JP2003342565A - 炭酸カルシウム質蛍光体とその製造方法 - Google Patents
炭酸カルシウム質蛍光体とその製造方法Info
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Abstract
ウム質蛍光体とそれを発光成分とする緑色蛍光組成物を
提供すること。それらの蛍光体を製造する方法を提供す
ることを含む。 【解決手段】水可溶性のカルシウム化合物、マグネシウ
ム化合物、セリウム化合物、テルビウム化合物の混合水
溶液に炭酸イオンを添加して、炭酸カルシウムを主体と
するゲル状物質を析出させ、ついでこのゲルが懸濁して
いる液を加熱、熟成することにより、炭酸カルシウムの
結晶化を進めると、カルサイト型構造の(Ce3++Tb
3+)付活Mg2+固溶炭酸カルシウムの結晶が得られる。
この結晶は熱安定性が高くブラックライト下、すなわち
近紫外光の照射下で緑色に発光する。この蛍光体を塗
料、コンクリート、プラスチックなどに加えることによ
り、種々の形態の蛍光組成物が得られる。
Description
ウム質蛍光体とその製造方法に関し、この蛍光体を発光
成分とする蛍光組成物を包含する。本発明の蛍光体は、
近紫外光の照射を受けて緑色に発光する。
元素の酸化物を付活剤として添加した従来の無機蛍光体
は、付活剤を固溶置換させるために、たとえば1700
℃という高温で処理する必要があること、および添加す
る希土類酸化物が高価である上に高純度であることを必
要とし、そのために製造コストが高くなることが避けら
れなかった。
トの低い蛍光体を提供することを意図し、母材として安
価な炭酸カルシウムを採用するとともに、付活剤として
も、安価であるうえに、高温での処理を必要としない
か、少なくともあまり高い温度での処理を必要としない
ものを用い、原料費も操業費も低廉ですみ、製造コスト
の安い蛍光体を追求してきた。
ト型の炭酸カルシウムに対する付活剤としてSn2+を用
いることにより青色の発光をする蛍光体を見出し、すで
に開示した(特開平10-226786)。炭酸カルシ
ウム蛍光体の利点としては、 母体結晶が安価であること、低温度で合成できるた
め省エネルギーの要請に合致すること、合成の初期段
階で非晶質の炭酸カルシウムが付活剤をとりこみやすい
こと、および粒子径や形状の制御が容易であることが
挙げられる。
酸カルシウム質の蛍光体の研究も行ない、付活剤として
Ce3+およびMn2+を使用した(Ce+Mn)付活炭酸
カルシウムが、「ブラックライト」と呼ばれる波長30
0〜450nmの近紫外光を受けて、赤色の蛍光を発する
ことを見出し、この事実を利用した炭酸カルシウム質蛍
光体をすでに提案した(特開平2001-26516
7)。
を使用したCe−Tb付活炭酸カルシウムは、波長30
0〜450nmの近紫外光で545nm付近に発色ピークを
もつ、あざやかな緑色の蛍光を発することも見出し、こ
れもすでに発表した(真智ほか,「日本セラミックス協
会第15回関東支部研究発表講演要旨集」(1999)p.6
2)。
た場合、バテライト型の結晶構造を有するEu3+付活炭
酸カルシウムが、波長330nmの近紫外光により励起さ
れて620nmに発光ピークを有する赤色の蛍光を発する
こと、さらに、Eu3+付活炭酸カルシウムを加熱する
と、Eu2+付活炭酸カルシウムに変化し、励起波長33
0nmに対して、発光ピーク波長430nmの青色の蛍光を
発することを見出した。
カルシウム質蛍光体は、いずれの蛍光色のものも熱的安
定性および空気中における安定性が低い。とくに、緑色
の発光をする(Ce3++Tb3+)付活炭酸カルシウム蛍
光体は、200℃に加熱すると、蛍光体の発光強度が加
熱前の半分程度まで低下してしまうし、空気中で保存し
たときも、発光強度が経時的にどんどん低下していく。
の炭酸カルシウム質蛍光体、とくに緑色発光をするCe
3++Tb3+付活炭酸カルシウム質蛍光体の弱点を補い、
熱的安定性および空気中での安定性にすぐれた、ブラッ
クライト下で有用である新規な炭酸カルシウム質蛍光体
と、それを発光成分とする緑色蛍光組成物を提供するこ
とにある。そのような蛍光体を製造する方法を提供する
こともまた、本発明の目的に含まれる。
質蛍光体は、カルサイト型構造を有し、CeおよびTb
により付活したことにより近紫外光の照射を受けて緑色
の蛍光を発する炭酸カルシウム質蛍光体であって、マグ
ネシウを固溶させることにより、相対発光度を高めると
ともに、安定性を増したことを特徴とする。
の炭酸カルシウム質蛍光体を発光成分として含有する、
さまざまな形態の組成物であって、例を挙げれば、塗料
基礎成分に蛍光体を添加した塗料、プラスチックに混練
したマスターバッチ、それを成形したもの、あるいはコ
ンクリートに混練したものなどがある。
本発明の方法は、いずれも水可溶性のカルシウム化合
物、マグネシウム化合物、セリウム化合物、テルビウム
化合物の混合水溶液に炭酸イオンを添加して、炭酸カル
シウムを主体とするゲル状物質を析出させ、ついでこの
ゲルが懸濁している液を加熱して熟成させることによ
り、炭酸カルシウムの結晶化を進め、カルサイト型構造
をもち、Mgが固溶し、かつCeおよびTbにより付活
された炭酸カルシウムの結晶を得ることからなる製造方
法である。
て、母材となる炭酸カルシウム中のマグネシウム固溶量
は、Mg/Caの原子比で、0.1〜0.7の範囲が適
当である。この範囲外では、蛍光体の相対発光強度が低
い。好ましい範囲は、0.2〜0.6である。
b)/(Ca+Mg)の原子比にして、0.03〜0.
08の範囲が適当である。付活剤の量が下限に満たない
と、付活効果が不十分であるし、上限を超えて添加して
も、効果が飽和し、コストが高くなるだけである。
Tb/(Ce+Tb)の原子比にして、0.5〜0.8
の範囲が適当である。この範囲外であると、高い相対発
光強度が得られない。
おいて、原料として使用するカルシウム化合物、マグネ
シウム化合物、セリウム化合物およびテルビウム化合物
は、水溶性であり、かつ混合によって変化しないもので
ある限り、任意のものを選択することができる。通常
は、塩化物や硝酸塩のような、水易溶性の物質が好適で
ある。炭酸イオンの添加は、下記の実施例に見るよう
に、水可溶性の炭酸塩水溶液の添加によって行なうのが
便宜であるが、二酸化炭素ガスまたは二酸化炭素含有ガ
スの吹き込みによって行なうこともできる。
と、同じ濃度の塩化マグネシウム水溶液を、前者だけ、
または混合物中のMg/Ca原子比が0〜1.5の範囲
となるように混合して使用して、温度35℃で30分間
撹拌した。そこへ付活剤として、塩化セリウム水溶液お
よび塩化テルビウム水溶液を、 (Ce+Tb)/(Ca+Mg)=0.07 Tb/(Ce+Tb)=0.71 となるように添加し、この混合溶液に、濃度0.1mol/
dm3の炭酸アンモニウム水溶液を、液の体積比が1対1
となる量、急速に混合してゲル化を引き起こした。撹拌
下に90℃に1時間加熱して、熟成させて結晶化を促進
した。
して、X線回折や原子吸光などの装置で分析した。蛍光
特性は、分光蛍光光度計を用いて測定した。322nmの
近紫外光で励起したときの相対発光強度を、Mg/Ca
原子比との関係においてプロットし、図1のグラフに示
す。このグラフから、Mg/Caが0.1〜0.7の範
囲において、発光強度が高まること、とくに0.3〜
0.5の範囲において、Mgが固溶していない場合の2
倍以上の発光強度が得られることがわかる。
ウム固溶炭酸カルシウム質蛍光体のうち、 Mg/Ca=0.38 (Ce+Tb)/(Ca+Mg)=0.07 Tb/(Ce+Tb)=0.71 であるものについて、常温で空気中に放置したときの安
定度を、発光強度を尺度に、既知のマグネシウムが固溶
していない(Ce+Tb)付活炭酸カルシウム質蛍光体
(バテライト型)と比較した。結果は図2のグラフに見
るとおりであって、比較例では、初期発光強度の30%
を下回るところまで低下してしまうのに対し、本発明の
蛍光体は、60%程度に低下した後は安定に推移する。
を、200℃または300℃に30分間加熱したのちの
発光強度を測定した。その結果を図3のグラフに示す。
本発明の実施例は、200℃に加熱しても、発光強度の
低下は僅かであり、比較例の初期発光強度を上回る成績
が確保できている。
の蛍光体を常用の熱可塑性樹脂に練り込んで、押出成形
や射出成形により成形品とすることが可能であることを
意味する。上述の、常温保存による劣化は、空気中の水
分による分解が原因と考えられる。蛍光体を疎水性物質
である樹脂で包んでしまえば、周囲の水分の影響は、実
質上遮断できるから、初期発光強度が(加熱による若干
の低下はあっても)そのまま維持できることになり、炭
酸カルシウム質で緑色に発光する蛍光体の耐久性が確立
されたわけである。
格子へのマグネシウムの固溶に関して、所望の固溶量を
実現するためには、Caイオンの当量より多いMgイオ
ンの存在が必要である。上述の炭酸塩沈殿法による場合
に選択すべき条件を示せば、図4のグラフのようにな
る。このグラフは、CaおよびMgの混合水溶液中のM
g/Ca比と、それがもたらす結晶中のMg/Caの比
との関係を示したものである。結晶中の好適なMg/C
a比である0.3〜0.5を実現するには、初期の、つ
まり混合水溶液中のMg/Ca比を0.4〜0.8の範
囲にすべきことがわかる。
Mg)の原子比が0.07であり、Tb/(Ce+T
b)の原子比が0.71であるという条件のもとに得た
ものであるが、本発明で好適とする範囲すなわち、前者
に関しては0.03〜0.08、後者に関しては0.5
〜0.8の範囲において、ほぼ同様に考えてよいことが
わかっている。
活剤としてCe3+とともにTb3+を使用したCe−Tb
付活カルサイト型炭酸カルシウム蛍光体の欠点であった
不安定性、とくに空気中の保存性の悪さと耐熱性の低さ
とが改善され、波長300〜450nmの近紫外光を受け
ると、545nm付近に発色ピークをもつあざやかな緑色
の蛍光を発するという特性を、長期にわたって利用する
ことが可能になった。
ム固溶炭酸カルシウム質蛍光体を構成するカルサイト結
晶中のMg/Ca原子比と相対発光強度との関係を示す
グラフ。
ム固溶炭酸カルシウム質蛍光体のもつ保存安定性を、マ
グネシウムが固溶していない(Ce3++Tb 3+)付活炭
酸カルシウム質蛍光体と比較して示すグラフ。
ム固溶炭酸カルシウム質蛍光体のもつ耐熱安定性を、マ
グネシウムが固溶していない(Ce3++Tb 3+)付活炭
酸カルシウム質蛍光体と比較して示すグラフ。
カルシウムを製造する場合に、原料である混合水溶液中
のMg/Ca原子比と、得られた結晶中のMg/Ca原
子比との関係を示すグラフ。
Claims (6)
- 【請求項1】 カルサイト型構造を有し、CeおよびT
bにより付活したことにより近紫外光の照射を受けて緑
色の蛍光を発する炭酸カルシウム質蛍光体であって、マ
グネシウムを固溶させることにより、相対発光度を高め
るとともに、安定性を増したことを特徴とする炭酸カル
シウム質蛍光体。 - 【請求項2】 Mg/Caの原子比が0.1〜0.7の
範囲にある請求項1の炭酸カルシウム質蛍光体。 - 【請求項3】 (Ce+Tb)/(Ca+Mg)の原子
比が0.03〜0.08の範囲にある請求項2の炭酸カ
ルシウム質蛍光体。 - 【請求項4】 Tb/(Ce+Tb)の原子比が0.5
〜0.8の範囲にある請求項3の炭酸カルシウム質蛍光
体。 - 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかの炭酸カル
シウム質蛍光体を発光成分として含有する緑色蛍光組成
物。 - 【請求項6】 請求項1に記載の炭酸カルシウム質蛍光
体を製造する方法であって、いずれも水可溶性のカルシ
ウム化合物、マグネシウム化合物、セリウム化合物、テ
ルビウム化合物の混合水溶液に炭酸イオンを添加して、
炭酸カルシウムを主体とするゲル状物質を析出させ、つ
いでこのゲルが懸濁している液を加熱して熟成させるこ
とにより、炭酸カルシウムの結晶化を進め、カルサイト
型構造をもち、Mgが固溶し、かつCeおよびTbによ
り付活された炭酸カルシウムの結晶を得ることからなる
製造方法。
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