JP2003292320A - 炭酸カルシウムの製造方法 - Google Patents

炭酸カルシウムの製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 苛性化工程で副産物として生成する炭酸カル
シウムの品質改良方法の提供。 【解決手段】 従来の苛性化方法の消和反応と苛性化反
応を基本的に分離し、炭酸イオンの少ない消和液で消和
反応するとともに、苛性化反応速度を緩慢にする目的で
苛性化反応液の苛性化槽での滞留時間を規定して課題を
解決する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、硫酸塩法またはソ
ーダ法によるパルプ製造工程の蒸解液を製造する苛性化
工程において、炭酸カルシウムを製造する方法に関する
ものであり、さらに詳しくは使用する生石灰の炭酸カル
シウム含有率、消和反応及び苛性化反応条件等を特定す
ることにより、従来の苛性化方法では得られなかった、
大型の単粒子を特徴とする炭酸カルシウムを製造する方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】炭酸カルシウムは製紙用のほか、ゴム、
プラスチック、ペイント、シーリング剤、粘着剤、肥料
等、工業用原料として重要で、天然の石灰石を乾式或い
は湿式で機械粉砕して得られる重質炭酸カルシウムと、
化学的方法によって得られる沈降性炭酸カルシウム(合
成炭酸カルシウム)がある。
【0003】我が国は良質の天然石灰石鉱脈を豊富に有
し、古くから採掘して利用されて来た。しかし、その品
質はもっぱら鉱脈の品質に依存し、近年要求される高品
質の炭酸カルシウムの鉱脈は減少しつつあり、次第によ
り高価な外国産に求められる様に変化の兆しが見えつつ
あるのが現状である。
【0004】そこで注目されつつあるのが、化学的方法
で合成される軽質炭酸カルシウム(沈降性炭酸カルシウ
ム)である。この軽質炭酸カルシウムの製造方法として
は、(1)石灰の焼成装置その他から得られる二酸化炭
素を含有したガスと石灰乳との反応、(2)アンモニア
ソーダ法における炭酸アンモニウムと塩化カルシウムと
の反応、(3)炭酸ナトリウムの苛性化によって水酸化
ナトリウムを製造する、石灰乳と炭酸ナトリウムとの反
応等が知られている。これらの方法のうち、(2)
(3)においては、その主生産物を得る製造法が新たな
方法に転換したり、炭酸カルシウムが副産物であること
から、その利用方法についてはあまり検討されていな
い。一方(1)は、反応系が比較的単純(水、消石灰、
炭酸ガス)であり、様々な形状の炭酸カルシウムを製造
する方法等について広く研究が進み、生産量も順次拡大
の傾向に有り、この傾向は今後も続くものと予想されて
いる。しかしながら、この方法は炭酸カルシウムが唯一
の生産物であることから製造コストが非常に高くなる
為、ユーザーの要望する低コスト化にはそぐわず、安価
に提供出来ない状況に有る。
【0005】そこで考えられるのが、硫酸塩法又はソー
ダ法によるパルプ製造工程において、蒸解薬品を回収・
再生する苛性化工程で副生する炭酸カルシウムを利用す
る方法である。
【0006】硫酸塩法又はソーダ法によるパルプ製造工
程では、木材から繊維素を単離するために水酸化ナトリ
ウムや硫化ナトリウムを溶解した白液を用いて高温、高
圧下で蒸解する。繊維素は固相として分離精製してパル
プとし、蒸解廃液(黒液)は濃縮燃焼する。その際、木
材からの溶出成分は熱源として回収し、薬液中の無機物
は炭酸ナトリウム又は硫化ソーダとの混合物を主成分と
するスメルトとして回収する。スメルトは弱液と呼ぶ白
液成分が一部溶解した炭酸カルシウム洗浄液に溶解して
緑液とする。
【0007】この緑液と生石灰を混合して、[1]
[2]式で示す消和反応と苛性化反応により、炭酸ナト
リウムを蒸解薬液に有用な水酸化ナトリウムに転換し、
白液を得ると同時に炭酸カルシウムが副生する。従来の
パルプ工場では緑液と生石灰をスレーカーと呼ばれる反
応槽で混合する為、実際にはこの二段の反応はかなり重
複して進行し、消和反応と苛性化反応はほとんど同時に
起こる。
【0008】 CaO + H2O → Ca(OH)2 [1] Ca(OH)2 + Na2CO3 → CaCO3 + 2NaOH [2] ここで生成する炭酸カルシウムは、主生産物である白液
を製造する際の副産物であるため、工業用原料として使
用した場合、非常に低コストで利用できるばかりでな
く、従来閉鎖系である苛性化工程のカルシウム(生石
灰、炭酸カルシウム)循環サイクルから炭酸カルシウム
を系外に抜き取ることによって、循環石灰の高純度化が
達成され、上記[1][2]の反応性向上や白液の清澄
性の向上、さらには廃棄物の低減が期待できる。
【0009】しかし、この従来方法では上記[1]
[2]の反応が殆ど同時に起こるため、得られる炭酸カ
ルシウムの形状をコントロールする事は難しく、サイコ
ロ状や六角面体などの種々雑多な形状を有し、粒子径も
大小様々でほとんどは塊状を呈し、急速な結晶成長によ
って、緑液由来の狭雑物を包含した純度の低い炭酸カル
シウムが生成していた。従ってこれを工業用原料として
製造した場合、特に近年要求されつつ有る高品質の炭酸
カルシウムの製造には不充分である、等の問題を抱えて
いた。
【0010】このように、従来の方法では炭酸カルシウ
ムの純度が低く、工業用の高品質な炭酸カルシウムを製
造することは困難であった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】従来の苛性化方法では
スレーカーで生石灰と緑液を直接混合するため、前記
[1][2]の反応がほとんど同時に開始する。従っ
て、炭酸イオン及びカルシウムイオン濃度が高い為、結
晶発生や結晶成長が急速に進み、生成する炭酸カルシウ
ム粒子の形状はサイコロ状や六角面体などの種々雑多な
形状を有し、粒子径も大小様々でほとんどは比表面積の
大きい凝集晶を呈す。更に、急速な結晶成長によって緑
液由来の狭雑物を包含し易い傾向に有り、炭酸カルシウ
ムの品位を低下させて来た。又、本来の目的である白液
製造の為、白液と炭酸カルシウムの分離、及び分離した
炭酸カルシウムに同伴する白液成分を除去する工程が必
須になるが、この工程において多大な労力を必要として
来た。
【0012】そこで、かかる問題点を解決し高品位炭酸
カルシウムの製造方法を開発することを本発明の課題と
した。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために鋭意研究を重ねた結果、硫酸塩法又は
ソーダ法によるパルプ製造工程の苛性化工程を利用し
て、特定量以下の炭酸カルシウムを含有する生石灰を、
特定の石灰濃度で、白液、緑液又はそれらの混合物から
なる群から選択される液体で連続的に消和反応させる消
和工程に引き続き、苛性化槽において、前記消和工程で
得られた石灰乳及び又は石灰泥と、硫酸塩法又はソーダ
法によるパルプ製造工程の苛性化工程で発生し、従来の
操業において白液を製造するのに必要とされると同量の
緑液を連続混合し、反応液の滞留時間を特定して苛性化
反応を進める事によって、従来の操業において製造する
と同等の白液と高品位な炭酸カルシウムを得る苛性化方
法を見出した。上記苛性化方法で得られる炭酸カルシウ
ムは形状が単純で比表面積も小さく、平均粒径が大き
く、洗浄が容易で粉砕後の白色度が高く、優れた工業原
料が得られる。
【0014】本発明の消和槽における生石灰の白液又は
緑液に対する濃度、特に緑液で消和反応する場合の濃度
は、引き続き実施する苛性化反応によって生成する炭酸
カルシウムの品質をコントロールする上で非常に重要で
ある。生石灰の白液に対する濃度は高濃度程高い粘性を
示すが、低濃度から高濃度に至る実質的に消和反応及び
引き続き実施する苛性化反応の実施が可能な範囲であれ
ば、何れの濃度でも設定可能である。生石灰と緑液の場
合は高濃度では改良された品質の炭酸カルシウムが得ら
れるが、濃度が従来の苛性化法に近くなるほど改良され
た炭酸カルシウムの品質が得られなくなり、最も低濃度
側では従来の苛性化法と同等の反応条件となってしま
う。
【0015】本発明の苛性化槽における苛性化反応液の
滞留時間は、苛性化反応によって生成する炭酸カルシウ
ムの品位をコントロールする上で非常に重要であり、滞
留時間が長くなるほど好ましいが、滞留時間は2時間か
ら10時間、好ましくは4時間から6時間にコントロー
ルする必要がある。滞留時間が従来の苛性化槽の滞留時
間である2時間未満では、苛性化反応が急速に進むため
粒子形状は凝集晶を呈し易くなる為、品位や白液との分
離性の改善が不充分である。苛性化槽の滞留時間が10
時間を越える場合は、品位や分離性は充分となるが大型
の苛性化槽が必要となって経済的に不利となる。
【0016】尚、従来の苛性化工程ではスレーカーに続
く苛性化槽として2乃至4段の苛性化槽が設置されてい
るが、本開発法の場合の苛性化槽は第1段の滞留時間を
規定する方法に関する。従って、第1段の苛性化槽に続
く数段の苛性化槽の設置は白液の苛性化率に応じて適宜
設置する。
【0017】本発明の完成によって、生成する炭酸カル
シウムの平均粒径が大きく出来る為、白液分離や炭酸カ
ルシウムの洗浄工程の設備負荷が低減するばかりで無
く、従来の石灰乳と炭酸ガスの反応によって得られる炭
酸カルシウムに比べ、低コストでの製造が可能である。
さらに、本発明の技術によって、苛性化工程で生成する
炭酸カルシウムの生産性が飛躍的に向上するため、付随
効果として、炭酸カルシウムの工程からの抜き取り量が
増大し、焼成用キルンの負荷の低減が達成出来る。又、
工程から炭酸カルシウムを抜き取る量によってはキルン
停止も可能となり、苛性化工程での主生産物である白液
の生産コストを大幅に削減できる。
【0018】本発明の初段苛性化槽に代えてD.T.B(Dra
ft Tube Buffle Crystallixer)で苛性化を実施しても
同様の効果が得られる。但し、苛性化反応工程の特徴と
して槽内で炭酸カルシウムが析出する工程であるため、
装置の接液部のスケール付着が激しく、メンテナンスの
面で複雑な装置構成は好ましくない。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の消和工程において使用す
る生石灰は、炭酸カルシウムを主成分とする天然石灰
石、及び/又は硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製
造工程の苛性化工程において、炭酸ナトリウムを水酸化
ナトリウムに転化する際に生成する炭酸カルシウムを焼
成したものであればよい。なお、その際の焼成装置に関
しては、ベッケンバッハ炉、メルツ炉、ロータリーキル
ン、国井式炉、KHD(カーハーディー)炉、コマ式
炉、カルマチック炉、流動焼成炉、混合焼き立炉等の、
炭酸カルシウムを生石灰(酸化カルシウム)に転化する
装置であれば特に制限されることはない。
【0020】苛性化反応に使用する生石灰中の不純物の
含量については、特に炭酸カルシウムを着色する成分と
してFe、Al、Mn等の金属元素が問題になるが、用途
に合わせて着色成分含量の少ない原料石灰石から得られ
る生石灰を適宜選択する。あるいは苛性化工程における
ロータリーキルンや流動焼成炉等からの再焼成生石灰の
場合には、系外に抜き取られる炭酸カルシウムと系内を
再循環する炭酸カルシウムの比率等によって着色成分含
量等が変化する為、状況にあわせて苛性化工程のカルシ
ウム循環サイクルに補給する着色成分含量の少ない原料
石灰石、あるいはこれを焼成した生石灰の量を調整して
使用すればよい。
【0021】生石灰は、苛性化工程で発生した炭酸カル
シウムをキルン等の焼成炉で脱炭酸して得た生石灰、又
は苛性化工程から抜き取る炭酸カルシウムの補給分とし
て外部から供給する生石灰、もしくは補給石灰石と工程
を循環する炭酸カルシウムを前記キルンで混合焼成して
得た生石灰、及びこれら生石灰を任意の比率で混合した
生石灰が使用できる。
【0022】生石灰中の炭酸カルシウム含量について
は、生石灰の重量を基準として0.1〜10重量%、好
ましくは5%以下の場合に良好な結果が得られる。生石
灰中の炭酸カルシウムはそれ自身当然の事ながら消和反
応及び苛性化反応を起こさず、最終的に工業原料として
使用されるまで化学組成的に変化することは無い。しか
し、苛性化反応系に混入した炭酸カルシウムは種結晶と
して結晶成長段階に作用し、新たに生成する炭酸カルシ
ウムを不定形あるいは塊状に誘導する原因になる為、得
られる炭酸カルシウムの品位を低下させる。炭酸カルシ
ウム含量で10重量%を超えると、これらの傾向が顕著
になって好ましくない。
【0023】一方、0.1重量%以下のものを得るため
には、焼成に要するエネルギーが極度に増加する、ある
いは焼成装置に特別な工夫を必要とするなどがあり不経
済となる。
【0024】生石灰の粒度に関しては特に制限はない
が、平均粒度0.01mm〜10cm、好ましくは0.
01mm〜10mmのものが消和時の攪拌において均一
混合という面で好適である。粒度が0.01mm以下の
場合は粉砕のためのコストがかかると同時に、粉塵の発
生や移送装置でのトラブルの原因となり好ましくない。
【0025】消和工程において生石灰の消和に用いる白
液、若しくは緑液としては、トータルアルカリ濃度で8
0〜160g/L(Na2O換算:以下同様)、好まし
くは100〜150g/Lで行う必要がある。80g/
Lより低い場合は最終白液の濃度が下がる為、蒸解に使
用する際に濃度調節を行う必要が出てくる。一方、16
0g/Lより高い場合は、苛性化する前の緑液中で炭酸
ナトリウム等の結晶が生成し易くなって工程でトラブル
発生の原因となる等の理由により、好ましくない。
【0026】白液を生産する苛性化工程で操業管理の指
標の一つとして、下記[3]式で示される苛性化率が一
般に用いられている。因みに、水酸化ナトリウム、炭酸
ナトリウムの濃度はNa2O換算(g/L)で示す。
【0027】苛性化工程では下記[1][2]式で示す
消和反応と苛性化反応の二段の反応が進み、式[2]の
苛性化反応は可逆反応であるが、CaCO3の溶解度が
Ca(OH)2のそれよりも小さいので反応はかなり右
方へ進む。しかし、この反応は反応液の[OH]濃度に
よって決まる平衡苛性化率以上には進行することは無
く、一般的な苛性化工程に於ける苛性化率は65〜85
%の範囲である事が多い。 CaO + H2O → Ca(OH)2 [1] Ca(OH)2 + Na2CO3 → CaCO3 + 2NaOH [2] 苛性化率(%)=水酸化ナトリウム濃度/(炭酸ナトリウム濃度+水酸化ナ トリウム濃度) ×100 [3] 我々はこの苛性化率の定義を白液だけに止めず、本発明
で言うところの生石灰の消和に使用する緑液を含む消和
液に拡大した。なぜなら、苛性化率の低い所謂緑液は、
苛性化反応で生成した炭酸カルシウムに同伴する白液成
分の一部を洗浄回収した弱液に、ボイラーからのスメル
トを溶解したものを言う。従って、現実的な緑液は白液
由来の水酸化ナトリウムを含有し、同伴する白液成分の
多少が緑液の苛性化率の高低を支配している。又、一般
に呼ばれている白液或いは緑液の苛性化率範囲以外であ
っても、本発明にとって充分に有効な消和液と成り得る
からである。
【0028】消和工程に用いる白液、若しくは緑液の炭
酸ナトリウム濃度と石灰濃度には密接な関係がある。炭
酸ナトリウム濃度の低い白液で消和する場合の生石灰濃
度は低濃度から高濃度まで良好な結果が得られる。しか
し、炭酸ナトリウム濃度の高い緑液で消和する場合の石
灰濃度は比較的高い石灰濃度範囲においてのみ良好な結
果が得られる。
【0029】本発明者等は、生石灰を消和する際に使用
する白液や緑液等の消和液の炭酸ナトリウム濃度と、消
和時の石灰濃度の関係について研究を重ねた結果、消和
する際の石灰濃度が、消和する前の生石灰を基準として
1.0重量%以上、77.0重量%以下であり、且つ下
記(a)(b)両条件を同時に満足させる条件で消和す
ることにより、初めて所期の目的に叶う炭酸カルシウム
が得られる消和条件である事を発見した。
【0030】 0≦X≦消和液の平衡苛性化率 (a) 15−0.3X≦Y≦77 (b) 但し、 X=消和液の苛性化率(重量%) Y=消和前の生石灰を基準とした時の石灰濃度(重量
%) 苛性化率(%)=水酸化ナトリウム濃度/(炭酸ナトリ
ウム濃度+水酸化ナトリウム濃度)×100 消和液が所謂白液であって、苛性化率が65%以上であ
れば、例え石灰濃度が1.0%以下であっても何ら問題
無く目的が達成出来る。しかし、更に苛性化率の低い所
謂緑液の場合は、下記(c)で示す石灰濃度以上、好ま
しくは下記(d)で示す石灰濃度以上で消和する必要が
ある。
【0031】 20−0.35X≦Y≦77.0 (c) 25−0.40X≦Y≦77.0 (d) 但し、X=消和液の苛性化率(%) Y=消和前の生石灰を基準とした石灰濃度(重量%) 一般的な白液(苛性化率=65〜80%)による消和時
の石灰濃度で言えば、消和前の生石灰を基準とした濃度
で0.5〜77重量%、好ましくは3.5〜50重量%
で行う必要がある。77重量%を超えると生石灰が消和
するに必要な水が不足する為、実質的に充分な消和が達
成出来ない。又、50重量%を越えると石灰乳若しくは
石灰泥と呼ぶよりもむしろ粉末消石灰と呼ぶにふさわし
い状態になって、特殊な消和装置を必要とする他、当然
の事ながら初段の苛性化槽にはそれぞれ緑液と同時に粉
体状の消石灰を供給する必要があり、特殊な添加装置が
必要になる。
【0032】従って、現実的にはスラリーの攪拌や、苛
性化槽への流下式移送が容易な50重量%以下で消和す
る事が望ましい。一方0.5重量%未満では、白液及び
炭酸カルシウムの生産性が非常に劣り現実的でない。
【0033】消和工程で使用する白液は他の工程から導
入することも可能であるが、同一の苛性化工程で生産す
る白液を使用するのが設備的に都合が良い。消和時の石
灰濃度を高く設定すれば自己循環する白液量を少なくで
きる為、苛性化槽や白液分離などの設備を簡略化出来る
ため有利である。
【0034】同様に、一般的な緑液(苛性化率=5〜2
0%)による消和時の石灰濃度は、消和前の生石灰を基
準とした石灰濃度で15〜77重量%、好ましくは20
〜50重量%で行う必要がある。50重量%を超える
と、スラリーの粘度が高すぎて現実的に攪拌が困難とな
る。一方15重量%未満では、生成する炭酸カルシウム
の品位を損なう為、好ましくない。
【0035】消和工程で行う生石灰の消和には、白液と
緑液を任意の配合比で混合して用いる事も出来る。緑液
の比率を高くする事によって、消和時の石灰濃度を高く
する必要があるが、該苛性化工程で生産する白液の自己
循環率を低く出来るため、白液分離工程の小型化など設
備的に有利である。しかし、緑液の配合比を大きくする
と、当然の事ながら炭酸ナトリウム濃度が高くなる為、
石灰濃度を高くする必要が有り、高粘度攪拌に適した特
殊な攪拌装置の導入が必要となって不経済である。
【0036】このような観点から生石灰の消和に用いる
消和液として、白液と緑液との混合比の調節によって消
和液の苛性化率を調節し、更に石灰濃度を調節すれば、
白液分離性や洗浄性等炭酸カルシウムの品質をバランス
良く調整する事も可能である。
【0037】尚、消和工程で生石灰から調整する石灰乳
に代えて、水酸化カルシウムを白液若しくは緑液、又は
これらの混合液に分散し、本方法と同じ濃度に調整した
石灰乳を使用することも可能である。この場合、消石灰
が持ち込む水によって若干ではあるが白液のアルカリ濃
度が低下する。
【0038】消和時における生石灰と白液、若しくは緑
液等との混合には、一般的な攪拌羽根式、ポンプ式、押
し出し機類、捏和機類、混練機類の中から、混合時のス
ラリー粘度にあわせて適宜選定して使用すれば良い(昭
和63年3月18日丸善株式会社発行、化学工学便覧参
照)。
【0039】従来、一般に操業されている苛性化工程で
は、緑液温度は回収ボイラーからの溶融した高温のスメ
ルトを熱源として90℃前後に制御する事が多く、苛性
化温度は生石灰の消和熱発生によって昇温し、沸騰温度
を越えない温度として100℃前後に制御することが多
い。従って苛性化後、生成した炭酸カルシウムを分離し
た白液の温度は90℃前後である事が多い。
【0040】本発明の場合、消和工程の温度は、特に純
度の低い生石灰の場合、消和温度が低いと充分な消和反
応が進み難く、更に後段の苛性化反応速度も高温ほど有
利である事などから、少なくとも100℃以上で操業す
ることが好ましい。一方、105℃より高くする場合に
は消和装置で沸点を超えるため、加圧型の消和装置や苛
性化装置等を必要とするため不経済である。
【0041】更に、消和槽における滞留時間は、未反応
の生石灰が残留する事の無い充分な消和時間を設定する
必要が有る。但し、生石灰の消和反応は非常に速く、特
に限定する項目ではないが、従来の一般的なスレーカー
の滞留時間である10〜30分間で充分であった。
【0042】本発明の苛性化方法で最も重要な制御因子
の一つに初段苛性化槽の滞留時間が挙げられる。この滞
留時間の制御は初段苛性化槽の容量によって実施でき、
初段苛性化槽に流入する石灰乳と緑液から成る苛性化反
応液の流量と初段苛性化槽の容積から求められる。この
滞留時間は一般的な苛性化法では一槽当たりの滞留時間
が1時間から2時間で、多段の苛性化槽から成る事が多
い。本発明の大きな特徴として2時間から10時間が規
定される。この滞留時間は1槽当たりの滞留時間で、長
時間ほど平均粒子径の大きい炭酸カルシウム粒子に成長
する為、希望する粒子径に応じて適宜選択する。また滞
留時間を長く設定することから、必ずしも多段の苛性化
槽の設置を必要とせず、1槽でも充分な苛性化率が得ら
れる事を確認している。
【0043】該石灰乳と緑液の混合には、前記消和工程
と同様の混合機が使用できるが、苛性化反応液は消和工
程の石灰乳に比べ濃度低下によって粘度が低下するた
め、一般的な攪拌羽根式、ポンプ式、等の攪拌機が使用
可能となる。
【0044】初段苛性化槽の他の制御因子に温度条件が
ある。従来、一般に操業されている苛性化工程の温度
は、回収ボイラーからの溶融した高温のスメルト、苛性
化工程の生石灰の消和反応による発熱等を熱源とし、高
温ほど苛性化反応速度が速い事などから、少なくとも9
0℃以上で操業されることが多い。しかしながら、白液
の生産と同時に炭酸カルシウムを製造する本発明の場
合、苛性化反応温度の選択によって炭酸カルシウム粒子
の粒子径が制御できることを明らかにした。
【0045】初段苛性化槽の温度については、反応温度
が30〜105℃で行う必要がある。105℃より高く
する場合には、消和装置や苛性化槽で沸騰点を超えるた
め、加圧型の消和装置や苛性化装置等を必要とするため
不経済である。
【0046】苛性化反応温度が30〜105℃の場合、
高温では低温に比べ小型の炭酸カルシウム粒子に成長す
る傾向が見られ、希望する粒子径に応じて適宜選択す
る。一方30℃より低い場合には、目標とする平均粒子
径の炭酸カルシウムが得られない訳ではないが反応速度
が極端に遅くなる為、容積の大きな苛性化槽を必要とす
る。さらに、反応前の緑液の冷却工程に大型の冷却装置
が必要になり、又白液を高温の蒸解に使用するには白液
の加熱が必要で、経費がかさみ不経済である。
【0047】白液と炭酸カルシウムの分離、及び炭酸カ
ルシウムに同伴する白液成分の洗浄除去方法は、通常の
固液分離装置、例えばクラリファイヤーによる重力沈降
分離方式、オリバーフィルターに代表される減圧濾過分
離方式、及びリーフ濾過機に代表される加圧濾過分離方
式、遠心力を利用した遠心濾過方式等、用件が達成でき
れば何れの分離装置も利用できる。これらの分離装置に
おける炭酸カルシウムの分離特性は炭酸カルシウムの粒
子径が重要な因子であることは自明であり、本発明の大
きな特徴である大型の粒子はこれら分離装置や洗浄装置
の負荷を大幅に低下できる。一方、従来の苛性化法で得
られる炭酸カルシウム粒子は粒子表面の形状が複雑な凹
凸から成るが、本発明で得られる炭酸カルシウムの粒子
表面は単純で凹凸も少ない。従って、比表面積が小さ
く、これも分離洗浄性の有利な理由となっている。
【0048】一方、分離回収した炭酸カルシウムの粒径
は、そのままでは大粒径なため工業用原料として使用す
るには充分な品質が得られない場合が多い。従って、目
的とする品質要求に応じて平均粒子径を0.2〜10μ
mに調整する事が望ましい。粒径の調整はサンドミルに
代表される媒体攪拌型粉砕機、ボールミル粉砕機、等の
粉砕機が利用できる。
【0049】本発明によって得られる炭酸カルシウム
は、従来の苛性化工程で得られた炭酸カルシウムに比べ
て、結晶成長に伴って結晶内に取り込まれる狭雑物が少
なく、加えて洗浄性に優れ、白色度に優れた特徴を与え
る。このことは、製紙用のほか、ゴム、プラスチック、
ペイント、シーリング剤、粘着剤等にも有益に使用可能
である。
【0050】この様な苛性化反応条件下に生成した炭酸
カルシウムは、工業原料としての優れた品質ばかりでな
く、主生産物である白液が工業的規模で生産が可能にな
る為、軽質炭酸カルシウムを安価に提供できる。
【0051】
【作用】本発明のメカニズムについては充分に解明され
てはいないが、現象論的には原料の一つである生石灰の
炭酸カルシウム含有量、及び消和反応時の石灰濃度、消
和反応で使用する白液、緑液又はその混合物等消和液の
トータルアルカリ濃度、及び炭酸ナトリウム濃度が、苛
性化反応によって生成する炭酸カルシウム結晶の品質に
大きく影響を与える事。その外、消和反応、苛性化反応
の際の温度や苛性化反応時の石灰乳と緑液の混合条件、
及び初段の苛性化槽における滞留時間によって、生成す
る炭酸カルシウムの品質が大きく変化する事を確認して
いる。
【0052】これらの現象から推察すると、従来一般に
行なわれて来た苛性化方法では、緑液とこの緑液を苛性
化して白液を製造するに必要な生石灰をスレーカーで同
時に混合し、生石灰の消和反応と苛性化反応を同時に進
行させる方式であった。この様に消和反応と苛性化反応
が同時に進行する為、それぞれの反応に適した反応条件
を同時に制御する事が不可能であった。
【0053】そこで改良法として、消和反応と苛性化反
応を分離し、夫々の反応条件を個別に設定した。即ち、
スレーカーでは炭酸イオンを含まない例えば水、若しく
は実質的に生成した水酸化カルシウムとは苛性化反応を
ほとんど起こさない例えば白液、或いは消和反応に必要
な水を充分に持ち込みながら生石灰に対し圧倒的に少な
い炭酸イオン量の例えば緑液による高濃度消和等、生石
灰を適正な条件で充分に消和反応を起こさせた後、この
消和石灰と苛性化反応すべき量の緑液を改めて添加混合
し、適正な苛性化条件で反応する事によって、蒸解に必
要な白液を製造すると同時に、工業原料として有用な高
品質炭酸カルシウムを生産可能にした。
【0054】更に、苛性化反応条件として最初の苛性化
反応を起こす反応槽での滞留時間を規定し、生成する炭
酸カルシウム結晶粒子の大きさや形状を制御する事が可
能になり、白液分離性や洗浄性を改良した。以上述べた
ように、消和反応と苛性化反応を分離した事によって、
それぞれの反応条件を精度良く制御出来る事がメカニズ
ムを考える上で重要な意味を持つ。
【0055】消和工程では生石灰の消和反応が進行して
消石灰への転化が起こり、固体の消石灰の一部は溶解す
る。ところが、従来の苛性化法では緑液が持ち込む水と
生石灰に消和反応が起こるが、固体の生石灰の表層は消
石灰に転化し、その一部は溶解する。しかし、炭酸イオ
ンが多量に存在する為、溶解した消石灰は急速に苛性化
反応を起こすため、固体表面に炭酸カルシウムを形成す
る。従って、粒子内部の生石灰の新たな消和反応と消石
灰の溶解を阻害する。この傾向は反応が進むほど生石灰
や消石灰を取り巻く炭酸カルシウム層が厚くなり、益々
強くなる。この様な反応が生石灰と消石灰が駆逐される
まで継続する為、結果的に凝集晶と呼ばれる小型の結晶
粒子が集合状に結合した二次粒子を形成する。
【0056】一方、白液による消和反応や緑液による高
濃度消和反応のように、混入する炭酸ナトリウム量を制
限する事によって、消石灰粒子表面の炭酸カルシウムの
生成は抑えられ、生石灰の充分な消和反応が達成可能と
なる。従って、次工程の苛性化工程では均一な苛性化反
応が起き易くなり、従来の苛性化法と同等の滞留時間で
は微細な炭酸カルシウム粒子が生成する。
【0057】初段苛性化槽内では、炭酸カルシウム結晶
核の発生と既に発生した結晶自身が結晶核になって結晶
成長が同時に進む。初段苛性化槽には消石灰がカルシウ
ムイオンの供給元として、又緑液が炭酸イオンを供給
し、炭酸カルシウムの過飽和度が高いと結晶核発生が優
勢となって粒子径は微細に、逆に過飽和度が低いほど結
晶成長が優勢になる。従って、苛性化槽の滞留時間が短
い程炭酸カルシウムの過飽和度が高いため結晶核発生が
優勢となって粒子径は微細になり、逆に初段苛性化槽内
の滞留時間が長いと槽内で過飽和度が低くなるため結晶
成長が優勢になって結晶粒子が大型になる。
【0058】本発明の場合、初段苛性化槽の滞留時間が
短い場合は、生成する炭酸カルシウムの平均粒子径は小
さく、また滞留時間を長くする程大型化の傾向が見ら
れ、滞留時間に関わらず何れもほとんどが一次粒子で凝
集晶を示さず、粒子表面が単純な形状を呈す特徴があ
る。
【0059】本発明の炭酸カルシウムの特徴は、一つに
は結晶核発生に対し結晶成長を優先させて狭雑物を少な
くした高品質炭酸カルシウムであり、二つには白液分離
と洗浄性に優れた炭酸カルシウムにある。
【0060】
【実施例】以下に本発明を実施例および比較例をあげて
より詳細に説明するが、当然ながら本発明は実施例のみ
に限定されるものではない。
【0061】《試験法》 アルカリ分析法: TAPPI624hm−85, TAPPI
625hm−85あるいはこれに準じて測定した。 生石灰平均粒度: JIS R 9001−1993
に準じ、乾式操作にて測定した。 生石灰中の炭酸カルシウム含量: 金属中炭素分析
装置(堀場製作所EMIA−110)により炭素含量を測
定し、その量より炭酸カルシウム含量を算出した。 炭酸カルシウム平均粒子径: 生成物を水洗濾過
し、水で希釈後、レーザー回折式粒度分布計(シーラス
社製モデル715)で重量平均粒子径を測定した。 濾過速度: リーフテスター(宮本製作所製VR−
23)を使用し、差圧:0.7Kg/cm2、ケーキ
厚:20mmの濾液通過速度を求めた。
【0062】[比較例1]攪拌機(攪拌速度450rp
m、Kyoei Power StairrerTyp
e PS−2N)、及び加熱用のマントルヒーターを備
え、流入管及びオーバーフロー管付セパラブルフラスコ
を2セット、直列に連結して苛性化反応装置とした。#
1フラスコ(容積125mL)を消和槽、#2フラスコ
(容積500mL)を苛性化槽とした。特に断らない限
り以下の実施例についても同様の反応装置を用いた。
【0063】消和槽とした#1フラスコに、白液(組
成:Na2CO3=21g/L、Na2S=25g/L、
NaOH=83g/LいずれもNa2O換算値、苛性化
率=80%、特に断らない限り以下の実施例について同
様)を毎時250mL注入し、同時に炭酸カルシウム含
有率1.3%の工業用特号生石灰(平均粒度:0.4m
m、宇部マテリアルズ社製)を毎時30g加え、消和反
応させた。従って、消和槽の滞留時間は約0.5時間で
ある。
【0064】苛性化槽とした#2フラスコにおいて、#
1フラスコからのオーバーフローによって流入する石灰
乳に、緑液(組成:Na2CO3=95g/L、Na2
=25g/L、NaOH=12g/LいずれもNa2
換算値、苛性化率=11%、特に断らない限り以下の実
施例についても同様)を毎時250mL注入した。従っ
て、苛性化槽での滞留時間は約1.0時間である。
【0065】反応系が充分安定した後、#2フラスコ出
口の反応液のリーフテストによる濾過速度測定結果は
3.5m/Hrであった。試験終了時の#1と#2フラ
スコの温度はそれぞれ102℃、及び99℃であった。
生成した炭酸カルシウムは白液を濾過分離回収した後、
水道水で充分にろ過洗浄し、各種試験に供した。生成し
た炭酸カルシウムは立方体状の結晶が多数集合した凝集
晶を呈し、平均粒子径8.2μmであった。
【0066】この例に見られるように、初段の苛性化槽
の滞留時間が15分以下好ましくは5分程度であれば、
一次粒子が分散した米粒状炭酸カルシウムを生成する
が、滞留時間が概ね30分から90分の間では、上記の
ように不特定形状の凝集晶を形成することを確認してい
る。
【0067】尚、反応によって得られた白液の苛性化率
は67%で、苛性化槽での滞留時間が短かいために苛性
化反応が不充分と思われた。 [実施例1]消和槽とした#1フラスコに供給する生石
灰を炭酸カルシウム含有量5.5%、平均粒度2mmの
苛性化キルン焼成生石灰に変更し、苛性化槽容積を10
00mLとした以外は、比較例1と同条件で苛性化実験
を行なった。従って、苛性化槽での滞留時間は約2.0
時間である。試験条件及び結果を第1表に示す。回収し
た炭酸カルシウムは平均粒子径5.3μmであった。ま
た、電子顕微鏡観察の結果、平均長径3.6μm、平均
短径1.2μmである米粒状炭酸カルシウムと、平均長
径10μm、平均短径5μmである炭酸カルシウムの一
次粒子が主体であったが、一部には分散の不充分な凝集
晶も散見された。
【0068】[実施例2]#1フラスコに添加する生石
灰を炭酸カルシウム含有量8.5%、平均粒度1.6m
mの苛性化キルン焼成生石灰に変更し、苛性化槽容積を
3000mLとした以外は、実施例2と同条件で苛性化
反応試験を行なった。従って、苛性化槽での滞留時間は
約5.8時間である。試験条件及び結果を第1表に示
す。回収した炭酸カルシウムは平均粒子径9.2μmで
あった。また、電子顕微鏡観察の結果、平均長径10μ
m、平均短径5μmである炭酸カルシウム一次粒子の比
率が、実施例1に比べ明らかに増加傾向にあった。
【0069】[実施例3]#1フラスコで生石灰を消和
する消和液の苛性化率を白液と緑液の混合によって調節
した。更に反応系内の炭酸ナトリウム増加に見合う生石
灰流量を補足するとともに、苛性化槽容積を5000m
Lとした以外は、比較例1と同条件で苛性化試験を行な
った。従って、苛性化槽での滞留時間は約9.8時間で
ある。消和液組成、その他試験条件と試験結果を第1表
に示す。回収した炭酸カルシウムは平均粒子径10.7
μmであった。また、電子顕微鏡観察の結果、平均長径
15μm、平均短径7μmである炭酸カルシウム一次粒
子の比率が、実施例2に比べ更に増加傾向のあることを
確認した。
【0070】[実施例4]#2フラスコの温度を60℃
に制御し、苛性化槽容積を3000mLとした以外は、
比較例1と同条件で苛性化試験を行なった以外は、比較
例1と同一条件で苛性化試験を行った。従って、苛性化
槽での滞留時間は約5.9時間である。消和液組成、そ
の他試験条件と試験結果を第1表に示す。回収した炭酸
カルシウムは平均粒子径8.5μmで、電子顕微鏡観察
の結果、平均長径4.5μm、平均短径1.0μmであ
る紡錘状炭酸カルシウムと、平均長径10μm、平均短
径5μmである炭酸カルシウムの一次粒子が主体であっ
た。
【0071】[実施例5]#1フラスコに注入する消和
液を緑液に変更し、消和反応を生石灰基準で19.4%
とした。又#2フラスコの滞留時間を約7.7%以外は
比較例1と同条件で苛性化反応試験を行なった。従っ
て、苛性化槽での滞留時間は約7.7時間である。試験
結果を第1表に示す。また、電子顕微鏡観察の結果、平
均長径12μm、平均短径8μmである炭酸カルシウム
一次粒子と平均長径2μm、平均短径0.8μmである
米粒状炭酸カルシウム一次粒子の混合物であることが観
察された。
【0072】
【表1】
【0073】
【発明の効果】従来の苛性化方法の場合、スレーカーで
生石灰と緑液を混合する。従って、消和反応と苛性化反
応がほとんど同時に進み、両反応に適した反応条件を個
々に設定する事は困難であり、苛性化反応終了後に白液
から分離した炭酸カルシウムは立方体を主体にした結晶
がランダムに結合した凝集晶を形成する。一方、結晶の
発生速度や成長速度も速く、反応系内に共存する異物も
狭雑物として結晶に取り込まれる。
【0074】以上の状況から、白液からの炭酸カルシウ
ムの分離や同伴する白液成分の洗浄除去が困難な炭酸カ
ルシウム結晶が生成し、分離洗浄設備に多大な労力を必
要としているばかりでなく、生成した炭酸カルシウムを
苛性化工程から抜き取って工業用原料として活用を考え
る時,結晶に取り込まれた異物が原因となって高品質炭
酸カルシウムとしての応用範囲が限られてしまう。
【0075】そこで、これらの課題を解決する手段とし
て本発明に示したように、消和反応と苛性化反応条件を
規定して、苛性化工程で蒸解用薬品である白液の製造の
副産物である炭酸カルシウムを高品質工業用原料として
提供することを可能にした。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G076 AA16 AB02 AB30 AC10 BA13 BB01 BC08 BD02 BD06 CA02 DA02 DA30

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製
    造工程の苛性化工程に於いて、炭酸カルシウムを製造す
    る方法であって、 消和槽において、前記苛性化工程で発生し、及び/又は
    前記工程外から導入した生石灰であって生石灰の重量を
    基準として0.1〜10重量%の炭酸カルシウムを含有
    する前記生石灰と、前記苛性化工程で発生し、及び/又
    は前記工程外から導入した、白液、緑液又はそれらの混
    合物からなる群から選択される液体とを混合し、攪拌あ
    るいは捏和しながら消和させて石灰乳あるいは石灰泥を
    調製する消和工程、及び苛性化槽において前記消和槽よ
    り導入した該石灰乳あるいは石灰泥と、前記苛性化工程
    で発生し、及び/又は前記工程外から導入し、白液を製
    造するに必要な所定量の緑液を添加混合し、滞留時間が
    2時間以上10時間以下、反応温度30〜105℃にて
    苛性化反応を行う苛性化工程、 からなる炭酸カルシウムの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記消和工程において、生石灰を、白
    液、緑液又はそれらの混合物からなる群から選択される
    液体で消和する際の石灰濃度が、消和する前の生石灰を
    基準として1.0重量%以上、77.0重量%以下であ
    り、且つ下記式(a)(b)両条件を同時に満足する消
    和方法である事を特徴とする、請求項1記載の炭酸カル
    シウムの製造方法。 0≦X≦消和液の平衡苛性化率 ・・・・・・・・(a) 15−0.3X≦Y≦77.0 ・・・・・・・・(b) 但し、X=消和液の苛性化率(%) Y=消和前の生石灰を基準とした石灰濃度(重量%)
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