JP2003509944A - ダイレクトコンバージョン送受信機の干渉を補償する装置および方法 - Google Patents

ダイレクトコンバージョン送受信機の干渉を補償する装置および方法

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Abstract

(57)【要約】 送受信機内のダイレクトコンバージョン受信機の受信信号における干渉に関する問題を解決するために、受信信号のベースバンドに生じた誤差を減少させるための誤差推定器が使用される。誤差推定器は、送受信機内の送信機が最大の妨害波を生じうるという知見を利用して、受信信号から送信機により生じた干渉を減算することができる。さらに、これは、受信機のIチャネルでの干渉とQチャネルでの干渉が等しくない場合であっても達成されうる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (背景) 本発明は、ページャ・システム等の携帯型セルラ電話システムにおけるフル・
デュプレクス(全二重)送受信機に係り、具体的には、送受信機内のダイレクト
コンバージョン(直接変換)受信機で受信される信号に生じるさまざまな外乱を
補償するための誤差推定器に関する。
【0002】 上記のセルラシステムおよびその他の分野における受信機は、小型、軽量、か
つ、安価であることが好ましい。ハンドへルド電話機のような携帯型受信機をよ
り小さく、そしてより安く製造するために、パーツの集積化が非常に重要になっ
ている。ヘテロダイン受信機は一般に製造コストが高く、集積化が困難なバンド
パスフィルタといった多くのパーツを要する。かかる欠点を解決するために、局
部発振器の周波数が受信した無線搬送波の周波数に等しいダイレクトコンバージ
ョン受信機の構成が開発された。このため、受信した無線信号は1ステップで直
接ベースバンドにダウンコンバートされる。ダイレクトコンバージョン受信機は
中間周波数(IF)ステージが不要であるので、多くのフィルタを省略でき、あ
るいは、簡略化することができる。
【0003】 ダイレクトコンバージョン方式は1950年代に単側波帯受信機に導入されたが、
この技術はこのようなシステムに限られなかった。ダイレクトコンバージョン方
式は多くの他の変調方式に用いることが可能であり、特に、MSK(minimum shift keying)、直交振幅変調(QAM:quadrature amplitude modulation)等の今日
の直交変調に好適である。ダイレクトコンバージョン受信機については、米国特
許第5,530,929号(名称:“Radio Receiver”)にさまざまな観点から記載され
ている。
【0004】 以下、従来のダイレクトコンバージョン受信機の動作を、図1を参照して説明
する。中心周波数fc、帯域幅BWrfの無線周波数(RF)信号は、アンテナ10に
より受信され、バンドパスフィルタ20でフィルタリングされる。バンドパスフ
ィルタより出力されるフィルタ出力信号は増幅器30で増幅される。この増幅器
30は、受信機の総合雑音指数を向上させるために低雑音型であることが好まし
い。
【0005】 増幅器30より出力された増幅されたフィルタ出力信号は、平衡型ミキサ40
,50によって同相(I)チャネルおよび直交(Q)チャネルのベースバンドに
ダウンコンバートされる。ミキサはそれぞれ、適当な分周器と移相器70によっ
て、局部発振器60より発生する正弦波信号から生成されるサイン(I)信号と
コサイン(Q)信号のいずれかによって駆動される。ダイレクトコンバージョン
の原理によれば、局部発振器信号も周波数fcを有する。
【0006】 ミキサ40,50は、増幅器30からの信号と局部発振器のI信号、Q信号と
を効率よく乗積する。各ミキサは、受信した増幅フィルタ出力信号の周波数と局
部発振器信号との和の周波数および差の周波数を有する信号を生成する。差の周
波数の信号(ダウンコンバートされた信号)はそれぞれ、周波数0(DC)あた
りで折り返し、DCから1/2BWrfまでの幅のスペクトルを有する。
【0007】 ミキサ40,50で生成されたI信号およびQ信号は、信号成分がRF信号に
近くなるように、和の信号(アップコンバートされた信号)を除去するローパス
フィルタによるフィルタリングがなされる。フィルタ80,90は雑音帯域、す
なわち、受信機における総合雑音電力を規定する。I信号およびQ信号は増幅器
100,110で増幅され、復調された出力信号を生成する次段の処理コンポー
ネントに供給される。次段の処理には、位相復調、振幅復調、周波数復調、ある
いはハイブリッド復調技術を含まれうる。
【0008】 ダイレクトコンバージョン受信機の主な問題点は、受信機の近く位置する能動
素子によって生じる妨害波の2次出力(例えば、RF通信チャネルと同一または
近傍の信号)に加え、局部発振器漏れによって生じた純DC信号により、ベース
バンド信号に歪みが生じることである。この歪みはベースバンドにあり、所望の
ベースバンド信号と干渉する。そのために、ダイレクトコンバージョン受信機の
性能が劣化する。ある状況下ではこの問題によって、現在の時分割多元接続(T
DMA)および広帯域符号分割多元接続(WCDMA)ディジタルセルラシステ
ムの高性能受信機における通信が完全に妨害されてしまう。
【0009】 強度の強い定包絡線のRF妨害波にくわえ2次非線形性によって、受信信号内
にDC成分が生じることになる。このようなDC成分は、例えばDC阻止コンデ
ンサによって阻止できる。
【0010】 しかし、妨害波が振幅変調(AM)されている場合には、ベースバンドでの外
乱は純DC信号ではないために簡単に除去ができず、大きな問題となる。増幅器
のような非線形のデバイスにおいて、入力信号Vinは出力信号Voutを生成する。
送受信機内に設けられる増幅器の特性は、次式により定義できる。 Vout = c1Vin + c2Vin 2 + c3Vin 3 + ... ただし、入力信号は、Vin(t) = V1(t)・cos(ω1t) である。増幅器の入力に入
力信号が供給されると、出力は次式で表される。
【0011】
【0012】 この式より、入力信号は次式で表されるベースバンドの歪み成分を生じること
が分かる。
【0013】
【0014】 ただし、定数c2は増幅器の2次インターセプト・ポイントに依存する。2次イ
ンターセプト・ポイントは、相違する周波数f1およびf2の2つの信号を増幅器に
供給することで求められる。出力Poutは、第1の周波数でプロットされ、f1およ
びf2のいずれかの入力Pinに対する第1および第2の周波数の和である。f1およ
びf2のいずれかのPinに対するPoutの外挿により2次インターセプト・ポイント
を生じる。ViIP2は、2次インターセプト・ポイントでの増幅器の入力電圧であ
り、ベースバンド電圧は次式で表される。
【0015】
【0016】 I変調器およびQ変調器の両方を備える装置における干渉の問題は、図2を用
いて説明できる。妨害波信号IFは、IチャネルおよびQチャネルの両方でベー
スバンド干渉を生じさせるAM変調信号であり、各チャネルのベースバンド電圧
は次式で表される。
【0017】 vbbI(t) = Ki・v1 2(t) vbbQ(t) = KQ・v1 2(t), (4)
【0018】 ただし、KiおよびKqは定数である。しかし、チャネル上の妨害波信号のレベル
が異なるし、また、I復調器とQ復調器とで構成が異なるので、Iチャネルおよ
びQチャネルで外乱が等しいとは限らない。その結果の信号は誤差信号となって
所望の信号に混入する。誤差信号は、次のように表される。
【0019】 εi(t) = Ki・v1 2(t) εq(t) = Kq・v1 2(t), (5)
【0020】 AM妨害波は受信機の2次非線形性と組み合わさってベースバンド誤差ベクト
ルを生じる。誤差ベクトルの位相は一定であるか、わずかに変動し、振幅は妨害
波の2乗包絡に比例する。外乱はIチャネルとQチャネルとで等しいとは限らな
いので、Kiは一般にはKqと等しいとは限らない。したがって、誤差信号は次のよ
うに書ける。
【0021】 ε(t) = εi(t) + jεq(t) = rε(t)e, (6) ただし、 rε(t) = Ky・v1 2(t), ky = |Ki + jKq| , δ = arg(Ki + jKq) (7)
【0022】 ただし、yは、一定の、または、例えば温度変化によりわずかに変動する、任
意の位相シフトである。
【0023】 上述したように、入力が定包絡線を有する場合においては、ベースバンド干渉
は純DC成分となりうる。単純なケースの場合にはDC阻止コンデンサによって
純DC成分により生じるオフセットを補償することができるし、また、Dentによ
る米国特許第5,241,702号に記載されているような方法でも補償することができ
る。しかし、一定のRF干渉の補償はさらに複雑である。例えば、送受信機がフ
ル・デュプレクス型(すなわち、同時に送受信を行う)のものである場合には、
送信される信号は受信機の非常に強力な妨害波となりうる。
【0024】 一般に、入力信号の振幅は時間関数となる。したがって、妨害波も時間関数と
なる。Lindquist等による米国特許第5,579,347号には、振幅変調(AM)された
妨害波からの干渉を除去する2つの方法が開示されている。
【0025】 第1に、GSM信号のようなスイッチ妨害波(switched interferer)が、パ
ワーのon/offが切り換わるたびにDCステップを生じさせる。GSM妨害
波に対しては、これは各タイムスロット(例えば約600μs)毎に生じる。Lindq
uistが開示した方法によれば、スイッチ妨害波により生じたDCステップが除去
される。しかし、この方法は、妨害波が振幅変調された一般的なケースに対処で
きない性能限界のスロット毎に、妨害DCステップが生じるシステムにおいて動
作する。この問題に対処するために導入された技術もいくつかある。例えば、送
受信機はデュプレクス・フィルタを使用できる。これらのフィルタは大きくて扱
いにくく、送受信機の受信経路における減衰量について要求が厳しい。干渉を減
少させるために、送信機および受信機を長い距離をおいて分離でき、かつ、シー
ルドで絶縁することもできる。くわえて、送受信機は、極めて高い線形性を有す
るために電流を大きく消費する増幅器を受信機で使用することがある。
【0026】 これらの技術は送受信機の効率を減少させるものであり、そのため、フル・デ
ュプレクス送受信機におけるダイレクトコンバージョン受信機の使用は実用的で
はないと考えられてきた。しかし、ビットレートの増加が要求される状況で、フ
ル・デュプレクス送受信機によるシステムがますます一般的になってきている。
例えば、広帯域CDMAを使用する場合にかかる送受信機が要求される。広帯域
CDMAにおいては、受信機と送信機とのバンド分離が大きく(例えば130MHz)
、ダイレクトコンバージョン受信機の使用が可能になる。そのため、効率よくフ
ル・デュプレクス電話機におけるダイレクトコンバージョン受信機内の外乱補償
を行う能力が必要とされる。
【0027】 (概要) 送受信機内のダイレクトコンバージョン受信機における、AM妨害波による外
乱および非線形性に関する問題を解決するために、受信信号のベースバンドに生
じた誤差を減少させるための誤差推定器が使用される。誤差推定器は、送受信機
内の送信機がその送受信機で受信される信号に対する最大の妨害波となるという
知見を利用して、受信信号から送信機により生じた干渉を減少させることができ
る。さらに、これは、受信機のIチャネルでの干渉とQチャネルでの干渉が等し
くない場合であっても達成されうる。
【0028】 本発明の実施形態において、以下の処理を含むダイレクトコンバージョンの方
法および装置を開示する。すなわち、この方法および装置は、送受信機を介した
信号の送信、送受信機での入力信号(この入力信号は所望の信号に妨害波信号が
混入している)の受信、妨害信号に係る時間遅延の計算および、時間遅延後の、
妨害波信号を補償するための入力信号の補正を含むことを特徴としている。
【0029】 本発明の他の実施形態は、送受信機における送信機と受信機との間の干渉を補
償する装置に関するものであり、以下の構成を備える。すなわち、送信機より送
信された信号の2乗包絡を計算する計算ユニットと、受信機でのその2乗包絡の
受信にかかる時間遅延を計算する同期ユニットと、その2乗包絡にその時間遅延
を与える遅延ユニットと、時間遅延した上記2乗包絡に基づいて、受信機に供給
する補正量を計算する推定・スケーリングユニットとを備えることを特徴とする
【0030】 本発明の更に別の実施形態は、送信信号および受信信号に対して使用される送
受信機に関するものであり、以下の構成を備える。すなわち、入力信号を受信し
、その入力信号をベースバンド信号にダウンコンバートするダイレクトコンバー
ジョン受信機と、送信するデータを受信し、そのデータを相手先に送信するため
に変調する送信機と、送信機からの変調データと、受信機を妨害する送信信号に
対して必要な時間長を示す時間遅延とを用いて受信機を補償する誤差補正ユニッ
トとを備えることを特徴とする。
【0031】 (詳細な説明) 以下の記載では、本発明の理解に供するため、特定の回路およびその構成、手
法等の詳細な説明を開示するが、これは説明の目的のためであって、発明がこれ
らに限定されるものではない。これらの特定の詳細な開示とは異なる他の実施形
態が実現できることはいうまでもない。なお、本発明の説明が不明瞭にならない
よう、場合によっては周知の装置、回路、方法等の詳細について説明を省略する
ことにする。
【0032】 以下、多数のタイムスロットを介して基地局と移動端末との通信が行われる、
符号分割多元接続(CDMA)プロトコルを用いた無線通信システムの例を説明
する。ただし、以下に開示する概念は、周波数分割多元接続(FDMA)、時分
割多元接続(TDMA)、またはこれらのプロトコルのハイブリッド型といった
(これらに限られるものではないが)他のプロトコルを使用可能であることは当
業者には認識されよう。同様に、GSMシステムに関する具体例を実施形態とし
て提供するが、ここに開示する技術は等しくあらゆるシステムにおける基地局お
よび移動局に適用可能である。
【0033】 図3は、本発明の実施形態に係る送受信機490の詳細なブロック図である。
送受信機490の受信機410は、アンテナ(図示せず)を介して信号を受信し
、その信号はバンドパスフィルタ(図示せず)によりフィルタリングされる。そ
のバンドパスフィルタより出力されるフィルタ信号は増幅器412で増幅される
。この増幅器412は受信機410のSNRを向上させるために低雑音型である
ことが好ましい。
【0034】 増幅器412で増幅されたフィルタ出力信号は、平衡型ミキサ414および4
16で同相(I)チャネルおよび直交(Q)チャネルのベースバンドにダウンコ
ンバートされる。両ミキサはそれぞれ、適当な分周器と移相器418によって、
局部発振器417より発生する正弦波信号から生成されるサイン(I)信号とコ
サイン(Q)信号のいずれかによって駆動される。ミキサ414,416は、増
幅器412からの信号と局部発振器のI信号およびQ信号とを効率よく乗積する
。各ミキサは、増幅されたフィルタ出力信号と局部発振器信号との、周波数の和
および差である周波数を有する信号を生成する。ミキサで生成されたI信号およ
びQ信号は、RF信号付近の成分およびアップコンバートされた信号を除去する
ローパスフィルタ420および422でフィルタリングされる。フィルタ420
および422は雑音帯域を制限し、それにより受信機410の総合雑音パワーが
定まる。そして、I信号およびQ信号は可変増幅器424および426で増幅さ
れ、A/Dコンバータ428および430に送られる。可変増幅器424および
426の利得は受信機410の総合入力信号レベルによって定められる。
【0035】 本発明によれば、A/Dコンバータ428および430の出力は、(A/Dコ
ンバータの出力と誤差推定器400の出力とを結合させる)結合器432および
434を介して、さらなる処理のためにディジタル・シグナル・プロセッサ44
5に送られる。ディジタル信号処理プロセッサ445はビタビ等化(Viterbi eq
ualization)、RAKE信号処理、振幅復調および位相復調等の処理を行うことが可
能である。くわえて、A/Dコンバータ428および430の出力は、自動利得
制御(AGC)440および誤差推定器400に送られる。AGC440は増幅
器424および426の利得を決定するのに用いられる。
【0036】 送受信機490の送信機450は、分離したチャネルによりI信号データおよ
びQ信号データを受信し、変調フィルタ468および470を介してデータをフ
ィルタリングする。変調フィルタ468および470の出力は誤差推定器400
および送信機のD/Aコンバータ464,466に直接入力される。データはフ
ィルタ460,462およびミキサ454,456を経由して送られる。両ミキ
サはそれぞれ、適当な分周器と移相器458によって、局部発振器457より発
生する正弦波信号から生成されるサイン(I)信号とコサイン(Q)信号のいず
れかによって駆動される。そして、ミキサ出力信号は結合器452で結合されて
アンテナ(図示せず)を介して目的地に向けて送信される。
【0037】 移動局で図3に示したような送受信機が使用される場合、同じ送受信機によっ
て送信されることになる信号により、受信信号に歪みが生じる。図4は、図3に
おける送受信機490の一部分を示す図であり、送受信機490の受信機410
と送信機450との信号の相互作用を詳細に説明するものである。受信機410
で受信した信号v rx(t)は、例えば、基地局から受信することになる所望の信号で
ある。信号s tx(t)は、送信機450で送信される信号を表し、v tx(t)は、その信
v tx(t)の送信によって生じる受信機410での妨害信号を表す。所望のベース
バンド信号をz rx(t)、ε(t)を妨害信号によって生じたベースバンド誤差ベクト
ルとする。v txおよびZ tot(t)はz rx(t)とε(t)との和である。信号x tx(t)は、送
信機450により送信されるベースバンド信号を表す。数式中、定数K、K1およ
びK2は比例定数であり、τはベースバンド波形ジェネレータ(図示せず)から受
信機410までの時間遅延である。
【0038】 図5は、本発明の誤差推定器400を詳細に示すブロック図である。これは、
送信機450の信号出力が最も強力な妨害信号であるという知見を考慮したもの
である。送信信号が最大の妨害信号であるとみなすので、送信波形から得られる
誤差信号は受信信号から減じることができる。図3から分かるように、誤差推定
器400は、送受信機490の受信機410および送信機450の両方からの複
数の入力を使用して、受信機のベースバンドにおける歪みを補償する。上記した
式(5)に示したように誤差値εiおよびεqを計算するために、定数KiおよびKq
決定することが必要である。定数KiおよびKqは低速に変化するので、受信信号に
おける誤差を低減するために連続的に誤差値を再計算することが可能である。計
算された誤差値は、結合器432および434で受信信号から減算される。
【0039】 図5に示すように、誤差推定器400は、送信機450のIチャネルおよびQ
チャネルによりそれぞれ、変調フィルタ468および470からの出力を受信す
る。出力は演算ユニット510で受信され、2乗和をとって送信機450の2乗
包絡r2 tx (t)が計算される。2乗包絡は他の手法を用いて計算または近似されう
ることは理解されよう。送信機による妨害信号が生じた時刻と受信系に伝搬した
時刻との間にある程度の遅延があるので、この2乗包絡の値は同期ユニット52
0に送られ、妨害信号の受信機410への伝送における遅延が求められる。
【0040】 2乗包絡信号に供給される時間遅延τは、同期ユニット520において、r2 tx (t)と、受信したベースバンド信号Zi(tot)(t)のI成分またはQ成分のいずれか
との相関をとることで求められる。再び図3を参照されたい。Iチャネルのベー
スバンド信号が誤差推定器400で使用されうるように示されている。ただし、
Qチャネルのベースバンド信号も使用されうることは理解されよう。
【0041】 時間遅延τは相関により求められ、遅延ユニット530で、送信機の2乗包絡
r2 tx (t)に与えられる。そして遅延した信号は、εiおよびεqの値を計算する推
定器540に供給される。誤算信号を計算する前にまず、KiおよびKqが計算され
る。ただし、KiおよびKqはゆっくりと変動する定数であるため、誤差推定器40
0の出力の影響を受けずにこれらの定数を再計算することができる。
【0042】 図6は、本発明に係る送受信機を補償するための方法の一例を示すフローチャ
ートである。まず、ステップ620で、KiおよびKqが計算される。この計算は例
えば、下記の式(8)〜(12)により行うことが可能である。受信機410で受信し
た総合入力信号は次式で表される。
【0043】 Z tot = Z rx + Kr2 tx(t-τ)e (8)
【0044】 その結果、受信機410で受信した総合入力信号のI成分(虚部)は次式で表
される。
【0045】 Zi(tot)(t) = Zirx + Kir2 tx(t-τ) (9)
【0046】 ただし、Zi(tot)(t)は、受信機で受信した既知の実際の入力信号、r2 tx (t-τ
)は、時間シフトした既知の送信信号である。よって、Zirx(所望のベースバン
ド信号のI成分)の情報によりKiを求めることが可能になる。
【0047】 あらゆるデータ情報源は確率過程として記述できるので、すべてのシンボルは
等しい確率を有する。虚数値または実数値のいずれかが平均化されると、確率分
布が対称的となるのでその結果は0となる。したがって、所望の受信信号のI成
分およびQ成分の平均を表す次式は0となる。
【0048】
【0049】 上記の式(9)および(10)は受信した入力信号の虚部に対するものであるが、受
信した入力信号の実部に対する計算も同様に行うことができる。そして、以下の
式に示されるような、ZirxおよびZqrxを0と仮定できるような十分な数のNサン
プルによる平均化によって、KiおよびKqが推定される。
【0050】
【0051】 KiおよびKqの計算中における出力パワーは一定であることが重要である。図6
のフローチャートに説明を戻す。ステップ630で、いったんKiおよびKqが求ま
ると、誤差補正量が推定される。ただし、受信信号の補償を行う前に、スケーリ
ング・ユニット550(図5を参照。)において出力パワーレベルを用いてεi
およびεqのスケーリングが行われる。
【0052】 そして、ステップ640で、ステップ630で得られた推定誤差値を用いて送
受信機が補償される。例えば、いったんKiおよびKqが計算されると、その後に続
く受信信号サンプルは次式により補償される。
【0053】 Z rx(k) = Z tot(k) - ε(k) (13)
【0054】 以上、好適な実施形態により本発明を説明したが、本発明は開示した実施形態
に限定されるものではないことはいうまでもない。本発明の主旨を逸脱しない範
囲において、開示した実施形態からみた種々のバリエーション、改変、均等物の
みならず、他の実施形態、最適化は、本明細書および図面により明らかであるか
、容易に示唆されうるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ダイレクトコンバージョン受信機のブロック図である。
【図2】 ダイレクトコンバージョンにおける妨害波の影響を説明するための図である。
【図3】 本発明の実施形態における送受信機および誤差推定器のブロック図である。
【図4】 本発明の送受信機の一部分を示すブロック図である。
【図5】 本発明の実施形態における誤差推定器の詳細なブロック図である。
【図6】 本発明に係る誤差修正補償ルーチンを示すフローチャートである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG ,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD, RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM,AT, AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,C A,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK,DM ,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH, GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,K E,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS ,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN, MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,RO,R U,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM ,TR,TT,TZ,UA,UG,UZ,VN,YU, ZA,ZW

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 送受信機で生成された送信信号によって生じる、当該送受信
    機で受信した信号の外乱を補償するための方法であって、 前記送受信機を介して信号を送信する送信ステップと、 所望の信号に妨害波信号が混入した入力信号を前記送受信機で受信する受信ス
    テップと、 前記妨害波信号に係る時間遅延を計算する計算ステップと、 前記時間遅延の後に、前記妨害波信号を補償するために前記入力信号を補正す
    る補正ステップと、 を有することを特徴とする方法。
  2. 【請求項2】 前記時間遅延は、前記送信機から前記受信機への信号の送信
    にかかる時間長に基づいて計算されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記補正ステップは、推定誤差を受信した前記入力信号から
    減じる減算ステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記計算ステップは、更に、 少なくとも、前記送信機より送信された1の信号シーケンスと前記受信機で受
    信した1の信号シーケンスとの同期をとる同期ステップを有することを特徴とす
    る請求項1に記載の方法。
  5. 【請求項5】 前記妨害波信号は、前記送信機より送信される信号を含む、
    請求項1に記載の方法。
  6. 【請求項6】 送受信機で生成された送信信号によって生じる、当該送受信
    機で受信した信号の外乱を補償する装置であって、 前記送受信機は、 信号を送信する送信手段と、 所望の信号に妨害波信号が混入した入力信号を受信する受信手段と、 前記妨害波信号に係る時間遅延を計算する計算手段と、 前記時間遅延の後に、前記妨害波信号を補償するために前記入力信号を補正す
    る補正手段と、 を備えることを特徴とする装置。
  7. 【請求項7】 前記時間遅延は、前記送信機から前記受信機への信号の送信
    にかかる時間長に基づいて計算されることを特徴とする請求項6に記載の装置。
  8. 【請求項8】 前記補正手段は、推定誤差を受信した前記入力信号から減じ
    る減算手段を含むことを特徴とする請求項6に記載の装置。
  9. 【請求項9】 前記計算手段は、更に、 少なくとも、前記送信機より送信された1の信号シーケンスと前記受信機で受
    信した1の信号シーケンスとの同期をとる同期手段を備えることを特徴とする請
    求項6に記載の装置。
  10. 【請求項10】 前記妨害波信号は、前記送信機より送信される信号を含む
    、請求項6に記載の装置。
  11. 【請求項11】 送受信機における送信機と受信機との間の干渉を補正する
    補正ユニットであって、 前記送信機より送信された信号の2乗包絡を計算する計算ユニットと、 前記受信機での前記2乗包絡の受信にかかる時間遅延を計算する同期ユニット
    と、 前記2乗包絡に前記時間遅延を与える遅延ユニットと、 前記時間遅延した前記2乗包絡に基づいて、前記受信機に供給する補正量を計
    算する推定・スケーリングユニットと、 とを備えることを特徴とする補正ユニット。
  12. 【請求項12】 前記同期ユニットは、前記受信機からのベースバンド信号
    および前記送信機の前記2乗包絡を受信し、相関ルーチンを実行することを特徴
    とする請求項11に記載の補正ユニット。
  13. 【請求項13】 信号の送受信に用いられる送受信機であって、 入力信号を受信し、その入力信号をベースバンド信号にダウンコンバートする
    ダイレクトコンバージョン受信機と、 送信するデータを受信し、そのデータを相手先に送信するために変調する送信
    機と、 前記送信機の前記変調データと、前記受信機を妨害する送信信号に対して必要
    な時間長を示す時間遅延とを用いて前記受信機を補償する誤差補正ユニットと、 を備えることを特徴とする送受信機。
  14. 【請求項14】 前記誤差補正ユニットは、更に、 前記送信機の前記変調データを用いて、その送信機の2乗包絡を表す信号を計
    算し出力する計算ユニットを含むことを特徴とする請求項13に記載の送受信機
  15. 【請求項15】 前記誤差修正ユニットは、更に、 前記計算ユニットの出力を受信し、前記時間遅延を計算して遅延ユニットに出
    力する同期ユニットを含むことを特徴とする請求項14に記載の送受信機。
  16. 【請求項16】 前記遅延ユニットは、前記送信機の2乗包絡を表す前記信
    号に前記時間遅延を与えることを特徴とする請求項15に記載の送受信機。
  17. 【請求項17】 前記誤差修正ユニットは、更に、 次式により定数のセットを計算し、その定数のセットに基づいて前記受信機を
    補償するための誤差値を計算する推定器を備えることを特徴とする請求項16に
    記載の送受信機。 ただし、Zirx(k)およびZqrx(k)は所望のベースバンドベクトル、r2 tx(k-n)は
    前記送信機の前記2乗包絡、nは前記時間遅延である。
  18. 【請求項18】 前記誤差修正ユニットは、更に、 前記受信機の補償に用いる前に、当該送受信機の出力パワーレベルを用いて前
    記誤差値のスケーリングを行うスケーリング・ユニットを備えることを特徴とす
    る請求項17に記載の送受信機。
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