JP2003306599A - 生分解性樹脂組成物及び機械部品 - Google Patents

生分解性樹脂組成物及び機械部品

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた耐熱性を有するとともに、機械的性質
の経時的な低下が生じにくい生分解性樹脂組成物製の機
械部品を提供する。 【解決手段】 内輪11と、外輪12と、該両輪11,
12の間に転動自在に配設された複数の玉13と、両輪
11,12の間に複数の玉13を保持する冠形保持器1
4と、両輪11,12の間に介在された接触形のシール
15と、を備える深溝玉軸受において、保持器14及び
シール15を、ポリエチレンテレフタレートサクシネー
ト(共重合比(モル比)は、ポリエチレンテレフタレー
ト:ポリエチレンサクシネート=7:3)と炭酸カルシ
ウムウィスカーとからなる生分解性樹脂組成物で構成し
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐熱性に優れると
ともに機械的性質の経時的な低下が生じにくい生分解性
樹脂組成物に関する。また、生分解性に優れ、土壌中等
の自然環境に放出されても自然環境に対して悪影響を及
ぼしにくい機械部品に関する。
【0002】
【従来の技術】生分解性樹脂は、土壌中等に放置される
とバクテリア等によって二酸化炭素及び水等に徐々に分
解される。よって、生分解性樹脂で構成された樹脂製品
は、自然環境に放出されても原形を留めなくなるまで自
然に分解されるので、自然環境に対して悪影響を及ぼし
にくい。このようなことから生分解性樹脂は、主にゴミ
袋,ボトル容器,農業用マルチフィルム等の材料として
使用され、その使用量は近年増加傾向にある。
【0003】一方、現在、一般によく使用されている生
分解性樹脂としては、例えば、ポリブチレンサクシネー
ト,ポリエチレンサクシネート,ポリカプロラクトン,
ポリ乳酸等があるが、そのほとんどは脂肪族ポリエステ
ル樹脂である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような従来の生分解性樹脂(脂肪族ポリエステル樹脂)
には、以下のようの問題点があった。 耐熱性が低い。すなわち、融点が100〜120℃程
度のものが多く、高融点のものでも170℃程度であ
る。また、高融点のものであっても、100℃程度の温
度で機械的性質が大きく低下してしまうものが多い。
【0005】空気中の水分によっても徐々に加水分解
が進行するため、機械的性質の経時的な低下が生じやす
い。したがって、従来の生分解性樹脂は、転がり軸受等
の機械部品を構成する材料に適用することは困難であっ
た。そこで、本発明は、上記のような従来技術が有する
問題点を解決し、耐熱性に優れるとともに機械的性質の
経時的な低下が生じにくい生分解性樹脂組成物を提供す
ることを課題とする。また、生分解性に優れていて、自
然環境に放出されても自然環境に悪影響を及ぼしにくい
機械部品を提供することを併せて課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するた
め、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発
明に係る請求項1の生分解性樹脂組成物は、生分解性樹
脂を含有する樹脂組成物において、前記生分解性樹脂
を、脂肪族二塩基酸と脂肪族ジオールとの重縮合によっ
て得られる脂肪族ポリエステル成分及び脂肪族ポリエー
テル成分の少なくとも一方からなる脂肪族成分と、芳香
族ポリエステル成分と、を分子構造中に有するポリエス
テル樹脂としたことを特徴とする。
【0007】また、本発明に係る請求項2の生分解性樹
脂組成物は、請求項1に記載の生分解性樹脂組成物にお
いて、前記ポリエステル樹脂の前記芳香族ポリエステル
成分と前記脂肪族成分との量比を、前記各成分の繰り返
し単位のモル比で、19:1〜5:5としたことを特徴
とする。本発明における前記ポリエステル樹脂は、耐熱
性が高く生分解しにくい芳香族ポリエステル成分と、生
分解しやすい脂肪族成分とを、所定の比率で分子構造中
に有する樹脂(共重合体)である。耐熱性が高い芳香族
ポリエステル成分を含有しているので、該ポリエステル
樹脂は高融点を有する,高温剛性が高い等の優れた耐熱
性を備えている。また、生分解しにくい芳香族ポリエス
テル成分の作用により、該ポリエステル樹脂は空気中の
水分等による加水分解を受けにくいので、機械的性質の
経時的な低下が生じにくい。
【0008】よって、本発明の生分解性樹脂組成物は、
優れた耐熱性や機械的性質が要求される転がり軸受等の
ような機械部品を構成する材料として適用することが可
能である。特に、170℃以上の高融点を有するポリエ
ステル樹脂を含有する樹脂組成物は、機械部品に要求さ
れる優れた耐熱性を十分に発現することができるので、
機械部品を構成する材料として好適である。前記ポリエ
ステル樹脂における芳香族ポリエステル成分の割合が高
いほど、耐熱性は向上し、機械的性質の経時的な低下は
生じにくくなるが、逆に生分解性が低下するので、機械
部品の使用目的,用途に合わせて、芳香族ポリエステル
成分及び脂肪族成分の繰り返し単位のモル比(共重合
比)を適宜選択するとよい。
【0009】この共重合比は、耐熱性と機械的性質の経
時的な低下の生じにくさとのバランスから、芳香族ポリ
エステル成分:脂肪族成分=19:1〜5:5とするこ
とが好ましい。5:5よりも芳香族ポリエステル成分が
少ないと(すなわち、芳香族ポリエステル成分が50モ
ル%未満であると)耐熱性が不十分となり、また、機械
的性質の経時的な低下が生じやすくなる。一方、19:
1よりも芳香族ポリエステル成分が多いと(すなわち、
脂肪族成分が5モル%未満であると)、生分解性が不十
分となって、自然環境に放出された際に自然環境に対し
て悪影響を及ぼしやすくなる。
【0010】このような不都合をより生じにくくするた
めには、前記共重合比は、芳香族ポリエステル成分:脂
肪族成分=9:1〜6:4とすることがより好ましい。
前記ポリエステル樹脂中の芳香族ポリエステル成分の構
造は、生分解しにくく且つ高い耐熱性を有していれば特
に限定されるものではなく、種々の芳香族ポリエステル
が使用可能である。なお、本発明においては、芳香族ポ
リエステル成分とは、芳香族モノマーと脂肪族モノマー
とを重合させてなるポリエステル(例えば、芳香族ジカ
ルボン酸と脂肪族ジオールとの重合体)、いわゆる半芳
香族ポリエステルを意味する。
【0011】具体例としては、ポリエチレンテレフタレ
ート(PET、融点約256℃)、ポリブチレンテレフ
タレート(PBT、融点約227℃)、ポリ−1,4−
シクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT、融
点約290℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN、
融点約272℃)、ポリブチレンナフタレート(PB
N、融点約245℃)等のような構造の成分があげられ
る。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用し
てもよい。
【0012】ただし、芳香族ポリエステル成分の融点
(耐熱性)が高い方が、脂肪族成分がより多く導入され
た場合でもポリエステル樹脂全体としての融点が高くな
るので、融点の高いPET,PCT,及びPENが最も
好適である。一方、前記ポリエステル樹脂中の脂肪族成
分の構造は、脂肪族ポリエステル,脂肪族ポリエーテル
であれば特に限定されるものではない。前記ポリエステ
ル樹脂の分子構造中に脂肪族ポリエステル成分を導入す
る方法としては、芳香族ポリエステル成分の構成モノマ
ーである芳香族二塩基酸(ジカルボン酸)の一部を脂肪
族二塩基酸(ジカルボン酸)に置き換えて、重縮合を行
う方法等があげられる。
【0013】脂肪族二塩基酸としては、コハク酸,グル
タル酸,アジピン酸,アゼライン酸,セバシン酸等が例
示できる。また、前記ポリエステル樹脂の分子構造中に
脂肪族ポリエーテル成分を導入する方法としては、芳香
族ポリエステル成分の構成モノマーであるジオールの一
部を、例えば下記の化学式(化1)のような構造の脂肪
族ポリエーテルジオールに置き換えて、重縮合を行う方
法等があげられる。
【0014】
【化1】
【0015】ここで、n及びmの数値は特に限定される
ものではないが、nは2,3,又は4が好ましく、mは
2〜250の整数、特に2〜100の整数が好ましい。
なお、前記ポリエステル樹脂は、全体の5モル%以下で
あれば、その分子構造中にウレタン結合を有していても
よい。ウレタン結合を導入する方法としては、芳香族ポ
リエステル成分の構成モノマーである芳香族二塩基酸
(ジカルボン酸)の一部を、ヘキサメチレンジイソシア
ネート等のジイソシアネート化合物に置き換えて、重縮
合を行う方法等があげられる。
【0016】また、本発明に係る請求項3の生分解性樹
脂組成物は、請求項1又は請求項2に記載の生分解性樹
脂組成物において、補強材を含有することを特徴とす
る。さらに、本発明に係る請求項4の生分解性樹脂組成
物は、請求項3に記載の生分解性樹脂組成物において、
前記ポリエステル樹脂の含有量を樹脂組成物全体の30
質量%以上90質量%以下とし、前記補強材の含有量を
樹脂組成物全体の10質量%以上50質量%未満とした
ことを特徴とする。
【0017】本発明の生分解性樹脂組成物には、その機
械的性質を向上させるために補強材を含有させることが
できる。補強材の種類は特に限定されるものではない
が、生分解性プラスチック研究会(BPS)が運用して
いるグリーンプラ識別表示制度のポジティブリストに掲
載されているものが好ましい。例えば、ガラス繊維,炭
素繊維,チタン酸カリウムウィスカー,軽質炭酸カルシ
ウム(結晶形はカルサイトやアルゴナイト),天然含水
ケイ酸アルミニウム(カオリン、クレー),タルク,ベ
ントナイト,繊維状水酸化マグネシウム,ウォラストナ
イト,セピオライト,カーボンブラック,マイカ,二酸
化ケイ素,珪藻土等があげられる。これらの補強材の中
では、その高い補強効果から、ガラス繊維が特に好まし
い。
【0018】補強材の含有量は、樹脂組成物全体の10
質量%以上50質量%未満とすることが好ましい。10
質量%未満であると機械的性質が低くなり、転がり軸受
用保持器,シール等のような機械部品を構成する材料と
して必要な機械的性質が得られない。例えば、シールの
場合であれば、シールとして最低限必要な強度と耐クリ
ープ性が確保できない。また、50質量%以上である
と、溶融成形時の樹脂組成物の流動性を十分に確保する
ことが困難となる。樹脂組成物が十分な流動性を有して
いれば、樹脂組成物の成形を射出成形法により行うこと
が可能となるので、生産性,経済性の面からも好まし
い。さらに、BPSのグリーンプラ識別表示制度におい
て、生分解性樹脂組成物中の無機材料の含有量は50質
量%未満と規定されていることからも、補強材の含有量
は樹脂組成物全体の50質量%未満とすることが好まし
い。
【0019】なお、補強材の含有量は、樹脂組成物全体
の10質量%以上40質量%以下とすることがより好ま
しい。そうすれば、転がり軸受用保持器,シール等のよ
うな機械部品を本発明の生分解性樹脂組成物で構成した
場合に、機械部品の性能,成形性,生産性,生分解性等
のバランスがより良好となる。また、前記ポリエステル
樹脂の含有量は、樹脂組成物全体の30質量%以上90
質量%以下とすることが好ましい。30質量%未満であ
ると、生分解性樹脂組成物の耐熱性が不十分となる。な
お、前記ポリエステル樹脂の含有量を40質量%以上と
すれば、十分な耐熱性を長期にわたって維持することが
できるので、より好ましい。一方、前記ポリエステル樹
脂の含有量を高くしても特に不都合はないので、樹脂組
成物における補強材以外の成分をすべて前記ポリエステ
ル樹脂としても差し支えない。よって、前記ポリエステ
ル樹脂の含有量の上限値は90質量%となる。
【0020】また、本発明に係る請求項5の生分解性樹
脂組成物は、請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性
樹脂組成物において、前記ポリエステル樹脂のうち少な
くとも一部を引張破断伸びが50%以上である生分解性
ポリエステル樹脂とし、この引張破断伸びが50%以上
である生分解性ポリエステル樹脂の含有量を、樹脂組成
物全体の20質量%以下としたことを特徴とする。引張
破断伸びが50%以上である生分解性ポリエステル樹脂
を含有させると、生分解性樹脂組成物の靱性を向上させ
ることができる。例えば、ポケットが球面でアンダーカ
ット部を有する形状の転がり軸受用保持器を射出成形法
によって製造する場合に、引張破断伸びが50%以上で
ある生分解性ポリエステル樹脂を含有しておらず生分解
性樹脂組成物の靱性が不十分であると、金型からの離型
時に転がり軸受用保持器が損傷してしまうおそれがあ
る。
【0021】また、転がり軸受用シールを射出成形法に
よって製造する場合には、シールは薄肉であり、リップ
が金型を包み込む形状であるので、引張破断伸びが50
%以上である生分解性ポリエステル樹脂を含有しておら
ず生分解性樹脂組成物の靱性が不十分であると、金型か
らの離型時に転がり軸受用シールが損傷してしまうおそ
れがある。しかし、引張破断伸びが50%以上である生
分解性ポリエステル樹脂を含有して生分解性樹脂組成物
の靱性が十分であると、離型時の損傷が防止され、さら
に、保持器やシールを転がり軸受に組み込む際の損傷も
防止することができる。
【0022】引張破断伸びが50%以上である生分解性
ポリエステル樹脂の含有量は、樹脂組成物全体の20質
量%以下であることが好ましい。20質量%を超える
と、樹脂組成物の耐熱性及び機械的性質が不十分とな
る。引張破断伸びが50%以上である生分解性ポリエス
テル樹脂の含有量を10質量%以下とすれば、十分な耐
熱性及び機械的性質を長期にわたって維持することがで
きるので、より好ましい。なお、金型からの離型時に損
傷が生じない等の理由で生分解性樹脂組成物の靱性を向
上させる必要がない場合は、引張破断伸びが50%以上
である生分解性ポリエステル樹脂を含有させなくても差
し支えない。
【0023】さらに、引張破断伸びが50%以上である
生分解性ポリエステル樹脂に代えて引張破断伸びが10
0%以上である生分解性ポリエステル樹脂を用いれば、
引張破断伸びが優れた生分解性ポリエステル樹脂の含有
量を少なくしても、生分解性樹脂組成物に十分な靱性を
付与することができ、より十分な耐熱性及び機械的性質
を長期にわたって維持することができる。引張破断伸び
が50%以上である生分解性ポリエステル樹脂の例とし
ては、BASFジャパン社製のコポリエステル樹脂(脂
肪族と芳香族のコポリエステル)である”Ecofle
x”、三菱ガス化学社製の脂肪族ポリエステルカーボネ
ート樹脂である”ユーペック”、ダイセル化学社製のポ
リカプロラクトンである”セルグリーン”等をあげるこ
とができる。この中でも、耐熱性に優れ引張破断伸びが
100%以上である”Ecoflex”が特に好まし
い。
【0024】さらに、本発明の生分解性樹脂組成物に
は、生分解性を有するポリヒドロキシカルボン酸を含有
させてもよい。ポリヒドロキシカルボン酸を含有させる
と、射出成形法によって成形する場合に金型からの離型
性が向上する。例えば、転がり軸受用保持器やシールを
射出成形法によって製造する場合、保持器やシールの形
状によっては、樹脂の冷却に時間を要して生産性が低下
する場合がある。しかしながら、生分解性樹脂組成物に
ポリヒドロキシカルボン酸を含有させると、ポリヒドロ
キシカルボン酸の特徴の一つである高い結晶性により、
樹脂の冷却に要する時間を短縮することができるので、
生産性が向上する。
【0025】ポリヒドロキシカルボン酸の含有量は、樹
脂組成物全体の40質量%以下であることが好ましい。
40質量%を超えると、生分解性樹脂組成物の耐熱性が
不十分となる。ポリヒドロキシカルボン酸の含有量を3
0質量%以下とすれば、十分な耐熱性を長期にわたって
維持することができるので、より好ましい。なお、金型
からの離型性に問題がない場合は、ポリヒドロキシカル
ボン酸を含有させなくても差し支えない。
【0026】ポリヒドロキシカルボン酸の種類は特に限
定されるものではないが、例えばポリ乳酸(PLA)
は、一般的なポリヒドロキシカルボン酸の中でも高融点
で結晶性が高く、また、コスト的にも優れているので好
適である。さらに、本発明の生分解性樹脂組成物には、
引張破断伸びが50%以上である生分解性ポリエステル
樹脂と生分解性を有するポリヒドロキシカルボン酸との
両方を含有させてもよい。両者の含有量は、前述した理
由により、それぞれを単独で使用する場合と同量である
ことが好ましい。ただし、十分な耐熱性及び機械的性質
を長期にわたって維持するためには、両者の合計の含有
量は、本発明の生分解性樹脂組成物の主構成要素である
前記ポリエステル樹脂と同量以下とすることが好まし
い。
【0027】さらに、本発明の生分解性樹脂組成物に
は、その耐熱性,生分解性,機械的性質等に悪影響を及
ぼさない範囲で、且つ前記生分解性樹脂組成物が分解さ
れて自然環境に放出された際に自然環境に悪影響を与え
ない範囲であれば、所望により種々の添加剤を配合して
もよい。例えば、潤滑油,固体潤滑剤,熱安定剤,酸化
防止剤,熱伝導性改良剤,結晶化促進剤,増核剤,顔
料,染料等があげられるが、いずれの添加剤もグリーン
プラ識別表示制度にしたがって添加されることが好まし
い。
【0028】また、本発明に係る請求項6の機械部品
は、請求項1〜5のいずれかに記載の生分解性樹脂組成
物で構成したことを特徴とする。さらに、本発明に係る
請求項7の転がり軸受は、内輪と、外輪と、前記両輪の
間に転動自在に配設された複数の転動体と、前記両輪の
間に前記転動体を保持する保持器と、を備える転がり軸
受において、前記内輪,前記外輪,前記転動体,及び前
記保持器のうち少なくとも前記保持器を、請求項1〜5
のいずれかに記載の生分解性樹脂組成物で構成したこと
を特徴とする。
【0029】さらに、本発明に係る請求項8の転がり軸
受は、請求項7に記載の転がり軸受において、請求項1
〜5のいずれかに記載の生分解性樹脂組成物で構成され
たシールを備えることを特徴とする。さらに、本発明に
係る請求項9の直動案内軸受装置は、軸方向に延びる転
動体転動溝を外面に有する案内レールと、該案内レール
の転動体転動溝に対向する転動体転動溝を有するととも
に前記軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付
けられたスライダと、前記両転動体転動溝の間に転動自
在に介装された複数の転動体と、前記両転動体転動溝の
間に前記転動体を保持する保持器と、を備える直動案内
軸受装置において、前記スライダの少なくとも一部分と
前記保持器とのうち一方又は両方を、請求項1〜5のい
ずれかに記載の生分解性樹脂組成物で構成したことを特
徴とする。
【0030】さらに、本発明に係る請求項10の直動案
内軸受装置用スライダの仮軸は、直動案内軸受装置の案
内レールに滑動自在に嵌合されるスライダを仮に組み付
ける仮軸において、請求項1〜5のいずれかに記載の生
分解性樹脂組成物で構成したことを特徴とする。本発明
に係る生分解性樹脂組成物は、生分解しやすい脂肪族成
分を有するポリエステル樹脂を含有しているので、土壌
中等の自然環境に放出されると自然に分解される。よっ
て、本発明に係る転がり軸受,直動案内軸受装置,直動
案内軸受装置用スライダの仮軸等の機械部品は、自然環
境に放出されると前記生分解性樹脂組成物で構成された
部分が自然に分解されるので、自然環境に対して悪影響
を及ぼしにくい。また、土壌中等の自然環境に廃棄処分
することも可能であり、使用後の廃棄が容易となる。
【0031】なお、本発明における生分解性樹脂とは、
ISO 14851,14852,14855のうち少
なくとも1つの条件に該当する樹脂を意味するものであ
る。ISO 14851の条件とは、「JIS K69
50に規定された好気的水系での生分解性試験における
酸素消費量から求められた生分解度が60%以上となる
もの」である。また、ISO 14852の条件とは、
「JIS K6951に規定された好気的水系での生分
解性試験における二酸化炭素発生量から求められた生分
解度が60%以上となるもの」である。さらに、ISO
14855の条件とは、「JIS K6953に規定
された好気的コンポスト過程での生分解性試験における
二酸化炭素発生量から求められた生分解度が70%以上
となるもの」である。
【0032】
【発明の実施の形態】〔生分解性樹脂を含有する樹脂組
成物の実施例〕以下に示すような生分解性樹脂組成物
(実施例1〜4及び比較例1〜3)を射出成形して、図
2のような冠形保持器の形状に成形した。そして、この
保持器を用いて、生分解性樹脂組成物の生分解性及び耐
熱性を評価する試験を行った。まず、使用した生分解性
樹脂組成物について説明する。
【0033】実施例1の生分解性樹脂組成物は、ポリエ
チレンテレフタレートサクシネートである。これは、ポ
リエチレンテレフタレート(芳香族ポリエステル成分)
とポリエチレンサクシネート(脂肪族ポリエステル成
分)との共重合体であり、共重合比(モル比)はポリエ
チレンテレフタレート:ポリエチレンサクシネート=
6:4である。実施例2及び実施例3もポリエチレンテ
レフタレートサクシネートであるが、共重合比(モル
比)は、実施例2が7:3であり、実施例3が8:2で
ある。
【0034】また、実施例4は、ポリエチレンテレフタ
レートとポリ(ポリオキシエチレン)サクシネート(脂
肪族ポリエステル成分及び脂肪族ポリエーテル成分)と
の共重合体である。共重合比(モル比)は、ポリエチレ
ンテレフタレート:ポリ(ポリオキシエチレン)サクシ
ネート=7:3である。さらに、比較例1の生分解性樹
脂組成物はポリ乳酸(島津製作所株式会社製のLACT
Y9030)、比較例2はポリ−3−ヒドロキシ酪酸
(三菱ガス化学株式会社製のビオグリーン)、比較例3
はポリブチレンサクシネート(昭和高分子株式会社製の
ビオノーレ#1020)である。
【0035】次に、生分解性試験の方法について説明す
る。株式会社田窪工業所製のバイオ式生ごみ分解処理機
である「地球の友だち」(商品名)中に、前記保持器を
同社製の培養材及び「地球の友だち菌」(商品名)とと
もに投入し、55〜60℃で生分解させた。そして、初
期の20%以下の重量になった時間、あるいは初期形状
を維持できずにバラバラになった時間を、生分解完了時
間とし、その時間の長さによって生分解性を評価した。
【0036】試験結果を表1に示す。なお、表1におけ
る生分解完了時間の数値は、比較例1の生分解完了時間
を1とした場合の相対値で示してある。
【0037】
【表1】
【0038】表1の結果から、殆ど生分解性を有してい
ない芳香族ポリエステル(ポリエチレンテレフタレー
ト)の分子構造中に、優れた生分解性を有する脂肪族ポ
リエステル(ポリエチレンサクシネート)を導入するこ
とによって、実施例1〜4の樹脂組成物は優れた生分解
性を有していることが分かる。また、実施例1〜3の比
較から、脂肪族ポリエステルの割合が増加するにしたが
って、生分解性が向上することが分かる。
【0039】さらに、実施例2と実施例4との比較か
ら、脂肪族ポリエステル成分のみを芳香族ポリエステル
に導入するよりも、脂肪族ポリエステル成分と脂肪族ポ
リエーテル成分の両方を芳香族ポリエステルに導入する
方が、生分解性が優れていることが分かる。次に、耐熱
性試験の方法について説明する。上記と同様の保持器を
所定の温度(60,70,80,90,100,11
0,120,130℃)の恒温槽中に1000時間吊り
下げた後に、引張破断強度(円環強度)を測定した。そ
して、初期の引張強度からの強度低下が20%以下であ
る温度のうち最高温度を、その生分解性樹脂組成物の耐
熱温度とした。
【0040】試験結果を表1に併せて示す。表1から、
実施例1〜4の生分解性樹脂組成物は、比較例1〜3と
比べて耐熱温度が高いことが分かる。 〔補強材を含有する生分解性樹脂組成物の実施例〕次
に、補強材を含有する生分解性樹脂組成物について、各
種性能を評価する試験を行った。まず、表2〜5に示す
ような補強材を含有する生分解性樹脂組成物(実施例1
1〜25及び比較例11〜17)を製造した。これらの
生分解性樹脂組成物の原料として使用した樹脂及び補強
材について説明する。
【0041】脂肪族成分と芳香族ポリエステル成分とを
分子構造中に有するポリエステル樹脂としては、ポリエ
チレンテレフタレート部分改質品(デュポン株式会社製
のBiomax WUH、以降はPET改質品と記す)
を使用した。また、引張破断伸びが50%以上である生
分解性ポリエステル樹脂としては、ポリブチレンアジペ
ート・テレフタレート(BASF株式会社製のEcof
lex、以降はPBATと記す)を使用した。さらに、
生分解性のポリヒドロキシカルボン酸としては、ポリ乳
酸(株式会社島津製作所製のLACTY 9030、以
降はPLAと記す)を使用した。
【0042】さらに、実施例との比較のため、生分解性
脂肪族ポリエステル樹脂であるポリエチレンサクシネー
ト(株式会社日本触媒製のルナーレ SE、以降はPE
SUと記す)と、転がり軸受用保持器の材料として一般
的に使用されている66ナイロン(宇部興産株式会社製
の宇部ナイロン グレード2020U、以降はPA66
と記す)とを使用した。さらに、補強材としては、ガラ
ス繊維(富士ファイバーガラス株式会社製のグレードF
ESS−015−0413)を使用した。
【0043】これらの原料を表2〜5に示すような配合
比率で配合し、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。
そして、この混合物を2軸押出機を用いてペレット化
し、このペレットを射出成形機に投入して、JIS1号
形試験片と図2に示すような冠形保持器(呼び番号63
05の転がり軸受用の保持器)と図3に示すようなシー
ルとを射出成形した。なお、各樹脂を別々にペレット化
し、各ペレットを所定の比率でペレットブレンドしたも
のを射出成形して、前記試験片と前記保持器と前記シー
ルとを製造してもよい。
【0044】製造したJIS1号形試験片については、
生分解性と耐熱性を評価した。また、保持器について
は、射出成形性と、転がり軸受を組み立てる作業におけ
る組み込み性とを評価し、さらに、組み立てた転がり軸
受を使用して耐久性を評価した。また、シールについて
は、射出成形性と、転がり軸受を組み立てる作業におけ
る組み込み性とを評価し、さらに、組み立てた転がり軸
受を使用してクリープ変形及びグリース漏れ性を評価し
た。
【0045】以下に、各試験の方法を説明する。 (1)生分解性試験 JIS1号形試験片を温度60℃,含水率30質量%の
腐葉土中に埋設して生分解させ、外観変化及び重量変化
を調査した。なお、試験片を埋設した腐葉土を恒温恒湿
槽内に設置することにより、腐葉土中の温度と含水率を
適度なものに保持した。
【0046】そして、試験片の重量が初期の20%以下
となった時間、又は初期形状を維持できずに崩壊した時
間を生分解完了時間とし、その時間の長さによって生分
解性を評価した。試験結果を表2〜5に示す。なお、表
2〜5及び図5〜8のグラフにおける生分解完了時間の
数値は、比較例11の生分解完了時間を1とした場合の
相対値で示してある。 (2)耐熱性試験 JIS1号形試験片を所定の温度(60,70,80,
90,100,110,120,130℃)に設定した
恒温槽内に1000時間吊り下げた後に、引張破断強度
を測定した。そして、初期の引張破断強度からの強度低
下が10%以内である温度のうち最高温度を、その樹脂
組成物の耐熱温度とした。試験結果を表2〜5に併せて
示す。 (3)射出成形性試験 保持器及びシールを射出成形した際の、金型からの離型
のしやすさ、離型時の変形,割れ、及び成形後のそり,
収縮をそれぞれ評価した。試験結果を表2〜5に併せて
示す。なお、表2〜5においては、離型時の変形,割れ
と成形後のそり,収縮とが全く生じなかった場合を○印
で示し、これらが少しでも生じた場合を×印で示した。 (4)組み込み性試験 転がり軸受(呼び番号6305、内径25mm,外径6
2mm,幅17mm)用の内輪,外輪,転動体を用意
し、保持器を組み込むことができるような状態に配置し
た。そして、エアシリンダを使用して保持器を組み込ん
で、組み込みによる保持器の変形や破損を評価した。
【0047】また、グリース(増ちょう剤がリチウム石
けん、基油がエステル油、混和ちょう度が250の生分
解性グリース)を封入した転がり軸受(呼び番号620
3、内径16mm,外径40mm,幅12mm)に、エ
アシリンダを使用してシールを組み込んで、組み込みに
よるシールの変形や破損を評価した。試験結果を表2〜
5に併せて示す。なお、表2〜5においては、組み込み
による変形,破損が全く生じなかった場合を○印で示し
ている。 (5)耐久性試験 上記の保持器の組み込み性試験において組み立てた転が
り軸受について、図4に示す軸受回転試験機を使用して
耐久性を評価した。図4中、符号21は評価対象の試験
軸受を表し、支持軸受22,22に支持された軸20の
回転に伴って、試験軸受の内輪が回転する。試験条件は
以下の通りである。なお、この試験条件は、本発明に係
る転がり軸受が一般的な用途に幅広く対応可能であるか
どうか判断することを目的として設定したものである。
【0048】 回転速度 :9000min-1 ラジアル荷重 :98N アキシアル荷重:245N 雰囲気温度 :80℃ 潤滑剤 :グリース 使用したグリースは、増ちょう剤がリチウム石けん、基
油がエステル油、混和ちょう度が250の生分解性グリ
ースである。また、グリースの封入量は、通常は軸受空
間容積の35%程度であるが、加速試験とするため10
%とした。
【0049】試験結果を表2〜5に示す。表に示した数
値は、1種の試験軸受につき10個ずつ試験を行って、
そのうち10%の試験軸受が寿命に達するまでのL10寿
命をワイブル分布曲線から求めたものである。なお、回
転試験を500時間行っても寿命に達しない試験軸受に
ついては、その時点で試験を打ち切った。 (6)クリープ変形試験及びグリース漏れ性試験 上記のシールの組み込み性試験において組み立てた転が
り軸受を、所定の温度(80,100,120℃)に設
定した恒温槽内のガラス板上に載置した。そして、10
00時間後のクリープ変形とグリースの漏れとを評価し
た。
【0050】シールの取付嵌合部は弾性変形した状態で
外輪の嵌合溝に押し込まれているため(図3を参照)、
雰囲気温度や軸受の回転に伴う発熱によりクリープ変形
を起こして嵌合溝への固定力が低下することが多い。ま
た、プラスチックは金属よりも線膨張係数が大きいた
め、温度が上がるとシールは径方向に膨張して常温状態
よりも弾性変形量(締め付け力)が大きくなって、より
クリープ変形を起こしやすい。そして、この固定力が小
さくなると、密封性能が低下するだけでなく、シールが
小さな力で外輪から脱落してしまう場合がある。
【0051】試験結果を表2〜5に併せて示す。なお、
表2〜5においては、クリープ変形及びグリースの漏れ
が転がり軸受の実用上問題のないレベルであった場合を
○印で示し、問題が生じるレベルであった場合を×印で
示している。次に、上記各試験の結果について、表2〜
5及びグラフを参照しながら説明する。まず、生分解性
樹脂の種類の影響について、表2の実施例12及び比較
例11,12(補強材の含有量はいずれも20質量%)
の結果を比較して考察する。
【0052】
【表2】
【0053】PET改質品を使用した実施例12は、優
れた生分解性と高い耐熱性を示し、また、保持器とシー
ルの射出成形性及び組み込み性も良好であった。さら
に、耐久性試験においては、10個すべての試験軸受が
回転試験を500時間行っても寿命に達しなかった。そ
して、回転試験終了後の保持器に摩耗,破損,変形等の
異常は認められず、継続して稼働させることが可能であ
った。さらにまた、シールのクリープ変形及びグリース
の漏れは実用上問題のないレベルであった。
【0054】これに対して、PESUを使用した比較例
11は、生分解性は優れているものの、耐熱性がかなり
低かった。また、保持器とシールの射出成形性及び組み
込み性は良好であったが、耐久性試験では試験開始直後
に保持器が熱変形を起こし、試験を継続することができ
なかった。また、シールのクリープ変形試験において
は、試験24時間後にはシール全体が大きく変形し、グ
リースが多量に漏洩したため試験を中止した。
【0055】また、PA66を使用した比較例12は、
耐熱性,射出成形性,組み込み性,耐久性,クリープ変
形,及びグリース漏れ性は良好であったが、生分解性試
験では4000時間経過後も重量変化及び形状変化がほ
とんど認められず、生分解が進行しなかった。次に、生
分解性樹脂組成物中の補強材の含有量の影響について、
表2(実施例11〜15及び比較例13,14)とそれ
をグラフ化した図5のグラフとを参照しながら考察す
る。なお、このグラフにおいては、生分解完了時間を○
印、L10寿命を●印で示してある。
【0056】表2から分かるように、実施例11〜15
は、優れた生分解性と高い耐熱性を示し、また、保持器
とシールの射出成形性及び組み込み性も良好であった。
ガラス繊維の含有量が49質量%である実施例15だけ
は、他の実施例11〜14と比較して生分解完了までに
若干時間を要したものの、実用上は問題のないレベルの
生分解性である。また、耐久性試験においては、10個
すべての試験軸受が回転試験を500時間行っても寿命
に達しなかった。そして、回転試験終了後の保持器に摩
耗,破損,変形等の異常は認められず、継続して稼働さ
せることが可能であった。
【0057】さらに、実施例11〜15は、シールのク
リープ変形及びグリースの漏れは実用上問題のないレベ
ルであった。実施例11だけは実施例12〜15と比較
してクリープ変形が若干大きく、初期と比較してシール
の固定力が減少したが、実用上問題のないレベルであっ
た。ただし、シールがこのクリープ変形試験よりも高温
に曝される場合も考えられるので、ガラス繊維の含有量
は20質量%以上とすることがより好ましい。
【0058】これに対して、ガラス繊維を含有していな
い(樹脂のみ)比較例13は、保持器の強度が不十分と
なり、耐久性試験では試験開始約20時間後に保持器が
変形を起こし、試験を継続することができなかった。ま
た、シールを転がり軸受に組み込む際にシールが破損し
た。また、ガラス繊維の含有量が60質量%と多量であ
る比較例14は、生分解性と耐熱性は良好であったが、
樹脂組成物の溶融流動性が不十分であるため、射出成形
法により保持器及びシールを成形することが困難であっ
た。
【0059】次に、生分解性樹脂組成物中のPLA(生
分解性ポリヒドロキシカルボン酸)の含有量の影響につ
いて、表3(実施例11,16〜19及び比較例15)
とそれをグラフ化した図6のグラフとを参照しながら考
察する。なお、このグラフにおいては、生分解完了時間
を○印、L10寿命を●印、耐熱温度を△印で示してあ
る。
【0060】
【表3】
【0061】表3から分かるように、実施例16〜19
は、いずれも優れた生分解性と高い耐熱性を示し、ま
た、保持器とシールの射出成形性及び組み込み性も良好
であった。さらに、耐久性試験においては、10個すべ
ての試験軸受が回転試験を500時間行っても寿命に達
しなかった。そして、回転試験終了後の保持器に摩耗,
破損,変形等の異常は認められず、継続して稼働させる
ことが可能であった。さらにまた、シールのクリープ変
形及びグリースの漏れは、実用上問題のないレベルであ
った。
【0062】PLAの含有量が40質量%である実施例
19だけは、他の実施例11,16〜18と比較して耐
熱温度が若干低かったが、耐久性試験においては特に問
題はなかった。また、シールのクリープ変形もやや大き
かった(初期と比較してシールの固定力が減少した)も
のの、実施例11とほぼ同レベルで実用上の問題はなか
った。ただし、この耐熱性試験の結果及びクリープ変形
試験の結果から考えると、本耐久性試験よりも高い耐熱
性が要求されるような場合には、PLAの含有量を30
質量%以下とする方が好ましいと考えられる。
【0063】一方、PLAの含有量をさらに高くする
と、耐熱性が一層低下する傾向がある。PLAの含有量
がさらに高い比較例15は耐熱温度がさらに低く、ま
た、L10寿命も低かった。さらに、シールのクリープ変
形が大きく、グリースの漏れも多量で、実用上の問題が
あった。なお、表3には示していないが、PLAを含有
する生分解性樹脂組成物の場合(実施例16〜19及び
比較例15)は、保持器を射出成形法により製造する際
に、金型内に射出した樹脂の冷却時間を短縮することが
できた。
【0064】次に、生分解性樹脂組成物中のPBAT
(引張破断伸びが50%以上である生分解性ポリエステ
ル樹脂)の含有量の影響について、表4(実施例12,
20,21及び比較例16)とそれをグラフ化した図7
のグラフとを参照しながら考察する。なお、このグラフ
においても、生分解完了時間を○印、L10寿命を●印、
耐熱温度を△印で示してある。
【0065】
【表4】
【0066】表4から分かるように、実施例20,21
は、いずれも優れた生分解性と高い耐熱性を示し、ま
た、保持器とシールの射出成形性及び組み込み性も良好
であった。さらに、耐久性試験においては、10個すべ
ての試験軸受が回転試験を500時間行っても寿命に達
しなかった。そして、回転試験終了後の保持器に摩耗,
破損,変形等の異常は認められず、継続して稼働させる
ことが可能であった。さらにまた、シールのクリープ変
形及びグリースの漏れは、実用上問題のないレベルであ
った。
【0067】PBATの含有量が20質量%である実施
例21だけは、他の実施例12,20と比較して耐熱温
度が若干低かったものの、耐久性試験においては特に問
題はなかった。ただし、この耐熱性試験の結果から考え
ると、本耐久性試験よりも高い耐熱性が要求されるよう
な場合には、PBATの含有量を10質量%以下とする
方が好ましいと考えられる。一方、PBATの含有量を
さらに高くすると、耐熱性及び機械的強度が一層低下す
る傾向がある。PBATの含有量がさらに高い比較例1
6は、耐熱温度がさらに低く、また、L10寿命も低かっ
た。さらに、シールのクリープ変形が大きく、グリース
の漏れも多量で、実用上の問題があった。
【0068】なお、表4には示していないが、PBAT
を含有する生分解性樹脂組成物の場合(実施例20,2
1及び比較例16)は靱性が優れているため、アンダー
カット部の大きい保持器であっても、金型から離型する
際の保持器の損傷を防止することができた。また、金型
から離型する際のシールの破損を防止すること及び転が
り軸受に組み込む際のシールの破損を防止することにも
効果があった。特に、転がり軸受に組み込む際の破損防
止効果は大きく、外輪の嵌合溝の最小径部(図3を参
照)が小径である規格外の転がり軸受にも、シールを問
題なく組み込むことができた。樹脂製のシールを転がり
軸受に組み込む際には、シールの弾性を利用しシールの
取付嵌合部が外輪の嵌合溝の最小径部を乗り越えるよう
にして、シールの取付嵌合部を軸受の嵌合溝にはめ込む
ので、最小径部が小径であるとシールの組み込みが難し
くなる。
【0069】次に、PLAとPBATの両方を使用した
場合に生じる、生分解性樹脂組成物中のPLA及びPB
ATの合計の含有量の影響について、表5(実施例1
3,22〜25及び比較例17)とそれをグラフ化した
図8のグラフとを参照しながら考察する。なお、このグ
ラフにおいても、生分解完了時間を○印、L10寿命を●
印、耐熱温度を△印で示してある。
【0070】
【表5】
【0071】表5から分かるように、実施例22〜25
は、いずれも優れた生分解性と高い耐熱性を示し、ま
た、保持器とシールの射出成形性及び組み込み性も良好
であった。さらに、耐久性試験においては、10個すべ
ての試験軸受が回転試験を500時間行っても寿命に達
しなかった。そして、回転試験終了後の保持器に摩耗,
破損,変形等の異常は認められず、継続して稼働させる
ことが可能であった。さらにまた、シールのクリープ変
形及びグリースの漏れは、実用上問題のないレベルであ
った。
【0072】PLA及びPBATの合計の含有量がPE
T改質品の含有量よりも多量である実施例25だけは、
他の実施例13,22〜24と比較して耐熱温度が若干
低かったものの、耐久性試験においては特に問題はなか
った。ただし、この耐熱性試験の結果から考えると、本
耐久性試験よりも高い耐熱性が要求されるような場合に
は、PLA及びPBATの合計の含有量をPET改質品
の含有量より少なくする方が好ましいと考えられる。
【0073】一方、PLA及びPBATの合計の含有量
をさらに高くして、PET改質品の含有量をさらに低く
すると、耐熱性が一層低下する傾向がある。そのような
比較例17は、耐熱温度がさらに低く、また、L10寿命
も低かった。さらに、シールのクリープ変形試験におい
ては、試験100時間後にはシール全体が大きく変形
し、グリースが多量に漏洩したため試験を中止した。な
お、表5には示していないが、PLAとPBATの両方
を含有する生分解性樹脂組成物の場合(実施例22〜2
5及び比較例17)は、金型内に射出した樹脂の冷却時
間を短縮する効果と、金型から離型する際の保持器の損
傷を防止する効果との両方を有することが認められた。
また、金型から離型する際のシールの破損を防止するこ
と及び転がり軸受に組み込む際のシールの破損を防止す
ることにも効果が認められた。
【0074】次に、本発明に係る機械部品の実施の形態
を、図面を参照しながら詳細に説明する。 〔第一実施形態〕図1は、本発明に係る機械部品の一実
施形態である転がり軸受の構成を示す縦断面図である。
図1の深溝玉軸受は、内輪11と、外輪12と、該両輪
11,12の間に転動自在に配設された複数の玉13
と、両輪11,12の間に複数の玉13を深溝玉軸受の
円周方向にわたって等配に保持する冠形保持器14(図
2を参照)と、両輪11,12の間に介在された接触形
のシール15と、を備えている。
【0075】このシール15は環状で、外輪12の内周
面(内輪11の外周面でもよい)に設けられたシール溝
12aに嵌合するための取付嵌合部15a(外周縁部)
と、内輪11の外周面に滑り接触するリップ部15b
と、取付嵌合部15aとリップ部15bとを連結する連
結部15cと、で構成されている。このようなシール1
5は外輪12の両端部の内周面に取り付けられて、外輪
12の内周面と内輪11の外周面との間の開口部分を覆
っている。そして、外部からの異物の侵入や内部からの
グリースの漏出を防止している。
【0076】なお、シール15は非接触形でもよいし、
金属製又は樹脂製の芯金を有しているタイプでもよい。
また、シール15の全体形状やリップ部15b等の細部
の形状も図1のものに限定されるものではなく、図3に
示すような形状のシールをはじめとして、種々の形状を
採用可能であることは言うまでもない。さらに、外輪1
2のシール溝12aの形態も、図1のものに限定される
ものではない。このような深溝玉軸受の保持器14及び
シール15は、生分解性樹脂組成物で構成されている。
すなわち、保持器14は、前述の実施例2に使用した生
分解性樹脂70質量%と、充填材である炭酸カルシウム
ウィスカー(アルゴナイト)30質量%とを混合した樹
脂組成物で構成されている。なお、炭酸カルシウムウィ
スカーは、丸尾カルシウム株式会社製の商品名ウィスカ
ルを使用した。
【0077】また、シール15は、前述の実施例4に使
用した生分解性樹脂85質量%と、充填材である炭酸カ
ルシウムウィスカー(アルゴナイト)15質量%とを混
合した樹脂組成物で構成されている。炭酸カルシウムウ
ィスカーは、上記のものと同様である。なお、内輪1
1,外輪12,及び玉13は軸受鋼で構成されている。
これらの樹脂組成物は、優れた耐熱性を有するととも
に、機械的性質の経時的な低下が生じにくいので、該樹
脂組成物でその一部が構成された上記の深溝玉軸受は、
転がり軸受として十分な性能を備えている。また、この
深溝玉軸受が土壌中等の自然環境に放出されても、前記
生分解性樹脂組成物で構成された部分は自然に分解され
るから、自然環境に対して悪影響を及ぼしにくい。
【0078】なお、内輪11,外輪12,及び玉13に
ついても、生分解性樹脂組成物で構成することができ
る。例えば、前述の実施例1に使用した生分解性樹脂6
0質量%と、充填材である前述の炭酸カルシウムウィス
カー40質量%と、からなる生分解性樹脂組成物で構成
することができる(保持器14及びシール15について
は、前述と同様の生分解性樹脂組成物で構成されてい
る)。このような深溝玉軸受は、全体が生分解性樹脂組
成物で構成されているので、土壌中等の自然環境に放出
された場合は、全体が自然に分解される。したがって、
自然環境に対する悪影響が極めて小さい。このような深
溝玉軸受は土壌中等の自然環境に廃棄処分することも可
能であるので、使用後の廃棄が容易である。
【0079】本実施形態においては、転がり軸受の例と
して深溝玉軸受をあげて説明したが、本発明は、他の種
類の様々な転がり軸受に対して適用することができる。
例えば、アンギュラ玉軸受,円筒ころ軸受,円すいころ
軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形
の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等
のスラスト形の転がり軸受である。 〔第二実施形態〕図9は、本発明に係る機械部品の一実
施形態である直動案内軸受装置の構成を示す斜視図であ
る。また、図10は、図9の直動案内軸受装置を軸方向
から見た正面図である。
【0080】角形の案内レール31上に、横断面形状が
ほぼコ字形のスライダ32が軸方向に相対移動可能に跨
架されている。このスライダ32は、スライダ本体32
Aの軸方向の両端部にエンドキャップ32B,32Bが
着脱可能に固着されて構成されている。また、案内レー
ル31の上面31aと両側面31b,31bが交差する
稜線部には、断面ほぼ1/4円弧形状の凹溝である転動
体転動溝33A,33Aが軸方向に形成されている。さ
らに、案内レール31の両側面31b,31bの中間位
置には、断面ほぼ半円形の凹溝である転動体転動溝33
B,33Bが軸方向に形成されている。なお、転動体転
動溝33Bの溝底には、転動体35の脱落を防ぐ後述の
保持器36のための逃げ溝33aが、軸方向に形成され
ている。
【0081】一方、スライダ32の本体32Aの両袖部
34,34の内側のコーナ部には、案内レール31の転
動体転動溝33Aに対向する断面ほぼ半円形の負荷転動
体転動溝41が形成され、両袖部34,34の内側面の
中央部には案内レール31の転動体転動溝33Bに対向
する断面ほぼ半円形の負荷転動体転動溝42が形成され
ている。そして、上記の案内レール31の転動体転動溝
33Aとスライダ32の負荷転動体転動溝41とで負荷
転動体転動路43が構成され、案内レール31の転動体
転動溝33Bとスライダ32の負荷転動体転動溝42と
で負荷転動体転動路44が構成されている。
【0082】また、スライダ本体32Aの袖部34の上
部肉厚に、負荷転動体転動路43に平行な軸方向に延び
る断面円形の貫通孔からなる転動体戻し路45が形成さ
れ、袖部34の下部肉厚内に、負荷転動体転動路44に
平行な同様の軸方向に延びる貫通孔からなる転動体戻し
路46が形成されている。エンドキャップ32Bは樹脂
材料の射出成形品であり、断面ほぼコ字状に形成されて
いる。そして、スライダ本体32Aとの接合面(裏面)
には、図11に示すように、斜めに傾斜した半円状の上
凹部51と下凹部52とが、両袖分部34,34の上下
に形成されるとともに、半円状の両凹部51,52の中
心部を横断して半円柱状の凹溝53が設けてある。
【0083】そして、その半円柱状の凹溝53には、樹
脂材料を射出成形して得た半円筒状のリターンガイド5
5(図12を参照)が嵌合される。なお、図13は、リ
ターンガイド55が装着されたエンドキャップ32Bの
斜視図である。このリターンガイド55の外径面の中央
部には、転動体35の案内面となる断面円弧状の凹溝5
6が半円状に形成され、また、リターンガイド55の内
径側の凹部57は潤滑剤通路であり、その凹部57から
外径側の凹溝56に抜ける貫通孔57Aが給油孔として
形成されている。
【0084】このようなリターンガイド55を半円柱状
の凹溝53に組み込むことにより、エンドキャップ32
Bの裏面に断面円形の半ドーナツ状の湾曲路58が上下
二段に形成される(図14を参照)。このエンドキャッ
プ32Bをスライダ本体32Aに取り付けると、湾曲路
58によって、スライダ本体32Aの負荷転動体転動路
44と転動体戻し路46とが連通される。そして、上段
の負荷転動体転動路43と転動体戻し路45も同様に連
通される。
【0085】上記の負荷転動体転動路43,44,転動
体戻し路45,46,湾曲路58で構成される転動体無
限循環経路に、多数の転動体35が転動自在に装填され
ている。案内レール31上をスライダ32が移動する
と、転動体35は負荷転動体転動路43,44内を転動
しつつスライダ32の移動方向にスライダ32より遅い
速度で移動し、一端側の湾曲路58でUターンして転動
体戻し路45,46を逆方向に転動しつつ移動し、他端
側の湾曲路58で逆Uターンして負荷転動体転動路4
3,44内に戻る循環を繰り返す。
【0086】なお、エンドキャップ32Bにおいて、転
動体35を案内する湾曲路58の内側端部には半円状に
突出させた転動体掬いあげ突部59が形成され、その鋭
角の先端が案内レール31の転動体転動溝33A,33
Bの溝底に近接するようにされている。下段の転動体掬
いあげ突部59には、後述する保持器36の取付溝59
aと取付穴59bとが設けてある。また、エンドキャッ
プ32Bの表側の給油ニップル37から注入された潤滑
剤が、エンドキャップ32Bの裏面の給油溝60を通り
リターンガイド55の内径側の凹部57から貫通孔57
Aを経て、湾曲路58内へ送り込まれるようになってい
る。さらに、エンドキャップ32Bの裏面の給油溝60
の下方には、後述する保持器61の取付け穴61aが形
成してある。
【0087】スライダ32の上段の負荷転動体転動路4
3及び下段の負荷転動体転動路44にそれぞれ装填され
た転動体35は、スライダ32を案内レール31に組み
付けない状態では脱落してしまう。よって、これを防止
するために、射出成形された樹脂材料製の保持器が用い
られている。下段の負荷転動体転動路44内の転動体脱
落防止用の保持器36は、断面角形状の保持器で、その
長手方向の両端側は転動体35を滑らかに案内するため
弓なりに湾曲され、端末には取付け部が形成されてい
る。装着は、エンドキャップ32Bの転動体掬いあげ突
部59に形成された保持器取付け穴59bに前記取付け
部を差し込んで行われる。スライダ32を案内レール3
1に組みつけた状態では、保持器36は案内レール31
の保持器用の逃げ溝33a内に収容され、案内レール3
1とは干渉しない。
【0088】これに対して、上段の負荷転動体転動路4
3内の転動体脱落防止用の保持器61は、図15に示す
ようにほぼ長方形の枠形状である。この保持器61は、
その枠62の長手方向の外側縁にほぼ1/4円弧状の転
動体保持面63が形成され、前後端には係止突部64が
突設されている。装着は、エンドキャップ32Bの裏面
の取付け穴61aに係止突部64を差し込むことにより
行われる。これにより保持器61はエンドキャップ32
Bに支持されて、案内レール31の上面31aとこれに
向き合うスライダ本体32Aの内面との間の空間に収容
され、転動体35を転動体保持面63と負荷転動体転動
溝41の溝面とで挟持して保持する。
【0089】このような直動案内軸受装置は、その一部
が前述のように樹脂材料で構成されていて、この樹脂材
料は、例えば、前述の実施例1に使用した生分解性樹脂
60質量%と、充填材である前述の炭酸カルシウムウィ
スカー40質量%と、からなる生分解性樹脂組成物であ
る。なお、従来の直動案内軸受装置においては、ポリア
セタール樹脂が使用されていた。これらの樹脂組成物
は、優れた耐熱性を有するとともに、機械的性質の経時
的な低下が生じにくいので、該樹脂組成物でその一部が
構成された上記の直動案内軸受装置は、転動装置として
十分な性能を備えている。また、この直動案内軸受装置
が土壌中等の自然環境に放出されても、前記生分解性樹
脂組成物で構成された部分は自然に分解されるから、自
然環境に対して悪影響を及ぼしにくい。
【0090】〔第三実施形態〕図16は、本発明に係る
機械部品の一実施形態である直動案内軸受装置用スライ
ダの仮軸の構成を示す斜視図である。また、図17は、
スライダが組み付けられた状態の仮軸を示す斜視図であ
る。この仮軸101は、直動案内軸受装置用の案内レー
ルとほぼ同一の形状に形成されている。すなわち、仮軸
101の軸方向に垂直をなす面で破断した断面形状は、
前記案内レールのそれとほぼ同一の形状をなしている。
【0091】そして、角状の仮軸101の上面101a
と両側面101bとが交差する稜線部には、転動体転動
溝に相当する断面ほぼ1/4円弧形状の凹溝102Aが
軸方向に形成され、仮軸101の両側面101bの中間
位置には、転動体転動溝に相当する断面ほぼ半円形の凹
溝102Bが軸方向に形成されている。さらに、両側面
101bの中間位置に形成された凹溝102Bの溝底に
は、前記案内レールと同様にボール保持器用の逃げ溝1
03が形成されている。
【0092】ただし、案内レールとは異なり、仮軸10
1はスライダ105を仮に組み付けておくためのもので
あるから、図16及び図17に示すように、その軸方向
の長さはスライダ105の軸方向の長さよりも若干長け
れば十分である。また、仮軸101の上面101aは機
能上平面状である必要はないので、仮軸101の寸法精
度を向上させるために、凹状の肉ヌスミ104が設けて
ある。なお、肉ヌスミ104の内部には、肉ヌスミ10
4を補強するための補強板104aが設けてある。
【0093】スライダ105が組み付けられた仮軸10
1を前記案内レールの端部に連続するように取り付け、
スライダ105を仮軸101から案内レールに向けてス
ライドさせると、仮軸101に組み付けられていたスラ
イダ105を案内レールに移動させることができる。こ
のような仮軸101は、例えば、前述の実施例1に使用
した生分解性樹脂90質量%と、充填材である前述の炭
酸カルシウムウィスカー10質量%と、からなる生分解
性樹脂組成物を、射出成形することによって製造され
る。
【0094】したがって、スライダ105を案内レール
に移動させた後の仮軸101を廃棄物として土壌中に埋
設処理すると、自然に生分解されるから、自然環境に悪
影響を及ぼしにくく、また、廃棄物問題の要因となりに
くい。なお、上記の第一〜第三実施形態は本発明の一例
を示したものであり、本発明は上記の各実施形態に限定
されるものではない。例えば、生分解性樹脂組成物に使
用する生分解性樹脂の種類,充填材の種類,添加剤の種
類,及びこれらの配合比率等は、本実施形態に限定され
るものではなく、使用温度,形状,使用目的等に応じて
適宜選択することが可能である。例えば、表2〜5に記
載された実施例の構成としてもよい。
【0095】また、本実施形態においては、機械部品の
例として玉軸受,直動案内軸受装置,及び直動案内軸受
装置用スライダの仮軸をあげて説明したが、本発明は、
他の種々の機械部品に対して適用することができる。例
えば、ボールねじ等の転動装置である。
【0096】
【発明の効果】以上のように、本発明に係る生分解性樹
脂組成物は、耐熱性に優れるとともに機械的性質の経時
的な低下が生じにくい。また、本発明に係る転がり軸受
等の機械部品は、優れた耐熱性を有するとともに、機械
的性質の経時的な低下が生じにくい。よって、種々の産
業分野において使用することが可能である。さらに、本
発明に係る転がり軸受等の機械部品は優れた生分解性を
有しているので、土壌中等の自然環境に放出されると自
然に分解され、自然環境に対して悪影響を及ぼしにく
い。よって、土壌中等の自然環境に廃棄処分することも
可能であり、使用後の廃棄が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る機械部品の一実施形態である深溝
玉軸受の構造を示す縦断面図である。
【図2】図1の深溝玉軸受に使用されている冠形保持器
を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る転がり軸受用シールの構成を説明
するシール及び転がり軸受の断面図である。
【図4】軸受回転試験機の構成を示す断面図である。
【図5】生分解性樹脂組成物中のガラス繊維の含有量と
生分解完了時間及びL10寿命との相関を示すグラフであ
る。
【図6】生分解性樹脂組成物中のPLAの含有量と生分
解完了時間,L10寿命,及び耐熱温度との相関を示すグ
ラフである。
【図7】生分解性樹脂組成物中のPBATの含有量と生
分解完了時間,L10寿命,及び耐熱温度との相関を示す
グラフである。
【図8】生分解性樹脂組成物中のPLA及びPBATの
合計の含有量と生分解完了時間,L10寿命,及び耐熱温
度との相関を示すグラフである。
【図9】本発明に係る機械部品の別の実施形態である直
動案内軸受装置の構成を示す斜視図である。
【図10】図9の直動案内軸受装置の正面図である。
【図11】リターンガイドを省略してエンドキャップの
裏面を示した図である。
【図12】リターンガイドの正面図である。
【図13】リターンガイドを装着した状態のエンドキャ
ップの斜視図である。
【図14】図10のエンドキャップ付近のA−A線部分
断面図である。
【図15】保持器の斜視図である。
【図16】本発明に係る機械部品の別の実施形態である
直動案内軸受装置用スライダの仮軸を示す斜視図であ
る。
【図17】スライダを組み付けた状態の仮軸を示す斜視
図である。
【符号の説明】
11 内輪 12 外輪 13 玉 14 保持器 15 シール 32B エンドキャップ 36 保持器 55 リターンガイド 61 保持器 101 仮軸
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16C 33/62 F16C 33/62 33/76 33/76 A (72)発明者 矢部 俊一 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 Fターム(参考) 3J016 AA01 AA08 BB01 3J101 AA01 AA61 BA10 BA50 BA70 DA14 EA31 EA80 FA31 3J104 AA03 AA19 AA23 AA36 AA65 AA69 AA72 BA15 BA33 CA13 DA14 DA20 EA10 4J002 CF101 CF171 DA016 DA036 DE076 DE186 DE236 DJ006 DJ016 DJ036 DJ046 DJ056 DL006 FA046 FA066 FD01 GM00 GM05

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 生分解性樹脂を含有する樹脂組成物にお
    いて、前記生分解性樹脂を、脂肪族二塩基酸と脂肪族ジ
    オールとの重縮合によって得られる脂肪族ポリエステル
    成分及び脂肪族ポリエーテル成分の少なくとも一方から
    なる脂肪族成分と、芳香族ポリエステル成分と、を分子
    構造中に有するポリエステル樹脂としたことを特徴とす
    る生分解性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 前記ポリエステル樹脂の前記芳香族ポリ
    エステル成分と前記脂肪族成分との量比を、前記各成分
    の繰り返し単位のモル比で、19:1〜5:5としたこ
    とを特徴とする請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 補強材を含有することを特徴とする請求
    項1又は請求項2に記載の生分解性樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 前記ポリエステル樹脂の含有量を樹脂組
    成物全体の30質量%以上90質量%以下とし、前記補
    強材の含有量を樹脂組成物全体の10質量%以上50質
    量%未満としたことを特徴とする請求項3に記載の生分
    解性樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 前記ポリエステル樹脂のうち少なくとも
    一部を引張破断伸びが50%以上である生分解性ポリエ
    ステル樹脂とし、この引張破断伸びが50%以上である
    生分解性ポリエステル樹脂の含有量を、樹脂組成物全体
    の20質量%以下としたことを特徴とする請求項1〜4
    のいずれかに記載の生分解性樹脂組成物。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の生分解
    性樹脂組成物で構成したことを特徴とする機械部品。
  7. 【請求項7】 内輪と、外輪と、前記両輪の間に転動自
    在に配設された複数の転動体と、前記両輪の間に前記転
    動体を保持する保持器と、を備える転がり軸受におい
    て、 前記内輪,前記外輪,前記転動体,及び前記保持器のう
    ち少なくとも前記保持器を、請求項1〜5のいずれかに
    記載の生分解性樹脂組成物で構成したことを特徴とする
    転がり軸受。
  8. 【請求項8】 請求項1〜5のいずれかに記載の生分解
    性樹脂組成物で構成されたシールを備えることを特徴と
    する請求項7に記載の転がり軸受。
  9. 【請求項9】 軸方向に延びる転動体転動溝を外面に有
    する案内レールと、該案内レールの転動体転動溝に対向
    する転動体転動溝を有するとともに前記軸方向に相対移
    動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、
    前記両転動体転動溝の間に転動自在に介装された複数の
    転動体と、前記両転動体転動溝の間に前記転動体を保持
    する保持器と、を備える直動案内軸受装置において、 前記スライダの少なくとも一部分と前記保持器とのうち
    一方又は両方を、請求項1〜5のいずれかに記載の生分
    解性樹脂組成物で構成したことを特徴とする直動案内軸
    受装置。
  10. 【請求項10】 直動案内軸受装置の案内レールに滑動
    自在に嵌合されるスライダを仮に組み付ける仮軸におい
    て、請求項1〜5のいずれかに記載の生分解性樹脂組成
    物で構成したことを特徴とする直動案内軸受装置用スラ
    イダの仮軸。
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