JP2003335745A - シアノ化化合物の製造方法 - Google Patents
シアノ化化合物の製造方法Info
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Abstract
をリサイクルさせて使用しても、高収率でシアノ化化合
物を得ることができるシアノ化化合物の製造方法を提供
する。 【解決手段】 分子内にエステル基を有し且つエステル
基のβ位に水酸基を有するシアノ化化合物の製造方法で
あって、(1)シアノ基と置換し得る脱離基を有する原
料化合物Aをシアノ化反応に付してシアノ化化合物を得
るシアノ化反応工程、(2)シアノ化反応において未反
応の原料化合物Aを主成分とする溶液を、シアノ化化合
物と分離する分離工程、(3)分離した原料化合物Aを
主成分とする溶液に含まれる炭素−炭素二重結合含有化
合物Bを、原料化合物Aと分離可能な付加物に変換する
付加試薬と反応させる付加反応工程、及び、(4)付加
反応後に原料化合物Aをシアノ化反応に再利用する再利
用工程を有することを特徴とするシアノ化化合物の製造
方法。
Description
且つエステル基のβ位にヒドロキシ基を有するシアノ化
化合物の製造方法に関する。更に詳しくは、反応せずに
残っている原料をリサイクルさせて使用しても、高収率
でシアノ化化合物を得ることができるシアノ化化合物の
製造方法に関する。
位にヒドロキシ基を有するシアノ化化合物は、医薬や農
薬等の中間体として近年ますます重要度を増しており、
例えば、(R)−4−シアノ−3−ヒドロキシ酪酸エス
テルは、高脂血症治療薬Atorvastatin(特
表平7−500105号公報)等の中間体として用いる
ことができる。(R)−4−シアノ−3−ヒドロキシ酪
酸エステル類の合成法としてはアラビノースやアスコル
ビン酸を不斉源として(S)−4−ブロモ−3−ヒドロ
キシ酪酸メチルに導いた後、水酸基をテトラヒドロピラ
ニル、トリアルキルシリル、アルキルなどの保護基で保
護し、青酸ナトリウム(青酸ソーダ)を反応せしめる方
法(Acta Chem.Scand.B37,341
(1983))、L−アスコルビン酸に過酸化水素と炭
酸カルシウムを反応させることによって得られるスレオ
ニンカルシウム塩1水和物に臭化水素を作用させジブロ
モ体を得てブロモヒドリンへと導いた後に、同様の保護
基で水酸基を保護して、青酸ソーダと反応せしめる方法
(Carbohydrate,Res.,72,30
1,(1979))、4−クロロ−3−ヒドロキシブチ
ロニトリルを加水分解してカルボン酸とした後に、この
ものをエチルエステル化し、シアン化カリウムと反応せ
しめる方法(Bull.Chem.Soc.Fr.,3
3,732(1923))、ジケテンから得られる4−
ハロゲノアセト酢酸アルキルエステルをルテニウム−光
学活性ホスフィン錯体を用いて不斉還元反応を行って
(S)−4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ酪酸t−ブチル
エステルとした後(特開平1−211551号公報)、
引き続きシアノ化反応を行う方法(特開平5−3311
28号公報)、(S)−4−ブロモ−3−ヒドロキシ酪
酸エチルと青酸ソーダを直接反応せしめる方法(特表平
7−500105号公報)等が知られている。
基に保護基をつけたりはずしたりせねばならず、また、
光学活性体の分離を行う必要があるので、工程が長過
ぎ、工業的製法とはいえない。また、後者二つの方法
は、これらのいずれの方法によって(R)−4−シアノ
−3−ヒドロキシ酪酸アルキルエステル(以下、「H
N」と称することがある)を合成した場合にも、シアノ
化反応後に、原料である(S)−4−ハロゲノ−3−ヒ
ドロキシ酪酸アルキルエステル(以下、「CHE」と称
することがある)が未反応のままかなり残存している。
そして、これから高純度の(R)−4−シアノ−3−ヒ
ドロキシ酪酸アルキルエステルを単離するためには通
常、適当な溶媒で抽出の後、減圧蒸留による精製が行わ
れていたが、CHEは熱安定性が低く、蒸留時の分解に
より塩化水素や水を生成し、且つ、これらによると考え
られるHNの分解をも誘発するので、この蒸留工程にお
けるHN回収率は低いものであった。
決する為に、10Torrでの沸点が50℃から160
℃の範囲の溶剤を添加した共沸蒸留を実施することで、
蒸留中のリボイラーの温度を低下させることができるの
で、CHEの加熱分解が少なくなり、且つ、CHEをH
Nと分離し、シアノ化反応にリサイクル出来ることを既
に見い出している(特開平10−231278号公
報)。
や生産性に優れた工業的なHNの製造方法ではあるが、
蒸留で分離・回収した原料であるCHE中には微量の不
純物、特に4−ヒドロキシ−2−ブテン酸エチル(以
下、「HA」と称することがある。)及びシアノアクリ
レート類(以下、「CA類」と称することがある。)等
を含有し、、回収CHEのシアノ化反応へのリサイクル
数の増大に伴い、不純物の量も増大することが新たに判
明した。更に、本発明者等の検討によれば、HA等はシ
アノ化反応で副生するものであるが、HAを多量に含む
CHEをリサイクルして使用した場合、HAはシアノ化
反応でシアノ化されて更なる不純物、特には3−シアノ
−4−ヒドロキシブタン酸エチル(以下、「NH」と称
することがある。)を生成してしまうことが判った。そ
してこのNHは、蒸留中の加熱により、目的物HNと極
めて分離のし難い化合物である3−シアノブチロラクト
ン(以下、「3CBL」と称することがある。)へと変
換されてしまい、高収率でシアノ化化合物を製造するの
が非常に困難になるという問題を有していた。
み、反応せずに残っている原料をリサイクルさせて使用
しても、高収率でシアノ化化合物を得ることができる経
済性、生産性に優れたシアノ化化合物の工業的製造方法
を提供することを目的とするものである。
を解決するべく鋭意検討した結果、シアノ化反応で未反
応の原料をシアノ化反応に再利用する場合に、回収原料
中に含まれる不純物である炭素−炭素二重結合含有化合
物を、特定の試薬で処理することにより、効率的にこの
不純物を除去することで、リサイクルプロセスにおける
炭素−炭素二重結合含有化合物の蓄積を回避し、高収率
でシアノ化化合物を得ることができることを見い出し、
本発明を完成するに至った。
(7)に存する。 (1)分子内にエステル基を有し且つエステル基のβ位
に水酸基を有するシアノ化化合物の製造方法であって、
(1)シアノ基と置換し得る脱離基を有する原料化合物
Aをシアノ化反応に付してシアノ化化合物を得るシアノ
化反応工程、(2)シアノ化反応において未反応の原料
化合物Aを主成分とする溶液を、シアノ化化合物と分離
する分離工程、(3)分離した原料化合物Aを主成分と
する溶液に含まれる炭素−炭素二重結合含有化合物B
を、原料化合物Aと分離可能な付加物に変換する付加試
薬と反応させる付加反応工程、及び、(4)付加反応後
に原料化合物Aをシアノ化反応に再利用する再利用工程
を有することを特徴とするシアノ化化合物の製造方法。
とシアノ化化合物との分離を蒸留により行う上記(1)
に記載のシアノ化化合物の製造方法。 (3)10Torrでの沸点が50℃以上160℃以下
の範囲である溶剤を添加して蒸留を行う上記(2)に記
載のシアノ化化合物の製造方法。 (4)添加する溶剤が炭素数10〜18の飽和脂肪族炭
化水素である上記(3)に記載のシアノ化合物の製造方
法。
水素塩である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のシ
アノ化合物の製造方法。 (6)該付加試薬が、亜硫酸のアルカリ金属塩である上
記(1)〜(5)のいずれかに記載のシアノ化合物の製
造方法。 (7)シアノ化化合物が、4−シアノ−3−ヒドロキシ
酪酸アルキルエステルである上記(1)〜(6)のいず
れかに記載のシアノ化化合物の製造方法。
造される分子内にエステル基を有し且つエステル基のβ
位に水酸基を有する得るシアノ化化合物(以下、単にシ
アノ化化合物と称することがある)は、シアノ基と置換
し得る脱離基を有する原料化合物Aを、シアノ化するこ
とによって得られる。シアノ基と置換し得る脱離基とし
ては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原
子、メタンスルフォニルオキシ基、置換若しくは無置換
のフェニルスルフォニルオキシ基、リン酸エステル基、
アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基等が挙げられ
るが、特にはハロゲン原子、メタンスルフォニルオキシ
基、及び置換若しくは無置換のフェニルスルフォニルオ
キシ基からなる群より選択されるのが好ましい。原料化
合物Aは、脱離基の他に分子内にエステル基及び該エス
テル基のβ位に水酸基を有している。原料化合物Aとし
ては、例えば下記一般式(A)で表される化合物であ
る。
る脱離基または、シアノ基と置換し得る脱離基を有する
1価の置換基を表す。R2〜R6は各々独立して水素原子
または炭化水素基を表し、R7はアルキル基を表す。) R1は、シアノ基と置換し得る脱離基または、シアノ基
と置換し得る脱離基を有する1価の置換基を表すが、中
でも、ハロゲン原子、メタンスルフォニルオキシ基、p
−トルエンスルホニルオキシ基またはベンゼンスルホニ
ルオキシ基、あるいは、ハロゲン原子、メタンスルフォ
ニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基または
ベンゼンスルホニルオキシ基で置換されたアルキル基が
好ましく、ハロゲン原子が更に好ましく、塩素原子が特
に好ましい。R2〜R6は各々独立して水素原子または炭
化水素基を表すが、R2〜R6のうち少なくとも1つが水
素原子であり、残りが炭化水素基であるのが好ましく、
最も好ましいのは、R2〜R6のすべてが水素原子の場合
である。炭化水素基としては、直鎖状、分岐状又は環状
のいずれでもよく、炭素数1〜10の炭化水素基が好ま
しく、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であ
り、メチル基、又はエチル基が特に好ましい。R7はア
ルキル基を表すが、炭素数1〜10のアルキル基が好ま
しく、炭素数1〜4のアルキル基が更に好ましく、エチ
ル基が特に好ましい。
−ハロゲノ−3−ヒドロキシ酪酸アルキルエステルが挙
げられる。本発明は、原料化合物Aとして(S)−4−
ハロゲノ−3−ヒドロキシ酪酸アルキルエステルを用
い、シアノ化化合物として(R)−4−シアノ−3−ヒ
ドロキシ酪酸アルキルエステルを製造する方法に適用す
るのが有効である。原料の(S)−4−ハロゲノ−3−
ヒドロキシ酪酸アルキルエステルは、例えば特開平8−
336393号公報記載の方法に準拠して、4−ハロゲ
ノアセト酢酸アルキルエステルを微生物により不斉還元
することで得ることができる。
シアノ化反応工程においては、シアノ化剤を用いて通常
行う。用いられるシアノ化剤としては、アルカリ金属シ
アン化物、アルカリ土類金属シアン化物が用いられる。
これらの中で、青酸ナトリウム(青酸ソーダ)、青酸カ
リウム(青酸カリ)が好ましく、安価な青酸ソーダが特
に好ましい。シアノ化剤の使用量については、特に限定
はされないが、原料化合物Aに対して通常0.2〜5当
量である。特には原料が(S)−4−ハロゲノ−3−ヒ
ドロキシ酪酸アルキルエステルである場合には、0.5
〜2当量、好ましくは0.7〜1.8当量、より好まし
くは0.9〜1.4当量である。
は、選択率が高い方が望ましいので、シアノ化に際し、
必要に応じ、シアノ化剤以外に酸を用いることが好まし
い。酸の添加方法は、特に限定されるものではなく、シ
アノ化剤と酸とを反応器に別々に交互に繰り返し添加し
てもよいし、シアノ化剤と、酸を同時に添加してもよい
し、予めシアノ化剤と酸を混合させた後に反応器に添加
してもよい。後者の2つの方法は、反応液の塩基性度を
弱めることができ、安定した反応を実施することができ
るので好ましい。用いられる酸としては、シアノ化反応
に水性溶媒を用いる場合にはその水性溶媒に溶解する酸
が好ましく、具体的には塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の
無機酸;トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等のス
ルホン酸、酢酸等のカルボン酸、等の有機酸を挙げるこ
とができる。中でも無機酸が好ましい。また、シアノ化
反応により原料化合物Aの脱離基に由来して酸が生成す
るので、用いられる酸は脱離基に由来するものと同じも
のが好適である。例えば、原料化合物Aの脱離基が塩素
原子で有れば、用いる酸としては塩酸が特に好ましい。
5であるものが好ましく、より好ましくは−9〜3であ
る。シアノ化反応に酸を用いる場合、使用量としては原
料化合物Aに対して好ましくは0.01〜0.8当量、
より好ましくは0.05〜0.5当量である。尚、2塩
基酸を用いる場合には、1塩基酸の場合に比べて酸のモ
ル数を2倍相当に見積もる必要がある。これら酸は、シ
アノ化反応に際し予めシアノ化剤と混合して用いるのが
好ましい。予め混合する方法は限定されるものではない
が、混合槽で予め混合する方法、反応器へのラインにス
タティックミキサーを設置し、酸溶液とシアノ化剤溶液
とを配管で混合する方法等が挙げられる。
水性溶媒が用いられる。シアノ化反応は、原料にもよる
が、原料の一部又は全部が水性溶媒に溶解されているの
が好ましい。水性溶媒としては任意のものを適宜選択し
使用すればよいが、特には水性溶媒が水又は水と水溶性
有機溶媒との混合物であるのが好ましい。用いられる水
溶性有機溶媒としては、エタノール等のアルコール類;
ジメチルホルムアミド等の酸アミド類;アセトニトリル
等のニトリル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシ
ド類及びテトラヒドロフラン等のエーテル類等の水性溶
媒並びにこれらの混合物が挙げられる。水溶性有機溶媒
の中では、アルコール類、酸アミド又はニトリル類が好
ましい。水性溶媒として最も好ましくは、安価であるた
め、水である。水性溶媒は、原料化合物Aの濃度が、通
常5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%となる
ように使用される。
反応器に連続的に反応液を流通させる連続式でもよい。
シアノ化反応の温度は、20℃〜200℃の範囲で適宜
選択されるが、水溶媒の場合には50℃〜150℃が好
ましい。更に好ましくは、60℃〜120℃である。圧
力は常圧でも、加圧下でもよいが、バッチ式の場合に
は、大気圧若しくは大気圧付近の圧力で実施するのが好
ましい。反応時間はバッチ式と連続式では異なるが、反
応熱を除熱するジャケット付き反応器を冷却することが
出来る時間内で実施すればよい。バッチ式では、10分
から30時間の範囲が好適であり、連続式では、数秒か
ら5時間の範囲が好適である。反応後は、熟成時間を設
けることもできる。温度は反応温度と同範囲でよいが、
温度を変えてもよい。また、熟成中に、更に酸を添加し
て反応生成液のpHを低下させて、更なる収率、選択率
の向上を図ることが望ましい。例えば、回分反応装置で
反応を行う場合、反応器に(S)−4−ハロゲノ−3−
ヒドロキシ酪酸アルキルエステル(CHE)及び水を仕
込み、シアノ化剤の水溶液を、加熱下、好ましくは撹拌
下に、連続的又は間欠的に添加することにより行われ
る。
り、得られたシアノ化化合物は、未反応の化合物Aが含
まれているので、これと分離する。分離に先立って、通
常はシアノ化化合物(特には(R)−4−シアノ−3−
ヒドロキシ酪酸アルキルエステル)及び未反応の原料
(特には(S)−4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ酪酸ア
ルキルエステル)を溶媒によって抽出し、反応液から取
り出す。シアノ化化合物と、未反応の原料化合物Aを主
成分とする溶液との分離方法は特に制限されるものでは
ないが、抽出液を濃縮した後に蒸留により分離すること
が好ましい。抽出溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチ
ル等の低級脂肪酸低級アルキルエステル類;塩化メチレ
ン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;トルエ
ン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;シクロヘキサノ
ン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジブチルエ
ーテル等のエーテル類及びこれらの混合物が挙げられ
る。
濃縮してもよく、塩析を行ってもよい。特に、シアノ化
の反応溶媒が水及びエチルアルコールのような混合溶媒
のときには、あらかじめ、低沸点のエチルアルコールを
蒸発させた後、抽出溶媒を添加するのが好適である。抽
剤量はシアノ化化合物や、残存する原料を殆どロスしな
い抽剤量であればよいが、一度で全部抽出するのが無理
な場合には、数回抽出を繰り返してこれを達成すれば良
い。抽出時の温度は、0〜70℃の範囲で適宜選択して
用いれば良いが、分配係数が温度に敏感な場合には検討
の上、上記温度範囲で、最適温度を決めればよい。
る。濃縮は常圧でも、減圧下でも実施することができ
る。あまり減圧度が高いと、コンデンサーで蒸気が凝縮
しないので、コンデンサー能力や、生産性を考慮して圧
力を適宜決定すればよい。また、常圧下で実施する場
合、溶剤の沸点によってはリボイラーの温度が高温とな
り、原料が熱分解を始める可能性があるので、特には、
原料がCHEの場合、CHEは熱安定性が悪いため熱分
解を始めるので、適宜、減圧して、リボイラーの温度を
下げるのが良い。好適には、10Torrから760T
orrの範囲で実施するのがよい。
続き蒸留する。本発明においてはこの蒸留時に、10T
orrでの沸点が50℃以上160℃以下の範囲である
溶剤を添加することが好ましい。このような溶剤を使用
することにより、一種の水蒸気蒸留のように、溶剤の蒸
気圧と、残存原料(特には、(S)−4−ハロゲノ−3
−ヒドロキシ酪酸アルキルエステル)の蒸気圧の和が、
蒸留時の運転圧力となったときに両者が留出するため、
効果的に留出温度を低下させることができるので、残存
原料(特には、(S)−4−ハロゲノ−3−ヒドロキシ
酪酸アルキルエステル)の熱分解を防ぐことができると
いうものである。
(特には、(R)−4−シアノ−3−ヒドロキシ酪酸ア
ルキルエステル)や原料(特には、(S)−4−ハロゲ
ノ−3−ヒドロキシ酪酸アルキルエステル)と反応しな
い物であれば特に限定することなく用いることができ
る。このような溶剤の具体例としては、デカン、ウンデ
カン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデ
カン等の脂肪族炭化水素類、1−エチルナフタレン、2
−エチルナフタレン、ビフェニル、1,2−ジメチルナ
フタレン等の芳香族炭化水素類、o−ジクロロベンゼ
ン、1−クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素類、
カテコール、p−イソプロピルベンジルアルコール、
3,4−キシレノール等のアルコール類、ケイ皮酸メチ
ル、ケイ皮酸エチル、グルタル酸ジエチル等のエステル
類、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の多
価アルコール類、ジフェニルエーテル等のエーテル類、
ニトロトルエン、4−ニトロ−m−キシレン等のニトロ
化炭化水素類、無水コハク酸等の酸無水物類、ホルムア
ミド、アセトアミド等のアミド類等が挙げられる。
蒸気圧よりも、10から20Torr高いか、もしくは
低い蒸気圧を有する溶剤を用いる場合には、該溶剤の留
出に同伴する原料の留出量が多いので有利である。ま
た、溶剤によっては、共沸することにより留出温度の低
温化を図ることもできる。更に、25℃における添加溶
剤と原料の相互溶解度、すなわち添加溶剤に対する原料
の溶解度又は原料に対する該溶剤の溶解度が10重量%
以下であるような溶剤を用いることによって、留出液が
溶剤相と原料が主成分である相に分液し、それぞれの相
に分離後に、溶剤相は蒸留工程へ、原料はシアノ化反応
へそれぞれリサイクル使用できるため有利である。特
に、相互溶解度がそれぞれ5重量%以下の場合には、溶
解ロスが少なくなるので好適である。
ち、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化
炭化水素類等が挙げられる。中でも、脂肪族炭化水素類
は、原料の分解で発生する水や塩化水素に対して安定で
あることが多いため、好適に用いられる。中でも、炭素
数10〜18の飽和脂肪族炭化水素が好ましく、特に、
n−テトラデカンを用いる場合には、その使用量が少量
ですみ、且つ、留出液がn−テトラデカン相と原料が主
成分である相に分液するので、それぞれを分液後、n−
テトラデカン相は本蒸留工程へ、原料はシアノ化反応へ
とリサイクル使用することができるため好適に用いられ
る。
蒸気圧が変わるので、溶剤の種類により適宜選択して用
いることができるが、蒸留の生産性を考慮すれば、その
使用量は通常蒸留する対象物(原液)の全重量に対し、
0.01重量倍から10重量倍の範囲である。溶剤の使
用量がこれらの範囲よりも少ない場合には原料留出時の
温度が高くなるため、特に原料がCHEの場合熱分解に
よる塩化水素や水が発生し、それが、生成したシアノ化
化合物の分解を誘発し、蒸留収率の低下を招くので好ま
しくない。また、使用量がこの範囲よりも多い場合に
は、該溶剤を留出させるために過剰の熱エネルギーを加
える必要があり、経済的ではない。
良いし、必要で有れば蒸留中に加熱器を通してガス状、
もしくは液状で蒸留塔に供給することができる。本発明
における蒸留は、常圧下で実施することもできるが、減
圧下で行う方が、留出温度を下げることができるので好
ましい。また、回分蒸留でも、連続蒸留でも実施可能で
ある。蒸留塔の段数は、使用する溶剤により単蒸留とす
ることもできるが、通常は1段以上20段以下、好まし
くは1〜10段の範囲で選択される。段数が20段より
も多い場合には、塔の圧力損失による留出温度の上昇を
招き、原料の熱分解を誘発するので好ましくない。還流
比は0以上30以下の範囲で適宜選択することができる
が、この範囲よりも大きくしても、加熱時間が長くなる
だけであり、実際的では無い。塔の充填剤としては、な
るべく圧力損失の少ない物を適宜選択して用いることが
できる。特にカ−ボン製の規則充填物を使用する場合に
は、耐腐食性もあり、圧力損失も少ないので有利であ
る。
離した原料化合物Aを主成分とする溶液に含まれる炭素
−炭素二重結合含有化合物Bを、原料化合物Aと分離可
能な付加物に変換する付加試薬と反応させる付加反応工
程を有する。この付加反応工程においては、適当な溶媒
の存在下に付加試薬と反応させるのが望ましい。この溶
媒としては、反応を進行させる溶媒であればよいが、回
収した原料、反応付加試薬を良く溶解する溶媒が好まし
い。また、シアノ化反応で使用する溶媒と同じ溶媒を用
いれば、該処理の後、そのまま、シアノ化反応に供する
ことが出来るため、好適である。特に好適なのは、水で
ある。溶媒量は、回収した原料を含む溶液に対し、0.
3〜20倍の間が好ましい。
重結合と反応し、これを不活性化する化合物であれば、
特に限定されることなく使用することが可能である。好
適には、還元性の付加試薬、即ち、亜硫酸ナトリウム、
亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩類、亜硫酸水素ナトリウ
ム、亜硫酸水素カリウム等の亜硫酸水素塩類、更に好適
には亜硫酸のアルカリ金属塩、特には安価な亜硫酸ナト
リウムが望ましい。
を有する不純物類の0.5〜5モル倍の間が好適であ
る。付加試薬との反応温度は、0℃から100℃までの
範囲で溶媒、モル比等により適宜選択される。好適に
は、30℃から70℃が反応速度も早く、好ましい。こ
れより温度が高くなると、原料の熱分解が懸念される。
上記の通りの処理により不活性化された不純物類は、水
溶性の塩となっている。従って、この処理が終了した
ら、処理液と分液し、且つ、不活性化された不純物類を
殆ど溶解しない様な抽剤を用いて原料を抽出し、これを
濃縮することで高純度の原料を回収することができる。
また、処理後の液をそのままシアノ化反応に供すること
ができる。この場合、処理の際の溶媒がシアノ化反応溶
媒と同一であることが望ましく、好適には水溶液であ
る。
シアノ化反応にリサイクル使用される。回収した原料を
用いるシアノ化反応以下の工程は、新品の原料を用いる
反応以下の工程と、全く同様に操作することができる。
本発明においては、シアノ化反応時の原料として、上記
の通り回収された原料単独、又は上記の通り回収された
原料とフレッシュ品との混合物が使用される。
化反応に供される原料化合物A中に占める炭素−炭素二
重結合含有化合物B(特に原料がCHEの場合はHA)
の量を、好ましくは14重量%以下、より好ましくは7
重量%以下、最も好ましくは1重量%以下とするのが望
ましい。シアノ化反応に供される原料中に炭素−炭素二
重結合含有化合物の量が多すぎると、シアノ化反応での
反応成績に影響を与え、シアノ化化合物の収率が低下す
る傾向がある。また、炭素−炭素二重結合含有化合物の
濃度をゼロにすることも出来るが、そのためには二重結
合と反応する付加試薬の量が多くなったり、反応時間が
長くなったりするので、生産性とコストを考慮して、通
常0.1重量%以上であり、かつ14重量%以下の範囲
で炭素−炭素二重結合含有化合物の量を制御するのが好
ましい。
を用いて処理し、好ましくはシアノ化反応に供される原
料において炭素−炭素二重結合含有化合物の量を一定量
以下とすることによって、原料をリサイクルして使用し
ても、不純物の蓄積を回避することができ、更にはシア
ノ化化合物と蒸留分離の困難である化合物(例えば、3
−シアノブチロラクトン(3CBL)等の高沸物の生成
を抑制することができる。尚、本発明においては、各バ
ッチ処理において、回収した原料中の炭素−炭素二重結
合含有化合物の量がそれほど多くはなく、それをリサイ
クルさせた場合に実質的に問題がない場合には、例えば
炭素−炭素二重結合含有化合物の量がシアノ化反応に供
される原料中14重量%を超えていない場合には、連続
した製造法において、何ら処理せずに、回収した原料を
リサイクルするバッチが存在していてもよい。また、フ
レッシュな原料と回収した原料を混合して、炭素−炭素
二重結合含有化合物の量が14重量%を超えない場合に
も同様である。
素二重結合含有化合物としては、限定されるものではな
いが、下記に記載されるような化合物が挙げられる。
発明の形態は、実施例のみに限定されるものでは無い。 [実施例1]還流冷却器を備えた200mlガラス製反
応器にHA2.0g(純度76.7%)、CHE20.
0g、亜硫酸ナトリウム2.22gおよび36.0gの
水を仕込み、攪拌下、50℃に2時間加熱した。その
後、ガスクロマトグラフで分析する為に、36.0gの
AcOEtを加え、CHE、HA、その他不純物を抽出
し、CHE、HAの残存率を算出したところ、CHEは
100%残存していたが、HAは7.2%まで残存率が
低下していた。この回収CHE(二重結合含有化合物H
Aの含有量は0.6重量%)を、NaCN/CHE=
1.32MRの条件下、水溶媒中でのシアノ化反応に再
利用したところ、反応成績に対する影響は見られず、シ
アノ化化合物の収率は53%であった。
0gとした以外は実施例1と同様にして反応を行い、ガ
スクロマトグラフにより残存率を算出した。その結果、
CHEは100%残存、HAは1.8%しか残存してい
なかった。実施例1と同様に、この回収CHE(二重結
合含有化合物HAの含有量は0.2重量%)をシアノ化
反応に再利用したところ、反応成績への影響は無く、収
率は54%であった。
度を25℃とし、且つ、反応時間を3時間とした以外は
実施例1と同様に反応を行い、ガスクロマトグラフによ
り残存率を算出した。その結果、CHEは100%残
存、HAは34.3%残存していた。実施例1と同様
に、この回収CHE(二重結合含有化合物HAの含有量
は3重量%)をシアノ化反応に再利用したところ、反応
成績への影響は無く、収率は54%であった。
亜硫酸ナトリウムを加えなかった以外は実施例1と同様
にして反応を行い、ガスクロマトグラフにて残存率を算
出した。その結果、CHE、HA共に、100%の残存
が確認された。この回収CHE(二重結合含有化合物H
Aの含有量は15重量%)をそのままシアノ化反応に再
利用したところ、収率が大きく低下し、42%であっ
た。
利用するシアノ化化合物の製造方法において、シアノ化
反応に供される原料に含有される、炭素−炭素二重結合
を有する不純物類を、特定の試薬で処理して減らすこと
により、リサイクルプロセスにおける該二重結合を有す
る不純物の蓄積を抑制し、高収率でシアノ化化合物を製
造することができる。
Claims (7)
- 【請求項1】 分子内にエステル基を有し且つエステル
基のβ位に水酸基を有するシアノ化化合物の製造方法で
あって、(1)シアノ基と置換し得る脱離基を有する原
料化合物Aをシアノ化反応に付してシアノ化化合物を得
るシアノ化反応工程、(2)シアノ化反応において未反
応の原料化合物Aを主成分とする溶液を、シアノ化化合
物と分離する分離工程、(3)分離した原料化合物Aを
主成分とする溶液に含まれる炭素−炭素二重結合含有化
合物Bを、原料化合物Aと分離可能な付加物に変換する
付加試薬と反応させる付加反応工程、及び、(4)付加
反応後に原料化合物Aをシアノ化反応に再利用する再利
用工程を有することを特徴とするシアノ化化合物の製造
方法。 - 【請求項2】 工程(2)において、原料化合物Aとシ
アノ化化合物との分離を蒸留により行う請求項1に記載
のシアノ化化合物の製造方法。 - 【請求項3】 10Torrでの沸点が50℃以上16
0℃以下の範囲である溶剤を添加して蒸留を行う請求項
2に記載のシアノ化化合物の製造方法。 - 【請求項4】 添加する溶剤が炭素数10〜18の飽和
脂肪族炭化水素である請求項3に記載のシアノ化合物の
製造方法。 - 【請求項5】 該付加試薬が、亜硫酸塩又は亜硫酸水素
塩である請求項1〜4のいずれか一項に記載のシアノ化
合物の製造方法。 - 【請求項6】 該付加試薬が、亜硫酸のアルカリ金属塩
である請求項1〜5のいずれか一項に記載のシアノ化合
物の製造方法。 - 【請求項7】 シアノ化化合物が、4−シアノ−3−ヒ
ドロキシ酪酸アルキルエステルである請求項1〜6のい
ずれか一項に記載のシアノ化化合物の製造方法。
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---|---|---|---|
JP2002140449A JP2003335745A (ja) | 2002-05-15 | 2002-05-15 | シアノ化化合物の製造方法 |
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