JP2003338406A - 軟磁性フェライト粉末の製造方法、フェライトコアの製造方法、およびフェライトコア - Google Patents

軟磁性フェライト粉末の製造方法、フェライトコアの製造方法、およびフェライトコア

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JP2003338406A
JP2003338406A JP2002144529A JP2002144529A JP2003338406A JP 2003338406 A JP2003338406 A JP 2003338406A JP 2002144529 A JP2002144529 A JP 2002144529A JP 2002144529 A JP2002144529 A JP 2002144529A JP 2003338406 A JP2003338406 A JP 2003338406A
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Hiroshi Harada
浩 原田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 さらなる低温焼成を可能とし、しかも高い焼
結密度と、抗折強度が得られる軟磁性フェライト粉末お
よびフェライトコアの製造方法を提供し、この方法によ
り得られた高強度のフェライトコアを提供する。 【解決手段】 原料粉末の仮焼物と水とを含むスラリー
中に、有機添加剤を存在させる工程を設け、前記有機添
加剤として、水酸基およびカルボキシル基を有する有機
化合物またはその中和塩もしくはそのラクトンを用いる
か、ヒドロキシメチルカルボニル基を有する有機化合
物、酸として解離し得るエノール型水酸基を有する有機
化合物またはその中和塩を用い軟磁性フェライト粉末と
し、これを成型した後、焼成してフェライトコアを得る
構成の軟磁性フェライト粉末、フェライトコアの製造方
法、およびこの方法により得られたフェライトコアとし
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高強度なフェライ
トコアが得られる軟磁性フェライト粉末の製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】軟磁性フェライトは、種々の電子部品に
幅広く用いられている。かかる軟磁性フェライトは、一
般にフェライト原料粉末とバインダーから構成された顆
粒を目的に応じて種々の形状に成形し、このようにして
成形した成形体を焼結することによって得られる。
【0003】このようにして得られたフェライト焼結体
は、ノート型パソコン、PDA等の情報端末や携帯電
話、PHS等の移動式電話あるいはこれらの周辺機器等
の携帯を前提にした電子部品、テレビ、ステレオ等の比
較的大型の家電製品等の種々の電子部品に使用されてい
る。そして、これらに使用されるフェライト焼結体は益
々小型化・薄型化・軽量化されていく傾向にある。その
ため、これらの電子部品用の部品に使用される小型また
は薄型でかつ高い耐久性のフェライトが望まれている。
【0004】現在電子機器等に用いられているインダク
タ、ノイズ抑制部材では、例えば、図1(a)に示すよ
うな鍔部を有しない円柱状のコアや、図1(b)に示す
ように鍔部と胴部を有するコア、(c)に示すような鍔
部が大きく胴部が短いコア型等にフェライトコアを作製
し、これに巻線その他の導電部材を巻回してインダク
タ、ノイズ抑制部材としている。あるいは、図2(a)
および(b)に示すように板状や箱状にフェライトコア
を形成している。その際、コア型の場合には例えばコア
の胴部の直径aを2mm以下にしたり、鍔部の厚みbを1
mm以下にしたり、板状の場合にはその厚みcを1mm程度
にすることが多々ある。
【0005】このような、細い胴部や、厚みの薄い鍔
部、板状体の部分を有すると、ハンドリング時や、加工
時、巻線の巻回時等においてコアが破損しやすくなる。
また、破損に到らない場合でもクラックが生じ、そこに
水分や、特定の工程で使用される処理液などが侵入し
て、特性や信頼性を大きく損なう虞があった。
【0006】このため、より抗折強度に優れた材料が望
まれていた。一方、焼成温度の低温化は量産工程におい
て、製造設備のコストを抑え、ランニングコストを抑制
する上で重要な課題であった。しかし、焼成温度を低下
させると、焼結密度の低下を招き、ひいては抗折強度を
低下させてしまうのが現状であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、さら
なる低温焼成を可能とし、しかも高い焼結密度と、抗折
強度が得られる軟磁性フェライト粉末およびフェライト
コアの製造方法を提供し、この方法により得られた高強
度のフェライトコアを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(25)の本発明により達成される。 (1) 原料粉末の仮焼物と水とを含むスラリー中に、
有機添加剤を存在させる工程を設け、前記有機添加剤と
して、水酸基およびカルボキシル基を有する有機化合物
またはその中和塩もしくはそのラクトンを用いるか、ヒ
ドロキシメチルカルボニル基を有する有機化合物、酸と
して解離し得るエノール型水酸基を有する有機化合物ま
たはその中和塩を用い軟磁性フェライト粉末とし、これ
を成型した後、焼成してフェライトコアを得るフェライ
トコアの製造方法。 (2) 前記軟磁性フェライト粉末が、FeおよびCu
を含有する上記(1)のフェライトコアの製造方法。 (3) 前記軟磁性フェライト粉末を用いて成型する際
に、この軟磁性フェライト粉末を含むスラリー中にバイ
ンダーとしてポリビニルアルコールを添加し、造粒し、
成型する上記(1)または(2)のフェライトコアの製
造方法。 (4) 前記ポリビニルアルコールの平均鹸化度が88
〜98モル%である上記(3)のフェライトコアの製造
方法。 (5) 前記ポリビニルアルコールの平均重合度が50
0〜1700である上記(3)または(4)のフェライ
トコアの製造方法。 (6) 前記有機添加剤の添加量が、仮焼物に対し0.
05〜3.0質量%である上記(1)〜(5)のいずれ
かのフェライトコアの製造方法。 (7) 前記スラリー中に、前記仮焼物に由来するFe
イオンおよび/またはCuイオンが、合計で前記仮焼物
の0.005〜2.0質量%含まれる上記(1)〜
(6)のいずれかのフェライトコアの製造方法。 (8) 前記水酸基およびカルボキシル基を有する有機
化合物が、グルコン酸またはクエン酸である上記(1)
〜(7)のいずれかのフェライトコアの製造方法。 (9) 前記酸として解離し得るエノール型水酸基を有
する有機化合物が、アスコルビン酸である上記(1)〜
(8)のいずれかのフェライトコアの製造方法。 (10) 前記スラリー中にアンモニアが添加されてい
る上記(1)〜(9)のいずれかのフェライトコアの製
造方法。 (11) 焼成温度1040℃以下で焼成する上記
(1)〜(10)のいずれかのフェライトコアの製造方
法。 (12) 上記(1)〜(11)のいずれかの方法によ
り得られたフェライトコア。 (13) NiZn系フェライトである上記(12)の
フェライトコア。 (14) 巻線またはこれと同等な導電体を巻回してイ
ンダクタまたはノイズ抑制部材とする上記(12)また
は(13)のフェライトコア。 (15) 焼結密度が理論密度の95%以上である上記
(13)または(14)のフェライトコア。 (16) 前記焼結密度が5.20g/cm3 以上である上
記(15)のフェライトコア。 (17) 3点曲げ法による抗折強度が12kgf/mm2
上である上記(13)〜(16)のいずれかのフェライ
トコア。 (18) 直径2mm以下のコア状部分を有する上記(1
2)〜(17)のいずれかのフェライトコア。 (19) 厚さ1mm以下の板状部分を有する上記(1
2)〜(18)のいずれかのフェライトコア。 (20) MnZn系の軟磁性フェライト粉末を製造す
る方法であって、原料粉末の仮焼物と水とを含むスラリ
ー中に、有機添加剤を存在させる工程を設け、前記有機
添加剤として、水酸基およびカルボキシル基を有する有
機化合物またはその中和塩もしくはそのラクトンを用い
るか、ヒドロキシメチルカルボニル基を有する有機化合
物、酸として解離し得るエノール型水酸基を有する有機
化合物またはその中和塩を用いる軟磁性フェライト粉末
の製造方法。 (21) 上記(20)の方法により得られた軟磁性フ
ェライト粉末により形成されたフェライトコア。 (22) 巻線またはこれと同等な導電体を巻回してイ
ンダクタ、トランスまたはノイズ抑制部材とする上記
(21)のフェライトコア。 (23) 焼結密度が理論密度の93%以上である上記
(21)または(22)のフェライトコア。 (24) 前記焼結密度が4.70g/cm3 以上である上
記(21)〜(23)のいずれかのフェライトコア。 (25) 3点曲げ法による抗折強度が9kgf/mm2 以上
である上記(21)〜(24)のいずれかのフェライト
コア。
【0009】
【作用および効果】本発明者は、仮焼物を湿式粉砕して
軟磁性フェライト粉末を製造する際に、スラリー中に上
記有機添加剤を存在させることにより、そのフェライト
粉末を用いて作製したフェライトコアの強度を向上させ
得ることを見出した。
【0010】スラリー中においてフェライトの仮焼物と
上記有機添加剤とを共存させたときに、どのようなメカ
ニズムにより高強度化が可能となるか明確ではない。た
だし、本発明者はスラリー中の金属イオン量を調べたと
ころ、Cuイオンの量およびFeイオンの量が、上記有
機添加剤の有無に強く影響を受けることがわかった。
【0011】具体的には、スラリー中において、それぞ
れフェライト仮焼物に由来するCuイオンとFeイオン
とが共に0.01〜1.0質量%となる場合に、強度が
向上するという効果が明瞭に現れることがわかった。
【0012】このことから、フェライト仮焼物から溶出
したこれらの金属イオンが、微粉砕された仮焼物に再付
着し、これが焼結助剤として働くことにより、低温で焼
結が促進され、均一で欠陥の少ない結晶が得られること
により、強度が向上したと考えられる。
【0013】CuイオンとFeイオンとの合計が少なす
ぎると、強度の向上に及ぼす効果が少ない。一方、上記
範囲を超えるイオンを溶出させるためには、有機添加剤
の添加量を著しく多くする必要があるため、好ましくな
い。両イオンの合計量が2質量%以下の範囲で、強度向
上の効果は十分に実現する。
【0014】本発明において、有機添加剤に加えスラリ
ー中にアンモニアを添加すれば、本発明の効果はより向
上する。
【0015】なお、本発明で用いる有機添加剤のうち、
例えば、酒石酸、l−アスコルビン酸、クエン酸につい
ては、泥しょう鋳込成形法において成形性向上を目的と
した分散剤として公知である。(「ファインセラミック
スの成形と有機材料」第187〜188ページ、斎藤勝
義著、株式会社シーエムシー発行)。また、グルコン酸
ナトリウムは、コンクリート工業における分散剤として
公知である(「分散・凝集の化学」第92〜95ペー
ジ、森山登著、産業図書発行)。しかし、これらの分野
において、上記有機添加剤はいずれも分散剤として利用
されている。
【0016】また、WO98/25278号公報には、
酸化物磁性材料を製造するに際し、粉砕時の水スラリー
中に、本発明で用いる有機添加剤を添加する提案がなさ
れている。しかし、同公報では、上記有機添加剤を、磁
場配向を行う際に配向度を向上させるための分散剤とし
て利用している。また、同公報には、六方晶フェライト
磁石における分散効果は記載されているが、軟磁性フェ
ライト粉末に関する実施例は記載されておらず、針状の
軟磁性フェライト粒子の磁場配向に有効である旨の記載
があるだけである。また、同公報には、上記有機添加剤
を用いて製造した場合に、軟磁性フェライト粉末により
得られるフェライトコアが高強度化されることについて
は、記載も示唆もない。
【0017】これに対し本発明では、上記有機添加剤を
軟磁性フェライトの水スラリー中に添加することによ
り、従来知られていない全く新しい効果を実現させる。
なお、本発明者の実験によれば、有機添加剤を添加して
も、軟磁性フェライト仮焼物の粉砕に要する時間(一定
の比表面積となりまでの粉砕時間)は実質的に短縮され
ない。したがって上記有機添加剤は、軟磁性フェライト
粉末に対して分散効果は示さないと考えられる。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明により製造される軟磁性フ
ェライト粉末およびフェライトコアは、好ましくはFe
とCuの酸化物を含み、要求特性などに応じて、一般的
な組成範囲からNi、Zn、Mn、Mg等の酸化物を適
宜選択すればよい。
【0019】一例としてNiZn系フェライトでは、主
成分酸化物をそれぞれFe23 、NiO,CuOおよ
びZnOで表すと、一般的な組成範囲は、 Fe23 :35〜50モル%、 NiO : 4〜50モル%、 CuO : 4〜16モル%、 ZnO : 5〜40モル% である。
【0020】また、MnZn系フェライトでは、 Fe23 :50〜60モル%、 MnO :10〜45モル%、 CuO : 0〜5モル%、 ZnO : 5〜30モル%
【0021】また、MnMgZn系フェライトでは、 Fe23 :45〜50モル%、 MnO : 1〜8モル%、 MgO :10〜32モル%、 CuO : 0〜8モル%、 ZnO : 5〜30モル%
【0022】また、NiMnZn系フェライトでは、 Fe23 :50〜60モル%、 NiO : 2〜10モル%、 MnO :10〜45モル%、 CuO : 0〜5モル%、 ZnO : 3〜20モル% である。
【0023】すなわち、本発明は、Fe23 含有量の
多い高透磁率材にも、Fe23 含有量の少ない低透磁
率材にも適用できる。主成分酸化物の含有量限定理由
は、以下のとおりである。Fe23 が少なすぎると非
磁性相の生成量が増大して損失増大の原因となり、Fe
23 が多すぎると高価になってしまう。CuOが少な
すぎると焼結性が悪くなってしまい、CuOが多すぎる
と相対的にNiOが少なくなるため、損失が大きくなっ
てしまう。ZnOが少なすぎると透磁率が低くなってし
まい、ZnOが多すぎるとキュリー温度が低くなりすぎ
る。
【0024】フェライト粉末中には、上記主成分酸化物
のほか、副成分ないし不可非的不純物として他の金属酸
化物、例えば、Co、W、Bi、Si、B、Zr、C
a、Ta、Mo、P、Y等の酸化物が必要に応じて含ま
れてもよい。
【0025】本発明では、軟磁性フェライト粉末および
フェライトコアを以下に説明する方法により製造する。
【0026】まず、原料粉末の仮焼物を製造する。原料
粉末には、軟磁性フェライト粉末の製造に通常用いられ
る各種原料、すなわち、酸化物または焼成により酸化物
となる各種化合物を用いればよい。仮焼は、組成や要求
特性に応じて各種雰囲気中で行えばよく、仮焼温度(保
持温度)は、通常、700〜1100℃、仮焼時間(温
度保持時間)は、通常、0.5〜10時間とすることが
好ましい。
【0027】このようにして得られた仮焼物を水と混合
し、粉砕用スラリーを調整する。そして、この粉砕用ス
ラリーに対し湿式粉砕を行い、仮焼物を所定の粒径ある
いは比表面積まで粉砕した後、乾燥して、軟磁性フェラ
イト粉末を得る。
【0028】本発明では、上記粉砕用スラリー中に、有
機添加剤を存在させる。有機添加剤は、粉砕前、粉砕中
および粉砕後のいずれの時点で添加してもよい。スラリ
ー中に金属イオンが溶出していれば、本発明の効果は実
現する。
【0029】湿式粉砕の時間は特に限定されず、仮焼物
の平均粒径が0.4〜2.0μm 程度、あるいは仮焼物
の比表面積が2〜11m2 /g 程度、好ましくは3〜8m
2 /g 程度となるように、粉砕手段などの各種条件に応
じて適宜選択すればよい。なお、粉砕手段は特に限定さ
れず、通常、ボールミル、アトライター、振動ミル等を
用いることが好ましい。
【0030】ところで、均一で高強度な焼結体を得るた
めには、仮焼物を微細な径まで粉砕すればよいことが知
られているが、微細となるように強力な粉砕を長時間行
うと、ジルコニアボールや鉄ボールなどからなる粉砕媒
体が磨耗し、それによるコンタミネーションが問題とな
る。これに対し本発明では、仮焼物の平均粒径や比表面
積が上記範囲となる程度の比較的粗い粉砕を行っても、
焼成し易いので、粉砕媒体の磨耗によるコンタミネーシ
ョンが生じにくく、安定した特性で高強度なフェライト
コアが得られる。
【0031】粉砕用スラリー中の仮焼物の含有量、すな
わち固形成分の濃度は、好ましくは15〜50質量%、
より好ましくは20〜35質量%である。固形分濃度が
低すぎても高すぎても、粉砕効率および粉砕の均一性が
低くなってしまう。
【0032】次に、有機添加剤について説明する。本発
明で用いる有機添加剤は、水酸基およびカルボキシル基
を有する有機化合物であるか、その中和塩であるか、そ
のラクトンであるか、ヒドロキシメチルカルボニル基を
有する有機化合物であるか、酸として解離し得るエノー
ル型水酸基を有する化合物であるか、その中和塩であ
り、これらのうちでは酸として働くものが好ましい。
【0033】上記各有機化合物は、炭素数が好ましくは
3〜20、より好ましくは4〜12であり、かつ、好ま
しくは、酸素原子と二重結合した炭素原子以外の炭素原
子の50%以上に水酸基が結合しているものである。な
お、水酸基の結合比率は、上記有機化合物について限定
されるものであり、有機添加剤そのものについて限定さ
れるものではない。例えば、有機添加剤そのものについ
て限定されるものではない。例えば、有機添加剤とし
て、水酸基およびカルボキシル基を有する有機化合物
(ヒドロキシカルボン酸)のラクトンを用いるとき、水
酸基の結合比率の限定は、ラクトンではなくヒドロキシ
カルボン酸自体に適用される。
【0034】上記有機化合物の基本骨格は、鎖式であっ
ても環式であってもよく、また、飽和であっても不飽和
結合を含んでいてもよい。
【0035】有機添加剤としては、具体的にはヒドロキ
シカルボン酸またはその中和塩もしくはそのラクトンが
好ましく、特に、グルコン酸(C=6;OH=5;CO
OH=1)またはその中和塩もしくはそのラクトン、ラ
クトピオン酸(C=12;OH=8;COOH=1)、
酒石酸(C=4;OH=2;COOH=2)またはこれ
らの中和塩、グルコヘプトン酸γ−ラクトン(C=7;
OH=5)が好ましい。そして、これらのうちでは、焼
結体の強度向上効果が高く、しかも安価であることか
ら、グルコン酸またはその中和塩もしくはそのラクトン
が好ましい。
【0036】ヒドロキシメチルカルボニル基を有する有
機化合物としては、ソルボースが好ましい。
【0037】酸として解離し得るエノール型水酸基を有
する有機化合物としては、アスコルビン酸が好ましい。
【0038】なお、本発明では、クエン酸またはその中
和塩も有機添加剤として使用可能である。クエン酸は水
酸基およびカルボキシル基を有するが、酸素原子と二重
結合した炭素原子以外の炭素原子の50%以上に水酸基
が結合しているという条件は満足しないが、本発明の効
果は実現する。
【0039】上記した好ましい有機添加剤の一部につい
て、構造を以下に示す。
【0040】
【化1】
【0041】なお、有機添加剤は2種以上を併用しても
よい。
【0042】有機添加剤の添加量は、仮焼物に対し、好
ましくは0.05〜3.0質量%、より好ましくは0.
10〜2.0質量%である。有機添加剤が少なすぎると
本発明の効果が不十分となる。一方、有機添加剤が多す
ぎると、成形体や焼結体にクラックが発生しやすくな
る。
【0043】なお、有機添加剤が水溶液中でイオン化し
得るもの、例えば酸や金属塩などであるときには、有機
添加剤の添加量はイオン換算値とする。すなわち、水素
イオンや金属イオンを除く有機成分に換算して添加量を
求める。また、有機添加剤が水和物である場合には、結
晶水を除外して添加量を求める。
【0044】また、有機添加剤がラクトンからなると
き、あるいはラクトンを含むときには、ラクトンがすべ
て開環してヒドロキシカルボン酸になるものとして、ヒ
ドロキシカルボン酸イオン換算で添加量を求める。
【0045】本発明では、有機添加剤に加え、スラリー
中にアンモニアを存在させることが好ましい。アンモニ
アの添加により、より低温での焼結が可能となり、ある
いは、同じ温度であればより緻密な焼結体が得られる。
アンモニアは、アンモニア水として添加すればよい。な
お、アンモニアを添加すると、スラリー中のイオン量、
特にFeイオン量が増える傾向となる。ただし、アンモ
ニア添加量が多すぎると、イオン溶出がかえって抑制さ
れることもあるので、アンモニア添加量は仮焼物に対し
5質量%以下とすることが好ましい。また、アンモニア
添加による効果を十分に発揮させるためには、アンモニ
ア添加量を仮焼物に対し0.1質量%以上とすることが
好ましい。アンモニアは、粉砕前、粉砕中および粉砕後
のいずれの時点で添加してもよいが、通常、有機添加剤
と同時に添加すればよい。
【0046】上述した手順により製造された軟磁性フェ
ライト粉末は、さまざまな用途に適用できるが、特にN
i系組成のフェライト粉末は、各種トランスやインダク
タ、あるいはノイズ抑制部材のフェライトコアの製造に
好適である。
【0047】フェライトコアは、軟磁性フェライト粉末
を顆粒状に造粒したものを圧縮成形して焼成することに
より製造される。
【0048】本発明では、軟磁性フェライト粉末を顆粒
状に造粒する際に、スラリー中にバインダーとして下記
の構造式(I)で示されるポリビニルアルコール(PV
A)を添加することが好ましい。バインダーとして特定
のポリビニルアルコールを添加することにより、顆粒粒
界による欠陥が少なく、かつ高い成型体強度を保つこと
により、焼結体の密度と抗折強度を向上させることがで
きる。また、スプリングバンクと称する離型後の膨潤化
現象を抑制させることができ、成型体の亀裂の発生を抑
制し、金型への負担を軽減することもできる。
【0049】
【化2】
【0050】上記式(I)中、m,nは整数を表す。
【0051】バインダー成分であるポリビニルアルコー
ルは、一次粒子の結合剤、すなわち、原料粉末と原料粉
末との結合剤として機能し、フェライト成形用顆粒の低
圧つぶれ性、耐崩壊性、成形体強度及び焼結体強度に影
響を及ぼす。特に、ポリビニルアルコールの平均鹸化度
は、成型体の成形性に影響を及ぼす。
【0052】本発明におけるポリビニルアルコールの平
均鹸化度〔m/(n+m)〕は、バインダー成分として
のポリビニルアルコール全体として、好ましくは88.
0モル%〜98.0モル%、より好ましくは90.0モ
ル%〜95.0モル%である。このような範囲の鹸化度
のPVAを、中間鹸化ポリビニルアルコールと称する。
【0053】全体の平均鹸化度が88.0モル%未満の
所謂部分鹸化ポリビニルアルコールでは、顆粒の低圧つ
ぶれ性は良好なもの、耐崩壊性および耐スティッキング
性が悪い。また水への溶解性は良好でスラリー調製が簡
単で噴霧造粒に適するが、オシレーティング押出造粒時
には金網に材料が付着して連続整粒が困難となる。逆
に、全体の平均鹸化度が98.0モル%以上の所謂完全
鹸化ポリビニルアルコールでは、耐崩壊性は良好である
が、造粒したセラミックス顆粒が比較的に硬くなるため
低圧つぶれ性が悪くなる。また、水への溶解性が悪く、
スラリー調製が困難となる。
【0054】また、ポリビニルアルコールの平均重合度
(m+n)は、好ましくは500〜1700、より好ま
しくは800〜1500、特に1000〜1300であ
る。平均重合度が500未満では、顆粒の低圧潰れ性は
良好なものの、耐崩壊性が悪く、成型体強度が低くなっ
てくる。逆に、平均重合度が1700を超えると、顆粒
の耐崩壊性および成型体強度は比較的良好であるが、硬
くなるため低圧潰れ性が悪化し、顆粒粒界による欠陥が
発生しやすくなる。
【0055】本発明においてバインダー成分として用い
る前記のポリビニルアルコールの添加量は、原料粉末1
00質量部に対して0.2〜10質量部が好ましく、特
に0.6から2質量部の範囲が好ましい。ポリビニルア
ルコールの添加量が0.2質量部未満の場合、フェライ
ト粒子を造粒できなくなる場合もある。逆に10質量部
を超えると、フェライト顆粒が硬くなりすぎ、つぶれが
悪くなることにより、顆粒粒界を多く残し成形不良を発
生させる場合もある。また、同様に容量欠損が増加する
傾向にある。
【0056】本発明において使用できるポリビニルアル
コールは、全体として前記の所定の平均鹸化度、重合度
を有していれば特に制限されず、また未変性のものであ
っても、例えばアルキルビニルエーテル、ヒドロキシビ
ニルエーテル、酢酸アリル、アミド、ビニルシラン、エ
チレン等により変性されていてもよい。
【0057】本発明によるフェライトコア成形用顆粒
は、前記所定のバインダーを用いて、従来公知の方法、
例えばスプレードライヤーによる噴霧造粒法や、オシレ
ーティング押出造粒法等によりフェライト粉末を造粒す
ることによって得られる。
【0058】このようにして得られたフェライト顆粒の
平均粒径は、通常40〜500μm、好ましくは70〜
300μm、より好ましくは80〜150μmである。
平均粒径が40μm未満であると、流動性および金型へ
の充填性が悪くなり、成形体の寸法および単質量のばら
つきが大きくなる傾向にある。また、金型への微粉付着
(スティッキング)が発生しやすくなる傾向にある。逆
に、平均粒径が500μmを超えると、顆粒粒界を多く
残し、成形不良の発生率が増加する傾向にある。さら
に、成形体の寸法および単質量のばらつきも大きくなる
傾向にある。
【0059】本発明において、フェライト顆粒を造粒す
る際に、所望に応じて本発明の目的・効果が損なわれな
い範囲で従来公知の各種添加物を添加することができ
る。このような添加物の例として、ポリカルボン酸塩、
縮合ナフタレンスルホン酸等の分散剤、グリセリン、グ
リコール類、トリオール類等の可塑剤、ワックス、ステ
アリン酸(塩)等の滑剤、ポリエーテル系、ウレタン変
性ポリエーテル系、ポリアクリル酸系、変性アクリル酸
系有機高分子等の有機系高分子凝集剤、硫酸アルミニウ
ム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等の無機系凝
集剤等が挙げられる。
【0060】本発明により製造されるフェライトコア
は、例えばNi−Cu−Zn系フェライトでは、酸化性
雰囲気中、通常は空気中で焼成すればよい。焼成温度
(保持温度)は、通常、800〜1200℃、焼成時間
(保持時間)は、通常、1〜6時間とすればよい。
【0061】また、本発明のフェライトコアは、上記有
機添加剤、すなわち焼結助剤を用いることで、低温焼成
において良好な焼成密度が得られる。具体的には、有機
添加剤を添加しない組成と比較して、理論密度の95%
以上、特に97%以上の焼結密度が得られる焼成温度
を、20℃以上低くすることができる。
【0062】より具体的には、上記Ni系組成では理論
密度の97%以上の焼結密度が1040℃以下で得るこ
とができる。また、上記Mn系組成では理論密度の93
%以上の焼結密度が1300℃以下で得ることができ
る。具体的な焼結密度としては、上記Ni系の組成にお
いて5.1g/cm3 以上、特に5.15〜5.30g/cm3
程度が得られる。また、上記Mn系の組成において4.
7g/cm3 以上、特に4.75〜4.85g/cm3 程度が得
られる。
【0063】また、本発明のフェライトコアは、より低
温でより高密度の焼成が可能となったため、抗折強度を
格段に向上させることができる。具体的には、上記Ni
系フェライトにおいて、JIS R1601に規定され
る3点式測定法による抗折強度で13kgf/mm2 以上、特
に14〜22kgf/mm2 程度を得られる。同様に、上記M
n系フェライトにおける抗折強度では8kgf/mm2 以上、
特に9〜11kgf/mm2程度を得られる。
【0064】このような抗折強度を有することにより、
特に肉細部分や、肉薄部分を有するコアの、ハンドリン
グ時、加工時、および樹脂モールド時などにおけるクラ
ックの発生や、チッピングなどを防止することができ、
品質を著しく向上させることができる。
【0065】より具体的には、例えば、図1(a)に示
すような鍔部を有しない円柱状のコアや、図1(b)に
示すように鍔部と胴部を有するコア、(c)に示すよう
な鍔部が大きく胴部が短いコア等に有効である。これら
のコアは、これに巻線その他の導電部材を巻回してイン
ダクタ、ノイズ抑制部材としている。
【0066】あるいは、図2(a)および(b)に示す
ように板状や箱状に形成されたフェライトコアにおいて
も有効である。このような板状や箱状のフェライトコア
は、主にパワーインダクタやコイルの部材として用いら
れる。
【0067】これらの形状のコアは、コアの胴部の直径
aが2mm以下、特に1.5mm以下、鍔部bの厚みが1mm
以下、特に0.7mm以下、板状や箱状の場合にはその厚
みcが1mm以下、特に0.7mm以下のもので特に有効で
ある。このような形状のコアを、本発明方法により製造
することで、抗折強度に優れ、容易に破損しないコアが
得られる。
【0068】
【実施例】〔実施例1〜5〕次に、実施例並びに比較例
により本発明を説明する。 Fe23 :47モル%、 NiO :18モル%、 CuO : 9モル%、 ZnO :26モル% の比率となるようにこれらの酸化物を秤量し、湿式メデ
ィア攪拌型粉砕機を用いて4時間湿式混合した。この湿
式混合には、分散媒として純水を用いた。
【0069】次いで、混合物をスプレードライヤーによ
り乾燥し、900℃で2時間仮焼して、Ni−Cu−Z
nフェライトの仮焼物を得た。
【0070】この仮焼物を純水と混合して、粉砕用スラ
リーを調整した。この粉砕用スラリー中の固形分(仮焼
物)濃度は、33質量%とした。なお、スラリー中に
は、表1に示すように、有機添加剤、またはこれとアン
モニアとを添加した。なお、アンモニアは、濃度50質
量%のアンモニア水として添加した。表1に示す有機添
加剤およびアンモニアの添加量は、仮焼物に対する添加
量である。
【0071】この粉砕用スラリーを、湿式メディア攪拌
型粉砕機で7時間粉砕した後、スプレードライヤーで乾
燥することにより、Ni−Cu−Znフェライト粉末を
得た。この粉砕により、フェライト粉末の比表面積は
3.0m2 /g (平均粒径1.6μm )となった。粉砕
後、スラリー中の金属イオンをICP発光分析法により
測定し、仮焼物に対するCuイオンおよびFeイオンそ
れぞれの質量比を求めた。結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】次いで、このフェライト粉末100gに、
バインダーとしてポリビニルアルコール〔平均鹸化度:
93モル%、重合度:1300〕1.0gを添加して混
合し、顆粒とした。この顆粒を、98MPa(1000kg
f/cm2 )と245MPa(2500kgf/cm2 )の圧力でそ
れぞれプレス成形し、長さ55mm、幅12mm、高さ5mm
の直方体状のブロック成形体を得た。この成形体を、焼
成温度1060℃で2時間保つことにより焼成し、Ni
−Cu−Znフェライト焼結体を得た。得られた焼結体
の密度は5.2g/cm3 であった。この焼結体の抗折強度
を加重試験機(アイコーエンジニアリング社製)を用い
てJIS R1601に規定されている方法に従い測定
した。抗折強度の測定結果と、焼結体密度の測定結果を
表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】更に、この顆粒を、98MPaの圧力でプ
レス成形し、直径21mmのリング状成形体を得た。この
成形体を図3に示す温度に2時間保つことにより焼成
し、Ni−Cu−Znフェライト焼結体を得た。
【0076】この焼結体の密度を、アルキメデス法に準
じて測定した。焼成温度と密度との関係を図3に示す。
【0077】〔比較例1〕粉砕用スラリーに有機添加剤
およびアンモニアのいずれも添加しなかったほかは上記
実施例と同様にして焼結体を作製し、上記実施例と同様
な測定を行った。測定結果を表2および図1に示す。な
お、上記実施例と同様にしてスラリー中のイオン量を測
定した結果、CuイオンおよびFeイオンは検出されな
かった。
【0078】表2および図1から、本発明の効果が明ら
かである。すなわち、軟磁性フェライト粉末を製造する
際の湿式粉砕工程において、スラリー中に所定の有機添
加剤を添加した実施例1〜5では、強度が大幅に向上し
たフェライト焼結体が得られている。同時に、実施例1
〜5では、焼成温度を1020℃と低くした場合でも、
5.2g/cm3 以上の十分な密度が得られ、その飽和値も
高い値となっている。一方、有機添加剤を添加しなかっ
た比較例1では、フェライト焼結体の強度および密度
は、実施例1〜5に比べ大きく劣っている。
【0079】〔薄型コア強度評価〕実施例5および比較
例1で得られたNi−Cu−Znフェライト顆粒を、直
径r:8mm、高さh:1.0mmの円柱コア形状に成形し
た。この成形体をダイヤモンドホイルにて切削加工して
図4、5示すようなツバ部厚みt:0.3mm、長さlの
コイル用の低背薄型ドラム型コアを作製し、更に104
0℃で焼成を行って焼結体を得た。この焼結体を、図5
に示す様な水平方向にチャックしたコア材を鍔部内l1
=0.7mmの位置で、垂直方向から加圧する方法にて、
鍔部の強度測定を行った。測定結果を表3に示す。本結
果から判るように、本発明により得られた軟磁性フェラ
イト粉末を用いたフェライトコアは高い強度を有し、直
径2mm以下のコア状や厚さ1mm以下の板状等の形状に好
適に使用可能である。
【0080】
【表3】
【0081】〔実施例6〜10〕 Fe23 :48モル%、 MnO : 4モル%、 MgO :26モル%、 CuO : 1モル%、 ZnO :21モル% の比率となるようにこれらの酸化物を秤量し、湿式メデ
ィア攪拌型粉砕機を用いて4時間湿式混合した。この湿
式混合には、分散媒として純水を用いた。
【0082】次いで、混合物をスプレードライヤーによ
り乾燥し、1000℃で2時間仮焼して、Mn−Mg−
Cu−Znフェライトの仮焼物を得た。
【0083】この仮焼物を純水と混合して、粉砕用スラ
リーを調整した。この粉砕用スラリー中の固形分(仮焼
物)濃度は、33質量%とした。なお、スラリー中に
は、表4に示すように、有機添加剤、またはこれとアン
モニアとを添加した。なお、アンモニアは、濃度50質
量%のアンモニア水として添加した。表4に示す有機添
加剤およびアンモニアの添加量は、仮焼物に対する添加
量である。
【0084】この粉砕用スラリーを、湿式メディア攪拌
型粉砕機で7時間粉砕した後、スプレードライヤーで乾
燥することにより、Mn−Mg−Cu−Znフェライト
粉末を得た。この粉砕により、フェライト粉末の比表面
積は2.8m2 /g (平均粒径1.7μm)となった。
粉砕後、スラリー中の金属イオンをICP発光分析法に
より測定し、仮焼物に対するCuイオンおよびFeイオ
ンそれぞれの質量比を求めた。結果を表4に示す。
【0085】
【表4】
【0086】次いで、このフェライト粉末100gに、
バインダーとしてポリビニルアルコール1.0gを添加
して混合し、顆粒とした。この顆粒を、98MPa(10
00kgf/cm2 )の圧力でプレス成形し、長さ55mm、幅
12mm、高さ5mmの直方体状のブロック成形体を得た。
この成形体を、焼成温度1300℃で2時間保つことに
より焼成し、Mn−Mg−Cu−Znフェライト焼結体
を得た。得られた焼結体の密度は4.7g/cm3 であっ
た。この焼結体の抗折強度を加重試験機(アイコーエン
ジニアリング社製)を用いてJIS R1601に規定
されている方法に従い測定した。測定結果を表5に示
す。
【0087】
【表5】
【0088】〔比較例2〕粉砕用スラリーに有機添加剤
およびアンモニアのいずれも添加しなかったほかは上記
実施例と同様にして焼結体を作製し、上記実施例と同様
な測定を行った。測定結果を表5示す。なお、上記実施
例と同様にしてスラリー中のイオン量を測定した結果、
CuイオンおよびFeイオンは検出されなかった。
【0089】表5から、本発明の効果が明らかである。
すなわち、軟磁性フェライト粉末を製造する際の湿式粉
砕工程において、スラリー中に所定の有機添加剤を添加
した実施例6〜10では、強度が大幅に向上したフェラ
イト焼結体が得られている。一方、有機添加剤を添加し
なかった比較例2では、フェライト焼結体の強度は、実
施例6〜10に比べ大きく劣っている。
【0090】〔実施例11〜14、比較例3〜6〕実施
例1と同様にグルコン酸0.5%添加し、作製したNi
−Cu−Zn系フェライト粉末66質量部、水28質量
部を、表6に示す条件で作製した固形分濃度12質量%
のポリビニルアルコール水溶液6質量部、および分散剤
としてポリカルポン酸アンモニウム塩0.3質量部を湿
式混合してフェライトスラリーを作製した。このスラリ
ーをスプレードライヤーにて噴霧造粒し、平均粒径10
0μm の球形顆粒を得た。
【0091】この顆粒を245MPa(2500kgf/cm
2 )の圧力でプレス成形し、長さ55mm、幅12mm、高
さ5mmの直方体状のブロック成形体を得た。この成形体
の抗折強度を加重試験機(アイコーエンジニアリング社
製)を用いてJISR1601に規定されている方法に
従い測定した。また、この成形体を焼成温度1060℃
で2時間保つことにより焼成し、焼結体を得た。この焼
結体の焼結密度を測定し、さらに抗折強度を上記と同様
にして測定した。結果を表6に示す。
【0092】
【表6】
【0093】上記表6から明らかなように、成型体抗折
強度、焼結体密度、焼結体抗折強度において満足する値
を得るには、バインダーであるPVAの鹸化度、重合度
に最適値があることが解る。
【0094】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、さらなる
低温焼成を可能とし、しかも高い焼結密度と、抗折強度
が得られる軟磁性フェライト粉末およびフェライトコア
の製造方法を提供し、この方法により得られた高強度の
フェライトコアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フェライトコアの形状の一例を示す斜視図で、
(a)は円柱状のコア、(b)はドラム型コア、(c)
ハウス型のドラム型コアを示している。
【図2】フェライトコアの形状の別の例を示す斜視図
で、(a)は板状のコア、(b)は箱状のコアを示して
いる。
【図3】Ni−Cu−Znフェライトコアについて、焼
成温度と焼結体の密度との関係を示したグラフである。
【図4】薄型フェライトコアの形状の寸法関係を示す外
観斜視図である。
【図5】ドラム型フェライトコアのツバ強度の測定方法
を示す概略断面図である。

Claims (25)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 原料粉末の仮焼物と水とを含むスラリー
    中に、有機添加剤を存在させる工程を設け、 前記有機添加剤として、水酸基およびカルボキシル基を
    有する有機化合物またはその中和塩もしくはそのラクト
    ンを用いるか、ヒドロキシメチルカルボニル基を有する
    有機化合物、酸として解離し得るエノール型水酸基を有
    する有機化合物またはその中和塩を用い軟磁性フェライ
    ト粉末とし、 これを成型した後、焼成してフェライトコアを得るフェ
    ライトコアの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記軟磁性フェライト粉末が、Feおよ
    びCuを含有する請求項1のフェライトコアの製造方
    法。
  3. 【請求項3】 前記軟磁性フェライト粉末を用いて成型
    する際に、この軟磁性フェライト粉末を含むスラリー中
    にバインダーとしてポリビニルアルコールを添加し、造
    粒し、成型する請求項1または2のフェライトコアの製
    造方法。
  4. 【請求項4】 前記ポリビニルアルコールの平均鹸化度
    が88〜98モル%である請求項3のフェライトコアの
    製造方法。
  5. 【請求項5】 前記ポリビニルアルコールの平均重合度
    が500〜1700である請求項3または4のフェライ
    トコアの製造方法。
  6. 【請求項6】 前記有機添加剤の添加量が、仮焼物に対
    し0.05〜3.0質量%である請求項1〜5のいずれ
    かのフェライトコアの製造方法。
  7. 【請求項7】 前記スラリー中に、前記仮焼物に由来す
    るFeイオンおよび/またはCuイオンが、合計で前記
    仮焼物の0.005〜2.0質量%含まれる請求項1〜
    6のいずれかのフェライトコアの製造方法。
  8. 【請求項8】 前記水酸基およびカルボキシル基を有す
    る有機化合物が、グルコン酸またはクエン酸である請求
    項1〜7のいずれかのフェライトコアの製造方法。
  9. 【請求項9】 前記酸として解離し得るエノール型水酸
    基を有する有機化合物が、アスコルビン酸である請求項
    1〜8のいずれかのフェライトコアの製造方法。
  10. 【請求項10】 前記スラリー中にアンモニアが添加さ
    れている請求項1〜9のいずれかのフェライトコアの製
    造方法。
  11. 【請求項11】 焼成温度1040℃以下で焼成する請
    求項1〜10のいずれかのフェライトコアの製造方法。
  12. 【請求項12】 請求項1〜11のいずれかの方法によ
    り得られたフェライトコア。
  13. 【請求項13】 NiZn系フェライトである請求項1
    2のフェライトコア。
  14. 【請求項14】 巻線またはこれと同等な導電体を巻回
    してインダクタまたはノイズ抑制部材とする請求項12
    または13のフェライトコア。
  15. 【請求項15】 焼結密度が理論密度の95%以上であ
    る請求項13または14のフェライトコア。
  16. 【請求項16】 前記焼結密度が5.20g/cm3 以上で
    ある請求項15のフェライトコア。
  17. 【請求項17】 3点曲げ法による抗折強度が12kgf/
    mm2 以上である請求項13〜16のいずれかのフェライ
    トコア。
  18. 【請求項18】 直径2mm以下のコア状部分を有する請
    求項12〜17のいずれかのフェライトコア。
  19. 【請求項19】 厚さ1mm以下の板状部分を有する請求
    項12〜18のいずれかのフェライトコア。
  20. 【請求項20】 MnZn系の軟磁性フェライト粉末を
    製造する方法であって、 原料粉末の仮焼物と水とを含むスラリー中に、有機添加
    剤を存在させる工程を設け、 前記有機添加剤として、水酸基およびカルボキシル基を
    有する有機化合物またはその中和塩もしくはそのラクト
    ンを用いるか、ヒドロキシメチルカルボニル基を有する
    有機化合物、酸として解離し得るエノール型水酸基を有
    する有機化合物またはその中和塩を用いる軟磁性フェラ
    イト粉末の製造方法。
  21. 【請求項21】 請求項20の方法により得られた軟磁
    性フェライト粉末により形成されたフェライトコア。
  22. 【請求項22】 巻線またはこれと同等な導電体を巻回
    してインダクタ、トランスまたはノイズ抑制部材とする
    請求項21のフェライトコア。
  23. 【請求項23】 焼結密度が理論密度の93%以上であ
    る請求項21または22のフェライトコア。
  24. 【請求項24】 前記焼結密度が4.70g/cm3 以上で
    ある請求項21〜23のいずれかのフェライトコア。
  25. 【請求項25】 3点曲げ法による抗折強度が9kgf/mm
    2 以上である請求項21〜24のいずれかのフェライト
    コア。
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