JP2003308822A

JP2003308822A - 制御弁式鉛蓄電池及びその製造方法

Info

Publication number: JP2003308822A
Application number: JP2002113178A
Authority: JP
Inventors: Kaoru Shoji; 馨庄司
Original assignee: Shin Kobe Electric Machinery Co Ltd
Current assignee: Resonac Corp
Priority date: 2002-04-16
Filing date: 2002-04-16
Publication date: 2003-10-31

Abstract

(57)【要約】【課題】制御弁式鉛蓄電池を長期間使用した場合にお
いて、負極端子付近の蓋5の割れを防止する。【解決手段】蓋5に、略円筒形状をし、極柱9が挿入さ
れる径を大きくした鉛合金製の負極用のブッシング10を
インサートして形成する。そして、負極端子が埋め込ま
れている鉛合金製の極柱7と、前記ブッシング10との隙
間部分に上方からリング状鉛部品26を落としこんで嵌合
させた後に、これらの嵌合部分を上部から過熱して溶接
部14を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、制御弁式鉛蓄電池
の端子部分に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】鉛蓄電池は安価で信頼性の高い電池とし
て、自動車用バッテリや無停電電源装置などの用途に用
いられている。これらの鉛蓄電池のなかで制御弁式鉛蓄
電池は、補水が不要であるという特徴があるため、近
年、無停電電源装置などの需要が増加している。

【０００３】図２は、従来から使用されている一般的な
制御弁式鉛蓄電池の端子7付近の断面概略図であり、図
４は、一般的な制御弁式鉛蓄電池の切欠き断面斜視図で
ある。なお、これらの制御弁式鉛蓄電池は、以下に示す
工程で製造されている。

【０００４】すなわち、正極板1と負極板2とをセパレー
タ3を介して積層し、耳部48を溶接して鉛合金製のスト
ラップ6や極柱9を有する極板群を作製し、該極板群を電
槽4に挿入する（図３）。なお、図２に示されるよう
に、鉛合金製の極柱9の上部には、リード線などを用い
て、図示されていない外部負荷と接続するための金属
製、たとえば銅製の端子7が埋め込まれている。そし
て、端子7の内側にはネジ部15が切られており、ボルト
によってリード線が螺合されて固定される。

【０００５】一方、ポリプロピレン樹脂等を用いた蓋5
には、図２で示されるような側面に複数の環状突部11を
有する略円筒形状をした鉛合金製のブッシング10がイン
サート成形されている。なお、ブッシング10の側面に環
状突部11が複数設けられている理由は、樹脂製の蓋5と
の接触面積を増加させることによって、密着性を向上さ
せて、電池内部からの電解液の濾液を防止するためであ
る。

【０００６】そして、上記したブッシング10をインサー
トした蓋を上方から被せて（図３）、蓋5と電槽4とを熱
溶着又は接着剤を用いて固定される。その後、ブッシン
グ10と極柱9との嵌合部分を過熱器具、たとえばバーナ
によって加熱・溶接して溶接部14を形成し、上方からエ
ポキシ系接着剤16を流し込んでこの部分を密閉するもの
である（図２）。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、制御弁
式鉛蓄電池を長期間使用すると、内部の希硫酸電解液に
よって、負極側の鉛合金製の極柱9やブッシング10が硫
酸鉛化することが知られている。そして、隙間部分の硫
酸鉛の蓄積に伴って、ブッシング10に外向きの力が継続
してかかる（図２）。

【０００８】なお、鉛合金製のブッシング10には延性が
あるために、外向きの力がかかって変形しても割れるこ
とはない。しかしながら、ブッシング10に接している蓋
5は樹脂製であり、割れが発生しやすい。特に、蓋5の材
質としてＡＢＳ等の硬い樹脂を用いた場合に、この部分
で割れが発生しやすいことが明らかになっている。その
結果、鉛蓄電池の電解液として用いられている希硫酸が
外部に漏れるという問題点があった。

【０００９】ここで、硫酸鉛の蓄積による割れを防止す
る手段として、極柱7とブッシング10との間隔を広げ
て、隙間部分を大きくすることが容易に考えられる。し
かしながら、極柱7とブッシング10との間隔を広げる
と、溶接時に極柱7を構成する鉛合金が溶融して下方へ
流れ落ちるなどによって、溶接不良が発生するという問
題点が認められた。

【００１０】本発明の目的は、溶接時の不良を防止する
とともに、鉛蓄電池を長期間使用した場合においても、
負極側の端子付近の蓋5が割れにくい構造を提供するこ
とである。

【００１１】

【課題を解決するための手段】上記した課題を解決する
ために、本発明はブッシングと極柱との間にリング状鉛
部品を挟みこんだ後に、これらの嵌合部分を上部からバ
ーナ等で過熱して溶接部を形成する。そして、極柱7と
ブッシング10との間隔を広げた状態で溶接ができるよう
にしたものである。

【００１２】すなわち、請求項１記載の発明は、蓋にイ
ンサートされている鉛合金製の略円筒形状をしたブッシ
ングと、端子が埋め込まれている極柱とを溶接して溶接
部を形成する制御弁式鉛蓄電池において、前記ブッシン
グと前記極柱とはリング状鉛部品を介して溶接されてい
ることを特徴としている。

【００１３】請求項２記載の発明は、蓋にインサートさ
れている鉛合金製の略円筒形状をした負極側のブッシン
グと、負極用の端子が埋め込まれている極柱とを溶接し
て溶接部を形成する制御弁式鉛蓄電池において、前記ブ
ッシングと前記極柱とはリング状鉛部品を介して溶接さ
れていることを特徴としている。

【００１４】請求項３記載の発明は、蓋にインサートさ
れている鉛合金製の略円筒形状をした負極側のブッシン
グと、負極用の端子が埋め込まれている極柱とを溶接し
て溶接部を形成する制御弁式鉛蓄電池の製造方法におい
て、前記ブッシングと前記極柱との隙間部分にリング状
鉛部品を落としこんで嵌合させた後に、該嵌合部分を上
部から過熱して溶接部を形成することを特徴としてい
る。

【００１５】

【発明の実施の形態】本発明に係わる制御弁式鉛蓄電池
は、以下において詳細に説明するように、ブッシング10
と極柱7との間にリング状鉛部品26を挟みこんで嵌合さ
せた後、これらの嵌合部分を上部から過熱して溶接部14
を形成することを特徴とするものである。

【００１６】１．本発明に係わるブッシング、蓋及びリ
ング状鉛部品の作製円筒形状をした２種類のブッシング10を、従来から使用
されている手法で鋳造によって作製した。これらは、従
来から使用していたブッシング10と、本発明に係わる極
柱7と嵌合するブッシング10の内径を従来品に比べて大
きくした２種類である。すなわち、ブッシング10の原材
料として、鉛合金を５００℃に溶解させた溶湯を、２０
０℃に保持した２種類の形状の鋳型に注湯し、３０秒間
保持して凝固させた後に離型した。そして、作製した２
種類のブッシング10を用い、従来から使用していた手法
でポリプロピレン樹脂を用いてインサート成形加工をし
て蓋5を作成した。ここで、本発明に係わる制御弁式鉛
蓄電池は、負極側に使用するブッシング10の内径を従来
品に比べて大きくした物である。

【００１７】また、本発明に係わる制御弁式鉛蓄電池で
は、鉛合金製のリング状鉛部品26を、上記したブッシン
グ10と同様の手法で鋳造により作製した。なお、リング
状鉛部品26は、ブッシング10と極柱7との隙間部分に上
方から嵌合しやすくすることを目的に、その断面が下方
向に楔形を有するようにした。このような形状にするこ
とによって、リング状鉛部品26をブッシング10と極柱7
との隙間部分に挿入し易くすることができるため、後述
する溶接時における不良を起こりにくくすることができ
る。

【００１８】２．制御弁式鉛蓄電池の作製及び試験本発明に係わる制御弁式鉛蓄電池と、従来の制御弁式鉛
蓄電池の２種類を従来の手法で組み立てた（図３，
４）。すなわち、正極板1と負極板2とをセパレータ3を
介して積層し、溶接してストラップ6や極柱9を有する極
板群を作製し、該極板群を電槽4に挿入する。なお、極
柱9の上部には、外部負荷とリード線などを用いて接続
をするための銅製の端子7が埋め込まれている。そし
て、端子7上部の内側にはネジ部15が形成されており、
この部分にボルトによってリード線等が螺合されて固定
される。

【００１９】ポリプロピレン樹脂製の蓋5の負極側に
は、従来品に比べて、極柱7との嵌合部分の内径が大き
く略円筒形状をした鉛合金製のブッシング10を使用し、
正極側には従来から使用している鉛合金製のブッシング
10を使用した。そして、上方から蓋5を被せ（図３）、
極柱装着用穴部17と極柱9とを嵌合し、蓋5と電槽4とを
熱溶着して固定する。

【００２０】組み立てられた２種類の制御弁式鉛蓄電池
は、従来の手法で希硫酸電解液を注液した後に電槽化成
をし、安全弁部8（図４）に安全弁を取り付けて密閉し
て、２Ｖ−１０００Ａｈ（２０時間率放電容量）の制御
弁式鉛蓄電池をそれぞれ３０個ずつ作製した。

【００２１】作製した制御弁式鉛蓄電池は、加速試験方
法として、７１℃で２．２３Ｖの定電圧充電を連続的に
行ない、７ヶ月後に蓋5の端子7付近の割れが発生するか
否かを確認した。

【００２２】

【実施例】（実施例）本発明に係わる制御弁式鉛蓄電池
の実施例を図１を用いて詳細に説明する。図１に示すよ
うに、本発明に係わる制御弁式鉛蓄電池では、負極側の
ブッシング10と極柱9との隙間部分にリング状鉛部品26
を上方から落としこみ、ブッシング10、リング状鉛部品
26及び極柱9の嵌合させる。そして、嵌合部分を過熱器
具、たとえばバーナによって上方から加熱・溶接して溶
接部14を形成した。一方、正極側にはリング状鉛部品26
を使用せず、従来のブッシング10と極柱9との嵌合部分
をバーナによって上方から加熱・溶接して溶接部14を形
成した。

【００２３】そして、この部分に上方からエポキシ系接
着剤を流し込んで密閉した（図１）。ここで、本発明に
係わる制御弁式鉛蓄電池の負極側は、リング状鉛部品26
を使用して溶接しているために、ブッシング10と極柱9
との隙間部分を従来に比べて広くすることができる。

【００２４】（比較例）一方、（比較例）として、正極
側及び負極側の両方に、従来から使用しているブッシン
グ10を使用した制御弁式鉛蓄電池を作製した。すなわ
ち、図２に示すように、リング状鉛部品26を使用しない
で、ブッシング10と極柱9の嵌合部分を過熱器具、たと
えばバーナによって上方から加熱・溶接して溶接部14を
形成し、この部分にエポキシ系接着剤を流し込んで密閉
した（図２）。

【００２５】表１に、上記した条件で、それぞれの制御
弁式鉛蓄電池を加速試験した結果を示す。本発明に係わ
る制御弁式鉛蓄電池は、蓋5に割れが認められずに優れ
ていることがわかる。

【００２６】本発明に係わる制御弁式鉛蓄電池は、ブッ
シング10と極柱9との嵌合部分に隙間を形成することが
できるため、極柱2やブッシング10の表面に硫酸鉛6が生
成しても、空間部分に余裕があり、蓋5の割れを防止で
きたものと考えられる。

【００２７】なお、上記した実施例では、本発明に係わ
るリング状鉛部品26を制御弁式鉛蓄電池の負極側のみに
使用した場合を記載したが、正極側及び負極側の両方に
リング状鉛部品26を使用することもできる。

【００２８】

【表１】

【００２９】

【発明の効果】上述のように、本発明に係わる制御弁式
鉛蓄電池は、長期間の使用をした場合でも、負極端子付
近の蓋の割れを防止することができる。したがって、外
部に希硫酸電解液が漏れることもなく工業上極めて優れ
たものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係わる制御弁式鉛蓄電池の溶接工程の
概略図である。

【図２】従来から使用されている制御弁式鉛蓄電池の端
子付近の断面概略図である。

【図３】制御弁式鉛蓄電池の組立工程の要部概略図であ
る。

【図４】制御弁式鉛蓄電池の切欠き断面斜視図である。

【符号の説明】

１：正極板、２：負極板、３：セパレータ、４：電槽、
５：蓋、６：ストラップ、７：端子、８：安全弁部、
９：極柱、１０：ブッシング、１１：環状突部、１４：
溶接部、１５：ネジ部、１６：エポキシ系接着剤、１
８：耳部、２５：バーナ、２６：リング状鉛部品、２
７：硫酸鉛

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】蓋にインサートされている鉛合金製の略
円筒形状をしたブッシングと、端子が埋め込まれている
極柱とを溶接して溶接部を形成する制御弁式鉛蓄電池に
おいて、前記ブッシングと前記極柱とはリング状鉛部品
を介して溶接されていることを特徴とする制御弁式鉛蓄
電池。
【請求項２】蓋にインサートされている鉛合金製の略
円筒形状をした負極側のブッシングと、負極用の端子が
埋め込まれている極柱とを溶接して溶接部を形成する制
御弁式鉛蓄電池において、前記ブッシングと前記極柱と
はリング状鉛部品を介して溶接されていることを特徴と
する制御弁式鉛蓄電池。
【請求項３】蓋にインサートされている鉛合金製の略
円筒形状をした負極側のブッシングと、負極用の端子が
埋め込まれている極柱とを溶接して溶接部を形成する制
御弁式鉛蓄電池の製造方法において、前記ブッシングと
前記極柱との隙間部分にリング状鉛部品を落としこんで
嵌合させた後に、該嵌合部分を上部から過熱して溶接部
を形成することを特徴とする制御弁式鉛蓄電池の製造方
法。