JP2003514774A - 自己の腫瘍関連抗原に対する強い免疫応答の誘導 - Google Patents

自己の腫瘍関連抗原に対する強い免疫応答の誘導

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Abstract

(57)【要約】 本発明は、自己抗原からなる抗原に対する免疫応答の効果を増強する方法に関する。本発明の方法は、(i) 宿主を自己抗原の模擬物で免疫して、自己抗原に対する免疫寛容を解消し、(ii) 該自己抗原に対する応答を、本来の抗原を用いた追加免疫により増強する、ことを含んでなる。免疫応答はあらゆる自己抗原に対して引き出すことができ、自己抗原としては、例えば、腫瘍関連抗原、細胞表面受容体、受容体リガンド、サイトカイン、ホルモン、またはその発現が疾病もしくは障害と関連している自己抗原などがある。本発明の方法を用いると、免疫応答の誘導を通して、癌患者において腫瘍関連抗原をもつ標的腫瘍細胞を破壊することができる。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 本発明は、自己抗原からなる抗原に対する免疫応答の効果を増強する方法に関
する。本発明の方法は、(i) 宿主を、自己抗原の模擬物により免疫して、自己抗
原に対する免疫寛容を解消し、(ii) 該自己抗原に対する応答を、本来の抗原を
用いた追加免疫により増強する、ことを含んでなる。免疫応答はあらゆる自己抗
原に対して引き出すことができ、自己抗原としては、例えば、腫瘍関連抗原、細
胞表面受容体、受容体リガンド、サイトカイン、ホルモン、またはその発現が疾
病もしくは障害と関連している自己抗原などがある。本発明の方法を用いると、
免疫応答の誘導を通して、癌患者において腫瘍関連抗原をもつ標的腫瘍細胞を破
壊することができる。 【0002】発明の背景 自己抗原をはじめとする、いくつかの抗原に応答する宿主の能力を増強するた
めに、多くの免疫療法が利用されている(Bodey, 2000, Anticancer Research 20
:2665-2676; Irvineら, 1997, J. Natl. Cancer Inst. 89:1595-1601; Marnula
ら, 1994, J. Immunol. 152:1453-1460; Cooneyら, 1993, Proc. Natl. Acad. S
ci. USA 90:1882-1886; WO 97/39771および米国特許第5,798,100号)。宿主によ
って発現された腫瘍関連抗原のほとんどは、突然変異を起こしていない自己抗原
であり、したがって、そのような抗原に対する免疫応答を容易に引き出すことは
できない。しかしながら、自己抗原に対する免疫応答の誘導に効果的であること
が示された免疫原として、ペプチド模擬物がある(WO 00/38515; 米国特許第5,67
9,647号)。かかるペプチド模擬物には、例えば、そのアミノ酸配列が自己抗原に
対して高度な相同性を示すが、完全には同一でない異種間の腫瘍関連抗原(Naftz
gerら, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:14809-14814; Overwijkら, 199
8, J. Exp. Med., 188:277-286); (ii) MHCクラスI抗原に対する親和性を高め
るためにアンカー残基および/またはT細胞受容体に接触するアミノ酸が改変さ
れた腫瘍関連抗原のアミノ酸配列に由来するペプチド(Bakkerら, 1997, Intl. J
. Cancer, 70:302-309; Dyallら, 1998, J. Exp. Med., 188:1553-1561; Rivolt
iniら, 1999, Cancer Res., 59:301-306); および(iii) 腫瘍関連抗原の内部イ
メージをもつ抗イディオタイプ(抗id)抗体(Shoenfeldら, 1997, Idiotypes in
medicine: Autoimmunity, infection and cancer, Elsevier Science, Amsterd
am; 米国特許第5,798,100号; 米国特許第5,780,029号)がある。 【0003】 さまざまなタイプの腫瘍関連抗原をまねた抗id抗体が臨床試験において免疫原
として使用されている(概説のために、Shoenfeldら, 前掲を参照のこと)。少
なくとも3つの抗原系において、抗id抗体は、対応する抗原よりも自己抗原に対
する免疫寛容の解消に有効であることが見出された。というのは、抗id抗体が抗
原に結合する抗体を誘導したのに対して、名目上の抗原は誘導しなかったからで
ある(Von Kleistら, 1966, Immunology, 10:507-515; Collatzら, 1971, Int. J
. Cancer, 8:298-303; Lo Gerfoら, 1972, Int. J. Cancer, 9:344-348; Hamby
ら, 1987, Cancer Res., 47:5284-5289; Mittelmanら, 1992, Proc. Natl. Acad
. Sci. USA, 89:466-470; Livingstonら, 1993, Ann. NY. Acad. Sci. 690:204-
213; Chapmanら, 1994, Vaccine Res., 3:59-69; Foonら, 1995, J. Clin. Inve
st., 96:334-342)。 【0004】 自己抗原の免疫原性の欠如は、自己同一性の樹立の間に、高い親和性でもって
自己抗原を認識するB細胞クローンが失われることを反映しているようである。
これに対して、対応する抗id抗体の免疫原性は、自己同一性の樹立の間に欠失さ
れなかったB細胞クローンを抗id抗体が刺激できることによると考えられる。な
ぜならば、B細胞クローンが、欠失に必要とされる閾値より低い親和性でもって
対応抗原と反応する抗体を分泌するからである。名目上の抗原に類似しているが
同一ではない抗id抗体は、自己抗原上に発現された抗原決定基に弱くはまり込む
抗体を分泌するB細胞クローンを刺激する。その結果、分泌された抗抗id抗体と
名目上の抗原との反応性は、免疫性の抗id抗体との反応性が高いにもかかわらず
、低いものである。このモデルは、(i) 抗原結合性の抗抗id抗体と、名目上の抗
原により誘導された対応抗体とは、それらの細部の特異性が同一ではなく類似し
ていること(Vialeら, 1989, J. Immunol., 143:4338-4344; Bhattacharyaら, 19
90, J. Immunol., 145:2758-2765; Marianiら, 1991, J. Immunol., 147:1322-1
330; Kageshitaら, 1995, Int. J. Cancer, 60:334-340)、および(ii) 抗原結合
性の抗抗idモノクローナル抗体と名目上の抗原との会合定数が、名目上の抗原に
より誘導された対応モノクローナル抗体よりも低いこと(Shinjiら, 1990, J. Im
munol., 144:4291-4297; Chenら, 1993, Ann. NY. Acad. Sci. 690:398-401; Go
ldbaumら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:8697-8701)により支持され
る。 【0005】 こうした免疫学的知見の構造上の根拠は、抗原結合性の抗抗idモノクローナル
抗体と、本来の抗原により誘導された対応モノクローナル抗体との、重鎖および
軽鎖可変部のアミノ酸配列における高度な相同性(同一性ではない)にある(Cat
onら, 1990, J. Immunol., 144:1965-1968; Garciaら, 1992, Science, 257:528
-531; Iwasakiら, Eur. J. Immunol., 24:2874-2881; Ferroneら, 1997)。かく
して、悪性疾患の能動的特異的免疫療法の分野では、自己抗原に対する免疫寛容
を解消するための、また、自己抗原に対する強い免疫応答を引き出すための戦略
を開発する必要性が依然として存在している。 【0006】3.発明の概要 本発明は、自己抗原からなる抗原に対する免疫応答を刺激する方法に関する。
本発明の方法は、(i) 宿主を、自己抗原の模擬物により免疫して、自己抗原に対
する免疫寛容を解消し、(ii) 該自己抗原に対する応答を、本来の抗原を用いた
追加免疫により増強する、ことを含んでなる。本方法を用いて、あらゆる自己抗
原に対する免疫応答を引き出すことができる。自己抗原が腫瘍関連抗原からなる
場合は、本発明は、悪性疾患のための能動的特異的免疫療法の効果を高める方法
を提供する。 【0007】4.図面の説明 図1. マウス抗id mAb MK2-23により誘起された抗HMW-MAA免疫応答の、培養
ヒト黒色腫細胞を用いた追加免疫による増強。ウサギ97-6および97-7を、フロイ
ントアジュバントと混合したKLH結合マウス抗id mAb MK2-23により0日目、14日
目、28日目および42日目に免疫し、56日目に、照射した培養ヒト黒色腫細胞Colo
38(2×106個)を用いて免疫した。49日目に回収した血清(△)は、結合アッ
セイにおいて免疫前血清(○)よりやや高いColo 38黒色腫細胞との反応性を示
した(左側のパネル)。しかし、63日目に回収した血清(△)は、結合アッセイ
において免疫前血清(○)より著しく高いColo 38細胞との反応性を示した(右
側のパネル)。しかし、63日目に回収した血清(右側のパネル)は、Bリンパ系
細胞 L14(▲)よりもColo 38細胞(△)との著しく高い反応性を示した。結果
は、2匹のウサギに由来する血清を用いて得られた、ウェルあたりの結合cpmの
平均±SDとして表される。 【0008】 図2. 抗id mAb MK2-23および黒色腫細胞Colo 38を用いて順次免疫したウサ
ギ由来の血清により125I標識Colo 38黒色腫細胞から免疫沈降された抗原のSDS-P
AGE。ウサギ97-6を、フロイントアジュバントと混合したKLH結合マウス抗id mAb
MK2-23により0日目、14日目、28日目および42日目に免疫し、63日目に培養ヒト
黒色腫細胞Colo 38(1×106個)を用いて免疫した。免疫前(NRS)および40日目(
40)に回収した血清は、抗96K MAA mAb 376.96で免疫枯渇させたColo 38細胞抽出
物からいかなる成分も免疫沈降させなかった。これに対して、63日目に回収した
血清(63)は、HMW-MAAを免疫沈降させた(左側のパネル)。さらに、63日目に回
収した血清(63)は、Colo 38細胞抽出物からmAb 763.74により認識されるHMW-MAA
を分離した(右側のパネル)。対照として抗96K MAA mAb 376.96および抗HMW-MA
A mAb 763.74を用いた。 【0009】 図3. HMW-MAAミニジーン構築の戦略。 【0010】5.発明の説明 本発明は、自己抗原からなる抗原に対する免疫応答の効果を増強する方法に関
する。本発明の方法は、(i) 宿主を、自己抗原の模擬物により免疫して、自己抗
原に対する免疫寛容を解消し、(ii) 該自己抗原に対する応答を、本来の抗原を
用いた追加免疫により増強する、ことを含んでなる。本方法を用いて、あらゆる
自己抗原に対する免疫応答を引き出すことができる。 【0011】 本発明の非限定的な実施形態において、新規の免疫感作戦略は、自己抗原であ
る腫瘍関連抗原に対して強い免疫応答を引き出すために提供される。本方法は、
本来の腫瘍関連抗原に類似するが同一ではない抗原を用いて宿主を免疫すること
を含む。本発明のステップは、(i) 最初に、宿主を腫瘍関連抗原の模擬物で免疫
して、自己抗原に対する不応答性を解消し、(ii) 該自己抗原に対する応答を、
本来の抗原を用いた追加免疫により増強する、ことを含んでなる。なんらかの理
論によって拘束されるものではないが、後者は、体細胞超突然変異のために、本
来の抗原により誘導された抗体に対し、重鎖および/または軽鎖可変部のアミノ
酸配列において、完全ではないにしても高い相同性を示す抗体を分泌するB細胞
の集団を増やすと考えられる。 【0012】 この戦略の妥当性は、モデル系としてヒトの高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA
)を用いることによりウサギで得られた結果から支持される。HMW-MAAをもつヒト
黒色腫細胞は、ヒト対応物と同様の抗原プロファイルおよび組織分布を有するHM
W-MAAを発現するウサギにおいて抗HMW-MAA抗体を誘導しない(Schlingemannら, 1
990, Am. J. Pathol., 136:1393-1405)。しかしながら、HMW-MAAの決定基を模倣
した抗id mAb MK2-23 (Mittelmanら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:466-470;
Kusamaら, 1989, J. Immunol., 143:3844-3852; Chenら, 1993, Cancer Res.,
53:112-119)は、ウサギにおいて低レベルの抗HMW-MAA抗体を誘導した。かかる抗
体のレベルは、HMW-MAAをもつヒト黒色腫細胞による追加免疫(ブースター)後
に、著しく増加した。 【0013】5.1. 自己抗原の模擬物 本発明は、免疫原として、自己抗原の模擬物を用いることによる、癌等の障害
の能動免疫療法を提供する。この方法は、本来の自己抗原と類似しているが、同
じではない抗原からなる模擬物で、宿主を免疫することを含んでなる。本来の自
己抗原とは異なり、模擬物は、自己抗原に対して免疫を誘発することができるペ
プチドとして定義される。 【0014】 自己抗原のペプチド模擬物は、ペプチドライブラリーをスクリーニングするこ
とにより、同定することができる。例えば、ファージ展示ペプチドライブラリー
を、例えば、標的自己抗原と免疫反応性のヒトまたはマウス抗体でパンニングす
ることができる。さらに、模擬物は、例えば、他の生物種に由来する類似の自己
抗原、自己抗原に類似しているがアミノ酸の改変を有するペプチド、もしくは変
性された自己抗原からなるものでもよい。腫瘍関連抗原について、本発明のいく
つかの実施形態を以下に説明するが、本発明の原理は、あらゆる自己抗原に適用
することができる。 【0015】 自己抗原に対する免疫寛容を解消するのに使用することができる自己抗原の模
擬物としては、限定するものではないが、(i)自己抗原のペプチド模擬物;(i
i)このようなペプチド模擬物をコードすることができる核酸分子;または(iii
)上記自己抗原の内部イメージを担持する自己抗原の抗イディオタイプ抗体が挙
げられる。ペプチド模擬物をコードすることができる核酸分子は、一本鎖または
二本鎖のRNAもしくはDNA、またはこれらの誘導体または修飾物であり得る。腫瘍
関連抗原の模擬物は、抗原の断片、エピトープ、もしくは抗原決定基に関するも
のでよい。本発明の特定の非限定的実施形態では、自己抗原は腫瘍関連抗原であ
る。 【0016】 自己抗原のペプチド模擬物は、例えば、標的自己抗原と免疫反応性のヒトまた
はマウス抗体で、ファージ展示ペプチドライブラリーをパンニングすることによ
り同定することができる。このようなファージライブラリーは、市販されている
(Pharmacia)か、当業者には公知の通常の技法を用いてファージライブラリー
を構築することもできる。ペプチド模擬物は、ヒトおよび/またはマウスの抗腫
瘍関連抗原抗体でファージ展示ライブラリーをパンニングすることにより同定さ
れる腫瘍関連抗原のB細胞特定エピトープであってもよい。いったんペプチド模
擬物を発現するファージを同定したら、ペプチド模擬物のDNA配列および推定ア
ミノ酸配列を決定することができる。その後、このような情報を用いて、免疫原
として使用するペプチド模擬物を有利に生成することができる。さらに、免疫寛
容を解消するのに用いられるペプチド模擬物として、本明細書に参照により組み
込まれるWO 00/38515に記載されているものも含まれ、これらに限定されるわけ
ではない。 【0017】 同定されたペプチド模擬物は、当業者には公知の通常の技法を用いて、化学的
に合成することが可能である(例えば、Creighton, 1983, Proteins:Structure
s and Molecular Principles, W.H. Freeman & Co., N.Y.)。さらに、ペプチド
模擬物を修飾することにより、免疫した宿主における免疫応答を刺激するその能
力を高めることもできる。例えば、ペプチド模擬物は、多糖またはペプチドグリ
カン等の免疫原性試薬とのコンジュゲート形成により、あるいは、ペプチド模擬
物のグリコシル化により、修飾してもよい。あるいはまた、ペプチド模擬物は、
ペプチド模擬物のハプテン化により修飾することも可能である。 【0018】 さらに、ペプチド模擬物をコードすることができる核酸分子もまた、当業者に
は公知のあらゆるDNAおよびRNA分子合成法により、免疫原として使用するために
調製することができる。例えば、市販されている試薬および合成装置を用いて、
当業者には公知の方法により、上記核酸を化学的に合成することができる(e.e.
, Gait, 1985, Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach, IRL Press
, Oxford, England)。また、当業者には公知のいずれの好適な手段で核酸を精
製してもよい。あるいは、ペプチド模擬物の遺伝子配列および/またはコード配
列を含む核酸分子を発現させるための当業者には公知の技法を用いて、組換えDN
A技術により、ペプチド模擬物を生産するのも有利である。このような方法を用
いて、ペプチド模擬物をコードするヌクレオチド配列と共に、適切な転写および
翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。使用することが
できる組換えDNA技術の、一般に当業者に公知の方法については下記の文献に記
載されている:Ausubelら(編)、1993, Current Protocols in Molecular Biol
ogy, John Wiley & Sons, NY;およびKriegler, 1990, Gene Transfer and Expr
ession, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY。 【0019】 目的とするペプチド模擬物をコードする核酸分子は、多様な宿主ベクター系に
組換え法により作製することができ、これらの宿主ベクター系はまた、核酸の大
規模複製を可能にするものであって、核酸の転写を指令するのに必要なエレメン
トを含むものである。このような構築物を用いて被験者を免疫することにより、
ペプチド模擬物をコードするRNAの十分な量が転写されるため、ペプチド模擬物
に対する免疫応答の誘導が促進される。例えば、ベクターが細胞に取り込まれる
ようにベクターをin vivoで導入すると、該ベクターはペプチド模擬物をコード
する核酸分子の転写を指令する。このようなベクターは、所望のペプチドすなわ
ちペプチド模擬物を産生するように転写される限り、エピソームのまま存在して
も、染色体に組み込まれてもよい。このようなベクターは、当業界では標準的な
組換えDNA技術により構築することができる。 【0020】 目的とするペプチド模擬物をコードするベクターは、哺乳動物細胞での複製お
よび発現に用いられるプラスミド、ウイルスまたは当業界で公知のその他のもの
でよい。ペプチド模擬物をコードする配列の発現は、哺乳動物、好ましくはヒト
細胞で作動する当業者には公知の任意のプロモーターで調節することができる。
このようなプロモーターは、誘導性もしくは構成性のいずれでもよい。このよう
なプロモーターとしては、限定するものではないが、下記のものが挙げられる:
SV40初期プロモーター領域(Benoist, C.およびChambon, P. 1981, Nature 290:
304-310)、ラウス肉腫ウイルスの3’LTRに含まれるプロモーター(Yamamotoら
、1980, Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner
ら, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1441-1445)、メタロチオネイン
遺伝子の調節配列(Brinsterら、1982, Nature 296:39-42)、ウイルスCMVプロ
モーター、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンβプロモーター(Hollenbergら、1994,
Mol. Cell. Endocrinology 106:111-119)等。あらゆるタイプのプラスミド、コ
スミド、YACまたはウイルスベクターを用いて、組織部位に直接導入が可能な組
換えDNA構築物を調製することができる。あるいは、所望の標的細胞に選択的に
感染するウイルスベクターを用いてもよい。 【0021】 本発明の好ましい実施形態では、ペプチド模擬物をコードするDNAミニジーン
を遺伝子工学的に作製して、免疫原として用いることにより、自己抗原に対する
宿主免疫寛容を解消することができる。このようなペプチド模擬物として、腫瘍
関連抗原のペプチド模擬物および/または腫瘍関連抗原のB細胞エピトープのペ
プチド模擬物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。 【0022】 自己抗原に対する免疫寛容を解消するのに用いるミニジーンは、下記のものを
含む:(i)標的自己抗原のB細胞決定基のペプチド模擬物を含めた、ペプチド
模擬物をコードする核酸分子;(ii)PADREのように、プラズマ細胞への抗原特
異的B細胞の分化のためのヘルパー機能を誘導する普遍的ヘルパーエピトープ;
および(iii)細胞外空間への発現タンパク質の分泌を指令し、これにより、抗
原特異的細胞による抗原の取込みを促進するシグナルペプチド。ミニジーン中の
上記配列の順序は、シグナル配列、ヘルパーペプチドPADREの配列、続いて、HMW
-MAAのB細胞決定基のペプチド模擬物をコードする配列である。隣接するペプチ
ド配列間に介在配列はなく、すべてのペプチド配列が単一のオープンリーディン
グフレームの一部であるようにする。さらに、ミニジーンの5’末端オリゴヌク
レオチド配列は、制限酵素部位NheIをコードする配列と、mRNAの翻訳を促進する
コザックのコンセンサス配列とを含有する。ミニジーンの3’末端オリゴヌクレ
オチドは、フレーム内の終結コドンと、制限酵素部位KpnIとを含む。ミニジーン
の5’末端と3’末端にある異なる制限酵素部位により、以上説明したものを含む
各種発現ベクターへのその定方向クローニングが可能になる。 【0023】 ペプチド模擬物と、このようなペプチド模擬物をコードする核酸分子以外にも
、抗イディオタイプ抗体を自己抗原の模擬物として使用することができる。本発
明の実施形態では、抗イディオタイプ抗体またはそのフラグメント(その抗原結
合部位は、腫瘍関連抗原等の自己抗原を認識する抗体に免疫特異的に結合する)
を用いて、宿主を免疫してもよい。このような抗イディオタイプ抗体を生成する
方法は、当業者には公知である(Kennedyら、1983, Science 221:853-854;Kenn
edyら、1986, Science 232:220-223;Kieber-Emmons, TREら、1986, Int, Rev.
Immunol. 1:1-26)。手短に言えば、抗イディオタイプ抗体を生成するためには
、自己抗原と反応性の抗体、もしくはこのような抗体を産生するハイブリドーマ
を免疫原として用いることができる。免疫感作は標準方法を用いて達成される。
単位用量および免疫計画は、免疫しようとする哺乳動物の種に応じて違ってくる
。典型的には、免疫しようとする哺乳動物から採血し、血液サンプルからの血清
を抗イディオタイプ抗体の存在についてアッセイする。抗イディオタイプのポリ
クローナル抗体は、免疫した動物の血清から直接精製することができる。あるい
は、モノクローナル抗体生成技法を用いて、抗イディオタイプ抗体を産生するハ
イブリドーマ細胞系を作製してもよい。また、馴らしハイブリドーマ培養上清を
回収し、抗体を通常の方法で精製することも可能である。 【0024】5.2. 自己抗原の模擬物による免疫感作 本発明は、腫瘍関連抗原等の自己抗原に対する免疫応答の効果を増強する方法
に関する。本発明の方法は、2つの段階、すなわち、第1段階で、自己抗原の模
擬物で宿主を免疫することにより、免疫寛容を解消すること、および、第2段階
で、本来の抗原を用いた追加免疫により自己抗原に対する応答を高めること、か
ら成る。 【0025】 腫瘍関連抗原の生成を特徴とする疾病に罹患した宿主の免疫寛容を解消するの
に用いることができる腫瘍関連抗原の模擬物としては、例えば、ペプチド模擬物
、このようなペプチド模擬物を発現することができる核酸分子、および/または
抗イディオタイプ抗体が挙げられる。このような抗原に対する免疫学的応答の刺
激は、より有効な腫瘍細胞への攻撃(特に、腫瘍細胞の増殖を阻害することや、
腫瘍細胞の死滅を促すこと)を誘導することを目的とする。 【0026】 さらに、自己抗原の模擬物を用いて、特定の自己抗原の発現に関連する障害ま
たは疾病に罹患した宿主の免疫寛容を解消することができる。このような抗原に
対する免疫学的応答の刺激は、宿主系からの自己抗原の除去、あるいは、このよ
うな自己抗原を発現する細胞の標的破壊を目的とする。 【0027】 免疫原として用いる模擬物は、第5.1節に記載された方法を用いて調製するこ
とができる。免疫感作に用いる模擬物が核酸分子製剤からなる場合には、本発明
の製剤を細胞中に導入するための様々な送達系が知られており、例えば、リポソ
ーム、微粒子、マイクロカプセルへの封入、模擬物を発現することができる組換
え細胞、受容体媒介エンドサイトーシス(例えば、WuおよびWu、1987, J. Biol.
Chem. 262:4429-4432)、レトロウイルスまたはその他のベクターの一部として
の核酸の構築、DNAの注入、電気穿孔、リン酸カルシウム媒介トランスフェクシ
ョン等を実施することができる。当業界で使用可能な宿主への遺伝子送達方法の
いずれも本発明に従って用いることができる。遺伝子送達方法の概要については
、Strauss, M.およびBarranger, J.A., 1997, Concepts in Gene Therapy, Walt
er de Gruyter & Co., Berlin;Goldspielら、1993, Clinical Pharmacy 12:488
-505;WuおよびWu, 1991, Biotherapy 3:87-95;Tolstoshev, 1993, Ann. Rev.
Pharmacol. Toxicol. 33:573-596;Mulligan, 1993, Science 260:926-932;お
よびMorganおよびAnderson, 1993, Ann. Rev. Biochem. 62:191-217;1993, TIB
TECH11(5):155-215を参照のこと。 【0028】 投与のために、適切なアジュバントを用いて模擬物を製剤化することにより、
抗原に対する免疫応答を増強することができる。適切なアジュバントとしては、
限定するものではないが、水酸化アルミニウムのような無機ゲル、リゾレシチン
、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチドおよび油性エマルジョン等
の界面活性物質、ならびに、BCG(カルメットゲラン菌)およびコリネバクテリ
ウム・パルバム(Corynebacterium parvum)等の潜在的に有用なヒトアジュバン
トが挙げられる。 【0029】 多くの方法を用いて、前記製剤を導入することができ、このような方法として
、限定するものではないが、経口、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内および皮下投
与が挙げられる。個体への抗原組成物の導入のための方法および組成物は、当業
者には公知である。 【0030】 模擬物は、所望の効果(すなわち、免疫した宿主における、腫瘍関連抗原等の
自己抗原に対する免疫応答の誘導)を引き出すのに有効な量を投与する。模擬物
の有効用量は、当業者には公知の方法により決定することができる。さらに、免
疫応答を刺激するには、宿主を複数回免疫しなければならない場合もある。多種
多様な方法を用いて、免疫した宿主において、自己抗原に対する免疫応答が刺激
されたかどうかを調べることができる。このような方法として、ウェスタンブロ
ット、免疫沈降とこれに続くドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電
気泳動、免疫細胞化学等がある。 【0031】5.3. 追加免疫による増強 腫瘍関連自己抗原等の自己抗原のペプチド模擬物で初回感作すると、コードさ
れた決定基は自己抗原の決定基に類似しているが同じではないため、低力価で低
結合力の抗模擬物抗体が誘導される。抗原に対する不応答性を解消する能力の基
礎をなす、この免疫感作の特徴によって、自己抗原に対し低結合力を有する抗体
を分泌するBクローンの刺激が起こる。免疫応答の過程で、抗体は体細胞超突然
変異を被り、これら突然変異のいくつかが自己抗原との抗体の反応性を増強する
。従って、突然変異を起こした抗体を分泌するクローンは、本来の自己抗原を用
いた追加免疫により増やすことができる。このように増やすことにより、免疫し
た宿主において自己抗原と高結合力で反応する抗体集団のレベルが著しく増加す
る。 【0032】 従って、腫瘍関連抗原の模擬物で宿主を免疫した後、抗腫瘍関連抗原抗体等の
抗自己抗原抗体の血清レベルを測定する。免疫感作の効果は、抗原すなわち模擬
物を認識する抗体または免疫細胞の産生により評価することができる。当業者で
あれば、前記パラメーターを評価するのに用いられる慣用の方法を理解している
であろう。 【0033】 いったん免疫応答が検出されたら、当業者には公知の通常の免疫方法を用いて
、本来の腫瘍関連抗原で宿主を追加免疫する。免疫応答を増強するのに使用する
ことができる抗原としては、腫瘍関連抗原を発現する腫瘍細胞、精製された腫瘍
関連抗原、腫瘍関連抗原の配列に由来するペプチド、ならびに、腫瘍関連抗原を
発現することができるミニジーン構築物等の核酸分子が挙げられる。宿主の血清
に含まれる抗腫瘍関連抗原抗体のレベルをモニターする。 【0034】6.実施例: HMW-MAAを担持する培養ヒト黒色腫細胞を用いた追加免疫による
増強 フロイントアジュバントと混合したKLH結合マウス抗id mAb MK-23(300μg/
注射)で、ウサギ97-6および97-7を0、14、28および42日目に免疫した。ウサギ
はHMW-MAAを発現し、その組織分布および抗原プロファイルは、ヒト対応物と類
似していた(Schlingemann, R.Oら、1990, Am. J. Pathol. 136:1393-1405)。 【0035】 抗id mAb MK2-23は、HMW-MAAの内部イメージを担持している(Mittelman, A.
ら、1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:466-470;Kasuama M.ら、1989, J.
Immunol, 143:3844-3852;Chen, Z.J.ら、1993, Cancer Res., 53:112-119)。4
9日目に回収した血清は、HMW-MAAを担持する黒色腫細胞Colo 38との低い反応性
を示した(図1)が、放射標識黒色腫細胞からのHMW-MAAの免疫沈降はみられな
かった(図2)。56日目に、Colo 38細胞でウサギを追加免疫した。63日目に回
収した血清は、Colo 38細胞との反応性が増加し(図1)、しかも、放射標識黒
色腫細胞からのHMW-MAAの免疫沈降が認められた(図2)。上記データから、抗
原の模擬物が自己抗原に対する不応答性を解消できることがわかる。模擬物によ
り誘発された低免疫応答は、本来の抗原を用いた追加免疫により増強することが
できる。 【0036】7.実施例: ファージ展示ペプチドライブラリーのパンニングによるHMW-MAA
の異なる抗原決定基のペプチド模擬物の同定 ヒトscFv C21およびマウスmAb 149.53、225.28、763.79、CH704およびTP61.5
は、HMW-MAAの異なる抗原決定基を認識する。Bonnycastleらにより記載された方
法(Bonnycastle, L.L.ら、1996, J. Mol. Biol., 258:747-762)に従い、HMW-M
AAに結合するヒトscFv C21およびマウスmAb 149.53、225.28、763.79、GH704お
よびTP61.5を用いてファージ展示ペプチドライブラリーLX-8およびX15(Morgan,
D.J. ら、1998, J. Immunol., 160:643-651)をパンニングすることにより、免
疫スクリーニングアッセイにおいて対応する抗体と反応したクローンを単離した
(Valadon, P.ら、1996, J. Immunol. Methods, 197:171-179)。ジデオキシヌ
クレオチド・チェーン・ターミネーター法(Sanger, F.ら、1997, Proc. Natl.
Acad. Sci. USA, 74:5463-5467)による、ランダムに選択された陽性クローンの
ヌクレオチド配列分析により、HMW-MAAとの部分的相同性を有する挿入物を同定
した。代表例を表1に示す。 【0037】 【表1】 抗HMW-MAA mAb 149.53、225.28およびGH704を用いたファージ展示ペプチドライ
ブラリーのパンニングにより同定されたペプチドのアミノ酸配列 【0038】 抗体によるファージ展示ペプチドライブラリーのパンニングにより同定された
ペプチド配列に一致する合成ペプチドは、対応する抗体とin vitroで反応するこ
とが示された。さらに、合成ペプチドは、BALB/cマウスにおいて黒色腫細胞と反
応する抗体を誘導することも示された。 【0039】8.実施例: β細胞エピトープのペプチド模擬物をコードするDNAミニジーン
による免疫感作 以下で、i)HMW-MAAを構成的に発現している宿主における、ヒトHMW-MAAのB
細胞エピトープのペプチド模擬物をコードするDNAミニジーンによる免疫感作と
、それに続く、ii)ペプチド模擬物に対応するHMW-MAAの天然B細胞エピトープ
をコードするDNAミニジーンによる追加免疫からなる実験について説明する。 【0040】 ヒトHMW-MAAのB細胞エピトープのペプチド模擬物をコードするDNAミニジーン
は、この抗原を構成的に発現している宿主においてHMW-MAAに対する免疫応答を
誘発するその能力について試験する。上記ミニジーンは、高度に免疫原性である
ことが示されたので、HMW-MAAに対する免疫寛容を解消する免疫原として選択さ
れた。 【0041】 使用する宿主には、ヒトHMW-MAAのトランスジェニックマウスと、ウサギが含
まれる。ヒトHMW-MAAのトランスジェニックマウスは、以下の理由で利用される
:それらは、DNAミニジーンの免疫原性に影響を与え得る多数の可変因子を試験
するのに適しており;宿主の免疫応答における変動性を最小限にする規定および
標準化された遺伝的バックグラウンドを有する宿主の供給源を提供し;試薬およ
び/または方法が入手(使用)できないために、他の動物種では試験できない可
変因子、すなわちサイトカイン、樹状細胞の試験が可能である。 【0042】 また、ウサギはヒトに認められるものと類似した組織分布および抗原プロファ
イルを有するHMW-MAAを発現することから、ウサギも使用される。ウサギは、本
明細書に記載した方法を用いて、宿主の免疫応答に及ぼすウサギとヒトのHMW-MA
Aの類似性(同一性ではない)の効果を調べるために試験される。 【0043】8.1. 材料および方法 8.1.1 細胞抗原決定基およびHMW-MAAの天然B細胞抗原決定基のペプチド模擬物
をコードするミニジーンの作製 細胞傷害性T細胞、B細胞およびヘルパーT細胞のエピトープを発現するペプチ
ドをコードするオリゴヌクレオチド配列は、「ミニジーン」の形で、一緒に組み
立てることができる。ウイルス又はプラスミド系哺乳動物発現ベクターなどの適
当な発現ベクター中への導入後、ミニジーンは、免疫原性が高くなることが知ら
れている(Whitton, J.L.ら, 1993, J. Virol., 67:348-352;An, L.L.ら, 1997
, J. Virol., 71:2292-2302;Ishioka, G.Y.ら, 1999, J. Immunol., 162:3915-
3925)。 【0044】 この研究で用いるミニジーンは、(i)HMW-MAAのB細胞抗原決定基のペプチド模
擬物をコードするオリゴヌクレオチド配列、(ii)抗原特異的B細胞のプラズマ細
胞への分化を補助する普遍的ヘルパーエピトープPADRE、および(iii)シグナルペ
プチドからなる。シグナルペプチドは、発現されたタンパク質の細胞外空間への
分泌を指令して、抗原特異的B細胞による抗原取込みを促進する。 【0045】 ミニジーンは、公知の方法に従って構築する(Ishioka, G.Y.ら, 1999, J. Im
munol., 162:3915-3925)。ミニジーン中の配列の順序は、シグナル配列、ヘル
パーペプチドPADREの配列、次いでHMW-MAAのB細胞抗原決定基のペプチド模擬物
をコードする配列からなる。公知の方法のように、隣り合うペプチド配列の間に
介在する配列はなく、全てのペプチド配列は、単一のオープンリーディングフレ
ームの一部である。さらに、ミニジーンの5'末端オリゴヌクレオチド配列は、制
限酵素部位NheIをコードする配列およびmRNAの翻訳を促進するコザックのコンセ
ンサス配列を含む。ミニジーンの3'末端オリゴヌクレオチドは、フレーム内の停
止コドンおよび制限酵素部位KpnIを含む。ミニジーンの5'および3'末端における
各制限酵素部位は、pcDNA3.1発現ベクター中への定方向クローニングを可能にす
るであろう。 【0046】 ミニジーンは、全長255個のヌクレオチドである。これは、5' NheI制限部位、
コザック配列、シグナルペプチド配列およびPADRE配列を含む120ヌクレオチド長
の5'領域を含む。ミニジーンの3'部分は、135ヌクレオチド長であり、3つのペプ
チド模擬物をコードする配列、停止コドンおよび3'末端KpnI制限部位を含む。こ
れら2つの部分は、別々に組み立てられる。5'部分は、3'部分と重複する15個の
ヌクレオチドも含むので、135ヌクレオチド長のcDNAとして組み立てられる。15
ヌクレオチドからなる中央の重複セグメントを有する75 merのセンスプライマー
と75 merのアンチセンスプライマーを含む2つの重複しているオリゴヌクレオチ
ドプライマーをアニーリングし、PCRで伸長して、135ヌクレオチド長のcDNA産物
を得る。cDNAを、アガロースゲル上での電気泳動によって精製する。3'部分も別
途同様に組み立てる。3'部分は、5'および3'部分の間の中央の重複セグメントが
、5'部分によって提供されるので、135ヌクレオチド長のcDNAとして組み立てら
れる。このようにして、ミニジーンの3'部分は、それらの3'末端に15ヌクレオチ
ドの重複を有する、75 merのセンスプライマーと75 merのアンチセンスプライマ
ーを含む2つの重複オリゴヌクレオチドプライマーによって組み立てられる。2つ
のプライマーをアニーリングし、10サイクルのPCRで伸長し、得られた135ヌクレ
オチド長のcDNAを、アガロースゲル上での電気泳動によって精製する。ミニジー
ンのゲル精製された5'および3'部分を一緒に混合し、10サイクルのPCRを続け、2
55ヌクレオチド長のミニジーンを得る。この全長のミニジーンを、ミニジーンの
5'および3'末端由来の2つの25 merプライマーを用いて選択的に増幅する。PCR増
幅のサイクル条件は、変性のために95℃、15秒;アニーリングのために、オリゴ
ヌクレオチドの重複セグメントの計算上の融解温度より5℃低い温度で30秒;お
よびDNA合成のために72℃、1分である。次いで、255ヌクレオチド長のミニジー
ンを、アガロースゲル電気泳動によって精製し、pCR2.1ベクター(Invitrogen社
製)中にクローニングする。個々のクローンを単離し、配列決定してそれらの配
列同一性を確認した。ミニジーンをNheIおよびKpnI酵素で消化することによって
pCR2.1ベクターから切り出し、発現ベクターpcDNA3.1の同じ制限部位に再度クロ
ーニングする。 【0047】8.1.2 全長HMW-MAA cDNAの合成 A385 metヒト黒色腫細胞から単離される2μgのポリ(A)+RNAから、cDNAライ
ブラリーを構築する。SuperScript II RNase H逆転写酵素(Gibco BRL社製)に
よって、第1鎖cDNAの合成を開始するために、NotI部位を含むオリゴ(dT)プライ
マーアダプターを用いる。2本鎖cDNAは、SuperScript cDNA合成系の残りの手順
を使用し、次いで、Sal Iアダプター連結およびNot I消化によって生成する。回
収された全ての2本鎖cDNAを、λベクターのNot I/Sal I部位に連結する。連結
されたcDNA/ファージDNA混合物を、Gigapack Goldパッケージ抽出物(Stratage
ne社製)を用いてパッケージングし、製造者の仕様書に従って力価検定する。 【0048】 HMW-MAAに対応するcDNAを同定するため、上記cDNAライブラリーのメンバーを
、プロ−ブとして32P標識されたPCR産物を用いて、1×106 cpm/mlのハイブリダ
イゼーション溶液(50%ホルムアミド/5×Denhardt溶液/1%SDS/6× SSPE/0
.2mg/mlサケ精子DNA)で、42℃、16時間でスクリーニングする。メンブランを、
1×SSC/0.5%SDSで、室温で30分間すすぎ、次いで、オートラジオグラフィーの
前に0.1×SSC/0.5%SDSで、65℃で30分間すすぐ。単離された期待サイズのクロ
ーンを、Prism Ready Reaction Cycle Sequencingシステム(Perkin Elmer社製
)を用い、ヌクレオチド当たり少なくとも2回、その全体の配列決定を行う。 【0049】 HMW-MAAメッセージのコード配列の6,966塩基という長さ(Pluschke, G.ら, 19
96, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:9710-9715)故に、従来のクローニング戦
略により単一の全長cDNAクローンを得ることは難しい。あるいは、RT-PCRに基づ
くSMART RACE cDNA増幅プロトコールを、Marathon cDNA増幅キット(Clontech社
製)と組み合わせて用いてもよい。長いRNA鋳型に伴う困難を避けるため、cDNA
構築を3つの部分で行う(図3)。 【0050】 表2に示す合成オリゴヌクレオチドは、簡便なクローニングのために選択され
る固有の制限部位の配列に従って設計される。 【0051】 【表2】 【0052】 HMW-MAA遺伝子の全長cDNAクローンを得るために、全てのcDNA断片の末端は、
隣接する領域のcDNA断片によって共有される重複配列を有する(図3)。PCR産
物を、pBluescript IIベクター(Stratagene社製)中に順次クローニングし、自
動DNAシーケンサー(ABI Prism Model 388 PE-Biosystem, Foster City, CA)を
用いてヌクレオチド配列を決定する。 【0053】 280 bpのNotI/NotI断片である、HMW-MAAミニジーンを完成するため、ヒトお
よびマウスのメラニン形成細胞特異的発現のためのマウスのチロシナーゼの5'プ
ロモーター領域(Kluppel, M.ら, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:3777
-3781)をHMW-MAA cDNA、シミアンウイルス40スプライス部位およびポリアデニ
ル化部位を含むpBluescript II中に連結する(図3)。クローニングされたNotI
/NotI断片の配向をシーケンシングによって決定する。 【0054】8.1.3. ヒトHMW-MAAに対するトランスジェニックマウスの作製および樹立 BssHIIでの開裂によるベクター配列の除去後、低いゲル化温度のアガロースゲ
ルからミニジーンを単離し、ガラス粉末(Geneclean社製;Bio 10I)で精製し、
次いで、透析フィルター(Millipore社製)上で、注入用バッファー(10 mMトリ
ス塩酸、pH7.5/0.1 mM EDTA)に対して透析を行う。 【0055】 雌の前核よりもサイズが大きいため注射針の導入が容易なので、雄の前核中に
トランスジーンの約500〜1,000個のコピー(1〜2 plの2〜5 ng/μl DNA溶液)
を注入する。マイクロインジェクションを行なう日には1日当たり約200個の卵に
注入する。マイクロインジェクション後、卵を5%CO2のインキュベーター中で培
養し、次の日に、2細胞期で偽妊娠状態の雌の卵管に移す。通常、移入の19日後
に子孫が誕生する。 【0056】 トランスジーンの組込みを、最初はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析によっ
てスクリーニングし、続いて各子孫から精製された後半部(tail)のDNAのサザ
ン分析によって確認する。トランスジーン陽性の動物のみを、マウスの元の系統
に戻し交配し、トランスジェニックマウス系を樹立する。開始時のトランスジェ
ニック動物(G0:0世代)は、生殖細胞中のトランスジーンのコピー数および組
込み部位におけるキメラであってもよく、該動物の次の世代(G1)は、トランス
ジーンの分離のために十分に調査する。トランスジェニックマウス系の樹立後、
マウスの一部を犠牲にし、ノーザンブロットおよび免疫組織化学を利用して種々
の組織中におけるRNAおよびタンパク質の発現を試験する。トランスジーンが高
度に発現されている1又は2の代表的なトランスジェニック系を、さらなる実験の
ために選択する。HMW-MAA遺伝子の発現が、メラニン形成細胞中で誘導されるこ
とが予想される。本明細書中に記載された全ての方法は、ルーチンなものである
(Reilly, M.P.ら, 1994, Academic Press, New York, pp. 403-434;Katsumata
, M.ら, 1995, Nature Medicine, 1:644-648)。 【0057】 近交系マウスの使用は、十分な数の適切に受精した卵、およびマイクロインジ
ェクションに対して生存能力の高い胚を得るのに適切ではない場合もあるが、そ
の遺伝子的および生理学的背景が十分に特徴付けされているので、トランスジェ
ニック動物を作出するためにC57BL6/J近交系を選択する。これに加えて、近交系
マウスの生殖能は比較的乏しい。この低い生殖力(reproductivity)は、雄のマ
ウスの不十分な交配能力が主な理由である。この問題を解決するため、幾つかの
雄マウス(Waldman, T.A., 1991, Science, 252:1657-1662;von-Mehrenら, 199
6, Curr. Opin. Oncol., 8:493-498)を、同じケージの中で飼育して、1匹の優
勢な雄のみが交配できるように動物間の競争を誘導する。T細胞受容体遺伝子の
トランスジェニックマウスが、この方法を用いて効率的に作出された。十分な数
の受精卵を得るため、より多数(15匹まで)の雌を交配に用いる。不健康な卵の
割合は高いけれども、それぞれの雌は、少なくとも10〜20個の適切に受精した卵
を産生する。それらの胚のin vitroでの生存が乏しい場合には、胚をマイクロイ
ンジェクションと同じ日に移入する。 【0058】8.1.4. 免疫計画 HMW-MAAトランスジェニックマウスを、皮下へ遺伝子銃を介するcDNAの送達に
よる公知の方法に従ってDNAミニジーンで免疫する(Sundaram, P.ら, 1996, Nuc
l. Acids Res., 24:1375-1377)。簡単に説明すると、スーパーコイル化された
プラスミドDNAを、25 mgの金粒子(平均直径1〜3 mm)を含む100μlの0.1Mスペ
ルミジン中に添加し、次いで、10秒間超音波処理することによって、DNAで被覆
された金粒子を製造する。次いで、連続的に撹拌しながら、200μlの2.5M CaCl2 を添加し、混合物を断続的に撹拌しながら、20℃で10分間インキュベートする。
次いで、DNA被覆粒子を、12,000rpmで30秒間ペレット化し、100%エタノールで3
回洗浄し、3 mlのエタノール中に再懸濁する。長さ21インチのTefzelチューブ(
外径1/8インチ、内径3/32インチ)に、懸濁液を充填し、10分間平らに置き、粒
子を安定させる。次いで、エタノールを静かに除き、チューブを手で回して、粒
子で内壁を被覆する。次いで、チューブを、窒素ガス流中で3〜5分間乾燥する。
それぞれが1μg/0.5 mgの金を含有する、1/2インチの長さにチューブを切断す
ることによって個々の弾丸を作製し、ヘリウム駆動遺伝子銃の12弾丸バレル中に
充填する。マウスをケタミン(30 mg/kg)およびキシラジン(3 mg/kg)で麻酔
する。マウスの背中の面積100 cm2の毛を切り取り、残りの毛および表面のケラ
チンを、市販の脱毛剤で処理する。遺伝子銃を皮膚に当て、バレルを介して350
psiのヘリウム圧力を瞬時に解放することにより各弾丸を接種する。初回および
追加免疫のそれぞれについて、マウスの10ヶ所の部位に接種する。初回免疫を、
0日目に行い、追加免疫を、21日目および42日目に行う。初回免疫の前および各
追加免疫の10日後に血清を得る。 【0059】 マウスについて説明した方法を利用してHMW-MAAのB細胞エピトープのペプチド
模擬物をコードするDNAミニジーンで、10匹のウサギを免疫する。抗HMW-MAA抗体
の検出および特徴付けを、上記のように行う。HMW-MAAのB細胞抗原決定基のペプ
チド模擬物をコードするDNAミニジーンによって免疫されたウサギ(10匹/グル
ープ)を、上記で説明した方法を利用して、対応する天然B細胞抗原決定基を発
現するHMW-MAAの断片をコードするDNAミニジーンで追加免疫する。 【0060】8.1.5. 抗HMW-MAA抗体の検出 液性免疫応答を分析するために利用される方法が、広く利用されてきた(Mitt
elman, A.ら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:466-470;Kusama, M.ら,
1989, J. Immunol., 143:3844-3852;Chen, Z.J.ら, 1993, Cancer Res., 53:11
2-119)。簡単に説明すると、結合アッセイにおいて、培養黒色腫細胞を有する
、HMW-MAAで免疫されたマウス由来の、連続的に2倍希釈された血清を試験するこ
とによって、HMW-MAA結合抗体の濃度を測定する。ビオチン化抗マウスIgGおよび
抗マウスIgM異種抗体を用いて、抗体の結合を検出する。HMW-MAAを発現しないリ
ンパ系細胞への免疫血清の結合を試験することにより、並びに、免疫前の血清お
よび関係のないペプチドをコードするミニジーンで免疫されたマウス由来の血清
で黒色腫細胞を試験することにより、結合の特異性を評価する。 【0061】 125I又は35S標識した黒色腫細胞由来の免疫沈降成分のSDS-PAGE分析によって
、および、対照として抗HMW-MAA mAbを利用する連続的な免疫沈降法によって、
免疫血清のHMW-MAAに対する特異性を評価する。細胞の放射能標識、細胞の可溶
化、免疫沈降、SDS-PAGEおよびオートラジオグラフィー又はフルオログラフィー
は、広く利用されている方法(Chen, Z.J.ら, 1993, Cancer Rees., 53:112-119
)を利用して行う。免疫したマウス由来の血清が、抗体の力価および/又は結合
活性が低いために、放射能標識した黒色腫細胞由来のいかなる成分も免疫沈降さ
せない場合、抗HMW-MAA mAbで被覆されたマイクロタイタープレートへの結合に
より、黒色腫細胞抽出物から精製されたHMW-MAAを用いて試験する。後者は、識
別可能であって、かつ、DNAミニジーンによってコードされるそれらと空間的に
離れた抗原決定基を認識する。ビオチン化抗マウスIgG Fc異種抗体によって、抗
体のHMW-MAAへの結合を検出する。関係のない抗原によって被覆されたプレート
を利用して、結合の特異性をモニターする。 【0062】 免疫ペルオキシダーゼ反応(Schlingemann, R.O.ら, 1990, Am. J. Pathol, 1
36:1393-1405)における黒色腫病変の染色について、HMW-MAA結合性抗体を含む
血清を試験し、抗体がin vivoで抗原と反応することを証明する。バックグラウ
ンドが高いために結果が信頼できない場合には、抗体を、合成ペプチドに対する
アフィニティークロマトグラフィーによって精製し、免疫ペルオキシダーゼ反応
における黒色腫病変および対照組織を染色するのに用いる。 【0063】 交差ブロック実験を用いて、免疫血清中に存在する抗体によって認識される抗
原決定基の地図を作成する。この目的を達成するために、黒色腫細胞を、飽和量
(20μg/ウエル)のマウスモノクローナル抗体のF(ab')2フラグメント、又は、
DNAミニジーンによってコードされる抗原決定基を認識するヒトscFvフラグメン
トと一緒にインキュベートする。洗浄後、免疫血清を細胞に添加し、ビオチン化
抗マウスIgG Fc異種抗体を用いて抗体の結合を検出する。モノクローナル抗体、
および、DNAミニジーンによってコードされる抗原決定基を認識するscFvフラグ
メントの黒色腫細胞への結合を阻害する能力について、免疫血清を試験する。こ
の目的を達成するために、黒色腫細胞を免疫血清で被覆し、次いで、ビオチン化
モノクローナル抗体、および、DNAミニジーンによってコードされる抗原決定基
を認識するscFvフラグメントの能力を試験する。mAbおよび関係のない抗原を認
識する抗血清を用いて、これらのアッセイの特異性を評価する。 【0064】8.1.6. DNAミニジーンを用いた追加免疫による増強 HMW-MAAのB細胞決定基のペプチド模擬物をコードするDNAミニジーンで免疫さ
れたマウス(10匹/グループ)を、対応する天然B細胞抗原決定基を発現するHMW
-MAAの断片をコードするDNAミニジーンで追加免疫する。予備実験において、マ
ウスを、HMW-MAAのB細胞抗原決定基のペプチド模擬物をコードするDNAミニジー
ンを用いて2週間隔で4回の注射、および、対応する天然B細胞抗原決定基を発現
するHMW-MAAの断片をコードするDNAミニジーンを用いて1回の注射で免疫する。
得られた結果に基づいて、2種類のDNAミニジーンでの免疫の回数を変えることも
可能である。対照には、関係のないDNAミニジーンでの免疫を含む。 【0065】 上記で説明した方法に従って、マウスから連続的に採血して、抗HMW-MAA抗体
の濃度をモニターする。HMW-MAAの断片をコードする遺伝子を用いた追加免疫後
のマウス由来血清の黒色腫細胞との反応性の増大は、HMW-MAAのペプチド模擬物
をコードするミニジーン又は抗原決定基の広がり(spreading)によって誘導さ
れる抗体集団の増加を反映しうる(Secarz, E., 1998, Immunol. Rev., 164:5-2
64)。これらの2つの可能性を区別するために、ウサギ由来血清を、ペプチドを
同定するために用いたmAbによるそれらの黒色腫細胞への結合の阻害に対する感
受性について試験する。関係のないmAbおよび抗血清を用いて阻害の特異性を評
価する。用いたmAbが、抗血清の黒色腫細胞への結合を阻害しない場合には、恐
らく抗血清の黒色腫細胞との反応性の増加は、抗原決定基の広がりを反映してい
る。 【0066】8.1.7. 統計的分析 値が正規分布を有するか又は有しないかによって、2標本検定又は2標本Mann-W
hitney検定などの2標本統計手法を用いて、種々の免疫プロトコールによって誘
導される抗体の濃度における統計的差異を分析する。 【0067】9. 実施例:HLA-A2制限CTL特定エピトープの同定 HLA-A2の同種異系特異性(allospecificity)は、全ての人種集団において最
も頻度が高いので、HLA-A2(A*0201)制限エピトープによって、HMW-MAA特異的C
TLを誘導する能力が評価されたミニジーンを構築する。それらのCTLレパートリ
ーは、同一でなくとも、ヒトのそれと類似していることが示されている(Wentwo
rth, P.A., 1996, Eur. J. Immunol., 26:67-101)ので、HLA-A2/Kbトランスジ
ェニックマウスを用いて、HMW-MAAの免疫原性HLA-A2制限T細胞エピトープを同定
する。ヒトHMW-MAAおよびHLA-A2抗原に対するトランスジェニックマウスを利用
して、HMW-MAAのDNAミニジーンの、HLA-A2制限HMW-MAA特異的CTLを誘導する能力
を試験する。HLA-A2トランスジェニックマウスをHMW-MAAトランスジェニックマ
ウスと交配させることによって、後者を作製する。悪性黒色腫を有する患者由来
のPBMCを利用して、動物モデルで特定されたHMW-MAA特異的CTLエピトープを、in
vitroでHLA-A2制限HMW-MAA特異的CTLを産生する能力について試験する。 【0068】 HLAクラスI抗原制限CTLエピトープの同定のために、2つの方法を用いうる。第
1の方法は、CTLを、標的抗原の配列から誘導されたエピトープによる免疫によ
って誘導し、免疫ペプチドでパルスされた抗原提示細胞(APC)によるin vitro
での刺激によって増殖し、次いで、抗原を発現する標的細胞を認識するそれらの
能力を評価する。第2の方法は、cDNAで免疫し、次いでcDNAトランスフェクショ
ンされたAPCによってin vitroで刺激し、次いで、ペプチドでパルスされた標的
細胞において試験するすることによってCTLを生産する。ヘルパーエピトープお
よびシグナルペプチドをコードする配列を含むミニジーンを遺伝子組み換えする
場合、cDNAは、恐らくペプチドよりも好ましい免疫原であろう。コンピュータプ
ログラム(Parkerら, 1994, J. Immunol. 152:163-175)によって同定されたHLA
-A2結合モチーフに基づいて、両方のアプローチで用いるペプチドを選択する。 【0069】 前述のことから、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、上記方法、
および組成物の種々の改変がなされうることは、当業者には自明であろう。従っ
て、本発明は、その精神および本質的な特徴から逸脱することなく他の特定の形
態で具体化することができる。全ての文献は、参照によって本明細書中に組み入
れられる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 マウス抗id mAb MK2-23により誘起された抗HMW-MAA免疫応答の、培養ヒト黒色
腫細胞を用いた追加免疫による増強を示した図である。 【図2】 抗id mAb MK2-23および黒色腫細胞Colo 38を用いて順次免疫したウサギ由来の
血清により125I標識Colo 38黒色腫細胞から免疫沈降された抗原のSDS-PAGEを示
した図である。 【図3】 HMW-MAAミニジーン構築の戦略を示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG ,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD, RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM,AT, AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,C A,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK,DM ,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH, GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,K E,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS ,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN, MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,RO,R U,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM ,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VN, YU,ZA,ZW (72)発明者 ソード,アシュワニ,ケイ. アメリカ合衆国 14221 ニューヨーク州 ウイリアムスビレ,ベルボア ロード 18 (72)発明者 ワン,シン−フィ アメリカ合衆国 14221 ニューヨーク州 ウイリアムスビレ,パルムデール ドラ イブ 249−エス Fターム(参考) 4C084 AA02 AA13 BA44 CA53 CA62 ZB262 ZC612 4C085 AA02 BB11 BB23 CC03 EE01

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 宿主の自己抗原に対する免疫応答を刺激する方法であって、 (i) 宿主を、自己抗原の模擬物により免疫し、 (ii) 該自己抗原に対する応答を、該自己抗原を用いた追加免疫により増強す
    る、 ことを含んでなる上記方法。 【請求項2】 自己抗原が腫瘍関連抗原である、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 腫瘍関連抗原が黒色腫細胞の表面に発現されるものである、
    請求項2に記載の方法。 【請求項4】 前記模擬物がペプチド模擬物である、請求項1に記載の方法
    。 【請求項5】 前記模擬物がペプチド模擬物をコードする核酸分子である、
    請求項1に記載の方法。 【請求項6】 前記核酸分子がミニジーン構築物である、請求項5に記載の
    方法。 【請求項7】 前記核酸分子が腫瘍関連抗原のペプチド模擬物をコードする
    、請求項5に記載の方法。 【請求項8】 腫瘍関連抗原が黒色腫細胞の表面に発現されるものである、
    請求項7に記載の方法。 【請求項9】 前記模擬物が抗イディオタイプ抗体である、請求項1に記載
    の方法。 【請求項10】 抗イディオタイプ抗体が自己抗原抗イディオタイプ抗体で
    ある、請求項9に記載の方法。 【請求項12】 自己抗原が腫瘍関連抗原である、請求項10に記載の方法
    。 【請求項13】 腫瘍関連抗原が黒色腫細胞の表面に発現されるものである
    、請求項12に記載の方法。 【請求項14】 宿主が哺乳動物である、請求項1に記載の方法。 【請求項15】 宿主がヒトである、請求項1に記載の方法。 【請求項16】 宿主が腫瘍関連抗原を発現する、請求項14または15に
    記載の方法。 【請求項17】 腫瘍関連抗原が黒色腫細胞の表面に発現されるものである
    、請求項16に記載の方法。
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