JP2004001467A - 多層チューブ - Google Patents

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Koji Hayashi
林 耕司
Akinao Kitagawa
北川 暁直
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Mitsuboshi Co Ltd
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Mitsuboshi Co Ltd
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Abstract

【課題】従来の多層チューブに比して柔軟性、耐薬品性、チューブ内面のタック性が少なく、全体として、送液、送気時の内圧に対する耐圧性をもつ多層チューブを提供する。
【解決手段】硬度がJIS K 7215に基づき測定したHDA40以上、HDA70以下であり、ゴム相と結晶相とからなるフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーからなるチューブ母材3と、そのチューブ母材3の内面に積層された被覆層2とからなり、前記被覆層2が、前記フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーと硬度がJIS K 7215に基づき測定したHDA70以上、HDD80以下のビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体とのブレンドである多層チューブ1。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は液体や気体を送るためのチューブとして用いられる多層チューブに関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開平10−052885号公報
【特許文献2】特開2001−193659号公報
【特許文献3】特公平02−36365号公報
【特許文献4】特開平11−199739号公報
近年、産業の発展に伴い、耐薬品性、耐油性、耐溶剤性、耐熱性などに優れた柔軟なチューブが求められている。一方、この要望に沿う研究も種々行われており、例えば、本出願人は特開平10−052885、特開2001−193659においてフッ素ゴムやフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーを原料とする柔軟なチューブについて開示している。
【0003】
特公平02−36365に開示されている技術によれば、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーは結晶相とゴム相からなり、その結晶相としてビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体やエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体などが用いられ、ゴム相としてはビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体などが用いられている。上記結晶相とゴム相は、謂所ブロック的に共重合した構造を有しており、結晶相の融点以下では、結晶相が物理的な架橋点となって成形体の強度を発現する。結晶相の融点以上で結晶は融解し、全体が流動状態になるので押出成形、射出成形、圧縮成形などの加熱成形加工を容易に行うことができ、種々形状の成形品を得ることができる。つまり、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーは、機械的強度、耐薬品性が極めて優れており、また、一般のフッ素ゴムと異なりカーボン粉末、受酸剤、加硫剤等の添加剤を含まないので溶出が少ない上、透明性にも優れている。
【0004】
また、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーは、成形品に電離性放射線を照射することにより、フッ素ゴムなどに通常添加する架橋剤なしに架橋を行うことができ、この処理により更に強度、圧縮永久歪、耐熱温度などの物性が向上する。
【0005】
しかし、このフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーの成形体表面は、タック性(相互にひっついたり、他の物に粘着しやすい性質)が有り、いろいろな使用上の問題を引き起こすことがある。
【0006】
このような問題に対して、本出願人は、特開2001−193659にフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーからなる母材と、タック性の小さいフッ素樹脂材料からなる非粘着層とからなる多層チューブを開示している。しかし、前記非粘着層は前記母材に比べ硬いため、非粘着層を厚くすると全体として柔軟性が失われ、逆に非粘着層を薄くすると、送液、送気をする際に高い圧力をかけるとチューブが膨張したり、非粘着層の弾性率が低いためにしわが寄ったりする。
【0007】
さらに、本出願人は、特開平11―199739にフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーとフッ素樹脂材料とからなる共重合体とを加熱混練した材料を開示している。この複合体も耐圧性、柔軟性を同時に満たすものではない。従来のチューブの特性を維持しつつ、全体として耐圧性と柔軟性を同時にチューブに持たせることは技術的に相反するものである。チューブポンプ用チューブ、ピンチバルブ用チューブ、送液・送気用チューブ、またはプリンタ、プロッタ、ディスペンサ等の可動部をもつ機器の分野では、タック性が少なく、しかも、耐圧性と柔軟性を同時に持たせられるものが求められている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の多層チューブに比して柔軟性、耐薬品性を保ちつつ、チューブ内面のタック性がより少なく、全体として、送液、送気時の内圧に対する耐圧性をもつ多層チューブを提供することを技術課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の多層チューブは(請求項1)、硬度がJIS K 7215に基づき測定したHDA40以上、HDA70以下であり、ゴム相と結晶相とからなるフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーからなるチューブ母材と、そのチューブ母材の内面または外面に積層された被覆層とからなり、前記被覆層が、前記フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーと硬度がJIS K 7215に基づき測定したHDA70以上、HDD80以下のビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体とのブレンドであることを特徴としている。
【0010】
本発明の多層チューブの第2の態様は(請求項2)、ゴム相と結晶相とからなるフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーからなるチューブ母材と、そのチューブ母材の内面または外面に積層された被覆層とからなり、前記被覆層が、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーとエチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)あるいはフッ化ビニリデン(PVDF)とのブレンドであることを特徴としている。
さらに、本発明の多層チューブの第3の態様は(請求項3)、ゴム相と結晶相とからなるフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーからなるチューブ母材と、そのチューブ母材の内面または外面に積層された被覆層とからなり、前記被覆層がエチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)あるいはフッ化ビニリデン(PVDF)であることを特徴としている。
これらの多層チューブにおいては、前記チューブ母材が、硬度がJIS K 7215に基づき測定したHDA40以上、HDA70以下であり、前記被覆層が、硬度がJIS K 7215に基づき測定したHDA70以上、HDD80以下であるものが好ましい。
【0011】
本発明の多層チューブの第4の態様は(請求項4)、チューブ母材と、そのチューブ母材の内面に積層された被覆層とが、硬度がJIS K 7215に基づき測定したHDA40以上、HDA70以下である、ゴム相と結晶相の共重合からなるフッ素ゴム系熱可塑性エラストマー(A)と、硬度がJIS K 7215に基づき測定したHDA70以上、HDD80以下の非粘着性のフッ素樹脂(B)とのブレンドからなり、かつ、チューブ母材の三元共重合体(B)の重量パーセントが被覆層のそれより小さいことを特徴としている。
本発明の第1〜3の態様の多層チューブにおいては、前記チューブ母材の被覆層が積層されていない側面に、非粘着性のフッ素樹脂が積層されたものがこのましく、前記チューブ母材の被覆層が積層されていない側面に、JIS K 7215に基づき測定したHDA40以上、HDA70以下である、ゴム相と結晶相からなるフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーと、硬度がJIS K 7215に基づき測定したHDA70以上、HDD80以下のビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体とのブレンドが積層されたものが好ましい。
上述したいずれかの多層チューブにおいて、前記ブレンドがフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーを80重量%以下含んでいるものが好ましい。また、前記フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーのゴム相がビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体であるもの好ましい。さらに、前記被覆層の厚さがチューブ母材の厚さの0.5〜70%であるものが好ましい。
【0012】
上記の硬度はJIS K 7215(1986)プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法に準拠して測定した値とする。デュロメータはA硬さ(HDA)、D硬さ(HDD)それぞれ高分子計器株式会社製を用いて、デュロメータ保持台に装着し、測定することができる。試料はたとえば2mmの厚さのプレスシートを4枚重ね合わせた物を用いて行う。
【0013】
【作用および発明の効果】
本発明の多層チューブ(請求項1)は、チューブ母材および被複層ともに、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーを含んでいるため、二層間の溶着性は高く、過酷な条件下でも剥離することはない。
【0014】
被複層は、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーと、非粘着性のフッ素樹脂材料であるビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体とのブレンドであるため、チューブのタック性を抑えることができる。特にチューブの内面に被複層を設ける場合、チューブ内面のタック性を抑えることができ、かつ、送液、送気する流動体に対して耐熱性、耐油性、耐薬品性が優れている。さらに、前記ブレンドは弾性率が比較的高いため、曲げなどに強く、その内面にしわが寄りにくい。つまり、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーからなるチューブ母材との組み合わせによって、流体や気体を送るためのチューブとして求められている柔軟性、耐圧性そして、耐久性を維持することができる。また、チューブの外面に被膜層を設ける場合、外面のほこり、ごみなどの汚れがつきにくく、また、多層チューブ周辺の他のものにくっつくなどを回避することができる。
【0015】
このチューブ母材と被複層はともに、透明であり、双方を混合することでもその透明性を失うことはない。そのため、色素を加えることで用途に応じた着色多層チューブを製造することができる。また、カーボンを加えチューブ本体を黒くすることで、紫外線(光)硬化性流動体用の多層チューブを生成することができる。
【0016】
前記チューブ母材のフッ素ゴム系熱可塑性エラストマー(A)としては、その結晶相としてはビニリデンフルオロライド−テトラフルオロエチレン共重合、エチレン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン三元共重合、3,3,3−トリフルオロプロピレン−1、2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロピレン−1またはパーフルオロアルキルビニルエーテルから選択された分子量3000〜400000のポリマー鎖セグメントであり、そのゴム相としてはビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合またはパーフルオロアルキルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン−ビニリデンフルオライド三元共重合から選択された分子量30000〜1200000のポリマー鎖セグメントである。その結晶相とそのゴム相の重量比は5〜60:40〜95である。
【0017】
前記被複層のブレンドは、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーとして、上述したものが好ましい。また、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体は、その重合比がビニリデンフルオライド10〜35モルパーセント、ヘキサフルオロプロピレン10〜30モルパーセント、テトラフルオロエチレン35〜70モルパーセントであるものが好ましい。また、被複層のブレンドは、その硬度がJIS K 7215に基づき測定したHDA70以上、HDD80以下であるものが好ましい。特に、HDA70以上HDD60以下であるものがチューブとして可撓性を有し、曲げなどの過酷な条件下でもチューブ母材と剥離しにくく、好ましい。
【0018】
本発明の多層チューブの第2の態様(請求項2)は、被複層としてフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーと非粘着性のフッ素樹脂であるエチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)あるいはフッ化ビニリデン(PVDF)とのブレンドを用いているため、その二層間の溶着度が高い。また、これらETFEあるいはPVDFはその融点が近くフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーと均一に混合することができ好ましい。さらに、ETFE、PVDFは耐薬品性、非粘着性が高いため、チューブの素材として好ましい。
【0019】
本発明の多層チューブの第3の態様(請求項3)は、被複層としてフッ素ゴム熱可塑性エラストマーとの融点が近いETFEあるいはPVDFを用いているため、その溶着が容易であり、溶着度が高い。
【0020】
前記チューブ母材が、硬度がJIS K 7215に基づき測定したHDA40以上、HDA70以下であり、前記被覆層が、硬度がJIS K 7215に基づき測定したHDA70以上、HDD80以下である場合、二層の溶着をいっそう強固にすることができる(請求項4)。
【0021】
本発明の多層チューブの第4の態様(請求項5)は、チューブ母材および被複層が共にフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーとビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体とのブレンドからなるため、その二層間の溶着性はさらに高く、剥離することがない。さらに、両層のタック性を抑えることができため、送液、送気する流動体に対して、耐熱性、耐油性、耐薬品性が優れており、かつ、外面のほこり、ごみなどの汚れがつきにくい。
【0022】
また、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーからなるチューブ母材の被複層が積層されていない側面に、非粘着性のフッ素樹脂(請求項6)、あるいは、JISK 7215に基づき測定したHDA40以上、HDA70以下である、ゴム相と結晶相からなるフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーと、硬度がJIS K 7215に基づき測定したHDA70以上、HDD80以下のビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体とのブレンド(請求項7)が積層されている場合、チューブの内外面のタック性を抑えることができる。また、これらの材料はチューブ母材との溶着性も高く好ましい。
【0023】
前記ブレンドがフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーを80重量%以下含んでいる場合、柔軟性、耐圧性を有し、かつ、タック性が小さい被複層を得ることができる。フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーが80重量%超になると、タック性が高くなり、また、耐圧性も低下する。
【0024】
前記フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーのフッ素ゴム相がビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体である場合(請求項8)、その被複層のブレンドを生成する際、双方の融点が近いため、その混合が容易である。また、二層間の溶着性も非常に高い。
前記被複層の厚さがチューブ母材の厚さの0.5〜70%であることで(請求項9)、柔軟性と耐久性、両方を備えた多層チューブができる。被複層の厚さがチューブ母材の厚さの0.5%未満である場合、被複層の強度が低下し、被複層の接着が甘くなって剥離しやすくなる。さらに、チューブ全体としての耐圧性も低くなる。被複層の厚さがチューブ全体の厚さの70%より大きい場合、チューブ全体として柔軟性が失われる。とくに、被複層の厚さがチューブ全体の厚さの0.5〜5%と薄い場合、柔軟性を損なわずに、タック性が小さくなる。そのためチューブポンプ、ピンチバルブ用などの柔軟性を要するチューブに好ましい。また、被複層の厚さがチューブ母材の厚さの50〜70%と厚い場合、柔軟性を保ちつつ、多大な耐圧性の向上が見込め、タック性も悪化しない。そのため送液・送気用などの可撓性と同時に耐圧性を要するチューブに好ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】
図1に本発明の多層チューブの一実施例を示す。多層チューブ1はチューブ母材3と被複層2からなる。
【0026】
前記被複層2の材料であるブレンドは、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーとフッ素系樹脂を加熱混練して混合する。加熱温度はフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーの融点、またはビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体の融点どちらか高い方以上で、熱分解しない温度で行うのが好ましい。
【0027】
多層チューブ1は、押出機により製造することができる。チューブ母材3の材料であるフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーを溶融し、第1の押出機を用いて押出し、被複層2の材料である前記ブレンドを溶融し、第2の押出機を用いて押出す。それぞれ共通の金型に押出し、合流部においてチューブ母材3と被複層2が溶着され、出口から押出される。それを水冷あるいは空冷により冷却し、引き取り機により引き取って製造するのが好ましい。
【0028】
フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーおよびビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体は放射線により架橋する性質があるので、押出成形等により多層チューブ1を成形した後、放射線を照射して架橋させるのが好ましい。それにより機械的性質が改善される。放射線架橋に適した線量は、5〜500kGyの範囲が望ましい。5kGy以下では放射線架橋の効果が薄く、500kGy以上では材料の劣化を招くおそれがある。
【0029】
また、図1の想像線に示すように、チューブ母材にフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーとビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体のブレンドを積層することもできる。この場合、チューブ同士またはチューブ周辺機器等とくっついたりすることを回避でき、また、チューブの汚れ等を抑えることができる。
【0030】
【実施例】
[実施例1]
[多層チューブの成形]
図1に示される多層チューブを実施例1として用いた。チューブ母材3のフッ素ゴム系熱可塑性エラストマー(A)としてダイエルサーモプラスチックT−530を使用し、被複層2のブレンドのビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体(B)としてTHV−500Gを使用した。被複層2はフッ素ゴム系熱可塑性エラストマー(A)とビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体(B)を1:1の割合で混合した。
【0031】
図2は、図1の多層チューブ1を成形するための押出金型の断面を示したものである。シリンダー径:40mm、L/D:25の押出機が金型のチューブ母材材料入口11に接続されており、温度260℃で溶融しているフッ素ゴム系熱可塑性エラストマー(A)がチューブ母材材料入口11から注入され、チューブ母材材料流路12を通る。また、シリンダー径:30mm、L/D:25の押出機が金型の被複層材料入口13に接続されており、温度260℃で溶融しているフッ素ゴム系熱可塑性エラストマー(A)とビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体(B)のブレンドが被複層材料入口13から注入され、被複層材料流路14を通る。合流部15において、チューブ母材材料と被複層材料が溶着され、金型出口16から、チューブ母材3がフッ素ゴム系熱可塑性エラストマー(A)であり、被複層2がフッ素ゴム系熱可塑性エラストマー(A)とビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体(B)のブレンドである多層チューブ1が押出される。被複層2、チューブ母材3それぞれの厚さを0.2mm、0.8mmとした。
【0032】
[比較例1]
図1に示される多層チューブを比較例1として用いた。チューブ母材3のフッ素ゴム系熱可塑性エラストマー(A)としてダイキン工業(株)ダイエルサーモT−530(硬度HDA67)を使用し、被複層2にはフッ素系樹脂(B)の三元共重合体、住友スリーエム(株)THV500G(硬度HDA92〜93)を使用した。その成形方法は上述した方法で行った。
【0033】
[物性評価]
上記の多層チューブを用いて、耐圧性、最小曲げ半径等の物性を測定した。その結果を表1に示す。耐圧性は、チューブの一方の端を堰止め、他方から圧力をかけたとき、チューブが変形し始めた圧力を表す。曲げ半径RはチューブをU字型に曲げたとき曲がり部分先端につぶれが生じたときの半径をあらわす。屈曲時のしわの有無は、前記曲げ半径Rにチューブを曲げたときのチューブ内面のしわの有無を観察した。しわが見られなかったときを「○」、しわが出現したときを「×」で示す。
【0034】
【表1】
Figure 2004001467
【0035】
表1に示すように、実施例1では、曲げ半径が一番小さい過酷な条件下においても、屈曲時のしわは見られなかった。さらに、実施例1は耐圧性も、もっともよい結果を示した。
【0036】
次に硬度がJIS A67であり、0.5mm厚のフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーシートと0.5mm厚の合成樹脂シートを作成し、2枚重ね合わせて融点以上まで昇温してプレス接着した。また、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーとしては、前述と同様に、ダイキン工業(株)ダイエルサーモ T−530(硬度HDA67)を使用した。また、合成樹脂シートの材料として以下の材料を用いた。これらの二層シートを冷却後、シートの剥離試験を行い、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーと種々の合成樹脂の接着度を測定した。その結果を表2に示す。
【0037】
[実施例2]
硬度がJIS D55であるエチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)。
[実施例3]
硬度がJIS D75であるフッ化ビニリデン(PVDF)。
[実施例4]
硬度がJIS A67であるフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーと硬度がJIS A91であるビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体をそれぞれ50重量%混合した硬度がJIS A83であるブレンド。
[実施例5]
硬度がJIS A67であるフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーと硬度がJIS D55であるETFEをそれぞれ50重量%混合した硬度がJIS A86であるブレンド。
[実施例6]
硬度がJIS A67であるフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーと硬度がJIS D75であるPVDFをそれぞれ50重量%混合した硬度がJIS D55であるブレンド。
[比較例2]
硬度がJIS A91(JIS D50)であるビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体。
[比較例3]
硬度がJIS D55であるポリエチレン(PE)。
[比較例4]
硬度がJIS A67であるフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーと硬度がJIS D55であるポリエチレンをそれぞれ50重量%混合した硬度がJIS A85であるブレンド。
【0038】
【表2】
Figure 2004001467
【0039】
表2に示すように、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)またはフッ化ビニリデン(PVDF)を含む合成樹脂シートはフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーシートと良い接着性を示した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による多層チューブの断面図である。
【図2】図1の多層チューブを成形するための押出金型の断面図である。
【符号の説明】
1 チューブ
2 被複層
3 チューブ母材
11 チューブ母材材料入口
12 チューブ母材材料流路
13 被複層材料入口
14 被複層材料流路
15 合流部
16 金型出口

Claims (10)

  1. 硬度がJIS K 7215に基づき測定したHDA40以上、HDA70以下であり、ゴム相と結晶相とからなるフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーからなるチューブ母材と、
    そのチューブ母材の内面または外面に積層された被覆層とからなり、
    前記被覆層が、前記フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーと硬度がJIS K 7215に基づき測定したHDA70以上、HDD80以下のビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体とのブレンドである多層チューブ。
  2. ゴム相と結晶相とからなるフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーからなるチューブ母材と、
    そのチューブ母材の内面または外面に積層された被覆層とからなり、
    前記被覆層が、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーとエチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)あるいはフッ化ビニリデン(PVDF)とのブレンドである多層チューブ。
  3. ゴム相と結晶相とからなるフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーからなるチューブ母材と、
    そのチューブ母材の内面または外面に積層された被覆層とからなり、
    前記被覆層がエチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)あるいはフッ化ビニリデン(PVDF)である多層チューブ。
  4. 前記チューブ母材が、硬度がJIS K 7215に基づき測定したHDA40以上、HDA70以下であり、前記被覆層が、硬度がJISK 7215に基づき測定したHDA70以上、HDD80以下である請求項2または3記載の多層チューブ。
  5. チューブ母材と、そのチューブ母材の内面に積層された被覆層とが、硬度がJIS K 7215に基づき測定したHDA40以上、HDA70以下である、ゴム相と結晶相の共重合からなるフッ素ゴム系熱可塑性エラストマー(A)と、硬度がJIS K 7215に基づき測定したHDA70以上、HDD80以下の非粘着性のフッ素樹脂(B)とのブレンドからなり、かつ、チューブ母材の三元共重合体(B)の重量パーセントが被覆層のそれより小さい多層チューブ。
  6. 請求項1〜3いずれか記載の多層チューブにおいて、前記チューブ母材の被覆層が積層されていない側面に、非粘着性のフッ素樹脂が積層された多層チューブ。
  7. 請求項1〜3いずれか記載の多層チューブにおいて、前記チューブ母材の被覆層が積層されていない側面に、JIS K 7215に基づき測定したHDA40以上、HDA70以下である、ゴム相と結晶相からなるフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーと、硬度がJIS K 7215に基づき測定したHDA70以上、HDD80以下のビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体とのブレンドが積層された多層チューブ。
  8. 前記ブレンドがフッ素ゴム系熱可塑性エラストマーを80重量%以下含んでいる請求項1、2または5記載の多層チューブ。
  9. 前記ゴム相がビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体である請求項1〜8いずれか記載の多層チューブ。
  10. 前記被覆層の厚さがチューブ母材の厚さの0.5〜70%である請求項1〜9いずれか記載の多層チューブ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012092959A (ja) * 2010-09-29 2012-05-17 Tokai Rubber Ind Ltd 冷媒輸送ホースおよびその製法
JP2023502379A (ja) * 2019-11-15 2023-01-24 サン-ゴバン パフォーマンス プラスティックス コーポレイション 多層管およびその製造方法

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