JP2004000909A - 重合体製造プラントの排ガスの再使用方法 - Google Patents

重合体製造プラントの排ガスの再使用方法 Download PDF

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坪 原  健 太
Etsuro Okamoto
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Abstract

【課題】重合体製造プラントから排出された不活性ガスから、重合溶媒、重合モノマーなどの不純物を除去して、不活性ガスを重合体製造プラントで再使用する方法を提供する。
【解決手段】重合体製造プラントから排出される不活性ガスを、炭化水素によるプレコート操作をしていない吸着剤から形成される吸着剤層を通過させることによって、不活性ガスに含有される重合溶媒、重合モノマーを吸着除去する吸着除去工程を備え、吸着除去工程において、重合溶媒、重合モノマーが吸着除去され、所定の純度に到達した不活性ガスを、重合体製造プラントで再使用する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、ポリオレフィン製造プラントなどの重合体製造プラントの排ガスの再使用方法、およびそのための重合体製造プラントの排ガスの再使用装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンは、1種または2種以上のα−オレフィンを(共)重合した(共)重合体等であり、各種分野の材料として、現在世界各地で、年間数百万トンの規模で製造されている。
このようなポリオレフィンを製造する方法としては、スラリー重合方法、気相重合方法、溶液重合方法等の方法がある。
【0003】
一方、気相重合方法は、除熱強化用に不活性飽和炭化水素の使用や、必要に応じて不活性ガスの存在下で、触媒と重合モノマーを、重合槽に供給することによって、オレフィンを重合する方法である。
この際、触媒を溶媒の存在下で予め重合する必要があり、触媒を溶媒に分散させて系内に供給したりしている。
【0004】
このため、重合されたポリマー粒子には、重合溶媒や重合モノマーが吸着されているので、これらの重合溶媒や重合モノマーを、ポリマー粒子から除去、清浄化する必要がある。
このようなポリマー粒子に吸着された重合溶媒や重合モノマーを、ポリマー粒子から除去する方法としては、従来より、例えば、重合されたポリマー粒子群をサイロに入れ、清浄な不活性ガスをサイロ内に吹付ける方法等が採用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このようなポリマー粒子の清浄化に使用された不活性ガスは、重合溶媒や重合モノマーを大量に含有するため、従来では、フレアースタック(排ガス燃焼装置)を用いて、不活性ガスに含まれる重合溶媒や重合モノマーを燃焼させた後、燃焼ガス、不活性ガスなどを大気に放出する方法が採用されている。
【0006】
しかしながら、近年、COガスによる地球温暖化が問題となっており、このような重合溶媒を燃焼させる方法を見直すことが求められている。また、窒素ガスなどの不活性ガスの廃棄についても、省エネルギーの点で見直すことが求められているのが現状である。
ところで、炭化水素を含んだ不活性ガスから炭化水素を回収した後に、この不活性ガスを大気中に放出する技術に関しては、従来からいくつかの方法が提案されている。
【0007】
例えば、(1)特許文献1(特公昭54−8632号公報)、特許文献2(特開平10−033932号公報)に記載されているように、炭化水素を含んだ不活性ガスを有機液体からなる吸収液に接触させて吸収させる液吸収法、(2)特許文献3(特開平6−285324号公報)、特許文献4(特許第2840563号公報)に記載されているように、ガス分離膜を用いる方法、(3)特許文献5(特開平4−326901号公報)に記載されているように、ガスを深冷して液化する方法、(4)特許文献6(特開2002−200410号公報)に記載されているように、シリカゲルと合成ゼオライトを用いる吸着方法等が提案されている。
【0008】
これらの従来から提案されている炭化水素含有廃棄ガスの処理方法は、主にタンクローリーやタンクで発生するガソリン等の、常温では液体であるが、揮発性の炭化水素を含有する廃棄ガスの処理に関する提案であり、特許文献6(特開2002−200410号公報)のみが重合体製造プラントのように大量の排ガスを発生する装置を対象としている。
【0009】
また、特許文献7(特開2000−26319号公報)も、プラント排ガスの処理を課題としている。しかしながら、この特許文献7(特開2000−26319号公報)で提案されているのは、排ガスからオレフィン類を回収することは提案されているが、排ガスの主成分の不活性ガスを再利用することについては全く考慮されていない。
【0010】
一方、特許文献6(特開2002−200410号公報)で提案されている方法では、ペンタン、ベンゼン、ヘキセン等の総炭素原子数3以上の炭化水素、または、排ガスもしくは汚染ガスを用いて、吸着剤を予めプレコート操作する必要がある。
すなわち、この方法では、予め吸着剤にガス状炭化水素を破過するまで吸着させる必要があり、吸着剤の操作性が悪く、寿命が短く重合体製造プラントのような大型製造プラントや、24時間連続運転している所には適さない。
【0011】
また、合成ゼオライトをプレコートさせることにより、合成ゼオライトの吸着性能は著しく低下するとともに、吸着された総炭素原子数3以上の炭化水素ないしガス中の水分は減圧脱着ができず、例えば、加熱脱着の装置の追加及び操作が必要となるため、経済的でない。
本発明は、このような現状に鑑み、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の1種または2種以上のα−オレフィンを(共)重合した(共)重合体の製造プラントなどの重合体製造プラントから排出された不活性ガスから、重合溶媒、重合モノマーなどの不純物を除去して、不活性ガスを重合体製造プラントで再使用する方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、このような重合体製造プラントから排出された不活性ガスから、重合溶媒を回収して、重合溶媒を重合体製造プラントで再使用する方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、このような回収、再使用方法において、より省エネルギーに優れた方法を提供することを目的とする。
【0013】
【特許文献1】
特公昭54−8632号公報
【特許文献2】
特開平10−033932号公報
【特許文献3】
特開平6−285324号公報
【特許文献4】
特許第2840563号公報
【特許文献5】
特開平4−326901号公報
【特許文献6】
特開2002−200410号公報
【特許文献7】
特開2000−26319号公報
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明なされたものであって、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法は、重合体製造プラントから排出される不活性ガスを再使用するための重合体製造プラントの排ガスの再使用方法であって、
前記重合体製造プラントから排出される不活性ガスを、炭化水素によるプレコート操作をしていない吸着剤から形成される吸着剤層を通過させることによって、不活性ガスに含有される重合溶媒、重合モノマーを吸着除去する吸着除去工程を備え、
前記吸着除去工程において、重合溶媒、重合モノマーが吸着除去され、所定の純度に到達した不活性ガスを、前記重合体製造プラントで再使用することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置は、重合体製造プラントから排出される不活性ガスを再使用するための重合体製造プラントの排ガスの再使用装置であって、
前記重合体製造プラントから排出される不活性ガスを、炭化水素によるプレコート操作をしていない吸着剤から形成される吸着剤層を通過させることによって、不活性ガスに含有される重合溶媒、重合モノマーを吸着除去するように構成された吸着除去装置と、
前記吸着除去装置において、重合溶媒、重合モノマーが吸着除去され、所定の純度に到達した不活性ガスを、前記重合体製造プラントで再使用するために重合体製造プラントに還流する還流装置と、
脱着工程の減圧状態から吸着工程の運転圧力状態まで加圧するための不活性ガスホルダードラムと、
を備えることを特徴とする。
【0016】
このように構成することによって、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の1種または2種以上のα−オレフィンを(共)重合した(共)重合体の製造プラントなどから排出される不活性ガスを、吸着剤層を通過させることによって、不活性ガスに含有される重合溶媒、重合モノマーを吸着除去することができる。そして、重合溶媒、重合モノマーが吸着除去され、所定の純度に到達した不活性ガスを、重合体製造プラントの乾燥工程における重合パウダーの乾燥に再使用することができる。
【0017】
従って、従来のように、不活性ガスに含まれる重合溶媒や重合モノマーを燃焼させた後、燃焼ガス、不活性ガスなどを大気に放出することがないので、COガスによる地球温暖化などを防止することができる。
しかも、不活性ガスを再び重合体製造プラントで再使用することができるので、資源の有効利用が図れ、省エネルギーの点からも極めて有効である。
【0018】
また、本発明では、吸着剤が、ペンタン、ベンゼン、ヘキセン等の総炭素原子数3以上の炭化水素、または、排ガスもしくは汚染ガスを用いて、予めプレコート操作していないシリカゲル、合成ゼオライト、またはその両方であることを特徴とする。
このように構成することによって、シリカゲルによって、重合溶媒と一部の重合モノマーを吸着することができるとともに、合成ゼオライトによって、重合モノマーを吸着することができる。
【0019】
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法は、前記吸着剤層が、
(1) シリカゲル及び合成ゼオライトから選択した少なくとも一種の吸着剤の単層からなるか、もしくは、
(2) それら単層の同種または異種の複数層から形成されているか、または、
(3) それら単層または複数層にさらにシリカゲル及び合成ゼオライト以外の吸着剤からなる吸着剤層を組合わせた複数層、
のいずれかから形成されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法は、前記吸着剤層が、
(1)吸着装置に充填された炭化水素によるプレコート操作をしていないシリカゲル若しくは合成ゼオライトの単層、
(2)前記シリカゲルの単層とゼオライトの単層を組み合わせた複数層、または、(3)前記シリカゲルの単層を複数組み合わせた複数層、
のいずれかから形成されていることを特徴とする。
【0021】
このように構成することによって、吸着剤の複数層で形成されることにより排ガス中の不純物を効率的に除去できる。
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法は、前記吸着除去工程において、さらに水分も除去することを特徴とする。
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置は、前記吸着除去装置が、さらに水分も除去するように構成されていることを特徴とする。
【0022】
このように構成することによって、不活性ガス中の水分も除去することができるので、不活性ガスを重合体製造プラントの乾燥工程における重合パウダーの乾燥で再使用する際に、設備の腐食や重合活性の低下を防止することができるとともに、この不活性ガスをパージガスと使用しても、親水性吸着剤が存在していても吸着剤の性能が低下することがない。
【0023】
また、本発明では、吸着剤層が、少なくとも2種類の異なる細孔径の吸着剤層を排ガスの流れる方向に、細孔径の大きい方から小さい順に積層されていることを特徴とする。
この場合、本発明では、このような細孔径は、吸着する物質により決めることが好ましい。例えば、重合溶媒、コモノマー等の総炭素原子数が4から15の炭化水素と水分の吸着除去には、細孔径の大きいシリカゲルを適用すればよい。一方、総炭素原子数が3〜4の炭化水素等の吸着除去には、細孔径の小さいシリカゲルを適用すればよい。
【0024】
さらに、本発明では、総炭素原子数が2〜3の炭化水素の吸着除去には、合成ゼオライトを適用するのが好ましい。
このように構成することによって、大きい細孔径(例えば、細孔径6nm)のシリカゲル層で、比較的分子量の高い重合溶媒等の炭化水素と水分が吸着除去され、続いて、小さい細孔径(例えば、細孔径3nm)のシリカゲル層で、重合モノマー等の比較的低い分子量の大部分が吸着除去され、さらに、合成ゼオライト層(例えば、細孔径が0.9から1.0nm)で、これらのシリカゲル層で吸着除去し切れなかった重合モノマー等が完全に吸着除去されることになり、これらの層を順次通過させることにより効率的に不純物を除去することができる。
【0025】
また、本発明では、シリカゲルとしては、一般的に公知のものを使用できるが、好ましくは、水分の吸着能力の小さい疎水性シリカゲルを含むのが望ましい。
すなわち、シリカゲルは、疎水化処理したものの方が、炭化水素の吸着能力が高く、水分の吸着能力の高い親水性シリカゲルのみのものよりも吸着除去装置の吸着塔を小さく設計できるので好ましい。
【0026】
また、排ガス中の飽和水分を吸着除去する場合は、このような疎水化処理したシリカゲルで充分吸脱着可能であり、吸着塔を特に大型化する必要はない。さらに、必要に応じて、このような疎水性シリカゲルの上流に、親水性シリカゲル層を設けても良い。
また、本発明において、合成ゼオライトは、シリカゲル層で吸着除去し切れなかった重合モノマーを吸着除去するものであるのが好ましく、例えば、エチレンと残りのプロピレンを除去するために、親水性合成ゼオライトであるのが望ましい。
【0027】
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法は、前記吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、減圧状態にして、吸着剤から脱着除去する脱着工程を含むことを特徴とする。
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置は、前記吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、減圧状態にして、吸着剤から脱着除去する脱着装置を備えることを特徴とする。
【0028】
このように構成することによって、吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、吸着剤から脱着除去することができるので、吸着操作をある程度の時間行うと、吸着剤に吸着された物質で細孔が満たされる結果、排ガスが処理されない状態で吸着層を通過する状態、いわゆる破過状態になるが、この破過状態を解消して、再び、吸着除去作用を有するようにすることができる。
【0029】
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法は、前記脱着工程が、前記吸着剤層を、前記吸着除去工程よりも減圧状態とすることによって、前記吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、吸着剤から脱着除去することを特徴とする。
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置は、前記脱着装置が、前記吸着剤層を、前記吸着除去装置を吸着除去の際よりも減圧状態とすることによって、前記吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、吸着剤から脱着除去するように構成されている減圧装置を備えることを特徴とする。
【0030】
このように構成することによって、減圧の作用によって、吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、吸着剤から効率良く完全に脱着除去することができる。
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法は、前記脱着工程が、前記吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、減圧状態にするとともに、前記吸着剤層にパージガスを導入することによって、前記吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、吸着剤から脱着除去することを特徴とする。
【0031】
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置は、前記脱着装置が、前記吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、減圧状態にするとともに、前記吸着剤層にパージガスを導入することによって、前記吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、吸着剤から脱着除去するパージガス導入装置を備えることを特徴とする。
【0032】
このように構成することによって、パージガスの作用によって、吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを吸着剤層から脱着する脱着作用を促進することができ、脱着効率が向上する。
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法は、前記パージガスとして、前記吸着除去工程で、重合溶媒、重合モノマーが吸着除去され、所定の純度に到達した不活性ガスを用いることを特徴とする。
【0033】
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置は、前記パージガス導入装置が、パージガスとして、前記吸着除去装置で、重合溶媒、重合モノマーが吸着除去され、所定の純度に到達した不活性ガスを用いるように構成されていることを特徴とする。
このように構成することによって、吸着除去工程で、重合溶媒、重合モノマーが吸着除去され、所定の純度に到達した不活性ガスの一部をパージガスとして用いることができるので、新たな不活性ガス源を用いる必要がないので、効率が向上するとともに、コストが低減でき、資源節約にも貢献できる。
【0034】
また、本発明では、前記パージガスとして、不活性ガスの純度が98.0%以上、且つ水分が100容量ppm以下、好ましくは、不活性ガスの純度が99.0%以上、且つ水分が50容量ppm以下である高純度の不活性ガスを用いるのが望ましい。
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置は、前記パージガス導入装置が、パージガスとして、高純度の不活性ガスを用いるように構成されていることを特徴とする。
【0035】
これにより、パージガスとして、高純度の不活性ガスを用いるので、不純物を含まないパージガスの作用によって、吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを吸着剤層から脱着する脱着作用の促進効果に優れ、脱着効率がさらに向上する。
本発明では、吸着剤層を脱着工程の減圧状態から吸着工程の運転圧力状態まで加圧する際に、上流側の排ガスを用いる場合、および/又は、下流側の所定純度に達した不活性を用いる場合がある。
【0036】
しかし、この操作は短時間で行う必要があり、大きな流量変動を伴う。また、重合体製造プラントでは、連続的に排ガスを排出し、連続的に所定純度を達した不活性ガスを再使用するので、安定運転を継続するために、流量変動は極力回避する必要がある。
従って、本発明では、脱着工程の減圧状態から吸着工程の運転圧力状態まで加圧するには、予め所定の純度に達して不活性ガス、新しい不活性ガスから選択した1種の不活性ガスを不活性ガスホルダードラムに充填した不活性ガスを使用するのが好ましい。
【0037】
この場合、不活性ガスホルダードラムに充填する不活性ガスは、加圧時間の短縮を図る為、吸着工程の運転圧力よりも高く充填した方が好ましい。
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法は、前記脱着工程において、前記吸着剤層の吸着剤から脱着除去した重合溶媒を、例えば、冷却、膜分離等の公知の回収技術で回収し、前記重合体製造プラントの重合溶媒再使用工程を介して再使用するのが好ましい。
【0038】
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置は、前記脱着装置において、前記吸着剤層の吸着剤から脱着除去した重合溶媒を回収して、前記重合体製造プラントで再使用するために重合体製造プラントに還流する重合溶媒回収装置を備えているのが好ましい。
このように構成することによって、吸着剤層の吸着剤から脱着除去した重合溶媒を回収して、重合体製造プラントで再使用することができるので、効率が向上するとともに、コストが低減でき、資源節約にも貢献できる。
【0039】
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置は、前記重合溶媒回収装置で、重合溶媒を回収した脱着ガスを燃焼廃棄する排ガス燃焼装置を備えることを特徴とする。
このように構成することによって、脱着ガスから重合溶媒を回収した後に、脱着ガス中の重合モノマーを燃焼させた後に大気中に放出するので、COガスがほとんど発生せず、地球温暖化の原因となることがない。
【0040】
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法は、前記重合溶媒再使用工程で重合溶媒を回収した後の脱着ガスに含まれる重合モノマーを再使用する重合モノマー再使用工程を含むことを特徴とする。
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置は、前記重合溶媒回収装置で重合溶媒を回収した後の脱着ガスに含まれる重合モノマーを精製して再使用するために重合体製造プラントに還流する重合モノマー精製装置を備えることを特徴とする。
【0041】
このように構成することによって、前記重合溶媒回収装置で重合溶媒を回収した後の脱着ガスに含まれる重合モノマーを、例えば、エチレンプラント等で回収して精製分離してから再度利用することが可能となり、重合モノマーを重合用原料として、重合体製造プラントで再使用することができるので、効率が向上するとともに、コストが低減でき、資源節約にも貢献できる。
【0042】
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置は、前記吸着除去装置が、少なくとも2つ備えられており、いずれかの吸着除去装置において、吸着除去操作が行われている間に、他の吸着除去装置において、脱着除去操作が行われるように構成されていることを特徴とする。
このように構成することによって、いずれかの吸着除去装置において、吸着除去操作が行われている間に、他の吸着除去装置において、脱着除去操作が行われるので、いずれかの吸着除去装置において破過状態になっても、プラントを停止することなく、他の吸着除去装置で、連続的に吸着除去操作を行うことができるので、操業効率が低下することがない。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。図1は、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置全体の概略図である。
図1に示したように、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置(以下、「再使用装置」と言う)は、重合体製造プラント6を対象としている。
【0044】
本発明で「重合体製造プラント」とは、例えば、ポリオレフィン製造プラントなどの重合体製造プラントを言い、主として重合、それに付随する触媒、乾燥、押出機などをも含む重合体製造プラントを意味する。
図1に示したように、重合体製造プラント6には、排ガス導入ライン1が接続されており、重合体製造プラント6から排出される、例えば、窒素などの不活性ガスを含む排ガスを再使用装置に導入するように構成されている。そして、この排ガス導入ライン1は、分岐部10においてライン1aとライン1bとに分岐されている。
【0045】
ライン1aは、バルブ1Aを経て、第1接続部1Cを介して、不活性ガスに含有される重合溶媒、重合モノマーなどの不純物を吸着除去する吸着剤層を有する吸着塔Aに連結されている。一方、同様に、ライン1bは、バルブ1Bを経て第1’接続部1Dを介して、不活性ガスに含有される重合溶媒、重合モノマーなどの不純物を吸着除去する吸着剤層を有する吸着塔Bに連結されている。
【0046】
そして、吸着塔Aの第1接続部1Cの反対側には、第2接続部2Cが設けられている。また、同様に、吸着塔Bの第1’接続部1Dの反対側には、第2’接続部2Dが設けられている。
第2接続部2Cには、ライン2aが接続されており、バルブ2Aを介して、分岐部11に連結されている。同様に、第2’接続部2Dには、ライン2bが接続されており、バルブ2Bを介して、分岐部11に連結されている。
【0047】
そして、分岐部11には、吸着塔A、Bで吸着除去処理が行われた処理ガスを、重合体製造プラント6に戻す(還流する)ための処理ガス還流ライン2が接続されている。
さらに、ライン2からライン4aか4bに至るライン4cが接続されており、このライン4cには、流量計4Eとバルブ4Cが設置されている。また、ライン2からライン4aか4bに至るライン4dが接続されており、このライン4dには、ガスホルダー4F、バルブ4Dが配置されている。
【0048】
一方、吸着塔Aの第1接続部1C側には、第3接続部3Cが接続され、この第3接続部3Cには、ライン3aを介して、分岐部12に連結されている。同様に、吸着塔Bの第1’接続部側1Dには、第3’接続部3Dが接続され、この第3’接続部3Dには、ライン3bを介して、分岐部12に連結されている。これらのライン3aの途中には、バルブ3Aが、ライン3bの途中にはバルブ3Bがそれぞれ設けられている。
【0049】
そして、分岐部12には、ライン3を介して、吸着塔Aまたは吸着塔Bを減圧状態にするための減圧装置4、吸着剤から脱着除去した重合溶媒を回収する溶剤液化回収装置5、重合溶媒を回収した脱着ガスを燃焼廃棄する排ガス燃焼装置9に連結されている。
また、この溶剤液化回収装置5には、ライン13を介して、溶剤液化回収装置5で回収された重合溶媒を精製する溶剤精製装置14が接続されている。そして、溶剤精製装置14で精製された重合溶媒は、重合溶媒還流ライン8を介して、重合体製造プラント6に戻され(還流され)、再利用されるようになっている。一方、溶剤精製装置14で精製後の不純物は、適切な処理後、廃棄ライン7を介して廃棄されるように構成されている。
【0050】
さらに、溶剤液化回収装置5には、ライン15を介して、溶剤液化回収装置5で重合溶媒を回収した後の脱着ガスに含まれる重合モノマーを精製して再使用する重合モノマー精製装置16が接続されている。そして、重合モノマー精製装置16で精製された重合モノマーは、重合モノマー還流ライン17を介して、重合体製造プラント6に戻され(還流され)、再利用されるようになっている。
【0051】
このように構成される本発明の再使用装置を用いて、重合体製造プラントの排ガスの再使用方法について以下に説明する。
重合体製造プラント6からの例えば、窒素などの不活性ガスを含む排ガスを、図示しない制御装置の制御によって、バルブ1Aを開くことによって、排ガス導入ライン1、分岐部10、ライン1aのバルブ1Aを経て、吸着塔Aに導入される。
【0052】
この際、吸着塔Bへのバルブ1B、減圧装置4などへのバルブ3Aは、閉止した状態に制御されるようになっており、吸着塔Bへは、排ガスが導入されないようになっているとともに、排ガスが減圧装置4などへ導入されないようになっている。
このように吸着塔Aで吸着操作が行われている間、バルブ2Aは開いた状態に維持されているとともに、バルブ4Aは閉止した状態になっている。
【0053】
このように、吸着塔Aを通過する際に不純物を除去された不活性ガスは、第2接続部2Cからバルブ2A、ライン2a、分岐部11、処理ガス還流ライン2を経て、重合体製造プラント6の、例えば、乾燥工程に再び導入され、再度使用されるようになっている。
なお、この場合、図示しないが、吸着塔Aを通過する際に不純物を除去された不活性ガスは、再利用にはある程度の圧力が必要であるので、吸着塔Aに送る前のガスを図示しない昇圧装置で昇圧するか、吸着塔Aの出口の精製ガスを図示しない昇圧装置で昇圧すればよい。
【0054】
ところで、吸着操作をある程度の時間行うと、吸着剤に吸着された物質で細孔が満たされる結果、排ガスが処理されない状態で吸着層を通過する状態、いわゆる破過状態になる。
そこで、制御装置の制御に基づいて、吸着塔Aが、破過する前に、バルブ1Aを閉止した状態にするとともに、バルブ1Bおよび2Bを開いた状態にすることによって、吸着塔Aに供給されていた排ガスを、吸着塔Bに導入するよう切り替えられる。
【0055】
なお、この状態では、バルブ4B、減圧装置4などへのバルブ3Bは、閉止した状態に制御されるようになっており、排ガスが減圧装置4などへ導入されないようになっている。
そして、吸着塔Aと同様にして、吸着塔Bを通過する際に不純物を除去された不活性ガスは、第2’接続部2Dからバルブ2B、ライン2b、分岐部11、処理ガス還流ライン2を経て、重合体製造プラント6の、例えば、乾燥工程に再び導入され、再度使用されるようになっている。
【0056】
一方、バルブ3Aを開いた状態にすることによって、減圧装置4により、吸着塔Aは脱着工程が開始される。
すなわち、バルブ3Aを開いた状態にすることによって、減圧装置4によって、吸着塔Aの内部を減圧状態にする。この際、バルブ4A、4Cを開いた状態にすることによって、ライン2、流量計4E、バルブ4C、ライン4c、およびライン4aを介して、重合体製造プラントに戻される処理済みの不活性ガスの一部がパージガスとしてバルブ4Aから吸着塔Aに供給され、バルブ3Aからライン3aを介して減圧装置4に至るようになっている。この際、ライン2からライン4cを介してライン4aに流れるパージガスの流量を流量計4Eで制御することによって、所定の量のパージガスが、吸着塔Aに供給されるようになっている。
【0057】
なお、この場合、減圧装置4は、脱着操作の際にのみ作動することも可能であるが、減圧装置4を常時連続して作動させておくのが好ましい。
このような操作により吸着剤に吸着されていた重合溶媒、重合モノマーは脱着され、パージガスとともにライン3を下流に移送される。
そして、パージガスに含まれる重合溶媒は、溶剤液化回収装置5の冷却部で液化されて回収される。この溶剤液化回収装置5で回収された重合溶媒は、ライン13を介して、溶剤精製装置14で精製されて、重合溶媒還流ライン8を介して、重合体製造プラント6に戻され(還流される)、再利用されるようになっている。一方、溶剤精製装置14で精製後の不純物は、不純物の種類に応じて適切な処理後、廃棄ライン7を介して廃棄されるように構成されている。
【0058】
また、溶剤液化回収装置5で重合溶媒が回収されたパージガスは、重合モノマーを含有しているので、燃焼廃棄する排ガス燃焼装置(フレアースタック)9に移送されて、重合モノマーを燃焼させた後に大気中に放出されるようになっている。
このように溶剤液化回収装置5で重合溶媒が回収されたパージガスを、排ガス燃焼装置(フレアースタック)9に移送する代わりに、溶剤液化回収装置5で重合溶媒が回収されたパージガスを、ライン15を介して、重合モノマー精製装置16に移送してもよい。
【0059】
すなわち、重合モノマー精製装置16は、例えば、エチレンプラント等であって、溶剤液化回収装置5で重合溶媒を回収した後の脱着ガスに含まれる重合モノマーを精製して、重合モノマー還流ライン17を介して、重合体製造プラント6に戻され(還流される)、再利用されるようになっている。一方、重合モノマー精製装置16で精製後の不純物は、不純物の種類に応じて適切な処理後、廃棄ライン18を介して廃棄されるように構成されている。
【0060】
また、吸着塔Bによる吸着除去処理がある程度行われた後に、吸着塔Aと同様に、制御装置の制御によって、吸着塔Bが、破過する前に、バルブ1Bを閉止した状態にするとともに、バルブ1Aおよび2Aを開いた状態にすることによって、吸着塔Bに供給されていた排ガスを、吸着塔Aに導入するよう切り替えられる。
【0061】
この場合、吸着塔Aでは、脱着操作終了後(吸着操作直前)には吸着塔を元の圧力に昇圧(均圧工程)する必要がある。そのため、均圧工程は、バルブ4Cを閉止して、バルブ4Dを開けて、ライン4d、ライン4aを介して、吸着塔Aの上部に、重合体製造プラントに戻される処理済みの不活性ガスの一部を導入することによって行うようになっている。なお、図中、4Fは、ガスホルダードラムであって、このような均圧工程時に、ライン1と2の圧力変動を避けたい場合に設置する。
【0062】
そして、バルブ3Bを開いた状態にするとともに、減圧装置4により、吸着塔Bは吸着塔Aと同様にして脱着工程が開始される。
すなわち、バルブ3Bを開いた状態にして、減圧装置4によって、吸着塔Bの内部を減圧状態にする。この際、バルブ4B、4Cを開いた状態にすることによって、ライン2、流量計4E、バルブ4C、ライン4c、およびライン4bを介して、重合体製造プラントに戻される処理済みの不活性ガスの一部がパージガスとしてバルブ4Bから吸着塔Bに供給され、バルブ3Bからライン3bを介して減圧装置4に至るようになっている。この際、ライン2aからライン4cを介してライン4bに流れるパージガスの流量を流量計4Eで制御することによって、所定の量のパージガスが、吸着塔Bに供給されるようになっている。
【0063】
このような操作により吸着剤に吸着されていた重合溶媒、重合モノマーは脱着され、パージガスとともにライン3を下流に移送される。そして、吸着塔Aの脱着工程と同様にして、溶剤液化回収装置5での重合溶媒の液化回収、溶剤精製装置14での精製、重合体製造プラントへの還流、再利用、および、精製後の不純物の廃棄ライン7を介しての廃棄、ならびに、排ガス燃焼装置(フレアースタック)9での重合モノマーの燃焼廃棄、または、重合モノマー精製装置16による重合モノマーの精製、再利用がされるように構成されている。
【0064】
このようなサイクルが、図示しない検知センサーなどの検出装置などの検出結果に基づいて、図示しない制御装置の制御によって、自動的に行われるようになっている。
なお、本発明でいう重合体とは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリイソブテン、ポリペンテン−1、ポリメチルペンテン−1などのポリα−オレフィン;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、プロピレン含有量が75重量%未満のプロピレン/ブテン−1共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/α−オレフィン共重合体;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/α−オレフィン/ジエン系単量体共重合体;エチレン/塩化ビニル共重合体、エチレン/塩化ビニリデン共重合体、エチレン/アクリロニトリル共重合体、エチレン/メタクリロニトリル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリルアミド共重合体、エチレン/メタクリルアミド共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸金属塩共重合体、エチレン/メタクリル酸金属塩共重合体、エチレン/スチレン共重合体、エチレン/メチルスチレン共重合体、エチレン/ジビニルベンゼン共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/ビニル単量体共重合体;ポリイソブテン、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン系共重合体;スチレン/ブタジエンランダム共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体ランダム共重合体;スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体ブロック共重合体;水素化(スチレン/ブタジエンランダム共重合体)などの水素化(ビニル単量体/ジエン系単量体ランダム共重合体);水素化(スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体)などの水素化(ビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体ブロック共重合体);アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体グラフト共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチルなどのビニル重合体;塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体などのビニル系共重合体などを挙げることができる。
【0065】
また、本発明では、これらの重合体のうちでは、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン等の1種または2種以上のα−オレフィンを(共)重合した(共)重合合体等のポリオレフィン重合体製造プラントにおいて採用することができる。
上記したα−オレフィンは、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセンなどの炭素原子数2〜20のα−オレフィンが挙げられる。
【0066】
これらのうちでも、エチレンと炭素原子数4〜10のα−オレフィン、またはプロピレンと炭素原子数2〜10のα−オレフィンの組合せが好ましく、エチレンと炭素原子数4〜8のα−オレフィン、またはプロピレンと炭素原子数2〜8のα−オレフィンを共重合させることが更に好ましい。
また、本発明のポリオレフィンは、エチレン又はプロピレンと2種以上のα−オレフィンとを共重合させる共重合体製造プラントにおいて採用することもできる。
【0067】
さらに、本発明では、2−ペンテン、2−ヘキセン、2−ヘプテン、2−オクテン等のβ−オレフィン及びジエン等の重合体、また異なるβ−オレフィン同士の共重合体を製造するプラントにおいて採用することができる。
この場合、ポリエチレン製造プラントにおいては、重合器に触媒とエチレンガス、必要に応じて、コモノマーであるプロピレンや1−ブテン等と、さらに必要に応じて、重合溶媒が供給され、ポリエチレンが生成される。生成された重合器から排出される重合パウダーには、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の重合モノマーおよび重合溶媒が多量に吸着されている。
【0068】
また、ポリプロピレン製造プラントにおいては、重合器に触媒とプロピレンガス、必要に応じて、コモノマーであるエチレンや1−ブテン等と、さらに必要に応じて、重合溶媒が供給され、ポリプロピレンが生成される。生成された重合器から排出される重合パウダーには、プロピレン、エチレン、1−ブテン等の重合モノマーおよび重合溶媒が多量に吸着されている。
【0069】
また、本発明における重合溶媒とは、重合体、特にポリオレフィン重合において使用される、または触媒を供給するために使用される溶媒で、例えば、プロパン、n−ブタン、プロピレン、nーヘプタン、i−ヘプタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−オクタン、i−オクタン、n−デカン、i−デカン等を挙げることができる。
【0070】
また、本発明で用いる不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。
このため、ポリオレフィン製造プラントでは、重合工程に引き続く乾燥工程で重合パウダーから重合モノマー、重合溶媒等の不純物を除去する必要がある。
すなわち、これらの不純物を除去するには、通常、好ましくは、加熱された不活性ガスを、好ましくは、重合パウダーの充填されたサイロで一定時間流すか、または移送される重合パウダーに対して向流的に不活性ガスを流す等の方法により行われる。
【0071】
このように乾燥工程で使用され、排出される不活性ガスには、重合モノマー、重合溶媒等が含まれている。
従って、本発明では、排出される不活性ガスを吸着除去処理することにより、これらの重合モノマー、重合溶媒等を除去する。このような吸着除去処理は、吸着塔に吸着剤が充填された吸着層を通過させることにより行う。
【0072】
本発明における吸着剤とは、シリカゲル、アルミナ、モンモリロナイト、活性炭、合成ゼオライト等の直径が0.5〜100nmの細孔を0.1cc/g以上有する粉末または粒子をいう。
これらの吸着剤のうち、合成ゼオライトとシリカゲルとを好ましく使用することができる。シリカゲルの細孔径は、1〜20nm、好ましくは、3〜6nmであり、合成ゼオライトの細孔径は、0.3〜5nm、好ましくは、0.5〜1.5nmである。これらの吸着剤を組み合わせて使用することが好ましい。
【0073】
この場合、吸着剤としては、炭化水素によるプレコート操作をしていない吸着剤、例えば、ペンタン、ベンゼン、ヘキセン等の総炭素原子数3以上の炭化水素、または、排ガスもしくは汚染ガスを用いて、予めプレコート操作していないものを用いるのが好ましい。
すなわち、炭化水素によるプレコート操作をしていない吸着剤を用いることによって、予め吸着剤にガス状炭化水素を破過するまで吸着させる必要がなく、吸着剤の操作性が良好で、寿命が長く重合体製造プラントのような大型製造プラントや、24時間連続運転に適している。また、吸着性能が低下することもなく、予めプレコートした炭化水素などを減圧脱着するために、例えば、加熱脱着の装置の追加や操作も不要であり、経済的である。
【0074】
本発明では、吸着塔Aの吸着層は、例えば、少なくとも2種類の異なる細孔径の吸着剤層を排ガスの流れる方向に、細孔径の大きい方から小さい方の順に積層される。
この場合、このような細孔径は、吸着する物質により決めることが好ましい。例えば、重合溶媒等の総炭素原子数が4から15の炭化水素と水分の吸着除去には、細孔径の大きいシリカゲル(例えば、細孔径6nm)を適用すればよい。
【0075】
一方、重合モノマー等の総炭素原子数が3〜4の炭化水素の吸着除去には、細孔径の小さいシリカゲル(例えば、細孔径3nm)を適用すればよい。
さらに、重合モノマー等の総炭素原子数が2〜3の炭化水素の吸着除去には、合成ゼオライトを適用するのが好ましい。
この場合、このような吸着剤層が、
(1) シリカゲル及び合成ゼオライトから選択した少なくとも一種の吸着剤の単層からなるか、もしくは、
(2) それら単層の同種または異種の複数層から形成されているか、または、
(3) それら単層または複数層にさらにシリカゲル及び合成ゼオライト以外の吸着剤からなる吸着剤層を組合わせた複数層、
のいずれかから形成されているのが望ましい。
【0076】
また、この場合、このような吸着剤層が、
(1) 吸着装置に充填された炭化水素によるプレコート操作をしていないシリカゲル若しくは合成ゼオライトの単層、
(2) 前記シリカゲルの単層とゼオライトの単層を組み合わせた複数層、または、
(3) 前記シリカゲルの単層を複数組み合わせた複数層、
のいずれかから形成されているのが望ましい。
【0077】
このように吸着剤層が形成されることによって、排ガス中の不純物を効率的に除去できる。
この場合、シリカゲルの大きい細孔径としては、3〜10nm、好ましくは、4〜8nm、シリカゲルの小さい細孔径としては、1〜5nm、好ましくは、2〜4nmとするのが望ましい。
【0078】
この場合、細孔径の小さいシリカゲルを適用した場合には、吸着剤の寿命及び性能を向上するために、総炭素原子数が4から15の炭化水素の濃度及び水分含有量をそれぞれ、500容量ppm以下にする必要があり、好ましくは、200容量ppm以下とするのが望ましい。
また、総炭素原子数が4から15の炭化水素の濃度及び水分含有量が前記許容量を超える排ガスを処理するには、上記の細孔径の小さいシリカゲル層の上流に、細孔径の大きいシリカゲル層を積層して許容濃度まで下げるのが望ましい。
【0079】
また、本発明では、シリカゲルとしては、親水性シリカゲル、疎水性シリカゲル、これらの両方を含むことができる。
ただし、シリカゲルは、疎水化処理したものの方が、炭化水素の吸着能力が高く、親水性シリカゲルのみのものよりも吸着除去装置の吸着塔を小さく設計できるので好ましい。このような疎水化処理としては、シリカゲル表面水酸基のアルキル化が挙げられる。
【0080】
なお、排ガス中の飽和水分を吸着除去する場合は、このような疎水化処理したシリカゲルで充分吸脱着可能であり、吸着塔を特に大型化する必要はない。また、必要に応じて、このような疎水性シリカゲルの上流に親水性シリカゲル層を設けても良い。
なお、親水性シリカゲル、疎水性シリカゲルの両者を含む場合には、経済性と所望の吸着性能を考慮して、最適ブレンド量を算出して決定すればよい。
【0081】
また、本発明では、合成ゼオライトとしては、親水性、疎水性、その両者のいずれも使用できるが、親水性合成ゼオライトであるのが好ましい。
すなわち、合成ゼオライトは、シリカゲル層で吸着除去し切れなかった重合モノマー、例えば、エチレンと残りのプロピレンを除去するために、親水性合成ゼオライトであるのが望ましい。
【0082】
また、合成ゼオライトを適用した場合、吸着剤の寿命及び性能を向上するために、総炭素原子数が4から15の炭化水素の濃度及び水分含有量をそれぞれ、300容量ppm以下とする必要があり、好ましくは、150容量ppm以下とするのが望ましい。
また、総炭素原子数3の炭化水素の濃度は、5000容量ppm以下とpする必要があり、好ましくは、2000容量ppm以下とするのが望ましい。
【0083】
さらに、総炭素原子数が3から15の炭化水素の濃度及び水分含有量が、前記許容量を超える排ガスを処理するには、合成ゼオライト層の上流にシリカゲル層を積層し許容濃度まで下げるのが望ましい。
なお、親水性合成ゼオライト、疎水性合成ゼオライトの両者を含む場合には、経済性と所望の吸着性能を考慮して、これらの吸着剤の各々の最適充填量を算出して決定すればよい。
【0084】
この場合、本発明における疎水性シリカゲルとしては、例えば、富士シリシア(株)で製造されている商品名「CARIACTQ−6」等を疎水化処理したシリカゲルを挙げることができる。本発明における疎水化シリカゲルとしては、例えば、富士シリシア(株)で製造されている商品名「CARIACTQ−3」等を疎水化処理したシリカゲルが挙げることができる。
【0085】
本発明における合成ゼオライトとしては、例えば、東ソー(株)のX型ゼオライト、商品名「ゼオラムF9」、またはAl成分を減少させた合成ゼオライトハイシリカゼオライトY型(HSZ−360)等を挙げることができる。
また、吸着塔A、Bでは、これらの異なった吸着剤層を層状に順次設けることが好ましい。また、2つ以上の吸着塔を直列して設け、上記した吸着剤をそれぞれの吸着塔に充填したものを用いることも可能である。
【0086】
さらに、吸着塔としては、図1に示したたように、A、B二つの吸着塔を並列して設けてもよいが、3つ以上の吸着塔を並列して設けて、いずれかの吸着塔において、吸着除去操作が行われている間に、他の吸着塔において、脱着除去操作が行われるようにすれば、いずれかの吸着塔において破過状態になっても、プラントを停止することなく、他の吸着塔で、連続的に吸着除去操作を行うことができるので、操業効率が低下することがない。
【0087】
また、各吸着層の厚さは、下流側の吸着剤層への影響を極力小さくするため、上流側の吸着剤から流れる排ガスの純度は、許容濃度以下である必要がある。また、各吸着層の充填量は、排ガスの通過速度にも関係するが、主としてガスの組成と吸着剤との接触時間によって決まるが、好ましくは、吸脱着可能容量(吸着物質/吸着剤の重量比)を、0.05〜10重量%、特に好ましくは、0.1〜5重量%とすることが望ましく、この範囲において、圧力損失が少なく、かつ吸着時間を長くとることができるため、工業的に有利である。
【0088】
排ガスの吸着塔内での通過速度は、通常3〜20cm/秒、好ましくは5〜15cm/秒とすると吸着処理がスムースに行え、かつ圧力損失が小さいため、好ましい。
上記吸着層を通過させることにより不活性ガスの純度を98%以上、特に99%以上とすることができる。このように不純物を除去したガスは、例えば、重合体製造プラントの乾燥工程に戻して重合パウダーの乾燥に再使用することができる。
【0089】
また、吸着剤に吸着された不純物は脱着操作により脱着する。吸着剤から脱着する操作としては、好ましくは、吸着剤を減圧状態にするとともにパージガスを吸着剤層に流すことにより行うことができる。減圧度は13.3kPa以下、特に6.6kPa以下とすることが好ましい。
さらに、脱着操作は、例えば、吸着操作を高圧で行って、脱着操作を常圧で行うことも可能である。
【0090】
従って、脱着操作が、吸着操作よりも減圧状態として行えばよく、この減圧度としては、吸着時圧力(Pa)と脱着時圧力(Pd)との関係が、脱着時圧力が、Pa/Pd=10〜35、好ましく25〜35の減圧度となるように減圧状態として行えばよい。
また、パージガスとして、上述の重合体製造プラントから排出された不活性ガスを、吸着除去処理した後のガスの一部、または高純度不活性ガス、またはこれらの両方を用いることが好ましい。
【0091】
この場合、吸着除去処理したガスの一部を用いる場合は、全吸着除去処理ガスの1〜10容量%、特に2〜8容量%をパージガスとして用いることが好ましい。
さらに、脱着された主として重合溶媒、重合モノマー及び水からなる不純物のうち、重合溶媒は冷却液化して回収する。冷却液化して回収した重合溶媒は、蒸留工程を介して、好ましくは重合溶媒として再使用する。
【0092】
以上、本発明の好ましい実施の形態について、説明したが、本発明は何らこれに限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々変更することが可能であることはもちろんである。
【0093】
【実施例】
【実施例1】
ポリプロピレン重合体製造プラントの乾燥工程から排出されるプロピレンを3.5容量%、エチレンを0.2容量%、重合溶媒であるn−ヘキサンを3.5容量%、および水分を0.8容量%含む窒素ガスを、図1に示したような、内径Φ200mm、高さ700mmの吸着塔に、50l/分で供給した。
【0094】
吸着塔には、炭化水素によるプレコート操作をしていない吸着剤として、疎水性シリカゲル(富士シリシア製、商品名「Q−6」、球状#5〜#10メッシュ)層が35cm、親水性シリカゲル層(富士シリシア製、商品名「A」、球状#5〜#10メッシュ)が15cm、合成ゼオライト(東ソー製、商品名「F9」)が20cmの3層からなる吸着剤が充填されていた。
【0095】
吸着、脱着はそれぞれ5分間のサイクルで切り替えた。吸着塔出口での処理されたライン2の窒素ガスの組成はプロピレンを16容量ppm、エチレンを5容量ppm、n−ヘキサンを1容量ppm、および水分を10容量ppm以下含んでいた。
処理ガスの4容量%を脱着工程にパージガスとして供給した。同時に真空ポンプにより吸着塔を減圧状態とした。吸着塔の減圧度は3.3kPaであった。脱着ガスの組成は、プロピレン46容量%、エチレン2容量%、n−ヘキサン46容量%、水分0.2容量%、および窒素7容量%からなっていた。
【0096】
このパージガスを溶剤液化回収装置5で、15℃に冷却してnーヘキサンを液化した。ライン8におけるガスの組成は、窒素ガス13容量%、プロピレン76容量%、n−ヘキサン9容量%、および水分0.2容量%から構成されていた。
【0097】
【実施例2】
直径20cmの吸着塔に、表1及び排ガスの流れる順序に、
・疎水性シリカゲル(富士シリシア製、商品名「Q−6」、球状#10〜#20メッシュ)層、
・疎水性シリカゲル層(富士シリシア製、商品名「Q−3」、球状#5〜#10メッシュ)、
・合成ゼオライト(東ソー製、商品名「F9」)、
の3層からなる吸着剤を充填した。
【0098】
吸着、脱着はそれぞれ10分間のサイクルで切り替えた。排ガスを常温、5kPaGの圧力で供給し、各吸着剤層の出口の炭化水素及び水分濃度を分析した。脱着の不活性パージガスには窒素(純度99.99%、水分10ppm以下)を使用し脱着を3.3kPaAで実施した。
また、吸着剤の寿命は、連続運転を継続しつつ最終吸着剤(F9)の出口窒素純度がポリオレフィン製造プラントの許容できる純度(99.5%以上)を目安として、吸着剤の性能劣化を考慮して算出した。
【0099】
疎水性シリカゲル(Q−6、Q−3)及び合成ゼオライト(F−9)をプレコート操作せず、且つQ−6、Q−3出口の炭化水素濃度を低く抑えることで連続として365日以上窒素純度を許容レベルに抑えることができた。
【0100】
【比較例1〜2】
上記実施例2と同様にして比較テストを行った。但し、吸着剤のプレコート操作は汚染している排ガスを通過させ、吸着剤にガスを導入する前の濃度と吸着剤出口の濃度が一定になるようにした。
疎水性シリカゲル(Q−6、Q−3)及び合成ゼオライト(F−9)にプレコート操作を行った。結果的にQ−6の性能には計画通り発揮できた。しかし、Q−3のヘキサン脱着が不充分になり、それに伴いプロピレンの吸着除去効率が低下した。
【0101】
プレコートしたF−9は、水分の脱着が常温・減圧では行い難く、結果的にエチレン及びプロピレンの吸着除去は全くできなかった。
F−9のみをプレコートせずに使えば約40日間は運転可能であるが、1年間24時間連続で動くポリオレフィン製造プラントにおいて効率が悪く適さない。
【0102】
【比較例3〜4】
比較例1〜2の条件にパージガス量を増やした以外は同じ条件で比較テストを行った。
パージガス量を増やせば、Q−3の吸着除去能力は向上するが、比較例3の様にプレコート操作をされたF−9の吸着除去性能は全く改善されなかった。
【0103】
比較例4では、Q−3の吸着除去性能が向上したため、最終的に推定寿命は比較例2に対して約10日間伸びるがポリオレフィン製造プラントには適さない。
【0104】
【実施例3】
直径1.6mの吸着塔に、排ガスの流れる順序に疎水性シリカゲル(富士シリシア製、商品名「Q−6」、球状#10〜#20メッシュ)層を1200Kg、疎水性シリカゲル層(富士シリシア製、商品名「Q−3」、球状#5〜#10メッシュ)を2500Kg、合成ゼオライト(東ソー製、商品名「F9」)を600Kgの3層からなる吸着剤を充填した。
【0105】
吸着、脱着はそれぞれ11分間のサイクルで切り替えた。排ガスを25〜30℃、20kPaGの圧力、平均組成がエチレン=0.2%、プロピレン=3.0、ヘキサン=2.8%、水分=1.0%、窒素=93.0%、流量=600〜700Nm/hで供給した。脱着の不活性パージガスには、汚染物質が除去された窒素を、35Nm/h使用し、脱着を3.3kPaAで実施した。
【0106】
脱着工程の減圧状態から吸着工程の運転圧力状態まで30秒以内に加圧する為の不活性ガスホルダードラムを設置した。また、ヘキサン回収用として溶剤液化回収装置(クーラー)も設置した。
F−9出口の不活性ガス純度は365日間を過ぎても窒素純度として99.8%以上、水分は10ppm以下である。
【0107】
不活性ガスホルダードラム設置により吸着塔入り出の流量は0〜20Nm/hの小さい変動幅に収まった、また。脱着ガスを5℃に冷却したらヘキサンの回収率も80%以上であった。
【0108】
【比較例5】
実施例3に不活性ガスホルダードラムを使わずに運転を行った。この場合、吸着塔入り出の流量が0〜700Nm/hの大きい幅で変動し、排ガス供給装置及び不活性ガス昇圧装置は緊急停止した。
【0109】
【表1】
Figure 2004000909
【0110】
以上の結果より本発明の効果は明らかである。
【0111】
【発明の効果】
本発明によれば、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン重合体製造プラントなどの重合体製造プラントから排出される不活性ガスを、吸着剤層を通過させることによって、不活性ガスに含有される重合溶媒、重合モノマーを吸着除去することができる。そして、重合溶媒、重合モノマーが吸着除去され、所定の純度に到達した不活性ガスを、重合体製造プラントで再使用することができる。
【0112】
従って、従来のように、不活性ガスに含まれる重合溶媒や重合モノマーを燃焼させた後、燃焼ガス、不活性ガスなどを大気に放出することがないので、COガスによる地球温暖化などを防止することができる。
しかも、不活性ガスを再び重合体製造プラントで再使用することができるので、資源の有効利用が図れ、省エネルギーの点からも極めて有効である。
【0113】
また、本発明によれば、炭化水素によるプレコート操作をしていない吸着剤を用いることによって、予め吸着剤にガス状炭化水素を破過するまで吸着させる必要がなく、吸着剤の操作性が良好で、寿命が長く重合体製造プラントのような大型製造プラントや、24時間連続運転に適している。また、吸着性能が低下することもなく、予めプレコートした炭化水素などを減圧脱着するために、例えば、加熱脱着の装置の追加や操作も不要であり、経済的である。
【0114】
また、本発明によれば、吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、吸着剤から脱着除去することができるので、吸着操作をある程度の時間行うと、吸着剤に吸着された物質で細孔が満たされる結果、排ガスが処理されない状態で吸着層を通過する状態、いわゆる破過状態になるが、この破過状態を解消して、再び、吸着除去作用を有するようにすることができる。
【0115】
また、本発明によれば、吸着除去工程で、重合溶媒、重合モノマーが吸着除去され、所定の純度に到達した不活性ガスの一部をパージガスとして用いることができるので、新たな不活性ガス源を用いる必要がないので、効率が向上するとともに、コストが低減でき、資源節約にも貢献できる。
また、本発明によれば、吸着剤層の吸着剤から脱着除去した重合溶媒を回収して、重合体製造プラントで再使用することができるので、効率が向上するとともに、コストが低減でき、資源節約にも貢献できる。
【0116】
また、本発明によれば、脱着ガスから重合溶媒を回収した後に、脱着ガス中の重合モノマーを燃焼させた後に大気中に放出するので、COガスがほとんど発生せず、地球温暖化の原因となることがない。
さらに、本発明によれば、いずれかの吸着除去装置において、吸着除去操作が行われている間に、他の吸着除去装置において、脱着除去操作が行われるので、いずれかの吸着除去装置において破過状態になっても、プラントを停止することなく、他の吸着除去装置で、連続的に吸着除去操作を行うことができるので、操業効率が低下することがないなど幾多の顕著で特有な作用効果を奏する極めて優れた発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置全体の概略図である。
【符号の説明】
1Aバルブ
1Bバルブ
1aライン
1bライン
1排ガス導入ライン
1C第1接続部
1D第1’接続部
2Aバルブ
2Bバルブ
2aライン
2bライン
2処理ガス還流ライン
2C第2接続部
2D第2’接続部
3Aバルブ
3Bバルブ
3aライン
3bライン
3ライン
3C第3接続部
3D第3’接続部
4Aバルブ
4Bバルブ
4aライン
4bライン
4減圧装置
5溶剤液化回収装置
6重合体製造プラント
7廃棄ライン
8重合溶媒還流ライン
9排ガス燃焼装置
10分岐部
11分岐部
12分岐部
13ライン
14溶剤精製装置
A吸着塔
B吸着塔

Claims (11)

  1. 重合体製造プラントから排出される不活性ガスを再使用するための重合体製造プラントの排ガスの再使用方法であって、
    前記重合体製造プラントから排出される不活性ガスを、炭化水素によるプレコート操作をしていない吸着剤から形成される吸着剤層を通過させることによって、不活性ガスに含有される重合溶媒、重合モノマーを吸着除去する吸着除去工程を備え、
    前記吸着除去工程において、重合溶媒、重合モノマーが吸着除去され、所定の純度に到達した不活性ガスを、前記重合体製造プラントで再使用することを特徴とする重合体製造プラントの排ガスの再使用方法。
  2. 前記重合体製造プラントの重合体が、オレフィン系重合体であることを特徴とする請求項1に記載の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法。
  3. 前記吸着剤層が、
    (1) シリカゲル及び合成ゼオライトから選択した少なくとも一種の吸着剤の単層からなるか、もしくは、
    (2) それら単層の同種または異種の複数層から形成されているか、または、
    (3) それら単層または複数層にさらにシリカゲル及び合成ゼオライト以外の吸着剤からなる吸着剤層を組合わせた複数層、
    のいずれかから形成されていることを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法。
  4. 前記吸着剤層が、
    (1) 吸着装置に充填された炭化水素によるプレコート操作をしていないシリカゲル若しくは合成ゼオライトの単層、
    (2) 前記シリカゲルの単層とゼオライトの単層を組み合わせた複数層、または、
    (3) 前記シリカゲルの単層を複数組み合わせた複数層、
    のいずれかから形成されていることを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法。
  5. 前記吸着剤層が、少なくとも2種類の異なる細孔径の吸着剤層を排ガスの流れる方向に、細孔径の大きい方から小さい順に積層されていることを特徴とする請求項1から4に記載の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法。
  6. 前記吸着除去工程において、さらに水分も除去することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法。
  7. 前記吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、減圧状態にして、吸着剤から脱着除去する脱着工程を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法。
  8. 前記吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、減圧状態にするとともに、パージガスを導入して吸着剤から脱着除去する脱着工程を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法。
  9. 前記パージガスとして、前記吸着除去工程で、重合溶媒、重合モノマーが吸着除去され、所定の純度に到達した不活性ガスを用いることを特徴とする請求項8に記載の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法。
  10. 前記吸着剤層によって不活性ガスに含有される重合溶媒、重合モノマーが吸着除去され、所定の純度に到達した不活性ガスを、前記重合体製造プラントで再使用するために重合体製造プラントに還流することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法。
  11. 前記吸着剤層を脱着工程の減圧状態から吸着工程の運転圧力状態まで、不活性ガスホルダードラムによって加圧することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法。
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