JP4033816B2 - 重合体製造プラントの排ガスの再使用方法 - Google Patents

重合体製造プラントの排ガスの再使用方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、ポリオレフィン製造プラントなどの重合体製造プラントの排ガスの再使用方法、およびそのための重合体製造プラントの排ガスの再使用装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンは、1種または2種以上のα- オレフィンを(共)重合した(共)重合体等であり、各種分野の材料として、現在世界各地で、年間数百万トンの規模で製造されている。
このようなポリオレフィンを製造する方法としては、後述する固体触媒とポリマー粒子が有機溶媒中に分散しているスラリー重合方法、または固体触媒が有機溶媒中に分散し且つポリマー粒子の全部や一部が溶解している溶液重合方法や固体触媒を直接重合槽内に導入しかつ重合に有機溶媒を殆ど使用しない気相重合方法等の方法を用いてオレフィンを重合するものである。
【0003】
尚、気相重合方法は、除熱強化用に不活性飽和炭化水素の使用や、必要に応じて不活性ガスの存在下で、固体触媒と重合モノマーを、重合槽に供給することによって、オレフィンを重合する方法である。
この際、固体触媒を有機溶媒の存在下で予め重合する必要があり、固体触媒を有機溶媒に分散させて系内に供給したりしている。
【0004】
このため、重合されたポリマー粒子には、重合溶媒や重合モノマーが吸着されているので、これらの重合溶媒や重合モノマーを、ポリマー粒子から除去、清浄化する必要がある。
このようなポリマー粒子に吸着された重合溶媒や重合モノマーを、ポリマー粒子から除去する方法としては、従来より、例えば、重合されたポリマー粒子群をサイロに入れ、温度が常温〜150℃、好ましくは50〜120℃の不活性ガスをサイロ内に吹付ける方法等が採用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ポリマー粒子の清浄化は温度が常温〜150℃、好ましくは50〜120℃の不活性ガスを吹き付けながら行われ且つ水蒸気を用いて清浄化の効率を大幅に上げる方法等が多く採用されている。しかし、ポリマー粒子には固体触媒が含有されている為、該固体触媒が水蒸気と接触した場合、腐食性の塩素が発生し、また、該不活性ガスにはさらに水蒸気由来の水分が混入されており、通常常温〜120℃で排出される、塩素、炭化水素及び水分を含有している不活性ガスを冷却すると水が凝縮して塩素による腐食を起こす為、該不活性ガスは容易に回収できずそのまま大気放出されているか、露点以上の温度を持つ不活性ガスはフレアースタック(排ガス燃焼装置)を用いて、不活性ガスに含まれる重合溶媒や重合モノマーを燃焼させた後、燃焼ガス、不活性ガスなどを大気に放出する方法が採用されている。
【0006】
しかしながら、近年、炭化水素の直接大気放出による光化学スモークや炭化水素及びCO2ガスによる地球温暖化が問題となっており、このような重合溶媒等の炭化水素を直接大気放出ないし燃焼させる方法を見直すことが求められている。また、窒素ガスなどの不活性ガスの廃棄についても、省エネルギーの点で見直すことが求められているのが現状である。
ところで、炭化水素を含んだ不活性ガスから炭化水素を回収した後に、この不活性ガスを大気中に放出する技術に関しては、従来からいくつかの方法が提案されている。
【0007】
例えば、(1)特許文献1(特公昭54−8632号公報)、特許文献2(特開平10−033932号公報)に記載されているように、炭化水素を含んだ不活性ガスを有機液体からなる吸収液に接触させて吸収させる液吸収法、(2)特許文献3(特開平6−285324号公報)、特許文献4(特許第2840563号公報)に記載されているように、ガス分離膜を用いる方法、(3)特許文献5(特開平4−326901号公報)に記載されているように、ガスを深冷して液化する方法、(4)特許文献6(特開2002−200410号公報)に記載されているように、シリカゲルと合成ゼオライトを用いる吸着方法等が提案されている。
【0008】
これらの従来から提案されている炭化水素含有廃棄ガスの処理方法は、主にタンクローリーやタンクで発生するガソリン等の、常温では液体であるが、揮発性の炭化水素を含有する廃棄ガスの処理に関する提案であり、特許文献6(特開2002−200410号公報)のみが重合体製造プラントのように大量の排ガスを発生する装置を対象としている。
また、特許文献7(特開2000−26319号公報)も、プラント排ガスの処理を課題としている。しかしながら、この特許文献7(特開2000−26319号公報)で提案されているのは、排ガスからオレフィン類を回収することは提案されているが、排ガスの主成分である不活性ガスを再利用することについては全く考慮されていない。
一方、特許文献6(特開2002−200410号公報)で提案されている方法では、炭化水素含有の不活性ガスの回収に当たり、事前に水洗、冷却及びミスト除去についての記述はあるが、具体的な方法の記述がなく、また、ポリオレフィンの製造プラントから排出される腐食性な塩素、炭化水素及び水分を含有する不活性ガスに当該技術を適用した場合、水洗塔、吸着塔及び脱着設備に塩素が濃縮し設備の腐食による問題を引き起こすことがあり、長期的また連続的に当該技術の適用はできない。
【0009】
本発明は、このような現状に鑑み、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の1種または2種以上のα- オレフィンを(共)重合した(共)重合体の製造プラントなどの重合体製造プラントから排出された塩素、炭化水素及び水分含有の不活性ガスから、事前に腐食性の塩素を除去した後に水分、重合溶媒、重合モノマーなどの炭化水素を除去して、不活性ガスを重合体製造プラントで再使用する方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、このような重合体製造プラントから排出された不活性ガスの塩素をアルカリ中和した後にアルカリ性ガスによる吸着剤の劣化を避ける為、ガスの露点を所定の温度まで下げると共にミストを除去し後に該不活性ガスより重合溶媒を回収して、重合溶媒を重合体製造プラントで再使用する方法を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、このような回収、再使用方法において、より省エネルギーに優れた方法を提供することを目的とする。
【0011】
【特許文献1】
特公昭54−8632号公報
【特許文献2】
特開平10−033932号公報
【特許文献3】
特開平6−285324号公報
【特許文献4】
特許第2840563号公報
【特許文献5】
特開平4−326901号公報
【特許文献6】
特開2002−200410号公報
【特許文献7】
特開2000−26319号公報
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法は、重合体製造プラントから排出される不活性ガスを再使用するための重合体製造プラントの排ガスの再使用方法であって、
前記重合体製造プラントから排出される不活性ガスを事前に該不活性ガスの塩素をアルカリ中和した後に、アルカリ性ガスによる吸着剤の劣化を避けると共に吸着剤の吸着能力を上げる為、ガスの水分露点を所定の温度まで下げると共にミストを除去する。その後、該不活性ガスを吸着剤から形成される吸着剤層、好ましく炭化水素によるプレコート操作をしていない吸着層に通過させることによって、不活性ガスに含有される重合溶媒、重合モノマーを吸着除去する吸着除去工程を備え、
前記吸着除去工程において、重合溶媒、重合モノマーが吸着除去され、所定の純度に到達した不活性ガスを、前記重合体製造プラントで再使用することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置は、重合体製造プラントから排出される不活性ガスを再使用するための重合体製造プラントの排ガスの再使用装置であって、
前記重合体製造プラントから排出される塩素、炭化水素及び水分含有の腐食性不活性ガスをアルカリ中和処理した後に、好ましくは炭化水素によるプレコート操作をしていない吸着剤から形成される吸着剤層を通過させることによって、不活性ガスに含有される重合溶媒、重合モノマーを吸着除去するように構成された吸着除去装置と、
前記吸着除去装置において、重合溶媒及び重合モノマーが吸着除去され、所定の純度に到達した不活性ガスを、前記重合体製造プラントで再使用するために重合体製造プラントに還流する還流装置と、
脱着工程の減圧状態から吸着工程の運転圧力状態まで加圧するための不活性ガスホルダードラムと、
を備えることを特徴とする。
【0014】
このように構成することによって、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の1種または2種以上のα- オレフィンを(共)重合した(共)重合体の製造プラントなどから排出される塩素、炭化水素及び水分含有の腐食性不活性ガスを、事前にアルカリ中和処理を行った後に該不活性ガスを吸着剤層に通過させることによって、不活性ガスに含有される重合溶媒及び重合モノマーを吸着除去することができる。そして、重合溶媒及び重合モノマーが吸着除去され、所定の純度に到達した不活性ガスを、重合体製造プラントの乾燥工程における重合パウダーの乾燥に再使用することができる。
【0015】
塩素、炭化水素及び水分含有の腐食性不活性ガスに含まれる塩素を事前に除去し、不活性ガス中の溶媒等を除去した後に不活性ガス及び溶媒を再利用する為、従来のように不活性ガス中の炭化水素を直接大気に放出または燃焼させた後、燃焼ガス、不活性ガスなどを大気に放出することがないので、炭化水素の直接大気放出による光化学スモークや炭化水素及びCO2ガスによる地球温暖化などを防止することができる。
しかも、設備の腐食がなく長期及び連続的に不活性ガス及び溶媒を再び重合体製造プラントで再使用することができるので、資源の有効利用が図れ、省エネルギーの点からも極めて有効である。
【0016】
本発明は公知で知られている、ガスのアルカリ中和方法、例えば、充填塔、スプレー塔、スクラバー類、濡れ壁塔等が使用できるが、塩素、炭化水素及び水分含有の腐食性不活性ガスの圧力が0.2〜5kPaGの低圧では図1に示すような設備を用いて、常温〜120℃の塩素、炭化水素及び水分を含有している不活性ガスのアルカリ中和処理を行うことが好ましい。
【0017】
本発明では、重合体製造プラントから排出される塩素、炭化水素及び水分含有の腐食性不活性ガスを図1に示すような設備で3段階に分けて処理を行う場合は、最初の2段階でアルカリ水溶液を接触させ中和処理を行い、最後の3段階で微粉やミストの除去を行うように構成されている。第1段階では第2段階及び第3段階の設備投資を下げる目的として粗い処理を行う。第2段階は第1段階で粗い処理した該不活性を完全に中和処理を行い、第3段階は、重合体等の微粉やミストを完全除去する。
【0018】
第1段階では重合体製造プラントから排出された塩素、炭化水素及び水分含有の腐食性不活性ガスはライン1#を介してpHが4以上の水溶液を張った液シールC#と接触させ塩素や微粉の粗い処理を行う。当該液シールC#では排ガスを連続的に供給する場合pHが低下するのでpH向上として間欠的または連続的に新しいアルカリ水溶液をライン4#から供給される、もしくは2段階で排出された処理液をライン22#からライン4#に接続させ再利用し供給する。また、当該液シールC#ではレベルを調整する為、間欠的または連続的にライン3#より排水を行う。
【0019】
第1段階で事前に粗い処理をした排ガスは、ライン5#より第2段階に移送される。第2段階では、第1段階からライン5#で移送された排ガスにライン6#より接続点E#よりアルカリ水溶液を噴霧し完全に中和処理を行う。完全中和した排ガスは縦型チューブ式熱交換器8#に移送され、当該熱交換器8#にて−5〜15℃、好ましくは−3〜10℃の冷媒をライン9#から供給し、ライン10#から使用済みの冷媒を回収し、熱交換器8#にて該不活性ガスを冷媒冷却しながら次工程(回収・分離工程B)が許容できる水分の露点を−5〜20℃、好ましく−3〜10℃の範囲に下げる。熱交換器8#のボトム出口には凝縮液や未使用なアルカリ水溶液がライン12#を介して受入れ液シールC#を形成する。液シールC#の液のpHが7以上、好ましく10以上になるようにライン6#よりアルカリ水溶液を供給する。ライン22#の排水液のpHが10以上であれば、図示しない循環ポンプを使って一部又は全部を再使用しても良い。液シールC#のpHはpH計19#にて測定されるが、サンプルの採取はライン14#より行われる。pH計19#を通した液はライン20#より排出される。また、pH計19#に析出物が蓄積しないようにライン21#よりpHが4〜9の洗浄水を通水する。熱交換器8#で冷却された不活性ガスは、冷却と共にアルカリの完全処理及び微粉の更なる除去が同時に行われる。また、熱交換器8#のライン11#より完全中和、露点が調節され、更に微粉の除去が行われた不活性ガスが排出され、3段階目の処理に移行する。
【0020】
第3段階では、第2段階で完全中和及び露点を調節された不活性ガスはライン11#を介してドラム15#に供給される。ドラム15#にはフィルター16#が設けており、該フィルター16#を通して50μm以上、好ましく10μm以上の粒子径の微粉及びミストの除去を行う。
第3段階でフィルター16#を通した不活性ガスは、ライン17#より分離・回収工程の条件を満たす為、分離・回収処理を行う。一方、ドラム15#に凝縮した液はライン18#により排水され、ライン12#と接続し、ライン13#より液シールC#を介してライン22#にて払い出される。
【0021】
このような処理方法は、図示しない温度・圧力・レベル等の検知センサーの検出装置などの検出結果に基づいて、図示しない制御装置の制御によって、自動的に行われるようになっている。また、ライン17#より回収・分離工程B#に不活性ガスを送る時、必要に応じて図示しない昇圧装置で昇圧すれば良い。更に、ライン17#で排出される不活性ガス中にアルカリ性物質が存在する場合、アルカリ性物質を除去する為、シリカゲル等のアルカリ性物質を吸収、吸着できるアルカリ除去装置を設けた方が好ましい。
【0022】
本発明で使われるアルカリ水溶液として、主に周期表の1族アルカリ金属、2族アルカリ土類金属の水酸化物、好ましくNaOH、KOH、Mg(OH)2である。水溶液の濃度は0.5〜50重量%、噴霧ノズル先端の詰まり防止の為、好ましくは5〜30重量%である。
第1段階及び第2段階に供給されるアルカリ水溶液は、同一化合物及び同一濃度で使われることもできる。化合物または濃度が異なっても中和処理が確実に行っていれば問題にはならない。
【0023】
脱塩、水分の露点及びミスト除去された炭化水素含有な不活性ガスは、必要に応じてアルカリ性物質が除去された不活性ガスは吸着剤層を通過させることによって、重合溶媒及び重合モノマーを除去し、所定の純度に到達した不活性ガスを、重合体製造プラントで再使用する。
【0024】
本発明の吸着剤は、ペンタン、ベンゼン、ヘキセン等の総炭素原子数3以上の炭化水素、または、排ガスもしくは汚染ガスを用いて、予めプレコート操作していないシリカゲル、合成ゼオライト、またはその両方であることが好ましい。
このように構成することによって、シリカゲルによって、重合溶媒と一部の重合モノマーを吸着することができるとともに、合成ゼオライトによって、重合モノマーを吸着することができる。
【0025】
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法は、前記吸着剤層が、
(1) シリカゲル及び合成ゼオライトから選択した少なくとも一種の吸着剤の単層からなるか、もしくは 、
(2) それら単層の同種または異種の複数層から形成されているか、または、
(3) それら単層または複数層にさらにシリカゲル及び合成ゼオライト以外の吸着剤からなる吸着剤層を組合わせた複数層、
のいずれかから形成されていることを特徴とする。
このように構成することによって、吸着剤の複数層で形成されることにより排ガス中の不純物を効率的に除去できる。
【0026】
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法は、前記吸着除去工程において、露点が−3〜10℃の水分をさらに水分100容量ppm以下まで除去することを特徴とする。
このように構成することによって、不活性ガス中の水分も除去することができるので、不活性ガスを重合体製造プラントの清浄工程における重合パウダーの清浄で再使用する際に、設備の腐食や重合活性の低下を防止することができるとともに、この不活性ガスをパージガスと使用しても、親水性吸着剤が存在していても吸着剤の性能が低下することがない。
【0027】
また、本発明では、吸着剤層が、少なくとも2種類の異なる細孔径の吸着剤層を排ガスの流れる方向に、細孔径の大きい方から小さい順に積層されていることを特徴とする。
この場合、本発明では、このような細孔径は、吸着する物質により決めることが好ましい。例えば、重合溶媒、コモノマー等の総炭素原子数が4から15の炭化水素と水分の吸着除去には、細孔径の大きいシリカゲルを適用すればよい。一方、総炭素原子数が3〜4の炭化水素等の吸着除去には、細孔径の小さいシリカゲルを適用すればよい。
さらに、本発明では、総炭素水原子数が2〜3の炭化水素の吸着除去には、合成ゼオライトを適用するのが好ましい。
【0028】
このように構成することによって、大きい細孔径(例えば、細孔径6nm)のシリカゲル層で、比較的分子量の高い重合溶媒等の炭化水素と水分が吸着除去され、続いて、小さい細孔径(例えば、細孔径3nm)のシリカゲル層で、重合モノマー等の比較的低い分子量の大部分が吸着除去され、さらに、合成ゼオライト層(例えば、細孔径が0.9から1.0nm)で、これらのシリカゲル層で吸着除去し切れなかった重合モノマー等が完全に吸着除去されることになり、これらの層を順次通過させることにより効率的に不純物を除去することができる。
【0029】
また、本発明では、シリカゲルとしては、一般的に公知のものを使用できるが、好ましくは、水分の吸着能力の小さい疎水性シリカゲルを含むのが望ましい。
すなわち、シリカゲルは、疎水化処理したものの方が、炭化水素の吸着能力が高く、水分の吸着能力の高い親水性シリカゲルのみのものよりも吸着除去装置の吸着塔を小さく設計できるので好ましい。
また、排ガス中の飽和水分を吸着除去する場合は、このような疎水化処理したシリカゲルで充分吸脱着可能であり、吸着塔を特に大型化する必要はない。さらに、必要に応じて、このような疎水性シリカゲルの上流に、親水性シリカゲル層を設けても良い。
【0030】
また、本発明において、合成ゼオライトは、シリカゲル層で吸着除去し切れなかった重合モノマーを吸着除去するものであるのが好ましく、例えば、エチレンと残りのプロピレンを除去するために、親水性合成ゼオライトであるのが望ましい。
【0031】
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法は、前記吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、減圧状態にして、吸着剤から脱着除去する脱着工程を含むことを特徴とする。
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置は、前記吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、減圧状態にして、吸着剤から脱着除去する脱着装置を備えることを特徴とする。
【0032】
このように構成することによって、吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、吸着剤から脱着除去することができるので、吸着操作をある程度の時間行うと、吸着剤に吸着された物質で細孔が満たされる結果、排ガスが処理されない状態で吸着層を通過する状態、いわゆる破過状態になるが、この破過状態を解消して、再び、吸着除去作用を有するようにすることができる。
【0033】
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法は、前記脱着工程が、前記吸着剤層を、前記吸着除去工程よりも減圧状態とすることによって、前記吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、吸着剤から脱着除去することを特徴とする。
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置は、前記脱着装置が、前記吸着剤層を、前記吸着除去装置を吸着除去の際よりも減圧状態とすることによって、前記吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、吸着剤から脱着除去するように構成されている減圧装置を備えることを特徴とする。
【0034】
このように構成することによって、減圧の作用によって、吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、吸着剤から効率良く完全に脱着除去することができる。
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法は、前記脱着工程が、前記吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、減圧状態にするとともに、前記吸着剤層にパージガスを導入することによって、前記吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、吸着剤から脱着除去することを特徴とする。
【0035】
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置は、前記脱着装置が、前記吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、減圧状態にするとともに、前記吸着剤層にパージガスを導入することによって、前記吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを、吸着剤から脱着除去するパージガス導入装置を備えることを特徴とする。
このように構成することによって、パージガスの作用によって、吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを吸着剤層から脱着する脱着作用を促進することができ、脱着効率が向上する。
【0036】
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法は、前記パージガスとして、前記吸着除去工程で、重合溶媒、重合モノマーが吸着除去され、所定の純度に到達した不活性ガスを用いることを特徴とする。
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置は、前記パージガス導入装置が、パージガスとして、前記吸着除去装置で、重合溶媒、重合モノマーが吸着除去され、所定の純度に到達した不活性ガスを用いるように構成されていることを特徴とする。
【0037】
このように構成することによって、吸着除去工程で、重合溶媒、重合モノマーが吸着除去され、所定の純度に到達した不活性ガスの一部をパージガスとして用いることができるので、新たな不活性ガス源を用いる必要がないので、効率が向上するとともに、コストが低減でき、資源節約にも貢献できる。
また、本発明では、前記パージガスとして、不活性ガスの純度が98.0%以上、且つ水分が100容量ppm以下、好ましくは、不活性ガスの純度が99.0%以上、且つ水分が50容量ppm以下である高純度の不活性ガスを用いるのが望ましい。
【0038】
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置は、前記パージガス導入装置が、パージガスとして、高純度の不活性ガスを用いるように構成されていることを特徴とする。
これにより、パージガスとして、高純度の不活性ガスを用いるので、不純物を含まないパージガスの作用によって、吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを吸着剤層から脱着する脱着作用の促進効果に優れ、脱着効率がさらに向上する。
本発明では、吸着剤層を脱着工程の減圧状態から吸着工程の運転圧力状態まで加圧する際に、上流側の排ガスを用いる場合、および/又は、下流側の所定純度に達した不活性を用いる場合がある。
【0039】
しかし、この操作は短時間で行う必要があり、大きな流量変動を伴う。また、重合体製造プラントでは、連続的に排ガスを排出し、連続的に所定純度を達した不活性ガスを再使用するので、安定運転を継続するために、流量変動は極力回避する必要がある。
従って、本発明では、脱着工程の減圧状態から吸着工程の運転圧力状態まで加圧するには、予め所定の純度に達して不活性ガス、新しい不活性ガスから選択した1種の不活性ガスを不活性ガスホルダードラムに充填した不活性ガスを使用するのが好ましい。
この場合、不活性ガスホルダードラムに充填する不活性ガスは、加圧時間の短縮を図る為、吸着工程の運転圧力よりも高く充填した方が好ましい。
【0040】
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法は、前記脱着工程において、前記吸着剤層の吸着剤から脱着除去した重合溶媒を、例えば、冷却、膜分離等の公知の回収技術で回収し、前記重合体製造プラントの重合溶媒再使用工程を介して再使用するのが好ましい。
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置は、前記脱着装置において、前記吸着剤層の吸着剤から脱着除去した重合溶媒を回収して、前記重合体製造プラントで再使用するために重合体製造プラントに還流する重合溶媒回収装置を備えているのが好ましい。
【0041】
このように構成することによって、吸着剤層の吸着剤から脱着除去した重合溶媒を回収して、重合体製造プラントで再使用することができるので、効率が向上するとともに、コストが低減でき、資源節約にも貢献できる。
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置は、前記重合溶媒回収装置で、重合溶媒を回収した脱着ガスを燃焼廃棄する排ガス燃焼装置を備えることを特徴とする。
【0042】
このように構成することによって、脱着ガスから重合溶媒を回収した後に、脱着ガス中の重合モノマーを燃焼させた後に大気中に放出するので、CO2ガスがほとんど発生せず、地球温暖化の原因となることがない。
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法は、前記重合溶媒再使用工程で重合溶媒を回収した後の脱着ガスに含まれる重合モノマーを再使用する重合モノマー再使用工程を含むことを特徴とする。
【0043】
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置は、前記重合溶媒回収装置で重合溶媒を回収した後の脱着ガスに含まれる重合モノマーを精製して再使用するために重合体製造プラントに還流する重合モノマー精製装置を備えることを特徴とする。
このように構成することによって、前記重合溶媒回収装置で重合溶媒を回収した後の脱着ガスに含まれる重合モノマーを、例えば、エチレンプラント等で回収して精製分離してから再度利用することが可能となり、重合モノマーを重合用原料として、重合体製造プラントで再使用することができるので、効率が向上するとともに、コストが低減でき、資源節約にも貢献できる。
【0044】
また、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置は、前記吸着除去装置が、少なくとも2つ備えられており、いずれかの吸着除去装置において、吸着除去操作が行われている間に、他の吸着除去装置において、脱着除去操作が行われるように構成されていることを特徴とする。
このように構成することによって、いずれかの吸着除去装置において、吸着除去操作が行われている間に、他の吸着除去装置において、脱着除去操作が行われるので、いずれかの吸着除去装置において破過状態になっても、プラントを停止することなく、他の吸着除去装置で、連続的に吸着除去操作を行うことができるので、操業効率が低下することがない。
【0045】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。図1は、前述したアルカリ中和処理プロセスの概略図を表している。
図2は、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置全体の概略図である。
図2に示したように、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置(以下、「再使用装置」と言う)は、重合体製造プラント6を対象としている。
【0046】
本発明で「重合体製造プラント」とは、例えば、ポリオレフィン製造プラントなどの重合体製造プラントを言い、主として重合、それに付随する触媒、乾燥、押出機及び塩素、炭化水素及び水分含有の不活性ガスのアルカリ中和処理などを含む重合体製造プラントを意味する。
図2に示したように、重合体製造プラント6には、排ガス導入ライン1が接続されており、重合体製造プラント6から排出される、例えば、窒素などの不活性ガスを含む排ガスを再使用装置に導入するように構成されている。そして、この排ガス導入ライン1は、分岐部10においてライン1aとライン1bとに分岐されている。
【0047】
ライン1aは、バルブ1Aを経て、第1接続部1Cを介して、不活性ガスに含有される重合溶媒、重合モノマーなどの不純物を吸着除去する吸着剤層を有する吸着塔Aに連結されている。一方、同様に、ライン1bは、バルブ1Bを経て第1'接続部1Dを介して、不活性ガスに含有される重合溶媒、重合モノマーなどの不純物を吸着除去する吸着剤層を有する吸着塔Bに連結されている。
【0048】
そして、吸着塔Aの第1接続部1Cの反対側には、第2接続部2Cが設けられている。また、同様に、吸着塔Bの第1'接続部1Dの反対側には、第2'接続部2Dが設けられている。
第2接続部2Cには、ライン2aが接続されており、バルブ2Aを介して、分岐部11に連結されている。同様に、第2'接続部2Dには、ライン2bが接続されており、バルブ2Bを介して、分岐部11に連結されている。
【0049】
そして、分岐部11には、吸着塔A、Bで吸着除去処理が行われた処理ガスを、重合体製造プラント6に戻す(還流する)ための処理ガス還流ライン2が接続されている。
さらに、ライン2からライン4aか4bに至るライン4cが接続されており、このライン4cには、流量計4Eとバルブ4Cが設置されている。また、ライン2からライン4aか4bに至るライン4dが接続されており、このライン4dには、ガスホルダー4F、バルブ4Dが配置されている。
【0050】
一方、吸着塔Aの第1接続部1C側には、第3接続部3Cが接続され、この第3接続部3Cには、ライン3aを介して、分岐部12に連結されている。同様に、吸着塔Bの第1'接続部側1Dには、第3'接続部3Dが接続され、この第3'接続部3Dには、ライン3bを介して、分岐部12に連結されている。これらのライン3aの途中には、バルブ3Aが、ライン3bの途中にはバルブ3Bがそれぞれ設けられている。
【0051】
そして、分岐部12には、ライン3を介して、吸着塔Aまたは吸着塔Bを減圧状態にするための減圧装置4、吸着剤から脱着除去した重合溶媒を回収する溶剤液化回収装置5、重合溶媒を回収した脱着ガスを燃焼廃棄する排ガス燃焼装置9に連結されている。
また、この溶剤液化回収装置5には、ライン13を介して、溶剤液化回収装置5で回収された重合溶媒を精製する溶剤精製装置14が接続されている。そして、溶剤精製装置14で精製された重合溶媒は、重合溶媒還流ライン8を介して、重合体製造プラント6に戻され(還流され)、再利用されるようになっている。一方、溶剤精製装置14で精製後の不純物は、適切な処理後、廃棄ライン7を介して廃棄されるように構成されている。
【0052】
さらに、溶剤液化回収装置5には、ライン15を介して、溶剤液化回収装置5で重合溶媒を回収した後の脱着ガスに含まれる重合モノマーを精製して再使用する重合モノマー精製装置16が接続されている。そして、重合モノマー精製装置16で精製された重合モノマーは、重合モノマー還流ライン17を介して、重合体製造プラント6に戻され(還流され)、再利用されるようになっている。
【0053】
このように構成される本発明の再使用装置を用いて、重合体製造プラントの排ガスの再使用方法について以下に説明する。
重合体製造プラント6からの例えば、窒素などの不活性ガスを含む排ガスを、図示しない制御装置の制御によって、バルブ1Aを開くことによって、排ガス導入ライン1、分岐部10、ライン1aのバルブ1Aを経て、吸着塔Aに導入される。
【0054】
この際、吸着塔Bへのバルブ1B、減圧装置4などへのバルブ3Aは、閉止した状態に制御されるようになっており、吸着塔Bへは、排ガスが導入されないようになっているとともに、排ガスが減圧装置4などへ導入されないようになっている。
このように吸着塔Aで吸着操作が行われている間、バルブ2Aは開いた状態に維持されているとともに、バルブ4Aは閉止した状態になっている。
【0055】
このように、吸着塔Aを通過する際に不純物を除去された不活性ガスは、第2接続部2Cからバルブ2A、ライン2a、分岐部11、処理ガス還流ライン2を経て、重合体製造プラント6の、例えば、乾燥工程に再び導入され、再度使用されるようになっている。
なお、この場合、図示しないが、吸着塔Aを通過する際に不純物を除去された不活性ガスは、再利用にはある程度の圧力が必要であるので、吸着塔Aに送る前のガスを図示しない昇圧装置で昇圧するか、吸着塔Aの出口の精製ガスを図示しない昇圧装置で昇圧すればよい。
【0056】
ところで、吸着操作をある程度の時間行うと、吸着剤に吸着された物質で細孔が満たされる結果、排ガスが処理されない状態で吸着層を通過する状態、いわゆる破過状態になる。
そこで、制御装置の制御に基づいて、吸着塔Aが、破過する前に、バルブ1Aを閉止した状態にするとともに、バルブ1Bおよび2Bを開いた状態にすることによって、吸着塔Aに供給されていた排ガスを、吸着塔Bに導入するよう切り替えられる。
【0057】
なお、この状態では、バルブ4B、減圧装置4などへのバルブ3Bは、閉止した状態に制御されるようになっており、排ガスが減圧装置4などへ導入されないようになっている。
そして、吸着塔Aと同様にして、吸着塔Bを通過する際に不純物を除去された不活性ガスは、第2'接続部2Dからバルブ2B、ライン2b、分岐部11、処理ガス還流ライン2を経て、重合体製造プラント6の、例えば、乾燥工程に再び導入され、再度使用されるようになっている。
【0058】
一方、バルブ3Aを開いた状態にすることによって、減圧装置4により、吸着塔Aは脱着工程が開始される。
すなわち、バルブ3Aを開いた状態にすることによって、減圧装置4によって、吸着塔Aの内部を減圧状態にする。この際、バルブ4A、4Cを開いた状態にすることによって、ライン2、流量計4E、バルブ4C、ライン4c、およびライン4aを介して、重合体製造プラントに戻される処理済みの不活性ガスの一部がパージガスとしてバルブ4Aから吸着塔Aに供給され、バルブ3Aからライン3aを介して減圧装置4に至るようになっている。この際、ライン2からライン4cを介してライン4aに流れるパージガスの流量を流量計4Eで制御することによって、所定の量のパージガスが、吸着塔Aに供給されるようになっている。
【0059】
なお、この場合、減圧装置4は、脱着操作の際にのみ作動することも可能であるが、減圧装置4を常時連続して作動させておくのが好ましい。
このような操作により吸着剤に吸着されていた重合溶媒、重合モノマーは脱着され、パージガスとともにライン3を下流に移送される。
そして、パージガスに含まれる重合溶媒は、溶剤液化回収装置5の冷却部で液化されて回収される。この溶剤液化回収装置5で回収された重合溶媒は、ライン13を介して、溶剤精製装置14で精製されて、重合溶媒還流ライン8を介して、重合体製造プラント6に戻され(還流される)、再利用されるようになっている。一方、溶剤精製装置14で精製後の不純物は、不純物の種類に応じて適切な処理後、廃棄ライン7を介して廃棄されるように構成されている。
【0060】
また、溶剤液化回収装置5で重合溶媒が回収されたパージガスは、重合モノマーを含有しているので、燃焼廃棄する排ガス燃焼装置(フレアースタック)9に移送されて、重合モノマーを燃焼させた後に大気中に放出されるようになっている。
このように溶剤液化回収装置5で重合溶媒が回収されたパージガスを、排ガス燃焼装置(フレアースタック)9に移送する代わりに、溶剤液化回収装置5で重合溶媒が回収されたパージガスを、ライン15を介して、重合モノマー精製装置16に移送してもよい。
【0061】
すなわち、重合モノマー精製装置16は、例えば、エチレンプラント等であって、溶剤液化回収装置5で重合溶媒を回収した後の脱着ガスに含まれる重合モノマーを精製して、重合モノマー還流ライン17を介して、重合体製造プラント6に戻され(還流される)、再利用されるようになっている。一方、重合モノマー精製装置16で精製後の不純物は、不純物の種類に応じて適切な処理後、廃棄ライン18を介して廃棄されるように構成されている。
【0062】
また、吸着塔Bによる吸着除去処理がある程度行われた後に、吸着塔Aと同様に、制御装置の制御によって、吸着塔Bが、破過する前に、バルブ1Bを閉止した状態にするとともに、バルブ1Aおよび2Aを開いた状態にすることによって、吸着塔Bに供給されていた排ガスを、吸着塔Aに導入するよう切り替えられる。
【0063】
この場合、吸着塔Aでは、脱着操作終了後(吸着操作直前)には吸着塔を元の圧力に昇圧(均圧工程)する必要がある。そのため、均圧工程は、バルブ4Cを閉止して、バルブ4Dを開けて、ライン4d、ライン4aを介して、吸着塔Aの上部に、重合体製造プラントに戻される処理済みの不活性ガスの一部を導入することによって行うようになっている。なお、図中、4Fは、ガスホルダードラムであって、このような均圧工程時に、ライン1と2の圧力変動を避けたい場合に設置する。
【0064】
そして、バルブ3Bを開いた状態にするとともに、減圧装置4により、吸着塔Bは吸着塔Aと同様にして脱着工程が開始される。
すなわち、バルブ3Bを開いた状態にして、減圧装置4によって、吸着塔Bの内部を減圧状態にする。この際、バルブ4B、4Cを開いた状態にすることによって、ライン2、流量計4E、バルブ4C、ライン4c、およびライン4bを介して、重合体製造プラントに戻される処理済みの不活性ガスの一部がパージガスとしてバルブ4Bから吸着塔Bに供給され、バルブ3Bからライン3bを介して減圧装置4に至るようになっている。この際、ライン2aからライン4cを介してライン4bに流れるパージガスの流量を流量計4Eで制御することによって、所定の量のパージガスが、吸着塔Bに供給されるようになっている。
【0065】
このような操作により吸着剤に吸着されていた重合溶媒、重合モノマーは脱着され、パージガスとともにライン3を下流に移送される。そして、吸着塔Aの脱着工程と同様にして、溶剤液化回収装置5での重合溶媒の液化回収、溶剤精製装置14での精製、重合体製造プラントへの還流、再利用、および、精製後の不純物の廃棄ライン7を介しての廃棄、ならびに、排ガス燃焼装置(フレアースタック)9での重合モノマーの燃焼廃棄、または、重合モノマー精製装置16による重合モノマーの精製、再利用がされるように構成されている。
【0066】
このようなサイクルが、図示しない検知センサーなどの検出装置などの検出結果に基づいて、図示しない制御装置の制御によって、自動的に行われるようになっている。
なお、本発明でいう重合体とは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリイソブテン、ポリペンテン−1、ポリメチルペンテン−1などのポリα−オレフィン;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、プロピレン含有量が75重量%未満のプロピレン/ブテン−1共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/α−オレフィン共重合体;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/α−オレフィン/ジエン系単量体共重合体;エチレン/塩化ビニル共重合体、エチレン/塩化ビニリデン共重合体、エチレン/アクリロニトリル共重合体、エチレン/メタクリロニトリル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリルアミド共重合体、エチレン/メタクリルアミド共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸金属塩共重合体、エチレン/メタクリル酸金属塩共重合体、エチレン/スチレン共重合体、エチレン/メチルスチレン共重合体、エチレン/ジビニルベンゼン共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/ビニル単量体共重合体;ポリイソブテン、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン系共重合体;スチレン/ブタジエンランダム共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体ランダム共重合体;スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体ブロック共重合体;水素化(スチレン/ブタジエンランダム共重合体)などの水素化(ビニル単量体/ジエン系単量体ランダム共重合体);水素化(スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体)などの水素化(ビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体ブロック共重合体);アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体グラフト共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチルなどのビニル重合体;塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体などのビニル系共重合体などを挙げることができる。
【0067】
また、本発明では、これらの重合体のうちでは、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン等の1種または2種以上のα- オレフィンを(共)重合した(共)重合合体等のポリオレフィン重合体製造プラントにおいて採用することができる。
上記したα- オレフィンは、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1- ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセンなどの炭素原子数2〜20のα-オレフィンが挙げられる。
これらのうちでも、エチレンと炭素原子数4〜10のα−オレフィン、またはプロピレンと炭素原子数2〜10のα-オレフィンの組合せが好ましく、エチレンと炭素原子数4〜8のα−オレフィン、またはプロピレンと炭素原子数2〜8のα- オレフィンを共重合させることが更に好ましい。
また、本発明のポリオレフィンは、エチレン又はプロピレンと2種以上のα- オレフィンとを共重合させる共重合体製造プラントにおいて採用することもできる。
【0068】
さらに、本発明では、2−ペンテン、2-ヘキセン、2-ヘプテン、2-オクテン等のβ-オレフィン及びジエン等の重合体、また異なるβ−オレフィン同士の共重合体を製造するプラントにおいて採用することができる。
この場合、ポリエチレン製造プラントにおいては、重合器に触媒とエチレンガス、必要に応じて、コモノマーであるプロピレンや1−ブテン等と、さらに必要に応じて、重合溶媒が供給され、ポリエチレンが生成される。生成された重合器から排出される重合パウダーには、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の重合モノマーおよび重合溶媒が多量に吸着されている。
【0069】
また、ポリプロピレン製造プラントにおいては、重合器に固体触媒とプロピレンガス、必要に応じて、コモノマーであるエチレンや1−ブテン等と、さらに必要に応じて、重合溶媒が供給され、ポリプロピレンが生成される。生成された重合器から排出される重合パウダーには、プロピレン、エチレン、1−ブテン等の重合モノマーおよび重合溶媒が多量に吸着されている。
【0070】
固体触媒はメタロセン担持型触媒や固体状チタン系触媒が使用される、本発明では固体状チタン系触媒が好ましい。
固体状チタン触媒は、(A)マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体状チタン触媒成分(以下「チタン触媒成分」という。)と(B)有機アルミニウム化合物とからなる。
【0071】
このような(B)有機アルミニウム化合物としては、例えば下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物を例示することができる。
a nAlX3-n … (I)
(式中、Ra は炭素数1〜12の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子又は水素原子を示し、nは1〜3である。)
このような(B)有機アルミニウム化合物として具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどが挙げられる。
【0072】
(A)チタン触媒成分は、マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とし、さらに必要に応じて電子供与体を含有している。
【0073】
このような(A)チタン触媒成分は、下記のようなマグネシウム化合物及びチタン化合物、必要に応じて電子供与体を接触させることにより調製することができる。
【0074】
(A)チタン触媒成分の調製に用いられるチタン化合物として具体的には、例えば、次式で示される4価のチタン化合物が挙げられる。
Ti(OR)X4-n(式中、Rは炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、nは0≦n≦4である)
このようなチタン化合物として、具体的には、TiCl4 、TiBr4 、TiI4 などのテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH3)Cl3 、Ti(OC25)Cl3 、Ti(O-n-C49)Cl3 、Ti(OC25)Br3 、Ti(O-iso-C49)Br3 などのトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH3)2 Cl2 、Ti(OC25)2Cl2 、Ti(O-n-C49)2Cl2、Ti(OC25)2Br2 などのジハロゲン化ジアルコキシチタン;Ti(OCH3)3Cl、Ti(OC25)3Cl、Ti(O-n-C49)3Cl、Ti(OC25)3Br などのモノハロゲン化トリアルコキシチタン;Ti(OCH3)4 、Ti(OC25)4 、Ti(O-n-C49)4 、Ti(O-iso-C49)4 、Ti(O-2-エチルヘキシル)4 などのテトラアルコキシチタンなどを例示することができる。
【0075】
これらの中ではハロゲン含有チタン化合物が好ましく、さらにテトラハロゲン化チタンが好ましく、特に四塩化チタンが好ましい。これらチタン化合物は1種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。さらにこれらのチタン化合物は、炭化水素化合物又はハロゲン化炭化水素化合物などに希釈されていてもよい。
【0076】
チタン触媒成分(A)の調製に用いられるマグネシウム化合物としては、還元性を有するマグネシウム化合物及び還元性を有しないマグネシウム化合物が挙げられる。
【0077】
ここで還元性を有するマグネシウム化合物としては、例えばマグネシウム−炭素結合又はマグネシウム−水素結合を有するマグネシウム化合物が挙げられる。このような還元性を有するマグネシウム化合物の具体的な例としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジアミルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジデシルマグネシウム、エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウム、ブチル塩化マグネシウム、ヘキシル塩化マグネシウム、アミル塩化マグネシウム、ブチルエトキシマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、ブチルマグネシウムハイドライドなどが挙げられる。これらマグネシウム化合物は、単独で用いることもできるし、後述するような有機金属化合物と錯化合物を形成しているものを用いてもよい。また、これらマグネシウム化合物は、液体であってもよく、固体であってもよいし、金属マグネシウムと対応する化合物とを反応させることで誘導してもよい。さらに触媒調製中に上記の方法を用いて金属マグネシウムから誘導することもできる。
【0078】
還元性を有しないマグネシウム化合物の具体的な例としては、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、フッ化マグネシウムなどのハロゲン化マグネシウム;メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、イソプロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム、オクトキシ塩化マグネシウムなどのアルコキシマグネシウムハライド;フェノキシ塩化マグネシウム、メチルフェノキシ塩化マグネシウムなどのアリロキシマグネシウムハライド;エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、n-オクトキシマグネシウム、2-エチルヘキソキシマグネシウムなどのアルコキシマグネシウム;フェノキシマグネシウム、ジメチルフェノキシマグネシウムなどのアリロキシマグネシウム;ラウリン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウムなどのマグネシウムのカルボン酸塩などを例示することができる。
【0079】
これら還元性を有しないマグネシウム化合物は、上述した還元性を有するマグネシウム化合物から誘導した化合物又は触媒成分の調製時に誘導した化合物であってもよい。
【0080】
還元性を有しないマグネシウム化合物を、還元性を有するマグネシウム化合物から誘導するには、例えば還元性を有するマグネシウム化合物を、ハロゲン、ハロゲン含有有機ケイ素化合物、ハロゲン含有アルミニウム化合物などのハロゲン化合物、アルコール、エステル、ケトン、アルデヒドなどの活性な炭素−酸素結合を有する化合物、ポリシロキサン化合物と接触させればよい。
【0081】
また、マグネシウム化合物は上記の還元性を有するマグネシウム化合物及び還元性を有しないマグネシウム化合物の外に、上記のマグネシウム化合物と他の金属との錯化合物、複化合物又は他の金属化合物との混合物であってもよい。さらに、上記の化合物を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0082】
チタン触媒成分(A)の調製に用いられるマグネシウム化合物としては、上述した以外にも多くのマグネシウム化合物が使用できるが、最終的に得られるチタン触媒成分(A)中において、ハロゲン含有マグネシウム化合物の形をとることが好ましく、従ってハロゲンを含まないマグネシウム化合物を用いる場合には、調製の途中でハロゲン含有化合物と接触反応させることが好ましい。
【0083】
上述したマグネシウム化合物の中では、還元性を有しないマグネシウム化合物が好ましく、ハロゲン含有マグネシウム化合物がさらに好ましく、塩化マグネシウム、アルコキシ塩化マグネシウム、アリロキシ塩化マグネシウムが特に好ましい。
【0084】
チタン触媒成分(A)の調製には、電子供与体を用いることが好ましく、電子供与体としては、アルコール類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸、酸ハライド類、有機酸又は無機酸のエステル類、エーテル類、酸アミド類、酸無水物、アンモニア、アミン類、ニトリル類、イソシアネート、含窒素環状化合物、含酸素環状化合物などが挙げられる。より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、オクタデシルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、クミルアルコール、イソプロピルアルコール、イソプロピルベンジルアルコールなどの炭素原子数が1〜18のアルコール類;トリクロロメタノール、トリクロロエタノール、トリクロロヘキサノールなどの炭素原子数が1〜18のハロゲン含有アルコール類;フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ノニルフェノール、クミルフェノール、ナフトールなどの低級アルキル基を有してもよい炭素原子数が6〜20のフェノール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾキノンなどの炭素原子数が3〜15のケトン類;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、ナフトアルデヒドなどの炭素原子数が2〜15のアルデヒド類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、吉草酸エチル、クロル酢酸メチル、ジクロル酢酸エチル、メタクリル酸メチル、クロトン酸エチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、安息香酸ベンジル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、トルイル酸アミル、エチル安息香酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、エトキシ安息香酸エチル、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、クマリン、フタリド、炭酸エチルなどの炭素原子数が2〜30の有機酸エステル類;アセチルクロリド、ベンゾイルクロリド、トルイル酸クロリド、アニス酸クロリドなどの炭素原子数が2〜15の酸ハライド類;メチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール、ジフェニルエーテルなどの炭素原子数が2〜20のエーテル類;酢酸N,N-ジメチルアミド、安息香酸N,N-ジエチルアミド、トルイル酸N,N-ジメチルアミドなどの酸アミド類;メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリベンジルアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアミン類;アセトニトリル、ベンゾニトリル、トリニトリルなどのニトリル類;無水酢酸、無水フタル酸、無水安息香酸などの酸無水物;ピロール、メチルピロール、ジメチルピロールなどのピロール類;ピロリン;ピロリジン;インドール;ピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ジメチルピリジン、エチルメチルピリジン、トリメチルピリジン、フェニルピリジン、ベンジルピリジン、塩化ピリジンなどのピリジン類;ピペリジン類、キノリン類、イソキノリン類などの含窒素環状化合物;テトラヒドロフラン、1,4-シネオール、1,8-シネオール、ピノールフラン、メチルフラン、ジメチルフラン、ジフェニルフラン、ベンゾフラン、クマラン、フタラン、テトラヒドロピラン、ピラン、ジテドロピランなどの含酸素環状化合物などが挙げられる。
【0085】
有機酸エステルとしては、下記一般式で示される骨格を有する多価カルボン酸エステルを特に好ましい例として挙げることができる。
【0086】
【化1】
Figure 0004033816
【0087】
上記式中、R11は置換又は非置換の炭化水素基を示し、R12、R15、R16は、水素原子又は置換もしくは非置換の炭化水素基を示し、R13、R14は水素原子又は置換もしくは非置換の炭化水素基を示し、好ましくはその少なくとも一方が置換又は非置換の炭化水素基である。またR13とR14とは互いに連結されて環状構造を形成していてもよい。炭化水素基R11〜R16が置換されている場合の置換基は、N、O、Sなどの異原子を含み、例えば、C−O−C、COOR、COOH、OH、SO3H、−C−N−C−、NH2 などの基を有する。
【0088】
このような多価カルボン酸エステルとしては、具体的には、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、メチルコハク酸ジエチル、α-メチルグルタル酸ジイソブチル、メチルマロン酸ジエチル、エチルマロン酸ジエチル、イソプロピルマロン酸ジエチル、ブチルマロン酸ジエチル、フェニルマロン酸ジエチル、ジエチルマロン酸ジエチル、ジブチルマロン酸ジエチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸ジブチル、ブチルマレイン酸ジブチル、ブチルマレイン酸ジエチル、β-メチルグルタル酸ジイソプロピル、エチルコハク酸ジアルリル、フマル酸ジ-2-エチルヘキシル、イタコン酸ジエチル、シトラコン酸ジオクチルなどの脂肪族ポリカルボン酸エステル;1,2-シクロヘキサンカルボン酸ジエチル、1,2-シクロヘキサンカルボン酸ジイソブチル、テトラヒドロフタル酸ジエチル、ナジック酸ジエチルなどの脂環族ポリカルボン酸エステル;フタル酸モノエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸メチルエチル、フタル酸モノイソブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸エチルイソブチル、フタル酸ジn-プロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジn-ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジn-ヘプチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジn-オクチル、フタル酸ジネオペンチル、フタル酸ジデシル、フタル酸ベンジルブチル、フタル酸ジフェニル、ナフタリンジカルボン酸ジエチル、ナフタリンジカルボン酸ジブチル、トリメリット酸トリエチル、トリメリット酸ジブチルなどの芳香族ポリカルボン酸エステル;3,4-フランジカルボン酸などの異節環ポリカルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0089】
また多価カルボン酸エステルの他の例として、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジn-ブチル、セバシン酸ジn-オクチル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシルなどの長鎖ジカルボン酸のエステルなどが挙げられる。
【0090】
チタン系触媒成分(A)の調製には、さらに電子供与体として、下記一般式(II-1〜II-3)で表される有機ケイ素化合物、下記一般式(III)で表されるポリエーテル化合物などを用いることもできる。
【0091】
p n−Si−(ORq4-n … (II-1)
(式中、nは1、2又は3であり、nが1のとき、Rpは2級又は3級の炭化水素基を示し、nが2又は3のとき、Rpの少なくとも1つは2級又は3級の炭化水素基を示し、他は炭化水素基を示し、複数のRpは同一であっても異なっていてもよく、Rqは炭素数1〜4の炭化水素基であって、4−nが2又は3であるとき、Rqは互いに同一でも異なっていてもよい。)
この式(II-1)で示される有機ケイ素化合物において、2級又は3級の炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、置換基を有するこれらの基又はSiに隣接する炭素が2級又は3級である炭化水素基が挙げられる。
【0092】
これらのうち、ジメトキシシラン類、特に下記一般式(II-2)で示されるジメトキシシラン類が好ましい。
【0093】
【化2】
Figure 0004033816
(式中、Rp及びRsは、それぞれ独立に、シクロペンチル基、置換シクロペンチル基、シクロペンテニル基、置換シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、又はSiに隣接する炭素が2級炭素又は3級炭素である炭化水素基を示す。)
前記一般式(II-2)で表される有機ケイ素化合物として具体的には、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジ-t-ブチルジメトキシシラン、ジ(2-メチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(3-メチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ-t-アミルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0094】
有機ケイ素化合物としては、下記一般式(II-3)で表される有機ケイ素化合物を用いることもできる。
n−Si−(OR')4-n … (II-3)
(式中、R及びR' は、アルキル基、アリール基、アルキリデン基などの炭化水素基であり、0<n<4である。)
このような一般式(II-3)で示される有機ケイ素化合物として具体的には、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジn-プロピルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0095】
さらに前記一般式(II-3)で示される有機ケイ素化合物に類似する化合物として、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、クロルトリエトキシシラン、ケイ酸エチル、ケイ酸ブチル、ビニルトリス(β−メトキシエトキシシラン)、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルテトラエトキシシロキサンなども挙げられる。
【0096】
なお前記一般式(II-3)で示される有機ケイ素化合物には、前記一般式(II-1)で示される有機ケイ素化合物が含まれる場合がある。前記有機ケイ素化合物は、1種単独で又は2種以上組合わせて用いることができる。
【0097】
ポリエーテル化合物としては、例えば下記一般式(III)で示される化合物が挙げられる。
【0098】
【化3】
Figure 0004033816
【0099】
式中、nは2≦n≦10の整数であり、R1〜R26は炭素、水素、酸素、ハロゲン、窒素、硫黄、リン、ホウ素及びケイ素から選択される少なくとも1種の元素を有する置換基を示し、任意のR1〜R26、好ましくはR1 〜R2nは共同してベンゼン環以外の環を形成していてもよく、主鎖中に炭素原子以外の原子が含まれていてもよい。
【0100】
上記のようなポリエーテル化合物としては、1,3-ジエーテル類が好ましく用いられ、特に、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジシクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,3-ジメトキシプロパン、9,9-ジメトキシメチルフルオレンが好ましく用いられる。
【0101】
これらの電子供与体は、1種単独で又は2種以上組み合せて用いられる。
【0102】
チタン触媒成分(A)は、上記したようなチタン化合物及びマグネシウム化合物、必要に応じて電子供与体を接触させることにより製造することができ、公知の方法を含むあらゆる方法により製造することができる。なお上記の成分は、例えばケイ素、リン、アルミニウムなどの他の反応試剤の存在下に接触させてもよい。
【0103】
これらチタン触媒成分(A)の具体的な製造方法を数例挙げて以下に簡単に述べる。なお以下に説明するチタン触媒成分(A)の製造方法では、電子供与体を用いる例について述べるが、この電子供与体は必ずしも用いなくてもよい。
(1) マグネシウム化合物、電子供与体及び炭化水素溶媒からなる溶液を、有機金属化合物と接触反応させて固体を析出させた後、又は析出させながらチタン化合物と接触反応させる方法。
(2) マグネシウム化合物と電子供与体からなる錯体を有機金属化合物と接触、反応させた後、チタン化合物を接触反応させる方法。
(3) 無機担体と有機マグネシウム化合物との接触物に、チタン化合物及び好ましくは電子供与体を接触反応させる方法。この際、あらかじめ該接触物をハロゲン含有化合物及び/又は有機金属化合物と接触反応させてもよい。
(4) マグネシウム化合物、電子供与体、場合によっては更に炭化水素溶媒を含む溶液と無機又は有機担体との混合物から、マグネシウム化合物の担持された無機又は有機担体を得、次いでチタン化合物を接触させる方法。
(5) マグネシウム化合物、チタン化合物、電子供与体、場合によっては更に炭化水素溶媒を含む溶液と無機又は有機担体との接触により、マグネシウム、チタンの担持された固体状チタン触媒成分を得る方法。
【0104】
(6) 液状状態の有機マグネシウム化合物をハロゲン含有チタン化合物と接触反応させる方法。このとき電子供与体を1回は用いる。
(7) 液状状態の有機マグネシウム化合物をハロゲン含有化合物と接触反応後、チタン化合物を接触させる方法。このとき電子供与体を1回は用いる。
(8) アルコキシ基含有マグネシウム化合物をハロゲン含有チタン化合物と接触反応する方法。このとき電子供与体を1回は用いる。
(9) アルコキシ基含有マグネシウム化合物及び電子供与体からなる錯体をチタン化合物と接触反応する方法。
(10)アルコキシ基含有マグネシウム化合物及び電子供与体からなる錯体を有機金属化合物と接触後チタン化合物と接触反応させる方法。
【0105】
(11)マグネシウム化合物と、電子供与体と、チタン化合物とを任意の順序で接触、反応させる方法。この反応は、各成分を電子供与体及び/又は有機金属化合物やハロゲン含有ケイ素化合物などの反応助剤で予備処理してもよい。なお、この方法においては、上記電子供与体を少なくとも一回は用いることが好ましい。
(12)還元能を有しない液状のマグネシウム化合物と液状チタン化合物とを、好ましくは電子供与体の存在下で反応させて固体状のマグネシウム・チタン複合体を析出させる方法。
(13) (12)で得られた反応生成物に、チタン化合物をさらに反応させる方法。
(14) (11)又は(12)で得られる反応生成物に、電子供与体及びチタン化合物をさらに反応させる方法。
【0106】
(15)マグネシウム化合物と好ましくは電子供与体と、チタン化合物とを粉砕して得られた固体状物を、ハロゲン、ハロゲン化合物及び芳香族炭化水素のいずれかで処理する方法。なお、この方法においては、マグネシウム化合物のみを、又はマグネシウム化合物と電子供与体とからなる錯化合物を、又はマグネシウム化合物とチタン化合物を粉砕する工程を含んでもよい。また、粉砕後に反応助剤で予備処理し、次いでハロゲンなどで処理してもよい。反応助剤としては、有機金属化合物又はハロゲン含有ケイ素化合物などが挙げられる。
(16)マグネシウム化合物を粉砕した後、チタン化合物と接触・反応させる方法。この際、粉砕時及び/又は接触・反応時に電子供与体や、反応助剤を用いることが好ましい。
(17)上記(11)〜(16)で得られる化合物をハロゲン又はハロゲン化合物又は芳香族炭化水素で処理する方法。
【0107】
(18)金属酸化物、有機マグネシウム及びハロゲン含有化合物との接触反応物を、好ましくは電子供与体及びチタン化合物と接触させる方法。
(19)有機酸のマグネシウム塩、アルコキシマグネシウム、アリーロキシマグネシウムなどのマグネシウム化合物を、チタン化合物及び/又はハロゲン含有炭化水素及び好ましくは電子供与体と反応させる方法。
(20)マグネシウム化合物とアルコキシチタンとを少なくとも含む炭化水素溶液と、チタン化合物及び/又は電子供与体とを接触させる方法。この際ハロゲン含有ケイ素化合物などのハロゲン含有化合物を共存させることが好ましい。
(21)還元能を有しない液状状態のマグネシウム化合物と有機金属化合物とを反応させて固体状のマグネシウム・金属(アルミニウム)複合体を析出させ、次いで、電子供与体及びチタン化合物を反応させる方法。
【0108】
チタン触媒成分(A)を調製する際に用いられる上記各成分の使用量は、調製方法によって異なり一概に規定できないが、例えばマグネシウム化合物1モル当り、電子供与体は0.01〜20モル、好ましくは0.1〜10モルの量で用いられ、チタン化合物は0.01〜1000モル、好ましくは0.1〜200モルの量で用いられる。
【0109】
このようにして得られるチタン触媒成分(A)は、マグネシウム、チタン、ハロゲンを必須成分とし、必要に応じて電子供与体を含有している。このチタン触媒成分(A)において、ハロゲン/チタン(原子比)は約2〜200、好ましくは約4〜100であり、前記電子供与体/チタン(モル比)は約0.01〜100、好ましくは約0.2〜10であり、マグネシウム/チタン(原子比)は約1〜100、好ましくは約2〜50であることが望ましい。
【0110】
上記のような固体状のチタン系触媒を用いて、オレフィンの重合を行うに際して、チタン触媒成分(A)は、反応容積1リットル当り、チタン原子に換算して通常10-8〜10-3モル、好ましくは10-7〜10-4モルとなるような量で用いられる。有機アルミニウム化合物(B)は、成分(B)と、成分(A)中のチタン原子(Ti)とのモル比〔(B)/Ti〕が、通常0.01〜5000、好ましくは0.05〜2000となるような量で用いられる。また、プロピレンを重合する際、立体規則性を上げる目的として電子供与体を通常0.01〜500のモル比で用いられる。
【0111】
固体状のチタン系触媒にはオレフィンが予備重合されていてもよい。予備重合で生成するオレフィン重合体は、チタン触媒成分1g当り、0.1〜500g、好ましくは0.3〜300g、特に好ましくは1〜100gの量で担持されていることが望ましい。予備重合は、不活性炭化水素媒体にオレフィン及び上記の触媒成分を加え、温和な条件下に行うことが好ましい。予備重合に用いられる不活性炭化水素溶媒としては、前記担体担持型メタロセン系触媒を調製する際に用いられる不活性炭化水素溶媒と同様のものが挙げられる。
【0112】
重合固体状のチタン系触媒を用いたオレフィンの重合は、スラリー、液相及び気相により行われる。
【0113】
スラリ重合方法、溶液重合方法及び気相重合方法を実施する際には、オレフィンの重合温度は、通常0〜120℃、好ましくは20〜100℃の範囲であることが望ましい。また、重合圧力は、通常、常圧〜10MPaG、好ましくは常圧〜50MPaGの条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。
【0114】
また、本発明における重合溶媒とは、重合体、特にポリオレフィン重合において使用される、または触媒を供給するために使用される溶媒で、例えば、プロパン、n−ブタン、プロピレン、nーヘプタン、i−ヘプタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−オクタン、i−オクタン、n−デカン、i−デカン等を挙げることができる。
また、本発明で用いる不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。
【0115】
このため、ポリオレフィン製造プラントでは、重合工程に引き続く乾燥工程で重合パウダーから重合モノマー、重合溶媒等の不純物を除去する必要がある。
すなわち、これらの不純物を除去するには、通常、温度が常温〜150℃、好ましくは50〜120℃に加熱された不活性ガスに水蒸気を用いて、好ましくは、重合パウダーの充填されたサイロで一定時間流すか、または移送される重合パウダーに対して向流的に該加熱及び水蒸気を加えられた不活性ガスを流す等の方法により行われる。
【0116】
このように乾燥工程で使用され、排出される不活性ガスには、固体触媒と水蒸気が接触して発生した腐食性の塩素、乾燥工程で除去された重合モノマー及び重合溶媒等及び乾燥効率の向上を目的として使われた水蒸気の水分が含まれている。
従って、本発明では、排出される不活性ガスを事前にアルカリ中和処理を行った後に吸着除去処理することにより、これらの塩素、重合モノマー、重合溶媒等及び水分を除去する。吸着除去処理は、吸着塔に吸着剤が充填された吸着層を通過させることにより行う。
【0117】
本発明における吸着剤とは、シリカゲル、アルミナ、モンモリロナイト、活性炭、合成ゼオライト等の直径が0.5〜100nmの細孔を0.1cc/g以上有する粉末または粒子をいう。
これらの吸着剤のうち、合成ゼオライトとシリカゲルとを好ましく使用することができる。シリカゲルの細孔径は、1〜20nm、好ましくは、3〜6nmであり、合成ゼオライトの細孔径は、0.3〜5nm、好ましくは、0.5〜1.5nmである。これらの吸着剤を組み合わせて使用することが好ましい。
【0118】
この場合、吸着剤としては、炭化水素によるプレコート操作をしていない吸着剤、例えば、ペンタン、ベンゼン、ヘキセン等の総炭素原子数3以上の炭化水素、または、排ガスもしくは汚染ガスを用いて、予めプレコート操作していないものを用いるのが好ましい。
すなわち、炭化水素によるプレコート操作をしていない吸着剤を用いることによって、予め吸着剤にガス状炭化水素を破過するまで吸着させる必要がなく、吸着剤の操作性が良好で、寿命が長く重合体製造プラントのような大型製造プラントや、24時間連続運転に適している。また、吸着性能が低下することもなく、予めプレコートした炭化水素などを減圧脱着するために、例えば、加熱脱着の装置の追加や操作も不要であり、経済的である。
【0119】
本発明では、吸着塔Aの吸着層は、例えば、少なくとも2種類の異なる細孔径の吸着剤層を排ガスの流れる方向に、細孔径の大きい方から小さい方の順に積層される。
この場合、このような細孔径は、吸着する物質により決めることが好ましい。例えば、重合溶媒等の総炭素原子数が4から15の炭化水素と水分の吸着除去には、細孔径の大きいシリカゲル(例えば、細孔径6nm)を適用すればよい。
一方、重合モノマー等の総炭素原子数が3〜4の炭化水素の吸着除去には、細孔径の小さいシリカゲル(例えば、細孔径3nm)を適用すればよい。
さらに、重合モノマー等の総炭素水原子数が2〜3の炭化水素の吸着除去には、合成ゼオライトを適用するのが好ましい。
【0120】
この場合、このような吸着剤層が、
(1) シリカゲル及び合成ゼオライトから選択した少なくとも一種の吸着剤の単層からなるか、もしくは 、
(2) それら単層の同種または異種の複数層から形成されているか、または、
(3) それら単層または複数層にさらにシリカゲル及び合成ゼオライト以外の吸着剤からなる吸着剤層を 組合わせた複数層、
のいずれかから形成されているのが望ましく、排ガス中の不純物を効率的に除去できる。
【0121】
この場合、シリカゲルの大きい細孔径としては、3〜10nm、好ましくは、4〜8nm、シリカゲルの小さい細孔径としては、1〜5nm、好ましくは、2〜4nmとするのが望ましい。
この場合、細孔径の小さいシリカゲルを適用した場合には、吸着剤の寿命及び性能を向上するために、総炭素水原子数が4から15の炭化水素の濃度及び水分含有量をそれぞれ、500容量ppm以下にする必要があり、好ましくは、200容量ppm以下とするのが望ましい。
また、総炭素水原子数が4から15の炭化水素の濃度及び水分含有量が前記許容量を超える排ガスを処理するには、上記の細孔径の小さいシリカゲル層の上流に、細孔径の大きいシリカゲル層を積層して許容濃度まで下げるのが望ましい。
また、本発明では、シリカゲルとしては、親水性シリカゲル、疎水性シリカゲル、これらの両方を含むことができる。
【0122】
ただし、シリカゲルは、疎水化処理したものの方が、炭化水素の吸着能力が高く、親水性シリカゲルのみのものよりも吸着除去装置の吸着塔を小さく設計できるので好ましい。このような疎水化処理としては、シリカゲル表面水酸基のアルキル化が挙げられる。
なお、排ガス中の飽和水分を吸着除去する場合は、このような疎水化処理したシリカゲルで充分吸脱着可能であり、吸着塔を特に大型化する必要はない。また、必要に応じて、このような疎水性シリカゲルの上流に親水性シリカゲル層を設けても良い。
【0123】
なお、親水性シリカゲル、疎水性シリカゲルの両者を含む場合には、経済性と所望の吸着性能を考慮して、最適ブレンド量を算出して決定すればよい。
また、本発明では、合成ゼオライトとしては、親水性、疎水性、その両者のいずれも使用できるが、親水性合成ゼオライトであるのが好ましい。
すなわち、合成ゼオライトは、シリカゲル層で吸着除去し切れなかった重合モノマー、例えば、エチレンと残りのプロピレンを除去するために、親水性合成ゼオライトであるのが望ましい。」
【0124】
また、合成ゼオライトを適用した場合、吸着剤の寿命及び性能を向上するために、総炭素水原子数が4から15の炭化水素の濃度及び水分含有量をそれぞれ、300容量ppm以下とする必要があり、好ましくは、150容量ppm以下とするのが望ましい。
また、総炭素水原子数3の炭化水素の濃度は、5000容量ppm以下とする必要があり、好ましくは、2000容量ppm以下とするのが望ましい。
さらに、総炭素水原子数が3から15の炭化水素の濃度及び水分含有量が、前記許容量を超える排ガスを処理するには、合成ゼオライト層の上流にシリカゲル層を積層し許容濃度まで下げるのが望ましい。
【0125】
なお、親水性合成ゼオライト、疎水性合成ゼオライトの両者を含む場合には、経済性と所望の吸着性能を考慮して、これらの吸着剤の各々の最適充填量を算出して決定すればよい。
この場合、本発明における疎水性シリカゲルとしては、例えば、富士シリシア(株)で製造されている商品名「CARIACT Q−6」等を疎水化処理したシリカゲルを挙げることができる。本発明における疎水化シリカゲルとしては、例えば、富士シリシア(株)で製造されている商品名「CARIACT Q−3」等を疎水化処理したシリカゲルが挙げることができる。
【0126】
本発明における合成ゼオライトとしては、例えば、東ソー(株)のX型ゼオライト、商品名「ゼオラムF9」、またはAl成分を減少させた合成ゼオライトハイシリカゼオライト Y型(HSZ−360)等を挙げることができる。
また、吸着塔A、Bでは、これらの異なった吸着剤層を層状に順次設けることが好ましい。また、2つ以上の吸着塔を直列して設け、上記した吸着剤をそれぞれの吸着塔に充填したものを用いることも可能である。
【0127】
さらに、吸着塔としては、図2に示したたように、A、B二つの吸着塔を並列して設けてもよいが、3つ以上の吸着塔を並列して設けて、いずれかの吸着塔において、吸着除去操作が行われている間に、他の吸着塔において、脱着除去操作が行われるようにすれば、いずれかの吸着塔において破過状態になっても、プラントを停止することなく、他の吸着塔で、連続的に吸着除去操作を行うことができるので、操業効率が低下することがない。
【0128】
また、各吸着層の厚さは、下流側の吸着剤層への影響を極力小さくするため、上流側の吸着剤から流れる排ガスの純度は、許容濃度以下である必要がある。また、各吸着層の充填量は、排ガスの通過速度にも関係するが、主としてガスの組成と吸着剤との接触時間によって決まるが、好ましくは、吸脱着可能容量(吸着物質/吸着剤の重量比)を、0.05〜10重量%、特に好ましくは、0.1〜5重量%とすることが望ましく、この範囲において、圧力損失が少なく、かつ吸着時間を長くとることができるため、工業的に有利である。
【0129】
排ガスの吸着塔内での通過速度は、通常3〜20cm/秒、好ましくは5〜15cm/秒とすると吸着処理がスムースに行え、かつ圧力損失が小さいため、好ましい。
上記吸着層を通過させることにより不活性ガスの純度を98%以上、特に99%以上とすることができる。このように不純物を除去したガスは、例えば、重合体製造プラントの乾燥工程に戻して重合パウダーの乾燥に再使用することができる。
【0130】
また、吸着剤に吸着された不純物は脱着操作により脱着する。吸着剤から脱着する操作としては、好ましくは、吸着剤を減圧状態にするとともにパージガスを吸着剤層に流すことにより行うことができる。減圧度は13.3kPa以下、特に6.6kPa以下とすることが好ましい。
さらに、脱着操作は、例えば、吸着操作を高圧で行って、脱着操作を常圧で行うことも可能である。
【0131】
従って、脱着操作が、吸着操作よりも減圧状態として行えばよく、この減圧度としては、吸着時圧力(Pa)と脱着時圧力(Pd)との関係が、脱着時圧力が、Pa/Pd=10〜35、好ましく25〜35の減圧度となるように減圧状態として行えばよい。
また、パージガスとして、上述の重合体製造プラントから排出された不活性ガスを、吸着除去処理した後のガスの一部、または高純度不活性ガス、またはこれらの両方を用いることが好ましい。
【0132】
この場合、吸着除去処理したガスの一部を用いる場合は、全吸着除去処理ガスの1〜10容量%、特に2〜8容量%をパージガスとして用いることが好ましい。
さらに、脱着された主として重合溶媒、重合モノマー及び水からなる不純物のうち、重合溶媒は冷却液化して回収する。冷却液化して回収した重合溶媒は、蒸留工程を介して、好ましくは重合溶媒として再使用する。
【0133】
以上、本発明の好ましい実施の形態について、説明したが、本発明は何らこれに限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々変更することが可能であることはもちろんである。
【0134】
【実施例】
【0135】
〔実施例1〕
ポリプロピレン重合体製造プラントの乾燥工程から排出される、温度=60℃、圧力=2kPaG、塩素=10容量ppm、プロピレン(C3)=3.4容量%、エチレン(C2)=0.2容量%、重合溶媒であるn−ヘキサン(C6)=3.6容量%、および水分=0.8容量%含む窒素ガスを、図2に示したような、内径Φ200mm、高さ700mmの吸着塔に、50l/分で供給した。
【0136】
アルカリ中和処理には、図1に示したような設備を用いて、第1段階のドラム内のpHが9になるように25重量%の苛性ソーダ水溶液を供給した。第2段階は、液シールのpHが10〜12になるように25重量%の苛性ソーダ水溶液を供給し、0℃の冷媒を熱交換器に流し、冷却された不活性ガスは10℃になるように冷媒の流量を調節した。第3段階では10μmの液滴が100%捕集できるフィルターを使用した。第3段階の処理を終えた不活性ガスは昇圧装置にて20kPaGまで昇圧した。
【0137】
吸着塔には、炭化水素によるプレコート操作をしていない吸着剤として、不活性ガスな流れる順序に疎水性シリカゲル(富士シリシア製、商品名「Q−6」、球状#10〜#20メッシュ)層=5.1Kg、疎水性シリカゲル層(富士シリシア製、商品名「Q−3」、球状#5〜#10メッシュ)=11.0Kg及び合成ゼオライト(東ソー製、商品名「F9」)=2Kgの3層からなる吸着剤を充填した。
吸着、脱着はそれぞれ10分間のサイクルで切り替えた。脱着には吸着除去を終えた不活性ガス(吸着塔出口)の6容量%を脱着工程のパージガスとして供給した。真空ポンプにより吸着塔を減圧状態とし、減圧度は3.3kPaであった。真空ポンプ吐出側にはクーラーを設置し、脱着ガスを10℃まで冷却し、溶媒を回収した。重合モノマーはフレアーにて燃焼後、大気放出した。
【0138】
実施例1の条件にて、第1段階出口の不活性ガス中の塩素濃度は0.7容量ppm、第3段階ではアルカリ中和処理を終えた不活性ガスには0.05容量ppm以下の塩素、また、300リットルのガスを1時間、常温にて吸収液(pH=7、蒸留水)を通した後に吸収液のpHを測定したら7であり、ガスは完全中和されていた。中和した不活性ガスを吸着除去工程の吸着剤を通過させ、表1に示す結果となった。
疎水性シリカゲル(Q−6、Q−3)及び合成ゼオライト(F−9)をプレコート操作せず、且つQ−6、Q−3出口の炭化水素濃度を低く抑えることで連続として365日以上窒素純度を許容レベルに抑えることができた。クーラーにてヘキサンの回収率も80%以上であった。
【0139】
〔比較例1〕
実施例1のアルカリ中和処理の苛性ソーダ添加を行わない以外は実施例1と同じ条件で評価した。
【0140】
1ヶ月間は、所定の許容レベルの窒素純度とヘキサンの回収率=80%以上は確保できたが、真空ポンプ及びクーラーに腐食が発生し連続運転が不能となった。
【0141】
以上の結果より本発明の効果は明らかである。
【0142】
【発明の効果】
本発明によれば、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン重合体製造プラントなどの重合体製造プラントから排出される不活性ガスを事前にアルカリ中和及び露点調整処理を行った後に吸着剤層に該不活性を通過させることによって、不活性ガスに含有される残り水分、重合溶媒及び重合モノマーを吸着除去することができる。そして、水分、重合溶媒及び重合モノマーが吸着除去され、所定の純度に到達した不活性ガスを、重合体製造プラントで再使用することができる。
【0143】
従って、従来のように、不活性ガスに含まれる重合溶媒や重合モノマーを直接大気放出または燃焼させた後、燃焼ガス、不活性ガスなどを大気に放出することがないので炭化水素の直接大気放出による光化学スモークや炭化水素及びCO2ガスによる地球温暖化などを防止することができる。
しかも、不活性ガスを再び重合体製造プラントで再使用することができるので、資源の有効利用が図れ、省エネルギーの点からも極めて有効である。
また、本発明によれば、腐食性な塩素が除去されている為、腐食による問題がなく、また炭化水素によるプレコート操作をしていない吸着剤を用いることによって、予め吸着剤にガス状炭化水素を破過するまで吸着させる必要がなく、吸着剤の操作性が良好で、寿命が長く重合体製造プラントのような大型製造プラントや、24時間連続運転に適している。また、吸着性能が低下することもなく、予めプレコートした炭化水素などを減圧脱着するために、例えば、加熱脱着の装置の追加や操作も不要であり、経済的である。
【0144】
【表1】
Figure 0004033816
【0145】
また、本発明によれば、吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒、重合モノマーを吸着剤から脱着除去することができるので、吸着操作をある程度の時間行うと、吸着剤に吸着された物質で細孔が満たされる結果、排ガスが処理されない状態で吸着層を通過する状態、いわゆる破過状態になるが、この破過状態を解消して、再び、吸着除去作用を有するようにすることができる。
【0146】
また、本発明によれば、吸着除去工程で、重合溶媒、重合モノマーが吸着除去され、所定の純度に到達した不活性ガスの一部をパージガスとして用いることができるので、新たな不活性ガス源を用いる必要がないので、効率が向上するとともに、コストが低減でき、資源節約にも貢献できる。
また、本発明によれば、吸着剤層の吸着剤から脱着除去した重合溶媒を回収して、重合体製造プラントで再使用することができるので、効率が向上するとともに、コストが低減でき、資源節約にも貢献できる。
【0147】
また、本発明によれば、脱着ガスから重合溶媒を回収した後に、脱着ガス中の重合モノマーを燃焼させた後に大気中に放出するので、CO2ガスがほとんど発生せず、地球温暖化の原因となることがない。
さらに、本発明によれば、いずれかの吸着除去装置において、吸着除去操作が行われている間に、他の吸着除去装置において、脱着除去操作が行われるので、いずれかの吸着除去装置において破過状態になっても、プラントを停止することなく、他の吸着除去装置で、連続的に吸着除去操作を行うことができるので、操業効率が低下することがないなど幾多の顕著で特有な作用効果を奏する極めて優れた発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、前述したアルカリ中和処理プロセスの概略図を表している。
【図2】図2は、本発明の重合体製造プラントの排ガスの再使用装置全体の概略図である。
【符号の説明】
1# 塩素、炭化水素及び水分含有な腐食性排ガス導入ライン
2# 当該排ガスの事前中和処理ドラム
3# レベル調整ライン
4# アルカリ水溶液導入ライン
5# プレ脱塩した排ガス移送ライン
6# アルカリ水溶液導入ライン
7# アルカリ水溶液添加及びプレ脱塩した排ガスの移送ライン
8# 熱交換器(クーラー)兼完全中和装置
9# 熱交換器冷媒導入ライン
10# 熱交換器冷媒回収ライン
11# 完全中和処理した排ガス移送ライン
12# ミスト(液滴)及び微粉完全除去ドラム
13# 熱交換器の排水ライン
14# pH計サンプル採取ライン
15# ミストセパレータードラム
16# フィルター
17# ミスト(液滴)及び微粉を除去した脱塩排ガスの移送ライン
18# ミスト(液滴)の凝縮及び微粉蓄積排出ライン
19# pH計
20# pH計測定済み液の排出ライン
21# pH計洗浄水導入ライン
22# 液及び微粉の排出ライン
A# 重合体製造プラント
B# 回収・分離工程
C# “U“字型液シール
D# 排水(水処理設備)
E# アルカリ水溶液噴霧箇所
1A バルブ
1B バルブ
1a ライン
1b ライン
1 排ガス導入ライン
1C 第1接続部
1D 第1'接続部
2A バルブ
2B バルブ
2a ライン
2b ライン
2 処理ガス還流ライン
2C 第2接続部
2D 第2'接続部
3A バルブ
3B バルブ
3a ライン
3b ライン
3 ライン
3C 第3接続部
3D 第3'接続部
4A バルブ
4B バルブ
4a ライン
4b ライン
4 減圧装置
5 溶剤液化回収装置
6 重合体製造プラント
7 廃棄ライン
8 重合溶媒還流ライン
9 排ガス燃焼装置
10 分岐部
11 分岐部
12 分岐部
13 ライン
14 溶剤精製装置
A 吸着塔
B 吸着塔

Claims (11)

  1. 重合体製造プラントから排出される不活性ガスを再使用するための重合体製造プラントの排ガスの再使用方法であって、
    前記重合体製造プラントから排出される塩素、炭化水素及び水分含有の不活性ガスを、アルカリ中和処理工程を介した後に該アルカリ中和処理済みの不活性ガスを吸着剤から形成される吸着剤層を通過させることによって、重合溶媒及び重合モノマーを除去し、所定の純度に到達した不活性ガスを、前記重合体製造プラントで再使用することを特徴とする重合体製造プラントの排ガスの再使用方法。
  2. 前記アルカリ中和処理工程が、前記塩素、炭化水素及び水分含有の不活性ガスをアルカリ水溶液と混合接触した後に、該不活性ガスの温度を−5〜20℃の範囲に調整して水分を低減し、更に該不活性ガス中のミストを除去処理する工程を含む請求項1記載の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法。
  3. 前記重合体製造プラントの重合体が、オレフィン系重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法。
  4. 前記吸着剤層が、
    (1) シリカゲル及び合成ゼオライトから選択した少なくとも一種の吸着剤の単層からなるか、もしくは 、
    (2) それら単層の同種または異種の複数層から形成されているか、または、
    (3) それら単層または複数層にさらにシリカゲル及び合成ゼオライト以外の吸着剤からなる吸着剤層を 組合わせた複数層、
    のいずれかから形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法。
  5. 前記吸着剤層が、少なくとも2種類の異なる細孔径の吸着剤層を排ガスの流れる方向に、細孔径の大きい方から小さい順に積層されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法。
  6. 前記吸着除去工程において、さらに水分も除去することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法。
  7. 前記吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒及び重合モノマーを、減圧状態にして、吸着剤から脱着除去する脱着工程を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法。
  8. 前記吸着剤層の吸着剤に吸着された重合溶媒及び重合モノマーを、減圧状態にするとともに、パージガスを導入して吸着剤から脱着除去する脱着工程を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法。
  9. 前記パージガスとして、前記吸着除去工程で、重合溶媒及び重合モノマーが吸着除去され、所定の純度に到達した不活性ガス、または新たな所定純度にある不活性ガスを用いることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法。
  10. 前記吸着剤層によって不活性ガスに含有される重合溶媒及び重合モノマーが吸着除去され、所定の純度に到達した不活性ガスを、前記重合体製造プラントで再使用するために重合体製造プラントに還流することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法。
  11. 前記吸着剤層を脱着工程の減圧状態から吸着工程の運転圧力状態まで、不活性ガスホルダードラムによって加圧することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の重合体製造プラントの排ガスの再使用方法。
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