JP2003338085A - 光記録媒体及びその製造方法 - Google Patents

光記録媒体及びその製造方法

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JP2003338085A
JP2003338085A JP2002150715A JP2002150715A JP2003338085A JP 2003338085 A JP2003338085 A JP 2003338085A JP 2002150715 A JP2002150715 A JP 2002150715A JP 2002150715 A JP2002150715 A JP 2002150715A JP 2003338085 A JP2003338085 A JP 2003338085A
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Kazunori Ito
和典 伊藤
Masato Harigai
眞人 針谷
Koji Deguchi
浩司 出口
Hiroko Tashiro
浩子 田代
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 反射放熱層又は半透明反射放熱層にAgを主
成分とする材料を用いて、高線速のもとでの良好な記録
特性と熱伝導度を低下させることなく耐腐食性を向上さ
せて良好な保存安定性とを両立し、コストが低く大量生
産に適した光記録媒体とその製造方法を提案する。 【解決手段】 レーザー光の照射により結晶状態および
非晶質状態の可逆的な相変化により情報が記録・再生さ
れる記録層13を透明基板11上に積層する光記録媒体
10において、前記光記録媒体10は、少なくとも記録
層13に積層される反射放熱層15を備え、前記反射放
熱層15は、Ag又はAg合金からなり、かつ、面内方
向の平均結晶粒径が0.15μm以下である光記録媒体
10とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レーザー光等の光
照射により、記録層における金属・非晶質状態の相変化
を利用することで情報の記録・消去・再生を行う光記録
媒体とその製造方法に関する。さらに詳細には、記録層
の上に形成される反射放熱層及び/又は半透明反射放熱
層の高速記録条件での安定性が高く、かつ耐食性を向上
させることで保存安定性の高い光記録媒体とその製造方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】情報を大容量に記録することが可能で、
高速での再生及び繰り返し記録が可能な媒体として、種
々の形式のCD(コンパクトディスク)、DVD(デジ
タルバーサタイルディスク)で開発されている。これら
の光記録媒体は、レーザー光を局所的に照射することに
より、記録層に生じる結晶状態と非晶質状態の可逆的相
変化を利用して記録したものである。すなわち、特定波
長の光に対する反射光量が、結晶状態と非晶質状態で異
なることを記録として利用しており、簡単な光学系で記
録が可能であり、さらに既に記録された情報を消去しな
がら新たな情報を容易に記録することが可能であるとい
う優れた特徴を有している。一般的に、繰り返し記録が
可能な光記録媒体では、記録層における非晶質状態を記
録状態とし、結晶状態を消去状態としている。情報の記
録は、レーザー光を照射し記録層を溶融、急冷し、非晶
質の記録マークを形成することにより行なう。そして、
記録された信号の再生は、非晶質部分と結晶部分の反射
率の違いを利用して、ディスクからの反射光量の変化を
検出することにより行う。
【0003】近来、このような光記録媒体に対しては、
さらに高速においても良好な書換えを実現すると同時
に、記録した情報を長期間にわたって再生できる保存安
定性が高いことが求められている。光記録媒体の反射放
熱層としては、従来Al合金が多く用いられているが、
近年、これに変わる材料としてAg又はAg合金が用い
られる場合がある。現在のDVD−ROMの1倍速、あ
るいはそれ以上の速い線速で記録する場合、AgはAl
合金に比べて熱伝導度が高いので、Al合金を用いる場
合よりも急冷条件を作りやすく、高線速記録にも適して
いる。しかしながら、AgはAl合金に比べて化学的安
定性が低く、隣接する層と化学反応を起こす場合があ
る。特に、隣接する層がSを含む場合は硫化が起きやす
い。また、反射放熱層と隣接する層の間に水分やSなど
の不純物が存在すると、バブル状の欠陥や薄層の膜浮き
等の原因となる。これは、恒温槽等で保存加速度試験を
行なうと顕著に現れ、保存安定性が問題となる。
【0004】さらに、最近は、貼り合わせ構造を有する
DVDがさまざまな分野で使用されるようになってい
る。DVDには、種々の形式があり、例えば、再生専用
のDVD−ROMやDVD−Movie、追記型のDV
D−R、記録再生型のDVD−RAM、DVD−RW、
DVD+RWがある。現在、DVD−ROMの形式に
は、DVD−5、DVD−10、DVD−9が提案され
ている。DVD−5は、一方の基板上に情報記録ピット
を有し、ピット上に反射放熱層を形成し、該反射放熱層
面にもうひとつの基板と接着剤にて貼り合わせた構造で
あり、光入射面が1方向のDVDである。DVD−10
は、2枚のDVD−5基板それぞれの反射放熱層面を接
着剤にて貼り合わせた構造であり、光入射面が2方向の
DVDである。DVD−9は、情報記録ピットを有する
2枚の基板のうち、光入射面側から見て手前にくる基板
の反射放熱層を半透明とし、それぞれの基板を反射放熱
層で貼り合わせる構造であり、光入射面は1方向で、光
入射面側から奥側に存在する情報記録ピットが手前にあ
る基板を透過して読み取るDVDである。
【0005】これらの中でも、DVD−9はほぼDVD
−5の2倍の容量を有し、DVD−10と違い光入射面
が1方向であることから、ディスクの表裏を交換するこ
と無く、記録されているデータを読み取ることができ
る。このような特徴から特に映像関係の用途によく用い
られる。DVD−9において用いられる半透明反射放熱
層の材料としては、AuやAg、Si及びSi化合物
(例えばSiN等)等の薄膜を用いることが提案されて
いる。この中でAuは化学的に安定であり半透明反射放
熱層としての機能に優れているが、コストが高く、機械
的強度に弱いという欠点がある。一方、Si或いはSi
化合物については最も低コストである利点を有するが、
層にクラックが入りやすく信頼性に欠けるという問題点
がある。そこで、比較的低コストであり、クラックの問
題を発生しないAgを半透明反射放熱層に利用する要望
が高まってきたが、上述したようにAgは水分やSによ
る腐食性に乏しいために、保存安定性が問題となる。
【0006】したがって、Agの熱伝導度を低下させる
ことなく、保存安定性を向上させることが必要とされて
おり、これまでに、光記録媒体のAgの耐腐食性を向上
させるいくつかの方法が提案されている。例えば、特開
2000−228032号公報によれば、AgCu、A
gCuTi、AgCuTaを用いると耐食性が向上する
ことが報告されている。特願平11−25515号公報
によれば、銀にルテニウム合金を添加、あるいは銀にル
テニウムとロジウム、パラジウム、イリジウム、白金、
金を添加することで耐食性が向上することが提案されて
いる。さらに、特開2000−149327号公報で
は、Agの耐食性を向上させる方法として、微量の任意
の金属を混合してAg合金とすることで半透明反射層に
使用する方法が提案されている。しかしながら、材料を
合金化することはコストがかかり、大量生産に適してい
ない。
【0007】また、特開平11−238253号公報に
よれば、記録層の保護層としてZnS−SiO、隣接
する反射層としてAgを使用した場合に、硫化物が生成
されることを防ぐためにAgと保護層の間に化合物を生
成しない中間層を設けることが提案されている。しかし
ながら、層を増やすことはディスクの製造工程数を増や
す必要があり、製品のコストアップにつながる。特開2
001−226643号公報では、半透明反射放熱層に
用いたAgまたはAg合金を保護する紫外線硬化型組成
物を特定の材料にすることで腐食を防ぐ方法が提案され
ている。しかし、Agの腐食は、空気中に含まれる水分
やガス、Sと反応を起こす場合がある。したがって、A
gによる反射放熱層又は半透明反射放熱層を製造する工
程で、水分等の不純物が混入して、膜浮きやバブル状の
欠陥が発生する場合がある。このような製造工程におけ
る不純物の混入を完全に防ぐことは困難であり、中間層
を設けることは根本的な対策になっていない。また、特
開2000−195103号公報では、CD−Rメディ
アの反射放熱層又は半透明反射放熱層に窒素を添加する
ことで耐久性を向上させることが提案されている。しか
し、窒素を添加することで反射放熱層又は半透明反射放
熱層の熱伝導を低下させるために、高線速化に対応でき
ないという問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の課題
は、反射放熱層又は半透明反射放熱層にAgを主成分と
する材料を用いて、高線速のもとでの良好な記録特性と
熱伝導度を低下させることなく耐腐食性を向上させて良
好な保存安定性とを両立し、コストが低く大量生産に適
した光記録媒体とその製造方法を提案することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、請求項1に記載の発明は、レーザー光の照射により
結晶状態および非晶質状態の可逆的な相変化により情報
が記録・再生される記録層を透明基板上に積層する光記
録媒体において、前記光記録媒体は、少なくとも記録層
に積層される反射放熱層を備え、前記反射放熱層は、A
g又はAg合金からなり、かつ、面内方向の平均結晶粒
径が0.15μm以下である光記録媒体とする。請求項
2に記載の発明は、請求項1に記載の光記録媒体におい
て、前記光記録媒体は、透明基板上に少なくとも第一保
護層/記録層/第二保護層/反射放熱層/オーバーコー
ト層からなる光記録媒体とする。
【0010】請求項3に記載の発明は、第一透明基板上
に少なくとも半透明反射放熱層と記録層からなる情報層
を形成し、第二透明基板上に少なくとも反射放熱層と記
録層とからなる情報層を形成し、各基板を貼り合わせる
光記録媒体であって、情報層は合わせて2層以上積層さ
れ、同一方向からのレーザー光の照射によって情報の再
生がなされる光記録媒体において、前記光記録媒体は、
半透明反射放熱層がAg又はAg合金からなり、かつ、
面内方向の平均結晶粒径が0.15μm以下である光記
録媒体とする。請求項4に記載の発明は、請求項3に記
載の光記録媒体は、DVD−ROMメディアであり、形
式がDVD−9である光記録媒体とする。
【0011】請求項5に記載の発明は、請求項1ないし
4のいずれかに記載の光記録媒体において、請求項1又
は2に記載の反射放熱層又は請求項3又は4に記載の半
透明反射放熱層は、θ−2θ法を用いたX線回折におけ
る回折角2θの値が44.2±0.5(°)の位置に回折
スペクトルが現れる光記録媒体とする。請求項6に記載
の発明は、請求項5に記載の光記録媒体において、前記
反射放熱層又は前記半透明反射放熱層は、X線回折にお
ける(111)面の回折スペクトルの半値幅Δ2θが、
0.45以上である光記録媒体とする。請求項7に記載
の発明は、請求項5又は6に記載の光記録媒体におい
て、前記反射放熱層又は前記半透明反射放熱層は、X線
回折における(200)面と(111)面との回折スペ
クトルのピーク比(200)/(111)が、0.1〜
1である光記録媒体とする。
【0012】請求項8に記載の発明は、請求項1ないし
7のいずれかに記載の光記録媒体において、前記記録層
は、構成する材料のうち原子比率0.9以上が式(1)
で表される光記録媒体とする。 XαSbβTeγ……式(1)(式(1)中、XはIn
及び/又はGaであり、α、β、γは原子比率を表し、
0.01≦α≦0.1、0.6≦β≦0.9、γ=1−
α―βである) 請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の光記録媒体
において、前記記録層は、Geを含む光記録媒体とす
る。請求項10に記載の発明は、請求項8又は9に記載
の光記録媒体において、前記記録層は、Agを含む光記
録媒体とする。
【0013】請求項11に記載の発明は、レーザー光の
照射により結晶状態および非晶質状態の可逆的な相変化
により情報が記録される記録層を透明基板上に積層する
光記録媒体の製造方法において、請求項1ないし10の
いずれかに記載の光記録媒体における前記反射放熱層又
は前記半透明反射放熱層は、スパッタリング法により製
造される光記録媒体の製造方法とする。請求項12に記
載の発明は、請求項11に記載の光記録媒体の製造方法
において、前記スパッタリング法に用いるスパッタガス
は、ArガスとArの原子半径より小さい原子半径の元
素もしくはArの原子半径より小さい分子半径の分子を
含むガスとの混合ガスである光記録媒体の製造方法とす
る。請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の光
記録媒体の製造方法において、前記スパッタリング法に
用いるスパッタガスは、ArガスとNガスとの混合ガ
スである光記録媒体の製造方法とする。請求項14に記
載の発明は、請求項13に記載の光記録媒体の製造方法
において、前記スパッタリング法に用いるスパッタガス
は、混合比N/(Ar+N)が5%以上である光記
録媒体の製造方法とする。請求項15に記載の発明は、
請求項14に記載の光記録媒体の製造方法において、前
記スパッタリング法は、スパッタパワーが5kW以下で
ある光記録媒体の製造方法とする。
【0014】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を図
面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施
形態である光記録媒体の構成を示す図である。本発明の
光記録媒体10は、透明基板11上に少なくとも記録層
13に積層される反射放熱層15を備えている。透明基
板11としては、ガラス、セラミックス、又は樹脂が用
いられるが、成形の点で樹脂基板が好ましい。特に、加
工性、光学特性に優れ、ディスク状で表面にトラッキン
グ用の案内溝を有する直径12cm、厚さ0.6mmの
ポリカーボネート基板が好適である。
【0015】記録層13は、Sb−SbTe擬二元
系記録層材料でSb70Te30近傍に共晶点を持ち、
この近傍の組成のSb−Te系は繰り返し記録を行なっ
ても偏析が生じ難く、繰り返し記録特性に優れている。
しかし、この記録層材料を用いてDVD−ROMの再生
線速の2〜5倍にあたる7〜17.5m/sで繰り返し
記録を行うと、ジッターが10%を越え、モジュレーシ
ョンは50%以下となってしまう。ここで、ジッターと
は、σ(data to clock jitter)を検出窓幅Twで規格
化した値を呼ぶ。そこで、Sb−Te系にIn及び/又
はGaを添加することにより、初期結晶化済みの光記録
媒体10に対して、7〜17.5m/sでレーザー光を
照射したとき、非晶質マークを可逆的に記録することが
可能となり、10%以下のジッター、60%以上のモジ
ュレーションを得ることができる。ここで、In、Ga
は、記録層の結晶化速度を向上させ、高速での繰り返し
記録を可能にする効果を有する。また、結晶化温度を高
め、保存安定性を向上させる効果を有している。In及
び/又はGaの添加量は、原子比率でSb−Te合金全
体の0.01より少ないと効果が現れず、0.1を越え
ると、繰り返し記録を行った場合に偏析が起き、ジッタ
ーが上昇する原因となる。更に、初期結晶化後の反射率
が均一にならないといった弊害も起きる。
【0016】また、記録を行う線速に応じた結晶化速度
を持つ記録層13を得るためには、In及び/又はGa
とSb、Teの組成比を適切に調整する必要がある。好
ましい組成比としては、Sb−Te系全体に対する比率
で、In及び/又はGaが0.01〜0.1、Sbが
0.6〜0.9であれば、高線速記録、保存安定性に優
れた光記録媒体10を提供できる。(In及び/又はG
a)−Sb−Te系に対してGeを添加すると保存安定
性が一層向上し、Agを添加すると初期化が容易にな
る。但し、(In及び/又はGa)−Sb−Te系に添
加されるAgやGeの比率は、合計で0.1以下とする
必要がある。これより多くなると、記録層13の記録感
度の低下や繰り返し記録を行なった場合の偏析を生じ、
ジッターが上昇する原因となる。
【0017】反射放熱層15は、高線速においても良好
な記録特性を達成するために、Ag又はAg合金(以
下、単に「Ag」と記す。)を主成分とした材料を用い
る。主成分とは、Ag又はAg合金を最も多く含有する
ことを意味し、Agのみからなる場合も含むものとす
る。現在、DVD−ROMと同等以上の高密度記録が可
能であり、DVD−ROMの再生線速と同等以上の高線
速記録に適した光記録媒体10が求められている。非晶
質マークの形成は、レーザー光の照射により記録層13
を溶融させ、臨界冷却速度以上の速さで冷却することで
行う。そこで、媒体の層構成を急冷構造にする必要があ
る。Agは熱伝導度が高いために放熱の効果があり、急
冷構造を必要とする反射放熱層15に適している。反射
放熱層15は、その面内方向の平均結晶粒径を0.15
μm以下とすることで、反射放熱層15とその上に設け
られることがあるオーバーコート層16の密着性が強く
高い耐腐食性を備えた光記録媒体10を得ることが出来
る。平均結晶粒径が0.15μmより大きいとAg粒子
の境界から不純物が侵入しやすく、耐腐食性が弱くな
る。反射放熱層15は、Agの層厚は、50〜300μ
mの範囲が好ましい。50μm未満では、薄いためにレ
ーザー光が反射率が低く、300μmを越えると効果が
飽和して経済性として不利になる。
【0018】さらに、本発明の光記録媒体10は、透明
基板11上に少なくとも第一保護層12/記録層13/
第二保護層14/反射放熱層15/オーバーコート層1
6を積層した構成である。さらに、この上に別の基板を
貼り合わせてもよい。また、第二保護層14と反射放熱
層15との間に、第三保護層を設けてもよい。第一保護
層12は、透明基板11及び記録層13と密着性が良い
こと、耐熱性が高いことなどを要求される。また、記録
層13の効果的な光吸収を可能にする光干渉層としての
役割も担うことから、高速での繰り返しに適した光学特
性を有することが好ましい。材料としては、ZnSの単
体、又はZnSとSiO、Al、Ta
ZrO、ZnOなどの混合物が挙げられる。第二保護
層14は、記録層13及び反射放熱層15との密着性が
良いこと、耐熱性が高いことなどが要求される。また、
第一保護層12と同様に、記録層の効果的な光吸収を可
能にする光干渉層としての役割も担うことから、高速で
の繰り返し記録に適した光学特性を有することが好まし
い。材料としては、前記第一保護層12のところで例示
したものと同じものを用いることが出来る。オーバーコ
ート層16は、紫外線硬化樹脂などの種々の材料を用い
ることができる。 さらに、必要に応じて反射放熱層1
5と第二保護層14の間に第三保護層を設けても良い。
この層は反射放熱層15と隣接する保護層の材料にSが
含まれる場合、Sと反射放熱層に含まれるAgが反応し
硫化銀が形成されることを防ぐ効果を備えている。
【0019】図2は、本発明の他の実施形態である光記
録媒体の構成を示す図である。本発明の光記録媒体20
は、第一透明基板21上に少なくとも半透明反射放熱層
22と記録層26とからなる情報層30を形成し、第二
透明基板25上に少なくとも反射放熱層24と記録層2
7からなる情報層31を形成し、情報層30、31は合
わせて2層以上積層され基板が外側になるように貼り合
わせた構成の光記録媒体20であってもよい。また、こ
れらの透明基板21、25には、図示しない保護層の上
に情報層30、31を設けるものであっても、また情報
層の上に保護層、オーバーコート層を設けてもよい。こ
こで、半透明反射放熱層22は、Agからなる薄膜を第
一透明基板21上に形成したものであり、半透明反射放
熱層22表面のAgの平均結晶粒径が0.15μm以下
である。半透明反射放熱層22表面の平均結晶粒径を
0.15μm以下とすることで、半透明反射放熱層22
表面の凹凸が小さくなり、かつ粒界も小さくなることか
ら、表面や層厚方向の耐食性を向上させることができ
る。さらに、粒径が小さくなりすぎると半透明反射放熱
層22の反射率が低下してしまうため、更に適した平均
結晶粒径は0.05〜0.15μmの範囲が望ましい。
半透明反射放熱層22は、Agの層厚が、0.01〜
0.02μmの範囲が好ましい。0.01μm未満で
は、放熱性が低く、また、耐久性に対する効果が小さ
い。0.02μmを越えるとレーザー光の透過性が低く
なり不利になる。なお、貼り合わせた構成の光記録媒体
の反射放熱層24をAg又はAg合金によるものであっ
てもよい。
【0020】本発明の光記録媒体20は、特に、限定さ
れるものではなく、CD、DVDのいずれの形式であっ
てもよい。さらに、記録層26、27は、再生専用型、
1回記録が可能な追記型、書き換え可能な記録再生型の
いずれの形式であってもよい。記録層20の材料も、金
属状態と非晶質状態の相変化を利用して、そのレーザー
光の反射率の変化を利用するするものであっても、金属
材料としてTe系を用いたものであっても、有機材料と
してポリメチン系、環状アザアヌレン系等の色素を用い
るものであってもよい。いずれにおいても、記録層2
6、27のピット、表面の光の反射をとらえて情報を再
生するもので、本発明のAgによる反射放熱層15又は
半透明反射放熱層22では記録層26、27の材料、形
態にはとらわれない。従って、本発明の光記録媒体20
としては、DVD−ROMで、その形式がDVD−9の
場合にも用いることができる。
【0021】また、上述のAgよりなる反射放熱層15
又は半透明反射放熱層22は、θ−2θ法を用いたX線
回折において、Agの結晶状態が(111)面に配向し
ていないものが好ましい。(111)面に配向していな
いことは、入射X線の延長と回折線との角、すなわち回
折角2θの値が44.2±0.5(°)の位置に、少な
くとも回折スペクトルが現れる。反射放熱層15又は半
透明反射放熱層22のAgの構造は面心立方格子(fc
c)であり、44.2±0.5(°)の位置は(20
0)面に相当するピークである。このピークが現れてい
ない場合、反射放熱層15又は半透明反射放熱層22に
おけるAgが非晶質構造となっているか又は(111)
面に強い配向性を持つことが考えられる。Agが非晶質
構造の場合、熱伝導度が低くなり高線速において良好な
記録特性が得られない。また、強い配向性を持つ場合に
はAg粒子が結晶粒優先成長方向と一致するために、粗
大化していると考えられ、耐腐食性が低い。したがっ
て、非晶質構造ではない結晶状態であっても、(11
1)面に配向性を有しない構造にすることで熱伝導度の
高くして高線速であっても良好な記録特性を有する光記
録媒体にすることができる。
【0022】また、反射放熱層15又は半透明反射放熱
層22におけるX線回折において、(200)面と(1
11)面のピーク比(200)/(111)が、0.1
〜1であるとさらに高い耐腐食性を持ち保存安定性が高
い反射放熱層15又は半透明反射放熱層22を得られ
る。Agの構造は面心立方格子であり、(200)面と
(111)面のピークは、回折角2θがそれぞれ44.
2±0.5(°)と38.1±0.5(°)の位置に現
れる。それぞれのピーク強度はバックグラウンドを差し
引いた値にして、ピーク比を計算した。ピーク比が0.
1より小さい場合、配向性が高くAg粒子が粗大化して
いると考えられ、耐腐食性が低い。1を越えるとAgの
熱伝導度が低く急冷構造の媒体が得られないので高線速
における記録が困難である。
【0023】また、反射放熱層15又は半透明反射放熱
層22におけるX線回折において、X線回折スペクトル
で得られたピークの半値幅Δ2θは評価した材料の平均
結晶粒径に関係した値であるが、(111)面の半値幅
Δ2θは0.45以上が望ましい。但し、大きすぎると
反射放熱層15又は半透明反射放熱層22の反射率が低
下してしまうため、更に適した半値幅Δ2θは0.45
〜0.6の範囲である。
【0024】また、上述の反射放熱層15又は半透明反
射放熱層22は、Agを主成分としたターゲットを用い
てスパッタリング法により形成されると、短時間で層厚
や層構造を精度良く作製することができ、大量生産に適
している。スパッタリング法の中でも、特に、DCスパ
ッタリング法を用いることが望ましい。これは、スパッ
タリング法の中でもDCスパッタリング法は成膜レート
が高くスループットに優れ、放電の安定性もRFスパッ
タリング法に比べて優れているためである。DCスパッ
タリング法による形成条件としては、スパッタガスとし
て、Arガスと、Arの原子半径より小さい原子半径の
元素、若しくはArの原子半径より小さい分子半径の分
子を含むガスと、からなる混合ガスを用いることが望ま
しい。これは一般にスパッタリング法でよく用いられる
Arガスに、Arの原子半径より小さい原子半径の元
素、若しくはArの原子半径より小さな分子半径の分子
を含むガス(以下、「添加ガス」と記す。)を混合して
スパッタすることで、反射放熱層15又は半透明反射放
熱層22のAg中に添加ガスが取り込まれ、その量によ
り反射放熱層15又は半透明反射放熱層22の配向性及
び結晶粒径を制御できるためである。但し、Ag中に取
り込まれることで効果が発揮されることから、Agと反
応性が高い元素や分子、例えば硫黄や酸素などを添加ガ
スとして用いることは適していない。添加ガスとして
は、具体的にはNガスが望ましい。Nガスは取り扱
いも容易であることから、添加ガスとしては最適であ
る。
【0025】また、その添加量は、ArガスとNガス
との混合比N/(Ar+N)が5%以上であること
が望ましい。更に望ましくは、5〜35%であり、いっ
そう好ましくは5〜20%である。これは窒素の添加量
が多すぎると反射率が低下するためである。また、Ar
ガス流量自体は本発明の効果に対しては特に制限するこ
とが無く、層形成速度や生産性において最適な条件を用
いることができる。また、DCスパッタリング法による
更なる形成条件としては、スパッタパワーが5kW以下
であることが望ましい。スパッタパワーは高い程層形成
速度が上がり生産性の向上に繋がるが、それと共にAg
の結晶性が向上する。従って、添加ガスの量も増やす必
要があるが、添加ガスをあまり増やし過ぎると反射放熱
層15又は半透明反射放熱層22自体の反射率を低下さ
せてしまう。以上のことから、スパッタパワーとしては
5kW以下が望ましく、更に望ましくは3〜5kWの範
囲である。
【0026】
【実施例】以下に、本発明を実施例に基づいてさらに具
体的に説明する。 (実施例1)トラックピッチ0.74μm、直径12c
m、厚さ0.6mmのポリカーボネート基板上に層厚8
0nmの(ZnS)80(SiO20からなる第一
保護層、層厚16nmのAg0.5In5.0Sb
68.5Te24.0Ge2.0からなる記録層、層厚
11nmの(ZnS)80(SiO20からなる第
二保護層、層厚140nmで放電パワー3kW、スパッ
タガスにArガス30sccmにNガスを3sccm
添加(Nガス分圧9%)したガスを用いたAgからな
る反射放熱層を、この順にそれぞれスパッタリング法に
より堆積させた。更に、反射放熱層上にスピナーによっ
てアクリル系紫外線硬化樹脂を厚さ5〜10μm塗布し
た後、紫外線硬化させオーバーコート層を形成した。更
にその上に、直径12cm、厚さ0.6mmのポリカー
ボネート基板を接着シートを用いて貼り合せた。以上の
ように作製したディスクを、口径1μm×100μmの
レーザーを用いて、出力800mW、送り36μm、線
速3m/sで初期結晶化を行ないディスク状光記録媒体
を得た。
【0027】(実施例2)反射放熱層又は半透明反射放
熱層のスパッタガスをArガス30sccmにN ガス
を5sccm添加(Nガス分圧14%)したガスに代
えた以外は、実施例1と同様にしてディスク状光記録媒
体を得た。 (実施例3)反射放熱層又は半透明反射放熱層のスパッ
タガスをArガス0sccmにNガスを3sccm添
加(Nガス分圧13%)したガスに代えた以外は、実
施例1と同様にしてディスク状光記録媒体を得た。 (実施例4)反射放熱層のスパッタガスをArガス20
sccmにNガスを5sccm添加(Nガス分圧2
0%)したガスに代えた以外は、実施例1と同様にして
ディスク状光記録媒体を得た。
【0028】(比較例1)反射放熱層のスパッタガスを
Arガス30sccm(Nガス分圧0%)に代えた以
外は、実施例1と同様にしてディスク状光記録媒体を得
た。 (比較例2)反射放熱層のスパッタガスをArガス30
sccmにNガスを1sccm添加(Nガス分圧3
%)したガスに代えた以外は、実施例1と同様にしてデ
ィスク状光記録媒体を得た。 (比較例3)反射放熱層のスパッタガスをArガス30
sccmにNガスを10sccm添加(Nガス分圧
25%)したガスに代えた以外は、実施例1と同様にし
てディスク状光記録媒体を得た。 (比較例4)反射放熱層のスパッタガスをArガス20
sccmにNガスを10sccm添加(Nガス分圧
33%)したガスに代えた以外は、実施例1と同様にし
てディスク状光記録媒体を得た。
【0029】以上の実施例1〜4及び比較例1〜4のデ
ィスク状光記録媒体について、記録特性評価を行なった
結果を表1に示す。記録再生の評価は波長660nm、
NA0.65のピックアップヘッドを用い、記録密度
0.267μm/bit、EFM+変調方式にて行っ
た。記録は線速8.5m/s、記録パワー13〜15m
W、バイアスパワー0.2mW、消去パワー6〜8mW
で、記録ストラテジは各ディスクに合わせて最適化して
行った。再生は全て線速3.5m/s、パワー0.7m
Wで評価した。初回記録、1000回繰り返し記録後の
ジッターが10%以下、反射率が18%以上、モジュレ
ーションが60%以上の場合を○とする。
【0030】
【表1】
【0031】実施例1〜4および比較例1、2は100
0回繰り返し記録後もジッター10%未満、反射率18
%以上、モジュレーション60%以上を示しており、良
好な記録特性が得られることを確認した。比較例3は1
000回繰り返し記録後のジッターが10%を越えてお
り、モジュレーションは初回記録、1000回繰り返し
記録後ともに60%を下回っており、十分な記録特性を
示していない。比較例4についても初回記録、1000
回繰り返し記録後ともに十分な記録特性を示していな
い。これは、Agの熱伝導度が小さくなり、記録マーク
の形成時に急冷が十分でなかったことが原因と考えられ
る。
【0032】次に、実施例1〜4及び比較例1〜4のデ
ィスク状光記録媒体について、Agの反射放熱層の構造
評価を行なった結果を示す。図3にスパッタガスのN
ガス分圧とAgによる反射放熱層の面内方向の平均結晶
粒径の関係を表す図を示す。平均結晶粒径はディスク状
光記録媒体のAg反射放熱層を接着テープで剥がし、そ
の表面のSEM観察を行なって求めた。スパッタガスが
Arガスのみの場合、平均結晶粒径が0.19μmだ
が、Nガスの分圧が増加するにつれて小さくなる傾向
がある。図4、5に実施例1、2のθ―2θ法を用いた
X線回折から得られたAg反射放熱層のそれぞれのX線
プロファイルを示す。サンプルはディスク状光記録媒体
のAg反射放熱層を接着テープで剥がし、ガラス基板に
貼りつけて作製した。X線回折にはCuKα線(λ=
1.54Å)を用いた。実施例1の2θのピークは、3
8.1°、44.3°、77.6°に現れ、実施例2は
38.1°、44.2°、77.3°に現れた。Agは
面心立方格子であり、それぞれ(111)、(20
0)、(311)面からのピークに相当する。図6にス
パッタガスのNガス分圧とAgによる反射放熱層のX
線プロファイルから求めたピーク比(200)/(11
1)の関係を表す図を示す。比較例1のNガス分圧が
0の場合、この位置にピークが現れず、強い配向性を示
していた。ピーク比はNガス分圧が増加するにつれて
高くなる傾向を示した。
【0033】次に、実施例1〜4及び比較例1〜4のデ
ィスク状光記録媒体について、保存加速度試験を行なっ
た。試験は、初回記録及び1000回繰り返し記録のマ
ークを書き込んだ後、40℃95%RHの恒温槽に10
0hour導入した。導入後、実体顕微鏡により膜面を
観察した。この結果、実施例1〜4及び比較例3、4に
関しては、Agの腐食による欠陥は確認されなかった。
また、実施例1〜4は保存試験後も保存試験前に書きこ
んだ記録マークは初回記録、1000回繰り返し記録後
ともに10%以下のジッター、18%以上の反射率、6
0%以上のモジュレーションを保っており、保存安定性
は高いことが分かった。比較例3、4は保存試験前と同
様、十分な記録特性を示さなかった。比較例1〜2に関
しては、実体顕微鏡により膜面を観察した結果、Agの
腐食によるバブル状の欠陥が現れており、保存安定性に
問題があることが確認された。AgのスパッタガスがA
rガスとNガスを含み、含まれるNガスの分圧によ
りAgの平均結晶粒径および膜構造を制御可能であり、
記録特性と保存安定性を満足するディスク状光記録媒体
を得られることが確認された。
【0034】(実施例5)記録層の組成をGe3.0
2.8Sb77.3Te16.9に代えた以外は、実
施例1と同様にしてディスク状光記録媒体を得た。 (実施例6)記録層の組成をAg1.0Ga4.3Sb
75.8Te18.9に代えた以外は、実施例1と同様
にしてディスク状光記録媒体を得た。
【0035】以上の実施例5〜6のディスク状光記録媒
体について、記録特性評価を行なった。初回記録、10
00回繰り返し記録後ともに10%以下のジッター、1
8%以上の反射率、60%以上のモジュレーションが得
られ、記録特性は良好であることが分かった。また、保
存加速度試験(40℃95%RHの恒温槽に100ho
ur導入)を行なってもAgの腐食による欠陥は現れな
かった。しかし、実施例5は保存試験前後で記録マーク
の変化が見られなかったが、実施例6は1000回繰り
返し記録後のマークのジッターが10.5%となり、上
昇が大きかった。これは、他の実施例に関しては記録層
にGeが含まれているので、記録マークの結晶化が抑え
られ保存加速度試験による劣化が少なかったと考えられ
る。更に、実施例1〜6のディスク状光記録媒体につい
て初期化後の反射率を比較したところ、実施例1〜4、
6は初期化後の反射率は18%を超えており、反射率の
周内分布はほぼ均一であった。これに対し、実施例5は
反射率は20%に達しているが反射率の周内分布が部分
的に15%程度まで落ち込んでいたが、実用上は問題が
ない。実施例1〜4、6は記録層にAgが含まれている
ので、初期化を均一に行なうことができる。
【0036】(実施例7〜12及び比較例5、6)図2
に示すような層構成のDVD−ROM(DVD−9)を
作製した。第一透明基板及び第二透明基板は、直径12
0mm、厚さ0.6mmの透明なポリカーボネート基板
であり、第一透明基板上にAg薄膜からなる半透明反射
放熱層を形成した。半透明反射放熱層の形成方法にはD
Cスパッタリング法を用い、表1に示すような形成条件
を用いた。なお、半透明反射放熱層の層厚は成膜時間を
調整する事で20nm一定とした。
【0037】
【表2】 第二透明基板上には反射放熱層としてAl合金の薄膜を
層厚100nmで形成した。半透明反射放熱層上に接着
剤をスピンコートして層厚40〜70μmの接着層を形
成し、第二透明基板を貼り合わせた後、第一透明基板側
から紫外線を照射する事により接着剤を硬化させた。
【0038】以上のように作製した各DVD−ROMの
半透明反射放熱層の記録情報について、半径40mmで
PIエラーの測定を行った。更に、80℃、95%R
H、100hrの加速試験をそれぞれの媒体について行
い、その結果PIエラーがどのように変化したかを評価
した。その結果を表3に示す。
【表3】 表3からわかるように、実施例7〜10は加速試験前後
でほとんど変化が無いのに比べて、実施例11と12が
増加しており、比較例5と6についてはPIエラーが大
幅に増加している。実施例11及び12は問題ない程度
の増加であったが、特に比較例5と6の加速試験後のP
Iエラーは実用上問題のあるレベルであった。
【0039】上記PIエラー増加の原因を調べる為に、
評価用サンプルとして表1の半透明反射放熱層と同様な
Agの半透明反射放熱層をガラス基板上に作製し、波長
650nmでの反射率をそれぞれ評価した。その結果を
表4に示す。ここでは比較例5の値を1として他の値を
規格化した。
【表4】 表4からわかるように、窒素導入と共に反射率が減少す
る傾向がみられた。実施例11と12のPIエラーが増
加したのはこれが原因と考えられる。
【0040】次に評価用サンプルに50℃、95%R
H、20hrの加速試験を行った後のAgの半透明反射
放熱層の顕微鏡観察を行った。その結果、比較例5と6
に相当するAgの半透明反射放熱層についてはピンホー
ルや変色が観察された。一方、それ以外のAgの半透明
反射放熱層についてはほとんど変化がなかった。比較例
5と6のPIエラーの増加はこの膜の変質が原因と考え
られる。この変質の原因を調べる為に、電子顕微鏡(S
EM)とX線回折装置を用いてAgの半透明反射放熱層
の作製条件とその膜の構造の関係について詳細な評価を
行った。表5にSEM観察による評価用サンプル(加速
試験前)の表面の平均結晶粒径をそれぞれ示す。平均結
晶粒径については4万倍に拡大された3μm四方の範囲
の粒径を任意に選択し、その平均値とした。
【0041】
【表5】 この結果とSEM観察結果から、平均結晶粒径は0.1
5μm以下になるとAgの半透明反射放熱層の変質が防
がれている事がわかる。これはAgの半透明反射放熱層
表面の粒径が小さくなる事でAgの半透明反射放熱層表
面の凹凸が小さくなり、かつ粒界も小さくなる事から、
Agの半透明反射放熱層表面や層厚方向の腐食を防ぐ事
ができた結果と考えられる。
【0042】次に、図7に測定したX線回折スペクトル
の一例を示す。これは比較例7と実施例9の結果であ
る。X線回折スペクトルは入射角をθとしてθ−2θ法
で測定した。2θ=38°付近にある大きなピークはA
g結晶の(111)面であり、2θ=44°付近にある
ピークが(200)面である。このスペクトルから比較
例5の薄膜は(111)面に強く配向している事がわか
る。一方、実施例9では比較例5よりも(111)面の
ピーク強度I(111)が小さくなり、(200)面の
ピーク強度I(200)が大きくなっており、(11
1)面への配向が崩れている事がわかる。また、(11
1)面での半値幅Δ2θも、比較例5よりも実施例9の
方が小さくなっている事がわかる。
【0043】このようなI(111)とI(200)、
及びそれらの比であるI(200)/I(111)と、
そして(111)面での半値幅Δ2θについて、それぞ
れの各作製条件との関係を図8及び図9に示す。図8か
らもわかるように、窒素量と共にI(111)は急激に
下がり、I(200)は増加する傾向にある。そして、
ほぼ同等の強度になる傾向にある。I(200)/I
(111)が0.1以上の場合にAgの半透明反射放熱
層の変質が防がれている事がわかる。これはAgの半透
明反射放熱層の結晶が(111)面に強く配向している
という事は、層厚方向に特定の配置にAg原子が並んで
いる事であり、Agの半透明反射放熱層表面からの浸透
を容易にすると考えられる。次に図9から窒素量と共に
(111)面での半値幅Δ2θが増加する傾向にある事
がわかる。Δ2θが0.45以上の場合にAgの半透明
反射放熱層の変質が防がれている事がわかる。これはS
EMでの観察結果から表面の粒径が小さい方が変質を防
ぐ事がわかったが、それに加えて層全体の粒径も小さい
方が望ましい事を示す。以上のことから、本発明の構成
を用いることで従来技術では実現できなかったAgの半
透明反射層を実現する事ができた。
【0044】(実施例13、14及び比較例7)実施例
7〜12及び比較例5、6と同様な光記録媒体を表6に
示すような層形成条件を用いて作製した。
【表6】
【0045】以上のように作製した各光記録媒体につい
て、実施例7〜12及び比較例5、6と同様に加速試験
前後のPIエラーを評価した。その結果を表7に示す。
比較の為に実施例1の結果も同様に示す。
【表7】
【0046】次に、実施例7〜12及び比較例5、6と
同様に、評価用サンプルとしてAgの半透明反射放熱層
をガラス基板上に作製し、波長650nmでの反射率を
それぞれ評価した。その結果を表8に示す。ここでは実
施例7の値を1として他の値を規格化した。
【表8】 以上の結果から、何れの反射率もほとんど違いがみられ
なかった。
【0047】次に、上記評価用サンプルのAgの半透明
反射放熱層について、実施例7〜12及び比較例5、6
と同様に加速試験を行い、SEM観察を行った。その結
果、比較例7に相当するAgの半透明反射放熱層につい
てはピンホールや変色が観察された。一方、それ以外の
Agの半透明反射放熱層についてはほとんど変化がなか
った事から、PIエラーの増加はこの層の変質が原因と
考えられる。この変質の原因を調べる為に、実施例7〜
12及び比較例5、6と同様に電子顕微鏡(SEM)と
X線回折装置を用いてAgの半透明反射放熱層の構造に
ついて詳細な評価を行った。
【0048】表9にSEM観察による評価用サンプル
(加速試験前)の表面の平均結晶粒径をそれぞれ示す。
【表9】 この結果から、比較例7については比較例5、6と同様
な結果であることがわかった。
【0049】次に、I(111)とI(200)、及び
それらの比であるI(200)/I(111)と(11
1)面での半値幅Δ2θについて、図10及び11に示
す。図10及び図11の結果から、比較例7の条件では
比較例5、6でみられた結果とほぼ同様であった。
【0050】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の光記録媒
体では、高い耐腐食性を備えることで良好な保存安定性
と高線速における良好な記録特性とを達成可能な反射放
熱層を備える光記録媒体を提供することができる。さら
に、初期化が容易で均一な初期化を行なうことが可能な
記録層を持つ光記録媒体を提供することができる。ま
た、本発明の光記録媒体では、耐食性を向上させ、従来
実現できなかった優れた半透明反射膜を実現し、コスト
を低減し、かつ信頼性の高い光記録媒体を提供すること
ができる。また、本発明の光記録場板の製造方法では、
良好な保存安定性と記録特性・信頼性とを両立する光記
録媒体を、精度良く大量に、さらに低コストで製造する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である光記録媒体の構成を
示す概略図である。
【図2】本発明の他の実施形態である光記録媒体の構成
を示す概略図である。
【図3】放電ガスのNガス分圧とAg反射放熱層の面
内方向の平均粒径の関係を表す図を示す。
【図4】実施例1のθ―2θ法を用いたX線回折から得
られたAg反射放熱層のX線プロファイルを示す。横軸
は入射X線の延長と回折線との角、すなわち回折角2θ
を示し、縦軸は回折強度を示す。
【図5】実施例2のθ―2θ法を用いたX線回折から得
られたAg反射放熱層のX線プロファイルを示す。
【図6】放電ガスのNガス分圧とAg反射放熱層のX
線プロファイルから求めたピーク比(200)/(11
1)の関係を表す図を示す。
【図7】測定したX線回折スペクトルの一例を示す図で
ある。
【図8】X線解析スペクトルのピーク強度と、DCスパ
ッタリング法による半透明反射層の形成条件との関係を
示す図である。
【図9】X線解析スペクトルの半値幅Δ2θと、DCス
パッタリング法による半透明反射層の形成条件との関係
を示す図である。
【図10】X線解析スペクトルのピーク強度と、DCス
パッタリング法による半透明反射層の形成条件との関係
を示す図である。
【図11】X線解析スペクトルの半値幅Δ2θと、DC
スパッタリング法による半透明反射層の形成条件との関
係を示す図である。
【符号の説明】
10、20 光記録媒体 11 透明基板 12 第一保護層 13 記録層 14 反射放熱層 15 第二保護層 16 オーバーコート層 18、28 レーザー光 21 第一透明基板 22 半透明反射放熱層 23 接着層 24 反射放熱層 25 第二透明基板 26、27 記録層 30、31 情報層
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G11B 7/26 531 B41M 5/26 X (72)発明者 針谷 眞人 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 出口 浩司 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 (72)発明者 田代 浩子 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 Fターム(参考) 2H111 EA03 EA04 EA12 EA23 EA40 FA12 FA18 FA23 FA37 FB05 FB09 FB12 FB17 FB21 GA03 5D029 JA01 MA13 MA14 MA27 RA01 5D121 AA05 EE03 EE17

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 レーザー光の照射により結晶状態およ
    び非晶質状態の可逆的な相変化により情報が記録・再生
    される記録層を透明基板上に積層する光記録媒体におい
    て、 前記光記録媒体は、少なくとも記録層に積層される反射
    放熱層を備え、 前記反射放熱層は、Ag又はAg合金からなり、かつ、
    面内方向の平均結晶粒径が0.15μm以下であること
    を特徴とする光記録媒体。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の光記録媒体におい
    て、 前記光記録媒体は、透明基板上に少なくとも第一保護層
    /記録層/第二保護層/反射放熱層/オーバーコート層
    からなることを特徴とする光記録媒体。
  3. 【請求項3】 第一透明基板上に少なくとも半透明
    反射放熱層と記録層からなる情報層を形成し、第二透明
    基板上に少なくとも反射放熱層と記録層とからなる情報
    層を形成し、各基板を貼り合わせる光記録媒体であっ
    て、 情報層は合わせて2層以上積層され、同一方向からのレ
    ーザー光の照射によって情報の再生がなされる光記録媒
    体において、 前記光記録媒体は、半透明反射放熱層がAg又はAg合
    金からなり、かつ、面内方向の平均結晶粒径が0.15
    μm以下であることを特徴とする光記録媒体。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の光記録媒体は、 DVD−ROMメディアであり、形式がDVD−9であ
    ることを特徴とする光記録媒体。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかに記載の
    光記録媒体において、 請求項1又は2に記載の反射放熱層又は請求項3又は4
    に記載の半透明反射放熱層は、θ−2θ法を用いたX線
    回折における回折角2θの値が44.2±0.5(°)の
    位置に回折スペクトルが現れることを特徴とする光記録
    媒体。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の光記録媒体におい
    て、 前記反射放熱層又は前記半透明反射放熱層は、X線回折
    における(111)面の回折スペクトルの半値幅Δ2θ
    が、0.45以上であることを特徴とする光記録媒体。
  7. 【請求項7】 請求項5又は6に記載の光記録媒体に
    おいて、 前記反射放熱層又は前記半透明反射放熱層は、X線回折
    における(200)面と(111)面との回折スペクト
    ルのピーク比(200)/(111)が、0.1〜1で
    あることを特徴とする光記録媒体。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし7のいずれかに記載の
    光記録媒体において、前記記録層は、構成する材料のう
    ち原子比率0.9以上が下記式(1)で表される XαSbβTeγ……式(1) (式(1)中、XはIn及び/又はGaであり、α、
    β、γは原子比率を表し、0.01≦α≦0.1、0.
    6≦β≦0.9、γ=1−α―βである)ことを特徴と
    する光記録媒体。
  9. 【請求項9】 請求項8に記載の光記録媒体におい
    て、 前記記録層は、Geを含むことを特徴とする光記録媒
    体。
  10. 【請求項10】 請求項8又は9に記載の光記録媒体
    において、 前記記録層は、Agを含むことを特徴とする光記録媒
    体。
  11. 【請求項11】 レーザー光の照射により結晶状態およ
    び非晶質状態の可逆的な相変化により情報が記録される
    記録層を透明基板上に積層する光記録媒体の製造方法に
    おいて、 請求項1ないし10のいずれかに記載の光記録媒体にお
    ける前記反射放熱層又は前記半透明反射放熱層は、スパ
    ッタリング法により製造されることを特徴とする光記録
    媒体の製造方法。
  12. 【請求項12】 請求項11に記載の光記録媒体の製造
    方法において、 前記スパッタリング法に用いるスパッタガスは、 ArガスとArの原子半径より小さい原子半径の元素も
    しくはArの原子半径より小さい分子半径の分子を含む
    ガスと の混合ガスであることを特徴とする光記録媒体
    の製造方法。
  13. 【請求項13】 請求項12に記載の光記録媒体の製造
    方法において、 前記スパッタリング法に用いるスパッタガスは、Arガ
    スとNガスとの混合ガスであることを特徴とする光記
    録媒体の製造方法。
  14. 【請求項14】 請求項13に記載の光記録媒体の製造
    方法において、 前記スパッタリング法に用いるスパッタガスは、混合比
    /(Ar+N)が5%以上であることを特徴とす
    る光記録媒体の製造方法。
  15. 【請求項15】 請求項14に記載の光記録媒体の製造
    方法において、 前記スパッタリング法は、スパッタパワーが5kW以下
    であることを特徴とする光記録媒体の製造方法。
JP2002150715A 2002-03-14 2002-05-24 光記録媒体及びその製造方法 Pending JP2003338085A (ja)

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