JP2003297392A - プロトン伝導体及びその製造方法並びに燃料電池 - Google Patents

プロトン伝導体及びその製造方法並びに燃料電池

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JP2003297392A JP2002092552A JP2002092552A JP2003297392A JP 2003297392 A JP2003297392 A JP 2003297392A JP 2002092552 A JP2002092552 A JP 2002092552A JP 2002092552 A JP2002092552 A JP 2002092552A JP 2003297392 A JP2003297392 A JP 2003297392A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】150℃以上の高温でも繰り返し安定して使用
できるプロトン伝導体を提供する。 【解決手段】SiO2とZrO2とP25とを含む多孔質
体からなることを特徴とするもので、特に前記ZrO2
の含有量が5〜50質量%、前記多孔質体の平均細孔径
が、0.2〜0.5nmであることが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プロトン伝導体と
その製造方法並びに燃料電池に関するものである。
【0002】
【従来技術】燃料電池は、反応生成物がCO2と水であ
り、しかも発電効率が30〜40質量%と高効率を示す
為、クリーン、省エネルギーな発電システムとして知ら
れている。
【0003】例えば、電荷移動体がプロトンであるプロ
トン伝導体を電解質として用い、該電解質を挟んで、燃
料極と酸化剤極とが形成された燃料電池の、燃料極にメ
タノールと水との混合液を燃料として供給し、酸素ガス
あるいは空気を酸化剤ガスとして供給することで、以下
に示す電気化学反応により発電する。 燃料極:CH3OH+H2O→CO2+6H++6e 酸化剤極:3/2O2+6H++6e→3H2O 電池反応:CH3OH+3/2O2→CO2+3H2O 以上の電池反応を用いた燃料電池はダイレクトメタノー
ル燃料電池(DMFC)と呼ばれている。DMFCはメ
タノールを直接燃料として用いる為、H2を燃料として
用いる場合のメタノールの水蒸気改質装置が不要である
ため、装置の小型化が可能であり、携帯電話、ノートパ
ソコンなどの長時間発電可能な電源として有望である。
【0004】上記のDMFCにおいて、前記電解質のプ
ロトン伝導体として、パーフルオロスルホン酸型陽イオ
ン交換樹脂を用いた高分子材料が多く報告されている。
【0005】しかしながら、高分子材料をプロトン伝導
体として燃料極表面に形成したDMFCにおいては、高
分子材料がメタノールによって、膨潤・変形したり、溶
解されるなどすることが原因で、細孔が大きくなりメタ
ノールがプロトン伝導体を通過してしまうクロスオーバ
ーという現象が起こり、プロトン伝導能を維持すること
が困難であった。
【0006】また、燃料極でのメタノールと水の触媒反
応は主に活性炭等に白金等を担持した触媒が用いられて
いる。この触媒は、150℃以上で活性となるが、高分
子材料の熱安定性が低いため、100℃以上の高温にで
きないという問題があった。
【0007】そこで、上記の二つの課題を解決するた
め、プロトン伝導体としてP25及びSiO2を含有す
る無機ガラスを用いることが、特開平2001−102
071号公報で提案されている。このガラス材料は高分
子材料と比較して、メタノールに対する安定性および耐
熱性は優れている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
2001−102071号公報に記載のプロトン伝導体
は、クロスオーバーと150℃以上での使用を可能とす
るものの、150℃以上での繰り返し測定を行うと、ガ
ラスの細孔径が変化し、細孔が閉塞されていくため、プ
ロトン伝導性が経時変化し、移動する電荷量がしだいに
低下するという問題があった。
【0009】本発明は、150℃以上の高温でも繰り返
し安定して使用できるプロトン伝導体及びその製造方法
並びに燃料電池を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、SiO2とP2
5とZrO2とを組み合わせることにより、耐熱性を向
上したまま、150℃の高温で昇降温を繰り返してもガ
ラスの細孔径が変化せず、しかもクロスオーバーを抑制
できるという知見に基づくものである。
【0011】即ち、本発明はSiO2とZrO2とP25
とを含む多孔質体からなることを特徴とするプロトン伝
導体である。
【0012】特に、前記プロトン伝導体のZrO2の含
有量が5〜50質量%、前記SiO2の含有量が5〜9
0質量%、前記P25の含有量が1〜50質量%である
ことが好ましい。これにより、高温使用時における細孔
表面積の低下を抑制し、膜の耐熱性を向上できるため、
500℃以上の高い温度でも使用可能となる。
【0013】また、前記多孔質体の平均細孔径が、0.
2〜0.5nmであることが好ましい。これにより、メ
タノールのクロスオーバーを抑制することができる。
【0014】さらに、前記多孔質体の気孔率が10〜5
0%であることが好ましい。これにより、高いプロトン
伝導度が容易に発現させることができる。
【0015】さらにまた、プロトン伝導度が2×10-3
Scm-1以上であることが好ましい。これにより、燃料
電池の電解質として好適に使用することができる。
【0016】また、本発明の製造方法は、Si、Zr及
びPを含む金属アルコキシドを加水分解してゾルを作製
するゾル化工程と、該ゾル化工程で得られたゾルを乾燥
してゲルを作製するゲル化工程と、該ゲルを焼成して多
孔質体を作製する焼結工程と、該焼結工程で得られた多
孔質体を水蒸気中で加熱する熱処理工程を具備すること
を特徴とするもので、これにより、SiO2とZrO2
25とを含む多孔質体の細孔内表面に水酸基とH2
分子を吸着付与することができ、プロトン伝導体性を向
上することができる。
【0017】さらに、前記金属アルコキシドが、化2に
示す有機官能基を有するSiアルコキシドを含むことが
好ましい。これにより、前記多孔質体の平均細孔径を
0.2〜0.5nmに制御することができる。
【0018】
【化2】
【0019】さらに、前記焼結工程における焼成温度が
400〜900℃であることが好ましい。これにより、
所望の細孔径で、より均一な多孔質体を容易に得ること
が容易となる。
【0020】また、前記熱処理工程における雰囲気中の
水蒸気濃度が5〜50質量%であることが好ましい。こ
れにより、多孔質体の細孔内に安定してOH基や水分を
安定して保持することが容易となる。
【0021】さらに、前記熱処理工程における加熱温度
が100〜400℃であることが好ましい。これにより
細孔径の変化が少なく、高いプロトン伝導性を維持する
ことが容易となる。
【0022】また、燃料極と、酸化剤極と、該燃料極と
酸化剤極とで挟持された電解質とを具備する燃料電池に
おいて、本発明のプロトン伝導体であることを特徴とす
る燃料電池であり、これによりメタノールのクロスオー
バーが抑制でき、150℃以上で作動させることによ
り、Pt触媒の触媒活性が向上し、高効率の発電を得る
ことができる。
【0023】また、前記燃料極に供給される燃料がメタ
ノールと水との混合液であることを特徴とするダイレク
トメタノール燃料電池であり、これによりメタノール改
質器が不要となり、クリーンで、小型で、高効率な、携
帯電子機器向けに最適な燃料電池を得ることができる。
【0024】さらに、前記電解質の厚みが1〜200μ
mであることが好ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明のプロトン伝導体は、Si
2とZrO2とP25とを含む多孔質体からなり、これ
らの酸化物を組み合わせることにより、細孔内に水分や
OH基を多く、且つ安定して存在させるとともに、細孔
の熱安定性を向上することができるため、150℃の高
温で昇降温を繰り返してもガラスの細孔径が変化せず、
しかもクロスオーバーを抑制することができる。
【0026】即ち、多孔質体のプロトン伝導性は、表面
に存在するOH基や水分がプロトンの媒体となり、プロ
トンが伝導する。よって、SiO2とZrO2とP25
を組み合わせることによって、多孔質体の耐熱性を高め
るとともに、水に対する吸着が強固となり、水分の脱離
温度が高められるため、150℃以上の高温でも多孔質
体内部にOH基や水分が豊富に存在でき、プロトン伝導
性が促進される。
【0027】プロトン伝導体におけるZrO2は、特に
耐熱性を改善するものであり、その含有量が5〜50質
量%、特に10〜40質量%、更には20〜30質量%
であることが好ましい。ZrO2含有量を上記の範囲に
設定することによって、プロトン伝導性を維持したま
ま、耐熱性をさらに改善し、耐熱性とプロトン伝導性と
に優れたプロトン伝導体を得ることができる。
【0028】また、これとともに、SiO2の含有量
は、5〜90質量%、特に40〜80質量%、更には6
0〜70質量%、また、P25の含有量は、1〜50質
量%、特に2〜30質量%、更には5〜10質量%であ
ることが好ましい。
【0029】また、前記多孔質体の平均細孔径が、0.
2〜0.5nm、特に0.25〜0.35nm、更には
0.25〜0.3nmであることが好ましい。平均細孔
径を上記の範囲に設定することにより、高いプロトン伝
導性を維持したまま、メタノールのクロスオーバーの発
生を防止することがさらに容易となる。また、酸化剤電
極触媒の被毒成分であるCOの膜通過を分子ふるいによ
り阻止する点でも前記細孔径の範囲が好ましい。
【0030】さらに、前記多孔質体の気孔率が10〜5
0%であることが好ましい。これは、プロトンが気孔内
に含まれる水分を経由して伝導に寄与するためである。
【0031】さらにまた、プロトン伝導度が2×10-3
Scm-1以上、特に3.5×10-3Scm-1以上、更に
は5×10-3Scm-1以上、であることが好ましい。プ
ロトン伝導度を上記の範囲に設定することで、燃料電池
の電解質として好適に使用でき、燃料電池の特性を改善
することができる。
【0032】次に、プロトン伝導体の製造方法について
説明する。本発明のプロトン伝導体の製造方法は、ゾル
化工程、焼結工程及び熱処理工程を具備することが重要
である。
【0033】ゾル化工程では、Si、Zr及びPを含む
金属アルコキシドを加水分解してゾルを作製するもので
ある。例えば、SiアルコキシドとZrアルコキシド、
リン酸アルコキシドを含む溶液に水を加え、加水分解し
てゾルを作製する。この際に、まずSiアルコキシドの
部分加水分解ゾルを作製し、その後にZrアルコキシ
ド、リン酸アルコキシドを加えてゾルを作製すること
が、均一な組成を得るために好ましい。
【0034】金属アルコキシドは、化3に示す有機官能
基を有するSiアルコキシドを含むことが、細孔径の制
御、特に0.2〜0.5nmの平均細孔径を容易に得る
ために好ましい。
【0035】
【化3】
【0036】化3に示す有機官能基がテンプレート(鋳
型)の役目をし、400℃以上で熱処理することによ
り、有機官能基のみが焼失し、テンプレートの大きさに
従った細孔を作ることができる。前記化1における
1、R2、R3、R4で表わされる有機官能基がメチル
基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基から
選ばれる少なくとも1種であることが細孔径を制御する
上で好ましい。
【0037】具体的に、化3に示すSiアルコキシドと
しては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキ
シシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエ
トキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリ
エトキシシラン、等を例示できる。
【0038】ゲル化工程では、ゾル化工程で得られた乾
燥してゲルを作製する。この乾燥温度は、例えば30〜
50℃で行うことができる。
【0039】焼結工程では、ゲル化工程で得られたゲル
を焼成して多孔質体を作製する。例えば、ゾルを乾燥後
得られたゲルを、400〜900℃で焼成して多孔質体
を作成する。
【0040】焼成温度は、細孔を閉塞させずに所望の大
きさに保ち、且つ均一に分布させることを容易とするた
め、上記の温度範囲に設定することが好ましい。特に、
平均細孔径を0.2〜0.5nmに精密制御するため、
500〜700℃で焼成することが好ましい。
【0041】熱処理工程では、焼結工程で得られた多孔
質体を水蒸気中で加熱する処理を行うものである。例え
ば、得られた多孔質体を水蒸気濃度が5〜50質量%の
空気気流中で熱処理をすることにより、多孔質体の細孔
内にOH基や水分を安定して保持することができる。
【0042】熱処理における雰囲気気体中の水蒸気濃度
は、多孔質体が水酸化物に変化し、細孔が閉塞するのを
防止しつつ、十分なOH基や水分をより安定して多孔質
体に付与することを容易にするため、5〜50質量%、
特に10〜40質量%、更には15〜30質量%が好ま
しい。
【0043】熱処理における加熱温度は、多孔質体が水
酸化物に変化し、細孔が閉塞するのを防止しつつ、均熱
性を高め、水蒸気の液化を防止して高いプロトン伝導性
を得ることが容易になるため、100〜400℃、特に
150〜350℃、更には200〜300℃が好まし
い。
【0044】次に本発明の燃料電池について説明する。
【0045】図1は、燃料電池の一部を示す概略断面図
である。燃料電池は、燃料極1と、酸化剤極2と、燃料
極1と酸化剤極2とで挟持された電解質3とを具備する
起電部を有し、電解質3を本発明のプロトン伝導体によ
って形成する。
【0046】また、燃料極1には水素や、メタノールな
どのアルコール類などのガス燃料又は液体燃料が供給さ
れる。しかし、ガス燃料は燃料の保管容器が大型化する
ことから、携帯には不都合である。
【0047】従って、特に、メタノールと水との混合液
を燃料として用いることにより、燃料タンクがコンパク
トにすることが可能である。さらに、水とメタノールの
カートリッジを用いることにより、燃料を消費し終わっ
ても手軽に補充することができる。
【0048】酸化剤極2には、酸素ガスや空気などの酸
化剤ガスを供給する。上記の燃料電池で使用される燃料
極1あるいは酸化剤極2は特に限定されない。例えば、
白金担持カーボンブラック粉末をPTFEなどの樹脂接
着材で保持させた多孔質シートが使用できる。電極中の
プロトン伝導粒子はカーボン粒子上に担持された触媒粒
子上生成したプロトンを電解質3に伝える役割をする。
【0049】本発明の燃料電池は、電解質3として、S
iO2とZrO2とP25とを含む多孔質体を用いている
ため、150℃以上の高温で繰り返し使用しても、平均
気孔径が収縮してプロトンの導電率が低下することがな
く、安定した発電を実現できる。また、水分の保持能力
が高い為、高温で繰り返し使用しても水分の脱離がなく
安定したプロトン伝導が得られる。
【0050】また、燃料電池の電解質3の膜みは1〜2
00μm、特に2〜150μm、更には3〜100μm
であることが好ましい。電解質3の厚みを上記の範囲に
設定することにより、均一で、電気抵抗の小さい電解質
3を容易に得ることができる。
【0051】なお、電解質3の細孔径は、全ての厚みに
わたって0.2〜0.5nmである必要はなく、少なく
とも電解質3の一方の表面が0.2〜0.5nmであれ
ば良い。また、燃料極1のメタノールと接触する面の表
面のみに0.2〜0.5nmのSiO2とZrO2とP2
5とを含む多孔質体を付与し、それ以外は有機膜を用
いることも可能である。
【0052】例えば、図2に示すように、本願発明の燃
料電池は、燃料極11と酸化剤極12とで電解質13を
挟持してなり、電解質13が支持体13aの一方の面に
本発明のプロトン伝導体13bを膜状として形成したも
のであっても良い。このような構造は、製造が容易であ
り、薄膜化により高いプロトン伝導が得られやすいとい
う利点がある。
【0053】次に燃料電池の作製方法について説明す
る。
【0054】電解質の作製方法としてデップコーティン
グ法、スピンコーティング法等を例示できる。例えば、
凹部を有する石英ガラスなどの多孔質絶縁板を支持体と
して用意する。この凹部の溝部分にプロトン伝導体を作
製するためのゾル膜を塗布し、焼成し、焼成温度を40
0〜900℃とすることで細孔径の小さい多孔質体を得
ることができる。
【0055】次いで、水蒸気濃度が5〜50質量%の空
気気流中において100〜400℃の熱処理を行うこと
で、高いプロトン伝導体特性を有する電解質3を得るこ
とができる。
【0056】また、燃料極1及び酸化剤極2と電解質3
との接合は、燃料極1及び酸化剤極2を、電解質3を挟
持するように積層し、この積層体を500〜900℃で
加熱処理することで接合し、一体化することができる。
熱処理を上記の範囲に設定することで、高い接着強度が
得られ、所望の細孔を得られる。
【0057】このようにして、接合された電気化学素子
を例えば、燃料電池に使用する場合には、対向電極の一
方を燃料極1、他方を酸化剤極2とし、さらにカーボン
ペーパーなどの導電膜からなる焦電体が取り付けられ
る。
【0058】さらに、焦電体を形成するカーボンペーパ
ー等の両面または片面に、塗布法またはスプレー法また
は印刷法により白金担持カーボンと前記プロトン伝導微
粒子からなるガス拡散電極の層を形成し、これらを好ま
しくは120〜350℃、2〜100kg/cm2にて
ホットプレス法により密着させることにより、表面に電
極層を有する焦電体が製造できる。
【0059】
【実施例】まず、SiO2原料として、化1に示す有機
官能基を有するSiアルコキシドであるビニルトリエト
キシシラン(V)、フェニルトリエトキシシラン
(P)、メチルトリエトキシシラン(M)、ZrO2
原料としてテトライソプロポキシジルコニウム(TP
Z)、P25の原料としてテトラメトキシリン酸(TM
P)を用意した。
【0060】次に、表1に記載の所望のSiO2原料に
水を加えて部分的に加水分解し、ゾルを得た後、表1に
示された割合となるように(SiO2、P25及びZr
2)、TPZ、TMPを加えるとともに、ゾルの安定
化剤としてホルムアミドを添加して複合アルコキシドを
作製した。
【0061】得られた複合アルコキシドの溶液を20時
間撹拌しながら加水分解し、ゾルを作製した。そして、
縦5cm、横5cm、厚さ30μmのポロプロピレン製
の基板を用意し、上記のゾルを基板上に塗布し、24時
間保持後、80℃まで段階的に昇温して保持し、1〜4
週間で乾燥ゲルを得た。この乾燥ゲルを表1に示す焼成
温度で1時間焼成し、電解質を得た。
【0062】得られた電解質を、水蒸気を含む空気を供
給できる熱処理炉内に設置し、表1示す条件で加熱し
て、熱処理を施した。
【0063】得られた電解質の膜厚を走査型電子顕微鏡
(SEM)で測定した。
【0064】平均細孔径は、H2、He、CO2、C
4、CF4、O2、N2、SF6に対する透過係数を測定
し、分子径と透過係数との関係を図示し、その傾きの変
化する点から算出した。
【0065】さらに、この電解質膜の両面に、Ptを担
持したカーボンブラック60重量部と上記プロトン伝導
膜を作製したものと同一組成の乾燥ゲルを粉砕した粒子
40重量部とからなる厚さ約150μmのガス拡散電極
を温度150℃、圧力10kg/cm2で10秒間の条
件でホットプレス法により接合した。
【0066】得られた接合体を電池性能評価用セルに組
み込んで、セル温度150℃でアノードおよびカソード
にメタノール50質量%、水50質量%の混合液と空気
を供給し、電流密度0.5A/cm2で放電試験を行っ
た。その時の回路電圧、プロトン伝導度を測定した。
【0067】また、1週間この状態を保持した後、再度
プロトン伝導度を測定し、プロトン伝導度の低下率を耐
久性の評価として算出した。結果を表1に示した。
【0068】
【表1】
【0069】本発明の試料No1〜7及び9〜18はプ
ロトン伝導度が2×10-3Scm-1以上、1週間後性能
の低下が5%以下の優れた特性を示した。
【0070】一方、SiO2とP25とからなり、Zr
2を含まない本発明の範囲外の試料No.8は、プロ
トン伝導度が1×10-3Scm-1であり、1週間後の性
能低下が20%と大きかった。
【0071】
【発明の効果】本発明は、SiO2とP25とZrO2
組み合わせることにより、耐熱性が向上し、高温で昇降
温を繰り返してもガラスの細孔径が変化せず長時間安定
して高いプロトン伝導性を有する電解質を得ることがで
き、さらに所望の細孔径に制御可能であることから、メ
タノールのクロスオーバーの抑制されたダイレクトメタ
ノール燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料電池を示す概略図
【図2】本発明の他の燃料電池を示す概略図である。
【符号の説明】
1、11・・・燃料極 2、12・・・酸化剤極 3、13・・・電解質 13a・・・支持体 13b・・・プロトン伝導体

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】SiO2とZrO2とP25とを含む多孔質
    体からなることを特徴とするプロトン伝導体。
  2. 【請求項2】前記ZrO2の含有量が5〜50質量%、
    前記SiO2の含有量が5〜90質量%、前記P25
    含有量が1〜50質量%であることを特徴とする請求項
    1記載のプロトン伝導体。
  3. 【請求項3】前記多孔質体の平均細孔径が、0.2〜
    0.5nmであることを特徴とする請求項1又は2記載
    のプロトン伝導体。
  4. 【請求項4】前記多孔質体の気孔率が10〜50%であ
    ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の
    プロトン伝導体。
  5. 【請求項5】プロトン伝導度が2×10-3Scm-1以上
    であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記
    載のプロトン伝導体。
  6. 【請求項6】Si、Zr及びPを含む金属アルコキシド
    を加水分解してゾルを作製するゾル化工程と、該ゾル化
    工程で得られたゾルを乾燥してゲルを作製するゲル化工
    程と、該ゲルを焼成して多孔質体を作製する焼結工程
    と、該焼結工程で得られた多孔質体を水蒸気中で加熱す
    る熱処理工程を具備することを特徴とするプロトン伝導
    体の製造方法。
  7. 【請求項7】前記金属アルコキシドが、化1に示す有機
    官能基を有するSiアルコキシドを含むことを特徴とす
    る請求項6記載のプロトン伝導体の製造方法。 【化1】
  8. 【請求項8】前記焼結工程における焼成温度が400〜
    900℃であることを特徴とする請求項6又は7記載の
    プロトン伝導体の製造方法。
  9. 【請求項9】前記熱処理工程における雰囲気中の水蒸気
    濃度が5〜50質量%であること特徴とする請求項6乃
    至8のいずれかに記載のプロトン伝導体の製造方法。
  10. 【請求項10】前記熱処理工程における加熱温度が10
    0〜400℃であること特徴とする請求項6乃至9のい
    ずれかに記載のプロトン伝導体の製造方法。
  11. 【請求項11】燃料極と、酸化剤極と、該燃料極と酸化
    剤極とで挟持された電解質とを具備する燃料電池におい
    て、前記電解質が請求項1乃至5のいずれかに記載のプ
    ロトン伝導体であることを特徴とする燃料電池。
  12. 【請求項12】前記燃料極に供給される燃料がメタノー
    ルと水との混合液であることを特徴とする請求項11記
    載の燃料電池。
  13. 【請求項13】前記電解質の厚みが1〜200μmであ
    ることを特徴とする請求項11又は12記載の燃料電
    池。
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