JP2004001636A - 助手席用エアバッグ装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】助手席用エアバッグ装置Mは、エアバッグ40、ロングマスフロータイプのインフレーター11、リテーナ17、及び、ケース24を備える。リテーナ17は、基部18とカバー壁部21とを備える。カバー壁部21は、エアバッグ40におけるリテーナの基部18に押えられた開口周縁48に隣接する部位49を、インフレーター11のガス吐出口13から覆うように、基部18から延びて、ガス吐出口13から吐出される膨張用ガスGに含まれたミストDを、付着可能としている。カバー壁部21は、ミストDのミスト塊への成長を防止可能なミスト成長防止手段B1としての貫通部22を備える。
【選択図】図15
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、助手席前方のインストルメントパネル(以下、インパネと略す)の部位に搭載される助手席用エアバッグ装置に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来、助手席用エアバッグ装置は、エアバッグ、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーター、エアバッグとインフレーターとを保持するケース、及び、折り畳まれてエアバッグを覆うエアバッグカバー、を備えていた。
【0003】
そして、インフレーターとしては、特開平9−86319号公報等に記載されているように、ディスクタイプが使用される場合があった。このディスクタイプのインフレーターは、円柱状の本体部と、ケースに取り付けるための本体部の外周面から突出するフランジ部と、を備えて構成されていた。本体部には、フランジ部より上方側の上部の外周面に、膨張用ガスを吐出させる複数のガス吐出口が配置されていた。
【0004】
また、ケースは、インフレーターにおけるガス吐出口を配置させた上部側を、下方からケース内部に挿入可能な挿入孔を設けた底壁部を、備えていた。
【0005】
さらに、エアバッグは、膨張用ガスを流入させるための開口を備えて構成されていた。そして、エアバッグは、開口の周縁を押えてケースの底壁部に取り付けられる環状のリテーナを利用して、ケースの底壁部に取り付けられていた。
【0006】
さらにまた、上記公報のインフレーターは、燃焼反応等の化学反応により、ガス発生剤から膨張用ガスを発生させるパイロタイプとしており、膨張用ガスを充填させたハイブリッドタイプと相違して、コンパクトなことから、車両に搭載する上で好適であった。
【0007】
しかし、従来のパイロタイプのインフレーターでは、助手席用のエアバッグに膨張用ガスを供給するタイミングに関し、改善の余地があった。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するもので、エアバッグを好適に展開膨張可能な助手席用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る助手席用エアバッグ装置は、助手席前方のインパネの部位に搭載される助手席用エアバッグ装置であって、
膨張用ガスを流入させるための開口を備えたエアバッグと、
膨張用ガスを化学反応により発生させるロングマスフロータイプでかつディスクタイプとして、端部側の外周面に、膨張用ガスを吐出可能な複数のガス吐出口を配置させたインフレーターと、
折り畳まれたエアバッグを収納して保持するとともにインフレーターを保持するケースと、
エアバッグの開口周縁を押えて、エアバッグをケースに取り付ける環状のリテーナと、
を備えて構成され、
ケースが、インフレーターにおけるガス吐出口を配置させた端部側を内部に挿入可能な挿入孔を有した底壁部を、備え、
リテーナが、
底壁部の挿入孔の周縁に対して、エアバッグの開口周縁を押えて、取り付けられる環状の基部と、
エアバッグにおけるリテーナの基部に押えられた開口周縁に隣接する部位を、インフレーターのガス吐出口から覆うように、基部から延びて、ガス吐出口から吐出される膨張用ガスに含まれたミストを、付着可能なカバー壁部と、
を備えて構成され、
カバー壁部が、ミストのミスト塊への成長を防止可能なミスト成長防止手段を備えて、構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る助手席用エアバッグ装置では、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターが、膨張用ガスを化学反応により発生させるパイロタイプで、かつ、ロングマスフロータイプとしている。
【0011】
このロングマスフロータイプのインフレーターは、助手席用のエアバッグが膨張して乗員に対する反力が最も必要となるタイミング以降、すなわち、インフレーターの着火後における30msec以降に、エアバッグに流入されるガス吐出量を、従来タイプより増大させているものである。
【0012】
このロングマスフロータイプのインフレーターは、具体的には、マスフローカーブの総面積に対する、着火後の30msec以降の面積の割合が、約25%以上としているインフレーターである。換言すれば、マスフローカーブの総面積に対する20msec以降の面積の割合が約45%以上であるインフレーターである。あるいは、マスフローカーブの総面積に対する、ピーク時間以前の面積の割合が、約55%以下であるインフレーターである。さらに換言すれば、マスフローカーブのピーク時間が、着火後の約15〜35msecとしているインフレーターである。
【0013】
マスフローカーブは、インフレーターのガス吐出口からの単位時間当たりのガス吐出量と時間との関係を示すカーブであり、タンク燃焼試験から得られるタンクカーブデータから、計算により得られるものである。
【0014】
タンク燃焼試験は、内容積60リットルのステンレス鋼製タンク内に、インフレーターを固定し、室温においてタンクを密閉後、インフレーターを外部着火電気回路に接続する。そして、タンクに設置された圧力トランスデューサーにより、着火電気回路スイッチを入れた(着火電流印加)時間を0として、タンク内の圧力上昇変化を時間0〜200msecの間、測定する。各測定データをコンピュータ処理により最終的にタンク圧力/時間曲線として、インフレーターの性能を評価する曲線(これがタンクカーブである)を得る。このタンクカーブ(タンク圧力−時間)を積分し、時間当たりのガス発生率(ガス発生率−時間)へ変換すれば、マスフローカーブを計算することができる。
【0015】
そして、上記の、マスフローカーブの総面積に対する、着火後の30msec以降の面積の割合が、約25%以上とは、単位時間当たりのガス量の、時間変化を表すカーブにおいて、着火後の30msec〜マスフローがなくなり零となる時間まで、のマスフローの面積の合計が、マスフローカーブの全面積中に占める割合の約25%以上とするものである。このようなインフレーターであれば、助手席用のエアバッグが膨張して乗員に対する反力が最も必要となる30msec以降のタイミングに、全ガス発生量の内の約25%以上というガスを発生させることから、好適に、エアバッグによって乗員を保護することができる。なお、30msecというタイミングは、2つの燃焼室を有するデュアルタイプのインフレーターにおいては、最初に燃焼する第1燃焼室のガス発生剤を燃焼させる場合に重要となる。また、上記の、マスフローカーブの総面積に対する、着火後の30msec以降の面積の割合は、好ましくは、約35%以上、さらに好ましくは、約45%以上がよい。
【0016】
上記のマスフローカーブの総面積に対する20msec以降の面積の割合が約45%以上とは、単位時間当たりのガス量の、時間変化を表すカーブにおいて、20msec〜マスフローがなくなり零となる時間まで、のマスフローの面積の合計が、マスフローカーブの全面積中に占める割合の約45%以上とするものである。このようなインフレーターでは、助手席用のエアバッグが膨張して乗員に対する反力が必要となる20msec以降のタイミングに、全ガス発生量の内の約45%以上というガスを発生させることから、好適に、エアバッグによって乗員を保護することができる。なお、20msecというタイミングは、燃焼室が1つのシングルタイプのインフレーターや、2つの燃焼室を有したデュアルタイプのインフレーターにおいて、2室のガス発生剤を同時に燃焼させた場合に、重要となる。また、上記の、マスフローカーブの総面積に対する20msec以降の面積の割合は、好ましくは、約55%以上がよい。
【0017】
上記のマスフローカーブの総面積に対するピーク時間以前の面積の割合が約55%以下とは、単位時間当たりのガス量の、時間変化を表すカーブにおいて、0msec〜マスフローがピークになる時間まで、のマスフローの面積の合計が、マスフローの全面積中に占める割合の約55%以下とするものである。このようなインフレーターであれば、マスフローがピークになる時間よりも前のガス発生量の割合が全ガス発生量の55%以下と少なくでき、エアバッグの膨張展開初期に、必要最小限のガスのみを供給して、ピーク後に多くのガスをエアバッグに供給できて、好適に、エアバッグによって乗員を保護することができる。なお、デュアルタイプのインフレーターにおいて、2つの燃焼室のガス発生剤を同時に燃焼させる場合や、シングルタイプのインフレーターでは、マスフローカーブの総面積に対するピーク時間以前の面積の割合は約40%以下が好ましく、また、デュアルタイプのインフレーターにおいて、最初に燃焼させる燃焼室でガス発生剤を燃焼させる場合において、約50%以下が好ましい。
【0018】
さらに、上記のマスフローカーブのピーク時間が約15〜35msecとは、単位時間当たりのガス量の、時間変化を表すカ−ブにおいて、そのピークとなる時間帯を約15〜35msecの間とするものである。このようなインフレーターであれば、エアバッグからの反力を最も必要とする着火後の30msec以降のタイミングに近い段階に、より多くのガスをエアバッグに供給できることから、好適に、エアバッグによって乗員を保護することができる。なお、デュアルタイプのインフレーターにおいて、2つの燃焼室で同時にガス発生剤を燃焼させる場合や、シングルタイプのインフレーターにおいては、マスフローカーブのピーク時間は、約16〜24msecが好ましく、また、デュアルタイプのインフレーターにおいて、最初に燃焼させる燃焼室でガス発生剤を燃焼させる場合には、マスフローカーブのピーク時間は、約25〜30msecが好ましい。
【0019】
そして、このロングマスフロータイプのインフレーターから膨張用ガスが助手席用エアバッグに供給されれば、膨張用ガスの吐出量が、着火後の30msec以降、好ましくは、30〜60msecに、従来のインフレーターに比べて、増大されることから、好適に、助手席の乗員を保護することができる。
【0020】
したがって、本発明に係る助手席用エアバッグ装置では、パイロタイプで、かつ、ロングマスフロータイプのインフレーターを使用していることから、コンパクトなインフレーターを使用でき、かつ、助手席用のエアバッグを好適に展開膨張させることができる。
【0021】
なお、化学反応により膨張用ガスを発生させるタイプでかつロングマスフロータイプのインフレーターでは、緩やかに反応するため、膨張用ガスに含まれるミストが多く、ガス吐出口の周囲のリテーナに、ミストが付着し易い。そして、リテーナに付着したミストは、さらにミストを付着させてミスト塊に成長し、さらに、膨張用ガスの流れによって、ミスト塊が、エアバッグ内に飛ばされる虞れがある。このようなミスト塊は、大きく(外径寸法が2〜5mm程度である)、かつ、高温であり、エアバッグの袋形状を形成する基布に当たれば、基布を溶融させて、基布に、ガス漏れを生じさせるような穴をあけてしまう。
【0022】
しかし、本発明に係る助手席用エアバッグ装置では、ガス吐出口から膨張用ガスに含まれたミストが吐出されても、カバー壁部に付着し、そのミストは、ミスト成長防止手段により、大きなミスト塊ヘ成長しないことから、その後に、エアバッグの内部に飛ばされても、ガス漏れを生じさせるような穴をエアバッグにあけない。
【0023】
したがって、本発明に係る助手席用エアバッグ装置では、ロングマスフロータイプのインフレーターから吐出される膨張用ガスのミストが多くとも、エアバッグのガス漏れを防止することができる。
【0024】
また、リテーナのカバー壁部が、エアバッグにおけるリテーナの基部に押えられた開口周縁に隣接する部位を、インフレーターのガス吐出口から覆うように、配設されていることから、高温のミストを含んだ高温の膨張用ガスが、直接、エアバッグの開口周縁に隣接する部位に、当たることを、極力、防ぐことができ、エアバッグの開口周縁に隣接する部位における熱からの保護を、図ることができる。
【0025】
ミスト成長防止手段は、例えば、請求項2のように、リテーナのカバー壁部を、インフレーターにおけるガス吐出口を配置させた端部側の周囲を囲むように、略四角筒形状に形成し、カバー壁部の略四角筒形状の四つのコーナ部に、カバー壁部の内外周を貫通するように、貫通部を設けて、これらの貫通部によって、構成することができる。
【0026】
カバー壁部がインフレーターを囲む略四角筒形状であれば、その筒形状の四隅のコーナ部に、ミストが集まって、ミスト塊を作りやすい。しかし、上記のような構成であれば、コーナ部付近にミストが集まっても、ミスト塊になる前に、ミストが貫通部から飛び出し、大きなミスト塊を作らない。
【0027】
また、ミスト成長防止手段は、請求項3のように、リテーナのカバー壁部に多数の貫通孔を設けて、これらの貫通孔によって、構成してもよい。このような構成では、ガス吐出口からのミストは、成長する前に貫通孔を貫通したり、あるいは、カバー壁部における貫通孔の周縁に付着することとなる。そして、貫通孔を通過するミストがあることから、膨張用ガスが吐出され続けても、貫通孔の周縁に付着したミストは、その後に付着するミストの量自体が少なく、ミスト塊への成長が防止される。
【0028】
そして仮に、ミスト塊へと成長しても、カバー壁部に設けられた貫通孔が多数であり、貫通孔の内周面に引っ掛りやすく、そのミスト塊がエアバッグ内に飛ばされ難く、大きなミスト塊のエアバッグへの付着を防止できて、エアバッグのガス漏れを防止することができる。
【0029】
さらに、ミスト成長防止手段は、請求項4のように、リテーナのカバー壁部を、インフレーターの各ガス吐出口にそれぞれ対向するように、相互に離れて配置される舌片部によって、構成してもよい。このような構成では、各ガス吐出口からのミストは、それぞれのガス吐出口を覆っている舌片部に付着して、他のガス吐出口からのミストを付着させ難くなることから、ミスト塊への成長が防止される。そして、各舌片部に付着したミストが成長しようとしても、各舌片部が、隣接する舌片部との間に空間を開けて、対応するガス吐出口と対向するように配設されており、ガス吐出口からの膨張用ガスは、舌片部の両側の空間側へ流れる量も多く、ミスト塊に成長する前段階で、各舌片部の両側の空間側にミストを飛ばすことも可能となる。
【0030】
そして、請求項2乃至請求項4のように、ミスト成長防止手段を、貫通部、貫通孔、舌片部から構成する場合には、請求項5のように、エアバッグの開口周縁に、エアバッグの袋形状を構成する基布の内周面に配置されて基布を保護するための保護布を、配設するように構成し、この保護布を、エアバッグの膨張完了時におけるリテーナのカバー壁部の先端付近を越える位置まで、配設させることが望ましい。このような構成では、既述の貫通部、貫通孔、及び、舌片部間の空間を経て、ミストがカバー壁部外へ流れて、エアバッグにおける開口周縁に隣接する部位に付着ようとしても、基布の内周面側の保護布に付着し、エアバッグの袋形状を構成する基布に付着することを防止できる。そのため、ミスト塊に成長する前のミストによる基布への小さな穴明けも、確実に防止することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mは、図1・2に示すように、インパネ(インストルメントパネル)1の表面における上面1a側の内部に配置されるトップマウントタイプである。このエアバッグ装置Mは、折り畳まれたエアバッグ40と、エアバッグ40に膨張用ガスを供給するインフレーター11と、エアバッグ40及びインフレーター11を収納保持するケース24と、エアバッグ40をケース24に取り付けるためのリテーナ17と、折り畳まれたエアバッグ40を覆うエアバッグカバー32と、を備えて構成されている。
【0032】
エアバッグカバー32は、図1〜4に示すように、実施形態の場合、インパネ1と一体的に形成されている。このインパネ1は、裏面側のポリプロピレン等の硬質合成樹脂からなるベース部2と、ベース部2の外表面側を覆う発泡ポリウレタン等の発泡層とスキン層とを有した被覆層3と、を備えて構成されている。そして、エアバッグカバー32の部位には、ベース部2の代わりに、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等の軟質合成樹脂製の軟質部4が配設されている。このエアバッグカバー32は、周囲に薄肉の破断予定部35を配置させた二つの扉部33F・33Bを配設させて、構成されている。破断予定部35は、インパネ1の上方から見てH字形状に配置されており(図1参照)、二つの扉部33F・33Bが、それぞれ、前端側と後端側とをヒンジ部34として、前後両側に開くように、構成されている。
【0033】
また、エアバッグカバー32の部位には、扉部33F・33Bの配置位置を囲むように、裏面側から下方へ突出する略四角筒形状の連結壁部36が、配設されている。連結壁部36には、前後方向で対向する壁部36a・36bの所定位置に、複数の係止孔37が貫通されている。これらの係止孔37には、ケース24に形成された係止爪30が挿入され、連結壁部36が係止爪30に係止されている。各係止爪30の連結壁部36の係止は、連結壁部36とケース24との連結状態を確保して、膨張時のエアバッグ40が、円滑に、扉部33F・33Bを押し上げて破断予定部35を破断できるようにするためである。
【0034】
なお、軟質部4は、実施形態の場合、エアバッグカバー32の各扉部33F・33Bの裏面側と、連結壁部36自体と、扉部33F・33Bの各ヒンジ部34付近のインパネ1の裏面側において、連結壁部36を越えた前後部位と、に配置されている。
【0035】
ケース24は、図2〜5に示すように、上端側に長方形状の開口24aを有した板金製の略直方体形状に形成され、長方形板状の底壁部25と、底壁部25の外周縁から略四角筒形状に、エアバッグカバー32側の上方へ延びる側壁部29と、を備えて構成されている。底壁部25は、左右方向に長く延びた長方形板状としており、中央に、インフレーター11の上部12a側を下方からエアバッグカバー32側の上方へ挿入可能な略円形に開口した挿入孔26を、備えている。
【0036】
そして、底壁部25の挿入孔26の周縁には、リテーナ17の二本のボルト20を挿通可能な取付孔27と、インフレーター11の二つの係止爪14cを挿通させる挿通孔25aと、が形成されている。各挿通孔25aは、後述するリテーナ17の係止孔18aやエアバッグ40の取付孔50と一致する位置で、かつ、同じ開口形状で開口している。そして、各挿通孔25aは、インフレーター11の係止爪14cにおける首部14eと頭部14fとを下方から挿通可能な大穴部25bと、大穴部25bに連通して、係止爪14cの頭部14fを上下方向に挿通不能とし、係止爪14cの首部14eを挿通可能とした小穴部25cと、から構成されている。
【0037】
また、底壁部25には、ケース24を車両のボディ6側に連結させるブラケット28が、底壁部25の左右両側部位の下面側に、固定されている。各ブラケット28には、ボルト9を螺合させるためのナット28aが、固着されている。ボディ6側には、リインフォースメント7から延びるブラケット8が配設され、ボルト9は、ブラケット8の取付座8aを貫通して、ナット28aに螺合されることとなる。各ボルト9のナット28aへ締め付けにより、ケース24、すなわち、エアバッグ装置Mが、ボディ6側に取付固定されることとなる。
【0038】
なお、二つの取付孔27の配置位置は、ケース24の車両搭載状態で、図示しないグラブボックス側となるケース24の後部側に、配置されている。
【0039】
また、ケース24の側壁部29には、車両の前後の部位の上端に、ケース24の外方でかつ下方へ反転する複数の係止爪30が、形成されている。各係止爪30は、既述したように、エアバッグカバー32の連結壁部36の係止孔37に挿入されて、連結壁部36を係止している。
【0040】
リテーナ17は、図2〜5に示すように、板金から形成されて、ケース24の挿入孔26と略同形に開口する挿入孔19を備えた基部18と、基部18の外周縁からエアバッグカバー32側の上方に延びる略四角筒形状のカバー壁部21と、を備えて構成されている。
【0041】
基部18は、外周縁を略四角形状(略正方形状)に形成されて、その四隅の二箇所の部位に、下方に延びるボルト20を固着させ、他の隅に、係止孔18aを開口させている。
【0042】
各ボルト20は、リテーナ17がエアバッグ40内に配置された状態で、エアバッグ40の取付孔46、ケース24の底壁部25の取付孔27、及び、インフレーター17のフランジ部14の凹部14aに挿入されて、ナット16を締め付けられることにより、エアバッグ40とインフレーター17とをケース24の底壁部25に取り付けることとなる。すなわち、各ボルト20へのナット16の締め付け時、エアバッグ40の開口45の周縁48が基部18によって底壁部25に押し付けられて、エアバッグ40が底壁部25に取り付けられ、インフレーター11のフランジ部14が挿入孔26の周縁に押し付けられて、インフレーター11が底壁部25に取り付けられることとなる。
【0043】
さらに、各係止孔18aは、ケース24の底壁部25における各挿通孔25aやエアバッグ40の取付孔50と一致する位置で、かつ、同じ開口形状で開口している。すなわち、各係止孔18aは、インフレーター11の係止爪14cにおける首部14eと頭部14fとを下方から挿通可能な大穴部18bと、大穴部18bに連通して、係止爪14cの頭部14fを上下方向に挿通不能とし、係止爪14cの首部14eを挿通可能とした小穴部18cと、から構成されている。
【0044】
また、リテーナ17のカバー壁部21は、上方に延びた先端21aを、インフレーター11の上端面12cと一致する高さまで、延ばして配設されている。カバー壁部21は、基部18の略四角形とする外縁からエアバッグカバー32側の上方へ延ばしており、先端21aは、カバー壁部21の四つのコーナ部21bでは、配設されておらず、各コーナ部21bには、カバー壁部21の上端21aを分離するように、上端21aから下方へ凹む凹部22が、形成されている。
【0045】
実施形態の場合、カバー壁部21は、インフレーター11のガス吐出口13から吐出される膨張用ガスGに含まれたミストDを、付着できるように、各ガス吐出口13を広い範囲で覆い、かつ、上端21aを、インフレーター11の上端面12cの高さ位置まで、基部18から延ばして、配設されている。そして、実施形態の場合、カバー壁部21の各コーナ部21bにおける凹部22が、カバー壁部21の内外周を貫通する貫通部を構成し、さらに、ミストDのミスト塊への成長を防止可能なミスト成長防止手段B1を、構成することとなる。
【0046】
なお、リテーナ17は、一枚の板金を、挿入孔19、ボルト20の取付用の孔、係止孔18a、及び、凹部22を孔明け加工するとともに、絞り加工して、基部18とカバー壁部21とを形成し、ボルト20を組み付けて、製造されている。
【0047】
インフレーター11は、所定のガス発生剤(例えば、ニトログアニジン:34重量%、硝酸ストロンチウム:50重量%、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩:9重量%、酸性白土:7重量%のガス発生剤組成物)の燃焼反応によって膨張用ガスを発生させるタイプ(所謂、パイロタイプ)で、かつ、図2〜5に示すように、略円柱状の本体部12を備えたディスクタイプとしている。そしてさらに、このインフレーター11は、膨張用ガスの吐出容量を2.4molとして1つの燃焼室を備えたシングルタイプであり、図20に示すようなマスフローカーブを描くロングマスフロータイプとしている。実施形態のインフレーター11では、図20に示すように、膨張用ガスの吐出量が、点火直後は少ないものの、着火後の30msec以降に、従来のインフレーターに比べて、増大されていることから、インフレーター11からの膨張用ガスで膨らむエアバッグ40は、好適に、助手席の乗員を保護することができる。
【0048】
このインフレーター11は、内部に所定のガス発生剤を充填させた円柱状の本体部12と、インフレーター11をケース24に取り付けるためのフランジ部14と、を備えて構成されている。
【0049】
フランジ部14は、本体部12の外周面から突出する略四角環状(略正方形板状)として、その四隅に、それぞれ、二つずつの凹部14aと係止爪14cとを備えて構成されている。
【0050】
各凹部14aは、本体部12の中心をリテーナ17の挿入孔19の中心に一致させて、図7のA・Bに示すように、時計方向に回転させた際、リテーナ17の各ボルト20を、フランジ部14の外周縁から内部に挿入可能に、湾曲して、形成されている。各凹部14aの幅寸法Wは、ボルト20の外径寸法より若干大きく形成されている(図6参照)。
【0051】
また、各係止爪14cは、フランジ部14から外方へ延びる基部14dと、基部14dの先端からガス吐出口13側の上方に延びる首部14eと、首部14eの上端から外方に延びる頭部14fと、を備えて構成されている。そして、各係止爪14cは、インフレーター11におけるケース24の底壁部25への組付時、本体部12を、ケース底壁部25の挿入孔26、エアバッグ40の開口45、リテーナ17の挿入孔19に、下方から挿入させた際、頭部14fと首部14eとが、底壁部25の挿通孔25a、エアバッグ40の取付孔50、及び、リテーナ17の係止孔18a、における各大穴部25b・50a・18bを、挿通して、頭部14fが、リテーナ17の基部18の上面側に突出可能に、設定されている。さらに、各係止孔14cは、その状態で、本体部12の中心をリテーナ17の挿入孔19の中心に一致させて、図7のA・Bに示すように、時計方向に回転させた際、首部14eが、底壁部25の挿通孔25a、エアバッグ40の取付孔50、及び、リテーナ17の係止孔18a、における各小穴部25c・50b・18c側に移行して、頭部14fが、リテーナ17の基部18における上面側の小穴部25cの周縁に、当接可能に、設定されている。なお、各係止爪14cの首部14eを、大穴部18bから小穴部18cに移行する際、既述の凹部14aに、各ボルト20が挿入されることとなる。そして、この状態で、図7のB・図8・9・10に示すように、各ボルト20にナット16を締結させれば、各ナット16が凹部14aの周縁14bを押えて、インフレーター11が、ケース24の底壁部25に取り付けられ、かつ、リテーナ17の基部18が、ナット16・16とインフレーター11の係止爪14cとによって、エアバッグ40の開口周縁48を底壁部25側に押えて、ケース24の底壁部25に取り付けられることとなる。
【0052】
本体部12は、底壁部25の挿入孔26の内径寸法より、僅かに小さい外径寸法の円柱状として、フランジ部14の上方側の上部12aの外周面12bには、膨張用ガスGを吐出させる複数のガス吐出口13が、配設されている。
【0053】
エアバッグ40は、図11〜14に示すように、展開膨張完了時の形状として、乗員側に位置して、略鉛直面に沿って配置される乗員側壁部40aと、乗員側壁部40aの外周縁から車両の前方側に狭まるように配設される周壁部40bと、を備えた略四角錐形状としている。周壁部40bの前部側の下面には、膨張用ガスを流入させるための円形の開口、すなわち、ガス流入口45が配設され、ガス流入口45の周縁には、2個ずつの取付孔46・50が貫通されている。ガス流入口45には、インフレーター11の本体部12の上部12a側が挿入されている。各取付孔46には、リテーナ17の各ボルト20が挿入されることとなる。
【0054】
また、各取付孔50は、図6〜7・10に示すように、リテーナ17の各係止孔18aやケース底壁部25の各挿通孔25aと一致する位置で、かつ、同じ開口形状で開口している。すなわち、各取付孔50は、インフレーター11の係止爪14cにおける首部14eと頭部14fとを下方から挿通可能な大穴部50aと、大穴部50aに連通して、係止爪14cの頭部14fを上下方向に挿通不能とし、係止爪14cの首部14eを挿通可能とした小穴部50bと、から構成されている。さらに、エアバッグ40における周壁部40bの左右の側面部位には、それぞれ、余剰の膨張用ガスを排出するベントホール47が開口されている。
【0055】
なお、エアバッグ40は、図13・14に示すように、第1基布41、第2基布42、整流布43、及び、補強布44、の四枚の織布から構成されている。これらの布は、ポリアミド等の合成繊維からなる糸を平織りで織った織布から形成され、耐熱性コーティング層を有さないノンコートタイプとしている。また、実施形態のエアバッグ40の容量は、110リットルとしている。
【0056】
第1基布41は、図13に示すように、略正六角形状の部位を二つ(上側部41aと下側部41e)連結させた形状として、中央付近の左右両縁を凹ませた瓢箪形に形成され、第2基布42は、略正六角形状に近似した略円形状に形成されている。これらの基布41・42は、平面的な縫合作業によって立体的なエアバッグ40を縫製できるように、設定されている。第2基布42は、エアバッグ40の乗員側壁部40aの略全域を構成し、第1基布41は、エアバッグ40の周壁部40bの略全域を構成することとなる。さらに、第1基布41の上側部41aは、周壁部40bの上部側の略全域を構成し、第1基布41の下側部41eは、周壁部40bの下部側の略全域を構成することとなる。
【0057】
補強布44は、エアバッグ40の内周面側におけるガス流入口45の周縁48に、第1基布41を保護するために、縫合されている。さらに、整流布43は、エアバッグ40の内周面側において、ガス流入口45を覆うように配設されて、エアバッグ40内に流入する膨張用ガスを、車両の前後方向の両側に流すように、配設されている。
【0058】
なお、整流布43は、第1基布41におけるガス流入口45の周縁48も覆っており、その部位43dは、基布41の補強布としての役目を果たしている。すなわち、整流布43の部位43dと補強布44とは、エアバッグ40の袋形状を構成する第1基布41における開口(ガス流入口)45の周縁48の内周面側を覆う保護布51としての役目を果たすものであり、少なくとも、リテーナ17のカバー壁部21の上端21aを越える範囲まで、エアバッグ40の内周面側における開口周縁48に隣接する部位49を、覆っている。
【0059】
このエアバッグ40の製造について述べると、まず、図13・14のAに示すように、第1基布41におけるエアバッグ40の内周面側となるガス流入口45の開口周縁48に、縫合糸Sを利用して、補強布44と整流布43とを縫合する。ついで、図14のBに示すように、整流布43の端部相互を、縫合糸Sを利用して縫合し、整流布43を所定形状に形成する。なお、実施形態の場合には、予め、第1基布41に、ベントホール47、ガス流入口45、及び、取付孔46・50を形成し、整流布43や補強布44にも、予め、ガス流入口45、及び、取付孔46・50を形成しておいたものを示したが、補強布44と整流布43とを第1基布41に縫合した後、ベントホール47、ガス流入口45、及び、取付孔46・50を孔明け加工してもよい。
【0060】
その後、第1基布41におけるガス流入口45の近傍の左右両縁において、図14のB・Cに示すように、上側部41aと下側部41eとの間で左右方向に延びる第1基準線X1で折り返し、縫合糸Sを利用して、基準線X1の近傍の上側・下側部41a・41eの一方の直線状の片縁部41b・41f相互を縫合するとともに、他方の直線状の片縁部41c・41g相互を縫合する。
【0061】
ついで、図14のC・Dに示すように、上側部41aの左右方向に膨出した位置の左右方向に延びる第2基準線X2で折り曲げて、上側・下側部41a・41eの縫合していない残部周縁41d・41hを相互に離隔するように広げる。これらの残部周縁41d・41hを広げた外形形状は、第2基布42の外形形状と同形状としている。
【0062】
そして、第2基布42を重ね、図14のD・Eに示すように、縫合糸Sを利用して、重ねた外周縁相互を縫合すれば、エアバッグ40を袋状に形成することができる。
【0063】
さらに、各部位を縫合した縫い代が、エアバッグ40の外周面側に露出しないように、エアバッグ40を袋状に形成した後には、ガス流入口45を利用して、エアバッグ40を裏返す。
【0064】
なお、ガス流入口45を利用して裏返す作業が困難な場合には、整流布43用の布材の端部相互を縫合する作業を、エアバッグ40を裏返した後に、それらの端部をガス流入口45から引き出して、行うようにしても良い。
【0065】
上記のように製造したエアバッグ40の車両への搭載を説明すると、まず、各取付孔46からボルト20を突出させるように、内部にリテーナ17を配設させた状態で、エアバッグ40を折り畳み、さらに、折り崩れしないように、折り畳んだエアバッグ40を破断可能なラッピングシート39(図3参照)でくるんでおく。
【0066】
そして、各ボルト20を、上方から取付孔27に挿通させつつ、開口24aから、折り畳んだエアバッグ40を、ケース24の底壁部25上に載置させる。ついで、インフレーター11の本体部12の上部12aを、下方から、挿入孔26・開口45・挿入孔19に挿入させるとともに、図6・図7のAに示すように、インフレーター11の各係止爪14cの頭部14fと首部14eとを、底壁部25の挿通孔25a、エアバッグ40の取付孔50、及び、リテーナ17の係止孔18a、における各大穴部25b・50a・18bに、挿入させて、頭部14fを、リテーナ17の基部18の上面側に突出させる。ついで、インフレーター11の本体部12を、図7のA・Bに示すように、時計方向に回転させて、首部14eを、底壁部25の挿通孔25a、エアバッグ40の取付孔50、及び、リテーナ17の係止孔18a、における各小穴部25c・50b・18c側に移行させて、頭部14fを、図10に示すように、リテーナ17の基部18における上面側の小穴部18cの周縁に、当接させるように、配置する。この時、インフレーター11の各凹部14aには、各ボルト20が挿入されることとなる。そして、この状態で、図8〜10に示すように、各ボルト20にナット16を締結させれば、各ナット16が凹部14aの周縁14bを押えて、インフレーター11が、ケース24の底壁部25に取り付けられ、かつ、リテーナ17の基部18が、ナット16・16とインフレーター11の係止爪14cとによって、エアバッグ40の開口周縁48を底壁部25側に押えて、ケース24の底壁部25に取り付けられることとなる。
【0067】
その後、車両に搭載されたインパネ1におけるエアバッグカバー32の連結壁部36内に、ケース24の側壁部29を挿入させて、ケース24の各係止爪30を連結壁部36の係止孔37に挿入させて、各係止爪30を連結壁部36に係止させる。そしてさらに、各ブラケット28のナット28aに、取付座8aを経て、ボルト9を締結すれば、助手席用エアバッグ装置Mを車両に搭載することができる。
【0068】
なお、エアバッグ装置Mの車両への搭載は、予め、インパネ1のエアバッグカバー32に対して、エアバッグ40とインフレーター11とを取り付けたケース24を組み付けて、インパネ1を車両に取り付ける際、ボルト9を利用して、エアバッグ装置Mをボディ6側に連結固定して、エアバッグ装置Mを車両に搭載してもよい。
【0069】
エアバッグ装置Mの車両への搭載後、インフレーター11の各ガス吐出口13から膨張用ガスGが吐出されれば、エアバッグ40が、膨張して、ラッピングシート39を破断するとともに、エアバッグカバー32の破断予定部35を破断させて扉部33F・33Bを図2・3の二点鎖線に示すように開かせることにより、エアバッグ40は、エアバッグカバー32における扉部33F・33Bの開いた開口38から、大きく突出することとなる。
【0070】
そして、エアバッグ40は、膨張を完了させるとともに、余剰の膨張用ガスをベントホール47から排出することとなる。
【0071】
このエアバッグ40の膨張時、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、パイロタイプで、かつ、ロングマスフロータイプのインフレーター11を使用していることから、コンパクトなインフレーター11を使用でき、かつ、助手席用のエアバッグ40を好適に展開膨張させることができる。
【0072】
また、エアバッグ40の膨張時、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、図15に示すように、インフレーター11の各ガス吐出口13から膨張用ガスGに含まれたミストDが吐出されても、カバー壁部21に付着し、そのミストDは、ミスト成長防止手段B1により、大きなミスト塊ヘ成長しないことから、その後に、エアバッグ40の内部に飛ばされても、ガス漏れを生じさせるような大きな穴を、エアバッグ40のノンコートタイプの基布41・42に、あけない。
【0073】
すなわち、実施形態の場合には、リテーナ17のカバー壁部21が、インフレーター11におけるガス吐出口13を配置させた端部12a側の周囲を囲むように、略四角筒形状に形成され、カバー壁部21の略四角筒形状の四つのコーナ部21bに、カバー壁部21の内外周を貫通するように、カバー壁部21の先端21aから凹む貫通部としての凹部22が設けられて、これらの凹部22によって、ミスト成長防止手段B1が構成されている。
【0074】
このように、カバー壁部21がインフレーター11を囲む略四角筒形状であれば、その筒形状の四隅のコーナ部21bに、ミストDが集まって、ミスト塊を作りやすい。しかし、実施形態のような構成であれば、コーナ部21b付近にミストDが集まっても、ミスト塊になる前に、ミストDが凹部22から飛び出し、大きなミスト塊を作らない。
【0075】
したがって、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、インフレーター11から吐出される膨張用ガスGのミストDが多くとも、付着すれば基布41・42に大きな穴をあけるミスト塊を作らないことから、エアバッグ40の基布41・42からのガス漏れを防止することができる。
【0076】
なお、カバー壁部21のコーナ部21bに設ける貫通部22の幅寸法Y(図5参照)は、5〜15mmとすることが望ましい。5mm未満では、ミストDをカバー壁部21Aの外周面側に通過させ難くなり、15mmを越えては、カバー壁部21自体にミストDを付着させ難くなるからである。また、貫通部22の長さ寸法Zは、10〜15mmとすることが望ましい。10mm未満では、ミストDをカバー壁部21Aの外周面側に通過させ難くなり、15mmを越えては、カバー壁部21自体にミストDを付着させ難くなるからである。
【0077】
また、実施形態では、リテーナ17のカバー壁部21が、エアバッグ40におけるリテーナ17の基部18に押えられた開口周縁48に隣接する部位49を、インフレーター11のガス吐出口13から覆うように、配設されていることから、高温のミストDを含んだ高温の膨張用ガスGが、直接、エアバッグ40の開口周縁48に隣接する部位49に、当たることを、極力、防ぐことができ、エアバッグ40の開口周縁48に隣接する部位49における熱からの保護を、図ることができる。
【0078】
特に、実施形態では、エアバッグ40の開口周縁48に、エアバッグ41の袋形状を構成する基布41の内周面に配置されて基布41を保護するために、エアバッグ40の膨張完了時におけるリテーナ17のカバー壁部21の先端21a付近を越える位置まで、保護布51(44・43d)が、配設されている。このような構成では、貫通部22を経て、ミストDがカバー壁部21外へ流れて、エアバッグ40における開口周縁48に隣接する部位49に付着ようとしても、基布41の内周面側の保護布44・43dに付着し、エアバッグ40の袋形状を構成する基布41に付着することを防止できる。そのため、ミスト塊に成長する前のミストDによる基布41への小さな穴明けも、確実に防止することができる。
【0079】
なお、ミスト成長防止手段は、図16・17に示すように、構成してもよい。図16・17に示すミスト成長防止手段B2は、リテーナ17のカバー壁部21Aに、凹部22を設けることなく、多数の貫通孔21cを設けて、これらの貫通孔21cによって、構成されている。図例の場合には、各貫通孔21cは、内径寸法dをφ2mmとして、隣接する貫通孔21c間のピッチPを5mmとしている。また、カバー壁部21Aの上端21aは、カバー壁部21と同様に、インフレーター11の上端面12cの高さ位置まで、基部18から延びて、配設されている。
【0080】
このような構成では、ガス吐出口13からのミストDは、成長する前に貫通孔21cを貫通したり、あるいは、カバー壁部21Aにおける貫通孔21cの周縁に付着することとなる。そして、貫通孔21cの周縁に付着したミストDは、貫通孔21cを通過するミストDがあることから、膨張用ガスGが吐出され続けても、その後に付着するミストDの量自体が少なく、ミスト塊への成長が防止される。
【0081】
そして仮に、ミスト塊へと成長しても、カバー壁部21Aに設けられた貫通孔21cが多数であり、貫通孔21cの内周面に引っ掛りやすく、そのミスト塊がエアバッグ40内に飛ばされ難く、大きなミスト塊の基布41・42への付着を防止できて、エアバッグ40のガス漏れを防止することができる。
【0082】
なお、貫通孔21cの内径寸法dは、1〜3mmとして、貫通孔21cを設けるピッチPは、5〜10mmが望ましい。内径寸法dが、1mm未満であれば、ミストDをカバー壁部21Aの外周面側に通過させ難くなり、内径寸法dが、3mmを越えれば、カバー壁部21A自体にミストDを付着させ難くなってしまう。また、ピッチPが、5mm未満であれば、カバー壁部21A自体にミストDを付着させ難くなってしまい、ピッチPが10mmを越えれば、ミストDをカバー壁部21Aの外周面側に通過させ難くなってしまう。
【0083】
なお、カバー壁部21Aには、各コーナ部21bに、カバー壁部21と同様に、凹部22を設けてもよい。
【0084】
さらに、ミスト成長防止手段は、図18・19に示すように構成してもよい。図18・19に示すミスト成長防止手段B3は、リテーナ17Aのカバー壁部21Bを、インフレーター11の各ガス吐出口13にそれぞれ対向するように、相互に離れて配置される舌片部21dによって、構成してもよい。また、各舌片部21dの上端21aは、カバー壁部21と同様に、インフレーター11の上端面12cの高さ位置まで、略円環形状とする基部18Aから延びて、配設されている。
【0085】
このような構成では、各ガス吐出口13からのミストDは、それぞれのガス吐出口13を覆っている舌片部21dに付着して、他のガス吐出口13からのミストDを付着させ難くすることから、ミスト塊への成長が防止される。そして、各舌片部21dに付着したミストDが成長しようとしても、各舌片部21dが、隣接する舌片部21dとの間に空間23を開けて、対応するガス吐出口13と対向するように配設されており、ガス吐出口13からの膨張用ガスGは、舌片部21dの両側の空間23側へ流れる量も多く、ミスト塊に成長する前段階で、各舌片部21dの両側の空間23側にミストDを飛ばすことも可能となる。
【0086】
なお、各ガス吐出口13の中央で対向する各舌片部21dは、その幅寸法W1を、各ガス吐出口13から吐出される膨張用ガスGの舌片部21dに到達する際の拡開される角度範囲に対応させて、設定することが望ましい。
【0087】
そして、図16〜19に示すミスト成長防止手段B2・B3のように、カバー壁部21A・21Bの貫通孔21cや舌片部21dから構成していても、エアバッグ40の基部41には、開口周縁48の隣接部位49の内周面に、保護布44・43dが配設されているため、ミストDが、貫通孔21cや舌片部21d・21d間の空間23を通過して、カバー壁部21A・21B外へ流れて、エアバッグ40の開口周縁48に隣接する部位49に付着ようとしても、基布41の内周面側の保護布44・43dに付着し、エアバッグ40の袋形状を構成する基布41に付着することを防止できる。
【0088】
なお、実施形態のエアバッグ40では、膨張時、インパネ1の上面1aから離れた内部では、整流布43によって、膨張用ガスGが車両の前後両側に流れて、エアバッグ40を前後方向に幅広く展開させて、その状態で、エアバッグ40は、乗員側壁部40aを略鉛直面に近づけるように、乗員側に接近して、膨張を完了させる。そのため、エアバッグ40は、広く平面状として略鉛直面に沿って展開させた乗員側壁部40aにより、乗員を拘束できるため、部分的な押圧力を乗員に与えることなく、乗員を保護することができる。ちなみに、整流布43の左右方向の中央43c付近は、エアバッグ40の膨張時、インパネ1の上面1aより上方位置に配置されるように、エアバッグ40内に配設されている(図2・12参照)。
【0089】
また、実施形態では、補強布44が、図12に示すように、エアバッグ40の膨張時に、整流布43の前後両側にガスGを流すように開く開口43a・43bに対向するように、前後方向両側に延びて配置されている。そのため、万一、密ト塊に成長する前のミストが、カバー壁部21を越えてエアバッグ40内に流入しようとしても、まず、整流布43に補足されて、ミストは、直接、第1基布41・第2基布42に接触し難く、さらに仮に、整流布43によって前後両側に向くように整流された膨張用ガスGに、ミストが含まれていても、補強布44がミストを補足して、一層、ミストによる第1基布41・第2基布42のダメージを、低減することができる。
【0090】
さらに、実施形態では、リテーナ17のカバー壁部21が、インフレーター11の本体部12の周囲を囲む略四角筒形状に、配設させた場合を示したが、本体部12の周囲を囲む略円筒状に、カバー壁部21を形成してもよい。
【0091】
ちなみに、ガス吐出口13とカバー壁部21との間の相互の最も接近する際の離隔距離L(図19参照)は、8〜20mmの範囲内に設定することが望ましい。8mm未満と小さければ、カバー壁部21が変形し易くなって、ミストDを付着させ難くなり、かつ、カバー壁部21が変形しなければ、ガスGの圧力損失が大きくなって、エアバッグ40の膨張開始から膨張完了までの時間を長くさせてしまう。また、20mmを越えれば、離れすぎて、カバー壁部21にミストDを付着させ難くなって、カバー壁部21を設けた意義が無くなってしまう。
【0092】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ケース24の底壁部25へのエアバッグ40とインフレーター11との取り付けに、リテーナ17の2本のボルト20と、インフレーター11の2本の係止爪18cとを利用している。すなわち、リテーナ17の各係止孔18aの位置に、他の部位と同様なボルト20を設けて、4本のボルト20を使用して、エアバッグ40とインフレーター11とをケース24の底壁部25に取り付ける場合に比べて、使用するボルト20の本数が少ないことから、廃車時のインフレーター11の取り外し作業を簡便に行うことができる。
【0093】
特に、実施形態の場合には、使用している2本のボルト20が、ケース24の後部側の図示しないグラブボックス側に配置されており、ナット16の取り外し作業が容易に行なえ、一層、廃車時のインフレーター11の取り外し作業を簡便に行うことができる。
【0094】
また、実施形態では、エアバッグカバー32をインパネ1と一体的に形成した場合を示したが、エアバッグカバー32を、インパネ1と別体で形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の助手席用エアバッグ装置が搭載されたインパネを示す斜視図である。
【図2】同実施形態の使用態様を示す車両前後方向の概略断面図である。
【図3】同実施形態のエアバッグ装置の車両前後方向の拡大概略断面図である。
【図4】同実施形態のエアバッグ装置の車両左右方向の拡大概略断面図である。
【図5】同実施形態に使用するインフレーター、リテーナ、及び、ケースの斜視図である。
【図6】同実施形態のエアバッグ装置の組み立て時を説明するケースとインフレーターとの底面図である。
【図7】同実施形態のエアバッグ装置の組み立て時を説明する底面図である。
【図8】同実施形態のエアバッグ装置の組み立て完了直後の底面図である。
【図9】同実施形態のエアバッグ装置の組み立て完了時を示す部分断面図であり、図8のIX−IX部位に対応する。
【図10】同実施形態のエアバッグ装置の組み立て完了時を示す部分断面図であり、図9のX−X部位に対応する。
【図11】同実施形態に使用するエアバッグを単体で膨張させた状態の斜視図である。
【図12】同実施形態に使用するエアバッグを単体で膨張させた状態の車両前後方向の断面図である。
【図13】同実施形態に使用するエアバッグを構成する部材を示す平面図である。
【図14】同実施形態に使用するエアバッグの製造工程を示す図である。
【図15】同実施形態の使用時におけるリテーナ付近を示す拡大部分平面図である。
【図16】他の実施形態のリテーナの斜視図である。
【図17】図16に示すリテーナの使用時における拡大部分平面図である。
【図18】さらに他の実施形態のリテーナの斜視図である。
【図19】図18に示すリテーナの使用時における拡大部分平面図である。
【図20】同実施形態に使用するインフレーターのマスフローカーブを示すグラフ図である。
【符号の説明】
1…(インストルメントパネル)インパネ、
11…インフレーター、
12a…(端部)上部、
12b…外周面、
12c…上端面、
13…ガス吐出口、
17・17A…リテーナ、
18・18A…基部、
21・21A・21B…カバー壁部、
21a…先端、
21b…コーナ部、
21c…貫通孔、
21d…舌片部、
22…(貫通部)凹部、
23…空間、
24…ケース、
25…底壁部、
26…挿入孔、
40…エアバッグ、
41…基布、
45…開口・ガス流入口
48…開口周縁、
49…隣接部位、
51…保護布、
B1・B2・B3…ミスト成長防止手段、
D…ミスト、
G…膨張用ガス、
M…助手席用エアバッグ装置。
Claims (5)
- 助手席前方のインストルメントパネルの部位に搭載される助手席用エアバッグ装置であって、
膨張用ガスを流入させるための開口を備えたエアバッグと、
前記膨張用ガスを化学反応により発生させるロングマスフロータイプでかつディスクタイプとして、端部側の外周面に、前記膨張用ガスを吐出可能な複数のガス吐出口を配置させたインフレーターと、
折り畳まれた前記エアバッグを収納して保持するとともに前記インフレーターを保持するケースと、
前記エアバッグの開口周縁を押えて、前記エアバッグを前記ケースに取り付ける環状のリテーナと、
を備えて構成され、
前記ケースが、前記インフレーターにおけるガス吐出口を配置させた端部側を内部に挿入可能な挿入孔を有した底壁部を、備え、
前記リテーナが、
前記底壁部の前記挿入孔の周縁に対して、前記エアバッグの開口周縁を押えて、取り付けられる環状の基部と、
前記エアバッグにおける前記基部に押えられた前記開口周縁に隣接する部位を、前記インフレーターのガス吐出口から覆うように、前記基部から延びて、前記ガス吐出口から吐出される膨張用ガスに含まれたミストを、付着可能なカバー壁部と、
を備えて構成され、
前記カバー壁部が、前記ミストのミスト塊への成長を防止可能なミスト成長防止手段を備えて、構成されていることを特徴とする助手席用エアバッグ装置。 - 前記リテーナのカバー壁部が、前記インフレーターにおけるガス吐出口を配置させた端部側の周囲を囲むように、略四角筒形状に配設され、
前記カバー壁部の略四角筒形状の四つのコーナ部に、前記カバー壁部の内外周を貫通するように、貫通部が、配設され、
該貫通部が、前記ミスト成長防止手段を構成していることを特徴とする請求項1に記載の助手席用エアバッグ装置。 - 前記リテーナのカバー壁部が、多数の貫通孔を備えて、該貫通孔が、前記ミスト成長防止手段を構成していることを特徴とする請求項1に記載の助手席用エアバッグ装置。
- 前記リテーナのカバー壁部が、前記インフレーターの各ガス吐出口にそれぞれ対向するように、相互に離れて配置される舌片部から構成され、
該舌片部が、前記ミスト成長防止手段を構成していることを特徴とする請求項1に記載の助手席用エアバッグ装置。 - 前記エアバッグの開口周縁に、前記エアバッグの袋形状を構成する基布の内周面に配置されて前記基布を保護するための保護布が、配設され、
前記保護布が、前記エアバッグの膨張完了時における前記リテーナのカバー壁部の先端付近を越える位置まで、配設されていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の助手席用エアバッグ装置。
Priority Applications (5)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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