JP2003326461A - 金属板の表面処理設備及び金属板の製造方法 - Google Patents

金属板の表面処理設備及び金属板の製造方法

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JP2003326461A
JP2003326461A JP2002113501A JP2002113501A JP2003326461A JP 2003326461 A JP2003326461 A JP 2003326461A JP 2002113501 A JP2002113501 A JP 2002113501A JP 2002113501 A JP2002113501 A JP 2002113501A JP 2003326461 A JP2003326461 A JP 2003326461A
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solid particles
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Yukio Kimura
幸雄 木村
Masayasu Ueno
雅康 植野
Yasuhiro Sotani
保博 曽谷
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 固体粒子が金属板上に残留する量を少なく
し、固体粒子の歩留の低下を少なくすることができると
共に、金属板表面の清浄性を高めることができる金属板
の表面処理設備を提供する。 【解決手段】 遠心ロータ式投射装置は、モータ11に
よって駆動されるベーン10によって、遠心力を利用し
て固体粒子14を加速し、金属板1の表面に投射して表
面処理を行う。クリーナ室3a内部には、金属板1上に
堆積した固体粒子を吹き飛ばすためのエアパージノズル
5a〜5dが設置されている。クリーナ室出口部にエア
パージノズル6a、6bを配置し、エアパージノズル5
a〜5dによって吹き飛ばされた固体粒子がクリーナ室
3a内で反射して、下流側に向かって飛散するのを、ク
リーナ室3a上部の傾斜によって金属板上に落下させ、
落下した粒子をエアパージノズル6aによってクリーナ
室3aの上流側に吹き飛ばす。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微細な固体粒子を
鋼板等の金属板の表面に投射することによって、金属板
の表面粗さを調整する等の表面処理を行う設備に関する
ものであり、さらに詳しくは、固体粒子の歩留低下を少
なくして、金属板表面の清浄性を高めるための設備、及
びこの設備を使用して金属板を製造する方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】亜鉛めっき鋼板や冷延鋼板等のプレス成
形性に使用される薄鋼板に対しては、金属板の表面粗さ
を適切に調整することが必要とされている。これは、一
定の表面粗さを付与することによって、プレス成形時の
金型との間の保油性を高め、型かじりや金属板の破断等
のトラブルを防止するためである。例えば、金属板と金
型との摺動抵抗が増大すると、パンチ面における金属板
の破断、あるいはビード面近傍での金属板の破断が生じ
易くなる。
【0003】通常は、金属板の表面粗さを調整するため
に、圧延ロールの表面に一定の微視的凹凸を付与して、
調質圧延工程においてその凹凸を転写させるという手段
が用いられている。しかし、調質圧延においてロールの
表面粗さを転写させる方法では、緻密な凹凸を付与する
ことができず、またロール摩耗等による経時的なロール
粗さの変化によって金属板の表面粗さが変化してしまう
などの問題が生じていた。
【0004】本発明者らは、従来の調質圧延によるもの
とは異なる手段として、微細な固体粒子を亜鉛めっき鋼
板等の金属板表面に直接投射して、表面粗さを調整する
方法を見出した。これは、球状の固体粒子が金属板表面
に衝突することによって、微視的な凹み部が多数形成さ
れ、いわゆるディンプル状の微視的凹凸が形成するもの
である。
【0005】このようなディンプル状の微視的凹凸が形
成された表面形態は、特にプレス成形における金型との
間の保油性を向上させる効果に優れており、プレス成形
性を大幅に向上させることが可能となっている。また、
投射する固体粒子の粒子径が小さいほど、金属板表面に
は短ピッチの緻密な凹凸が付与されるため、塗装後の鮮
映性も向上し、自動車外板用途等に適した金属板を得る
ことが可能となる。
【0006】固体粒子の投射手段としては、遠心ロータ
式投射装置あるいは空気式投射装置が代表的である。空
気式投射装置は、圧縮空気を噴射ノズルによって加速さ
せ、その抗力を利用して固体粒子を加速させるものであ
る。特に、固体粒子の質量が小さい微細粒子の投射に適
しており、粒子速度を非常に大きくすることができるこ
とを特徴とする。一方、遠心ロータ式投射装置は、回転
するベーンによる遠心力を利用して固体粒子を投射する
ものであり、空気式投射装置に比べて大きな投射量を確
保することができるので、広幅の金属板を高速処理する
のに適している。
【0007】いずれにしても、亜鉛めっき鋼板や冷延鋼
板などの鉄鋼製造ラインにおいて、固体粒子を金属板表
面に投射する場合には、高速で搬送される金属板を短時
間に処理する必要があり、大量の固体粒子を短時間に投
射する必要がある。具体的には、板幅1000mmの金属板を
ライン速度100mpmにて金属板の両面に表面粗さを付与す
る場合に、投射密度(金属板の単位面積当たりに投射す
る固体粒子の重量)を5kg/mに設定したときの投射量
は1000kg/minである。
【0008】このとき、投射された固体粒子は、金属板
に衝突した後に、一旦回収され、分級処理などが施され
た後に、循環して使用されるのが通常である。また、投
射装置は投射室(キャビネット)内に設置され、投射し
た固体粒子が周囲へ飛散しないようにしている。
【0009】
【発明が解決すべき課題】以上のように、微細な固体粒
子を投射して表面粗さを付与する技術においては、投射
室内で固体粒子を投射することで、周囲に飛散しないよ
うにするのが通常である。しかし、連続して搬送される
金属板に固体粒子を投射する場合には、投射室出口部を
完全にシールすることはできず、一定の開口部を設けざ
るを得ない。出口部のシールを強固にすると、シール部
が金属板に直接接触して金属板表面に疵を生じさせた
り、金属板上に残留した粒子が金属板表面に押込まれた
りして表面欠陥になる可能性が高くなるからである。特
に、高速で搬送される金属板はライン速度の増減に対応
して、一定の振動が生じているため、金属板表面にスリ
疵が生じる場合が多い。
【0010】そのため、投射室出口の開口部からは、一
定量の固体粒子が投射室外部に持出されることになる。
投射室外へ持出された固体粒子は回収して循環使用する
ことができなくなるので、循環系内の固体粒子量が経時
的に減少して、固体粒子を適宜補充するする必要が生じ
る。これは固体粒子の歩留り低下をもたらして、金属板
に表面粗さを付与するための製造コストを上昇させる要
因となる。
【0011】また、投射室出口の開口部から投射室外に
持出された固体粒子は、再び金属板上に落下して製造ラ
インに配置された各種ロールと接触したり、それらのロ
ールに付着したりして、金属板表面に固体粒子のアブレ
ーシブ痕を生じさせることがある。また、固体粒子が金
属板表面に埋め込まれて金属板の清浄性が悪化するとい
った問題が生じることがある。
【0012】一方、投射室内部の出口部近傍にエアパー
ジ等を配置して、投射室上流側に向けて固体粒子を吹き
飛ばすという手段によって、固体粒子が投射室出口の開
口部から持出されないようにする対策も考えられる。
【0013】図8は、金属板1を連続的に搬送しなが
ら、遠心ロータ式投射装置によって金属板表面に粗さを
付与する状態を示したものである。遠心ロータ式投射装
置は、モータ11によって駆動されるベーン10によっ
て、遠心力を利用して固体粒子14を加速させる装置で
ある。固体粒子14は、タンク等に貯められた状態か
ら、粒子供給管13を通じて、ベーン10に供給され
る。その途中には、開度調整弁12が設置され、その開
度を調整することによって固体粒子14の供給量を制御
することができる。図8は、投射室2の出口部近傍に投
射室上流側に向けて固体粒子を吹き飛ばすためのエアパ
ージ30a、30bを設置した場合の例を示している。
【0014】しかし、表面粗さの付与に適する固体粒子
として、平均粒子径が300μm以下の非常に微細な粒子を
使用するので、エアパージ30a、30bによって容易
に飛散した粒子は、投射機による投射粒子の流れと干渉
して、金属板の表面粗さの付与を阻害するという問題が
生じる。すなわち、エアパージによって投射室上流側に
吹き飛ばされた固体粒子は直接投射機と金属板の間に飛
散して、投射機によって投射された粒子と衝突し、投射
粒子の速度を低下させる。また、エアパージによって直
接的に投射粒子と干渉を生じさせるだけでなく、投射室
内部で反射して、投射機による固体粒子の投射を阻害し
たり、投射機の上流側の金属板上に落下し堆積すること
で金属板表面に一種の保護層を生じさせ、投射による表
面粗さの付与を阻害する場合がある。
【0015】また、投射機によって投射された粒子の反
射等によって生じる固体粒子の流れと、エアパージによ
って吹き飛ばされた固体粒子の流れとが複合して、互い
に干渉しあいながら、投射室内部で複雑な固体粒子の運
動が生じるため、投射室内部での固体粒子の挙動を予測
することは困難である。これは、投射室内部から固体粒
子を吸引する吸引装置を設置する場合にも、効果的な吸
引装置の配置や能力の推定を困難にするものである。
【0016】このような問題の発生を防止するために、
投射機内部の出口部近傍で上流側に向けて固体粒子を吹
き飛ばすエアパージの流量を絞って、投射機による固体
粒子の流れと干渉しないようにした場合には、出口部か
らの持出しを防止する効果が低下してしまう。また、エ
アパージを上流側に向けることなく、金属板板端部方向
に向けて固体粒子を吹き飛ばしても、投射室出口部から
の持出しを防止する効果が低下するだけでなく、投射室
内で反射した粒子が投射室内で投射機下部に飛散して、
表面粗さの付与を阻害することになる。
【0017】以上のような問題点は、いずれも投射する
固体粒子が微細なために生じる現象であり、エアパージ
によって固体粒子が容易に飛散して、投射室内部で浮遊
することに起因し、その浮遊粒子の流れを制御するのが
困難であることによる。したがって、鋼板の脱スケール
を目的としたショットブラスト法等で使用される、比較
的大きな固体粒子を投射するような場合において使用さ
れる固体粒子を鋼板上から除去する技術を、表面粗さの
調整装置に適用しても効果的ではない。
【0018】例えば、特開平4−256578公報に
は、熱間圧延等により生じた表面の酸化層をいわゆる研
掃材となる固体粒子の投射により除去する場合に、鋼板
上に残ったショット粒子を、スクレーパとエアパージノ
ズルを使用して吹き落とす技術が開示されている。
【0019】しかし、特開平4−256578公報に記
載されている技術が対象とする装置は、脱スケールを目
的とするものであるため、鋼板表面への衝突力(固体粒
子の運動エネルギー)を大きくすべく、固体粒子の大き
さとして500μm〜2mm程度の比較的大きな固体粒子を使
用して、研掃作用を高める効果を狙うのが通常である。
したがって、エアパージノズルによって固体粒子を吹き
飛ばしても、固体粒子が浮遊して残留するようなことが
ない。
【0020】これに対して、金属板の表面粗さを調整す
る場合には、微細な固体粒子を投射するために、単にエ
アパージノズルで吹き飛ばすのでは、前述のように、ほ
とんどの固体粒子は空中に勢い良く吹き飛ばされて、表
面粗さの付与を阻害したり、浮遊した固体粒子が投射室
出口の隙間から系外に流出したりして、前記課題を解決
するために適用できない。
【0021】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
もので、微細な固体粒子を金属板の表面に投射すること
によって、金属板の表面粗さを調整する等の表面処理を
行う設備であって、固体粒子が金属板上に残留する量を
少なくし、固体粒子の歩留の低下を少なくすることがで
きると共に、金属板表面の清浄性を高めることができる
金属板の表面処理設備、及びこれらの設備を使用した金
属板の製造方法を提供することを課題とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の第1の手段は、連続して搬送される金属板に平均粒子
径300μm以下の固体粒子を投射する投射室を備えた金属
板の表面処理設備であって、投射室の出側に、当該投射
室と区切られたクリーナ室が設けられていることを特徴
とする金属板の表面処理設備(請求項1)である。
【0023】本手段が対象とする金属板は、主として冷
延鋼板、表面処理鋼板である。冷延鋼板には、普通鋼の
他に、高炭素鋼、電磁鋼板、アンバー等の特殊鋼も含
む。また、表面処理鋼板としては溶融めっきまたは電気
めっき等の手段により表面処理が施された各種表面処理
鋼板を含み、亜鉛めっき鋼板が主な対象である。プレス
成形性や塗装後の鮮映性が要求される場合が多く、鋼板
の表面粗さ(表面の微視的な凹凸の形態)として、緻密
で均一なものが求められるからである。したがって、固
体粒子の投射による研掃作用を目的とした熱延鋼板の脱
スケール処理は対象としない。このように、本手段をは
じめ、他の手段も冷延鋼板、表面処理鋼板等の鋼板を主
な対象とするものであるが、アルミニウムやアルミニウ
ム合金板、チタンやチタン合金板等、他の金属板にも応
用できるものであり、あらゆる金属板を対象とするもの
である。
【0024】通常の冷延鋼板、表面処理鋼板等はコイル
として巻き取られた状態で製造されており、鋼片へのシ
ョットブラストのように個々の鋼片ごとに投射室に装入
するバッチ式の処理を行うものではなく、連続的に搬送
される状態で表面粗さを付与する必要がある。
【0025】このような金属板の表面に平均粒子径300
μm以下の固体粒子を投射するのは、金属板表面に短ピ
ッチの凹凸を緻密に付与するためである。すなわち、固
体粒子を金属板表面に投射することで、その運動エネル
ギーが金属板表面への押込み仕事に変換されて、金属板
表面に圧痕(くぼみ)が生じる。このときの圧痕の大き
さは、固体粒子の粒子径が小さいほど小さくなり、微少
な凹部が形成されることになる。
【0026】すなわち、多数の固体粒子を投射すること
で、金属板表面には微少な圧痕が多数形成されて、より
緻密で圧痕同士の間隔が非常に短い微視的凹凸を形成す
る。このような単位面積当たりに多数の凹部が形成され
た、いわゆるディンプル状の形態が表面に付与されるこ
とで、プレス加工等に使用される場合に金型と金属板と
の間の保油性を向上させ、プレス成形性を大幅に向上さ
せることができる。
【0027】固体粒子の平均粒子径が300μmを超える場
合には、短ピッチの微視的な凹凸を形成することができ
ず、プレス成形性を向上させる効果が期待できなくなる
と共に、金属板表面の長周期の凹凸、すなわちうねりが
大きくなることで、外観上の美観に劣り、塗装後鮮映性
も悪化する。このような観点からは、冷延鋼板や表面処
理鋼板に表面粗さを付与する場合には、固体粒子の平均
粒子径を300μm以下とする必要があり、50〜150μm程度
とすることが好ましい。
【0028】固体粒子の投射手段としては、前述の遠心
ロータ式投射装置あるいは空気式投射装置を用いること
ができる。ただし、板幅の広い金属板を高速で連続的に
処理するためには、投射量を大きくすることが可能な遠
心ロータ式投射装置が優れている。
【0029】ここで、固体粒子の投射は投射室の内部で
行う。投射室とは、固体粒子が投射され金属板表面に衝
突する部分を一定の空間で仕切った領域をいい、投射し
た粒子が外部に飛散するのを防止するために使用する。
なお、遠心ロータ式投射機のモータ部分などは必ずしも
投射室内に配置する必要はなく、固体粒子が投射される
部分が投射室内部に設置されていればよい。また、投射
した固体粒子を回収するために投射室下部を安息角以上
に傾斜させたホッパー形状とするのが通常である。
【0030】投射室は必ずしも密閉した空間である必要
はないが、固体粒子が飛散して外部に流出するのを防止
する程度に周囲が覆われている必要がある。ただし、投
射室には連続的に搬送される金属板の入口部と、固体粒
子を投射した後に金属板が搬出される出口部を有してい
るため、その部分には開口部が生じる。
【0031】本手段では、このような投射室の出側に、
投射室とは区切られたクリーナ室を備えるものである。
クリーナ室とは、連続して搬送される金属板上に堆積し
た固体粒子や金属板の搬送に伴って投射室出口部から流
出する固体粒子を除去するための一定の空間をいう。
【0032】投射室出側に、投射室とは区切られたクリ
ーナ室を設置することで、クリーナ室内に気体パージノ
ズルを設置して金属板上に堆積した固体粒子を吹き飛ば
しても、投射室とは区切られているため、固体粒子の流
れが、投射機による投射粒子と干渉することがなくな
る。また、投射機による投射粒子の流れと、気体パージ
による固体粒子の流れとが複合し、互いに干渉しあって
複雑な流れが生じることがないので、クリーナ室内部で
の固体粒子の流れをある程度制御することが可能であ
り、効果的な気体パージノズルの配置等が可能となる。
【0033】一方、クリーナ室を配置することで、気体
パージ等により固体粒子を空間中に意図的に浮遊させ、
それらが金属板上になかなか落下しない性質を利用し
て、クリーナ室出口部において固体粒子が金属板上に堆
積して、そのまま室外に持出されることを低減できる。
これに対して、投射室内に気体パージ装置を設けた場合
には、多量の固体粒子が浮遊すると、投射装置と金属板
との間に固体粒子が浮遊して、効果的な表面粗さの付与
を阻害するため、このような除去方法を採用できない。
【0034】すなわち、本手段においては、投射室と区
切られたクリーナ室を配置することで、投射室内では金
属板表面に向けて投射される固体粒子の流れが阻害され
ないようにし、金属板上に堆積した固体粒子は、別の空
間であるクリーナ室中で除去するという機能分離をする
ことにより、固体粒子を効果的に除去している。
【0035】なお、投射室とクリーナ室とを区切ると
は、投射室内で金属板表面に向けて投射される固体粒子
の流れが、クリーナ室内での気体パージ等による固体粒
子の挙動によって阻害されない程度に分離されているこ
とをいう。具体的には、投射室出口とクリーナ室入口の
連結部の面積を投射室やクリーナ室の断面積よりも狭く
することや、投射室出口部にゴムや布を吊り下げること
などが挙げられる。また、これらと併せて、クリーナ室
内の圧力を投射室内よりも減圧して、クリーナ室内の固
体粒子が投射室内に逆流しないようにしてもよい。
【0036】前記課題を解決するための第2の手段は、
前記第1の手段であって、複数のクリーナ室が連続して
配置され、各々のクリーナ室が互いに区切られた構造と
されていることを特徴とするもの(請求項2)である。
【0037】本手段は、投射室の出側に配置されたクリ
ーナ室のさらに下流側にクリーナ室を配置して、各々の
クリーナ室の連結部が区切られている構造とするもので
ある。クリーナ室同士を区切る手段としては、前述した
投射室とクリーナ室を区切る手段と同様のものでよい。
クリーナ室を複数配置して、それらを区切ることによっ
て、下流側のクリーナ室内ほど固体粒子の残留量を低減
させることができ、下流側のクリーナ室内に浮遊する固
体粒子の濃度を低減させることが可能となる。これによ
って、クリーナ室出口の開口部から固体粒子が系外に持
出される量を一層低減することが可能となる。
【0038】前記課題を解決するための第3の手段は、
前記第1の手段又は第2の手段であって、少なくとも一
つのクリーナ室には前記固体粒子を吸引する吸引装置が
設けられていることを特徴とするもの(請求項3)であ
る。
【0039】クリーナ室内で気体パージ等によって吹き
上げられた固体粒子は、クリーナ室内で浮遊して、金属
板上に再び落下しにくくなる。特にクリーナ室の容積を
大きくすることで、固体粒子はより長い時間浮遊してい
るので、固体粒子が金属板上に落下してクリーナ室の出
口から持出されることはあまりなくなる。しかし、クリ
ーナ室の容積を大きくすることは設備設置スペースの制
約もあるため、現実的でない場合もある。そこで、クリ
ーナ室内で浮遊する固体粒子を吸引する吸引ブロア等の
吸引装置を備えることで、クリーナ室の容積が比較的小
さくても、金属板上に落下する固体粒子を減少させ、ク
リーナ室外に持出される固体粒子の量を低減することが
できる。
【0040】前記課題を解決するための第4の手段は、
前記第1の手段から第3の手段のいずれかであって、少
なくとも一つのクリーナ室内の上部高さが金属板との距
離が最も近づいた位置において500mm以上であることを
特徴とするもの(請求項4)である。
【0041】クリーナ室は一定の容積を備えることで、
固体粒子を浮遊させて、金属板上に落下して、そのまま
系外に持出される量を低減することが可能である。ただ
し、クリーナ室の容積は大きくても、その形状によって
は浮遊した固体粒子が金属板上に落下しやすくなる場合
もある。例えば、クリーナ室内で上部高さが局部的に低
くせざるを得ない場合に、金属板との距離が短い部分を
固体粒子が通過すると、クリーナ室内壁に衝突して、金
属板上に落下しやすくなる場合がある。しかし、クリー
ナ室内の天井が高い部分を備えることで、落下しようと
する固体粒子も、空気流れに乗って再び浮遊することに
なる。そこで、本手段では、クリーナ室上部の高さとし
て、最も金属板に近づく場合でも、それらの距離が少な
くとも500mm以上となるようにする。
【0042】その高さが500mm未満では、気体パージ等
で浮遊した固体粒子が浮遊し続けることが困難になっ
て、金属板上に落下しやすくなる。具体的には、投射室
内での投射量が100kg/min程度であれば、クリーナ室内
の上部と金属板との距離が最も離れた位置での距離は50
0mm程度でよい。ただし、投射室における固体粒子の投
射量が大きい場合には、さらにクリーナ室の高さを大き
くとる必要がある。より多くの固体粒子をクリーナ室内
で長時間浮遊させるためである。前記課題を解決するた
めの第5の手段は、前記第1の手段から第4の手段のい
ずれかであって、少なくとも一つのクリーナ室内の出口
部は、クリーナ室の上部と金属板の空間を狭くする構造
とされていることを特徴とするもの(請求項5)であ
る。
【0043】前述のように、クリーナ室の高さは、固体
粒子が浮遊しやすいように高いほど効果的であり、クリ
ーナ室内の上部と金属板との距離が最も近づいた位置で
の距離は500mm以上とすることが望ましい。しかし、本
手段においては、クリーナ室の出口部のみは、クリーナ
室の上部と金属板の空間を狭くしている。この部分の高
さは500mm未満であってもよく、むしろ低いことが望ま
しい。
【0044】クリーナ室の出口部においては金属板が搬
出される開口部を設けざるを得ないが、外部に持出され
る固体粒子の多くは、その開口部からのものである。開
口部からの固体粒子の流出は、金属板上に堆積したもの
が金属板の移動に伴って外部に持出される場合と、開口
部にある隙間から直接空気流れによって持出される場合
とがある。通常は、前者による固体粒子の持出し量の方
が大きく、クリーナ室の容積を大きくとることで金属板
上に堆積する固体粒子の持出しを大幅に低減することが
可能である。一方で浮遊した固体粒子はクリーナ室出口
の開口部から直接流出するため、固体粒子の歩留りを悪
化させる要因ともなりうる。
【0045】そこで、本手段ではクリーナ室出口部近傍
のみは、クリーナ室の上部と金属板との間の空間を狭く
することで、浮遊しながらクリーナ室出口部に向かって
流れる固体粒子をクリーナ室の内壁と衝突させ、意図的
に金属板上に落下させることにする。
【0046】前記課題を解決するための第6の手段は、
前記第5の手段であって、少なくとも一つのクリーナ室
内の上部は、クリーナ室の出口方向に向かって低くなる
ように傾斜していることを特徴とするもの(請求項6)
である。
【0047】本手段においては、少なくとも一つのクリ
ーナ室内の上部は、クリーナ室の出口方向に向かって低
くなるように傾斜しているので、前記第5の手段におい
てクリーナ室上部に段差ができず、効率的に、浮遊しな
がらクリーナ室出口部に向かって流れる固体粒子をクリ
ーナ室の内壁と衝突させ、意図的に金属板上に落下させ
ることができる。
【0048】なお、本手段が前記第4の手段である場合
において、前記第4の手段でいう「クリーナ室上部」に
は、本手段の「クリーナ室の出口方向に向かって低くな
るように傾斜している」部分は含まれない。すなわち、
この部分と金属板との距離は500mm以下となることがあ
ってもよい。
【0049】前記課題を解決するための第7の手段は、
前記第1の手段から第6の手段のいずれかであって、少
なくとも一つのクリーナ室内に、金属板の搬送方向に対
し、上流側に向かって固体粒子を吹き飛ばす気体パージ
ノズルが配置されていることを特徴とするもの(請求項
7)である。
【0050】本手段においては、クリーナ室出口部には
金属板上に落下した固体粒子を、クリーナ室の上流側に
向かって吹き飛ばすような気体パージノズルを配置し、
金属板上に落下した固体粒子を内部に向かって吹き飛ば
す。よって、固体粒子がクリーナ室の外部にでることが
少なくなる。特に、全記第5の手段、第6の手段でもあ
るものにおいては、クリーナ室出口の開口部から直接流
出しようとする固体粒子を、わざと一旦金属板上に落下
させ、落下した固体粒子を内部に向かって吹き飛ばすの
で、固体粒子のほとんどはクリーナ室の開口部から持出
されることがなくなる。
【0051】前記課題を解決するための第8の手段は、
前記第1の手段から第7の手段であって、クリーナ室の
出側には、気体噴射ノズルと当該気体噴射ノズルに対向
して配置された吸引装置とを有する高圧気体式粒子除去
装置が配置されていることを特徴とするもの(請求項
8)である。
【0052】前記第1の手段から第7の手段により、投
射室内で投射した固体粒子のほとんどは、クリーナ室の
出口部から持出されることは生じなくなり、固体粒子を
循環使用する場合の粒子が経時的に減少するという問題
は生じなくなる。しかし、金属板上にはわずかな量の固
体粒子が残留している場合があり、このような固体粒子
を除去しておかないと金属板の清浄性の点で問題が生じ
得る。そこで、本手段においては、金属板表面に残留す
る固体粒子を完全に除去するために、クリーナ室の出側
に、気体噴射ノズルと当該気体噴射ノズルに対向して配
置された吸引装置とを有する高圧気体式粒子除去装置を
配置している。
【0053】高圧気体式粒子除去装置は、金属板表面に
向けて高圧気体を噴射する気体噴射ノズルおよび、これ
に対向して配置された吸引装置から構成される。高圧気
体は、金属板表面に残留する固体粒子を金属板上から引
き離し、飛散させる役割を果たすものである。特に、高
速で搬送される金属板には、空気の随伴流を伴うため、
固体粒子を除去しようとする場合にも一種の保護層とし
て働くので、高圧気体の噴射により、随伴流に打ち勝っ
て固体粒子を飛散させる必要がある。
【0054】一方、吸引装置は、高圧気体によって金属
板上の固体粒子が飛散する方向に設けられて、開口部か
ら内部に向けて空気流れを生じさせる装置である。これ
によって、高圧気体の噴射により金属板上から飛散する
固体粒子を捕捉することができる。すなわち、高圧気体
の噴射によって固体粒子が周囲へ飛散し、再び金属板上
に落下したり、周囲の環境を悪化させることがない。
【0055】前記課題を解決するための第9の手段は、
前記第1の手段から第7の手段であって、クリーナ室の
出側には、ブラシロールおよび吸引フードから構成され
るブラシ式粒子除去装置が配置されていることを特徴と
するもの(請求項9)である。
【0056】ブラシ式粒子除去装置は、金属板表面に接
触しながら回転するブラシロールと、それを覆うように
配置された吸引フードを有する装置であって、金属板上
に残留する固体粒子をブラシロールによって掃きなが
ら、吸引フード内における吸引エアによって固体粒子を
金属板上から除去するものである。ブラシロールを使用
することによって、金属板上に残留する固体粒子を、金
属板表面から効果的に引き離し、飛散させることができ
ると共に、吸引フードによって固体粒子が吸引されるの
で、外部に固体粒子が飛散するのを防止することができ
る。したがって、固体粒子がブラシ式粒子除去装置の外
部に飛散し、再び金属板上に落下して金属板の清浄性を
低下させることがない。
【0057】前記課題を解決するための第10の手段
は、前記第1の手段から第7の手段であって、クリーナ
室の出側には、表面が粘着性を有する粘着ロールを押し
付ける粘着ロール式粒子除去装置が配置されていること
を特徴とするもの(請求項10)である。
【0058】粘着ロール式粒子除去装置は、表面が粘着
性を有する粘着ロールを金属板表面に押し付けること
で、金属板上に残留する固体粒子を粘着ロール表面に移
着させ、金属板上から固体粒子を除去する装置である。
金属板上に残留した固体粒子を周囲に飛散させることな
く、固体粒子を除去することが可能であり、金属板の清
浄性を向上させることができる。
【0059】前記課題を解決するための第11の手段
は、前記第1の手段から第7の手段であって、クリーナ
室の出側には、第8の手段である高圧気体式粒子除去装
置、第9の手段であるブラシ式粒子除去装置、第10の
手段である粘着ロール式粒子除去装置のうち、2以上の
粒子除去装置が配置されていることを特徴とするもの
(請求項11)である。
【0060】前記第8の手段から第10の手段は、それ
ぞれ単独で用いることも可能であるが、金属板上に残留
する固体粒子の量によっては、単独の手段のみでは金属
板上から完全に固体粒子を除去しきれない場合がある。
特に、固体粒子の除去効率は高くても、1つの固体粒子
も残さずに除去するのは困難な場合が多い。そこで、前
記第8から第10の手段を組み合わせて用いることでよ
り高い清浄度の金属板を製造することが可能である。
【0061】例えば、前記第8の手段である高圧気体式
粒子除去装置は、比較的多量の固体粒子が金属板表面に
残留している場合に、そのほとんどを除去するのに適し
た装置であるが、ライン速度が高速化すると、金属板の
移動に伴う随伴流の影響が大きくなるため、金属板表面
に残留する固体粒子のほとんどを除去することは難しい
場合がある。
【0062】一方、前記第9の手段であるブラシ式粒子
除去装置は、金属板表面に残留している固体粒子を、ブ
ラシによって掃く方式であるから、ライン速度にかかわ
らず高い固体粒子の除去効果を得られるものの、比較的
多量の固体粒子を金属板上から除去するためには、ブラ
シの毛の密度等の選定を誤ると、ブラシの毛に固体粒子
が付着して効果的な粒子の除去が困難になる場合が生じ
うる。
【0063】そこで、たとえば、第8の手段である高圧
気体式粒子除去装置の下流側に第9の手段であるブラシ
式粒子除去装置を配置することによって、クリーナ室出
側にて金属板表面に残留する固体粒子を高圧気体式粒子
除去装置によってほとんど除去し、さらにブラシ式粒子
除去装置によって若干残留しうる固体粒子をほぼ完全に
除去することができる。
【0064】また、第10の手段である粘着ロール式粒
子除去装置では、一旦粘着ロールに固体粒子が移着する
と、それを粘着ロール表面から除去しない限り、重ねて
固体粒子を金属板表面から除去することができない。し
たがって、ごく少量の固体粒子が金属板上に残留してい
る場合に、それをほぼ完全に除去する場合に適してい
る。そこで、ブラシ式粒子除去装置のさらに下流側に粘
着ロール式粒子除去装置を配置することで、クリーナ室
出側において金属板上に残留している固体粒子の量が比
較的多い場合でも、金属板表面の清浄性をより向上させ
ることができる。
【0065】前記課題を解決するための第12の手段
は、前記第1の手段から第7の手段のいずれかである金
属板の表面処理装置を使用して、金属板に平均粒子径30
0μm以下の固体粒子を投射した後に、金属板に気体を吹
き付けて固体粒子を吹き飛ばすとともに、別途気体を吸
引し固体粒子をクリーナ室外へ排出する工程を有するこ
とを特徴とする金属板の製造方法(請求項12)であ
る。
【0066】前記課題を解決するための第13の手段
は、前記第1の手段から第7の手段のいずれかである金
属板の表面処理装置を使用して、金属板に平均粒子径30
0μm以下の固体粒子を投射した後に、金属板に気体を吹
き付けて固体粒子を吹き飛ばすとともに、別途気体を吸
引し固体粒子をクリーナ室外へ排出する第1の工程に加
えて、金属板に気体を吹き付けて金属板上に残留する固
体粒子を吹き飛ばしながら別途気体を吸引して固体粒子
を金属板上から除去する工程、金属板上に残留する固体
粒子をブラシロールによって掃きながら別途気体を吸引
し固体粒子を金属板上から除去する工程、金属板上に残
留する固体粒子を粘着性のロールを押し付けることによ
って金属板上から除去する工程のうち、少なくともひと
つの工程からなる第2の工程を有することを特徴とする
金属板の製造方法(請求項13)である。
【0067】これら第12の手段、第13の手段におい
て、以上に示したような本発明の金属板の表面処理設備
は、金属板の製造ライン中に配置され、表面特性に優れ
た金属板の製造に応用される。例えば、溶融めっき鋼板
製造ラインの後段や連続焼鈍ラインの後段にある調質圧
延機の上流側、下流側の少なくとも一方に配置され、表
面特性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板や冷延鋼板を製造す
るのに使用される。
【0068】このように、本願発明の表面処理設備を調
質圧延機と組み合わせて用いることが好ましいが、溶融
めっき鋼板製造ラインや連続焼鈍ライン中には調質圧延
機のみを配置し、本願発明の金属板の表面処理設備は別
ラインに設けてバッチ処理により表面処理を行ってもよ
い。
【0069】なお、ここに示す溶融めっき鋼板とは、溶
融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、溶融Al
-Zn合金めっき鋼板、溶融Zn-Al合金めっき鋼板等であ
る。また、表面特性とは、プレス成形生、塗装後鮮映性
等、金属板の品質に及ぼす表面の特性をいう。
【0070】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態の例
を、図を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施
の形態である金属板の表面粗さ付与装置を模式的に示し
たものである。図は、金属板1を連続的に搬送しなが
ら、遠心ロータ式投射装置によって金属板表面に粗さを
付与する状態を示したものである。遠心ロータ式投射装
置は、モータ11によって駆動されるベーン10によっ
て、遠心力を利用して固体粒子14を加速させる装置で
ある。固体粒子14は、タンク等に貯められた状態か
ら、粒子供給管13を通じて、ベーン10に供給され
る。その途中には、開度調整弁12が設置され、その開
度を調整することによって固体粒子14の供給量を制御
することができる。
【0071】なお、図1には金属板1の上面のみに固体
粒子を投射する状態が示されているが、金属板1の下面
にも同様の装置を設置し、金属板1の両面に投射しても
よい。また、金属板の板幅方向・長手方向に複数台の投
射装置を配置してもよい。この固体粒子投射部は、投射
室2に配置され、投射した固体粒子14が外部へ飛散し
ないようにしている。投射室2の内部では、投射された
固体粒子14が金属板表面に衝突して、ディンプル状の
圧痕を残した後に反射して、周囲に飛散する。その多く
は、重力によって投射室2の下部に落下することにな
る。
【0072】特に、ベーン10の回転によって生じる風
の流れによって大部分は金属板1上から排除されて、投
射室下部に落下する。落下した固体粒子14は、粒子回
収装置20によって回収され、循環しながら投射が行わ
れる。ただし、投射室内で投射した固体粒子14の一部
は、投射室内で反射して周囲に浮遊して、再び金属板上
に落下し、金属板1と共に投射室から持出されたり、金
属板1が高速で移送される場合には、その随伴流に乗っ
て投射室から排出されたりする。
【0073】投射室2の入口部および出口部には開口部
が存在し、金属板1と投射室2の構造物が直接接触して
金属板に疵を発生させないようにしている。投射室2の
出口部には、ゴム板4等が設置され、クリーナ室3aと
区切られている。クリーナ室との間に使用されるゴム板
4は、金属板と接触しない状態にするのが望ましいが、
軽度の押付けであれば金属板1の表面に疵が発生するこ
とはないので、その程度であれば接触させても構わな
い。
【0074】クリーナ室3a内部には、金属板1上に堆
積した固体粒子14を吹き飛ばすためのエアパージノズ
ル5a〜5dが設置されている。これらのエアパージノ
ズルは、金属板1の下面には必ずしも配置する必要はな
いが、上面に堆積した固体粒子14を十分吹き飛ばす程
度の風量、圧力、ノズル本数を確保する必要がある。例
えば、固体粒子14として平均粒子径85μmのステンレ
ス鋼粒子を使用する場合に、高圧エアノズルを使用する
場合には、空気圧力0.3MPa、エア流量0.3m/min程度の
能力があれば十分である。
【0075】また、投射室2内での投射する固体粒子1
4の投射量やライン速度に応じて、金属板1上の固体粒
子14を十分吹き飛ばせる程度に、金属板1の進行方向
に沿って配置するノズル本数を決定する。また、金属板
1の板幅に応じてその幅方向配置を決定するのが望まし
い。すなわち、各ノズルによる空気流が相互に干渉しな
いような配置とする。一方、ブロアエアを使用する場合
には、スリットノズルを使用して、板幅1000mm、ライン
速度50mpm、投射室内での粒子投射量600kg/minの条件に
対して、風量40m/min以上とする必要がある。
【0076】また、図1においては、クリーナ室3aの
上部と金属板との距離は、少なくとも500mm以上にして
いる。クリーナ室の容積は、エアパージノズル5a〜5
dによって吹き飛ばされる固体粒子が長い時間浮遊でき
る空間が必要でることから、大きいほど好ましいからで
ある。よって、このような観点から、クリーナ室3aの
上部と金属板1との距離を上記のようにしている。
【0077】さらに、図1ではクリーナ室3aの構造と
して、その高さを出口方向に向かって低くなるように傾
斜させると共に、クリーナ室出口部にエアパージノズル
6a、6bを配置している。エアパージノズル5a〜5
dによって吹き飛ばされた固体粒子がクリーナ室3a内
で反射して、下流側に向かって飛散するのを、クリーナ
室3a上部の傾斜によって金属板上に落下させ、落下し
た粒子をエアパージノズル6aによってクリーナ室3a
の上流側に吹き飛ばすものである。
【0078】また、エアパージノズル6bは、金属板1
の移動によって生じる空気の随伴流に乗って、クリーナ
室3aの出口の開口部から固体粒子14が系外(クリー
ナ室3aと、固体粒子を回収して循環使用するための設
備からなる系の外)に持出されるのを防止するために設
置するものである。なお、エアノズル6a,6bはエア
ノズル5a〜5dと同程度あるいは少ない風量でもよ
い。既に大部分の固体粒子14はクリーナ室3a内で浮
遊しているからである。
【0079】また、クリーナ室3aの出口には、ゴムカ
ーテン9を取り付けて、開口部からの固体粒子14の流
出を防止してもよい。ゴムカーテン9は、金属板1と接
触しないように取り付けるのが望ましい。金属板1と接
触することにより直接スリ疵が発生する場合や、固体粒
子14を噛み込んで表面欠陥を発生させるおそれがある
からである。
【0080】一方、エアパージノズル5a〜5dあるい
は6a、6bによってクリーナ室3a内で浮遊する固体
粒子14は、クリーナ室3a下部に落下して、粒子回収
装置20によって回収され、循環使用されるのが通常で
あるが、連続的に金属板1が移送されてクリーナ室3a
内に浮遊する固体粒子14の濃度が高くなると、固体粒
子14同士が干渉して金属板1上に落下しやすくなるた
め、これを防ぐ目的で、粒子回収装置20とは別に、浮
遊した固体粒子14を上部から吸引する粒子吸引装置7
aを配置している。
【0081】粒子吸引装置7aは、集塵機15に接続さ
れ、ブロアによる吸引エアにより、浮遊する固体粒子1
4が吸い込まれる。ただし、クリーナ室内部に浮遊する
固体粒子のすべてを吸引するほどの能力を備える必要は
ない。クリーナ室3a内の固体粒子14がある程度の濃
度になるまでは、エアパージの効果により、クリーナ室
3a内部で金属板1上に特に落下しやすくなるわけでは
ないからである。また、金属板1上から吹き飛ばされた
固体粒子14の大部分は、クリーナ室3a下部に落下し
て、粒子回収装置20によって回収されるからである。
したがって、実際にはクリーナ室3a内に持ち込まれる
固体粒子14の量の5%以上程度を吸引する能力を備え
ていればよい。
【0082】なお、投射室2内で投射する固体粒子14
の重量が多いほど、クリーナ室3a内に持ち込まれる粒
子量も多くなるため、その濃度増加に応じて、粒子吸引
装置7aにおける吸引風量を変更してもよい。
【0083】また、粒子吸引装置7aと集塵機15の間
にサイクロン等の分級装置を配置して、一定の大きさ以
上の固体粒子は粒子回収装置20等に戻すような循環系
を構成することで、粒子吸引装置7aによって吸引され
る固体粒子を再使用することができる。したがって、粒
子吸引装置7aによる吸引風量を大きく設定して、多量
の固体粒子をクリーナ室3aから吸引しても、分級装置
によって再び循環系に戻されるので、集塵機15により
捕捉される固体粒子の量は増加せず、循環中に固体粒子
の量が必要以上に減少することはない。
【0084】ところで、投射室2の内部には、必ずしも
エアパージノズルを配置する必要はないが、投射室2か
らクリーナ室3aへ持出される固体粒子量を低減させる
ために、エアパージノズルを配置してもよい。ただし、
固体粒子14を吹き飛ばすことにより投射装置2から金
属板1に向けた固体粒子14の流れが阻害されない程度
の風量、圧力で吹き飛ばす必要がある。
【0085】図2は、本発明の第2の実施の形態であ
り、投射室2に連続してクリーナ室を2基配置した場合
の実施の形態を示す図である。クリーナ室3aの下流側
には、他のクリーナ室3bが配置され、その間はゴムカ
ーテン8によって区切られている。投射室2、クリーナ
室3aの構成は、図1に示したものと同じであるので、
その説明を省略する。
【0086】クリーナ室3bの内部には、金属板1上か
ら固体粒子14を排除するエアパージノズル5e、5f
が配置され、クリーナ室3bの上部には吸引装置7bが
備えられている。また、クリーナ室3bの出口には固体
粒子14がクリーナ室系外に持出されないように、エア
パージノズル6c、6dが配置されている。
【0087】ただし、上流側のクリーナ室3aにおいて
投射室2から持出される固体粒子14の多くは除去され
て、下流側のクリーナ室3bに持ち込まれる固体粒子1
4の量は相対的に少なくなるので、クリーナ室3bの容
積は、上流側のクリーナ室3aほど大きくする必要はな
い。また、必ずしも粒子吸引装置7bを配置する必要は
なく、エアパージによる吹き落とし能力も上流側のクリ
ーナ室3a内におけるものよりも低いもので十分であ
る。
【0088】図3は、本発明の第3の実施の形態であ
り、投射室2の出側にクリーナ室3aを配置すると共
に、クリーナ室3aの下流側にブラシ式粒子除去装置2
7を配置した場合の実施の形態を示す図である。また、
図4はブラシ式粒子除去装置27の詳細を示した図であ
る。
【0089】図4に示すブラシ式粒子除去装置27は、
ブラシロール、吸引ダクト23、集塵装置24およびバ
ックアップロール25から構成されている。ブラシロー
ルは、シャフトロール22の周囲をブリッスル21によ
って覆ったものであり、ブラシロールを金属板表面に押
し付けながら、回転させる機構を備えている。吸引ダク
ト23は、ブラシロールによって飛散させた固体粒子1
4が、周囲に飛散しないようにブラシロール全体を覆う
構造を備える。また、集塵装置24は、吸引ダクト内に
飛散した固体粒子14を回収するための吸引エアを生じ
させるものである。さらに、バックアップロール25
は、ブラシロールを金属板1に押し付けることで金属板
がたわまないように、その押付け荷重を受けるためのロ
ールである。
【0090】ここで、ブラシロールとしては、直径200
〜500mm程度のものが用いられ、ブラシロールの回転数
および金属板への押付け荷重を調整できるものが望まし
い。ブリッスルの材質は、金属板表面に押し付けても疵
が発生しない程度の硬度である必要があり、エンジニア
リングプラスチック、ポリプロピレン系の糸を使用する
ことができる。また、ブリッスルの直径は、直径0.1〜
1mm程度のものが望ましい。ブリッスルの直径が大きい
と金属板表面に疵を生じさせやすくなるためであり、微
細な固体粒子14を掃くために適さなくなるからであ
る。なお、ブラシロールには、研掃効果を目的として砥
粒を含むものもあるが、金属板表面に疵を発生させるた
め、本目的には適さない。
【0091】吸引ダクト23は、固体粒子14が吸引ダ
クトから外側に飛散しないようにブラシロール全体を覆
う構造にする必要がある。ただし、ブラシロールの大き
さに対して吸引ダクトの容積を大きくしすぎると吸引エ
アの風量を高くしなければならないので、ブラシロール
よりも一回り大きい程度の形状がよい。また、ブラシロ
ールと吸引ダクト内壁との間のすきまは、固体粒子14
を吸引できる程度の風速を確保できるように一定値以下
の値に設定する必要がある。
【0092】集塵装置24は、吸引ダクト23内に吸引
エアの流れを形成するための吸引ブロア等を備えた装置
であって、ブラシによって吸引ダクト23内に飛散した
固体粒子14を吸引し、それらを捕捉するための装置で
ある。ただし、吸引ダクト23と集塵装置24との間に
はサイクロン等の分級装置を配置し、分級された固体粒
子は粒子回収装置20などに戻してもよい。粒子回収装
置20に戻された固体粒子は、再び金属板表面への投射
に使用されるので、固体粒子の歩留りが低下することが
ないからである。
【0093】バックアップロール25は、ブラシロール
の押付け力を受けもつためのロールであり、金属板のラ
イン速度に同期してモータによる駆動を行ってもよい。
また、図4は金属板の片面のみにブラシロールを配置す
る形態を示しているが、金属板をはさんで両面にブラシ
ロールを配置してもよい。この場合には、バックアップ
ロール25は不要となる。
【0094】図5は、本発明の実施の形態に使用される
高圧エア式粒子除去装置であって、エアノズルと吸引装
置とを対向させて配置したものを示した図である。高圧
エア式粒子除去装置は、金属板表面に向けて高圧エアを
噴射するエアノズル31および、これに対向して配置さ
れた吸引装置から構成される。吸引装置は、吸引ダクト
32および吸引ダクト内に飛散する固体粒子14を吸引
するための集塵装置34から構成される。
【0095】エアノズル31は、高圧エアを噴射するノ
ズルであり、広幅の金属板を処理するためには、スリッ
トノズルであることが望ましい。金属板1上に残留する
固体粒子をもれなく吹き飛ばすことができるからであ
る。高圧エアを噴射する方向は、金属板1の進行方向に
対して逆向きの方向に噴射するのが望ましく、金属板1
の表面に対して傾斜させるものとする。金属板の表面に
垂直に噴射させても固体粒子は吸引ダクト32の方向に
飛散しないからである。なお、高圧エアの吐出風速は、
固体粒子14の大きさ、比重やライン速度等により決定
されるものであるが、金属板1に固体粒子14を十分飛
散させる程度の風速を確保する必要があり、通常は30m/
s以上の風速が適当である。
【0096】吸引ダクト32は、高圧エアノズル31に
より吹き飛ばされた固体粒子14が飛散する範囲をカバ
ーできるような開口部を有するものである。このとき、
吹き飛ばされた固体粒子14が吸引ダクトの位置よりも
上流側に飛散しないように、ガイド33を設置するのが
望ましい。ガイド33は、ゴムやプラスチック等の板を
使用して、金属板1に軽く接触させる程度に押し付ける
ものである。軽度の押付けであれば金属板1の表面に疵
を発生させることはない。ガイド33は、金属板の進行
方向に対して傾斜させるものとし、高圧エアにより飛散
した固体粒子14が吸引ダクト32の内部にスムースに
引き込まれるような傾斜とする。
【0097】集塵装置34は、吸引ダクト32内に飛散
した固体粒子を吸引するための吸引ブロアを備えてお
り、固体粒子14を捕捉する機能を備える。このとき、
吸引ブロアは、飛散した固体粒子をすべて吸引するだけ
の能力を備える必要がある。また、少なくともエアノズ
ル31から吐出した風量よりも大きな風量を吸引する必
要があり、それ以上の風量であれば、大きな能力を有す
るものほど好ましい。また、高圧エアにより飛散した固
体粒子14が引き込まれる吸引ダクト32の開口部で
は、一定以上の風速を確保するために、吸引ダクト32
の内部よりも狭くして、吸引エアの風速が高まるような
構造とするのが望ましい。
【0098】バックアップロール35は、高圧エアの噴
射により金属板1が振動しないように金属板1を抑える
ためのロールである。金属板1が振動すると、ガイド3
3と金属板1との接触状態が変化して、固体粒子14が
吸引ダクト32の位置よりも上流側に飛散するおそれが
あるので、これを防ぐために設けられる。
【0099】なお、図5は金属板の片面のみに高圧エア
式粒子除去装置を配置したものを示しているが、金属板
の下面側に同様な装置を配置してもよい。
【0100】図6は、本発明の実施の形態に使用され
る、表面が粘着性を有する粘着ロールを押し付ける粘着
ロール式粒子除去装置を示した図である。本実施の形態
では、金属板1の上面に2本の粘着ロール51a、51
b、下面にも2本の粘着ロール51c、51dを配置し
ている。
【0101】粘着ロール51a〜51dとしては、ロー
ル表面に粘着質を有するゴム等をライニングしたものを
使用することができ、印刷装置等に使用されるゴミ取り
ロールを適用することができる。また、粘着性を有する
ライニング層は、JISゴム硬度10〜30°程度の軟
らかいものが好ましく、そのようなものであれば金属板
表面に疵をつけることもない。
【0102】粘着ロール51a〜51dは、金属板1表
面に軽く押し付ける構造とし、接触圧力を調整できるよ
うな位置調整機構52a〜52dを備えるのが望まし
い。なお、位置調整機構52a〜52dは、粘着ロール
51a〜51dを金属板1に接触しない位置まで退避さ
せる能力を有している。
【0103】金属板1上に残留した固体粒子14は粘着
ロール51a〜51dと接触することで、粘着ロール表
面に移着し、金属板上から固体粒子14が除去されるこ
とになる。このとき、粘着ロール51a〜51dの表面
には、固体粒子14が付着した状態になるため、経時的
に固体粒子14を除去する能力が低下してくる。したが
って、粘着ロール51a〜51dの表面は定期的に洗浄
し、粘着ロールの表面から固体粒子14を除去する必要
がある。図6では、洗浄ロール53a〜53dを配置し
て、粘着ロールの51a〜51dの退避位置において、
洗浄ロール53a〜53dと接触させることによって粘
着ロール表面に付着した固体粒子14を除去する機構を
備えている。
【0104】また、金属板1の上面に配置した粘着ロー
ル51a、51bは1組として使用され、いずれかの粘
着ロールが退避位置に置かれ、洗浄ロールと接触してい
る場合には、他方の粘着ロールを金属板1と接触させた
状態としておく。これによって、少なくとも一方の粘着
ロールは、常に金属板1に接触した状態となるため、金
属板1に残留している固体粒子14を完全に除去するこ
とが可能である。
【0105】図7は、本発明の第4の実施の形態を示し
た図である。連続して搬送される金属板に平均粒子径30
0μm以下の固体粒子を投射する投射室2の出側には、投
射室と区切られたクリーナ室3aが設けられており、ク
リーナ室3aには固体粒子を吸引する吸引装置7aを備
えている。このとき、クリーナ室3aの出側には、ブラ
シロールおよび吸引フードから構成されるブラシ式粒子
除去装置27を配置している。さらに、その下流側には
表面が粘着性を有する粘着ロールを押し付ける粘着ロー
ル式粒子除去装置28を配置している。
【0106】この実施の形態では、投射室2内での固体
粒子の投射により、多量の固体粒子がクリーナ室3aに
持ち込まれ、広い空間にて固体粒子を浮遊させ、それを
吸引することで、ほとんど固体粒子は金属板1の表面か
ら除去される。しかし、金属板1上には若干ながら固体
粒子が残留する場合があり、これをブラシ式粒子除去装
置27によって除去するものである。ブラシ式粒子除去
装置27は、多量の固体粒子を金属板上から除去する目
的よりも、少量の残留粒子を完全に除去するのに向いて
いる。
【0107】さらに、完全に固体粒子を除去し、金属板
表面の清浄度を確保するためには、ブラシ式粒子除去装
置27の下流側に粘着ロール式粒子除去装置28を配置
し、金属板1の表面から固体粒子をほぼ完全に除去でき
ることになる。粘着ロールによる場合には、極少量の固
体粒子を完全に取り除く目的に適しており、多量の固体
粒子を除去するのには向いていないからである。
【0108】このように、クリーナ室3aの下流側に、
さらに複数の固体粒子除去設備を配置することで、金属
板1上に残留する固体粒子を効果的に取り除くことがで
きる。
【0109】
【実施例】本発明の実施例として、図1に示すクリーナ
室を備えた鋼板の表面粗さ付与装置によって、溶融亜鉛
めっき鋼板の表面に表面粗さを付与した結果について説
明する。表面粗さを付与した鋼板は、板厚0.8mmの冷延
鋼板を下地として、めっき皮膜が主としてη相からなる
溶融亜鉛めっき鋼板であり、溶融亜鉛めっき後に、調質
圧延にて0.8%の伸長率を付与したものを用いた。
【0110】投射した固体粒子は平均粒子径85μmのSUS
304の固体粒子である。これはエアアトマイズ法により
製造されたほぼ球形の粒子であり、鋼板表面にディンプ
ル状の微視的凹凸を付与することで、優れたプレス成形
性を発揮するものである。
【0111】固体粒子の投射のためには、ベーン外径が
330mm、最大回転数3900rpmの遠心ロータ式投射装置を使
用した。このとき、鋼板のライン速度を50mpmとして、
固体粒子の供給装置12を調整して投射量を100kg/min
に設定した。
【0112】クリーナ室は、容積2m、クリーナ室上
部と鋼板との距離が600mmのものとした。また、投射室
2出口部は、高さ140mmの開口部があり、開口部には厚
さ5mmのゴムカーテンを鋼板に接触するように配置し
た。クリーナ室内部には、ブロアエアによる固体粒子の
吹き飛ばし装置が配置され、クリーナ室出口部には、圧
力0.4MPaの高圧エアノズルが配置されている。なお、ク
リーナ室出口の開口部の高さは140mmであり、その部分
にも前記と同様のゴムカーテンが設置されている。
【0113】本実施例では、クリーナ室出口の開口部か
ら流出する固体粒子の量を直接測定することができない
ので、クリーナ室出口から搬送される鋼板上に残留する
固体粒子の量を測定して、固体粒子の持出し量の大小を
判断することとした。そのため、鋼板上にテープを貼っ
て、テープに付着した固体粒子の個数を測定し、鋼板の
単位面積あたりの個数に換算した。
【0114】一方、本発明の比較例として、本実施例と
同一の投射室を備えた図8に示す装置構成による場合も
調査した。これは、投射室内部に高圧エアノズル30
a、30bを配置したものであり、クリーナ室を有しな
いものである。この場合も投射室から搬出された鋼板上
に残留する固体粒子の個数を同様の方法で求めた。
【0115】その結果、本実施例における固体粒子の残
留量は、5〜20個/mであったのに対して、比較例にお
ける場合には、2000個/mの固体粒子が残留しているこ
とが分かった。これらの残留粒子の大部分は、ラインで
移送される間に周囲に飛散して、鋼板上から落下するも
のの、一部分はラインに配置された各種ロールと鋼板の
間に噛み込まれて、表面欠陥を生じさせる原因となる。
また、鋼板上に堆積した固体粒子の量と同程度の割合
で、空気中に飛散していることも十分予想され、長時間
の操業を続けることで、固体粒子の歩留りも、本実施例
の設備構成による場合と、比較例による場合とでは、大
きな差が生じることになる。
【0116】上記実施例において、クリーナ室3aの下
流側に、ブラシ式粒子除去装置を配置した場合(図3に
示す実施の形態)の効果を検証した。ブラシ式粒子除去
装置のブラシロールは、外径340mmのブラシロールであ
り、押込み量2mm、回転数600rpmの条件にて駆動させ
た。また、吸引ダクト23は、150m/minの風量を吸引
できる集塵装置24に接続されている。
【0117】このような条件のもとで、ブラシ式粒子除
去装置の下流側において、鋼板1の上面に残留する固体
粒子の数を、上記の同様な方法により測定した。その結
果、クリーナ室3aの出側において、5〜20個/mの固
体粒子が残留していたものが、ブラシ式粒子除去装置の
下流側ではゼロとなり、鋼板表面から完全に固体粒子が
除去されていた。
【0118】なお、長期間操業した場合には、ブラシロ
ールの摩耗等の影響により、固体粒子を除去しきれない
可能性もあるため、ブラシ式粒子除去装置の下流側に、
粘着ロール式粒子除去装置を備えることで、外乱があっ
ても安定して鋼板表面上から固体粒子を除去することが
できる。
【0119】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、微
細な固体粒子を金属板の表面に投射することによって、
金属板の表面粗さを調整する等の表面処理を行う設備で
あって、固体粒子が金属板上に残留する量を少なくし、
固体粒子の歩留の低下を少なくすることができると共
に、金属板表面の清浄性を高めることができる金属板の
表面処理設備、及びこれらの設備を使用した金属板の製
造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態である金属板の表面
粗さ付与装置を示した概略図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態である金属板の表面
粗さ付与装置を示した概略図である。
【図3】発明の第3の実施の形態である金属板の表面粗
さ付与装置を示した概略図である。
【図4】本発明の実施の形態に使用されるブラシ式粒子
除去装置の例を示した図である。
【図5】本発明の実施の形態に使用される高圧エア式粒
子除去装置の例を示した図である。
【図6】本発明の実施の形態に使用される粘着ロール式
粒子除去装置の例を示した図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態である金属板の表面
粗さ付与装置を示した概略図である。
【図8】本発明の比較例である金属板の表面粗さ付与装
置を示した概略図である。
【符号の説明】
1:金属板、2:投射室、3a,3b:クリーナ室、
4:投射機出口部のゴムカーテン、5a〜5f:エアパ
ージノズル、6a〜6d:クリーナ室出口部のエアパー
ジノズル、7a,7b:粒子吸引装置、8:クリーナ室
間のゴムカーテン、9:クリーナ室出口部のゴムカーテ
ン、10:投射機ベーン、11:投射機モータ、12:
粒子供給制御弁、13:粒子供給管、14:固体粒子、
15:集塵装置、20:粒子回収装置、21:ブリッス
ル、22:シャフトロール、23:吸引ダクト、24:
集塵装置、25:バックアップロール、27:ブラシ式
粒子除去装置、28:粘着ロール式粒子除去装置、30
a,30b:投射室エアパージノズル、31:エアノズ
ル、32:吸引ダクト、33:ガイド、34:集塵装
置、35:バックアップロール、51a〜51d:粘着
ロール、52a〜52d:位置調整機構、53a〜53
d:洗浄ロール
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 曽谷 保博 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 連続して搬送される金属板に平均粒子径
    300μm以下の固体粒子を投射する投射室を備えた金属板
    の表面処理設備であって、投射室の出側に、当該投射室
    と区切られたクリーナ室が設けられていることを特徴と
    する金属板の表面処理設備。
  2. 【請求項2】 複数のクリーナ室が連続して配置され、
    各々のクリーナ室が互いに区切られた構造とされている
    ことを特徴とする請求項1に記載の金属板の表面処理設
    備。
  3. 【請求項3】 少なくとも一つのクリーナ室には前記固
    体粒子を吸引する吸引装置が設けられていることを特徴
    とする請求項1又は請求項2に記載の金属板の表面処理
    設備。
  4. 【請求項4】 少なくとも一つのクリーナ室内の上部高
    さが、金属板との距離が最も近づいた位置において500m
    m以上であることを特徴とする請求項1から請求項3の
    うちいずれか1項に記載の金属板の表面処理設備。
  5. 【請求項5】 少なくとも一つのクリーナ室内の出口部
    は、クリーナ室の上部と金属板の空間を狭くする構造と
    されていることを特徴とする請求項1から請求項4のう
    ちいずれか1項に記載の金属板の表面処理設備。
  6. 【請求項6】 少なくとも一つのクリーナ室内の上部
    は、クリーナ室の出口方向に向かって低くなるように傾
    斜していることを特徴とする請求項5に記載の金属板の
    表面処理設備。
  7. 【請求項7】 少なくとも一つのクリーナ室内に、金属
    板の搬送方向に対し、上流側に向かって固体粒子を吹き
    飛ばす気体パージノズルが配置されていることを特徴と
    する請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の
    金属板の表面処理設備。
  8. 【請求項8】 クリーナ室の出側には、気体噴射ノズル
    と当該気体噴射ノズルに対向して配置された吸引装置と
    を有する高圧気体式粒子除去装置が配置されていること
    を特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか1項
    に記載の金属板の表面処理設備。
  9. 【請求項9】 クリーナ室の出側には、ブラシロールお
    よび吸引フードから構成されるブラシ式粒子除去装置が
    配置されていることを特徴とする請求項1から請求項7
    のうちいずれか1項に記載の表面処理設備。
  10. 【請求項10】 クリーナ室の出側には、表面が粘着性
    を有する粘着ロールを押し付ける粘着ロール式粒子除去
    装置が配置されていることを特徴とする請求項1から請
    求項7のうちいずれか1項に記載の金属板の表面処理設
    備。
  11. 【請求項11】 クリーナ室の出側には、請求項8に記
    載の高圧気体式粒子除去装置、請求項9に記載のブラシ
    式粒子除去装置、請求項10に記載の粘着ロール式粒子
    除去装置のうち、2以上の粒子除去装置が配置されてい
    ることを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれ
    か1項に記載の金属板の表面処理設備。
  12. 【請求項12】 請求項1から請求項7のうちいずれか
    1項に記載の金属板の表面処理装置を使用して、金属板
    に平均粒子径300μm以下の固体粒子を投射した後に、金
    属板に気体を吹き付けて固体粒子を吹き飛ばすととも
    に、別途気体を吸引し固体粒子をクリーナ室外へ排出す
    る工程を有することを特徴とする金属板の製造方法。
  13. 【請求項13】 請求項1から請求項7のうちいずれか
    1項に記載の金属板の表面処理装置を使用して、金属板
    に平均粒子径300μm以下の固体粒子を投射した後に、金
    属板に気体を吹き付けて固体粒子を吹き飛ばすととも
    に、別途気体を吸引し固体粒子をクリーナ室外へ排出す
    る第1の工程に加えて、金属板に気体を吹き付けて金属
    板上に残留する固体粒子を吹き飛ばしながら別途気体を
    吸引して固体粒子を金属板上から除去する工程、金属板
    上に残留する固体粒子をブラシロールによって掃きなが
    ら別途気体を吸引し固体粒子を金属板上から除去する工
    程、金属板上に残留する固体粒子を粘着性のロールを押
    し付けることによって金属板上から除去する工程のう
    ち、少なくともひとつの工程からなる第2の工程を有す
    ることを特徴とする金属板の製造方法。
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