JP2004000025A - 氷菓タイプの単細胞化食品及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】野菜、果物等の植物を単細胞(シングルセル)化した後、その液体状物を凍結することにより、酸化・劣化・変色(褐変)しにくく、原料の有効成分をあますことなく有効利用し、凍結時に細胞内水分が分離しにくく、高温冷凍(−0.5℃〜−5℃)が可能で、保存性・輸送性にも優れた氷菓タイプの単細胞化食品の提供。
【解決手段】果物及び野菜から選ばれる植物材料に、細胞壁を分解せずかつ細胞間物質を選択的に分解することができる単細胞化酵素を作用させて、前記植物材料を単細胞化した液体状物をチップ状又はキューブ状に凍結した氷菓タイプの単細胞化食品及びその製造方法である。
【解決手段】果物及び野菜から選ばれる植物材料に、細胞壁を分解せずかつ細胞間物質を選択的に分解することができる単細胞化酵素を作用させて、前記植物材料を単細胞化した液体状物をチップ状又はキューブ状に凍結した氷菓タイプの単細胞化食品及びその製造方法である。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、氷菓タイプの単細胞(シングルセル)化食品及びその製造方法に関し、特に、凍結時に細胞内水分が分離しにくく、季節ものの野菜や果物などを好適に使用した氷菓タイプの単細胞化食品及びその製造方法に関する。なお、本発明において、単細胞(シングルセル)とは、植物組織を構成する最小単位の細胞のことを意味する。
【0002】
【従来の技術】
従来、野菜や果物などを原料として氷菓をつくる場合、先ず、原料となる野菜や果物を搾汁方式で圧搾し、得られた搾汁液に水等を加えて調整し、冷凍するという方法で行われていた。このように原料を圧搾して氷菓を製造した場合、(1)当然、野菜や果物の細胞が破壊されてしまい、細胞内に蓄積した貴重な栄養成分、香気成分、色素成分などが放出され、速やかに劣化してしまうという問題がある。
【0003】
(2)また、原料となる野菜や果物の搾りカスには貴重な栄養成分などが多くの残存しているが、通常廃棄されており、原料の有効成分を無駄にしているという問題がある。
【0004】
(3)そして、この搾汁液を凍結した場合、水分と果汁とが比重の違い等により分離してしまうという問題があった。(4)また、糖度が高い果物(例えば、メロン、桃、いちご等)は、凝固点が低く(−20℃程度)凍結させるのが困難であった。
【0005】
(5)更に、原料となる野菜や果物のなかには、一年を通じて入手することが困難なもの(季節もの)があり、それらは酸化・劣化・褐変が早いためフレッシュな状態での長期保存が困難であった。
【0006】
一方、新鮮な野菜や果物を直ちにミキサーなどを用いて粉砕処理し、フレッシュジュースとして販売することが行われているが、この場合においても酸化・劣化・変色(褐変)・分離・冷凍温度(凝固点)等の問題により保存が困難であった。
【0007】
従って、現在までのところ、メロン、桃、いちご等の糖度が高い果物の100%フレッシュジュースや該100%フレッシュジュースの氷菓は、(1)酸化・劣化・変色(褐変)が早いため、短期間で商品価値が低下してしまうと共に、(2)分離しやすく、(3)凍結し難いため商品化されていないのが実情である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の課題を解決することを目的とする。
【0009】
即ち、本発明は、野菜、果物等の植物材料を単細胞(シングルセル)化した後、その液体状物を凍結することにより、酸化・劣化・変色(褐変)しにくく、原料の有効成分をあますことなく有効利用し、凍結時に細胞内水分が分離しにくく、高温冷凍(−0.5℃〜−5℃)が可能で、保存性・輸送性にも優れた氷菓タイプの単細胞化食品及び該単細胞化食品の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、果物及び野菜等から選ばれる植物材料に、細胞壁を分解せずかつ細胞間物質を選択的に分解することができる単細胞化酵素を作用させて、前記植物材料の全細胞の90%以上を単細胞化した液体状物を凍結した氷菓タイプの単細胞化食品が、(1)酸化・劣化・変色(褐変)しにくいこと、(2)原料の有効成分をあますことなく有効利用できること、(3)凍結時に細胞内水分が分離しにくいこと、(4)高温冷凍(−0.5℃〜−5℃)が可能なこと、(5)保存性・輸送性にも優れていることを知見し、本発明をなすに至った。
【0011】
即ち、本発明は、前記課題を解決するため、下記の氷菓タイプの単細胞化食品及びその製造方法を提供する。
【0012】
請求項1の発明は、果物及び野菜から選ばれる植物材料に、細胞壁を分解せずかつ細胞間物質を選択的に分解することができる単細胞化酵素を作用させて、前記植物材料を単細胞化した液体状物をチップ状又はキューブ状に凍結してなることを特徴とする氷菓タイプの単細胞化食品である。
【0013】
請求項2の発明は、前記単細胞化酵素が、ポリガラクツロナーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンリアーゼ及びペクトリアーゼから選ばれる請求項1に記載の氷菓タイプの単細胞化食品である。
【0014】
請求項3の発明は、−0.5℃〜−5℃で凍結可能である請求項1又は2のいずれかに記載の氷菓タイプの単細胞化食品である。
【0015】
請求項4の発明は、前記植物材料の全細胞の90%以上を単細胞化した液体状物を温度40℃以上、圧力300kgf/cm2以上、時間5分間以上の条件で加圧殺菌した際に、該細胞が破壊しないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の氷菓タイプの単細胞化食品である。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の氷菓タイプの単細胞化食品をブレンダー又はミキサーにかけて得られることを特徴とするフローズンタイプの単細胞化食品である。
【0017】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の単細胞化食品に、ワイン、シャンパン、焼酎、日本酒、老酒、ビール、リキュール、ウィスキー、ウォッカ、ジン、ラム、ブランデー及びテキーラから選ばれるアルコール飲料を添加してなることを特徴とする単細胞化食品入りアルコール飲料である。
【0018】
請求項7の発明は、請求項6に記載の単細胞化食品入りアルコール飲料をブレンダー又はミキサーにかけて得られることを特徴とするフローズンタイプの単細胞化食品入りアルコール飲料である。
【0019】
請求項8の発明は、果物及び野菜から選ばれる植物材料に対し、細胞壁を分解せずかつ細胞間物質を選択的に分解することができる単細胞化酵素を25〜40℃で60〜180分間作用させて前記植物材料の全細胞の90%以上を単細胞化し、更に未分解物質を除去し、−0.5℃〜−5℃でチップ状又はキューブ状に凍結させることを特徴とする氷菓タイプの単細胞化食品の製造方法である。
【0020】
請求項9の発明は、請求項8に記載の氷菓タイプの単細胞化食品に、ワイン、シャンパン、焼酎、日本酒、老酒、ビール、リキュール、ウィスキー、ウォッカ、ジン、ラム、ブランデー及びテキーラから選ばれるアルコール飲料を添加し、その単細胞化食品入りアルコール飲料をブレンダー又はミキサーにかけることを特徴とするフローズンタイプの単細胞化食品入りアルコール飲料の製造方法である。
【0021】
本発明によれば、野菜及び果物から選ばれる植物材料に、細胞壁を分解せずかつ細胞間物質を選択的に分解することができる単細胞化酵素を作用させることにより、細胞を傷付けることなく全ての組織をばらばらにすることができると共に、細胞を潰さず細胞壁や細胞膜はそのまま残っている状態の液体状物を得ることができ、その液体状物は、それぞれの細胞内に栄養成分、香気成分、色素成分を多く含んでおり、また、それぞれの細胞内に特有の臭い成分・苦味成分などを閉じ込めている。従って、その液体状物をチップ状又はキューブ状に凍結した氷菓タイプの単細胞化食品は、食した際に、体に良く、しかも食べ易いものである。
【0022】
なお、本発明において、キューブ状とは、液体を略立方体に凍結させたものを意味し、また、チップ状とは、液体をあまり厚みをもたない(立方体以外の)形状に凍結させたものを意味する。
【0023】
また、本発明において、氷菓とは、食する目的で植物材料を凍結させた状態のものを意味し、その形状は、特に、上記チップ状又はキューブ状に限定されるものではない。
【0024】
また、本発明の氷菓タイプの単細胞化食品は、90%以上が単細胞化されているので、凍結前の液体状物の各粒径が小さく、しかも、細胞内水分と細胞外水分の糖度が略同一であるため、各粒径の分布が揃っており、比重が均一で、沈澱や分離が起りにくく、冷凍(保存)後解凍しても原料の細胞が壊れず、長期間に亘って保存することができる。
【0025】
更に、本発明の氷菓タイプの単細胞化食品は、液体の状態で加圧殺菌した場合に、各粒径が液体中でフリーな状態にあるため、原料の細胞を破壊することなく殺菌することができるので、凍結前に大腸菌やその他の一般細菌を死滅させることができるため、安全性が高いものである。
【0026】
更に、本発明の単細胞化食品の製法方法によれば、今までにない美味しさ、新鮮さ、安全性を有するフローズンタイプの単細胞化食品入りアルコール飲料を効率良く製造することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の氷菓タイプの単細胞化食品は、果物及び野菜から選ばれる植物材料に、細胞壁を分解せず、かつ細胞間物質を選択的に分解することができる単細胞化酵素を作用させて、前記植物材料の全細胞の90%以上、好ましくは100%を単細胞(シングルセル)化した液体状物をチップ状又はキューブ状に凍結してなる単細胞化食品である。
【0028】
この場合、前記果物及び野菜から選ばれる植物材料は、単一の細胞の集合体ではなく、それぞれ独自の機能を持った細胞の集団である組織と器官とからなりたっている。このような組織と器官は二重の細胞壁と細胞膜で囲まれた無数の細胞が、プロトペクチンを主体とし、少量のヘミセルロース、ペクチン、リグニンを含有する細胞間物質により互いに膠着されて構成されている。
【0029】
前記細胞間物質を単細胞化酵素により選択的に分解することにより、単細胞化した液体状物が得られる。
【0030】
前記単細胞化した液体状物は、細胞内水分が分離することなく、且つ、それぞれの細胞を破壊することなく、−0.5℃〜−5℃、特に−0.5℃〜−2℃でチップ状又はキューブ状に凍結することができる。
【0031】
この場合、前記単細胞化した液体状物は、−0.5℃〜−5℃でチップ状又はキューブ状に凍結可能であるため、この単細胞化した液体状物を、一旦、チップ状又はキューブ状に凍結させて製造した氷菓タイプの単細胞化食品を、ブレンダー又はミキサーにかけると、加水や加氷を必要としない果汁100%のフローズンタイプの単細胞化食品ができる。
【0032】
また、外国から野菜や果物を原料とする果汁100%ジュースを大量に輸入する場合、従来は、輸出前に、一旦、果汁100%ジュースを濃縮し、タンカー等に積み込み、冷蔵又は冷凍状態で輸送し、輸入後に、その濃縮ジュースを加水(調整)し、商品化していたが、前記単細胞化した液体状物は、凍結時に水分と果汁とが分離せず、−0.5℃〜−5℃で凍結可能なため、その液体状物をそのままタンカー等に積み込み、凍結させて輸送することが可能であることから、保存性・輸送性の両面に優れたものである。
【0033】
更に、前記単細胞化した液体状物は、温度40℃以上、圧力300kgf/cm2以上、時間5分間以上の条件で連続加圧殺菌した場合にも、それぞれの細胞を破壊されることがなく大腸菌や一般細菌を死滅させることが可能なことにより、(品質)安全性の面でも優れたものである。
【0034】
前記果実及び野菜としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0035】
前記野菜としては、例えば、キャベツ、レタス、白菜、小松菜、ホウレン草、チンゲン菜、春菊、ネギ、玉ねぎ、あさつき、わけぎ、ニラ、人参、ごぼう、じゃがいも、さつまいも、里芋、れんこん、かぼちゃ、なす、きゅうり、ピーマン、パプリカ、セロリ、アボガド、みつば、水菜、大根、トマト、大豆、小豆、えんどう豆、空豆、アスパラガス、オクラ、インゲン豆、枝豆、たけのこ、グリンピース、アーティチョーク、エシャロット、空心菜、ししとう、みょうが、パセリ、サラダ菜、ブロッコリー、カリフラワー、ラディッシュ、ズッキーニ、ハーブ(ミント、セージ、ローズマリー、レモングラス、ローリエ、タイム、ディル)、かぶ、豆苗、シソ、トウガン、クレソン、にがうり、わさび、生姜、にんにく、とうがらし、等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
前記果物としては、例えば、リンゴ、オレンジ、みかん、レモン、いちご、柿、バナナ、すいか、メロン、さくらんぼ、ぶどう、いちじく、ざくろ、キウイ、グレープフルーツ、マンゴー、パパイヤ、スターフルーツ、ゆず、なし、いよかん、夏みかん、はっさく、ライチ、パイナップル、パッションフルーツ、梅、びわ、桃、すもも、あんず、プルーン、栗、ブルーベリー、クランベリー、きんかん、ドラゴンフルーツ、グァバ、あけび、アロエ、等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
これらの中でも、特に、リンゴ、イチゴ、メロン、桃、人参、さつまいも、アボガド及びケールから選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0038】
前記単細胞化処理の代表的な方法としては、ペクチン等からなる細胞間物質を、ペクチナーゼ等で酵素処理することにより選択的に分解する方法を挙げることができる。なお、本発明においては、細胞壁を分解する酵素であるセルラーゼは用いられない。
【0039】
前記細胞壁を分解せず、かつ細胞間物質を選択的に分解することができる酵素としては、例えば、Aspergillus nigerやRhizopus sp.等由来のポリガラクツロナーゼ(polygalacturonase)、ペクチナーゼ(pectinase);Aspergillus nigerやAspergillus japonicus等のAspergillus sp等由来のペクチンリアーゼ(pectin lyase);Aspergillus japonicus等由来のペクトリアーゼ(pectolyase)などが挙げられるが、植物材料の細胞壁を分解せずかつ細胞間物質を選択的に分解することができる酵素であれば特に制限されず用いることができる。
【0040】
これら酵素は、例えば、前記Rhizopus sp.やAspergillus sp.などから通常の公知の方法により単離したものを用いることが可能である。これらの酵素を植物材料に作用させる場合には、その酵素の至適温度及び至適pHなどの至適条件で作用させ、かつ最小量を用いることが好ましい。なお、前記至適温度は、通常25〜40℃であり、至適pHは、通常pH4〜6である。
【0041】
前記単細胞化酵素の添加量は、酵素の種類、力価、植物材料の種類などに応じて異なり一概には規定できないが、通常、植物材料100質量部に対して0.1〜5質量部である。
【0042】
前記酵素反応の後に、残りがちな植物の外皮、繊維質、梗、芯、種子などは、例えば10〜50メッシュ程度の篩を用いて篩別除去することにより、単細胞の懸濁液が得られる。
【0043】
また、単細胞化した液体状物(飲食品)の糖度は、単細胞化していないものと同程度であるが、単細胞化により甘味を感じ易くなり、飲み易くなるものである。
【0044】
更に、単細胞化することにより−0.5℃〜−5℃で6ヶ月間以上凍結保存が可能であり、解凍した後も細胞が壊れることなく、良好な風味を維持することができる。
【0045】
本発明の氷菓タイプの単細胞化食品の製造方法は、果物及び野菜から選ばれる植物材料に対し、細胞壁を分解せずかつ細胞間物質を選択的に分解することができる単細胞化酵素を作用させて前記植物材料の全細胞の90%以上、好ましくは100%を単細胞化し、更に、単細胞化しなかった未分解物質を除去し、その後、その液体状物をチップ状又はキューブ状に凍結するものである。
【0046】
この場合、25〜40℃で60〜180分間攪拌下で反応させることが好ましい。
【0047】
また、内部に回転するスクリューを備えたニーダー中に適当なサイズにカットした果物や野菜を投入し、ニーダーを25〜40℃に保温しながらスクリューを回転させていくことにより連続的に単細胞化した液体状物を効率よく製造することができる。
【0048】
ここでいう、「適当なサイズにカットし」とは、単細胞化酵素を植物材料に効果的に反応させるために原料となる果物や野菜の表面積を増やすために行なうものであり、そのサイズは、使用する単細胞化酵素の種類や原料により異なるものである。
【0049】
また、反応温度・反応時間もまた、使用する単細胞化酵素の種類や原料により異なるものである。
【0050】
本発明の氷菓タイプの単細胞化食品は、フレッシュジュース、アイスキャンデー、アイスクリーム、ヨーグルト、シャーベット、天然調味料などに好適に用いられるものであるが、ワイン、シャンパン、焼酎、日本酒、老酒、ビール、ウォッカ、ジン等のアルコール飲料と混合してカクテルなどとすることも可能である。
【0051】
また、本発明のフローズンタイプの単細胞化食品入りアルコール飲料の製造方法は、前記単細胞化した液体状物をチップ状又はキューブ状に凍結し、該凍結した氷菓タイプの単細胞化食品をブレンダー又はミキサーにかけて得られるフローズンタイプの単細胞化食品に、ワイン、シャンパン、焼酎、日本酒、老酒、ビール、リキュール、ウィスキー、ウォッカ、ジン、ラム、ブランデー及びテキーラから選ばれるアルコール飲料を添加することにより製造することができる。
【0052】
更に、本発明のフローズンタイプの単細胞化食品入りアルコール飲料の製造方法は、前記単細胞化した液体状物をチップ状又はキューブ状に凍結し、該凍結した氷菓タイプの単細胞化食品にワイン、シャンパン、焼酎、日本酒、老酒、ビール、リキュール、ウィスキー、ウォッカ、ジン、ラム、ブランデー及びテキーラから選ばれるアルコール飲料を添加し、その単細胞化食品入りアルコール飲料をブレンダー又はミキサーにかけることにより製造することができる。
【0053】
【実施例】
以下、実施例を示し、本発明について更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって何ら限定されるものではない。
【0054】
〔実施例1〕 イチゴジュース
イチゴをよく洗浄した後、ヘタを除去し、原料の表面積を増やし単細胞化の効果を上げるため1cm角位にカットし、ニーダー(釜)に投入した。
単細胞化酵素としてペクチナーゼを約0.2質量%添加し、35℃で約90分間攪拌下で反応させることにより、液状化された。10〜50メッシュ程度の篩を用いて残渣を除去することで単細胞化イチゴジュース(液体状物)が得られた。
【0055】
得られた単細胞化イチゴジュース(液体状物)を顕微鏡で観察すると1グラム中に106〜107個の細胞が観察でき、略100%単細胞化できていた。
次に、ガラス容器に入れた単細胞化イチゴジュース(液体状物)を設定温度−10℃の恒温槽内に入れ、凍結が開始するまでの試料温度を測温抵抗体にて計測した。なお、容器内の試料は計測中、スターラーにより攪拌されている。凝固点は測定試料の過冷却解除後、一定温度に達した温度にて決定した(凝固潜熱領域)。試料温度の経時変化を図1に示す。
測定の結果、単細胞化イチゴジュース(液体状物)の凝固点は−1.4℃、過冷却度は2.4℃であった。
この単細胞化イチゴジュース(液体状物)を6ヶ月間凍結保存し解凍した後も風味は変化がなった。
【0056】
〔実施例2〕 メロンジュース
メロンの果実をよく洗浄した後、果皮を除去し、原料の表面積を増やし単細胞化の効果を上げるため1cm角位にカットし、ニーダー(釜)に投入した。
単細胞化酵素としてペクチナーゼを約0.2質量%添加し、35℃で約90分間攪拌下で反応させることにより、液状化された。10〜50メッシュ程度の篩を用いて残渣を除去することで単細胞化メロンジュース(液体状物)が得られた。
【0057】
得られた単細胞化メロンジュース(液体状物)を顕微鏡で観察すると1グラム中に106〜107個の細胞が観察でき、略100%単細胞化できていた。
次に、単細胞化メロンジュース(液体状物)について実施例1と同様にして凝固点を測定した。試料温度の経時変化を図2に示す。
測定の結果、単細胞化メロンジュース(液体状物)の凝固点は−1.3℃、過冷却度は0.3℃であった。
この単細胞化メロンジュース(液体状物)を6ヶ月間凍結保存し解凍した後も風味は変化がなった。
【0058】
〔実施例3〕 ブルーベリージュース
ブルーベリーの果肉をよく洗浄した後、果皮と種子とを除去し、ニーダー(釜)に投入した。
単細胞化酵素としてペクチナーゼを約0.2質量%添加し、35℃で約90分間攪拌下で反応させることにより、液状化された。10〜50メッシュ程度の篩を用いて残渣を除去することで単細胞化ブルーベリージュース(液体状物)が得られた。
【0059】
得られた単細胞化ブルーベリージュース(液体状物)を顕微鏡で観察すると1グラム中に106〜107個の細胞が観察でき、略100%単細胞化できていた。
次に、単細胞化ブルーベリージュース(液体状物)について実施例1と同様にして凝固点を測定した。試料温度の経時変化を図3に示す。
測定の結果、単細胞化ブルーベリージュース(液体状物)の凝固点は−2.2℃、過冷却度は0.3℃であった。
この単細胞化ブルーベリージュース(液体状物)を6ヶ月間凍結保存し解凍した後も風味は変化がなった。
【0060】
〔実施例4〕 リンゴジュース
国産赤リンゴをよく洗浄した後、果皮と芯とを除去し、原料の表面積を増やし単細胞化の効果を上げるため1cm角位にカットし、ニーダー(釜)に投入した。
単細胞化酵素としてペクチナーゼを約0.2質量%添加し、35℃で約90分間攪拌下で反応させることにより、液状化された。10〜50メッシュ程度の篩を用いて残渣を除去することで単細胞化リンゴジュース(液体状物)が得られた。この単細胞化リンゴジュース(液体状物)は淡白色(リンゴそのままの色)であり、搾ったリンゴジュースのように透明なお茶色ではなかった。
【0061】
得られた単細胞化リンゴジュース(液体状物)を顕微鏡で観察すると1グラム中に106〜107個の細胞が観察でき、略100%単細胞化できていた。
この単細胞化リンゴジュース(液体状物)は−1℃で分離することなくキューブ状に凍結し、6ヶ月間保存し解凍した後も風味は変化がなった。
【0062】
〔実施例5〕 ニンジンジュース
ニンジンをよく洗浄した後、皮を剥き、えぐ味のある首部を1cm幅程度除去し、原料の表面積を増やし単細胞化の効果を上げるため1cm角位にカットし、ニーダー(釜)に投入した。
単細胞化酵素としてペクチナーゼを約0.2質量%添加し、35℃で約90分間攪拌下で反応させることにより、液状化された。10〜50メッシュ程度の篩を用いて残渣を除去することで単細胞化ニンジンジュース(液体状物)が得られた。この単細胞化ニンジンジュース(液体状物)はニンジンそのままの赤色であった。
【0063】
得られた単細胞化ニンジンジュース(液体状物)を顕微鏡で観察すると1グラム中に106〜107個の細胞が観察でき、略100%単細胞化できていた。
この単細胞化ニンジンジュース(液体状物)は−0.5℃で分離することなくチップ状に凍結し、6ヶ月間保存し解凍した後も風味は変化がなった。
【0064】
〔実施例6〕 ピーチジュース
桃をよく洗浄した後、果皮と芯と種子とを除去し、原料の表面積を増やし単細胞化の効果を上げるため1cm角位にカットし、ニーダー(釜)に投入した。
単細胞化酵素としてペクチナーゼを約0.2質量%添加し、35℃で約90分間攪拌下で反応させることにより、液状化された。10〜50メッシュ程度の篩を用いて残渣を除去することで単細胞化ピーチジュース(液体状物)が得られた。この単細胞化ピーチジュース(液体状物)は、淡白色(桃そのままの色)であった。
【0065】
得られた単細胞化ピーチジュース(液体状物)を顕微鏡で観察すると1グラム中に106〜107個の細胞が観察でき、略100%単細胞化できていた。
このピーチジュースは−1.5℃で分離することなくチップ状に凍結し、6ヶ月間保存し解凍した後も風味は変化がなった。
【0066】
〔実施例7〕 フレッシュリンゴジュース入りサワー
実施例4のキューブ状に凍結した単細胞化リンゴジュース 5〜10質量部焼酎 50質量部炭酸 50質量部
【0067】
〔実施例8〕 フレッシュピーチジュース入りカクテル(ベリーニ)
下記処方に従って、チップ状に凍結した実施例6の単細胞化ピーチジュースをブレンダーにかけてフローズンタイプの単細胞化食品とした後に、フロート型のシャンパングラスに注ぎ込み、そこにグレナデンシロップを加した後、ステアし、そこに冷やしたスパークリングワインを注ぐことにより、ベリーニを作成した。
実施例6のチップ状に凍結した単細胞化ピーチジュース 33質量部スパークリングワイン 66質量部
グレナデンシロップ 少量
【0068】
〔実施例9〕 フローズンイチゴシャーベット
実施例1のキューブ状に凍結した単細胞化イチゴジュースをカキ氷機にかけることによりフローズンイチゴ100%シャーベットが得られた。
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、野菜及び果物から選ばれる植物材料を単細胞(シングルセル)化した後、その液体状物を凍結することにより、酸化・劣化・変色(褐変)しにくく、原料の有効成分をあますことなく有効利用し、凍結時に細胞内水分が分離しにくく、高温冷凍(−0.5℃〜−5℃)が可能で、保存性・輸送性にも優れた氷菓タイプの単細胞化食品が得られる。
また、本発明の氷菓タイプの単細胞化食品の製造方法によれば、前記氷菓タイプの単細胞化食品を極めて効率よく製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1の試料の凝固点測定における温度変化を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例2の試料の凝固点測定における温度変化を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例3の試料の凝固点測定における温度変化を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、氷菓タイプの単細胞(シングルセル)化食品及びその製造方法に関し、特に、凍結時に細胞内水分が分離しにくく、季節ものの野菜や果物などを好適に使用した氷菓タイプの単細胞化食品及びその製造方法に関する。なお、本発明において、単細胞(シングルセル)とは、植物組織を構成する最小単位の細胞のことを意味する。
【0002】
【従来の技術】
従来、野菜や果物などを原料として氷菓をつくる場合、先ず、原料となる野菜や果物を搾汁方式で圧搾し、得られた搾汁液に水等を加えて調整し、冷凍するという方法で行われていた。このように原料を圧搾して氷菓を製造した場合、(1)当然、野菜や果物の細胞が破壊されてしまい、細胞内に蓄積した貴重な栄養成分、香気成分、色素成分などが放出され、速やかに劣化してしまうという問題がある。
【0003】
(2)また、原料となる野菜や果物の搾りカスには貴重な栄養成分などが多くの残存しているが、通常廃棄されており、原料の有効成分を無駄にしているという問題がある。
【0004】
(3)そして、この搾汁液を凍結した場合、水分と果汁とが比重の違い等により分離してしまうという問題があった。(4)また、糖度が高い果物(例えば、メロン、桃、いちご等)は、凝固点が低く(−20℃程度)凍結させるのが困難であった。
【0005】
(5)更に、原料となる野菜や果物のなかには、一年を通じて入手することが困難なもの(季節もの)があり、それらは酸化・劣化・褐変が早いためフレッシュな状態での長期保存が困難であった。
【0006】
一方、新鮮な野菜や果物を直ちにミキサーなどを用いて粉砕処理し、フレッシュジュースとして販売することが行われているが、この場合においても酸化・劣化・変色(褐変)・分離・冷凍温度(凝固点)等の問題により保存が困難であった。
【0007】
従って、現在までのところ、メロン、桃、いちご等の糖度が高い果物の100%フレッシュジュースや該100%フレッシュジュースの氷菓は、(1)酸化・劣化・変色(褐変)が早いため、短期間で商品価値が低下してしまうと共に、(2)分離しやすく、(3)凍結し難いため商品化されていないのが実情である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の課題を解決することを目的とする。
【0009】
即ち、本発明は、野菜、果物等の植物材料を単細胞(シングルセル)化した後、その液体状物を凍結することにより、酸化・劣化・変色(褐変)しにくく、原料の有効成分をあますことなく有効利用し、凍結時に細胞内水分が分離しにくく、高温冷凍(−0.5℃〜−5℃)が可能で、保存性・輸送性にも優れた氷菓タイプの単細胞化食品及び該単細胞化食品の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、果物及び野菜等から選ばれる植物材料に、細胞壁を分解せずかつ細胞間物質を選択的に分解することができる単細胞化酵素を作用させて、前記植物材料の全細胞の90%以上を単細胞化した液体状物を凍結した氷菓タイプの単細胞化食品が、(1)酸化・劣化・変色(褐変)しにくいこと、(2)原料の有効成分をあますことなく有効利用できること、(3)凍結時に細胞内水分が分離しにくいこと、(4)高温冷凍(−0.5℃〜−5℃)が可能なこと、(5)保存性・輸送性にも優れていることを知見し、本発明をなすに至った。
【0011】
即ち、本発明は、前記課題を解決するため、下記の氷菓タイプの単細胞化食品及びその製造方法を提供する。
【0012】
請求項1の発明は、果物及び野菜から選ばれる植物材料に、細胞壁を分解せずかつ細胞間物質を選択的に分解することができる単細胞化酵素を作用させて、前記植物材料を単細胞化した液体状物をチップ状又はキューブ状に凍結してなることを特徴とする氷菓タイプの単細胞化食品である。
【0013】
請求項2の発明は、前記単細胞化酵素が、ポリガラクツロナーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンリアーゼ及びペクトリアーゼから選ばれる請求項1に記載の氷菓タイプの単細胞化食品である。
【0014】
請求項3の発明は、−0.5℃〜−5℃で凍結可能である請求項1又は2のいずれかに記載の氷菓タイプの単細胞化食品である。
【0015】
請求項4の発明は、前記植物材料の全細胞の90%以上を単細胞化した液体状物を温度40℃以上、圧力300kgf/cm2以上、時間5分間以上の条件で加圧殺菌した際に、該細胞が破壊しないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の氷菓タイプの単細胞化食品である。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の氷菓タイプの単細胞化食品をブレンダー又はミキサーにかけて得られることを特徴とするフローズンタイプの単細胞化食品である。
【0017】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の単細胞化食品に、ワイン、シャンパン、焼酎、日本酒、老酒、ビール、リキュール、ウィスキー、ウォッカ、ジン、ラム、ブランデー及びテキーラから選ばれるアルコール飲料を添加してなることを特徴とする単細胞化食品入りアルコール飲料である。
【0018】
請求項7の発明は、請求項6に記載の単細胞化食品入りアルコール飲料をブレンダー又はミキサーにかけて得られることを特徴とするフローズンタイプの単細胞化食品入りアルコール飲料である。
【0019】
請求項8の発明は、果物及び野菜から選ばれる植物材料に対し、細胞壁を分解せずかつ細胞間物質を選択的に分解することができる単細胞化酵素を25〜40℃で60〜180分間作用させて前記植物材料の全細胞の90%以上を単細胞化し、更に未分解物質を除去し、−0.5℃〜−5℃でチップ状又はキューブ状に凍結させることを特徴とする氷菓タイプの単細胞化食品の製造方法である。
【0020】
請求項9の発明は、請求項8に記載の氷菓タイプの単細胞化食品に、ワイン、シャンパン、焼酎、日本酒、老酒、ビール、リキュール、ウィスキー、ウォッカ、ジン、ラム、ブランデー及びテキーラから選ばれるアルコール飲料を添加し、その単細胞化食品入りアルコール飲料をブレンダー又はミキサーにかけることを特徴とするフローズンタイプの単細胞化食品入りアルコール飲料の製造方法である。
【0021】
本発明によれば、野菜及び果物から選ばれる植物材料に、細胞壁を分解せずかつ細胞間物質を選択的に分解することができる単細胞化酵素を作用させることにより、細胞を傷付けることなく全ての組織をばらばらにすることができると共に、細胞を潰さず細胞壁や細胞膜はそのまま残っている状態の液体状物を得ることができ、その液体状物は、それぞれの細胞内に栄養成分、香気成分、色素成分を多く含んでおり、また、それぞれの細胞内に特有の臭い成分・苦味成分などを閉じ込めている。従って、その液体状物をチップ状又はキューブ状に凍結した氷菓タイプの単細胞化食品は、食した際に、体に良く、しかも食べ易いものである。
【0022】
なお、本発明において、キューブ状とは、液体を略立方体に凍結させたものを意味し、また、チップ状とは、液体をあまり厚みをもたない(立方体以外の)形状に凍結させたものを意味する。
【0023】
また、本発明において、氷菓とは、食する目的で植物材料を凍結させた状態のものを意味し、その形状は、特に、上記チップ状又はキューブ状に限定されるものではない。
【0024】
また、本発明の氷菓タイプの単細胞化食品は、90%以上が単細胞化されているので、凍結前の液体状物の各粒径が小さく、しかも、細胞内水分と細胞外水分の糖度が略同一であるため、各粒径の分布が揃っており、比重が均一で、沈澱や分離が起りにくく、冷凍(保存)後解凍しても原料の細胞が壊れず、長期間に亘って保存することができる。
【0025】
更に、本発明の氷菓タイプの単細胞化食品は、液体の状態で加圧殺菌した場合に、各粒径が液体中でフリーな状態にあるため、原料の細胞を破壊することなく殺菌することができるので、凍結前に大腸菌やその他の一般細菌を死滅させることができるため、安全性が高いものである。
【0026】
更に、本発明の単細胞化食品の製法方法によれば、今までにない美味しさ、新鮮さ、安全性を有するフローズンタイプの単細胞化食品入りアルコール飲料を効率良く製造することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の氷菓タイプの単細胞化食品は、果物及び野菜から選ばれる植物材料に、細胞壁を分解せず、かつ細胞間物質を選択的に分解することができる単細胞化酵素を作用させて、前記植物材料の全細胞の90%以上、好ましくは100%を単細胞(シングルセル)化した液体状物をチップ状又はキューブ状に凍結してなる単細胞化食品である。
【0028】
この場合、前記果物及び野菜から選ばれる植物材料は、単一の細胞の集合体ではなく、それぞれ独自の機能を持った細胞の集団である組織と器官とからなりたっている。このような組織と器官は二重の細胞壁と細胞膜で囲まれた無数の細胞が、プロトペクチンを主体とし、少量のヘミセルロース、ペクチン、リグニンを含有する細胞間物質により互いに膠着されて構成されている。
【0029】
前記細胞間物質を単細胞化酵素により選択的に分解することにより、単細胞化した液体状物が得られる。
【0030】
前記単細胞化した液体状物は、細胞内水分が分離することなく、且つ、それぞれの細胞を破壊することなく、−0.5℃〜−5℃、特に−0.5℃〜−2℃でチップ状又はキューブ状に凍結することができる。
【0031】
この場合、前記単細胞化した液体状物は、−0.5℃〜−5℃でチップ状又はキューブ状に凍結可能であるため、この単細胞化した液体状物を、一旦、チップ状又はキューブ状に凍結させて製造した氷菓タイプの単細胞化食品を、ブレンダー又はミキサーにかけると、加水や加氷を必要としない果汁100%のフローズンタイプの単細胞化食品ができる。
【0032】
また、外国から野菜や果物を原料とする果汁100%ジュースを大量に輸入する場合、従来は、輸出前に、一旦、果汁100%ジュースを濃縮し、タンカー等に積み込み、冷蔵又は冷凍状態で輸送し、輸入後に、その濃縮ジュースを加水(調整)し、商品化していたが、前記単細胞化した液体状物は、凍結時に水分と果汁とが分離せず、−0.5℃〜−5℃で凍結可能なため、その液体状物をそのままタンカー等に積み込み、凍結させて輸送することが可能であることから、保存性・輸送性の両面に優れたものである。
【0033】
更に、前記単細胞化した液体状物は、温度40℃以上、圧力300kgf/cm2以上、時間5分間以上の条件で連続加圧殺菌した場合にも、それぞれの細胞を破壊されることがなく大腸菌や一般細菌を死滅させることが可能なことにより、(品質)安全性の面でも優れたものである。
【0034】
前記果実及び野菜としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0035】
前記野菜としては、例えば、キャベツ、レタス、白菜、小松菜、ホウレン草、チンゲン菜、春菊、ネギ、玉ねぎ、あさつき、わけぎ、ニラ、人参、ごぼう、じゃがいも、さつまいも、里芋、れんこん、かぼちゃ、なす、きゅうり、ピーマン、パプリカ、セロリ、アボガド、みつば、水菜、大根、トマト、大豆、小豆、えんどう豆、空豆、アスパラガス、オクラ、インゲン豆、枝豆、たけのこ、グリンピース、アーティチョーク、エシャロット、空心菜、ししとう、みょうが、パセリ、サラダ菜、ブロッコリー、カリフラワー、ラディッシュ、ズッキーニ、ハーブ(ミント、セージ、ローズマリー、レモングラス、ローリエ、タイム、ディル)、かぶ、豆苗、シソ、トウガン、クレソン、にがうり、わさび、生姜、にんにく、とうがらし、等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
前記果物としては、例えば、リンゴ、オレンジ、みかん、レモン、いちご、柿、バナナ、すいか、メロン、さくらんぼ、ぶどう、いちじく、ざくろ、キウイ、グレープフルーツ、マンゴー、パパイヤ、スターフルーツ、ゆず、なし、いよかん、夏みかん、はっさく、ライチ、パイナップル、パッションフルーツ、梅、びわ、桃、すもも、あんず、プルーン、栗、ブルーベリー、クランベリー、きんかん、ドラゴンフルーツ、グァバ、あけび、アロエ、等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
これらの中でも、特に、リンゴ、イチゴ、メロン、桃、人参、さつまいも、アボガド及びケールから選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0038】
前記単細胞化処理の代表的な方法としては、ペクチン等からなる細胞間物質を、ペクチナーゼ等で酵素処理することにより選択的に分解する方法を挙げることができる。なお、本発明においては、細胞壁を分解する酵素であるセルラーゼは用いられない。
【0039】
前記細胞壁を分解せず、かつ細胞間物質を選択的に分解することができる酵素としては、例えば、Aspergillus nigerやRhizopus sp.等由来のポリガラクツロナーゼ(polygalacturonase)、ペクチナーゼ(pectinase);Aspergillus nigerやAspergillus japonicus等のAspergillus sp等由来のペクチンリアーゼ(pectin lyase);Aspergillus japonicus等由来のペクトリアーゼ(pectolyase)などが挙げられるが、植物材料の細胞壁を分解せずかつ細胞間物質を選択的に分解することができる酵素であれば特に制限されず用いることができる。
【0040】
これら酵素は、例えば、前記Rhizopus sp.やAspergillus sp.などから通常の公知の方法により単離したものを用いることが可能である。これらの酵素を植物材料に作用させる場合には、その酵素の至適温度及び至適pHなどの至適条件で作用させ、かつ最小量を用いることが好ましい。なお、前記至適温度は、通常25〜40℃であり、至適pHは、通常pH4〜6である。
【0041】
前記単細胞化酵素の添加量は、酵素の種類、力価、植物材料の種類などに応じて異なり一概には規定できないが、通常、植物材料100質量部に対して0.1〜5質量部である。
【0042】
前記酵素反応の後に、残りがちな植物の外皮、繊維質、梗、芯、種子などは、例えば10〜50メッシュ程度の篩を用いて篩別除去することにより、単細胞の懸濁液が得られる。
【0043】
また、単細胞化した液体状物(飲食品)の糖度は、単細胞化していないものと同程度であるが、単細胞化により甘味を感じ易くなり、飲み易くなるものである。
【0044】
更に、単細胞化することにより−0.5℃〜−5℃で6ヶ月間以上凍結保存が可能であり、解凍した後も細胞が壊れることなく、良好な風味を維持することができる。
【0045】
本発明の氷菓タイプの単細胞化食品の製造方法は、果物及び野菜から選ばれる植物材料に対し、細胞壁を分解せずかつ細胞間物質を選択的に分解することができる単細胞化酵素を作用させて前記植物材料の全細胞の90%以上、好ましくは100%を単細胞化し、更に、単細胞化しなかった未分解物質を除去し、その後、その液体状物をチップ状又はキューブ状に凍結するものである。
【0046】
この場合、25〜40℃で60〜180分間攪拌下で反応させることが好ましい。
【0047】
また、内部に回転するスクリューを備えたニーダー中に適当なサイズにカットした果物や野菜を投入し、ニーダーを25〜40℃に保温しながらスクリューを回転させていくことにより連続的に単細胞化した液体状物を効率よく製造することができる。
【0048】
ここでいう、「適当なサイズにカットし」とは、単細胞化酵素を植物材料に効果的に反応させるために原料となる果物や野菜の表面積を増やすために行なうものであり、そのサイズは、使用する単細胞化酵素の種類や原料により異なるものである。
【0049】
また、反応温度・反応時間もまた、使用する単細胞化酵素の種類や原料により異なるものである。
【0050】
本発明の氷菓タイプの単細胞化食品は、フレッシュジュース、アイスキャンデー、アイスクリーム、ヨーグルト、シャーベット、天然調味料などに好適に用いられるものであるが、ワイン、シャンパン、焼酎、日本酒、老酒、ビール、ウォッカ、ジン等のアルコール飲料と混合してカクテルなどとすることも可能である。
【0051】
また、本発明のフローズンタイプの単細胞化食品入りアルコール飲料の製造方法は、前記単細胞化した液体状物をチップ状又はキューブ状に凍結し、該凍結した氷菓タイプの単細胞化食品をブレンダー又はミキサーにかけて得られるフローズンタイプの単細胞化食品に、ワイン、シャンパン、焼酎、日本酒、老酒、ビール、リキュール、ウィスキー、ウォッカ、ジン、ラム、ブランデー及びテキーラから選ばれるアルコール飲料を添加することにより製造することができる。
【0052】
更に、本発明のフローズンタイプの単細胞化食品入りアルコール飲料の製造方法は、前記単細胞化した液体状物をチップ状又はキューブ状に凍結し、該凍結した氷菓タイプの単細胞化食品にワイン、シャンパン、焼酎、日本酒、老酒、ビール、リキュール、ウィスキー、ウォッカ、ジン、ラム、ブランデー及びテキーラから選ばれるアルコール飲料を添加し、その単細胞化食品入りアルコール飲料をブレンダー又はミキサーにかけることにより製造することができる。
【0053】
【実施例】
以下、実施例を示し、本発明について更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって何ら限定されるものではない。
【0054】
〔実施例1〕 イチゴジュース
イチゴをよく洗浄した後、ヘタを除去し、原料の表面積を増やし単細胞化の効果を上げるため1cm角位にカットし、ニーダー(釜)に投入した。
単細胞化酵素としてペクチナーゼを約0.2質量%添加し、35℃で約90分間攪拌下で反応させることにより、液状化された。10〜50メッシュ程度の篩を用いて残渣を除去することで単細胞化イチゴジュース(液体状物)が得られた。
【0055】
得られた単細胞化イチゴジュース(液体状物)を顕微鏡で観察すると1グラム中に106〜107個の細胞が観察でき、略100%単細胞化できていた。
次に、ガラス容器に入れた単細胞化イチゴジュース(液体状物)を設定温度−10℃の恒温槽内に入れ、凍結が開始するまでの試料温度を測温抵抗体にて計測した。なお、容器内の試料は計測中、スターラーにより攪拌されている。凝固点は測定試料の過冷却解除後、一定温度に達した温度にて決定した(凝固潜熱領域)。試料温度の経時変化を図1に示す。
測定の結果、単細胞化イチゴジュース(液体状物)の凝固点は−1.4℃、過冷却度は2.4℃であった。
この単細胞化イチゴジュース(液体状物)を6ヶ月間凍結保存し解凍した後も風味は変化がなった。
【0056】
〔実施例2〕 メロンジュース
メロンの果実をよく洗浄した後、果皮を除去し、原料の表面積を増やし単細胞化の効果を上げるため1cm角位にカットし、ニーダー(釜)に投入した。
単細胞化酵素としてペクチナーゼを約0.2質量%添加し、35℃で約90分間攪拌下で反応させることにより、液状化された。10〜50メッシュ程度の篩を用いて残渣を除去することで単細胞化メロンジュース(液体状物)が得られた。
【0057】
得られた単細胞化メロンジュース(液体状物)を顕微鏡で観察すると1グラム中に106〜107個の細胞が観察でき、略100%単細胞化できていた。
次に、単細胞化メロンジュース(液体状物)について実施例1と同様にして凝固点を測定した。試料温度の経時変化を図2に示す。
測定の結果、単細胞化メロンジュース(液体状物)の凝固点は−1.3℃、過冷却度は0.3℃であった。
この単細胞化メロンジュース(液体状物)を6ヶ月間凍結保存し解凍した後も風味は変化がなった。
【0058】
〔実施例3〕 ブルーベリージュース
ブルーベリーの果肉をよく洗浄した後、果皮と種子とを除去し、ニーダー(釜)に投入した。
単細胞化酵素としてペクチナーゼを約0.2質量%添加し、35℃で約90分間攪拌下で反応させることにより、液状化された。10〜50メッシュ程度の篩を用いて残渣を除去することで単細胞化ブルーベリージュース(液体状物)が得られた。
【0059】
得られた単細胞化ブルーベリージュース(液体状物)を顕微鏡で観察すると1グラム中に106〜107個の細胞が観察でき、略100%単細胞化できていた。
次に、単細胞化ブルーベリージュース(液体状物)について実施例1と同様にして凝固点を測定した。試料温度の経時変化を図3に示す。
測定の結果、単細胞化ブルーベリージュース(液体状物)の凝固点は−2.2℃、過冷却度は0.3℃であった。
この単細胞化ブルーベリージュース(液体状物)を6ヶ月間凍結保存し解凍した後も風味は変化がなった。
【0060】
〔実施例4〕 リンゴジュース
国産赤リンゴをよく洗浄した後、果皮と芯とを除去し、原料の表面積を増やし単細胞化の効果を上げるため1cm角位にカットし、ニーダー(釜)に投入した。
単細胞化酵素としてペクチナーゼを約0.2質量%添加し、35℃で約90分間攪拌下で反応させることにより、液状化された。10〜50メッシュ程度の篩を用いて残渣を除去することで単細胞化リンゴジュース(液体状物)が得られた。この単細胞化リンゴジュース(液体状物)は淡白色(リンゴそのままの色)であり、搾ったリンゴジュースのように透明なお茶色ではなかった。
【0061】
得られた単細胞化リンゴジュース(液体状物)を顕微鏡で観察すると1グラム中に106〜107個の細胞が観察でき、略100%単細胞化できていた。
この単細胞化リンゴジュース(液体状物)は−1℃で分離することなくキューブ状に凍結し、6ヶ月間保存し解凍した後も風味は変化がなった。
【0062】
〔実施例5〕 ニンジンジュース
ニンジンをよく洗浄した後、皮を剥き、えぐ味のある首部を1cm幅程度除去し、原料の表面積を増やし単細胞化の効果を上げるため1cm角位にカットし、ニーダー(釜)に投入した。
単細胞化酵素としてペクチナーゼを約0.2質量%添加し、35℃で約90分間攪拌下で反応させることにより、液状化された。10〜50メッシュ程度の篩を用いて残渣を除去することで単細胞化ニンジンジュース(液体状物)が得られた。この単細胞化ニンジンジュース(液体状物)はニンジンそのままの赤色であった。
【0063】
得られた単細胞化ニンジンジュース(液体状物)を顕微鏡で観察すると1グラム中に106〜107個の細胞が観察でき、略100%単細胞化できていた。
この単細胞化ニンジンジュース(液体状物)は−0.5℃で分離することなくチップ状に凍結し、6ヶ月間保存し解凍した後も風味は変化がなった。
【0064】
〔実施例6〕 ピーチジュース
桃をよく洗浄した後、果皮と芯と種子とを除去し、原料の表面積を増やし単細胞化の効果を上げるため1cm角位にカットし、ニーダー(釜)に投入した。
単細胞化酵素としてペクチナーゼを約0.2質量%添加し、35℃で約90分間攪拌下で反応させることにより、液状化された。10〜50メッシュ程度の篩を用いて残渣を除去することで単細胞化ピーチジュース(液体状物)が得られた。この単細胞化ピーチジュース(液体状物)は、淡白色(桃そのままの色)であった。
【0065】
得られた単細胞化ピーチジュース(液体状物)を顕微鏡で観察すると1グラム中に106〜107個の細胞が観察でき、略100%単細胞化できていた。
このピーチジュースは−1.5℃で分離することなくチップ状に凍結し、6ヶ月間保存し解凍した後も風味は変化がなった。
【0066】
〔実施例7〕 フレッシュリンゴジュース入りサワー
実施例4のキューブ状に凍結した単細胞化リンゴジュース 5〜10質量部焼酎 50質量部炭酸 50質量部
【0067】
〔実施例8〕 フレッシュピーチジュース入りカクテル(ベリーニ)
下記処方に従って、チップ状に凍結した実施例6の単細胞化ピーチジュースをブレンダーにかけてフローズンタイプの単細胞化食品とした後に、フロート型のシャンパングラスに注ぎ込み、そこにグレナデンシロップを加した後、ステアし、そこに冷やしたスパークリングワインを注ぐことにより、ベリーニを作成した。
実施例6のチップ状に凍結した単細胞化ピーチジュース 33質量部スパークリングワイン 66質量部
グレナデンシロップ 少量
【0068】
〔実施例9〕 フローズンイチゴシャーベット
実施例1のキューブ状に凍結した単細胞化イチゴジュースをカキ氷機にかけることによりフローズンイチゴ100%シャーベットが得られた。
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、野菜及び果物から選ばれる植物材料を単細胞(シングルセル)化した後、その液体状物を凍結することにより、酸化・劣化・変色(褐変)しにくく、原料の有効成分をあますことなく有効利用し、凍結時に細胞内水分が分離しにくく、高温冷凍(−0.5℃〜−5℃)が可能で、保存性・輸送性にも優れた氷菓タイプの単細胞化食品が得られる。
また、本発明の氷菓タイプの単細胞化食品の製造方法によれば、前記氷菓タイプの単細胞化食品を極めて効率よく製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1の試料の凝固点測定における温度変化を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例2の試料の凝固点測定における温度変化を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例3の試料の凝固点測定における温度変化を示すグラフである。
Claims (9)
- 果物及び野菜から選ばれる植物材料に、細胞壁を分解せずかつ細胞間物質を選択的に分解することができる単細胞化酵素を作用させて、前記植物材料を単細胞化した液体状物をチップ状又はキューブ状に凍結してなることを特徴とする氷菓タイプの単細胞化食品。
- 前記単細胞化酵素が、ポリガラクツロナーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンリアーゼ及びペクトリアーゼから選ばれる請求項1に記載の氷菓タイプの単細胞化食品。
- −0.5℃〜−5℃で凍結可能である請求項1又は2のいずれかに記載の氷菓タイプの単細胞化食品。
- 前記植物材料の全細胞の90%以上を単細胞化した液体状物を温度40℃以上、圧力300kgf/cm2以上、時間5分間以上の条件で加圧殺菌した際に、該細胞が破壊しないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の氷菓タイプの単細胞化食品。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載の氷菓タイプの単細胞化食品をブレンダー又はミキサーにかけて得られることを特徴とするフローズンタイプの単細胞化食品。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の単細胞化食品に、ワイン、シャンパン、焼酎、日本酒、老酒、ビール、リキュール、ウィスキー、ウォッカ、ジン、ラム、ブランデー及びテキーラから選ばれるアルコール飲料を添加してなることを特徴とする単細胞化食品入りアルコール飲料。
- 請求項6に記載の単細胞化食品入りアルコール飲料をブレンダー又はミキサーにかけて得られることを特徴とするフローズンタイプの単細胞化食品入りアルコール飲料。
- 果物及び野菜から選ばれる植物材料に対し、細胞壁を分解せずかつ細胞間物質を選択的に分解することができる単細胞化酵素を25〜40℃で60〜180分間作用させて前記植物材料の全細胞の90%以上を単細胞化し、更に未分解物質を除去し、−0.5℃〜−5℃でチップ状又はキューブ状に凍結させることを特徴とする氷菓タイプの単細胞化食品の製造方法。
- 請求項8に記載の氷菓タイプの単細胞化食品に、ワイン、シャンパン、焼酎、日本酒、老酒、ビール、リキュール、ウィスキー、ウォッカ、ジン、ラム、ブランデー及びテキーラから選ばれるアルコール飲料を添加し、その単細胞化食品入りアルコール飲料をブレンダー又はミキサーにかけることを特徴とするフローズンタイプの単細胞化食品入りアルコール飲料の製造方法。
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