JP2004000862A - 水素透過膜およびその製造方法 - Google Patents

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森田 洋之
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Abstract

【課題】高温下で使用しても熱による相互拡散の発生しにくい、低コストな水素透過膜およびその製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム基材11上にアルマイト層12を形成し、アルマイト層12上にパラジウム合金膜13を形成した後、アルミニウム基材11をアルマイト層12から分離し、その後、アルマイト層12とパラジウム合金膜13との積層体にHIP処理を施した後、アルマイト層12のアルミニウム基材11との境界部に形成された緻密層12aを除去して、水素透過膜10を製造した。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、混合気体から水素を分離することに使用される水素透過膜およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
水素透過膜およびその製造方法に関する従来技術としては、特開平5−76738号公報に開示されたものがある。この公報には、レーザあるいはエッチングによって孔を形成した金属多孔体上にパラジウム合金膜(以下、金属膜と呼ぶ)を形成し、金属多孔体上と金属膜との間に、互いの熱による相互拡散を防止するためバリア層を形成した水素透過膜およびその製造方法が開示されている。
【0003】
水素分離のために使用される水素透過膜は、薄膜であるため一般に剛性が不足しており、水素分離用として使用する際には、ステンレスあるいはニッケル等の剛性のあるサポート部材によって支持する必要があるが、このサポート部材と金属膜とのあいだで熱による相互拡散現象が発生しやすく、水素透過膜の水素透過性が低化するという問題がある。上述した公報に開示された水素透過膜は、金属多孔体上と金属膜との間で互いの熱による相互拡散を防止するために、双方の間にバリア層が形成されたもので、バリア層形成のための製造工程を設ける必要があり、コスト的にも不利なものであった。
【0004】
また、水素透過性を向上させるためには金属膜をより薄くする必要がある。しかしながら、図4に示すように、金属多孔体42上に金属膜43を形成するとき、金属膜43の厚みが充分な場合であれば金属多孔体の細孔44を金属膜43で完全に埋めることができるが、図5に示したように金属膜53を単純に薄くすると、金属多孔体52の細孔54を金属膜53で完全に埋めることができず、金属膜53上に欠陥が現れる。
【0005】
【発明の概要】
本発明は、上述した従来技術の課題を解消するもので、その第1の目的は、高温下で使用しても熱による相互拡散の発生しにくい、低コストな水素透過膜およびその製造方法を提供することである。また、本発明の第2の目的は、薄く、その表面に欠陥の少ない金属膜を備えた、低コストな水素透過膜およびその製造方法を提供することである。
【0006】
本発明の第1の発明においては、アルマイト層と、水素透過性を有する金属膜との積層体からなることを特徴とする水素透過膜とした。
【0007】
この第1の発明の構成によれば、ステンレスあるいはニッケル等のサポート部材に使用される金属との間で熱による相互拡散が発生しにくいアルマイト層上に金属膜を形成したため、高温下で使用しても熱による相互拡散の発生しにくい水素透過膜とすることができる。また、更に、表面凹凸が少ないアルマイト層上に金属膜を形成したため、金属膜を薄くしても表面に欠陥が現れにくい水素透過膜とすることができる。
【0008】
本発明の第2の発明においては、前記アルマイト層と前記金属膜との積層体に、熱間等方圧処理を施したことを特徴とする第1の発明記載の水素透過膜とした。
【0009】
この第2の発明の構成によれば、アルマイト層と金属膜との積層体に、熱間等方圧処理を施したため、アルマイト層と金属膜との接合力がより強固なものとなり、アルマイト層上の金属膜が薄くても、剥離、欠損等が発生しない水素透過膜とすることができる。
【0010】
本発明の第3の発明においては、アルミニウム金属上にアルマイト層を形成するアルマイト層形成ステップと、前記アルマイト層上に水素透過性を有する金属膜を積層する金属膜形成ステップと、前記アルミニウム金属を除去するアルミニウム金属除去ステップと、前記アルマイト層の前記アルミニウム金属との境界部に形成された非多孔質層を除去する非多孔質層除去ステップと、を備えたことを特徴とする水素透過膜の製造方法とした。
【0011】
この第3の発明の構成によれば、熱による相互拡散が発生しにくいアルマイト層上に金属膜を形成したため、熱による相互拡散を防ぐために、特別な工程を設ける必要もなく、低コストな水素透過膜の製造方法とすることができる。
【0012】
本発明の第4の発明においては、前記金属膜形成ステップの後に、更に、熱間等方圧処理を施すHIP処理ステップを備えたことを特徴とする第3の発明記載の水素透過膜の製造方法とした。
【0013】
この第4の発明の構成によれば、金属膜形成ステップの後に、更に、熱間等方圧処理を施したため、アルマイト層と金属膜との密着性が向上して、アルマイト層上に金属膜を形成する際にあらゆる処理方法を使用でき、自由度の高い水素透過膜の製造方法とすることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明による水素透過膜10と、これを例えば燃料電池発電システムの改質器に使用した場合に、水素透過膜10に固定されて、水素透過膜10に剛性を与えるサポート部材Sとを示した斜視図である。水素透過膜10は、支持体としての多孔質酸化膜であるアルマイト層12上に、パラジウム(Pd)、あるいはパラジウム−白金合金(Pd−Pt)、パラジウム−銀合金(Pd−Ag)等のパラジウム合金による金属膜13を形成したものである。
【0015】
アルマイト層12の厚みは、水素透過性能および金属膜13の支持体としての強度を考慮して、10μm〜100μmとすることが望ましい。アルマイト層12は、その表面に垂直で均一なポーラス孔が形成されている。また、アルマイト層12の孔は微細であるため、アルミナあるいはステンレス等のような従来使用されていた金属多孔質支持体に比較して、表面の凹凸が少なく滑らかである。
【0016】
一方、サポート部材Sは本発明による水素透過膜10の構成要素ではなく、前述したように、水素透過膜10を燃料電池の改質器等に使用した場合、薄膜である水素透過膜10の、撓み、脱落あるいは破損等を防ぐために水素透過膜10に固定され、強度部材として水素透過膜10に剛性を与えるものであり、ステンレス(SUS)あるいはニッケル(Ni)等の多孔質体で形成されている。
【0017】
次に、図2(a)〜2(e)を適宜用いて、本発明の実施の形態による水素透過膜10の製造方法について説明する。まず最初に、図2(a)に示したように、アルミニウム基材11上に、耐食処理として一般的に使用されるアルマイト層12を形成する。アルミニウム基材11上にアルマイト層12を形成する際、アルマイト層12のアルミニウム基材11との境界付近には、非多孔質の緻密層12aが形成される。この緻密層12aの処理については後述する。
【0018】
次に、図2(b)に示したように、アルマイト層12上にパラジウム、あるいはパラジウム−白金合金、パラジウム−銀合金等のパラジウム合金による金属膜13を形成する。金属膜13は、スパッタ、イオンプレーティング、真空蒸着、化学蒸着(CVD)、PVD等のドライプロセスあるいはメッキ等のウエットプロセスのような、あらゆる処理方法で、アルマイト層12上に形成できる。
【0019】
次に、図2(c)に示すように、アルミニウム基材11とアルマイト層12とを分離する。アルミニウム基材11とアルマイト層12とを分離する方法は、アルミニウム基材11に高熱を加え溶融する方法、アルミニウム基材11を薬剤で溶融する方法あるいは電解剥離による方法等、多種多様の処理方法が適用可能である。
【0020】
次に、図2(d)に示すように、アルミニウム基材11から分離されたアルマイト層12と金属膜13との積層体に、アルマイト層12と金属膜13との間の密着性を向上させて、互いの接合力を増大させるために、熱間等方圧処理(HIP処理)を施す。HIP処理は、アルゴン等の非酸化性ガスを用い、温度300℃〜1500℃、圧力10MPa〜100MPaの条件下で処理を行う。
【0021】
その後、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリを用いて、前述したアルマイト層12の緻密層12aを除去して、図2(e)に示すように、アルマイト層12上に、水素透過性の金属膜13が形成された、本発明による水素透過膜10が完成する。
【0022】
ここで、上述した、(b)アルマイト層12上に金属膜13を形成する工程、(c)アルミニウム基材11とアルマイト層12とを分離する工程、および(d)アルマイト層12と金属膜13との積層体にHIP処理を施す工程のみについては、必ずしも上述した順序でなければならないわけではなく、上述した順序以外に、(c)アルミニウム基材11とアルマイト層12とを分離する工程→(b)アルマイト層12上に金属膜13を形成する工程→(d)アルマイト層12と金属膜13との積層体にHIP処理を施す工程、または、(b)アルマイト層12上に金属膜13を形成する工程→(d)アルマイト層12と金属膜13との積層体にHIP処理を施す工程→(c)アルミニウム基材11とアルマイト層12とを分離する工程というように、上述した3工程のなかでの順序替えは可能である。
【0023】
図3に示したように、本発明による水素透過膜10であれば、アルマイト層12の表面に凹凸が少ないため、金属膜13の厚みを薄くしても、金属膜13の表面に欠陥は発生しにくい。また、アルマイト層12の表面の凹凸が少なくても、HIP処理を施すことによって、金属膜13がアルマイト層12の表面の凹凸に入り込み、アルマイト層12と金属膜13との密着力が低下しない。
【0024】
上述した実施の形態による水素透過膜10によれば、ステンレスあるいはニッケル等のサポート部材Sに使用される金属との間で熱による相互拡散が発生しにくいアルマイト層12上に金属膜13を形成したため、高温下で使用しても、アルマイト層12がサポート部材Sと金属膜13との間で、熱による相互拡散の発生を抑制し、水素透過性の維持性能の高い水素透過膜10とすることができる。また、熱による相互拡散を防ぐために、特別な工程を設ける必要もないため、低コストな水素透過膜10とすることができる。
【0025】
また、上述した実施の形態による水素透過膜10によれば、表面の凹凸が少ないアルマイト層12上に金属膜13を形成したため、金属膜13を薄くしても表面に欠陥が現れにくい水素透過膜10とすることができる。したがって、比較的高価なパラジウム合金の使用量を、従来に比べ格段に低減でき、更に、低コストの水素透過膜10とすることができる。また、水素透過膜10の金属膜13の厚みを薄くできるため、水素透過性のよい水素透過膜10とすることができる。
【0026】
更に、アルマイト層12と金属膜13との積層体に、HIP処理を施したため、アルマイト層12と金属膜13との接合力がより強固なものとなり、アルマイト層12上の金属膜13が薄くても、剥離、欠損等が発生せず、熱サイクルに対する対抗力の大きい水素透過膜10とすることができる。また、熱間等方圧処理によってアルマイト層12と金属膜13との密着性が向上するため、アルマイト層12上に金属膜13を形成する際に、あらゆる処理方法を使用でき、水素透過膜10の製造上の自由度が増大する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による水素透過膜とサポート部材との斜視図である。
【図2】アルミニウム基材上にアルマイト層を形成したところを表す図(a)、アルマイト層上に金属膜を形成したところを表す図(b)、アルミニウム基材とアルマイト層とを分離したところを表す図(c)、アルマイト層と金属膜との積層体にHIP処理を施すところを表す図(d)およびアルマイト層からバリア層を除去し、水素透過膜を完成させたところを表す図(e)である。
【図3】本発明による水素透過膜の表面性状について説明するための模式的な断面図である。
【図4】従来技術による水素透過膜の表面性状について説明するための模式的な断面図である。
【図5】従来技術による水素透過膜の、金属膜を薄くした場合の表面性状を説明するための模式的な断面図である。
【符号の説明】
10…水素透過膜、11…アルミニウム基材、12…アルマイト層、12a…緻密層、13…パラジウム合金膜

Claims (4)

  1. アルマイト層と、水素透過性を有する金属膜との積層体からなることを特徴とする水素透過膜。
  2. 前記アルマイト層と前記金属膜との積層体に、熱間等方圧処理を施したことを特徴とする請求項1記載の水素透過膜。
  3. アルミニウム金属上にアルマイト層を形成するアルマイト層形成ステップと、前記アルマイト層上に水素透過性を有する金属膜を積層する金属膜形成ステップと、
    前記アルミニウム金属を除去するアルミニウム金属除去ステップと、
    前記アルマイト層の前記アルミニウム金属との境界部に形成された非多孔質層を除去する非多孔質層除去ステップと、
    を備えたことを特徴とする水素透過膜の製造方法。
  4. 前記金属膜形成ステップの後に、更に、熱間等方圧処理を施すHIP処理ステップを備えたことを特徴とする請求項3記載の水素透過膜の製造方法。
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