JP2004001649A - 自動二輪車のギヤ伝達装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】N個(3個以上)のギヤからなるギヤ列がケーシング内に収容された自動二輪車のギヤ伝達装置において、上記ギヤ列の全ての噛合部A,における噛合タイミングA1,B1,C1,D1を、正面法線ピッチteの1/(N−1)ずつずらしたことを特徴とする。これにより、各噛合部からそれぞれ発生する噛合音が互いに相殺し合い、理論的に全体の噛合音をゼロにし、ギヤ噛合音の静粛化を図る。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ギヤの噛合音を抑制するようにした自動二輪車のギヤ伝達装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
これまで多くのスクーター型の自動二輪車は、エンジンと動力伝達装置とが一体に構成されたパワーユニットを車体フレームに対し上下揺動可能に連結しており、動力伝達装置の最後部に後輪が直接軸支され、エンジンの動力がVベルト等で後輪に伝達するように構成されていた。
【0003】
ところが、エンジンが大出力化するにつれ、ベルトによる動力伝達方式では滑りによる伝達ロスやベルトの耐久性についての不安を払拭できないため、より確実な動力伝達性能を得ることのできる、3個以上のギヤからなるギヤ列をケーシング内に収容したギヤ伝達装置が見直されている。
【0004】
ギヤ伝達であれば、エンジンの動力を効率良く後輪に伝達できる上、耐久性が高くてほとんどメンテナンスフリーであり、しかも低価格にて生産できるというメリットがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなギヤ伝達装置では、走行時に複数のギヤが高速で噛み合う際に少なからず噛合音を発生させるため、ギヤ伝達装置のケーシング外周を別な防音カバーで覆うといった防音対策を講じる必要があり、これに別途コストが掛かるばかりか、防音カバーの装着によりパワーユニットの外観が大柄になって外観性劣化や重量増を招く恐れがある。その上、パワーユニットの近傍に位置する他物品の配置にも支障を来す場合が多かった。
【0006】
本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、ギヤ噛合音の静粛化を図るとともに、内部スペースを有効利用してギヤ伝達装置のコンパクト化を図り、合わせてギヤ回転速度検出センサーの汚損防止、検出精度向上、ケーシングの剛性アップ、部品点数減少、メカロス減少等、数々のメリットをもたらすことのできる自動二輪車のギヤ伝達装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る自動二輪車のギヤ伝達装置は、請求項1に記載したように、N個(3個以上)のギヤからなるギヤ列がケーシング内に収容された自動二輪車のギヤ伝達装置において、上記ギヤ列の全ての噛合部における噛合タイミングを、正面法線ピッチの1/(N−1)ずつずらしたことを特徴とする。これにより、各噛合部からそれぞれ発生する噛合音が互いに相殺し合い、理論的に全体の噛合音がゼロになるので、ギヤ噛み合い音の静粛化に貢献することができる。
【0008】
また、本発明に係る自動二輪車のギヤ伝達装置は、請求項2に記載したように、側面視で前記各ギヤの軸心を結ぶ線が屈折するように各ギヤを配置して前記各噛合部における噛合タイミングをずらし、この屈折したギヤ配置によりギヤ外周面とケーシング内周面との間に発生する余剰スペースに、ケーシング内周面より内周側に位置する構造部を配置した。こうすれば、ケーシング内部の余剰スペースを有効利用し、その分ギヤ伝達装置をコンパクト化することができる。
【0009】
さらに、本発明に係る自動二輪車のギヤ伝達装置は、請求項3に記載したように、前記構造部をギヤの回転速度検出センサーとし、この回転速度検出センサーを前記ケーシング内の上側にできる余剰スペースに配置した。これにより、回転速度検出センサーの汚損を防止するとともに、回転速度検出センサーの検出精度を向上させることができる。
【0010】
そして、本発明に係る自動二輪車のギヤ伝達装置は、請求項4に記載したように、前記構造部を前記ケーシングのケース本体とケースカバーとをボルト締結する締結ボスとした。これによっても余剰スペースが有効利用され、しかもケーシングの剛性をアップさせることができる。
【0011】
また、本発明に係る自動二輪車のギヤ伝達装置は、請求項5に記載したように、前記構造部を前記ケーシング内部の補強リブとし、この補強リブをケーシング内の下側にできる余剰スペースに配置してケーシング内に貯留されるオイルのバッフル板として活用した。この場合も余剰スペースを有効利用できるとともに、ケーシングの剛性アップと部品点数減少等を実現できる。
【0012】
さらに、本発明に係る自動二輪車のギヤ伝達装置は、請求項6に記載したように、前記ギヤ列を構成する各ギヤを、側面視で原動側のギヤから従動側のギヤに向って後下がりに配置し、後部寄りのギヤの下部のみを前記ケーシング内に貯留されるオイルに浸らせた。これにより、オイルの撹拌を最小限に抑えることができる。
【0013】
また、本発明に係る自動二輪車のギヤ伝達装置は、請求項7に記載したように、前記ギヤ列を構成する各ギヤを、平面視で原動側のギヤから従動側のギヤに向って駆動輪側に寄るように配置した。こうすれば、ギヤ伝達装置の幅を減少させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、スクーター型自動二輪車の左側面図である。この自動二輪車1は、前輪2と後輪3との間の低い位置にパワーユニット4が搭載されており、駆動輪である後輪3はパワーユニット4の後部に直接軸支されている。
【0015】
図2は図1に示すパワーユニット4の左側面図である。パワーユニット4は、例えば4サイクル並列2気筒のエンジンユニット5の後部に、本発明に係るギヤ伝達装置6が連結されたものである。
【0016】
エンジンユニット5は自動二輪車1の車体フレーム7に固定されて不動であり、ギヤ伝達装置6はエンジンユニット5の出力軸8の位置でエンジンユニット55に対し上下方向に揺動可能に連結され、このギヤ伝達装置6自体が後輪3を支持するサスペンションアームの役割を果たす。なお、ギヤ伝達装置6の後端と車体フレーム7の後部との間にショックアブソーバー9が連結されている。
【0017】
図3は、図2のIII−III線に沿うギヤ伝達装置6の平断面図であり、図4は図3のIV−IV矢視図である。ギヤ伝達装置6は、金属製のケーシング10内に、例えば5個のギヤ11,12,13,14,15からなるギヤ列16が収容された構成である。
【0018】
ケーシング10はケース本体18とケースカバー19とを備えており、ケース本体18側に形成された2箇所のノックピン挿入孔21,22(図4参照)と、ケースカバー19側の同位置に形成された2箇所のノックピン挿入孔(非図示)とにノックピン(非図示)が密に挿入されてケース本体18とケースカバー19とが正確に位置決めされ、ケース本体18の周囲に形成された複数の締結ボス23および締結ボス24にケースカバー19が液密にボルト締結される。
【0019】
また、ケース本体18は、エンジンユニット5の出力軸8が左方に突出する部分に、軸受25とオイルシール26を介して回動自在に連結されている。なお、ケースカバー19の外側面には樹脂製のアウターカバー27(図1参照)が被装されている。
【0020】
ギヤ列16を構成する5個のギヤ11〜15の歯数は例えば31,32,31,34,49とされ、これらのギヤ11〜15はほぼ同一平面状に配列されている。最前部のギヤ11はエンジンユニット5の出力軸8に回転一体に固定されて軸受28に支持され、最後部のギヤ15は後輪3の車軸29に回転一体に固定されて軸受30に支持され、中間のギヤ12,13,14はその両側面の中心部に一体形成された軸部がそれぞれ軸受31,32,33,34,35,36に支持されている。
【0021】
ケーシング10内にはオイルOが貯留されて各ギヤ11〜15が潤滑される。ギヤ11〜15は側面視で原動側のギヤ11から従動側のギヤ15に向って後下がりに配置され、後部寄りのギヤ14,15の下部のみがオイルに浸るようにされている。オイルはギヤ14,15の回転により撹拌されて飛散し、他のギヤ11〜13も潤滑される。こうすることにより、全てのギヤ11〜15をオイル中に浸らせた場合に比べてメカニカルロスを大幅に低減させるとともに、オイルの不必要な撹拌を抑制してケーシング10からのオイルの噴き出しやオイルの劣化を防止することができる。
【0022】
また、各ギヤ11〜15は平面視(図3参照)で原動側のギヤ11から従動側のギヤ15に向って後輪3側に寄るように配置されている。つまり、図3中に示すように、ギヤ11の中心位置11aに対し、ギヤ15の中心位置15aが数ミリ程後輪3側にオフセットされている。これにより、ギヤ伝達装置6全体の後輪3付近における幅を減少させ、他の部品の設計配置を容易にするとともに、自動二輪車1のバンク角に余裕を与えることができる。
【0023】
各ギヤ11〜15の車幅方向外側(左側)に配置された軸受28,30,31,33,35は全てケースカバー19側に嵌め込まれているため、ケースカバー19を取り外せば全ギヤ11〜15を素早く着脱できて整備性が極めて高い。各ギヤ11〜15はケース本体18とケースカバー19との合面よりもケース本体18側に配置されており、中間のギヤ12,13,14においては誤組付防止のために両端の軸受間隔が異ならせてある。
【0024】
ケース本体18の最後部にはショックアブソーバー9が連結されるブラケット38が設けられているが、このブラケット38は幅方向で各ギヤ11〜15とほぼ同じ位置に配置され、これによりギヤ伝達装置6がより薄く構成されている。
【0025】
ところで、ギヤ列16を構成する5つのギヤ11〜15の4つの噛合部A,B,C,Dにおいては、それぞれの噛合タイミングが少しずつずらされている。図5は噛合部Aの拡大図であり、teはギヤ11および他のギヤ12〜15の正面法線ピッチを表す。ここに示すように、ギヤ11の特定の歯111がギヤ12の特定の歯121に当接した時の噛合タイミングをA1とすれば、他の噛合部B,C,Dにおける同様な噛合タイミングB1,C1,D1は、それぞれA1に対しΔte、2Δte、3Δteの遅れを持っている。Δteは次式より求められる。
【0026】
【数1】
Δte=te/(N−1)
【0027】
上式においてNはギヤ列16を構成するギヤの数であり、本実施形態では5となる。噛合タイミングB1〜D1は必ずしもA1に対し順次遅れるように設定する必要はなく、A1に対し不規則かつ前後にずらしてもよい。しかし、各噛合タイミングA1〜D1が全て異なり、それらの間にことごとくΔteまたはΔteの整数倍(1〜3倍、場合によってはより多く)のタイミング差があることが必須条件である。なお、図5中のA2はギヤ11の次の歯112とギヤ12の次の歯122との噛合タイミングであり、噛合部Aに対し1歯分のタイミング遅れがある。
【0028】
上記のように噛合タイミングA1〜B1を設定すれば、各噛合部A〜Bからそれぞれ発生する1次〜4次の噛合音(唸り音)が重複し、図6に示すように1次〜4次の噛合音波形が互いの山と谷を相殺し合い、理論的に全体の噛合音がゼロになる。
【0029】
これを数式で表すと、
【数2】
となる。同様に2次噛合音以降では、
【数3】
【0030】
3次噛合音以降では、
【数4】
【0031】
4次噛合音以降では、
【数5】
となり、よって噛合音は1次〜3次が相殺される。このため、ギヤ伝達装置6全体から発せられる噛合音の静粛化に多大に貢献するとともに、各ギヤ11〜15の振動や摩耗を極力抑制することができる。同様にして、1次〜(N−2)次の噛合音を理論上相殺することができる(N=ギヤ数)。
【0032】
本発明では、各噛合部A〜Dにおける噛合タイミングを上記のようにずらすために、図4に示すように、側面視で各ギヤ11〜15の軸心を結ぶ線Xを屈折させている。ギヤ11〜13の軸心はほぼ前後一直線に配列されているが、ギヤ14の軸心はギヤ13の軸心よりも大きく低められ、その後のギヤ15の軸心もほぼ同じ高さに設定されている。
【0033】
そして、この屈折したギヤ配置によりギヤ11〜15とケーシング10(ケース本体18)との間に発生する余剰スペース44,46に、ケーシング10の周壁より内周側に位置する構造部が配置されている。上記構造部としては、回転速度検出センサー41と、2つの締結ボス24と、補強リブ45等が挙げられる。
【0034】
回転速度検出センサー41と一方の締結ボス24は、ケーシング10内の上側にできる余剰スペース44に配置されている。余剰スペース44は位置を低められたギヤ14の上方にあり、その天井部分となるケース本体18の周壁に回転速度検出センサー41がボルト42で固定され、余剰スペース44の底部付近に締結ボス24が配置されている。
【0035】
このように回転速度検出センサー41を余剰スペース44に設置したことにより、余剰スペース44を有効利用してギヤ伝達装置6のコンパクト化に貢献するとともに、回転速度検出センサーをオイルによる汚損から保護することができる。しかも、ギヤ14に対し回転速度検出センサー41を近接配置して検出精度を向上させることができる。
【0036】
また、締結ボス24を余剰スペース44の底部付近に配置したことにより、側面視で締結ボス24をケーシング10の極力中央部に寄せてケーシング10の剛性アップを図ることができる。
【0037】
一方、余剰スペース46はギヤ13とギヤ14の噛合部Cの下方に位置しており、その床部分となるケース本体18の周壁に補強リブ45が設けられている。補強リブ45は例えば側面視Λ字状であり、その頂部に他方の締結ボス24が配置されている。
【0038】
この位置に補強リブ45と締結ボス24を配置したことにより、余剰スペース46を有効利用するとともに、ケーシング10の剛性をアップすることができる。補強リブ45はオイルOのバッフル板としても兼用されており、これによって自動二輪車1の加減速時や登降坂走行時における大きな油面揺れが防止されている。しかも、専用のバッフル板を別部品として供給する必要がなくなるため部品点数の減少化にも多大に貢献できる。
【0039】
なお、本実施形態ではスクーター型自動二輪車に本発明に係るギヤ伝達装置が適用された例について説明したが、スクーター型自動二輪車に限らず、他の形式の自動二輪車、あるいは車両等にも本願発明を適用することは可能である。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る自動二輪車のギヤ伝達装置によれば、ギヤ噛合音の静粛化を図るとともに、ケーシング内部スペースを有効利用してギヤ伝達装置のコンパクト化を図り、合わせてギヤ回転速度検出センサーの汚損防止、検出精度向上、ケーシングの剛性アップ、部品点数減少、メカロス減少等、数々のメリットをもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スクーター型自動二輪車の左側面図。
【図2】図1に示すパワーユニットの左側面図。
【図3】図2のIII−III線に沿うギヤ伝達装置の平断面図。
【図4】図3のIV−IV矢視図。
【図5】図4に示す噛合部Aの拡大図。
【図6】1次〜4次の噛合音波形が互いに相殺しあう状況を示した線図。
【符号の説明】
1 自動二輪車
4 パワーユニット
6 ギヤ伝達装置
10 ケーシング
11,12,13,14,15 ギヤ
16 ギヤ列
18 ケース本体
19 ケースカバー
24 締結ボス
41 回転速度検出センサー
44,46 余剰スペース
45 補強リブ
A,B,C,D 噛合部
A1,B1,C1,D1 噛合タイミング
O オイル
te 正面法線ピッチ
X 側面視で各ギヤの軸心を結ぶ線
Claims (7)
- N個(3個以上)のギヤからなるギヤ列がケーシング内に収容された自動二輪車のギヤ伝達装置において、上記ギヤ列の全ての噛合部における噛合タイミングを、正面法線ピッチの1/(N−1)ずつずらしたことを特徴とする自動二輪車のギヤ伝達装置。
- 側面視で前記各ギヤの軸心を結ぶ線が屈折するように各ギヤを配置して前記各噛合部における噛合タイミングをずらし、この屈折したギヤ配置によりギヤ外周面とケーシング内周面との間に発生する余剰スペースに、ケーシング内周面より内周側に位置する構造部を配置した請求項1に記載の自動二輪車のギヤ伝達装置。
- 前記構造部をギヤの回転速度検出センサーとし、この回転速度検出センサーを前記ケーシング内の上側にできる余剰スペースに配置した請求項2に記載の自動二輪車のギヤ伝達装置。
- 前記構造部を前記ケーシングのケース本体とケースカバーとをボルト締結する締結ボスとした請求項2に記載の自動二輪車のギヤ伝達装置。
- 前記構造部を前記ケーシング内部の補強リブとし、この補強リブをケーシング内の下側にできる余剰スペースに配置してケーシング内に貯留されるオイルのバッフル板として活用した請求項2に記載の自動二輪車のギヤ伝達装置。
- 前記ギヤ列を構成する各ギヤを、側面視で原動側のギヤから従動側のギヤに向って後下がりに配置し、後部寄りのギヤの下部のみを前記ケーシング内に貯留されるオイルに浸らせた請求項1に記載の自動二輪車のギヤ伝達装置。
- 前記ギヤ列を構成する各ギヤを、平面視で原動側のギヤから従動側のギヤに向って駆動輪側に寄るように配置した請求項1に記載の自動二輪車のギヤ伝達装置。
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WO2011033614A1 (ja) * | 2009-09-15 | 2011-03-24 | 本田技研工業株式会社 | 車両における車速センサ配設構造 |
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2002
- 2002-05-31 JP JP2002160503A patent/JP4000917B2/ja not_active Expired - Fee Related
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WO2011033614A1 (ja) * | 2009-09-15 | 2011-03-24 | 本田技研工業株式会社 | 車両における車速センサ配設構造 |
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