について説明する際に述べたように、光配線の端面の面粗度Raを0.1μm未満にする場合には、煩雑な研磨処理が必要であり、また、光ファイバクリーバを用いて、光ファイバを切断する場合には、光ファイバの端面の面粗度Raは、0.1μm未満になるものの、光ファイバクリーバを用いた切断作業を経ることは歩留まりの低下に繋がり、また、作業自体にある程度の熟練を要していた。
これに対し、本発明の光導波路の形成方法は、上述したように、煩雑な研磨処理が不要で、工程の簡略化を図ることができる。また、経済的にも有利である。
このような本発明の光導波路の形成方法を用いることにより、光配線と光導波路とが結合してなる本発明の光伝送構造体を好適に製造することができる。
【0086】
なお、本発明の光導波路の形成方法において、使用する感光性組成物等としては、感光すると硬化するもの、すなわち、光硬化性樹脂を含むものが望ましい。光を照射することにより硬化し、形成されたコア層が周囲と混じり合うことなく、そのまま安定に存在することとなるからである。
以下では、感光性組成物等とは、特に断わりのない限り、光硬化性樹脂を含むものを指すこととする。
【0087】。
以下、本発明の光導波路の形成方法について、図面を参照しながら説明する。
なお、本発明の形成方法を説明するための図面では、光配線のコア層と結合する部分を平坦に描画しているが、図面は形成方法を模試的に示したものであり、実際には、上述したように、光配線のコア層と結合する部分は、特に平坦化処理が施されていないか、または、JIS B 0601に基づく面粗度Raが、0.1μm以上である。
図14(a)〜(d)は、本発明の光導波路の形成方法の一例を説明するための模式図である。
【0088】
本発明の光導波路の形成方法では、まず、感光性組成物等中に光配線の一端を浸漬し、その後、この光配線を介して、上記感光性組成物等に光を照射することにより光の経路に応じたコア層を形成し光導波路とする。
上記光配線としては、本発明の光伝送構造体を構成する光配線と同様のもの等が挙げられる。
【0089】
具体的には、まず、感光性組成物等1を光配線2のコア層と結合する部分を包み込むように塗り付けたり(図14(a)参照)、感光性組成物等を容器に入れ、ここに、光配線の一端を浸漬したりする。
【0090】
上記感光性組成物等について、その硬化前後の光屈折率は特に限定されるものではないが、その硬化後の光屈折率(コア層の光屈折率)は、その下限が、光配線のコア層と結合する部分の光屈折率の90%であることが望ましく、その上限が、光配線のコア層と接合する部分の光屈折率の110%であることが望ましい。このような範囲の光屈折率を有するコア層を形成することができる感光性組成物等を用いることにより、光配線の上記コア層と結合する部分が上記範囲の面粗度を有していても、該光配線との接続性に優れたコア層を形成することができる。また、上記コア層の光屈折率の下限は、上記光配線の上記コア層と結合する部分の光屈折率の95%であることがより望ましく、98%であることがさらに望ましい。一方、上記コア層の光屈折率の上限は、上記光配線の上記コア層と結合する部分の光屈折率の105%であることがより望ましく、102%であることがさらに望ましい。
【0091】
このような範囲の光屈折率を有するコア層を形成することが望ましい理由は、本発明の形成方法を用いて光配線に接続した光導波路を形成した場合に、光配線と光導波路とが接続された光伝送構造体が、光信号の伝送性に優れたものとなるからである。
なお、上記範囲のそれぞれの光屈折率を有するコア層(光導波路)を形成した場合の具体的な反射減衰量は,既に、本発明の光伝送構造体について説明する際に述べたとおりである。
【0092】
上記光配線のコアの光屈折率は、その材料により異なるが、例えば、純粋石英ガラスの光屈折率は、nDが約1.46であるので、純粋石英ガラスを光配線に用いた場合、感光性組成物等の硬化後の光屈折率は、nDが約1.31〜約1.61の範囲内であることが望ましい。なお、上記光屈折率nDは、Naの輝線589nmの光を通過させたときの屈折率を意味する。
また、光配線や光導波路に用いる樹脂等の光屈折率は、その波長に依存して変化するが、その比(光導波路のコア層の光屈折率/光配線のコアの光屈折率)は、例えば、紫外線領域〜近赤外線領域において殆ど変わらない。
【0093】
また、本発明の形成方法においては、上記感光性組成等を感光させて形成したコア層が上記範囲の光屈折率を有するとともに、感光前のコア層の光屈折率、すなわち、上記感光性組成物等自体の光屈折率が、下記の範囲内にあることが望ましい。
すなわち、上記感光性組成物等自体の光屈折率の下限は、上記光配線の上記光導波路のコア層と結合する部分の光屈折率の90%であることが望ましく、95%であることがより望ましく、98%であることがさらに望ましい。一方、上記光屈折率の上限は、上記光配線のコア層と結合する部分の光屈折率の110%であることが望ましく、105%であることがより望ましく、102%であることがさらに望ましい。
感光前の光屈折率が上記範囲にある場合には、光配線を介して感光性組成物等に光を照射した際に、この光は、所望の方向に確実に照射されることとなり、上記光配線と上記感光性組成物等との界面で散乱することがほとんどないからである。
【0094】
このように、感光前後のコア層が上記範囲の光屈折率を有することにより、高精度な端面処理を施していない光配線と、より高い信頼性で接続された光導波路を形成することができる。
【0095】
また、本発明の形成方法において、上記コア層が上記範囲の光屈折率を有することが望ましい理由としては、以下の理由も挙げられる。
以下、その理由について、図面を参照しながら簡単に説明する。
図28は、本発明の光導波路の形成方法において、光配線を介して照射する照射光の光路を説明するための説明図である。
【0096】
一般に、光ファイバ等の光配線の端面に、特に平坦化処理を施さなかった場合、その端面の中心線(図28参照)が光軸に垂直であるとは考えにくい。
通常、光配線の端面の中心線と光軸とのなす角θ(図28参照)は、少なくとも90度以外の角度となるものと考えられ、また、その角度が任意な値をとることは避けられない。この場合、光配線のコアと光導波路のコア層とに光屈折率差が存在すると、本発明の形成方法において、感光性組成物等に光を照射したときに、照射光の光路が任意の方向に折れ曲がってしまう。その結果、光導波路のコア層はその光路に応じて任意の角度に折れ曲がって形成されてしまう。
【0097】
一般にスネルの法則に近似的に考えると、図28において、θ<90度で、かつ、光配線のコアの光屈折率>光導波路のコア層の光屈折率のとき、照射光の光路は図中▲1▼の方向に折れ曲がることとなる。一方、θ<90度で、かつ、光配線のコアの光屈折率<光導波路のコア層の光屈折率のとき、光導波路は図中▲2▼の方向に折れ曲がることとなる。
【0098】
以上のように折れ曲がり角度がばらつくと、 本発明の形成方法は、どの光屈折率に対しても用いることができるものの、結果的に形成した光導波路のコア層がある所定の任意の方向に形成されることとなり、最終的な光導波路部品の特性値がばらつくこととなる。
というのも、上述したように、折れ曲がり角度は、特に平坦化処理を施していない光配線においては、任意な値を取る中心線と光軸とのなす角θに対して、さまざまな値を取り得るため、具体的な折れ曲がり角度について一概に規定することができないからである。
【0099】
この欠点は、例えば、特に平坦化処理も施していない光配線の端面の中心線を、簡単な研磨により、光軸とのなす角が90度となるようにすることによって改善することもできる。なお、ここでいう簡単な研磨とは、その端面のRaが、0.1μm以上であるような研磨でよい。従来からの微細砥粒用いた研磨に比べて大幅にその研磨工程を簡略化できるからである。
【0100】
また、上述した欠点を解消する他の方法として、特に平坦化処理も施していない光配線をそのまま使用し、光配線のコアと光導波路のコア層との光屈折率の差を小さくする方法も用いることができる。従って、この理由からも光屈折率の範囲は上述の範囲にあることが望ましい。
【0101】
具体的には、例えば、ここで仮に、θ=45度であると仮定し、光配線のコアの光屈折率=1.48としたときの可能な折れ曲がり角度について述べると、光導波路のコア層の光屈折率が、光配線のコアの光屈折率の90〜110%の場合、コア層の形成方向は、光配線の光軸に対して6.8〜−5.0度の間で任意に折れ曲がる。また、上述した光導波路のコア層の光屈折率の範囲が95〜105%のときには、コア層の形成方向は光配線の光軸に対して3.1〜−2.7度の間で任意に折れ曲がり、さらに、上述した光導波路のコア層の光屈折率の範囲が98〜102%のときには、コア層の形成方向は光配線の光軸に対して1.2〜−1.1度の間で任意に折れ曲がることとなる。なお、ここでは図中の▲1▼の方向に折れ曲がる場合の折れ曲がり角度を正の値としている。
このように、光配線のコアと光導波路のコア層との光屈折率の差が小さいほど、折れ曲がり角は小さくなり、最終的な光導波路部品の特性値のばらつきが小さくなる。
【0102】
上記感光性樹脂としては、硬化後に、光導波路としての基本的な特性、すなわち、所望の波長帯域の光に対して透過性を有するとともに、上記範囲の光屈折率を有するものであれば特に限定されず、具体的には、例えば、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、重水素化PMMA、重水素フッ素化PMMA、フッ素化PMMA等のアクリル樹脂に、必要に応じて、単量体や光重合開始剤、増感剤等の各種添加剤、溶剤等を含むものが挙げられる。
【0103】
また、上記感光性樹脂としては、エポキシ樹脂、フッ素化エポキシ樹脂、ポリオレフィン系樹脂、重水素化シリコーン樹脂等のシリコーン樹脂、ベンゾシクロブテン等に感光性を付与したものを樹脂成分として含み、さらに、必要に応じて、単量体や光重合開始剤、増感剤等の各種添加剤、溶剤等を含むものも挙げられる。なお、上記樹脂成分に感光性を付与する方法としては、例えば、その末端や側鎖にアリル基やアクリロイル基を付与する方法等が挙げられる。
また、アリル基やアクリロイル基を分子の末端または側鎖にもつポリエン化合物と、ポリチオール化合物と、光重合開始剤と、必要に応じて、各種添加剤や溶剤等とを含むものも感光性樹脂として用いることができる。
【0104】
なお、本明細書において、感光性樹脂には、上述したような光の照射により化学反応を起こす高分子のみならず、光の照射により光重合反応が進行する単量体、例えば、(メタ)アクリル酸メチル等も含むものとし、さらには、2種類以上の樹脂成分および/または単量体が、光の照射により化学反応を起し、樹脂複合体を形成するものも含むものとする。
【0105】
また、本発明の形成方法で用いる感光性樹脂は、光を照射することにより硬化反応が進行するものであればよく、例えば、エポキシ樹脂と、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩等の光を照射することによりルイス酸を発生する光開始剤と含むものであってよい。また、ベンゾインアルキルエーテル、アセトフェノン誘導体類、ベンゾフェノンやその誘導体等の光を照射することによりラジカルを生成する光開始剤と、ラジカル重合機構により重合が進行する樹脂成分とを含むものや、塩素化アセトフェノンやその誘導体等の光を照射することにより強酸が遊離する光開始剤と、酸により重合が進行する樹脂成分とを含むものであってもよい。
従って、本明細書においては、樹脂成分が感光性の官能基を有さないものであっても、光を照射することにより硬化反応が進行するものは、感光性樹脂ということとする。
【0106】
上記感光性組成物としては、硬化後に、光導波路としての基本的な特性を有するとともに、上記範囲の光屈折率を有する感光性樹脂を含むものが挙げられ、具体的には、例えば、上記した感光性樹脂を2種以上含む樹脂組成物等が挙げられる。
【0107】
上記感光性組成物等中には、さらに、樹脂粒子、無機粒子、金属粒子等の粒子が含まれていてもよい。
このような粒子を含む感光性組成物等を用いて光導波路を形成することにより、光配線と光導波路との間で熱膨張係数の整合をはかることができる。
【0108】
上記樹脂粒子としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、感光性樹脂、熱硬化性樹脂の一部が感光性化された樹脂、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との樹脂複合体、感光性樹脂と熱可塑性樹脂との複合体等からなるものが挙げられる。
【0109】
具体的には、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等の熱硬化性樹脂;これらの熱硬化性樹脂の熱硬化基(例えば、エポキシ樹脂におけるエポキシ基)にメタクリル酸やアクリル酸等を反応させ、アクリル基を付与した樹脂;フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスルフォン(PSF)、ポリフェニレンスルホン(PPS)、ポリフェニレンサルファイド(PPES)、ポリフェニルエーテル(PPE)、ポリエーテルイミド(PI)等の熱可塑性樹脂;アクリル樹脂等の感光性樹脂等からなるものが挙げられる。
また、上記熱硬化性樹脂と上記熱可塑性樹脂との樹脂複合体や、上記アクリル基を付与した樹脂や上記感光性樹脂と上記熱可塑性樹脂との樹脂複合体からなるものを用いることもできる。
また、上記樹脂粒子としては、ゴムからなる樹脂粒子を用いることもできる。
【0110】
また、上記無機粒子としては、例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等のカルシウム化合物、炭酸カリウム等のカリウム化合物、マグネシア、ドロマイト、塩基性炭酸マグネシウム等のマグネシウム化合物、シリカ、ゼオライト等のケイ素化合物等からなるものが挙げられる。
また、上記無機粒子として、リンやリン化合物からなるものを用いることもできる。
【0111】
上記金属粒子としては、例えば、金、銀、銅、パラジウム、ニッケル、白金、鉄、亜鉛、鉛、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム等からなるものが挙げられる。
これらの樹脂粒子、無機粒子および金属粒子は、単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。
【0112】
また、上記粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、楕円球状、破砕状、多面体状等が挙げられる。これらのなかでは、球状、または、楕円球状が望ましい。球状や楕円球状の粒子には角がないため、光導波路にクラック等が発生しにくいからである。
【0113】
また、上記粒子の粒径は、通信波長より短いことが望ましい。粒径が通信波長より長いと光信号の伝送を阻害することがあるからである。
なお、本明細書において、粒子の粒径とは、粒子の一番長い部分の長さをいう。
【0114】
上記感光性組成物等に粒子が含まれる場合、その配合量の下限は、硬化後の配合量で10重量%であることが望ましく、20重量%であることがより望ましい。一方、上記配合量の上限は、硬化後の配合量で80重量%であることが望ましく、70重量%であることがより望ましい。粒子の配合量が10重量%未満であると、粒子を配合させる効果があまり得られないことがあり、一方、粒子の配合量が80重量%を超えると、光信号の伝送が阻害されることがあるからである。
【0115】
また、上記感光性組成物等は、上述したように、光を照射することにより硬化し、特定の範囲の光屈折率を有するコア層となる。
従って、本発明の形成方法では、コア層が上記範囲の光屈折率となる感光性組成物等を選択して使用すればよいが、上記範囲外の光屈折率となる感光性組成物等であっても、その光屈折率を調整することにより使用することができる。また、ここで、感光性組成物等の光屈折率を調整する場合、硬化前後のコア層の光屈折率が上記範囲になるように調整することが望ましい。
【0116】
一般に、高分子の光屈折率は、分子屈折と分子容との比(以下、(分子屈折)/(分子容)と示す)が大きければ大きくなるため、分子屈折および/または分子容を調整することにより、高分子の光屈折率を調整することができる。
【0117】
具体的には、分子屈折(高分子の折り返し単位を構成する個々の基の原子屈折の総和)を調整する場合には、例えば、塩素、イオウ等の分極率の大きな基を導入すると原子屈折が上がるため、分子屈折を大きくすることができる。
また、二重結合基や芳香族環基を導入し、分子の対称性を下げた場合にも分極率が大きくなり、原子屈折が上がるため、分子屈折を大きくすることができる。
【0118】
また、密度を調整する場合には、例えば、架橋点間分子量を小さくすることにより密度を大きくすることができる。
また、例えば、フッ素は分極率に比してその体積が大きいため、フッ素を含む基を導入することによっても密度を大きくすることができる。
【0119】
また、本発明で使用する光配線2の一端のコアの端面3aは、特に研磨処理等の平坦化処理が施されてなくてもよく、この場合、端面のJIS B 0601に基づく面粗度Raは特に限定されない。しかしながら、端面に何の平坦化処理も施さずに、端面の面粗度Raが0.1μm未満となることは考えにくいので、通常、その端面の面粗度Raは、少なくとも0.1μm以上であると考えられる。
【0120】
また、光ファイバアレイ等を製造する際には、切断処理等が必要になることから、本発明においても、場合によっては、簡単な研磨処理等の平坦化処理を施してよいが、その場合にも、光配線の端面の面粗度Raが0.1μm未満となるように、精密な研磨処理を施す必要はない。なお、光ファイバカッタ等を用いた切断処理も、一種の端面の平坦化処理であるため、本発明では、上記切断処理も平坦化処理に含めるものとする。
【0121】
本発明において、光配線の端面に上記平坦化処理を施した場合、少なくとも光配線の端面の面粗度Raが0.1μm以上となるように研磨処理を施せばよい。また、研磨処理後の光配線の端面の面粗度Raは、1μm以上であってもかまわない。より簡単に低コストで研磨処理を行うことができるからである。このような面粗度を有する部分は、そのほぼ延長上に形成するコア層との接続性にも優れる。
【0122】
本発明の形成方法では、上述したように、光導波路のコア層と結合する部分は平坦化処理が施されていないか、または、少なくともJIS B 0601に基づく面粗度Raが、0.1μm以上であり、この部分を感光性組成物等に浸漬した後、光配線2を介して光を照射する(図14(b)参照)
このように光配線2を介して光を照射することにより、感光性組成物等1が、光の経路に応じて、光配線側から硬化しはじめ、光配線2と結合した光導波路のコア層4が形成されることとなる(図14(c)、(d)参照)。
【0123】
また、このような光導波路の形成方法においては、光配線2を介して光を照射する際に、予め、未硬化の感光性樹脂等1中の光路上にあて板を配置しておくことにより、光配線と結合する側と反対側の端面のより平滑な光導波路を形成することができる。
【0124】
このように、本発明の光導波路の形成方法では、照射した光の経路に応じて、光導波路側から序々にコア層が形成されていくこととなる。
従って、本発明の形成方法で用いる感光性樹脂や感光性組成物は、硬化後に、その屈折率が硬化前よりも高くなるものであることが望ましい。硬化後に光屈折率が高くなることにより、光配線を介して照射した光が形成されたコア層に閉じ込められつつ、該コア層の先端から集中的に照射されることとなり、光の経路に応じた光導波路をより確実に形成することができるからである。
【0125】
また、本発明の形成方法において、感光性組成物等を硬化させる際に照射する光としては特に限定されず、感光性組成物等の組成を考慮して適宜選択すればよく、例えば、波長200〜500nmの紫外線を含む光等を用いることができる。また、このような波長の光を照射する光源としては、例えば、高圧水銀ランプ等を用いることができる。また、メタルハライドランプやキセノンランプ、レーザ等も使用することができる。
また、本発明の形成方法において、上記光配線を介して光を照射する際には、通常、上記光配線の感光性組成物等に浸漬した側と反対側の端部から光を導入することとなるが、場合によっては、上記光配線の側面から光を導入してもよい。光配線の形状等によっては、光配線の側面から光を導入したほうが、効率よく光を導入することができる場合があるからである。
【0126】
このような工程を経ることにより、光配線と結合した光導波路のコア層を形成することができる。
また、図14(a)〜(d)示した光導波路の形成方法を用いた場合には、図1に示した本発明の光伝送構造体を製造することができるが、本発明の形成方法では、反射板やあて板等を用いることにより、図2〜8に示したような形状の光伝送構造体を形成することができる。
以下、その具体例について、図面を参照しながら説明する。
【0127】
図15〜図19は、本発明の光導波路の形成方法の工程の一部を説明するための模式図である。
図2(a)に示したような光配線と結合した側と反対側の端面に光路変換ミラーを有する光導波路を形成する場合には、図15に示すように、本発明の光導波路の形成方法において、光配線32を介して感光性組成物等31中に光を照射する際に、照射した光の光路上にあて板36を配置しておくことにより、光配線と結合した側と反対側の端面34aの形状をあて板36に沿った形状とすることができ、その結果、該端面を光路変換ミラーとすることができる。
【0128】
図15に示す形成方法においては、あて板の光が照射される面の光配線の端面に対する傾きが45°となるようにあて板を配置することにより、90°光路変換ミラーを形成しているが、上記あて板の光が照射される面の光配線の端面に対する傾きは45°に限定されるわけではなく、任意の傾きであればよい。具体的には、例えば、上記あて板の光が照射される面の光配線の端面に対する傾きを8°とすることにより、図2(b)に示した光伝送構造体のように、光導波路の光配線と結合した側と反対側の端面を反射防止処理面とすることができる。
また、例えば、球面を有するあて板を照射光の光路上に配置した場合には、図2(c)に示した光伝送構造体のように、光導波路の光配線と結合した側と反対側の端面にレンズを形成することができる。
【0129】
また、あて板として、光の照射される面の傾き0°のあて板(光の照射される面が光配線の端面と平行のあて板)用いてもよい。図1に示した形状の光伝送構造体において、光導波路のコア層の光配線と結合する側と反対側の端面がより平滑になるからである。
【0130】
なお、本明細書において、「あて板の光が照射される面の光配線の端面に対する傾き」とは、光配線の端面が光配線の出射端(または入射端)の光軸に垂直な面であると仮定した場合に、該端面とあて板とのなす角をいう。
【0131】
上記あて板としては、例えば、照射光をほぼ完全に透過および/または吸収するもの等を用いることができる。上記あて板の材質は、光配線を介して照射する光の波長や上記感光性組成物等の光屈折率等を考慮して適宜選択すればよい。
【0132】
図3に示したような光導波路のコア層に屈曲部が形成された光伝送構造体を製造する場合には、図16に示すように、本発明の光導波路の形成方法において、光配線42を介して感光性組成物等41中に光を照射する際に、照射する光の光路上にミラー46を配置しておくことにより、照射光の光路が屈曲するため、屈曲部44aを有する光導波路のコア層44を形成することができる。
なお、図16に示す形成方法では、形成する屈曲部の角度が90°になるようにミラーを配置しているが、形成する屈曲部の角度は、90°に限定されるものではなく、ミラーは、所望の角度の屈曲部を形成することができるように配置すればよい。
【0133】
また、本発明の形成方法で形成する屈曲部の数は、1つに限定されるわけではなく、2つ以上であってもよい。従って、本発明の形成方法では、形成する屈曲部の数に応じて、照射光の光路上にミラーを配置すればよい。
上記ミラーの材質(反射面の材質)としては、光配線を介して照射する光に対して高い反射率を有するものであれば特に限定されず、照射光の波長等を考慮して適宜選択すればよい。具体例としては、例えば、アルミニウム、シリコン等が挙げられる。
また、上記ミラーの反射面は、所定の角度に光路を変換するためにある程度の平坦化処理が施されている必要はあるが、JIS B 0601に基づく面粗度Raが0.1μm以上であってもよい。
【0134】
図4(a)に示したような光配線と結合した側と反対側の端面に光分岐結合用ミラーを有する光導波路を形成する場合には、図17に示すように、光配線52を介して感光性組成物等51中に光を照射する際に、照射する光の光路上に90°の角をなす2面を有するあて板56を配置しておくことにより、形成するコア層54の光配線と結合した側と反対側の端面の形状をあて板56に沿った形状とすることができ、その結果、該端面を反射面54a、54bを有する光分岐結合用ミラーとすることができる。
なお、光分岐結合用ミラーを有する光導波路を形成する場合のあて板の形状としては、図17に示した形状に限定されるわけではなく、形成する光分岐結合用ミラーの形状に合わせて適宜選択すればよい。
【0135】
また、図5(a)に示したような光配線と結合した側と反対側が、異なる位置に形成された複数の端面を有する光導波路を形成する場合には、図18(a)に示すように、光配線62を介して感光性組成物等61中に光を照射する際に、照射する光の光路上の一部にのみあて板66を配置する。
このように、あて板66を光路上の一部に配置することにより、形成するコア層64の一部にあて板66に沿った形状の光路変換ミラー64aを形成することができる。なお、このような方法で用いるあて板の形状は特に限定されるものではなく、図18(a)に示したようにその厚さが厚いものであってもよいし、厚さが薄いものであってもよい。
【0136】
さらに、図5(b)に示したような光導波路を形成する場合には、図18(b)に示すように、光配線72を介して感光性組成物等71中に光を照射する際に、照射する光路上の一部にのみミラー76を配置する。このような位置にミラーを配置することにより、照射する光の一部が、このミラー76で反射するため、図5(b)に示したようなコア層74を形成することができる。
【0137】
また、図7に示したような光配線との間で光信号を伝送することができるように構成されており、光配線のコア層と直接結合しない光導波路を形成する場合には、図19(a)に示すように、感光性組成物等81に浸漬する光配線82の端部に、予め、ミラー86を取り付けておき、このようにミラーを取り付けた状態で、光配線82を介して光を照射することにより、図7に示したような、光配線との間で光信号の伝送を行うことができ、かつ、光配線82のクラッド85に結合したコア層84を形成することができる。
【0138】
また、光配線の端部にミラー86を取り付けた場合、光配線のミラーを取り付ける側の端面は、平坦化処理が施されていないか、または、上述した範囲の面粗度を有しているため、ミラーと密着するような形状にはなく、図19(b)に示すように、光配線の端面とミラーとの間には隙間(図中、A1、A2と示す)が存在していることもある。
この場合、本発明の形成方法では、このような状態にある光配線を感光性組成物等に浸漬し、該光配線を介して光を照射した際に、光配線の端面とミラー86との間隙にも、光導波路のコア層84と同様の材質からなる樹脂層87a、87b(光導波路のコア層として機能する)が形成されることとなり、その結果、形成した光導波路は、光配線との間で好適に光信号の伝送を行うことができることとなる。
なお、図19(b)は、図19(a)の部分拡大図であり、感光性組成物等については、その記載を省略している。
【0139】
また、図16、図18(b)、図19を参照しながら説明したような、本発明の形成方法においては、光導波路を形成する際に使用したミラーを、形成後にそのまま光導波路に取り付けた状態にしておいてもよいが、光導波路の形成後には、該ミラーを取り外してミラーに接していた部分を空気等にさらしてもよい。上記光導波路と空気とでは、屈折率が大幅に異なるため、空気自体がミラーとして機能するからである。また、ミラーを取り除いた後、通信波長に対してより反射光率の優れる別の金属膜、多層膜などをスパッタ、蒸着等の方法で取り付けてもよい。
なお、上述したようにミラーを取り外す場合には、形成時に用いるミラーの反射面(例えば、コーティング層)は平坦であることが望ましく、一方、ミラーを取り外すことがない場合には、ミラーの反射面には特に平坦化処理が施されていなくてもよい。
【0140】
本発明の光導波路の形成方法では、上述したような方法を用いることにより、光の経路に応じて硬化したコア層と、未硬化のクラッド層とからなる光導波路を形成することができる。
しかしながら、未硬化のクラッド層は、通常液体であり、この状態では、コア層が流動しやすく、光導波路として非常に不安定である。
【0141】
従って、上記コア層を形成した後、上記未硬化のクラッド層に硬化処理を施すことにより、固体のクラッド層を形成することが望ましい。そこで、上記コア層を形成した後、未硬化のクラッド層に光を照射することにより、系全体を固体化することが可能である。しかしながら、上記感光性組成物等として1種類の感光性樹脂のみを含むものを使用する場合には、クラッド層の硬化により、コア層とクラッド層とがほぼ同一の光屈折率を有することとなり、コア層に光を閉じ込めることができなくなるため、光導波路として機能しなくなってしまう。
そのため、以下のような方法を用いて固体化したクラッド層を形成することにより、系全体が固体化した安定な光導波路とすることが望ましい。
【0142】
すなわち、例えば、上記コア層を形成した後、その周囲の未硬化の感光性組成物等を除去し、続いて、上記コア層を別の樹脂や樹脂組成物に浸漬した後、硬化処理を施すことによりクラッド層を形成する方法を用いることができる。しかしながら、上述したように、コア層のみが硬化した状態では、該コア層は非常に不安定なことがあり、この状態で未硬化の感光性組成物等を除去することは、取り扱いを極めて慎重に行わなければない。
従って、例えば、下記のような方法を用いてクラッド層を形成することが望ましい。
【0143】
すなわち、上記感光性組成物中に、コア層を形成するための感光性樹脂(以下、コア形成用樹脂ともいう)とは別に、予め、クラッド層を形成するための樹脂(以下、クラッド形成用樹脂ともいう)を混合しておく。ここで、クラッド形成用樹脂としては、上記コア形成用樹脂よりも強い強度の光を受けて初めて重合する感光性樹脂であって、硬化前後の光屈折率がともにコア層の光屈折率よりも小さいものを選択しておく。上記クラッド形成用樹脂としては、上記した特性を有するものであれば、上述した感光性樹脂を適宜選択して使用することができる。
【0144】
そして、上述したように、光配線を介して光を照射する。その際、照射する光としては弱い光、すなわち、コア形成用樹脂の重合は可能であるが、クラッド形成用樹脂の重合は実質的にほぼ不可能な強度の光を照射する。すると、感光性組成物のうち感光性がより高いコア形成用樹脂だけが選択的に重合を開始する。コア形成用樹脂およびクラッド形成用樹脂を含む感光性組成物のうち、コア形成用樹脂だけが重合を始めると、未硬化のクラッド形成用樹脂は、流動性を保っているため、硬化していくコア形成用樹脂から排除されていく。また、コア層の光屈折率は未硬化のクラッド形成用樹脂の光屈折率よりも大きいため、光配線を介して照射した光は形成されたコア層に閉じ込められつつ、先端に集中的に照射される。その結果、光配線の一端から照射された光によって、光の経路に応じてコア形成用樹脂が優先的に硬化し、その光の経路に応じたコア層が形成され、その周囲を未硬化の感光性組成物が包囲した状態となる。
【0145】
この後、例えば、光源からの光を未硬化の感光性組成物全体に照射することができるようにし、光源の出力を上げてクラッド形成用樹脂を重合させることが可能な強度の光を照射する。すると、クラッド形成用樹脂および未硬化のコア形成用樹脂が硬化してコア層を包囲するクラッド層を形成することができる。
【0146】
このように、重合反応が進行する光の強度が異なる2種類の感光性樹脂を含む感光性組成物を用いて光導波路を形成する場合、コア形成用樹脂およびクラッド形成用樹脂としては、例えば、互いに異なる重合反応機構を経て重合反応が進行する樹脂を選択することができる。
すなわち、アクリル系樹脂に代表されるようなラジカルによる逐次重合反応によって重合が進むラジカル重合系の感光性樹脂と、エポキシ系樹脂に代表されるようなイオン対を介して重合が進むカチオン重合系の感光性樹脂とを選択することができる。これらを選択した場合、ラジカル重合系の感光性樹脂の方が、カチオン重合系の感光性樹脂よりも重合反応が急速に進行するため、弱い光によっては、アクリル系樹脂だけが選択的に重合することになる。
【0147】
また、弱い光の照射によって、より確実に一方の感光性樹脂の重合が進行するように、上述の2種類の感光性樹脂の重合の進み具合いにさらに差をつけてもよい。
これは、例えば、ラジカル重合系の感光性樹脂の重合反応速度を速くすることにより行うことができる。具体的には、アクリル系樹脂を例にとると、アクリル系樹脂の単位質量あたりに含まれるアクリル基の数を多く(すなわち、アクリル当量を少なく)したり、単量体の濃度を高めることにより、重合に関与する反応基の濃度を高くして重合反応速度を速くすることができる。また、光重合開始剤の量子収率(光子量あたりのラジカル生成量)や濃度を高くして重合反応速度を速くすることもできる。
【0148】
また、2種類の感光性樹脂の重合の進み具合いに差をつけることは、カチオン重合系の感光性樹脂の重合反応速度を遅くすることによっても行うことができる。具体的には、エポキシ系樹脂を例にとると、エポキシ系樹脂の単位質量あたりに含まれるエポキシ基の数を少なく(すなわち、エポキシ当量を多く)したり、単量体の濃度を低くすることにより、重合に関与する反応基の濃度を低くして重合反応速度を遅くすることができる。また、重合に関与するイオン対の非求核性を低くしたり、または、光重合開始剤の量子収率(光子量あたりのカチオン生成量)を低くして重合反応速度を遅くすることもできる。
【0149】
また、同一の機構を経て重合反応が進行する感光性樹脂同士を混合しても、どちらか一方の感光性樹脂のみを選択的に重合させることができる。この場合、同一の機構で反応が進行するため、光重合開始剤や増感剤の異なる樹脂同士を混合しても選択的に重合させることは困難であるが、マトリクスであるオリゴマ分子に反応基の濃度差をつけることにより一方の感光性樹脂のみを選択的に重合させることができる。例えば、ラジカル重合系のアクリル樹脂であれば、反応基であるアクリル当量に差をつければ、ある照射光にて反応基の多い(すなわち、アクリル当量の少ない)方が選択的に重合する。
【0150】
このようなコア形成用樹脂およびクラッド形成用樹脂を用いて光導波路を形成する場合、1種類の光源で両者の重合反応を行うことができるため、設備コストや工程数を少なくすることができる。
なお、コア形成用樹脂とクラッド形成用樹脂とを選択する際に、両者の硬化波長が全く同一でない場合でも、増感剤等を添加することにより、1種類の光源で両者の重合反応を行うことができる。これは、照射する光の波長域に吸収を持たないか、または、少量しか持たない感光性樹脂であっても、その波長域に吸収を持つ適当な増感剤を添加し、その増感剤が吸収したエネルギーを利用することにより、重合反応を進行させることができるからである。すなわち、増感剤を添加すると照射光の波長域内に大きな吸収を持たせ、結果として感度を増大させることができる。一般にこのような増感された吸収波長域はラジカル発生剤本来の持つ吸収波長域よりもより長波長側に拡大され、光源の発する光子を効率よく利用することができるので、感度が上昇する。
【0151】
また、上記クラッド形成用樹脂として、上記した特性を有する感光性樹脂に代えて、加熱処理を行うことにより始めて重合が進行する樹脂を選択し、さらに、コア層を形成した後、強度の強い光を未硬化の感光性組成物全体に照射する方法に代えて、未硬化の樹脂を加熱硬化させる方法を用いてクラッド層を形成し、光導波路としてもよい。
【0152】
さらには、クラッド形成用樹脂として、上記コア形成用樹脂とは異なる波長の光を照射することにより初めて重合し、硬化後の光屈折率が硬化後のコア形成用樹脂の光屈折率よりも小さいものを選択しておき、コア層を形成した後、未硬化の感光性組成物全体にクラッド形成用樹脂が重合する波長の光を照射する方法を用いてクラッド層を形成し、光導波路としてもよい。
このような形成方法を用いることにより、光配線との接続性に優れるとともに、系全体が固体化して安定性に優れる光導波路を形成することができる。
なお、2種類以上の樹脂(例えば、コア形成用樹脂とクラッド形成用樹脂)を含む感光性組成物を用いる場合、その混合比は特に限定されない。
【0153】
また、本発明の光導波路の形成方法は、2本の光配線間を光学的に接続する光導波路を形成する方法としても用いることができる。
図20(a)〜(d)は、本発明の光導波路の形成方法の別の一例を説明するための模式図である。ここでは、光配線として光ファイバを用いた場合を例に、光導波路の形成方法を説明する。
【0154】
具体的には、まず、光学的に結合すべき対をなす光ファイバ12、12′を対向配置し、この光ファイバ12、12′の端部間を包囲するように感光性組成物等を塗布する等により、光ファイバ12、12′の端部をともに、感光性組成物等11に浸漬する(図20(a)参照)。
次に、上記感光性組成物等11を硬化させるための光を、一方の光ファイバ12から対向する光ファイバ12′に向けて照射する(図20(b)参照)。
このように、一方の光ファイバ12から他方の光ファイバ12′に向かって光を照射することにより、感光性組成物等11が、光の経路に応じて、光ファイバ12側から序々に硬化し、光ファイバ12と光ファイバ12′とを接続する光導波路のコア層が形成されることとなる(図20(c)〜(d)参照)。
この後、必要に応じて、上記した方法と同様の方法を用いてクラッド層を形成することにより、2本の光ファイバ間を光学的に接続する光導波路を形成することができる。
【0155】
また、上述した2本の光ファイバ間を接続する光導波路の形成方法では、1本の光ファイバのみを介して光を照射しているが、この方法に代えて、2本の光ファイバのそれぞれから他方の光ファイバに向かって光を照射してもよい。この場合、2本の光ファイバを介して同時に光を照射してもよいし、それぞれの光ファイバから交互に光を照射してもよい。
【0156】
また、2本の光ファイバから他方の光ファイバに向かって、同時に光を照射する場合には、2本の光ファイバの光軸がズレていたとしても、2本の光ファイバ間を接続するコア層を形成することができる。
すなわち、まず、光学的に接続する2本の光ファイバ22、22′の一端を感光性組成物等21に浸漬するとともに、その一端同士がほぼ対向するように光ファイバを配置する。なお、光ファイバ同士の光軸はズレている(図21(a)参照)。
次に、2本の光ファイバ22、22′のそれぞれから感光性組成物等21を硬化させるための光を相手側の光ファイバ22′、22に向けて照射する(図21(b)参照)。この場合、光ファイバ22、22′から出射される互いの出射光X、Yが重なり合う部分Zにおいて光の強度が高くなる。そこで、その重畳部分Zの光の強度をコア形成用樹脂のみが重合可能な強度となるように設定すれば、互いの出射光が重なり合う部分Zにコア層24が形成されることになる(図21(c)参照)。
この方法では、一対の光ファイバ22、22′の光軸がズレていたとしても、両光ファイバ22、22′の端部同士を結ぶ光の経路にコア層24が形成され、高い確率で両者を光学的に結合させることできる。
【0157】
また、図20を参照しながら説明したように、2本の光ファイバを対向配置して、これらの光ファイバの一方、または、両方から光を照射することにより、2本の光ファイバを接続する光導波路を形成する場合、2本の光ファイバそれぞれの感光性組成物等に浸漬する端面の外周部分には、被覆層が形成されていてもよい。このような被覆層が形成されている光ファイバを用いて光導波路を形成することにより、図10に示したような光伝送構造体を製造することができる。
【0158】
なお、このような被覆層が形成された光ファイバを用いて、光導波路を形成する場合、光ファイバのコア等と同一面をなす被覆層の端面は、特に平坦化処理が施されていないか、または、JIS B 0601に基づく面粗度Raが0.1μm以上であることが望ましい。このような形状を有する被覆層の端面は、電気配線等の切断に用いられる切断用治具で切断するのみで形成することができるからである。なお、光配線の切断は、例えば、特に切断用治具を用いることなく、他の任意の切断方法を用いて行ってもよい。
【0159】
また、2本の光配線間を接続するコア層を形成した後、該コア層の周囲にクラッド層を形成する際には、コア層の両端または片端を引っ張りながら、または、コア層の両端または片端を引っ張った状態を維持しながら、クラッド層を形成してもよい。
このようにコア層の両端または片端を引っ張ることにより、コア層の形状を安定化させることができるため、このコア層の周囲にクラッド層を形成することにより、安定化した形状のコア層と、安定なクラッド層とからなる光導波路を形成することができる。
また、上述したようにコア層を引っ張りながらクラッド層を形成する方法は、まず、コア形成用樹脂のみからなる感光性組成物を用いてコア層を形成した後、未硬化の感光性組成物を除去し、続いて、上記コア層を別の樹脂組成物に浸漬した後、この樹脂組成物に硬化処理を施すことにより安定なクラッド層を形成する方法においても用いることができる。
【0160】
また、このコア層の両端または片端を引っ張ることにより、安定化した形状のコア層と安定なクラッド層とを形成にする方法は、光配線間を接続する光導波路を形成する場合のみならず、光配線から、ミラーやあて板、光学部品等に向かって、光を照射することによりコア層を形成し、その後、コア層の周囲に安定なクラッド層を形成する方法においても用いることができ、この場合には、光配線と、ミラーやあて板、光学部品等とを引っ張ることにより、コア層の両端または片端を引っ張ればよい。
さらに、上述したようにコア層の両端または片端を引っ張ることは、硬化したクラッド層を形成しない場合にも、コア層を安定化させることができるという点から有用である。
【0161】
また、本発明の形成方法を用いることにより、光配線と光部品とが光導波路を介して結合した光信号伝送用光路(図9(b)参照)を製造することができる。
具体的には、図22に示すように、光配線92を介して感光性組成物等91中に光を照射する際に、予め、照射する光の光路上に光部品96を配置しておき、この状態で光配線92を介して、光を照射することにより光配線92と光部品96を接続する光導波路のコア層94を形成することができる。なお、光部品96のコア層と結合する面には表面保護層96aが形成されている
さらに、このようにしてコア層を形成した後、上述した方法を用いて、コア層の周囲にクラッド層を形成することにより、図9(b)に示した光伝送構造体となる。
【0162】
また、本発明の形成方法を用いて、光配線の一端と結合した光導波路を形成することにより、アレイ状の光伝送構造体を製造することもできる。
具体的には、複数の光配線(図23では、4本)を等間隔では整列させ、この状態で整列させた光配線の一端を感光性組成物等中に浸漬し、この状態で全ての光配線を介して光を照射する。このとき、照射する光の光路上には、照射する光の光路上には、光導波路の端面にレンズを形成するためのあて板を載置しておく。さらに、上述した方法で、コア層の周囲に固体化したクラッド層を形成することによりアレイ状の光伝送構造体を形成することができる(図23参照)。
なお、このような方法を用いて製造したアレイ状の光伝送構造体では、隣合う光配線同士の間には、上記クラッド層と同様の材質の樹脂層が形成されることとなる。
また、アレイ状の光伝送構造体の形成において、複数の光配線を等間隔で整列させる際に、複数の溝が等間隔で形成された基板の該溝に、それぞれの光配線を固定した場合には、隣合う光配線同士の間を樹脂層で固定しなくてもアレイ状の光伝送構造体とすることができる。
【0163】
【実施例】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0164】
(実施例1)
A.感光性樹脂の準備
感光性樹脂として、紫外線照射時にラジカル重合反応により硬化するアクリレート系の紫外線硬化性接着剤(ロックタイト社製、Loctite358;以下、樹脂Aという)を用意した。
なお、この樹脂Aの波長589nmにおける光屈折率は、硬化前:約1.48、硬化後:約1.51である。
【0165】
B.光導波路の形成(図24参照)
(1)GI型石英製マルチモードファイバ(フジクラ社製、コア/クラッド=50μm/125μm)を1m程度用意した。
なお、この光ファイバは、感光性樹脂に浸漬する側を切断用治具(ニッパ)で切断した後、通常の方法で端面側から10mm程度の被覆層を剥がしてクラッドを露出させ、その後は特に平坦化処理を施さなかったものである。
また、光ファイバの感光性組成物に浸漬する側のコアの端面の粗度は、Raが1μmで、Rmaxが10μmであった。なお、この端面の粗度は、キーエンス社製のレーザ変位計を用いて測定した。
また、この光ファイバのコアの波長589nmにおける光屈折率は、約1.48である。
【0166】
(2)次に、光ファイバ2の一端に、250Wの高圧水銀ランプを光源とした紫外線照射装置5(松下マシンアンドビジョン社製、5252L)より200〜500nmの波長範囲に分光分布を持つ紫外線を含む光を入射して、光ファイバ2の他端から出射される紫外線照度を紫外線照度計(ウシオ電機社製、UIT−150)を用いて0.3mW/cm2になるように調整した。
【0167】
(3)次に、出射側の光ファイバ2の端部を光ファイバ用V溝基板6(モリテックス社製、石英V溝)に位置させ、さらに、その光ファイバ2の端部全体に、上記Aの工程で用意した感光性樹脂1を隙間無く埋まるように塗布した。その後、V溝押さえ板にて光ファイバ2の端部および感光性樹脂1を動かないように挟み込んだ。
【0168】
(4)次に、上記(3)の状態に光ファイバ2を保持したまま、上記(2)にて照度を調整した紫外線を光ファイバ2の出射端より感光性樹脂1中に照射し、コア層を形成した。
【0169】
また、この(4)の工程においては、紫外線を1秒間、3秒間、および、10秒間照射した際に、形成したコア層の形状を顕微鏡(キーエンス社製、VH−7000)を用いて観察した。その結果、紫外線を1秒間照射した際には約300μm、3秒間の照射では約500μm、10秒間の照射では約1mmのコア層が形成されていた。
【0170】
上記(4)の工程終了後に、形成されたコア層に、可視光を光ファイバ2の出射端より照射し、光導波路からの漏光観察したところ、光導波路形状に沿って漏光が観察され、安定した光導波路が形成されていることが確認された。
また、本実施例で形成した光導波路のコア層の光屈折率は、該コア層が接続された光ファイバ2のコアの光屈折率の102%である。
【0171】
なお、この光配線のコアの光屈折率に対する、光導波路のコア層の光屈折率の相対値(102%)は、上述した光ファイバのコアの波長589nmにおける光屈折率(約1.48)と、上記樹脂Aの波長589nmにおける硬化後の光屈折率(約1.51)とから算出したものである。また、以下の実施例、参考例および比較例においてもその算出方法は同様である。
【0172】
また、このようにして作製した、光ファイバと光導波路とからなる光伝送構造体の反射減衰量を測定したところ、50dBであった。なお、反射減衰量の測定は、JIS C 5961 6.2.4に記載されている方法(4)に準じて行った。
【0173】
(実施例2)
実施例1のBの(3)の工程において、照射光の光路上に石英ガラスからなるあて板を、光ファイバの端面に対する傾きが45°となるように配置した以外は、実施例1と同様にして光導波路を形成した(図15参照)。
本実施例で形成した光導波路を顕微鏡観察したところ、光導波路の光ファイバと結合した側と反対側の端面に、光ファイバの端面に対する傾きが45°の光路変換ミラーが形成されていることが確認できた。
また、本実施例で形成した光導波路について、未硬化の感光性樹脂を取り除き、コア層の周囲を空気からなるクラッド層とした状態で、実施例1と同様に、可視光を光ファイバの出射端より照射したところ、光導波路の光ファイバと結合した側と反対側の端面において、可視光の光路が90°変換されていることが確認された。
また、本実施例で作製した、光ファイバと光導波路とからなる光伝送構造体の反射減衰量を測定したところ、50dBであった。
【0174】
(実施例3)
実施例1のBの(3)の工程において、照射光の光路上に、その反射面の材質がアルミニウムであるミラーを、光ファイバの端面に対する傾きが45°となるように配置した以外は、実施例1と同様にして光導波路を形成した(図16参照)。
本実施例で形成した光導波路を顕微鏡観察したところ、光導波路が途中で90°屈曲していることが確認できた。
また、本実施例で形成した光導波路について、実施例1と同様に、可視光を光ファイバの出射端より照射し、光導波路の漏光を観察したところ、光導波路の途中で光路が90°変換されていることが確認された。
また、本実施例で作製した、光ファイバと光導波路とからなる光伝送構造体の反射減衰量を測定したところ、50dBであった。
【0175】
(実施例4)
実施例1のBの(3)の工程において、照射光の光路上の一部に、その反射面の材質がアルミニウムであるミラーを、光ファイバの端面に対する傾きが45°となるように配置した以外は、実施例1と同様にして光導波路を形成した(図18(b)参照)。
本実施例で形成した光導波路を顕微鏡観察したところ、光導波路の途中に光路変換ミラーが形成されるとともに、該光導波路がこの部分で2方向に分岐していることが確認された。
また、本実施例で形成した光導波路について、実施例1と同様に、可視光を光ファイバの出射端より照射し、光導波路の漏光を観察したところ、光導波路の途中で光路が2つに分岐していることが確認され、さらに、2つの端面のそれぞれから可視光が出射していることが確認された。
また、本実施例で作製した、光ファイバと光導波路とからなる光伝送構造体の反射減衰量を測定したところ、50dBであった。
【0176】
(実施例5)
A.感光性樹脂の準備
実施例1のAと同様、樹脂Aを用意した。
【0177】
B.光導波路の形成(図25参照)
(1)実施例1で用いたものと同様の長さ1m程度のGI型石英製マルチモードファイバ(フジクラ社製、コア/クラッド=50μm/125μm)を2本ずつ、5組(計10本)用意した。なお、光ファイバとしては、感光性樹脂に浸漬する側を切断用治具(ニッパ)により切断した後、通常の方法により端面から10mm程度の被覆層を剥がしてクラッドを露出させ、その後、特に平坦化処理を施さなかったものを用いた。これらの光ファイバの端面の粗度は、各光ファイバにおいてバラツキがあったが、平均してRaが2μmで、Rmaxが20μmであった。
【0178】
(2)上記一組の光ファイバ12、12′の片端より、250Wの高圧水銀ランプを光源とした紫外線照射装置15(松下マシンアンドビジョン社製、5252L)より200〜500nmの波長範囲に分光分布を持つ紫外線を含む光を入力して、出射側とするそれぞれの光ファイバ12、12′のもう一方の端から照射される紫外線照度を紫外線照度計(ウシオ電機社製、UIT−150)を用いて0.3mW/cm2になるように調整をした。
【0179】
(3)次に、それぞれの出射側の光ファイバ12、12′の端部を500μm程度の間隔をあけて光ファイバ用V溝基板16(モリテックス社製、石英V溝)に付き合わせて位置させ、さらにその付き合わせ部全体に、上記Aの工程で用意した感光性樹脂11を光ファイバ12、12′間に隙間無く埋まるように塗布した。その後、V溝押さえ板にて付き合わせ部および感光性樹脂11を動かないように挟み込んだ。
【0180】
(4)上記(3)の状態に光ファイバ12、12′を保持したまま、一方の光ファイバ12の入射側に波長850nmのLED光源(安藤電機製、AQ2140およびAQ4215)を用いて、出力約−10dBm(約0.1mW)の光を入射し、他方の光ファイバ12′の入射側から出射される光出力をパワーメータ(安藤電機社製、AQ2140およびAQ2730)を用いて測定した。
【0181】
(5)さらに、上記(3)の状態に光ファイバ12、12′を保持したまま、上記(2)で照度を調整した紫外線を含む光をそれぞれの光ファイバ12、12′の出射端より同時に、感光性樹脂11中に1〜2秒間照射した。
【0182】
上記(1)〜(4)の工程を、5組の光ファイバのそれぞれについて行ったところ、感光性樹脂11の硬化が未だ行われておらず、上記(4)の工程終了時においては、全ての組において8dB以上の光出力の損失が測定された。また、上記(5)の工程終了時においては、全ての組で双方の光ファイバ12、12′の出射端よりコア層が形成され、それぞれのコア層が真中付近で結合していることが顕微鏡で観察された。
【0183】
また、上記(5)の工程終了後、上記(4)の工程で用いた方法と同様の方法により、波長850nmでの光出力の損失を測定したところ、1.6〜3.3dBであり、この値は上記(4)の工程終了後に各組の光ファイバ間で測定した値よりも大幅に減少していた。このことは、各組の光ファイバにおいて、2本の光ファイバ12、12′が確実に光結合されていることを示しており、上記(5)の工程終了後、コア層を介して光が導波していることが確認された。
【0184】
また、本実施例で作製した、2本の光ファイバと光導波路とからなる光伝送構造体の反射減衰量を測定したところ、5組とも50dB以上であった。
なお、本実施例で形成した光導波路のコア層の光屈折率は、該コア層が接続された光ファイバのコアの光屈折率の102%である。
【0185】
(実施例6)
実施例5のBの(1)の工程において、実施例1で用いたものと同様の長さ1m程度のGI型石英製マルチモードファイバを2本ずつ、5組(計10本)用意した。なお、光ファイバとしては、感光性樹脂に浸漬する側を切断用治具(ニッパ)により切断した後、被覆層を剥がす処理を施さず、さらに、特に平坦化処理も施さなかったものを用いた以外は実施例1と同様にして光導波路を形成した。なお、切断した光ファイバの端面の粗度は、各光ファイバにおいてバラツキがあったが、平均してRaが2μmで、Rmaxが20μmであった。また、本実施例で使用した光ファイバは、感光性樹脂に浸漬する側の端面付近に被覆層が残っている。
【0186】
本実施例で形成した光導波路について、コア層の形状を顕微鏡観察したところ、安定な形状で観察され、また、それぞれのコア層が真中付近で結合していることが顕微鏡で観察された。
さらに、実施例5で用いた方法と同様の方法を用いて、5組の光ファイバについて、光出力の損失を測定したところ、各組ともに光ファイバから同時に光照射した前後において、上記損失が8dB以上から、1.5〜3.3dBに大幅に減少していることが確認された。
【0187】
また、本実施例で作製した、2本の光ファイバと光導波路とからなる光伝送構造体の反射減衰量を測定したところ、5組とも50dB以上であった。
なお、本実施例で形成した光導波路のコア層の光屈折率は、該コア層が接続された光ファイバのコアの光屈折率の102%である。
【0188】
(実施例7)
A.感光性樹脂の準備
感光性樹脂として、紫外線照射時に硬化する紫外線硬化性接着剤(アーデル社製、OPTOKLEB HV16;以下、樹脂Bという)を用意した。
なお、この樹脂Bの波長589nmにおける光屈折率は、硬化前:約1.57、硬化後:約1.60である。
【0189】
B.光導波路の形成
上記Aの工程で用意した感光性樹脂(樹脂B)を用いた以外は、実施例5と同様にして、上記樹脂Bからなる光導波路のコア層を形成した。このコア層の形状を顕微鏡観察したところ、安定な形状で観察された。また、それぞれのコア層が真中付近で結合していることが確認された。
さらに、実施例5で用いた方法と同様の方法を用いて、5組の光ファイバについて、光出力の損失を測定したところ、各組ともに光ファイバから同時に光照射した前後において、上記損失が8dB以上から、2.3〜6.5dBに減少していることが確認された。
【0190】
また、本実施例で作製した、2本の光ファイバと光導波路とからなる光伝送構造体の反射減衰量を測定したところ、5組とも50dB以上であった。
なお、本実施例で形成した光導波路のコア層の光屈折率は、該コア層が接続された光ファイバのコアの光屈折率の108%である。
【0191】
(実施例8)
A.感光性樹脂の準備
感光性樹脂として、上記樹脂B、および、紫外線照射時に硬化するアクリレート系の紫外線硬化性接着剤(ダイキン社製、オプトダイン UV2000;以下、樹脂Cという)を用意した。
なお、この樹脂Cの波長589nmにおける光屈折率は、硬化前:約1.45、硬化後:約1.48である。
【0192】
B.光配線の形成(図29参照)
(1)平坦な石英ガラス板514上に、上記樹脂Bをスピンコートで、硬化後の膜厚が約40μmとなるように塗布し、コア形成用樹脂層513′を形成した(図29(a)参照)。
【0193】
(2)次に、コアパターン(幅40μm)が描画されたマスク(図示せず)を、コア形成用樹脂層上に載置し、その後、露光処理を施して直線状のコア513を形成した。さらに、未露光部分をアルコールで除去した後(図29(b)参照)、形成したコア513の上に上記樹脂Cを適量塗布し、その後、露光処理を施して上記樹脂Cを硬化させた。
【0194】
(3)このような工程を経ることにより、コア513が樹脂Bの硬化物からなり、クラッドが石英ガラス514と樹脂Cの硬化物515とからなる光配線(直線状導波路)を形成した(図29(c)参照)。
【0195】
(4)以上の光配線を5本作製し、それぞれの配線をほぼ真中で破断切断した。
【0196】
C.光導波路の形成(図30参照)
(1)上記Bの工程を経て作製した5組(計10本)の光配線(直線状導破路)を用意した。なお、光配線の感光性組成物に浸漬する側のコアの端面は、破断切断した後、特に、平坦化処理を施さなかったものを用いた。これらの光配線の端面の粗度は、各光配線のそれぞれでばらつきはあったが平均してRaが2μmで、Rmaxが20μmであった。
【0197】
上記一組の光配線512、512′の片端より、250Wの高圧水銀ランプを光源とした紫外線照射装置(松下マシンアンドビジョン社製、5252L)より200〜500nmの波長範囲に分光分布を持つ紫外線を含む光を、光ファイバを通じて入力して、出射側とするそれぞれの光配線512、512′のもう一方の端から照射される紫外線照度を紫外線照度計(ウシオ電機社製、UIT−150)を用いて0.3mW/cm2になるように調整をした。
【0198】
(3)次に、それぞれの出射側の光配線512、512′の端部を500μm程度の間隔をあけて付き合わせて位置させ、さらにその付き合わせ部全体に、上記Aの工程で用意した感光性樹脂(樹脂C)511を光配線512、512′間に隙間無く埋まるように塗布した(図30(a)参照)。その後、押さえ板にて付き合わせ部および樹脂Cを動かないように挟み込んだ。
【0199】
(4)上記(3)の状態に光配線512、512′を保持したまま、一方の光配線512の入射側に波長850nmのLED光源(安藤電機製、AQ2140およびAQ4215)を用いて、出力約−10dBm(約0.1mW)の光を入射し、他方の光配線512′の入射側から出射される光出力をパワーメータ(安藤電機社製、AQ2140およびAQ2730)を用いて測定した。
【0200】
(5)さらに、上記(3)の状態に光配線512、512′を保持したまま、上記(2)の工程で照度を調整した紫外線をそれぞれの光配線512、512′の出射端より同時に、感光性樹脂(樹脂C)511中に1〜2秒間照射した(図30(b)参照)。
【0201】
上記(5)の工程終了時においては、全ての組で双方の光配線512、512′の出射端よりコア層が形成され、それぞれのコア層が真中付近で結合していることが顕微鏡で観察された(図30(c)参照)。
【0202】
実施例5で用いた方法と同様の方法を用いて、5組の光配線について、光出力の損失を測定したところ、各組ともに光配線から同時に光を照射した前後において、上記損失が8dB以上から2.5〜6.8dBへと減少していることが確認された。
【0203】
また、本実施例で作製した、2本の光配線と光導波路とからなる光伝送構造体の反射減衰量を測定したところ、5組とも50dB以上であった。
なお、本実施例で形成した光導波路のコア層の光屈折率は、該コア層が接続された光配線のコアの光屈折率の93%である。
【0204】
(実施例9)
A.感光性樹脂の準備
感光性樹脂として、紫外線照射時に硬化する紫外線硬化性接着剤(Noland社製、NOA72;以下、樹脂Dという)を用意した。
なお、この樹脂Dの波長589nmにおける光屈折率は、硬化前:約1.53、硬化後:約1.56である。
【0205】
B.光導波路の形成
樹脂Aに代えて、上記Aの工程で用意した感光性樹脂(樹脂D)を用いた以外は、実施例5と同様にして、上記樹脂Dからなる光導波路のコア層を形成した。このコア層の形状を顕微鏡観察したところ、安定な形状で観察された。また、それぞれのコア層が真中付近で結合していることが確認された。
さらに、実施例5で用いた方法と同様の方法を用いて、5組の光ファイバについて、光出力の損失を測定したところ、各組ともに光ファイバから同時に光照射した前後において、上記損失が8dB以上から、2.1〜5.7dBにかなり減少していることが確認された。
【0206】
また、本実施例で作製した、2本の光ファイバと光導波路とからなる光伝送構造体の反射減衰量を測定したところ、5組とも50dB以上であった。
なお、本実施例で形成した光導波路のコア層の光屈折率は、該コア層が接続された光ファイバのコアの光屈折率の105%である。
【0207】
(実施例10)
A.感光性樹脂の準備
感光性樹脂として、上記樹脂C、および、上記樹脂Dを用意した。
【0208】
B.光配線の形成
実施例8のBの(1)〜(4)の工程と同様の方法を用いて、コアが樹脂Dの硬化物からなり、クラッドが石英ガラスと樹脂Cの硬化物とからなる光配線(直線状導波路)を5本形成し、それぞれの光配線をほぼ真中で破断切断した。
【0209】
C.光導波路の形成
(1)上記Bの工程を経て作製した5組(計10本)の光配線(直線状導破路)を用意した。なお、光配線の感光性組成物に浸漬する側のコアの端面は、破断切断した後、特に、平坦化処理を施さなかったものを用いた。これらの光配線の端面の粗度は、各光配線のそれぞれでばらつきはあったが平均してRaが2μmで、Rmaxが20μmであった。
【0210】
これらの光配線を用い、実施例8のCの(2)〜(5)の工程と同様の方法を用いて、コアが樹脂Cよりなる光導波路の形成を行った後、コア層の形状を顕微鏡で観察したところ、安定な形状で観察された。また、それぞれのコア層が真中付近で結合していることが顕微鏡で観察された。
【0211】
また、実施例5と同様の方法を用いて、光出力の損失を5組の光配線について測定したところ、各組ともに光配線から同時に光を照射した前後において、上記損失が8dB以上から1.9〜5.6dBと、かなり減少していることが確認された。
【0212】
また、本実施例で作製した、2本の光配線と光導波路とからなる光伝送構造体の反射減衰量を測定したところ、5組とも50dB以上であった。
なお、本実施例で形成した光導波路のコア層の光屈折率は、該コア層が接続された光配線のコアの光屈折率の95%である。
【0213】
(実施例11)
A.感光性樹脂の準備
感光性樹脂として、上記樹脂A、および、上記樹脂Cを用意した。
【0214】
B.光配線の形成
実施例8のBの(1)〜(4)の工程と同様の方法を用いて、コアが樹脂Aの硬化物からなり、クラッドが石英ガラスと樹脂Cの硬化物とからなる光配線(直線状導波路)を5本形成し、それぞれの配線を真中より破断切断した。
【0215】
C.光導波路の形成
(1)上記Bの工程を経て作製した5組(計10本)の光配線(直線状導破路)を用意した。なお、光配線の感光性組成物に浸漬する側のコアの端面は、破断切断した後、特に、平坦化処理を施さなかったものを用いた。これらの光配線の端面の粗度は、各光配線のそれぞれでばらつきはあったが平均してRaが2μmで、Rmaxが20μmであった。
【0216】
これらの光配線を用い、実施例8のCの(2)〜(5)の工程と同様の方法を用いて、コアが樹脂Cよりなる光導波路の形成を行った後、コア層の形状を顕微鏡で観察したところ、安定な形状で観察された。また、それぞれのコア層が真中付近で結合していることが顕微鏡で観察された。
【0217】
また、実施例5と同様の方法を用いて、光出力の損失を5組の光配線について測定したところ、各組ともに光配線から同時に光を照射した前後において、上記損失が8dB以上から1.8〜3.4dBと、大幅に減少していることが確認された。
【0218】
また、本実施例で作製した、2本の光配線と光導波路とからなる光伝送構造体の反射減衰量を測定したところ、5組とも50dB以上であった。
なお、本実施例で形成した光導波路のコア層の光屈折率は、該コア層が接続された光配線のコアの光屈折率の98%である。
(実施例12)
A.感光性樹脂の準備
感光性樹脂として、樹脂Cを用意した。
【0219】
B.光導波路の形成
樹脂Aに代えて、上記Aの工程で用意した感光性樹脂(樹脂C)を用いた以外は、実施例5と同様にして、上記樹脂Cからなる光導波路のコア層を形成した。このコア層の形状を顕微鏡観察したところ、安定な形状で観察された。また、それぞれのコア層が真中付近で結合していることが確認された。
さらに、実施例5で用いた方法と同様の方法を用いて、5組の光ファイバについて、光出力の損失を測定したところ、各組ともに光ファイバから同時に光照射した前後において、上記損失が8dB以上から、1dB以下に大幅に減少していることが確認された。
【0220】
また、本実施例で作製した、2本の光ファイバと光導波路とからなる光伝送構造体の反射減衰量を測定したところ、5組とも60dB以上であった。
なお、本実施例で形成した光導波路のコア層の光屈折率は、該コア層が接続された光ファイバのコアの光屈折率の100%である。
【0221】
(参考例1)
A.感光性樹脂の準備
感光性樹脂として、樹脂C、紫外線照射時に硬化する紫外線硬化性接着剤(ダイキン社製、オプトダイン UV1000;以下、樹脂Eという)、および、同じく紫外線照射時に硬化する紫外線硬化性接着剤(アーデル社製、OPTOKLEB HV153;以下、樹脂Fという)を用意した。
なお、この樹脂Eの波長589nmにおける光屈折率は、硬化前:約1.42、硬化後:約1.45であり、樹脂Fの波長589nmにおける光屈折率は、硬化前:約1.60、硬化後:約1.63である。
【0222】
B.光配線の形成
実施例8のBの(1)〜(4)の工程と同様の方法を用いて、コアが樹脂Fの硬化物からなり、クラッドが石英ガラスと樹脂Cの硬化物とからなる光配線(直線状導波路)を5本形成し、それぞれの光配線をほぼ真中で破断切断した。
【0223】
C.光導波路の形成
(1)上記Bの工程を経て作製した5組(計10本)の光配線(直線状導破路)を用意した。なお、光配線の感光性組成物に浸漬する側のコアの端面は、破断切断した後、特に、平坦化処理を施さなかったものを用いた。これらの光配線の端面の粗度は、各光配線のそれぞれでばらつきはあったが平均してRaが2μmで、Rmaxが20μmであった。
【0224】
(2)これらの光配線を用い、さらに、樹脂Cに代えて樹脂Eを用いた以外は、実施例8のCの(2)〜(5)の工程と同様にして、コア層が樹脂Eよりなる光導波路の形成を行った後、コア層の形状を顕微鏡で観察したところ、安定な形状で観察された。また、それぞれのコア層が真中付近で結合していることが顕微鏡で観察された。
【0225】
また、実施例5と同様の方法を用いて、光出力の損失を5組の光配線について測定したところ、各組ともに光配線から同時に光を照射した前後において、上記損失が8dB以上から3.1〜7.9dBと、減少していることが確認された。
【0226】
また、本参考例で作製した、2本の光配線と光導波路とからなる光伝送構造体の反射減衰量を測定したところ、5組とも50dB以上であった。
なお、本参考例で形成した光導波路のコア層の光屈折率は、該コア層が接続された光配線のコアの光屈折率の89%である。
【0227】
(参考例2)
A.感光性樹脂の準備
感光性樹脂として、上記樹脂E、および、樹脂Fを用意した。
【0228】
B.光配線の形成(図31参照)。
(1)平坦な石英ガラス板524上に、旭硝子社製、サイトップ(以下、樹脂Gという)をスピンコートで、乾燥後の膜厚が約20μmとなるように塗布し、乾燥して下部クラッド525aを形成した。
なお、上記樹脂Gの波長589nmにおける光屈折率は、乾燥後、約1.34である。
【0229】
(2)形成した下部クラッド525aに、上記樹脂Eをスピンコートで、硬化後の膜厚が約40μmとなるように塗布し、コア形成用樹脂層523′を形成した(図31(a)参照)。
(3)次に、コアパターン(幅40μm)が描画されたマスク(図示せず)を、コア形成用樹脂層523′上に載置し、その後、露光処理を施して直線状のコア523を形成した。
【0230】
(4)さらに、コア形成用樹脂層523′の未露光部分をアルコールで除去し(図31(b)参照)、その後、コア523上を含む下部クラッド525a上に、上記樹脂Gを適量塗布、乾燥し、コア523の周囲にクラッド525を形成した。
このような工程を経ることにより、コアが樹脂Eの硬化物からなり、クラッドが樹脂Gからなる光配線(直線状導波路)を形成した(図31(c)参照)。
【0231】
(5)以上の光配線を5本作製し、それぞれの配線をほぼ真中で破断切断した。
【0232】
C.光導波路の形成
(1)上記Bの工程を経て作製した5組(計10本)の光配線(直線状導破路)を用意した。なお、光配線の感光性組成物に浸漬する側のコアの端面は、破断切断した後、特に、平坦化処理を施さなかったものを用いた。これらの光配線の端面の粗度は、各光配線のそれぞれでばらつきはあったが平均してRaが2μmで、Rmaxが20μmであった。
【0233】
これらの光配線を用い、さらに、樹脂Cに代えて樹脂Fを用いた以外は、実施例8のCの(2)〜(5)の工程と同様にして、コアが樹脂Fよりなる光導波路の形成を行った後、コア層の形状を顕微鏡で観察したところ、安定な形状で観察された。また、それぞれのコア層が真中付近で結合していることが顕微鏡で観察された。
【0234】
実施例5で用いた方法と同様の方法を用いて、5組の光配線について、光出力の損失を測定したところ、各組ともに光配線から同時に光を照射した前後において、上記損失が8dB以上から2.9〜7.8dBへと減少していることが確認された。
【0235】
また、本参考例で作製した、2本の光配線と光導波路とからなる光伝送構造体の反射減衰量を測定したところ、5組とも50dB以上であった。
なお、本参考例で形成した光導波路のコア層の光屈折率は、該コア層が接続された光配線のコアの光屈折率の112%である。
【0236】
(比較例1)
(1)実施例1で使用したものと同様のGI型石英製マルチモードファイバを2本ずつ、5組(計10本)用意した。なお、光ファイバの他方の光ファイバと付き合わせる側のコアの端面は、切断用治具(ニッパ)を用いて切断した後、通常の方法で端面側から10mm程度の被覆層を剥がしてクラッドを露出させ、その後は、特に平坦化処理を施さなかった。これら端面の粗度は、各光ファイバそれぞれでばらつきはあったが平均してRaが2μmで、Rmaxが20μmであった。
この一組の光ファイバを光ファイバ用V溝基板(モリテックス社製、石英V溝)上で、500μm程度の間隔をあけて付き合わせて載置した。
その後、V溝押さえ板を用いて、2本の光ファイバを動かないように固定した。
【0237】
この付き合わせて接続した2本の光ファイバの反射減衰量を、5組それぞれについて測定したところ、全ての組で25dB以上であった。なお、反射減衰量の測定は、JIS C 5961 6.2.4に記載されている方法(4)に準じて行った。
【0238】
また、比較例1で対向配置した5組の光ファイバ間の接続損失を測定したところ、30〜55dBであった。なお、接続損失の測定は、実施例5の(4)の工程で用いた方法と同様の方法、すなわち、一の光ファイバの付き合わせた側と反対の側から出力約−10dBm(約0.1mW)の光を入射し、他方の光ファイバの付き合わせた側と反対の側から出射される光出力を測定する方法を用いた。
【0239】
なお、本比較例では、光導波路を形成していないが、2本の光ファイバの間隙には空気(光屈折率:1.00)が存在しており、これは、接続された光ファイバのコアの光屈折率の68%である。
【0240】
(比較例2)
実施例12において、下記の光ファイバを用いた以外は、実施例12と同様にして光伝送構造体を作製した。
すなわち、実施例12で用意したものと同様の長さ1m程度のGI型石英製マルチモードファイバを2本ずつ、5組(計10本)用意し、光ファイバの感光性組成物に浸漬する側のコアの端面を、切断用治具(ニッパ)を用いて切断した後、通常の方法で端面側から10mm程度の被覆層を剥がしてクラッドを露出させ、さらに端面をアルミナ砥粒を用いて垂直、平滑に研磨した光ファイバを用いた。これら端面の粗度は、各光ファイバのそれぞれでばらつきはあったが平均してRaが0.05μmであった。
【0241】
上記した端面処理を施した光ファイバを用い、実施例12と同様にして上記樹脂Cからなる光導波路のコア層を形成し、このコア層の形状を顕微鏡観察したところ、安定な形状で観察された。また、それぞれのコア層が真中付近で結合していることが確認された。
さらに、実施例12で用いた方法と同様の方法を用いて、5組の光ファイバについて、光出力の損失を測定したところ、各組ともに光ファイバから同時に光照射した前後において、上記損失が8dB以上から、1dB以下に大幅に減少していることが確認された。
【0242】
また、本比較例で作製した、2本の光ファイバと光導波路とからなる光伝送構造体の反射減衰量を測定したところ、5組とも60dB以上であった。
なお、本実施例で形成した光導波路のコア層の光屈折率は、該コア層が接続された光ファイバのコアの光屈折率の100%である。
【0243】
(比較例3)
実施例12において、下記の光ファイバを用いた以外は、実施例12と同様にして光伝送構造体を作製した。
すなわち、実施例12で用意したものと同様の長さ1m程度のGI型石英製マルチモードファイバを2本ずつ、5組(計10本)用意し、光ファイバの感光性組成物に浸漬する側のコアの端面を、切断用治具(ニッパ)を用いて切断した後、通常の方法で端面側から10mm程度の被覆層を剥がしてクラッドを露出させ、光ファイバカッタを用いて切断することにより、端面を垂直に鏡面処理した光ファイバを用いた。これら端面の粗度は、各光ファイバのそれぞれでばらつきはあったが平均してRaが0.01μm以下であった。
【0244】
上記した端面処理を施した光ファイバを用い、実施例12と同様にして上記樹脂Cからなる光導波路のコア層を形成し、このコア層の形状を顕微鏡観察したところ、安定な形状で観察された。また、それぞれのコア層が真中付近で結合していることが確認された。
さらに、実施例12で用いた方法と同様の方法を用いて、5組の光ファイバについて、光出力の損失を測定したところ、各組ともに光ファイバから同時に光照射した前後において、上記損失が8dB以上から、1dB以下に大幅に減少していることが確認された。
【0245】
また、本比較例で作製した、2本の光ファイバと光導波路とからなる光伝送構造体の反射減衰量を測定したところ、5組とも60dB以上であった。
なお、本実施例で形成した光導波路のコア層の光屈折率は、該コア層が接続された光ファイバのコアの光屈折率の100%である。
【0246】
実施例1〜12、参考例1〜2、および、比較例1〜3の結果を表1に示す。
【0247】
【表1】
【0248】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜4で作製した光伝送構造体は、光配線の光導波路と結合する端面のコアに、平坦化処理が施されておらず、面粗度Raが1μmであったが、その反射減衰量は50dBであり、好適に光通信用デバイスとして使用することができることが明らかとなった。
【0249】
実施例12に係る光伝送構造体と、比較例2および3に係る光伝送構造体とを比較した場合、光配線のコアの端面のRaにかかわらず、すなわち、光配線の端面処理の有無にかかわらず、得られた光伝送構造体の特性(光配線間の接続損失、反射減衰量)に差がない。この結果からも、上記光伝送構造体が、光通信用デバイスとして好適に用いることができることが明らかとなった。
【0250】
また、実施例5、7〜12、参考例1、2と、比較例1とを比較した場合、光導波路を形成した実施例5、7〜12、参考例1、2のほうが、光導波路を形成しなかった比較例1と比較して光伝送性に優れることは、接続損失の比較から明らかである。
【0251】
さらに、実施例5、7〜12、参考例1、2のそれぞれを詳細に比較すると、光導波路のコア層の
光屈折率と、該コア層が接続した光導波路のコアの光屈折率とがほぼ等しいとき(実施例12)、その接続損失および損失のばらつきが最小となる。また、光導波路のコア層の光屈折率が、該コア層が接続した光配線のコアの光屈折率の98〜102%であるとき(実施例5および11)、95〜105%であるとき(実施例9および10)、90〜110%であるとき(実施例7および8)には、この順序で接続損失およびそのばらつきが大きくなっていることが分かる。
また、光導波路のコア層の光屈折率が、該コア層の接続した光配線のコアの光屈折率の85〜115%であるとき(参考例1および2)には、さらに、接続損失、および、そのバラツキが大きくなっており、上記光導波路のコア層の光屈折率が、上記光配線のコアの光屈折率の90〜110%である場合に比べて、その光伝送能が劣ることが明らかとなった。
【0252】
また、実施例5と実施例6とを比較した結果、光伝送構造体の接続損失には、光配線の光導波路と接続する側の端部の被覆層の有無は影響がないことが明らかとなった。
【0253】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の光伝送構造体では、光配線の光導波路のコア層と結合した部分に、特に平坦化処理が施されていないか、または、JIS B 0601に基づく面粗度Raが、0.1μm以上であるにもかかわらず、光配線と光導波路との間で好適に光信号の伝送を行うことができる。なお、このような光伝送構造体を製造する場合、その製造工程を簡略化することができる。
【0254】
また、本発明の光導波路の形成方法では、感光性組成物等に光を照射する光配線の上記コア層と結合する部分が、特に平坦化処理が施されていないか、または、JIS B 0601に基づく面粗度Raが、0.1μm以上であっても、光配線との接続性に優れるコア層を形成することができる。
従って、上記光配線の上記コア層と結合する部分は、高精度な端面処理を施さなくても形成することができるため、本発明の形成方法では、光導波路の形成工程を簡略化することができる。なお、形成工程を簡略化することができるため、経済的にも有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光伝送構造体の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、それぞれ本発明の光伝送構造体の別の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。
【図3】本発明の光伝送構造体の別の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。
【図4】(a)、(b)は、それぞれ本発明の光伝送構造体の別の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。
【図5】(a)、(b)は、それぞれ本発明の光伝送構造体の別の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。
【図6】本発明の光伝送構造体の別の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。
【図7】本発明の光伝送構造体の別の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。
【図8】(a)、(b)は、それぞれ本発明の光伝送構造体の別の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。
【図9】(a)、(b)は、それぞれ本発明の光伝送構造体の別の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。
【図10】本発明の光伝送構造体の別の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。
【図11】本発明の光伝送構造体の間で光信号を伝送する場合の実施態様を模式的に示す部分断面図である。
【図12】本発明の光伝送構造体を配列させて使用する場合の実施態様を模式的に示す部分断面図である。
【図13】従来の光伝送構造体の別の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。
【図14】(a)〜(d)は、本発明の光導波路の形成方法の一例を説明するための模式図である。
【図15】本発明の光導波路の形成方法の工程の一部を説明するための模式図である。
【図16】本発明の光導波路の形成方法の工程の一部を説明するための模式図である。
【図17】本発明の光導波路の形成方法の工程の一部を説明するための模式図である。
【図18】(a)、(b)は、それぞれ本発明の光導波路の形成方法の工程の一部を説明するための模式図である。
【図19】(a)は、本発明の光導波路の形成方法の工程の一部を説明するための模式図であり、(b)は、(a)の部分拡大断面図である。
【図20】(a)〜(d)は、本発明の光導波路の形成方法の別の一例を説明するための模式図である。
【図21】(a)〜(d)は、本発明の光導波路の形成方法の別の一実施形態を説明するための模式図である。
【図22】本発明の光導波路の形成方法の工程の一部を説明するための模式図である。
【図23】本発明の光導波路の形成方法の工程の一部を説明するための模式図である。
【図24】実施例1で行った光導波路の形成方法を説明するための概略図である。
【図25】実施例5で行った光導波路の形成方法を説明するための概略図である。
【図26】本発明の光伝送構造体の別の一実施形態を模式的に示す部分断面図である。
【図27】本発明の光伝送構造体を配列させて使用する場合の別の実施形態を模式的に示す部分断面図である。
【図28】本発明の光導波路の形成方法において,光配線の端面を介して感光性組成物等に照射する光の光路を説明するための説明図である。
【図29】実施例8で行った光配線の形成方法を説明するための概略図である。
【図30】実施例8で行った光導波路の形成方法を説明するための概略図である。
【図31】参考例2で行った光配線の形成方法を説明するための概略図である。
【符号の説明】
1、11、21、31 感光性樹脂または感光性組成物
2、12,12′、22,22′、32 光配線(光ファイバ)
3、13、23、33 コア
4、14、24、34 コア層
5、15 紫外線照射装置
100 光伝送構造体
102 光配線
104 コア層
Claims (11)
- 少なくとも光配線と光導波路とが結合してなり、前記光配線のコアと前記光導波路のコア層との間で光信号を伝送することができるように構成された光伝送構造体であって、
前記光配線の前記光導波路のコア層と結合した部分は、特に平坦化処理が施されていないか、または、JIS B 0601に基づく面粗度Raが、0.1μm以上であることを特徴とする光伝送構造体。 - 前記光配線のコアと前記光導波路のコア層とが結合しており、
少なくとも、前記光配線の前記光導波路のコア層と結合した側の端部の外周には、被覆層が形成されている請求項1に記載の光伝送構造体。 - 前記光導波路のコア層の光屈折率は、前記光配線の前記光導波路のコア層と結合した部分の光屈折率の90〜110%である請求項1または2に記載の光伝送構造体。
- 前記光導波路のコア層の光屈折率は、前記光配線の前記光導波路のコア層と結合した部分の光屈折率の95〜105%である請求項1または2に記載の光伝送構造体。
- 前記光導波路のコア層は、前記光配線に結合した側と反対側の端面に光路変換ミラーが形成されている請求項1〜4のいずれか1に記載の光伝送構造体。
- 前記光導波路のコア層は、少なくとも一の屈曲部を有している請求項1〜5のいずれか1に記載の光伝送構造体。
- 前記光配線の表面であって、光導波路のコア層と結合した部分以外の部分の一部または全部に粗化面が形成されている請求項1〜6のいずれか1に記載の光伝送構造体。
- 感光性樹脂または感光性組成物中に光配線の一部を浸漬し、前記光配線を介して前記感光性樹脂または感光性組成物中に光を照射することにより、前記感光性樹脂または感光性組成物中の光の経路に応じたコア層を形成する光導波路の形成方法であって、
前記光配線の前記コア層と結合する部分は、特に平坦化処理が施されていないか、または、JIS B 0601に基づく面粗度Raが、0.1μm以上であることを特徴とする光導波路の形成方法。 - 前記感光性樹脂または感光性組成物中に浸漬する光配線の一部は前記光配線の端部であり、この光配線の端部の外周には被覆層が形成されている請求項8に記載の光導波路の形成方法。
- 前記コア層の光屈折率は、前記光配線の前記コア層と結合する部分の光屈折率の90〜100%である請求項8または9に記載の光導波路の形成方法。
- 前記コア層の光屈折率は、前記光配線の前記コア層と結合する部分の光屈折率の95〜105%である請求項8または9に記載の光導波路の形成方法。
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