JP2003512839A - 初乳由来の血清アミロイドaアイソフォーム - Google Patents

初乳由来の血清アミロイドaアイソフォーム

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エル. マクドナルド,トーマス
ウェバー,アニカ
アール. マック,デービッド
エー. ラーソン,マリリン
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ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ネブラスカ
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Abstract

(57)【要約】 哺乳類初乳から単離および精製された新規の血清アミロイドA(SAA)が開示される。SAAは、いくつかの哺乳類種、例えばウマ、ウシおよびヒツジの初乳から単離されている。初乳SAAをコードする核酸分子、および初乳SAAに対して免疫学的に特異的である抗体も開示される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 産業上の利用分野 本発明は、免疫学および哺乳類免疫系の分野に関する。特に本発明は、初乳中
に見出される血清アミロイドAの新規のアイソフォームを提供する。
【0002】 発明の背景 いくつかの化学的または特許出版物は、本発明が関係する業界の状態を説明す
るために本特許出願中で参照される。これらの出版物は各々、その記載内容が、
参照により本明細書中に含まれる。
【0003】 哺乳類は、さらなる組織損害を防止し、損害組織の修復を開始し、そして感染
生物体を単離および破壊するための努力において複雑な一連の生物学的反応を実
行することにより、組織損傷、外傷または感染に応答する。この過程は炎症応答
と呼ばれ、その早期および中間段階は急性期応答と呼ばれる。
【0004】 急性期応答は、広範な種々の媒介物質、例えばサイトカイン、インターロイキ
ンおよび腫瘍壊死因子を包含する。それは、肝臓の生合成プロフィールにおける
根本的変化も包含する。正常環境下では、肝臓は一連の血漿タンパク質を定常状
態濃度で合成する。これらのタンパク質のいくつか、即ち「急性期」タンパク質
は、炎症応答においては、正常条件下で見出されるレベルの何倍ものレベルに誘
導される。急性期タンパク質は、Steel & Whitehead(Immunology Today 15: 81-
87, 1994)により再検討されている。
【0005】 大量に誘導される急性期タンパク質の1つが、血清アミロイドA(SAA)で
ある。SAAは実際に、多数の哺乳類種における多数の遺伝子によりコードされ
る多型タンパク質のファミリーを含む。SAAは累積し、炎症応答の急性期中に
高密度リポタンパク質3(HDL3)と迅速に会合する小アポリポタンパク質で
ある。ほとんどのSAAアイソフォームは、炎症に応答して誘導される。しかし
ながら、ある種のSAA(例えばヒトSAA4)は、構成的に発現されるかまた
は炎症応答に際して最小度に誘導されると考えられる。
【0006】 肝臓は、SAA産生の主要部位であると考えられてきた。しかしながら、肝臓
外のSAA産生が、限定的に見出された。例えばSAAmRNAの発現は、ヒト
アテローム硬化症病変において、ならびにヒト培養平滑筋細胞および単球/マク
ロファージ細胞株において報告されており(Meek et al., 1994; Urieli-Shoval
et al., 1994; Yamada et al., 1996)、そしてSAAの独特のアイソフォーム
(SAA3)がウサギ滑膜繊維芽細胞により産生される(Mitchell et al., J.
Clin. Invest. 87:1177-1185, 1991)。さらに近年、SAAmRNAが多数の組
織学的に正常な上皮組織、例えば胃、小腸、扁桃、乳房、前立腺、甲状腺、肺、
膵臓、腎臓、皮膚および脳ニューロンにおいて広範に発現される、ということが
発見された(Urieli-Shoval et al., J. Histochem. Cytochem. 46:1377-1384,
1998)。このような組織におけるSAAの役割は明らかにされておらず、それら
の組織中に存在するSAAが血清中に見出されるものと同一アイソフォームであ
るか否か、あるいはそれらがSAAの付加的アイソフォームを表すか否かは確定
されていない。
【0007】 発明の要約 本発明の一局面によれば、哺乳類初乳から単離および精製され、そして乳腺の
管状上皮細胞により産生される血清アミロイド(SAA)タンパク質が提供され
る。一実施態様では、SAAは、ウマ初乳から単離および精製される。好ましく
はウマ初乳SAAは、(配列番号3)または(配列番号4)、ならびに(配列番
号5)、(配列番号6)、(配列番号7)および(配列番号8)から成る群から
選択される1つまたはそれ以上の配列を含む(図1参照)。
【0008】 別の実施態様では、SAAはウシ初乳から単離および精製され、好ましくは(
配列番号1)であるN末端アミノ酸配列を含む。
【0009】 あるいは、SAAは、ヒツジ初乳から単離および精製され、好ましくは(配列
番号2)であるN末端アミノ酸配列を含む。さらに初乳SAAのN末端配列から
のアミノ酸領域はほとんどの種の間で保存されることが示されており、そして分
子の重要な特性のいくつかに関する分子の活性部分を含有する。
【0010】 本発明の別の局面によれば、哺乳類初乳SAAをコードする単離核酸分子が提
供される。核酸分子は遺伝子、cDNAまたはRNAであり、一本鎖または二本
鎖であり得る。好ましい実施態様では、核酸分子は1つまたはそれ以上の(配列
番号1〜8)をコードする配列、あるいはそれらの保存的修飾化変異体を含む。
最も好ましい実施態様では、核酸分子は、(配列番号12)(図2参照)または
それらの保存的修飾化変異体、例えばその他の初乳SAA配列、同様に同定され
た配列、あるいは本明細書中の教示に記載されるような初乳関連SAAをコード
する任意のその他の核酸を含む。
【0011】 本発明の別の局面によれば、1つまたはそれ以上のアミノ酸配列番号1〜8を
逆翻訳することにより得られる合成オリゴヌクレオチドの集団が提供される。オ
リゴヌクレオチドのこの集団の1つまたはそれ以上の成員は、初乳SAAをコー
ドする遺伝子またはcDNAと特異的にハイブリダイズする。
【0012】 本発明の別の局面によれば、初乳SAAの1つまたはそれ以上のエピトープに
対して免疫学的に特異的な抗体が提供される。好ましくは抗体は、初乳SAAを
血清SAAと識別する初乳SAAの少なくとも1つのエピトープに対して免疫学
的に特異的である。
【0013】 本発明の別の局面によれば、哺乳類からSAAを生成するための方法が提供さ
れる。本方法は、以下の:(1)哺乳類からの初乳の試料を提供し、そして(2
)試料中に含有されるSAAを試料中に含有される他の物質から分離し、それに
より哺乳類からのSAAを生成するという過程を包含する。この方法により製造
されるSAAも提供される。
【0014】 本発明によれば、新規の初乳関連SAA、特に高度保存領域(TFLK)は、
ムチン3(MUC3)産生を刺激する能力も有する。したがって初乳関連SAA
は、腸感染、あるいはその他のムチン抑制性疾患状態、例えば旅行者下痢、乳児
下痢、壊死性腸炎および尿路感染を治療お呼び予防するために、そして家畜動物
における下痢の予防のための獣医学に用いられ得る。したがって本発明は、これ
らのならびに同様の病状を有するその他の疾患を治療するための製薬的有効量の
初乳関連SAAペプチドおよび担体を含む製剤組成物を包含する。最後に、ムチ
ンを産生する粘膜表面のその他の上皮細胞裏張り、例えば鼻咽頭、膀胱等も、そ
れに関連した感染を予防または治療するためのムチン産生を刺激するために、本
発明の製剤組成物で治療され得る。
【0015】 本発明のその他の特徴および利点は、以下の図面、詳細な説明および実施例を
参照することによりさらに良く理解される。
【0016】 発明の詳細な説明 I.定義 本発明の組成物および方法に関する種々の用語は、前記の本明細書中で、そし
て明細書全体および特許請求の範囲でも用いられる。
【0017】 単位、冠詞および記号は、それらのSI容認形態で示され得る。別記しない限
り、それぞれ、核酸は、5‘−3’配向で左から右に記述される。アミノ酸配列
は、左から右にアミノ−カルボキシ配向で記述される。数値範囲はその範囲を限
定する数を含め、そして限定範囲内の各整数を含む。アミノ酸は、本明細書中で
は、それらの一般的に既知の3つの文字記号により、またはIUPAC−IUB
生化学命名委員会により推奨された一文字記号により示され得る。ヌクレオチド
は、同様に、それらの一般的に容認された一文字暗号により示され得る。別記し
ない限り、ソフトウエア、電気および電子用語は、本明細書中で用いる場合、Th
e New IEEE Standard Dictionary of Electrical and Electronics Terms(5th e
dition, 1993)で定義されたものと同様である。以下で定義される用語は、全体
として本明細書を参照することによりさらに詳細に定義される。
【0018】 「増幅される」とは、鋳型として少なくとも1つの核酸配列を用いた核酸配列
の多重コピーまたは核酸配列と相補的な多重コピーの構築を意味する。増幅系と
しては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)系、リガーゼ連鎖反応(LCR)系、
核酸配列ベースの増幅(NASBA、Canteen, Mississauga, Ontario)、Q−
βレプリカーゼ系、転写ベースの増幅系(TAS)および標準置換増幅(SDS
)が挙げられる(例えば、Diagnostic Molecular Microbiology: Principles an
d Applications, D.H. Persing et al., Ed., American Society for Microbiol
ogy, Washington, D.C.(1993)参照)。増幅の生成物は、アンプリコンと呼ばれ
る。
【0019】 「抗体」という用語は、抗原結合形態の抗体(例えばFab、F(ab)2
への言及を含む。「抗体」という用語はしばしば、単数または複数の免疫グロブ
リン遺伝子により実質的にコードされるポリペプチド、あるいは分析物(抗原)
を特異的に結合し、認識するそれらの断片を指す。しかしながら、種々の抗体断
片は無傷抗体の消化の点から定義され得るが、一方、このような断片は、化学的
にまたは組換えDNA法を利用することによりde novoで合成され得る、と当業
者は理解する。したがって抗体という用語は、本明細書中で用いる場合、抗体断
片、例えば一本鎖Fv、キメラ抗体(即ち、異なる種からの定常部および可変部
を含む)、ヒト化抗体(即ち、非ヒト供給源からの相補性決定領域(CDR)を
含む)ならびにヘテロ接合抗体(例えば、二重特異性抗体)も含む。
【0020】 本明細書中で用いる場合、「アンチセンス配向」は、アンチセンス鎖が転写さ
れる配向でプロモーターと作用可能式に連結される二重鎖ポリヌクレオチド配列
への言及を含む。アンチセンス鎖は、内在性転写産物の翻訳がしばしば抑制され
るよう、内在性転写産物と十分に相補的である。
【0021】 本明細書中で用いる場合、「初乳関連血清アミロイドA」、「初乳関連SAA
」および/または「初乳SAA」は互換的に用いられ、それらの例としては本明
細書中に開示された配列、それらの保存的修飾化変異体、供給源とは関係なく任
意のその他の、初乳SAAの生物学的特性を保持する、そして本明細書中に開示
された検定により実証されるような変異体が挙げられるが、これらに限定されな
い。
【0022】 本明細書中で用いる場合、「染色体領域」は、それが含む線状セグメントに対
する参照により測定され得る染色体の長さへの言及を含む。染色体領域は、2つ
の独特のDNA配列、即ちマーカーに対する参照により限定され得る。
【0023】 「保存的修飾化変異体」という用語は、アミノ酸および核酸配列の両方に適用
される。特定の核酸配列に関しては、保存的修飾化変異体は、アミノ酸配列の同
一または保存的修飾化変異体をコードする核酸を指す。遺伝暗号の縮重のために
、多数の機能的に同一の核酸が任意の所定の核酸をコードする。例えば、コドン
GCA、GCC、GCGおよびGCUはすべて、アミノ酸のアラニンをコードす
る。したがって、アラニンがコドンにより特定されるすべての位置で、コドンは
、コードポリペプチドを変えることなく、記載された対応するコドンのいずれか
に変えられうる。このような核酸変異は、「サイレント変異」であり、保存的修
飾化変異のある種を示す。遺伝暗号に対する参照によりポリペプチドをコードす
る本明細書中のすべての核酸配列は、核酸のすべての考え得るサイレント変異を
記載する。核酸中の各コドン(普通はメチオニンに関する唯一のコドンであるA
UG、並びに普通はトリプトファンに関する唯一のコドンであるUGGは除く)
は修飾されて、機能的に同一の分子を生じ得る、と当業者は認識する。したがっ
て、本発明のポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、各々の記載
されたポリペプチド配列中に含蓄的であり、本発明の範囲内である。
【0024】 アミノ酸に関しては、コード配列中の単一アミノ酸または小パーセンテージの
アミノ酸を変更し、付加しまたは欠失する核酸、ペプチド、ポリペプチドまたは
タンパク質配列に対する個々の置換、欠失または付加は、変更がアミノ酸の化学
的に同様のアミノ酸との置換を生じる「保存的修飾化変異体」である、と当業者
は認識する。したがって、1〜15から成る整数の群から選択されるアミノ酸残基
の任意の数は、そのように変更され得る。したがって、例えば1、2、3、4、
5、7または10の変更が成され得る。保存的修飾化変異体は、典型的には、それ
らが由来する非修飾化ポリペプチド配列と同様の生物学的活性を提供する。例え
ば、基質特異性酵素活性またはリガンド/受容体結合は一般に、そのネイティブ
基質に関するネイティブタンパク質の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%
、80%または90%である。機能的に同様のアミノ酸を提供する保存的置換表が、
当業界では周知である。
【0025】 以下の6つの群は各々、互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する: 1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T); 2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E); 3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q); 4)アルギニン(R)、リシン(K); 5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)
;および 6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。 Creighton (1984) Proteins W.H.Freeman and Companyも参照されたい。
【0026】 「コードする」または「コードされる」とは、特定の核酸に関して、特定のタ
ンパク質への翻訳に関する情報を含むことを意味する。タンパク質をコードする
核酸は、核酸の翻訳化領域内に非翻訳化配列(例えばイントロン)を含み得るか
、またはこのような介在非翻訳化配列を欠くことがある(例えば、cDNA中の
ように)。タンパク質がコードされる情報は、コドンの使用により特定される。
典型的には、アミノ酸配列は、「普遍的」遺伝暗号を用いて核酸によりコードさ
れる。しかしながら、普遍的暗号の変異体、例えばいくつかの植物、動物および
真菌ミトコンドリア、細菌のマイコプラズマ属のMycoplasma capricolumまたは
繊毛虫類大核中に存在するものは、核酸がその中で発現される場合に用いられ得
る。
【0027】 核酸が合成的に調製または変更される場合、利点は、核酸が発現される意図さ
れた宿主の既知のコドン選択を採用し得ることである。例えば本発明の核酸配列
は単子葉類および双子葉類植物種の両方で発現され得るが、しかし配列は、単子
葉類または双子葉類の特定のコドン選択およびGC含量選択は異なることが示さ
れているので、これらの選択を説明するよう修飾され得る(Murray et al., Nuc
l. Acids Res. 17:477-498 (1989))。したがって、特定のアミノ酸に関するト
ウモロコシの好ましいコドンは、トウモロコシからの既知の遺伝子配列に由来す
る。トウモロコシ植物体からの28の遺伝子に関するトウモロコシコドン使用法は
、Murray等(上記)の表4に列挙されている。
【0028】 本明細書中で用いる場合、特定ポリヌクレオチドまたはそのコードタンパク質
と関連した「全長配列」とは、ネイティブ(非合成性)、内生的、生物学的活性
形態の特定タンパク質の全アミノ酸配列を有することを意味する。配列が全長で
あるか否かを確定するための方法は当業界で周知であり、その例としては、ノー
ザンまたはウエスタンブロット、プライマー伸長、S1プロテクションおよびリ
ボヌクレアーゼプロテクションといった技法が挙げられる(例えば、Plant Mole
cular Biology: A Laboratory Manual, Clark, Ed., Springer-Verlag, Berlin
(1997)参照)。既知の全長相同(オルトおよび/またはパラ)配列との比較を用
いて、本発明の全長配列を同定することもできる。さらに、典型的にはmRNA
の5‘および3’非翻訳化領域に存在するコンセンサス配列は、全長としてのポ
リヌクレオチドの同定に役立つ。例えばコンセンサス配列ANNNNAUGG(
ここで、下線を付したコドンはN末端メチオニンを表す)は、ポリヌクレオチド
が完全5‘末端を有するか否かを確定するのに役立つ。3’末端のコンセンサス
配列、例えばポリアデニル化配列は、ポリヌクレオチドが完全3‘末端を有する
か否かを確定するのに役立つ。
【0029】 タンパク質またはペプチドに関して、「単離タンパク質(またはペプチド)」
または「単離および精製タンパク質(またはペプチド)」という用語は、時々本
明細書中で用いられる。この用語は、「実質的に純粋」形態で存在するように、
それが天然で一緒になっている他のタンパク質から十分に分離されたタンパク質
を指す。あるいはこの用語は単離核酸分子の発現により生成されるタンパク質を
示し得る。
【0030】 核酸分子に関して、「単離核酸」という用語が時々用いられる。この用語は、
DNAに適用される場合、それが由来した生物体の天然ゲノム中でそれが直接隣
接する(5‘および3’方向に)配列から分離されるDNA分子を指す。例えば
「単離核酸」は、プラスミドまたはウイルスベクターのようなベクター中に挿入
されるかまたは原核生物または真核生物のゲノムDNA中に組み込まれるDNA
分子を含み得る。「単離核酸分子」は、cDNA分子も含み得る。
【0031】 RNA分子に関しては、「単離核酸」という用語は、前記のような単離DNA
分子によりコードされるRNA分子を主として指す。あるいは、本用語は、それ
が「実質的に純粋」形態(「実質的に純粋」という用語は、以下で説明する)で
存在するように、それがその天然状態で(即ち細胞または組織中で)会合される
RNA分子から十分に分離されたRNA分子を示し得る。
【0032】 本明細書中で用いる場合、核酸と関連して「異種」とは、外来種から生じる核
酸、あるいは同一種から生じる場合には、慎重なヒトの介入により組成および/
またはゲノム座においてそのネイティブ形態から実質的に修飾される核酸である
。例えば、異種構造遺伝子と作用可能式に連結されたプロモーターは、構造遺伝
子が由来した種と異なる種からであり、あるいは同一種からの場合には、一方ま
たは両方がそのオリジナル形態から実質的に修飾される。異種タンパク質は外来
種から生じ得るし、あるいは同一種からである場合には、慎重なヒトの介入によ
りそのオリジナル形態から実質的に修飾される。
【0033】 「宿主細胞」とは、ベクターを含有し、ベクターの複製および/または発現を
支持する細胞を意味する。宿主細胞は、原核生物細胞、例えば大腸菌、あるいは
真核生物細胞、例えば酵母菌、昆虫、鳥類または哺乳類細胞であり得る。好まし
くは宿主細胞は、単子葉または双子葉植物細胞である。特に好ましい単子葉宿主
細胞は、トウモロコシ宿主細胞である。
【0034】 「ハイブリダイゼーション複合体」という用語は、互いに選択的にハイブリダ
イズされた2つの一本鎖核酸配列により形成される二重鎖核酸構造への言及を含
む。
【0035】 細胞中に核酸を挿入するという情況において「導入される」という用語は、「
トランスフェクション」または「形質転換」または「形質導入」を意味し、核酸
が、細胞のゲノム中に組入れられ(例えば染色体、プラスミド、プラスチドまた
はミトコンドリアDNA)、自律性レプリコンに変換され、あるいは一時的に発
現され(例えばトランスフェクト化mRNA)得る真核生物または原核生物細胞
中への核酸の組入れへの言及を含む。
【0036】 別記しない限り、「初乳関連SAAコード核酸」という用語は、本発明の核酸
であり、初乳関連SAAをコードする本発明のポリヌクレオチドを含む核酸を意
味する。「初乳関連SAA遺伝子」とは本発明の遺伝子であり、異種ゲノム形態
の全長初乳関連SAAポリヌクレオチドを指す。
【0037】 本明細書中で用いる場合、特定マーカーに関して「それによりおよびそれを含
めて限定される染色体領域内に局在化される」とは、所定のマーカーによりおよ
びそれを含めて限定される染色体の連続長への言及を含む。
【0038】 本明細書中で用いる場合、「マーカー」とは、染色体上の独特の位置を同定す
るのに役立つ染色体上の遺伝子座への言及を含む。「多型マーカー」とは、異な
る形態のマーカーが、それらが相同対で存在する場合に、その対の染色体の各々
の伝達を追跡得るよう、多重形態(対立遺伝子)で出現するマーカーへの言及を
含む。遺伝子型は、1つまたは複数のマーカーの使用により限定され得る。
【0039】 本明細書中で用いる場合、「核酸」とは、一本鎖または二本鎖形態のデオキシ
リボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーへの言及を含み、別記しない
限り、天然ヌクレオチド(例えばペプチド核酸)と同様の方法で一本鎖核酸とハ
イブリダイズする天然ヌクレオチドの不可欠な性質を有する既知の類似体を包含
する。
【0040】 「核酸ライブラリー」とは、特定生物体のゲノムの全転写分画を含みそして実
質的に示す単離DNAまたはRNA分子の集合を意味する。例示的核酸ライブラ
リー、例えばゲノムおよびcDNAライブラリーの構築は、標準的分子生物学参
考文献、例えば、Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques
, Methods in Enzymology, Vol. 152, Academic Press, Inc., San Diego, CA (
Berger); Sambrook et al., Molecular Cloning-A laboratory Manual, 2nd ed.
, Vol. 1-3 (1989); およびCurrent Protocols in Molecular Biology, F.M. Au
subel et al., Eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Pu
blishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc. (1994)に教示されて
いる。
【0041】 本明細書中で用いる場合、「ポリヌクレオチド」とは、デオキシリボポリヌク
レオチド、リボポリヌクレオチド、またはストリンジェント下で、天然ヌクレオ
チドと実質的に同一のヌクレオチド配列とハイブリダイズし、および/または天
然ヌクレオチド(単数または複数)と同一アミノ酸(単数または複数)への翻訳
を可能にする天然リボヌクレオチドの不可欠な性質を有するそれらの類似体への
言及を含む。ポリヌクレオチドは、ネイティブまたは異種の構造または調節遺伝
子の全長または亜配列であり得る。別記しない限り、本用語は、特定の配列なら
びにその相補的配列への言及を含む。したがって、安定性のためにまたはその他
の理由のために修飾された主鎖を有するDNAまたはRNAは、その用語が本明
細書中で意図されるような「ポリヌクレオチド」である。さらに、ちょうど2つ
の例を挙げると、普通でない塩基、例えばイノシン、または修飾化塩基、例えば
トリチル化塩基を含むDNAまたはRNAは、本用語が本明細書中で用いられる
ようなポリヌクレオチドである。当業者に既知の多数の有用な目的に役立つ非常
に種々の修飾が、DNAおよびRNAに成されてきた。ポリヌクレオチドという
用語は、本明細書中で用いられる場合、このような化学的、酵素的または代謝的
修飾化形態のポリヌクレオチド、ならびにウイルスおよび細胞、例えばとりわけ
単一および複合細胞に特徴的である化学的形態のDNAおよびRNAを包含する
【0042】 「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細
書中では互換的に用いられて、アミノ酸残基のポリマーを指す。本用語は、1つ
またはそれ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工化学的類似体であ
るアミノ酸ポリマーに、ならびに天然アミノ酸ポリマーに適用する。天然アミノ
酸のこのような類似体の不可欠な性質は、タンパク質中に組入れられた場合、そ
のタンパク質が、同一タンパク質に引き出される抗体と特異的に反応するが、し
かし全体的に天然アミノ酸から成るというものである。「ポリペプチド」、「ペ
プチド」および「タンパク質」という用語は修飾も中に含み、その例としてはリ
ン酸化、グリコシル化、脂質結合、硫酸化、グルタミン酸残基のγ−カルボキシ
ル化、ヒドロキシル化およびIDP−リボシル化が挙げられるが、これらに限定
されない。周知のように、そして前記したように、ポリペプチドはすべて線状と
いうわけではない、と理解される。例えばポリペプチドはユビキチン化の結果と
して分枝され、それらは、一般的に翻訳後事象として、例えば天然プロセッシン
グ事象および天然では起きないヒト操作によりもたらされる事象の結果として、
分枝を伴うこともある、環状であり得る。環状分枝および分枝環状ポリペプチド
は、非翻訳天然過程により、そして全合成法により同様に合成され得る。さらに
本発明は、本発明のタンパク質のメチオニン含有およびメチオニン非含有アミノ
末端変異体の両方の使用を意図する。タンパク質にかんして、「N末端領域」と
いう用語は、タンパク質のアミノ末端に隣接する約50個のアミノ酸を含む。
【0043】 本明細書中で用いる場合、「TFLKモチーフ」とは、アミノ酸によるにせよ
、別の方法にせよ、初乳SAAのTFLK活性部位の構造的完全性および生物学
的活性を保持するあらゆる処方物を含む。
【0044】 本明細書中で用いる場合、「組換え体」は、異種核酸の導入により修飾された
、または細胞がそのように修飾された細胞に由来する細胞またはベクターへの言
及を含む。したがって、例えば組換え体細胞は、ネイティブ(非組換え体)形態
の細胞内の同一形態に見出されない遺伝子を発現し、あるいはそうでなければ異
常に発現されるか、または不完全発現されるかまたは全く発現されないネイティ
ブ遺伝子を、慎重なヒト介入の結果として発現する。「組換え体」という用語は
、本明細書中で用いる場合、天然事象(例えば、自発性突然変異、天然形質転換
/形質導入/転位)、例えば慎重なヒトの介入を伴わずに生じるものによる細胞
またはベクターの変更を包含しない。
【0045】 本明細書中で用いる場合、「組換え体発現カセット」とは、宿主細胞中での特
定の核酸の転写を可能にする一連の特定核酸素子を有する、組換え敵または合成
的に生成された核酸構築物である。組換え体発現カセットは、プラスミド、染色
体、ミトコンドリアDNA、プラスチドDNA、ウイルスまたは核酸断片中に組
入れられ得る。典型的には、発現ベクターの組換え体発現カセット部分としては
、他の配列の間で、転写される核酸、およびプロモーターが挙げられる。
【0046】 「残基」または「アミノ酸残基」または「アミノ酸」という用語は、互換的に
用いられて、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチド(集合的に「タンパク質
」)に組入れられるアミノ酸を指す。アミノ酸は天然アミノ酸であり、別記しな
い限り、天然アミノ酸と同様に機能し得る天然アミノ酸の非天然類似体を包含し
得る。
【0047】 「ストリンジェント条件」または「ストリンジェントハイブリダイゼーション
条件」という用語は、プローブが、他の配列より検出可能的に大きい程度に(例
えばバックグラウンドの少なくとも2倍)、その標的配列とハイブリダイズする
条件への言及を含む。ストリンジェント条件は配列依存性であり、異なる環境で
は異なり得る。ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件のストリンジェ
ンシーを制御することにより、プローブと100%相補的である標的配列が同定さ
れる(同種プロービング)。あるいはストリンジェンシー条件は、低度の類似性
が検出されるよう、配列の多少の不適正性を可能にするように調整され得る(異
種プローブ)。一般にプローブは、長さ約1000ヌクレオチド未満、任意に500ヌ
クレオチド未満である。
【0048】 典型的にはストリンジェント条件は、塩濃度が約1.5 M未満のNaイオン、典
型的には約0.01〜1.0 MのNaイオン濃度(または他の塩)で、pHは7.0〜8.3
、そして温度は短いプローブ(例えば10〜50ヌクレオチド)に関しては少なくと
も約30℃、長いプローブ(例えば50ヌクレオチドより大きい)に関しては少なく
とも約60℃である。ストリンジェント条件は、不安定剤、例えばホルムアミドの
付加によっても達成され得る。低ストリンジェンシー条件の例としては、37℃で
30〜35%ホルムアミド、1 MNaCl、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の
緩衝液でのハイブリダイゼーション、ならびに50〜55℃での1x〜2xSSC(20
xSSC=3.0 MNaCl/0.3 Mクエン酸三ナトリウム)中での洗浄が挙げられ
る。中等度ストリンジェンシー条件の例としては、37℃で40〜45%ホルムアミド
、1 MNaCl、1%SDS中でのハイブリダイゼーション、ならびに50〜55℃で
の0.5x〜1xSSC中での洗浄が挙げられる。高ストリンジェンシー条件の例と
しては、37℃で50%ホルムアミド、1 MNaCl、1%SDS中でのハイブリダイ
ゼーション、ならびに60〜65℃での0.1xSSC中での洗浄が挙げられる。
【0049】 特異性は、典型的にはハイブリダイゼーション後洗浄の機能であり、重要な因
子は最終洗浄溶液のイオン強度および温度である。DNA−DNAハイブリッド
に関しては、TmはMeinkothとWahl(Anal. Biochem., 138:267-284(1984))の方
程式から概算され得る:Tm=81.5℃+16.6(logM)+0.41(%GC)−0.61
(%form)−500/L;式中、Mは一価陽イオンのモル数であり、%GCはDNA
中のグアノシンおよびシトシンヌクレオチドのパーセンテージであり、%formは
ハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドのパーセンテージであり、そして
Lは塩基対でのハイブリッドの長さである。Tmは、相補的標的配列の50%が完
全適正プローブとハイブリダイズする温度(限定イオン強度およびpH下)であ
る。温度は、各々不適正の1%に対して約1℃低減し、したがってハイブリダイゼ
ーションおよび/または洗浄条件を調整して所望の同一性の配列とハイブリダイ
ズさせ得る。例えば、≧90%同一性を有する配列を探す場合には、Tmは10℃低
減され得る。一般にストリンジェント条件は、限定イオン強度およびpHで、特
定配列およびその相補体に関して熱融点(Tm)より低い約5℃であるよう選択
される。しかしながら重度ストリンジェント条件は、熱融点(Tm)より1、2、
3または4℃低いハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用し、中等度ス
トリンジェント条件は、熱融点(Tm)より6、7、8、9または10℃低いハイブリ
ダイゼーションおよび/または洗浄を利用し、低ストリンジェント条件は、熱融
点(Tm)より11、12、13、14、15または20℃低いハイブリダイゼーションおよ
び/または洗浄を利用し得る。方程式、ハイブリダイゼーションおよび洗浄組成
物、ならびに所望のTmを用いて、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄
溶液のストリンジェンシーの変動は固有に説明される、と当業者は理解する。所
望程度の不適正が45℃(水性溶液)または32℃(ホルムアミド溶液)未満のTm
を生じる場合、高温が用いられ得るようSSC濃度を増大するのが好ましい。核
酸のハイブリダイゼーションについての広範な指針は、Tijssen, Laboratory Te
chniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nuclei
c Acids Probes, Part I, Chapter 2, Ausubel, et al., Eds., Greene Publish
ing and Wiley-Interscience, New York(1995)に見出される。
【0050】 「実質的に純粋」という用語は、少なくとも50〜60重量%の当該化合物(例え
ば核酸、オリゴヌクレオチド、タンパク質等)を含む調製物をさす。さらに好ま
しくは、調製物は少なくとも75重量%、最も好ましくは90〜99重量%の当該化合
物を含む。純度は、当該化合物に適した方法(例えばクロマトグラフィー法、ア
ガロースまたはポリアクリルアミドゲル電気泳動法、HPLC分析等)により測
定される。
【0051】 核酸配列およびアミノ酸配列は、核酸またはアミノ酸の類似配列を並べて、そ
のようにして差を限定するコンピュータープログラムを用いて比較され得る。B
LASTプログラム(NCBI)およびそこに用いられるパラメーターは、アミ
ノ酸配列断片を並べるために多数の従業者により用いられる。しかしながら等価
アラインメントおよび類似性/同一性査定は、任意の標準アラインメントソフト
ウエアの使用により得られる。例えば、GCGウィスコンシンパッケージバージ
ョン9.1(Genetics Computer Group in Madison, Wisconsinから入手可能)およ
びベスト−フィットプログラムにより用いられるデフォルトパラメーター(ギャ
ップ作製ペナルティー=12、ギャップ延長ペナルティー=4)も、配列同一性お
よび類似性を比較するために用いられ得る。
【0052】 「実質的に同一」という用語は、タンパク質の性質(即ち、タンパク質の構造
、安定性特徴、基質特異性および/または生物学的活性)に実利的に影響を及ぼ
さない配列変動を有する核酸またはアミノ酸配列を指す。特に核酸配列に関して
、「実質的に同一」という用語は主に、コード領域を、ならびに発現を支配する
保存配列を指すよう、そしてコードポリペプチド中の同一アミノ酸をコードする
縮重コドンまたは保存的置換アミノ酸をコードする代替的コドンを指すよう意図
される。アミノ酸配列に関しては、「実質的に同一」という用語は一般に、構造
または機能の決定に関与しないポリペプチドの領域における保存的置換および/
または変異を指す。
【0053】 「同一パーセント」および「類似パーセント」という用語も、アミノ酸および
核酸配列間の比較に際して本明細書中で用いられる。アミノ酸配列について言及
する場合、「同一パーセント」とは、配列分析プログラムにより比較アミノ酸配
列中の同一アミノ酸に対して適合した被験アミノ酸配列のアミノ酸のパーセント
を示す。「類似パーセント」とは、同一または保存アミノ酸に対して適合した被
験アミノ酸配列のアミノ酸のパーセントを指す。保存アミノ酸は、結果的に生じ
るタンパク質の三次構造を明らかに変えないよう、構造は異なるがしかし物理的
特性は類似するものである。保存的置換は、Taylor(1986, J. Theor. Biol. 119
:205)に定義されている。核酸分子に言及する場合、「同一パーセント」とは、
配列分析プログラムにより同一ヌクレオチドに適合した被験核酸配列のヌクレオ
チドのパーセントを指す。
【0054】 抗体に関して、「免疫学的に特異的な」という用語は、当該タンパク質の1つ
またはそれ以上のエピトープと結合するが、抗原性生物学的分子の混合集団を含
有する試料中の他の分子を実質的に認識せず且つ結合しない抗体を指す。
【0055】 オリゴヌクレオチドまたはその他の一本鎖核酸分子に関して、「特異的にハイ
ブリダイズする」という用語は、当業界で一般的に用いられる予定条件下で、即
ちストリンジェント条件下でこのようなハイブリダイゼーションを可能にするの
に十分な相補的配列を有する2つの一本鎖核酸分子間の会合を指す(時としては
「実質的に相補的である」といわれる)。特に本用語は、一本鎖DNAまたはR
NA分子内に含入される実質的相補性配列とのオリゴヌクレオチドのハイブリダ
イゼーションを、非相補性配列を有する一本鎖核酸とのオリゴヌクレオチドのハ
イブリダイゼーションの実質的排除を指す。
【0056】 「コード配列」または「コード領域」とは、配列が発現された場合に、遺伝子
産物を産生するのに必要な配列情報を有する核酸分子を指す。
【0057】 「作用可能式に連結される」または「作用可能式に挿入される」という用語は
、コード配列の発現に必要な調節配列がコード配列の発現を可能にするためにコ
ード配列に関して適切な位置で核酸分子中に置かれることを意味する。この同一
定義は、時としては、発現ベクター中の他の転写制御素子(例えばエンハンサー
)の整列に適用される。
【0058】 転写および翻訳制御配列は、宿主細胞中でのコード配列の発現を提供するDN
A調節配列、例えばプロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化信号、ターミ
ネーター等である。
【0059】 「プロモーター」、「プロモーター領域」または「プロモーター配列」という
用語は一般に、コード領域の5‘または3’側に、あるいはコード配列内または
イントロン内に見出され得る遺伝子の転写調節領域を指す。典型的には、プロモ
ーターは、細胞中のRNAポリメラーゼを結合し、下流(3‘方向)コード配列
の転写を開始し得るDNA調節領域である。典型的5’プロモーター配列は転写
開始部位によりその3‘末端で結合され、そして上流(5’方向)に伸びて、バ
ックグラウンドより高い検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な最小数の
塩基または素子を含む。プロモーター配列内には、転写開始部位(ヌクレアーゼ
S1を用いたマッピングにより便利に限定される)、ならびにRNAポリメラー
ゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が存在する。
【0060】 「ベクター」とは、セグメントの複製または発現を生じるよう、別の核酸セグ
メントが作用可能式に挿入され得るレプリコン、例えばプラスミド、ファージ、
コスミドまたはウイルスである。
【0061】 「核酸構築物」または「DNA構築物」という用語は、時としては、コード配
列または適切な調節配列に作用可能式に連結され、細胞を形質転換するためにベ
クター中に素にされる配列を指す。この用語は、「形質転換DNA」という用語
と互換的に用いられ得る。このような核酸構築物は、当該遺伝子産物のためのコ
ード配列を、選択可能マーカー遺伝子および/またはレポーター遺伝子とともに
含有し得る。
【0062】 「選択可能マーカー遺伝子」という用語は、発現された場合に、選択可能な表
現型、例えば抗生物質耐性を形質転換化細胞に付与する物質をコードする遺伝子
を指す。
【0063】 「レポーター遺伝子」という用語は、標準的方法により、直接的または間接的
に容易に検出可能である生成物をコードする遺伝子を指す。
【0064】 核酸構築物の「異種」領域とは、天然では大型分子に関連して見出されない大
型分子内の核酸分子の同定可能なセグメント(単数または複数)である。したが
って、異種領域が哺乳類遺伝子をコードする場合、遺伝子は通常、供給源生物体
のゲノム中の哺乳類ゲノムDNAと側面を接しないDNAと側面を接する。別の
例では、異種領域は、コード配列それ自体が天然では見いだされない構築物であ
る(例えば、ゲノムコード配列がイントロンを含有するか、または合成配列がネ
イティブ遺伝子と異なるコドンを有するcDNA)。対立遺伝子変異または天然
突然変異せい事象は、本明細書中に記載するようなDNAの異種領域を生じない
。前記のような「DNA構築物」という用語は、異種領域、特に細胞の形質転換
に用いるために構築されたものを指すためにも用いられる。
【0065】 このようなDNAが細胞内部に導入された場合、細胞は外因性または異種DN
Aにより「形質転換され」または「トランスフェクトされ」たという。形質転換
DNAは、細胞のゲノム中に組み込まれることもある(共有結合)。例えば原核
生物、酵母および哺乳類細胞において、形質転換DNAは、エピソーム素子、例
えばプラスミド上に保持され得る。真核生物細胞に関しては、安定的形質転換化
細胞は、染色体複製により娘細胞に遺伝されるよう、形質転換DNAが染色体に
組み込まれたものである。この安定性は、形質転換DNAを含有する娘細胞の週
だ何からなる細胞株またはクローンを確立する真核生物細胞の能力により実証さ
れる。
【0066】 「クローン」とは、有糸分裂により単一細胞または共通先祖から得られる細胞
の集団である。「細胞株」とは、多数の世代でin vitroに安定成長し得る初代細
胞のクローンである。
【0067】 II.説明 血清アミロイドA(SAA)は、肝臓で産生される急性期タンパク質であり、
組織損傷または感染に関連した炎症応答の一部として哺乳類の血清中に高レベル
で生じる。初乳中に非常に高レベルで生じるSAAの独特のアイソフォームを、
本発明人等は発見した。健常ウシにおける初乳SAA増大は、仔ウシ出産後4日
以内に牛乳中に見出されるバックグラウンドレベルに戻る。初乳中では急性期S
AA(A−SAA)の血中濃度とは無関係に生じるので、初乳SAAは局所的に
(即ち、乳房管状上皮細胞に)産生されると考えられる(5匹の被験ウシから採
取した初乳、乳漿および血清の試料中では、血清SAAは15μg/ml、no範囲で
あることが判明したが、一方初乳では、SAAは300μg/mlの平均範囲のレベル
に増大した)。
【0068】 初乳中のSAAの独特のアイソフォームは、新生児免疫の発達における初乳の
一般的役割に関連した種々の機能を実行している。例えば初乳SAAは、新生児
における腸および/または血管系の内皮膜を横断する脂質および免疫グロブリン
の輸送のためのビヒクルとして作用し得る。それは損傷後に血管内皮により局所
的に産生され、血管内間隙への免疫グロブリンの輸送のためのビヒクルとして役
立つ。概して、初乳SAAは抗微生物活性(直接または間接的に)有し、そして
いくつかの方法で免疫応答を調節すると考えられる。初乳SAAは、組織修復お
よび分解に関与する酵素を誘導することにより、ならびに粘膜組織中の防御的ム
チンの産生を調節することにより、組織リモデリングにも関与し得る。
【0069】 高レベルのSAAが、ウシ、ウマ、ヒツジおよびブタの初乳で検出された。そ
れは、実施例3に記載したような方法を用いて、ウシ、ヒツジおよびウマ初乳か
ら精製された。これらの供給源からの精製初乳SAAに、N末端アミノ酸配列分
析を施した。これらの配列を、ウサギ滑膜繊維芽細胞からのSAA3の対応する
配列と比較して、以下に記述する。
【0070】 初乳: ウシ(配列番号1): MWXTFLKEAGQGAKDMWRAY ヒツジ(配列番号2): WLLTFLKEAG ウマ(配列番号3): RELKTFLKEAGQG 滑膜繊維芽細胞: ウサギSAA3 (配列番号9の一部): REWLTFLKEAGQGAKDMWRAYSDMKEA 初乳由来SAAは、アミノ末端(またはN末端)TFLK(TFLKモチーフ
)での独特のアミノ酸配列を共有する。TFLKモチーフは任意の哺乳類からの
血清由来SAAのいずれからも見出されないが、しかしウサギ滑膜繊維芽細胞に
より産生されるSAA3との相同を共有する。ヒトSAA3偽遺伝子(血清また
は組織中で発現されない)も、TFLK配列モチーフを含有する推定アミノ酸配
列を含む。
【0071】 しかしながらウマ初乳SAAのトリプシン消化断片のさらなる分析は、初乳S
AAが、実際、独特のSAAであることを明示した。ウマ初乳SAAのトリプシ
ン断片を以下に記述する(配列番号4は配列番号3の代替物である)。
【0072】 (配列番号4) REWFTFL (配列番号5) EANYIGADKYFH (配列番号6) GNYDAAQRGPGGA (配列番号7) VTDLFK (配列番号8) SGKDPNHFRPHGLPDKY 図1では、5つのウマ初乳SAAトリプシン断片配列(配列番号3〜8)、な
らびにウシおよびヒツジからのN末端配列、ならびにウマ初乳SAA(配列番号
1〜3)が、ウサギからの滑膜繊維芽細胞(配列番号9)、ウマ血清SAA(配
列番号10)およびミンクからの血清SAA1(配列番号11)の完全アミノ酸
配列とともにアラインメントで示されている。アラインメントから判るように、
ウマ初乳SAAは、ウサギ滑膜繊維芽細胞SAA3、ウマ血清SAAおよびミン
ク血清SAA1の各々との類似性の領域を共有し、さらにこれらのタンパク質の
各々と互いに異なる。
【0073】 したがって本発明は、初乳から単離される新規のSAAアイソフォームを提供
する.ウマ、ウシおよびヒツジ初乳SAAが本明細書中に例示されているが、し
かし本発明は、本発明人等がいくつかの哺乳類種から初乳SAAを同定したゆえ
に、あらゆる哺乳類種からの初乳SAAアイソフォームを含む。さらに、以下で
より詳細に説明するように、初乳SAAをコードする核酸分子は、この新規のS
AAアイソフォームに免疫学的に特異的な抗体であるので、本発明の一部である
とも意図される。
【0074】 本発明にしたがって、ウシ初乳関連SAAのcDNAが確定され、当業界で既
知の、そして本明細書中に開示された方法により、組換え体形態のタンパク質の
産生を可能にした。(配列番号12)(図2参照)は、タンパク質に関するcD
NA配列であり、本発明は、この配列ならびに保存的修飾化変異体を含む。さら
に開示されるのは、高度に保存されたタンパク質の活性領域、ならびに乳腺炎に
関連した炎症を検出するための検定に、あるいはムチン産生を刺激することによ
り胃腸障害を治療するための製剤に有用であるようにするタンパク質の特性であ
る。
【0075】 下記は、本発明の実行に関与する一般手法を記載する。特定の物質が言及され
る程度まで、それは単に説明のためであって、本発明を限定するものではない。
別記しない限り、一般クローニング手法、例えばSambrook et al., Molecular c
loning, Cold Spring Harbor Laboratory (1989)(以後、「Sambrook et al.」
)またはAusubel, et al.(eds.)Current protocols in Molecular Biology, Joh
n Wiley & Sons(1999)(以後、「Ausubel, et al.」)が用いられる。
【0076】 A.初乳SAA、初乳SAAに特異的な抗体および初乳SAAをコードする核
酸分子 1.タンパク質および抗体 初乳SAAは、血清からSAAを精製するために開発された種々の方法にした
がって、種々の方向で調製され得る。このような方法の1つが、実施例3に記述
されている。疎水性クロマトグラフィーマトリックス計および溶離剤の変動、例
えばSmith等(Protein Expression & Purification 2: 158-161, 1991)により
記載されたものも用いられ得る。
【0077】 あるいは、(配列番号1〜8)のようなアミノ酸配列情報の利用可能性は、初
乳SAAをコードする核酸分子の単離を可能にする。これは、抗初乳SAA抗体
を用いて、当業界で周知の方法にしたがって選定種からのcDNA発現ライブラ
リーをスクリーニングすることにより成し遂げられ得る。あるいは、(配列番号
1〜8)(図1)の一部または全部をコードする一連の縮重オリゴヌクレオチド
プローブは、以下で詳細に説明するように、cDNAまたはゲノムライブラリー
をスクリーニングするために用いられ得る。
【0078】 一旦生成されると、cDNAまたは遺伝子は、in vitro転写のために適切なin vitro転写ベクター、例えばpSP64またはpSP65中でクローン化され、
その後、適切な無細胞翻訳系、例えば小麦胚がまたはウサギ網状赤血球中で無細
胞翻訳され得る。In vitro転写および翻訳系は、例えばPromega Biotech, Madis
on, WisconsinまたはBRL, Rockville, Marylandから市販されている。pCIT
Ein vitro翻訳系(Novagen)も利用され得る。
【0079】 好ましい実施態様によれば、適切な原核生物または真核生物系での発現により
、大量のタンパク質が製造され得る。例えば初乳SAAコードDNA分子の一部
または全部が、細菌細胞(例えば大腸菌)または酵母細胞(例えばビール酵母菌
Saccharomyces cerevisiae)または哺乳類細胞中での発現に適応されたベクター
中に挿入され得る。このようなベクターは、宿主細胞中でのDNAの発現を可能
にするような方法で位置する、宿主細胞中でのDNAの発現に必要な調節素子を
含む。発現に必要とされるこのような調節素子としては、プロモーター配列、転
写開始配列、ならびに任意にエンハンサー配列が挙げられる。
【0080】 組換え体原核生物または真核生物系における遺伝子発現により産生される初乳
SAAは、当業界で既知の方法により精製され得る。好ましい実施態様では、市
販の発現/分泌系が用いられ、それにより組換え体タンパク質が発現され、その
後、宿主細胞から分泌され、周囲媒質から容易に精製され得る。発現/分泌ベク
ターが用いられない場合、代替的アプローチは、アフィニティー分離により、例
えば組換え体タンパク質と特異的に結合する抗体との免疫学的相互作用により組
換え体タンパク質を精製することを包含する。このような方法は、熟練従業者に
より一般に用いられる。
【0081】 本発明は、1つまたはそれ以上の選定種からの初乳と結合し得る抗体も提供す
る。選定初乳SAAの一部または全部に向けられるポリクローナルまたはモノク
ローナル抗体は、標準的方法により調製され得る。モノクローナル抗体は、Kohl
erとMilsteinの一般的方法とその後の標準プロトコールにしたがって調製され得
る。好ましい実施態様では、それを他のSAAから識別する初乳SAAの選定エ
ピトープと免疫特異的に反応する抗体が調製される。
【0082】 2.核酸分子 一旦配列情報が得られれば、初乳SAAをコードする核酸分子は、2つの一般
的方法により調製され得る:即ち、(1)それらは適切なヌクレオチド三リン酸
塩から合成され得る、または(2)それらは生物学的供給源から単離され得る。
両方法は、当業界で周知のプロトコールを利用する。
【0083】 核酸配列情報の利用可能性は、オリゴヌクレオチド合成による本発明の単離核
酸分子の調製を可能にする。合成オリゴヌクレオチドは、Applied Biosystems 3
8A DNA合成機または同様の装置で用いられるホスホロアミダイト法により調
製され得る。その結果生じる構築物は、当業界で既知の方法、例えば高速液体ク
ロマトグラフィー(HPLC)により精製され得る。長い二本鎖ポリヌクレオチ
ド、例えば本発明のDNA分子は、一般オリゴヌクレオチド合成法に固有のサイ
ズ制限のために、段階的に合成されねばならない。したがって、例えば長い二本
鎖分子は、適切な相補性を有するいくつかの小型セグメントとして合成され得る
。このように生成された相補的セグメントは、各セグメントが隣接セグメントの
結合のための適切な付着末端を保有するよう、アニーリングされ得る。隣接セグ
メントは、DNAリガーゼの存在下で付着末端をアニーリングすることにより結
繋されて、全長二本鎖分子を構築し得る。そのように構築された合成DNA分子
は次に、クローン化され、適切なベクター中で増幅され得る。
【0084】 初乳SAAをコードする核酸分子は、当業界で周知の方法を用いて、当該哺乳
類種からも単離され得る。選定種からの核酸分子は、初乳SAAコード遺伝子に
特異的な核酸配列に適合するよう設計されたオリゴヌクレオチドを用いて、cD
NAまたはゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより単離され得る。
ある種からの遺伝子が望ましい場合には、ゲノムライブラリーがスクリーニング
される。あるいは、タンパク質コード配列が特定当該物を有する場合には、cD
NAライブラリーがスクリーニングされる。1つより多くの核酸残基が適切なア
ミノ酸残基をコードするために用いられ得る縮重の位置では、すべての適切な核
酸残基が組入れられて、混合オリゴヌクレオチド集団を作製するか、または中性
塩基、例えばイノシンが用いられ得る。オリゴヌクレオチド設計の戦略は、当業
界で周知である(Sambrook et al., Molecular cloning, 1989, Cold Spring Ha
rbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor NYも参照)。
【0085】 あるいは、初乳SAAタンパク質の一部をコードするために、PCR(ポリメ
ラーゼ連鎖反応)プライマーが前記の方法により設計され得る。これらのプライ
マーは、単離cDNAまたはゲノムDNAから核酸を増幅するために用いられる
。好ましい実施態様では、血清SAAと対照したものとして初乳SAAに独特の
配列をコードするために、初乳SAAコード核酸を単離するために用いられるオ
リゴヌクレオチドが設計される。
【0086】 本発明によれば、適切なストリンジェントを有するハイブリダイゼーションお
よび洗浄条件を用いることにより、初乳SAAコード核酸分子と適切な配列相同
性を有する核酸が同定され得る。例えばハイブリダイゼーションは、Sambrook e
t al.(1989、上記)の方法にしたがって、5xSSC,5xデンハード試薬、1.0
%SDS、100μg/ml変性断片化サケ精子DNA、0.05%ピロリンサンナトリウ
ムおよび50%までのホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液を用いて実
施され得る。ハイブリダイゼーションは、37〜42℃で少なくとも6時間実行され
る。ハイブリダイゼーション後、フィルターを以下のように洗浄する:(1)2
xSSCおよび1%SDS中で室温で5分間、(2)2xSSCおよび0.1%SD
S中で室温で15分間、(3)1xSSCおよび1%SDS中で37℃で30分〜1時
間、(4)1xSSCおよび1%SDS中で65℃で2時間。
【0087】 特定配列相同を有する核酸分子間のハイブリダイゼーションを達成するのに必
要なストリンジェント条件を算定するため一一般式(Sambrook et al.,1989): Tm=81.5℃+16.6Log[Na+]+0.4(G+C%)−0.63(ホルムアミド%)−600
/二重鎖中bp数 前式の説明のように,[N+]=[0.368]および50%ホルムアミドを用いて
、42%のGC含量および200塩基の平均プローブサイズで、Tmは57℃である。
DNA二重鎖のTmは、相同性が1%低減する毎に1〜1.5℃低減する。したがっ
て約75%より大きい配列同一性を有する標的が、42℃のハイブリダイゼーション
温度を用いて観察される。好ましい実施態様では、ハイブリダイゼーションは37
℃で、最終洗浄は42℃であり、さらに好ましい実施態様では、ハイブリダイゼー
ションは42℃で、最終洗浄は50℃であり、最も好ましい実施態様では、ハイブリ
ダイゼーションは42℃で、最終洗浄は65℃であって、前記のハイブリダイゼーシ
ョンおよび洗浄溶液を用いる。
【0088】 ハイブリダイゼーションおよび洗浄のストリンジェンシー度は、主に溶液の塩
濃度および温度によっている。概して、その標的とのプローブのアニーリングの
速度を最大にするために、ハイブリダイゼーションは通常は、ハイブリッドの算
定Tmより20〜25℃低い塩および温度条件で実行される。洗浄条件は、標的に対
するプローブの同一性の程度に関して考え得るのと同様にストリンジェントであ
るべきである。概して、洗浄条件は、ハイブリッドのTmより約12〜20℃低くな
るように選定される。本発明の核酸に関しては、中等度ストリンジェンシーハイ
ブリダイゼーションは、6xSSC,5xデンハード溶液、0.5%SDSおよび1
00μg/ml変性サケ精子DNA中で42℃でのハイブリダイゼーション、ならびに2
xSSCおよび0.5%SDS中で55℃で15分の洗浄と定義される。高ストリンジ
ェンシーハイブリダイゼーションは、6xSSC,5xデンハード溶液、0.5%
SDSおよび100μg/ml変性サケ精子DNA中で42℃でのハイブリダイゼーショ
ン、ならびに1xSSCおよび0.5%SDS中で65℃で15分の洗浄と定義される
。極高ストリンジェントハイブリダイゼーションは、6xSSC,5xデンハー
ド溶液、0.5%SDSおよび100μg/ml変性サケ精子DNA中で42℃でのハイブリ
ダイゼーション、ならびに0.1xSSCおよび0.5%SDS中で65℃で15分の洗浄
と定義される。
【0089】 本発明の核酸は、任意の便利なクローニングベクター中にDNAとして保持さ
れ得る。好ましい実施態様では、クローンはプラスミドクローニング/発現ベク
ター、例えばpGEM−T(Promega Biotech, Madison, WI)またはpBlue
script(Stratagene, La Jolla CA)中に保持され、いずれも適切な大腸
菌宿主中で増殖される。
【0090】 本発明の初乳SAAコード核酸分子としては、一本鎖または二本鎖であり得る
cDNA、ゲノムDNA、RNAおよびそれらの断片が挙げられる。したがって
本発明は、本発明の核酸分子の少なくとも1つの配列とハイブリダイズし得る配
列を有するオリゴヌクレオチド(DNAまたはRNAのセンスまたはアンチセン
ス鎖)を提供する。このようなオリゴヌクレオチドは、例えばPCR増幅により
、被験試料中の初乳SAAコード遺伝子またはmRNAを検出するためのプロー
ブとして有用である。
【0091】 B.初乳SAAタンパク質、抗体および核酸の使用 1.タンパク質および抗体 精製初乳SAAまたはその断片を用いて、培養細胞または組織中および無傷生
物体中のタンパク質の存在および蓄積に関する高感度検出試薬として役立ち得る
ポリクローナルまたはモノクローナル抗体を生成し得る。組換え技術は、選定初
乳SAAの一部または全部を含有する融合タンパク質の発現を可能にする。全長
タンパク質またはタンパク質の断片を用いて、タンパク質の種々のエピトープに
特異的なモノクローナルまたはポリクローナル抗体のアレイを生成するのを促し
、それによりタンパク質の検出のためのより大きい感度をさえ提供し得る。好ま
しい実施態様では、初乳SAAを血清SAAと識別する初乳SAAの断片は、エ
ピトープ特異的抗体を生成するために利用される。
【0092】 初乳SAAに免疫学的に特異的なポリクローナルまたはモノクローナル抗体は
、タンパク質を検出および定量するよう意図された種々の検定に用いられ得る。
このような検定としては、(1)免疫沈降とその後のタンパク質定量、(2)イ
ムノブロット分析(例えばドットブロット、ウエスタンブロット)、(3)ラジ
オイムノアッセイ、(4)比濁分析、濁度測定または免疫クロマトグラフィー(
側方流)検定、および(5)酵素結合検定、例えばELISA、ならびに種々の
定性的迅速検定(例えばディップスティックおよび同様の試験)が挙げられるが
、これらに限定されない。
【0093】 初乳SAAと免疫特異的に相互作用するポリクローナルまたはモノクローナル
抗体が、このようなタンパク質を同定および精製するために用いられ得る。例え
ば抗体は、それらが免疫特異的に相互作用するタンパク質のアフィニティー分離
のために利用され得る。抗体は、タンパク質およびその他の生物学的分子の混合
物を含有する試料からタンパク質を免疫沈降するためにも用いられ得る。
【0094】 2.核酸 初乳SAAコード核酸は、本発明にしたがって種々の目的のために用いられ得
る。DNA、RNAまたはそれらの断片は、遺伝子の存在および/または発現を
検出するためのプローブとして用いられ得る。初乳SAAコード核酸がこのよう
な検定のためのプローブとして利用され得る方法としては、(1)in situハイ
ブリダイゼーション、(2)サザンハイブリダイゼーション、(3)ノーザンハ
イブリダイゼーション、ならびに(4)類別(アソーティド)増幅反応、例えば
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および逆転写酵素−PCR(RT−PCR)が
挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】 本発明の例示された初乳SAAコード核酸(例えばウシ、ヒツジ、ウマ)も、
ヒトを含めた他の種から関連遺伝子を同定するためのプローブとして利用され得
る。当業界で周知であり且つ前記したように、ハイブリダイゼーションストリン
ジェンシー度を調整して、種々の程度の相同性を有する相補的配列との核酸プロ
ーブのハイブリダイゼーションを可能にし得る。
【0096】 初乳SAAコード核酸の前記の使用のほかに、それらは、トランスジェニック
細胞、組織および生物体の作製における用途を有すると予測される。
【0097】 本発明は、ウシ初乳関連SAAタンパク質をコードする新規の精製および単離
核酸配列を提供する。本発明の好ましい形態では、DNA配列は新規のSAAを
コードするcDNA配列を含み、あるいは初乳中に存在するその保存的修飾化変
異体は、活性TFLK領域を含み、本明細書中に開示したタンパク質の生物学的
活性を保有する。さらに好ましくは実施態様では、核酸配列は、(配列番号12
)と少なくとも約93%の同一性を、または92%同一のコードアミノ酸配列を含む
。特に、単離された配列は、(配列番号12)に示されている。代替的DNA形
態、例えばゲノムDNA、および核酸からの部分的または全体的化学合成により
調製されたDNA、ならびに欠失または突然変異を有するDNAも本発明の意図
された範囲内である。
【0098】 本発明により提供されたDNA配列の、同種または異種発現制御DNA配列、
例えばプロモーター、オペレーター、レギュレーターなどとの会合は、mRNA
からのin vivoおよびin vitro転写を可能にし、これは次に翻訳を受け易くなっ
て、本発明の新規のナトリウムチャンネルタンパク質、ならびに関連ポリ−およ
びオリゴ−ペプチドを大量に提供する。本発明の目下の好ましいDNA発現系に
おいて、初乳関連SAAコードDNAは調節プロモーターDNA配列と作用可能
式に連結されて、タンパク質のin vitro転写および翻訳を可能にする。
【0099】 恐らくは適切なウイルスおよび環状DNAプラスミドベクターを包含する標準
形質転換およびトランスフェクション法による原核生物および真核生物宿主細胞
中へのDNA配列の組入れも、本発明の意図内であり、今までは天然供給源から
利用可能でなかった量で有用なタンパク質を提供すると予測される。以後さらに
詳細に記述するように、本発明の組換え体発現産物に最適生物学的活性を付与す
るのに必要であり得るので、哺乳類宿主細胞の使用は、このような翻訳後修飾(
例えば、切頭化、グリコシル化、ならびにチロシン、セリンまたはトレオニンリ
ン酸化)を提供すると予測される。
【0100】 細胞を形質転換し、ベクターを構築し、メッセンジャーRNAを抽出し、cD
NAライブラリーを調製するなどのために用いられる技法のほとんどは、当業界
で広範に実行されており、ほとんどの従事者が特定の条件および手順を説明する
標準資源物質に精通している。しかしながら便宜上、以下の語句は指針として役
立ち得る。
【0101】 宿主および制御配列 原核生物および真核生物系はともに、初乳関連SAAコード配列を発現するた
めに用いられ得る。原核生物宿主は、もちろん、クローニング手法には最も便利
である。原核生物は最も高頻度に、大腸菌の種々の菌株により代表される。しか
しながらその他の微生物株も用いられ得る。複製部位、選択可能マーカーおよび
宿主と比較可能な種に由来する対象配列を含有するプラスミドベクターが用いら
れる。例えば大腸菌は、典型的には、Bolivar, et al., Gene (1977) 2:95によ
り大腸菌種から得られたプラスミドであるpBR322の誘導体を用いて形質転
換される。pBR322は、アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性に関する
遺伝子を含有し、したがって所望のベクターの構築に際して保持または破壊され
得る多重選択可能マーカーを提供する。転写開始のためのプロモーターを含み、
任意にオペレーターを、リボソーム結合部位配列と共に含むよう本明細書中で定
義された一般的に用いられる原核生物制御配列としては、β−ラクターゼ(ペニ
シリナーゼ)およびラクトーゼ(lac)プロモーター系(Chang, et al., Nat
ure(1977))およびトリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel, et al.
, Nucleic Acids Res(1980) 8:4057)、ならびにラムダ由来PLプロモーターお
よびN−遺伝子リボース結合部位(Shimatake, et al., Nature (1981) 292:128
)といったような一般的に用いられるプロモーターが挙げられる。
【0102】 細菌のほかに、真核生物微生物、例えば酵母も宿主として用いられ得る。ビー
ル酵母菌Saccharomyces cerevisiaeの実験室菌株であるベーカー酵母が最も用い
られるが、しかし多数のその他の菌株または種が市販されている。例えばBroach
, J.R., Meth Enz (1983) 101:307の2μ複製起点、またはその他の酵母適合性複
製起点(例えば、Stinchcomb, et al., Nature (1979) 282:39、Tschumper, G.,
et al., Gene (1980) 10:157およびClarke, L, et al., Meth Enx (1983) 101:
300参照)を用いるベクターが用いられ得る。酵母ベクターのための制御配列と
しては、解糖酵素の合成のためのプロモーターが挙げられる(Hess, et al., J
Adv Enzyme Reg(1968) 7:149; Holland, et al., Biochemistry(1978) 17:4900
)。当業界で既知のさらに別のプロモーターとしては、3−ホスホグリセレート
キナーゼが挙げられる(Hitzeman, et al., J Biol Chem (1980) 255:2073)。
増殖条件および/または遺伝的背景により制御される転写のさらに別の利点を有
するその他のプロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロー
ムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連した分解酵素、α因子系、ならびに
マルトースおよびガラクトース利用に関与する酵素のためのプロモーター領域で
ある。ターミネーター配列は、コード配列の3‘末端で望ましい、ということも
考えられる。このようなターミネーターは、酵母由来遺伝子中のコード配列後の
3’非翻訳化領域に見出される。
【0103】 多細胞生物由来の真核生物宿主細胞培養中でポリペプチドをコードする遺伝子
を発現することも、もちろん考えられる(例えば、米国特許第4,399,216号(Axe
l等)参照)。これらの系は、イントロンをスプライスアウトする能力というさ
らなる利点を有し、したがってゲノム断片を発現するために直接用いられ得る。
有用な宿主細胞株としては、VEROおよびHeLa細胞、ならびにチャイニー
ズハムスター卵巣(CHO)細胞が挙げられる。このような細胞のための発現ベ
クターとしては、普通は、哺乳類細胞に適合可能なプロモーターおよび制御配列
、例えばサルウイルス40(SV40)からの一般的に用いられる初期および後
期プロモーター(Fiers, et al., Nature (1978) 273:113)、あるいはその他の
ウイルスプロモーター、例えばポリオーマ、アデノウイルス2、ウシパピローマ
ウイルスまたは鳥肉腫ウイルスに由来するものが挙げられる。制御可能プロモー
ターhMT1I(Karin, M., et al., Nature (1982) 299:797-802)も用いられ
得る。哺乳類細胞宿主系形質転換の一般的局面は、Axel(上記)により記載され
ている。「エンハンサー」領域が発現を最適にするのに重要である、ということ
も個々で明らかである。これらは一般に、非コードDNA領域のプロモーター領
域の上流または下流に見出される配列である。複製起点は、必要な場合には、ウ
イルス供給源から得られる。しかしながら染色体中への組込みは、真核生物にお
けるDNA複製のための一般的メカニズムである。
【0104】 形質転換 用いられる宿主細胞によって、このような細胞に適切な標準技法を用いて形質
転換が実行される。Cohen, S.N., Pro. Natl. Acad. Sci. (USA) 1972, 69: 211
0により記載されたような塩化カルシウムを用いるカルシウム処理、あるいはMan
iatis, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (1982) Cold Spring
Harbor Press, p.254およびHanahan, D., J Mol Biol (1983) 166: 557-580に
記載されたrbC12法が、原核生物または実質的細胞壁バリアを含有するその
他の細胞のために用いられ得る。このような細胞壁を有さない哺乳類細胞に関し
ては、任意にWigler, M., et al., Cell (1979) 16: 777-785により修正される
ようなGraham and van der Eb, Virology (1978) 52:546のリン酸カルシウム沈
降法が用いられ得る。酵母中での形質転換は、Beggs, J.D. Nature (1978) 275:
104-109またはHinnen, A., et al., Pro. Natl. Acad. Sci.(USA)(1978) 75:192
9の方法にしたがって実行され得る。
【0105】 ベクター構築 所望のコードおよび制御配列を含有する適切なベクターの構築は、当業界で十
分理解されている標準結繋および制限技法を用いる。単離プラスミド、DNA配
列または合成オリゴヌクレオチドは、切断され、仕立てられ、そして所望の形態
に再結繋される。
【0106】 ベクターを構成するDNA配列は、多数の供給源から利用可能である。主鎖ベ
クターおよび制御系は一般に、構築に際して配列の嵩のために用いられる利用可
能「宿主」ベクター上に見出される。典型的配列は、前記されている。関連コー
ド配列に関しては、初期構築は、cDNAまたはゲノムDNAライブラリーから
適切な配列を取り戻すという課題であり得るし、通常はそうである。しかしなが
ら配列が一旦開示されると、個々のヌクレオチド誘導体から出発してin vitroで
全遺伝子配列を合成することができる。相当の大きさの長さ、例えば500〜1000
bpの遺伝子またはcDNAに関する全配列は、デオキシリボヌクレオチド三リン
酸塩の存在下でDNAポリメラーゼを用いて、個々の重複相補的オリゴヌクレオ
チドを合成し、一本鎖化非重複部分に充填することにより調製され得る。このア
プローチは、既知の配列のいくつかの遺伝子の構築に首尾よく用いられてきた(
例えば、Edge, M.D., Nature (1981) 292: 756; Nambair, K.P., et al., Scien
ce(1984) 223:1299; Jay, Ernest J Biol Chem (1984) 259:6311参照)。
【0107】 合成オリゴヌクレオチドは、Edge, M.D., Nature (上記)およびDuckworth, et
al., Nucleic Acids Res (1981) 9:1691により記載されたようなホスホトリエ
ステル法により、またはBeaucage, S.L., and Caruthers, M.H., Tet Letts (19
81) 22:1859およびMatteucci, M.D., and Caruthers, M.H., J Am Chem Soc (19
81) 103:3185に記載されているようなホスホロアミダイト法により調製され、そ
して市販の自動オリゴヌクレオチド合成機を用いて調製され得る。アニーリング
前のまたはラベリングのための一本鎖のキナーゼ処理は、50mMのトリス、pH7.
6、10mMのMgCl2、5mMのジチオトレイトール、1〜2mMのATP、1.7y pmolの
γ32P−ATP(2.9 mCi/mmol)、0.1mMのスペルミジン、0.1mMのEDTAの存
在下で、余分量の、例えば1 nmolの基質に対して約10単位のポリヌクレオチドキ
ナーゼを用いて成し遂げられる。
【0108】 所望のベクターの構成成分が利用可能になれば、標準制限および結繋手法を用
いて、それらは切り取られ、結繋され得る。
【0109】 部位特異的DNA切断は、当業界で一般に理解されている条件下で、適切な制
限酵素(単数または複数)で処理することにより実施され、それらのうちの特殊
なものは、これらの市販の制限酵素の製造により特定される(例えば、New Engl
and Biolabs, Product Catalog参照)。概して、約20μlの緩衝液中の1単位の酵
素により、約1μgのプラスミドまたはDNA配列が切断される。本明細書中の実
施例では、典型的には余分量の制限酵素を用いて、DNA基質の完全消化を保証
する。37℃で約1時間〜2時間のインキュベーション時間が実行可能であるが、し
かし変動は耐容され得る。各インキュベーション後、フェノール/クロロホルム
を用いた抽出によりタンパク質は除去され、その後エーテル抽出されて、エタノ
ールを用いた沈降により水性分画から核酸が回収される。所望により、標準技法
を用いたポリアクリルアミドゲルまたはアガロースゲル電気泳動により、切断断
片のサイズ分離が実施され得る。サイズ分離の一般的説明は、Methods in Enzym
ology(1980) 65: 499-560に見出される。
【0110】 制限切断断片は、50mMのトリス、pH7.6、6mMのNaCl、6mMのMgCl2
6 mMのDTTおよび0.1〜1.0 mMのdNTP中で20℃〜25℃で約15〜25分のイン
キュベーション時間を用いて、4デオキシヌクレオチドトリホスフェート(dN
TP)の存在下で、大腸菌DNAポリメラーゼIの大型断片(Klenow)で処理す
ることにより平滑末端化され得る。クレノウ断片は5‘一本鎖オーバーハングを
埋めるが、しかし4dNTPが存在しても、突出3’一本鎖はバラバラにする。
所望により、選択的修復は、オーバーハングの性質により決定される制約内でd
NTPのうちの1つだけまたは選定dNTPを供給することにより実施され得る
。クレノウによる処理後、混合物はフェノール/クロロホルムで抽出され、そし
てエタノール沈降される。S1ヌクレアーゼまたはBAL−31を用いた適切な条
件下での処理は、任意の一本鎖化部分の加水分解を引き起こす。
【0111】 結繋は、以下の標準条件および温度下で、15〜50μl容積中で実施される:例
えば、20mMのトリス−Cl、pH7.5、10mMのMgCl2、10mMのDTT、33μg/
mlのBSA、10mM〜50mMのNaClおよび0℃で40μMのATP、0.01〜0.02(We
iss)単位のT4DNAリガーゼ(「付着末端」結繋用)あるいは14℃で1 mMの
ATP、0.3〜0.6(Weiss)単位のT4DNAリガーゼ(「平滑末端」結繋用)
。分子間「付着末端」結繋は、通常は33〜100μg/mlの総DNA濃度(5〜100 Nm
の総最終濃度)で実施される。分子間平滑末端結繋は、1μM総最終濃度で実施さ
れる。
【0112】 「ベクター断片」を用いるベクター構築において、ベクター断片は普通は、5
‘ホスフェートを除去し、ベクターの自己結繋を防止するために、細菌アルカリ
性ホスファターゼ(BAP)または仔ウシ腸アルカリ性ホスファターゼ(CIP
)を用いて処理される。消化は、約1単位のBAPまたはCIP/ベクター1μg
を用いて、60℃で約1時間、約10mMのトリス−HCl、1mMのEDTA中でpH8
で実行される。核酸断片を回収するために、調製物はフェノール/クロロホルム
で抽出され、エタノール沈降される。あるいは、再結繋は、付加的制限酵素消化
および/または望ましくない断片の分離により二重消化されるベクターにおいて
防止される。
【0113】 配列修飾を要するcDNAまたはゲノムDNA由来のベクターの部分に関して
は、部位特異的プライマー指示突然変異誘発が用いられ得る(Zoller, M.J., an
d Smith, M. Nucleic Acids Res (1982) 10:6487-6500およびAdelman, J.P., et
al., DNA (1983)2:183-193)。これは、突然変異化される一本鎖ファージDN
Aと相補的なプライマー合成オリゴヌクレオチドを用いて実行されるが、但し、
限定不適正は所望の突然変異を表す。要するに、合成オリゴヌクレオチドは、フ
ァージと相補的な鎖の合成を指図するためのプライマーとして用いられ、その結
果生じる部分的または完全二本鎖DNAはファージ支持宿主細菌中で形質転換さ
れる。形質転換化細菌の培養は、上部寒天中でプレート化されて、ファージを保
有する単一細胞からのプラーク形成を可能にする。
【0114】 理論的には、新しいプラークの50%が、一本鎖として、突然変異化形態を有す
るファージを含有する。50%はオリジナル配列を有する。その結果生じるプラー
クは、抽出物の結合を適正にさせるが、しかしオリジナル鎖との不適正は結合を
防止するのに十分である洗浄温度でのキナーゼ処理合成プライマーとのハイブリ
ダイゼーション後に洗浄される。プローブとハイブリダイズするプラークは次に
摘み取られ、培養され、そしてDNAが回収される。
【0115】 構築の確認 プラスミド構築のための的確な結繋は、M.Casadaban博士(Casadaban, M., et
al., J Mol Biol (1980) 138:179-207)から入手した大腸菌MC1061株またはそ
の他の適切な宿主を結繋混合物で先ず形質転換することにより確証され得る。当
業界で理解されているように、プラスミド構築の様式によって、その他のマーカ
ーを用いることにより、アンピシリン、テトラサイクリンまたはその他の抗生物
質により、うまくいった形質転換体を選択する。次に、形質転換体からのプラス
ミドを、Clewell, D.B., et al., Pro. Natl. Acad. Sci.(USA) (1969) 62:1159
の方法により、任意にクロラムフェニコール増幅(Clewell, D.B. J Bacteriol
(1972) 110:667)後に、調製する。いくつかのミニDNA標本は、一般的に用い
られる(例えば、Holmes, D.S., et al., Anal Biochem Acids Res (1979)7:151
3-1523)。単離DNAは、制限により分析されおよび/または、Messing, et al
., Nucleic Acids Res (1981) 9:309によりさらに記載されているようにSanger,
F., et al., Pro. Natl. Acad. Sci.(USA) (1977) 74:5463のジデオキシヌクレ
オチド法により、あるいはMaxam, et al., Methods in Enzymology (1980) 65:4
99の方法により、シーケンシングされる。
【0116】 宿主例 本明細書中のクローニングおよび原核生物発現に用いられる宿主下部は、以下
の通りである: クローニングおよびシーケンシングのために、およびほとんどの細菌プロモー
ターの制御下での構築の発現のために、大腸菌株、例えばMC1061、DH1、R
R1、C600hfl、K803、HB101、JA221およびJM101が用いられ得る。
【0117】 3.初乳中のSAAの発見に基づいた検定 初乳中の特定の構成的発現形態のSAAの発見は、生物学的流体(例えば初乳
および乳)の混合物を含有する試料中の初乳の存在を検出する新規の方法を可能
にする。例えばSAAは、正常乳腺組織からの初乳中では上昇し、乳中では上昇
しないため、乳試料中の測定初乳SAAを用いて、乳から初乳を弁別し得る。し
たがって、初乳を含有する乳を有するのが望ましくない場合(いくつかの国はこ
の実行のための法律を有する)、前記のような免疫学的またはハイブリダイゼー
ション検定を用いて、初乳汚染乳を検出し得る。したがって、初乳を含有する乳
を有するのが望ましくない場合には、前記のような免疫学的またはハイブリダイ
ゼーション検定を用いて、初乳汚染乳を検出し得る。
【0118】 初乳SAAは、種々のその他の目的のためにも用いられ得る。これらの例とし
ては、(1)腸または血管系を通り抜ける分子の送達のための担体、(2)新生
児における腸粘膜の発達のための影響供給、ならびに(3)免疫応答のレギュレ
ーター(注射または経口投与による)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】 4.医薬製剤 本発明によって、本発明の初乳関連SAA、特にその活性部位(TFLKモチ
ーフ)が小腸におけるムチン産生を刺激することを、出願人は発見した。これは
、ムチンが腸感染の予防および治療に重要な役割を有することが示されているの
で有意であり、そして多数の共生物質がムチン産生の誘導により作用する(Mack
et al., “Probiotics inhibit enteropathogenic Esherechia coli adherence
in vitro by induding intestinal mucin gene expression”, 1999, Am J Phy
siol, 4Part 1 G941-950参照)(この記載内容は、参照により本明細書中に含ま
れる)。したがって本発明は、初乳関連SAAを含む動物のための医薬製剤も包
含する。製剤組成物の用量および投与スケジュールが投薬等よりむしろ動物の年
齢、健康状態、性別および体重によって変化する、と医学業界の当業者は容易に
理解する。これらのパラメーターは、十分確立された手法および例えばI、II
およびIII期における分析により各系に関して確定され得る。
【0120】 投薬のために、初乳関連SAAは製薬上許容可能な担体、例えば適切な液体ビ
ヒクルまたは賦形剤、ならびに単数または複数の任意の補助添加剤と併合され得
る。液体ビヒクルおよび賦形剤が慣用的であり、市販されている。それらの実例
は、蒸留水、生理食塩水、デキストロースの水性溶液等である。
【0121】 概して、活性化合物のほかに、本発明の製剤組成物は、製薬的に用いられ得る
調製物中への活性化合物の加工を促す適切な賦形剤および助剤を含有し得る。直
腸的に投与され得る調製物としては、座薬が上げられる。その他の投薬形態とし
ては、非経口的または経口的投与に適した溶液、および頬または舌下に投与され
得る組成物が挙げられる。
【0122】 本発明の医薬製剤は、それ自体当業界で周知の方法で製造される。例えば医薬
製剤は、慣用的混合、造粒、糖衣錠製造、溶解、凍結乾燥法により製造され得る
。用いられる方法は、最終的には用いられる活性成分の物理的特性によっている
【0123】 適切な賦形剤は、特に充填剤、例えば糖、例えばラクトースまたはスクロース
、マンニトール、ソルビトール、セルロース調製物および/またはリン酸カルシ
ウム、例えばリン酸三カルシウムまたはリン酸水素カルシウム、ならびに結合剤
、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデ
ンプンを用いたデンプンペースト、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロ
ース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセル
ロースおよび/またはポリビニルピロリドンである。所望により、崩壊剤、例え
ば前記のデンプン、ならびにカルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリ
ドン、寒天あるいはアルギニン酸またはその塩、例えばアルギニン酸ナトリウム
が付加され得る。助剤は、流動調節剤および滑剤、例えばシリカ、タルク、ステ
アリン酸またはその塩、例えばステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カ
ルシウムおよび/またはポリエチレングリコールである。糖衣錠コアは、所望に
より胃液に耐性であり得る適切なコーティングとともに提供される。
【0124】 この目的のために、任意にアラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ポリエチレ
ングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液および適切な有機溶媒
または溶媒混合物を任意に含有し得る濃縮糖溶液が用いられ得る。胃液に耐性の
コーティングを生成するために、適切なセルロース調製物、例えばアセチルセル
ロースフタレートまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、染料
および顔料の溶液が、例えば同定のために、あるいは化合物用量の異なる組合せ
を特性化するために、糖衣錠に付加され得る。
【0125】 経口的に用いられ得るその他の医薬製剤としては、ゼラチン製のプッシュ−フ
ィットカプセル、ならびにゼラチン製の軟質密封カプセルおよび可塑剤、例えば
グリセロールまたはソルビトールが挙げられる。プッシュ−フィットカプセルは
、充填剤、例えばラクトース、結合剤、例えばデンプンおよび/または滑剤、例
えばタルクまたはステアリン酸マグネシウム、そして任意に安定剤と混合され得
る顆粒形態の活性化合物を含有し得る。軟質カプセル中では、活性化合物は好ま
しくは適切な液体、例えば脂肪油、液体パラフィンまたは液体ポリエチレングリ
コール中に溶解または懸濁される。さらに安定剤が付加され得る。直腸的に用い
られ得る考えられる医薬製剤としては、例えば座薬が挙げられるが、これは活性
化合物と座薬基剤の組合せから成る。適切な座薬基剤は、例えば天然または合成
トリグリセリド、パラフィン炭化水素,ポリエチレングリコールまたは高級アル
コールである。さらに、活性化合物と基剤の組合せから成るゼラチン直腸カプセ
ルの使用も考えられる。考え得る基剤材料としては、例えば液体トリグリセリド
、ポリエチレングリコールまたはパラフィン炭化水素が挙げられる。
【0126】 非経口投与のための適切な処方物としては、水溶性または水分散性形態の活性
化合物の水性溶液が挙げられる。さらに適切な油状注射懸濁液としての活性化合
物の懸濁液が投与され得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油
、例えばゴマ油、あるいは合成脂肪酸エステル、例えばエチルオレエートまたは
採りグリセリドが挙げられる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増大する物質
を含有し、その例としては、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソ
ルビトールおよび/またはデキストランが挙げられ、任意に懸濁液は安定剤も含
有し得る。
【0127】 慣用的担体を伴う投与のほかに、活性成分は、当業者に既知の種々の特殊送達
薬技法により投与され得る。以下の実施例は説明のためだけに示されており、ど
の点においても本発明を限定するものではない。
【0128】 本明細書中で用いる場合、「有効量」とは、本明細書中に開示した方法および
プロトコールにより測定した場合に粘膜細胞への病原体の付着が低減されるよう
、ムチン産生を増大するのに十分な初乳関連SAAの量を意味する。
【0129】 本発明によれば、新規の初乳関連SAA、ならびに特にそのTFLKモチーフ
活性部位は、ムチン産生を、特にMUC3を刺激することが示されている。ムチ
ン産生は大腸菌の付着を抑制することが示されており、それを実行する共生作因
は、ムチンの刺激により作用することが示されている。初乳関連SAAおよび/
またはペプチドは、共生物質として用いられ得る。
【0130】 腸感染におけるムチンの意義は、感染生物体が疾患を引き起こすのに必要な事
象を防止するそれらの能力にある。
【0131】 ムチンは小腸上皮細胞により産生され、それらの表面に分泌される。したがっ
てムチンは戦略的に腸の上皮細胞と、腸管中に摂取された攻撃作因(即ち感染作
因、有害物質)との間に位置する。
【0132】 ムチンは腸管の上皮細胞への細菌の付着も抑制する。腸の生細胞との細菌の結
合は、侵襲、毒素送達および下痢性疾患の発症の第一段階である。腸病原体の結
合が抑制される場合には、疾患は発症しない。
【0133】 ムチンはウイルスの複製を抑制することが示されている。
【0134】 ムチンは、腸の固有の免疫および塩基性防御系の一部である。したがって抗体
/T細胞駆動後天性免疫系との比較に際して、ムチンは以下のような利点を提供
する:攻撃作因に対する間接的または迅速誘導可能応答、広範囲の作用、局所的
有効性、動物界全体で無傷。
【0135】 ムチン産生増大は、小腸細胞の外側に影響を及ぼすことにより可能である。
【0136】 感染作因によるムチン分泌増大は、周知の臨床的現象である。ムチンは感染性
腸細菌が小腸細胞に付着するのを抑制し、したがって感染を防止する。これは、
普通は細胞に付着するのに用いられる細菌の壁上の構造へのムチン付着により成
し遂げられる。共生細菌(非感染性細菌)は腸管を裏打ちする上皮細胞への感染
性腸細菌の付着を防止する。共生細菌からの分泌物質は、より多くのムチンを腸
細胞に産生させる。これが、共生作因が感染を防止するメカニズムである。
【0137】 初乳関連SAAは哺乳類種の初乳中に存在し、乳腺の管状上皮細胞により産生
される、ということを出願人は実証した。さらにアミノ酸配列分析により、初乳
関連SAAの一部が多数の動物種の間に保存されることが明示された。出願人は
、分子の保存領域であるTFLKモチーフを含有するウシ初乳関連SAAから10
アミノ酸ペプチドを合成した。このペプチドは、ムチン産生に関与する遺伝子を
活性化することにより、小腸から単離された細胞中のMUC3の産生を増大する
。小腸ムチン遺伝子はこのペプチドにより非常に迅速に(30分以内)作動される
、ということを出願人は示した。さらにこのペプチドによるムチン産生の増大は
、小腸細胞周囲のその濃度に関連する。実験は、低濃度の初乳関連SAAペプチ
ドはムチン産生の増大を生じないが、一方多すぎる初乳関連SAAペプチドはム
チンの遺伝子駆動性産生を低減することを示す。この現象は生物学的系において
は非常に一般的であり、それが特定用量依存性作用であることを示す。初乳関連
SAAペプチド内の4つのアミノ酸領域「TFLK」および4つのアミノ酸の特
定順序は、ムチン産生刺激に関与する。独特の初乳関連SAA領域に無関係なア
ミロイド分子のその他のペプチドはムチン産生を刺激しない、ということが示さ
れている。
【0138】 これは、多数の腸病変、例えば旅行者下痢に対するこのペプチドの製薬的適用
を実証する。多数の感染生物体は実際地理学的であり、それら自体の領域外の旅
行者は、通常はこれらの生物体にそれまで曝露されたことがなく、したがってそ
れらに対する免疫が発達していない。多数の人々は旅行前に抗生物質を摂取する
が、しかしいくつかの抗生物質は有害副作用を有し、さらに生物は多数の抗生物
質に対して耐性になる。
【0139】 もうひとつのその他の考え得る用途は、特に軍隊のための赤痢およびその他の
感染性疾患の予防である。ワクチン開発は、例えば新兵のワクチン接種の失敗(
炭疽菌ワクチン)ならびにワクチンの市場からの除去をもたらしているワクチン
接種により引き起こされた疾患(ロタウイルスワクチン)といった問題を提示し
ている。初乳関連SAAは、腸関連感染を低減または防止するための迅速、安全
且つ有効な手段である。
【0140】 別の例としては、乳児下痢の予防または治療が挙げられる。母乳乳児は調合乳
乳児よりはるかに感染が少ない。初乳は乳児に有益な天然物質であり、初乳関連
SAAは初乳の構成成分であるため、それは調合乳へのきわめて大切な天然付加
物である。このような調合乳は一般に、例えばインファメルTM、シミラックTM
カーネーショングッドスタートTMおよびベルベルTMとして市販されている。共生
物質は、ウイルス性下痢の重症度を低減し、回復時間を単種つくすることが示さ
れている。したがって、初乳関連SAAに関するもうひとつの用途は、この症状
を有する小児に対してであり、これは入院日数および経費を低減することにより
経済的影響も有する。
【0141】 さらに別の例としては、壊死性腸炎(NEC)の予防または治療が挙げられる
。これは、未熟児に起こる重篤合併症である。目下用いられている種々の生殖技
術により、未熟児数が急増した。NECのための治療は、この20〜30年間、旧態
依然としている。未熟児の腸内の細菌はNECの発症に大きな役割を有している
ため、この症状の治療は、乳児を栄養補給、強力な抗生物質の投与から遠ざけて
、そして腸が穿孔しないよう願うことである。
【0142】 別の例としては、溶血性尿毒症症候群による死を引き起こし得る大腸菌O15
7:H7発生の発生領域における下痢の予防が挙げられる。ムチン産生が上皮細
胞への大腸菌の付着を防止し、したがってこの感染を防止する、ということをわ
れわれは示した。
【0143】 さらに別の例としては、尿路感染の治療および予防が挙げられる。膀胱上皮細
胞は小腸上皮細胞と非常によく似ており、ムチンを産生し得る。したがって、尿
カテーテルを有する入院患者を含めた尿路感染の予防も、本発明の製剤組成物の
一用途である。
【0144】 さらに別の例としては、飼料からの抗生物質の除去を可能にするための家畜動
物における感染性下痢の予防のための獣医学が挙げられる。
【0145】 本開示は小腸ムチン上向き調節を含むが、他の粘膜表面(例えば鼻咽頭、膀胱
等)を裏張りする上皮細胞もムチンを産生する。これらのムチンは小腸ムチンと
同様に感染を防止するよう機能し、本発明の治療のための有効な標的である。
【0146】 本発明をさらに詳細に説明するために、以下の実施例を提供する。それらは説
明のためのものであって、本発明を限定するものではない。
【0147】 実施例1 血清、初乳および乳漿中のSAAの比較分析 この試験の目的は、乳腺炎無症候性および症候性ウシにおいて、初乳および乳
漿中のSAAレベルが血清SAAレベルに対応するか否かを確定することであっ
た。
【0148】 初乳、乳漿および血清試料は、蓄牛にグラム陽性生物に対するワクチン接種を
施した試験モデル研究から得た。2組の試料を用いた:一方の組(4頭)は乳腺
炎の臨床症状を示すワクチン接種動物からで、他方の組(5頭)は臨床症状を示
さないワクチン接種動物からであった。試料名を以下に示す: ワクチン接種−無臨床症状(NC) NCウシA NCウシB NCウシC NCウシD NCウシE ワクチン接種−臨床症状(C) CウシA CウシB CウシC CウシD 乳漿/初乳試料は、臨床症状を示す1/4から得た。
【0149】 ウシSAAアイソフォームと交差反応するラット抗SAA(ヒト)モノクロナ
ール抗体を用いて、例えばMcDonald等(J. Immunol. Meth. 144: 149-155, 1991
)による記載と同様に標準プロトコールにしたがってELISA検定を実行した
。 結果を表1に示す: 表1:ウシ乳腺炎血清、乳漿および初乳SAA値の比較
【0150】
【表1】
【0151】
【表2】
【0152】 表1に記載した結果からわかるように、試験した動物の80%において、出産時
に、SAAは高レベルでウシの初乳中に存在した。14日後のほとんどの臨床的に
健常なウシの乳漿試料中では、SAAは検出されなかった。初乳および乳漿中の
SAAレベルは、SAAの血清レベルとは無関係であった。対照ウシの出産時の
SAAの血清レベルは正常であった(15μg/ml)が、一方、出産時の初乳中の平
均レベルは約300 μg/mlであった。1頭のウシでは、初乳SAAは1100μg/mlと
高かった。乳腺炎試験ワクチン接種ウシCCは、非常に高レベルのSAAを示し
たが、しかし乳漿試料中のSAAはほぼ正常であった。ワクチン接種試験ウシC
Dは、血清中および乳漿中で高レベルのSAAを示した。
【0153】 実施例2 初乳およびその後の連続牛乳サンプリング中のSAAの評価 この試験の目的は、初乳およびその後の連続牛乳サンプリングを評価して、S
AA含量を確定することであった。試料は、ネブラスカ大学Lincoln Dairy Rese
arch Facilityのホルスタイン酪農牛から得た。出産時に初乳の試料を採取し、
その後の牛乳試料は週2回、3週間採取した。乳房四分円の4つすべてからの試
料をプールした。結果を表2に示す。
【0154】 表2:初乳および牛乳試料中のSAAレベル
【0155】
【表3】
【0156】 結果は、SAAは正常動物の初乳中で高かったが、しかし初乳がなくなった後
の正常牛乳試料中では非常に低レベルであるかまたは検出されなかった。
【0157】 実施例3 初乳からのSAAの精製 下記の手法は、任意の動物種からの血清、血漿、乳または初乳からのSAAの
精製のために用い得る。本手法は、2つの基本段階からなる:疎水性クロマトグ
ラフィーによりSAAを約20%純度に精製する。次に、SDS−PAGEおよび
電子ブロッティングにより、さらに約95%純度に精製する。
【0158】 約10容積(300 ml)の水でそれを洗浄して、約30 mlのオクチルセファロース
CL−4B(Pharmacia #17-0790-01)を調製して、あらゆる微量エタノールを
除去した。これは、焼結ガラス漏斗(粗製、漏斗容積600 ml)中でのゲル洗浄に
より、またはビーカー中のゲルへの水の付加と、その後、ゲルを沈降させた後、
水を注ぎだしてゲルを再洗浄することにより、実行し得る。
【0159】 ゲルの最終洗浄(2x4 ml)は、0.5 M硫酸アンモニウムの溶液を用いた。
【0160】 脂質部分は精製手法を妨げると思われたため、使用前に、初乳を4℃で放置し
て、脂質層を水性相から分離させた。硫酸アンモニウムを注ぎだした後、高レベ
ルのSAA(好ましくは>1μg/ml)を含有する20 mlの4℃冷蔵初乳をゲル(ビ
ーカー中)に付加した。初乳とゲルの懸濁液を室温での1時間インキュベーショ
ン中数回書きませて、SAAをゲルと結合させた。
【0161】 次にゲルを600 mlの焼結ガラス漏斗(粗製)に注ぎ入れて、非結合分画を収集
した。この非結合分画を、SAAに関して試験して、結合効率を確定し得る。
【0162】 ゲルを50 mlの50 mMトリス、10 mMNaCl緩衝液、pH7.6で5回洗浄した。
最終洗浄液は透明になる必要がある。
【0163】 カラムを、トリス/NaCl中の2x50 mlの30%イソプロパノールでさらに洗
浄した。これらの洗浄は、10ゲージ針を用いた注射器を用いてイソプロパノール
/緩衝液をゲル上に射出した場合はほぼ完全であった。この手法を後に用いた場
合、ゲルは完全に混合された。
【0164】 トリス/NaCl中の60%イソプロパノールの溶液を用いて、ゲルからSAA
を溶離した。一般に、これは各々10 mlの4つの溶離液中で実行した。
【0165】 溶出液は種々のタンパク質を含有下。そのうち約20%がSAAであった。SA
Aが薄すぎる試料では、遠心分離濃縮機(RC 1010, Jouan Inc.)でイソプロパ
ノールを蒸発させて、それを濃縮した。
【0166】 シーケンシングまたはアミノ酸分析のためにさらに精製するために、SDS−
PAGEにより溶出液中のタンパク質を分離して、電子ブロッティングによりP
VDF膜に移した。
【0167】 SAA特異的抗体によりSAAと同定された帯域を次に切り出して、シーケン
シングのために用いた。
【0168】 実施例4 初乳関連SAAcDNAの単離 RNA単離:メーカー推奨にしたがってTRIZOL(Gibco BRL)を用いて
、逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)用の全RNAを哺乳類乳腺上
皮細胞から単離した。1%(重量/容量)アガロースゲル上での分別およびその
後の臭化H時有無染色により、RNAの完全性を調べた。
【0169】 一次鎖cDNA合成:本質的にメーカーが記載したとおりにスーパースクリプ
トII RNアーゼH−逆転写酵素(Gibco BRL)を用いて、一次鎖cDNA合
成を実施した。要するに,5μgの総RNAをRNアーゼ無含有滅菌水および20μ
MのCDNA1−T14プライマー(5’-GTTGTCGACTGTAGTGGAGT14-3’)(配列
番号14)と一緒に混合して、12μLの最終容積を得た。反応混合物を75℃で10
分間インキュベートした後、室温で10分間インキュベートした。次に混合物を氷
上に載せながら、4 μLの5x一時標準緩衝液(Gibco BRL)、2Μlの0.1 MDTT
および1Μlの10mMdNTPミックス(10mMdATP、10mMdGTP、10mMdCT
Pおよび10mMdTTP、中性pH)を付加した。反応内容物を静かに混合し、42
℃で2分間インキュベートした。スーパースクリプトII RNアーゼH−逆転
写酵素(200単位)を反応に付加した。静かに混合後、反応物を42℃で1時間イン
キュベートした。混合物を70℃で15分間加熱することにより、逆転写酵素を不活
性化した。cDNAと相補性のRNAを除去するために、2単位の大腸菌RNア
ーゼH(Gibco BRL)を付加し、混合物を37℃で20分間インキュベートした。反
応混合物を、二次cDNA合成のために必要とされるまで、−20℃で保存した。
【0170】 二次鎖cDNA合成およびポリメラーゼ連鎖反応:それぞれのDNAポリメラ
ーゼに関して各々メーカーの推奨にしたがって、プラチナTaqDNAポリメラ
ーゼ高忠実度(Gibco BRL)またはAmpliTaqDNAポリメラーゼ(PE Ap
plied Biosystems)を用いて、二本鎖cDNAの二次鎖cDNA合成および増幅
を実施した。プラチナTaqDNAポリメラーゼ高忠実度とのPCR反応物(50
μL)は、前記の5μgのcDNA、20μMの前方プライマー、20μMの逆プライマ
ー、5μLの10x高忠実度PCR緩衝液(Gibco BRL)、1μLの10mMdNTPミッ
クス、2μLの50mM硫酸マグネシウム、1単位のプラチナTaqDNAポリメラー
ゼ高忠実度(Gibco BRL)、ならびに最終容積を50μLにするための滅菌水を含有
した。プラチナTaqDNAポリメラーゼ高忠実度(Gibco BRL)による熱循環
パラメーターは、40サイクルで94℃で30分間、45〜56℃で25〜30秒,ならびに50
℃で1〜4分であった。
【0171】 AmpliTaqDNAポリメラーゼ(PE Applied Biosystems)を用いたP
CR反応(50μL)は、前記の5μgのcDNA、20μMの前方プライマー、20μM
の逆プライマー、15mMの塩化マグネシウムを含有する5μLの10xGeneAmp
緩衝液(PE Applied Biosystems)、1μLの10mMdNTPミックス、1.3単位のA
mpliTaqDNAポリメラーゼ(PE Applied Biosystems)、ならびに最終
容積を50μLにするための滅菌水を含有した。AmpliTaqDNAポリメラ
ーゼ(PE Applied Biosystems)による熱循環パラメーターは、熱スタートで開
始して、40サイクルで95℃で1分間、50℃で30秒,ならびに72℃で1分、次に72℃
で15分を1サイクルであった。
【0172】 初乳関連SAAアミの末端およびトリプシン消化断片から得たアミノ酸配列を
逆翻訳することにより、初乳関連SAAcDNAのPCR増幅に適した初期オリ
ゴヌクレオチドプライマーを設計した(図2参照)。前方縮重プライマーF1C
(5’-ACNTTYCTNAARGARGCNGGNCA-3’)(配列番号15)および逆縮重プライマ
ーR3B(5’-GAAGTGRTTGGGTCTTTGCCACT-3’)(配列番号16)(これらは成
熟初乳関連SAAタンパク質中のそれぞれアミの末端残基TFLKEAGQ(配
列番号17)およびカルボキシ末端残基SGKDPNF(配列番号18)に対応
する)を、初乳関連SAAに関する300 bp中間cDNA配列の初期増幅のための
PCRに用いた。初乳関連SAAに関する5‘cDNA配列は、PCRとその後
の前方プライマーM5RT2(5’-AGCACAGGCAGCTCAGCTTCACCAGGA-3’)(配列
番号19)および逆プライマーM5GW2(5’-GAAGTATTTGTCTGCACCCCTGTAGTTG
GCTTCTT-3’)(配列番号20)を用いたDNAシーケンシングにより得た。M
5RT2プライマーは、GenBankに寄託したSAAcDNA配列を基礎にし、M
5GW2は前記の300 bp初乳関連SAAcDNA配列を基礎にした(図2参照)
。初乳関連SAAに関する3‘cDNA配列は、PCRとその後の前方プライマ
ーM3GW2(5’-CTGTTTAAGGGTATGACCAGGGACCAGGTACG-3’)(配列番号21)
および逆プライマーCDNA1(5’-GTTGTCGACTGTAGTGGAG-3’)(配列番号2
2)を用いたDNAシーケンシングにより得た。M3GW2プライマーは、前記
の300 bp初乳関連SAAcDNA配列を基礎にし(図2参照)、CDNA1プラ
イマーは、一次鎖cDNA合成に用いたプライマーCDNA1−T14の最初の
19ヌクレオチドと同一であった(CDNA1−T14に関する前記参照)。
【0173】 初乳関連SAAcDNAのクローニング:縮重オリゴヌクレオチドF1Cおよ
びR3Bを使用して、AmpliTaqDNAポリメラーゼ(PE Applied Biosy
stems)を用いて結果的に生じた300bpRT−PCR産物を、メーカーの推奨にし
たがって、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen)を用いてアガロースゲル精製し、
pCRII−TOPOベクター(Invitrogen)中でクローン化した。Invitrogen
の推奨どおりに、TOPOクローニング反応物を大腸菌TOP10中で形質転換
させて、50μg/mLカナマイシンおよびX−Galを含有するLuria-Bertani上で
プレート化した。PCRでM13前方(−20)およびM13逆プライマーを用い
て、推定陽性コロニーをスクリーニングした。2%(重量/容量)アガロースゲ
ル中で再増幅挿入物を分別し、適切なDNAサイズマーカーとともに臭化H時有
無染色により可視化した。
【0174】 初乳関連SAAcDNAのDNAスクリーニングおよびコンピューター分析:
クローン化300bp初乳関連SAAcDNA配列を、高忠実度PCRでM13前方
(−20)およびM13逆プライマーを用いて再増幅した。M5RT2/M5GW
2およびM3GW2/CDNA1プライマー対をそれぞれ用いて、高忠実度RT
−PCRで、初乳関連SAA配列の5‘および3’領域を再増幅した。その結果
生じたアンプリコンを、QIAquickPCR精製系(Qiagen)を用いて精製し、自動
ABI377DNAシーケンサーでアイオワ州立大学(Ames, IA)のDNAシーケ
ンス施設により、両方向にシーケンシングした。SP6およびT7−2プライマ
ーを、クローン化300bp初乳関連SAAcDNAのシーケンシングに用いた。プ
ライマーM5RT2およびM5GW2は、初乳関連SAAcDNAの5‘領域の
シーケンシングのために、そしてプライマーM3GW2およびCDNA1は初乳
関連SAAcDNAの3‘領域のシーケンシングのために用いた。Wisconsin Ge
netics Computer Group (GCG) Package Version 10.1(Madison, WI) SeqEd、Pil
eUpおよびBLASTXプログラムを用いて、DNA配列を分析した。SignalP(バージ
ョン1.1)プログラム(Nielsen et al., 1997)を用いて、網の末端信号ペプチ
ド切断部位を同定した。
【0175】 ウシ乳腺上皮細胞による初乳関連SAAおよび急性期SAAmRNA発現のR
T−PCR検出:前記で詳述したように、存在するmRNAからの一次鎖合成の
ためにプライマーCDNA1を用いて、その後、二次鎖合成および増幅のために
プライマーF1CおよびR3Bを用いて、ウシ乳腺上皮細胞から300bpRT−P
CR産物を得た。図は、この300bpRT−PCR産物から得たヌクレオチド配列
を示す。このヌクレオチド配列は、初乳関連およびウシ乳腺関連SAAアイソフ
ォームから得たペプチドシーケンシングデータと相関した(図2参照)。
【0176】 前方縮重プライマーF2(5’-GACATGTGGMGAGCCTACTCYGACATG-3’)(配列番
号23)および逆縮重プライマーR3B(前記)を、A−SAAcDNAの増幅
のためのRT−PCRに用いた。前方プライマーF2は、急性期SAA(A−S
AA)タンパク質(SWISS-PROT寄託番号P35541)中のアミの末端残基DMWRAYSDM
(配列番号24)に対応し、そして逆プライマーR3Bは、A−SAAタンパク
質および初乳関連SAAタンパク質の両方におけるカルボキシ末端残基SGKDPNHF
(配列番号25)に対応する。その結果生じた267bpcDNA配列のその後のク
ローニングおよびヌクレオチドシーケンシングは、初乳関連SAAcDNAと相
関したが、これは、初乳関連SAAおよび非A−SAA転写体が存在したことを
示唆する。
【0177】 制限エンドヌクレアーゼXhoI部位は、ウシA−SAAのcDNA配列中に
存在することが判明した(データは示されない)が、ウシ初乳関連SAAのcD
NA中には見出されなかった。前記の300bpおよび267bpcDNA配列のXhoI
制限エンドヌクレアーゼ消化は、これら2つのRT−PCR産物のいずれも切断
しなかった。この結果はSらに、初乳関連SAAおよび非A−SAAmRNAの
みがウシ乳腺上皮細胞により転写されることを示唆した。
【0178】 初乳関連SAAおよび非A−SAAmRNAがウシ乳腺上皮細胞により発現さ
れたことをさらに立証するために、前方初乳関連SAA特異的プライマーM3G
W2(前記および図2)および逆CDNA1プライマー(前記)を再びRT−P
CRに用いた。さらに成熟A−SAA中の残基FKGTTSGQGQ(配列番号27)に対
応する前方A−SAA特異的プライマーS3GW1(5’-TAAGGGTACGACCAGTGGCC
AGGGTCA-3’)(配列番号26)および逆CDNA1プライマー(前記)をRT
−PCRに用いた。しかしながら、前方A−SAA特異的プライマーおよび逆C
DNA1プライマーを用いてRT−PCR産物は観察されず、ウシ乳腺上皮細胞
による発現は認められないかまたは低量のA−SAAmRNA発現が生じること
を確証した。
【0179】 実施例5 ウシMAC−T乳腺上皮細胞による初乳SAA産生 ウシMAC−T乳腺上皮細胞をATCC(CRL-10274)から入手して、推奨条
件にしたがって培養した(Turner, JD and Huynh H.Immortalized bovine mamma
ry epithelial cell line。米国特許第5,227,301号(1993年7月13日))。10%
ウシ胎仔血清(FCS)、5μg/mlインスリン、1μg/mlヒドロコルチゾンおよび
フンジゾンを補充したダルベッコの変法培地(DMEM)上で、MAC−T細胞
を培養した。5%CO2を用いて37℃で細胞をインキュベートした。初乳SAA産
生のために、細胞をI型コラーゲン被覆プレート上に植え付けた。14時間インキ
ュベーション後、細胞をダルベッコのリン酸塩緩衝食塩水(DPBS)で2回洗
浄し、初乳SAA産生刺激のためにヒツジ上皮小体からのプロラクチン(5μg/m
l)を補充した培地(DMEM,5μg/mlインスリン、1μg/mlヒドロコルチゾン
および2.5%FCS)中でインキュベートした。およそ半分の培地を毎日プロラ
クチン補充培地と取り替えた。SAAの定量のための標準ELISA(図3)を
用いて、初乳SAAの存在に関して、異なる日に収集した増殖培地のアリコート
を検定した。
【0180】 プロラクチンを補充した培地中に細胞を41日間保持した。初乳SAA産生レベ
ルは、ほぼ3000 ng/mlの最大に達した。
【0181】 細胞培養液からの初乳関連SAAの精製 アフィニティークロマトグラフィ
ーにより、細胞培養液から初乳SAAを精製した。要するに、SAAに対する特
異性を有するモノクローナル抗体を臭化シアン活性化セファロース4Bと結合さ
せることにより、アフィニティーカラムを調製した。カラムを50mMのトリス、0.
1NaCl、0.2 Mグリシン、pH8、緩衝液で処理して、ゲル上の残留活性基を
ブロッキングした。次にカラムを50Mmトリス、0.1 MNaCl、pH7.2緩衝液で
洗浄して、余分の非結合タンパク質を除去した。約50 mlの培養液をカラムに通
した。カラムをトリス−NaCl緩衝液で洗浄して、カラム中に閉じ込められて
いたあらゆる非結合タンパク質を除去した。次に、0.1 Mグリシン−HCl、p
H2.8を用いてカラムからタンパク質を溶離した。分画を直ちに中和した。EL
ISAにより全分画を検定して、最大量の初乳関連SAAを含有する分画を確定
し、ウエスタンブロットにより分画の総タンパク質含量も査定した(図4)。
【0182】 精製タンパク質のアミノ酸配列の確定 最大量の初乳SAAを含有する分画
を12%SDS−PAGEに付して、ミニトランスブロット系(Bio-Rad Laborato
ries)によりPVDF膜上で電気泳動的転写を実行した。膜上の一レーンの切片
を切り出して、SAAに対するモノクローナル抗体で染色して、初乳SAAの存
在を立証した。残りの膜は、0.5%(重量/容量)ブロムフェノールブルーを含
有するメタノール:水(40:60)の溶液中で5分間染色し、メタノール:水(50
:50)の溶液中で脱色した。初乳SAAタンパク質(モノクローナル抗体染色に
より同定)を膜から切り出した。pfuピログルタメートアミノペプチダーゼ(
TaKaRa Biochemicals)を用いて脱ブロッキングし、その後、エドマン分解を用
いてN末端シーケンシングを実行した。シーケンシングは、プロサイス49(Un
iversity of Nebraska Medical Center’s Protein Core FacilityによるPE-Bio
systems製)上で実施した。初乳SAAに関するN末端配列が認められた(図5
)。
【0183】 血清、初乳および細胞培養液からのSAAの等電点電気泳動(IEF) 種
々のSAA調製物の等電点電気泳動のために、プロテインIEFセル(BioRad)
を用いた。IEFのためには、3〜10のpH範囲を有するReady Strip IPG Strip
(BioRad Laboratories)を用いた。IPGストリップを12%SDS−PAGE
ゲルに付し、PVDF膜上で電気泳動的転写を実施することにより、二次元タン
パク質分析を実行した。ストリップおよびブロットは、ブロットの一方がタンパ
ク質染色、クーマシーブリリアントブルー(CBB)で染色され、SAAタンパ
ク質アイソフォームの同定のために他方が抗SAAモノクローナル抗体で染色さ
れるよう、2通りに実行した。各SAAアイソフォームの等電点(pI)が確定
され得るよう、試料は内部IEF標準(BioRad Laboratories)も含有した。抗
体染色スポットとCBBで染色された標準のスポットを比較することにより、S
AAアイソフォームの見かけのpIを確定し得る。これらの手法はすべて、メー
カー推奨のプロトコールにしたがって実行した。
【0184】 IEFおよび2−D分析を施したタンパク質を、細胞培養液に関して前記され
ているようにアフィニティー精製し、あるいは血清の場合には、疎水性クロマト
グラフィーにより半精製しただけであった。SAAは高疎水性分子であり、オク
チルセファロースビーズと容易に結合し、次に適切な条件下でマトリックスから
溶離され得る。要するに、高SAAレベルの血清を等量のオクチルセファロース
CL−4Bゲルと1時間混ぜ合わせて、血清からのタンパク質とゲルとの疎水性
結合を可能にした。ゲルをトリス−HCl緩衝液で洗浄して、マトリックス内に
閉じ込められていたあらゆるタンパク質を除去した。トリス−NaCl緩衝液中
の60%イソプロパノールにより、ゲルと結合したタンパク質を溶離した。これら
の溶出液は、種々のタンパク質を含有し、その約20%がSAAである。この調製
物のアリコート、あるいは細胞培養液または初乳からのアフィニティー精製初乳
SAAをIPGストリップ上に載せて、次に標準手法でIEFおよび2−Dに関
して追跡調査した。
【0185】 染色ゲルを分析後、初乳およびMAC−T細胞培養液の両方からの初乳SAA
が8より大きいpIを有することを確定し、9.4〜9.6の見かけのpIを有すると
概算した。血清からのSAAは、約7.01、5.8および5.5の見かけのpI地を有
する3つのアイソフォームを含有した。初乳SAAのpIに適合するアイソフォ
ームは血清中には認められなかった(図6)。
【0186】 実施例6 初乳SAAの機能的役割 ヒトの生理学の顕著な特徴は、腸管を裏打ちする粘膜上皮細胞が膨大な数の微
生物を接触し、さらに感染および炎症性合併症の発症率が低いということである
。これは、局所的宿主防御メカニズムが非常に有効な、広範囲の非炎症性抗菌防
御を包含することを示唆する。後天性免疫系が有効応答を生じ、それは数日また
は数週間という期間に亘っているが、乳児においては、後天性免疫系は未熟で、
十分に機能しない。対照して、腸管の固有の免疫系は継続的であり、あるいは腸
管に導入される多数の考え得る病原体に対して直ちに誘導可能であって、粘膜上
皮細胞と出生時の機能の非常に密接な近似性に気づかされる。腸固有免疫として
は、単一無機分子、例えば一酸化窒素からナチュラルキラー細胞までの範囲の最
前線宿主防御素子が挙げられる。固有免疫系のエフェクターアームを含む上皮細
胞により産生される多数の分子も存在する。これらの例としては、相対的に小型
の抗菌性ペプチドおよびより複雑な糖タンパク質分子、例えばムチンが挙げられ
る。
【0187】 腸管を含めた多数の器官系の上皮細胞により、ムチンが分泌され、細胞表面高
分子量糖タンパク質が合成される。腸管の腸管腔と下層の粘膜上皮細胞との間の
戦略的介入は、ムチンが多数の重要な生物学的機能を有することを示唆した。腸
管において、ムチンは、ウイルス複製を抑制し、腸管からのウイルス清掃を強化
することによりウイルス感染に対して防御する。細菌性病原体は、腸上皮に付着
するのを妨げられる。腸内病原体の付着は、その後の侵襲、コロニー形成または
毒素送達の重要な第一段階である。ムチンによる腸上皮細胞への腸病原体の付着
抑制は、立体的妨害によるものである。出願人の過去の研究および他の人々の研
究も、特定のムチン−細菌相互作用が、ムチンが宿主に有益に作用する重要なメ
カニズムであることを示している。しかしながらそのメカニズムにかかわらず、
粘膜感染の予防はムチンの重要な機能である。
【0188】 異なるムチン遺伝子が同定されており、今日までに、12のヒトムチン遺伝子が
同定されている。しかしながらMUC3ムチンは、優性腸ムチンである。MUC
3ムチンは、腸内病原体大腸菌(EPEC)の腸上皮細胞への付着を防止するの
に有効である、ということがこれまで示されてきた。普通は腸管内でコロニー化
する非有害細菌のような作因(即ち共生菌)はEPEC上皮細胞付着を抑制し、
腸ムチン遺伝子の上向き調節によりそのようにする、ということも出願人は示し
た。母乳栄養乳児は調合乳栄養乳児よりはるかに感染性下痢に罹りにくい、とい
うことも周知である。これがなぜそうなのかについての多数の理論が存在するが
、しかし乳関連アミロイド(初乳SAA)がMUC3遺伝子発現の重要な誘導物
質であり得ると仮定されている。In vitroヒト細胞培養検定系を用いて、MUC
3mRNA発現を出願人は評価した。この系では、初乳SAAのN末端ペプチド
配列とともにインキュベートした腸細胞が、細胞培地への初乳SAAの付加なし
で増殖させた対照細胞と比較した場合、MUC3mRNA発現増大を示した。こ
の知見をさらに調べるために、無作為に増殖させた初乳SAAN末端ペプチド配
列ならびにN末端配列の下流の初乳SAAペプチド配列を用いた、同一in vitro
検定におけるMUC3発現の評価により、初乳SAAのN末端ペプチド配列の機
能的特異性を出願人は評価した。MUC3の発現が増大した場合には、初乳SA
Aの存在下で増殖した腸細胞は細菌病原体の付着を抑制するさらに大きな能力を
有するに違いない。細胞培養中で初乳SAAで予備インキュベートしたin vitro
検定系で、EPECを用いて、これを調べた。腸内病原体大腸菌は、第三世界に
おける、そして先進国におけるデイケア環境における下痢の有意の原因であるこ
とが認識されている非侵襲性、非毒素産生性病原体である。さらに別の研究は、
in vivo試験における初乳SAAの利点を評価し,ヒトEPECと等価の動物E
PECを特性化した。初乳関連SAAは、ヒト腸の固有の防御メカニズムを天然
に上向き調節するための手段を提供し、第三世界で高頻度に生じすぎて乳児の死
をもたらし、先進国では有意の罹患率と経費をもたらす共通の問題に対する新規
の治療形態を提供する。さらに、旅行者または衛生習慣が変化する状態で生活し
なければならない人々のための腸感染の予防も罹患率を低減する。したがって、
この両方は、有効、天然、非薬剤/化学療法を提供する。
【0189】 初乳SAAの考え得る機能的役割を取り扱うために、出願人は、標準アミノ酸
合成機で、保存TFLKを含有する成熟タンパク質のN末端部分を示すウシから
の分子の10アミノ酸領域を合成した。ペプチドは、以下のアミノ酸で構成され
ていた:MWGTFLKEAG(配列番号30)(「N末端」と呼ぶ)。TFLKアミノ酸
はペプチドの重要な素子であると思われたため、それら4つのアミノ酸をそれら
の順にMWGLTKFEAG(配列番号28)中でスクランブルさせたペプチドも構築した
(「限定スクランブル」と呼ぶ)。対照のために、2つのペプチドを合成した。
その一方は全N−末端ペプチド中のアミノ酸が無作為順GKFAWEGMTL(配列番号2
9)(「全スクランブル」呼ぶ)に整列されており、10アミノ酸ペプチドは、
最初の7つがウシSAADAAQRGPQQAの残基62〜69からであった(配列番号30)
(「C末端」と呼ぶ)。
【0190】 これら4つのペプチドを、Mack等(Biochem. Biophys. Res. Commun. 199: 10
12-1018, 1994 and Am J Physiol. Vol. 4, part 1, pg, G841-950, 1999)が記
載した方法にしたがって、MUC3またはMUC2であるムチン(MUC)mR
NA産生を誘導するそれらの特性に関してそれらを評価する容易とされた細胞培
養検定に用いた。
【0191】 N末端ペプチド滴定MUC3 小腸上皮細胞(Mack et al., 1994, 1999)
を、種々の濃度で37℃で30分間のインキュベーション中にN末端10アミノ酸ウシ
初乳SAAペプチド(配列番号27)に曝露した。試験培地を、ペプチドを含有
しない新鮮な培地と取り替えた後、細胞をさらに1時間インキュベートし、次に
全細胞mRNAを単離して、MUC3特異的mRNAに関して分析した。図7は
、TFLKモチーフを含有するウシ初乳SAA「N末端」ペプチドであるN末端
10アミノ酸が、ベースライン対照レベルの1〜1/2倍までMUC3mRNAの産
生を刺激したことを示す(P-.0002有意)。最適濃度は50μg/ml培地であった(
図7参照)。
【0192】 MUC3/28sRNA比に関するANOVA表
【0193】
【表4】
【0194】 MUC3/28sRNA比に関する平均表 作用:初乳SAA濃度
【0195】
【表5】
【0196】 MUC3刺激 N末端10アミノ酸ウシ初乳SAAペプチドのMUC3刺激活
性を、「限定スクランブル」、「全スクランブル」および「C末端ペプチド」の
活性と比較した。インキュベーションの最適時間および温度、ならびにペプチド
の濃度は、それぞれ37℃で30分間、50μg/mlであった。図8のデータは、オリジ
ナルN末端ペプチドが、対照値より統計学的に有意に上回ってMUC3mRNA
を刺激する唯一のペプチドであったことを示す(p-.008)。新規のTFLK配
列が再整列されたにすぎない「限定スクランブル」ペプチドによる刺激の欠如は
、このモチーフが生物学的活性を付与する場合の重要な素子であり、そして恐ら
くは種間で保存されている理由であることを強く示唆する(図8参照)。
【0197】 MUC2mRNA/28sRNA比に関するANOVA表
【0198】
【表6】
【0199】 MUC2mRNA/28sRNA比に関する平均表 作用:初乳SAAペプチド
【0200】
【表7】
【0201】 MUC2刺激 N末端10アミノ酸ウシ初乳SAAペプチドがMUC2産生に
関するmRNA合成を刺激するか否かを考えるために、MUC3よりむしろMU
C2発現に好ましい条件下で、腸上皮細胞を培養した。MUC3刺激のために前に
最適化した濃度および条件で、すべてのペプチドを用いた。図9に示すように、
ペプチドはいずれもMUC2mRNAの産生を刺激しなかった。MUC3を刺激
したN末端10アミノ酸ペプチドを対照ベースライン値と比較した場合、値は有意
に異ならなかった。MUC2刺激の欠如が培養条件のためではないことを示すた
めに、細胞をN末端10アミノ酸ウシ初乳SAAペプチドに、MUC3に関する最
適レベル(それぞれ100および500μg/ml)の2倍および5倍で曝露した。さらに、
条件を最適MUC3インキュベーション時間(1時間)の2倍に変えた。これらの
変更は、MUC2mRNAが対照値より増大させなかった。本証拠は、主として
小腸において産生されるムチン(MUC3)の産生が、大腸で主に産生されるも
の(MUC2)より大きく刺激するという機能の特異性を強く示している(図9
参照)。
【0202】 MUC3mRNA/28sRNA比に関するANOVA表
【0203】
【表8】
【0204】 MUC3mRNA/28sRNA比に関する平均表 作用:初乳SAAペプチド
【0205】
【表9】
【0206】 本発明は前記の実施耐用に限定されないが、しかし添付の特許請求の範囲内で
の修正は可能である。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 ウシ(配列番号1)、ヒツジ(配列番号2)およびウマ(配列番号3)初乳S
AAのトリプシン断片、ウマ初乳SAA(配列番号4〜8)、ウサギ滑膜繊維芽
細胞SAA(配列番号9)、ウマ血清SAA(配列番号10)、およびミンク血
清SAA1(配列番号11)のトリプシン断片のN末端アミノ酸配列アラインメ
ント。
【図2】 ウシ初乳関連SAAcDNAのヌクレオチドおよび完全推定アミノ酸配列。ヌ
クレオチド位置を右側に示す。予測アミノ酸配列はコード配列上の一文字暗号で
示し、停止コドンは星印を付して示し、そしてリーダー配列を除去するための推
測信号ペプチド切断部位を逆三角形で示す。精製初乳関連SAAタンパク質のエ
ドマン分解により確定された配列には、二重下線を付す。初乳関連SAA300 bp
cDNA配列のPCR増幅に用いられる初期変性オリゴヌクレオチドプライマー
に関して逆翻訳された残基をイタリック体で示す。それぞれ初乳関連SAAcD
NA配列の5‘および3’領域のPCR増幅に用いられるオリゴヌクレオチドプ
ライマーM5GW2およびM3GW2には下線を付す。
【図3】 プロラクチンによる刺激後8日間のMAC−Tウシ上皮細胞による初乳SAA
の産生を示すグラフである。測定可能量の初乳SAAが2日目に検出された。
【図4】 初乳SAAのアフィニティー精製で生成された異なる分画のSDS−PAGE
12%ゲル。分画は以下の通りである:オリジナル培養液(レーン1)、非結合(
レーン2)、洗浄分画(レーン3〜8)および溶離分画(レーン9〜15)。ブ
ロット(A.)はCCBで染色したものであり、(B.)はビオチニルか抗SA
Aモノクローナル抗体で染色した同一ブロットである。レーン11は、モノクロ
ーナル抗体で同定されたのと同様の初乳SAAを含有する。これは、アミノ酸分
裂分析用およびIEF用に用いた分画である。
【図5】 配列分析により確定した場合のアミノ酸の一覧である。主配列は、初乳SAA
に関するN末端配列を含有する。
【図6a】 図6a乃至dのブロットは、MAC−T細胞液(A.およびB.)、ウシ血清
(C.)、ならびにウシ初乳(D.)の等電点電気泳動からの2−Dゲルを表す
。図6Aは、アフィニティー精製MAC−T細胞液の等電点電気泳動のために標
準とともに用いたpH3〜10IPGストリップから二次元として得た2−Dゲル
のブロットを表す。すべてのタンパク質が染色されるように、ブロットはCBB
で染色した。市販標準のいくつかの等電点(pI)ならびに初乳SAAのおよそ
の見かけのpI(pIは9.4〜9.6の範囲)を図に示した。これは、Swiss Instit
ute of BioinformaticsのExPASy Proteomic Serverの計算pI/Mwツールを用
いた初乳SAAに関する9.6という予測pIと一致する。
【図6b】 同一ブロットであるが、これはSAAに対する特異性を有するモノクローナル
抗体で染色した。染まる唯一のスポットは初乳SAAに対応するものであり、こ
のスポットはCBB染色ブロットで観察されたスポットに適合する。
【図6c】 半精製ウシ血清の分析からのモノクローナル抗体染色ブロットである。7.0、5
.8および5.5というおよその見かけのpI値を有する3つのアイソフォームは、
SAAに対する特異性を有するモノクローナル抗体で染まる。
【図6d】 アフィニティー精製ウシ初乳からの2−Dゲルのモノクローナル抗体染色ブロ
ットである。約9.4〜9.6の範囲でのおよその見かけのpIで初乳SAAに対応す
るスポットのみが、モノクローナル抗体に染まる。MAC−T生成SAAは、9.
4〜9.6のpIを有する。したがって、モノクローナル抗体で同定されたスポット
は同一pIおよび分子量(12 Kda)を有し、そしてこの値は血清中に見いだされ
るアイソフォームのいずれのpIとも有意に異なるため、MAC−T培地および
初乳はともに初乳SAAを含有する。
【図7】 (N末端ペプチド滴定ムチン3(MUC3))MUC3特異的mRNAを測定
する検定の結果を示す。N末端の10個のアミノ酸のウシ初乳SAAペプチド含有
TFLKは、ベースライン対照レベルの1〜1/2倍までMUC3mRNAの産生を
刺激した(有意P−.0002)。理想濃度は50μg/培地1 mlであった。
【図8】 ムチン3(MUC3)刺激)N末端10アミノ酸ウシ初乳SAAペプチドのMU
C3刺激活性を、細胞に及ぼす「限定スクランブル」、「全体的スクランブル」
および「C末端ペプチド」の活性との比較を示すグラフである。図8は、オリジ
ナルN末端ペプチドが対照値を統計学的に有意に(p−.008)上回ってMUC3
mRNAを刺激した唯一のペプチドであったことを示す。
【図9】 (ムチン2(MUC2)刺激)MUC2発現に好都合な培養条件下でのMUC
2産生のグラフであって、ペプチドはいずれも、MUC3産生を刺激したN末端
10アミノ酸ペプチドを含めたMUC2mRNAの産生を刺激しなかった。実験地
はいずれも、対照値と有意に異ならなかった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 1/00 A61P 13/12 4C084 1/04 C07K 1/14 4H045 13/12 14/47 C07K 1/14 16/18 14/47 C12N 1/15 16/18 1/19 C12N 1/15 1/21 1/19 C12Q 1/68 A 1/21 G01N 33/53 D 5/10 M C12Q 1/68 33/566 G01N 33/53 33/577 B C12P 21/08 33/566 C12N 15/00 ZNAA 33/577 5/00 A // C12P 21/08 A61K 37/02 (31)優先権主張番号 60/218,611 (32)優先日 平成12年7月17日(2000.7.17) (33)優先権主張国 米国(US) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG ,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD, RU,TJ,TM),AE,AL,AM,AT,AU, AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,CA,C H,CN,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ ,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM, HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,K G,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT ,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW, MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,S D,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR ,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VN,YU, ZA,ZW (72)発明者 ウェバー,アニカ アメリカ合衆国,ネブラスカ 68503,リ ンカーン,ホールドリージ ストリート 3835,リージェンツ ホール (72)発明者 マック,デービッド アール. アメリカ合衆国,ネブラスカ 68503,リ ンカーン,ホールドリージ ストリート 3835,リージェンツ ホール (72)発明者 ラーソン,マリリン エー. アメリカ合衆国,ネブラスカ 68503,リ ンカーン,ホールドリージ ストリート 3835,リージェンツ ホール Fターム(参考) 4B024 AA01 BA43 BA65 CA04 DA06 EA04 GA11 HA14 4B063 QA13 QQ42 QR32 QR40 QS34 4B064 AG27 BF08 CC24 DA03 DA04 4B065 AA26X AA90Y AB01 BA02 CA23 CA44 CA46 4C076 BB01 CC03 DD22D DD38A DD67A FF02 4C084 AA02 AA07 DC50 MA52 NA14 ZA682 ZA722 ZA822 4H045 AA10 BA10 CA43 DA01 EA22 EA28 EA34 GA15 GA26 GA31 HA19

Claims (40)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 単離および精製初乳関連血清アミロイドA(SAA)タンパ
    ク質であって、前記タンパク質のN末端領域に存在する配列TFLKをさらに特
    徴とするタンパク質。
  2. 【請求項2】 ウマ初乳から単離および精製される請求項1記載のSAA。
  3. 【請求項3】 (配列番号3)または(配列番号4)、ならびに(配列番号
    5)、(配列番号6)、(配列番号7)および(配列番号8)から成る群から選
    択される1つまたはそれ以上の配列を含む請求項2記載のSAA。
  4. 【請求項4】 ウシ初乳から単離および精製される請求項1記載のSAA。
  5. 【請求項5】 アミノ酸(配列番号1)を含む請求項4記載のSAA。
  6. 【請求項6】 ヒツジ初乳から単離および精製される請求項1記載のSAA
  7. 【請求項7】 アミノ酸(配列番号2)を含む請求項6記載のSAA。
  8. 【請求項8】 請求項1記載の初乳関連SAAをコードする精製および単離
    核酸分子。
  9. 【請求項9】 (配列番号12)と93%またはそれ以上の配列同一性を有す
    る配列を含む請求項8記載の核酸分子。
  10. 【請求項10】 (配列番号12)を含む請求項9記載の核酸分子。
  11. 【請求項11】 プロモーター領域と作用可能式に連結される請求項8記載
    の核酸分子を含む発現カセット。
  12. 【請求項12】 請求項11記載の発現カセットを含むクローニングまたは
    発現ベクター。
  13. 【請求項13】 請求項12記載のベクターで形質転換される真核生物また
    は原核生物宿主細胞。
  14. 【請求項14】 1つまたはそれ以上の(配列番号1〜8)あるいはそれら
    の保存的修飾化変異体をコードする配列を含む請求項8記載の核酸分子。
  15. 【請求項15】 1つまたはそれ以上のアミノ酸配列番号1〜8を逆翻訳す
    ることによって得られる配列を有し、初乳SAAをコードする遺伝子またはcD
    NAと特異的にハイブリダイズする合成オリゴヌクレオチドの集団。
  16. 【請求項16】 請求項1記載の初乳SAAの1つまたはそれ以上のエピト
    ープに対して免疫学的に特異的な抗体。
  17. 【請求項17】 ポリクローナルである請求項16記載の抗体。
  18. 【請求項18】 モノクローナルである請求項16記載の抗体。
  19. 【請求項19】 初乳SAAを血清SAAと識別する請求項1記載の初乳S
    AAの少なくとも1つのエピトープに対して免疫学的に特異的である請求項16
    記載の抗体。
  20. 【請求項20】 哺乳類からの初乳関連SAAの生成方法であって、以下の
    : a)哺乳類からの初乳の試料を提供し、そして b)試料中に含有されるSAAを試料中に含有される他の物質から分離し、そ
    れにより哺乳類からのSAAを生成する 過程を包含する方法。
  21. 【請求項21】 哺乳類がウシ、ウマ、ブタ、ヒツジおよびヒトから成る群
    から選択される請求項20記載の方法。
  22. 【請求項22】 請求項20記載の方法により製造されるSAA。
  23. 【請求項23】 有効量の初乳関連血清アミロイドAタンパク質であって、
    N末端TFLK領域を含むタンパク質、ならびに製薬上許容可能な担体を含む製
    剤組成物。
  24. 【請求項24】 前記タンパク質が配列番号1〜8またはそれらの保存的修
    飾化変異体を含む請求項23記載の製剤組成物。
  25. 【請求項25】 前記タンパク質が(配列番号13)を含む請求項23記載
    の製剤組成物。
  26. 【請求項26】 前記担体が水である請求項23記載の製剤組成物。
  27. 【請求項27】 前記担体が食塩水である請求項23記載の製剤組成物。
  28. 【請求項28】 賦形剤をさらに含む請求項23記載の製剤組成物。
  29. 【請求項29】 前記賦形剤がラクトース、スクロース、マンニトールおよ
    びソルビトールから成る群から選択される充填剤である請求項28記載の製剤組
    成物。
  30. 【請求項30】 経口投与形態である請求項23記載の製剤組成物。
  31. 【請求項31】 動物における腸病原体に関連した疾患の治療および予防方
    法であって、TFLKモチーフN末端配列を含む有効量のタンパク質であって、
    MUC3上皮細胞を誘導し得るタンパク質、ならびに製薬上許容可能な担体を前
    記動物に導入することを包含する方法。
  32. 【請求項32】 前記配列が粘膜上皮細胞においてMUC3産生を刺激し得
    る請求項31記載の方法。
  33. 【請求項33】 前記タンパク質が初乳関連血清アミロイドAタンパク質で
    ある請求項31記載の方法。
  34. 【請求項34】 前記タンパク質が(配列番号17)である請求項31記載の
    方法。
  35. 【請求項35】 前記N末端アミノ酸配列が(配列番号30)またはその保
    存的修飾化変異体である請求項31記載の方法。
  36. 【請求項36】 前記腸病原体が大腸菌である請求項31記載の方法。
  37. 【請求項37】 前記疾患が旅行者下痢、壊死性腸炎および尿路感染から成
    る群から選択される請求項31記載の方法。
  38. 【請求項38】 (配列番号30)またはその保存的修飾化変異体を含む有
    効量のタンパク質を用いる乳児処方箋を包含する乳児処方箋製剤。
  39. 【請求項39】 初乳関連SAAタンパク質コードヌクレオチド配列の同定
    方法であって、ストリンジェント条件下で(配列番号12)またはその7〜10連
    続塩基とハイブリダイズする配列に関してDNAの試料を検定することを包含す
    る方法。
  40. 【請求項40】 単離および精製初乳血清アミロイドAタンパク質であって
    、初乳中に存在し、ラット抗SAA(ヒト)モノクローナル抗体であって、ウシ
    SAAアイソフォームと反応する抗体と反応するタンパク質。
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