JP2003325654A - 生体用多孔質複合体、その製造方法及びその用途 - Google Patents

生体用多孔質複合体、その製造方法及びその用途

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JP2003325654A JP2002133287A JP2002133287A JP2003325654A JP 2003325654 A JP2003325654 A JP 2003325654A JP 2002133287 A JP2002133287 A JP 2002133287A JP 2002133287 A JP2002133287 A JP 2002133287A JP 2003325654 A JP2003325654 A JP 2003325654A
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Akira Totsu
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生体親和性が高く、しかも強度の強い金属多
孔質体及びそれを良好に製造することのできる製造方法
を提供する。 【解決手段】 金属粉末と加熱により焼失する空隙形成
材料としての無機又は有機のスペーサ材料粉末とを混合
してプレス成形し、次いで、スペーサ材料粉末の焼失温
度に加熱してスペーサ材料を焼失させた後、これより高
温の焼結温度で焼結処理して金属粉末を焼結した金属の
多孔質体において、その空隙の少なくとも一部にハイド
ロキシアパタイトを充填した後、焼結処理したことを特
徴とする生体用多孔質複合体、その製造方法、及び生体
適合性インプラント部材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生体用多孔質複合
体に関するものであり、更に詳しくは、多くの空隙を含
むことによりその見かけの密度が著しく小さい超軽量金
属製多孔質構造体材料、その製造方法及びその用途に関
するものであり、本発明の生体用多孔質複合体は、新生
骨の侵入で早期に生体に適合する空間を導入した生体用
材料、特に、生体適合性インプラント材料として有用で
ある。
【0002】
【従来の技術】従来、生体用材料として、例えば、歯科
材料としては、金、銀、パラジウム或いはニッケルクロ
ム合金等が使用されており、最近では、チタン材料(チ
タン若しくはその合金)も耐食性に優れ、また、生体と
の馴染みが良いことから、人工股関節、人工膝関節等の
人工骨材料として、或いは人工歯根、人工歯床等のイン
プラント用歯科材料、その他の生体用材料として、注目
されている。
【0003】この種の生体用材料には、生体とよく馴染
むこと、刺激性或いは毒性がないこと、腐食したり崩壊
したりしないこと、少々の力を加えても破損しないこと
等の特性が要求されるが、チタン材料の場合は、比較的
これらの要求特性を満たし得るものである。
【0004】ところで、チタン材料或いはその他の金属
材料をそのまま生体用材料として用いた場合、これらの
金属材料は、弾性率が人工骨等に比べて桁違いに高いた
めに、曲げ力等が働いたときに人工骨と生体骨等との界
面で大きな応力が発生し、これに起因して、人工骨等の
生体材料と生体骨との間で剥離が生じたり、割れが生じ
たりする恐れがある。
【0005】そこで、この種の生体材料を多孔質体とす
ることが考えられており、それにより、生体の骨組織が
多孔質体の空隙内に入り込んで生体用材料(人工骨)と
生体骨とが一体化し、そこに、本来の生体骨と極めて近
似した骨組織を早期に形成させることが可能となる。ま
た、生体用材料を、このような多孔質体とすることで、
金属材料を用いながら、これを極めて軽量化することが
可能となる。
【0006】ところで、この種の空隙が連続した金属多
孔質体を製造する方法として、従来、以下のような方法
が知られている。その第1の方法は、鋳造法と呼ばれる
ものであり、発泡ポリウレタンのような多孔質高分子材
料の空隙内に石膏等を流し込むようにして型どりし、そ
の後、加熱により高分子材料を焼失させると同時に鋳型
を焼成し、次いで、その鋳型の空隙内に溶融金属を注入
・凝固させた後、鋳型を破砕除去する方法である。
【0007】また、第2の方法は、メッキ法と呼ばれる
ものであり、樹脂製等の微小粒子集合体が形成する空隙
に、無電解メッキ、例えば、ニッケル等の金属イオンを
含む溶液に浸漬する方法で金属を充填し、その後、加熱
により、破小粒子を焼失・除去するものであり、その微
小粒子の焼失によって、空隙形成、即ち、多孔質構造体
を得る方法である。
【0008】また、第3の方法は、スペースホルダー法
と呼ばれるものであり、金属粉末と加熱により焼失する
スベーサ材料粉末とを混合して所定形状に成形し、その
後、加熱によりスペーサ材料を焼失させた後、残った金
属粉末を焼結温度で焼結させ、多孔質構造体を得る方法
である。
【0009】しかしながら、上記第1の方法、即ち、鋳
造法と呼ばれる方法の場合、溶融金属を注入・凝固させ
た状態で、その金属凝固体の空隙内に石膏等の鋳型材料
が詰まった状態となり、従って、その鋳型材料の破砕除
去のプロセスが必要となるが、このプロセスは、困難な
プロセスであって、金属多孔質体の空隙内に残った鋳型
材料を容易に除去することができず、そのために、本方
法は、生産性が著しく悪く、この方法では、従来、板状
の材料しか作製できないのが実情である。
【0010】一方、上記第2の方法、即ち、メッキ法と
呼ばれる方法では、作製できる金属多孔質体がニッケル
等に限定されてしまう上、生産性が低く、第1の方法と
同様に、従来、板状の材料しか作製できないのが実情で
ある。
【0011】他方、上記第3の方法、即ち、スペースホ
ルダー法と呼ばれる方法では、従来、金属粉末、スペー
サ材料粉末の何れも球状の粉末を用いているが、粉末混
合の特性上、スペーサ材料粉末が一様に分散せず、特
に、空隙率を大きく取った場合、空隙と空隙とを遮断す
べき金属材料が切離して、空隙同士が繋がった状態とな
り易く、また、これに伴って、材料強度のばらつきが著
しく大きくなり、全体の強度も低くなるという問題を生
ずる。
【0012】また、空隙と空隙との間の金属材料が切離
することによって、尖った部分が多く発生し、従って、
このような多孔質構造体を生体用材料として用いたと
き、随所に生じている尖った部分が、生体に対する刺激
拠点となってしまうといった不都合が生じる。
【0013】図1の(イ)、(口)、(ハ)は、多孔質
化した材料の二次元構造を模式的に表したものである。
図中、(イ)は、球状の金属粉末とスペーサ材料粉末と
が理想的に混合した理想状態での組織を示している。こ
の場合には、金属材料が良好に網目構造を成していて、
空隙Pと空隙Pとは、金属材料Mにより良好に遮断され
た状態にあり、従って、また、金属材料Mは、空隙Pと
Pとの間の部分において、良好に繋がった状態にある。
【0014】しかしながら、実際には、特に、空隙率が
高くなった場合には、このように理想的には金属粉末と
スペーサ材料粉末とが分散混合せず、或いは、また、空
隙と空隙を分ける部分の金属材料層Maの厚みが極めて
薄いために、図1(ロ)に示されているように、同部分
が比較的容易に切れたり、離脱したりしてしまい、それ
により、多くの尖った部分が発生してしまうという問題
がある。そして、この結果、その尖った部分が生体に対
する刺激拠点となり、更に、また、この現象によって、
材料強度に大きなばらつきが生じるとともに、全体の強
度も小さなものとなってしまうという問題があった。
【0015】このような多孔質構造体は、特に、生体用
材料として、即ち、骨と一体化する生体適合性材料とし
て使用する場合、骨が侵入して一体化が始まれば、骨と
材料との複合体としての強度は順次向上していくが、生
体内に導入した当初は、骨との一体化がまだ行われてい
ないために、材料自体の強度が小さいことが問題となっ
てしまうという欠点がある。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】このような状況の中
で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記従来技
術の諸問題を抜本的に解決することを可能とする新しい
生体用多孔質複合体を開発することを目標として鋭意研
究を進める過程で、上記多孔質構造体の空隙にハイドロ
キシアパタイトを充填することにより所期の目的を達成
し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すな
わち、本発明の高強度多孔質体の製造方法及び高強度多
孔質体は、このような従来技術の諸問題を抜本的に解決
するために創出されたものであって、本発明は、新生骨
の侵入で早期に生体に適合する空間を導入した新規生体
適合材料、その製造方法及びその用途を提供することを
目的とするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の本発明は、以下の技術的手段から構成される。 (1)材料金属の主成分となる粉末を成形して焼結し、
新生生体骨が容易に侵入する空間を材料内に形成した多
孔質構造体であって、その空隙の少なくとも一部にハイ
ドロキシアパタイトを充填したことを特徴とする生体用
多孔質複合体。 (2)材料金属の主成分となる粉末と無機又は有機のス
ペーサ材料粉末を混合して成形し、次いで、スペーサ材
料粉末の焼失温度に加熱してスペーサ材料を焼失させた
後、焼結して、新生生体骨が容易に侵入する空間を材料
内に連続して形成した金属製多孔質構造体であって、そ
の連続する空隙の一部にハイドロキシアパタイトを充填
したことを特徴とする前記(1)記載の生体用多孔質複
合体。 (3)材料金属の主成分となる粉末の成分が、マグネシ
ウム、アルミニウム、チタニウム、鉄、ニッケル、又は
銅のいずれかである前記(1)又は(2)記載の生体用
多孔質複合体。 (4)材料金属の主成分となる粉末の第1相と無機又は
有機のスペーサ材料粉末の第2相を混合して成形し、次
いで、スペーサ材料粉末の焼失温度に加熱して第2相を
焼失させた後、第1相を焼結して、新生生体骨が容易に
侵入する空間を材料内に形成した多孔質構造体を作製
し、次いで、その空隙の少なくとも一部にハイドロキシ
アパタイトを充填した後、焼結処理することを特徴とす
る生体用多孔質複合体の製造方法。 (5)材料金属の主成分となる第1相粉末に、中温度で
液相を経ることなく蒸発する無機又は有機の第2相粉末
を混合して、プレス型内で成形し、次いで、中温度で加
熱して第2相を分解・蒸失した後、高温度で第1相を焼
結して、新生生体骨が容易に侵入する空間を材料内に連
続して形成した多孔質構造体を作製し、次いで、その連
続する空隙の一部にハイドロキシアパタイトを充填した
後、焼結処理することを特徴とする前記(4)記載の生
体用多孔質複合体の製造方法。 (6)燐酸溶液と水酸化カルシウム溶液を用いた共沈法
を利用することにより、ハイドロキシアパタイトを多孔
質構造体内の空隙に充填することを特徴とする前記
(4)又は(5)記載の生体用多孔質複合体の製造方
法。 (7)粉末状ハイドロキシアパタイトを振動充填するこ
とにより、ハイドロキシアパタイトを多孔質構造体内の
空隙に充填することを特徴とする前記(4)又は(5)
記載の生体用多孔質複合体の製造方法。 (8)ゾルゲル法を利用することにより、ハイドロキシ
アパタイトを多孔質構造体内の空隙に充填することを特
徴とする前記(4)又は(5)記載の生体用多孔質複合
体の製造方法。 (9)多孔質構造体を形成する材料金属の主成分となる
粉末の成分が、マグネシウム、アルミニウム、チタニウ
ム、鉄、ニッケル、又は銅のいずれかである前記(4)
又は(5)記載の生体用多孔質複合体の製造方法。 (10)第2相の主成分が、炭酸水素アンモニウム、尿
素、ポリオキシメチレン樹脂、尿素樹脂、発泡ポリスチ
レン樹脂、又は発泡ポリウレタン樹脂のいずれかである
前記(4)又は(5)記載の生体用多孔質複合体の製造
方法。 (11)第1相と第2相の粉末混合体に、更に、第1相
の成分の繊維を添加混合することを特徴とする前記
(4)又は(5)記載の生体用多孔質複合体の製造方
法。 (12)ハイドロキシアパタイトの焼結度を制御するこ
とにより、ハイドロキシアパタイトの密度を調整して、
生体骨の成長速度に合致させた溶解速度にすることを特
徴とする前記(4)又は(5)に記載の生体用多孔質複
合体の製造方法。 (13)前記(4)から(12)のいずれかに記載の方
法により得られる生体用多孔質複合体を構成要素として
含むことを特徴とする生体適合性インプラント部材。
【0018】
【発明の実施の形態】次に、本発明について更に詳細に
説明する。本発明の第1の態様は、新生生体骨が容易に
侵入する空間を多量に保持した上で、初期強度が高く、
また、生体刺激性がない生体用多孔質複合体に係るもの
であり、材料金属の主成分となる粉末を成形し、焼結し
て、新生生体骨が容易に侵入する空間を材料内に連続し
て形成した多孔質構造体において、その連続する空隙の
少なくとも一部をハイドロキシアパタイトで充填するこ
とを特徴とする。
【0019】本発明の他の態様は、生体用多孔質複合体
の製造方法に関するものであり、金属粉末と加熱により
焼失する空隙形成材料としての無機又は有機のスベーサ
材料粉末とを混合してプレス成形し、次いで、該スペー
サ材料粉末の焼失温度に加熱して、該スペーサ材料を焼
失させた後、これより高温の焼結温度で焼結処理して前
記金属粉末を焼結させた金属多孔質体において、その空
隙の少なくとも一部をハイドロキシアパタイトによって
充填することを特徴とする。
【0020】本発明では、ハイドロキシアパタイトを多
孔質体内の空隙に充填する上記方法において、燐酸溶液
と水酸化カルシウム溶液を用いた共沈法を利用すること
ができる。また、本発明では、ハイドロキシアパタイト
を多孔質体内の空隙に充填する上記方法において、粉末
状ハイドロキシアパタイトを振動充填する方法を利用す
ることができる。
【0021】また、本発明では、ハイドロキシアパタイ
トを多孔質体内の空隙に充填する上記方法において、ゾ
ルゲル法を利用することができる。また、本発明では、
上記生体用多孔質複合体において、多孔質構造体を形成
する主成分となる粉末の成分として、好適には、例え
ば、、マグネシウム、アルミニウム、チタニウム、鉄、
ニッケル、銅が例示されるが、これらに制限されるもの
ではなく、同効のものであれば同様に使用することがで
きる。
【0022】また、本発明は、上記生体用多孔質複合体
の製造方法において、前記スペーサ材料粉末として、好
適には、例えば、炭酸水素アンモニウム、尿素、ポリオ
キシメチレン樹脂、尿素樹脂、発泡ポリスチレン樹脂、
又は発泡ポリウレタン樹脂の何れかを主成分としたもの
が例示されるが、これらに制限されるものではなく、同
効のものであれば同様に使用することができる。更に、
本発明では、上記生体用多孔質複合体の製造方法におい
て、前記材料金属粉と前記スペーサ材料粉末の混合体
に、更に、前記材料金属の繊維を添加混合することがで
きる。この場合、上記繊維の種類、形態、及び添加量等
は特に制限されるものではなく、その使用目的に応じて
適宜のものを選択することができる。
【0023】上記のように、本発明の製造方法は、前記
した従来の第3の方法、即ち、スペースホルダー法を用
いて作製した多孔質構造体の後処理技術として、その空
隙の少なくとも一部に上記ハイドロキシアパタイトを充
填することにより、同方法で発生する弊害を確実に回避
して、それにより、高性能な生体用多孔質複合体を得る
ことを可能とすることを特徴とするものである。ハイド
ロキシアパタイトは、最終的には生体内で吸収されるた
めに、金属製多孔質構造体の空隙にハイドロキシアパタ
イトを充填しておいても、当該ハイドロキシアパタイト
が生体に順次吸収されながら、新生生体骨が金属製多孔
質構造体内に侵入していくために、多孔質構造体が有す
る機能を阻害することにはならない。
【0024】その一方で、ハイドロキシアパタイトが上
記多孔質構造体の空隙部分に充填されることにより、圧
縮強度並びに変形抵抗が著しく向上し、無充填時には初
期強度が小さいという金属製多孔質構造体の本来の特性
を大きく改善することができる。即ち、図1の(イ)
に、上記多孔質構造体の二次元構造を模式的に示すよう
に、空隙Pと空隙Pとの間に存在している金属材料が良
好に繋がった状態にあり、また、空隙Pと空隙Pとは金
属材料によって良好に遮断され、独立した空隙をかたち
造るような場合において、その空隙にハイドロキシアパ
タイトを充填することにより、その強度や変形抵抗を大
幅に向上させることができる。
【0025】また、ハイドロキシアパタイトを上記空隙
部分に充填しない場合には、特に、空隙率を高くして、
骨と多孔質体が一体化した際の特性を、より骨だけの特
性に近づけたい場合には、図1の(ロ)に、模式的に示
すように、空隙と空隙との間の部分で金属材料が切離し
てしまう部分Maが発生する。こうした部分は、多孔質
体を生体材料として使用する際に、その尖った部分が生
体を刺激するといった不都合の発生を回避することが困
難となる。
【0026】しかし、こうした場合に、金属製多孔質構
造体の空隙部分にハイドロキシアパタイトが充填される
ことにより、こうした尖った部分は、ハイドロキシアパ
タイトに覆われるため、生体を刺激するといった不都合
は発生しなくなる利点が生じる。すなわち、空隙率が9
0%を超えるような、極めて高い空隙率を有し、内部に
尖った部分をかなり含有する金属製多孔質構造体でも、
生体に刺激を与えることなく使用することが可能とな
る。
【0027】図1の(イ)に示す多孔質構造体は、従来
の緻密構造の金属材料から成る生体用材料に比べて、そ
れ自身多孔質構造に由来して有利な効果を奏するもので
あるが、特に、本発明の製造方法にて得られた生体用多
孔質複合体である図1の(ハ)は、尖った部分による生
体への刺激もなく、且つ強度も高強度であり、更に、金
属材料の使用量を格段に低減できるため、生体用材料と
して、特に好適なものである。
【0028】本発明においては、上記金属製多孔質構造
体の材料金属としては、前述したように、好適には、例
えば、マグネシウム、アルミニウム、チタニウム、鉄、
ニッケル、銅の何れかの単体若しくは合金を好適に用い
ることができるが、これらに制限されるものではない。
特に、生体用材料として用いる場合には、チタニウム若
しくはその合金粉末を好適に使用可能である。
【0029】また、上記スペーサ材料粉末としては、前
述したように、好適には、例えば、炭酸水素アンモニウ
ム、尿素、ポリオキシメチレン樹脂、尿素樹脂、発泡ポ
リスチレン樹脂、発泡ポリウレタン樹脂の何れかを主成
分としたものを好適に使用することが可能であるが、こ
れらに制限されるものではない。本発明においては、ま
た、材料金属の主成分となる金属粉末のみを焼結したも
のばかりでなく、当該金属粉末に金属繊維を混合して焼
結したものにも好適に適用することができる。この場
合、金属繊維の種類及び形態等は、特に制限されるもの
ではなく、適宜のものを使用することができる。
【0030】本発明では、上記金属製多孔質構造体の空
隙の少なくとも一部にハイドロキシアパタイトを充填す
る。ハイドロキシアパタイトは、例えば、燐酸溶液と水
酸化カルシウム溶液を用いた共沈法を利用することによ
り生成されるが、本発明では、ハイドロキシアパタイト
の種類及びその充填方法は特に制限されない。ハイドロ
キシアパタイトを充填するには、例えば、湿式法である
燐酸溶液と水酸化カルシウム溶液を用いた共沈法を利用
して、多孔質体内にハイドロキシアパタイトを析出させ
ることができる。更に、この析出したハイドロキシアパ
タイトを乾燥後、焼結条件を制御することにより、ハイ
ドロキシアパタイトの密度を変化させることができる。
より高密度のハイドロキシアパタイトとなる方が、生体
内での溶解速度が遅くなり、生体骨の成長速度に合致さ
せた溶解速度を有するハイドロキシアパタイトを作製で
きる。
【0031】また、ハイドロキシアパタイトの充填に
は、例えば、粉末状のハイドロキシアパタイトを振動充
填にて多孔質体内に入れ込むことができる。同様に、こ
の粉末状ハイドロキシアパタイトの焼結条件を制御する
ことにより、ハイドロキシアパタイトの密度を変化させ
ることができ、それにより、生体骨の成長速度に合致さ
せた溶解速度を有するハイドロキシアパタイトを作製で
きる。
【0032】更に、また、ハイドロキシアパタイトの充
填には、例えば、溶媒に分散させたゾル状態のハイドロ
キシアパタイトから溶媒を除いたゲルにおいて、高温焼
結させるゾルゲル法によっても、多孔質体内にハイドロ
キシアパタイトを析出させることができる。この際、同
様に焼結度を制御することにより、ハイドロキシアパタ
イトの密度を変化させることができ、生体骨の成長速度
に合致させた溶解速度を有するハイドロキシアパタイト
を作製できる。焼結処理は、例えば、後記する実施例に
示されるように、ハイドロキシアパタイトを多孔質体内
に充填して作製した複合体を自然乾燥させた後に、真空
炉内において約1000℃に加熱して数時間の焼結処理
を行うことで実施されるが、これに制限されるものでは
なく、同効の方法及び条件であれば適宜採用することが
できる。本発明の生体用多孔質複合体は、生体適合性イ
ンプラント部材として有用である。本発明において、生
体適合性インプラント部材とは、人工骨部材、人工歯
根、人工歯床を含むあらゆる種類の生体用部材を包含す
るものであることを意味している。
【0033】図2に、本発明の方法による多孔質化プロ
セスの一例を示す。この例では、原料金属粉末とスペー
サ材料粉末とを撹絆・混合装置12にて攪拌・混合し、
得られた混合体を、次に、プレス成形装置14で所定形
状にプレス成形した後、スペーサ材除去装置16にセッ
トし、同装置によって成形体に対する加熱を行ってスペ
ーサ材料を焼失させる。
【0034】この例において、スぺーサ材除去装置16
は、真空排気口18を有しており、そこから真空排気し
ながら発熱体20により成形体に対する加熱を行ってス
ペーサ材料を焼失させる。尚、図中、10aは、そのよ
うにしてスペーサ材料を除去した中間製品Aを表してい
る。
【0035】次に、スペーサ材料を除去処理した中間製
品10aを焼結装置22(22a)にセットし、そこ
で、再び、スペーサ材除去装置における昇温加熱よりも
高い焼結温度でこれを焼結処理する。尚、図の焼結装置
22(22a)においても、真空排気口18を有してお
り、そこから真空排気を行いながら、発熱体20により
中間製品10aを加熱し、これを焼結させる。ここにお
いて、スペーサ材料の除去された後が空隙として残った
多孔質構造体10bからなる中間製品Bが得られる。
【0036】更に、この中間製品Bを、ハイドロキシア
パタイトを合成する容器33内に置き、発熱体20で温
度制御をしつつ、燐酸水溶液30と水酸化カルシウム懸
濁液31をポンプ32で供給し、水素イオン濃度を制御
しながら攪拌混合して、多孔質構造内にハイドロキシア
パタイトを充填し、多孔質体10cを作製する。その
後、このハイドロキシアパタイトを充填した多孔質体
を、常温で自然乾燥させた後、真空排気しながら焼結装
置22(22b)において、金属の多孔質材の焼結は進
まないがハイドロキシアパタイトが焼結する温度で、こ
れを焼結処理して最終製品Cを得る。本発明の方法によ
る多孔質化プロセスは、上記プロセス及び手段に制限さ
れるものではなく、その使用目的に応じて、任意のプロ
セス及び手段を用いて、適宜の工程を設計することがで
きる。
【0037】
【実施例】次に、本発明の実施例を以下に詳しく説明す
るが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定される
ものではない。 実施例 ガスアトマイズ法ないし水素化脱水素化法でTi粉末を
作製後、50μm以下に分級したTi粉末に、直径50
0μmのポリオキシメチレン樹脂製の球状スペーサ材料
粉末を室温で約5倍の分量で加えて、十分攪拌・混合
し、その後、プレス型にて成形加工した。
【0038】その後、真空炉内において300℃まで5
時間かけて昇温させ、この過程でスペーサ材料を焼失さ
せ、その後、更に、1200℃に加熱して、2時間の焼
結処理を行った。得られた多孔質体の引張強度を測定し
たところ、5MPaであった。尚、空隙率は80%であ
った。ここで、引張強度の測定は、JIS Z2550
に準拠した試験片において、JIS Z2241に準拠
した方法で行った。
【0039】次に、この多孔質体をハイドロキシアパタ
イトを合成する槽に入れ、液温を40℃、水素イオン濃
度をpH8に制御しながら、燐酸水溶液と水酸化カルシ
ウム懸濁液を攪拌混合し、ハイドロキシアパタイトを多
孔質体内に充填処理した。この複合体を自然乾燥させた
後に、真空炉内において1000℃に加熱して2時間の
焼結処理を行った。得られた多孔質体の密度は、空隙の
約50%がハイドロキシアパタイトで充填された状況で
あり、その引張強度を測定したところ、10MPaであ
った。
【0040】以上、本発明の実施例を詳述したが、これ
はあくまで一例示であり、本発明は、その主旨を逸脱し
ない範囲において種々変更を加えた実施の形態で実施す
ることが可能である。
【0041】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明は、生体用
多孔質複合体、その製造方法及びその用途に係るもので
あり、本発明により、1)多くの空隙を含むことにより
その見かけ密度が著しく小さい超軽量金属製多孔質構造
体材料及びその製造方法を提供することができる、2)
新生骨の侵入で早期に生体に適合する空間を導入した生
体用材料を提供することができる、3)空隙率が90%
を越えるような、極めて高い空隙率を有し、内部に尖っ
た部分をかなり含有する金属製多孔質構造体でも、生体
に刺激を与えることなく使用することができる、4)生
体骨の成長速度に合致させた溶解速度を有するハイドロ
キシアパタイトを充填した生体用多孔質複合体を提供す
ることができる、という格別の効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】多孔質化した材料の二次元模式図である。
【図2】本発明の方法による多孔質化プロセスの一例を
示す説明図である。
フロントページの続き Fターム(参考) 4C081 AB03 BA12 BA13 CA031 CA211 CE11 CF031 CF21 CG02 CG05 CG07 CG08 DA01 DA11 DA12 DB03 EA02 EA03 EA04 EA06

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 材料金属の主成分となる粉末を成形して
    焼結し、新生生体骨が容易に侵入する空間を材料内に形
    成した多孔質構造体であって、その空隙の少なくとも一
    部にハイドロキシアパタイトを充填したことを特徴とす
    る生体用多孔質複合体。
  2. 【請求項2】 材料金属の主成分となる粉末と無機又は
    有機のスペーサ材料粉末を混合して成形し、次いで、ス
    ペーサ材料粉末の焼失温度に加熱してスペーサ材料を焼
    失させた後、焼結して、新生生体骨が容易に侵入する空
    間を材料内に連続して形成した金属製多孔質構造体であ
    って、その連続する空隙の一部にハイドロキシアパタイ
    トを充填したことを特徴とする請求項1記載の生体用多
    孔質複合体。
  3. 【請求項3】 材料金属の主成分となる粉末の成分が、
    マグネシウム、アルミニウム、チタニウム、鉄、ニッケ
    ル、又は銅のいずれかである請求項1又は2記載の生体
    用多孔質複合体。
  4. 【請求項4】 材料金属の主成分となる粉末の第1相と
    無機又は有機のスペーサ材料粉末の第2相を混合して成
    形し、次いで、スペーサ材料粉末の焼失温度に加熱して
    第2相を焼失させた後、第1相を焼結して、新生生体骨
    が容易に侵入する空間を材料内に形成した多孔質構造体
    を作製し、次いで、その空隙の少なくとも一部にハイド
    ロキシアパタイトを充填した後、焼結処理することを特
    徴とする生体用多孔質複合体の製造方法。
  5. 【請求項5】 材料金属の主成分となる第1相粉末に、
    中温度で液相を経ることなく蒸発する無機又は有機の第
    2相粉末を混合して、プレス型内で成形し、次いで、中
    温度で加熱して第2相を分解・蒸失した後、高温度で第
    1相を焼結して、新生生体骨が容易に侵入する空間を材
    料内に連続して形成した多孔質構造体を作製し、次い
    で、その連続する空隙の一部にハイドロキシアパタイト
    を充填した後、焼結処理することを特徴とする請求項4
    記載の生体用多孔質複合体の製造方法。
  6. 【請求項6】 燐酸溶液と水酸化カルシウム溶液を用い
    た共沈法を利用することにより、ハイドロキシアパタイ
    トを多孔質構造体内の空隙に充填することを特徴とする
    請求項4又は5記載の生体用多孔質複合体の製造方法。
  7. 【請求項7】 粉末状ハイドロキシアパタイトを振動充
    填することにより、ハイドロキシアパタイトを多孔質構
    造体内の空隙に充填することを特徴とする請求項4又は
    5記載の生体用多孔質複合体の製造方法。
  8. 【請求項8】 ゾルゲル法を利用することにより、ハイ
    ドロキシアパタイトを多孔質構造体内の空隙に充填する
    ことを特徴とする請求項4又は5記載の生体用多孔質複
    合体の製造方法。
  9. 【請求項9】 多孔質構造体を形成する材料金属の主成
    分となる粉末の成分が、マグネシウム、アルミニウム、
    チタニウム、鉄、ニッケル、又は銅のいずれかである請
    求項4又は5記載の生体用多孔質複合体の製造方法。
  10. 【請求項10】 第2相の主成分が、炭酸水素アンモニ
    ウム、尿素、ポリオキシメチレン樹脂、尿素樹脂、発泡
    ポリスチレン樹脂、又は発泡ポリウレタン樹脂のいずれ
    かである請求項4又は5記載の生体用多孔質複合体の製
    造方法。
  11. 【請求項11】 第1相と第2相の粉末混合体に、更
    に、第1相の成分の繊維を添加混合することを特徴とす
    る請求項4又は5記載の生体用多孔質複合体の製造方
    法。
  12. 【請求項12】 ハイドロキシアパタイトの焼結度を制
    御することにより、ハイドロキシアパタイトの密度を調
    整して、生体骨の成長速度に合致させた溶解速度にする
    ことを特徴とする請求項4又は5に記載の生体用多孔質
    複合体の製造方法。
  13. 【請求項13】 請求項4から12のいずれかに記載の
    方法により得られる生体用多孔質複合体を構成要素とし
    て含むことを特徴とする生体適合性インプラント部材。
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