JP4346540B2 - 絨毛外栄養膜細胞特異的蛋白質 - Google Patents
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Description
特にEVTの細胞数は妊娠12週から19週にかけてピークに達しており、この時期のEVTの活動が妊娠の進行に伴う胎盤機能の順応性を左右するとされている。
上記の問題の解決法の一つは、EVTに特異的に発現している分子(蛋白質)を同定し、クローニングすることである。そのような分子はEVTの機能を推定するマーカーとなり得るため、該分子又はそれに対する抗体を用いて、極めて特異性及び感度の高い血中の該マーカー測定系を作成することができる。この測定系で妊娠初期から中期さらに後期にかけての胎盤機能を監視することにより、胚着床異常症例や子宮内胎児発育遅延症例及び妊娠中毒症例の早期発見が可能となる。
EVT特異的な分子はEVTの機能や分化の解析を可能にすると考えられるが、EVTの生体における極めて特異的な機能や特性に鑑みて、解析の成果は産科学のみならず免疫学、腫瘍学等を含む広範な医学領域における研究の発展に大いに貢献するものと期待されている。
また本発明は、EVTの機能、分化の機構を解明する手段を提供し、産科学のみならず免疫学、腫瘍学等の発展に寄与することを目的とする。
その他の目的は明細書を通して明らかである。
即ち本発明は、
(1)以下の(a)又は(b)に記載の蛋白質:
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質、又は
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつ上記(a)記載の蛋白質と同等の性質又は機能を有する蛋白質、
(2)上記(1)又は(2)に記載の蛋白質をコードするDNA、
(3)以下の(a)又は(b)に記載のDNA:
(a)配列番号1で表される塩基配列からなるDNA、又は
(b)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ上記(a)記載の蛋白質と同等の性質またh機能を有する蛋白質をコードするDNA、
(4)上記(3)に記載のDNAを含有する組換えベクター、
(5)上記(4)に記載の組換えベクターを含む形質転換体、
(6)上記(5)に記載の形質転換体を培養し、得られる培養物から配列番号2に記載のアミノ酸配列で表される蛋白質と同等の性質又は機能を有する蛋白質を回収することを特徴とする前記蛋白質の製造方法、
(7)上記(1)記載の蛋白質に対する抗体、
(8)抗体がモノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体又はこれらの断片である上記(7)に記載の抗体、
(9)配列番号1の塩基配列からなるDNAのコーディング配列又は5’ノンコーディング配列の中の断片DNAと相補的な配列をもつDNA若しくはそのDNAに対応するRNA、又はその化学的修飾体、
(10)上記(1)に記載の蛋白質、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のDNA、上記(7)〜(8)のいずれかに記載の抗体、上記(9)に記載のアンチセンスポリヌクレオチドを有効成分として含む医薬組成物、
(11)上記(1)に記載の蛋白質を定量することを特徴とする絨毛外栄養膜細胞機能の測定法、
(12)上記(1)に記載の蛋白質を定量することを特徴とする妊娠中毒症の診断法、及び
(13)上記(1)に記載の蛋白質の発現を制御する化合物を有効成分として含む医薬組成物
等に関する。
具体的には、胚着床異常症例や子宮内胎児発育遅延症例及び妊娠中毒症例を早期に検知可能な診断法の開発・確立が可能となる。
本発明の抗原蛋白質やそれに対する抗体は、妊娠中毒症の治療薬の必須成分として有効と考えられる。また、胎盤の形成、維持におけるEVTの機能を解明し、EVT活性を調節する化合物、発現を調節する化合物のスクリーニングにも有用である。
さらに、laeverin 蛋白質は生体内で種々の細胞の遊走や浸潤に関与していると考えられることから、組換え型laeverin蛋白質は、例えば、創傷治癒の調節、神経再生の調節、梗塞部位治癒の調節、胎盤形成の調節、臓器再生の調節、血管新生の調節、悪性腫瘍浸潤の調節、自己免疫疾患による組織変性・炎症反応の調節等に用いる医薬組成物の有効成分として有用である。
本明細書中、「laeverin蛋白質に特有の機能、性質を有する蛋白質」とは、EVTの浸潤、増殖、免疫反応、細胞接着、細胞分裂等の調節機能を有するか、これらに関与しうる蛋白質を指す。
ヒト卵膜を含むchorion laeveを分離して細切処理し、それを用いてマウスを免疫して抗体を産生するハイブリドーマを作成し、その中からヒト着床部組織の凍結切片を用いた免疫組織染色でEVTに特異的に反応する抗体を産生するハイブリドーマを選択した。この抗体をCHL-2と命名して大量に作成精製し、この抗体をもとに胎盤及び卵膜組織からCHL-2抗体が反応する蛋白分子を精製した。この物質は分子量約160kDaの糖蛋白で、EVTの細胞表面部位に存在し、N端11残基のアミノ酸配列はGPPSSSGFYVS(配列番号3)であった。この配列はデータバンクに登録されていない配列であり、引き続きこの蛋白分子の分析を進めた。
配列番号1記載のlaeverin DNAがコードするアミノ酸配列(配列番号2)のN端部にはM1 ペプチダーゼファミリーに属するモチーフ(アミノ酸98-506)が含まれており、さらにその中に酵素活性の中心部であるZn結合部位のモチーフ(His-Glu-Xaa-Xaa-His-18 アミノ酸-Glu, 415-438)が存在している。またN末端近部には23アミノ酸の疎水基残基(14-36)からなる細胞膜貫通部位が確認された。ホモロジー検索ではM1 ペプチダーゼファミリーに属するアミノペプチダーゼN(EC 3.4.11.2)と36%の同一性が認められた。また同じくM1 ペプチダーゼファミリーのグルタミルアミノペプチダーゼ(aminopeptidase A, EC 3.4.11.7)及びオキシトシナーゼ/インスリン−調節(insulin-regulated)アミノペプチダーゼ(EC 3.4.11.3)ともホモロジーが認められた。塩基数はこれらの細胞膜結合型M1 ペプチダーゼとほぼ同様である。本発明のlaeverinの塩基配列から計算される蛋白分子量は113kDaであり、実際の分子量より少ないが、上記ペプチダーゼと同様、糖鎖でによる修飾のためと予想される。
免疫組織染色法及びRT-PCR法でヒト正常組織でのlaeverinの発現を検討したところ、成人女性の卵巣、子宮内膜、卵管などの生殖臓器での発現は見られず、胎盤組織の中でもEVTのみに発現が確認された。また、全身臓器からのmRNAのtissue blot membraneを用いたnorthern blot法による検討でもlaeverin遺伝子の発現は胎盤組織のみから検出され、他の臓器には確認できなかった。この知見はlaeverinがEVTの特異的な細胞分化マーカーであることを示している。
laeverinをCOS7細胞に遺伝子発現させたところ、細胞の接着能及び増殖が抑制され、細胞死が誘導された。これはlaeverinが特殊な細胞であるEVTの機能に重要な働きを行っていることを強く示唆している。(データ示さず)
また、CHO(Chinese hamster ovary)細胞にlaeverin遺伝子を導入して樹立したlaeverin蛋白質を発現する細胞株は、Matrigel invasion assay法[Sato Yら“Involvement of dipeptidyl peptidase IV in extravillous trophoblast invasion and differentiation”, J Clin Endocrinol Metab 87:4287-4296 (2002)及びSato Yら、“Trophoblasts acquire a chemokine receptor, CCR1, as they differentiate towards invasive phenotype”,Development 130:5519-5532(2003)]において、メンブレン浸潤活性の顕著な増大を示した(実験例1、図6)。特に、メンブレン下面に浸潤した細胞の多くに強いlaeverin発現が認められた。さらに、抗laeverin抗体(CHL-2抗体)の存在下、laeverin遺伝子導入細胞の浸潤が亢進する傾向が観察された。これは、laeverin蛋白質が細胞の浸潤制御に関与している可能性を示唆している。
laeverinはEVTに特異的に発現しているため、それを定量することによりEVTの機能をモニターすることができる。EVTが胎児への胎盤血流の供給に重要な働きをしており、妊娠の維持、妊娠中毒症の発症に関与していることは当該技術分野で認められており、EVTに特異的なマーカーが同定されたことで、妊娠の進行に伴う変化をモニターすることが可能となる。定量法として、例えば、血中濃度測定系を使用する次の方法が挙げられる。
96穴の酵素免疫測定法(ELISA)用プレート底面に、laeverinに対する抗体A(ポリクローナル、又はモノクローナル抗体)を固相化し、適度の濃度に調整した患者血清を一定時間反応させる。洗浄後、酵素標識したlaeverinに対する抗体B(モノクローナル抗体)を一定時間反応させる。これを洗浄後、酵素に対する基質を含む発色反応液を加え、比色定量する。次いで、精製laeverin蛋白を用いて作成した標準曲線を用い、測定値から血清laeverin量を算出する。
本発明はまた、上記の方法でクローニングされた、配列番号2で表されるlaeverin蛋白質と同等の機能を有する蛋白質を包含する。laeverin蛋白質と同等の機能を有する蛋白質として、アミノ酸配列における変異体であって、laeverin蛋白質に特有の機能、性質を有する蛋白質が挙げられる。そのような変異体は、例えば、配列番号2に記載のアミノ酸配列において、少なくとも1個、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失しているか、少なくとも1個、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が付加していてもよく、あるいは、配列番号2で表されるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されていてもよい。laeverin蛋白質と同等の機能を有する蛋白質には、配列番号2に記載のアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する配列を含有し、かつ、配列番号2記載のlaeverin蛋白質と実質的に同質の機能、性質を有する蛋白質も包含される。変異体の製造は当技術分野で既知であり、例えば文献(Molecular Cloning: A Laboratory Manual第3版第1−3巻 Sambrook,J.ら著,Cold Spring Harber Labolatory Press出版)記載の方法により実施できる。
本発明のlaeverin蛋白質と同等の機能を有する蛋白質又は変異体は、例えばCHL-2モノクロール抗体により認識されること、細胞浸潤アッセイ(後述の実験例1参照)で高い細胞浸潤能を示すこと等により、同定することができる。
アミノ酸配列に変異を導入する方法は当業者に既知であり、通常は、それをコードする遺伝子の塩基配列に変異を導入することにより行う。例えば、変異オリゴヌクレオチドをプライマーとして用いた部位特異的突然変異誘発法やPCR法等により変異を導入するが、市販の変異導入用キットを用いて変異を導入することもできる。
本発明のlaeverin DNAを適当なベクターに挿入することにより、組換えベクターを得ることができる。そのようなベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず例えば、プラスミドDNA、ファージDNA等が挙げられる。
プラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13等)などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ(例えばλgt10等)が挙げられる。また、レトロウイルス、アデ゛ノウイルス又はワクシニアウイルスなどの動物ウイルスやバキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
ベクターにlaeverin DNAを挿入するには、まず、精製DNAを適当な制限酵素で切断し、必要に応じてその上流に転写を制御するプロモーター配列を付加し、適当なベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する。発現ベクターは適当な宿主に導入された時、目的DNAを発現するために、プロモーター、エンハンサー、選択マーカー等を含有することが好ましい。そのような発現ベクターの構築方法は当該技術分野で既知である。
上記の組換えベクターを、laeverin DNAの発現に適した宿主中に導入することにより形質転換体を得ることができる。宿主は、本発明のDNAを発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等のEscherichia属、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属の細菌、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等の酵母、COS細胞、CHO細胞等の動物細胞、及びSf9、Sf21等の昆虫細胞が挙げられる。
それぞれの宿主に関して適当なプロモーター(例えばtrpプロモーター、lacプロモーター(細菌)、gal1プロモーター(酵母)、SV40プロモーター(動物細胞)等)などが既知であり、これらから適宜選択することができる。
組換えベクターの宿主への導入方法も当該技術分野で既知であり、カルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。
本発明のlaeverin蛋白質は、上で作成した形質転換体をインビボ又はインビトロで培養し、その培養物から採取することにより生産することができる。
本発明の形質転換体の培養は、選択した宿主に応じて通常の方法に従って行われ、それぞれの宿主に適した培地、培養条件も既知である。
通常、微生物が宿主である場合の培地としては、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。培養は、通常、振盪培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下、37℃で8〜12時間行う。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。
(1)ポリクローナル抗体
本発明のlaeverin蛋白質に対するポリクローナル抗体を得るには、前記のようにして調製したlaeverin蛋白質又はそのフラグメントを用いて動物を免疫する。抗原の動物1匹当たりの投与量は、マウスの場合、50μgである。免疫は、哺乳動物(例えばラット、マウス、ウサギなど)に静脈内、皮下又は腹腔内に投与することにより行う。また、免疫の間隔は特に限定されず、数日から数週間間隔、好ましくは2〜3週間間隔で、1〜10回、好ましくは4〜5回である。最終の免疫日から7〜10日後に抗体価を測定し、最大の抗体価を示した日に採血し、抗血清を得る。抗体価の測定は、酵素免疫測定法(ELISA)、放射性免疫測定法(RIA)、免疫組織染色法等により行うことができる。
抗血清から抗体の精製が必要とされる場合は、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法を適宜選択して、又はこれらを組み合わせることにより精製することができる。
1)免疫
本発明のlaeverin蛋白質に対するモノクローナル抗体を得るには、前記のようにして調製したlaeverin蛋白質又はそのフラグメントを用いて動物を免疫する。免疫は、哺乳動物(例えばラット、マウスなど)に静脈内、皮下又は腹腔内に投与することにより行う。抗原の1回の投与量は、マウスの場合1匹当たり30μgである。また、免疫の間隔は特に限定されず、数日から数週間間隔、好ましくは2〜3週間間隔で、最低4〜5回行う。そして、最終免疫後、抗体産生細胞を採集する。抗体産生細胞としては、脾臓細胞が好ましい。
脾臓細胞等の抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合を行う。ミエローマ細胞として、マウスなどの動物由来の細胞であって一般に入手可能な株化細胞を使用することができる。使用する細胞株として、薬剤選択性を有し、未融合の状態ではHAT選択培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む)で生存できず、抗体産生細胞と融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが好ましい。例えば、ミエローマ細胞の具体例としてはP3X63−Ag、X63Ag8.653などのマウスミエローマ細胞株が挙げられる。
血清を含まないDMEM、RPMI-1640培地などの動物細胞培養用培地中に、抗体産生細胞とミエローマ細胞とを所定の割合(例えば3:1)で混合し、ポリエチレングリコール等の細胞融合促進剤存在の下で、あるいは電気パルス処理(例えばエレクトロポレーション)により行う。
例えば、ヒポキサンチン(100μm)、アミノプテリン(0.4μm)及びチミジン(16μM)を含む培地を用いて培養し、生育する細胞をハイブリドーマとして得ることができる。
次に、増殖したハイブリドーマの培養上清中に、目的とする抗体が存在するか否かをスクリーニングする。ハイブリドーマのスクリーニングは、通常の方法に従えばよく、特に限定されるものではない。例えば、ハイブリドーマとして生育したウェルに含まれる培養上清の一部を採集し、免疫染色法、酵素免疫測定法(ELISA)、RIA等によってスクリーニングすることができる。
融合細胞のクローニングは、限界希釈法等により行い、最終的にモノクローナル抗体産生細胞であるハイブリドーマを樹立する。樹立したハイブリドーマからモノクローナル抗体を採取するには、通常の細胞培養法等を採用することができる。
細胞培養法においては、ハイブリドーマを10%牛胎児血清含有RPMI-1640培地又はMEM培地等の動物細胞培養培地中、通常の培養条件(例えば37℃、5% CO2濃度)で 例えば14日間培養し、その培養上清から抗体を取得する。
抗体の精製が必要とされる場合は、硫安分画法、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィーなどの公知の方法を適宜に選択して、又はこれらの方法を組み合わせることにより精製することができる。
なお、本発明のモノクローナル抗体は、着床部及び卵膜組織を用いた免疫組織染色法、遺伝子発現細胞を用いた免疫細胞染色法又は生成された組換え蛋白質を用いたELISA法に基づいて選択することが好ましい。
本明細書において、「配列番号1の塩基配列からなるDNAのコーディング配列又は5’ノンコーディング配列の中の断片DNAと相補的な配列をもつDNA若しくはそのDNAに対応するRNA、又はその化学的修飾体」とは、二本鎖DNAのアンチセンス鎖のDNA又はそのアンチセンス鎖のDNAに対応するRNAであって(以下、アンチセンスポリヌクレオチドという)、DNA若しくはRNAに結合し、laeverinの発現を調節するものを意味する。アンチセンスポリヌクレオチドは、例えばlaeverin蛋白をコードする遺伝子の塩基配列に基つきDNAとして製造するか、又はこのDNAをアンチセンスの向きに発現プラスミドに組み込むことでRNAとして製造することができる。このアンチセンスポリヌクレオチドは配列番号1の塩基配列からなるDNAのコーディング配列、5’ノンコーディング配列のいずれの部分のDNA断片と相補的な配列であってもよいが、好ましくは転写開始部位、翻訳開始部位、5’非翻訳領域、エクソンとイントロンとの境界領域若しくは5’CAP領域に相補的配列であることが望ましい。
本発明のlaeverin蛋白質をコードするDNAは該蛋白質の発現を制御する化合物のスクリーニングに有用である。例えば、該DNAを含むインビボ又はインビトロの発現系を利用し、当該技術分野において特定の蛋白質の発現を阻害する物質をスクリーニングするために通常用いられる方法により、目的の化合物を同定することができる。
また、laeverin蛋白質、その変異体又は抗体は、laeverinに関連する生理活性を促進或いは抑制することにより、妊娠中毒症の診断、治療、予防や一般的な創傷治癒の調節、神経再生の調節、梗塞部位治癒の調節、臓器再生の調節、血管新生の調節、悪性腫瘍浸潤の調節、自己免疫疾患による組織変性・炎症反応の調節等に有用である。
laeverin蛋白質を定量することによる妊娠中毒症の診断は、上記laeverin蛋白質の定量法に記載の定量法を使用して行うことができる。
laeverin DNAやアンチセンスポリヌクレオチド等のポリヌクレオチド又はその誘導体は、安定化剤、緩衝液、溶媒などと混合して製剤した後、抗生物質、抗炎症剤、麻酔薬などと同時に投与することができる。この製剤は、連日又は数日から数週間おきに投与することができる。また、頻回の投与を避けるために徐放性のミニペレット製剤を作成し患部近くに埋め込むことも可能である。あるいはオスモチックポンプなどを用いて患部に連続的に徐々に投与することもできる。通常、投与量は作用部位における濃度が0.1nM-10μMになるように調製する。
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、該実施例は本発明を限定するものではない。
(1)試薬
マウス抗ヒトサイトケラチン8, 18 モノクローナル抗体(clone 5D3, IgG1)はYlem S.R.L.(Rome, Italy)から購入した。マウス IgG1(clone DAK-GO1, DAKO, Glostrup, Denmark)を陰性コントロール染色として用いた。FITC-結合ラビット抗マウス免疫グロブリン(Dakopatts, Glostrup, Denmark)を免疫染色法の二次抗体として用いた。
妊娠満期胎盤(n=15)及び卵膜は正常分娩より得た。RNA抽出のために組織は迅速に液体窒素中で凍結し-80℃で保存した。免疫染色法のために、各組織はOCT compound(Tissue-Tec,Miles Inc. Diagnostic Division, Elkhart,IN,USA)で包埋し、液体窒素中で凍結し-80℃で保存した。
モノクローナル抗体の作成と選別は以下の方法で行った。
卵膜からchorion laeve を用手的に剥離し鋏で細切した。この小片1mg(PBS中)を8週齢 BALB/c マウスの腹腔内に4週ごと4回注入した。最終免疫より5日目にこれらマウスの脾細胞を採取してX63Ag8.653 骨髄腫細胞と3:1の比率で混合し、50%ポリエチレングリコール3000を用いて細胞融合した。静置後に15%ウシ胎児血清を含むHAT培地に浮遊させ、あらかじめ3週齢のマウスより採取分離した胸腺細胞をフィーダー細胞として敷きつめておいた96穴マイクロプレート上でこの融合細胞を培養した。増殖したハイブリドーマの培養上清を適宜採取し、卵膜組織から作成した凍結切片を用いて間接蛍光免疫染色を行い、EVTに特異的に反応する抗体を含むハイブリドーマをスクリーニングした。重要な抗体を産生するハイブリドーマはその培養液を適宜HT培地さらには10%ウシ胎児血清を含むRPMI1640培養液にシフトし、限界希釈法によるクローニングを3回施行し、安定して抗体を産生する細胞株を選択した。これをさらに培養増殖させ、あらかじめ0.5mlのpristane (2,6,10,14- tetramethylpentadecane, Aldrich, Milwaukee, WI, USA)処理(腹腔内投与)をしたBALB/c雌マウスの腹腔内に2x107cellsの割合で投与した。約10日後に腹腔内で増殖したハイブリドーマが産生した抗体を大量に含む腹水を採取し、これより免疫グロブリン分画をAffi-gel protein A (Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA, USA)を用いて分離し、目的のモノクローナル抗体を精製した。
このようにして、免疫染色法で1つのハイブリドーマを選別した。該ハイブリドーマが産生する抗体CHL-2はIgG1 isotypeに属していた。
間接蛍光免疫染色法は以下の方法で行った。
凍結組織をクリオスタット・ミクロトーム(cryostat microtome、Cryocut 1800, Reichert-Jung, Heiderberg, Germany)で7-μm厚の切片を作成し、直ちにNeoplane(Nisshin EM, Tokyo, Japan)コートしたスライドグラスに載せて風乾し、アセトンにて-20℃で5分間固定した。
図1のA-Cは妊娠満期胎盤における結果を示す。Aはヘマトキシリン-エオジン染色、Bは抗ヒトサイトケラチン8、18 mAbを用いるFITC-染色、CはCHL-2 mAbを用いるFITC-染色の結果である。図中、AEは, amniotic(羊膜)上皮組織を表し、CLはchorion laeveを表す。また、chorion laeve(CL)層は点線で示されている。Cytokeratin 8, 18は羊膜上皮組織とchorion laeve中のEVTに高度に検出された(矢印)。免疫反応性のlaeverinはchorion laeveの外側のEVTの細胞表面領域に明確に検出された (矢印頭部, C)。なお、バーは100μmである。
このように、CHL-2抗原はchorion laeve中のEVTに検出された。しかし、胎児の羊膜上皮や母体の脱落膜細胞にはその発現は認められなかった。CHL-2抗原はまた母体の脱落膜組織中に侵入しつつあるEVTにも発現していた(データ示さず)。主な発現部位はEVTの細胞表面領域であった。
CHL-2抗原の精製は前記と同様に行った。
組織材料(chorion laeve, 1g; 胎盤, 5g; 湿重量)10から50 mlの、150 mM NaCl, 5 mM EDTA, 1% Nonidet P-40(Sigma, St. Louis, MO, USA), 0.2 mg/ml フェニルメチルスルホニルフルオリド 塩酸塩(和光純薬)、10 μg/ml ロイペプチン(Peptide Institute Inc.)及び10 μg/ml ペプチタチン(Peptide Institute Inc.)を含む40 mM リン酸緩衝液、pH 7.3中で撹拌した。遠心後(11,000 x g ; 30分)、Nonidet P-40を除いた組織溶液で0.3%に希釈することでNonidet P-40濃度を下げた。上清は非特異的に結合した成分を除くために10 mlの抗-トリニトロフェニル(TNP, 無関係のモノクローナル抗体)を結合したAffigel 10(Bio-Rad Labs., Hercules, CA, 2 mg IgG/ml gel)を含むカラムに4℃で通した。濾過された分画を0.15 mlのCHL-2を結合したAffigel 10(2 mg IgG/ml gel)と4℃で2時間反応させた。充分にゲルを洗浄後、抗原を0.1% Nonidet P-40を含有する0.5 M NH4OHで溶出した。溶出物は室温で真空中で乾燥させた。サンプルは0.1 Mジチオスレイトールに溶解し、8% スルフェート-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分離した。ゲル中の蛋白は銀染色キット(和光純薬)を用いて銀染色した。同じ実験を別の組織材料を用いて3回繰り返した。結果を図2に示す。
図2から明らかに、CHL-2抗原分子はchorion laeveと胎盤から精製された。SDS-PAGEでこれらの組織から精製されたCHL-2抗原は同じ蛋白のバンドを有しており、分子量は約160 kDaであった。
300gのヒト胎盤組織を800 mlの0.2 mg/mlフェニルメチルスルホニルフルオリド塩酸塩を含む溶解液中で撹拌した。遠心(15,000 x g ; 30 min)後、上清を10 μm孔の膜で濾過し、Nonidet P-40を除いた組織溶液で0.3%に希釈することでNonidet P-40 濃度を下げた。20 mlの抗-TNP抗体を結合させたAffigel 10と4℃で1時間反応させた後、ゲルを取り除いた。溶解物はCHL-2を結合させた0.6 mlのAffigel 10と4℃で2時間反応させた。抗原を上記の如く溶出した。この過程を3つのサンプルを用いて7回繰り返した。精製した抗原は3 mM Tris HCl buffer, pH 6.8(0.1% SDS含有)で透析し、乾燥させた。精製抗原を8% SDS-PAGEで電気泳動した。ポリアクリルアミドゲル中の蛋白を50 mM Tris, 15 mM ホウ酸, 0.05% SDS, 及び20% エタノール中、PVDF膜(Millipore Co., Bedford, MA, USA)にブロットした。蛋白をCoomassie Blueで染色し、主な蛋白バンドを切り出してアミノ酸シーケンサーPSQ-1(Shimazu Co., Kyoto, Japan)で解析した。精製したCHL-2抗原はさらにその内部で切断し、高速液体クロマトグラフィーでペプチド分画に分離した。各ペプチド分画のN端のアミノ酸配列を上記と同様に解析した。アミノ酸配列の相同性はNCBI website(http: www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)のBLASTを利用して解析した。結果を表1に示す。
N末端領域の11残基からなるアミノ酸配列は報告されたアミノ酸配列とは相同性がなかった。独立して決定された4個の内部の部分アミノ酸配列のうち、1つは報告されていない配列であった (内部配列1)。しかし、他の3個の部分アミノ酸配列(内部配列2-4)は3’側1672塩基対からなるEST(AK075131 発現遺伝子配列断片から翻訳される配列と完全に一致していた。
EST(AK075131)の情報に基づきCHL-2抗原をコードするcDNAの5’側の配列を5’RACE法で解析した。
Total RNAはchorion laeve (1g) からRNeasy Mini Kit (QIAGEN, Hilden, Germany) を用いて供給者の指示にしたがって抽出した。mRNAの5’末端にアダプター付加したcDNAをSMART RACE cDNA Amplification Kit (BD Biosciences Clontech, Palo Alto, CA, USA)を用いて作成し、これを鋳型として、アダプターの部分塩基配列を有するセンスプライマー(5’-AGAATTCCTAATACGACTCACTATAGGGCAAG-3’、配列番号8)とアンチセンスプライマー(5’-AGAATTCTTTCCACCTTCATGGCCACAGCTC-3’、配列番号9)を用いてPCR反応を行った(下線部は制限酵素EcoRIの切断配列)。PCRの反応条件は、94℃5秒、72℃3分を5サイクル、94℃5秒、70℃10秒、72℃3分を5サイクル、94℃5秒、68℃10秒、72℃3分を25サイクルであった。得られたcDNA を単離しDNA 配列を解析した。上記の5’RACE法で決定したDNA配列の相同性をNCBI websiteのBLASTで解析した。
図3(配列番号1)に記載の、cDNAクローンがコードする配列(図4及び配列番号2)は先に同定した精製CHL-2抗原のN末端領域の部分アミノ酸配列と一致した。CHL-2抗原をコードするcDNAの全長配列(2970塩基対)はこれまでに報告されていない。コード領域は配列番号1における塩基53-3022の領域であり、翻訳されるアミノ酸配列はアミノ酸990であった(図4)。このアミノ酸配列は最後の部分アミノ酸配列を含んでいた(268-277)。この新規な抗原蛋白質を「laeverin」と命名した。
CHL-2抗原のアミノ酸配列はアミノペプチダーゼ N(EC 3.4.11.2)とそれぞれ36%(identities)及び54%(positives)の相同性を有していた。またグルタミルアミノペプチダーゼ(aminopeptidase A, EC 3.4.11.7)(L. Li,et al., Genomics 17 (1993) 657-664)やオキシトシナーゼ/インスリン-制御アミノペプチダーゼ(insulin-regulated aminopeptidase(EC 3.4.11.3)(P.G. Laustsen, et al., Biochim. Biophys. Acta. 1352 (1997) 1-7及びS.R. Keller, et al., J. Biol. Chem. 270 (1995) 23612-23618)とも相同性を持っていた。これらはすべてMA族 gluzincinアミノペプチダーゼ類のM1 family zinc aminopeptidase(A.J. Barrett, Methods Enzymol. 244 (1994) 1-15)に属している。
スクリーニング的な実験は、本発明の分子量約160 kDaの新規な蛋白質laeverinが、免疫組織染色でEVTが存在する胎盤や卵膜以外の卵巣、子宮などには発現しておらず、EVTに特異的に発現していることを示していた。
Northern blot法による遺伝子発現の検索の結果を図5に示す。Northern blot法は、以下の手順に沿って施行した。まず制限酵素BstXIでベクターpCMV-scriptプラスミドを切断し、5’RACEで作成されたlaeverinをエンコードするPCR産生物を挿入したのち、E.coliを形質転換した。E. coli を増殖させ、プラスミドを抽出した。直線化したプラスミドを32Pでラベルし、プローブとした。ヒト多臓器から抽出したmRNAサンプルはクローンテック社からMultiple Tissue membraneとして購入した。得られたmembrane (Human 12-Lane Multiple Tissue Northern Blot) をプレハイブリダイゼーション・バッファー(ファルマシア社)中で、65℃、30分間インキュベートしたのち、32Pラベルしたlaeverinプローベをハイブリダイゼーションした。0.1% SDSを含む2 x standard saline citrate (SCC, 2mM 酢酸ナトリウム、20mM 塩化ナトリウム)溶液で室温にて15分間洗浄し、その後0.1% SDS を含む0.2 x SSC溶液で65℃にて30分間洗浄した。次いで、-80℃にて1日間オートラジオグラフィーを行い、laeverinに相当する遺伝子をmembrane上で検出した。その結果、試験した組織(脳(Brain)、心臓(Heart)、骨格筋(Skeletal muscle)、結腸(粘膜不含)(Colon(no mucosa)、胸腺(Thymus)、脾臓(Spleen)、腎臓(Kidney)、小腸(Small intestine)、胎盤(Placenta)、肺(Lung)、末梢血単核球(PBMC))のうち、胎盤のみにて4.0kbと3.0kbの位置にlaeverin遺伝子発現が確認された。種々の週数の胎盤組織及び卵膜組織を用いて検討した結果、4.0kbのバンドが主たるmRNAであり、3.0kbのバンドはスプライシングバリアントと考えられた。また、胎盤以外の脳、心臓、骨格筋、大腸、胸腺、脾臓、腎臓、小腸、肺及び末梢血免疫細胞などの臓器や細胞には発現が認められなかった。
CHO((Chinese hamster ovary)細胞にlaeverin遺伝子を導入し、4つの細胞株を樹立した。その膜浸潤能を、マトリゲルインベーションアッセイ(Matrigel invasion assay)により検討した。対照として、空ベクターを導入したlaeverin遺伝子陰性細胞を用いた。抗体として、上記のETV特異的蛋白質スクリーニング用抗体(CHL-2抗体)を用いた。
laeverin遺伝子をCHO細胞にlipofectamineを用いて導入し、抗生剤G418と10%FCSを含んだnutrient mixture F-12/HAM培地で遺伝子導入細胞を選択培養した。次いで、得られた細胞群をクローニングしてlaeverin蛋白の発現の有無について抗laeverin抗体を用いた蛍光免疫染色法で確認した。陽性細胞群をさらに培養し、抗laeverin抗体を用いたフローサイトメトリー法(FACScalibur, Becton Dickinson)でlaeverin蛋白が細胞表面へ発現している細胞を選別し、培養及びクローニングして細胞株B2D1、B2D2、D1D1及びD1D2を得た。
アッセイは、既に報告されている方法に従って行った(Sato Yら、2002 J Clin Endocrinol Metab 87:4287-4296: Sato Y,ら、2003 Development 130:5519-5532)。
それぞれの細胞株をG418と10%FCSを含んだnutrient mixture F-12/HAM培養液に5x105/mlの濃度に調整して細胞浮遊液を用意した。
あらかじめ底面のメンブレン(ポアサイズ:8ミクロン)上にマトリゲル基底膜マトリックス(MATRGEL(登録商標) Basement Membrane;Beckton Dickinson Labware, Bedford, MA)をコートしたテャンバー(セルカルチャーインサート8.0ミクロンポアサイズPETメンブレン; Beckton Dickinson Labware, Bedford, MA)を用意し、これを800μlの培養液(nutrient mixture F-12/HAM培養液名称)を加えた24-ウエル培養プレート内に設置した。チャンバー内に200μlの上記細胞浮遊液を加えて37℃で20時間培養した。非浸潤細胞はマトリゲル基底膜マトリックスを通過できないが、浸潤細胞はマトリゲル基底膜マトリックスから8ミクロンのメンブレンポアへと浸潤することができる。
次いで、非浸潤細胞を除去し、メンブレンをメタノールで固定後にヘマトキシリンで染色し、マトリゲル基底膜マトリックス内を浸潤して底面のメンブレンに存在する直径8μmのミリポアを通過してメンブレンの下面まで到達した細胞数を計数することで、細胞の浸潤能を検定した。
浸潤亢進を示した細胞群について、laeverin蛋白を免疫して作製したマウス抗ヒトlaeverinモノクローナル抗体(10mg/ml)を、G418と10%FCSを含んだnutrient mixture F-12/HAM培養液中の細胞浮遊液(5x105/ml)に加え、上記(2)と同様にして細胞浸潤能を検定した。この実験において、それぞれの細胞群間及び培養条件下での細胞増殖の速度には有意な差は観察されなかった。
また、laeverin抗体は、laeverin遺伝子非導入の、陰性細胞株には作用しなかったが、laeverin遺伝子導入細胞では浸潤が亢進する傾向が観察された。
さらに、laeverin発現が強い細胞が、メンブレン下面に浸潤した細胞の多数を占めていることが免疫細胞染色にて確認された。
laeverin蛋白が酵素であることを考慮すると、実験結果は、生体においてもlaeverin蛋白の存在で血管内皮細胞や神経細胞など種々の細胞の遊走能や浸潤能が変化しうることを示しており、組換え型laeverinの治療薬としての可能性を強く示唆している。
本発明のlaeverinはペプチダーゼM1モチーフという長い領域を持っている(98-506)。この領域のなかにlaeverinは高度に保存されたモチーフ、すなわち、His-Glu-Xaa-Xaa-His-(18アミノ酸残基)-Glu(415-438)を有している(図4)。この亜鉛結合モチーフは多くの酵素活性に共通であり、この構造はグルジンシンアミノペプチダーゼ(gluzincin aminopeptidase)と名付けられている(A.J. Barrett, Methods Enzymol. 244 (1994) 1-15)。laeverinのN末端には高度の疎水性領域(14-36, 23残基)があり、これは膜貫通ドメインと考えられる。従ってlaeverinは短い細胞内部分を持つ膜結合型蛋白であると推測される。
ヒトchorion laeveが膜結合型ペプチダーゼであるジペプチジルペプチダーゼIV(dipeptidyl peptidase IV、DDPIV, EC3.4.14.5)と中性エンドペプチダ-ゼ(neutral endopeptidase、NEP, EC3.4.24.11)を発現していることが報告されている(K. Imai, et al., Am. J. Obstet. Gynecol. 170 (1994) 1163-1168)。最近、本発明者らはDPPIVともう一つの膜結合型ペプチダーゼであるカルボキシペプチダーゼM(carboxypeptidase M、CP-M, EC3.4.17.12)が母体の脱落膜組織に侵入したEVTに発現していることを見出した(Y. Sato, et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 87 (2002) 4287-4296)。これらのペプチダーゼは細胞膜表面に発現し、細胞外でいくつかの生物学的活性のあるペプチドを分解することができる。Kennyらは細胞膜表面のペプチダーゼは多くの細胞で、ペプチド因子活性や標的細胞への到達を調節することでその成長や分化を制御していることを示唆している(A.J. Kenny, et al., Lancet 2 (1989) 785-787)。
Claims (8)
- 配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質に特異的に結合する抗体を含む、絨毛外栄養膜細胞における配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質を定量するための組成物。
- 配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質に特異的に結合する抗体を含む、絨毛外栄養膜細胞を検出するための組成物。
- 抗体がモノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体又はこれらの断片である請求項1または請求項2に記載の組成物。
- 絨毛外栄養膜細胞を単離する方法であって、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質に特異的に結合する抗体を用いる方法。
- 絨毛外栄養膜細胞を標識する方法であって、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質に特異的に結合する抗体を用いる方法。
- 抗体がモノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体又はこれらの断片である請求項4または請求項5に記載の方法。
- 配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質に特異的な抗体を製造する方法であって、
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質またはそのフラグメントを非ヒト哺乳動物に免疫する工程;
(b)該哺乳動物より血清を採取する工程;および
(c)絨毛外栄養膜細胞を含む組織を用いて、免疫染色により絨毛外栄養膜細胞を特異的に認識する血清を選別する工程
を含む、方法。 - 配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質に特異的な抗体を製造する方法であって、
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質またはそのフラグメントを非ヒト哺乳動物に免疫する工程;
(b)該哺乳動物より採取した脾細胞を用いてハイブリドーマを作成する工程;および
(c)絨毛外栄養膜細胞を含む組織を用いて、免疫染色により絨毛外栄養膜細胞を特異的に認識する抗体を産生するハイブリドーマを選別する工程
を含む、方法。
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