JP2003336135A - 拡繊糸 - Google Patents

拡繊糸

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JP2003336135A
JP2003336135A JP2002140212A JP2002140212A JP2003336135A JP 2003336135 A JP2003336135 A JP 2003336135A JP 2002140212 A JP2002140212 A JP 2002140212A JP 2002140212 A JP2002140212 A JP 2002140212A JP 2003336135 A JP2003336135 A JP 2003336135A
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carbon fiber
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filament
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Hiroharu Oishibashi
弘治 大石橋
Toshiyuki Okuda
俊進 奥田
Kensuke Shimizu
健介 清水
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OBS KK
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    • D02YARNS; MECHANICAL FINISHING OF YARNS OR ROPES; WARPING OR BEAMING
    • D02JFINISHING OR DRESSING OF FILAMENTS, YARNS, THREADS, CORDS, ROPES OR THE LIKE
    • D02J1/00Modifying the structure or properties resulting from a particular structure; Modifying, retaining, or restoring the physical form or cross-sectional shape, e.g. by use of dies or squeeze rollers
    • D02J1/18Separating or spreading

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  • Textile Engineering (AREA)
  • Yarns And Mechanical Finishing Of Yarns Or Ropes (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 拡繊程度が大きく、樹脂の含浸を容易かつ確
実に行えるマルチフィラメントの拡繊炭素繊維糸を提供
する。 【解決手段】 マルチフィラメントからなる炭素繊維糸
を拡繊した拡繊糸21であって、拡繊糸21の幅方向に
沿った複数の位置で、拡繊糸の厚み方向におけるフィラ
メントFの重なり本数を計測した場合に、重なり本数の
標準偏差が1.20よりも小さく形成してある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マルチフィラメン
トからなる炭素繊維糸を拡繊した拡繊糸に関する。
【0002】
【従来の技術】マルチフィラメントからなる炭素繊維糸
に熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂等を含浸させて形成
した複合材料は、高強度かつ軽量という利点を活かし
て、近年、非常に広い分野で利用されている。この利点
を最大限に発揮する複合材料を得るためには、夫々のフ
ィラメント間に樹脂を確実に含浸させ、かつ、夫々のフ
ィラメントを均一に分散させることが重要である。
【0003】仮に、樹脂が含浸されていないボイドが存
在すると、複合材料に荷重が作用したときにボイドに応
力が集中し、破壊の発生源となって好ましくない。ま
た、フィラメントの分布が均一でなく樹脂リッチな部分
が点在すると、この部分に応力が集中して破壊の発生点
となる場合がある。
【0004】この問題を解決するために、従来より、マ
ルチフィラメントの炭素繊維糸を薄く広く拡繊し、樹脂
の含浸性を高める処理が行われている。例えば、静電拡
繊法や、プレス拡繊法の他、ジェット拡繊法、超音波拡
繊法など各種の手法が用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、炭素繊維糸に
も多くの種類があるうえ、例えば、フィラメント数、フ
ィラメント径、撚り数、引張強度、伸度、繊維糸幅、繊
維糸厚、繊維糸幅/厚比など、炭素繊維糸ごとに緒元が
異なる。このため、炭素繊維糸を理想的に拡繊すること
は非常に困難である。
【0006】特に、フィラメント数の多い炭素繊維糸
は、フィラメントどうしの絡まりが影響するなど薄く広
く拡繊することが困難である。そのため、拡繊程度の大
きい炭素繊維糸を用いたい場合には、フィラメント数の
少ない炭素繊維糸を拡繊する必要があった。ただし、フ
ィラメント数の少ない炭素繊維糸は一般に高価である。
【0007】これまでの多くの拡繊方法は、繊維糸を押
圧する等して強制的に広げるものである。そのため、満
足な幅に広げることができないばかりか、フィラメント
に対する負担も大きい。また、得られた拡繊糸は、糸切
れや毛羽立ちなどが多く、炭素繊維糸本来の性能を発揮
し得ないものもあった。
【0008】本発明の目的は、上記従来の問題点を解消
し、拡繊程度が大きく、樹脂の含浸を容易かつ確実に行
えるマルチフィラメントの拡繊炭素繊維糸を提供するこ
とにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】〔特徴構成1〕この目的
を達成するために、本発明に係る拡繊糸は、請求項1に
記載したごとく、マルチフィラメントからなる炭素繊維
糸を拡繊した拡繊糸であって、前記拡繊糸の幅方向に沿
った複数の位置で、前記拡繊糸の厚み方向におけるフィ
ラメントの重なり本数を計測した場合に、前記重なり本
数の標準偏差が1.20よりも小さくなるように形成し
た点に特徴を有する。
【0010】〔作用効果〕本発明の拡繊した炭素繊維糸
は、その幅方向に沿ってほぼ一定の厚みを有しており、
特に、そのフィラメントの重なり本数が、何れの箇所に
おいてもほぼ同数である点に特徴を有する。具体的に
は、当該拡繊糸では、前記重なり本数の標準偏差が1.
20よりも小さい値となるように形成してある。
【0011】尚、ここでの標準偏差は、一般にいう標準
偏差あるいは平均二乗誤差と同じである。即ち、フィラ
メントの重なり本数の算術平均値に対する個々の重なり
本数の誤差を求め、夫々の誤差の二乗平均を求めたもの
をさらに平方根して得られる値である。
【0012】標準偏差がこの程度にまで小さくなること
は、拡繊した後の各フィラメントが極めて良好な直線性
を保持していることを意味する。仮に、拡繊程度が不十
分で、各フィラメントが依然として絡み合っている状態
では、フィラメントの重なり本数は大幅に変動し、標準
偏差が1程度に収まることはないからである。
【0013】また、フィラメントの直線性が向上する結
果、後に樹脂を含浸させる場合に、その含浸作業が容易
となる。しかも、フィラメントの回りには樹脂が確実に
供給され、ボイドの発生を有効に防止する。そして、樹
脂リッチな部分と樹脂が不足する部分とが混在すること
がなく、各フィラメントが均等に分散したものとなる。
よって、本発明の拡繊糸を用いて形成したプリプレグ、
あるいは、当該プリプレグを積層して形成した複合材料
は、非常に優れた機械的特性を具えたものとなる。
【0014】例えば、良好に拡繊が行われ、フィラメン
トの直線性が向上すると、引張試験を行った場合に、そ
の応力−歪み曲線は破断に至るまで直線性を維持したも
のとなる。つまり、夫々のフィラメントが均一に配置さ
れた状態では、破断に近づいた状況にあっても、夫々の
フィラメントは同等の状態で伸びており、何れかのフィ
ラメントが先に破断し始めるという状況が生じ難い。こ
の結果、全てのフィラメントが、ほぼ同時に破断に至る
こととなり、応力−歪み曲線が最後まで直線性を維持し
たものになる。
【0015】〔特徴構成2〕本発明に係る拡繊糸は、請
求項2に記載したごとく、フィラメント数が6000本
乃至24000本、フィラメント直径が7μmであると
される炭素繊維糸を拡繊するものであり、拡繊した後の
フィラメントの平均重なり本数を5本よりも少なく形成
してある点に特徴を有する。
【0016】〔作用効果〕上記構成の拡繊糸では、フィ
ラメントの重なり本数の標準偏差が1.20よりも小さ
いものであった。そして本構成では、当該ばらつきの少
なさを維持しながら、さらに、フィラメントの重なり本
数を規定するものである。即ち、本発明の拡繊糸では、
フィラメント数が6000本乃至24000本であり、
フィラメント直径が7μmである炭素繊維糸を拡繊する
場合に、フィラメントの平均重なり本数を5本より少な
く形成することができる。
【0017】本発明の拡繊糸によれば、6Kから24K
までのフィラメント本数を有する何れの炭素繊維糸を用
いた場合でも、フィラメントの重なり本数が5本よりも
少なく、しかも、重なり本数の標準偏差が小さい平面性
に優れた拡繊糸を得ることができる。このため、従来の
ように、樹脂含浸性の良い拡繊糸を得るために、敢えて
フィラメント数の少ない高価な炭素繊維糸を拡繊する必
要がなくなる。特に、フィラメント数の多い炭素繊維を
拡繊する場合には、幅広の拡繊糸を得ることができる。
このように、本発明の拡繊糸であれば、高強度を具えた
複合材料をより経済的に形成することが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】(概要)本発明に係る拡繊糸は、
マルチフィラメントを有する炭素繊維糸を拡繊して得る
ものである。材料となるマルチフィラメントの炭素繊維
糸としては、例えば、フィラメント数が、6K(600
0本)・12K・24K・36Kのもの等がある。そし
て、夫々のフィラメントFの直径が、5μm・7μm・
9μmのように適宜選択される。
【0019】本実施形態では、上記炭素繊維糸のうち、
フィラメント数が6K、12K、24Kの3種類のもの
を用いて拡繊糸を得た例を示す。フィラメント直径は何
れも7μmであった。フィラメントFの重量を示すテッ
クス値は、夫々、400g/km、800g/km、16
00g/kmであった。具体的には、東邦テナックス
(株)製のBESFIGHT UT500-6K,BESFIGHT UT500-12K,
BESFIGHT HTA-24Kを用いた。
【0020】(拡繊装置)当該炭素繊維糸は、図1およ
び図2に示す装置を用いて拡繊した。図1には、今回用
いた拡繊装置の構成を示す。図2には拡繊装置のうち、
主な構成部分についての斜視図を示す。図1に示すごと
く、拡繊装置1は、炭素繊維糸2の流送方向に沿って、
主に、給糸部7、予備拡繊装置4、給糸調整用検出部
9、本拡繊装置6、加熱部12、および巻取部13を備
えて構成してある。
【0021】(給糸部)給糸部には複数のボビン70を
備え、複数の炭素繊維糸2を並行して拡繊処理できるよ
う構成してある。これら複数の炭素繊維糸2は、拡繊さ
れたのち夫々別の巻取ボビン130に巻き取られる。
【0022】(予備拡繊装置)予備拡繊装置4は、超音
波を利用した超音波式拡繊装置で構成してあり、未拡繊
の炭素繊維糸に対して第1段階の拡繊を行うものであ
る。図2に示すごとく、超音波発生器18および共振機
構30を備えた予備拡繊用液槽3内に炭素繊維糸2を導
き、槽内に設けた複数の拡繊ローラ19に接触させて、
炭素繊維糸2を屈曲させながら流送する。そして、流送
状態にある炭素繊維糸2に、槽内の液体を介して超音波
を作用させ、炭素繊維糸2を振動させて予備拡繊する。
【0023】(給糸調整用検出部)給糸調整用検出部9
は、図1および図2に図示したごとく、予備拡繊装置4
から流送されてくる炭素繊維糸2を弛ませる部分であ
る。この弛み量は、弛み量検出装置16によって検出す
る。炭素繊維糸2の弛み量を調節することで、後述する
本拡繊装置6の拡繊部17に対して炭素繊維糸2を適切
にオーバーフィードさせることができる。
【0024】(本拡繊装置)本拡繊装置6は、液体内で
炭素繊維糸2を最終的な幅まで拡繊するものである。図
1及び図2に示すごとく、本拡繊装置6は、本拡繊用液
槽5と、炭素繊維糸2を流送方向に導くためのガイドロ
ーラ20c、20d、20eとを備えている。本拡繊
は、炭素繊維糸の長手方向に対して直角方向に液体流を
供給する拡繊部17において行う。当該拡繊部17で拡
繊された拡繊糸21は、ローラ機構10b等を用いて、
絞り操作されつつ液中から気体中へ引き出される。
【0025】図1にごとく、本拡繊用液槽5の下部に
は、槽内の液体を所定の循環路を介して循環させる循環
ポンプ22を備えている。この循環ポンプ22から排出
される流体は、再び、前記本拡繊用液槽5に戻される。
【0026】前記拡繊部17の上流側には整流流路形成
体25を設けてあり、前記拡繊部17の下流側には吸引
流路形成体26が設けてある。これらの形成体25、2
6は、図2に示すごとく、夫々の炭素繊維糸2に対して
流体を供給する際に、例えば方形形状をした個別の流路
を形成するものである。この拡繊部17で、液体流の流
速と炭素繊維糸2のオーバーフィード量とを適切に整合
させることで、液体流の流体力学的作用によって炭素繊
維糸2を良好に拡繊することができる。
【0027】(加熱部および巻取部)図1および図2に
示すごとく、本拡繊を終えた炭素繊維糸2は、加熱部1
2に導かれる。加熱部12には、拡繊した炭素繊維糸2
1に残存する液体分を乾燥除去する乾燥部12aと、前
記拡繊した炭素繊維糸21に付着しているサイジング剤
等を軟化し再分散させる再熱処理部12bとを備えてい
る。乾燥・再熱処理を終えた拡繊糸21は、巻取部13
で巻取ボビン130に巻き取られ、製品たる拡繊炭素繊
維糸21となる。
【0028】以上の手法によれば、炭素繊維糸2に強い
押圧力を作用させるようなことがないため、毛羽立ちが
少なく、糸切れのない拡繊炭素繊維糸21を得ることが
できる。
【0029】(炭素繊維糸の拡繊)上記拡繊装置によっ
て前記3種類の炭素繊維糸を拡繊した例を示す。当該拡
繊により、6Kの炭素繊維糸では、当初5mmの幅であ
ったものを約10mmに拡繊し、12Kの炭素繊維糸で
は、当初6mmの幅であったものを約20mmに拡繊
し、24Kの炭素繊維糸では、当初9mmの幅であった
ものを約40mmに拡繊した。これにより、何れも厚み
が約0.04mmの拡繊糸を得た。
【0030】拡繊した炭素繊維糸は、その幅方向の全体
に亘って同じ厚みを有するのが好ましい。そこで、図3
に示すごとく、拡繊処理した炭素繊維糸21のフィラメ
ントの重なり本数を測定した。炭素繊維糸の種類によっ
て拡繊した後の幅が異なるので、ここでは、拡繊糸の全
幅に亘り、同方向に沿って均等間隔に決定した12箇所
の位置で計測した。その結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】尚、比較のために、未拡繊の炭素繊維糸に
ついても、全幅に亘る12箇所の位置でフィラメントの
重なり本数を測定した。表1に示すごとく、上記拡繊装
置で拡繊処理した炭素繊維糸は、未拡繊の炭素繊維糸の
フィラメント平均重なり本数が、6Kの炭素繊維糸では
10.75本、12Kの炭素繊維糸では10.50本、
24Kの炭素繊維糸では11.08本であった。
【0033】これに対して拡繊した繊維糸の重なり本数
は、6Kの炭素繊維糸では4.17本、12Kの炭素繊
維糸では4.25本、24Kの炭素繊維糸では4.42
本であった。このように、本発明の拡繊糸では、何れの
炭素繊維糸を用いたものであっても、未拡繊糸の半分以
下の厚さまで拡繊できることがわかる。
【0034】さらに、フィラメントFの重なり本数のば
らつきを、その平均重なり本数に対する標準偏差をとっ
て評価してみた。未拡繊糸の標準偏差は、6Kのものか
ら順に夫々、4.20、2.65、2.43であった。
これに対して、拡繊糸の標準偏差は、6Kのものから順
に夫々、1.19、0.87、0.90であり、未拡繊
糸に比べて非常に小さい値になっていることがわかる。
これらはつまり、当該拡繊糸では、幅方向の断面形状
が、図3に示したごとく全幅に亘ってほぼ一定幅となっ
ているのに対し、未拡繊糸では、図示は省略するが、幅
方向中央部で極端に厚い形状となっていることを意味し
ている。
【0035】このような拡繊炭素繊維糸を用いれば、以
下に示すごとく、引張強度や圧縮強度等の機械的特性に
優れたプリプレグや複合材料を得ることができる。
【0036】(実施例)上記炭素繊維糸を上記方法で拡
繊した拡繊糸と、拡繊していない未拡繊糸とを用いて夫
々複合材料を作製した。この複合材料より、引張試験お
よび圧縮試験に供する試験片を作製した。引張試験はA
STM規格に準じて行い、圧縮試験はSACMA規格に
準じて行った。拡繊糸の幅はフィラメント分布の安定性
を考慮し20mmとした。表2には、拡繊糸および未拡
繊糸を自然に放置した状態での幅及び厚みを示す。
【0037】
【表2】
【0038】また図4には、未拡繊糸および拡繊糸の表
面状況を示す。前記拡繊装置を用いて拡繊した拡繊糸で
は、フィラメントに損傷はなく、毛羽立ちもないことが
確認できた。さらに、未拡繊糸ではいくつかのフィラメ
ントが顕著に弛んでいたのに対し、拡繊糸にはそのよう
な弛みは認められず、フィラメントの直線性が向上して
いた。これら2種類の炭素繊維糸を用いて複合材料を作
製した。複合材料のマトリックス樹脂には、スポーツや
工業などの幅広い用途に用いられる130℃硬化型のエ
ポキシ樹脂を使用した。
【0039】(モールディング方法)未拡繊糸および拡
繊糸を用いてプリプレグを作製した。作製されたプリプ
レグを積層し、オートクレーブにて平板を作製した。拡
繊糸および未拡繊糸は厚みが異なるため、成型時の積層
数は拡繊糸を用いたものの方が多くなった。得られた各
試験片の樹脂含有量は33%であった。
【0040】(破断面観察)未拡繊糸および拡繊糸によ
る複合材料の断面を図5に示す。当該断面は、フィラメ
ントの長手方向に対して垂直な方向の断面である。試験
片を湿式のダイヤモンドカッターにて切断し、埋包用樹
脂に埋めて硬化させた後、観察面を研磨した。観察は光
学顕微鏡により行った。
【0041】図5から明らかなごとく、未拡繊糸では、
プリプレグを積層する際に、プリプレグ間に樹脂リッチ
な部分が生じていることがわかる。またフィラメントの
分散が不十分であった。一方、拡繊糸では、積層したプ
リプレグ間に明瞭な樹脂層はなく、フィラメントも均一
に分散していることがわかる。さらに、フィラメントを
囲むように樹脂が十分に含浸されていることがわかる。
【0042】(引張試験)引張試験に用いた試験片の積
層数は、未拡繊糸で10Ply、拡繊糸で30Plyで
あった。試験片の厚みは、未拡繊糸および拡繊糸ともに
1.1mmであった。試験方法はASTM(D3039
−76)に準じて行った。
【0043】引張試験の結果を表3に示す。引張試験の
結果、拡繊糸は未拡繊糸に比べ強度および弾性率の向上
が見られた。尚、双方の試験結果につきC.V.値(Coef
ficient of Variation:変動係数)を求めた。C.V.値
(%)は、(標準偏差/平均値)×100により求め
た。この結果では、未拡繊糸に比べて拡繊糸のC.V.値
の値が若干ではあるが大きくなっていた。しかし、3%
程度の値であれば、試験結果は十分に収束していると判
断できる。よって、上述のごとく、未拡繊糸に比べて拡
繊糸の引張特性が優れているという結果は、十分に信頼
できる結果と考えることができる。
【0044】
【表3】
【0045】図6に、各試験片に見られた典型的な応力
−ひずみ曲線を示す。未拡繊糸では、引張りの後半で、
曲線が複数回屈曲していることがわかる。これは、最終
破断に至る前に試験片内部で局所的な破断が発生したこ
とを示している。つまり、未拡繊糸ではフィラメントど
うしが絡み合い、直線性が不十分であるため、引張試験
の後半で各フィラメントの伸張状態に差が生じ、破断応
力に達したフィラメントから順次破断し始めたことが原
因である。
【0046】一方、拡繊糸についての曲線では、未拡繊
糸に見られたような屈曲部は見られなかった。これは、
フィラメントの絡まりが少ない拡繊糸では全てのフィラ
メントが一様に伸張するため、試験片内部で局所的な破
断は生じず、ほぼ全てのフィラメントが同時に最終破断
に至ったことを示している。このように、拡繊糸の引張
強度は、未拡繊糸の引張強度に比べて勝っていることが
確認できた。
【0047】図7には、引張試験後に見られた各試験片
の典型的な破壊様相を示す。未拡繊糸および拡繊糸とも
に、試験片はブラシのように放射状に破壊していた。一
般的にこのような破壊は、フィラメントとマトリックス
樹脂との界面が脆い場合にしばしば観察される。破壊様
相の違いを詳細に見ると、未拡繊糸では破壊後のフィラ
メントの束が細く散っているのに対し、拡繊糸では破壊
後のフィラメントの束は太くまとまっていた。これは、
拡繊糸の方が、フィラメントが均一に分散して樹脂リッ
チな部分が明瞭に存在しないため、引張に際しての応力
集中がより効果的に抑制されたためと考えられる。
【0048】(圧縮試験)次に、未拡繊糸および拡繊糸
を用いて圧縮試験を行った。圧縮試験は、SACMA
(SRM 1−88)規格に準じて行った。この規格
は、ASTM規格に比べて座屈破壊の起きにくい測定が
可能であり、より信頼できるデータの入手が可能であ
る。当該試験では、圧縮強度を求める試験と、圧縮弾性
率を求める試験とを行った。圧縮試験片は、前記引張試
験と同様に、未拡繊糸で10Ply、拡繊糸で30Pl
yのプリプレグを積層して形成した。何れの試験片も、
厚みは1.1mmであった。
【0049】表4に圧縮試験の結果を示す。引張試験と
同様に、拡繊糸を用いた試験片の方が、圧縮強度および
圧縮弾性率共に優れていることがわかる。圧縮試験にお
いては、拡繊糸を用いた方のC.V.値が小さく、ばらつ
きの少ない結果となった。
【0050】
【表4】
【0051】図8には、圧縮試験後の試験片の破壊状況
を示す。図8は、その紙面に垂直な方向が試験片の幅方
向であり、図8の上下方向が試験片の厚み方向である。
当該破壊状況から、未拡繊糸を用いたものではフィラメ
ントの長手方向に沿って多数の亀裂が発生していること
がわかる。これは、プリプレグどうしの境界に存在する
樹脂リッチな部分から破壊が発生したことを示してい
る。これに対し、拡繊糸を用いたものでは、フィラメン
ト方向に沿った亀裂が少ない。
【0052】また、拡繊糸を用いたものでは、亀裂の発
生箇所が、試験片の厚み方向外側近傍に集まっているこ
とがわかる。試験片中央部に亀裂が少ないのは、フィラ
メントが均一に分布しており、樹脂リッチな領域がな
く、応力が集中し難いからである。この場合、加えられ
た外力は、試験片の表面側に逃げることとなる。このた
め、破壊による亀裂が表面側に多く発生したのである。
【0053】このように、未拡繊糸を用いた複合材料で
は、断面観察で見られたような樹脂リッチな領域とフィ
ラメントが密な領域とが混在しているため、応力集中が
発生し易いと考えられる。しかも、未拡繊糸を用いた複
合材料では、フィラメントの直線性が十分でない分、機
械的強度を上げるにも限界がある。一方、フィラメント
の直線性およびフィラメントの分散性に優れる拡繊糸を
用いた複合材料では、上記のごとく良好な機械的強度を
有していることが確認できた。
【0054】(効果)以上のごとく、前記手法で拡繊し
た炭素繊維糸は、何れの部分においても、フィラメント
の重なり本数が近似したものとなり、その表面形状は極
めて平面に近いものとなる。この結果、当該拡繊糸を用
いて形成したプリプレグ、或いは、当該プリプレグを積
層して形成した複合材料では、樹脂マトリックスの内部
にフィラメントが均一に分散されたものとなり、樹脂あ
るいはフィラメントの偏在が生じない。このため、本発
明の拡繊糸を用いた複合材料等は、従来の未拡繊糸を用
いた複合材料などに比べて極めて優れた機械的特性を具
えたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る拡繊装置の概要を示す説明図
【図2】本発明に係る拡繊装置の要部を示す斜視図
【図3】拡繊糸のフィラメント重なり本数の測定要領を
示す説明図
【図4】未拡繊糸および拡繊糸の表面状態を示す写真
【図5】未拡繊糸および拡繊糸の断面状態を示す写真
【図6】未拡繊糸および拡繊糸の引張特性を示す応力−
ひずみ曲線
【図7】未拡繊糸および拡繊糸の引張破断状態を示す説
明図
【図8】未拡繊糸および拡繊糸の圧縮破壊状態を示す写
【符号の説明】
21 拡繊糸 F フィラメント
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 清水 健介 福井県勝山市滝波町4丁目604番地 株式 会社オー・ビー・エス内 Fターム(参考) 4L036 MA04 PA09 UA21

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マルチフィラメントからなる炭素繊維糸
    を拡繊した拡繊糸であって、 前記拡繊糸の幅方向に沿った複数の位置で、前記拡繊糸
    の厚み方向におけるフィラメントの重なり本数を計測し
    た場合に、前記重なり本数の標準偏差が1.20よりも
    小さく形成してある拡繊糸。
  2. 【請求項2】 前記炭素繊維糸が、フィラメント数が6
    000本乃至24000本、フィラメント直径が7μm
    であるとされる炭素繊維糸であり、 前記フィラメントの平均重なり本数が5本より少なく形
    成してある請求項1に記載の拡繊糸。
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