JP2003292509A - 水分散体およびその製造方法 - Google Patents

水分散体およびその製造方法

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JP2003292509A
JP2003292509A JP2002095873A JP2002095873A JP2003292509A JP 2003292509 A JP2003292509 A JP 2003292509A JP 2002095873 A JP2002095873 A JP 2002095873A JP 2002095873 A JP2002095873 A JP 2002095873A JP 2003292509 A JP2003292509 A JP 2003292509A
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unsaturated monomer
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Yoshiyuki Sakai
禎之 酒井
Tomio Hashimoto
富雄 橋本
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Toyo Ink Mfg Co Ltd
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Toyo Ink Mfg Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は、高分子乳化剤を使用して乳化重合を
行う水分散体でありながら、コーティング剤に使用した
場合に、ロールコート適性に優れ、光沢、耐水性、耐溶
剤性、ブロッキング性、密着性の良好な塗膜を形成する
ことのできる水分散体を提供することを課題とする。さ
らに、重合時に凝集物の発生しない安定な水分散体の製
造方法を提供することを課題とする。 【解決手段】カルボキシル基含有単量体と芳香族系単量
体とを含むラジカル重合可能な不飽和単量体(X)を重
合してなる重合体(a) を、塩基性物質で中和した重
合体(a´)の存在下、芳香族系単量体以外のラジカル
重合可能な不飽和単量体(Y)を乳化重合させて1次重
合体粒子(b)を合成した後さらに、芳香族系単量体を
含むラジカル重合可能な不飽和単量体(Z)を乳化重合
することを特徴とする水分散体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、重合安定性、保存
安定性、成膜性の良好な粒子径の細かい水分散体および
その製造方法に関し、さらに詳しくは、紙、フィルム、
金属、ガラス、木材、皮革などの各種基材に使用するこ
とのできるコーティング用、インキ用水分散体であり、
ロールコート適性に優れ、光沢、耐水性、耐溶剤性、耐
ブロッキング性、密着性の良好な塗膜を形成する水分散
体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、ラジカル重合可能な不飽和単
量体を重合してなる水分散体の重合方法として、乳化重
合法は多岐にわたり利用されている。一般的な乳化重合
法としては、水媒体中で界面活性剤を使用し、そのミセ
ル中でラジカル重合を行う方法がある。この方法で作ら
れた水分散体は分子量が高く、コーティング用樹脂とし
て使用した場合には優れた物性をもつ塗膜が得られる。
反面、高分子量であるため成膜性が悪く光沢のよい塗膜
を得るのが難しい。また得られた水分散体の粘性はチキ
ソ性が強く、スプレーコートには適しているがロールコ
ートには適していない。
【0003】一方、上記に示した乳化重合法に対して、
水溶性の樹脂を高分子乳化剤として使用する乳化重合法
が知られている。この方法で作られた水分散体は、水溶
性樹脂が比較的多く存在するために成膜性がよく、ある
程度の高光沢な塗膜が得られる。また、粘性もニュート
ニアンに近くロールコートに適しているという特徴があ
る。しかし、高分子乳化剤として使用する乳化重合法は
分子量の低い水溶性樹脂を比較的多く使用していること
からくる物性の欠点も存在する。例えば、一般的な乳化
重合法に比べ耐水性に乏しく耐ブロッキング性が悪くな
る傾向にある。その理由として必ずしも明確ではない
が、高酸価の樹脂は乾燥工程における塗膜からの水の離
脱性が悪く、塗膜中に残存する水分による可塑効果など
が考えられる。
【0004】これらの問題点を解決するため、多数の検
討が行われているが、例えば、樹脂骨格を硬くすると耐
ブロッキング性は向上するが成膜性が悪くなるとともに
光沢も低下する。また、水溶性樹脂の使用量を減らした
り、その酸価を下げるなどの対策も考えられるが、重合
安定性や得られた水分散体の経時安定性が悪くなる傾向
にある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、高
分子乳化剤を使用して乳化重合を行う水分散体でありな
がら、コーティング剤に使用した場合に、ロールコート
適性に優れ、光沢、耐水性、耐溶剤性、ブロッキング
性、密着性の良好な塗膜を形成することのできる水分散
体を提供することを課題とする。さらに、重合時に凝集
物の発生しない安定な水分散体の製造方法を提供するこ
とを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、3回の重
合を経て得られた水分散体が良好な水分散体となるのを
見いだし本発明に至った。
【0007】すなわち、本発明は、カルボキシル基含有
単量体と芳香族系単量体とを含むラジカル重合可能な不
飽和単量体(X)を重合してなる重合体(a) を、塩
基性物質で中和した重合体(a´)の存在下、芳香族系
単量体以外のラジカル重合可能な不飽和単量体(Y)を
乳化重合させて1次重合体粒子(b)を合成した後さら
に、芳香族系単量体を含むラジカル重合可能な不飽和単
量体(Z)を乳化重合すること、または、芳香族系単量
体を含むラジカル重合可能な不飽和単量体(Z)を乳化
重合させて1次重合体粒子(c)を合成した後さらに、
芳香族系単量体以外のラジカル重合可能な不飽和単量体
(Y)を乳化重合することを特徴とする水分散体(d)
に関する。
【0008】さらに、本発明は、芳香族系単量体以外の
ラジカル重合可能な不飽和単量体(Y)を乳化重合する
際の重合開始剤が有機過酸化物であることを特徴とする
上記水分散体(d)に関する。
【0009】さらに、本発明は、ラジカル重合可能な不
飽和単量体(X)に由来する部分と、ラジカル重合可能
な不飽和単量体(Y+Z)に由来する部分との重量比が
1:9〜5:5であることを特徴とする上記水分散体
(d)に関する。さらに、本発明は、カルボキシル基含
有単量体と芳香族系単量体とを含むラジカル重合可能な
不飽和単量体(X)を重合してなる重合体(a) を、
塩基性物質で中和した重合体(a´)の存在下、芳香族
系単量体以外のラジカル重合可能な不飽和単量体(Y)
を乳化重合させて1次重合体粒子(b)を合成する第1
の工程と、1次重合体粒子(b)の存在下、芳香族系単
量体を含むラジカル重合可能な不飽和単量体(Z)を乳
化重合する第2の工程を含んでなる水分散体の製造方法
に関する。
【0010】さらに、本発明は、カルボキシル基含有単
量体と芳香族系単量体とを含むラジカル重合可能な不飽
和単量体(X)を重合してなる重合体(a) を、塩基
性物質で中和した重合体(a´)の存在下、芳香族系単
量体を含むラジカル重合可能な不飽和単量体(Z)を乳
化重合させて1次重合体粒子(c)を合成する第3の工
程と、1次重合体粒子(c)の存在下、芳香族系単量体
以外のラジカル重合可能な不飽和単量体(Y)を乳化重
合する第4の工程を含んでなる水分散体の製造方法に関
する。
【0011】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の好ましい実施形
態を説明するが、本発明は以下の説明に限定されるもの
ではない。本発明における水分散体(d)は、カルボキ
シル基含有単量体と芳香族系単量体とを含むラジカル重
合可能な不飽和単量体(X)を重合してなる重合体
(a)を、塩基性物質で中和した重合体(a´)の存在
下、芳香族系単量体以外のラジカル重合可能な不飽和単
量体(Y)を乳化重合させて1次重合体粒子(b)を合
成した後さらに、芳香族系単量体を含むラジカル重合可
能な不飽和単量体(Z)を乳化重合すること、または、
芳香族系単量体を含むラジカル重合可能な不飽和単量体
(Z)を乳化重合させて1次重合体粒子(c)を合成し
た後さらに、芳香族系単量体以外のラジカル重合可能な
不飽和単量体(Y)を乳化重合することで得られる。カ
ルボキシル基含有単量体と芳香族系単量体とを含むラジ
カル重合可能な不飽和単量体(X)を重合してなる重合
体(a)を得るためには、例えば、カルボキシル基含有
単量体と芳香族系単量体とを含むラジカル重合可能な不
飽和単量体(X)を溶液重合または、塊状重合を行う。
本発明でいう、ラジカル重合可能な不飽和単量体(X)
は、カルボキシル基含有単量体、芳香族系単量体、およ
び、必要に応じてその他のラジカル重合可能な不飽和単
量体からなる。
【0012】本発明でいうカルボキシル基含有単量体と
しては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレ
イン酸、フマール酸、クロトン酸などの重合性不飽和カ
ルボン酸およびそれらの無水物などから1種または2種
以上を選択することができる。カルボキシル基含有単量
体は、ラジカル重合可能な不飽和単量体(X)中の5〜
50重量%であることが望ましい。カルボキシル基含有
単量体が5重量%より少ないと、高分子乳化剤としての
効果が著しく悪い。一方、50重量%より多いと、高分
子乳化剤としての効果は良好であるがコーティング剤に
使用した場合、塗膜の耐水性が悪くなる。
【0013】本発明に使用する芳香族系単量体として
は、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレ
ン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ベンジルア
クリレート、ベンジルメタクリレート、ビニルトルエン
等から1種または2種以上を選択することができる。
【0014】芳香族系単量体は、ラジカル重合可能な不
飽和単量体(X)中の50〜95重量%であることが望
ましい。芳香族系不飽和単量体は屈折率が高いため、こ
れを多く含む分散体を用いたコーティング剤の塗膜は高
い光沢をもつ。そのため、高光沢を得るには重合体
(a)についても芳香族系単量体をできるだけ多量に使
用した方が有利である。
【0015】本発明でいうその他のラジカル重合可能な
不飽和単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸
エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチ
ル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−アミル、ア
クリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリ
ル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、ア
クリル酸デシル、アクリル酸ドデシルなどのアクリル酸
アルキルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル
酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イ
ソブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−
ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリ
ル酸n−オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸
ドデシルなどのメタクリル酸アルキルエステル類;アク
リル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピ
ル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒド
ロキシプロピルなどのヒドロキシ基含有モノマー;
【0016】N−メチロールアクリルアミド、N−ブト
キシメチルアクリルアミド、N−メチロールメタアクリ
ルアミド、N−ブトキシメチルメタアクリルアミドなど
のN−置換アクリル、メタクリル系モノマー;アクリル
酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ
基含有モノマー;並びにアクリロニトリルなどから1種
または2種以上を選択することができる。
【0017】また、重合体(a)を得るためにラジカル
重合可能な不飽和単量体(X)の重合に用いることがで
きるラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物、例え
ばラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、
メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパ
ーオキシド、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)バ
レート、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオ
キシド、オクタノイルパーオキシド等や、アゾ系化合
物、例えば、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロ
ニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニト
リル)、1,1−アゾビス(シクロヘキシル−1−カル
ボニトリル)、VA−061、VA−080、VR−1
10、V−601(いずれも、和光純薬工業株式会社)
等を使用することができる。また分子量調整のために連
鎖移動剤として、チオグリコール酸オクチル、チオグリ
コール酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸オク
チル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、ステア
リルメルカプタン等のメルカプタン類、α−メチルスチ
レンダイマーなどを使用することができる。
【0018】本発明において、重合体(a´)は、重合
体(a)を塩基性物質で中和してなる。この操作により
重合体(a´)は高分子乳化剤としての機能を十分発揮
できるようになる。中和する際の塩基性物質としては、
アンモニア;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ブ
チルアミン等のアルキルアミン類;2−ジメチルアミノ
エタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミ
ン、アミノメチルプロパノール等のアルコールアミン
類;モルホリン等の塩基で中和することができる。本発
明では、中和とは、カルボキシル基含有単量体のカルボ
キシル基と、塩基性物質の塩基とを反応させることを意
味し、必ずしも、中和後のpHが7付近である必要はな
い。従って、中和の程度は特に制限はなく、重合体(a
´)が高分子乳化剤として機能する範囲で行うことがで
きる。
【0019】1次重合体(a)は、市販されている重合
体を使用しても良い。例えば、スチレン・マレイン酸重
合体((株)岐阜セラック製GSM151、301、6
01〜605、1001〜1005、3001、600
1、10001、elf atochem製SMA10
00、2000、3000、1440、17352、2
625等)がある。
【0020】また、スチレン・アクリル共重合体(東亜
合成(株)製UC-3900等)がある。さらにアクリ
ル重合体(東亜合成(株)製UC-3000等)があ
る。これらの重合体を塩基性物質で中和して1次重合体
(a´)としても良い。またこれらの1種または2種以
上を混合して用いても良い。本発明における水分散体
(d)は、芳香族系単量体以外のラジカル重合可能な不
飽和単量体(Y)を乳化重合させて1次重合体粒子
(b)を合成した後さらに、芳香族系単量体を含むラジ
カル重合可能な不飽和単量体(Z)を乳化重合するこ
と、または、芳香族系単量体を含むラジカル重合可能な
不飽和単量体(Z)を乳化重合させて1次重合体粒子
(c)を合成した後さらに、芳香族系単量体以外のラジ
カル重合可能な不飽和単量体(Y)を乳化重合すること
を特徴としている。このように中和後、2段階で乳化重
合を行うことで本発明の水分散体(d)は不飽和単量体
(Y)に由来する樹脂部分と不飽和単量体(Z)に由来
する樹脂部分が分かれて存在することになる。このこと
によりそれぞれの樹脂の性能が比較的うち消されずに個
別に機能し、本発明の水分散体(d)をコーティング剤
として使用した場合、光沢と耐ブロッキング性のバラン
スがとれた成膜性に優れたものを得ることができる。
【0021】不飽和単量体(Y)だけを使用すると十分
な光沢が得られず、また不飽和単量体(Z)だけを使用
すると樹脂が硬くなりすぎるため成膜性悪くなる。ま
た、不飽和単量体(Y)と不飽和単量体(Z)を混合し
て乳化重合を行っても光沢と耐ブロッキング性のバラン
スをとることは非常に困難である。すなわち、光沢を上
げようとして不飽和単量体(Z)の量を増やすと樹脂が
硬くなり成膜性が悪くなる。必然的に不飽和単量体
(Y)は非常にTgの低いものを使用しなくてはならな
くなり、結果として耐ブロッキング性が悪くなる。
【0022】芳香族系単量体以外のラジカル重合可能な
不飽和単量体(Y)は、先に示した芳香族系単量体以外
のラジカル重合可能な不飽和単量体と同様のものの中か
ら1種または2種以上を選択することができる。1次重
合体(a)のラジカル重合可能な不飽和単量体(X)
と、水分散体(d)の合成で用いるラジカル重合可能な
不飽和単量体(Y)とは、同じであっても異なっていて
もよい。カルボキシル基含有単量体は、水分散体(d)
の合成では必ずしも必要ではない。
【0023】また、芳香族系ラジカル重合可能な不飽和
単量体(Z)は先に示した芳香族系単量体と同様のもの
の中から1種または2種以上を選択することができる。
1次重合体(a)中の芳香族系単量体と、水分散体
(d)の合成で用いる芳香族単量体とは、同じであって
も異なっていてもよい。
【0024】本発明でいうラジカル重合可能な不飽和単
量体(Y+Z)とは、芳香族系単量体以外のラジカル重
合可能な不飽和単量体(Y)と芳香族系ラジカル重合可
能な不飽和単量体(Z)を足したものであり、本発明の
で用いる芳香族系単量体(Z)は、ラジカル重合可能な
不飽和単量体(Y+Z)中の1〜80重量%であること
が望ましい。前述したように芳香族系不飽和単量体を多
く含む化合物を用いたコーティング剤の塗膜は高い光沢
をもつためには、水分散体(d)全体の20重量%以上
が芳香族系不飽和単量体由来のものであることが好まし
い。
【0025】本発明における水分散体(d)の重合安定
性は、塩基性物質により中和された重合体(a´)の高
分子乳化剤としての性能に大きく依存する。重合体(a
´)にはその水溶化のためにカルボキシル基含有単量体
を使用しているが、本発明では耐水性の良好な水分散体
とするためその使用量をできるだけ少なくするのが好ま
しい。これにより耐水性は向上するが、重合体(a)を
中和して水溶化した重合体(a´)の水溶性が充分では
ないまま、水分散体(d)を作成すると、凝集物が多量
に発生する。この場合、1次重合体(a´)の量をある
程度多くすることで凝集物の量を減らすことはできる
が、高分子乳化剤とほとんど同じ物性の樹脂溶液が得ら
れるだけとなる。このような不具合を解消するため、ラ
ジカル重合可能な不飽和単量体(X)に由来する部分
と、ラジカル重合可能な不飽和単量体(Y+Z)に由来
する部分との重量比が重要である。この重量比は1:9
〜5:5が良好である。好ましくは2:8〜4:6であ
る。その結果、乳化重合の安定化が図れ、目的とする水
分散体(d)を安定に得ることができる。
【0026】本発明の水分散体(d)の乳化重合時に使
用する開始剤として、芳香族系単量体以外のラジカル重
合可能な不飽和単量体(Y)を乳化重合する際の重合開
始剤が有機過酸化物であることを特徴としている。特に
やや親水性をもった有機過酸化物が好ましい。例えば、
ハイドロパーオキサイド類が好ましい。また、芳香族系
単量体を含むラジカル重合可能な不飽和単量体(Z)を
乳化重合する際の重合開始剤はアンモニウムパーオキサ
イド、ソディウムパーオキサイド等の無機系過酸化物重
合開始剤や水溶性アゾ系開始剤を使用する。場合によれ
ばベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニト
リルなどの油溶性の開始剤を併用することもできる。こ
れら開始剤は単独で使用することもできるが、ロンガリ
ット等の還元剤との併用によるレドックス型で使用して
もよい。
【0027】また分子量調整のために連鎖移動剤とし
て、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸メト
キシブチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカ
プトプロピオン酸メトキシブチル、ステアリルメルカプ
タン等のメルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー
などを使用することができる。
【0028】本発明で製造された水分散体(d)は、各
種コーティング剤に使用することができる。このコーテ
ィング剤は保存安定性、成膜性が良好であり、ロールコ
ート適性に優れ、光沢、耐ブロッキング性、密着性の良
好な塗膜を形成する。コーティング剤の具体例としては
紙、フィルム、金属、ガラス、木材、皮革などの各種基
材に使用することのできる塗料やインキが挙げられる。
またこれらのコーティング剤には顔料、染料等の着色剤
やフィラー、微粉末シリカ等のチキソ性調整剤、コロイ
ダルシリカ、アルミナゾル、ポリビニルピロリドン、ポ
リビニルアルコール、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性
または水分散性ポリウレタン樹脂、乳化剤、消泡剤、レ
ベリング剤、滑り剤、粘着性付与剤、防腐剤、防黴剤、
造膜助剤としての有機溶剤などを必要に応じて配合して
もよい。
【0029】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明する。な
お、例中「部」、「%」はそれぞれ「重量部」、「重量
%」を示す。
【0030】(製造例1)「溶液重合」 温度計、滴下ロート、還流冷却管を備え窒素ガスで置換
した反応容器に、イソプロピルアルコール300部全量
仕込んだ。内温を80℃に昇温した後、不飽和単量体
(X)としてメタクリル酸80部、スチレン60部、メ
タクリル酸メチル60部と重合開始剤アゾビスイソブチ
ロニトリル6部と連鎖移動剤チオグリコール酸オクチル
4部を2時間かけて滴下した。内温を80℃に保ちなが
ら、さらにその温度で4時間反応した。次に内温50℃
以下で25%アンモニア水、イオン交換水を添加して2
0分間撹拌を続けた。次に内温を80〜85℃に昇温し
イソプロピルアルコールを脱アルコールした。規定量抜
いた後、冷却、調整水で調整を行い固形分40%、粘度
1240mPa・s、 pH8.4の重合体(a´)を得た。
【0031】(製造例2)「塊状重合」 温度計を備え窒素ガスで置換した加圧反応容器に、不飽
和単量体(X)としてアクリル酸60部、スチレン14
0部を仕込んだ。内温を280℃に昇温した後、内温を
保ちながら1時間反応した。次に撹拌機を止めて内温5
0℃以下まで冷却をし、25%アンモニア水、イオン交
換水を添加して5時間撹拌を続け固形分40%、粘度8
20mPa・s、pH8.2の重合体(a´)を得た。
【0032】(実施例1)温度計、滴下ロート、還流冷
却管を備え窒素ガスで置換した反応容器に、製造例1の
重合体(a´)200部とイオン交換水157.2部を
仕込み70℃に昇温した。次に不飽和単量体(Y)とし
てアクリル酸エチル12部、アクリル酸ブチル24部を
30分かけて滴下した。同時に重合開始剤として5%タ
ーシャリブチルハイドロパーオキサイド水溶液7.2部
と還元剤として5%ロンガリット水溶液7.2部それぞ
れを初期及び滴下途中5回に分けて添加した。滴下終了
後30分反応させて、次に不飽和単量体(Z)としてス
チレン84部を90分かけて滴下した。同時に重合開始
剤として5%アンモニウムパーオキサイド水溶液8.4
部を初期及び途中9回に分けて添加した。さらに3時間
反応して、固形分41.1%、粘度850mPa.s、pH
8.4、平均粒子径98nmの安定な水分散体(d)が得
られた。
【0033】(実施例2)実施例1の重合体(a´)を
製造例2の重合体に換えた以外は実施例1と同様に重合
を行い、固形分41.5%、粘度420mPa.s、pH
8.7、平均粒子径73nmの安定な水分散体(d)が得
られた。
【0034】(実施例3)温度計、滴下ロート、還流冷
却管を備え窒素ガスで置換した反応容器に、製造例2の
重合体(a´)200部とイオン交換水157.2部を
仕込み70℃に昇温した。次に不飽和単量体(Z)とし
てスチレン84部を90分かけて滴下した。同時に重合
開始剤として5%アンモニウムパーオキサイド水溶液
8.4部を初期及び途中9回に分けて添加した。滴下終
了後30分反応させて、次に不飽和単量体(Y)として
アクリル酸エチル12部、アクリル酸ブチル24部を3
0分かけて滴下した。同時に重合開始剤として5%ター
シャリブチルハイドロパーオキサイド水溶液7.2部と
還元剤として5%ロンガリット水溶液7.2部を初期及
び滴下途中5回に分けて添加した。さらに3時間反応し
て、固形分41.4%、粘度340mPa.s、pH8.
6、平均粒子径64nmの安定な水分散体(d)が得られ
た。
【0035】(実施例4)温度計、滴下ロート、還流冷
却管を備え窒素ガスで置換した反応容器に、製造例2の
重合体(a´)200部とイオン交換水164.4部を
仕込み70℃に昇温した。次に不飽和単量体(Y)とし
てアクリル酸エチル12部、アクリル酸ブチル24部を
30分かけて滴下した。同時に重合開始剤として5%ア
ンモニウムパーオキサイド水溶液7.2部を初期及び滴
下途中5回に分けて添加した。滴下終了後30分反応さ
せて、次に不飽和単量体(Z)としてスチレン84部を
90分かけて滴下した。同時に重合開始剤として5%ア
ンモニウムパーオキサイド水溶液8.4部を初期及び途
中9回に分けて添加した。さらに3時間反応して、固形
分40.8%、粘度360mPa.s、pH8.5、平均粒
子径91nmの安定な水分散体(d)が得られた。
【0036】(実施例5)温度計、滴下ロート、還流冷
却管を備え窒素ガスで置換した反応容器に、製造例2の
重合体(a´)100部とイオン交換水209.6部を
仕込み70℃に昇温した。次に不飽和単量体(Z)とし
てスチレン112部を120分かけて滴下した。同時に
重合開始剤として5%アンモニウムパーオキサイド水溶
液11.2部を初期及び途中12回に分けて添加した。
滴下終了後30分反応させて、次に不飽和単量体(Y)
としてアクリル酸エチル18部、アクリル酸ブチル30
部を30分かけて滴下した。同時に重合開始剤として5
%ターシャリブチルハイドロパーオキサイド水溶液9.
6部と還元剤として5%ロンガリット水溶液9.6部そ
れぞれを初期及び滴下途中5回に分けて添加した。さら
に3時間反応して、固形分41.4%、粘度150mPa.
s、pH8.6、平均粒子径124nmの安定な水分散体
(d)が得られた。
【0037】(実施例6)温度計、滴下ロート、還流冷
却管を備え窒素ガスで置換した反応容器に、製造例2の
重合体(a´)250部とイオン交換水131部を仕込
み70℃に昇温した。次に不飽和単量体(Z)としてス
チレン70部を90分かけて滴下した。同時に重合開始
剤として5%アンモニウムパーオキサイド水溶液7部を
初期及び途中9回に分けて添加した。滴下終了後30分
反応させて、次に不飽和単量体(Y)としてアクリル酸
エチル10部、アクリル酸ブチル20部を30分かけて
滴下した。同時に重合開始剤として5%ターシャリブチ
ルハイドロパーオキサイド水溶液6部と還元剤として5
%ロンガリット水溶液6部それぞれを初期及び滴下途中
5回に分けて添加した。さらに3時間反応して、固形分
41.5%、粘度380mPa.s、pH8.8、平均粒子
径88nmの安定な水分散体(d)が得られた。
【0038】(比較例1)温度計、滴下ロート、還流冷
却管を備え窒素ガスで置換した反応容器に、製造例2の
重合体(a´)200部とイオン交換水168部を仕込
み70℃に昇温した。次に不飽和単量体としてスチレン
84部、アクリル酸エチル12部、アクリル酸ブチル2
4部を120分かけて滴下した。同時に重合開始剤とし
て5%アンモニウムパーオキサイド水溶液12部を初期
及び途中12回に分けて添加した。さらに3時間反応し
て、固形分41.0%、粘度310mPa.s、pH8.
5、平均粒子径80nmの安定な水分散体が得られた。次
に得られた実施例1〜6および比較例1の水分散体の物
性を評価した。評価試験方法は下記に示した方法で行っ
た。各試験で得られた試料の物性結果を表1に示した。
【0039】得られた水分散体を用いて、下記の処方で
水性ワニスを調整し、耐ブロッキング性、光沢、密着性
を評価した。結果を表4に示す。
【0040】 水性ワニス処方 水性樹脂組成物 85.0 重量部 消泡剤 0.1 重量部 ブチルセロソルブ 4.0 重量部 ワックス 0.5 重量部 レベリング剤 0.4 重量部 イオン交換水 5.0 重量部 イソプロピルアルコール 5.0 重量部 100.0 重量部
【0041】評価方法 平版印刷を施したコート紙に、バーコーターを用いて乾
燥塗膜厚が3〜4μmとなるように塗布し、直ちに10
0℃の熱風循環式乾燥機に30秒入れて乾燥させた。
【0042】耐ブロッキング性 上記試料を塗布面同士を重ね、500g/cm2の荷重をか
けて、湿度80%で24時間放置し、ブロッキングが発
生しなかった最高の温度を調べた。なお、40℃以上の
ものが実用レベルである。
【0043】光沢値 上記で作成した評価試料を用いて、60度の鏡面反射率
をグロスメーターで測定した。 (日本電色(株)社製グロスメーター)なお、80以上
のものが実用レベルである。
【0044】密着性 上記で作成した評価試料を用いて、セロテープ(ニチバ
ン製)を貼りつけ指でコスリ付け一気に剥がす。良好な
ものは下の紙が着いて剥がれる。下記のように目視で3
段階評価をした。 ◎:下地の紙が前面着いて剥がれる。 〇:下地の紙が約10〜50%程度着いて剥がれる。 ×:下地の紙が0%である。 なお、〇以上が実用レベルである。
【0045】表1
【表1】
【0046】
【発明の効果】本発明の水分散体は、紙、フィルム、金
属、ガラス、木材、皮革などの各種基材に使用すること
のできるコーティング用、インキ用塗装剤に用いると、
ロールコート適性に優れ、光沢、耐ブロッキング性、密
着性の良好な塗膜を形成することができる。さらに製造
時の安定性にも優れ、凝集物の発生が非常に少ない。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4J011 BA04 BA08 BB01 BB09 KA02 KA15 PA65 PA69 PB06 PB40 PC02 PC06 PC09 4J026 AA17 AA45 AA48 AA50 AC09 BA05 BA06 BA27 BA30 BA32 BB01 BB02 BB03 DA04 DA13 DB04 DB13 FA04 FA07 GA06 GA10

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】カルボキシル基含有単量体と芳香族系単量
    体とを含むラジカル重合可能な不飽和単量体(X)を重
    合してなる重合体(a) を、塩基性物質で中和した重
    合体(a´)の存在下、芳香族系単量体以外のラジカル
    重合可能な不飽和単量体(Y)を乳化重合させて1次重
    合体粒子(b)を合成した後さらに、芳香族系単量体を
    含むラジカル重合可能な不飽和単量体(Z)を乳化重合
    すること、または、芳香族系単量体を含むラジカル重合
    可能な不飽和単量体(Z)を乳化重合させて1次重合体
    粒子(c)を合成した後さらに、芳香族系単量体以外の
    ラジカル重合可能な不飽和単量体(Y)を乳化重合する
    ことを特徴とする水分散体。
  2. 【請求項2】芳香族系単量体以外のラジカル重合可能な
    不飽和単量体(Y)を乳化重合する際の重合開始剤が、
    有機過酸化物であることを特徴とする請求項1記載の水
    分散体。
  3. 【請求項3】ラジカル重合可能な不飽和単量体(X)に
    由来する部分と、ラジカル重合可能な不飽和単量体(Y
    +Z)に由来する部分との重量比が1:9〜5:5であ
    ることを特徴とする請求項1または2記載の水分散体。
  4. 【請求項4】カルボキシル基含有単量体と芳香族系単量
    体とを含むラジカル重合可能な不飽和単量体(X)を重
    合してなる重合体(a) を、塩基性物質で中和した重
    合体(a´)の存在下、芳香族系単量体以外のラジカル
    重合可能な不飽和単量体(Y)を乳化重合させて1次重
    合体粒子(b)を合成する第1の工程と、1次重合体粒
    子(b)の存在下、芳香族系単量体を含むラジカル重合
    可能な不飽和単量体(Z)を乳化重合する第2の工程を
    含んでなる水分散体の製造方法。
  5. 【請求項5】カルボキシル基含有単量体と芳香族系単量
    体とを含むラジカル重合可能な不飽和単量体(X)を重
    合してなる重合体(a) を、塩基性物質で中和した重
    合体(a´)の存在下、芳香族系単量体を含むラジカル
    重合可能な不飽和単量体(Z)を乳化重合させて1次重
    合体粒子(c)を合成する第3の工程と、1次重合体粒
    子(c)の存在下、芳香族系単量体以外のラジカル重合
    可能な不飽和単量体(Y)を乳化重合する第4の工程を
    含んでなる水分散体の製造方法。
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