JP2003305577A - レーザ加工装置、それを用いた半導体素子の製造方法およびそれを用いた太陽電池素子の製造方法 - Google Patents

レーザ加工装置、それを用いた半導体素子の製造方法およびそれを用いた太陽電池素子の製造方法

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JP2003305577A
JP2003305577A JP2002108991A JP2002108991A JP2003305577A JP 2003305577 A JP2003305577 A JP 2003305577A JP 2002108991 A JP2002108991 A JP 2002108991A JP 2002108991 A JP2002108991 A JP 2002108991A JP 2003305577 A JP2003305577 A JP 2003305577A
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Hiromasa Tanamura
浩匡 棚村
Yusuke Fukuoka
裕介 福岡
Shinsuke Tachibana
伸介 立花
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 レーザの照射による表面電極の一部損傷を防
ぐことができ、任意の結像を得ることができ、かつ短時
間のうちに正確に被加工物の被加工部位をスクライブす
ることのできるレーザ加工装置を提供する。 【解決手段】 レーザ発振器11と、集光レンズ12
と、結像スリット13または結像フィルターと、結像レ
ンズ14と、高次回折光フィルター15とを有するレー
ザ加工装置であって、結像スリットまたは結像フィルタ
ーは結像レンズの光入射側に設けられ、高次回折光フィ
ルターは結像レンズの光出射側に設けられた構造を有す
るレーザ加工装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レーザ加工装置に
関する。さらに詳しくは、本発明は、波長選択性のある
レーザを出射することができ、該レーザの結像面におけ
る面内強度分布が一定であることを特徴とするレーザ加
工装置に関する。
【0002】また、本発明は、該レーザ加工装置を用い
た半導体素子および太陽電池素子の製造方法にも関す
る。さらに、本発明は、該レーザ加工装置を用いた透光
性開口部を有する太陽電池素子の製造方法にも関する。
【0003】
【従来の技術】太陽光線から太陽電池を使って直接電気
エネルギーを発生する太陽光発電システムは、近年その
技術開発が急速に進歩し、実用に耐える発電方法として
も技術的見通しがつきつつある。その結果、太陽光発電
システムは、21世紀の地球環境を化石エネルギーの燃
焼による環境汚染から守る本格的なクリーンエネルギー
技術としてその将来が期待されている。
【0004】ここで、太陽電池に用いられる太陽電池素
子の材質の種類には、大きく分けて下記の4種類があ
る。 (i)IV族半導体 (ii)化合物半導体(III−V族、II−VI族、
I−III−VI族) (iii)有機半導体 (iv)湿式太陽光発電に用いられるTiO2などの化
合物 これらの材質の中でも、他の材質と比較して低コストで
の製造が可能であるために現在最も実用化が進んでいる
のが、IV族半導体である。IV族半導体は大きく
(i)結晶系半導体と(ii)非晶質半導体(別名、ア
モルファス半導体とも呼ばれる)に分けられる。
【0005】太陽電池素子として用いられる結晶系半導
体の材質としては、たとえば、単結晶シリコン、単結晶
ゲルマニウム、多結晶シリコン、微結晶シリコンなどが
挙げられる。
【0006】また、太陽電池素子として用いられる非晶
質半導体としては、たとえば、アモルファスシリコンな
どが挙げられる。
【0007】ここで、このような半導体からなる材質を
用いて製造された太陽電池素子は、大きく分けて、下記
の3つの種類に分けられる。 (i)pn接合型 (ii)pin接合型 (iii)ヘテロ接合型 これらの中でも、一般に、キャリア拡散距離の大きな結
晶系半導体を用いた太陽電池素子ではpn接合型が用い
られることが多い。また、キャリア拡散距離が小さく局
在準位が存在する非晶質半導体でを用いた太陽電池素子
では、キャリアをi層(真性層)中の内部電界によりド
リフトで移動させることが有利であるため、pin接合
型が用いられることが多い。
【0008】そして、一般に、pin接合型の太陽電池
素子は、ガラスなどの絶縁透光性基板上にSnO2やI
TO、ZnOなどの透明導電膜が形成され、その上に非
晶質半導体のp層、i層、n層がこの順に積層されて光
電変換層が形成され、その上に金属薄膜などからなる裏
面電極が積層されてなる構造を有することが多い。ま
た、逆に、金属薄膜などからなる裏面電極の上に非晶質
半導体のn層、i層、p層がこの順に積層されて光電変
換層が形成されその上に透明導電膜が積層されてなる構
造を有するpin接合型の太陽電池素子も存在する。
【0009】これらのうちp−i−n層の順に積層する
方法は、透光性絶縁基板が太陽電池表面カバーガラスを
兼ねることができること、また、SnO2などの耐プラ
ズマ性透明導電膜が開発されて、この上に非晶質半導体
からなる光電変換層をプラズマCVD法で積層すること
が可能となったことなどの理由から多用されるようにな
り現在の主流となっている。
【0010】ここで、上記のような太陽電池素子を用い
て製造された太陽電池のエネルギー変換効率は、入力と
なる太陽輻射光エネルギーと、太陽電池の端子から出て
くる電気出力エネルギーの比を%で表したものである。
【0011】すなわち、変換効率ηは、 η=(太陽電池の電気出力)/(太陽電池に入った太陽
エネルギー)×100% と定義することができる。
【0012】また、国際電気規格標準化委員会では、変
換効率の測定基準を統一するため、太陽輻射の空気質量
通過条件がAM(air mass:通過空気質量)
1.5で、100mW/cm2という入力光パワーに対
して、負荷条件を変えた場合の最大電気出力との比を百
分率で表わしたものを公称効率と定義している。
【0013】そして、太陽電池の公称効率ηnは、上記
の条件に基づく太陽電池の出力測定法から求められる最
大出力点電圧Vmax、最大出力点電流Imax、開放電圧V
ocおよび短絡光電流密度Iscなどから導くことができ
る。
【0014】すなわち、太陽光線の入力光パワーをPin
で表わし、太陽電池の有効受光面積をS(cm2)とす
ると、 ηn=(Vmax・Imax)/(Pin・S)×100% =(Voc・Isc・FF)/100(mW・cm-2)×100% =Voc(V)・Isc(mA・cm-2)FF(%) で表わすことができる。ただし、上記の式で、FF=
(Vmax・Imax)/(Voc・Isc)であるものとする。
【0015】ここで、FFは曲線因子(fill fa
ctor)と呼ばれ、太陽電池の性能のよさを示す重要
な指数として扱われている。
【0016】また、上記の式を見れば分かるように、入
力パワーを100mW/cm-2に規格化した測定では、
実験で求められるVocならびにIscとFFが分かれば、
それらの積を求めることにより、太陽電池の公称効率を
求めることができる。
【0017】一般に、上記のようにして求められる太陽
電池の公称効率は10〜20%程度であるのが現状であ
る。すなわち、太陽エネルギーの80〜90%程度は電
気エネルギーに変換されず、どこかに消えているわけで
ある。その理由としては、下記のような原因が考えられ
ている。
【0018】(i)太陽光がセル表面で反射する。 たとえば、シリコン太陽電池のシリコン板の表面は、黒
っぽい鏡のようであるが、これはセル表面で光が反射す
るからである。一般にこれらの反射を減らすためにセル
表面に反射を防止する膜が施されている。
【0019】(ii)太陽光の全波長を吸収できない。 太陽光線の大部分は波長0.2〜3μm(紫外線、可視
光線、赤外線)からなっているが、太陽光線はこれらの
全波長域を吸収することはできない。どの波長をより効
率よく電気エネルギーに変換するかは、太陽電池の材
質、作り方などにより影響される。
【0020】(iii)自由電子、自由ホール発生率が
100%にならない。 光が当たっても自由電子、自由ホールが発生しないこと
があり、発生しても寿命があるため、電気エネルギーと
して取出される前にすぐに消滅してしまうことがある。
【0021】(iv)自由電子、自由ホールの収量が1
00%にならない。 pn接合面などで発生、分離された自由電子、自由ホー
ルは、電極方向に移動中にある程度消滅する。
【0022】(v)太陽電池内部に抵抗がある。 シリコン材料や電極部などに電気抵抗があり、発生した
電気を全部外部に取出すことができないため、FFが低
下する。
【0023】すなわち、これらの原因を除去あるいは低
減することにより、現在の太陽電池の公称効率をさらに
向上させることができるといえる。
【0024】また、これらの努力に加えて、太陽電池の
基板上により多くの光電変換層を設ける集積化の高度化
により、太陽電池の公称効率を向上させようという取り
組みも行なわれている。
【0025】たとえば、多重接合型とよばれる太陽電池
素子においては、多数の光電変換層を光の進行方向に積
層することにより、短波長側の光から順次各光電変換層
に吸収され、それぞれの禁止帯幅Egに見合った電圧を
発生するように構造が設計されている。
【0026】また、光電変換層における光の吸収効率を
高めるために、太陽電池素子の裏面電極膜として、A
g、Alなど反射率の高い材料を使用し、また光電変換
層と裏面電極の間に透明電極を挟むことで光を散乱さ
せ、光電変換層中における入射光の光路長を大きくし
て、太陽電池の変換効率を向上させる方法も併せて用い
られることが多い。この際、透明電極としては、たとえ
ば、SnO2、ZnO、ITOなどを含む材質が使用さ
れることが多い。
【0027】また、太陽電池素子の発電領域1箇所にお
いて発生する電圧をより高めるために、2層ないし3層
に光電変換層を積層した発電領域を有する太陽電池素子
の開発も近年盛んに行なわれている。さらに、太陽光線
の有する異なる波長のエネルギーを有効に利用するため
に、上部光電変換層と下部光電変換層のバンドギャップ
が異なる、マルチバンドギャップ型の発電領域を有する
太陽電池素子の開発も進められている。
【0028】ここで、一般に、エレクトロニクス機器を
太陽電池で駆動したり、電力用として太陽電池を用いる
場合においては、発電領域1箇所において発生する電圧
が1V以下であるため、複数個の発電領域を直列に接続
した構造からなる大面積を有する太陽電池素子を用いる
必要がある。
【0029】たとえば、一般的な太陽電池素子は、絶縁
性基板上にパターニングプロセスなどを用いて作成され
るが、この場合、1枚のガラス基板などの透光性絶縁基
板上に、透明電極、光電変換層および裏面電極を有する
複数の発電領域が形成され、さらに、これらの隣接する
発電領域が直列接続されたような構造が多く用いられて
いる。
【0030】また、上記の太陽電池素子のパターニング
プロセスにおいては、従来は樹脂マスクなどを用いたエ
ッチングによるパターニングが行なわれてきた。しか
し、このような方法では、積層構造の形成に多くのプロ
セスを必要とし、しかも取扱い得る基板の寸法に制約が
あり、太陽電池の基板内の発電領域の有効面積が小さく
なりやすく、ウェットプロセスのため光電変換層中にピ
ンホールが発生しやすく、曲面基板ではパターニングが
難しいなどの問題点を有している。
【0031】これに対して、レーザの照射による加熱を
利用したパターニングが近年開発され、盛んに用いられ
ている。このレーザを用いたパターニング方式は、積層
構造の形成プロセスの減少を図ることができ、大面積の
基板上に太陽電池素子を製造することができ、曲面状な
どの任意の形状の基板上に太陽電池素子の製造が可能で
あり、太陽電池の基板内の発電領域の有効面積が増大で
き、完全ドライプロセスの確立ができ、連続一貫生産お
よび自動化生産に適するという利点を有する。
【0032】特に、従来の樹脂マスクなどを用いたエッ
チングによるパターニングにおいては隣接する発電領域
との距離が3mm程度必要であったところ、レーザの照
射による加熱を利用したパターニングを採用することに
よって該距離を0.5mm以下に短縮することができ
る。そのため、レーザの照射による加熱を利用したパタ
ーニングを採用することによって、太陽電池の基板内の
発電領域の有効面積の増大を通じて、太陽電池素子の単
位面積当たりの出力を30%以上向上させることができ
る。
【0033】また、近年、太陽電池の活用される領域の
広がりに伴い、さまざまな用途に応じた特殊な太陽電池
の研究開発が進んでいる。これらの多様な太陽電池の中
でも、光透過型太陽電池は、発電機能に加えて、光の一
部を裏面側へ透過させる採光機能をも有し、車のサンル
ーフ、窓や天窓として実用化されている。
【0034】ここで、一般的な光透過型太陽電池素子に
おいても、図7に示すように、1枚のガラス基板などの
透光性絶縁基板31上に、透明電極からなる表面電極3
3、光電変換層35および裏面電極37を有する複数の
発電領域が形成され、これらの発電領域中に光電変換層
35および裏面電極37を貫通する透光性開口部39が
設けられ、さらに、これらの隣接する複数の発電領域同
士が直列接続および/または並列接続されたような構造
が一般的に用いられている。なお、図7においては、4
1a〜41cは入射光を示し、43a〜43hは透過光
を示す。
【0035】
【発明が解決しようとする課題】そして、現在のとこ
ろ、このような集積型の光透過型太陽電池の製造方法に
おいて、上記の透光性開口部を形成するための方法とし
ては、YAG SHGレーザをはじめとするレーザを絶
縁透光性基板側から照射することにより光電変換層およ
び裏面電極をスクライブする方法が主流となっている。
【0036】しかし、上記の方法には、光電変換層およ
び裏面電極を貫通する裏面電極分離ラインおよび/また
は透光性開口部を形成する際に、レーザが光電変換層お
よび裏面電極を貫通するまでの間、必然的に比較的長時
間にわたりレーザが表面電極に照射されるため、表面電
極が一部損傷する結果を招き、表面電極の抵抗値が上昇
するため、集積型の太陽電池の直列抵抗の増加による特
性悪化を招くという問題があった。
【0037】また、上記の方法においては、一般に基本
波YAGレーザ(波長1064nm)や第2高調波YA
Gレーザ(波長532nm、別名YAG SHGレーザ
とも呼称する)を使用することが多い。そして、このよ
うなレーザのビーム断面は一般に円形であり、ビーム断
面の光強度分布(エネルギー強度分布)はビーム中央部
で強く、ビーム周辺部に近づくほど弱くなる。
【0038】したがって、太陽電池素子をはじめとする
半導体素子のパターニング工程において、このような一
般的なレーザを用いて線状のスクライビングを行なう
と、線状部分の中心部には多くのエネルギーが照射され
るが、線状部分の周辺部に照射されるエネルギーは比較
的低くなるため、半導体素子のパターニング工程におい
て均一なスクライビングができないという問題があっ
た。
【0039】その結果、上記のような太陽電池素子の製
造工程においても、光電変換層および裏面電極を貫通す
る裏面電極分離ラインおよび/または透光性開口部を形
成する際に、上記のような一般的なレーザを用いると、
光電変換層および裏面電極をスクライビングすることに
より、図8に示すように、ビーム断面の中央部に相当す
る部分では表面電極2に損傷を与える傾向がある。
【0040】なお、図8において、1は絶縁透光性基板
を示し、3は光電変換層を示し、4は裏面透明電極を示
し、5は裏面金属電極を示し、6はレジスト膜を示し、
7は表面電極分離ラインを示し、8はコンタクトライン
を示し、9は裏面電極分離ラインを示し、10a,10
bは透光性開口部を示し、50は裏面電極を示し、53
a〜53fは裏面電極の残渣を示し、55a〜55cは
レーザによる表面電極の損傷部を示す。
【0041】上記のようにレーザによるスクライビング
により表面電極に損傷が生じるため、表面電極の損傷に
よる表面電極の直列抵抗の増加が大きなものとなり、太
陽電池素子の出力の低下も著しく大きくなるという傾向
があった。
【0042】そして、このようなレーザの照射による表
面電極の一部損傷を防ぐことができ、裏面電極などの残
渣を発生させず、任意の結像を得ることができ、かつ短
時間のうちに正確に光電変換層および裏面電極をスクラ
イブすることのできるレーザ加工装置が強く求められて
おり、そのような要望に対する取組みも最近行なわれつ
つある。
【0043】たとえば、特開平10−258383号公
報においては、非晶質シリコン太陽電池などの被加工物
に対して均一な加工を行なうことができ、また加工速度
を高めることができる線状レーザビーム光学系が開示さ
れている。しかし、この技術においては、レーザビーム
光学系が複雑な構造を有するため、レーザ加工装置の製
造コストが高くなり、ひいては太陽電池素子の製造コス
トも高くなるという問題がある。また、この技術におい
ては、結像スリットまたは結像フィルターを用いていな
いため、レーザビームの結像を任意の形状に選択するこ
とができないという問題もある。
【0044】よって、上記の現状から、レーザの照射に
よる被加工物の被加工部位以外の部位の一部損傷を防ぐ
ことができ、任意の結像を得ることができ、かつ短時間
のうちに正確に光電変換層および裏面電極をスクライブ
することのできるレーザ加工装置は、未だ開発されてい
ないといえる。
【0045】そこで、本発明の課題は、レーザの照射に
よる表面電極の一部損傷を防ぐことができ、任意の結像
を得ることができ、かつ短時間のうちに正確に被加工物
の被加工部位をスクライブすることのできるレーザ加工
装置を提供することである。
【0046】また、本発明の他の課題は、レーザの照射
による被加工物の被加工部位以外の部位の一部損傷を防
ぐことができ、任意の結像を得ることができ、短時間の
うちに正確に被加工物の被加工部位をスクライブするこ
とができ、かつ製造コストが低い半導体素子の製造方法
を提供することである。
【0047】さらに、本発明のもう一つの課題は、レー
ザの照射による表面電極の一部損傷を防ぐことができ、
任意の結像を得ることができ、短時間のうちに正確に光
電変換層および裏面電極をスクライブすることができ、
かつ製造コストが低い太陽電池素子の製造方法を提供す
ることである。
【0048】さらに、本発明の別の課題は、レーザの照
射による表面電極の一部損傷を防ぐことができ、任意の
結像を得ることができ、短時間のうちに正確に光電変換
層および裏面電極をスクライブして透光開口部および裏
面電極分離ラインが形成でき、かつ製造コストが低い光
透過型の太陽電池素子の製造方法を提供することであ
る。
【0049】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するには、レーザ加工装置の結像レンズの光入
射側に結像スリットまたは結像フィルターを設け、さら
に結像レンズの光出射側に高次回折光フィルターを設け
ればよいとの着想を得、そのような構造を有するレーザ
加工装置を用いることにより、光透過型太陽電池素子の
製造工程において、レーザの照射による表面電極の一部
損傷を防ぎつつ、裏面電極分離ラインおよび透光性開口
部を正確に形成することができるため、光透過型太陽電
池素子の出力の低下を防ぐことができることを見出し
た。
【0050】また、本発明者らは、上記の構造を有する
レーザ加工装置は、半導体素子の製造工程にも好適に使
用可能であることを見出した。
【0051】さらに、本発明者らは、上記の構造を有す
るレーザ加工装置を、太陽電池素子の製造工程において
用いる場合、特定の条件でレーザを照射すると、より短
時間のうちに正確に光電変換層および裏面電極をスクラ
イブすることができることを見出し、本発明を完成し
た。
【0052】すなわち、本発明のレーザ加工装置は、レ
ーザ発振器と、集光レンズと、結像スリットまたは結像
フィルターと、結像レンズと、高次回折光フィルターと
を有するレーザ加工装置であって、結像スリットまたは
結像フィルターは結像レンズの光入射側に設けられ、高
次回折光フィルターは結像レンズの光出射側に設けられ
た構造を有する。
【0053】ここで、本発明のレーザ加工装置は、被加
工物に対して波長選択性のあるレーザを出射することが
でき、該レーザの結像面における面内強度分布が一定で
あることが好ましい。また、本発明のレーザ加工装置
は、結像スリットまたは結像フィルターを交換可能であ
り、結像形を任意に選択することができることが望まし
い。さらに、本発明のレーザ加工装置は、レーザ発振器
がYAGレーザ発振器であることが推奨される。
【0054】そして、本発明は、本発明のレーザ加工装
置から出射されるレーザを照射することによりパターニ
ングを行なう工程を含むことを特徴とする半導体素子の
製造方法を含む。
【0055】また、本発明は、本発明のレーザ加工装置
から出射されるレーザを照射することによりパターニン
グを行なう工程を含むことを特徴とする太陽電池素子の
製造方法を含む。
【0056】さらに、本発明の太陽電池素子の製造方法
は、絶縁透光性基板、表面電極、光電変換層および裏面
電極を有する複数の発電領域を備えており、該光電変換
層および該裏面電極を貫通することにより複数の発電領
域同士を互いに分割する裏面電極分離ラインを有し、該
裏面電極分離ラインにより分割された発電領域同士は互
いに直列接続および/または並列接続されている太陽電
池素子の製造方法であって、本発明のレーザ加工装置か
ら出射されるレーザを照射することにより該裏面電極分
離ラインを形成する工程を含むことを特徴とする太陽電
池素子の製造方法であることが望ましい。
【0057】この場合、この光電変換層は、結晶シリコ
ン系半導体膜または非晶質シリコン系半導体膜またはそ
れらを積層した構造であることが好ましい。また、この
表面電極は、透明導電膜であることが望ましい。さら
に、この裏面電極は、透明導電膜および金属膜を積層し
た構造であることが推奨される。そして、この裏面電極
の光入射面の反対側の表面には、レジスト膜が積層され
ていることが好ましい。
【0058】また、本発明の太陽電池素子の製造方法
は、光電変換層および裏面電極を貫通することにより絶
縁透光性基板側から入射した光の一部を裏面側に透過せ
しめることのできる透光性開口部を有することを特徴と
する上記の太陽電池素子の製造方法であることが望まし
い。
【0059】この場合、この透光性開口部と裏面電極分
離ラインとは同一の開口部であっても好ましい。また、
この透光性開口部と裏面電極分離ラインとは異なる開口
部であっても好ましい。この場合、この透光性開口部
は、裏面電極分離ラインに平行かつ不連続な直線状の形
状であって、1つの発電領域あたり同一間隔で複数本設
けられていることが推奨される。さらに、この透光性開
口部は、裏面電極分離ラインに垂直かつ連続な直線状の
形状であって、すべての発電領域にわたり、同一間隔で
複数本設けられていてもよい。
【0060】また、本発明の太陽電池素子の製造方法
は、表面電極を透過する波長を有するレーザを照射する
ことにより裏面電極分離ラインおよび/または透光性開
口部を形成することを特徴とする上記の太陽電池素子の
製造方法であることが好ましい。
【0061】この場合、このレーザは、500〜600
nmの範囲の波長を有することが望ましい。また、この
レーザは、第2高調波YAGレーザであることが推奨さ
れる。さらに、このレーザは、レーザ発振器の出射口に
おけるビーム径が100μm〜3mmの範囲にあること
が好ましい。
【0062】そして、本発明の太陽電池素子の製造方法
は、結像面におけるレーザの結像形が長方形となる結像
スリットまたは結像フィルターを用いたことを特徴とす
る上記の太陽電池素子の製造方法であることが望まし
い。
【0063】この場合、この結像面におけるレーザの結
像倍率は、0.2〜23の範囲であることが推奨され
る。また、この結像面におけるレーザの結像の最大径
は、20〜500μmの範囲であることが好ましい。さ
らに、この結像面におけるレーザの総出力は、100m
W〜1Wの範囲であることが望ましい。
【0064】
【発明の実施の形態】以下、実施の形態を示して本発明
をより詳細に説明する。
【0065】<レーザ加工装置>本発明のレーザ加工装
置は、レーザ発振器と、集光レンズと、結像スリットま
たは結像フィルターと、結像レンズと、高次回折光フィ
ルターとを有するレーザ加工装置であって、結像スリッ
トまたは結像フィルターは結像レンズの光入射側に設け
られ、高次回折光フィルターは結像レンズの光出射側に
設けられた構造を有する。
【0066】<レーザ発振器>ここで、本発明のレーザ
加工装置に用いるレーザ発振器は、特に限定されず、一
般に半導体素子や太陽電池素子の加工に用いられるレー
ザ加工装置に設けられるレーザ発振器を用いることがで
きる。具体例としては、Nd3+:YAG、Nd 3+:ガラ
ス、Ti3+:Al23、Cr3+:BeAl24、C
3+:Be3Al2Si612、Cr3+:KZnF3、Cr
3+:Gd3Sc2Al312、Cr3+:Gd3Sc2Ga3
12、Co2+:MgF2、Co2+:KZnF3、NdP5
12、LiNdP412、La0.9Nd0.1MgAl
1119、Nd3+:LiYF4、Ce3+:LiYF4、Ho
3+:LiYF4などの固体レーザを用いたレーザ発振器
や、エキシマArF、エキシマKrF、エキシマXeC
l、N2、He−Cd+、Ar+、Ar2+、Kr+、K
2+、Cu、Au、He−Ne、HF、DF、CO、C
2、CH3OH、HCNなどのガスレーザを用いたレー
ザ発振器や、ローダミン6Gなどの色素を含有する液体
レーザを用いたレーザ発振器や、GaInAsP/In
P、GaAlAs/GaAs、GaP:Zn,O/Ga
P、GaP:N/GaP、GaP/GaP、GaAs
0.150.85:N/GaP、GaAs0.250.75:N/G
aP、GaAs0.350.65:N/GaP、GaAs0.6
0.4:N/GaAs、GaAlAs:DH/GaAl
Asなどの半導体レーザを用いたレーザ発振器などが挙
げられる。
【0067】これらのレーザ発振器の中でも、エネルギ
ー強度および波長およびコストの点からは、固体レーザ
を用いることが好ましいく、固体レーザの中でも、実用
化が進んでいることから、Nd3+:YAGレーザ発振器
(本明細書において、YAGレーザ発振器とも呼称す
る)を用いることが特に好ましい。
【0068】ここで、YAGレーザ発振器とは、N
3+:YAG(Nd3+添加Y3Al512、イットリウム
アルミニウムガーネット)の結晶を用いたレーザ発振器
のことを示し、基本波長のレーザ(本明細書において、
基本波YAGレーザと呼称する)は1064nmの近赤
外線であり、連続発振とパルス発振が可能である。
【0069】また、YAGレーザ発振器から出射される
第2高調波のレーザ(本明細書において、第2高調波Y
AGレーザとも呼称する)は、532nmの波長を有
し、YAGレーザ発振器から出射される第3高調波のレ
ーザ(本明細書において、第3高調波YAGレーザとも
呼称する)は、355nmの波長を有する。
【0070】YAGレーザ発振器から出射されるレーザ
(本明細書において、YAGレーザとも呼称する)に
は、CO2レーザなどに比べて波長が短いため、集光性
がよく、また、金属に対する吸収率がよいという利点が
ある。また、YAGレーザ発振器は、電子部品をはじめ
とする半導体素子や太陽電池素子などのマーキングや、
スクライビング、トリミング、エッチングなどの手法を
用いたパターニングなどの微細加工や、切断、溶接など
に利用されている実績もあるため、入手が容易でかつ低
コストである。さらに、YAGレーザの波長は、光ファ
イバを透過しやすいため、レーザを加工点までフレキシ
ブルに伝送できるので、自動化ラインへの適用がしやす
いという利点もある。
【0071】<集光レンズおよび結像レンズ>本発明の
レーザ加工装置は、レーザ発振器と、集光レンズと、結
像スリットまたは結像フィルターと、結像レンズと、高
次回折光フィルターとを有するレーザ加工装置であっ
て、結像スリットまたは結像フィルターは結像レンズの
光入射側に設けられ、高次回折光フィルターは結像レン
ズの光出射側に設けられた構造を有する。
【0072】ここで、本発明のレーザ加工装置に用いる
集光レンズおよび結像レンズ(本明細書において、本発
明に用いるレンズとも呼称する)は、特に限定されず、
一般に半導体素子や太陽電池素子の加工に用いられるレ
ーザ加工装置に設けられるレンズを用いることができ
る。具体例としては、球レンズ、球面レンズ、非球面レ
ンズ、先球ファイバなどの均一分布形屈折レンズや、分
布屈折率形ロッドレンズ、分布屈折率形スラブレンズ、
分布屈折率形マイクロレンズなどの不均一分布形屈折レ
ンズや、体積ホログラム、表面レリーフ形ホログラムな
どの回折形レンズ、などが挙げられる。また、平面鏡、
球面鏡、非球面鏡などの反射鏡を用いて、レンズと同様
の効果を生じさせてもよい(本明細書において、レンズ
と呼称する際には、レンズと同様の効果を有する反射鏡
を含むものとする)。
【0073】また、本発明に用いるレンズの材質として
は、特に限定されず、一般にレンズの材質として用いる
ことのできる材質を用いることができる。具体例として
は、光学ガラス、YAG、シリコン結晶、プラスチック
などが挙げられる。
【0074】<結像スリットまたは結像フィルター>本
発明のレーザ加工装置は、レーザ発振器と、集光レンズ
と、結像スリットまたは結像フィルターと、結像レンズ
と、高次回折光フィルターとを有するレーザ加工装置で
あって、結像スリットまたは結像フィルターは結像レン
ズの光入射側に設けられ、高次回折光フィルターは結像
レンズの光出射側に設けられた構造を有する。
【0075】ここで、本発明のレーザ加工装置に用いる
結像スリットまたは結像フィルターは、特に限定され
ず、一般に光学分野で用いられる結像スリットまたは結
像フィルターを用いることができる。
【0076】このとき、結像スリットの透光性開口部ま
たは結像フィルターの透光性部位または結像フィルター
の反射性部位の形状は特に限定されず、必要に応じて選
ばれる任意の形状であってよい。たとえば、長方形の結
像を得たい場合には、相似の長方形の透光性開口部を有
する結像スリットまたは相似の長方形の透光性部位また
は反射性部位を有する結像フィルターなどを用いること
ができる。
【0077】また、本発明のレーザ加工装置に用いる結
像スリットの透光性開口部または結像フィルターの透光
性部位または反射性部位のサイズは、特に限定されず、
必要に応じて選ばれる任意のサイズであってよい。たと
えば、結像面におけるレーザの結像倍率が0.2倍であ
れば、結像の5倍のサイズの透光性開口部を有する結像
スリットまたは結像の5倍のサイズの透光性部位または
反射性部位を有する結像フィルターを用いればよい。
【0078】ここで、本明細書において、結像倍率と
は、結像スリットの透光性開口部または結像フィルター
の透光性部位または反射性部位のサイズに対する、結像
面におけるレーザの結像のサイズの倍率を示すものとす
る。
【0079】そして、本発明のレーザ加工装置に用いる
結像スリットの材質は、特に限定されず、一般に光学分
野でスリットの材質として用いられる遮光性の材質を用
いることができる。たとえば、金属、セラミック、高分
子などからなるスリットが挙げられる。
【0080】さらに、本発明のレーザ加工装置に用いる
結像フィルターの材質も特に限定されず、一般に光学分
野でフィルターの材質として用いられる透光性または反
射性の材質を用いることができる。たとえば、光学ガラ
ス、YAG、シリコン結晶、プラスチック、雲母、水
晶、方解石、高分子膜、金属などからなるフィルターが
挙げられる。
【0081】ここで、本発明のレーザ加工装置に用いる
結像スリットまたは結像フィルターは結像レンズの光入
射側に設けられる必要がある。
【0082】本発明のレーザ加工装置のレーザ発振器で
発振されたレーザは、結像スリットまたは結像フィルタ
ーを透過することにより、または結像フィルターで反射
されることにより、ビームが拡散する傾向がある。
【0083】そこで、本発明のレーザ加工装置の結像ス
リットまたは結像フィルターは、結像レンズの光入射側
に設け、結像レンズによってレーザのビームが結像面に
おいて所定の結像を結ぶようにする必要がある。
【0084】また、本発明のレーザ加工装置の結像スリ
ットまたは結像フィルターは、交換可能であり、結像形
を任意に選択することができることが好ましい。
【0085】本発明のレーザ加工装置において、結像ス
リットまたは結像フィルターを交換可能なものとする構
造は、特に限定されるものではないが、たとえば、結像
スリットまたは結像フィルターが着脱可能な構造となっ
ていることが好ましい。もっとも、結像スリットまたは
結像フィルターが移動して、任意の結像スリットまたは
結像フィルターがレーザビームの光路に配置される構造
となっていてもよく、またはレーザビームの光路が変化
して、任意の結像スリットまたは結像フィルターがレー
ザビームの光路に配置される構造となっていてもよい。
【0086】本発明のレーザ加工装置において、結像ス
リットまたは結像フィルターを交換可能なものとするこ
とによって、半導体素子または太陽電池素子の製造工程
において、工程に応じてレーザの結像形を変更すること
ができ、工程に応じた正確なパターニングなどが可能に
なり、半導体素子または太陽電池素子の品質および生産
性の大幅な向上が可能となる。
【0087】<高次回折光フィルター>本発明のレーザ
加工装置は、レーザ発振器と、集光レンズと、結像スリ
ットまたは結像フィルターと、結像レンズと、高次回折
光フィルターとを有するレーザ加工装置であって、結像
スリットまたは結像フィルターは結像レンズの光入射側
に設けられ、高次回折光フィルターは結像レンズの光出
射側に設けられた構造を有する。
【0088】ここで、本発明のレーザ加工装置に用いる
高次回折光フィルターは、特に限定されず、レーザビー
ムが結像スリットまたは結像フィルターを透過して生じ
た高次回折光を、遮蔽することができるものであればよ
い。
【0089】本発明のレーザ加工装置に用いる高次回折
光フィルターの具体例としては、位相型反射回折格子、
位相型透過回折格子、振幅型反射回折格子、振幅型透過
回折格子などの回折格子や、偏光子、波長板、補償板な
どの偏光素子、NDフィルタ、着色ガラスフィルタ、干
渉フィルタ、帯域通過フィルタ、エッジフィルタなどの
光フィルタなどが挙げられる。
【0090】さらに、本発明のレーザ加工装置に用いる
高次回折光フィルターの材質も特に限定されず、一般に
光学分野でフィルターの材質として用いられる透光性ま
たは反射性の材質を用いることができる。たとえば、光
学ガラス、YAG、シリコン結晶、プラスチック、雲
母、水晶、方解石、高分子膜、金属などからなるフィル
ターが挙げられる。
【0091】そして、本発明のレーザ加工装置に用いる
高次回折光フィルターは結像レンズの光出射側に設けら
れる必要がある。
【0092】本発明のレーザ加工装置のレーザ発振器で
発振されたレーザは、結像スリットまたは結像フィルタ
ーを透過することにより、または結像フィルターで反射
されることにより、レーザのビームが回折をおこすこと
により、結像面で本来焦点を結ぶべき所定の結像以外の
部位においても高次回折光が焦点を結び、その結果レー
ザ加工の正確さが損なわれる傾向がある。
【0093】そこで、本発明のレーザ加工装置の高次回
折光フィルターは、結像レンズの光出射側に設け、高次
回折光フィルターによって高次回折光が遮蔽、吸収、反
射などされた結果、結像面において所定の結像を結び、
正確なレーザ加工が行なわれるようにする必要がある。
【0094】<レーザの波長選択性と結像面内強度分布
>本発明のレーザ加工装置は、被加工物に対して波長選
択性のあるレーザを出射することができ、該レーザの結
像面における面内強度分布が一定であることが好まし
い。
【0095】ここで、被加工物に対する波長選択性と
は、被加工物の被加工部位の材質に選択的に吸収され、
被加工部位以外の部位の材質には吸収されにくい波長を
有することをいう。すなわち、被加工部位以外の部位の
材質を透過する、あるいは被加工部位以外の部位の材質
には反射されるような波長を有することをいう。
【0096】本発明のレーザ加工装置は、被加工物の被
加工部位の材質および被加工部位以外の部位の材質の材
質に応じたレーザ発振器およびレーザ発振条件を用いる
ことにより、被加工物に対する波長選択性のあるレーザ
を出射することができる。たとえば、YAGレーザ発振
器を用いた場合には、基本波レーザ、第2高調波、第3
高調波などを選択することにより、被加工物に対する波
長選択性のあるレーザを出射することができる。
【0097】また、結像面における面内強度分布が一定
であるとは、被加工物の表面におけるレーザビームの結
像面において、どの一点を採っても、レーザのエネルギ
ー強度がほぼ一定であることをいう。
【0098】本発明のレーザ加工装置は、レーザ発振器
と、集光レンズと、結像スリットまたは結像フィルター
と、結像レンズと、高次回折光フィルターとを有するレ
ーザ加工装置であって、結像スリットまたは結像フィル
ターは結像レンズの光入射側に設けられ、高次回折光フ
ィルターは結像レンズの光出射側に設けられた構造を有
する。
【0099】それゆえ、本発明のレーザ加工装置は、所
定の結像形に応じた結像スリットまたは結像フィルター
を選択することにより、結像形に応じた断面を有するレ
ーザビームを出射することができ、かつ結像スリットま
たは結像フィルターによって生じた高次回折光に対応し
た高次回折光フィルターを設けることにより、結像面内
における面内強度分布が一定であるレーザビームを出射
することができる。
【0100】そのため、本発明のレーザ加工装置は、レ
ーザの照射による被加工物の被加工部位以外の部位の一
部損傷を防ぐことができ、任意の結像を得ることがで
き、かつ短時間のうちに正確に被加工物の被加工部位を
選択的に加工することができる。
【0101】<半導体素子の製造方法>本発明は、本発
明のレーザ加工装置から出射されるレーザを照射するこ
とによりパターニングを行なう工程を含むことを特徴と
する半導体素子の製造方法を含む。
【0102】ここで、半導体素子とは、特に限定され
ず、一般に電気関連、電子関連、情報関連、エネルギー
関連などの多くの産業分野において用いられる半導体を
用いた電気素子を示すものとする。
【0103】また、パターニングとは、半導体素子を構
成する金属材料や半導体材料などにレーザを照射してス
クライビング、エッチング、トリミングなどを施すこと
などを示すものとする。
【0104】本発明のレーザ加工装置は、所定の結像形
に応じた結像スリットまたは結像フィルターを選択する
ことにより、結像形に応じた断面を有するレーザビーム
を出射することができ、かつ結像スリットまたは結像フ
ィルターによって生じた高次回折光に対応した高次回折
光フィルターを設けることにより、結像面内における面
内強度分布が一定であるレーザビームを出射することが
できる。
【0105】そのため、本発明のレーザ加工装置は、半
導体素子のパターニング工程において、レーザの照射に
よる被加工被加工部位以外の部位の一部損傷を防ぐこと
ができ、任意の結像を得ることができ、かつ短時間のう
ちに正確に被加工物の被加工部位を選択的に加工するこ
とができる。
【0106】よって、半導体素子の製造工程において、
本発明のレーザ加工装置から出射されるレーザを照射す
ることにより、低い製造コストで高品質の半導体素子を
製造することができる。
【0107】<太陽電池素子の製造方法>本発明は、本
発明のレーザ加工装置から出射されるレーザを照射する
ことによりパターニングを行なう工程を含むことを特徴
とする太陽電池素子の製造方法を含む。
【0108】ここで、太陽電池素子とは、特に限定され
ず、一般に太陽光をはじめとする可視光を照射すること
により起電力を発生することのできる光電変換素子を示
すものとする。
【0109】また、パターニングとは、太陽電池素子を
構成する金属材料や半導体材料などにレーザを照射して
スクライビング、エッチング、トリミングなどを施すこ
となどを示すものとする。
【0110】本発明のレーザ加工装置は、所定の結像形
に応じた結像スリットまたは結像フィルターを選択する
ことにより、結像形に応じた断面を有するレーザビーム
を出射することができ、かつ結像スリットまたは結像フ
ィルターによって生じた高次回折光に対応した高次回折
光フィルターを設けることにより、結像面内における面
内強度分布が一定であるレーザビームを出射することが
できる。
【0111】そのため、本発明のレーザ加工装置は、太
陽電池素子のパターニング工程において、レーザの照射
による被加工被加工部位以外の部位の一部損傷を防ぐこ
とができ、任意の結像を得ることができ、かつ短時間の
うちに正確に被加工物の被加工部位を選択的に加工する
ことができる。
【0112】よって、太陽電池素子の製造工程におい
て、本発明のレーザ加工装置から出射されるレーザを照
射することにより、低い製造コストで高品質の太陽電池
素子を製造することができる。
【0113】<集積型太陽電池素子の製造方法>本発明
の太陽電池素子の製造方法は、絶縁透光性基板、表面電
極、光電変換層および裏面電極を有する複数の発電領域
を備えており、該光電変換層および該裏面電極を貫通す
ることにより複数の発電領域同士を互いに分割する裏面
電極分離ラインを有し、該裏面電極分離ラインにより分
割された発電領域同士は互いに直列接続および/または
並列接続されている太陽電池素子の製造方法であって、
本発明のレーザ加工装置から出射されるレーザを照射す
ることにより該裏面電極分離ラインを形成する工程を含
むことを特徴とする太陽電池素子の製造方法であること
が望ましい。
【0114】このような、絶縁透光性基板、表面電極、
光電変換層および裏面電極を有する複数の発電領域を備
えており、該光電変換層および該裏面電極を貫通するこ
とにより複数の発電領域同士を互いに分割する裏面電極
分離ラインを有し、該裏面電極分離ラインにより分割さ
れた発電領域同士は互いに直列接続および/または並列
接続されている太陽電池素子を一般に、集積型の太陽電
池素子と呼称する。
【0115】そして、このような集積型の太陽電池素子
の製造工程においても、本発明のレーザ加工装置から出
射されるレーザを照射することにより、レーザの照射に
よる被加工被加工部位以外の部位の一部損傷を防ぐこと
ができ、任意の結像を得ることができ、かつ短時間のう
ちに正確に被加工物の被加工部位を選択的に加工するこ
とができる。
【0116】よって、このような集積型の太陽電池素子
の製造工程においても、本発明のレーザ加工装置から出
射されるレーザを照射することにより、低い製造コスト
で高品質の太陽電池素子を製造することができる。
【0117】<絶縁透光性基板>本発明の集積型の太陽
電池素子の製造方法において用いる絶縁透光性基板(本
明細書において、本発明に用いる絶縁透光性基板とも呼
称する)は、絶縁性および透光性を有していれば、特に
限定されず、一般に積層型太陽電池素子に用いられる基
板を使用することができる。本発明に用いる絶縁透光性
基板の具体例としては、ガラス、石英、透明性を有する
プラスチックなどを材質として用いた基板が挙げられ
る。
【0118】ただし、本発明に用いる絶縁透光性基板
は、全ての部位が絶縁性を有する必要はなく、少なくと
も電極形成面が絶縁されていれば使用可能である。すな
わち、導電性の基板であっても、電極形成面を絶縁物で
覆うことにより、本発明に用いる絶縁透光性基板として
使用することができる。
【0119】<表面電極>本発明の集積型の太陽電池素
子の製造方法において用いる表面電極(本明細書におい
て、本発明の表面電極とも呼称する)は、透光性基板上
に形成される。ここで、本発明に用いる表面電極は、導
電性および透光性を有していれば、特に限定されず、一
般に太陽電池素子に用いられる表面電極を使用すること
ができる。本発明に用いる表面電極としては、透明導電
膜からなる表面電極が好ましい。ここで、透明導電膜と
は、透明性および導電性を有する材質からなる膜状の電
極を示すものとする。
【0120】本発明に用いる表面電極の具体例として
は、酸化スズや酸化亜鉛やITOなどを材質として用い
た透明導電膜が挙げられる。ここで、酸化スズには、S
nO2だけでなく、Snmn(ここで、mおよびnは正
の整数)で表わされる各種組成の酸化スズが含まれるも
のとする。また、酸化亜鉛には、ZnOだけでなく、Z
m'n'(ここで、m’およびn’は正の整数)で表わ
される各種組成の酸化亜鉛が含まれるものとする。ま
た、ITOとは、Indium Tin Oxideの
略称であり、インジウムスズ酸化物を意味する。
【0121】ここで、ITOとSnO2とも透光性の点
では特に差異は少ないが、一般的に比抵抗の低さではI
TOが優れており、化学的な安定性ではSnO2が優れ
ていると考えられている。また、ZnOはITOに比べ
て材料コストが低いという利点がある。さらに、SnO
2はa−Si膜形成時にプラズマによる表面の還元が問
題となる場合があるのに対してZnOは耐プラズマ性が
高い。また、ZnOには長波長光の透過率も高いという
利点もある。
【0122】また、本発明に用いる表面電極がZnOを
含む材質を用いた透明導電膜からなる場合には、透明導
電膜の低抵抗化のためにAl、Gaなどの不純物をドー
プしてもよい。これらの不純物のうちでは、より低抵抗
化する性質に優れたGaをドープすることが好ましい。
【0123】さらに、本発明に用いる表面電極が透明導
電膜の場合には、その表面に凹凸が形成されていること
が好ましい。透明導電膜の表面に微小な凹凸を形成する
ことにより、太陽電池素子に設けられた発電領域内にお
いて光を散乱させることができ、光の光路長が伸びるこ
ととなる。そのため、透明導電膜の表面に凹凸がない場
合に比べて、太陽電池素子の発電効率を向上させること
ができる。
【0124】ここで、本発明に用いる表面電極としての
透明導電膜の表面の凹凸は、エッチング溶液によるエッ
チングを用いることにより簡便かつ正確に形成すること
が可能である。
【0125】<光電変換層>本発明の集積型の太陽電池
素子の製造方法において用いる光電変換層(本明細書に
おいて、本発明に用いる光電変換層とも呼称する)は、
半導体膜を積層した構造を有し、光電変換性を有してい
れば、特に限定されず、一般に太陽電池素子に用いられ
る光電変換層を使用することができる。
【0126】ここで、本発明に用いる光電変換層の材質
としては、半導体であれば、一般に太陽電池素子の光電
変換層に用いられる材質を用いることができるが、具体
例としては、Si、Ge、SiGe、SiC、SiN、
GaAs、SiSnなどの半導体を使用することができ
る。これらのうちでは、シリコン系の半導体であるS
i、SiGe、SiCなどを用いることが好ましい。
【0127】また、本発明に用いる光電変換層の材質で
ある半導体は、非晶質半導体であることが好ましい。こ
こで、非晶質半導体としては、局在準位の原因となるダ
ングリングボンドを水素で終端した化学構造を有する、
水素化された半導体を用いることが好ましい。
【0128】さらに、本発明に用いる光電変換層の半導
体膜は、一般に、p型、i型、n型の三層構造からな
る。さらに、本発明に用いる光電変換層としては、水素
化アモルファスシリコン系半導体(a−Si:H)のp
−i−n型の三層構造からなる光電変換層が特に好まし
い。また、本発明に用いる光電変換層としては、水素化
多結晶シリコン系半導体(μc−Si:H)のp−i−
n型の三層構造からなる光電変換層も同様に好ましい。
【0129】そして、本発明の太陽電池素子の製造方法
により製造される太陽電池素子のうち集積型の太陽電池
素子(本明細書において、本発明による集積型の太陽電
池素子とも呼称する)に設けられる発電領域は単層であ
ってもよく積層された2以上の光電変換層を有していて
もよい。
【0130】すなわち、本発明による太陽電池素子に設
けられた発電領域は、単層であってもよいし、2つの光
電変換層が中間透明導電膜を介して積層した、いわゆる
タンデム構造であってもよいし、3つ以上の光電変換層
が中間透明導電膜を介して積層した構造であってもよ
い。また、積層された2以上の光電変換層は、同じ構造
および材質の光電変換層であってもよいが、異なる構造
および材質の光電変換層であってもよい。
【0131】ここで、本発明による太陽電池素子に設け
られた発電領域が、2つの光電変換層が中間透明導電膜
を介して積層したタンデム構造である場合には、中間透
明導電膜と接触する光電変換層であって、かつ中間透明
導電膜よりも光入射面側に設けられる光電変換層である
上部光電変換層(本明細書において、上部セルとも呼称
する)は、a−Si:Hのp−i−n型の三層構造であ
ることが好ましい。
【0132】また、本発明による太陽電池素子が、上記
のようなタンデム構造を有する場合には、中間透明導電
膜と接触する光電変換層であって、かつ中間透明導電膜
よりも光入射面の反対側に設けられる光電変換層である
下部光電変換層(本明細書において、下部セルとも呼称
する)は、μc−Si:Hのp−i−n型の三層構造で
あることが好ましい。
【0133】ここで、本発明による太陽電池素子が中間
透明導電膜を有する場合には、この中間透明導電膜(本
明細書において、本発明に用いる中間透明導電膜とも呼
称する)は、表面電極と裏面電極とを電気的に接続する
部材に接触しない形状を有することが望ましい。
【0134】また、本発明に用いる中間透明導電膜は、
積層された2以上の光電変換層の間に形成されることが
好ましい。ここで、本発明に用いる中間透明導電膜は、
導電性および透光性を有していれば、特に限定されず、
一般に太陽電池素子に用いられる透明導電膜を使用する
ことができる。具体例としては、酸化スズや酸化亜鉛や
ITOなどを材質として用いた中間透明導電膜が挙げら
れる。
【0135】さらに、本発明に用いる中間透明導電膜
は、その表面に凹凸が形成されていることが好ましい。
中間透明導電膜の表面に微小な凹凸を形成することによ
り、太陽電池素子に設けられた発電領域内において光を
散乱させることができ、光の光路長が伸びることとな
る。そのため、中間透明導電膜の表面に凹凸がない場合
に比べて、太陽電池素子の発電効率を向上させることが
できる。
【0136】ここで、本発明に用いる中間透明導電膜の
表面の凹凸は、エッチング溶液によるエッチングを用い
ることにより簡便かつ正確に形成することが可能であ
る。
【0137】<裏面電極>本発明の集積型の太陽電池素
子の製造方法において用いる裏面電極(本明細書におい
て、本発明に用いる裏面電極とも呼称する)は、光電変
換層の光入射面の反対側の表面に形成される。また、本
発明に用いる裏面電極は、特に限定されず、導電性を有
していれば、一般に太陽電池素子に用いられる裏面電極
を使用することができる。
【0138】さらに、本発明に用いる裏面電極は、裏面
透明電極および裏面金属電極を積層したものであること
が好ましい。また、本発明に用いる裏面電極は、裏面金
属電極のみからなるものであってもよく、裏面透明電極
は割愛してもよいが、光の散乱を促して高い発電効率を
得るためには、裏面透明電極もあった方が望ましい。
【0139】そして、本発明に用いる裏面金属電極の具
体例としては、光反射性に優れたAgやAlやCrなど
を材質として用いた金属膜が挙げられる。
【0140】また、本発明に用いる裏面透明電極の具体
例としては、酸化スズや酸化亜鉛やITOなどを材質と
して用いた透明導電膜が挙げられる。ここで、酸化スズ
には、SnO2だけでなく、Snmn(ここで、mおよ
びnは正の整数)で表わされる各種組成の酸化スズが含
まれるものとする。また、酸化亜鉛には、ZnOだけで
なく、Znm'n'(ここで、m’およびn’は正の整
数)で表わされる各種組成の酸化亜鉛が含まれるものと
する。また、ITOとは、Indium TinOxi
deの略称であり、インジウムスズ酸化物を意味する。
【0141】ここで、ITOとSnO2とも透光性の点
では特に差異は少ないが、一般的に比抵抗の低さではI
TOが優れており、化学的な安定性ではSnO2が優れ
ていると考えられている。また、ZnOはITOに比べ
て材料コストが低いという利点がある。さらに、SnO
2はプラズマなどによる表面の還元が問題となる場合が
あるのに対してZnOは耐プラズマ性が高い。また、Z
nOには長波長光の透過率も高いという利点もある。
【0142】また、本発明に用いる裏面透明電極がZn
Oを含む材質からなる透明導電膜からなる場合には、透
明導電膜の低抵抗化のためにAl、Gaなどの不純物を
ドープしてもよい。これらの不純物のうちでは、より低
抵抗化する性質に優れたGaをドープすることが好まし
い。
【0143】さらに、本発明に用いる裏面透明電極は、
その表面に凹凸が形成されていることが好ましい。裏面
透明電極の表面に微小な凹凸を形成することにより、太
陽電池素子に設けられた発電領域内において光を散乱さ
せることができ、光の光路長が伸びることとなる。その
ため、裏面透明電極の表面に凹凸がない場合に比べて、
太陽電池素子の発電効率を向上させることができる。
【0144】そして、本発明に用いる裏面透明電極の表
面の凹凸は、エッチング溶液によるエッチングを用いる
ことにより簡便かつ正確に形成することが可能である。
【0145】<レジスト膜>本発明による集積型の太陽
電池素子は、裏面電極の光入射面の反対側の表面にレジ
スト膜(本明細書において、本発明に用いるレジスト膜
とも呼称する)が積層されていることが好ましい。
【0146】<集積構造>本発明による集積型の太陽電
池素子は、絶縁透光性基板、表面電極、光電変換層およ
び裏面電極を有する複数の発電領域を備えており、該光
電変換層および該裏面電極を貫通することにより複数の
発電領域同士を互いに分割する裏面電極分離ラインを有
し、該裏面電極分離ラインにより分割された発電領域同
士は互いに直列接続および/または並列接続されてい
る。
【0147】ここで、本発明による集積型の太陽電池素
子において、複数の発電領域が互いに直列接続および/
または並列接続されている構造(本明細書において、集
積構造とも呼称する)を実現するためには、隣接する発
電領域間で、表面電極同士、中間透明導電膜同士、光電
変換層同士、裏面電極同士がそれぞれ完全に分離されて
いる必要がある。また、本発明による集積型の太陽電池
素子が集積構造を実現するためには、所定の隣接する発
電領域間で、表面電極と裏面電極が接続されていること
が必要である。
【0148】それゆえ、本発明による集積型の太陽電池
素子は、図1に示すように、表面電極を分離するための
開口部7(本明細書において、表面電極分離ラインとも
呼称する)、表面電極2と裏面電極50とを電気的に接
続するための開口部8(本明細書において、コンタクト
ラインとも呼称する)および裏面電極を分離するための
開溝9(本明細書において、裏面電極分離ラインとも呼
称する)を有する必要がある。
【0149】なお、これらの開口部の内部は、空隙であ
る場合もあり、半導体や電極などが膜状で存在あるいは
充填されている場合もあり得るが、どちらの場合にも、
本明細書においては、開口部と呼称することとする。
【0150】ここで、表面電極分離ラインの内部は空隙
であってもよいが、不導体または半導体で充填されてい
てもよく、製造工程の簡略化の面からは、光電変換層と
同じ材質の半導体で充填されていることが好ましい。
【0151】ここで、コンタクトラインは空隙ではな
く、導電性物質が充填されている必要があるが、この導
電性物質の材質は、特に限定されず、一般に太陽電池素
子に用いられる導電性物質を用いることができるが、製
造工程の簡略化という面からは、裏面電極と同一である
ことが好ましい。また、太陽電池素子内部で光の散乱を
促進して発電効率を向上させるためには、このコンタク
トラインに充填される導電性物質の材質は、裏面透明電
極と同一の材質を含むことが特に好ましい。
【0152】また、本発明による集積型の太陽電池素子
が、裏面電極の光入射面と反対側の表面にレジスト膜を
有する場合には、裏面電極分離ラインは、光電変換層、
裏面電極に加えて、レジスト膜も貫通することが好まし
い。
【0153】ここで、裏面電極分離ラインの内部は空隙
であってもよいが、透光性を有する不導体または半導体
で充填されていてもよく、製造工程の簡略化の面から
は、空隙であることが好ましい。
【0154】<光透過型太陽電池素子>本発明の太陽電
池素子の製造方法は、光電変換層および裏面電極を貫通
することにより絶縁透光性基板側から入射した光の一部
を裏面側に透過せしめることのできる透光性開口部を有
することを特徴とする上記の太陽電池素子の製造方法で
あることが望ましい。
【0155】ここで、本発明による集積型の太陽電池素
子に設けられる透光性開口部(本明細書において、本発
明に設けられる透光性開口部とも呼称する)とは、太陽
電池素子の光入射側の表面からその反対側の表面まで光
を透過させる部位を示す。よって、本発明による集積型
の太陽電池素子においては、絶縁透光性基板および表面
電極は透光性を有しているので、本発明に設けられる透
光性開口部は、光電変換層および裏面電極を貫通する開
口部であればよい。
【0156】なお、本発明による集積型の太陽電池素子
が、裏面電極の光入射面と反対側の表面にレジスト膜を
有する場合には、本発明に設けられる透光性開口部は、
光電変換層、裏面電極に加えて、レジスト膜も貫通する
ことが好ましい。
【0157】ここで、本発明に設けられる透光性開口部
の内部は空隙であってもよいが、透光性を有する不導体
または半導体で充填されていてもよく、製造工程の簡略
化の面からは、空隙であることが好ましい。
【0158】ここで、本発明に設けられる透光性開口部
は、裏面電極分離ラインと同一の開口部であってもよ
く、裏面電極分離ラインとは不連続であってもよい。た
だし、光透過型の太陽電池素子が均一な透光性を有する
ためには、透光性開口部と裏面電極分離ラインとは不連
続であることがより好ましい。
【0159】また、図2に示すように、本発明に設けら
れる透光性開口部10が裏面電極分離ライン9とは不連
続である場合には、この透光性開口部は10は、裏面電
極分離ライン9に平行な直線状の形状であることが好ま
しい。なお、透光性開口部10が裏面電極分離ライン9
と不連続であり、かつ裏面電極分離ライン9に平行な直
線状の形状であることにより、透光性開口部10が発電
領域内で裏面電極膜50を表面電極2と電気的に非接続
な状態となることを防ぐことができる。
【0160】また、本発明に設けられる透光性開口部
は、1つの発電領域あたり複数本設けられていることが
好ましい。このように、直線状の不連続な透光性開口部
が、1つの発電領域あたり複数本設けられることによ
り、太陽電池素子の全面積に占める透光性開口部の開口
率を任意に設定することができる。
【0161】さらに、本発明に設けられる透光性開口部
は、1つの発電領域内においては同一間隔で複数本設け
られていることが好ましい。このように複数本の直線状
の不連続な透光性開口部が1つの発電領域内において同
一間隔で設けられることにより、光透過型の太陽電池素
子において、均一な透光を得ることができる。
【0162】たとえば、本発明に設けられる透光性開口
部は、裏面電極分離ラインに平行かつ不連続な直線状の
形状であって、1つの発電領域あたり同一間隔で複数本
設けられていてもよく、あるいは裏面電極分離ラインに
垂直かつ連続な直線状の形状であって、すべての発電領
域にわたり同一間隔で複数本設けられていてもよい。
【0163】さらに、均一な採光のためには、同一の発
電領域内の透光性開口部は、それぞれ独立した構造であ
ってもよいが、隣り合う透光性開口部同士が接する構
造、あるいは重畳する構造などを採用して、透光性開口
部外周の長さを透光性開口部の断面積に対して比較的小
さくなるようにしても良い。図3に、透光性開口部同士
が重畳して一つの大きな透光性開口部を形成する場合
の、本発明による光透過型太陽電池素子の一例の概略断
面図を示す。
【0164】<裏面封止材料>本発明による光透過型の
太陽電池素子においては、絶縁透光性基板側から入射し
た光の一部が、太陽電池素子の裏面側に透過することが
できるように、透光性の裏面封止材料により裏面側の表
面が被覆されることが好ましい。
【0165】このように、透光性の裏面封止材料を用い
ることにより、裏面側からの湿気などの侵入を防ぎ、耐
候性に優れ、かつ絶縁透光性基板側から入射した光の一
部を裏面側に透光せしめる太陽電池素子が得られる。
【0166】ここで、透光性の裏面封止材料の材質とし
ては、フッ素系樹脂またはガラスなどが挙げられる。
【0167】<光透過型太陽電池素子の製造方法の工程
の流れ>本発明による光透過型の太陽電池素子の製造方
法は、絶縁透光性基板上に表面電極を形成する工程と、
表面電極をパターニングする工程と、表面電極上に光電
変換層を形成する工程と、光電変換層をパターニングす
る工程と、裏面電極膜を形成する工程と、裏面電極およ
び透光性開口部をパターニングする工程とを含むことが
好ましい。
【0168】<表面電極形成工程>本発明による光透過
型の太陽電池素子の製造方法のうち、絶縁透光性基板上
に表面電極を形成する工程(本明細書において、表面電
極形成工程とも呼称する)において、表面電極が透明導
電膜である場合について述べる。
【0169】また、本発明に用いる表面電極が透明導電
膜からなる場合には、表面電極形成工程として、化学的
製法または物理的製法を用いることができる。
【0170】ここで、化学的製法としては、特に限定さ
れるものではないが、たとえば、スプレー法、CVD
法、プラズマCVD法などが挙げられる。一般に、化学
的製法は、塩化物や有機金属化合物の熱分解、酸化反応
によって基板上に酸化膜を形成する方法で、プロセスコ
ストが安いという利点を持つ。
【0171】一方で、物理的製法としては、たとえば、
真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング
法、マグネトロンスパッタリング法などが挙げられる。
一般に、物理的製法は、化学的製法に比べ基板温度が低
く、良質の膜形成が可能であるが、成膜速度が遅く、装
置費用が高くなるなどの傾向を有する。
【0172】<表面電極パターニング工程>本発明によ
る光透過型の太陽電池素子の製造方法のうち、表面電極
をパターニングする工程(本明細書において、表面電極
パターニング工程とも呼称する)においては、表面電極
が透明電極からなる場合には、パターニングの手法は特
に限定されず、正確にパターニングが可能な手法であれ
ば、一般に透明導電膜からなる表面電極のパターニング
に用いられる手法を好適に使用可能である。
【0173】本発明における表面電極パターニング工程
においては、たとえば、樹脂マスクや金属マスクなどを
用いたエッチングによるパターニングを行なってもよ
い。しかし、このような方法では、積層構造の形成に多
くのプロセスを必要とし、しかも取扱い得る基板の寸法
に制約があり、太陽電池の基板内の発電領域の有効面積
が小さくなりやすく、ウェットプロセスのため光電変換
層中にピンホールが発生しやすく、曲面基板ではパター
ニングが難しいなどの問題点を有している。
【0174】そのため、本発明における表面電極パター
ニング工程においては、レーザの照射によるパターニン
グ(本明細書において、レーザパターニングとも呼称す
る)を行なうことが好ましい。このようなレーザパター
ニングを行なうことにより、積層構造の形成に要する工
程の減少を図ることができ、大面積の基板上に太陽電池
素子を製造することができ、曲面状などの任意の形状の
基板上に太陽電池素子の製造が可能であり、太陽電池の
基板内の発電領域の有効面積が増大でき、完全ドライプ
ロセスの確立ができ、連続一貫生産および自動化生産に
適するという利点が得られる。
【0175】また、レーザ射出口と照射面との距離、照
射面におけるレーザの径およびレーザ照射時間などは、
パターニングの形状などに応じて適宜選択されることが
好ましい。
【0176】なお、本発明における表面電極パターニン
グ工程の後、光電変換層および中間透明導電膜の形成工
程を行なう前に、基板および表面電極を純水にて洗浄す
ることが好ましい。
【0177】<光電変換層の形成工程>本発明による光
透過型の太陽電池素子の製造方法のうち、表面電極上に
積層される光電変換層を形成する工程(本明細書におい
て、光電変換層形成工程とも呼称する)においては、化
学的製法または物理的製法を用いることができる。
【0178】ここで、光電変換層形成工程における化学
的製法としては、たとえば、スプレー法、CVD法、プ
ラズマCVD法などが挙げられる。一般に、半導体の化
学的製法は、シランガスなどの原料ガスの熱分解、プラ
ズマ反応などによって基板上に半導体膜を形成する方法
で、プロセスコストが安いという利点を持つ。
【0179】一方、物理的製法としては、たとえば、真
空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング
法、マグネトロンスパッタリング法などが挙げられる。
一般に、物理的製法は、化学的製法に比べ基板温度が低
く、良質の膜形成が可能であるが、成膜速度が遅く、装
置費用が高くなるなどの傾向を有する。
【0180】そして、これらの製造方法のうちでは、品
質などの面から、スパッタリング法を用いることが好ま
しい。
【0181】<光電変換層のパターニング工程>本発明
による光透過型の太陽電池素子の製造方法のうち、光電
変換層をパターニングする工程(本明細書において、光
電変換層のパターニング工程とも呼称する)において
は、パターニングの手法は特に限定されず、正確にパタ
ーニングが可能な手法であれば、一般に光電変換層のパ
ターニングに用いられる手法を好適に使用可能である。
【0182】本発明における光電変換層のパターニング
工程においては、たとえば、樹脂マスクや金属マスクな
どを用いたエッチングによるパターニングを行なっても
よい。しかし、このような方法では、積層構造の形成に
多くのプロセスを必要とし、しかも取扱い得る基板の寸
法に制約があり、太陽電池の基板内の発電領域の有効面
積が小さくなりやすく、ウェットプロセスのため光電変
換層中にピンホールが発生しやすく、曲面基板ではパタ
ーニングが難しいなどの問題点を有している。
【0183】そのため、本発明における光電変換層のパ
ターニング工程においては、レーザの照射による加熱を
利用したパターニング(本明細書において、レーザパタ
ーニングとも呼称する)を行なうことが好ましい。この
ようなレーザパターニングを行なうことにより、積層構
造の形成に要する工程の減少を図ることができ、大面積
の基板上に太陽電池素子を製造することができ、曲面状
などの任意の形状の基板上に太陽電池素子の製造が可能
であり、太陽電池の基板内の発電領域の有効面積が増大
でき、完全ドライプロセスの確立ができ、連続一貫生産
および自動化生産に適するという利点が得られる。
【0184】ここで、本発明における光電変換層のパタ
ーニング工程において、レーザパターニングに用いるレ
ーザとしては、表面電極が透明導電膜からなる場合に
は、透明導電膜に悪影響を与えることを避けるために、
透明導電膜の透過性に優れた可視光領域のレーザを用い
ることが好ましく、たとえば、第2高潮波YAGレーザ
を用いることが好ましい。
【0185】また、レーザ射出口と照射面との距離、照
射面におけるレーザの径およびレーザ照射時間などは、
パターニングの形状などに応じて適宜選択されることが
好ましい。
【0186】<裏面電極形成工程>本発明による光透過
型の太陽電池素子の製造方法のうち、裏面電極膜を形成
する工程(本明細書において、裏面電極形成工程とも呼
称する)は、裏面電極の材質および構造によって異なる
ものとなる。
【0187】ここで、前述のように、本発明に用いる裏
面電極は、裏面透明電極および裏面金属電極を積層した
ものであることが好ましい。また、本発明に用いる裏面
電極は、裏面金属電極のみからなるものであってもよ
く、裏面透明電極は割愛してもよいが、光の散乱を促し
て高い発電効率を得るためには、裏面透明電極もあった
方が望ましい。
【0188】そして、本発明に用いる裏面金属電極の製
造方法としては、物理的製法を用いることが好ましい。
物理的製法としては、たとえば、真空蒸着法、イオンプ
レーティング法、スパッタリング法、マグネトロンスパ
ッタリング法などが挙げられる。そして、これらの製造
方法のうちでは、品質などの面から、スパッタリング法
を用いることが好ましい。
【0189】また、本発明に用いる裏面透明電極の製造
方法としては、化学的製法または物理的製法を用いるこ
とができる。
【0190】ここで、化学的製法としては、たとえば、
スプレー法、CVD法、プラズマCVD法などが挙げら
れる。一般に、化学的製法は、塩化物や有機金属化合物
の熱分解、酸化反応によって基板上に酸化膜を形成する
方法で、プロセスコストが安いという利点を持つ。
【0191】一方、物理的製法としては、たとえば、真
空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング
法、マグネトロンスパッタリング法などが挙げられる。
一般に、物理的製法は、化学的製法に比べ基板温度が低
く、良質の膜形成が可能であるが、成膜速度が遅く、装
置費用が高くなるなどの傾向を有する。
【0192】そして、これらの製造方法のうちでは、品
質などの面から、スパッタリング法を用いることが好ま
しい。
【0193】<裏面電極分離ラインおよび透光性開口部
の形成工程>本発明の太陽電池素子の製造方法は、表面
電極を透過する波長を有するレーザを照射することによ
り裏面電極分離ラインおよび/または透光性開口部を形
成することを特徴とする上記の太陽電池素子の製造方法
であることが好ましい。
【0194】上記のように表面電極を透過する波長を有
するレーザを照射することにより、レーザの照射による
表面電極の一部損傷を防ぐことができ、裏面電極などの
残渣を発生させず、任意の結像を得ることができ、短時
間のうちに正確に光電変換層および裏面電極をスクライ
ブすることができ、その結果、低い製造コストで品質の
高い太陽電池素子を製造することができる。
【0195】ただし、この場合、表面電極の材質によ
り、該材質に適したレーザの波長は異なるので、適宜相
応しい波長を選択する必要がある。
【0196】なお、本発明に用いる表面電極が、酸化ス
ズや酸化亜鉛やITOなどを材質とする透明導電膜から
なる表面電極の場合には、照射される本発明のレーザの
波長は500nm以上であることが好ましい。また、こ
の波長は600nm以下であることが好ましい。それゆ
え、第2高調波YAGレーザ(波長532nm)を用い
ることが特に好ましい。
【0197】この波長が500nm未満の場合には、表
面電極を損傷し、太陽電池の特性を下げる原因になると
いう傾向があり、この波長が600nmを超えると、光
電変換層での吸収が十分でなくなる可能性があり、光電
変換層および裏面電極がスクライブできなくなる傾向が
ある。
【0198】また、本発明に用いるレーザは、レーザ発
振器の出射口におけるビーム径が100μm以上である
ことが好ましい。また、このビーム径は3mm以下であ
ることが好ましい。
【0199】このビーム径が100μm未満の場合に
は、Qスイッチ周波数の高い発振器を使用しなければな
らなくなり、レーザの出力が低下する傾向があり、この
ビーム径が3mmを超えると、レーザのパワー密度が下
がる傾向がある。
【0200】そして、本発明の太陽電池素子の製造方法
の中で、裏面電極分離ラインおよび透光性開口部の形成
工程においては、結像面におけるレーザの結像形が長方
形となる結像スリットまたは結像フィルターを用いるこ
とが望ましい。
【0201】このような結像面におけるレーザの結像形
が長方形となる結像スリットまたは結像フィルターを用
いることにより、裏面電極分離ラインおよび透光性開口
部の端部の直線性を出すことができるため、短時間のう
ちに正確に光電変換層および裏面電極をスクライブする
ことができ、裏面電極などの残渣も残存することが少な
くなる。そして、その結果、低い製造コストで品質の高
い太陽電池素子を製造することができる。
【0202】また、本発明の太陽電池素子の製造方法の
中で、裏面電極分離ラインおよび透光性開口部の形成工
程においては、この結像面におけるレーザの結像倍率
は、0.2以上であることが好ましい。また、この結像
倍率は、23以下であることが好ましい。この結像倍率
が0.2未満の場合には、機械的な調整が難しい傾向が
あり、この結像倍率が23を超えると、焦点深度が小さ
くなる傾向がある。
【0203】また、本発明の太陽電池素子の製造方法の
中で、裏面電極分離ラインおよび透光性開口部の形成工
程においては、この結像面におけるレーザの結像の最大
径は20μm以上であることが好ましい。また、この最
大径は500μm以下であることが好ましい。
【0204】この最大径が20μm未満の場合には、レ
ーザのパワー密度が大きくなり、透明導電膜を損傷する
傾向があり、この最大径が500μmを超えると、集積
損失幅が増加し、太陽電池の出力が低下する傾向があ
る。
【0205】また、本発明の太陽電池素子の製造方法の
中で、裏面電極分離ラインおよび透光性開口部の形成工
程においては、この結像面におけるレーザの総出力は1
00mW以上であることが好ましい。また、この総出力
は1W以下であることが好ましい。
【0206】この総出力が100mW未満の場合には、
光電変換膜および裏面電極膜の残渣が残る傾向があり、
この総出力が1Wを超えると、レーザのパワー密度が大
きくなり、透明導電膜を損傷する傾向がある。
【0207】また、レーザ射出口と照射面との距離およ
びレーザ照射時間などは、形成される裏面電極分離ライ
ンおよび透光性開口部の形状などに応じて適宜選択され
ることが好ましい。
【0208】なお、本発明における裏面電極分離ライン
および透光性開口部の形成工程の後、基板および表面電
極を純水にて洗浄することが好ましい。
【0209】<レジスト膜形成工程>本発明による光透
過型の太陽電池素子がレジスト膜を有する場合には、レ
ジスト膜を形成する工程(本明細書において、レジスト
膜形成工程とも呼称する)においては、レジスト膜の材
質を溶解した溶液を裏面電極膜上に塗布して乾燥させる
方法を用いることが好ましい。
【0210】ジスト膜の材質を溶解した溶液を裏面電極
膜上に塗布する際には、膜厚が薄くかつ均一になるよう
に塗布することが望ましい。塗布の方法としては、特に
限定されるものではないが、たとえば、スピンコーター
方式、スプレー方式などが挙げられる。また、レジスト
膜の乾燥方法は、特に限定されるものではない。
【0211】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説
明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0212】<実施例1>実施例1の太陽電池素子の製
造方法について、図1を用いて説明する。まず、あらか
じめ透明導電膜からなる表面電極2を形成したガラス基
板からなる絶縁透光性基板1を用意した。
【0213】次に、基本波YAGレーザ(波長1064
nm)を用いて表面電極2のパターニングを行った。こ
の際、レーザ光を絶縁透光性基板1側から入射させるこ
とにより、表面電極2は短冊状に分離されて表面電極分
離ライン7が形成された。
【0214】この後、該製造途中の太陽電池素子を純水
で洗浄し、プラズマCVD法により光電変換層3を形成
した。光電変換層3は、a−Si:Hからなるp層、a
−Si:Hからなるi層、a−Si:Hからなるn層か
らなり、3層の合計の厚みは500nm程度となるよう
にした。
【0215】次に、第2高調波YAGレーザなどを用い
て、光電変換層3のみパターニングを行った。この際、
絶縁透光性基板1側からレーザを入射させることによ
り、光電変換層3は短冊状に分離されて光電変換層分離
ライン8が形成された。
【0216】さらにこの後、RFマグネトロンスパッタ
リング法により裏面透明電極4を積層し、RFマグネト
ロンスパッタリング法により裏面金属電極膜5を積層す
ることにより、裏面電極50を形成した。裏面透明電極
4には比抵抗が小さく透光性が高いZnOを用い、裏面
金属電極に5は反射率の高い材質であるAgを用いた。
また、裏面透明電極膜4の膜厚は100nm程度、裏面
電極膜5の膜厚は300nm程度となるようにした。
【0217】次に、レジスト膜6を裏面金属膜5上に5
μm程度の厚さとなるように塗布し乾燥させた。レジス
ト膜の材質を含む溶液を塗布する際、膜厚を薄くかつ均
一に形成し、塗布後乾燥炉で乾燥させた。
【0218】さらに、図4に概略図を示すような構造を
有する本実施例のレーザ加工装置を使用して、裏面電極
50のパターニングを行った。この際、レーザによる表
面電極2の一部損傷を避けるため、また同時に光電変換
層3を選択的に除去するために、波長選択性のある第2
高調波YAGレーザを絶縁透光性基板1側から入射させ
ることにより、裏面電極膜50を短冊状に分離し、同時
に光電変換層3も一部貫通する形で除去して、裏面電極
分離ライン9を形成した。
【0219】ここで、第2高調波YAGレーザの波長は
532nmであり、表面電極2を透過する波長のレーザ
である。これに対し、光電変換層3を構成するアモルフ
ァスシリコンは、532nmの波長のレーザをほとんど
吸収する。その結果、表面電極2にほとんど損傷を与え
ることなく、裏面電極分離ライン9を形成することがで
きた。
【0220】このようにして、絶縁透光性基板1、表面
電極2、光電変換層3、裏面電極50を備え、絶縁透光
性基板1上で複数の発電領域に分割され、直列接続され
た集積型の太陽電池素子で、裏面電極50上にレジスト
膜6が積層され、裏面電極分離ライン9により、レジス
ト膜6、裏面電極50および光電変換層3が、ともに略
同一形状にパターニングされた太陽電池素子を得ること
ができた。
【0221】その後、発電領域内に透光性開口部10を
裏面電極分離ライン9と同様の方法でパターニングして
形成した。ここで、裏面電極分離ライン9と異なり、光
性開口部10の場合は、発電領域内で裏面電極50を分
離して非接続状態になることを避けるため、不連続な線
状となるように形成した。
【0222】すなわち、650mm×455mmの大き
さの太陽電池素子の長手方向の端から10mm〜116
mm、136mm〜242mm、262mm〜368m
m、388mm〜494mm、514mm〜620mm
の領域に、幅7.08mmの短冊状に分割された発電領
域を設け、その発電領域内に、裏面電極分離ライン9に
平行になるように、幅0.08mmの透光性開口部10
を、約0.064mm〜0.065mmのピッチで1発
電領域あたり10本形成した。図2に、透光性開口部1
0を形成後の太陽電池素子の概略断面図を示す。
【0223】また、本実施例では、裏面電極分離ライン
9および透光性開口部10を形成するために、本実施例
のレーザ加工装置を用いて、第2高調波YAGレーザを
照射した。図4に本実施例のレーザ加工装置の概略図を
示す。
【0224】そして、本実施例のレーザ加工装置におい
ては、レーザ発振器11の出射口でのビーム径が200
μmである第2高調波YAGレーザを光軸に沿って84
0mm離れた集光レンズ12に入射させて集光し、その
後光軸に沿って100mm離れた結像スリット13を透
過させ、次に光軸に沿って280mm離れた結像レンズ
14にて再び集光し、そして光軸に沿って10mm離れ
た高次回折光フィルター15を介して光軸に沿って15
0mm離れた太陽電池素子16上に結像サイズ100μ
mの大きさでレーザビームを入射させることにより、裏
面電極分離ライン9および透光性開口部10を形成し
た。
【0225】なお、本実施例のレーザ加工装置は、結像
スリット13、結像レンズ14および高次回折光フィル
ター15を備えているため、レーザビームの結像形を長
方形にすることができ、裏面電極分離ライン9および透
光性開口部10の端部を直線にすることができた。ま
た、このことで、容易に集積損失幅の計算ができた。
【0226】また、本実施例のレーザ加工装置におい
て、レーザビームの結像倍率を0.5にすることで加工
焦点深度を深くすることができ、反りが±4mm程度の
絶縁透光性基板1を用いたが、十分対応可能であった。
【0227】さらに、太陽電池素子の集積損失幅を低減
させるために、本発明のレーザ加工装置において、レー
ザ発振器の出射口でのビーム径を200μmとした。
【0228】そして、本実施例では、レーザビームのレ
ーザパワーを400mWとしたため、表面電極2をほと
んど損傷させず、集積損失幅を低減でき、同時に直列抵
抗の増加も防ぐことができた。
【0229】また、本実施例のレーザ加工装置において
は、表面電極2に損傷を与えない透光性開口部10を形
成するために高次回折光フィルター15を挿入した。高
次回折光フィルター15がない場合の焦点位置以外での
結像は図5に示すとおりであった。なお、図5におい
て、17a〜17yは、レーザの焦点位置以外での結像
を示す。
【0230】さらに、高次回折光フィルター15を挿入
した場合の焦点位置以外での結像は図6に示すとおりで
あった。なお、図6において、18a〜18eは、レー
ザの焦点位置以外での結像を示す。
【0231】図6に示すように、高次回折光以上の回折
光を取り除くことで、焦点位置での面内光強度分布が抑
えられ、表面電極2にほとんど損傷を与えないで、透光
性開口部10を形成できた。なお、本実施例では、高次
回折光フィルター15として二次回折光フィルターを用
いた。
【0232】この結果得られた、60段の集積型薄膜太
陽電池内であって、600本の透光性開口部10がパタ
ーニングされた、本実施例の集積型薄膜太陽電池(基板
サイズ650mm×455mm)の特性を、下記の評価
方法を用いて評価したところ、AMl.5(100mW
/cm2)の条件において、Isc=0.546
[A]、Voc=54.237[V]、F.F.=0.
608、Pmax=18.017[W]という結果を得
た。
【0233】上記の実施例1の結果より、結像スリッ
ト、結像レンズおよび高次回折光フィルターを有する、
実施例1のレーザ加工装置を用いた場合の太陽電池素子
の製造方法においては、高品質の太陽電池素子が得られ
たことがわかる。
【0234】今回開示された実施の形態および実施例は
すべての点で例示であって制限的なものではないと考え
られるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではな
くて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と
均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれるこ
とが意図される。
【0235】
【発明の効果】上記の結果より、本発明のレーザ加工装
置は、レーザの照射による表面電極の一部損傷を防ぐこ
とができ、被加工物の被加工部位などの残渣を発生させ
ず、任意の結像を得ることができ、かつ短時間のうちに
正確に被加工物の被加工部位をスクライブすることがで
きるといえる。
【0236】また、本発明の半導体素子の製造方法によ
り、レーザの照射による被加工物の被加工部位以外の部
位の一部損傷を防ぐことができ、被加工物の被加工部位
などの残渣を発生させず、任意の結像を得ることがで
き、短時間のうちに正確に被加工物の被加工部位をスク
ライブすることができるため、製造コストが低く、かつ
高品質な半導体素子を得ることができるといえる。
【0237】さらに、本発明の太陽電池素子の製造方法
によっても、レーザの照射による表面電極の一部損傷を
防ぐことができ、裏面電極などの残渣を発生させず、任
意の結像を得ることができ、短時間のうちに正確に光電
変換層および裏面電極をスクライブすることができるた
め、製造コストが低く、かつ高品質な太陽電池素子を得
ることができるといえる。
【0238】さらに、本発明の太陽電池素子の製造方法
によって、レーザの照射による表面電極の一部損傷を防
ぐことができ、裏面電極などの残渣を発生させず、任意
の結像を得ることができ、短時間のうちに正確に光電変
換層および裏面電極をスクライブして透光開口部および
裏面電極分離ラインが形成でるため、製造コストが低
く、かつ高品質な光透過型の太陽電池素子も同様に得る
ことができるといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製造方法による太陽電池素子の一例
の概略断面図である。
【図2】 本発明の製造方法による太陽電池素子の別の
一例の概略断面図である。
【図3】 本発明の製造方法による太陽電池素子のさら
に別の一例の概略断面図である。
【図4】 本発明のレーザ加工装置の一例の概略図であ
る。
【図5】 高次回折光フィルターを有さないレーザ加工
装置から出射されるレーザの焦点位置以外での結像の一
例の概略図である。
【図6】 本発明の高次回折光フィルターを有するレー
ザ加工装置から出射されるレーザの焦点位置以外での結
像の一例の概略図である。
【図7】 一般的な光透過型太陽電池素子の一例の概略
図である。
【図8】 結像スリット、結像フィルターおよび高次回
折光フィルターを有さないレーザ加工装置を用いて裏面
電極分離ラインおよび透光性開口部を形成した場合の太
陽電池素子の一例の概略断面図である。
【符号の説明】
1 絶縁透光性基板、2 表面電極、3 光電変換層、
4 裏面透明電極、5裏面金属電極、6 レジスト膜、
7 表面電極分離ライン、8 コンタクトライン、9
裏面電極分離ライン、10,10a,10b 透光性開
口部、11レーザ発振器、12 集光レンズ、13 結
像スリット、14 結像レンズ、15 高次回折光フィ
ルター、16 被加工物、17a,17b,17c,1
7d,17e,17f,17g,17h,17i,17
j,17k,17l,17m,17n,17o,17
p,17q,17r,17s,17t,17u,17
v,17w,17x,17y,18a,18b,18
c,18d,18e レーザの焦点位置以外での結像、
31 絶縁透光性基板、33 表面電極、35 光電変
換層、37 裏面電極、39 透光性開口部、41a,
41b,41c 入射光、43a,43b,43c,4
3d,43e,43f,43g,43h 透過光、50
裏面電極、53a,53b,53c,53d,53
e,53f 裏面電極の残渣、55a,55b,55c
レーザによる表面電極の損傷部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // B23K 101:36 H01L 31/04 C 103:16 S (72)発明者 立花 伸介 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 Fターム(参考) 4E068 AD01 CA01 CA02 CA03 CA07 CA11 CD08 CD10 CD11 CD13 CF02 DA09 DB14 5F051 AA03 AA05 CB28 CB29 EA10 EA11 EA16 FA02 FA06

Claims (24)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 レーザ発振器と、集光レンズと、結像ス
    リットまたは結像フィルターと、結像レンズと、高次回
    折光フィルターとを有するレーザ加工装置であって、結
    像スリットまたは結像フィルターは結像レンズの光入射
    側に設けられ、高次回折光フィルターは結像レンズの光
    出射側に設けられた構造を有するレーザ加工装置。
  2. 【請求項2】 被加工物に対して波長選択性のあるレー
    ザを出射することができ、該レーザの結像面における面
    内強度分布が一定であることを特徴とする請求項1に記
    載のレーザ加工装置。
  3. 【請求項3】 結像スリットまたは結像フィルターは交
    換可能であり、結像形を任意に選択することができるこ
    とを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ加工装
    置。
  4. 【請求項4】 レーザ発振器はYAGレーザ発振器であ
    ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のレ
    ーザ加工装置。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載のレーザ
    加工装置から出射されるレーザを照射することによりパ
    ターニングを行なう工程を含むことを特徴とする半導体
    素子の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜4のいずれかに記載のレーザ
    加工装置から出射されるレーザを照射することによりパ
    ターニングを行なう工程を含むことを特徴とする太陽電
    池素子の製造方法。
  7. 【請求項7】 絶縁透光性基板、表面電極、光電変換層
    および裏面電極を有する複数の発電領域を備えており、
    該光電変換層および該裏面電極を貫通することにより複
    数の発電領域同士を互いに分割する裏面電極分離ライン
    を有し、該裏面電極分離ラインにより分割された発電領
    域同士は互いに直列接続および/または並列接続されて
    いる太陽電池素子の製造方法であって、請求項1〜4の
    いずれかに記載のレーザ加工装置から出射されるレーザ
    を照射することにより該裏面電極分離ラインを形成する
    工程を含むことを特徴とする太陽電池素子の製造方法。
  8. 【請求項8】 光電変換層は、結晶シリコン系半導体膜
    または非晶質シリコン系半導体膜またはそれらを積層し
    た構造であることを特徴とする請求項7に記載の太陽電
    池素子の製造方法。
  9. 【請求項9】 表面電極は、透明導電膜であることを特
    徴とする請求項7または8に記載の太陽電池素子の製造
    方法。
  10. 【請求項10】 裏面電極は、透明導電膜および金属膜
    を積層した構造であることを特徴とする請求項7〜9の
    いずれかに記載の太陽電池素子の製造方法。
  11. 【請求項11】 裏面電極の光入射面の反対側の表面に
    レジスト膜が積層されていることを特徴とする請求項7
    〜10のいずれかに記載の太陽電池素子の製造方法。
  12. 【請求項12】 光電変換層および裏面電極を貫通する
    ことにより絶縁透光性基板側から入射した光の一部を裏
    面側に透過せしめることのできる透光性開口部を有する
    ことを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の太
    陽電池素子の製造方法。
  13. 【請求項13】 透光性開口部と裏面電極分離ラインと
    は同一の開口部であることを特徴とする請求項12に記
    載の太陽電池素子の製造方法。
  14. 【請求項14】 透光性開口部と裏面電極分離ラインと
    は異なる開口部であることを特徴とする請求項12に記
    載の太陽電池素子の製造方法。
  15. 【請求項15】 透光性開口部は、裏面電極分離ライン
    に平行かつ不連続な直線状の形状であって、1つの発電
    領域あたり同一間隔で複数本設けられていることを特徴
    とする請求項14に記載の太陽電池素子の製造方法。
  16. 【請求項16】 透光性開口部は、裏面電極分離ライン
    に垂直かつ連続な直線状の形状であって、すべての発電
    領域にわたり同一間隔で複数本設けられていることを特
    徴とする請求項13に記載の太陽電池素子の製造方法。
  17. 【請求項17】 表面電極を透過する波長を有するレー
    ザを照射することにより裏面電極分離ラインおよび/ま
    たは透光性開口部を形成することを特徴とする請求項7
    〜16のいずれかに記載の太陽電池素子の製造方法。
  18. 【請求項18】 500〜600nmの範囲の波長を有
    するレーザを照射することにより透光性開口部を形成す
    ることを特徴とする請求項7〜17のいずれかに記載の
    太陽電池素子の製造方法。
  19. 【請求項19】 第2高調波YAGレーザを用いること
    を特徴とする請求項7〜18のいずれかに記載の太陽電
    池素子の製造方法。
  20. 【請求項20】 レーザ発振器の出射口におけるレーザ
    のビーム径が100μm〜3mmの範囲にあることを特
    徴とする請求項7〜19のいずれかに記載の太陽電池素
    子の製造方法。
  21. 【請求項21】 結像面におけるレーザの結像形が長方
    形となる結像スリットまたは結像フィルターを用いたこ
    とを特徴とする請求項7〜20のいずれかに記載の太陽
    電池素子の製造方法。
  22. 【請求項22】 結像面におけるレーザの結像倍率が
    0.2〜23の範囲であることを特徴とする請求項7〜
    21のいずれかに記載の太陽電池素子の製造方法。
  23. 【請求項23】 結像面におけるレーザの結像の最大径
    が20〜500μmの範囲であることを特徴とする請求
    項7〜22のいずれかに記載の太陽電池素子の製造方
    法。
  24. 【請求項24】 結像面におけるレーザの総出力が10
    0mW〜1Wの範囲であることを特徴とする請求項7〜
    23のいずれかに記載の太陽電池素子の製造方法。
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