JP2003534305A - 酢酸ビニルを製造するための統合された方法 - Google Patents

酢酸ビニルを製造するための統合された方法

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Abstract

(57)【要約】 本発明は、次の段階、すなわち、(a) 第一の反応域において、エタンから本質的になるガス状供給材料を触媒の存在下に分子状酸素含有ガスと接触させて、酢酸及びエチレンを含む第一の生成物流を生成し; (b) 第二の反応域において、上記第一のガス状生成物流を触媒の存在下に分子状酸素含有ガスと接触させて、酢酸ビニルを含む第二の生成物流を生成し; (c) 段階(b) の生成物流を分離し、そして段階(b) からのこの生成物流から酢酸ビニルを回収する段階を含む、酢酸ビニルを製造するための統合された方法を開示する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は一般的には酢酸ビニルの統合された製造方法に関し、詳しくは、エタ
ンから本質的になるガス状供給材料から酢酸ビニルを製造するための統合された
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に酢酸ビニルは、酢酸ビニルの製造に活性を示す触媒の存在下に酢酸及
びエチレンを分子状酸素と接触させることによって商業的に製造される。適切に
は、この触媒は、触媒担体上に担持されたパラジウム、アルカリ金属酢酸塩助触
媒及び場合により使用される共助触媒(例えば金またはカドニウム)からなり得
る。カルボニル化によって製造される酢酸は、その際に通常使用される触媒系に
由来するヨウ化物が潜在的な酢酸ビニル製造用触媒の触媒毒と認識されているた
め、一般的に、とりわけそれを除くために大がかりな精製を必要とする。
【0003】 複数のプロセスを組み合わせて酢酸ビニルを製造することは当技術分野におい
て公知である。例えば、国際特許出願公開第98/05620号は、先ず、エチレン及び
/またはエタンを酸素と接触させて、酢酸、水及びエチレンからなる第一の生成
物流を生成し; 追加のエチレン及び/または酢酸の存在下または不存在下にお
ける第二の反応域において、上記の第一の生成物流を酸素と接触させて、酢酸ビ
ニル、水、酢酸及び場合によってはエチレンからなる第二の生成物流を生成し; この第二段階からの生成物流を、蒸留することによって、酢酸ビニル及び水か
らなる塔頂共沸留分と、酢酸からなる塔底留分に分離し; そして塔底留分から
酢酸を回収しそして場合によっては前記共沸留分を再循環するか、または前記共
沸留分から酢酸ビニルを回収することを含む、酢酸ビニル及び/または酢酸の製
造方法を開示している。エチレンを酢酸にまたはエタンを酢酸に酸化するための
ものとして国際特許出願公開第98/05620号に提案されている触媒は、以下の式 Pda M b TiP c O x [ 式中、MはCd、Au、Zn、Tl、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択され
る] で表される触媒であり、エタンを酢酸に酸化するための他の触媒は、以下の式 VPa M b O x [ 式中、Mは、Co、Cu、Re、Fe、Ni、Nb、Cr、W 、U 、Ta、Ti、Zr、Zn、Hf、Mn
、Pt、Pd、Sn、Sb、Bi、Ce、As、Ag及びAuから選択される] で表される触媒であり、並びにエタン及び/またはエチレンを酸化してエチレン
及び/または酢酸を生成するための触媒は、構成要素A、X及びYからなる触媒
であり、ここで、AはMod Ree W f であり、XはCr、Mn、Nb、Ta、VまたはWで
ありそしてYはBi、Ce、Co、Cu、Fe、K 、Mg、Ni、P、Pb、Sb、Si、Sn、Tlまた
はUである。
【0004】 国際特許出願公開第98/05620号に提案されている、エタンを酢酸及びエチレン
に酸化するための他の触媒は、以下の式 Mox V y Z z [ 式中、Zは、Li、Na、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Hg、Sc、Y 、La、Ce、Al
、Tl、Ti、Zr、Hf、Pb、Nb、Ta、As、Sb、Bi、Cr、W 、U 、Te、Fe、Co、Niから
選択される] で表されるものである。
【0005】 国際特許出願公開第98/05620号中に引用されている米国特許(US-A)第5,185,30
8 号には、触媒1L及び1時間当たり酢酸ビニル555 g〜993 gの範囲の空時収
量が達成される例が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題の一つは、原料供給の唯一の外部炭素源としての、エタンから本
質的になるガス状供給材料から酢酸ビニルを製造するための統合された方法であ
って、触媒1L1時間当たり酢酸ビニル100 〜2000g、好ましくは500 〜1500g
の範囲の空時収量を発揮するような方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
それゆえ、本発明は、酢酸ビニルを製造するための統合された方法であって、
以下の段階、すなわち (a) 第一の反応域において、エタンから本質的になるガス状供給材料を触媒の存 在下に分子状酸素含有ガスと接触させて、酢酸及びエチレンを含む第一の生 成物流を生成し、 (b) 第二の反応域において、前記第一のガス状生成物流を触媒の存在下に分子状 酸素含有ガスと接触させて、酢酸ビニルを含む第二の生成物流を生成し、 (c) 段階(b) の生成物流を分離し、そしてこの段階(b) からの生成物流から酢酸 ビニルを回収する、 段階を含む上記方法を提供する。
【0008】 本発明の方法は、或る部類の触媒が、非常に高い選択性及び非常に高い空時収
量を持ってエタンを、酢酸とエチレンとの所定の混合物に転化できるという知見
に基づくものである。このようなエチレン/酢酸混合物を反応器に直接供給して
酢酸ビニルを生成することができる。
【0009】 エチレンの代わりにエタンを供給材料として使用することの利点は、後者が天
然ガスから入手可能なことである。天然ガスの加工処理プロセスでは、幾つかの
エタン含有混合物が得られる。これらは通常は単に燃やしてしまうものであるが
、これらを全て本発明方法を実施するための炭素供給材料として使用することが
できる。好ましくは、エタンをより多く含む混合物(エタン含量が90%の高純度
エタン; PERP-Report “Natural Gas Liquids Extraction", 94/95S4, 第60頁
参照)を、本発明に記載の方法に使用することができる。
【0010】 本発明の統合された酢酸ビニル製造プロセスの具体的な利点は、原則的に、基
幹設備、ユーティリティ類及び他の機能を組み合わせることができることであり
、例えばただ一基の供給ガス圧縮機及びオフガス洗浄システムだけが要求される
が、一方で、別々の酢酸製造プロセス及び酢酸ビニル製造プロセスの場合は、そ
れら各々の供給ガス圧縮機及びオフガス洗浄系が必要とされる。本発明の段階(a
) 及び(b) を組み合わせることによって、二つのプロセスを別々に行う場合と比
較して中間的に貯蔵を行う必要性が減少される。これらの利点の全てが、低減さ
れた資本コスト及び操業コストに繋がる。
【0011】 本発明では、エタンから本質的になるガス状供給材料を、第一の反応域におい
て、エタンを酢酸及びエチレンに酸化するのに活性を示す触媒の存在下に分子状
酸素含有ガスと接触させて、酢酸及びエチレンを含む第一の生成物流を生成させ
る。
【0012】 エタンを酢酸及びエチレンに酸化するのに活性を示す上記触媒は、ドイツ特許
出願公開(DE-A)第197 45 902号に記載されるような如何なる適当な触媒からでも
なることができる。なお、このドイツ特許出願公開明細書の内容は本書に掲載さ
れたものとする。これらの触媒は、以下の式 Moa Pdb X c Y d で表される。なお、式中X及びYは以下の意味を有する。
【0013】 Xは、Cr、Mn、Nb、Ta、Ti、V 、Te及びW からなる群の一種または二種以上の
元素から選択され、 Yは、B 、Al、Ga、In、Pt、Zn、Cd、Bi、Ce、Co、Rh、Ir、Cu、Ag、Au、Fe、
Ru、Os、K 、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Nb、Zr、Hf、Ni、P 、Pb、Sb、Si、Sn、
Tl及びU からなる群の一種または二種以上の元素から選択され、そしてa、b、
c及びdはグラム原子比であり、 aは1であり、 bは0.0001〜0.01、好ましくは0.0001〜0.005 であり、 cは0.4 〜1、好ましくは0.5 〜0.8 であり、そして dは0.005 〜1、好ましくは0.01〜0.3 である。
【0014】 好ましい触媒は、XがVでありそしてYがNb、Sb及びCaであるものである。上
記のグラム原子範囲を超えるPd比は、二酸化炭素の生成を促し、そして上記のグ
ラム原子範囲より低いPd比は、エチレンの生成に有利に働く。本発明の方法に特
に好ましい触媒の一つは、Mo1.00Pd0.00075V0.55Nb0.09Sb0.01Ca0.01である。
【0015】 本発明の利点の一つは、第一反応域で生成される酢酸への選択性とエチレンへ
の選択性との比率を、各々、例えば反応温度、全圧、供給物の組成、滞留時間な
どの反応パラメータを変更することによって幅広い範囲、すなわち0〜95%の範
囲で変えることができることである。
【0016】 エタンの酸化に活性を示す上記触媒は、担持された状態でまたは担持されてい
ない状態で使用することができる。適当な担体の例には、シリカ、ケイ藻土、モ
ンモリロナイト、アルミナ、シリカアルミナ、酸化ジルコニウム(ジルコニア)
、二酸化チタン(チタニア)、炭化ケイ素、活性炭、及びこれらの混合物が包含
される。エタンの酸化に活性を示す上記触媒は、固定床または流動床の形で使用
することができる。
【0017】 反応域において使用される分子状酸素含有ガスは、空気、あるいは空気よりも
分子状酸素を多量にまたは少量含むガスであることができる。適当なガスの一つ
は、例えば、適当な希釈剤、例えば窒素または二酸化炭素で希釈された酸素であ
り得る。好ましくは、分子状酸素含有ガスは、エタン供給材料とは独立して、第
一反応域に供給される。
【0018】 本発明方法のエタン供給材料は、実質的に純粋なものあることができるか、ま
たは天然ガスの分離によって発生する成分の様な他のガスで僅かに希釈されてい
てもよく[ すなわち、例えば90重量%の純度(PERP-Report "Natural Gas Liquid
s Extraction 94/95S4, p.60”] 、あるいは窒素、二酸化炭素、水素及び低濃度
のC3/C4 アルケン/アルカンの一つまたは二つ以上との混合物であることができ
る。硫黄などの触媒毒は除くべきである。また同様に、アセチレンの量を最小限
に抑えることも有利である。不活性成分の量は、経済的な理由からのみ制限され
る。
【0019】 本発明方法の段階(a) は、適切には、エタン、分子状酸素含有ガス、水蒸気及
び必要に応じて追加の不活性成分を触媒中に通すことによって行うことができる
。水蒸気の量は、適切には、0〜50体積%の範囲であることができる。エタンと
酸素とのモル比は、適切には、1:1 〜10:1、好ましくは2:1 〜8:1 の範囲である
ことができる。
【0020】 本発明方法の段階(a) は、適切には、200 〜500 ℃、好ましくは200 〜400 ℃
の温度で行うことができる。
【0021】 本発明方法の段階(a) は、適切には、大気圧または加圧下に、例えば1〜100
bar 、好ましくは1〜50 barの範囲の圧力下に行うことができる。
【0022】 合間に酸素供給手段を備えた反応器カスケードであってもよい段階(a) の反応
器設計に依存して、典型的には、10〜100 %、特に10〜40%の範囲のエタン転化
率が本発明方法の段階(a) において達成され得る。
【0023】 典型的には、90〜100 %の範囲の酸素転化率が、本発明方法の段階(a) におい
て達成され得る。
【0024】 本発明方法の段階(a) では、触媒は、適切には、触媒1リットル1時間当たり
酢酸/エチレン100 〜2000gの範囲の生産性[ 空時収量(STY)]、好ましくは酢酸
/エチレン100 〜1500gの範囲の生産性を有する。
【0025】 酢酸ビニル製造反応器(本発明の段階(b))に供給するのに必要なエチレン/酢
酸比は、適切には、段階(a) の反応パラメータ、例えば反応温度、全圧、ガス空
間速度、各々の反応体の分圧を変えることによって、特に段階(a) の供給物中の
水蒸気分圧を変えることによって調節し得る。
【0026】 本発明の段階(a) は、固定床並びに流動床式反応器において行うことができる
【0027】 段階(a) からのガス状生成物流は、所定の比率の酢酸及びエチレン、加えて水
を含み、そしてエタン、酸素、窒素及び副生成物、すなわち一酸化炭素及び二酸
化炭素を含み得る。通常は、段階(a) においては一酸化炭素は全く生じないかま
たは非常に少ない量で(<100ppm) 生ずる。一酸化炭素が5%までの比較的多い量
で生ずる場合は、必要ならば、例えば吸着させるかあるいは分子状酸素含有ガス
で燃焼して二酸化炭素とすることによって、段階(a) の後に除去してもよい。好
ましくはエチレンは、酢酸ビニルへの直接転化に必要とされる量で段階(a) のガ
ス状生成物流中に存在する。
【0028】 段階(a) からのガス状生成物は、場合によっては追加の分子状酸素含有ガス、
場合によっては追加のエチレン及び場合によっては──好ましくは段階(c) の酢
酸ビニル分離工程から回すことができる──追加の酢酸と一緒に段階(b) の第二
反応域に直接供給することができる。
【0029】 本発明方法の段階(b) で使用される、酢酸ビニル製造に活性を示す触媒は、当
技術分野で公知の如何なる適当な触媒からでもなることができ、例えばヨーロッ
パ特許出願公開(EP-A)第330 853 号、英国特許出願公開第1 559 540 号、米国特
許第5,185,308 号及び国際特許出願公開第99/08791号に記載されるような触媒か
らなることができる。
【0030】 ヨーロッパ特許出願公開(EP-A)第0 330 853 号は、追加の助触媒としてAuの代
わりにPd、K 、Mn及びCdを含む全体が含浸された酢酸ビニル製造用触媒を開示し
ている。
【0031】 英国特許出願公開第1 559 540 号は、エチレン、酢酸及び酸素の反応による酢
酸ビニルの製造に活性を示す触媒を開示しており、この触媒は、本質的に、 (1) 10重量%濃度の水性懸濁液とした場合のpH値が3.0 〜9.0 であり、そして 3〜7mmの粒径及び0.2 〜1.5ml/g の孔体積を有する触媒担体: (2) 前記触媒担体の表層中に分布されたパラジウム- 金合金; なお、この表 層は、前記担体の表面から0.5mm 未満の深さまで伸び、前記合金中のパラジ ウムは、触媒1L当たり1.5 〜5.0 gの量で存在し、そして金は、触媒1L 当たり0.5 〜2.25gの量で存在する: (3) 触媒1L当たり5〜60gのアルカリ金属酢酸塩: を含んでなる。
【0032】 米国特許第5,185,308 号は、エチレン、酢酸及び含酸素ガスから酢酸ビニルを
製造するのに活性を示す、外殻が含浸された触媒を開示しており、この触媒は、
本質的に、 (1) 約3〜約7mmの粒径及び1g当たり0.2 〜1.5ml の孔体積を有する触媒担 体: (2) 触媒担体粒子の1.0mm 厚外層中に分布されたパラジウム及び金: 及び (3) 酢酸カリウム約3.5 〜約9.5 重量%; なおここで、前記触媒中での金と パラジウムの重量比は0.6 〜1.25の範囲である: を含んでなる。
【0033】 国際特許出願公開第99/08791号は、特にエチレン及び酢酸を気相酸化して酢酸
ビニルを生成するための、多孔性担体上に担持された金属ナノ粒子を含む触媒を
製造する方法を開示している。この発明は、多孔性の担体粒子上に担持された周
期律表の第Ib及びVIIIb 亜族からなる金属群から選択される一種または数種の金
属を含む触媒を製造する方法であって、周期律表の第Ib及びVIIIb 亜族の金属の
化合物群から選択される一種または数種の前駆体を多孔性担体に適用する第一段
階; 及び少なくとも一種の前駆体が適用された多孔性(好ましくはナノ多孔性
の)担体を少なくとも一種の還元剤で処理して、上記担体の孔中でその場("in
situ")で生成された金属ナノ粒子を得る第二段階を特徴とする前記方法に関する
ものである。
【0034】 典型的には、本発明方法の段階(b) は、気相中に存在する反応体を用いて不均
一系で行われる。
【0035】 本発明方法の段階(b) で使用されるエチレン反応体は、本方法の段階(a) で生
産される。
【0036】 本発明方法の段階(b) で使用される分子状酸素含有ガスは、段階(a) からの未
反応分子状酸素含有ガス及び/または追加の分子状酸素含有ガスを含み得る。好
ましくは、この分子状酸素含有ガスの少なくとも一部は、酢酸及びエチレン反応
体からは独立して第二の反応域に供給される。
【0037】 本発明方法の段階(b) は、適切には、140 〜220 ℃の範囲の温度で行うことが
できる。
【0038】 本発明方法の段階(b) は、適切には、1〜100barの範囲の圧力で行うことがで
きる。
【0039】 段階(b) は、反応熱を適切に除去することができる適当な設計の如何なる反応
器中でも行うことができ、これの好ましい技術的解決策は固定床または流動床式
反応器である。
【0040】 本発明方法の段階(b) では、5〜50%の範囲の酢酸転化率が達成され得る。
【0041】 本発明方法の段階(b) では、20〜100 %の範囲の酸素転化率が達成され得る。
【0042】 本発明方法の段階(b) では、触媒は、適切には、触媒1リットル1時間当たり
酢酸ビニル100 〜2000gの範囲の生産性(STY)を有するが、触媒1L1時間当た
り酢酸ビニル>10000gの生産性も適切である。
【0043】 本方法の段階(b) からの第二生成物流は、酢酸ビニル及び水を含み及び場合に
よっては未反応の酢酸、エチレン、エタン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素及び
恐らく存在する痕跡量の他の副生成物も含む。本発明方法の段階(b) と段階(c)
の間に、エチレン及び存在する場合はエタン、一酸化炭素及び二酸化炭素を第二
生成物流から除去することが好ましく、この際、これらは、ガス洗浄塔から塔頂
ガス留分として除去するのが適切であり、そして塔底からは、酢酸ビニル、水及
び酢酸を含む液状留分が取り出される。
【0044】 酢酸ビニル、水及び酢酸を含む段階(b) からの第二の生成物流は、中間的な洗
浄段階を介してまたはこれを介さずに、段階(c) において蒸留して、酢酸ビニル
及び水を含む塔頂共沸留分と酢酸を含む塔底留分に分離する。
【0045】 酢酸ビニルは、適切には例えばデカンテーションによって、段階(c) で分離さ
れた共沸留分から回収される。この回収された酢酸ビニルは、必要に応じて、公
知の方法で更に精製してもよい。段階(c) で分離された酢酸を含む塔底留分は、
更に精製をしてからまたは好ましくは精製せずに直接、本方法の段階(b) に再循
環することが好ましい。
【0046】 本方法で製造される酢酸ビニルの全体的な空時収量(STY)(エタン基準)は、
触媒1L1時間当たり酢酸ビニル100 〜5000gの範囲、好ましくは500 〜1500g
の範囲である。
【0047】 全体的な収量は、反応体の比率及び/または本方法の段階(a) 及び/または段
階(b) の反応条件を互いに独立して調節する(例えば酸素濃度及び/または反応
温度並びに圧力を各々独立して調節する)などの幾つかの手段によって調節する
ことができる。
【0048】 以下、本発明方法に使用するための装置を図式的に示す図1に基づいて本発明
方法を例示する。
【0049】 この装置は、第一反応域(1) 、第二反応域(2) 及び洗浄塔(3) からなる。
【0050】 使用の際は、分子状酸素含有ガス、場合により水蒸気、加えてエタンから本質
的になるガス状供給材料(4) を、エタンを酸化して酢酸及びエチレンを生成する
のに活性を示す触媒を含む第一反応域(1) に供給する。プロセスの規模に応じて
、この第一反応域(1) は、単一の反応器または並列もしくは直列式の複数の反応
器からなることができる。この第一の反応域は、また、反応器カスケードからな
ることもでき、この場合は、各反応器の間で、追加の分子状酸素含有ガスを供給
することができる。酢酸、エチレン、未反応供給材料、場合によっては未消費の
分子状酸素含有ガス及び水を含む第一のガス状生成物流を、一酸化炭素、二酸化
炭素及び不活性成分と一緒に第一の反応域(1) から抜き、そして第二の反応域(2
) に供給する。追加の分子状酸素含有ガス(5) 及び/またはエチレン(6) を、第
一の反応域(1) から抜いた生成物流と混合することができる。第二の反応域(2)
では、酢酸ビニルの製造に活性を示す触媒の存在下に、酢酸及びエチレンを分子
状酸素含有ガスと接触させる。プロセスの規模に応じて、この第二の反応域(2)
は、単一の反応器または並列もしくは直列式の複数の反応器からなることができ
る。酢酸ビニル、水、場合によってはエタン、ガス状副生成物並びに未反応の酢
酸及びエチレンを含む生成物流を第二の反応域(2) から抜きそして洗浄塔(3) に
供給する。この洗浄塔(3) において、エチレン及び場合によってはエタンを含む
ガス状流を不活性成分、一酸化炭素及び二酸化炭素副生成物と一緒に塔頂から抜
きそして第一の反応域(1) に再循環する。酢酸ビニル、水、未反応酢酸及び恐ら
く存在する高沸点プロセス生成物を含む液体流を洗浄塔(3) の塔底から抜き、そ
して図示はしてないが技術水準に属する装置にて酢酸ビニルを単離する。例えば
、蒸留塔に供給することができ、ここで、酢酸ビニル及び水が共沸混合物として
取り出されそして酢酸及び恐らく存在する高沸点生成物はこの蒸留塔の塔底から
ブリードとして排出される。この蒸留塔からの塔頂流中に含まれる水はデカンタ
ー中で酢酸ビニルから分離することができ、そしてデカンターから除かれた酢酸
ビニル生成物流は、当技術分野で公知の慣用の手段によって精製される。
【0051】 二酸化炭素副生成物は、当技術分野で公知の実行可能な如何なる技術的方法に
よっても除去することができ、このような方法には、例えばK2CO3 水溶液中に可
逆的に吸収させる方法があり、なおこのK2CO3 水溶液は脱着塔(図示せず)中で
再生される。
【0052】 本発明を以下の実施例によって例示する。
【0053】
【実施例】
触媒の調製 例(1) 触媒の調製(Mo1.00Pd0.00075V0.55Nb0.09Sb0.01Ca0.01O x ) 溶液1:水400ml 中のモリブデン酸アンモニウム(リーデル- デ・ハーン社)80
g 溶液2:水400ml 中のメタバナジン酸アンモニウム(リーデル- デ・ハーン社) 29.4g 溶液3:ニオブアンモニウムオキサレート[H.C. スタルク(Starck)社]19.01g シュウ酸アンチモン[ ファルツ・アンド・ベーアー(Pfaltz & Bauer)社 ] 1.92g、及び 水200ml 中の硝酸カルシウム( リーデル- デ・ハーン社)1.34 g 溶液4:エタノール200ml 中の酢酸パラジウム(II)[ アルドリッヒ(Aldrich) 社 ] 0.078 g 溶液1、2及び3をそれぞれ別々に70℃で15分間攪拌した。次いで、溶液3を
溶液2に注ぎ入れ、そして70℃で更に15分間一緒に攪拌し、その後、溶液1に加
えた。次いで、溶液4を加えた。
【0054】 得られた混合物を蒸発処理して、残留全体積量800ml を得た。この混合物を18
0 ℃で噴霧乾燥し、得られた粉末をその後、静的空気中120 ℃で2時間乾燥しそ
して300 ℃で5時間か焼した。生じた触媒Iを圧縮し、粉砕しそして篩分けして
0.35〜0.70mmの顆粒画分とした。 例(2) 触媒IIの調製:K,Pd,Au/TiO2 酢酸パラジウム(アルドリッヒ社)2.11g及び酢酸金1.32gを酢酸30ml中に溶
解した。使用した前記酢酸金の製造法は例えば米国特許(US-A)第4,933,204 号に
記載されている。TiO2担体(P24 ペレット, デグッサ社, ハーナウ在)100mlを、
前記の酢酸パラジウム及び酢酸金からなる溶液に加えた。次いで、ロータリーエ
バポレーターを用いて70℃で殆どの酢酸を蒸発させ、次いでその残留物を、オイ
ルポンプを用いて60℃で蒸発処理しそして最後に減圧乾燥室中で60℃で14時間乾
燥させた。窒素中10体積%水素のガス混合物を、500 ℃及び1bar で1時間、生
じたペレットに直接導通(40 l/h) させることによってこのペレットを還元した
。カリウムイオンを負荷させるために、この還元されたペレットを、混合装置中
で15分間、水30ml中に酢酸カリウム4g含む溶液中に入れた。
【0055】 次いで、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を蒸発させた。次いで、ペレ
ットを100 ℃で14時間乾燥した。
【0056】 同じ方法を用いて触媒IIを三回分調製した。これらは、それぞれIIa 、IIb 及
びIIc と称す。 触媒作用試験 本発明の段階(a) 及び(b) に記載の接触反応を行うために、二重壁固定床式反
応器(内径は各々14mm及び20mm、長さは350mm )を使用した。この反応器を油浴
を用いて外部管から加熱した。典型的には、5ml及び15mlの触媒は、各々、不活
性材料、例えば典型的にはガラス、石英またはアルミナ顆粒物またはビーズと例
えば2:1 、1:1 、1:2 、1:5 の触媒:不活性材料体積比で部分的に混合した。反
応器のデッドスペースを減らすために、触媒床の前後において反応器に不活性材
料(上に述べたようなもの)を充填した。体積流量は、典型的には質量及び液体
流れコントローラーによって各々調節した。
【0057】 反応生成物の分析は、系に接続されたガスクロマトグラフィーによって行った
【0058】 単一の反応器を用いて本発明の段階(a) を行った場合の触媒I[ 例(1)]の触
媒作用測定の結果を表1に示す。結果の比較が簡単にできるように、同じ全圧(1
5bar) で行った測定を記載する。
【0059】 表1に示すデータは以下の通り定義される。 エタンの転化率[%] = (0.5* [CO]+0.5* [CO2]+[C2H4]+[CH3COOH])/(0.5* [CO]+0.5* [CO2]+[C2H4]+[C2 H6]+[CH3COOH])* 100 エチレンへの選択性[%] = ([C2H4])/(0.5 * [CO]+0.5* [CO2]+[C2H4]+[CH3COOH]) * 100 酢酸への選択性[%] = ([CH3COOH])/(0.5* [CO]+0.5* [CO2]+[C2H4]+[CH3COOH]) * 100 ここで、 [ ] は、モル%の濃度であり、 [C2H6]は、転化されていないエタンの濃度であり、 τ[s] は、反応条件における、触媒の体積(ml)/ガスの体積流量(ml/s)であり、
STY は、生成物g数/(l触媒* h)である。
【0060】
【表1】
【0061】 表1は、本発明の段階(a) の生成物混合物中の所望のエチレン/酢酸比を、種
々の反応パラメーターを変更することによって簡単に調節できることを明らかに
示している。 酢酸ビニルの製造のために本発明の段階(b) において触媒II[ 例(2)]を使用し
た。触媒作用試験を、150 〜170 ℃の範囲の反応温度及び8〜9bar の反応圧力
において行った。
【0062】 本発明の段階(b) を行う場合の触媒II[ 例( 2)]の触媒作用測定の結果を表2
に示す。 表2に示すデータは以下のように定義される。 酢酸ビニル(VAM) への選択性[%] = ([VAM])/([VAM]+0.5* [CO]+0.5* [CO2])* 100 ここで、 [ ] は、モル%の濃度であり、 STY は、生成物g数/(l触媒* h)である。
【0063】
【表2】
【手続補正書】特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書
【提出日】平成14年3月9日(2002.3.9)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07C 69/15 C07C 69/15 // C07B 61/00 300 C07B 61/00 300 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG ,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD, RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM,AU, AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CN,C R,CU,CZ,DM,DZ,EE,GD,GE,HR ,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KG,KP, KR,KZ,LC,LK,LR,LT,LV,MA,M D,MG,MK,MN,MX,MZ,NO,NZ,PL ,RO,RU,SG,SI,SK,SL,TJ,TM, TR,TT,TZ,UA,US,UZ,VN,YU,Z A (72)発明者 フリッチ・ジョン アメリカ合衆国、テキサス州、コーパス・ クリスチー、ファイブ・ポインツ・ロー ド、4334 Fターム(参考) 4H006 AA02 AC12 AC46 AC48 BA02 BA05 BA06 BA10 BA12 BA13 BA14 BA25 BA30 BC31 BC32 BE30 BS10 KA11 4H039 CA21 CA65 CA66 CC10 CC40 CD10

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次の段階、すなわち a) 第一の反応域において、エタンから本質的になるガス状供給材料を、触媒の 存在下に分子状酸素含有ガスと接触させて、酢酸及びエチレンを含む第一の 生成物流を生成し、 b) 第二の反応域において、前記第一のガス状生成物流を触媒の存在下に分子状 酸素含有ガスと接触させて、酢酸ビニルを含む第二の生成物流を生成し、 c) 段階(b) の生成物流を分離しそして段階(b) からのこの生成物流から酢酸ビ ニルを回収する、 段階を含む、酢酸ビニルを製造するための統合された方法。
  2. 【請求項2】 段階(a) のためのガス状供給材料が、エタン、分子状酸素含
    有ガス及び前記ガス状供給材料の全体積を基準にして0〜50体積%の量の水蒸気
    を含んでなり、この際、エタンと酸素との比率が1:1 〜10:1の範囲である、請求
    項1の方法。
  3. 【請求項3】 第一生成物流におけるエチレンへの選択性と酢酸への選択性
    との比率が0:95〜95:0である、請求項1または2の方法。
  4. 【請求項4】 第一反応域における触媒が、以下の式 Moa Pdb X c Y d [ 式中、X及びYは以下の意味を有する; Xは、Cr、Mn、Nb、Ta、Ti、V 、Te及びW からなる群の一種または二種以上の元
    素から選択され、 Yは、B 、Al、Ga、In、Pt、Zn、Cd、Bi、Ce、Co、Rh、Ir、Cu、Ag、Au、Fe、Ru
    、Os、K 、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Nb、Zr、Hf、Ni、P 、Pb、Sb、Si、Sn、Tl
    及びU からなる群の一種または二種以上の元素から選択され、 そしてa、b、c及びdはグラム原子比であり、以下の意味を有する; a=1、 b=0.0001〜0.01、好ましくは0.0001〜0.005 、 c=0.4 〜1、好ましくは0.5 〜0.8 、及び d=0.005 〜1、好ましくは0.01〜0.3] で表されるものである、請求項1〜3のいずれか一つの方法。
  5. 【請求項5】 追加のエチレン及び/または酢酸を第二の反応域に供給する
    、請求項1〜4のいずれか一つの方法。
  6. 【請求項6】 分子状酸素含有ガスを、エタン供給材料とは独立して第一の
    反応域に供給する、請求項1〜5のいずれか一つの方法。
  7. 【請求項7】 分子状酸素含有ガスを、酢酸及びエチレン反応体から独立し
    て第二の反応域に供給する、請求項1〜6のいずれか一つの方法。
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