JP2003342745A - ガスケット用ステンレス鋼板及びステンレス鋼製ガスケット - Google Patents

ガスケット用ステンレス鋼板及びステンレス鋼製ガスケット

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JP2003342745A JP2003062683A JP2003062683A JP2003342745A JP 2003342745 A JP2003342745 A JP 2003342745A JP 2003062683 A JP2003062683 A JP 2003062683A JP 2003062683 A JP2003062683 A JP 2003062683A JP 2003342745 A JP2003342745 A JP 2003342745A
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organic
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coating layer
rubber
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Toshie Taomoto
敏江 垰本
Taketo Hara
丈人 原
Yasuaki Nakada
安章 仲田
Hiroshi Tsuburaya
浩 圓谷
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Original Assignee
Nisshin Steel Co Ltd
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    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C28/00Coating for obtaining at least two superposed coatings either by methods not provided for in a single one of groups C23C2/00 - C23C26/00 or by combinations of methods provided for in subclasses C23C and C25C or C25D
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C2222/00Aspects relating to chemical surface treatment of metallic material by reaction of the surface with a reactive medium
    • C23C2222/10Use of solutions containing trivalent chromium but free of hexavalent chromium

Abstract

(57)【要約】 【目的】 Cr(VI)フリーの有機−無機複合皮膜を介し
てゴム被覆層を形成することにより、密着性,シール性
に優れたステンレス鋼製ガスケットを提供する。 【構成】 このガスケット用ステンレス鋼板は、ゴム被
覆層が形成される基材表面に、Cr(III)のリン酸クロ
ム,シリカ及びアクリル樹脂を含む有機−無機複合皮膜
が形成されている。有機−無機複合皮膜は、好ましくは
P/Cr重量比0.5〜1.8でP及びCrを含み、乾燥
付着量で10〜100mg/m2のCrを含むことが好
ましい。有機-無機複合皮膜を介して形成されたゴム被
覆層は、長期にわたり良好な密着性が維持される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車用エンジンのシ
リンダヘッドに組み込まれるガスケットに適したステン
レス鋼板及びゴム被覆層の密着性に優れたステンレス鋼
製ガスケットに関する。
【0002】
【従来の技術】自動車エンジンのガスケット材として、
ゴム被覆金属板の使用が一般的になってきている。シリ
ンダヘッド用のゴム被覆金属板は、高温・高圧で且つ過
酷な腐食雰囲気に曝されることから、耐熱・耐食性に優
れたステンレス鋼が基材に使用されている。ステンレス
鋼表面をゴム被覆してシール性を付与しているが、シリ
ンダヘッド・ガスケットが曝される高温・高圧の湿潤環境
のため基材・ステンレス鋼からゴム被覆層が剥離し、シ
ール性が低下しやすい。ゴム被覆層の耐剥離性を改善す
るため、ゴム被覆層の形成に先立って基材・ステンレス
鋼に粗面化,亜鉛めっき,クロメート処理等の表面処理
が施されている。なかでも、クロメート処理は、他の処
理法よりもゴム被覆層の密着性向上に有効であり、反応
型クロメート処理や電解クロメート処理に比較して操業
性,性能共に優れている塗布型クロメート処理が採用さ
れている(特開平3−227622号公報,特公平7−92149号
公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】塗布型クロメート処理
によってゴム密着性に優れたステンレス鋼製ガスケット
が得られるものの、Cr,特にCr(VI)を含まない材料
開発が環境への配慮から強く望まれている。ステンレス
鋼製ガスケットの前処理に関しても同様な傾向にあり、
早急な対応が望まれている。しかし、ガスケット用途の
ステンレス鋼板に適した実用的なCr(VI)フリーの表面
処理方法はこれまでのところ確立されていない。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような問
題を解消すべく案出されたものであり、安定したCr(V
I)フリーの有機−無機複合皮膜を基材・ステンレス鋼の
表面に設けることにより、長期にわたってステンレス鋼
/ゴム被覆層の密着性低下がなく、環境にも悪影響を及
ぼさないシール性,耐久性に優れたガスケット用ステン
レス鋼板及びステンレス鋼製ガスケットを提供すること
を目的とする。
【0005】本発明のガスケット用ステンレス鋼板は、
その目的を達成するため、ゴム被覆層が形成される基材
表面に、Cr(III)のリン酸クロム,シリカ及びアクリ
ル樹脂を含む有機−無機複合皮膜が形成されていること
を特徴とする。有機−無機複合皮膜は、好ましくはP/
Cr重量比0.5〜1.8でP及びCrを含んでいる。ま
た、乾燥付着量で10〜100mg/m2のCrを含む
ことが好ましい。有機−無機複合皮膜を介してゴム被覆
層を設けると、シール性,耐久性に優れたステンレス鋼
製ガスケットが得られる。
【0006】
【作用】ガスケットの使用環境を考慮するとゴム被覆層
の密着性低下は、エンジン冷却水に含まれるエチレング
リコールが大きく影響していると考えられる。エチレン
グリコールの影響は、溶解性パラメータを用いて説明で
きる。たとえば、ガスケット用ゴムに使用されているN
BRの溶解性パラメータは8.7〜10.3であり、フッ
素ゴムの溶解性パラメータは8〜10である。他方、エ
チレングリコールの溶解性パラメータは14.2,水の
溶解性パラメータは23.4である。ゴム成分の溶解性
パラメータが溶液の溶解性パラメータに近いほど相溶性
が大きくなる。エチレングリコールを含む環境では、水
単独の環境に比較して溶解性パラメータがゴム成分の溶
解性パラメータに接近するため、ゴム被覆層へのエチレ
ングリコールの浸透,ゴム被覆層の膨潤,水分の浸透が
生じやすい。
【0007】他方、エンジン運転中、ゴム被覆層の表面
は120〜150℃程度に加熱される。加熱されたゴム
被覆層は、水分がゴム被覆層に浸透・透過しやすく、エ
チレングリコールによる膨潤作用を一層受けやすくな
る。基材・ステンレス鋼表面に形成した表面処理皮膜が
浸透水との水和反応や浸透水の吸着が生じると、ゴム/
ステンレス鋼界面の浸透圧が上昇し、微小な浸透圧フク
レが発生しやすくなると推察される。浸透圧フクレは、
剥離の起点として作用しゴム被覆層の剥離を促進させ
る。
【0008】エンジン冷却液に含まれているエチレング
リコールがゴム被覆層の密着性低下に影響を及ぼしてい
るとの前提に立って、浸透水との水和反応及び浸透水の
吸着が生じにくい表面処理方法を種々調査・検討した。
その結果、リン酸クロム,シリカ及びアクリル樹脂を含
む有機−無機複合皮膜を基材・ステンレス鋼に形成する
と、ゴム被覆層の密着性低下がなく耐久性に優れたステ
ンレス鋼製ガスケットが得られることを見出した。有機
−無機複合皮膜は、難溶性生成物を含み基材・ステンレ
ス鋼,ゴム被覆層に対して良好な密着性を発現する。有
機−無機複合皮膜は、水溶液の広いpH領域において難
溶性のリン酸クロムを含み、可溶性の六価クロムを含ん
でいないため浸透圧フクレの原因になる水膜がゴム被覆
層下に形成されない。因みに、従来のクロメート皮膜で
は耐食性維持のために自己修復作用のある六価クロムを
全クロム量の2〜60%含むことが必須とされており、
クロム酸イオンが水溶液中に徐々に溶出し、ゴム被覆層
の下に水膜が形成される。
【0009】有機−無機複合皮膜は、六価クロムを含ま
ないにも拘らず、シリンダヘッド・ガスケットの使用環
境で十分な耐食性を呈する。十分な耐食性は、冷却水や
エンジン内の凝縮水に有機−無機複合皮膜が接触しても
溶出成分がないためゴム被覆層の剥離が防止され、剥離
したゴム被覆層/基材・ステンレス鋼の間に隙間腐食が
ないことに依るものと考えられる。ステンレス鋼を基材
にしていることから、基材自体の優れた耐食性もゴム被
覆層の耐剥離性に寄与していると考えられる。すなわ
ち、リン酸クロム,シリカ及びアクリル樹脂が複合した
有機−無機複合皮膜が基材・ステンレス鋼/ゴム被覆層
の界面に存在していると、六価クロムがないにも拘らず
十分な耐食性が確保され、ゴム被覆層の密着性低下が防
止される。
【0010】有機−無機複合皮膜中のシリカは、オキソ
橋でリン酸クロムと結合し、皮膜の連続性,強度に寄与
する。また、表面にあるシラノール基がゴム被覆層又は
ゴム被覆層に先立って形成される接着剤層との密着性を
向上させる。アクリル樹脂は、基材・ステンレス鋼に対
する密着性、ゴム被覆層又は接着剤層との馴染み性を向
上させると共に、シリカ,リン酸クロムの脱落を防止し
て有機−無機複合皮膜の密着性を維持する。シリカ及び
アクリル樹脂の共存は、六価クロムの還元反応を進行さ
せて安定な三価にするため、使用中や廃棄回収時におい
ても環境汚染の危険が少なくなる。
【0011】緻密な有機−無機複合皮膜を形成させるた
めには、皮膜中のP,Cr量をP/Cr重量比0.5〜
1.8の範囲に調整することが好ましい。P/Cr重量
比0.5未満では、過剰なCrがリン酸以外のアニオン
と反応してできる塩によって皮膜の難溶性が低下し、ゴ
ム被覆層が剥離しやすくなる。逆に1.8を超えるP/
Cr重量比では、Crに対してリン酸が過剰となり、未
反応リン酸が熱水に溶出してゴム被覆層との間に水膜を
形成し、剥離を促進させる。また、高分子化したリン酸
クロムにポーラスな部分が生じて加工性を低下させる。
更に、有機−無機複合皮膜の環境遮断能も低下し、耐食
性にも悪影響が現れる。
【0012】
【実施の形態】有機−無機複合皮膜の形成に使用される
処理液は、リン酸イオン,亜リン酸イオン,次亜リン酸
イオン等のPソース、六価クロムイオン,三価クロムイ
オン等のCrソース、シリカ及びアクリル樹脂を配合す
ることにより調整される。有機−無機複合処理液には、
必要に応じて還元剤を添加することもできる。処理液を
基材・ステンレス鋼に塗布し、加熱・乾燥することにより
有機−無機複合皮膜が形成される。六価クロムイオンを
含む有機−無機複合処理液を使用する場合、処理液の調
整時や処理液塗布後の乾燥時に六価クロムイオンが難溶
性の三価に還元される。
【0013】処理液調整段階で六価クロムを還元する場
合、亜リン酸,次亜リン酸,シュウ酸,酒石酸,乳酸,
クエン酸,アスコルビン酸,吉草酸等のオキシ酸又はこ
れらの塩類やメタノール等のアルコール,ホルマリン,
ブチルセロソルブ等が還元剤として使用される。還元剤
を処理液に添加することにより、六価クロムの全て又は
一部を三価クロムに還元した処理液が得られる。なかで
も、亜リン酸,次亜リン酸,リン酸,シュウ酸を還元剤
に使用し、有機−無機複合皮膜のP/Cr重量比が0.
5〜1.0となる割合で添加すると、未反応リン酸がな
くなり有機−無機複合皮膜の耐水密着性が更に向上す
る。
【0014】処理液中の六価クロムは、基材・ステンレ
ス鋼との酸化反応によって電子を受け取り三価になるこ
ともある。処理液成分のシリカは、このときの酸化反応
に固体触媒として働き、六価クロムの還元を効果的に促
進させる。アクリル樹脂も、オキシ酸と同様に六価クロ
ムの還元を促進させる作用を呈する。基材・ステンレス
鋼に処理液を塗布した後で比較的高温の180〜250
℃で乾燥すると還元反応が更に促進され、残存する六価
クロムの全量が三価に還元される。
【0015】調製された有機−無機複合処理液を基材・
ステンレス鋼に塗布し加熱乾燥すると、リン酸クロム,
シリカ,アクリル樹脂が相互にオキソ橋で結合し、高分
子化した安定皮膜が形成される。有機−無機複合処理液
の塗布に先立って、アルカリ系洗浄液,界面活性剤を含
む洗浄液及び/又はリン酸,フッ酸,硝酸,塩酸等の酸
性水溶液で基材・ステンレス鋼を予め洗浄しておくこと
が好ましい。塗布方法にはロールコート,浸漬,スプレ
ー等を採用できるが,塗布量の制御が容易なロールコー
トが好ましい。塗布に際し処理液を特に加熱する必要は
なく、室温の処理液を使用できる。
【0016】形成された有機−無機複合皮膜は、皮膜中
にリン酸クロム,シリカ及びアクリル樹脂が共存するた
め、ゴム被覆層との密着性,耐水性,耐食性に優れた特
性を示す。有機−無機複合皮膜は、Crの乾燥付着量を
10〜100mg/m2の範囲に調整したものが好まし
い。10mg/m2以上のCr付着量でゴム密着性の改
善効果が顕著になるが、100mg/m2を超えるCr
付着量では成型加工時にクラック,パウダリング等が有
機−無機複合皮膜に発生しやすくなり、結果としてゴム
被覆層の密着性が低下する。
【0017】更に、有機−無機複合皮膜のP/Cr重量
比を0.5〜1.0の範囲に収めると、六価クロム→三価
クロムの還元反応にリン酸が効率よく消費されるため、
熱水に溶出しやすい未反応リン酸がなく難溶性リン酸ク
ロムを主体とする皮膜になり、耐水密着性が一層向上す
る。六価クロム→三価クロムの還元反応に消費されない
未反応リン酸が有機−無機複合皮膜に残存すると、使用
時の雰囲気に未反応リン酸が溶出し、ゴム被覆層の耐水
密着性が低下する虞がある。
【0018】有機−無機複合皮膜を介して形成されたゴ
ム被覆層は、基材に対する密着性が良好である。ゴム被
覆層には、NBR,水添加NBR,フッ素ゴム,シリコ
ーンゴム,アクリルゴム,エピクロルヒドリンゴム,E
PDM,塩素化ゴム,クロロスルホン化ポリエチレン等
がある。また、六価クロムイオンと浸透水との水和反応
や浸透水の吸着に起因するフクレが抑制されているの
で、長期間にわたって良好な密着性が維持される。しか
も、ステンレス鋼をガスケット基材に使用していること
から、耐食性に関しても要求レベルを満足したガスケッ
トとなる。
【0019】
【実施例1】〔本発明例1〕六価クロムイオン:20g
/l,三価クロムイオン:20g/l,リン酸:140
g/l,シリカ:80g/l,ポリメタクリル酸メチ
ル:40g/lの組成をもち、pH2.7の有機−無機
複合処理液を調整し、23℃に保持した。基材・ステン
レス鋼には、板厚0.2mmのSUS301Hステンレ
ス鋼板の圧延材をを使用し、有機−無機複合処理液の塗
布に先立ってリン酸塩処理した。有機−無機複合処理液
を基材・ステンレス鋼にロールコータで塗布し、200
℃で1分間乾燥することによりクロム付着量:40mg
/m2の有機−無機複合皮膜を形成した。
【0020】有機−無機複合皮膜が形成されたステンレ
ス鋼板から50mm×50mmの試験片4枚を切り出
し、沸騰純水100mlに10分間浸漬した後、溶出成
分をJIS H8625付属書2.4.1のジフェニルカルバジッド比
色法に準拠して濃度分析したところ、六価クロムイオン
濃度は検出限界以下であった。また、X線電子分光分析
法(ESCA)により、有機−無機複合皮膜の表面及び
15秒Arスパッタリングした後の皮膜表面のCr2p
及びP2pの結合エネルギースペクトルを測定すること
によりリン酸クロムの生成を確認した。ESCA分析で
も、六価クロムイオンに由来するピークは検出されなか
った。
【0021】〔本発明例2〕乾燥温度を180℃、クロ
ム付着量を15mg/m2に変更した以外は、本発明例
1と同じ条件下で有機−無機複合皮膜を形成した。形成
された有機−無機複合皮膜の六価クロムイオンも検出限
界以下であり、ESCA分析ではリン酸クロムの生成が
確認され、六価クロムイオンに由来するピークが検出さ
れなかった。 〔本発明例3〕乾燥温度を240℃、クロム付着量を9
5mg/m2に変更した以外は、本発明例1と同じ条件
下で有機−無機複合皮膜を形成した。形成された有機−
無機複合皮膜の六価クロムイオンも検出限界以下であ
り、ESCA分析ではリン酸クロムの生成が確認され、
六価クロムイオンに由来するピークが検出されなかっ
た。
【0022】〔本発明例4〕本発明例1と同じ有機−無
機複合処理液をシュウ酸で還元処理した後、ステンレス
鋼板に塗布し、200℃で1分乾燥することにより、ク
ロム付着量:30mg/m2の有機−無機複合皮膜を形
成した。形成された有機−無機複合皮膜の六価クロムイ
オンも検出限界以下であり、ESCA分析ではリン酸ク
ロムの生成が確認され、六価クロムイオンに由来するピ
ークが検出されなかった。 〔本発明例5〕リン酸含有量を75g/lに変更した以
外は本発明例1と同じ有機−無機複合処理液を使用し、
同様な条件下でクロム付着量:20mg/m2の有機−
無機複合処理液を形成した。形成された有機−無機複合
皮膜の六価クロムイオンも検出限界以下であり、ESC
A分析ではリン酸クロムの生成が確認され、六価クロム
イオンに由来するピークが検出されなかった。
【0023】〔本発明例6〕リン酸含有量を230g/
lに変更した以外は本発明例1と同じ有機−無機複合処
理液を使用し、同様な条件下でクロム付着量:60mg
/m2の有機−無機複合皮膜を形成した。形成された有
機−無機複合皮膜の六価クロムイオンも検出限界以下で
あり、ESCA分析ではリン酸クロムの生成が確認さ
れ、六価クロムイオンに由来するピークが検出されなか
った。
【0024】〔従来例〕六価クロムイオン:20g/
l,三価クロムイオン:20g/l,リン酸:40g/
l,シリカ:80g/l,ポリタクリル酸メチル:40
g/lの組成をもつ処理液をステンレス鋼板に塗布し、
80℃×1分の乾燥によってクロム付着量:40mg/
2のクロメート皮膜を形成した。形成されたクロメー
ト皮膜の溶出成分を分析した結果から、六価クロム/全
クロムが重量比0.34の皮膜であることが判った。 〔比較例1〕六価クロムイオン:20g/l,三価クロ
ムイオン:20g/l,シリカ:80g/l,ポリメタ
クリル酸メチル:40g/lの処理液をステンレス鋼板
に塗布し、120℃×1分の乾燥によってクロム付着
量:40mg/m2のクロメート皮膜を形成した。形成
されたクロメート皮膜の溶出成分を分析した結果から、
六価クロム/全クロムが重量比0.32の皮膜であるこ
とが判った。
【0025】〔比較例2〕六価クロムイオン:20g/
l,三価クロムイオン:20g/l,リン酸:40g/
l,ポリメタクリル酸メチル:40g/lの処理液をス
テンレス鋼板に塗布し、80℃×1分の乾燥によってク
ロム付着量:40mg/m2のクロメート皮膜を形成し
た。形成されたクロメート皮膜の溶出成分を分析した結
果から、六価クロム/全クロムが重量比0.37の皮膜
であることが判った。 〔比較例3〕六価クロムイオン:20g/l,三価クロ
ムイオン:20g/l,リン酸:40g/l,シリカ:
80g/l,ポリメタクリル酸メチル:40g/lの処
理液をステンレス鋼板に塗布し、80℃×1分の乾燥に
よってクロム付着量:40mg/m2のクロメート皮膜
を形成した。形成されたクロメート皮膜の溶出成分を分
析した結果から、六価クロム/全クロムが重量比0.3
5の皮膜であることが判った。
【0026】有機−無機複合皮膜形勢後の各ステンレス
鋼板にシランカップリング剤を塗布し、180℃×10
分で熱処理した後、フッ化ビニリデン−フルオロプロペ
ン共重合体を溶液化したポリオール加硫型の塗料(ダイ
エルDPA-382:ダイキン工業株式会社製)を加硫後の膜
厚が20μm又は5μmとなるように塗布し、200℃
×1時間の加硫処理でフッ素ゴム被覆層を形成した。ゴ
ム被覆層が形成されたステンレス鋼板を次の密着性試
験,加工性試験に供した。
【0027】〔密着性試験〕自動車エンジン用不凍液
(トヨタ純正ロングライフクーラント)を50%含む水
溶液を120℃に加熱し、膜厚20μmのゴム被覆層が
設けられたステンレス鋼板を浸漬した。浸漬時間が50
0時間に達した時点で水溶液からゴム被覆ステンレス鋼
板を引き上げ、24時間後にゴム被覆層を密着試験し
た。密着試験では、カッターナイフにより下地・ステン
レス鋼に達する間隔1mm,桝目100個の碁盤目状切
込みを入れ、接着テープの貼り付け・引き剥がし後にゴ
ム被覆層の剥離状況を観察した。ゴム被覆層が剥離した
桝目の個数をカウントし、剥離個数を剥離度(%)とし
て密着性を評価した。
【0028】〔加工性試験〕伸びが良いゴム被覆層が形
成されたステンレス鋼板を加工すると、加工変形部分の
処理皮膜の状態を外観で直接観察できない。そこで、加
工変形によって処理皮膜に発生するクラックやパウダリ
ングに起因するゴム被覆層の密着性低下現象を加工性の
指標とした。膜厚5μmのゴム被覆層が形成されたステ
ンレス鋼から切り出された試験片を、ゴム被覆層が外側
になるように0t密着曲げ加工した。曲げ部外側に接着
テープを貼り付け、接着テープを強制的に引き剥がした
後、ゴム被覆層の剥離の有無を調査した。剥離が全く生
じていないゴム被覆層を○,一部でも剥離したゴム被覆
層を×としてゴム被覆ステンレス鋼板の加工性を評価し
た。
【0029】表1の試験結果にみられるように、リン酸
クロム,シリカ,アクリル樹脂が共存する有機−無機複
合皮膜を形成した本発明例では、皮膜中に六価クロムが
検出されず、ゴム被覆層の剥離度も3%以下であった。
他方、リン酸クロム,シリカ,アクリル樹脂の何れかを
含まない化成処理皮膜を形成した比較例では、ゴム被覆
層の密着性が低下しており、皮膜に残存する六価クロム
の影響が窺われる。残存六価クロムの影響は、P/Cr
重量比が0.3と小さな従来例でも顕著であり、ゴム被
覆層の低い密着性に現れている。
【0030】
【0031】
【実施例2】六価クロムイオン:20g/l,三価クロ
ムイオン:20g/l,シリカ:80g/l,ポリメタ
クリル酸メチル:40g/lの基本組成に次亜リン酸イ
オン,亜リン酸イオン,リン酸イオン,シュウ酸イオン
を種々の割合で添加した有機−無機複合処理液を調製し
た。有機−無機複合処理液を23℃に保持し、実施例1
と同じ条件下でステンレス鋼板に塗布し、クロム付着
量:40mg/m2の有機−無機複合皮膜を形成した。
形成された有機−無機複合皮膜のP/Cr重量比は、処
理液に添加された次亜リン酸イオン,亜リン酸イオン,
リン酸イオン,シュウ酸イオンの添加量に応じて増加し
ていた。
【0032】処理後のステンレス鋼板を沸騰純水に10
分間浸漬した後、有機−無機複合皮膜からの溶出したC
r(VI)をジフェニルカルバジッド比色法で、Pをイオン
クロマトグラフィーで濃度分析した。分析結果を有機−
無機複合皮膜のP/Cr重量比で整理したところ、表2
にみられるようにP/Cr重量比が0.5〜1.0の範囲
にある有機−無機複合皮膜では、溶出成分にPが検出さ
れなかった。他方、P/Cr重量比が低すぎる有機−無
機複合皮膜では、溶出成分にCr(VI)が検出され、六価
クロムが十分に還元されていないことが判る。逆に、P
/Cr重量比が高すぎる有機−無機複合皮膜では、溶出
成分にPが検出され、未反応のリン酸根が有機−無機複
合皮膜に残存していることが窺われる。表2の結果は、
P/Cr重量比を最適範囲0.5〜1.0に管理すると
き、生成した有機−無機複合皮膜に六価クロム,未反応
リン酸が含まれず、ゴム被覆層の優れた密着性を長期に
わたって維持できるガスケット用ステンレス鋼板として
使用できることを示している。
【0033】
【0034】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明のガスケ
ット用ステンレス鋼板は、クロメート皮膜に自己修復作
用をもたせるために必須とされていた可溶性六価クロム
を排除した有機−無機複合皮膜を基材・ステンレス鋼の
表面に形成している。有機−無機複合皮膜を介してゴム
被覆層を設けるとき、エンジン冷却液に接する環境下で
基材・ステンレス鋼に対するゴム被覆層の密着性が長期
にわたって高位に維持される。有機−無機複合皮膜は、
環境遮断機能が高く高温安定性にも優れているので、ス
テンレス鋼本来の優れた耐食性を活用しながら、シール
性,耐久性に優れた自動車エンジンのシリンダヘッド・
ガスケットとして使用される。
フロントページの続き (72)発明者 仲田 安章 千葉県市川市高谷新町7番1号 日新製鋼 株式会社技術研究所内 (72)発明者 圓谷 浩 千葉県市川市高谷新町7番1号 日新製鋼 株式会社技術研究所内 Fターム(参考) 4K026 AA04 AA22 BA03 BA06 BA12 BB06 BB08 CA13 CA19 CA26 CA27 CA38 DA02 DA11 EA08 EB08 EB11 4K044 AA03 AB02 BA15 BA17 BA21 BB03 BC03 BC05 CA16 CA53 CA62 CA64

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ゴム被覆層が形成される基材表面に、C
    r(VI)がないCr(III)のリン酸クロム,シリカ及びア
    クリル樹脂を含む有機−無機複合皮膜が形成されている
    ことを特徴とするガスケット用ステンレス鋼板。
  2. 【請求項2】 有機−無機複合皮膜がP/Cr重量比
    0.5〜1.8でP及びCrを含んでいる請求項1記載の
    ガスケット用ステンレス鋼板。
  3. 【請求項3】 有機−無機複合皮膜が乾燥付着量で10
    〜100mg/m2のCrを含んでいる請求項1記載の
    ガスケット用ステンレス鋼板。
  4. 【請求項4】 ステンレス鋼板を基材とし、請求項1〜
    3何れかに記載の有機−無機複合皮膜を介してゴム被覆
    層が基材表面に形成されていることを特徴とするステン
    レス鋼製ガスケット。
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