JP2004002384A - プロキラルケトンの水素化 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水素の存在下及び変性剤としてのシンコニン又はキニジンの存在下で、白金触媒を用いてプロキラルケトンを(S)−アルコールにエナンチオ選択的に水素化する方法であって、使用される変性剤が、3位が置換されていないシンコニン、3−エチリデニル−又は9−メトキシシンコニンあるいはキノリン環が他の環で置き換えられているそれらの誘導体であることを特徴とする方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素の存在下及び変性剤としてのシンコニン又はキニジンの存在下で、白金触媒を用いてプロキラルケトンを(S)−アルコールにエナンチオ選択的に水素化する方法であって、用いる変性剤が、3位が置換されていないシンコニン、3−エチリデニル−又は9−メトキシシンコニンあるいはキノリン環が他の環で置き換えられたそれらの誘導体であることを特徴とする方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シンコニジン又はシンコニン及びこれらキヌクリジンの誘導体の存在下で白金触媒を用いた、α−ケトエステルのエナンチオ選択水素化が、H.−U.BlaserらによりCatalysis Today 37(1997)、441〜463頁に記載されている。この刊行物にはまた、シンコニジンの存在下で(R)−アルコールを製造する場合のエナンチオ選択性が、シンコニンの存在下で(S)−アルコールを製造する場合よりかなり高いことが開示されている。同じ観察が、α−ケトジアセタールのエナンチオ選択水素化において、B.ToeroekらによるChem.Comm.(1999)、1725〜1726頁でなされている。α−ケトアセタールの水素化も、M.StuderらによってChem.Comm.(1999)、1727〜1728頁に記載されている。J.Am.Chem.Soc.(2000)122、12675〜12682頁にH.U.Blaserが、シンコナ変性白金触媒を用いたピルビン酸エチルの水素化に及ぼすシンコナアルカロイドによる変性の影響を記載している。キヌクリジン基の3位における置換の影響は実質的に皆無か、ごく僅かしかないことが立証されている。シンコナアルカロイドのpKa値の測定に関連して、C.DrzewiczakらはPolish J.Che.,67,48ff(1993)で、合成や用途を特定することなく、3−エチリデンシンコニンについて言及している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
意外なことに、白金触媒を3−エチリデン−又は9−メトキシシンコニンあるいはキノリン環が他の環で置き換えられているそれらの誘導体で変性すると、水素を用いた、プロキラルケトンの(S)−アルコールへの水素化において、極めて高い触媒活性と増大したエナンチオ選択性を達成することが可能であることが見出された。(S)−アルコールの光学収率は90%eeを超えることがありうるが、このような高い収率は、これまで、この水素化経路による(S)−アルコールの製造においては、超音波を使用する(B. Toeroekら、Ultrasonics Sonochemistry 7(2000)151)か、変性剤を連続添加する(C.LeBlondら、JACS 121(1999)4920)ことによってのみ可能であった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水素の存在下及び変性剤としてのシンコニン又はキニジンの存在下で、白金触媒を用いてプロキラルケトンを(S)−アルコールにエナンチオ選択的に水素化する方法であって、3位が置換されていないシンコニン、3−エチリデニル−又は9−メトキシシンコニンあるいはキノリン環が他の環で置き換えられているそれらの誘導体の群からのシンコニンを用いることを特徴とする方法を提供する。
【0005】
プロキラルケトンは周知である。プロキラルα−ケトンは、非置換であるか、又は水素化条件下で安定な基で置換されている、炭素原子を好ましくは5〜30個、更に好ましくは5〜20個有する、飽和又は不飽和の、開鎖又は環式化合物であってよい。この炭素鎖は、ヘテロ原子、好ましくは−O−、=N−及び−NR′−(ここで、R′は、H、C1〜C8−アルキル、好ましくはC1〜C4−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロオクチル、C6〜C10−アリール、例えば、フェニル又はナフチル、あるいはC7〜C12−アラルキル、例えば、フェニルメチル又はフェニルエチルである)の群からのヘテロ原子によって中断されていてもよい。このプロキラルケトンは、好ましくは、α位に活性化基、例えば、カルボキシル、カルボン酸エステル、アセタール、ケト又はエーテル基を有する。
【0006】
プロキラルケトンは、α−ケトカルボン酸、α−ケトカルボン酸エステル、α−ケトエーテル、α−ケトアセタール及びα,β−ジケトンであってよい。これらのプロキラルケトンは、式(I)、(II)、(III)、(IV)及び(V):
【0007】
【化6】
【0008】
〔式中、
R1、R2、R3及びR6は、それぞれ独立に、一価の、炭素原子1〜12個を有する、飽和又は不飽和脂肪族基、炭素原子3〜8個を有する飽和又は不飽和環状脂肪族基、環構成原子3〜8個を有し、かつO、N及びNR′の群からのヘテロ原子1個又は2個を有する飽和又は不飽和複素環式脂肪族基、炭素原子4〜12個を有する飽和又は不飽和環状脂肪族−脂肪族基、炭素原子3〜12個を有し、かつO、N及びNR′の群からのヘテロ原子1個又は2個を有する飽和又は不飽和複素環式脂肪族−脂肪族基、炭素原子6〜10個を有する芳香族基、炭素原子4〜9個を有し、かつO及びNの群からのヘテロ原子1個又は2個を有するヘテロ芳香族基、炭素原子7〜12個を有する芳香族−脂肪族基、あるいは炭素原子5〜11個を有し、かつO及びNの群からのヘテロ原子1個又は2個を有するヘテロ芳香族−脂肪族基(ここで、R′は、H、C1〜C8−アルキル、好ましくはC1〜C4−アルキル、C5−又はC6−シクロアルキル、C6〜C10−アリール、例えば、フェニル又はナフチル、C7〜C12−アリール、例えば、フェニルメチル又はフェニルエチルである)であり、
【0009】
R1とR2、又はR1とR6は、一緒になってC1〜C6−アルキレン又はC3〜C8−1,2−シクロアルキレンを形成するか、あるいは1,2−フェニレンに縮合した、C2〜C4アルキレン又はC3〜C8−シクロアルキレンを形成し、R3は、前記に定義したとおりであり、
【0010】
R2とR3は、一緒になってC1〜C6−アルキレン、C1〜C8−アルキリデン、C3〜C8−1,2−シクロアルキレン、C3〜C8−シクロアリキリデン、ベンジリデン、1,2−フェニレン、1,2−ピリジニレン、1,2−ナフチレンを形成するか、あるいは1,2−シクロアルキレン又は1,2−フェニレンに縮合した、C3〜C4−アルキレン又はC3〜C8−1,2−シクロアルキレンを形成し、R1は、前記に定義したとおりであり、
【0011】
そして、R1、R2、R3及びR6は、それぞれ非置換であるか、あるいはC1〜C4−アルキル、C2〜C4−アルケニル、C1〜C4−アルコキシ、C1〜C4−ハロアルキル、C1〜C4−ヒドロキシアルキル、C1〜C4−アルコキシメチル又は−エチル、C1〜C4−ハロアルコキシ、シクロヘキシル、シクロヘキシルオキシ、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルメチルオキシ、フェニル、フェニルオキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、フェニルエチル、フェニルエチルオキシ、ハロゲン、−OH、−OR4、−OC(O)R4、−NH2、−NHR4、−NR4R5、−NH−C(O)−R4、−NR4−C(O)−R4、−CO2R4、−CO2−NH2、−CO2−NHR4、−CO2−NR4R5(ここで、R4及びR5は、それぞれ独立に、C1〜C4アルキル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、フェニル又はベンジルである)の群から選択される、1個以上の同一又は異なる基によって置換されている〕
に相当しうる。
【0012】
複素環式基は、環の炭素原子を介して、式(I)、(II)、(III)、(IV)及び(V)の化合物にあるカルボニル基の酸素原子又は炭素原子に結合している。
【0013】
好ましい置換基は、メチル、エチル、n−及びi−プロピル、n−及びt−ブチル、ビニル、アリル、メトキシ、エトキシ、n−及びi−プロピルオキシ、n−及びt−ブチルオキシ、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、β−ヒドロキシエチル、メトキシ−又はエトキシメチル又は−エチル、トリフルオロメトキシ、シクロヘキシル、シクロヘキシルオキシ、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルメチルオキシ、フェニル、フェニルオキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、フェニルエチルオキシ、フェニルエチル、ハロゲン、−OH、−OR4、−OC(O)R4、−NH2、−NHR4、−NR4R5、−NH−C(O)−R4、−NR4−C(O)−R4、−CO2R4、−CO2−NH2、−CO2−NHR4、−CO2−NR4R5(ここで、R4及びR5は、それぞれ独立に、C1〜C4−アルキル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、フェニル又はベンジルである)である。
【0014】
脂肪族基は、好ましくはアルキルであり、このアルキルは直鎖状でも分枝状でもよく、炭素原子を好ましくは1〜8個、更に好ましくは1〜4個有するか、あるいは好ましくはアルケニル又はアルキニルであり、これらはそれぞれ直鎖状でも分枝状でもよく、炭素原子を好ましくは2〜8個、更に好ましくは2〜4個有する。R2及びR3が、アルケニル又はアルキニルであるとき、不飽和結合は好ましくは、酸素原子に対してβ位にある。例としては、メチル、エチル、n−及びi−プロピル、n−、i−及びt−ブチル、ペンチル、i−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシル、ビニル、アリル、エチニル及びプロパルギルを含む。脂肪族基の好ましい群は、メチル、エチル、n−及びi−プロピル、n−、i−及びt−ブチルである。
【0015】
環状脂肪族基は、環構成炭素原子を好ましくは3〜8個、更に好ましくは5個又は6個有する、好ましくはシクロアルキル又はシクロアルケニルである。例の一部としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル、そして更にシクロペンテニル、シクロヘキセニル及びシクロヘキサジエニルがある。特に好ましいのはシクロペンチル及びシクロヘキシルである。
【0016】
複素環式脂肪族基は、炭素原子を好ましくは3〜6個、環構成原子を4〜7個、かつ−O−及び−NR′−(ここで、R′は、H、C1〜C8−アルキル、好ましくはC1〜C4−アルキル、C5−又はC6−シクロアルキル、C6〜C10−アリール、例えば、フェニル又はナフチル、フェニル又はフェニルエチルである)の群から選択されるヘテロ原子を有する、好ましくは複素環式アルキル又は複素環式アルケニルである。例の一部としては、ピロリジニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル及びピペラジニルがある。
【0017】
環状脂肪族−脂肪族基は、環構成炭素原子を好ましくは3〜8個、更に好ましくは5個又は6個有する、好ましくはシクロアルキル−アルキル又は−アルケニルであり、そのアルキル基に炭素原子を好ましくは1〜4個、更に好ましくは1個又は2個有し、アルケニル基に炭素原子を好ましくは2〜4個、更に好ましくは2個又は3個有する。例としては、シクロペンチル−又はシクロヘキシルメチル又は−エチル及びシクロペンチル−又はシクロヘキシルエテニルを含む。
【0018】
複素環式脂肪族−脂肪族基は、炭素原子を好ましくは3〜6個、環構成原子を4〜7個、かつ−O−及び−NR′−(ここで、R′は、H、C1〜C8−アルキル、好ましくはC1〜C4−アルキル、C5−又はC6−シクロアルキル、C6〜C10−アリール、例えば、フェニル又はナフチル、フェニル又はフェニルエチルである)の群から選択されるヘテロ原子を有する、好ましくは複素環式アルキル−アルキル又は−アルケニルであり、そのアルキル基に炭素原子を好ましくは1〜4個、更に好ましくは1個又は2個有し、アルケニル基に炭素原子を好ましくは2〜4個、更に好ましくは2個又は3個有する。例としては、ピロリジニルメチル、−エチル又は−エテニル、ピロリニルメチル、−エチル又は−エテニル、テトラヒドロフラニルメチル、−エチル又は−エテニル、ジヒドロフラニルメチル、−エチル又は−エテニル及びピペラジニルメチル、−エチル又は−エテニルを含む。
【0019】
芳香族基は、好ましくはナフチル、そして特にフェニルである。
【0020】
芳香族−脂肪族基は、好ましくはフェニル−又はナフチル−C1〜C4−アルキル又は−C2〜C4−アルケニルである。例の一部としては、ベンジル、ナフチルメチル、β−フェニルエチル及びβ−フェニルエテニルがある。
【0021】
ヘテロ芳香族基は、好ましくは、場合により縮合した、5員−又は6員環系である。例の一部としては、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピロリル、フラニル、オキサゾリル、イミダゾリル、ベンゾフラニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニルがある。
【0022】
ヘテロ芳香族−脂肪族基は、好ましくは、場合により縮合した、5員−又は6員環系であり、この環系はその炭素原子の1個を介してアルキル基又はアルケニル基の自由結合に結合し、ここで、アルキル基は、炭素原子を好ましくは1〜4個、更に好ましくは1個又は2個有し、アルケニル基は、炭素原子を好ましくは2〜4個、更に好ましくは2個又は3個有する。例の一部としては、ピリジニルメチル、−エチル又は−エテニル、ピリミジニルメチル、−エチル又は−エテニル、ピロリルメチル、−エチル又は−エテニル、フラニルメチル、−エチル又は−エテニル、イミダゾリルメチル、−エチル又は−エテニル、インドリルメチル、−エチル又は−エテニルがある。
【0023】
R6は、好ましくは脂肪族、環状脂肪族又はアリール脂肪族の各基であり、更に好ましくは直鎖状C1〜C4アルキルである。
【0024】
式(I)、(II)、(III)、(IV)及び(V)の、より好ましい化合物としては、式中、
【0025】
R1、R2、R3及びR6が、それぞれ独立に、直鎖状又は分枝状C1〜C8−アルキル、C4〜C7−シクロアルキル又はO及びNの群からのヘテロ原子を有するC4〜C6−ヘテロシクロアルキル、C6〜C10−アリール又はO及びNの群からのヘテロ原子を有するC4〜C9−ヘテロアリール、C4〜C7シクロアルキル−C1〜C4−アルキル又はO及びNの群からのヘテロ原子を有するC3〜C6−ヘテロシクロアルキル−C1〜C4−アルキル、C6〜C10−アリール−C1〜C4−アルキル又はO及びNの群からのヘテロ原子を有するC4〜C9−ヘテロアリール−C1〜C4−アルキルであり、
【0026】
R1とR2、又はR1とR6が、一緒になって、C1〜C4−アルキレン又はC4〜C7−1,2−シクロアルキレンを形成するか、あるいは1,2−フェニレンに縮合した、C2〜C4−アルキレン又はC4〜C7−シクロアルキレンを形成し、R3は、前記に定義したとおりであり、
【0027】
R2とR3が、一緒になって、C1〜C4−アルキレン、C1〜C4−アルキリデン、C4〜C7−1,2−シクロアルキレン、C4〜C7−シクロアルキリデン、ベンジリデン、1,2−フェニレン、1,2−ピリジニレン、1,2−ナフチレンを形成するか、あるいは1,2−シクロアルキレン又は1,2−フェニレンに縮合した、C3〜C4−アルキレン又はC4〜C7−シクロアルキレンを形成し、R1は、前記に定義したとおりであり、
【0028】
式中、R1、R2、R3及びR6は、それぞれ非置換であるか、あるいはC1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、C1〜C4−ハロアルキル、C1〜C4−ヒドロキシアルキル、C1〜C4−アルコキシメチル又は−エチル、C1〜C4−ハロアルコキシ、シクロヘキシル、シクロヘキシルオキシ、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルメチルオキシ、フェニル、フェニルオキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、フェニルエチル、フェニルエチルオキシ、ハロゲン、−OH、−OR4、−OC(O)R4、−NH2、−NHR4、−NR4R5、−NH−C(O)−R4、−NR4−C(O)−R4、−CO2R4、−CO2−NH2、−CO2−NHR4、−CO2−NR4R5(ここで、R4及びR5は、それぞれ独立に、C1〜C4−アルキル、シクロヘキシル、フェニル又はベンジルである)の群から選択される、1個又は2個以上の同一又は異なる基によって置換されている、
化合物を含んでいる。
【0029】
式(I)、(II)、(III)、(IV)及び(V)の化合物の、好ましい下位群は、式中、
【0030】
R1、R2、R3及びR6が、それぞれ独立に、直鎖状又は分枝状C1〜C4−アルキル、C2〜C4−アルケニル、C5〜C6−シクロアルキル、フェニル、フェニルエテニル、C5〜C6−シクロアルキル−C1〜C2−アルキル又はC6〜C10−アリール−C1〜C2−アルキルであり、
【0031】
R1とR2、又はR1とR6が、一緒になって、C1〜C3−アルキレン又はC5〜C6−1,2−シクロアルキレンを形成し、
【0032】
R2とR3が、一緒になって、C2〜C4−アルキレン、C1〜C4−アルキリデン、C5〜C6−1,2−シクロアルキレン、C5〜C6−シクロアルキリデン、ベンジリデン、1,2−フェニレンを形成し、
【0033】
ここで、R1、R2、R3及びR6が、それぞれ非置換であるか、又は前記で定義されたとおりに置換されている、
化合物である。
【0034】
式(I)、(II)、(III)、(IV)及び(V)の化合物の、特に好ましい下位群は、式中、
【0035】
R1及びR6が、それぞれ独立に、C1〜C4−アルキル、C2〜C4−アルケニル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、フェニルエチル又はフェニルエテニルであり、
【0036】
R2及びR3が、それぞれ独立に、直鎖状又は分枝状C1〜C4−アルキル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル又はフェニルエチルであり、
【0037】
R1とR2、又はR1とR6が、一緒になって、C2〜C3−アルキレン又は1,2−シクロヘキシレンを形成し、
【0038】
R2とR3が、一緒になって、C2〜C3−アルキレン、C1〜C4−アルキリデン、1,2−シクロヘキシレン、シクロヘキシリデン、ベンジリデン又は1,2−フェニレンを形成し、
【0039】
ここで、R1、R2、R3及びR6が、それぞれ非置換であるか、あるいはメチル、エチル、n−及びi−プロピル、n−及びt−ブチル、ビニル、アリル、メトキシ、エトキシ、n−及びi−プロピルオキシ、n−及びt−ブチルオキシ、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、β−ヒドロキシエチル、メトキシ−又はエトキシメチル又は−エチル、トリフルオロメトキシ、シクロヘキシル、シクロヘキシルオキシ、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルメチルオキシ、フェニル、フェニルオキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、フェニルエチルオキシ、フェニルエチル、ハロゲン、−OH、−OR4、−OC(O)R4、−NH2、−NHR4、−NR4R5、−NH−C(O)−R4、−NR4−C(O)−R4、−CO2R4、−CO2−NH2、−CO2−NHR4、−CO2−NR4R5(ここで、R4及びR5は、それぞれ独立に、C1〜C4−アルキル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、フェニル又はベンジルである)で置換されている、
化合物である。
【0040】
式(I)、(II)、(III)、(IV)及び(V)の化合物の一部は公知であり、
又は類似した工程によってそれ自体公知の方法で製造することができる。
【0041】
式(I)、(II)、(III)、(IV)及び(V)の化合物は水素化されて式(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)及び(X):
【0042】
【化7】
【0043】
〔式中、R1、R2、R3及びR6は、それぞれ前記で定義されたとおりであり、符号*は立体異性体の一つのS型を主に表す〕
で示されるキラル第二級アルコールとなる。
【0044】
白金触媒は公知であり、広範囲にわたって記述されており、また市販されている。金属状態で、例えば粉体として白金を用いることも、又は、好ましくは、微粉担体に付着させた白金金属を用いることもできる。適切な担体例としては、炭素、金属酸化物、例えば、SiO2、TiO2、Al2O3、金属塩、及び天然又は合成ケイ酸塩を含む。触媒は金属コロイドであってもよい。担体上の白金金属の量は、担体を基準にして、例えば、1〜10重量%、好ましくは3〜8重量%であってよい。触媒を、その使用前に、水素による高温での処理及び/又は超音波によって活性化させてもよい。好ましい触媒はAl2O3に担持した白金である。
【0045】
本発明で使用される、3位が置換されていないシンコニン、3−エチリデニル−又は9−メトキシシンコニンあるいはそれらの誘導体は、例えば、8(R),9(S)−立体配置を有する式(XI):
【0046】
【化8】
【0047】
〔式中、
R9は、CH2=CH−又はCH3CH2−であり、R7は、メチルであるか、あるいは
R9は、H又はCH3−CH=であり、R7は、H又はメチルであり、そして
R8は、非置換の、あるいはC1〜C4アルキル置換又はC1〜C4−アルコキシ置換の、C6〜C14アリール又は−N=、−O−、−S−及び−N(C1〜C4−アルキル)−の群から選択されるヘテロ原子を有するC5〜C13ヘテロアリールである〕
に相当しうる。
【0048】
アリール及びヘテロアリールとしてのR8は、単環式基あるいは環を好ましくは2個又は3個有する縮合多環式基であってよい。環は、好ましくは5個又は6個の環構成原子を含有する。例の一部としては、フェニル、フリル、チオフェニル、N−メチルピロリル、ピリジニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、アントラセニル、フェナントリル、キノリニル、テトラヒドロキノリニル、イソキノリニル、インデニル、フルオレニル、ベンゾフラニル、ジヒドロベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、N−メチルインドリル、ジヒドロ−N−メチルインドリル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル及びN−メチルカルバゾリルがある。
【0049】
本発明で使用される、3位が置換されていないシンコニン、3−エチリデニル−又は9−メトキシシンコニンあるいはそれらの誘導体は、好ましくは、8(R),9(S)−立体配置を有する式(XIa):
【0050】
【化9】
【0051】
〔式中、
R9は、CH2=CH−又はCH3CH2−であり、R7は、メチルであるか、あるいは
R9は、H又はCH3−CH=であり、R7は、H又はメチルであり、
R8は、式:
【0052】
【化10】
【0053】
で示される基であり、そして、R10は、H、OH又はC1〜C4−アルコキシである〕に相当する。
R10は,好ましくはH、OH又はメトキシである。
【0054】
式(XI)においてR9が、CH2=CH−又はCH3CH2−であり、R7がメチルである化合物は、適切な天然シンコナアルカロイドのC9に結合したヒドロキシル基をメチル化することによって簡単な方法で製造することができる。R9がエチルである化合物は、R9ビニル基を水素化することによって得られる。
【0055】
式(XI)においてR9が、CH3−CH=である化合物は、金属錯体、例えばルテニウム/ホスフィン錯体、の存在下で、R9ビニル基を異性化することによって製造することができる。この方法の実施は実施例に記載されている。一般に、Z−及びE−異性体の混合物が得られ,このものはそのまま直接使用することができる。
【0056】
式(XI)の化合物のうち、天然シンコニンからは得られないものは、合成により、例えば、キヌクリジンN−オキシドを、アルキルリチウム(メチルリチウム又はn−ブチルリチウム)と共にアルデヒドR8−CH=Oと反応させ、次いでLewis酸、例えば、TiCl3、と反応させて、そして続いてアルカリ加水分解を行うことによって得ることができる。ジアステレオマーはシリカゲルを用いたクロマトグラフィーにより分離することができ、鏡像異性体はキラルカラムを用いたクロマトグラフィーにより分離することができる。このことは実施例に更に詳細に記載されている。
【0057】
白金金属は、用いるプロキラルケトンを基準にして、例えば0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜10重量%の量で用いうるが、0.1〜3重量%又は0.1〜1重量%の量でほぼ十分である。本発明で用いられる水素化系は活性が高いので、触媒の総量が少なくて済み、これにより工程が更に経済的になる。
【0058】
変性剤を、用いる白金金属を基準にして、例えば0.1〜10,000重量%、好ましくは1〜500重量%、そして更に好ましくは10〜200重量%の量で用いてもよい。変性剤を、白金金属触媒と共に反応容器に導入してもよく、又は白金金属触媒を、変性剤で予め含浸しておいてもよい。
【0059】
水素化は、好ましくは200barまで、更に好ましくは150barまで、そして特に好ましくは10〜100barの水素圧の下で好ましく実施される。
【0060】
反応温度は、例えば、−50〜100℃、更に好ましくは0〜50℃、そして特に好ましくは0〜35℃でよい。良好なエナンチオ選択性を低温で達成することが一般に可能である。
【0061】
反応は、不活性溶媒又は混合溶媒を用いずに、あるいはそれらの中で実施することができる。適切な溶媒の例としては、脂肪族、環状脂肪族及び芳香族炭化水素(ペンタン、ヘキサン、石油エーテル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン)、エーテル(ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン)、水、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル又はモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル又はモノエチルエーテル)、ケトン(アセトン、メチルイソブチルケトン)、カルボン酸エステル及びラクトン(酢酸メチル又はエチル、バレロラクトン)、N−置換カルボキサミド及びラクタム(ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン)及びカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)を含む。溶媒の選択を、光学収率に影響を及ぼすように用いることができる。例えば、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン)は、α−ケトアセタール及び芳香族α−ケトカルボン酸エステルの場合に特に有用であることがわかっており、一方、脂肪族α−ケトカルボン酸の場合には、カルボン酸、例えば酢酸、を用いると良好な結果を達成できる。
【0062】
本発明の方法は、例えば、先ず触媒を窒素塩基と、そして場合により溶媒と一緒にオートクレーブに入れ、次いでプロキラルα−ケトンを加え、次いで空気を不活性ガス、例えば希ガス、で追い出し、水素を吹き込み、次いで場合により攪拌又は振盪を行いながら反応を開始させ、水素の吸収がもはや観測されなくなるまで水素化を行うようにして実施することができる。生成したα−ヒドロキシル化合物は常法、例えば蒸留、結晶化及びクロマトグラフィー、によって単離し、精製することができる。
【0063】
本発明はまた、式(XIb):
【0064】
【化11】
【0065】
〔式中、
R9は、CH2=CH−又はCH3CH2−であり、R7は、メチルであるか、あるいは
R9は、H又はCH3−CH=であり、R7は、H又はメチルであり、そして
R10は、H又はC1〜C4−アルコキシである〕
で示される化合物を提供する。
【0066】
R7がHであり、R10=H、そしてR9がCH2=CH−であるとき、この分子はシンコニン(Cn)であり、R7がHであり、R10=H、そしてR9がCH3CH2−であるとき、この分子はヒドロシンコニン(HCn)である。
【0067】
本発明によって製造することができる(S)−α−アルコールは、天然活性成分の製造(B.T.Choら、Tetrahedron: Asymmetry Vol.5,No.7(1994) 1147〜1150頁)及び合成活性医薬成分及び殺虫剤の製造に用いられる有用な中間体である。得られる(S)−α−アルコールは公知の方法によって予め誘導体に転換することができ、この誘導体を、次いで活性成分の製造のための中間体として用いることができる。例えば、α−ケトアセタールを酸加水分解により1,4−ジオキサン又は対応するアルデヒドとし、これらを水素化して第二級光学活性ヒドロキシル基を有する1,2−ジオールとするか、フェニルボロン酸の存在下でアミンと反応させて、場合により置換された光学活性1−フェニル−1−アミノ−2−ヒドロキシアルカンとする。OH基を、例えば臭化ベンジルとの反応により保護した後、ヒドロキシル保護されたアルデヒドを、強酸との反応により得、そして1,2−ジオールに水素化してもよく、又は酸化(例えば三酸化クロムを使用)及び保護基を除去することによって(S)−α−ヒドロキシカルボン酸に転換させてもよい。
【0068】
以下に例示する実施例により本発明を詳細に説明する。光学収率は、Supelco Beta−dexカラム(商品No.2−4301)、キャリヤーガスとしての水素及び高温を用いたガスクロマトグラフィー又はHPLC(Chiralcel OD カラム、95:5 ヘキサン/イソプロパノール使用)によって測定した。転換率を、1H NMRによって測定した。
【0069】
【実施例】
A)変性剤の製造
実施例A1:O−メチルシンコニン(MeO−Cn、式(XIb)において、R7=メチル、R10=H、R9=CH2=CH−)の製造
還流冷却器と滴下漏斗を備えた250mLの二口フラスコに水素化カリウム0.60g(15.0mmol)をアルゴン下で量り入れた。これを無水n−ペンタンで3回洗浄し、次いで無水テトラヒドロフラン50mLに懸濁させた。次いで氷冷しながらシンコニン(Cn)3.24g(11.0mmol)を分割して添加したところ、明らかにガスの発生が認められた。添加完了後、殆ど透明なオレンジ色の溶液が得られるまで、0℃で更に約30分間攪拌を続けた。次いでこの溶液を、ガスの発生がもはや感知されなくなるまで50℃で更に2時間加熱した。次いで室温(RT)で、ヨードメタン0.69mL(1.56g;11.0mmol)をゆっくりと滴下して加えた。この溶液をRTで12時間攪拌した後、氷冷しながらH2O50mLを用いて加水分解した。水性相と有機相を分離し、水性相を更に酢酸エチル(EA)で3回抽出した。合わせた有機相をMgSO4で乾燥し、ロータリーエバポレーター(RE)で濃縮した。シリカゲルカラム(EA/Nethyl3 9:1)を用いたクロマトグラフィーにより精製し、高真空下で乾燥し、淡黄色固体として標題化合物2.82g(83%)を得た。少量のn−ヘキサンからの再結晶化により、無色の斜方晶系結晶2.50g(74%)が得られた。融点:113〜114℃;〔α〕D 20:+242°(c=0.90、CHCl3)。
【0070】
実施例A2:O−メチルキニジン(MeO−Qd、式(XIb)において、R7=メチル、R10=Oメチル、R9=CH2=CH−)の製造
キニジンを用いて、実施例A1の手順に従った。標題化合物が黄色の粘稠な油状物として、収率71%で得られた。〔α〕D 20:+202°(c=0.78、CHCl3)。
【0071】
実施例A3:(E)/(Z)−イソシンコニン(イソ−Cn、式(XIb)において、R7=H、R10=H、R9=CH3−CH=)の製造
還流冷却器を備えた100mLの二口フラスコ中で、アルゴン下、無水ジメチルホルムアミド30mL中のトリフェニルホスフィン106.0mg(408μmol)及びRuCl3・nH2O25.0mg(100μmol)を、透明なオレンジ色溶液が形成されるまで(約15分間)、150℃で加熱した。次いでこの溶液を100℃まで冷却した後、シンコニン2g(6.8mmol)を添加し、溶液を再度150℃で30分間加熱した。高温状態にある反応混合物を、予備冷却した水100mLに注ぎ、5℃で1時間攪拌した。沈殿した無色固体をろ別し、高真空下で乾燥した。ジメトキシエタンからの再結晶化後、標題化合物1.10g(55%)が、分離不可能な、Z−及びE−異性体の1:1混合物として微細な無色の針状形態で得られた。このジアステレオマー混合物の融点:229〜231℃;〔α〕D 20:+173°(c=0.93、CHCl3)。
【0072】
実施例A4:(E)/(Z)−アポイソキニジン(イソ−Qd、式(XIb)において、R7=H、R10=Oメチル、R9=CH3−CH=)の製造
キニジンを用いて、実施例A3の手順に従った。単離するために、水性後処理の後の反応混合物を、1MNaOH溶液を用いてpH9〜10に先ず調節し、次いで塩化メチレンで繰り返し抽出を行った。合わせた有機相を高真空下で濃縮し、次いで残留物をジエチルエーテルから再結晶化させた。標題化合物が、分離不可能な、Z−及びE−異性体の1:1混合物として薄茶褐色固体の状態で得られた。このジアステレオマー混合物の融点:161〜165℃;〔α〕D 20:+148°(c=0.88、CHCl3)。
【0073】
実施例A5:ルバノール(式(XIb)において、R7=H、R9=H、R8=ナフチル)の製造
【0074】
【化12】
【0075】
アザビシクロ〔2.2.2〕オクタンN−オキシド0.66g(5.2mmol)及びTMEDA0.86mL(0.67g;5.7mmol)の無水THF30mL溶液に、n−ブチルリチウム(1.6M n−ヘキサン溶液)3.58mL(5.7mmol)を−78℃で30分間以内に滴下して加えた。この黄色反応溶液を−78℃で1時間攪拌した。次いでα−ナフトアルデヒド0.78g(5.0mmol)の無水テトラヒドロフラン10mL溶液をゆっくり添加した。攪拌を−78℃で2時間続け、次いでこの混合物を引き続き12時間以内で室温(RT)まで加熱した。飽和NH4Cl水溶液10mLを加えた後、混合物をRTで30分間攪拌した。
【0076】
N−オキシドの第三級アミンへの還元を、さらに後処理することなく、TiCl3溶液(2.0M HCl水溶液中1.9M)を用いてその場で実施した。長時間攪拌した後でも濃い紫色が残るまで、氷冷しながらチタニウム(III)塩酸溶液を加えた。室温まで加熱した後、15%NaOH水溶液を用いて反応混合物をpH10にした。沈殿塩類はCeliteを用いてろ過し、ろ液は酢酸エチルを用いて繰り返し抽出を行った。合わせた有機相を飽和NaCl水溶液で洗浄し、炭酸カリウムで乾燥し、ろ過し、ロータリーエバポレーターにより濃縮した。この粗生成物の1H NMRスペクトルによって、2種類のジアステレオマーが1:1の割合で生成したことがわかった。シリカゲルカラム(酢酸エチル/トリエチルアミン、9:1)を用いたクロマトグラフィー精製により、所望のエリトロ−異性体0.55g(41%)が無色針状物として得られた。分取HPLC(Daicel Chiralcel OD(登録商標)、20x250mm、n−ヘキサン/イソプロパノール、95:5、ジエチルアミン1%)、20.0mL/min、tr〔(−)−鏡像異性体〕=10.4分、tr〔(+)−鏡像異性体〕=15.9分)により、2種類のエリトロ−鏡像異性体がいずれの場合も98%eeで分離された。
【0077】
【表1】
【0078】
実施例A6:EXN−1(式(XIa)において、R7=H、R9=H、R8=キノリン)の製造
【0079】
【化13】
【0080】
合成を、アザビシクロ〔2.2.2〕オクタンN−オキシド3.58g(28.2mmol)、TMEDA4.70mL(31.1mmol)、n−ブチルリチウム(1.6M n−ヘキサン溶液)20.00mL(32.0mmol)及びキノリン−4−カルボアルデヒド5.00g(31.7mmol)を用いて、実施例A5と同様な方法で行った。粗生成物の1H NMRスペクトルによって、2種類のジアステレオマーが1:1の割合で生成したことがわかった。シリカゲルカラム(酢酸エチル/トリエチルアミン、9:1)を用いたクロマトグラフィー精製により、ルバノール2.95g(39%)が無色固体として得られた。セミ分取HPLC(Chiracel OD−H(登録商標)、n−ヘプタン/イソプロパノール、98:2、0.5mL/min、tr〔(−)−ルバノール〕=52.1分、tr〔(+)−ルバノール〕=63.8分)により、エリトロ−鏡像異性体を99%eeで互いに分離した。
【0081】
【表2】
【0082】
B)プロキラルα−ケトンの水素化
実施例B1〜B8:ピルビン酸エチル〔CH3−C(O)−COOC2H5〕のエチル(2S)−ヒドロキシプロピオナートへの水素化
マグネチックスターラーを備えた2mLの微量分析容器に、5%Pt/Al2O3(触媒JMC94、バッチ14017/01、400℃で2時間、水素下で前処理)10mgを初めに入れ、変性剤1mgと混合した。次いで、溶媒1mLに溶かしたピルビン酸エチル100μLを加え、次に微量分析容器を3個の別の微量分析容器と一緒に50mLの耐圧オートクレーブに入れた。オートクレーブをアルゴンで3回、水素で3回パージし、次いで60bar圧の水素を注入した。マグネチックスターラーのスイッチを入れて反応を開始させ、反応を室温で行った。60〜70分後、圧力を抜き、オートクレーブをアルゴンで3回パージし、開けた。触媒をろ別し、反応混合物を分析した。結果を表1に示した。
【0083】
【表3】
【0084】
実施例B13〜B24:メチルフェニルケトアセタートの水素化
メチルフェニルケトアセタートを用いて、実施例B1の手順に従った。結果を表2に示した。
【0085】
【表4】
【0086】
実施例B25〜B36:メチルグリオキサール1,1−ジメチルアセタートの水素化
メチルグリオキサール1,1−ジメチルアセタートを用いて、実施例B1の手順に従った。結果を表3に示した。
【0087】
【表5】
【0088】
実施例B37〜B48:エチル2,4−ジケトブチラートのエチル(S)−4−ケト−2−ヒドロキシブチラートへの水素化
エチル2,4−ジケトブチラートを用いて、実施例B1の手順に従った。結果を表4に示した。
【0089】
【表6】
【0090】
実施例B49〜B60:エチル2,4−ジオキソ−4−フェニルブチラートのエチル(S)−4−ケト−フェニル−2−ヒドロキシブチラートへの水素化
エチル2,4−ジオキソ−4−フェニルブチラートを用いて、実施例B1の手順に従った。結果を表5に示した。
【0091】
【表7】
【0092】
実施例B61〜B71:エチル4−フェニル−2−オキソブチラートの水素化
エチル4−フェニル−2−オキソブチラートを用いて、実施例B1の手順に従った。結果を表6に示した。
【0093】
【表8】
【0094】
実施例B72及び比較例:ピルビン酸エチルの水素化
マグネチックスターラーと制御板を備えた50mLの耐圧オートクレーブに先ず変性剤5mgを入れた。触媒(JMC94、バッチ14017/01、400℃で2時間、水素下で前処理)50mgを酢酸2mLでスラリーとし、オートクレーブに移した。基質を残りの溶媒(総量20mL)に溶かし、同じくオートクレーブに移した。オートクレーブをアルゴンで3回、水素で3回パージし、次いで60bar圧の水素を注入した。マグネチックスターラーのスイッチを入れて反応を開始させた。温度は、クリオスタットを利用して25℃に一定に保った。オートクレーブ内の圧力は、ドーム型圧力調整器を用いて反応の間一定に維持し、反応器内における水素吸収量をガス溜め内の圧力低下によって測定した。反応終了後、反応器を減圧にし、オートクレーブをアルゴンで3回パージし、次いで開いた。触媒をろ別した。転換率をガスクロマトグラフィーによって測定した。結果を表7に示した。HCnは10,11−ジヒドロシンコニンを意味する。
【0095】
【表9】
【0096】
実施例B73及び比較例:メチルグリオキサール1,1−ジメチルアセタールの水素化
手順は実施例B72の場合と同じにした。転換率をガスクロマトグラフィーによって測定した。結果を表8に示した。HCnは10,11−ジヒドロシンコニンを意味する。
【0097】
【表10】
【0098】
実施例B74〜B75及び比較例:エチル4−フェニル−2,4−ジオキソブチラートの水素化
手順は実施例B72の場合と同じにした。転換率をガスクロマトグラフィーによって測定した。結果を表9に示した。HCnは10,11−ジヒドロシンコニンを意味する。
【0099】
【表11】
Claims (13)
- 水素の存在下及び変性剤としてのシンコニン又はキニジンの存在下で、白金触媒を用いてプロキラルケトンを(S)−アルコールにエナンチオ選択的に水素化する方法であって、3位が置換されていないシンコニン、3−エチリデニル−又は9−メトキシシンコニンあるいはキノリン環が他の環で置き換えられているそれらの誘導体の群から選択される変性剤を用いることを特徴とする方法。
- プロキラルα−ケトンが、非置換であるか、又は水素化条件下で安定な基で置換されている、炭素原子5〜30個を含有する、飽和又は不飽和の、開鎖又は環式化合物であり、その炭素鎖は、−O−、=N−及び−NR′−(ここで、R′は、H、C1〜C8−アルキル、C5〜C8−シクロアルキル、C6〜C10−アリール又はC7〜C12−アラルキルである)の群からのヘテロ原子によって中断されていないか、又は中断されていることを特徴とする、請求項1記載の方法。
- プロキラルケトンが、α−ケトカルボン酸、α−ケトカルボン酸エステル、α−ケトエーテル、α−ケトアセタール及びα,β−ジケトンであることを特徴とする、請求項2記載の方法。
- プロキラルケトンが、式(I)、(II)、(III)、(IV)及び(V):
R1、R2、R3及びR6は、それぞれ独立に、一価の、炭素原子1〜12個を有する飽和又は不飽和脂肪族基、炭素原子3〜8個を有する飽和又は不飽和環状脂肪族基、環構成原子3〜8個を有し、かつO、N及びNR′の群からのヘテロ原子1個又は2個を有する飽和又は不飽和複素環式脂肪族基、炭素原子4〜12個を有する飽和又は不飽和環状脂肪族−脂肪族基、炭素原子3〜12個を有し、かつO、N及びNR′の群からのヘテロ原子1個又は2個を有する飽和又は不飽和複素環式脂肪族−脂肪族基、炭素原子6〜10個を有する芳香族基、炭素原子4〜9個を有し、かつO及びNの群からのヘテロ原子1個又は2個を有するヘテロ芳香族基、炭素原子7〜12個を有する芳香族−脂肪族基、あるいは炭素原子5〜11個を有し、かつO及びNの群からのヘテロ原子1個又は2個を有するヘテロ芳香族−脂肪族基(ここで、R′は、H、C1〜C8−アルキル、好ましくはC1〜C4−アルキル、C5−又はC6−シクロアルキル、C6〜C10−アリール、例えば、フェニル又はナフチル、C7〜C12−アリール、例えば、フェニルメチル又はフェニルエチルである)であり、
R1とR2、又はR1とR6は、一緒になって、C1〜C6−アルキレン又はC3〜C8−1,2−シクロアルキレンを形成するか、あるいは1,2−フェニレンに縮合した、C2〜C4−アルキレン又はC3〜C8−シクロアルキレンを形成し、R3は、前記に定義したとおりであり、
R2とR3は、一緒になって、C1〜C6−アルキレン、C1〜C8−アルキリデン、C3〜C8−1,2−シクロアルキレン、C3〜C8−シクロアリキリデン、ベンジリデン、1,2−フェニレン、1、2−ピリジニレン、1、2−ナフチレンを形成するか、あるいは1,2−シクロアルキレン又は1,2−フェニレンに縮合した、C3〜C4−アルキレン又はC3〜C8−1,2−シクロアルキレンを形成し、R1は、前記に定義したとおりであり、
そして、R1、R2、R3及びR6は、それぞれ非置換であるか、あるいはC1〜C4−アルキル、C2〜C4−アルケニル、C1〜C4−アルコキシ、C1〜C4−ハロアルキル、C1〜C4−ヒドロキシアルキル、C1〜C4−アルコキシメチル又は−エチル、C1〜C4−ハロアルコキシ、シクロヘキシル、シクロヘキシルオキシ、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルメチルオキシ、フェニル、フェニルオキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、フェニルエチル、フェニルエチルオキシ、ハロゲン、−OH、−OR4、−OC(O)R4、−NH2、−NHR4、−NR4R5、−NH−C(O)−R4、−NR4−C(O)−R4、−CO2R4、−CO2−NH2、−CO2−NHR4、−CO2−NR4R5(ここで、R4及びR5は、それぞれ独立に、C1〜C4アルキル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、フェニル又はベンジルである)の群から選択される、1個以上の同一又は異なる基によって置換されている〕
に相当することを特徴とする、請求項3記載の方法。 - 3位が置換されていないシンコニン、3−エチリデニル−又は9−メトキシシンコニンあるいはそれらの誘導体が、8(R),9(S)−立体配置を有する式(XI):
R9は、CH2=CH−又はCH3CH2−であり、R7は、メチルであるか、あるいは
R9は、H又はCH3−CH=であり、R7は、H又はメチルであり、そして
R8は、非置換の、あるいはC1〜C4−アルキル置換又はC1〜C4−アルコキシ置換の、C6〜C14−アリール又は−N=、−O−、−S−及び−N(C1〜C4−アルキル)−の群から選択されるヘテロ原子を有するC5〜C13ヘテロアリールである〕
で示される化合物に相当することを特徴とする、請求項1記載の方法。 - アリール及びヘテロアリールとしてのR8が、単環式又は縮合多環式基であることを特徴とする、請求項5記載の方法。
- アリール及びヘテロアリールが、環構成原子5個又は6個を有する環を含むことを特徴とする、請求項6記載の方法。
- 用いるプロキラルケトンを基準にして、0.01〜10重量%の量で白金金属を用いることを特徴とする、請求項1記載の方法。
- 用いる白金金属を基準にして、0.1〜10,000重量%の量で変性剤を用いることを特徴とする、請求項1記載の方法。
- 水素化を、200barまでの水素圧の下で実施することを特徴とする、請求項1記載の方法。
- 反応温度が、−50〜100℃であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
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