JP2003328001A - 金属粉末およびその製造方法 - Google Patents

金属粉末およびその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 Au−Ag合金からなり導体膜形成用材料等
として適した所定の粒径および形状を有する金属粉末、
この金属粉末を用いた導体ペースト、ならびにこの金属
粉末の製造方法を提供すること。 【解決手段】 本発明の金属粉末は、金と銀とを主体と
する合金(Au−Ag合金)からなり、平均粒径が0.
1〜1.0μmであり、ほぼ球状に形成されている。本
発明の導体ペーストはこの金属粉末を含有する。本発明
のAu−Ag合金製造方法は、Au源とAg源とを含有
する原料溶液を用意する工程と、その原料溶液のミスト
を生成する工程と、そのミストを加熱して粉末化する工
程とを包含し、ここで、該原料溶液として、媒質の硝酸
含有率が40〜65質量%である硝酸溶液を用いること
を特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、金および銀を主
体とする合金からなる金属粉末およびその製造方法に関
する。特に、金および銀を主体とする合金からなり導体
ペースト調製用材料等として適した性状を有する金属粉
末およびその製造方法、ならびに該粉末を含有する導体
ペーストに関する。
【0002】
【従来の技術】 ハイブリッドIC、マルチチップモジ
ュール等の構築に用いられるセラミック配線基板その他
のセラミック電子部品等に所定パターンの導体膜(配
線、電極等)を形成する材料として導体ペーストが使用
されている。この導体ペーストは、導体を形成する主成
分たる金属粉末と、必要に応じて添加される種々の添加
剤(無機結合剤、ガラスフリット、フィラー等)とを、
所定のビヒクル(有機媒質)に分散させて調製される導
体形成材料である。かかる導体ペーストは、スクリーン
印刷等の一般的な手法により、セラミック焼成基材ある
いは焼成前のセラミック基材(例えば、積層セラミック
コンデンサ用の誘電体グリーンシート)等に印刷・塗布
される。次いで、当該塗布物(塗膜)を適当な温度で焼
成する(焼き付ける)ことにより、あるいは該塗布物と
焼成前のセラミック基材とを共に焼成することにより、
当該セラミック基材等のセラミック電子部品上に所定パ
ターンの導体膜が形成される。
【0003】このような導体ペーストに用いられる金属
粉末として典型的なものに、金(Au)、銀(Ag)、
白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属を主体に
構成されたものがある。また、これらの貴金属の合金を
主体とする合金粉末が使用される場合もある。かかる導
体ペースト用金属粉末の好ましい一例として、金と銀と
を主体とする合金からなる金属粉末(以下、「Au−A
g合金粉末」ともいう。)が挙げられる。このようなA
u−Ag合金粉末を製造する従来の方法としては、(1).
金を主体とする粉末と銀を主体とする粉末とを混合し、
この混合粉末を熱処理(焼成)して合金化する方法(混
合焼成法)や、(2).この合金粉末を構成する金属を加熱
して溶融状態とし、この溶融金属を噴霧して冷却する方
法(溶融噴霧法)が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】 ところで、セラミッ
ク電子部品の小型化、高密度化、高性能化等にともな
い、導体膜形成用の金属粉末としては粒径が比較的小さ
く(例えば平均粒径0.1〜1.0μm程度)、粉末の
形状が球形に近いものが望まれている。しかし、上述の
溶融噴霧法では粒径の比較的小さい(例えば平均粒径1
μm以下の)金属粉末を得ることは困難である。また、
上述の混合焼成法では球形の金属粉末を得難く、その金
属組成も不均一になりやすい。
【0005】ここで、例えばAg−Pd合金粉末につい
ては、導体膜形成用等の用途に適した粉末を製造する方
法として、いわゆる「噴霧熱分解法」が知られている。
これは、Ag源(例えば硝酸銀)およびPd源(例えば
硝酸パラジウム)を含む原料溶液を超音波振動子等によ
って微小な液滴(ミスト)とし、このミスト中の溶媒を
高温で蒸発させるとともに、得られた固体粒子を高温で
熱分解させてAg−Pd合金粉末を得る方法である。こ
の噴霧熱分解法によると、粒径が比較的小さくかつ球形
に近い形状のAg−Pd合金粉末を得ることができる。
【0006】かかる噴霧熱分解法をAu−Ag合金粉末
の製造に適用しようとする場合、原料溶液に含有させる
Au源としては、まず、各種金化合物の製造に汎用され
るテトラクロロ金(III)酸(塩化金酸)の塩酸溶液が考
えられる。また、Ag源としては、各種金化合物の製造
に汎用される銀の硝酸溶液、または硝酸銀の硝酸溶液が
考えられる。これらの各々の溶液は比較的簡単に作製す
ることができる。また、各溶液の経時安定性(例えば、
時間を経ても沈殿等が生じないことをいう)も良好であ
る。ところが、テトラクロロ金(III)酸の塩酸溶液と、
銀または硝酸銀の硝酸溶液とを混合すると、銀化合物が
析出して沈殿してしまい、Au源とAg源とが溶液中に
共存した安定な(噴霧熱分解法に適した)原料溶液を調
製することができない。
【0007】このように、金と銀とを主体とする合金か
らなる金属粉末(Au−Ag合金粉末)に関しては、噴
霧熱分解法による粉末の製造に適した原料溶液の組成や
調製方法等が見出されていなかった。このため、導体膜
形成用材料等として適した性状のAu−Ag合金粉末を
得ることは従来きわめて困難であった。例えば、平均粒
径が0.1〜1.0μmの範囲にあり、かつほぼ球形に
形成されたAu−Ag合金粉末およびその製造方法は、
これまで知られていなかった。
【0008】そこで本発明は、金と銀とを主体とする合
金からなり、導体膜形成用材料等として適した所定の粒
径および形状を有する金属粉末(Au−Ag合金粉末)
を提供することを目的とする。本発明の他の目的は、か
かるAu−Ag合金粉末を用いた導体ペーストを提供す
ることである。関連する他の目的は、かかる導体ペース
トから形成された導体膜を備えるセラミック電子部品お
よびその製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】 本発明者は、噴霧熱分
解法によるAu−Ag合金粉末の製造において、原料溶
液として所定範囲の硝酸含有率を有する硝酸溶液が適し
ていることを見出した。さらに、このような原料溶液を
噴霧熱分解させることにより導体膜形成用途等に好適な
性状を備えるAu−Ag合金粉末が得られることを見出
して本発明を完成した。
【0010】すなわち本発明によると、金と銀とを主体
とする合金からなる金属粉末であって、平均粒径が0.
1〜1μmであり、ほぼ球状に形成されている金属粉末
(Au−Ag合金粉末)が提供される。本発明のAu−
Ag合金粉末は、上述の性状(粒径および形状)を有す
ることから、緻密な導体膜を形成し得る。したがって、
かかるAu−Ag合金粉末は、導体膜形成用の導体ペー
ストに用いられる金属粉末等として好適である。このよ
うにほぼ球状の金属粉末は他の材料と均一に混合しやす
い。例えば、導体ペーストに用いる場合において、この
金属粉末をビヒクルに均一に分散させることができるの
で好ましい。
【0011】なお、本明細書中において金属粉末が「ほ
ぼ球状」とは、この金属粉末の70個数%以上が球状で
あることをいう。また、この「球状」とは、粒子の長径
に対する短径の比(アスペクト比)が0.8以上、より
好ましくは0.9以上であることをいう。
【0012】また、本発明によると、前記Au−Ag合
金粉末を含む導体ペーストが提供される。この導体ペー
ストは、本発明のAu−Ag合金粉末を含む(典型的に
は、導体を形成する主成分たる金属粉末として含む)こ
とから、緻密な導体膜を形成し得る。また、このような
導体ペーストを用いて形成された導体膜は、Au−Ag
合金を主体とすることによる優れた特性を示す。例え
ば、電気的特性、耐酸化性、半田耐熱性等のうち一つ以
上の特性が良好である。
【0013】本発明によると、金と銀とを主体とする合
金からなる金属粉末(Au−Ag合金粉末)を製造する
方法が提供される。この製造方法は、Au源とAg源と
を含有する原料溶液を用意する工程と、その原料溶液の
ミストを生成する工程と、そのミストを加熱して粉末化
する工程とを包含する。ここで、該原料溶液として、そ
の媒質の硝酸含有率がほぼ40〜65質量%(より好ま
しくはほぼ45〜60質量%)の範囲にあるものを使用
する。「媒質の硝酸含有率」をこの範囲とすることによ
り、Au源とAg源とが安定して分散した(析出しにく
い)原料溶液を調製することができる。このため、かか
る原料溶液を噴霧熱分解することにより、導体膜の形成
に適した性状(粒径、形状等)を有するAu−Ag合金
粉末(例えば、平均粒径が0.1〜1μmであり、ほぼ
球状に形成されているAu−Ag合金粉末)を製造する
ことができる。この原料溶液はCl元素(特にClイオ
ン)を実質的に含有しないことが好ましい。
【0014】なお、ここで「Au源」とは所定の条件で
熱分解可能な金化合物を、「Ag源」とは所定の条件で
熱分解可能な銀化合物をいう。Au源およびAg源のそ
れぞれは、その一部または全部が原料溶液中においてイ
オン(錯イオンを含む意味である。)となっていること
が好ましい。Au源の全部およびAg源の全部が原料溶
液中においてイオンとなっていることがより好ましい。
また、本明細書中において「媒質」とは、溶液の構成成
分であって、溶媒(水、低級アルコール等)と硝酸その
他の酸とを併せたものを指す。また、「媒質の硝酸含有
率」とは、媒質の質量(溶媒の質量+硝酸その他の酸の
質量)に占める硝酸の質量の割合をいう。
【0015】原料溶液の好適な調製方法としては、金水
酸化物の硝酸溶液と、銀の溶液または銀化合物の溶液と
を混合する方法が例示される。ここで、金の「水酸化
物」とは、原料溶液中において一部または全部が塩(例
えば、水酸基の一部がNa,K等のアルカリ金属のイオ
ン、硫酸イオン等により置換された状態)を形成してい
るものを含む意味である。原料溶液の調製に用いられる
「金水酸化物」の典型例はAu(OH)3(水酸化金)
である。
【0016】
【発明の実施の形態】 以下、本発明の好適な実施形態
につき詳細に説明する。本発明の金属粉末(Au−Ag
合金粉末)は、AuとAgとを主体とする合金からなる
粉末である。この金属粉末は、AuおよびAg以外に、
ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)等の貴金属(白
金族)元素類、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバル
ト(Co)、鉄(Fe)、スズ(Sn)、亜鉛(Z
n)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タ
ンタル(Ta)等の卑金属元素類を含有することができ
る。本発明のAu−Ag合金粉末を構成する金属の組成
としては、AuとAgとの合計質量の占める割合が全体
の90質量%以上(より好ましくは95質量%以上)で
ある組成が好ましく、実質的にAuおよびAgの二成分
からなる組成が特に好ましい。このAu−Ag合金粉末
におけるAuとAgとの含有割合は特に限定されない。
典型的にはAu/Agの質量比を5/95〜95/5の
範囲とすることができ、15/85〜85/15の範囲
とすることが好ましく、50/50〜80/20の範囲
とすることがより好ましい。Au/Agの質量比が上記
範囲にある合金粉末は、両金属の合金化による特性(例
えば、電気的特性(低抵抗率等)、耐酸化性、半田耐熱
性等)をよく発揮することができるので好ましい。
【0017】このAu−Ag合金粉末は「ほぼ球状」に
形成されている。かかる形状のAu−Ag合金粉末によ
ると、歪な形状の粉末と比較して、分散性がより良好な
導体ペースト等を調製することができる。粉末の分散性
が良好であると、この導体ペーストを例えば誘電体グリ
ーンシートの所定位置に均質に付着させることができ
る。また、かかる形状のAu−Ag合金粉末は、歪な形
状の粉末と比較して、充填性がより良好である。粉末の
充填性が良好であると、例えば誘電体グリーンシートの
所定位置に本発明の金属粉末を、例えばこの金属粉末を
含む導体ペーストの塗布・乾燥によって、緻密(高密
度)に付着させることができる。したがって、各種セラ
ミック電子部品(例えば積層セラミックコンデンサ:以
下、MLCCともいう。)の製造において、上記形状を
有する本発明のAu−Ag合金粉末あるいはこれを含む
導体ペーストを導体膜(例えばMLCCの内部電極)の
形成に使用すると、より高精度のセラミック電子部品を
得ることができる。上記充填性向上のためには、この金
属粉末の表面が平滑であることが特に好ましい。また、
金属粉末の結晶性が高いもの(典型的には単結晶質のも
の)は、上記充填性をさらに向上させ得るため好まし
い。
【0018】上記Au−Ag合金粉末の平均粒径は0.
1〜1μmであり、0.2〜0.8μmであることが好ま
しい。このように平均粒径が比較的小さい金属粉末は、
MLCCの内部電極形成等の用途に好適である。また、
このAu−Ag合金粉末の比表面積(BET法によるガ
ス吸着に基づく)は1〜10m/gであることが好ま
しい。このAu−Ag合金粉末は、上記範囲の平均粒径
を有するとともに、その粒径分布が比較的シャープであ
ることが好ましい。例えば、全金属粉末の70個数%以
上の粒径が0.1〜1.0μmの範囲にあることが好ま
しい。さらに、この金属粉末は、粒径が過大な粒子を実
質的に含まないことが好ましい。具体的には、例えば粒
径10μm以上(より好ましくは粒径5μm以上)の粒子
を実質的に含まないことが好ましい。このようにシャー
プな粒径分布を有するAu−Ag合金粉末は充填性が良
好である。したがって、導体ペーストに用いられた場
合、さらに緻密で電気的特性等に優れた導体膜を形成す
ることができる。
【0019】さらに、本発明のAu−Ag合金粉末は、
この粉末が互いに凝集した粒子を実質的に含有しないこ
とが好ましい。このように凝集の少ない(典型的には凝
集のない)金属粉末は、ほぼ球形に形成されていること
と相俟って、その粉末の分散性が良好である。すなわ
ち、凝集した金属粉末を用いる場合と比較して、このよ
うな金属粉末によると分散性がより良好な導体ペースト
等を調製することができる。これにより、この良好な分
散性に基づく上述の効果がさらに高められる。これらの
粒径、粒径分布および凝集の程度は、例えば走査型電子
顕微鏡(SEM)写真を解析することにより測定するこ
とができる。
【0020】次に、本発明に係る導体ペーストについて
説明する。この導体ペーストは、通常、本発明の金属粉
末とビヒクルとを主成分として含有する。このビヒクル
は、本発明の金属粉末を分散させることのできるもので
あればよく、従来の導体ペーストに用いられているもの
を特に制限なく使用することができる。例えば、エチル
セルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロー
ス系高分子、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルメ
タクリレート、ポリエチルメタクリレート等のアクリル
系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹
脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等を
ベースとする有機バインダー;ブチルセロソルブアセテ
ート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶
剤、ブチルカルビトール等のエーテル系溶剤、エチレン
グリコールおよびジエチレングリコール誘導体、トルエ
ン、キシレン、ミネラルスピリット、ターピネオール等
の高沸点有機溶媒等を用いることができる。
【0021】本発明の導体ペーストには、副成分とし
て、種々の無機添加剤および/または有機添加剤を含ま
せることができる。この無機添加剤の例としては、ガラ
ス質その他のセラミック粉末、その他種々のフィラー等
が挙げられる。また、有機添加剤の例としては、セラミ
ック基材との密着性向上を目的としたシリコン系、チタ
ネート系及びアルミニウム系等の各種カップリング剤等
が挙げられる。さらに、本発明の導体ペーストに光硬化
性(感光性)を付与したい場合には、種々の光重合性化
合物及び光重合開始剤を適宜添加してもよい。上記の他
にも本発明の導体ペーストには、必要に応じて界面活性
剤、消泡剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、重
合禁止剤等を適宜添加することができる。これら添加剤
は、従来の導体ペーストの調製に用いられ得るものであ
ればよく、詳細な説明は省略する。
【0022】次に、本発明の導体ペーストを調製する際
の操作について説明する。本発明の導体ペーストは、従
来の導体ペーストと同様、典型的には本発明の金属粉末
と上記ビヒクルを混和することによって容易に調製する
ことができる。このとき、必要に応じて上述したような
添加剤を添加・混合するとよい。例えば、三本ロールミ
ルその他の混練機を用いて、上記合金粉末および各種添
加剤を上記ビヒクルとともに所定の配合比で直接混合
し、相互に練り合わせることにより、本発明の導体ペー
ストが調製され得る。
【0023】特に限定するものではないが、好ましく
は、本発明の金属粉末の含有率が導体ペースト全体の6
0〜95質量%となるように各材料を混練するのがよ
く、70〜90質量%となるように混練するのが特に好
ましい。また、ビヒクルの使用量は、導体ペースト全体
のほぼ1〜40質量%となる量が適当であり、1〜20
質量%となる量が特に好ましい。なお、各成分の含有率
に係る上記数値範囲は厳密に解釈すべきでなく、本発明
の目的を達成し得る限りかかる範囲からの若干の逸脱を
許容するものである。また、本発明の導体ペーストに含
有される金属粉末は、実質的に本発明のAu−Ag合金
粉末からなることが好ましいが、その他の金属粉末を副
成分として含有することもできる。この「その他の金属
粉末」は、純金属からなる粉末でもよく、合金からなる
粉末でもよい。その平均粒径は0.1〜1μmの範囲で
あってもよく、この範囲外であってもよい。その形状は
ほぼ球形であることが好ましいが、球形以外の形状(例
えばフレーク状)であってもよい。
【0024】このようにして製造される本発明の導体ペ
ーストは、上記粒径および形状のAu−Ag合金粉末を
含有することから、各種セラミック電子部品(例えばM
LCC)等の製造に好適に使用されて、緻密で電気的特
性等に優れた導体膜を形成することができる。この導体
ペーストは、本発明のAu−Ag合金粉末を含有するこ
とから、例えば金属粉末としてAg粉末のみを用いた導
体ペーストに比べて、より優れた高温焼成適性を有す
る。すなわち、より高い温度で焼成された場合にも、発
泡や剥離、過剰な収縮、導体膜の蒸発等の現象が生じに
くく、良好な導体膜を形成することができる。この導体
ペーストから形成された導体膜は、例えば金属粉末とし
てAu粉末のみを用いた導体ペーストから形成された導
体膜に比べて電気的特性(低抵抗率等)がより良好であ
る。また、例えば金属粉末としてAg粉末のみを用いた
導体ペーストから形成された導体膜に比べて半田耐熱
性、耐酸化性等の特性がより良好である。
【0025】次に、本発明に係る金属粉末(Au−Ag
合金粉末)の製造方法について説明する。この製造方法
においては、噴霧熱分解用の原料溶液として、Au源お
よびAg源が媒質に分散した溶液(典型的には、水溶液
またはコロイド溶液)を用いる。Au源として好ましい
ものは、Au(OH)3,H[Au(OH)4],K[A
u(OH)4]等の金水酸化物であり、特に好ましいA
u源はAu(OH)3(水酸化金)である。Ag源とし
て好ましいものは銀またはAgNO3(硝酸銀)であ
り、特に好ましいAg源はAgNO3である。このよう
なAu源およびAg源は、原料溶液中においてその実質
的に全部がイオン(錯イオンを含む意味である。)とな
っていることが好ましい。また、Au源および/または
Ag源の一部または全部が塩を形成していてもよい。こ
の原料溶液はCl元素(特にClイオン)を実質的に含
有しないことが好ましい。
【0026】かかる原料溶液の「媒質」を構成する溶媒
の典型例は、水または水を含む混合溶媒である。「水を
含む混合溶媒」において水と併用し得る溶媒としては、
水と均一に混合し得るもの(例えばアルコール類、ケト
ン類等)が挙げられる。水と他の溶媒との混合割合は特
に限定されないが、水の占める割合が50質量%以上
(より好ましくは80質量%以上)である組成の混合溶
媒が好ましい。好ましく使用される溶媒としては、水、
または水と低級アルコール(典型的には炭素原子数1〜
4の低級アルコール)との質量比80/20〜99/1
の混合溶媒が例示される。特に好ましい溶媒は水であ
る。
【0027】原料溶液の媒質は、上記溶媒の他に少なく
とも硝酸を含有する。その含有率は、媒質全体に対して
ほぼ40〜65質量%の範囲であり、好ましくはほぼ4
5〜60質量%の範囲である。媒質の硝酸含有率(以
下、単に「硝酸含有率」ともいう。)が上記範囲よりも
高すぎるとAg化合物が析出しやすくなる傾向にある。
一方、硝酸含有率が上記範囲よりも低すぎるとAu化合
物が析出しやすくなる傾向にある。硝酸含有率を上記範
囲とすることにより、原料溶液におけるAu源およびA
g源の溶解性・分散性等が向上する。すなわち、噴霧熱
分解用として適した安定な(金属化合物等の析出が抑制
された)原料溶液となる。
【0028】なお、原料溶液の媒質には、その安定性を
顕著に損なわない範囲で、硝酸以外の各種無機酸および
/または有機酸を含有させることができる。これらのう
ち、噴霧熱分解により分解・揮発させ得る(すなわち、
噴霧熱分解後に残留物を残さない)化合物が好ましい。
具体的には、酢酸、硫酸等が使用可能である。本発明の
製造方法に用いられる原料溶液の好ましい媒質として
は、水と硝酸との合計量に対して硝酸40〜65質量%
(より好ましくは45〜60質量%)を含有するものが
挙げられる。かかる硝酸含有率であって、水以外の溶媒
や硝酸以外の酸を実質的に含有しない媒質(実質的に水
および硝酸からなる媒質)がさらに好ましい。
【0029】この原料溶液は、Ag源とAu源とを所定
の割合で含有する。本発明の製造方法により得られるA
u−Ag合金粉末におけるAu/Agの組成比は、典型
的にはこの原料溶液に含まれるAuとAgとの割合に応
じたものとなる。すなわち、この割合を調整することに
よって、任意の組成のAu−Ag合金粉末を製造するこ
とができる。得られるAu−Ag合金粉末の粒径は、原
料溶液の組成(例えば金属成分の濃度)およびこの原料
溶液から生成させたミストの液滴径等により調節するこ
とができる。
【0030】このような原料溶液を調製する方法として
は、(1).Au源を含有する溶液とAg源を含有する溶液
とを混合する工程、(2).Au源を含有する溶液にAg源
を添加する工程、(3).Ag源を含有する溶液にAu源を
添加する工程、のいずれかを含む方法が例示される。こ
れらの方法のうち(1).の方法が特に好ましい。このよう
な方法等によりAu源とAg源とを含む混合溶液を作製
した後、この混合溶液を必要に応じて希釈または濃縮す
ることによって、溶液に含まれるAu源およびAg源の
濃度を調整することができる。混合溶液の希釈は、この
混合溶液に溶媒を添加する方法、硝酸を添加する方法、
硝酸の溶媒溶液(硝酸溶液)を添加する方法等により行
うことができる。本発明にとり好ましい原料溶液の調製
方法としては、Au源を含有する溶液(Au源溶液)と
Ag源を含有する溶液(Ag源溶液)とを混合し、得ら
れた混合溶液(Au源とAg源とを含む)を必要に応じ
て希釈する方法が挙げられる。この混合溶液の希釈は硝
酸溶液の添加により行うことが好ましい。
【0031】原料溶液の調製に用いるAu源溶液として
は、媒質が実質的に水および硝酸からなり、その硝酸含
有率がほぼ40〜80質量%(より好ましくはほぼ45
〜70質量%)の範囲にある溶液が好ましい。Au源溶
液の硝酸含有率が高すぎると、このAu源溶液をAg源
溶液と混合する際にAg化合物が析出しやすくなる場合
がある。一方、Au源溶液の硝酸含有率が低すぎると、
このAu源溶液におけるAu源の溶解性・分散性が低下
することがある。好ましく用いられるAu源溶液はAu
(OH)3の硝酸溶液である。この溶液は、Au(O
H)3を硝酸に溶解させる等の方法により調製すること
ができる。また、原料溶液の調製に用いるAg源溶液と
しては、媒質が実質的に水および硝酸からなり、その硝
酸含有率がほぼ10〜65質量%(より好ましくはほぼ
20〜60質量%、さらに好ましくはほぼ40〜55質
量%)の範囲にある溶液が好ましい。Ag源溶液の硝酸
含有率が低すぎると、このAg源溶液をAu源溶液と混
合する際にAu化合物が析出しやすくなる場合がある。
一方、Ag源溶液の硝酸含有率が高すぎると、このAg
源溶液におけるAg源の溶解性・分散性が低下すること
がある。好ましく用いられるAg溶液は、銀の硝酸溶液
またはAgNO3の硝酸溶液である。銀の硝酸溶液は銀
を硝酸に溶解させる等の方法により調製することができ
る。AgNO3の硝酸溶液は、銀の硝酸溶液から硝酸濃
度を高めてAgNO3を析出させ、このAgNO3をより
濃度の低い硝酸に溶解させる等の方法により調製するこ
とができる。
【0032】これらの溶液を、製造しようとするAu−
Ag合金粉末の組成に応じたAu/Agの割合となるよ
うな量比で混合する。このとき、混合後に得られる溶液
(混合溶液)の媒質の硝酸含有率がほぼ40〜65質量
%(好ましくはほぼ45〜60質量%)の範囲となるよ
うに、Au源溶液およびAg源溶液の組成(各溶液の媒
質の硝酸含有率やメタルコンテント等)を設定しておく
ことが好ましい。Au源溶液とAg源溶液とを混合する
際の具体的な操作方法としては、Au源溶液(典型的に
はAg源溶液よりも媒質の硝酸含有率が高い)中にAg
源溶液を少しづつ添加する方法が好ましい。かかる方法
によると、Ag源溶液中にAu源溶液を添加する方法に
比べて、金属の析出をよりよく防止することができる。
さらに、この混合溶液を必要に応じて希釈することによ
り、所望のメタルコンテントを有する原料溶液を調製す
ることができる。この希釈は、混合溶液に、この混合溶
液よりも媒質の硝酸含有率の高い硝酸溶液を添加するこ
とにより行うことが好ましい。
【0033】本発明の金属粉末製造方法において、原料
溶液のミストを精製する工程およびそのミストを加熱す
る工程は、従来公知の噴霧熱分解法等と同様に実施する
ことができる。例えば、原料溶液のミストは超音波振
動、スプレーその他の手段を用いて発生させることがで
きる。生成したミストを種々のキャリアーガス(典型的
にはN2 、Ar、He、CO2 から選択される一種また
は二種以上からなるガス)とともに加熱炉に導入する。
そして、この加熱炉内において所望の温度条件でミスト
の乾燥および熱分解処理を行う。これにより、目的とす
る金属粉末が得られる。この金属粉末は、原料溶液の組
成やミスト径等から予想される粒径と概ね一致した粒径
を有する。したがって本発明によると、例えば平均粒径
が0.1〜1μmであり、ほぼ球状に形成されているA
u−Ag合金粉末を安定的に製造することができる。
【0034】本発明の金属粉末および本発明の製造方法
により得られる金属粉末は、導体ペースト用材料として
特に好適である。また、かかる金属粉末は、金属顔料
(例えば、食器その他のセラミックス製品の装飾に用い
られる金属顔料(水金用途等))、粉末冶金材料等とし
ても利用することができる。
【0035】
【実施例】 以下、本発明に関するいくつかの実施例を
説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定す
ることを意図したものではない。
【0036】<実施例1>Au源として、実質的にCl
元素を含まないAu(OH)3(水酸化金)を用意し
た。このAu(OH)3を濃硝酸に溶かしてAu源溶液
(媒質の硝酸含有率;約67.5質量%、Auコンテン
ト;約4.9質量%)を調製した。一方、希硝酸にAg
NO3を溶かしてAg源溶液(媒質の硝酸含有率;約2
4.7質量%、Agコンテント;約3.3質量%)を調
製した。このようにして得られたAu源溶液およびAg
源溶液を、Au/Agの質量比が75/25となるよう
な割合で混合した。この混合は、まずAu源溶液の全量
を容器に入れ、このAu源溶液を攪拌しつつ、ここにA
g源溶液を少量づつ添加することにより行った。得られ
た混合溶液(媒質の硝酸含有率;約53.2質量%、メ
タルコンテント;約4.3質量%)は安定で均一なもの
であり、金属化合物の析出等はみられなかった。噴霧器
から発生する液滴径を3.5μmとして、熱分解後に得
られる粉末の径が0.5μmとなる溶液濃度を算出し
た。この溶液濃度に合うように上記混合溶液を濃硝酸
(硝酸含有率(硝酸濃度);約67.5質量%)で希釈
して、噴霧熱分解用の原料溶液を調製した。得られた原
料溶液(媒質の硝酸含有率;約56.9質量%、メタル
コンテント;約3.4質量%)は安定で均一なものであ
り、金属の析出等はみられなかった。
【0037】超音波噴霧器を用いて濃度調整後の硝酸溶
液(原料溶液)を噴霧し、この原料溶液から微小液滴
(ミスト)を生成させた。このミストを、N2をキャリ
アガスとして900℃に保持された反応管に通過させ
た。乾燥・熱分解後に残った粉末を静電捕集器にて捕集
した。図1は、捕集された粉末の走査電子顕微鏡写真で
ある。この図1から判るように、得られた粉末はほぼ球
状であり、かつ滑らかな表面を有し、さらにその粒径は
ほぼ均一であった。また、粒子の凝集等はみられず、分
散性も良好であった。この粉末の平均粒径は約0.5μ
mであった。化学分析の結果によれば、この粉末に含ま
れるAu/Agの質量比は約74/26であり、原料溶
液の質量比とほぼ一致していた。また、化学分析の結
果、この粉末に含まれる全不純物(Au,Ag以外の成
分)の割合は100ppm以下であり、純度の高い粉末が
得られた。
【0038】実施例1により得られた金属粉末につきX
線回折(XRD)分析を行った。また、噴霧熱分解法に
より作製したAu粉末と、噴霧熱分解法により作製した
Ag粉末とを混合し、この混合粉末につき同様にXRD
分析を行った。それらのX線回折パターンの要部(Au
単体のピークおよびAg単体のピークに相当する38度
付近の領域)を拡大したものを、実施例1で得られた金
属粉末については図2に、混合粉末については図3に示
す。これらのXRD回折パターンのメインピーク(図2
および図3中においてKαで示したピーク)を比較し
た。通常、回折対象に含まれる二成分の各々のピーク位
置が異なる場合、混合粉末では二成分それぞれ固有の位
置にピークが現れるのに対し、これらが合金化すると二
成分の間に合金特有のピークが現れるようになる。今回
の場合、Ag単体のピーク位置は38.115度、Au
単体のピーク位置は38.182度である。XRD回折
の結果、実施例1により得られた金属粉末と混合粉末と
では回折結果に明確な差が現れた。すなわち、図2およ
び図3の比較から判るように、混合粉末ではAuとAg
のピーク位置の違いによりピークがブロードとなってい
る。これに対して、実施例1により得られた金属粉末で
は一本の比較的シャープなピークが認められた。このこ
とから、実施例1で得られた粉末ではAuとAgとが合
金化していることが確認された。なお、混合粉末では微
小領域で見た場合にAuとAgとが不均一であること
も、図3においてピークがブロードになっている要因だ
と推察される。
【0039】<実施例2>この実施例2は、実施例1よ
りも媒質の硝酸含有率の高い原料溶液を用いてAu−A
g合金粉末を製造した例である。実施例と同様に調製し
たAu源溶液(媒質の硝酸含有率;約67.5質量%、
Auコンテント;約5.1質量%)と、実施例1よりも
硝酸含有率が高くなるように調製したAg源溶液(媒質
の硝酸含有率;約34.2質量%、Agコンテント;約
3.9質量%)とを、Au/Agの質量比が75/25
となるような割合で混合した。この混合溶液(媒質の硝
酸含有率;約56.4質量%、メタルコンテント;約
4.7質量%)を、熱分解後に得られる粉末の径が0.
5μmとなるように濃硝酸(硝酸含有率(硝酸濃度);
約67.5質量%)で希釈した。得られた原料溶液(媒
質の硝酸含有率;約60.1質量%、メタルコンテン
ト;約3.3質量%)は安定で均一なものであり、金属
の析出等はみられなかった。その後、実施例1と同様に
噴霧熱分解を行って粉末を得た。得られた粉末を走査電
子顕微鏡により観察したところ、その平均粒径は約0.
5μmであり、実施例1により得られた粉末と同様に、
導体ペースト調製用として良好な性状および分散性を有
していた。また、実施例1と同様に分析した結果、この
粉末に含まれるAu/Agの質量比は約75/25であ
り、全不純物の割合は100ppm以下であった。
【0040】<実施例3>この実施例3は、実施例1よ
りも媒質の硝酸含有率の低い原料溶液を用いてAu−A
g合金粉末を製造した例である。実施例1と同様に調製
したAu源溶液(媒質の硝酸含有率;約67.5質量
%、Auコンテント;約4.3質量%)と、実施例1よ
りも硝酸含有率が低くなるように調製したAg源溶液
(媒質の硝酸含有率;約1.0質量%、Agコンテン
ト;約3.4質量%)とを、Au/Agの質量比が75
/25となるような割合で混合した。この混合溶液(媒
質の硝酸含有率;約40.7質量%、メタルコンテン
ト;約4.0質量%)を、熱分解後に得られる粉末の径
が0.5μmとなるように濃硝酸(硝酸含有率(硝酸濃
度);約67.5質量%)で希釈した。得られた原料溶
液(媒質の硝酸含有率;約45.7質量%、メタルコン
テント;約3.4質量%)は安定で均一なものであり、
金属の析出等はみられなかった。その後、実施例1と同
様に噴霧熱分解を行って粉末を得た。得られた粉末を走
査電子顕微鏡により観察したところ、その平均粒径は約
0.5μmであり、実施例1により得られた粉末と同様
に、導体ペースト調製用として良好な性状および分散性
を有していた。また、実施例1と同様に分析した結果、
この粉末に含まれるAu/Agの質量比は約75/25
であり、全不純物の割合は100ppm以下であった。
【0041】<実施例4>この実施例4は、実施例1と
は平均粒径の異なるAu−Ag合金粉末を製造した例で
ある。実施例1と同様に調整したAu源溶液(媒質の硝
酸含有率;約67.5質量%、Auコンテント;約4.
9質量%)とAg源溶液(媒質の硝酸含有率;約24.
7質量%、Agコンテント;約3.3質量%)とを、A
u/Agの質量比が75/25となるような割合で混合
した。噴霧器から発生する液滴径を6.5μmとして、
熱分解後に得られる粉末の径が0.9μmとなる溶液濃
度を算出した。この溶液濃度に合うように上記混合溶液
(媒質の硝酸含有率;約53.2質量%、メタルコンテ
ント;約4.3質量%)を濃硝酸(硝酸含有率(硝酸濃
度);約67.5質量%)で希釈した。得られた原料溶
液(媒質の硝酸含有率;約56.9質量%、メタルコン
テント;約3.4質量%)は安定で均一なものであり、
金属の析出等はみられなかった。その後、平均液滴径
6.5μmのミストを発生させる超音波噴霧器を使用
し、実施例1と同様に原料溶液の噴霧熱分解を行って粉
末を得た。得られた粉末を走査電子顕微鏡により観察し
たところ、その平均粒径は約0.9μmであり、実施例
1により得られた粉末と同様に、導体ペースト調製用と
して良好な性状および分散性を有していた。また、実施
例1と同様に分析した結果、この粉末に含まれるAu/
Agの質量比は約75.5/25.5であり、全不純物
の割合は100ppm以下であった。
【0042】<実施例5>この実施例3は、実施例1と
は合金組成(Au/Agの質量比)が異なるAu−Ag
合金粉末を製造した例である。実施例1と同様に調整し
たAu源溶液(媒質の硝酸含有率;約67.5質量%、
Auコンテント;約3.9質量%)とAg源溶液(媒質
の硝酸含有率;約24.7質量%、Agコンテント;約
4.3質量%)とを、Au/Agの質量比が60/40
となるような割合で混合した。この混合溶液(媒質の硝
酸含有率;約52.1質量%、メタルコンテント;約
4.0質量%)を、熱分解後に得られる粉末の径が0.
5μmとなるように濃硝酸(硝酸含有率(硝酸濃度);
約67.5質量%)で希釈した。得られた原料溶液(媒
質の硝酸含有率;約56.1質量%、メタルコンテン
ト;約3.2質量%)は安定で均一なものであり、金属
の析出等はみられなかった。その後、実施例1と同様に
噴霧熱分解を行って粉末を得た。得られた粉末を走査電
子顕微鏡により観察したところ、その平均粒径は約0.
5μmであり、実施例1により得られた粉末と同様に、
導体ペースト調製用として良好な性状および分散性を有
していた。また、実施例1と同様に分析した結果、この
粉末に含まれるAu/Agの質量比は約59.5/4
0.5であり、全不純物の割合は100ppm以下であっ
た。
【0043】<参考例1>実施例1と同様に調整したA
u源溶液(媒質の硝酸含有率;約67.5質量%、Au
コンテント;約4.9質量%)と、実施例1よりも硝酸
含有率が高くなるように調製したAg源溶液(媒質の硝
酸含有率;約63.1質量%、Agコンテント;約3.
3質量%)とを、Au/Agの質量比が75/25とな
るような割合で混合したところ、白色の沈殿が生じた。
すなわち、この調製方法では安定で均一な混合溶液を得
ることができなかった。化学分析の結果、この沈殿の主
成分をなす元素はAgであった。この混合溶液の媒質の
硝酸含有率は約66質量%であった。
【0044】<参考例2>実施例3と同様に調整したA
u源溶液(媒質の硝酸含有率;約67.5質量%、Au
コンテント;約4.3質量%)とAg源溶液(媒質の硝
酸含有率;約1.0質量%、Agコンテント;約3.4
質量%)とを、Au/Agの質量比が75/25となる
ような割合で混合し、熱分解後に得られる粉末の径が
0.5μmとなるように水で希釈したところ、黒色の沈
殿が生じた。すなわち、この調製方法では安定で均一な
混合溶液を得ることができなかった。化学分析の結果、
この沈殿の主成分をなす元素はAuであった。この混合
溶液の媒質の硝酸含有率は約35.1質量%であった。
【0045】以上、本発明の具体例を詳細に説明した
が、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定する
ものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上
に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれ
る。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、
単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性
を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせ
に限定されるものではない。また、本明細書または図面
に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであ
り、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的
有用性を持つものである。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の金属粉末
(Au−Ag合金粉末)は、比較的小さな平均粒径
(0.1〜1μm)を有するとともにほぼ球状に形成さ
れていることから、充填性および分散性が良好である。
この金属粉末を含有する本発明の導体ペーストによる
と、上記粒径および形状を有する金属粉末を含有するこ
とにより、緻密で電気的特性等に優れた導体膜(例えば
MLCCの内部電極等に用いられる導体膜)を精度よく
形成することができる。また、本発明の金属粉末の製造
方法によると、噴霧熱分解用の原料溶液として媒質の硝
酸含有率が所定範囲にある硝酸溶液を用いることによ
り、所望の粒径を有するとともにほぼ球状に形成された
Au−Ag合金粉末を得ることができる。例えば、平均
粒径(0.1〜1μm)を有するとともにほぼ球状に形
成されたAu−Ag合金粉末を安定して製造することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1により得られたAu−Ag合金粉末
の走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】 実施例1により得られたAu−Ag合金粉末
のX線回折パターンを示す特性図である。
【図3】 Au粉末とAg粉末とを混合した混合粉末の
X線回折パターンを示す特性図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊藤 弘展 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番36 号 株式会社ノリタケカンパニーリミテド 内 (72)発明者 内藤 宏之 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番36 号 株式会社ノリタケカンパニーリミテド 内 Fターム(参考) 4K017 AA04 BA02 EJ01 EK05 4K018 BA01 BB03 BB04 BD04 KA33 5G301 DA03 DA05 DA42 DA53 DA55 DA57 DD01

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金と銀とを主体とする合金からなる金属
    粉末であって、 平均粒径が0.1〜1μmであり、ほぼ球状に形成され
    ている金属粉末。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の金属粉末を含む導体ペ
    ースト。
  3. 【請求項3】 金と銀とを主体とする合金からなる金属
    粉末を製造する方法であって、 金源と銀源とを含有する原料溶液を用意する工程と、 その原料溶液のミストを生成する工程と、 そのミストを加熱して粉末化する工程とを包含し、 ここで、該原料溶液として、媒質の硝酸含有率が40〜
    65質量%である硝酸溶液を用いる金属粉末製造方法。
  4. 【請求項4】 前記原料溶液は、金水酸化物の硝酸溶液
    と、銀化合物の硝酸溶液とを混合して調製されたもので
    ある請求項3に記載の金属粉末製造方法。
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